(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093462
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】哺乳動物細胞を用いたヘテロ多量体タンパク質の生成
(51)【国際特許分類】
C12P 21/02 20060101AFI20230627BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230627BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230627BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230627BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230627BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230627BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20230627BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20230627BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230627BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
C12P21/02 C
C07K16/46
C12N5/10
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C07K16/18
A61K38/02
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P43/00 105
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023049371
(22)【出願日】2023-03-27
(62)【分割の表示】P 2020099020の分割
【原出願日】2015-05-06
(31)【優先権主張番号】61/989,509
(32)【優先日】2014-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.NONIDET
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シーア, ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】シャッツ, ホイットニー
(72)【発明者】
【氏名】ウン, ドミンゴス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数の標的に対する特異的結合能を有する抗体及び他の多量体タンパク質複合体(ヘテロ多量体タンパク質)の効率的な生成方法を提供する。
【解決手段】第1の軽鎖に結合した、第1のヘテロ二量体化ドメインを有する第1のヒンジ含有ポリペプチド、及び第2の軽鎖に結合した、第2のヘテロ二量体化ドメインを有する第2のヒンジ含有ポリペプチドを含むヘテロ多量体タンパク質の調製方法であって、第2のヘテロ二量体化ドメインは第1のヘテロ二量体化ドメインと接触面において相互作用し、第1及び第2のヒンジ含有ポリペプチドは少なくとも一つの鎖間ジスルフィド結合により結合しており、生成方法は、第1のヒンジ含有ポリペプチド及び第1の軽鎖を発現することのできる第1の宿主細胞を培養する工程;同様に第2の宿主細胞を培養する工程;並びに第1、第2の宿主細胞の混合培養培地を、両宿主細胞の細胞膜を破壊することなく得る工程を含む。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)第1の軽鎖に結合した、第1のヘテロ二量体化ドメインを有する第1のヒンジ含有ポリペプチド、及びii)第2の軽鎖に結合した、第2のヘテロ二量体化ドメインを有する第2のヒンジ含有ポリペプチドを含むヘテロ多量体タンパク質の調製方法であって、第2のヘテロ二量体化ドメインは第1のヘテロ二量体化ドメインと接触面において相互作用し、第1及び第2のヒンジ含有ポリペプチドは少なくとも一つの鎖間ジスルフィド結合により結合しており、当該方法は、
(a)第1のヒンジ含有ポリペプチド及び第1の軽鎖を発現することのできる第1の宿主細胞を培養する工程;
(b)第2のヒンジ含有ポリペプチド及び第2の軽鎖を発現することのできる第2の宿主細胞を培養する工程;並びに
(c)第1の宿主細胞と第2の宿主細胞の混合培養培地を、第1及び第2の宿主細胞の細胞膜を破壊することなく得る工程
を含み、ここで混合培養培地はヘテロ多量体タンパク質を含み、第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞がそれぞれ哺乳動物細胞である、方法。
【請求項2】
i)第1の軽鎖に結合した、第1のヘテロ二量体化ドメインを有する第1のヒンジ含有ポリペプチド、及びii)第2の軽鎖に結合した、第2のヘテロ二量体化ドメインを有する第2のヒンジ含有ポリペプチドを含むヘテロ多量体タンパク質の調製方法であって、第2のヘテロ二量体化ドメインは第1のヘテロ二量体化ドメインと接触面において相互作用し、第1及び第2のヒンジ含有ポリペプチドは少なくとも一つの鎖間ジスルフィド結合により結合しており、当該方法は、
(a)第1のヒンジ含有ポリペプチド及び第1の軽鎖を発現することのできる第1の宿主細胞を培養する工程であって、二つの第1のヒンジ含有ポリペプチドと二つの第1の軽鎖を含む第1のホモ二量体が分泌される、第1の宿主細胞を培養する工程;
(b)第2のヒンジ含有ポリペプチド及び第2の軽鎖を発現することのできる第2の宿主細胞を培養する工程であって、二つの第2のヒンジ含有ポリペプチド及び二つの第2の軽鎖を含む第2のホモ二量体が分泌される、第2の宿主細胞を培養する工程;
(c)第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞の混合培養培地を、第1及び第2の宿主細胞の細胞膜を破壊することなく得る工程であって、混合培養培地が第1のホモ二量体及び第2のホモ二量体を含む、混合培養培地を得る工程;
(d)ヘテロ多量体タンパク質の形成を可能にするために十分な還元条件下において混合培養培地をインキュベートする工程;並びに
(e)ヘテロ多量体タンパク質を得る工程
を含み、ここで第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞がそれぞれ哺乳動物細胞である、方法。
【請求項3】
混合培養培地を得る工程が:
(1)第1の宿主細胞のための第1の培養培地を回収すること;
(2)第2の宿主細胞のための第2の培養培地を回収すること;及び
(3)第1の培養培地と第2の培養培地を混合して混合培養培地を得ること
を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
混合培養培地を得る工程が、第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞を含む混合細胞培養物の培養培地を回収することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞が、混合細胞培養物へと混合される前に別々に培養される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
混合細胞培養物を約25℃から約40℃の温度で培養する工程を更に含む、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
混合培養培地を撹拌することを更に含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
混合培養培地からヘテロ多量体タンパク質を単離することを更に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ヘテロ多量体タンパク質がプロテインAカラムを用いて単離される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第1及び第2の細胞培養培地が回収される前に又は後で、第1の細胞培養培地及び/又は第2の細胞培養培地に還元剤を加えることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
混合細胞培養物の培養培地が回収される前に、混合細胞培養物の培養培地に還元剤を加えることを含む、請求項4から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
還元剤が、回収する工程の約4から約24時間前に加えられる、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
還元剤が、回収する工程の約15時間前に加えられる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
混合細胞培養培地に還元剤を加えることを更に含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
還元剤を含む混合培養培地が約4時間から約7日間にわたって更にインキュベートされる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
還元剤を含む混合培養培地が約15時間にわたって更にインキュベートされる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
還元剤が、混合培養培地からヘテロ多量体タンパク質を単離する前に混合培養培地に加えられる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
還元剤を含む混合培養培地が、ヘテロ多量体タンパク質の単離に先立って少なくとも約24時間にわたってインキュベートされる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ヘテロ多量体タンパク質がプロテインAカラムを用いて単離される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
i)第1の軽鎖に結合した、第1のヘテロ二量体化ドメインを有する第1のヒンジ含有ポリペプチド、及びii)第2の軽鎖に結合した、第2のヘテロ二量体化ドメインを有する第2のヒンジ含有ポリペプチドを含むヘテロ多量体タンパク質の調製方法であって、第2のヘテロ二量体化ドメインは第1のヘテロ二量体化ドメインと接触面において相互作用し、第1及び第2のヒンジ含有ポリペプチドは少なくとも一つの鎖間ジスルフィド結合により結合しており、当該方法は、
(a)二つの第1のヒンジ含有ポリペプチド及びそれらの結合軽鎖を含む第1のホモ二量体を発現することのできる、第1の宿主細胞を培養する工程;
(b)二つの第2のヒンジ含有ポリペプチド及びそれらの結合軽鎖を含む第2のホモ二量体を発現することのできる、第2の宿主細胞を培養する工程;
(c)第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞の混合培養培地を得る工程;
(c)ヘテロ多量体タンパク質の形成を可能にするために十分な還元条件下において混合培養培地をインキュベートする工程;並びに
(d)ヘテロ多量体タンパク質を得る工程
を含む方法。
【請求項21】
還元剤が、グルタチオン、2-メルカプトエタノール、2-メルカプトエチルアミン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、システイン、システイン、ジチオスレイトール、システインジチオスレイトール、ジチオールブチルアミン、又はこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項14から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
還元剤がグルタチオンであり、グルタチオンが約5mMから約20mM以下の濃度で加えられる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
還元剤がグルタチオンであり、グルタチオンが約2mMから約10mMの濃度で加えられる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
還元剤がグルタチオンであり、グルタチオンが約5mMから約20mM未満の濃度で加えられる、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
還元剤がグルタチオンであり、グルタチオンが約15mMの濃度で加えられる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
第1の宿主細胞が安定な細胞株である、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
第2の宿主細胞が安定な細胞株である、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
第1の宿主細胞がCHO細胞である、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
第2の宿主細胞がCHO細胞である、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
第1の宿主細胞と第2の宿主細胞の比が、第1の宿主細胞培養物と第2の宿主細胞培養物が混合されて混合培養物が形成されるときに第1のヒンジ含有ポリペプチドと第2のヒンジ含有ポリペプチドのモル比が約1:10から約10:1となるように調節される、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
宿主細胞培養物と第2の宿主細胞培養物が混合されて混合培養物が形成されるときに第1の宿主細胞により発現される第1のヒンジ含有ポリペプチドと第2の宿主細胞により発現される第2のヒンジ含有ポリペプチドのモル比が約1:1である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ヒンジ含有ポリペプチドがFc領域又はその変異体を含む、請求項1から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
第1及び/又は第2のヒンジ含有ポリペプチドが抗体重鎖を含む、請求項1から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
第1のヘテロ二量体化ドメインが接触面にノブ修飾を含み、第2のヘテロ二量体化ドメインが接触面にホール修飾を含む、請求項1から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
ノブ修飾が、第1のヘテロ二量体化ドメイン由来の元のアミノ酸残基を、元のアミノ酸残基より大きな側鎖を有するアミノ酸残基で置換することを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
置換するアミノ酸残基が、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン及びアルギニンからなる群より選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
ホール修飾が、第2のヘテロ二量体化ドメイン由来の元のアミノ酸残基を、元のアミノ酸残基より小さな側鎖を有するアミノ酸残基で置換することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
置換するアミノ酸残基が、セリン、スレオニン、バリン、及びアラニンからなる群より選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
ノブ修飾が、T366Wの置換(EU番号付け)を含む、請求項34から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
ホール修飾が、T366S、L368A及びY407V(EU番号付け)からなる群より選択される二つ以上のアミノ酸の置換を含む、請求項34から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記鎖間ジスルフィド結合がヒンジ領域間にある、請求項1から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
ヘテロ多量体タンパク質が抗体である、請求項1から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
ヘテロ多量体タンパク質が二重特異性抗体である、請求項1から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記抗体がヒト化又はヒト抗体である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
抗体が完全長抗体である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
抗体が、ヒトCH2及び/又はCH3ドメインの少なくとも一部を含む抗体断片である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
抗体が、IgG、IgA及びIgDからなる群より選択される、請求項42から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
抗体がIgGである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
抗体がIgG1、IgG2又はIgG4である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
第1の軽鎖と第2の軽鎖が異なる可変ドメイン配列を含む、請求項1から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
i)第1の軽鎖に結合した、第1のヘテロ二量体化ドメインを有する第1のヒンジ含有ポリペプチド、及びii)第2の軽鎖に結合した、第2のヘテロ二量体化ドメインを有する第2のヒンジ含有ポリペプチドを含むヘテロ多量体タンパク質の調製方法であって、第2のヘテロ二量体化ドメインは第1のヘテロ二量体化ドメインと接触面において相互作用し、第1及び第2のヒンジ含有ポリペプチドは少なくとも一つの鎖間ジスルフィド結合により結合しており、当該方法は、
(a)第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞の混合培養物を培養する工程であって、第1の宿主細胞は、第1のヒンジ含有ポリペプチド及び第1の軽鎖を発現することができ、第2の宿主細胞は、第2のヒンジ含有ポリペプチド及び第2の軽鎖を発現することができ、第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞はそれぞれ哺乳動物細胞である、培養する工程;
(b)混合培養物に還元剤を加える工程;並びに
(c)細胞膜を破壊することなく、混合培養物から、ヘテロ多量体タンパク質を含む混合培養培地を回収する工程
を含む方法。
【請求項52】
第1の宿主細胞が、二つの第1のヒンジ含有ポリペプチド及び二つの第1の軽鎖を含む第1のホモ二量体を分泌し、第2の宿主細胞が、二つの第2のヒンジ含有ポリペプチド及び二つの第2の軽鎖を含む第2のホモ二量体を分泌する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
混合培養培地が、還元剤が加えられてから4時間から24時間後に回収される、請求項51又は52に記載の方法。
【請求項54】
混合培養培地を回収する工程が、第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞を混合培養培地から除去することを含む、請求項51から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
混合培養培地が4時間から7日間にわたってインキュベートされる、請求項51から54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
請求項1から55のいずれか一項に記載の方法で生成されたヘテロ多量体タンパク質。
【請求項57】
二重特異性抗体である、請求項56に記載のヘテロ多量体タンパク質。
【請求項58】
請求項56又は57に記載のヘテロ多量体タンパク質と薬学的に許容される担体とを含む組成物。
【請求項59】
請求項56又は57に記載のヘテロ多量体タンパク質の第1のヒンジ含有ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド又は組み換えベクターを含む宿主細胞であって、ヘテロ多量体タンパク質の第2のヒンジ含有ポリペプチドを発現しない宿主細胞。
【請求項60】
ヒンジ含有ポリペプチドが抗体重鎖である、請求項59に記載の宿主細胞。
【請求項61】
ヒンジ含有ポリペプチドが抗体軽鎖と対になっている、請求項59又は60に記載の宿主細胞。
【請求項62】
安定な細胞株である、請求項59から61のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項63】
哺乳動物細胞である、請求項59から62のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項64】
CHO細胞である、請求項59から63のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年5月6日出願の米国仮出願第61/989509号の優先権の利益を主張し、この出願はその全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、ヘテロ多量体タンパク質の生成方法に関する。
【背景技術】
【0003】
IgG型のモノクローナル抗体は、二つの同一な抗原結合アームと定常ドメイン(Fc)とを含む。結合アーム内に異なる特異性を有する抗体は、通常、天然には存在せず、したがって化学的エンジニアリング(例えば、化学的架橋など)、組み換えDNA及び/又は細胞融合技術の助けにより作り出さなくてはならない。
【0004】
二重特異性抗体は、同時に二つの異なる抗原に結合することができる。この特性により、従来のモノクローナル抗体では可能でなかった治療戦略の開発が可能となる。開発された想像の二重特異性抗体のフォーマットの大きなパネルは、このような分子に対する強い興味を反映している。Berg J, Lotscher E, Steimer KS, et al., "Bispecific antibodies that mediate killing of cells infected with human immunodeficiency virus of any strain,” Proc Natl Acad Sci USA (1991) 88(11): 4723-4727 and Fischer N and Leger O., "Biospecific antibodies: Molecules That Enable Novel Therapeutic Strategies,” Pathobiology (2007) 74:3-14参照。
【0005】
多重特異性分子の別の分類は、組み換え融合タンパク質である。免疫調節タンパク質の細胞外ドメイン及び免疫グロブリン(Ig)の定常(Fc)ドメインからなる組み換え融合タンパク質は、ヒト治療薬の成長分野である。イムノアドヘシンは、タンパク質配列の結合領域を、所望の特異性で、抗体のエフェクタードメインと組み合わせる。イムノアドヘシンは、その治療剤としての可能性にとって意味を持つ二つの重要な特性を有しており、それは即ち標的特異性と薬物動態学的安定性(抗体の半減期に相当するインビボでの半減期)。イムノアドヘシンは、有害な相互作用を阻害又はブロックするアンタゴニストとして、又は生理的応答を模倣又は増強するアゴニストとして使用することができる。Chamow SM, Zhang DZ, Tan XY, et al., "A humanized, bispecific immunoadhesin-antibody that retargets CD3+ effectors to kill HIV-1-infected cells,” J Hematother 1995; 4(5): 439-446参照。
【0006】
他の多重特異性分子が他で議論された。例には、限定されないが、以下が含まれる:Fisher et al., Pathobiology (2007) 74:3-14(様々な二重特異性フォーマットの概説);2003年12月9日発行のFeigeらによる米国特許第6660843号(ペプチボディ);2002年1月10日発行の米国特許出願公開第2002-004587号(多重特異性抗体);2009年11月3日発行のWuらによる米国特許第7612181号(二重可変ドメインフォーマット);Nord Kらによる米国特許第6534628号、Prot Eng (1995) 8:601-608, Nord K et al., Nat Biotech (1997) 15:772-777, 及び Gronwall et al., Biotechnol Appl Biochem. (2008) Jun;50(Pt 2):97-112(アフィボディ);Martens et al., Clin Cancer Res (2006), 12: 6144-6152 and Jin et al., Cancer Res (2008) 68(11):4360-4368(1アーム抗体);Bostrom et al., Science (2009) 323:1610-1614(二相作用Fab、aka混合原子価抗体)。他のフォーマットが当業者に既知である。
【0007】
臨床グレードの材料の製造は、上記多重特異性分子にとって依然として困難である。上述のように、混合型結合アーム、即ち互いに同一でない結合アームを有する分子の生成には多数の経路が存在する。これら方法の各々は、その欠点を有している。
【0008】
化学的架橋は、関連の種をホモ二量体及び他の望ましくない副産物から精製することが必要であるため、多大な労力を要する。加えて、化学修飾工程により、タンパク質の一体性が変化することがあるために、不安定性を招きうる。したがって、この方法はしばしば非効率的であり、抗体活性の損失を招きうる。
【0009】
細胞融合技術(例えば、ハイブリッドハイブリドーマ)は、ランダムに集まって10の抗体の組み合わせを生じさせる二つの重鎖と二つの軽鎖を発現する。所望のヘテロ多量体抗体は、このように生成された抗体のごく一部にすぎない。所望のヘテロ多量体タンパク質の精製により、劇的に生成収率が低下し、製造コストが上昇する。
【0010】
組み換えDNA技術は、様々なヘテロ多量体フォーマット、例えば、Fcドメインを含まない単鎖Fv、ダイアボディなどを精製するために使用されてきた。この種の抗体分子の大きな欠点は、Fcドメインの欠如と、それによるエフェクター機能(例えば、補体活性化、Fc-受容体結合など)をトリガーする抗体能力の欠如である。したがって、機能的なFcドメインを含む二重特異性抗体が望まれている。
【0011】
組み換えDNA技術はまた、「ノブ・イントゥー・ホール」二重特異性抗体を精製するために使用されてきた。米国特許出願公開第20030078385号(Arathoonら-本出願人)参照。この戦略の制約は、同じ細胞内に発現されることに起因する望ましくない分子及び/又は不活性分子のペアリングミス及び形成を防止するためには、二つの親抗体の軽鎖が同一でなければならないことである。
【0012】
したがって、ヘテロ多量体タンパク質の代替的な生成方法が依然として必要とされている。本明細書に記載される発明は、そのような方法を提供する。本発明のこれら及びその他の態様は、本明細書に提供される本発明の記載内容から明らかになるであろう。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、当技術分野において既知の方法を凌駕する、哺乳動物細胞において多重特異性免疫グロブリン複合体(例えば、多重特異性抗体)及びその他の多量体タンパク質(本明細書では集約的にヘテロ多量体タンパク質という)を生成する効率的且つ新規の方法を提供する。国際公開第2013/055958号及び国際公開第2011/133886号参照。
【0014】
したがって、第1の態様で提供されるのは、i)第1の軽鎖に結合した、第1のヘテロ二量体化ドメインを有する第1のヒンジ含有ポリペプチドと、ii)第2の軽鎖に結合した、第2のヘテロ二量体化ドメインを有する第2のヒンジ含有ポリペプチドとを含むヘテロ多量体タンパク質の調製方法であり、この場合、第2のヘテロ二量体化ドメインは第1のヘテロ二量体化ドメインと接触面において相互作用し、第1及び第2のヒンジ含有ポリペプチドは少なくとも一つの鎖間ジスルフィド結合によりリンクしており、この方法は:
(a)第1のヒンジ含有ポリペプチド及び第1の軽鎖を発現することのできる第1の宿主細胞を培養する工程;
(B)第2のヒンジ含有ポリペプチド及び第2の軽鎖を発現することのできる第2の宿主細胞を培養する工程;及び
(c)第1の宿主細胞と第2の宿主細胞の混合培養培地を得る工程
を含み、ここで第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞がそれぞれ哺乳動物細胞である。特定の実施態様では、混合培養培地は、第1及び第2の宿主細胞の細胞膜を破壊することなく得られた。特定の実施態様では、本方法は更に、混合培養培地に還元剤を加えることを含む。
【0015】
また、i)第1の軽鎖に結合した、第1のヘテロ二量体化ドメインを有する第1のヒンジ含有ポリペプチドと、ii)第2の軽鎖に結合した、第2のヘテロ二量体化ドメインを有する第2のヒンジ含有ポリペプチドとを含むヘテロ多量体タンパク質の調製方法であって、第2のヘテロ二量体化ドメインが第1のヘテロ二量体化ドメインと接触面において相互作用し、第1及び第2のヒンジ含有ポリペプチドが少なくとも一つの鎖間ジスルフィド結合によりリンクしており:
(a)第1のヒンジ含有ポリペプチド及び第1の軽鎖を発現することのできる第1の宿主細胞を培養する工程であって、二つの第1のヒンジ含有ポリペプチドと二つの第1の軽鎖を含む第1のホモ二量体が分泌される、第1の宿主細胞を培養する工程;
(b)第2のヒンジ含有ポリペプチド及び第2の軽鎖を発現することのできる第2の宿主細胞を培養する工程であって、二つの第2のヒンジ含有ポリペプチド及び二つの第2の軽鎖を含む第2のホモ二量体が分泌される、第2の宿主細胞を培養する工程;
(c)第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞の混合培養培地を、第1及び第2の宿主細胞の細胞膜を破壊することなく得る工程であって、混合培養培地が第1のホモ二量体及び第2のホモ二量体を含む、混合培養培地を得る工程;
(d)ヘテロ多量体タンパク質の形成を可能にするために十分な還元条件下において混合培養培地をインキュベートする工程;並びに
(e)ヘテロ多量体タンパク質を得る工程
を含み、ここで第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞がそれぞれ哺乳動物細胞である方法が提供される。特定の実施態様では、方法は更に、混合培養培地に還元剤を加えることを含む。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、第1のヒンジ含有ポリペプチド及び第2のヒンジ含有ポリペプチドは、第1及び第2の重鎖を含む。本明細書に記載される実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される特定の実施態様では、第1のヒンジ含有ポリペプチド及び第1の軽鎖は第1の半分の抗体を含む。本明細書に記載される実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される特定の実施態様では、第2のヒンジ含有ポリペプチド及び第2の軽鎖は第2の半分の抗体を含む。
【0016】
上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、混合培養培地を得る工程は:(1)第1の宿主細胞培養物のための第1の培養培地を回収すること;
(2)第2の宿主細胞培養物のための第2の培養培地を回収すること;及び
(3)第1の培養培地と第2の培養培地を混合して混合培養培地を得ること
を含む。
【0017】
上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、混合培養培地を得ることは、第1の宿主細胞及び宿主細胞を含む混合細胞培養物の培養培地を回収することを含む。特定の実施態様では、混合培養培地は、第1及び第2の宿主細胞の細胞膜を破壊することなく得られた。
【0018】
本発明の方法における第1及び第2の宿主細胞は、対象のポリペプチドの発現及び単離を可能にする任意の環境において培養することができる。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞は、混合細胞培養物へと混合する前に、別々に培養される。
【0019】
上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、方法は更に、約25℃から約40℃の温度で混合細胞培養物を培養する工程を含む。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、混合培養培地は、混合培養培地が得られた後約24時間から約7日間にわたってインキュベートされる。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、混合培養培地は、約4℃から約8℃でインキュベートされる。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、混合培養培地は撹拌される。
【0020】
上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、方法は更に、混合培養培地からヘテロ多量体タンパク質を単離することを含む。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、ヘテロ多量体タンパク質は、プロテインAカラムを用いて単離される。特定の実施態様では、ヘテロ多量体タンパク質は更に、当技術分野で既知の方法を用いて精製される。
【0021】
