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特開2023-93447導電性部材、セル、セルスタック装置、モジュール及びモジュール収容装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093447
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】導電性部材、セル、セルスタック装置、モジュール及びモジュール収容装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1213 20160101AFI20230627BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20230627BHJP
   C25B 13/05 20210101ALI20230627BHJP
【FI】
H01M8/1213
H01M8/12 101
C25B13/05
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044959
(22)【出願日】2023-03-22
(62)【分割の表示】P 2021516208の分割
【原出願日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】P 2019083010
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬野 裕明
(72)【発明者】
【氏名】藤本 哲朗
(57)【要約】      (修正有)
【課題】セルの発電効率を高めることができる導電性部材を提供する。
【解決手段】導電性部材は、金属体と、膜とを備える。金属体は、Crを含有する。膜は、金属体の表面に位置し、Crを含む。膜は、Crとは異なる第1の導電性粒子を含む。第1の導電性粒子を含むことで、第1中間層9の導電性が高くなり、素子部6で発電された電気を、第1の導電性粒子を通じて金属板2で集電し易くなる。その結果、セルの発電効率を高めることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Crを含有する金属体と、
該金属体の表面に位置し、Crを含む膜と、を備え、
該膜は、Crとは異なる第1の導電性粒子を含む、導電性部材。
【請求項2】
前記第1の導電性粒子の粒径が、前記膜の厚さより小さい
請求項1に記載の導電性部材。
【請求項3】
前記第1の導電性粒子が、金属または合金の粒子を含む
請求項1に記載の導電性部材。
【請求項4】
前記第1の導電性粒子が、ペロブスカイト型酸化物を含む
請求項1に記載の導電性部材。
【請求項5】
前記金属体が、対向する一対の第1面及び第2面を有する緻密な板であり、
前記第1面および前記第2面に開口する貫通孔を備える
請求項1に記載の導電性部材。
【請求項6】
前記金属体が、対向する一対の第1面及び第2面を有する多孔質焼結体である
請求項1に記載の導電性部材。
【請求項7】
前記金属体が、対向する一対の第1面及び第2面を有する緻密な板であり、
少なくとも前記第1面に面する凹部または凸部を有する
請求項1に記載の導電性部材。
【請求項8】
前記膜は、少なくとも前記第1面上に位置する
請求項5~7のいずれか1つに記載の導電性部材。
【請求項9】
請求項8に記載の導電性部材と、
前記第1面上に配置され、第1電極層、該第1電極層上に位置する固体電解質層、及び該固体電解質層上に位置する第2電極層を有する素子部と、を備え、
前記膜が、前記第1面と前記第1電極層との間に位置している、セル。
【請求項10】
請求項9に記載のセルが配列されたセルスタックを備える、セルスタック装置。
【請求項11】
収容容器と、該収容容器内に収容された請求項10に記載のセルスタック装置と、を備える、モジュール。
【請求項12】
外装ケースと、該外装ケース内に収容された、請求項11に記載のモジュール及び該モジュールを運転する補機と、を備える、モジュール収容装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導電性部材、セル、セルスタック装置、モジュール及びモジュール収容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代エネルギーとして利用される燃料電池装置には、例えば多孔質の支持体に燃料極層、固体電解質層及び空気極層を積層したセルが用いられている。支持体には、セラミック材料、金属材料などが用いられる。金属支持体には、高い耐熱性及び耐食性を有するフェライト系ステンレス等の金属材料が用いられ、金属材料の粉末を焼結した金属焼結体、または貫通孔を有する金属板が用いられる。例えば、特許文献1では、Fe及びCrを含有する多孔質金属を支持体としたSOFC(Solid Oxide Fuel Cell)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-115506号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の導電性部材は、Crを含有する金属体と、該金属体の表面に位置し、Crを含む膜と、を備える。該膜は、Crとは異なる第1の導電性粒子を含む。
【0005】