上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、方法は更に、第1及び第2の細胞培養培地が回収される前に又は後で、第1の細胞培地及び/又は第2の細胞培地に還元剤を加えることを含む。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、方法は更に、混合細胞培養物の培養培地が回収される前に、混合細胞培養物の培養培地に還元剤を加えることを含む。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、還元剤は、回収工程の、約4から約24時間前、約5から約20時間前、約10から約20時間前、約10から約15時間前、又は約15から約18時間前に加えられる。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、還元剤は、回収工程の約15時間前に加えられる。
【0022】
上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、方法は更に、混合細胞培地に還元剤を加えることを含む。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、還元剤を含油する混合培養培地は更に、約4時間から約7日間にわたってインキュベートされる。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、還元剤を含有する混合培養培地は更に、約15時間にわたってインキュベートされる。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、還元剤は、混合培養培地からヘテロ多量体タンパク質を単離する前に混合培養培地に加えられる。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、還元剤を含有する混合培養培地は、ヘテロ多量体タンパク質の単離に少なくとも約24時間先だってインキュベートされる。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、還元剤を含有する混合培養培地は、ヘテロ多量体タンパク質の単離に少なくとも約48時間先だってインキュベートされる。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、ヘテロ多量体タンパク質は、プロテインAカラムを用いて単離される。
【0023】
上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、還元剤は、グルタチオン、2-メルカプトエタノール、2-メルカプトエチルアミン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、システイン、システイン、ジチオスレイトール、システインジチオスレイトール、ジチオールブチルアミン、又はこれらの組み合わせからなる群より選択される。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、還元剤はグルタチオンであり、グルタチオンは約5mMから約20mM以下の濃度で加えられる。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、還元剤はグルタチオンであり、グルタチオンは約2mMから約10mMの濃度で加えられる。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、還元剤はグルタチオンであり、グルタチオンは約5mMから約20mM未満の濃度で加えられる。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、還元剤はグルタチオンであり、グルタチオンは約15mMの濃度で加えられる。
【0024】
上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、第1の宿主細胞は安定な細胞株である。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、第2の宿主細胞は安定な細胞株である。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、第1の宿主細胞はCHO細胞である。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、第2の宿主細胞はCHO細胞である。
【0025】
上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、第1の宿主細胞と第2の宿主細胞の比は、第1の宿主細胞培養物と第2の宿主細胞培養物が混合されて混合培養物が形成されるときに第1のヒンジ含有ポリペプチドと第2のヒンジ含有ポリペプチドのモル比が約1:10から約10:1になるように調節される。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、宿主細胞培養物と第2の宿主細胞培養物が混合されて混合培養物が形成されるときに第1の宿主細胞により発現される第1のヒンジ含有ポリペプチドと第2の宿主細胞により発現される第2のヒンジ含有ポリペプチドのモル比は1:1である。
【0026】
上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、ヒンジ含有ポリペプチドは、Fc領域又はその変異体を含む。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、第1及び/又は第2のヒンジ含有ポリペプチドは抗体重鎖を含む。
【0027】
上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、第1のヘテロ二量体化ドメインは、接触面にノブ修飾を含み、第2のヘテロ二量体化ドメインは接触面にホール修飾を含む。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、ノブ修飾は、第1のヘテロ二量体化ドメイン由来の元のアミノ酸残基を、元のアミノ酸残基より大きな側鎖を有するアミノ酸残基で置換することを含む。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、置換するアミノ酸残基は、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン及びアルギニンからなる群より選択される。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、ホール修飾は、第2のヘテロ二量体化ドメイン由来の元のアミノ酸残基を、元のアミノ酸残基より小さな側鎖を有するアミノ酸残基で置換することを含む。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、置換するアミノ酸残基は、セリン、スレオニン、バリン、及びアラニンからなる群より選択される。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、ノブ修飾は、T366Wの置換(EU番号付け)を含む。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、ホール修飾は、T366S、L368A及びY407V(EU番号付け)からなる群より選択される二つ以上のアミノ酸の置換を含む。
【0028】
上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、前記鎖間ジスルフィド結合はヒンジ領域間にある。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、ヘテロ多量体タンパク質は抗体である。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、ヘテロ多量体タンパク質は二重特異性抗体である。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、前記抗体はヒト化又はヒト抗体である。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、抗体は完全長抗体である。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、抗体は、ヒトCH2及び/又はCH3ドメインの少なくとも一部を含む抗体断片である。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、抗体は、IgG、IgA及びIgDからなる群より選択される。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、抗体はIgGである。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、抗体はIgG1、IgG2又はIgG4である。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、第1の軽鎖及び第2の軽鎖は異なる可変ドメイン配列を含む。
【0029】
別の態様では、i)第1の軽鎖に結合した、第1のヘテロ二量体化ドメインを有する第1のヒンジ含有ポリペプチドと、及びii)第2の軽鎖に結合した、第2のヘテロ二量体化ドメインとを有する第2のヒンジ含有ポリペプチドを含むヘテロ多量体タンパク質の調製方法であって、第2のヘテロ二量体化ドメインが第1のヘテロ二量体化ドメインと接触面において相互作用し、第1及び第2のヒンジ含有ポリペプチドが少なくとも一つの鎖間ジスルフィド結合によりリンクしており:
(a)第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞の混合培養物を培養する工程であって、第1の宿主細胞は、第1のヒンジ含有ポリペプチド及び第1の軽鎖を発現することができ、第2の宿主細胞は、第2のヒンジ含有ポリペプチド及び第2の軽鎖を発現することができ、第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞はそれぞれ哺乳動物細胞である、培養する工程;
(b)混合培養物に還元剤を加える工程;並びに
(c)細胞膜を破壊することなく、混合培養物から、ヘテロ多量体タンパク質を含む混合培養培地を回収する工程
を含む方法が提供される。
【0030】
特定の実施態様では、第1の宿主細胞は、二つの第1のヒンジ含有ポリペプチド及び二つの第1の軽鎖を含む第1のホモ二量体を分泌し、第2の宿主細胞は、二つの第2のヒンジ含有ポリペプチド及び二つの第2の軽鎖を含む第2のホモ二量体を分泌し、混合培養物は第1のホモ二量体及び第2のホモ二量体を含む。特定の実施態様では、混合培養物に還元剤を加えることにより、ヘテロ多量体タンパク質の形成が可能になる。
【0031】
上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、還元剤は、混合培養物が約18日以内にわたって培養された後で加えられる。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、混合培養培地は、還元剤が加えられてから4時間から24時間後に回収される。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、混合培養培地を回収する工程は、第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞を混合培養培地から除去することを含む。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、混合培養培地は4時間から7日間にわたってインキュベートされる。
【0032】
特定の実施態様では、方法は更に、混合培養物中における第1の宿主細胞と第2の宿主細胞の細胞:細胞比を調節する工程を含む。特定の実施態様では、細胞:細胞比は、混合培養物中における、第1の宿主細胞から発現された第1のヒンジ含有ポリペプチド(結合した軽鎖を含む)と、第2の宿主細胞から発現された第2のヒンジ含有ポリペプチド(結合した軽鎖を含む)とのモル比が、所望のモル比に到達するように調節される。特定の実施態様では、宿主細胞は安定な細胞株である。特定の実施態様では、安定な細胞株は、ヒンジ含有ポリペプチド及び軽鎖を発現することのできる核酸分子で安定的にトランスフェクトされる。
【0033】
本発明の方法が、本明細書に記載される本発明の方法により包含されるプロセスを開始及び/又は完了させるために一般に明らかな常套的工程である他の工程を含むことができることを理解されたい。例えば、一実施態様では、本発明の方法の工程の前に、第1のヒンジ含有ポリペプチドをコードする核酸を第1の宿主細胞中に導入し、第2のヒンジ含有ポリペプチドをコードする核酸を第2の宿主細胞中に導入する工程が行われる。一実施態様では、本発明の方法は更に、少なくとも二つの異なる標的に対する結合特異性を有するヘテロ多量体タンパク質を精製する工程を含む。
【0034】
上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、第1のヒンジ含有ポリペプチド及び第1の軽鎖(又はその結合軽鎖)が第1の標的に対する第1の結合ドメインを含む。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、第2のヒンジ含有ポリペプチド及び第2の軽鎖(又はその結合軽鎖)が第2の標的に対する第2の結合ドメインを含む。第1及び第2の標的は、単一の分子上又は異なる分子上に位置する異なるエピトープとすることができる。
【0035】
別の態様では、上記方法のいずれかにより生成されたヘテロ多量体タンパク質が提供される。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、ヘテロ多量体タンパク質は二重特異性抗体である。更には、上記方法のいずれかにより生成されたヘテロ多量体タンパク質(例えば二重特異性抗体)と薬学的に許容される担体とを含む組成物が提供される。
【0036】
本発明のヘテロ多量体タンパク質は、通常、好ましくは特異的に、抗原に結合することができる。このような抗原には、例えば、腫瘍抗原、細胞生存調節因子、細胞増殖調節因子、組織発達又は分化に関連する(例えば機能的に寄与することが既知であるか又は予測される)分子、細胞表面分子、リンホカイン、サイトカイン、細胞周期調節に関わる分子、脈管形成に関わる分子、及び血管新生に関連する(例えば機能的に寄与することが既知であるか又は予測される)分子が含まれる。本発明のヘテロ多量体タンパク質が結合できる抗原は、上記カテゴリーの一つのサブセットのメンバーであり、前記カテゴリーの他のサブセットは、異なる特徴(対象の抗原に関して)を有する他の分子/抗原を含む。対象の抗原は、二つ以上のカテゴリーに属するとみなすこともできる。一実施態様では、本発明は、好ましくは特異的に、細胞表面分子ではない腫瘍抗原に結合するヘテロ多量体タンパク質を提供する。一実施態様では、腫瘍抗原は、受容体ポリペプチドといった細胞表面分子である。いくつかの実施態様の別の例においては、本発明のヘテロ多量体タンパク質は、好ましくは特異的に、クラスター 分化因子ではない腫瘍抗原に結合する。別の例では、本発明のヘテロ多量体タンパク質は、好ましくは特異的に、クラスター 分化因子に結合し、いくつかの実施態様では、これは例えば、CD3又はCD4ではない。いくつかの実施態様では、本発明のヘテロ多量体タンパク質は抗VEGF抗体である。いくつかの実施態様では、本発明のヘテロ多量体タンパク質は、IL-1アルファ/IL-1ベータ、IL-12/IL-18;IL-13/IL-9;IL-13/IL-4;IL-13/IL-5;IL-5/IL-4;IL-13/IL-lベータ;IL-13/IL-25;IL-13/TARC;IL-13/MDC;IL-13/MEF;IL-13/TGF-β;IL-13/LHRアゴニスト;IL-12/TWEAK、IL-13/CL25;IL-13/SPRR2a;IL-13/SPRR2b;IL-13/ADAM8、IL-13/PED2、IL17A/IL17F、CD3/CD19、CD138/CD20;CD138/CD40;CD19/CD20;CD20/CD3;CD38/CD138;CD38/CD20;CD38/CD40;CD40/CD20;CD-8/IL-6;CD20/BR3、TNFアルファ/TGF-ベータ、TNFアルファ/IL-1ベータ;TNFアルファ/IL-2、TNFアルファ/IL-3、TNFアルファ/IL-4、TNFアルファ/IL-5、TNFアルファ/IL6、TNFアルファ/IL8、TNFアルファ/IL-9、TNFアルファ/IL-10、TNFアルファ/IL-11、TNFアルファ/IL-12、TNFアルファ/IL-13、TNFアルファ/IL-14、TNFアルファ/IL-15、TNFアルファ/IL-16、TNFアルファ/IL-17、TNFアルファ/IL-18、TNFアルファ/IL-19、TNFアルファ/IL-20、TNFアルファ/IL-23、TNFアルファ/IFNアルファ、TNFアルファ/CD4、TNFアルファ/VEGF、TNFアルファ/MIF、TNFアルファ/ICAM-1、TNFアルファ/PGE4、TNFアルファ/PEG2、TNFアルファ/RANKリガンド、TNFアルファ/Te38;TNFアルファ/BAFF;TNFアルファ/CD22;TNFアルファ/CTLA-4;TNFアルファ/GP130;TNFα/IL-12p40;VEGF/HER2、VEGF-A/HER2、VEGF-A/PDGF、HER1/HER2、VEGF-A/VEGF-C、VEGF-C/VEGF-D、HER2/DR5,VEGF/IL-8、VEGF/MET、VEGFR/MET受容体、VEGFR/EGFR、HER2/CD64、HER2/CD3、HER2/CD16、HER2/HER3;EGFR/HER2、EGFR/HER3、EGFR/HER4、IL-13/CD40L、IL4/CD40L、TNFR1/IL-1R、TNFR1/IL-6R、TNFR1/IL-18R、EpCAM/CD3、MAPG/CD28、EGFR/CD64、CSPGs/RGM A;CTLA-4/BTNO2;IGF1/IGF2;IGF1/2/Erb2B;MAG/RGM A;NgR/RGM A;NogoA/RGM A;OMGp/RGM A;PDL-I/CTLA-4;及びRGM A/RGM B、IL1β/IL18、NRP1/VEGFA、VEGFA/NRP2、cMET/EGFR、ALK1/BMP9、VEGFA/α5β1、HER1/HER3-BU、及びCMVからなる群より選択される二重特異性抗体である。いくつかの実施態様では、本発明のヘテロ多量体タンパク質は:α5β1、ALK1、BMP9、IL-1アルファ、IL-1ベータ、TARC、MDC、MEF、TGF-β、LHRアゴニスト、TWEAK、CL25、SPRR2a、SPRR2b、ADAM8、PED2、CD3、CD4、CD16、CD19、CD20、CD22、CD28、CD40、CD38、CD64、CD138、CD-8、BR3、TNFアルファ、TGF-ベータ、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-17A、IL-17F、IL-18、IL-19、IL-20、IL-23、IL-25、IFNアルファ、MIF、ICAM-1、PGE4、PEG2、RANKリガンド、Te38、BAFF、CTLA-4、GP130、IL-12p40、VEGF、VEGF-A、PDGF、HER1、HER2、HER3、HER3-BU、HER4、VEGF-C、VEGF-D、DR5、cMET、MET、MET 受容体、VEGFR、EGFR、CD40L、TNFR1、IL-1R、IL-6R、IL-18R、EpCAM、MAPG、CSPGs、BTNO2、IGF1、IGF2、IGF1/2、Erb2B、MAG、NgR、NogoA、NRP1、NRP2、OMGp、PDL-I、RGM A及びRGM Bからなる群より選択される少なくとも二つの標的分子に結合する。いくつかの実施態様では、本発明のヘテロ多量体タンパク質は、CD3と、BLR1、BR3、CD19、CD20、CD22、CD72、CD79A、CD79B、CD180(RP105)、CR2、FcRH1、FcRH2、FcRH5、FCER2、FCRL4、HLA-DOB、及びNAG14から選択される少なくとも一つの追加の標的分子とに結合する。
【0037】
ヘテロ多量体タンパク質は、追加的な所望の特性を増強及び/又は付加するために修飾されてもよい。このような特性には、免疫エフェクター機能、望ましいインビボ半減期/クリアランス、バイオアベイラビリティ、生体分布又は他の薬物動態学的特性といった生物的機能が含まれる。このような修飾は、当技術分野で周知であり、経験的に決定することもでき、ペプチドベースであってもなくてもよい部分による修飾を含みうる。例えば、抗体は、通常少なくとも部分的に宿主細胞の性質に応じて、グリコシル化又は非グリコシル化される。好ましくは、本発明の抗体は非グリコシル化される。本発明の方法により生成された非グリコシル化抗体は、その後、例えば、当技術分野で周知のインビトロでのグリコシル化方法を用いることにより、グリコシル化することができる。上述し本明細書において記載するように、本発明のヘテロ多量体タンパク質は、例えば、大腸菌といった原核細胞中において生成することができる。大腸菌で生成されたヘテロ多量体タンパク質は、一般に非グリコシル化されており、哺乳動物の宿主細胞(例えば、CHO)で生成されたヘテロ多量体タンパク質中に見られるグリコシル化特性に通常関連付けられる生物的機能を欠く。
【0038】
本発明は、異種部分にコンジュゲートした本発明のヘテロ多量体タンパク質を含むイムノコンジュゲートも提供する。抗体へのコンジュゲーションにより抗体の所望の機能及び/又は特性が低下しない限り、いずれの異種部分も適切である。例えば、いくつかの実施態様では、イムノコンジュゲートは、細胞傷害性剤である異種部分を含む。いくつかの実施態様では、前記細胞傷害性剤は、放射性同位体、化学療法剤及び毒素からなる群より選択される。いくつかの実施態様では、前記毒素は、カリケアミシン、メイタンシン及びトリコテセン(trichothene)からなる群より選択される。いくつかの実施態様では、イムノコンジュゲートは、検出可能なマーカーである異種部分を含む。いくつかの実施態様では、前記検出可能なマーカーは、放射性同位体、リガンド-受容体対のメンバー、酵素-基質対のメンバー及び蛍光共鳴エネルギー転移対のメンバーからなる群より選択される。
【0039】
別の態様では、上述のヘテロ多量体タンパク質の第1のヒンジ含有ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド又は組み換えベクターを含む宿主細胞が提供され、この宿主細胞はヘテロ多量体タンパク質の宿主細胞の第2のヒンジ含有ポリペプチドを発現しない。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、ヒンジ含有ポリペプチドは抗体重鎖である。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、ヒンジ含有ポリペプチドは、抗体軽鎖と対になる。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、宿主細胞は安定な細胞株である。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、宿主細胞は哺乳動物細胞である。上記実施態様のいずれかによる(又はそのような実施態様に適用される)特定の実施態様では、宿主細胞はCHO細胞である。
【0040】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、本発明の範囲及び精神内での様々な変更及び修正が詳細な説明から当業者には明らかになるため、この詳細な説明及び特定の実施例は、本発明の好ましい実施態様を示すが、例示のみを目的としていることを理解されたい。
【0041】
本明細書に引用されるすべての参照文献は、その全体が参照により援用される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1A】完全に酸化された半分の抗体を示している。「ノブ」又は「ホール」又は他のヘテロ二量体化ドメインは示されていない。この図に示されている半抗体は、IgG1アイソタイプである。当業者であれば、他の免疫グロブリンのアイソタイプを、対応する鎖間及び鎖内結合を有する半抗体として考慮可能であることを理解するであろう。インタクトなAbでは、ヒンジシステインは、鎖間ジスルフィド結合を形成するであろう。
【
図1B】完全長二重特異性抗体を示している。ヒンジ領域内の重鎖間ジスルフィド結合は示されていない。
【
図2】%半抗体及び%共有結合的二重特異性抗体を決定するために使用できる二つのアッセイのフロー図を示す。
【
図3】混合培養培地回収の4時間前、15時間前、又は24時間前に、抗標的A(ノブ)を発現する第1の哺乳動物宿主細胞及び抗標的B(ホール)を発現する第2の哺乳動物宿主細胞を含む混合細胞培養物に還元剤を添加したときに形成される%二重特異性抗体を示している。
【
図4】4-20%のTris-グリシンSDS PAGEで実行されたノブ及びホール捕獲プールを示している。
【
図5A】ホモ二量体と半抗体が一つのブロードピーク中に共溶出されている抗標的Gの疎水性に基づいて分離された試料のクロマトグラムを示している。
【
図5B】抗標的Hの疎水性に基づいて分離された試料のクロマトグラムを示している。
【
図6】抗標的G/抗標的Hの二重特異性抗体の質量分析の結果を示している。
【
図7A】抗標的A及び抗標的Bの半抗体がその中に分泌されている、未処理の混合培養培地及びGSH-処理された混合培養培地に対して実施された、エレクトロスプレーイオン化飛行時間型質量分析(ESI-TOF MS)実験の結果を示している。
【
図7B】二重特異性抗体ピークのm/zレンジの拡大図である。
【
図7C】半抗体のピークのm/zレンジの拡大図である。
【0043】
略語
ADCC=抗体依存性細胞介在性細胞傷害性
API=抗病原体イムノアドヘシン
BPI=殺菌性/浸透性増加タンパク質
C1q=補体因子1q
CD=分化のクラスター
CDC=補体依存性細胞傷害
CH1又はCH1=重鎖の第1の定常ドメイン
CH2又はCH2=重鎖の第2の定常ドメイン
CH3又はCH3=重鎖の第3の定常ドメイン
CH4又はCH4=重鎖の第4の定常ドメイン
CL又はCL=軽鎖の定常ドメイン
CTLA=細胞傷害性Tリンパ球結合分子
Fc=結晶性断片
Fc(R=IgGのFc部分の受容体ガンマ
HIV=ヒト免疫不全ウイルス
ICAM=細胞間接着分子
BsAb=二重特異性抗体
BsDb=二重特異性ダイアボディ
dsFv=ジスルフィド安定化Fv
Fc=抗体の定常断片
Fd=抗体のVH+CH1
FcR=Fc受容体
Fv=抗体の可変断片
IgG=免疫グロブリンG
mAb=モノクローナル抗体
PBL=末梢血リンパ球
scDb=単鎖ダイアボディ
scFv=単鎖Fv
(scFv)2=scFv-scFvタンデム
Tandab=タンデムダイアボディ
VH又はVH=抗体の重鎖の可変ドメイン
VL又はVL=抗体の軽鎖の可変ドメイン
【発明を実施するための形態】
【0044】
これより、参照のみを目的とし、以下の定義及び実施例を用いて、本発明について詳細に記載する。本明細書において言及する、すべての特許文献及び参照文献は、そのような文献に開示されるすべての配列を含め、参照により明示的に包含される。
【0045】
本明細書において特に別途定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。Singleton, et al., Dictionary of Microbiology and 分子 Biology, 2d Ed., John Wiley and Sons, New York (1994), and Hale & Marham, The Harper Collins Dictionary of Biology, Harper Perennial, NY (1991)は、当業者に対し、本発明において使用される多くの用語の一般的な辞書を提供する。本明細書に記載されるものと同様又は等価な任意の方法及び材料が本発明の実地及び実験に使用可能であるが、好ましい方法及び材料を記載する。数的範囲は、範囲を定義する数字を含む。別途指示がない限り、核酸は、左から右へ、5’から3’の方向に;アミノ酸配列は左から右へ、アミノからカルボキシの方向に、それぞれ記述される。施術者は、当技術分野の定義及び用語について、特にSambrook et al., 1989, and Ausubel FM et al., 1993を参照するように案内される。本発明は、記載される特定の方法論、プロトコール、及び試薬に限定されるものではなく、変更可能であることを理解されたい。
【0046】
数的範囲は、範囲を定義する数字を含む。
【0047】
別途指示がない限り、核酸は、左から右へ、5’から3’の方向に;アミノ酸配列は左から右へ、アミノからカルボキシの方向に、それぞれ記述される。
【0048】
本明細書で提供される見出しは、本明細書全体を参照することによって有することができる本発明の様々な態様または実施形態の限定ではない。したがって、以下に定義される用語は、明細書全体を参照することによって更に詳細に定義される。
【0049】
I.定義
「ヘテロ多量体」「ヘテロ多量体複合体」又は「ヘテロ多量体タンパク質」は、第1の軽鎖に結合した、第1のヘテロ二量体化ドメインを有する第1のヒンジ含有ポリペプチドと、第2の軽鎖に関連づけられている、第2のヘテロ二量体化ドメインを有する第2のヒンジ含有ポリペプチドとを含む分子であって、第2のヘテロ二量体化ドメインは第1のヘテロ二量体化ドメインと接触面において相互作用し、第1及び第2のヒンジ含有ポリペプチドは少なくとも一つの鎖間ジスルフィド結合によりリンクしている分子を指す。ヘテロ多量体は、第1のヒンジ含有ポリペプチド、第1の軽鎖、第2のヒンジ含有ポリペプチド、及び第2の軽鎖によって形成された「ヘテロ二量体」を含むことができる。代替的に、ヘテロ多量体は、例えば二重特異性抗体を形成することができる。ヘテロ多量体のポリペプチドは、非ペプチド性の共有結合(例えば、ジスルフィド結合)及び/又は非共有結合的相互作用(例えば、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力,及び/又は疎水性相互作用)により互いに相互作用しうる。
【0050】
本明細書において使用される「ヘテロ多量体化ドメイン」は、ヘテロ多量体形成を促進し、ホモ多量体形成を妨げるような、生体分子に対する改変又は付加を指す。ホモ二量体と比較してヘテロ二量体の形成を強力に好む任意のヘテロ二量体化ドメインは、本発明の範囲内である。具体的な例には、限定されないが、例えば、米国特許出願公開第20030078385号(Arathoonら-Genentech;ノブ・イントゥー・ホールについて記載);国際公開第2007147901号(Kjaergaardら-Novo Nordisk:イオン性相互作用について記載);国際公開第2009089004号(Kannanら-Amgen:静電ステアリング効果について記載);国際公開第2011/034605号(Christensenら-Genentech;コイルドコイルについて記載)が含まれる。また、例えば、ロイシンジッパーについて記載しているPack, P. & Plueckthun, A., Biochemistry 31, 1579-1584 (1992) 又はヘリックス・ターン・ヘリックス・モチーフについて記載しているPack et al., Bio/Technology 11, 1271-1277 (1993)を参照されたい。「ヘテロ多量体化ドメイン」及び「ヘテロ二量体化ドメイン」という表現は、本明細書では交換可能に使用される。
【0051】
本明細書で使用される「ヒンジ含有ポリペプチド」という表現は、当技術分野で理解される免疫グロブリンのヒンジ領域(例えば、重鎖のCH1とCH2ドメインの間の領域)に対応する領域を含むポリペプチドを指す。「ヒンジ領域」、「ヒンジ配列」、及びその変形は、本明細書において使用される場合、例えば、Janeway’s Immunobiology, (Garland Science, Taylor & Francis Group, LLC, NY) (7th ed., 2008); Bloom et al., Protein Science (1997), 6:407-415; Humphreys et al., J. Immunol. Methods (1997), 209:193-202に説明されている、当技術分野で既知の意味を含む。また、例えば、Burton, Molec. Immunol.22:161-206 (1985) and Papadea, C. and I. J. Check (1989) "Human immunoglobulin G and immunoglobulin G subclasses: biochemical, genetic, and clinical aspects." Crit Rev Clin Lab Sci 27(1): 27-58を参照されたい。当業者であれば、鎖間ジスルフィド結合形成に利用可能なアミノ酸の番号並びにシステイン残基の番号が、免疫グロブリンの分類及びアイソタイプ間で異なることを理解するであろう。すべてのこのようなヒンジ領域は、ヒンジ含有ポリペプチド内にあってよく、本発明の範囲に含まれる。特定の実施態様では、第1のヒンジ含有ポリペプチドは、第1の抗体重鎖を含む。特定の実施態様では、第1の重鎖は第1の軽鎖と結合して第1の半抗体を形成する。本明細書で使用される用語「抗体」は最も広い意味で使用され、二つの重鎖及び二つの軽鎖を含む任意の免疫グロブリン(Ig)分子、並びに所望の生物活性(例えば、エピトープ結合活性)を示す限り、その任意の断片、突然変異体、変異体又は誘導体を指す。抗体の例は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)及び本明細書に記載される抗体断片を含む。抗体は、ヒト、ヒト化及び/又は親和性成熟したものでありうる。
【0052】
参照の枠として、本明細書において使用される場合、抗体は免疫グロブリンG(IgG)の構造を指す。しかしながら、当業者であれば、いずれの免疫グロブリンのクラスの抗体も、本明細書に記載される本発明の方法に利用可能であることを理解/認識するであろう。明瞭性のために、IgG分子は一対の同一の重鎖(HC)及び一対の同一の軽鎖(LC)を含有する。各LCは、一つの可変ドメイン(V
L)及び一つの定常ドメイン(C
L)を有し、各HCは、一つの可変ドメイン(V
H)及び三つの定常ドメイン(C
H1、C
H2、及びC
H3)を有する。C
H1及びC
H2ドメインは、ヒンジ領域によって接続されている。この構造は、当技術分野で周知である。
図1Bを参照のこと。
【0053】
本明細書において使用される「半抗体」は、一つの免疫グロブリン軽鎖に結合した一つの免疫グロブリン重鎖を指す。例示的な半抗体は
図1Aに示されている。当業者であれば、半抗体が単一の可変ドメインからなる抗原結合ドメインも有しうることを容易に理解するであろう。
【0054】
用語「マキシボディ(maxibody)」は、Fcポリペプチドに融合したscFvを含む融合タンパク質を指す。国際公開第2009089004号の
図8aを参照のこと。二重特異性マキシボディについては国際公開第2009089004号の
図2を参照のこと。
【0055】