本開示のセルは、上記に記載の導電性部材と、前記第1面上に配置され、第1電極層、該第1電極層上に位置する固体電解質層、及び該固体電解質層上に位置する第2電極層を有する素子部と、を備える。前記膜が、前記第1面と前記第1電極層との間に位置している。
【0006】
本開示のセルスタック装置は、上記のセルが配列されたセルスタックを備える。
【0007】
本開示のモジュールは、収容容器と、該収容容器内に収容された上記のセルスタック装置と、を備える。
【0008】
本開示のモジュール収容装置は、外装ケースと、該外装ケース内に収容された上記のモジュール及び該モジュールを運転する補機と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】セルの横断面の例の1つを示す断面図である。
図2図1の破線部を拡大した例の1つを示す断面図である。
図3図1の破線部を拡大した例の1つを示す断面図である。
図4】セルの横断面の例の1つを示す断面図である。
図5図1の破線部を拡大した例の1つを示す断面図である。
図6図1の破線部を拡大した例の1つを示す断面図である。
図7図1の破線部を拡大した例の1つを示す断面図である。
図8】セルの例の1つを示す横断面図及び金属板の第1面の平面図である。
図9】セルの例の1つを示す横断面図及び金属板の第1面の平面図である。
図10】セルの例の1つを示す横断面図及び金属板の第1面の平面図である。
図11】セルスタック装置の例の1つを概略的に示す側面図である。
図12図11に示したセルスタック装置の破線で囲んだ部分の一部を拡大した横断面図である。
図13】モジュールの例の1つを示す外観斜視図である。
図14】モジュール収容装置の例の1つを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(セル)
図1は金属支持体を備えたセルの横断面の例の1つを示している。セル1は、対向する一対の第1面2a及び第2面2bを有する金属板2及び流路部材8を有する金属支持体と、素子部6と、を備えている。素子部6は、金属板2の第1面上に配置され、第1電極層3、固体電解質層4、及び第2電極層5を有している。第1電極層3は金属板2の第1面上に配置され、固体電解質層4は第1電極層3上に配置されており、第2電極層5は固体電解質層4上に配置されている。
【0011】
金属支持体は、金属板2の素子部6が配置された第1面2aとは反対側の第2面2bと、流路部材8とにより形成されるガス流路7を有している。
【0012】
金属板2は、ガス流路7を流れるガスを第1電極層3に透過させるガス透過性を有している。流路部材8は、ガス流路7とセル1の外部との間で気体を流通させない、すなわち燃料ガスと空気などの酸素含有ガスとが混合しないように、ガス遮断性を有している。図1の例では、金属板2とU字型の断面を有する流路部材8により、ガス流路7が形成されている。
【0013】
固体電解質層4は、第1電極層3の金属板2と接していない面全てを覆っていてもよい。固体電解質層4と流路部材8とで筒状体を形成していてもよい。また、第1電極層3の金属板2又は固体電解質層4と接していない面は、他のガス透過性を有さない部材で覆われていてもよい。
【0014】
以下、他の図についても同一の部材については同一の符号を付す。なお、各図では説明を容易にするため、各層の厚さ方向を拡大して示しており、実際の各層の厚さはセル1の大きさに対し非常に小さい。また、セル1を構成する各部材の配置を明確にするため、xyzの座標軸を示した。
【0015】
以下、特に断りのない限り、金属板2と固体電解質層4との間に位置する第1電極層3を燃料極とし、固体電解質層4上に位置する第2電極層5を空気極として説明する。ガス流路7、すなわち図1に示す金属板2の下側である第2面2b側には水素含有ガス等の燃料ガスが供給され、空気極である第2電極層5の上側には空気等の酸素含有ガスが供給される。なお、第1電極層3を空気極、第2電極層5を燃料極としてもよい。この場合、図1に示すセル1の金属板2の下側には空気等の酸素含有ガスが供給され、燃料極である第2電極層5の上側には水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。
【0016】
セル1は、例えば固体酸化物形のセル1でもよい。固体酸化物形のセル1は、燃料電池として高い発電効率を有し、発電装置全体を小型化することができる。また、固体酸化物形のセル1は、負荷追従運転を行うことができ、例えば家庭用燃料電池で求められる変動する負荷に追従することができる。
【0017】
燃料極には、燃料極として一般的に公知の材料を使用してもよい。燃料極は、多孔質の導電性セラミックス、例えば安定化ジルコニアと、Ni及び/またはNiOとを含んでいてもよい。安定化ジルコニアは、例えばマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)または希土類元素が固溶しているZrOであり、部分安定化ジルコニアも含む。本開示における希土類元素は、イットリウム(Y)を含む。
【0018】
固体電解質層4は、第1電極層3と第2電極層5との間の電荷の橋渡しをする電解質である。固体電解質層4は、燃料ガスと空気などの酸素含有ガスとが混合しないように、ガス遮断性を有している。固体電解質層4の材料は、ガス遮断性を有する電解質であれば特に限定されないが、例えば3モル%~15モル%の希土類元素酸化物が固溶したZrOであってもよい。
【0019】