ヒトIgG Fc領域の用語「CH2ドメイン」は通常、EU番号付け体系によれば、IgGの約残基231から約340に延びる。CH2ドメインは、別のドメインと密接な対にならないという点で独特である。むしろ、二つのN結合型分枝状糖鎖(炭水化物)がインタクトな天然IgG分子の二つのCH2ドメイン間に挿入される。糖(炭水化物)がドメイン-ドメインペアリングを置換してCH2ドメインの安定化を助けると推測された。Burton, Molec. Immunol.22:161-206 (1985)。
【0056】
用語「CH3ドメイン」は、Fc領域における残基のC末端のCH2ドメインまでの伸展(即ち、EU番号付け体系によりIgGの約アミノ酸残基341から約アミノ酸残基447まで)を含む。
【0057】
用語「Fc領域」は、本明細書において使用される場合、一般に、免疫グロブリン重鎖のC末端ポリペプチド配列を含むダイマー複合体を指し、ここでC末端ポリペプチド配列は、インタクトな抗体のパパイン消化により得ることができる。Fc領域は、天然又は変異Fc配列を含みうる。免疫グロブリン重鎖のFc配列の境界は変化し得るが、通常、ヒトIgG重鎖Fc配列は、およそCys226の位置又はおよそPro230の位置のアミノ酸残基からFc配列のカルボキシル末端まで伸長すると定義される。本明細書に別途指定のない限り、Fc領域又は定常領域内のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991に記載されるように、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けシステムに従う。免疫グロブリンのFc配列は一般に、CH2ドメインとCH3ドメインの2つの定常ドメインを含み、場合によってCH4ドメインを含む。本明細書において「Fcポリペプチド」とは、Fc領域、例えば単量体のFcを形成するポリペプチドのうちの一つを意味する。Fcポリペプチドは、任意の適切な免疫グロブリン、例えばIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4サブタイプ、IgA、IgE、IgD又はIgMから得ることができる。Fc領域は、ジスルフィドによって一緒に保持された両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域内の配列によって決定される;この領域は、特定の細胞型に見られるFc受容体(FcR)によって認識される部分でもある。いくつかの実施態様では、Fcポリペプチドは、野生型ヒンジ配列の一部又は全部を(通常はそのN末端)に含む。いくつかの実施態様では、Fcポリペプチドは、機能的又は野生型ヒンジ配列を含まない。
【0058】
「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を有している。例示的な「エフェクター機能」には、C1q結合;CDC;Fc受容体結合;ADCC;食作用;細胞表面受容体(例えばB細胞受容体;BCR)の下方制御などが含まれる。このようなエフェクター機能は、一般に、Fc領域に結合ドメインが混合していることを必要とし(例えば抗体可変ドメイン)、例えば、本明細書の定義に開示される様々なアッセイを用いて評価することができる。
【0059】
「天然配列Fc領域」は、天然にみられるFc領域のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を含む。天然配列のヒトFc領域は、天然配列のヒトIgG1Fc領域(非A-及びA-アロタイプ);天然配列のヒトIgG2Fc領域;天然配列のIgG3Fc領域;及び天然配列のヒトIgG4Fc領域;並びに、これらの天然に生じる変異体を含む。
【0060】
「変異Fc領域」は、少なくとも一つのアミノ酸修飾、好ましくは一又は複数のアミノ酸置換による、天然配列Fc領域のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含む。好ましくは、変異Fc領域は、天然配列Fc領域又は親ポリペプチドのFc領域と比較して、天然配列Fc領域又は親ポリペプチドのFc領域に、少なくとも一つのアミノ酸置換を、例えば約一から約十のアミノ酸置換、及び好ましくは約一から約五のアミノ酸置換を有する。本明細書の変異Fc領域は、好ましくは、天然配列Fc領域及び/又は親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の相同性、最も好ましくは少なくとも約90%の相同性、更に好ましくは少なくとも約95%の相同性、少なくとも約96%の相同性、少なくとも約97%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%の相同性を有する。
【0061】
本明細書において使用される「Fc成分」は、Fc領域のヒンジ領域、CH2ドメイン又はCH3ドメインを指す。
【0062】
特定の実施態様では、ヒンジ含有ポリペプチドは、IgG Fc領域、好ましくは野生型ヒトIgG Fc領域に由来するIgG Fc領域を含む。「野生型」ヒトIgG Fcが意味するのは、ヒトの集団内に天然に存在するアミノ酸の配列である。言うまでもなく、Fc配列は個体間で少しずつ異なるので、野生型配列に一又は複数の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。例えば、Fc領域は、グリコシル化部位の突然変異又は非天然アミノ酸の含有といった本発明に関係のない更なる変更を含んでもよい。
【0063】
用語「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の抗原への結合に関与する抗体の重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然型抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH及びVL)は一般に、各々が四つの保存されたフレームワーク領域(FR)と三つの超可変領域(HVR)とを含む、類似の構造を有する。(例えば、Kindt et al., Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007)を参照されたい。)単一のVH又はVLドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分でありうる。更に、特定の抗原に結合する抗体は、相補的なVL又はVHドメインそれぞれのライブラリーをスクリーニングするために、抗原に結合する抗体由来のVH又はVLドメインを用いて単離することができる。例えば、Portolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993); Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991)を参照。
【0064】
本明細書において使用される用語「Fab」は、抗体の抗原結合断片を指す。上記のように、パパインは、インタクトな抗体を消化するために使用される。抗体のパパイン消化により、二つの同一の抗原結合断片、即ち「Fab」断片と、残りの「Fc」断片(即ち、上述のFc領域)が生じる。Fab断片は、L鎖全体並びにH鎖の可変領域ドメイン(VH)、及び一つの重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)からなる。
【0065】
本明細書において使用される、「抗原結合アーム」「標的分子結合アーム」、「標的結合アーム」などの表現及びその変種は、対象の標的に特異的に結合する能力を有する本発明のヘテロ多量体タンパク質の構成部分を指す。一般的に及び好ましくは、抗原結合アームは、免疫グロブリンポリペプチド配列の複合体、例えば、免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖のCDR及び/又は可変ドメイン配列である。
【0066】
「標的」又は「標的分子」は、ヘテロ多量体タンパク質の結合アームによって認識される部分を指す。例えば、ヘテロ多量体タンパク質が抗体である場合、標的は文脈に応じて、単一分子上若しくは異なる分子上のエピトープ、又は病原体若しくは腫瘍細胞である。同様に、ヘテロ多量体タンパク質が受容体-Fc融合タンパク質である場合、標的は、受容体の同族結合パートナーである。当業者であれば、標的が標的結合アームの結合特異性によって決定されること、及び異なる標的結合アームが異なる標的を認識することを理解するであろう。標的は、好ましくは、本発明のヘテロ多量体タンパク質に対し、1uM Kdを上回る親和性で結合する(スキャッチャード解析による)。標的分子の例には、限定されないが、血清可溶性タンパク質及び/又はその受容体、例えばサイトカイン及び/又はサイトカイン受容体、アドヘシン、増殖因子及び/又はその受容体、ホルモン、ウイルス粒子(例えば、RSV Fタンパク質、CMV、StaphA、インフルエンザ、C型肝炎ウイルス)、微生物(例えば、細菌細胞タンパク質、真菌細胞)、アドヘシン、CDタンパク質及びその受容体が含まれる。
【0067】
「インタクトな」抗体又は「完全長」抗体の一例は、抗原結合部位と、CL、及び少なくとも重鎖定常ドメインCH1、CH2及びCH3を含むものである。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変異体でありうる。
【0068】
本明細書において使用される用語「カップリング」は、第1及び第2のヒンジ含有ポリペプチドを互いにリンクさせるために必要な工程、例えば、共有結合の形成を指す。このような工程は、第1及び第2のヒンジ含有ポリペプチド中のシステイン残基の還元、アニーリング及び/又は酸化による鎖間ジスルフィド結合の形成を含む。カップリングは、化学的架橋又は酸環系の使用により達成される。例えば、Humphreys et al., J. Immunol. Methods (1998) 217:1-10 and Zhu et al., Cancer Lett., (1994) 86: 127-134を参照。
【0069】
用語「多特異性抗体」は、最も広い意味で使用され、ポリエピトープ特異性を有する抗体を特に網羅する。このような多重特異性抗体には、限定されないが、V
HV
L単位がポリエピトープ特異性を有する、重鎖可変ドメイン(V
H)及び軽鎖可変ドメイン(V
L)を含む抗体、各V
HV
L単位が異なるエピトープに結合する二つ以上のV
L及びV
Hドメインを有する抗体、各単一可変ドメインが異なるエピトープに結合する二つ以上の単一可変ドメインを有する抗体、完全長抗体、抗体断片、例えばFab、Fv、dsFv、scFv、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ及びトリアボディ、共有結合的に又は非共有結合的にリンクしている抗体断片が含まれる。「ポリエピトープ特異性」とは、同じ又は異なる標的上で二つ以上の異なるエピトープと特異的に結合する能力を指す。「単一特異性」は唯一のエピトープに結合する能力を指す。一実施態様によれば、多特異性抗体は、5μMから0.001pM、3μMから0.001pM、1μMから0.001pM、0.5μMから0.001pM,又は0.1μMから0.001pMの親和性で各エピトープに結合するIgG抗体である。二重特異性の例示的図面は
図1Bに示されている。
【0070】
「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部分、好ましくはインタクトな抗体の抗原結合領域又は可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;ダイアボディ(Db);;タンデムダイアボディ(taDb)、線状抗体(例えば、米国特許第5641870号;Zapata et al., Protein Eng. 8(10):1057-1062 (1995));1アーム抗体、単一可変ドメイン抗体、ミニボディ、単鎖抗体分子;抗体断片(例えば、限定されないが、Db-Fc、taDb-Fc、taDb-CH3、及び(scFV)4-Fcを含む)から形成される多特異性抗体が含まれる。
【0071】
「単一ドメイン抗体」(sdAb)又は「単一可変ドメイン(SVD)抗体」という表現は、単一可変ドメイン(VH又はVL)が抗原結合を付与することができる抗体を一般に指す。言い換えれば、単一可変ドメインは、標的抗原を認識するために別の可変ドメインと相互作用する必要がない。単一ドメイン抗体は、各抗原結合アーム上の単一の単量体可変抗体ドメイン(VH又はVL)からなる。単一ドメイン抗体の例には、ラクダ科の動物(ラマ及びラクダ)並びに軟骨魚(例えば、テンジクザメ)に由来するもの、並びに、ヒト及びマウス抗体からの組換法に由来するものが含まれる(Ward et al., Nature (1989) 341:544-546; Dooley and Flajnik, Dev Comp Immunol (2006) 30:43-56; Muyldermans et al., Trend Biochem Sci (2001) 26:230-235; Holt et al., Trends Biotechnol (2003):21:484-490;国際公開第2005/035572号;国際公開第03/035694号;Davies and Riechmann, Febs Lett (1994) 339:285-290;国際公開第00/29004号;国際公開第02/051870号)。単一の可変ドメイン抗体は、他の可変領域又は可変ドメインを有する抗原結合アーム(例えば、ホモ又はヘテロ多量体)中に存在することもでき、この場合同抗体は単一ドメイン抗体ではない。
【0072】
「線形抗体」という表現は、一般に、Zapata et al., Protein Eng. 8(10):1057-1062 (1995)に記載される抗体を指す。簡潔には、これら抗体は、相補的な軽鎖ポリペプチドと共に一対の抗原結合領域を形成する、一対のタンデム型Fdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む。線形抗体は、二重特異性又は単一特異性とすることができる。
【0073】
本明細書において言及される用語「ノブ・イントゥー・ホール(knob-into-hole)」又は「KnH」技術は、二つのポリペプチドが相互作用する接触面において一方のポリペプチドに突起(ノブ)を、他方のポリペプチドにキャビティ(ホール)を導入することにより、インビトロ又はインビボで二つのポリペプチドの対合を導く技術を指す。例えば、KnHは、抗体のFc:Fc結合面、CL:CH1 接触面又はVH/VL接触面において導入される(例えば、米国特許出願公開第20007/0178552号、国際公開第96/027011号、国際公開第98/050431号及びZhu et al.(1997)Protein Science 6:781-788)。これは、多重特異性抗体の製造中に二つの異なる重鎖を対合させるのに特に有用である。例えば、そのFc領域にKnHを有する多重特異性抗体は、各Fc領域にリンクされた単一可変ドメインを更に含むことができるか、又は類似の若しくは異なる軽鎖可変ドメインと対合する異なる重鎖可変ドメインを更に含むことができる。KnH技術を用いて、二つの異なる受容体細胞外ドメインを対合させること、又は異なる標的認識配列を含む他の任意のポリペプチド配列(例えばアフィボディ、ペプチボディ及び他のFc融合体等)を対合させることもできる。
【0074】
「Fv」は、一つの重鎖及び一つの軽鎖可変領域ドメインが、堅固な非共有結合をなした二量体からなる。これら二つのドメインの折り畳みから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に対する抗原結合特異性を付与する六つの超可変ループ(それぞれH鎖及びL鎖に由来する3つのループ)が生じる。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な三つのCDRのみを含むFvの半分)でさえ、しばしば結合部位全体よりも親和性が低くなるものの、抗原を認識して結合する能力を有している。
【0075】
「sFv」又は「scFv」とも略される「単鎖Fv」は、単一ポリペプチド鎖中に接続するVH及びVL抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドはVH及びVLドメイン間にポリペプチドリンカーを更に含み、それはsFvが抗原結合のために所望の構造を形成することを可能にする。sFvの概説については、Pluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994); Malmborg et al., J. Immunol. Methods 183:7-13, 1995を参照。
【0076】
用語「ダイアボディ」は、sFv断片(前段落参照)を、VHドメインとVLドメインの間に短いリンカー(約5~10の残基)を用いて構築し、Vドメインの鎖内ペアリングではなく鎖間ペアリングを達成させることにより二価の断片、即ち二つの抗原結合部位を有する断片をつくることにより調製される小さな抗体断片を指す。二重特異性ダイアボディは、二つの抗体のVHドメインとVLドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する二つの「クロスオーバー」Fv断片のヘテロ二量体である。ダイアボディは、例えば、EP404097号;国際公開第93/01161号;及びHudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (11161); 及びHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993)に更に詳細に記載されている。
【0077】
用語「1アーム抗体」(単数又は複数)は、(1)CH2ドメイン、CH3ドメイン又はCH2-CH3ドメインを含むポリペプチドへのペプチド結合により連結された可変ドメイン及び(2)第2のCH2、CH3又はCH2-CH3ドメインを含む抗体を指し、ここで可変ドメインは、第2のCH2、CH3又はCH2-CH3ドメインを含むポリペプチドへのペプチド結合によって連結しているものではない。一実施態様では、1アーム抗体は、3つのポリペプチド、即ち(1)可変ドメイン(例えば、VH)、CH1、CH2及びCH3を含む第1のポリペプチド,(2)可変ドメイン(例えば、VL)及びCLドメインを含む第2のポリペプチド、並びに(3)CH2及びCH3ドメインを含む第3のポリペプチドを含む。別の実施態様では、1アーム抗体は、定常重鎖にリンクするジスルフィド結合を形成する二つのシステイン残基を含む部分的ヒンジ領域を有する。一実施態様では、1アーム抗体の可変ドメインは、抗原結合領域を形成する。別の実施態様では、1アーム抗体の可変ドメインは、単一の可変ドメインであり、各単一可変ドメインは抗原結合領域である。一実施態様では、1アーム抗体は単一可変ドメイン抗体である。
【0078】
本発明の抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が特定の種に由来する抗体又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一若しくは相同であり、鎖(複数可)の残りの部分が別の種に由来する抗体又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一若しくは相同である、「キメラ」抗体、並びに、所望の生物学的活性を呈するという条件でそのような抗体の断片を含む(米国特許第4816567号;及びMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。 Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。本明細書における目的のキメラ抗体は、非ヒト霊長動物(例えば、旧世界サル、類人猿など)に由来する可変ドメイン抗原結合配列及びヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体を含む。
【0079】
非ヒト(例えばげっ歯類)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト抗体に由来する最小配列を含むキメラ抗体である。大抵の場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域由来の残基が、非ヒト種、例えば、所望の抗体特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長動物の超可変領域(ドナー抗体)由来の残基により置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例においては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)の残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられている。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体に見られない残基を含むことができる。これらの修飾は、抗体性能を更に洗練させるためになされる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも一つ、典型的には二つの可変ドメインのすべてを実質的に含み、超可変ループのすべて又は実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FRのすべて又は実質的にすべてがヒト免疫グロブリン配列のものである。また、ヒト化抗体は、場合によっては、免疫グロブリン、典型的にはヒト免疫グロブリンの、定常領域(Fc)の少なくとも一部を含む。更なる詳細については、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと。
【0080】
「ペプチボディ」(単数及び複数)は、Fcドメインを有する、無作為に生成されたペプチドの融合体を指す。2003年12月9日にFeigeらに発行された米国特許第6660843号を参照のこと(その全文は参照により援用される)。ペプチボディは、N末端、C末端、アミノ酸側鎖、又はこれらの部位の二つ以上にリンクしている一又は複数のペプチドを含む。ペプチボディ技術は、一又は複数のリガンド又は受容体を標的にするペプチド、腫瘍ホーミングペプチド、膜輸送ペプチドなどを組み込む治療剤の設計を可能にする。ペプチボディ技術は、ジスルフィドによって拘束された直鎖状ペプチドである「タンデムペプチド多量体」(すなわち、Fcドメインの単鎖上の二つ以上のペプチド)を含む、多数のこのような分子の設計において有用であることが判明している。例えば、米国特許第6660843号;2003年10月16日に公開された米国特許出願公開第2003/0195156号(2002年11月21日に公開された国際公開第02/092620号に対応する);2003年9月18日に公開された米国特許出願公開第2003/0176352号(2003年4月17日に公開された国際公開第03/031589号に対応する);米国特許第6835809号(2000年5月4日に公開された国際公開第00/24770号に対応する);2003年12月11日に公開された米国特許出願公開第2003/0229023号;2003年7月17日に公開された国際公開第03/057134号;2003年12月25日に公開された米国特許出願公開第2003/0236193号(2004年4月8日に出願されたPCT/US04/010989号に対応する);2003年9月18日に出願された米国特許第6919426号(2004年4月1日に公開された国際公開第04/026329号に対応する)を参照のこと。これらの各々は参照によりその全内容が本明細書に援用される。
【0081】
「アフィボディ」(単数又は複数)は、ペプチド結合によりFc領域にリンクしたタンパク質の使用に言及し、この場合タンパク質は、標的分子のための結合表面を提供する足場として使用される。タンパク質は多くの場合、ブドウ球菌属プロテインA又はIgG結合Bドメイン、又はそれに由来するZタンパク質(Nilsson et al (1987), Prot Eng 1, 107-133、及び米国特許第5143844号参照)又はその断片若しくは誘導体といった天然に存在するタンパク質である。例えば、アフィボディは、標的分子に対する変化した結合親和性を有するZタンパク質から作製することができ、Zタンパク質の一セグメントをランダム突然変異誘発により変異させ、標的分子に結合できる変異体のライブラリーが作成された。アフィボディの例には、米国特許第6534628号、Nord K et al, Prot Eng 8:601-608 (1995) 及びNord K et al, Nat Biotech 15:772-777 (1997). Biotechnol Appl Biochem. 2008 Jun;50(Pt 2):97-112が含まれる。
【0082】
本明細書において使用される用語「イムノアドヘシン」は、異種タンパク質(「アドへシン」)の結合特異性と免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能とを組み合わせる分子を意味する。構造的に、イムノアドヘシンは、抗体の抗原認識及び結合部位以外の(即ち、抗体の定常領域と比較して「異種」である)、所望の結合特異性を有するアミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列(例えば、IgGのCH2及び/又はCH3配列)との融合を含む。例示的アドヘシン配列には、対象のタンパク質に結合する受容体又はリガンドの一部を含む近接するアミノ酸配列が含まれる。アドヘシン配列は、対象のタンパク質に結合するが、受容体又はリガンド配列(例えば、ペプチボディ中のアドヘシン配列)には結合しない配列でもありうる。このようなポリペプチド配列は、ファージディスプレイ技術及びハイッスループット選別方法を含む様々な方法により選択又は同定することができる。イムノアドヘシンにおける免疫グロブリン定常ドメイン配列は、任意の免疫グロブリン、例えばIgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4サブタイプ、IgA(IgA1及びIgA2を含む)、IgE、IgD、又はIgMから得ることができる。
【0083】
本明細書において使用される「複合体」又は「複合した」は、ペプチド結合でない結合及び/又は力(例えば、ファンデルワールス、疎水性、親水性力)により互いに相互作用する二つ以上の分子の結合に言及している。一実施態様では、複合体はヘテロ多量体である。本明細書において使用される用語「タンパク質複合体」又は「ポリペプチド複合体」は、タンパク質複合体中のタンパク質にコンジュゲートした非タンパク質部分(例えば、限定しないが、毒素又は検出剤といった化学分子を含む)を有する複合体を含む。
【0084】
「対象の抗原に結合する」本発明のヘテロ多量体タンパク質は、標的を発現するタンパク質又は細胞又は組織の標的化においてヘテロ多量体タンパク質が診断剤及び/又は治療剤として有用であるために十分な親和性で標的に結合し、他のタンパク質とは有意に交差反応しないものである。このような実施態様において、ヘテロ多量体タンパク質と「非標的」タンパク質との結合度は、蛍光活性化細胞選別(FACS)分析又は放射性免疫沈降法(RIA)又はELISAにより決定した場合、抗体とその特定の標的タンパク質との結合の約10%未満であろう。標的分子に対するヘテロ多量体タンパク質の結合に関し、特定のポリペプチド、又は特定のポリペプチド標的上のエピトープについて、その「特異的結合」、又はそれと「特異的に結合する」、又はそれに対して「特異的である」という表現は、非特異的相互作用とは測定可能な程度に異なる結合を意味する(例えば、非特異的相互作用は、ウシ血清アルブミン又はカゼインに対する結合でありうる)。特異的結合は、例えば、コントロール分子の結合と比較した分子の結合を決定することにより測定することができる。例えば、特異的結合は、標的に類似のコントロール分子、例えば過剰な非標識標的との競合により決定することができる。この場合、特異的結合は、プローブとの標識標的の結合が、過剰な非標識標的により競合的に阻害される場合に示される。特定のポリペプチド、又は特定のポリペプチド標的上のエピトープについて、本明細書において使用される用語「特異的結合」又はそれと「特異的に結合する」、又はそれに対して「特異的である」とは、例えば、少なくとも約200nM、或いは少なくとも約150nM、或いは少なくとも約100nM、或いは少なくとも約60nM、或いは少なくとも約50nM、或いは少なくとも約40nM、或いは少なくとも約30nM、或いは少なくとも約20nM、或いは少なくとも約10nM、或いは少なくとも約8nM、或いは少なくとも約6nM、或いは少なくとも約4nM、或いは少なくとも約2nM、或いは少なくとも約1nM、又はそれを上回る標的に対するKdを有する分子により表すことができる。一実施態様では、用語「特異的結合」は、ヘテロ多量体タンパク質が特定のポリペプチド若しくは特定のポリペプチド上のエピトープに、実質的に他のいずれのポリペプチド若しくはポリペプチドエピトープにも結合することなく結合することを指す。
【0085】
一般的に、「結合親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有の相互作用の総和の強度を指す。本明細書で使用する場合、特に断らない限り、「結合親和性」は、結合対(例えば、抗体と抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映している本質的な結合親和性を指す。そのパートナーYに対する分子Xの親和性は、一般的に解離定数(Kd)で表すことができる。例えば、Kdは、約200nM、150nM、100nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、8nM、6nM、4nM、2nM、1nM、又はそれよりも強いことがある。親和性は、本明細書中に記載のものを含む当技術分野で既知の一般的な方法により測定することができる。低親和性抗体は一般的に抗原にゆっくり結合してすぐに解離する傾向があるのに対し、高親和性抗体は一般的に抗原により速く結合し、より長く結合を維持する傾向がある。結合親和性の種々の測定方法は当技術分野において既知であり、それらのいずれも本発明の目的ために使用可能である。
【0086】
一実施態様では、本発明による「Kd」又は「Kd値」は、~10反応単位(RU)の固定化された標的(例えば、抗原)CM5チップにより、25℃でBIAcoreTM-2000又はBIAcoreTM-3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を用いた表面プラズモン共鳴アッセイを使用することにより測定される。簡潔には、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIAcore Inc.)を、供給業者の指示書に従ってN-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシニミド(NHS)で活性化する。抗原を10mM酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/ml(~0.2μM)に希釈し、結合したタンパク質の反応単位(RU)がおよそ10になるように5μl/分の流速で注入する。抗原の注入後、反応しない群をブロックするために1Mのエタノールアミンを注入する。反応速度論的な測定のために、Fabの2倍の段階希釈(例えば、0.78nMから500nM))を、25℃で、およそ25ul/分の流速で0.05%Tween 20(PBST)を含むPBSに注入する。会合センサーグラム及び解離センサーグラムを同時にフィットさせることによる単純一対一ラングミュア結合モデル(simple one-to-one Langmuir binding model)(BIAcore Evaluation Softwareバージョン3.2)を用いて、会合速度(kon)と解離速度(koff)を算出する。平衡解離定数(Kd)はkoff/kon比として算出される。例えば、Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881 (1999)を参照のこと。上記の表面プラズモン共鳴アッセイによる会合速度が106M-1S-1を上回る場合、会合速度は、分光計、例えば流動停止を備えた分光光度計(Aviv Instruments社製)又は撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)で測定される漸増濃度の抗原の存在下、25℃、PBS(pH7.2)中20nMの抗抗原抗体(Fab型)の蛍光放出強度(励起=295nm;放出=340nm、帯域通過=16nm)における増加又は減少を測定する蛍光消光技術を用いて測定することができる。
【0087】
本発明のヘテロ多量体タンパク質、例えば抗体、その断片、又は誘導体に関して「生物学的に活性」及び「生物活性」及び「生物学的特性」とは、特に別途断らない限り、生物学的分子への結合能を有することを意味する。
【0088】
種々のヘテロ多量体ポリペプチドを記載するために使用されるとき、「単離された」とは、それを発現する細胞又は細胞培養物から分離及び/又は回収されたヘテロ多量体を意味する。その自然環境の汚染成分とは、ヘテロ多量体の診断又は治療への使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質を含みうる。特定の実施態様において、ヘテロ多量体は、(1)ローリー法で決定されるタンパク質の95重量%を超えるまで、及び最も好ましくは99重量%を超えるまで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端或いは内部アミノ酸配列を得るのに充分な程度まで、又は(3)クーマシーブルー又は好ましくは銀染色を使用した還元又は非還元条件下でのSDS-PAGEにより均一になるまで精製される。しかしながら、通常、単離されたポリペプチドは、少なくとも一つの精製工程により調製される。
【0089】
本発明のヘテロ多量体は通常、実質的に均一に精製される。「実質的に均一な」、「実質的に均一な形態」及び「実質的均一性」といった表現は、生成物が、望ましくないポリペプチドの組み合わせ(例えば、ホモ多量体)から生じた副産物を実質的に含まないことを示すために使用される。
【0090】
純度の観点から表現される、実質的均一性は、副産物の量が重量で10%、9%、8%、7%、6%、4%、3%、2%又は1%を超えないか、又は重量で1%未満であることを意味する。一実施態様では、副産物は5%を下回る。
【0091】
「生体分子」は、核酸、タンパク質、糖(炭水化物)、脂質、及びこれらの組み合わせを指す。一実施態様では、生体分子は天然に存在する。
【0092】
本明細書において使用される「リンクした」又は「リンクする」は、第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列の間の直接のペプチド結合リンケージ又は第1及び第2のアミノ酸配列に対して且つそれら配列間に結合したペプチドである第3のアミノ酸配列を伴うリンケージを意味する。例えば、リンカーペプチドは、一方のアミノ酸配列のC末端と、他方のアミノ酸配列のN末端に結合した。
【0093】
本明細書において使用される「リンカー」は、二つ以上のアミノ酸の長さのアミノ酸配列を意味する。リンカーは、天然の極性又は非極性アミノ酸からなることができる。リンカーは、例えば、2から100のアミノ酸の長さ、例えば2から50のアミノ酸の長さ、例えば、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50のアミノ酸の長さとすることができる。リンカーは、例えば、自動切断、又は酵素的若しくは化学的切断により「切断可能」でありうる。アミノ酸配列中の切断部位と、そのような部位で切断する酵素及び化学物質は、当技術分野で周知であり、本明細書でも記載する。
【0094】
本明細書において使用される「テザー」は、他の二つのアミノ酸配列を連結するアミノ酸リンカーを意味する。本明細書に記載されるテザーは、免疫グロブリン重鎖可変ドメインのN末端と免疫グロブリン軽鎖定常ドメインのC末端をリンクすることができる。特定の実施態様では、テザーは、約15から50のアミノ酸の長さ、例えば、20から26のアミノ酸の長さ(例えば、20、21、22、23、24、25、又は26のアミノ酸の長さ)である。テザーは、当技術分野で標準的な方法及び試薬を使用して、例えば、自動切断、又は酵素的若しくは化学的切断により「切断可能」でありうる。
【0095】
「リンカー」又は「テザー」の酵素的切断は、例えば、Lys-C、Asp-N、Arg-C、V8、Glu-C、キモトリプシン、トリプシン、ペプシン、パパイン、トロンビン、Genenase、Factor Xa,TEV(タバコエッチ病ウイルスシステインプロテアーゼ),エンテロキナーゼ,HRV C3(ヒトライノウイルスC3プロテアーゼ),キニノゲナーゼ、並びにスブチリシン様プロタンパク質転換酵素(例えば、フューリン(PC1),PC2,若しくはPC3)又はN-アルギニン二塩基性コンベルターゼといったエンドペプチダーゼの使用を伴う。化学的切断は、例えば、ヒドロキシルアミン、N-クロロコハク酸イミド、N-ブロモコハク酸イミド、又は臭化シアンの使用を伴う。
【0096】
本明細書において使用される「Lys-Cエンドペプチダーゼ切断部位」は、Lys-CエンドペプチダーゼによってC末端側で切断することができるアミノ酸配列中のリジン残基である。Lys-Cエンドペプチダーゼは、リジン残基のC末端側で切断する。
【0097】
「カオトロピック剤」は、安定化分子内相互作用(例えば、水素結合、ファンデルワールス力、又は疎水効果)を妨害することによりタンパク質(例えば、抗体)の三次元構造を破壊する水溶性物質を意味する。例示的なカオトロピック剤には、限定されないが、尿素、グアニジン-HCl、過塩素酸リチウム、ヒスチジン,及びアルギニンが含まれる。
【0098】
「弱い洗浄剤」とは、安定化分子内相互作用(例えば、水素結合、ファンデルワールス力、又は疎水効果)を妨害することによりタンパク質(例えば、抗体)の三次元構造を破壊するが、タンパク質構造を恒久的に破壊するのではなく、生物活性の欠損を引き起こす(即ち、タンパク質を変性させない)水溶性物質を意味する。例示的な弱い洗浄剤には、限定されないが、Tween(例えば、Tween-20)、Triton(例えば、Triton X-100)、NP-40(ノニル フェノキシルポリエトキシルエタノール)、Nonidet P-40(オクチル フェノキシルポリエトキシルエタノール)、及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が含まれる。
【0099】
抗体「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に起因しうる生物学的活性を指し、抗体のアイソタイプにより変化する。抗体エフェクター機能の例には:C1q結合及び補体依存性細胞傷害;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御;及びB細胞活性化が含まれる。
【0100】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」又は「ADCC」は、特定の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)に結合した分泌されたIgが、これら細胞傷害性のエフェクター細胞を、抗原を保持する標的細胞に特異的に結合させ、続いて細胞障害性剤により標的細胞を殺すことができる、細胞傷害性の一形態を指す。抗体は、細胞傷害性細胞を「有効化」するもので、そのような死滅に絶対的に必要とされる。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞がFcγRIIIのみを発現するのに対し、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-92 (1991)の464ページの表3に要約されている。対象とする分子のADCC活性を評価するために、例えば米国特許第5500362号又は同第5821337号に記載されているようなインビトロADCCアッセイを実施することができる。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む。或いは又は加えて、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynes et al., PNAS USA 95:652-656 (1998)に開示されているような動物モデルにおいて、インビボで評価することができる。
【0101】
「Fc受容体」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を意味する。好ましいFcRはヒトFcRである。更に、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)と結合するものであり、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIサブクラスの受容体を含み、これらの受容体の対立遺伝子変異体及び代替的にスプライスされた形態も含む。FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化型受容体」)及びFcγRIIB(「抑制型受容体」)を含み、これらは、その細胞質ドメインが主に異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化型受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメイン中に免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含む。抑制型受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメイン中に免疫受容体抑制性チロシンモチーフ(ITIM)を含む(概説Daeron, Annu. Rev. Immunol. 15:203-234 (1997)を参照のこと)。FcRsは、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-492 (1991); Capel et al., Immunomethods 4:25-34 (1994); and de Haas et al., J. Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995)に概説されている。将来的に同定されることになるものを含め、他のFcRは、本明細書においては用語「FcR」に包含される。この用語には、胎児への母親のIgGの移行を担う新生児の受容体FcRnも含まれる(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976) and Kim et al., J. Immunol. 24:249 (1994))。
【0102】
「ヒトエフェクター細胞」とは、一又は複数のFcRを発現し、エフェクター機能を実行する白血球である。好ましくはその細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例は、末梢血液単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞障害性T細胞及び好中球を含むが、PBMCとNK細胞が好ましい。エフェクター細胞は、天然の供給源、例えば血液から単離することができる。
【0103】
「補体依存性細胞傷害」又は「CDC」は、補体の存在下での標的細胞の溶解を指す。標準的補体経路の活性化は、補体系の第1の成分(C1q)の、それらの同種抗原に結合した(適切なサブクラスの)抗体への結合により開始される。補体活性化を評価するため、例えばGazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載のようにCDCアッセイを実行することができる。
【0104】
用語「治療的有効量」は、対象の疾患又は障害を治療するための抗体、抗体断片、又は誘導体の量を指す。腫瘍(例えばがん性腫瘍)の場合、抗体又は抗体断片(例えば、多重特異性抗体又は抗体断片)の治療的有効量は、がん細胞数を減少させ;原発腫瘍の大きさを縮小させ;末梢器官へのがん細胞浸潤を阻害し(即ち、ある程度遅らせ、好ましくは停止させる);腫瘍転移を阻害し(即ち、ある程度遅らせ、好ましくは停止させる);腫瘍増殖をある程度阻害し;及び/又は障害に関連する一又は複数の症状をある程度緩和することができる。抗体又は抗体断片が増殖を防ぎ、及び/又は既存のがん細胞を死滅させうる範囲で、この量は細胞増殖抑制性及び/又は細胞毒性でありうる。がん療法の場合、インビボでの有効性は、例えば、生存期間、無増悪期間(TTP)、奏功率(RR)、奏功期間,及び/又はQOLを評価することにより測定可能である。
【0105】
「減少させる」又は「阻害する」とは、好ましくは20%以上、更に好ましくは50%以上、最も好ましくは75%、85%、90%、95%以上の全体的減少を引き起こす能力を意味する。低減する又は阻害するとは、治療される疾患の症候、転移の存在又は大きさ、原発腫瘍の大きさ、又は血管新生障害における血管の大きさ若しくは数に言及することができる。
【0106】
用語「がん」及び「がん性」は、制御されない細胞成長/増殖を典型的な特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指す又は説明する。この定義には、良性及び悪性のがんが含まれる。がんの例には、限定されないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫及び白血病が含まれる。このようながんのより具体的な例には、扁平上皮細胞がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜のがん、肝細胞がん、消化管がんを含む胃(gastric又はstomach)がん、膵がん、神経膠芽腫、神経膠腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、ヘパトーマ、乳がん、大腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜又は子宮癌腫、唾液腺癌腫、腎臓がん(例えば、腎細胞癌)、肝臓がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝癌、肛門癌腫、陰茎癌、メラノーマ、及び種々の頭頸部がんが含まれる。「早期がん」は、浸潤性でも転移性でもないがんを意味するか、又はステージ0、I、若しくはIIのがんに分類される。用語「前がん性」は、典型的にがんに先行する又はがんに発展する状態又は増殖を指す。「非転移性」とは、良性であるがん、或いは原発部位に留まっているがんで、リンパ管系若しくは血管系又は原発部位以外の組織に浸透していないがんを意味する。一般に、非転移性がんはステージ0、I又はIIのがんである任意のがんであり、時にステージIIIのがんである。
【0107】
「アレルギー性又は炎症性障害」は、本明細書においては、個体の免疫系の過剰活性化に起因する疾患又は障害である。例示的なアレルギー性又は炎症性障害には、限定されないが、喘息、乾癬、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、多発性硬化症、全身紅斑性狼瘡、湿疹、臓器移植、加齢黄斑変性症、クローン病、潰瘍性大腸炎、好酸球性食道炎、及び炎症に関連付けられる自己免疫疾患が含まれる。
【0108】
本明細書における「自己免疫疾患」は、個体自体の組織から生じて同組織に向かう若しくは障害、又はその共分離若しくは徴候、又はそれらから生じる状態である。自己免疫疾患又は障害の例には、限定されないが、関節炎(関節リウマチ、例えば急性関節炎、慢性関節リウマチ、痛風性関節炎、急性痛風性関節炎、慢性炎症性関節炎、変形性関節炎、感染性関節炎、ライム関節炎、増殖性関節炎、乾癬性関節炎、脊椎関節炎、及び若年発症型関節リウマチ、変形性関節症、慢性進行性関節炎(arthritis chronica progrediente)、変形性関節炎(arthritis deformans)、初期慢性多発性関節炎(polyarthritis chronica primaria)、反応性関節炎、及び強直性脊椎炎)、炎症性過剰増殖皮膚疾患、乾癬、例えば尋常性乾癬、滴状乾癬、嚢胞性乾癬、及び爪の乾癬,接触性皮膚炎、慢性接触性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎、疱疹状皮膚炎、及びアトピー性皮膚炎を含む皮膚炎、x連鎖高IgM症候群、じん麻疹、例えば慢性自己免疫性じん麻疹を含む慢性アレルギー性じん麻疹及び慢性特発性じん麻疹,多発筋炎/皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、中毒性皮膚壊死症、強皮症(全身性強皮症を含む)、硬化症、例えば全身性硬化症、多発性硬化症(MS)、例えば脊椎-眼MS、原発性進行性MS(PPMS)、及び再発寛解型MS(RRMS)、進行性全身性硬化症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化、多発性硬化症(sclerosis disseminate)、及び失調性硬化症、炎症性腸疾患(IBD)(例えば、クローン病、自己免疫-媒介型胃腸疾患、大腸炎、例えば潰瘍性大腸炎、潰瘍性結腸炎、顕微鏡的大腸炎、コラーゲン大腸炎、ポリープ性大腸炎、壊死性腸炎、及び貫壁性大腸炎、及び己免疫性炎症性腸疾患)、壊疽性膿皮症、結節性紅斑、原発性硬化性胆管炎、上強膜炎)、成人又は急性呼吸促迫症候群(ARDS)を含む呼吸促迫症候群、髄膜炎、ブドウ膜の全部又は一部の炎症、虹彩炎、脈絡膜炎、自己免疫性血液学的疾患、リウマチ性脊椎炎、突発性難聴、IgE媒介性疾患、例えばアナフィラキシー並びにアレルギー性及びアトピー性鼻炎、脳炎、例えばラスムッセン脳炎並びに辺縁系及び/又は脳幹脳炎、ブドウ膜炎、例えば前部ブドウ膜炎、急性前部ブドウ膜炎、肉芽腫性ブドウ膜炎、非肉芽腫性ブドウ膜炎、水晶体抗原性ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎、又は自己免疫性ブドウ膜炎、ネフローゼ症候群を伴う又は伴わない糸球体腎炎(GN)、例えば慢性若しくは急性糸球体腎炎、例えば原発性GN、免疫介在性GN、膜性GN(膜性腎症)、特発性膜性GN又は特発性膜性腎障害、I型及びII型、及び急速進行性GNを含む、膜-又は膜性増殖性GN(MPGN)、アレルギー症状、アレルギー性反応,アレルギー性若しくはアトピー性湿疹を含む湿疹、喘息、例えば気管支喘息(asthma bronchiale)、気管支喘息(bronchial asthma)、及び自己免疫性喘息、T細胞の浸潤及び慢性炎症性応答を伴う状態、慢性炎症性肺疾患、自己免疫性心筋炎、白血球粘着不全症、全身性紅斑性狼瘡(SLE)又は全身性エリテマトーデス、例えば皮膚性SLE、亜急性皮膚性紅斑性狼瘡、新生児狼瘡症候群(NLE)、播種性紅斑性狼瘡、狼瘡(腎炎、脳炎、小児性、非腎性、腎外、円形脱毛症を含む)、小児インスリン依存性糖尿病(IDDM)を含む若年発症型(I型)糖尿病、成人発症型糖尿病(II型糖尿病)、自己免疫糖尿病、特発性尿崩症、サイトカイン及びTリンパ球によって媒介される急性及び遅延過敏症に関連付けられる免疫応答、結核、サルコイドーシス、リンパ腫様肉芽腫症、ウェグナー肉芽腫症を含む肉芽腫症、無顆粒細胞症,脈管炎(大血管脈管炎(リウマチ性多発筋痛症及び巨細胞(高安)動脈炎を含む)、中血管脈管炎(川崎病及び結節性多発動脈炎を含む)、顕微鏡的多発動脈炎、中枢神経系脈管炎、壊死性、皮膚性、又は過敏症脈管炎、全身性壊死性脈管炎、及びANCA関連脈管炎、例えばチャーグストラウス脈管炎若しくは症候群(CSS)を含む)を含む血管炎、側頭動脈炎、再生不良性貧血、自己免疫再生不良性貧血、クームス陽性貧血症、ダイヤモンドブラックファン貧血症、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)を含む溶血性貧血又は免疫溶血性貧血、悪性貧血(貧血症悪性熱)、アディソン病、純赤血球貧血症若しくは欠如症(PRCA)、第VIII因子欠乏症、血友病A、自己免疫性好中球減少症、汎血球減少、白血球減少症、白血球の血管外遊出を伴う疾患、中枢神経系炎症性疾患、多臓器損傷症候群、例えば敗血症、心的外傷若しくは出血に二次的なもの、抗原-抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病、キャッスルマン症候群、グッドパスチャー症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンス-ジョンソン症候群、類天疱瘡、例えば類天疱瘡水泡性及び皮膚性類天疱瘡、天疱瘡(尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、天疱瘡粘膜類天疱瘡、及び紅斑性天疱瘡を含む)、自己免疫性多腺性内分泌不全症、ライター病若しくは症候群、免疫複合体性腎炎、抗体媒介性腎炎、視神経脊髄炎、多発ニューロパチー、慢性ニューロパチー、例えばIgM多発ニューロパチー又はIgM媒介性ニューロパチー、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)及び自己免疫性若しくは免疫媒介性血小板減少症を含む血小板減少症(例えば心筋梗塞患者に発生するもの)、例えば慢性若しくは急性ITPを含む特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、自己免疫精巣炎及び卵巣炎を含む精巣及び卵巣の自己免疫疾患、原発性甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、甲状腺炎を含む自己免疫性内分泌疾患、例えば自己免疫性甲状腺炎、橋本病、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、又は亜急性甲状腺炎、自己免疫性甲状腺疾患、特発性甲状腺機能低下症、グレーブス病、多腺性症候群、例えば自己免疫性多腺性症候群(又は多腺性内分泌障害症候群)、神経性腫瘍随伴症候群を含む腫瘍随伴症候群、例えばランバートイートン筋無力症候群若しくはイートンランバート症候群、スティフマン若しくは全身硬直症候群、脳脊髄炎、例えばアレルギー性脳脊髄炎若しくは脳脊髄炎(encephalomyelitis allergica)及び実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、重症筋無力症、例えば胸腺腫関連重症筋無力症、小脳変性、神経性筋緊張病、眼球クローヌス又は眼球クローヌス・ミオクローヌス運動失調症候群(OMS)、及び間隔性ニューロパチー、多巣性運動ニューロパチー、シーハン症候群、自己免疫性肝炎、慢性肝炎、ルポイド肝炎、巨細胞肝炎、慢性活動性肝炎又は自己免疫性慢性活動性肝炎、リンパ性間質性肺炎、閉塞性細気管支炎(非移植)対NSIP、ギランバレー症候群、ベルガー病(IgA腎障害)、特発性IgA腎障害、線状IgA皮膚炎、原発性胆汁性肝硬変、肺線維症、自己免疫性腸症症候群、セリアック病、小児脂肪便症、セリアック病(celiac sprue)(グルテン腸症)、難治性スプルー、特発性スプルー、低温型グロブリン血症、筋委縮性側索硬化症(ALS;ルー・ゲーリック病)、冠動脈疾患、自己免疫性耳疾患、例えば自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性聴力低下、眼球クローヌス・ミオクローヌス運動失調症候群(OMS)、多発性軟骨炎、例えば難治性若しくは再発性多発性軟骨炎、肺胞たん白症、アミロイドーシス、強膜炎、非がん性リンパ球増加症、モノクローナルB細胞リンパ球増加症(例えば、良性単クローン性ガンマグロブリン血症及び意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS))を含む原発性リンパ球増加症、末梢神経障害、腫瘍随伴症候群、チャネル病、例えばてんかん、片頭痛、不整脈、筋障害、聴覚消失、盲目、周期性麻痺、及び中枢神経系のチャネル病、自閉症、炎症性ミオパシー、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、内分泌性眼障害、網膜ぶどう膜炎、網脈絡膜炎、自己免疫性血液疾患、線維筋痛症、多発性内分泌腺不全、シュミット症候群、副腎炎、胃萎縮、初老期認知症、脱髄疾患、例えば自己免疫性脱髄疾患、糖尿病性腎障害、ドレスラー症候群、円形脱毛症、CREST症候群(石灰症、レーノー現象、食道蠕動低下、強指症、及び毛細管拡張症)、男性及び女性の自己免疫性不妊症、混合性結合組織病、ジャガス病、リウマチ熱、反復流産、農夫肺、多形紅斑、心切開術後症候群、下垂体好塩基細胞腺腫、トリ愛好者肺、アレルギー性肉芽腫性脈管炎、良性リンパ性脈管炎、アルポート症候群、肺胞炎、例えばアレルギー性肺胞炎及び線維性肺胞炎、間質性肺疾患、輸血反応、ハンセン病、マラリア、リーシュマニア症、キパノシミアシス(kypanosomiasis)、住血吸虫症、回虫症、アスペルギルス症、サンプター(Sampter’s)症候群、カプラン症候群、デング熱、心内膜炎、心内膜心筋線維症、びまん性間質性肺線維症、間質性肺線維症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑、胎子赤芽球症、好酸球性筋膜炎、シュルマン症候群、フェルティ症候群、フィラリア症、毛様体炎、例えば慢性毛様体炎、異時性毛様体炎、虹彩毛様体炎、若しくはフックス毛様体炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症、エコーウイルス感染症、心筋症、アルツハイマー病、パルボウイルス感染症、風疹ウイルス感染症、予防接種後症候群、先天性風疹感染症、エプスタイン・バーウイルス感染症、おたふくかぜ、エヴァンズ症候群、自己免疫性腺機能不全、シドナム舞踏病、連鎖球菌感染後腎炎、閉塞性血栓血管炎、甲状腺中毒症、脊髄ろう、脈絡膜炎、巨細胞多発性筋痛、内分泌性胃眼障害、慢性過敏性肺炎、乾性角結膜炎、流行性角結膜炎、特発性腎延性症候群、微小変化群腎障害、良性家族性及び虚血再灌流傷害、網膜自己免疫、関節炎、気管支炎、慢性閉塞性気道疾患、ケイ肺症、アフタ、アフタ性口内炎、動脈硬化性障害、精子形成欠如(aspermiogenese)、自己免疫性溶血、ベック病、低温型グロブリン血症、デピュイトラン拘縮、水晶体過敏性眼内炎、結節性腸炎、らい性結節性紅斑、特発性顔面麻痺、慢性疲労症候群、リウマチ熱、ハンマン・リッチ病、感音性難聴、ヘモグロビン尿症発作、性腺機能低下症、回腸炎、白血球減少症、単核球感染症、横断性脊髄炎、原発性特発性粘液水腫、ネフローゼ、眼科症候群、抗癌肉芽腫、膵炎、多発性硬化症、壊疽性膿皮症、カーベーン甲状腺炎、後天性脊髄萎縮、抗精子抗体による不妊症、非悪性胸腺腫、白斑、SCID及びエプスタイン・バーウイルス-関連疾患、後天性免疫不全症候群(AIDS)、寄生虫病、例えばリーシュマニア属、毒素ショック症候群、食中毒、T細胞の浸潤を伴う状態、白血球粘着不全症、サイトカイン及びTリンパ球によって媒介される急性及び遅延性過敏症に関連する免疫応答、白血球の血管外遊出を伴う疾患、多臓器損傷症候群、抗原-抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、アレルギー性神経炎、自己免疫性多発性内分泌障害、卵巣炎、原発性粘液水腫、自己免疫性萎縮性胃炎、交感性眼炎、リウマチ性疾患、混合性結合組織病、ネフローゼ症候群、膵島炎、多内分泌不全、末梢神経障害、I型自己免疫性多腺性症候群、成人発症型特発性副甲状腺機能低下症(AOIH)、完全脱毛症、拡張型心筋症、後天性表皮水泡症(EBA)、ヘモクロマトーシス、心筋炎、ネフローゼ症候群、原発性硬化性胆管炎、化膿性若しくは非化膿性副鼻腔炎、急性若しくは慢性副鼻腔炎、篩骨、前頭骨、上顎骨、若しくは蝶形骨の副鼻腔炎、好酸球関連障害、例えば、好酸球増加、好酸球増多症を伴う肺浸潤、好酸球増多筋痛症候群、レフラー症候群、慢性好酸球性肺炎、熱帯性肺好酸球増多症、気管支肺アスペルギルス症、アスペルギルス菌種、又は好酸球を含有する肉芽腫、アナフィラキシー、血清陰性脊椎関節炎、多分内分泌自己免疫性疾患、硬化性胆管炎、強膜、上強膜、慢性皮膚粘膜カンジダ症、ブルートン症候群、幼児期の一過性低ガンマグロブリン血症、ウィスコット・アルドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調、
コラーゲン疾患に関連する自己免疫性障害、リウマチ、神経性疾患、虚血性再灌流障害、血圧応答の低下、血管機能不全、抗結核症、組織傷害、心血管虚血、痛覚過敏、脳虚血、及び血管新生に付随する疾患、アレルギー性過敏症障害、糸球体腎炎、再灌流傷害、心筋若しくは他の組織の再灌流傷害、急性炎症成分を有する皮膚疾患、急性化膿性髄膜炎又はその他の中枢神経系炎症性障害、眼球及び眼窩の炎症性障害、顆粒球輸血関連症候群、サイトカイン誘導毒性、急性重篤感染症、慢性難治性炎症、腎盂炎、肺線維症、糖尿病網膜症、糖尿病性大血管障害、動脈内膜過形成、消化性潰瘍、弁膜炎、及び子宮内膜症が含まれる。
【0109】
本明細書で使用される場合の用語「細胞傷害性剤」は、細胞の機能を阻害又は阻止し、及び/又は細胞破壊をもたらす物質を指す。この用語は、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、Ra223、P32及びLuの放射性同位体)、化学療法剤(例えば、メトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン又は他の挿入剤)、酵素及びその断片、例えば核酸分解酵素、抗生物質、小分子毒素などの毒素、又は細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素活性毒素(その断片及び/又はその変異体を含む)、及び本明細書に開示される様々な抗腫瘍剤、抗がん剤及び化学療法剤を含むことが意図される。他の細胞傷害性剤が本明細書に記載される。殺腫瘍剤は、腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
【0110】
「化学療法剤」は、がんの治療に有用な化学的化合物である。化学療法剤の例には、アルキル化剤、例えばチオテパ及びCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミド;アルキルスルホネート、例えばブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン;アジリジン、例えばベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、ツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa);アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むメチルアミルアミン及びエチレンイミン;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成類似物トポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン(scopolectin)、及び9-アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドレゼシン、カルゼルシン及びビゼレシン合成アナログを含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;ズオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタン(pancratistatin);サルコジクチイン;スポンギスタチン(spongistatin);ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン(estramustine)、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミン酸化塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニマスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン;抗生物質、例えばエンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンガンマー1(例えば、Agnew, Chem Intl. Ed. Engl. 33: 183-186 (1994)参照);ダイネミシン(dynemicin)Aを含むダイネミシン;エスペラミシン;並びにネオカルジノスタチン発色団及び関連の色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシス(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えばマイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗剤、例えばメトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸アナログ、例えばデノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリンアナログ、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン、例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補液、例えばフォリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビスアントレン;エダトレキサート;デフォファミン(defofamine);デモコルシン;ジアジクオン;エフロルニチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;メイタンシノイド、例えばメイタンシン及びアンサマイトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトレリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products,Eugene,OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えば、TAXOL(登録商標)パクリタキセル(Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,NJ)、ABRAXANETM Cremophorフリー、パクリタキセルのアルブミン操作されたナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners、Schaumberg、IL)、及びTAXOTERE(登録商標)ドセタキセル(doxetaxel)(Rhone-Poulenc Rorer,Antony,France);クロラムブシル;ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標));6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金アナログ、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボリン;ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えばレチノイン酸;カペシタビン(XELODA(登録商標));上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体;並びに上記のうちの二つ以上の組み合わせ、例えばCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾロンの併用療法の略)、及びFOLFOX(5-FU及びロイコボリンと組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATINTM)を用いた治療レジメンの略)が含まれる。
【0111】
この定義に更に含まれるのは、がんの増殖を促進しうるホルモンの作用を調節、低減、ブロック又は阻害するように作用し、且つしばしば全身性、若しくは全身治療の形態の抗ホルモン剤である。これらはそれ自体がホルモンである。これらの例には、抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)(例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、EVISTA(登録商標)ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びFARESTON(登録商標)トレミフェンを含む);抗プロゲステロン;エストロゲン受容体下方制御因子(ERD);卵巣を抑制又は閉鎖するように機能する薬剤、例えば、LUPRON(登録商標)及びELIGARD(登録商標)ロイプロリドアセテート、酢酸ゴセレリン、ブセレリン酢酸塩及びトリプテレリン(tripterelin)といった黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト;他の抗アンドロゲン、例えばフルタミド、ニルタミド及びビカルタミド;並びに例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲストロール、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、ホルメスタン、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール、及びARIMIDEX(登録商標)アナストロゾ-ルといった、酵素アロマターゼを阻害し、副腎におけるエストロゲン生成を調節するアロマターゼ阻害剤が含まれる。加えて、化学療法剤のこのような定義には、ビスホスホネート、例えばクロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)又はOSTAC(登録商標))、DIDROCAL(登録商標)エチドロネート、NE-58095、ZOMETA(登録商標)ゾレドロン酸/ゾレドロネート、FOSAMAX(登録商標)アレンドロネート、AREDIA(登録商標)パミドロネート、SKELID(登録商標)チルドロネート、又はACTONEL(登録商標)リゼドロネート;並びにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に異常な細胞増殖に関与しているシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えば、PKC-アルファ、Raf、H-Ras、及び上皮増殖因子受容体(EGF-R);ワクチン、例えばTHERATOPE(登録商標)ワクチン及び遺伝子療法ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、及びVAXID(登録商標)ワクチン;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;トシル酸ラパチニブ(GW572016としても知られるErbB-2及びEGFR二重チロシンキナーゼ小分子阻害剤);並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体が含まれる。