空気極には、空気極として一般的に用いられる材料を使用してもよい。空気極は、例えば、いわゆるABO型のペロブスカイト型酸化物の導電性セラミックスであってもよい。空気極はガス透過性を有している。空気極の開気孔率は、20%以上、特に30%~50%の範囲であってもよい。
【0020】
金属板2は、導電性を有する。金属板2が導電性を有することで、素子部6で発電された電気を集電できる。金属板2の導電率は、例えば3.0S/m以上、特に4.4S/m以上であってもよい。
【0021】
また、金属板2は第1面2aと第2面2bとの間でガスを流通させることが可能である。すなわち、金属板2は第1面2aと第2面2bとの間でガス透過性を有する。金属板2がガス透過性を有することで、ガス流路7に供給された燃料ガスが、燃料極である第1電極層3まで到達できる。
【0022】
図2及び図3は、それぞれ図1の破線部を拡大した断面図である。金属板2は、例えば30%以上、特に35%~50%の範囲の開気孔率を有する平板の多孔質体であってもよい。また、金属板2は、図3に示すように、金属板2を厚さ方向に貫通する複数の貫通孔10を有する緻密な板であってもよい。貫通孔10は、例えば金属板2の厚さ方向に垂直な断面において、0.01mm以上、1.0mm以下の直径を有していてもよい。金属板2がこのような開気孔率、または貫通孔10を有することで、ガス流路7に供給された燃料ガスが、燃料極である第1電極層3まで到達できる。
【0023】
緻密な金属板2は、多孔質体の金属板2よりも表面積が小さく、より高い耐食性を有する。また、緻密な金属板2は、表面積が小さいため表面に形成される酸化膜、すなわち酸化物の含有量が少なく、より高い導電性を有する。
【0024】
金属板2の形状は、図1及び図2に示すように、対向する一対の平面である第1面2a及び第2面2bを有する平板状であってもよい。金属板2の形状は、図4に示すように、対向する一対の曲面である第1面2a及び第2面2bを有する曲面板状であってもよい。金属板2の厚さは、例えば100μm以上、1mm以下であってもよい。
【0025】
金属板2の材料は、例えば、耐熱性合金等の導電性を有する材料であってもよい。金属板2はCrを含有しており、例えば、合金全体に対して4原子%~30原子%のクロム(Cr)を含有していてもよい。Crを含有する合金は、ニッケル-クロム系合金、鉄-クロム系合金、及びオーステナイト系、フェライト系、及びオーステナイト-フェライト系のステンレス等であってもよい。また、金属板2は、Cr以外の他の元素としてマンガン(Mn)、アルミニウム(Al)を含有してもよい。
【0026】
金属板2と第1電極層3とは、大気中または窒素雰囲気中で熱処理することで接合されることが多い。還元雰囲気中又は真空中で熱処理すると、第1電極層3または第2電極層5の焼結が進み易く、多孔質化し難いためである。この熱処理時に、Crを含む合金の表面が酸化され、合金の表面に酸化第二クロム(Cr)の不働態膜が形成される。金属板2は、この不働態膜により高い耐食性を有する。しかし、Crは導電性が低く、金属板2と燃料極等の第1電極層3との間の電気抵抗を増加させる。
【0027】
本開示のセル1は、図2及び図3に示すように、金属板2の第1面2aと第1電極層3との間に、酸化第二クロム(Cr)及びCrとは異なる第1の導電性粒子を含む第1中間層9を有する。第1中間層9は、導電性を有する。第1中間層9は、図2に示すように、例えば30%以上、特に35%~50%の範囲の開気孔率を有する多孔質層であってもよい。また、第1中間層9は、図3に示すように、第1中間層9を厚さ方向に貫通する複数の貫通孔10を有していてもよい。複数の貫通孔10を有する第1中間層9は、緻密な層であってもよい。第1中間層9は、金属板2の第1面2aと第1電極層3とに挟まれている。金属板2が貫通孔10を有する場合、貫通孔10は第1中間層9も貫通している。第1中間層9の厚さt1の平均は、例えば0.5μm以上、20μm以下であってもよい。
【0028】
第1中間層9が酸化第二クロム(Cr)を含むことにより、高温の反応雰囲気中でも金属板2の耐久性を高めることができる。しかし、Crは1010Ωm程度の電気抵抗率を有する絶縁体であるため、第1中間層9がCrだけを含む場合、金属板2と第1電極層3との間の電気抵抗が高くなり、素子部6で発電された電気を金属板2で集電し難くなる。第1中間層9がCrを含み、さらにCrとは異なる第1の導電性粒子を含んでいると、第1中間層9の導電性が高くなり、素子部6で発電された電気を、Crとは異なる第1の導電性粒子を通じて金属板2で集電し易くなる。その結果、セル1の発電効率を高めることができる。なお、Crとは異なる第1の導電性粒子は、電気抵抗率が10Ω・m以下程度の粒子とする。
【0029】
Crとは異なる第1の導電性粒子の粒径は、第1中間層9の厚さt1より小さい。第1の導電性粒子の粒径は、例えば0.5μmより小さい。以下、Cr2O3とは異なる第1の導電性粒子を、単に第1の導電性粒子という場合もある。
【0030】
Crは、他の元素、たとえばTi、Mn等が固溶することで電気抵抗が小さくなる傾向がある。しかしながら、Cr中の電子の移動は、基本的にCr原子にトラップされた電子が原子間をホッピングすることで起こる。ホッピングにより移動する電子の量は、金属等において自由電子が流れる量と比べ非常に小さい。そのため、Crに他の元素が固溶しても金属等のような導電性を示すほどではない。さらに、Crの電気抵抗は固溶する元素の種類、量により、また周囲の雰囲気、例えば酸素分圧などにより変動し、安定した特性を得られない。