【0112】
本明細書において使用される場合の「増殖阻害剤」は、細胞の増殖をインビトロ又はインビボで阻害する化合物又は組成物を指す。したがって、増殖阻害剤は、S期で細胞の割合を有意に減少させるものでありうる。増殖阻害剤の例は、細胞周期の進行を(S期以外の位置で)遮断する薬剤、例えばG1停止又はM期停止を誘発する薬剤を含む。古典的なM期ブロッカーは、ビンカス(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン類、及びトポイソメラーゼII阻害剤、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンを含む。またG1停止させるこのような薬剤は、S期停止にも波及し、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びアラ-Cである。更なる情報は、The Molecular Basis of Cancer, Mendelsohn and Israel, eds., Chapter 1, entitled "Cell cycle regulation, oncogenes, and antineoplastic drugs" by Murakami et al. (WB Saunders: Philadelphia, 1995)、特にp.13に見出すことができる。タキサン類(パクリタキセル及びドセタキセル)は、共にイチイに由来する抗がん剤である。ヨーロッパイチイに由来するドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、ローン・プーランローラー)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、ブリストル-マイヤースクウィブ)の半合成アナログである。パクリタキセル及びドセタキセルは、チューブリン二量体からの微小管の集合を促進し、細胞の有糸分裂を阻害する結果を招く脱重合を防ぐことによって微小管を安定化する。
【0113】
本明細書において使用される「抗がん治療」は、対象のがんを低減又は阻害する治療を指す。抗がん治療の例には、細胞傷害性放射線療法、並びに対象に対する治療的有効量の細胞傷害性剤、化学療法剤、増殖阻害剤、がんワクチン、血管新生阻害剤、プロドラッグ、サイトカイン、サイトカインアンタゴニスト、コルチコステロイド、免疫抑制剤、制吐薬、抗体若しくは抗体断片、又は鎮痛剤の投与が含まれる。
【0114】
本明細書において使用される用語「プロドラッグ」は、親薬物と比較して腫瘍細胞に対する細胞障害性が低く、且つ酵素的に活性化可能若しくは更に活性な親形態に変換可能な薬学的に活性な物質の前駆体若しくは誘導体形態を指す。例えば、Wilman, "Prodrugs in Cancer Chemotherapy” Biochemical Society Transactions, 14, pp. 375-382, 615th Meeting Belfast (1986) and Stella et al., "Prodrugs: A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery,” Directed Drug Delivery, Borchardt et al., (ed.), pp. 247-267, Humana Press (1985)参照。プロドラッグには、限定されないが、ホスフェート含有プロドラッグ、チオホスフェート含有プロドラッグ、硫酸塩含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D-アミノ酸修飾されたプロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、ベータ-ラクタム含有プロドラッグ、置換されていてもよいフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ若しくは置換されていてもよいフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、更に活性な細胞傷害性のない薬物に変換可能な5-フルオロサイトシン及びその他5-フルオロウリジンプロドラッグが含まれる。本発明における使用のためにプロドラッグ形態に誘導化することのできる細胞傷害性薬物の例には、限定されないが、上記のような化学療法剤が含まれる。
【0115】
用語「サイトカイン」は、一つの細胞集団により放出されるタンパク質であって、他の細胞に対して細胞間メディエーターとして作用するタンパク質の総称である。このようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、及び従来のポリペプチドホルモンである。サイトカインには、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン(HGH)、N-メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラクシン;プロリラクシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)のような糖タンパク質ホルモン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体ホルモン(LH);上皮増殖因子(EGF);肝臓成長因子;線維芽細胞成長因子(FGF);プロラクチン;胎盤性ラクトゲン;腫瘍壊死因子アルファ及び腫瘍壊死因子ベータ;ミュラー管抑制因子;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGFアルファなどの神経成長因子;血小板成長因子;TGFアルファ及びTGFベータのようなトランスフォーミング増殖因子(TGF);インスリン様成長因子I及びII;エリスロポイエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロンアルファ、ベータ及びガンマのようなインターフェロン;マクロファージCSF(M-CSF)のようなコロニー刺激因子(CSF);顆粒球マクロファージCSF(GM-CSF);及び顆粒球CSF(G-CSF);IL-1、IL-1アルファ、IL-1ベータ、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-18等のインターロイキン(IL);TNF-アルファ又はTNF-ベータのような腫瘍壊死因子;及びLIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が含まれる。本明細書で使用される場合、用語サイトカインは天然源由来又は組み換え細胞培養物由来のタンパク質、及び天然配列サイトカインの生物的に活性な等価物を含む。
【0116】
「サイトカインアンタゴニスト」が意味するのは、少なくとも一つのサイトカインの生物活性を部分的若しくは完全にブロック、阻害又は中和する分子である。例えば、サイトカインアンタゴニストは、サイトカインの発現及び/又は分泌を阻害することにより、又はサイトカイン若しくはサイトカイン受容体に結合することにより、サイトカイン活性を阻害することができる。サイトカインアンタゴニストには、サイトカイン若しくはサイトカイン受容体に結合する抗体、合成若しくは天然配列ペプチド、イムノアドヘシン、及び小分子アンタゴニストが含まれる。サイトカインアンタゴニストは、細胞傷害性剤にコンジュゲート又は融合してもよい。例示的TNFアンタゴニストは、エタネルセプト(ENBREL(登録商標))、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、及びアダリムマブ(ヒュミラTM)である。
【0117】
本明細書において用いられる用語「免疫抑制剤」は、治療される対象の免疫系を抑制又は遮断するように働く物質を表す。これは、サイトカイン産生を抑制する、自己抗原の発現を下方制御又は抑制する、或いはMHC抗原を遮断する物質を含む。免疫抑制剤の例には、2-アミノ-6-アリール-5-置換ピリミジン(米国特許第4665077号参照);ミコフェノール酸モフェチル、例えばCELLCEPT(登録商標);アザチオプリン(IMURAN(登録商標)、AZASAN(登録商標)/6-メルカプトプリン;ブロモクリプチン;ダナゾール;ダプソン;グルタルアルデヒド(米国特許第4120649に記載のようにMHC抗原を遮蔽する,);MHC抗原及びMHC断片に対する抗イデオタイプ抗体;シクロスポリンA;コルチコステロイド及びグルココルチコステロイドのようなステロイド、例えば、プレドニゾン、プレドニゾロン、例えばPEDIAPRED(登録商標)(リン酸プレドニゾロンナトリウム)若しくはORAPRED(登録商標)(リン酸プレドニゾロンナトリウム経口液剤)、メチルプレドニゾロン、及びデキサメタゾン;メトトレキサート(経口若しくは皮下)(RHEUMATREX(登録商標)、TREXALLTM);ヒドロキシクロロキン/クロロキン;スルファサラジン;レフルノミド;サイトカイン若しくはサイトカイン受容体アンタゴニスト(抗インターフェロン-γ、-β、若しくは-α抗体、抗腫瘍壊死因子-α抗体(インフリキシマブ若しくはアダリムマブ)、抗TNFαイムノアドヘシン(ENBREL(登録商標)、エタネルセプト)、抗腫瘍壊死因子-β抗体、抗インターロイキン-2抗体及び抗IL-2受容体抗体を含む);抗LFA-1抗体(抗CD11a及び抗CD18抗体を含む);抗L3T4抗体;異種性抗リンパ球グロブリン;ポリクローナル若しくはpan-T抗体、又はモノクローナル抗CD3若しくは抗CD4/CD4a抗体;LFA-3結合ドメインを含む可溶型ペプチド(国際公開第90/08187号);ストレプトキナーゼ;TGF-β;ストレプトドルナーゼ;宿主由来のRNA若しくはDNA;FK506;RS-61443;デオキシスペルグアリン;ラパマイシン;T細胞受容体(Cohenら、米国特許第5114721号);T細胞受容体断片(Offner et al. Science 251: 430-432 (1991);国際公開第90/11294号;Ianeway, Nature 341:482 (1989);及び国際公開第 91/01133号);T細胞受容体抗体(EP340109)、例えばT10B9;シクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標));ダプソン;ペニシラミン(CUPRIMINE(登録商標));血漿交換;又は静脈内免疫グロブリン(IVIG)が含まれる。これらは、単独で又は互いに組み合わせて使用することができ、特にステロイドと別の免疫抑制剤の組み合わせ、又はそのような組み合わせとそれに続いて維持量の非ステロイド剤を使用することでステロイドの必要性を低減することができる。
【0118】
「鎮痛剤」は、対象の痛みを阻害又は抑制するように作用する薬物を指す。例示的な鎮痛剤には、イブプロフェン(MOTRIN(登録商標))、ナプロキセン(NAPROSYN(登録商標))、アセチルサリチル酸、インドメタシン、スリンダク、及びトルメチン(その塩及び誘導体を含む)、並びに起こりうる刺すような痛みを低減するために使用される他の様々な医薬品(抗けいれん薬(ガバペンチン、フェニトイン、カルバマゼピン)又は三環系抗うつ薬)を含む非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)が含まれる。特定の例には、アセトアミノフェン、アスピリン、アミトリプチリン(ELAVIL(登録商標))、カルバマゼピン(TEGRETOL(登録商標))、フェニトイン(DILANTIN(登録商標))、ガバペンチン(NEURONTIN(登録商標)),(E)-N-バニリル-8-メチル-6-ノネアミド(noneamid)(CAPSAICIN(登録商標))、又は神経ブロッカーが含まれる。
【0119】
「副腎皮質ステロイド」は、天然に存在する副腎皮質ステロイドの効果を模倣するか又は増大させるステロイドの一般的化学構造を有する合成又は天然の複数の物質のいずれかを指す。合成副腎皮質ステロイドの例は、プレドニゾン、プレドニゾロン(メチルプレドニゾロンを含む)、デキサメタゾン、トリアムシノロン及びベタメサゾンを含む。
【0120】
本明細書において使用される「がんワクチン」は、がんに対する対象の免疫応答を刺激する組成物である。がんワクチンは、典型的には、対象に自家性(それ自体に由来)又は同種(他に由来)であるがん関連物質又は細胞(抗原)源と、抗原に対する免疫応答を更に刺激して高める他の成分(例えば、アジュバント)とからなる。がんワクチンは、結果として、対象の免疫系を刺激して、一又は複数の特異的な抗原に対する抗体を生成する、及び/又はそのような抗原を有するがん細胞を攻撃するキラーT細胞を生成することができる。
【0121】
本明細書において使用される「細胞傷害性放射線療法」は、細胞の機能を阻害又は阻止する及び/又は細胞の破壊を引き起こす放射線療法を指す。放射線療法には、例えば、外部ビーム照射又は放射性標識薬剤、例えば抗体を用いた療法が含まれる。この用語は、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、Ra223、P32、及びLuの放射性同位体)の使用を含むことを意図している。
【0122】
「対象」は、哺乳動物のような脊椎動物、例えばヒトである。哺乳動物には、限定されないが、家畜(例えばウシ)、競技用動物、愛玩動物(例えばネコ、イヌ及びウマ)、霊長類、マウス、及びラットが含まれる。
【0123】
文脈により別途示される場合を除き、用語「第1の」ヒンジ含有ポリペプチド及び「第2の」ヒンジ含有ポリペプチド、並びにその変形例は、単に総称識別子であり、本発明の特異的な又は特定のポリペプチド若しくは抗体の成分を同定するものではない。
【0124】
実施例において言及されている市販の試薬(もしあれば)は、特に示さない限りは製造者の指示に従って使用された。以下の実施例において及び本明細書を通じて、ATCC 寄託番号により同定されるこのような細胞(もしあれば)の入手源は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(Manassas、VA)である。別途指定のない限り、本発明は、上記及び以下の参照文献に記載されるような、組み換えDNA技術の標準的な手順を用いる。Sambrook et al., supra; Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (Green Publishing Associates and Wiley Interscience, NY, 1989); Innis et al., PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications (Academic Press, Inc., NY, 1990); Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, 1988); Gait, Oligonucleotide Synthesis (IRL Press, Oxford, 1984); Freshney, Animal Cell Culture, 1987; Coligan et al., Current Protocols in Immunology, 1991。
【0125】
本明細書及び特許請求の範囲を通じて、「含む」という単語又は「含んでいる」のようなその変形例は、言及された整数又は整数の組を含むが、他のいずれの整数又は整数の組も除外しないと理解されたい。
【0126】
本明細書に記載される本発明の態様及び実施態様は、態様及び実施態様「からなる」及び/又は「から本質的になる」ことを含む。
【0127】
本明細書中の「約」の値又はパラメーターへの言及は、その値又はパラメーター自体に対するバリエーションを含む(及び記述する)。例えば、「約X」に言及する記述には、「X」の記述が含まれる。
【0128】
本明細書において使用される場合、単数形「a」、「or」、及び「the」は、文脈が明らかに他を指さない限り複数系を含む。本明細書及び特許請求の範囲に記載の本発明の態様及び変形例は、態様及び変形例「からなる」及び/又は「から本質的になる」ことを含む。
【0129】
II.哺乳動物宿主細胞におけるヘテロ多量体タンパク質の調製方法
現行の技術を用いたヘテロ多量体タンパク質、例えば、多重特異性抗体の生成は、中でも生成物の混合物の生成、収率の低下及びエフェクター機能の低減/消失を含む欠点を有する。したがって、ヘテロ多量体タンパク質を効率的に且つ高レベルで生成することが望ましい。
【0130】
様々な手段による抗体分子の生成が一般によく理解されている。米国特許第6331415号(Cabillyら)は、例えば、重鎖及び軽鎖が単一細胞内において単一のベクター又は二つの別個のベクターから同時に発現される免疫グロブリンの組み換え生成のための方法について記載している。Wibbenmeyer et al., (1999, Biochim Biophys Acta 1430(2): 191 -202) and Lee and Kwak (2003, J. Biotechnology 101 :189-198)は、大腸菌の別個の培養物中に発現されるプラスミドを用いて別々に生成された重鎖及び軽鎖からのモノクローナル抗体の生成について記載している。抗体の生成に関する他の様々な技術は、例えば、Harlow, et al.,ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., (1988)及び国際公開第2006028936号に記載されている。しかしこれらの各々は、低収率、化学物質の使用といった欠点を有している。
【0131】
本明細書に提供される方法は、第1の哺乳動物の宿主細胞から発現及び分泌される第1のヒンジ含有ポリペプチド及び第1の軽鎖と、第2の哺乳動物の宿主細胞から発現及び分泌される第2のヒンジ含有ポリペプチド及び第2の軽鎖が混合培養培地内で集まってヘテロ多量体タンパク質を形成するという驚くべき発見に基づいている。以下に詳細に説明するように、混合培養培地は、第1の哺乳動物の宿主細胞を第1の細胞培養物中において培養し、第2の哺乳動物の宿主細胞を第2の細胞培養物中において培養し、第1及び第2の培養培地を、第1及び第2の宿主細胞の細胞膜を破壊することなく回収し、回収された第1及び第2の培養培地を混合してヘテロ多量体タンパク質を含む混合培養培地を得ることにより得ることができる。別法では、混合培養培地は、第1及び第2の哺乳動物の宿主細胞を混合細胞培養物中において培養し、混合培養物から、ヘテロ多量体タンパク質を含む混合された細胞培地を回収することにより得ることができる。特定の実施態様では、回収する工程は、第1及び/又は第2の宿主細胞を、細胞膜を破壊することなく除去することを含む。
【0132】
一般に真核細胞のタンパク品質管理系(例えば哺乳動物細胞)は効率的に不完全抗体を生成できないと考えられていたため、本明細書に提供される方法は驚くべきものである。例えば、Spiess et al. (2013) Nature, 31(8): 753-758参照。
【0133】
本発明者らはまた、驚くべきことに、ヘテロ多量体タンパク質が、第1の宿主細胞によって分泌された、二つの第1のヒンジ含有ポリペプチド及び二つの第1の軽鎖を含む第1のホモ二量体と、第2の宿主細胞によって分泌された、二つの第2のヒンジ含有ポリペプチド及び二つの第2の軽鎖を含む第2のホモ二量体とを含む混合培養培地中において、還元条件下で高い収率で形成可能であることを発見した。
【0134】
したがって、特定の実施態様で提供されるのは、i)第1の軽鎖に結合した、第1のヘテロ二量体化ドメインを有する第1のヒンジ含有ポリペプチド、及びii)第2の軽鎖に結合した、第2のヘテロ二量体化ドメインを有する第2のヒンジ含有ポリペプチドを含むヘテロ多量体タンパク質の調製方法であり、この場合、第2のヘテロ二量体化ドメインは第1のヘテロ二量体化ドメインと接触面において相互作用し、第1及び第2のヒンジ含有ポリペプチドは少なくとも一つの鎖間ジスルフィド結合によりリンクしており、この方法は:
(a)第1のヒンジ含有ポリペプチド及び第1の軽鎖を発現及び分泌することのできる第1の宿主細胞を培養する工程;
(b)第2のヒンジ含有ポリペプチド及び第2の軽鎖を発現及び分泌することのできる第2の宿主細胞を培養する工程;並びに
(c)第1の宿主細胞と第2の宿主細胞の混合培養培地を、第1及び第2の宿主細胞の細胞膜を破壊することなく得る工程
を含み、ここで混合培養培地がヘテロ多量体タンパク質を含み、第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞がそれぞれ哺乳動物細胞である。
【0135】
特定の実施態様で提供されるのは、i)第1の軽鎖に結合した、第1のヘテロ二量体化ドメインを有する第1のヒンジ含有ポリペプチド、及びii)第2の軽鎖に結合した、第2のヘテロ二量体化ドメインを有する第2のヒンジ含有ポリペプチドを含むヘテロ多量体タンパク質の調製方法であり、この場合、第2のヘテロ二量体化ドメインは第1のヘテロ二量体化ドメインと接触面において相互作用し、第1及び第2のヒンジ含有ポリペプチドは少なくとも一つの鎖間ジスルフィド結合によりリンクしており、この方法は:
(a)第1のヒンジ含有ポリペプチド及び第1の軽鎖を発現することのできる第1の宿主細胞を培養する工程であって、二つの第1のヒンジ含有ポリペプチドと二つの第1の軽鎖を含む第1のホモ二量体が分泌される、第1の宿主細胞を培養する工程;
(b)第2のヒンジ含有ポリペプチド及び第2の軽鎖を発現することのできる第2の宿主細胞を培養する工程であって、二つの第2のヒンジ含有ポリペプチド及び二つの第2の軽鎖を含む第2のホモ二量体が分泌される、第2の宿主細胞を培養する工程;
(c)第1のホモ二量体及び第2のホモ二量体を含む、第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞の混合培養培地を得る工程;
(d)混合培養培地を還元条件下でインキュベートする工程、並びに;
(e)ヘテロ多量体タンパク質を得る工程
を含み、ここで第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞がそれぞれ哺乳動物細胞である。
【0136】
特定の実施態様では、混合培養培地は、第1及び第2の宿主細胞の細胞膜を破壊することなく得られる。特定の実施態様では、方法は更に還元剤を加えることを含む。特定の実施態様では、還元条件は、ヘテロ多量体タンパク質の形成を可能にするために十分なものである。
【0137】
特定の実施態様では、第1のヒンジ含有ポリペプチド及び第1の軽鎖は第1の半抗体を含む。特定の実施態様では、第2のヒンジ含有ポリペプチド及び第2の軽鎖は第2の半抗体を含む。
【0138】
特定の実施態様では、混合培養培地中に存在する第1のヒンジ含有ポリペプチド及び第1の軽鎖(例えば、第1の半抗体)の約99%、約95%、約90%、約85%、約80%、約75%、約70%、約65%、約60%、約55%、約50%、約45%、約40%、約35%、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、約5%、又は約5%未満(例えば約4%、約3%、約2%、又は約1%)は、これら値の任意の範囲を含め、還元条件下でのインキュベーションの前又は還元剤を加える前は第1のホモ二量体の形態である。特定の実施態様では、混合培養培地中に存在する第1のヒンジ含有ポリペプチド及び第1の軽鎖(例えば、第1の半抗体)の約10%から約75%、約20%から約65%、又は約30%から約55%は、還元条件下でのインキュベーションの前又は還元剤を加える前は第1のホモ二量体の形態である。
【0139】
特定の実施態様では、混合培養培地中に存在する第2のヒンジ含有ポリペプチド及び第2の軽鎖(例えば、第2の半抗体)の約99%、約95%、約90%、約85%、約80%、約75%、約70%、約65%、約60%、約55%、約50%、約45%、約40%、約35%、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、約5%、又は約5%未満(例えば約4%、約3%、約2%、又は約1%)は、これら値の任意の範囲を含め、還元条件下でのインキュベーションの前又は還元剤を加える前は第2のホモ二量体の形態である。特定の実施態様では、混合培養培地中に存在する第2のヒンジ含有ポリペプチド及び第2の軽鎖(例えば、第2の半抗体)の約10%から約75%、約20%から約65%、又は約30%から約55%は、還元条件下でのインキュベーションの前又は還元剤を加える前は第2のホモ二量体の形態である。
【0140】
特定の実施態様では、混合培養培地は、還元条件下でのインキュベーションの後又は還元剤を加えた後に、第1のホモ二量体の約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約20%未満、約19%未満、約18%未満、約17%未満、約16%未満、約15%未満、約14%未満、約13%未満、約12%未満、約11%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満又は約1%未満を、これら値の任意の範囲を含め、含む。特定の実施態様では、混合培養培地は、還元条件下でのインキュベーション後又は還元剤を加えた後に、第1のホモ二量体の約2%未満から約20%未満、約5%から約15%、又は約10%未満から約15%を含む。
【0141】
特定の実施態様では、混合培養培地は、還元条件下でのインキュベーションの後又は還元剤を加えた後に、第2のホモ二量体の約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約20%未満、約19%未満、約18%未満、約17%未満、約16%未満、約15%未満、約14%未満、約13%未満、約12%未満、約11%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満又は約1%未満を、これら値の任意の範囲を含め、含む。特定の実施態様では、混合培養培地は、還元条件下でのインキュベーション後又は還元剤を加えた後に、第2のホモ二量体の約2%未満から約20%未満、約5%から約15%、又は約10%未満から約15%を含む。
【0142】
特定の実施態様で提供されるのは、i)第1の軽鎖に結合した、第1のヘテロ二量体化ドメインを有する第1のヒンジ含有ポリペプチド、及びii)第2の軽鎖に結合した、第2のヘテロ二量体化ドメインを有する第2のヒンジ含有ポリペプチドを含むヘテロ多量体タンパク質の調製方法であり、この場合、第2のヘテロ二量体化ドメインは第1のヘテロ二量体化ドメインと接触面において相互作用し、第1及び第2のヒンジ含有ポリペプチドは少なくとも一つの鎖間ジスルフィド結合によりリンクしており、この方法は:
(a)第1のヒンジ含有ポリペプチドをコードする第1の核酸及び第1の軽鎖をコードする第2の核酸を含む第1の宿主細胞を培養する工程;
(b)第2のヒンジ含有ポリペプチドをコードする第3の核酸及び第2の軽鎖をコードする第4の核酸を含む第2の宿主細胞を培養する工程;並びに、
(c)第1の宿主細胞と第2の宿主細胞の混合培養培地を得る工程
を含み、ここで混合培養培地がヘテロ多量体タンパク質を含み、第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞がそれぞれ哺乳動物細胞である。特定の実施態様では、第1及び第2の核酸は一つの核酸分子であるが、他の特定の実施態様では、第1及び第2の核酸は異なる核酸分子である。特定の実施態様では、第3及び第4の核酸は一つの核酸分子であるが、他の特定の実施態様では、第3及び第4の核酸は異なる核酸分子である。
【0143】
特定の実施態様では、本発明は、i)第1の軽鎖に結合した、第1のヘテロ二量体化ドメインを有する第1のヒンジ含有ポリペプチド、及びii)第2の軽鎖に結合した、第2のヘテロ二量体化ドメインを有する第2のヒンジ含有ポリペプチドを含むヘテロ多量体タンパク質の調製方法を提供し、この場合、第2のヘテロ二量体化ドメインは第1のヘテロ二量体化ドメインと接触面において相互作用し、第1及び第2のヒンジ含有ポリペプチドは少なくとも一つの鎖間ジスルフィド結合によりリンクしており、この方法は:
(a)第1のヒンジ含有ポリペプチドをコードする第1の核酸及び第1の軽鎖をコードする第2の核酸を含む第1の宿主細胞を培養する工程であって、第1の宿主細胞は第1のヒンジ含有ポリペプチド及び第1の軽鎖を発現することができ、二つの第1のヒンジ含有ポリペプチド及び二つの第1の軽鎖を含む第1のホモ二量体が分泌される、第1の宿主細胞を培養する工程;
(b)第2のヒンジ含有ポリペプチドをコードする第3の核酸及び第2の軽鎖をコードする第4の核酸を含む第2の宿主細胞を培養する工程であって、第2の宿主細胞は第2のヒンジ含有ポリペプチド及び第2の軽鎖を発現することができ、二つの第2のヒンジ含有ポリペプチド及び二つの第2の軽鎖を含む第2のホモ二量体が分泌される、第2の宿主細胞を培養する工程;
(c)第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞の混合培養培地を、第1及び第2の宿主細胞の細胞膜を破壊することなく得る工程であって、混合培養培地が第1のホモ二量体及び第2のホモ二量体を含む、混合培養培地を得る工程;
(d)ヘテロ多量体タンパク質の形成を可能にするために十分な還元条件下において混合培養培地をインキュベートする工程;並びに
(e)ヘテロ多量体タンパク質を得る工程
を含み、ここで第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞がそれぞれ哺乳動物細胞である。特定の実施態様では、第1及び第2の核酸は一つの核酸分子であるが、他の特定の実施態様では、第1及び第2の核酸は異なる核酸分子である。特定の実施態様では、第3及び第4の核酸は一つの核酸分子であるが、他の特定の実施態様では、第3及び第4の核酸は異なる核酸分子である。特定の実施態様では、本方法は更に、混合培養培地に還元剤を加えることを含む。
【0144】
特定の実施態様で提供されるのは、i)第1のヘテロ二量体化ドメインを有する第1のヒンジ含有ポリペプチドであって、第1の軽鎖に結合したを第1のヒンジ含有ポリペプチド含む第1の半抗体と、ii)第2のヘテロ二量体化ドメインを有する第2のヒンジ含有ポリペプチドであって、第2の軽鎖に結合した第2のヒンジ含有ポリペプチドを含む第2の半抗体とを含むヘテロ多量体タンパク質の調製方法であり、この場合、第2のヘテロ二量体化ドメインは第1のヘテロ二量体化ドメインと接触面において相互作用し、第1及び第2のヒンジ含有ポリペプチドは少なくとも一つの鎖間ジスルフィド結合によりリンクしており、この方法は:
(a)第1のヒンジ含有ポリペプチドをコードする第1の核酸及び第1の軽鎖をコードする第2の核酸を含む第1の宿主細胞を培養する工程;
(b)第2のヒンジ含有ポリペプチドをコードする第3の核酸及び第2の軽鎖をコードする第4の核酸を含む第2の宿主細胞を培養する工程;並びに、
(c)第1の宿主細胞と第2の宿主細胞の混合培養培地を得る工程
を含み、ここで混合培養培地がヘテロ多量体タンパク質を含み、第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞がそれぞれ哺乳動物細胞である。特定の実施態様では、本方法は更に、混合培養培地に還元剤を加えることを含む。
【0145】
特定の実施態様では、本発明は、i)第1のヘテロ二量体化ドメインを有する第1のヒンジ含有ポリペプチドであって、第1の軽鎖に結合した第1のヒンジ含有ポリペプチドを含む第1の半抗体と、ii)第2のヘテロ二量体化ドメインを有する第2のヒンジ含有ポリペプチドであって、第2の軽鎖に結合した第2のヒンジ含有ポリペプチドを含む第2の半抗体とを含むヘテロ多量体タンパク質の調製方法を提供し、この場合、第2のヘテロ二量体化ドメインは第1のヘテロ二量体化ドメインと接触面において相互作用し、第1及び第2のヒンジ含有ポリペプチドは少なくとも一つの鎖間ジスルフィド結合によりリンクしており、この方法は:
(a)第1のヒンジ含有ポリペプチドをコードする第1の核酸及び第1の軽鎖をコードする第2の核酸を含む第1の宿主細胞を培養する工程であって、第1の宿主細胞は第1のヒンジ含有ポリペプチド及び第1の軽鎖を発現することができ、二つの第1のヒンジ含有ポリペプチド及び二つの第1の軽鎖を含む第1のホモ二量体が分泌される、第1の宿主細胞を培養する工程;
(b)第2のヒンジ含有ポリペプチドをコードする第3の核酸及び第2の軽鎖をコードする第4の核酸を含む第2の宿主細胞を培養する工程であって、第2の宿主細胞は第2のヒンジ含有ポリペプチド及び第2の軽鎖を発現することができ、二つの第2のヒンジ含有ポリペプチド及び二つの第2の軽鎖を含む第2のホモ二量体が分泌される、第2の宿主細胞を培養する工程;
(c)第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞の混合培養培地を、第1及び第2の宿主細胞の細胞膜を破壊することなく得る工程であって、混合培養培地が第1のホモ二量体及び第2のホモ二量体を含む、混合培養培地を得る工程;
(d)ヘテロ多量体タンパク質の形成を可能にするために十分な還元条件下において混合培養培地をインキュベートする工程;並びに
(e)ヘテロ多量体タンパク質を得る工程
を含み、ここで第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞がそれぞれ哺乳動物細胞である。特定の実施態様では、本方法は更に、混合培養培地に還元剤を加えることを含む。
【0146】
特定の実施態様では、本発明は、i)第1の軽鎖に結合した、第1のヘテロ二量体化ドメインを有する第1のヒンジ含有ポリペプチド、及びii)第2の軽鎖に結合した、第2のヘテロ二量体化ドメインを有する第2のヒンジ含有ポリペプチドを含むヘテロ多量体タンパク質の調製方法を提供し、この場合、第2のヘテロ二量体化ドメインは第1のヘテロ二量体化ドメインと接触面において相互作用し、第1及び第2のヒンジ含有ポリペプチドは少なくとも一つの鎖間ジスルフィド結合によりリンクしており、この方法は:
(a)第1の細胞培養物中において、第1のヒンジ含有ポリペプチドをコードする第1の核酸及び第1の軽鎖をコードする第2の核酸を含む第1の哺乳動物の宿主細胞を培養する工程;
(b)第2の細胞培養物中において、第2のヒンジ含有ポリペプチドをコードする第3の核酸及び第2の軽鎖をコードする第4の核酸を含む第2の哺乳動物の宿主細胞を培養する工程;並びに,
(c)第1の哺乳動物の宿主細胞から第1の培養培地を回収する工程;
(d)第2の哺乳動物の宿主細胞から第2の培養培地を回収する工程;
(e)第1の培養培地と第2の培養培地を混合して混合培養培地を得る工程であって、混合培養培地がヘテロ多量体タンパク質を含む、混合培養培地を得る工程
を含む。特定の実施態様では、第1の培養培地を回収することは、第1の細胞培養物から第1の宿主細胞を除去することを含む。特定の実施態様では、第2の培養培地を回収することは、第2の細胞培養物から第2の宿主細胞を除去することを含む。特定の実施態様では、本方法は更に、混合培養培地に還元剤を加えることを含む。
【0147】
特定の実施態様で提供されるのは、i)第1の軽鎖に結合した、第1のヘテロ二量体化ドメインを有する第1のヒンジ含有ポリペプチド、及びii)第2の軽鎖に結合した、第2のヘテロ二量体化ドメインを有する第2のヒンジ含有ポリペプチドを含むヘテロ多量体タンパク質の調製方法であり、この場合、第2のヘテロ二量体化ドメインは第1のヘテロ二量体化ドメインと接触面において相互作用し、第1及び第2のヒンジ含有ポリペプチドは少なくとも一つの鎖間ジスルフィド結合によりリンクしており、この方法は:
(a)第1の細胞培養物中において、第1のヒンジ含有ポリペプチドをコードする第1の核酸及び第1の軽鎖をコードする第2の核酸を含む第1の宿主細胞を培養する工程であって、第1の宿主細胞は第1のヒンジ含有ポリペプチド及び第1の軽鎖を発現することができ、二つの第1のヒンジ含有ポリペプチド及び二つの第1の軽鎖を含む第1のホモ二量体が分泌される、第1の宿主細胞を培養する工程;
(b)第2の細胞培養物中において、第2のヒンジ含有ポリペプチドをコードする第3の核酸及び第2の軽鎖をコードする第4の核酸を含む第2の宿主細胞を培養する工程であって、第2の宿主細胞は第2のヒンジ含有ポリペプチド及び第2の軽鎖を発現することができ、二つの第2のヒンジ含有ポリペプチド及び二つの第2の軽鎖を含む第2のホモ二量体が分泌される、第2の宿主細胞を培養する工程;
(c)第1の哺乳動物の宿主細胞から、第1のホモ二量体を含む第1の培養培地を回収する工程;
(d)第2の哺乳動物の宿主細胞から、第2のホモ二量体を含む第2の培養培地を回収する工程;
(e)第1の培養培地と第2の培養培地を混合し、第1のホモ二量体及び第2のホモ二量体を含む混合培養培地を得る工程;
(f)ヘテロ多量体タンパク質の形成を可能にするために十分な還元条件下において混合培養培地をインキュベートする工程;並びに
(g)ヘテロ多量体タンパク質を得る工程
を含み、ここで第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞がそれぞれ哺乳動物細胞である。特定の実施態様では、第1の培養培地を回収することは、第1の細胞培養物から第1の宿主細胞を除去することを含む。特定の実施態様では、第2の培養培地を回収することは、第2の細胞培養物から第2の宿主細胞を除去することを含む。特定の実施態様では、本方法は更に、混合培養培地に還元剤を加えることを含む。
【0148】
特定の実施態様では、本発明は、i)第1のヘテロ二量体化ドメインを有する第1のヒンジ含有ポリペプチドであって、第1の軽鎖に結合した第1のヒンジ含有ポリペプチドを含む第1の半抗体と、ii)第2のヘテロ二量体化ドメインを有する第2のヒンジ含有ポリペプチドを含む第2の半抗体とを含むヘテロ多量体タンパク質の調製方法を提供し、この場合、第2のヘテロ二量体化ドメインは第1のヘテロ二量体化ドメインと接触面において相互作用し、第1及び第2の半抗体は少なくとも一つの鎖間ジスルフィド結合によりリンクしており、この方法は:
(a)第1の細胞培養物中において、第1のヒンジ含有ポリペプチドをコードする第1の核酸及び第1の軽鎖をコードする第2の核酸を含む第1の哺乳動物の宿主細胞を培養する工程;
(b)第2の細胞培養物中において、第2のヒンジ含有ポリペプチドをコードする第3の核酸及び第2の軽鎖をコードする第4の核酸を含む第2の哺乳動物の宿主細胞を培養する工程;並びに,
(c)第1の哺乳動物の宿主細胞から第1の培養培地を回収する工程;
(d)第2の哺乳動物の宿主細胞から第2の培養培地を回収する工程;
(e)第1の培養培地と第2の培養培地を混合して混合培養培地を得る工程であって、混合培養培地がヘテロ多量体タンパク質を含む、混合培養培地を得る工程
を含む。特定の実施態様では、第1の培養培地を回収することは、第1の細胞培養物から第1の宿主細胞を除去することを含む。特定の実施態様では、第2の培養培地を回収することは、第2の細胞培養物から第2の宿主細胞を除去することを含む。
【0149】
特定の実施態様で提供されるのは、i)第1のヘテロ二量体化ドメインを有する第1のヒンジ含有ポリペプチドであって、第1の軽鎖に結合した第1のヒンジ含有ポリペプチドを含む第1の半抗体と、ii)第2のヘテロ二量体化ドメインを有する第2のヒンジ含有ポリペプチドであって、第2の軽鎖に関結合した第2のヒンジ含有ポリペプチドを含む第2の半抗体とを含むヘテロ多量体タンパク質の調製方法であり、この場合、第2のヘテロ二量体化ドメインは第1のヘテロ二量体化ドメインと接触面において相互作用し、第1及び第2のヒンジ含有ポリペプチドは少なくとも一つの鎖間ジスルフィド結合によりリンクしており、この方法は:
(a)第1の細胞培養物中において、第1のヒンジ含有ポリペプチドをコードする第1の核酸及び第1の軽鎖をコードする第2の核酸を含む第1の宿主細胞を培養する工程であって、第1の宿主細胞は第1のヒンジ含有ポリペプチド及び第1の軽鎖を発現することができ、二つの第1のヒンジ含有ポリペプチド及び二つの第1の軽鎖を含む第1のホモ二量体が分泌される、第1の宿主細胞を培養する工程;
(b)第2の細胞培養物中において、第2のヒンジ含有ポリペプチドをコードする第3の核酸及び第2の軽鎖をコードする第4の核酸を含む第2の宿主細胞を培養する工程であって、第2の宿主細胞は第2のヒンジ含有ポリペプチド及び第2の軽鎖を発現することができ、二つの第2のヒンジ含有ポリペプチド及び二つの第2の軽鎖を含む第2のホモ二量体が分泌される、第2の宿主細胞を培養する工程;
(c)第1の哺乳動物の宿主細胞から、第1のホモ二量体を含む第1の培養培地を回収する工程;
(d)第2の哺乳動物の宿主細胞から、第2のホモ二量体を含む第2の培養培地を回収する工程;
(e)第1の培養培地と第2の培養培地を混合し、第1のホモ二量体及び第2のホモ二量体を含む混合培養培地を得る工程;
(f)ヘテロ多量体タンパク質の形成を可能にするために十分な還元条件下において混合培養培地をインキュベートする工程;並びに
(g)ヘテロ多量体タンパク質を得る工程
を含み、ここで第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞がそれぞれ哺乳動物細胞である。特定の実施態様では、第1の培養培地を回収することは、第1の細胞培養物から第1の宿主細胞を除去することを含む。特定の実施態様では、第2の培養培地を回収することは、第2の細胞培養物から第2の宿主細胞を除去することを含む。特定の実施態様では、本方法は更に、混合培養培地に還元剤を加えることを含む。
【0150】
特定の実施態様では、本発明は、i)第1の軽鎖に結合した、第1のヘテロ二量体化ドメインを有する第1のヒンジ含有ポリペプチド、及びii)第2の軽鎖に結合した、第2のヘテロ二量体化ドメインを有する第2のヒンジ含有ポリペプチドを含むヘテロ多量体タンパク質の調製方法を提供し、この場合、第2のヘテロ二量体化ドメインは第1のヘテロ二量体化ドメインと接触面において相互作用し、第1及び第2のヒンジ含有ポリペプチドは少なくとも一つの鎖間ジスルフィド結合によりリンクしており、この方法は:
(a)第1のヒンジ含有ポリペプチドをコードする第1の核酸及び第1の軽鎖をコードする第2の核酸を含む第1の哺乳動物の宿主細胞を培養する工程;
(b)第2のヒンジ含有ポリペプチドをコードする第3の核酸及び第2の軽鎖をコードする第4の核酸を含む第2の哺乳動物の宿主細胞を培養する工程;並びに,
(c)第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞を含む混合細胞培養物の培養培地を回収し、ヘテロ多量体タンパク質を含む、第1の哺乳動物の宿主細胞及び第2の哺乳動物の宿主細胞の混合培養培地を得る工程
を含む。
【0151】
特定の実施態様で提供されるのは、i)第1の軽鎖に結合した、第1のヘテロ二量体化ドメインを有する第1のヒンジ含有ポリペプチド、及びii)第2の軽鎖に結合した、第2のヘテロ二量体化ドメインを有する第2のヒンジ含有ポリペプチドを含むヘテロ多量体タンパク質の調製方法であり、この場合、第2のヘテロ二量体化ドメインは第1のヘテロ二量体化ドメインと接触面において相互作用し、第1及び第2のヒンジ含有ポリペプチドは少なくとも一つの鎖間ジスルフィド結合によりリンクしており、この方法は:
(a)第1のヒンジ含有ポリペプチドをコードする第1の核酸及び第1の軽鎖をコードする第2の核酸を含む第1の哺乳動物の宿主細胞を培養する工程であって、第1の宿主細胞は第1のヒンジ含有ポリペプチド及び第1の軽鎖を発現することができ、二つの第1のヒンジ含有ポリペプチド及び二つの第1の軽鎖を含む第1のホモ二量体が分泌される、第1の哺乳動物の宿主細胞を培養する工程;
(b)第2のヒンジ含有ポリペプチドをコードする第3の核酸及び第2の軽鎖をコードする第4の核酸を含む第2の哺乳動物の宿主細胞を培養する工程であって、第2の宿主細胞は第2のヒンジ含有ポリペプチド及び第2の軽鎖を発現することができ、二つの第2のヒンジ含有ポリペプチド及び二つの第2の軽鎖を含む第2のホモ二量体が分泌される、第2の哺乳動物の宿主細胞を培養する工程;
(c)第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞を含む混合細胞培養物の培養培地を回収し、第1のホモ二量体及び第2のホモ二量体を含む、第1の哺乳動物の宿主細胞及び第2の哺乳動物の宿主細胞の混合培養培地を得る工程;
(d)ヘテロ多量体タンパク質の形成を可能にするために十分な還元条件下において培地をインキュベートする工程;並びに
(e)ヘテロ多量体タンパク質を得る工程
を含み、ここで第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞がそれぞれ哺乳動物細胞である。特定の実施態様では、本方法は更に、混合培養培地に還元剤を加えることを含む。
【0152】
特定の実施態様では、本発明は、i)第1のヘテロ二量体化ドメインを有する第1のヒンジ含有ポリペプチドであって、第1の軽鎖に結合した第1のヒンジ含有ポリペプチドを含む第1の半抗体と、ii)第2のヘテロ二量体化ドメインを有する第2のヒンジ含有ポリペプチドを含む第2の半抗体とを含むヘテロ多量体タンパク質の調製方法を提供し、この場合、第2のヘテロ二量体化ドメインは第1のヘテロ二量体化ドメインと接触面において相互作用し、第1及び第2のヒンジ含有ポリペプチドは少なくとも一つの鎖間ジスルフィド結合によりリンクしており、この方法は:
(a)第1のヒンジ含有ポリペプチドをコードする第1の核酸及び第1の軽鎖をコードする第2の核酸を含む第1の哺乳動物の宿主細胞を培養する工程;
(b)第2のヒンジ含有ポリペプチドをコードする第3の核酸及び第2の軽鎖をコードする第4の核酸を含む第2の哺乳動物の宿主細胞を培養する工程;並びに,
(c)第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞を含む混合細胞培養物の培養培地を回収し、ヘテロ多量体タンパク質を含む、第1の哺乳動物の宿主細胞及び第2の哺乳動物の宿主細胞の混合培養培地を得る工程
を含む。
【0153】
特定の実施態様で提供されるのは、i)第1のヘテロ二量体化ドメインを有する第1のヒンジ含有ポリペプチドであって、第1の軽鎖に結合した第1のヒンジ含有ポリペプチドを含む第1の半抗体と、ii)第2のヘテロ二量体化ドメインを有する第2のヒンジ含有ポリペプチドであって、第2の軽鎖に結合した第2のおヒンジ含有ポリペプチドを含む第2の半抗体とを含むヘテロ多量体タンパク質の調製方法であり、この場合、第2のヘテロ二量体化ドメインは第1のヘテロ二量体化ドメインと接触面において相互作用し、第1及び第2のヒンジ含有ポリペプチドは少なくとも一つの鎖間ジスルフィド結合によりリンクしており、この方法は:
(a)第1のヒンジ含有ポリペプチドをコードする第1の核酸及び第1の軽鎖をコードする第2の核酸を含む第1の哺乳動物の宿主細胞を培養する工程であって、第1の宿主細胞は第1のヒンジ含有ポリペプチド及び第1の軽鎖を発現することができ、二つの第1のヒンジ含有ポリペプチド及び二つの第1の軽鎖を含む第1のホモ二量体が分泌される、第1の哺乳動物の宿主細胞を培養する工程;
(b)第2のヒンジ含有ポリペプチドをコードする第3の核酸及び第2の軽鎖をコードする第4の核酸を含む第2の哺乳動物の宿主細胞を培養する工程であって、第2の宿主細胞は第2のヒンジ含有ポリペプチド及び第2の軽鎖を発現することができ、二つの第2のヒンジ含有ポリペプチド及び二つの第2の軽鎖を含む第2のホモ二量体が分泌される、第2の哺乳動物の宿主細胞を培養する工程;
(c)第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞を含む混合細胞培養物の培養培地を回収し、第1のホモ二量体及び第2のホモ二量体を含む、第1の哺乳動物の宿主細胞及び第2の哺乳動物の宿主細胞の混合培養培地を得る工程;
(d)ヘテロ多量体タンパク質の形成を可能にするために十分な還元条件下において培地をインキュベートする工程;並びに
(e)ヘテロ多量体タンパク質を得る工程
を含み、ここで第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞がそれぞれ哺乳動物細胞である。特定の実施態様では、本方法は更に、混合培養培地に還元剤を加えることを含む。
【0154】
特定の実施態様では、第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞を含む混合細胞培養物を培養することは、約25℃から40℃の温度で実施される。特定の実施態様では、第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞を含む混合細胞培養物を培養することは、約30℃から37℃の温度で実施される。特定の実施態様では、第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞を含む混合細胞培養物を培養することは、約7.2から8.7のpHで実施される。
【0155】
特定の実施態様では、混合培養培地は、約4℃から40℃の温度でインキュベートされる。特定の実施態様では、混合培養培地は、約30℃から37℃の温度でインキュベートされる。特定の実施態様では、混合培養培地は、約4℃から8℃の温度でインキュベートされる。
【0156】
特定の実施態様では、混合培養培地は撹拌される。特定の実施態様では、混合培養培地は、得られた後、約6時間、約12時間、約18時間、約24時間、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、又は8日を上回る間、撹拌される。いくつかの実施態様では、混合培養物は断続的に撹拌される。
【0157】
特定の実施態様では、方法は、混合培養培地からヘテロ多量体タンパク質(例えば二重特異性抗体)を単離することを更に含む。特定の実施態様では、ヘテロ多量体タンパク質(例えば二重特異性抗体)は、プロテインAカラムを用いて単離される。
【0158】
特定の実施態様では、方法は、ヘテロ多量体タンパク質(例えば二重特異性抗体)の生成の間に還元剤を加えることを含む。本明細書に提供される方法の特定の実施態様では、使用される還元剤は、グルタチオン、2-メルカプトエタノール、2-メルカプトエチルアミン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、システイン、システイン、ジチオスレイトール、システインジチオスレイトール、ジチオールブチルアミン、又はこれらの組み合わせである。特定の実施態様では、還元剤は還元されたグルタチオンである。特定の実施態様では、還元剤は2-メルカプトエタノールではない。特定の実施態様では、還元剤はジチオスレイトールではない。
【0159】
第1及び第2の哺乳動物の宿主細胞を別々に培養する、即ち、別個の培養物中において増殖させる特定の実施態様では、還元剤は、第1及び第2の細胞培養培地が回収及び混合されて混合培養培地が得られる前に、第1の細胞培地及び第2の細胞培地に加えられる。第1及び第2の哺乳動物の宿主細胞を同じ培養物中において増殖させる特定の実施態様では、還元剤は、混合細胞培養物が回収されて混合培養培地が得られる前に混合細胞培養物の培養培地に加えられる。
【0160】
特定の実施態様では、還元剤は、回収工程の約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約25時間、約26時間、約27時間、約28時間、約29時間、又は約30時間前(これらの値の間の任意の範囲を含む)に、加えられる。
【0161】
特定の実施態様では、還元剤は混合培養培地に加えられる。特定の実施態様では、還元剤を含む混合培養培地は、約4時間、約5時間、約6時間、7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約15時間、約18時間、約21時間、約24時間、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、又は約7日の間((これらの値の間の任意の範囲を含む)、インキュベートされる。
【0162】
特定の実施態様では、還元剤(例えばグルタチオン)は、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mM、約20mM、約21mM、約22mM、約23mM、約24mM、約25mM、約26mM、約27mM、約28mM、約29mM、又は約30mM(これらの値の間の任意の範囲を含む)の最終濃度を達成するために、混合細胞培養物に加えられる。特定の実施態様では、還元剤(例えばグルタチオン)は、20mM.未満の最終濃度を達成するために混合細胞培養物に加えられる。特定の実施態様では、還元剤(例えばグルタチオン)は、20mM.以下の最終濃度を達成するために混合細胞培養物に加えられる。
【0163】
特定の実施態様では、還元剤は、混合培養培地からヘテロ多量体タンパク質(例えば二重特異性抗体)を単離する前に混合培養培地に加えられる。特定の実施態様では、還元剤を含む混合培養培地は、還元剤を含む混合培養培地からヘテロ多量体タンパク質(例えば二重特異性抗体)を単離する前の約4時間、約5時間、約6時間、7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約15時間、約18時間、約21時間、約24時間、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、又は約7日間(これらの値の間の任意の範囲を含む)にわたり、インキュベートされる。いくつかの実施態様では、ヘテロ多量体タンパク質は、プロテインAカラムを用いて単離される。
【0164】
特定の実施態様では、還元剤(例えばグルタチオン)は、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mM、約20mM、約21mM、約22mM、約23mM、約24mM、約25mM、約26mM、約27mM、約28mM、約29mM、又は約30mMの最終濃度を達成するために、混合培養培地に加えられる。特定の実施態様では、還元剤(例えばグルタチオン)は、20mM未満の最終濃度を達成するために、混合培養培地に加えられる。特定の実施態様では、還元剤(例えばグルタチオン)は、20mM以下の最終濃度を達成するために、混合培養培地に加えられる。
【0165】
本方法の特定の実施態様では、第1の宿主細胞は安定な細胞株である。特定の実施態様では、第2の宿主細胞は安定な細胞株である。特定の実施態様では、第1の宿主細胞はCHO細胞である。特定の実施態様では、第2の宿主細胞はCHO細胞である。第1の宿主細胞及び第2の宿主細胞を同じ培養物中で増殖させる特定の実施態様では、混合培養の開始時における第1の宿主細胞と第2の宿主細胞との比は、約1:10、約1:9、約1:8、約1:7、約1:6、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1又は約10:1である。
【0166】
本明細書において使用される「モル比」は、発現及び/又は分泌された、第1の軽鎖(例えば第1の半抗体)に結合した第1のヒンジ含有ポリペプチドと、発現及び/又は分泌された、第2の軽鎖(例えば第2の半抗体)に結合した第2のヒンジ含有ポリペプチドとの比を指す。いくつかの実施態様では、第1の軽鎖に結合した第1のヒンジ含有ポリペプチドと、第2の軽鎖に結合した第2のヒンジ含有ポリペプチドとのモル比は、約1.5、約1:4、約1:3、約1:2、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、又は約5:1(これらの値の間の任意の範囲を含む)である。いくつかの実施態様では、第1の軽鎖に結合した第1のヒンジ含有ポリペプチドと、第2の軽鎖に結合した第2のヒンジ含有ポリペプチドとのモル比は、約1:1である。いくつかの実施態様では、第1の半抗体と第2の半抗体とのモル比は、約1.5、約1:4、約1:3、約1:2、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、又は約5:1,(これらの値の間の任意の範囲を含む)である。いくつかの実施態様では、第1の半抗体と第2の半抗体とのモル比は約1:1である。
【0167】
III.ヘテロ多量体タンパク質
本発明により更に提供されるのは、本明細書に記載される方法のいずれか一つによって生成されるヘテロ多量体タンパク質である。特定の実施態様では、ヘテロ多量体タンパク質は、抗体のFc領域又はその変異体(例えば改変されたADCC機能を有する変異体)を含む。特定の実施態様では、ヘテロ多量体タンパク質は、抗体のFc領域又はその変異体(例えば、改変されたADCC機能を有する変異体)の大部分を含む。特定の実施態様では、ヘテロ多量体タンパク質は、CH1、CH2,及び/又はCH3ドメインの一部のみを含む重鎖を含む。特定の実施態様では、ヘテロ多量体タンパク質は、CH1、CH2,及び/又はCH3ドメインの一部のみを含む抗体断片である。特定の実施態様では、ヘテロ多量体タンパク質は抗体である。特定の実施態様では、ヘテロ多量体タンパク質は二重特異性抗体である。特定の実施態様では、ヘテロ多量体タンパク質はヒト化抗体である。特定の実施態様では、ヘテロ多量体タンパク質はヒト抗体である。特定の実施態様では、抗体はIgG(例えばIgG1、IgG2、又はIgG4)、IgA、又はIgDである。特定の実施態様では、ヘテロ多量体タンパク質の第1の軽鎖及び第2の軽鎖は異なる可変ドメイン配列を含む。特定の実施態様では、本明細書に提供される方法によって生成されるヘテロ多量体タンパク質の第1及び第2のヒンジ含有ポリペプチドは、Fc領域又はその変異体を含む。特定の実施態様では、ヘテロ多量体タンパク質の第1及び第2のヒンジ含有ポリペプチドは抗体重鎖を含む。
【0168】
ヘテロ多量体化ドメイン
ヘテロ多量体タンパク質はヘテロ多量体化ドメインを含む。実質的に均一なヘテロ二量体分子の集団を生成するために、ヘテロ二量体化ドメインは、ホモ二量体よりヘテロ二量体を形成する強力な優先性を有さなければならない。本明細書に例示されるヘテロ多量体タンパク質はノブ・イントゥー・ホール技術を用いてヘテロ多量体化を助長するが、当業者には本発明において有用な他のヘテロ多量体化ドメインが明らかであろう。
【0169】
ノブ・イントゥー・ホール
多重特異性抗体の生成方法としてのノブ・イントゥー・ホールの使用は、当技術分野で周知である。1998年3月24日に本出願人に許可された米国特許第5731168号、2009年7月16日に発行されてAmgenに譲渡された国際公開第2009089004号、及び2009年7月16日に公開されてNovo Nordisk A/Sに譲渡された米国特許出願公開第20090182127号参照のこと。更には、Marvin and Zhu, Acta Pharmacologica Sincia (2005) 26(6):649-658 and Kontermann (2005) Acta Pharacol. Sin., 26:1-9を参照されたい。本明細書には簡単な説明を提供する。
【0170】
「隆起」は、第1のポリペプチドの接触面から突出し、したがって隣接する接触面(即ち第2のポリペプチドの接触面)内の相補的空洞内に配置可能な少なくとも一つのアミノ酸側鎖を指す。このような配置により、ヘテロ多量体が安定し、且つそれにより例えばホモ多量体形成よりヘテロ多量体形成が促進される。隆起は、元の接触面内に存在するか、又は合成により導入される(例えば接触面をコードする核酸を改変することにより)。通常、第1のポリペプチドの接触面をコードする核酸は、隆起をコードするように改変される。これを達成するために、第1のポリペプチドの接触面内の少なくとも一つの「元の」アミノ酸残基をコードする核酸は、元のアミノ酸残基より大きな側鎖体積を有する少なくとも一つの「移入」アミノ酸残基をコードする核酸で置き換えられる。元の及び対応する移入残基が複数存在しうることが理解されよう。置き換えられる元の残基の数の上限は、第1のポリペプチドの接触面内の残基の総数である。様々なアミノ残基の側鎖体積を、以下の表1に示す。
【0171】
【0172】
隆起の形成のための好ましい移入残基は、通常天然に存在するアミノ酸残基であり、好ましくはアルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)及びトリプトファン(W)から選択される。最も好ましいのはトリプトファン及びチロシンである。一実施態様では、隆起の形成のための元の残基は、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グリシン、セリン、スレオニン又はバリンのような小さな側鎖を有する。
【0173】
「空洞」は、第2のポリペプチドの接触面からくぼんでおり、したがって隣接する第1のポリペプチドの接触面上の対応する隆起を収容する少なくとも一つのアミノ酸側鎖を指す。空洞は、元の接触面内に存在するか、又は合成により導入される(例えば接触面をコードする核酸を改変することにより)。通常、第2のポリペプチドの接触面をコードする核酸は、空洞をコードするように改変される。これを達成するために、第2のポリペプチドの接触面内の少なくとも一つの「元の」アミノ酸残基をコードする核酸は、元のアミノ酸残基より小さな側鎖体積を有する少なくとも一つの「移入」アミノ酸残基をコードするDNAで置き換えられる。元の及び対応する移入残基が複数存在しうることが理解されよう。置き換えられる元の残基の数の上限は、第2のポリペプチドの接触面内の残基の総数である。様々なアミノ残基の側鎖体積は、上記の表1に示される。空洞の形成のための好ましい移入残基は、通常天然に存在するアミノ酸残基であり、好ましくはアラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)及びバリン(V)から選択される。最も好ましいのは、セリン、アラニン又はスレオニンである。一実施態様では、空洞の形成のための元の残基は、チロシン、アルギニン、フェニルアラニン又はトリプトファンのような大きな側鎖体積を有する。
【0174】
「元の」アミノ酸残基は、元の残基より小さな又は大きな側鎖体積を有しうる「移入」残基によって置き換えられるものである。移入アミノ酸残基は、天然に存在するアミノ酸残基でも、非天然に存在するアミノ酸残基でもよいが、好ましくは前者である。「天然に存在する」アミノ酸残基は、遺伝子コードによってコードされ、上記表1に列挙される残基である。「非天然に存在する」アミノ酸残基は、遺伝子コードによってコードされないが、ポリペプチド鎖内の隣接する(一又は複数の)アミノ酸残基に共有結合的に結合することのできる残基を意味する。非天然に存在するアミノ酸残基の例は、ノルロイシン、オルニチン、ノルバリン、ホモセリン及び例えばEllman et al., Meth. Enzym. 202:301-336 (1991)に記載されるもののような他のアミノ酸残基アナログである。このような非天然に存在するアミノ酸残基を生成するために、Noren et al. Science 244: 182 (1989) and Ellman et al.(上掲)の手順を用いることができる。簡潔には、これは、非天然に存在するアミノ酸残基によりサプレッサーtRNAを化学的に活性化し、続いてRNAをインビトロで転写及び翻訳することを含む。本発明の方法は、少なくとも一つの元のアミノ酸残基を置き換えることを含むが、一を超える元の残基を置き換えることができる。通常、第1の又は第2のポリペプチドの接触面内の残基の総数以下が、置き換えられる元のアミノ酸残基を含むであろう。典型的には、置き換えのための元の残基は「埋め込まれる」。「埋め込まれる」とは、残基が実質的に溶媒に到達しないことを意味する。一般に、ジスルフィド結合の酸化又は誤対合の可能性を防止するために、重要な残基はシステインではない。
【0175】
隆起が空洞内に「配置できる」とは、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドの接触面上のそれぞれ隆起及び空洞の空間的位置と、隆起及び空洞の大きさとが、接触面における第1及び第2のポリペプチドの正常な会合を大きくかく乱することなく隆起を空洞内に位置させることができるようなものであることを意味する。Tyr、Phe及びTrpのような隆起は、典型的には接触面の軸から垂直に延びて好ましい立体構造を有することはないため、隆起と対応する空洞との整列は、X線結晶学又は核磁気共鳴(NMR)によって得られるような三次元構造に基づく隆起/空洞の対のモデル化に依存する。これは、当技術分野で広く受け入れられている技術を用いて達成することができる。「元の核酸又はテンプレート核酸」は、隆起又は空洞をコードするように「改変」(即ち一般的には遺伝子操作又は変異)することができる対象のポリペプチドをコードする核酸を意味する。元の核酸又は出発核酸は、天然に存在する核酸でも、先立って改変された核酸(例えばヒト化抗体断片)を含むものでもよい。核酸を「改変する」とは、元の核酸を、対象のアミノ酸残基をコードする少なくとも一つのコドンを挿入する、削除する、又は置き換えることにより、変異させることを意味する。通常、元の残基をコードするコドンは、移入残基をコードするコドンによって置き換えられる。このようにしてDNAを遺伝的に改変する技術は、Mutagenesis: a Practical Approach, M.J. McPherson, Ed., (IRL Press, Oxford, UK. (1991)に概説があり、例えば、部位特異的突然変異誘発、カセット突然変異誘発及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)突然変異誘発を含む。元の核酸/テンプレート核酸を変異させることにより、元の核酸/テンプレート核酸によってコードされる元のポリペプチド/テンプレートポリペプチドが対応して改変される。
【0176】
隆起又は空洞は、第1の又は第2のポリペプチドの接触面の中に、合成手段、例えば組み換え技術、インビトロでのペプチド合成、非天然に存在するアミノ酸残基を導入するための前述の技術、ペプチドの酵素的若しくは化学的カップリング、又はこれら技術の何らかの組み合わせにより「導入」することができる。したがって、「導入」される隆起又は空洞は、「非天然に存在する」か「非天然」であり、これはそのような隆起又は空洞が天然又は元のポリペプチド には存在しないことを意味する(例えばヒト化モノクローナル抗体)。
【0177】
一般に、隆起を形成するための重要なアミノ酸残基は、比較的少数の「回転異性体」(例えば約3~6)を有する。「回転異性体」は、アミノ酸側鎖のエネルギー的に有利な立体構造である。様々なアミノ酸残基の回転異性体の数については、Ponders and Richards, J. Mol. Biol. 193: 775-791 (1987)に概説がある。
【0178】
本明細書に提供される方法のいくつかの実施態様では、ヘテロ多量体タンパク質の第1のヘテロ二量体化ドメインは接触面にノブ修飾を含み、第2のヘテロ二量体化ドメインはホール修飾を含む。特定の実施態様では、ノブ修飾は、第1のヘテロ二量体化ドメイン由来の元のアミノ酸残基を、元のアミノ酸残基より大きな側鎖を有するアミノ酸残基で置換することを含む。特定の実施態様では、アミノ酸残基をより大きな側鎖で置換するのは、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン、又はアルギニンである。特定の実施態様では、ノブ修飾は、T366Wの置換を含む(EU番号付け)。特定の実施態様では、ホール修飾は、第2のヘテロ多量体化ドメイン由来のアミノ酸残基を、それよりも小さな側鎖を有するアミノ酸残基で置換することを含む。特定の実施態様では、より小さな側鎖を有するアミノ酸を置換するのは、セリン、スレオニン、バリン、又はアラニンである。いくつかの実施態様では、ホール修飾は、T366S、L368A,及び/又はY407V(EU番号付け)を含む二つ以上のアミノ酸の置換を含む。
【0179】
IV.ベクター、宿主細胞、及び組み換え法
本発明のヘテロ多量体タンパク質(例えば、抗体)の組み換え生産の場合、それをコードする核酸が単離され、さらなるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製可能なベクター中に挿入される。抗体をコードするDNAは、容易に単離され、従来の手順を用いて (例えば、抗体の重鎖と軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)配列決定される。多くのベクターが入手可能である。ベクターの選択は、部分的には、使用される宿主細胞に依存する。一般に、宿主細胞は哺乳動物を起源とする。IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgE定常領域を含む、あらゆるアイソタイプの定常領域がこの目的のために使用できること、並びにそのような定常領域は任意のヒト又は動物種から得ることができることを理解されたい。
【0180】
a.哺乳動物宿主細胞を用いたヘテロ多量体タンパク質の生成:
一般にベクター成分には、限定されないが、以下のうちの一又は複数が含まれる:シグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列。
【0181】
i.シグナル配列成分
哺乳動物宿主細胞における使用のためのベクターには、対象の成熟タンパク質又はポリペプチドのN末端に特異的な切断部位を有するシグナル配列又は他のポリペプチドも含まれうる。好ましくは、選択された異種シグナル配列は、宿主細胞によって認識されプロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。哺乳動物の細胞発現では、哺乳動物シグナル配列並びにウイルス分泌リーダー、例えば単純ヘルペスgDシグナルが利用可能である。このような前駆体領域のDNAは、リーディングフレーム内で、所望の(一又は複数の)ヘテロ多量体タンパク質(例えば、抗体)をコードするDNAに結合される。
【0182】
ii.複製開始点
一般に、複製開始点成分は、哺乳動物発現ベクターには必要でない。例えば、SV40起源が典型的に使用されるが、これは単に、早期プロモーターを含有しているためである。
【0183】
iii.選択遺伝子成分
発現ベクター及びクローニングべクターは、選択可能マーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含有しうる。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質又は他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセート、又はテトラサイクリンに耐性を付与する、(b)適切である場合は、栄養要求性欠陥を補う、又は(c)複合培地から得られない重要な栄養素を供給する、タンパク質をコードする。
【0184】
選択方式の一例は、宿主細胞の増殖を停止させる薬物を利用する。異種遺伝子により首尾よく形質転換されている細胞は、薬物耐性を付与するタンパク質を生成し、それゆえ選択レジメを生き延びる。このようなドメイン選択の例は、薬物ネオマイシン、ミコフェノール酸及びヒグロマイシンを使用する。
【0185】
哺乳動物細胞の適切な選択可能マーカーの別の例は、DHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン-I及び-II、好ましくは霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼなどの抗体核酸を取り込む細胞成分の同定を可能にするものである。
【0186】
例えば、DHFR選択遺伝子によって形質転換された細胞は、DHFRの競合アンタゴニストであるメトトレキサート(Mtx)を含有する培地ですべての形質転換体を培養することにより、まず同定される。野生型DHFRを用いるときの好適な宿主細胞は、DHFR活性(例えば、ATCC CRL-9096)が欠損したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株である。
【0187】
或いは、抗体をコードするDNA配列、野生型DHFRタンパク質、及びアミノグリコシド3’-ホスホトランスフェラーゼ(APH)等の他の選択可能マーカーで形質転換又は同時形質転換された宿主細胞(特に、内因性DHFRを含有する野生型宿主)は、例えばカナマイシン、ネオマイシン又はG418などのアミノグリコシド抗生物質のような選択可能マーカーに対する選択剤を含有する培地中での細胞増殖により選択することができる。例えば、米国特許第4965199号を参照。
【0188】
iv.プロモーター成分
発現ベクター及びクローニングベクターは通常、宿主生物によって認識され、所望のヒンジ含有ポリペプチド核酸に作動可能に結合されたプロモーターを含有する。哺乳動物細胞に関するプロモーター配列が既知である。実質的にすべての哺乳動物遺伝子は、転写が開始される部位からおよそ25から30塩基上流に位置するATリッチ領域を有している。多くの遺伝子の転写の開始から70から80塩基上流に見出されるもう一つの配列は、Nが任意のヌクレオチドであるCNCAAT領域である。ほとんどの哺乳動物遺伝子の3’末端には、コード配列の3’末端にポリAテイルを付加するためのシグナルでありうるAATAAA配列がある。これら配列のすべては、哺乳動物の発現ベクター中に適切に挿入される。
【0189】
哺乳動物宿主細胞中のベクターからの、所望のヒンジ含有ポリペプチド転写及び軽鎖転写は、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(例えばアデノウイルス2)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、サルウイルス40(SV40)といったウイルスのゲノムから得られるプロモーター、又はアクチンプロモーター若しくは免疫グロブリンプロモーターなどの異種哺乳動物プロモーターから得られるプロモーター、又は熱ショックプロモーターから得られるプロモーターにより、但しそれらプロモーターが宿主細胞系と適合性であることを条件に、制御される。
【0190】
SV40ウイルスの初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルスの複製開始点も含有するSV40制限断片として簡便に得られる。ヒトサイトメガロウイルスの前初期プロモーターは、HindIII E制限断片として簡便に得られる。ウシパピローマウイルスをベクターとして用いて哺乳動物宿主にDNAを発現する系は、米国特許第4419446号に開示されている。この系の修飾は、米国特許第4601978号に記載されている。単純ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼプロモーターの制御下でのマウス細胞中におけるヒトβ-インターフェロンcDNAの発現について、Reyes et al., Nature 297:598-601 (1982)も参照されたい。代替的に、ラウス肉腫ウイルスの長い末端リピートをプロモーターとして使用することができる。
【0191】
v.エンハンサーエレメント成分
哺乳動物宿主細胞による、所望のヒンジ含有ポリペプチド(複数を含む)及び軽鎖(複数を含む)をコードするDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することにより増加させることができる。現在、哺乳動物遺伝子(例えば、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン、及びインスリン遺伝子)由来の多数のエンハンサー配列が既知である。また、哺乳動物細胞ウイルス由来のエンハンサーを使用してもよい。例として、複製開始点の後期側のSV40エンハンサー(bp 100-270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製開始点の後期側のポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。真核性プロモーター活性化の亢進要素については、Yaniv, Nature 297:17-18 (1982)の記載も参照のこと。エンハンサーは、それが機能する限り、抗体ポリペプチドコード配列の5’又は3’位でベクター中にスプライシングされてよいが、一般には、プロモーターから5’位に位置している。
【0192】
vi.転写終結成分
哺乳動物宿主細胞において使用される発現ベクターは、典型的には、転写終結のため及びmRNA安定化のために必要な配列も含有するであろう。このような配列は、哺乳動物又はウイルスのDNA又はcDNAの未翻訳領域である、通常は5’、場合によっては3’から取得できる。これら領域は、抗体をコードするmRNAの未翻訳部分においてポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。一つの有用な転写終結成分は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。国際公開第94/11026号及びそこに開示の発現ベクターを参照のこと。
【0193】
vii.宿主細胞の選択及び形質転換
本明細書におけるベクター中のクローニング又はDNA発現のために適切な宿主細胞には、脊椎動物の宿主細胞を含む、本明細書に記載の哺乳動物細胞が含まれる。培養物(組織培養物)中の脊椎動物細胞の伝播は常套的手順となっている。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胎児腎臓株(Graham et al., J. Gen Virol. 36: 59 (1977)に記載の、浮遊培養における増殖のためにサブクローニングされた293又は293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather, Biol. Reprod. 23: 243-251 (1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al., Annals N. Y Acad. Sci. 383: 44-68 (1982));MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝がん系(Hep G2)である。
【0194】
宿主細胞は、所望のヒンジ含有ポリペプチド及び軽鎖生成のための上記発現又はクローニングベクターを用いて形質転換され、プロモーターを含むように適切に修飾された一般的な栄養培地において培養され、形質転換体を選択するか、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅させる。いくつかの実施態様では、宿主細胞は安定にトランスフェクトされた宿主細胞である。特定の実施態様では、宿主細胞は安定な細胞株である。
【0195】
viii.宿主細胞の培養
本発明の所望のヒンジ含有ポリペプチド及び軽鎖を生成するために使用される宿主細胞は、種々の培養培地において培養されうる。市販の培養培地、例えばHamのF10(シグマ)、最小必須培地((MEM)、(シグマ)、RPMI-1640(シグマ)及びダルベッコの改良イーグル培地((DMEM),シグマ)が宿主細胞の培養に好適である。加えて、Ham et al., Meth. Enz. 58:44 (1979), Barnes et al., Anal. Biochem.102:255 (1980)、米国特許第4767704号;同第4657866号;同第4927762号;同第4560655号;又は同第5122469号;国際公開90/03430号;国際公開第87/00195号;又は米国再発行特許第30985号に記載の培養培地のいずれもが、宿主細胞の培養培地として使用できる。これらの培養培地のいずれにも、ホルモン及び/又は他の増殖因子(例えばインスリン、トランスフェリン、又は上皮増殖因子)、塩(例えば塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びホスフェート)、緩衝剤(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えばゲンタマイシンTM薬)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物として定義される)、及びグルコース又は同等のエネルギー源を必要に応じて補充することができる。他のいずれかの必要な補充物を、当業者に既知の適切な濃度で含めてもよい。温度、pH等の培養条件は、発現用に選択された宿主細胞で先に用いられたものであり、当業者には明らかであろう。
【0196】
ix.ヘテロ多量体タンパク質の精製
組み換え技術を用いるとき、軽鎖ポリペプチドに結合したヒンジ含有ポリペプチドは、細胞内で生成されうる、又は培地中に直接分泌されうる。ヒンジ含有ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチドが細胞内で生成される場合、最初の工程として、宿主細胞又は溶解断片である微粒子状破片は、例えば遠心分離又は限外濾過により除去される。軽鎖ポリペプチドに結合したヒンジ含有ポリペプチドが培地中に分泌される場合、このような発現系の上澄み液は通常、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、Amicon又はMillipore Pellicon限外濾過ユニットを用いてまず濃縮される。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を、タンパク質分解を阻害するために前述の工程のいずれかに含めることができ、抗生物質は、偶発的夾雑物の増殖を防ぐために含めることができる。
【0197】
細胞から調製されたヘテロ多量体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製することができるが、アフィニティークロマトグラフィーが好ましい精製法である。親和性リガンドとしてのプロテインAの適性は、抗体中に存在する免疫グロブリンFcドメインの種及びアイソタイプに左右される。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、又はγ4重鎖に基づく抗体の精製に使用することができる(Lindmark et al., J. Immunol. Meth. 62:1-13 (1983))。プロテインGは、すべてのマウスアイソタイプとヒトγ3について推奨される(Guss et al., EMBO J. 5:15671575 (1986))。親和性リガンドが結合するマトリックスは、多くの場合アガロースであるが、他のマトリックスも利用可能である。細孔制御ガラス又はポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定なマトリックスによって、アガロースで達成されるよりも速い流速及び短い処理時間が可能になる。抗体がCH3ドメインを含む場合、精製のためにベーカーボンドABXTM樹脂ABXTMresin(J.T.Baker,Phillipsburg,NJ)が有用である。タンパク質精製のための他の技術、例えばイオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上でのクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSETMでのクロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換樹脂でのクロマトグラフィー(例えば、ポリアスパラギン酸カラム)、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE及び硫酸アンモニウム沈殿も、回収する抗体に応じて利用可能である。
【0198】
任意の(一又は複数の)準備的精製工程に続いて、対象の抗体と夾雑物を含む混合物は、好ましくは低塩濃度(例えば、約0~0.25Mの塩)で実施される、約2.5~4.5のpHの溶出バッファーを用いた低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに供される。(上記特定の方法のいずれかに)替えて又は加えて、ヘテロ多量体タンパク質の生成は、ポリペプチドの混合物を含む溶液を透析することを含むことができる。
【0199】
V.ヘテロ多量体タンパク質形成/集合
完全なヘテロ多量体タンパク質の形成は、ジスルフィド結合形成による第1のヒンジ含有ポリペプチド、第1の軽鎖、第2のヒンジ含有ポリペプチド、及び第2の軽鎖の再集合を伴い、これを本発明ではリフォールディングという。リフォールディングは、第1のヒンジ含有ポリペプチドと第2のヒンジ含有ポリペプチドの結合、及び例えば、二重特異性抗体を形成するための、鎖間ジスルフィド結合の形成を含む。したがって、本明細書に提供される方法のいくつかの実施態様では、ヘテロ多量体タンパク質の鎖間ジスルフィド結合は、第1及び第2のヒンジ含有ポリペプチドのヒンジ領域間におけるものである。リフォールディングは、本発明では再生ともいい、インビトロで行われる。
【0200】
ヒンジ含有ポリペプチド及び結合軽鎖が細胞から分泌された後には、ヘテロ多量体化ドメインはヘテロ多量体タンパク質の結合を促すことになる。結合したヒンジ含有ポリペプチドの鎖間ジスルフィド形成が進行する。結果として得られたジスルフィド結合ヘテロ多量体タンパク質は、次いで精製される。任意選択的に、このようなタンパク質は、研究、診断、治療又は他の目的のために製剤化されてもよい。
【0201】
VI.標的分子
本発明のヘテロ多量体タンパク質により標的とされうる分子の例には、限定されないが、可溶型血清タンパク質及びその受容体、並びに他の膜結合タンパク質(例えば、アドヘシン)が含まれる。
【0202】
別の実施態様では、本発明のヘテロ多量体タンパク質は、一つ、二つ以上のサイトカイン、サイトカイン関連タンパク質、及びBMPl、BMP2、BMP3B(GDFlO)、BMP4、BMP6、BMP8、CSFl(M-CSF)、CSF2(GM-CSF)、CSF3(G-CSF)、EPO、FGFl(aFGF)、FGF2(bFGF)、FGF3(int-2)、FGF4(HST)、FGF5、FGF6(HST-2)、FGF7(KGF)、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF12B、FGF14、FGF16、FGF17、FGF19、FGF20、FGF21、FGF23、IGF1、IGF2、IFNAl、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNA7、IFNBl、IFNG、IFNWl、FELl、FELl(EPSELON)、FELl(ZETA)、IL1A、IL1B、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL11、IL12A、IL12B、IL13、IL14、IL15、IL16、IL17、IL17B、IL18、IL19、IL20、IL22、IL23、IL24、IL25、IL26、IL27、IL28A、IL28B、IL29、IL30、PDGFA、PDGFB、TGFA、TGFB1、TGFB2、TGFB3、LTA(TNF-b)、LTB、TNF(TNF-a)、TNFSF4(OX40リガンド)、TNFSF5(CD40リガンド)、TNFSF6(FasL)、TNFSF7(CD27リガンド)、TNFSF8(CD30リガンド)、TNFSF9(4-1BBリガンド)、TNFSFl0(TRAIL)、TNFSF1l(TRANCE)、TNFSF12(APO3L)、TNFSF13(April)、TNFSF13B、TNFSF14(HVEM-L)、TNFSF15(VEGI)、TNFSF18、HGF(VEGFD)、VEGF、VEGFB、VEGFC、ILlR1、IL1R2、IL1RL1、LL1RL2、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL3RA、IL4R、IL5RA、IL6R、IL7R、IL8RA、IL8RB、IL9R、ILl0RA、ILl0RB、IL1lRA、IL12RB1、IL12RB2、IL13RA1、IL13RA2、IL15RA、IL17R、IL18R1、IL20RA、IL21R、IL22R、IL1HY1、IL1RAP、IL1RAPL1、IL1RAPL2、IL1RN、IL6ST、IL18BP、IL18RAP、IL22RA2、AIFl、HGF、LEP(leptin)、PTN、及びTHPOからなる群より選択されるサイトカイン受容体に結合することができる。
【0203】
別の実施態様では、標的分子は、ケモカイン、ケモカイン受容体、又はCCLl(I-309)、CCL2(MCP-1/MCAF)、CCL3(MIP-Ia)、CCL4(MIP-Ib)、CCL5(RANTES)、CCL7(MCP-3)、CCL8(mcp-2)、CCLH(エオタキシン)、CCL13(MCP-4)、CCL15(MIP-Id)、CCL16(HCC-4)、CCL17(TARC)、CCL18(PARC)、CCL19(MDP-3b)、CCL20(MIP-3a)、CCL21(SLC/エクソダス-2)、CCL22(MDC/STC-I)、CCL23(MPIF-I)、CCL24(MPIF-2/エオタキシン-2)、CCL25(TECK)、CCL26(エオタキシン-3)、CCL27(CTACK/ILC)、CCL28、CXCLl(GROl)、CXCL2(GRO2)、CXCL3(GR03)、CXCL5(ENA-78)、CXCL6(GCP-2)、CXCL9(MIG)、CXCL10(IP 10)、CXCL11(I-TAC)、CXCL12(SDFl)、CXCL13、CXCL14、CXCL16、PF4(CXCL4)、PPBP(CXCL7)、CX3CL1(SCYDl)、SCYEl、XCLl(リンホタクチン)、XCL2(SCM-Ib)、BLRl(MDR15)、CCBP2(D6/JAB61)、CCRl(CKRl/HM145)、CCR2(mcp-lRB/RA)、CCR3(CKR3/CMKBR3)、CCR4、CCR5(CMKBR5/ChemR13)、CCR6(CMKBR6/CKR-L3/STRL22/DRY6)、CCR7(CKR7/EBIl)、CCR8(CMKBR8/TERl/CKR-Ll)、CCR9(GPR-9-6)、CCRLl(VSHKl)、CCRL2(L-CCR)、XCRl(GPR5/CCXCRl)、CMKLRl、CMKORl(RDCl)、CX3CR1(V28)、CXCR4、GPR2(CCRlO)、GPR31、GPR81(FKSG80)、CXCR3(GPR9/CKR-L2)、CXCR6(TYMSTR/TRL33/Bonzo)、HM74、IL8RA(IL8Ra)、IL8RB(IL8Rb)、LTB4R(GPR16)、TCPlO、CKLFSF2、CKLFSF3、CKLFSF4、CKLFSF5、CKLFSF6、CKLFSF7、CKLFSF8、BDNF、C5R1、CSF3、GRCClO(ClO)、EPO、FY(DARC)、GDF5、HDFlA、DL8、PRL、RGS3、RGS13、SDF2、SLIT2、TLR2、TLR4、TREMl、TREM2、及びVHLからなる群より選択されるケモカイン関連タンパク質である。
【0204】
別の実施態様では、本発明のヘテロ多量体タンパク質は、ABCFl;ACVRl;ACVRlB;ACVR2;ACVR2B;ACVRLl;AD0RA2A;Aggrecan;AGR2;AICDA;AIFl;AIGl;AKAPl;AKAP2;AMH;AMHR2;ANGPTl;ANGPT2;ANGPTL3;ANGPTL4;ANPEP;APC;APOCl;AR;AZGPl(亜鉛-a-糖タンパク質);B7.1;B7.2;BAD;BAFF(BLys);BAGl;BAIl;BCL2;BCL6;BDNF;BLNK;BLRl(MDR15);BMPl;BMP2;BMP3B(GDFlO);BMP4;BMP6;BMP8;BMPRlA;BMPRlB;BMPR2;BPAGl(プレクチン);BRCAl;C19orflO(IL27w);C3;C4A;C5;C5R1;CANTl;CASP1;CASP4;CAVl;CCBP2(D6/JAB61);CCLl(1-309);CCLIl(エオタキシン);CCL13(MCP-4);CCL15(MIP-Id);CCL16(HCC-4);CCL17(TARC);CCL18(PARC);CCL19(MIP-3b);CCL2(MCP-1);MCAF;CCL20(MIP-3a);CCL21(MTP-2);SLC;エクソダス-2;CCL22(MDC/STC-I);CCL23(MPIF-1);CCL24(MPIF-2/エオタキシン-2);CCL25(TECK);CCL26(エオタキシン-3);CCL27(CTACK/ILC);CCL28;CCL3(MTP-Ia);CCL4(MDP-Ib);CCL5(RANTES);CCL7(MCP-3);CCL8(mcp-2);CCNAl;CCNA2;CCNDl;CCNEl;CCNE2;CCRl(CKRl/HM145);CCR2(mcp-lRB/RA);CCR3(CKR3/CMKBR3);CCR4;CCR5(CMKBR5/ChemR13);CCR6(CMKBR6/CKR-L3/STRL22/DRY6);CCR7(CKR7/EBIl);CCR8(CMKBR8/TERl/CKR-Ll);CCR9(GPR-9-6);CCRLl(VSHKl);CCRL2(L-CCR);CD164;CD19;CDlC;CD20;CD200;CD22;CD24;CD28;CD3;CD37;CD38;CD3E;CD3G;CD3Z;CD4;CD40;CD40L;CD44;CD45RB;CD52;CD69;CD72;CD74;CD79A;CD79B;CD8;CD80;CD81;CD83;CD86;CDHl(E-カドヘリン);CDH10;CDH12;CDH13;CDH18;CDH19;CDH20;CDH5;CDH7;CDH8;CDH9;CDK2;CDK3;CDK4;CDK5;CDK6;CDK7;CDK9;CDKNlA(p21Wapl/Cipl);CDKNlB(p27Kipl);CDKNlC;CDKN2A(P16INK4a);CDKN2B;CDKN2C;CDKN3;CEBPB;CERl;CHGA;CHGB;Chitinase;CHST10;CKLFSF2;CKLFSF3;CKLFSF4;CKLFSF5;CKLFSF6;CKLFSF7;CKLFSF8;CLDN3;CLDN7(クローディン-7);CLN3;CLU(クラステリン);CMKLRl;CMKORl(RDCl);CNRl;COL18A1;COLlAl;COL4A3;COL6A1;CR2;CRP;CSFl(M-CSF);CSF2(GM-CSF);CSF3(GCSF);CTLA4;CTNNBl(b-カテニン);CTSB(カテプシンB);CX3CL1(SCYDl);CX3CR1(V28);CXCLl(GROl);CXCL10(IP-10);CXCLIl(I-TAC/IP-9);CXCL12(SDFl);CXCL13;CXCL14;CXCL16;CXCL2(GRO2);CXCL3(GRO3);CXCL5(ENA-78/LIX);CXCL6(GCP-2);CXCL9(MIG);CXCR3(GPR9/CKR-L2);CXCR4;CXCR6(TYMSTR /STRL33/Bonzo);CYB5;CYCl;CYSLTRl;DAB2IP;DES;DKFZp451J0118;DNCLl;DPP4;E2F1;ECGFl;EDGl;EFNAl;EFNA3;EFNB2;EGF;EGFR;ELAC2;ENG;ENO1;ENO2;ENO3;EPHB4;EPO;ERBB2(Her-2);EREG;ERK8;ESRl;ESR2;F3(TF);FADD;FasL;FASN;FCERlA;FCER2;FCGR3A;FGF;FGFl(aFGF);FGF10;FGF11;FGF12;FGF12B;FGF13;FGF14;FGF16;FGF17;FGF18;FGF19;FGF2(bFGF);FGF20;FGF21;FGF22;FGF23;FGF3(int-2);FGF4(HST);FGF5;FGF6(HST-2);FGF7(KGF);FGF8;FGF9;FGFR3;FIGF(VEGFD);FELl(エプシロン);FILl(ZETA);FLJ12584;FLJ25530;FLRTl(フィブロネクチン);FLTl;FOS;FOSLl(FRA-I);FY(DARC);GABRP(GABAa);GAGEBl;GAGECl;GALNAC4S-6ST;GATA3;GDF5;GFI1;GGT1;GM-CSF;GNASl;GNRHl;GPR2(CCRlO);GPR31;GPR44;GPR81(FKSG80);GRCClO(ClO);GRP;GSN(Gelsolin);GSTPl;HAVCR2;HDAC4;HDAC5;HDAC7A;HDAC9;HGF;HIFlA;HDPl;ヒスタミン及びヒスタミン受容体;HLA-A;HLA-DRA;HM74;HMOXl ;HUMCYT2A;ICEBERG;ICOSL;ID2;IFN-a;IFNAl;IFNA2;IFNA4;IFNA5;IFNA6;IFNA7;IFNB1;IFNgamma;DFNWl;IGBPl;IGFl;IGFlR;IGF2;IGFBP2;IGFBP3;IGFBP6;IL-I;IL10;IL10RA;IL10RB;IL11;IL11RA;IL-12;IL12A;IL12B;IL12RB1;IL12RB2;IL13;IL13RA1;IL13RA2;IL14;IL15;IL15RA;IL16;IL17;IL17B;IL17C;IL17R;IL18;IL18BP;IL18R1;IL18RAP;IL19;IL1A;IL1B;ILlF10;IL1F5;IL1F6;IL1F7;IL1F8;IL1F9;IL1HYl;IL1Rl;IL1R2;IL1RAP;IL1RAPL1;IL1RAPL2;IL1RL1;IL1RL2、ILlRN;IL2;IL20;IL20RA;IL21R;IL22;IL22R;IL22RA2;IL23;IL24;IL25;IL26;IL27;IL28A;IL28B;IL29;IL2RA;IL2RB;IL2RG;IL3;IL30;IL3RA;IL4;IL4R;IL5;IL5RA;IL6;IL6R;IL6ST(糖タンパク質130);EL7;EL7R;EL8;IL8RA;DL8RB;IL8RB;DL9;DL9R;DLK;INHA;INHBA;INSL3;INSL4;IRAKI;ERAK2;ITGAl;ITGA2;ITGA3;ITGA6(a6インテグリン);ITGAV;ITGB3;ITGB4(b 4インテグリン);JAGl;JAKl;JAK3;JUN;K6HF;KAIl;KDR;KITLG;KLF5(GC Box BP);KLF6;KLKlO;KLK12;KLK13;KLK14;KLK15;KLK3;KLK4;KLK5;KLK6;KLK9;KRT1;KRT19(Keratin 19);KRT2A;KHTHB6(毛髪特異型Hケラチン);ラマ;LEP(レプチン);Lingo-p75;Lingo-Troy;LPS;LTA(TNF-b);LTB;LTB4R(GPR16);LTB4R2;LTBR;MACMARCKS;MAG又はOmgp ;MAP2K7(c-Jun);MDK;MIBl;ミドカイン;MEF;MIP-2;MKI67;(Ki-67);MMP2;MMP9;MS4A1;MSMB;MT3(メタロチオネクチン-III);MTSSl;MUCl(ムチン);MYC;MYD88;NCK2;ニューロカン;NFKBl;NFKB2;NGFB(NGF);NGFR;NgR-Lingo;NgR-Nogo66(Nogo);NgR-p75;NgR-Troy;NMEl(NM23A);N0X5;NPPB;NROBl;NR0B2;NRlDl;NR1D2;NR1H2;NR1H3;NR1H4;NR1I2;NR1I3;NR2C1;NR2C2;NR2E1;NR2E3;NR2F1;NR2F2;NR2F6;NR3C1;NR3C2;NR4A1;NR4A2;NR4A3;NR5A1;NR5A2;NR6A1;NRPl;NRP2;NT5E;NTN4;ODZl;OPRDl;P2RX7;PAP;PARTl;PATE;PAWR;PCA3;PCNA;PDGFA;PDGFB;PECAMl;PF4(CXCL4);PGF;PGR;ホスファカン;PIAS2;PIK3CG;PLAU(uPA);PLG;PLXDCl;PPBP(CXCL7);PPID;PRl;PRKCQ;PRKDl;PRL;PROC;PROK2;PSAP;PSCA;PTAFR;PTEN;PTGS2(COX-2);PTN;RAC2(p21Rac2);RARB;RGSl;RGS13;RGS3;RNFIlO(ZNF144);ROBO2;S100A2;SCGB1D2(リポフィリンB);SCGB2A1(マンマグロビン2);SCGB2A2(マンマグロビン1);SCYEl(内皮性単球活性化サイトカイン);SDF2;SERPINAl;SERPINA3;SERP1NB5(マスピン);SERPINEl(PAI-I);SERPDMF1;SHBG;SLA2;SLC2A2;SLC33A1;SLC43A1;SLIT2;SPPl;SPRRlB(Sprl);ST6GAL1;STABl;STAT6;STEAP;STEAP2;TB4R2;TBX21;TCPlO;TDGFl;TEK;TGFA;TGFBl;TGFBlIl;TGFB2;TGFB3;TGFBI;TGFBRl;TGFBR2;TGFBR3;THlL;THBSl(トロンボスポンジン-1);THBS2;THBS4;THPO;TIE(Tie-1);TMP3;組織因子;TLRlO;TLR2;TLR3;TLR4;TLR5;TLR6;TLR7;TLR8;TLR9;TNF;TNF-a;TNFAEP2(B94);TNFAIP3;TNFRSFIlA;TNFRSFlA;TNFRSFlB;TNFRSF21;TNFRSF5;TNFRSF6(Fas);TNFRSF7;TNFRSF8;TNFRSF9;TNFSFlO(TRAIL);TNFSFl 1(TRANCE);TNFSF12(APO3L);TNFSF13(April);TNFSF13B;TNFSF14(HVEM-L);TNFSF15(VEGI);TNFSF18;TNFSF4(OX40リガンド);TNFSF5(CD40リガンド);TNFSF6(FasL);TNFSF7(CD27リガンド);TNFSF8(CD30リガンド);TNFSF9(4-1BBリガンド);TOLLIP;Toll様受容体;TOP2A(トポイソメラーゼEa);TP53;TPMl;TPM2;TRADD;TRAFl;TRAF2;TRAF3;TRAF4;TRAF5;TRAF6;TREMl;TREM2;TRPC6;TSLP;TWEAK;VEGF;VEGFB;VEGFC;ベルシカン;VHL C5;VLA-4;XCLl(リンホタクチン);XCL2(SCM-Ib);XCRl(GPR5/CCXCRl);YYl;及びZFPM2からなる群より選択される
一又は複数の標的に結合することができる。
【0205】
本発明によって包含される抗体の好ましい分子標的分子には、CD3、CD4、CD8、CD16、CD19、CD20、CD34といったCDタンパク質;EGF受容体、HER2、HER3又はHER4受容体といったErbB受容体ファミリーのCD64、CD200メンバー;細胞接着分子、例えばLFA-1、Mac1、p150.95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、アルファ4/ベータ7インテグリン、及びアルファv/ベータ3インテグリン(そのアルファ若しくはベータサブユニットを含む)(例えば、抗CD11a、抗CD18又は抗CD11b抗体);VEGF-A、VEGF-Cといった増殖因子;組織因子(TF);アルファインターフェロン(alphaIFN);TNFアルファ、インターロイキン、例えばIL-1ベータ、IL-3、IL-4、IL-5、IL-8、IL-9、IL-13、IL17A/F、IL-18、IL-13Rアルファ1、IL13Rアルファ2、IL-4R、IL-5R、IL-9R、IgE;血液型抗原;flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;RANKL、RANK、RSV Fタンパク質、タンパク質Cなどが含まれる。
【0206】
一実施態様では、本発明のヘテロ多量体タンパク質は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質(LRP)-1又はLRP-8又はトランスフェリン受容体、及び1)ベータ-セクレターゼ(BACE1又はBACE2)、2)アルファ-セクレターゼ、3)ガンマ-セクレターゼ、4)タウ-セクレターゼ、5)アミロイド前駆体タンパク質(APP)、6)デスレセプター6(DR6)、7)アミロイドベータペプチド、8)α-シヌクレイン、9)パーキン、10)ハンチンチン、11)p75 NTR、及び12)カスパーゼ-6からなる群より選択される少なくとも一つの標的に結合する。