【0031】
本開示の第1中間層9には、Crとは異なる第1の導電性粒子が含まれている。第1中間層9中に、Crとは異なる第1の導電性粒子が分散していると、第1の導電性粒子自体の導電率により電気抵抗が小さくなり、また、第1の導電性粒子同士の接触により1中間層9中に電流経路が形成され、電流が流れやすくなる。さらに、第1の導電性粒子同士が接触していなくても、第1の導電性粒子間のCrにかかる電界強度が大きくなり、電流が流れやすくなると考えられる。そのため、Crに他の元素が固溶した場合より、第1の導電性粒子が分散している場合の方が、第1中間層9全体として電気抵抗が小さくなり、導電性が高くなる。特に、自由電子を有する金属を第1の導電粒子として用いることで、第1中間層9全体の導電性をより高めることができる。第1中間層9において、第1中間層9中のCrには、上記のTi、Mn等のような他の元素が固溶していてもよい。
【0032】
第1の導電性粒子は、その周囲を第1中間層9に覆われていてもよい。すなわち、第1の導電性粒子は第1中間層9の内部にあり、第1中間層9から露出していなくてもよい。第1の導電性粒子が第1中間層9、すなわち第1中間層中のCrに覆われていると、例えば第1の導電性粒子の導電率が、第1の導電性粒子が接する雰囲気の違いにより変動するとしても、第1中間層9の周囲の雰囲気の違いが第1の導電性粒子に及ぼす影響が小さくなる。その結果、第1の導電性粒子の導電性が変動し難くなる。周囲の雰囲気の違いとは、たとえば第1中間層9に接する燃料ガスの濃度の違いである。
【0033】
なお、金属板2と第1電極層3とが直接接合したセルは、金属板2と第1電極層3との間に酸化膜の不働態層または第1中間層9を有するセル1よりも、金属板2と第1電極層3との間の電気抵抗が低い。しかし、このようなセルは金属板2が不働態層を有さないため、耐食性が低くなる懸念がある。
【0034】
第1中間層9は、第1中間層9に含まれる元素を酸化物換算した全量に対し、Crを例えば50モル%以上、95モル%以下、第1の導電性粒子を例えば酸化物換算で5モル%より多く、50モル%未満含んでいてもよい。また、第1中間層9は、第1の導電性粒子を3体積%以上、40体積%以下程度含んでいてもよい。第1中間層9の組成を測定する方法は後述する。
【0035】
第1中間層9は、Cr及び第1の導電性粒子以外にも、マンガン(Mn)及びアルミニウム(Al)のうち少なくともいずれかの元素を含んでいてもよい。例えば、第1中間層9がMnを含有する場合、MnはCrとMnとの複合酸化物であるスピネル型結晶であるMnCrを形成していてもよい。Mn及びAlは、金属板2に含まれていてもよい。
【0036】
第1の導電性粒子は、例えば金属または合金の粒子、導電性酸化物の粒子等であってもよい。第1の導電性粒子は、例えばNi、Cu、Co、Fe、及びTi等の金属または合金を含んでいてもよい。Ni、Cu、Co、Fe、及びTi等の金属または合金は10-6Ωm程度以下の電気抵抗率を有し、高い導電率を示す。また、第1の導電性粒子は、ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO系酸化物)、ランタンストロンチウムチタン系のペロブスカイト型酸化物(LaSrTiO系酸化物)を含んでいてもよい。これらのペロブスカイト型酸化物は、10Ω・m程度以下の電気抵抗率を有し導電性を示すとともに、水素含有ガスなどの燃料ガス、及び空気等の酸素含有ガスと接触しても、還元も酸化もされない。これらの金属または合金、及びペロブスカイト型酸化物は、高温でも安定して存在するとともに、高い導電性を有しており、素子部6で発電された電気を、金属板2で集電しやすくなる。
【0037】
特に金属Niは、高い導電性を有しているだけでなく、雰囲気の違いにより導電率が変動し難い。そのため、金属Niは、高温の反応雰囲気中でも高い導電性を維持できる。したがって、金属Niは、周囲の雰囲気、例えば燃料ガスの濃度が変動しても、安定した導電性を維持できる。また、Niは燃料極である第1電極層3に含まれており、第1中間層9がNiを含む第1の導電性粒子を含むことで、第1中間層9と第1電極層3との接合性を高めることができる。
【0038】
セル1は、図5に示すように、第1中間層9と第1電極層3との間に、さらに多孔質の第2中間層11を有していてもよい。第2中間層11は、同じくガス透過性及び導電性を有する。第2中間層11は、例えば30%以上、特に35%以上、50%以下の範囲の開気孔率を有していてもよい。金属板2が貫通孔10を有する場合、貫通孔10は図6に示すように第2中間層11を厚さ方向に貫通していてもよいし、図7に示すように第2中間層11を貫通していなくてもよい。
【0039】
第2中間層11は、第1中間層9より厚くてもよい。第2中間層11の厚さt2は例えば10μm以上、200μm以下であってもよい。図5~7に示すように、第2中間層11の厚さt2とは、第1中間層9と第1電極層3との間に位置する第2中間層11の厚さであり、第1中間層9と第1電極層3との距離といってもよい。第2中間層11の厚さt2が第1中間層9の厚さt1より大きいと、第1中間層9に含まれるCrが第1電極層3に拡散し難くなる。
【0040】
なお、第2中間層11が上記の開気孔率、すなわち30%以上の開気孔率を有する場合、第2中間層11は貫通孔10の少なくとも一部に充填されていてもよい。すなわち、図7に示す貫通孔10の上部に位置する第2中間層11の厚さが、t2より大きくてもよい。図7に示す貫通孔10の上部に位置する第2中間層11の厚さは、t2より小さくてもよい。
【0041】
第2中間層11は、第2の導電性粒子を含んでいてもよい。第2中間層11が第2の導電性粒子を含むことで、素子部6で発電された電気を、金属板2で集電しやすくなる。第2中間層11に含まれる第2の導電性粒子は、上述のような金属または合金の粒子、導電性酸化物の粒子等であってもよい。第2中間層11に含まれる第2の導電性粒子の材料は、上述した第1中間層9に含まれる第1の導電性粒子と同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0042】
第2中間層11に含まれる第2の導電性粒子は、還元状態で導電性を有する金属元素を含んでいてもよい。還元状態で導電性を有する金属元素とは、例えばNi、Cu、Co及びZn等である。第1電極層3が燃料極であると、多孔質の第2中間層11は、還元性の水素含有ガス等の燃料ガスと高温で接触する。第2中間層11は多孔質で表面積が大きいため、第2中間層11に含まれる第2の導電性粒子が還元雰囲気下で還元されやすい。第2中間層11に含まれる第2の導電性粒子が還元状態で導電性を有する金属元素を含むことで、第2中間層11は、還元雰囲気下でも高い導電率を有することができ、素子部6で発電された電気を、金属板2で集電しやすくなる。
【0043】
なお、多孔質の第1中間層9に含まれる第1の導電性粒子もまた、還元状態で導電性を有する金属元素を含んでいてもよい。緻密な第1中間層9は、第1の導電性粒子として酸化物を含んでいてもよい。緻密な第1中間層9は表面積が小さいため、還元雰囲気下において、第1中間層9に含まれる酸化物の第1の導電性粒子が還元されにくい。
【0044】
第2中間層11は、さらに無機酸化物を含んでいてもよい。第2中間層11に含まれる無機酸化物としては、例えばTi、Zr、Al、Si、Mg、Ca、Sr及びBa等の酸化物、及びY、Yb、Ce、Gd等の希土類酸化物が挙げられる。第2中間層11に含まれる無機酸化物は、例えば安定化ジルコニア、希土類酸化物、ABO型のペロブスカイト型酸化物、または酸化チタンであってもよい。なお、希土類酸化物は酸化イットリウム(Y)を含む。
【0045】
第1電極層3が燃料極であった場合、第2中間層11は燃料極に含まれる安定化ジルコニアまたは希土類酸化物を含んでいてもよい。第1電極層3が空気極であった場合、第2中間層11は空気極に含まれる導電性のABO型のペロブスカイト型酸化物を含んでいてもよい。第2中間層11が第1電極層3に含まれる無機酸化物と同じ無機酸化物を含むことにより、第1電極層3と金属板2との接着強度を大きくすることができる。
【0046】
第2中間層11は、Ti、Al、及びSiのうち少なくともいずれか1種の無機酸化物を含んでいてもよい。第2中間層11がTi、Al、及びSiの無機酸化物を含んでいると、第2中間層11に含まれる第2の導電性粒子の成分が第1中間層9に固溶または拡散しやすくなり、第1中間層9に含まれる第1の導電性粒子の比率がより大きくなり、第1中間層9の導電性をより高くすることができる。
【0047】
第2中間層11が第2の導電性粒子及び無機酸化物を含む場合、第2中間層11に含まれる元素を酸化物換算した全量に対し、第2の導電性粒子の比率は例えば40モル%以上、80モル%以下であってもよく、無機酸化物の比率は例えば20モル%より大きく、60モル%未満であってもよい。
【0048】
金属板2は、第1面2a及び第2面2bの少なくともいずれかに凹部または凸部を有していてもよい。図8は、第1面2aに凹部を有する金属板2を備えたセル1の例の1つを示している。図8の上側の図はセル1の横断面図であり、下側の図は金属板2の第1面2aの平面図である。図8に示すように、金属板2が第1面2aに凹部を有する場合、凹部は第1電極層3と接していなくてもよい。すなわち、金属板2は、第1面2aの凹部と第1電極層3との間に空隙を有していてもよい。この場合、第1面2aの凹部と第1電極層3との間の空隙をガス流路7としてもよい。図8に示すセル1では、金属板2が、流路部材8を兼ねており、金属板2は第1面2aと第2面2bとの間でガス透過性を有していなくてもよい。
【0049】
図9は、第1面2aに凸部を有する金属板2を備えたセル1の例の1つを示している。図9の上側の図はセル1の横断面図であり、下側の図は金属板2の第1面2aの平面図である。図9に示すように、金属板2が第1面2aに凸部を有する場合、凸部のみが第1電極層3と接していてもよい。このようなセル1は、金属板2の第1面2aの凸部以外の部分と第1電極層3との間に空隙を有しており、この空隙をガス流路7としてもよい。図9に示すセル1でも、金属板2が、流路部材8を兼ねており、金属板2は第1面2aと第2面2bとの間でガス透過性を有していなくてもよい。
【0050】
金属板2は、図10に示すように第1面2a及び第2面2bの両方に凹凸を有していてもよい。図10の上側の図はセル1の横断面図であり、下側の図は金属板2の第1面2aの平面図である。図10に示すように、金属板2は、第1面2aの凸部が第1電極層3と接していてもよい。このようなセル1は、金属板2の第1面2aの凹部と第1電極層3との間に空隙を有しており、この空隙をガス流路7としてもよい。図10に示すセル1でも、金属板2が、流路部材8を兼ねており、金属板2は第1面2aと第2面2bとの間でガス透過性を有していなくてもよい。
【0051】
図8~10に示すセル1も、第1面2aと第1電極層3との間に上述の第1中間層9を有している。図8図10に示すセル1は、さらに第2中間層11を有していてもよい。
【0052】
(評価方法)
第1中間層9及び第2中間層11の有無は、例えば、セル1の横断面を走査型電子顕微鏡(SEM)、走査透過電子顕微鏡(STEM)、または透過型電子顕微鏡(TEM)などで観察することで確認できる。第1中間層9及び第2中間層11に含まれる元素及びその含有比率は、例えば波長分散型X線分光(WDS)、エネルギー分散型X線分光(EDS)、または電子線マイクロアナライザ(EPMA)などで分析できる。得られた元素分析結果から、Cr、第1又は第2の導電性粒子、及び無機酸化物の酸化物換算したモル比率を算出することができる。また、必要に応じ、セル1から第1中間層9または第2中間層11を切り出し、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光などの元素分析を行ってもよい。
【0053】
第1中間層9に含まれる第1の導電性粒子、又は第2中間層11に含まれる第2の導電性粒子の体積比率は、算出したCr、第1又は第2の導電性粒子、及び無機酸化物のモル比率をもとに算出すればよい。また、第1中間層9に含まれる第1の導電性粒子の体積比率は、例えば第1中間層9の断面の元素マッピングを行い、第1の導電性粒子に含まれる元素の面積占有率を画像解析により算出し、それを体積比率に換算して求めてもよい。また、第2中間層11の断面の元素マッピング画像を画像解析し、第2中間層11に含まれる第2の導電性粒子の体積比率を求めてもよい。
【0054】
(セルの製法)
第1電極層3を燃料極とした場合の、第1中間層9を備えたセル1の製法について説明する。金属板2として、Crを含むステンレス合金等の基材を準備する。基材は、合金板または合金箔でもよい。ガス透過性を有する金属板2とする場合、基材は、貫通孔10を有する合金板または合金箔でもよいし、金属粉末の多孔質焼結体でもよい。また、Ni及び/またはNiOと安定化ジルコニアを含む燃料極と、固体電解質層4となる安定化ジルコニアとの積層体を準備する。
【0055】
燃料極と固体電解質層4との積層体は、以下のような方法で作製してもよい。有機溶剤に、Ni又はNiOの粉末、及び安定化ジルコニアの粉末を混合したスラリーにバインダーを加えてシート成形し、燃料極のシート成形体を得る。有機溶剤に安定化ジルコニアの粉末を混合したスラリーにバインダーを加え、燃料極のシート成形体上にシート成形して、積層成形体を得る。得られた積層成形体を焼成し、燃料極と固体電解質層4との積層体を得る。
【0056】
基材と、燃料極すなわち第1電極層3及び固体電解質層4の積層体とを、接着材で接合する。接着材として、Ni、NiO、Cu、Co及びZnのうち少なくともいずれかの導電性粒子と、無機酸化物としてTi、Zr、Al、Si、Mg、Ca、Sr及びBa等の酸化物、及びY、Yb等の希土類酸化物のうち少なくともいずれかと、を含むペーストを用いる。接着材は、導電性粒子を1種類だけでなく2種類以上含んでいてもよいし、無機酸化物を1種類だけでなく2種類以上含んでいてもよい。また、無機酸化物は2種以上の元素の複合酸化物でもよい。
【0057】
基材の第1面2aに接着材を塗布し、基材の接着材を塗布した第1面2aと、積層体の第1電極層3の面とを貼り合わせる。貼り合わせた基材と積層体とを、窒素雰囲気中または空気中で、例えば1000℃~1200℃の範囲で、0.5時間~2時間熱処理する。熱処理後の基材と第1電極層3との間には、Ni、Cu、Co及びZn等の第1の導電性粒子が分散したCr膜が形成される。
【0058】
なお、還元雰囲気中で熱処理を行うと、燃料極を構成する酸化物が還元され、燃料極に含まれる材料の粒子が成長しやすくなる、その結果、燃料極の焼結が進んで燃料極と燃料ガスとが反応し難くなる場合があり、燃料極の電気抵抗が増大する場合がある。
【0059】
接着材に含まれる無機酸化物の種類、接着材の塗布厚さ、及び熱処理条件等により、基材と第1電極層3との間に第2中間層11が形成される場合もある。接着材の構成成分が基材または第1電極層3に拡散し、明確な第2中間層11が形成されない場合もある。例えば、接着材の塗布厚さが10μm以上の場合、又は熱処理時間が短い場合は、接着材の構成成分が基材または第1電極層3に拡散せず界面に残留し易く、第2中間層11が形成され易い。また、接着材の塗布厚さが1μm未満の場合、又は熱処理時間が長い場合は、接着材の構成成分の大半が基材または第1電極層3に拡散して界面に残留し難く、明確な第2中間層11が形成され難い。
【0060】
接着材が酸化チタン(チタニア)を含むと、接着材の融点が低下して接着材が焼結し易くなり、導電性粒子の成分が第1中間層9及び第1電極層3に固溶及び拡散し易くなる。さらに、Ti元素が第1中間層9の酸化クロムに固溶し、第1中間層9の導電性をより高くすることができる。
【0061】
また、接着材がチタニア、酸化アルミニウム(アルミナ)及び酸化ケイ素(シリカ)のいずれかを含むと、接着材層すなわち第2中間層11の熱膨張率が小さくなる。第1電極層3が燃料極である場合は、第2中間層11の熱膨張率と、金属板2の熱膨張率及び第1電極層3の熱膨張率との差が小さくなり、第2中間層11と、金属板2及び第1電極層3とが剥離し難くなる。また、これらの無機酸化物により、接着材に含まれる導電性粒子の成分が基材表面の第1中間層9となる酸化クロム層に移動し易くなる。
【0062】
接着材がNi/NiO、酸化チタン(チタニア)及び酸化イットリウムを同時に含むと、Ni/NiO及び酸化チタン(チタニア)と酸化イットリウムとが反応してYTi又はNiOが固溶したYTi等の複合酸化物を形成する。この複合酸化物の結晶相は還元雰囲気に対し安定であり、雰囲気により結晶構造が変化し難く、結晶の相変態に伴う体積変化による破壊が生じ難い。
【0063】
接着材で接合された基材及び積層体の、固体電解質層4の表面に、第2電極層5である空気極を形成することで、本開示のセル1を得ることができる。空気極は、例えば有機溶剤に導電性のABO型のペロブスカイト型酸化物の粉末を混合したスラリーにバインダーを加え、固体電解質層4の表面上に印刷した後、基材及び積層体とともに酸化雰囲気中で1000℃~1200℃で焼成してもよい。
【0064】
上述の製法の例では、第1電極層3及び固体電解質層4の積層体をあらかじめ作製した後に、積層体を基板に接合したが、第1電極層3と固体電解質層4との積層体をあらかじめ作製せずに、金属板2上に第1電極層3及び固体電解質層4を順次形成してもよい。例えば、接着材を塗布した金属板2上に第1電極層3となるシート成形体を貼り合わせ、このシート成形体上にさらに固体電解質層4となるシートを成形した後、焼成してもよい。接着材で貼り合わせた金属板2と第1電極層3とを焼成した後、焼成した第1電極層3の表面に、例えばPVD等の真空成膜法により固体電解質層4を形成してもよい。
【0065】
(セルスタック装置)
セルスタック装置20は、図11に示すように複数のセル1が配列されたセルスタック21とガスタンク22とを備えている。セル1の下端部は、ガスタンク22の開口部に接合され固定されている。ガスタンク22は、複数のセル1に燃料ガスを供給する。
【0066】
セルスタック21は、セル1の厚み方向に配列または積層された複数のセル1と、隣り合うセル1同士を電気的に直列に接続する導電部材23aと、を備えている。セル1は上述の第1中間層9を有するセル1である。複数のセル1が配列された方向を、配列方向xという。
【0067】
導電部材23aは、セルスタック21の配列方向xの両端にも配置されていてもよい。導電部材23aは、導電性の接着材でセル1に接合されていてもよい。導電部材23aの材料は、弾性を有する金属または合金を用いてもよいし、金属繊維または合金繊維のフェルトを用いてもよい。金属繊維または合金繊維のフェルトは、必要に応じ表面処理されていてもよい。
【0068】
セルスタック装置20は、図11に示すように、セルスタック21の配列方向xの外側に、端部導電部材23bを備えている。端部導電部材23bは、配列方向xの最も外側に位置するセル1に電気的に接続されている。端部導電部材23bは、配列方向xの外側に突出する引出部23cを有している。引出部23cは、セル1が発電した電気を集電して外部に引き出す。
【0069】
図12図11の破線部を拡大した横断面図である。セル1の下端部は、図12示すようにガスタンク22の開口部にシール材Sで固定されている。セル1のガス流路7は、ガスタンク22の図示しない燃料ガス室に通じている。シール材Sの材料は、例えば耐熱性に優れたガラス等でもよい。
【0070】
導電部材23a及び端部導電部材23bの下端部は、シール材Sでガスタンク22に固定されていてもよい。端部導電部材23bはセルスタック21と一体化していてもよい。
【0071】
(モジュール)
図13は、セルスタック装置を備えるモジュールの例の1つを示す外観斜視図である。
【0072】
モジュール30は、直方体状の収容容器31、及び収容容器31の内部に収容された上述のセルスタック装置20を備えている。セルスタック21の上方には、改質器32が配置されている。改質器32は、ガス流通管33によりガスタンク22と接続されている。改質器32は、原燃料供給管34から供給される天然ガス、灯油等の原燃料を改質して燃料ガスを生成する。ガス流通管33は、改質器32で改質された燃料ガスをガスタンク22に供給する。燃料ガスは、ガスタンク22からセル1のガス流路7に供給される。
【0073】
図13では、収容容器31の一部である前面部及び後面部を取り外し、収容容器31の内部に収容されているセルスタック装置20を後方に取り出した状態を示している。図13に示したモジュール30は、セルスタック装置20を、収容容器31内にスライドして収容することが可能である。セルスタック装置20は、改質器32を含まなくてもよい。
【0074】
収容容器31は、内部に酸素含有ガス導入部材35を備えている。図13の酸素含有ガス導入部材35は、収容容器31にセルスタック装置20を収容した状態で、2つのセルスタック21の間に配置されている。酸素含有ガス導入部材35は、セル1の下端部に酸素含有ガスを供給する。酸素含有ガスは、酸素含有ガス導入部材35により、燃料ガスの流れに合わせてセル1の側方を下端部から上端部に向けて流れる。セル1のガス流路7からセル1の上端部に排出された燃料ガスは、酸素含有ガスと混合され、燃焼する。セル1の上端部で排出された燃料ガスが燃焼することで、セル1の温度が上昇し、セルスタック装置20の起動を早めることができる。また、セル1の上端部で燃料ガスが燃焼することで、セル1の上方に配置された改質器32が温められ、改質器32で効率よく改質反応を行うことができる。
【0075】
(モジュール収容装置)
図14は、モジュール収容装置の一例を示す分解斜視図である。なお、図14においては一部の構成を省略して示している。モジュール収容装置は、外装ケースと、外装ケース内に収容されたモジュール及びモジュールを運転する補機とを備えている。
【0076】
図14に示すモジュール収容装置40は、支柱41と外装板42を有する。仕切板43は、外装ケース内を上下に区画している。外装ケース内の仕切板43より上側の空間は、モジュール30を収容するモジュール収容室44であり、外装ケース内の仕切板43より下側の空間は、モジュール30を運転する補機を収容する補機収容室45である。なお、補機収容室45に収容する補機の記載は省略した。
【0077】
仕切板43は、補機収容室45の空気をモジュール収容室44側に流すための空気流通口46を有している。モジュール収容室44を形成する外装板42の一部は、モジュール収容室44内の空気を排気するための排気口47を有している。モジュール収容室44内の空気は、排気口47から排気される。
【0078】
モジュール収容装置40は、上述のモジュール30をモジュール収容室44内に備えているため、発電効率の高いモジュール収容装置40とすることができる。
【0079】
以上、本開示について詳細に説明したが、本開示は上述の実施の形態に限定されない。本開示のセル、セルスタック装置、モジュール及びモジュール収容装置は、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
【0080】
例えば、上述したセルスタック装置20においては、セル1内のガス流路7に燃料ガスを供給し、セル1の外側に酸素含有ガスを供給する例を示しているが、ガス流路7に酸素含有ガスを供給し、セル1の外側に燃料ガスを供給してもよい。
【0081】
また、上記の説明では、「セル」、「セルスタック装置」、「モジュール」及び「モジュール収容装置」の例の1つとして燃料電池セル、燃料電池セルスタック装置、燃料電池モジュール及び燃料電池装置を示したが、他の例としてはそれぞれ、電解セル、電解セルスタック装置、電解モジュール及び電解装置であってもよい。
【実施例0082】
Crを含む厚さ0.3mmのステンレス合金板に、直径0.3mmの貫通孔を81個/cm形成した基板を準備した。また、NiOと安定化ジルコニアとの混合物である燃料極と、安定化ジルコニアの固体電解質層との積層体を準備した。燃料極は、NiOを60質量%、及び安定化ジルコニアを40質量%含有している。燃料極及び固体電解質層の安定化ジルコニアは、Yにして8mol%のイットリウムを含有している。積層体は、大気中、最高温度1400℃で2時間焼成して一体化した。
【0083】
接着材として、燃料極の安定化ジルコニアに替えてTiO粉末及びY粉末を加えた材料、すなわちNiO、TiO及びYを含む材料Aを準備した。材料Aの組成は、NiOを65質量%、TiOを10質量%、Yを25質量%とした。
【0084】
材料Aのペーストを作製し、ステンレス合金である基板の表面に塗布した。接着材の塗布厚みは50μmとした。基板の接着材を塗布した面と、積層体の燃料極の面を貼り合わせたのち、大気中、最高温度1050℃で2時間の熱処理を行い、基板と燃料極とを接合し、接合体を得た。
【0085】
得られた接合体の電気抵抗率を、以下のように測定した。固体電解質層上にLaSrCoOを焼付けて直径10mmの電極とした。この電極と対向する基材の面、すなわち発電素子を有さない面に白金のメッシュを貼り付け、対極とした。電気抵抗率は、交流4端子法により測定した。
【0086】
また、比較例として、接着材を塗布せずに同じ条件で熱処理した基板の電気抵抗率を測定した。比較例の電気抵抗率が7.06Ω・mであったのに対し、材料Aを用いた接合体の第1中間層及び第2中間層を合わせた中間層全体の電気抵抗率は、0.047Ω・mであった。
【0087】
比較例及び材料Aを用いた接合体の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で確認した。各試料の断面の元素分析は、エネルギー分散型X線分光(EDS)を用いて行った。SEMの反射電子像において、比較例の基板の表面には、金属とはコントラストが異なる緻密な酸化クロム層が形成されており、その酸化クロム層には他の元素を含む粒子すなわち第1の導電性粒子は検出されなかった。材料Aまたは材料Bを用いた接合体はいずれも基材と燃料極との間に、酸化クロムと、Niを含む第1の導電性粒子とを含む第1中間層、及び多孔質でNiを含む第2の導電性粒子と、ジルコニア、TiO、Y等の無機酸化物を含む第2中間層を有していた。
【0088】
材料Aを用いた接合体の第1中間層は、平均厚さ6μmで、酸化クロムを80モル%、Ni及びTiを酸化物換算で合わせて20モル%含んでいた。第2中間層は平均厚さ50μm、開気孔率40%で、Ti及びYを酸化物換算で合わせて30モル%、Niを酸化物換算で70モル%含んでいた。
【符号の説明】
【0089】
1:セル
2:金属板
3:第1電極層
4:固体電解質層
5:第2電極層
6:素子部
7:ガス流路
8:流路部材
9:第1中間層
10:貫通孔
11:第2中間層
20:セルスタック装置
21:セルスタック
22:ガスタンク
30:モジュール
31:収容容器
32:改質器
33:ガス流通管
40:モジュール収容装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14