【0207】
一実施態様では、本発明のヘテロ多量体タンパク質は、IL-1アルファ及びIL-1ベータ、IL-12及びIL-18;IL-13及びIL-9;IL-13及びIL-4;IL-13及びIL-5;IL-5及びIL-4;IL-13及びIL-1ベータ;IL-13及びIL-25;IL-13及びTARC;IL-13及びMDC;IL-13及びMEF;IL-13及びTGF-β;IL-13及びLHRアゴニスト;IL-12及びTWEAK、IL-13及びCL25;IL-13及びSPRR2a;IL-13及びSPRR2b;IL-13及びADAM8、IL-13及びPED2、IL17A及びIL17F、CD3及びCD19、CD138及びCD20;CD138及びCD40;CD19及びCD20;CD20及びCD3;CD38及びCD138;CD38及びCD20;CD38及びCD40;CD40及びCD20;CD-8及びIL-6;CD20及びBR3、TNFアルファ及びTGF-ベータ、TNFアルファ及びIL-1ベータ;TNFアルファ及びIL-2、TNF アルファ及びIL-3、TNFアルファ及びIL-4、TNFアルファ及びIL-5、TNFアルファ及びIL6、TNFアルファ及びIL8、TNFアルファ及びIL-9、TNFアルファ及びIL-10、TNFアルファ及びIL-11、TNFアルファ及びIL-12、TNFアルファ及びIL-13、TNFアルファ及びIL-14、TNFアルファ及びIL-15、TNFアルファ及びIL-16、TNFアルファ及びIL-17、TNFアルファ及びIL-18、TNFアルファ及びIL-19、TNFアルファ及びIL-20、TNFアルファ及びIL-23、TNFアルファ及びIFNアルファ、TNFアルファ及びCD4、TNFアルファ及びVEGF、TNFアルファ及びMIF、TNFアルファ及びICAM-1、TNFアルファ及びPGE4、TNFアルファ及びPEG2、TNFアルファ及びRANKリガンド、TNFアルファ及びTe38;TNFアルファ及びBAFF;TNFアルファ及びCD22;TNFアルファ及びCTLA-4;TNFアルファ及びGP130;TNFα及びIL-12p40;VEGF及びHER2、VEGF-A及びHER2、VEGF-A及びPDGF、HER1及びHER2、VEGF-A及びVEGF-C、VEGF-C及びVEGF-D、HER2及びDR5,VEGF及びIL-8、VEGF及びMET、VEGFR及びMET受容体、VEGFR及びEGFR、HER2及びCD64、HER2及びCD3、HER2及びCD16、HER2及びHER3;EGFR(HER1)及びHER2、EGFR及びHER3、EGFR及びHER4、IL-13及びCD40L、IL4及びCD40L、TNFR1及びIL-1R、TNFR1及びIL-6R及びTNFR1及びIL-18R、EpCAM及びCD3、MAPG及びCD28、EGFR及びCD64、CSPGs及びRGM A;CTLA-4及びBTNO2;IGF1及びIGF2;IGF1/2及びErb2B;MAG及びRGM A;NgR及びRGM A;NogoA及びRGM A;OMGp及びRGM A;PDL-I及びCTLA-4;及びRGM A及びRGM Bからなる群より選択される少なくとも二つの標的分子に結合する。
【0208】
任意選択的に他の分子にコンジュゲートされる、可溶型抗原又はその断片は、抗体を生成するためのイムノゲンとして使用することができる。受容体といった膜貫通分子のために、これらの断片(例えば、受容体の細胞外ドメイン)をイムノゲンとして使用することができる。代替的に、膜貫通分子を発現する細胞をイムノゲンとして使用することができる。このような細胞は、自然源(例えば、がん細胞株)に由来するものとすることができるか、又は膜貫通分子を発現するように組み換え技術によって形質転換された細胞でもよい。抗体の調製に有用な他の抗原及びその形態は、当業者には自明である。
【0209】
VII.活性のアッセイ
本発明のヘテロ多量体タンパク質は、当技術分野において既知の様々なアッセイにより、それらの物理的/化学的特性及び生物学的機能に関して特徴付けすることができる。
【0210】
精製されたヘテロ多量体タンパク質は、限定されないが、N末端配列決定、アミノ酸分析、非変性サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、質量分析法、イオン交換クロマトグラフィー及びパパイン消化を含む一連のアッセイによって更に特徴付けることができる。
【0211】
本発明の特定の実施態様において、本明細書で生成される免疫グロブリンを、その生物活性に関して分析する。いくつかの実施態様において、本発明の免疫グロブリンを、その抗原結合活性に関して試験する。当技術分野で既知であり、本明細書で用いることのできる抗原結合アッセイには、限定されないが、ウェスタンブロット、放射免疫アッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」免疫アッセイ、免疫沈降アッセイ、蛍光免疫アッセイ及びタンパク質A免疫アッセイなどの技術を用いた任意の直接的又は競合結合アッセイが含まれる。具体的な抗原結合アッセイは、下記の実施例の項に提供されている。
【0212】
一実施態様において、本発明は、インビボにおける抗体の半減期が重要であるが、ある種のエフェクター機能(例えば補体及びADCC)が不要又は有害である多数の用途のための望ましい候補とならしめる、すべてではないがいくつかのエフェクター機能を有する改変抗体を考慮している。特定の実施態様では、生成されたヘテロ多量体タンパク質のFc活性が、所望の特性のみが維持されていることを保証するためにヘテロ多量体タンパク質が測定される。インビトロ及び/又はインビボ細胞傷害性アッセイを、CDC及び/又はADCCの活性の低下/枯渇を確認するために実施することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実施して、ヘテロ多量体タンパク質がFcγR結合を欠く(したがって恐らくはADCC活性を欠く)が、FcRn結合能を保持していることを確認することができる。ADCCを媒介する第一の細胞であるNK細胞がFc(RIIIのみを発現するのに対し、単球はFc(RI、Fc(RII及びFc(RIIIを発現する。造血細胞におけるFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-92 (1991)の464ページの表3に要約されている。対象の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの一例は、米国特許第5500362号又は同第5821337に記載されている。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む。或いは又は加えて、対象とする分子のADCC活性は、例えばClynesら, PNAS (USA) 95:652-656 (1998)に開示されているような動物モデルにおいてインビボで評価されてもよい。また、C1q結合アッセイを、抗体が体C1qに結合できないこと、したがってCDC活性を欠くことを確認するために実施することができる。補体活性化を評価するため、例えばGazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載のようなCDCアッセイを実行することができる。また、FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期の決定を、当技術分野で既知の方法を用いて実施することができる。
【0213】
VIII.コンジュゲートタンパク質
本発明は、コンジュゲートされた抗体又はイムノコンジュゲート(例えば、「抗体-薬物コンジュゲート」即ち「ADC」)、のようなコンジュゲートタンパク質も提供し、これには、軽鎖又は重鎖の定常領域の一つが、化学分子、例えば染料、又は細胞傷害性剤、例えば化学療法剤、薬物、増殖阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物、又は動物由来の酵素的に活性な毒素又はその断片)、又は放射性同位体(即ち、放射性コンジュゲート)にコンジュゲートしている本明細書に記載のヘテロ多量体タンパク質(例えば、本明細書に記載される方法に従って作製される抗体)が含まれる。特に、本明細書に記載されるように、ヘテロ多量体化ドメインの使用により、二つの異なる重鎖(HC1及びHC2)並びに二つの異なる軽鎖(LC1及びLC2)を含む抗体の構築が可能になる。本明細書に記載される方法を用いて構築されたイムノコンジュゲートは、重鎖の一方のみの定常領域(HC1若しくはHC2)又は軽鎖の一方のみの定常領域(LC1若しくはLC2)にコンジュゲートした細胞傷害性剤を含みうる。また、イムノコンジュゲートは、一方の重鎖又は軽鎖のみに付着した細胞傷害性剤を有することができるため、対象に投与される細胞傷害性剤の量は、両方の重鎖又は軽鎖に付着した細胞傷害性剤を有する抗体の投与と比較して、低減する。対象に投与される細胞傷害性剤の量を低減することにより、細胞傷害性剤に関連づけられる有害な副作用が制限される。
【0214】
細胞傷害性又は細胞増殖抑制剤、即ちがんの治療において腫瘍細胞を殺すため又は阻害するための薬剤(Syrigos and Epenetos, Anticancer Research 19:605-614 (1999); Niculescu-Duvaz and Springer, Adv. Drg. Del. Rev. 26:151-172 (1997);米国特許第4975278号)の局所送達のための抗体-薬物コンジュゲートの使用は、腫瘍への薬物部分の標的化送達、及び腫瘍における細胞内蓄積を可能にし、この場合、これら非コンジュゲート薬剤の投与は、排除しようとする腫瘍細胞だけでなく正常細胞にも許容できないレベルの毒性を招きうる(Baldwin et al., Lancet (Mar. 15, 1986):603-605 (1986); Thorpe, (1985) "Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review,” in Monoclonal Antibodies ‘84: Biological And Clinical Applications, A. Pinchera et al. (eds.), pp. 475-506)。よって、毒性を最小限にした最大限の有効性が追求される。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の両方が、こうした方策に有用であることが報告されている(Rowland et al., Cancer Immunol. Immunother. 21:183-187 (1986))。これらの方法において使用されている薬物には、ダウノマイシン、ドキソルビシン、メトトレキサート及びビンデシンが含まれる(上掲のRowland et al., (1986))。抗体-毒素コンジュゲートに使用される毒素は、ジフテリア毒素のような細菌性毒素、リシンのような植物性毒素、ゲルダナマイシン(Mandler et al., Jour. of the Nat. Cancer Inst. 92(19):1573-1581 (2000); Mandler et al., Bioorganic & Med. Chem. Letters 10:1025-1028 (2000); Mandler et al., Bioconjugate Chem. 13:786-791 (2002))、メイタンシノイド(EP1391213;Liu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623 (1996))、及びカリケアマイシン(Lode et al., Cancer Res. 58:2928 (1998); Hinman et al., Cancer Res. 53:3336-3342 (1993))などの小分子毒素を含む。毒素は、チューブリン結合、DNA結合又はトポイソメラーゼ阻害を含む機構により、その細胞傷害性及び細胞分裂停止性の効果に影響を与えうる。一部の細胞傷害性剤は大型の抗体又はタンパク質受容体リガンドにコンジュゲートされると不活性になるか又は活性が低下する傾向がある。
【0215】
イムノコンジュゲートの生成に有用な化学療法剤は本明細書に記載されている(例えば上記)。使用されうる酵素的に活性な毒素及びその断片は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリタンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、ヨウシュヤマゴボウタンパク質(PAPI、PAPII及びPAP-S)、ツルレイシ阻害剤、クルシン、クロチン、サポンソウ阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン及びトリコテセンを含む。例えば、1993年10月28日公開の国際公開第93/21232号を参照のこと。種々の放射性核種が放射性コンジュゲート抗体の製造のために利用されうる。その例は、212Bi、131I、131In、90Y及び186Reを含む。抗体と細胞傷害性剤とのコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCl)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート類(例えば、トルエン-2,6-ジイソシアネート)、及びビス活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して製造される。例えば、リシンイムノトキシンは、Vitettaら, Science 238: 1098 (1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性核種の抗体へのコンジュゲーションのキレート剤の例である。例えば、国際公開第94/11026号参照。
【0216】
抗体と、一又は複数の小分子毒素(例えばカリケアマイシン、メイタンシノイド、ドラスタチン、アウリスタチン、トリコテセン及びCC1065並びに毒素活性を有するこれらの毒素の誘導体)とのコンジュゲートも本発明において企図される。このような低分子毒素に関する詳細は、国際公開第2008/021290号に提供されている。
【0217】
i.メイタンシン及びメイタンシノイド
いくつかの実施態様において、イムノコンジュゲートは、一又は複数のメイタンシノイド分子にコンジュゲートした本発明の抗体(完全長又は断片)を含む。
【0218】
メイタンシノイドは、チューブリン重合を阻害することにより作用する有糸分裂阻害剤である。メイタンシンは、東アフリカの灌木メイテナスセラタ(Maytenus serrata)から最初に単離された(米国特許第3,896,111号)。続いて、特定の微生物も、メイタンシノイド、例えばメイタンシノール及びC-3メイタンシノールエステルを生成することが発見された(米国特許第4151042号)。合成メイタンシノイド及びその誘導体及びアナログは、例えば、米国特許第4137230号;同第4248870号;同第4256746号;同第4260608号;同第4265814号;同第4294757号;同第4307016号;同第4308268号;同第4308269号;同第4309428号;同第4313946号;同第4315929号;同第4317821号;同第4322348号;同第4331598号;同第4361650号;同第4364866号;同第4424219号;同第4450254号;同第4362663号;及び同第4371533号に開示されている。
【0219】
メイタンシノイド薬物部分は抗体薬物コンジュゲートの魅力的な薬物部分である。なぜなら、この薬物部分は、(i)発酵又は発酵産物の化学的修飾、誘導体化により比較的調製し易く、(ii)抗体に対する非ジスルフィドリンカーを介した結合に適した官能基の誘導体化を受け易く、(iii)血漿中で安定であり、且つ(iv)種々の腫瘍細胞株に対して有効であるからである。
【0220】
メイタンシノイドを含有するイムノコンジュゲート、その作製方法及びそれらの治療用途は、例えば米国特許第5208020号、同第5416064号、及びEP0425235に開示されており、これらの開示内容は本明細書に出典明示により援用される。Liu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623 (1996)には、ヒト結腸直腸がんに対するモノクローナル抗体C242に結合するDM1と命名されたメイタンシノイドを含むイムノコンジュゲートが記載されている。前記コンジュゲートは培養された結腸がん細胞に対して細胞傷害性が高いことが見出されており、インビボ腫瘍増殖アッセイにおいて抗腫瘍活性を示した。Chari et al., Cancer Research 52:127-131 (1992)には、メイタンシノイドが、ジスルフィドリンカーを介してヒト結腸がん細胞株上の抗原に結合しているマウス抗体A7、又はHER-2/neuオンコジーンに結合する別のマウスモノクローナル抗体TA.1にコンジュゲートしたイムノコンジュゲートが記載されている。TA.1-メイタンシノイドコンジュゲートの細胞傷害性は、インビトロでヒト乳がん細胞株SK-BR-3上で試験され、細胞当たり3x105個のHER-2表面抗原を発現する。薬物コンジュゲートは遊離メイタンシノイド薬と同程度の細胞傷害性を達成し、この細胞傷害性は、抗体分子当たりのメイタンシノイド分子の数を増やすことにより亢進されうる。A7-メイタンシノイドコンジュゲートはマウスにおいて低い全身性細胞傷害性を示した。
【0221】
抗体-メイタンシノイドコンジュゲートは、抗体をメイタンシノイド分子に、抗体又はメイタンシノイド分子の生物活性を大きく低減させることなく、化学的にリンクさせることにより調製される。例えば、米国特許第5208020号参照(開示内容は参照により本明細書に明示的に包含される)。1分子の毒素/抗体でもネイキッド抗体の使用より細胞傷害性を高めることが予期されるが、抗体分子当たり平均3-4のメイタンシノイド分子がコンジュゲートしたものは、抗体の機能又は溶解度に悪影響を与えることなく、標的細胞の細胞傷害性を向上させるという効力を示した。メイタンシノイドは当技術分野で周知であり、既知の技術により合成すること又は天然の供給源から単離することができる。適切なメイタンシノイドは、例えば、上述の米国特許第5208020号及び他の特許、並びに非特許文献に開示されている。好ましいメイタンシノイド類は、メイタンシノール、及びメイタンシノール分子の芳香環又は他の位置が修飾されたメイタンシノールアナログ、例えば種々のメイタンシノールエステルである。
【0222】
抗体-メイタンシノイドコンジュゲートを作製するための、当技術分野において既知の多くの連結基があり、これには、例えば、米国特許第5208020号又はEP特許0425235B1;Chari et al., Cancer Research 52:127-131 (1992);及び米国特許出願公開第2005/0169933号に開示されているものが含まれ、これら文献の開示内容は参照により本明細書に明示的に包含される。リンカー成分SMCCを含む抗体-メイタンシノイドコンジュゲートは、米国特許出願公開第2005/0169933に開示されるように調製されうる。そのような連結基は、上掲の特許において開示されている、ジスルフィド基、チオエーテル基、酸解離性基、光解離性基、ペプチダーゼ解離性基、又はエステラーゼ解離性基を含み、ジスルフィド基及びチオエーテル基が好ましい。追加の結合基を本明細書に記載し、例示する。
【0223】
抗体とメイタンシノイドのコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。ジスルフィド結合を提供するための特に好適なカップリング剤は、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)(Carlsson et al., Biochem. J. 173:723-737 (1978))及びN-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルジチオ)ペンタノエート(SPP)を含む。
【0224】
リンカーは、連結の種類に応じて、多様な位置でメイタンシノイド分子に結合させることができる。例えば、エステル結合は、従来のカップリング技術を使用したヒドロキシル基との反応により形成される。反応は、ヒドロキシル基を有するC-3位、ヒドロキシメチルで修飾されたC-14位、ヒドロキシル基で修飾されたC-15位、及びヒドロキシル基を有するC-20位で生じうる。好ましい実施態様では、結合はメイタンシノール又はメイタンシノールアナログのC-3位において形成される。
【0225】
ii.アウリスタチン及びドラスタチン
いくつかの実施態様では、イムノコンジュゲートは、ドラスタチン又はドロスタチンのペプチドアナログ及び誘導体である、アウリスタチン(米国特許第5635483号及び同第5780588号)にコンジュゲートした本発明の抗体を含む。ドラスタチン及びアウリスタチンは微小管動態、GTP加水分解及び核と細胞の分割を妨げ(Woyke et al., Antimicrob. Agents and Chemother. 45(12):3580-3584 (2001))、抗がん活性(米国特許第5663149号)及び抗真菌活性(Pettit et al., Antimicrob. Agents Chemother. 42:2961-2965 (1998))を有することが示されている。ドラスタチン又はアウリスタチン薬物部分は、ペプチド性薬物部分のN(アミノ)末端又はC(カルボキシル)末端を介して抗体に結合されうる(国際公開第02/088172号)。
【0226】
例示的なアウリスタチンの実施態様は、”Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands”、米国特許出願公開第2005/0238649号(その全開示内容は本明細書に出典明示により援用される)に開示されている、N末端結合モノメチルアウリスタチン薬物部分DE及びDFを含む。
【0227】
通常、ペプチドベースの薬物部分は、二つ以上のアミノ酸及び/又はペプチド断片の間にペプチド結合を形成することにより調製することができる。このようなペプチド結合は、例えば、ペプチド化学の分野で周知の液体相合成法に従って調製することができる(E. Schroder and K. Lubke, "The Peptides,” volume 1, pp. 76-136, 1965, Academic Press参照)。アウリスタチン/ドラスタチン薬物部分は、米国特許第5635483号及び同第5780588号;Pettit et al., J. Nat. Prod. 44:482-485 (1981); Pettit et al., Anti-Cancer Drug Design 13:47-66 (1998); Poncet, Curr. Pharm. Des. 5:139-162 (1999); 及びPettit, Fortschr. Chem. Org. Naturst. 70:1-79 (1997)に記載の方法に従って調製されうる。Doronina, Nat. Biotechnol. 21(7):778-784 (2003); 及び"Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands”、米国特許出願公開第2005/0238649号(その全開示内容は本明細書に出典明示により援用される)(例えば、リンカー、及びモノメチルバリン化合物、例えばリンカーにコンジュゲートしたMMAE及びMMAFの調製方法を開示している)も参照されたい。
【0228】
iii.カリケアマイシン
他の実施態様では、イムノコンジュゲートは、一又は複数のカリケアマイシン分子にコンジュゲートした本発明の抗体を含む。抗生物質のカリケアマイシンファミリーはピコモル以下の濃度で二本鎖DNA破壊を生じさせる能力がある。カリケアマイシンファミリーのコンジュゲートの調製については、米国特許第5712374号、同第5714586号、同第5739116号、同第5767285号、同第5770701号、同第5770710号、同第5773001号、及び同第5877296号(すべてAmerican Cyanamid Company)を参照のこと。使用されうるカリケアマイシンの構造類似体は、限定されないが、γ1
I、α2
I、α3
I、N-アセチル-γ1
I、PSAG及びθI
1(Hinman et al., Cancer Research 53:3336-3342 (1993), Lode et al., Cancer Research 58:2925-2928 (1998)及び上記したAmerican Cyanamidへの米国特許)を含む。抗体がコンジュゲートできる別の抗腫瘍薬は、葉酸代謝拮抗薬であるQFAである。カリケアマイシン及びQFAはどちらも、細胞内作用部位を有しており原形質膜を容易に通過しない。したがって、抗体媒介性の内部移行によるこれらの薬剤の細胞への取り込みにより、薬剤の細胞傷害効果が大きく向上する。
【0229】
iv.他の細胞傷害剤
本発明の抗体にコンジュゲートできる又は本明細書に記載の方法に従って作製することができる他の抗腫瘍剤は、BCNU、ストレプトゾシン(streptozoicin)、ビンクリスチン及び5-フルオロウラシル、米国特許第5053394号;同5770710号に記載されており、集合的にLL-E33288複合体として知られる薬剤のファミリー、並びにエスペラミシン(米国特許第5877296号)を含む。
【0230】
使用可能な酵素的に活性な毒素及びその断片は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(緑膿菌からの)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシン(モデシン)A鎖、アルファ-サルシン、アレウリテスフォーディ(シナアブラギリ)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、フィトラカ・アメリカーナ(ヨウシュヤマゴボウ)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、モモルディカチャランチア(ツルレイシ)阻害剤、クルシン、クロチン、サパオナリアオフィシナリス(sapaonaria oficinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン及びトリコテセン(tricothecene)を含む(例えば、1993年10月28日公開の国際公開第93/21232号参照)。
【0231】
本発明は、抗体と、核酸分解活性を有する化合物(例えば、リボヌクレアーゼ、又はデオキシリボヌクレアーゼ(すなわちDNase)のようなDNAエンドヌクレアーゼ)との間に形成されるイムノコンジュゲートを更に考察する。
【0232】
腫瘍の選択的破壊のために、抗体は放射性の高い原子を含み得る。様々な放射性同位体が放射性コンジュゲート抗体の生成のために入手可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体がある。コンジュゲートは、検出用に使用される場合、シンチグラフ検査のための放射性原子、例えばtc99m若しくはI123、又は核磁気共鳴(NMR)画像法(磁気共鳴画像法、MRIとしても知られる)のためのスピン標識、例えば、再びヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン又は鉄を含みうる。
【0233】
放射標識又は他の標識が、既知の方法でコンジュゲートに取り込まれうる。例えば、ペプチドは生合成されるか、又は例えば水素の代わりにフッ素-19を伴う適切なアミノ酸前駆体を使用する化学的なアミノ酸合成により合成されうる。標識、例えばtc99m又はI123、Re186、Re188及びIn111は、ペプチドのシステイン残基を介して結合することができる。イットリウム-90はリジン残基を介して結合することができる。IODOGEN法(Fraker et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 80:49-57 (1978))を、ヨウ素-123を取り込むために使用することができる。”Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy” (Chatal, CRC Press 1989)には、他の方法が詳細に記載されている。
【0234】
抗体と細胞傷害性剤とのコンジュゲートは種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCl)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート類(例えば、トルエン-2,6-ジイソシアネート)、及びビス活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製されうる。例えば、リシンイムノトキシンは、Vitetta et al.、Science 238:1098(1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性核種の抗体へのコンジュゲーションのキレート剤の例である。例えば、国際公開第94/11026号参照。リンカーは細胞中の細胞傷害性剤の放出を容易にする「切断可能なリンカー」でもよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ過敏性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカー(Chari et al., Cancer Research 52:127-131 (1992);米国特許第5208020号)を使用することができる。
【0235】
本発明の化合物は、限定するものではないが、(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,U.S.Aから)市販されている架橋剤:BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、及びSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエートを用いて調製したADCを特に企図している。2003-2004 Applications Handbook and Catalogの467-498頁を参照。
【0236】
v.コンジュゲート抗体の調製
本発明のコンジュゲート抗体では、抗体は、抗体一つにつき、一又は複数の部分(例えば、薬物部分)、例えば、約1から約20の部分に、任意選択的にリンカーを介してコンジュゲートしている。コンジュゲート抗体は、(1)抗体の求核基と、共有結合を介した二価のリンカー試薬と反応と、それに続く対象の部分との反応;及び(2)一部分の求核基と、共有結合を介した二価のリンカー試薬との反応と、それに続く抗体の求核基との反応を含む、当業者に既知の有機化学反応、条件、及び試薬を利用する複数のルートにより調製されうる。コンジュゲート抗体を調製するための追加的な方法は本明細書に記載されている。
【0237】
リンカー試薬は、一又は複数のリンカー成分からなっていてもよい。例示的なリンカー成分は、6-マレイミドカプロイル(「MC」)、マレイミドプロパノイル(「MP」)、バリン-シトルリン(「val-cit」)、アラニン-フェニルアラニン(「ala-phe」)、p-アミノベンジルオキシカルボニル(「PAB」)、N-スクシンイミジル 4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(「SPP」)、N-スクシンイミジル 4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1カルボキシレート(「SMCC」)、及びN-スクシンイミジル(4-ヨード-アセチル)アミノベンゾエート(「SIAB」)を含む。追加的なリンカー成分は当技術分野では周知であり、そのいくつかは本明細書に記載されている。また、”Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands”(米国特許出願公開第2005/0238649号)(その全開示内容は本明細書に出典明示により援用される)を参照のこと。
【0238】
いくつかの実施態様では、リンカーはアミノ酸残基を含みうる。例示的なアミノ酸リンカー成分は、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド又はペンタペプチドを含む。例示的なジペプチドは、バリン-シトルリン(vc又はval-cit)、アラニン-フェニルアラニン(af又はala-phe)を含む。例示的なトリペプチドは、グリシン-バリン-シトルリン(gly-val-cit)及びグリシン-グリシン-グリシン(gly-gly-gly)を含む。アミノ酸リンカー成分を含むアミノ酸残基は、天然に生じるもの、並びに微量のアミノ酸及び非天然に生じるアミノ酸アナログ、例えばシトルリンを含む。アミノ酸リンカー成分を設計し、特定の酵素、例えば腫瘍関連プロテアーゼ、カテプシンB、C及びD又はプラスミンプロテアーゼによる酵素的切断の選択性について最適化することができる。
【0239】
抗体上の求核基には、限定されないが:(i)N末端アミン基、(ii)側鎖アミン基、例えばリシン、(iii)側鎖チオール基、例えばシステイン、及び(iv)抗体がグリコシル化されている糖のヒドロキシル基又はアミノ基が含まれる。アミン、チオール及びヒドロキシル基は求核性であり、(i)NHSエステル、HOBtエステル、ハロホルメート及び酸ハロゲン化物などの活性エステル、(ii)アルキル及びベンジルハロゲン化物、例えばハロアセトアミド;(ii)アルデヒド、ケトン、カルボキシル及びマレイミド基を含む、リンカー部分及びリンカー試薬上の求電子基と反応して共有結合を形成することができる。特定の抗体は、還元可能な鎖間ジスルフィド、即ちシステイン架橋を有する。抗体は、DTT(ジチオスレイトール)などの還元剤を用いた処理によって、リンカー試薬とのコンジュゲーションに対して反応性にされうる。したがって、各システイン架橋は、理論的には二つの反応性チオール求核試薬を形成する。リシンと2-イミノチオラン(Trautの試薬)との反応によって追加的な求核基が抗体内に導入し、それによりアミンからチオールへの変換をもたらすことができる。一、二、三、四又はそれより多くのシステイン残基を導入する(例えば、一又は複数の非天然システインアミノ酸残基を含む変異抗体を調製する)ことによって、反応性チオール基が抗体(又はその断片)内に導入されてもよい。
【0240】
本発明のコンジュゲート抗体は、リンカー試薬又は薬物又は他の部分上の求核置換基と反応できる求電子部分を導入するように抗体を修飾することによっても生成することができる。グリコシル化された抗体の糖は、例えば過ヨウ素酸酸化剤で酸化させ、リンカー試薬又は薬物又は他の部分のアミン基と反応しうるケトン基又はアルデヒド基を形成することができる。得られたイミンシッフ塩基群は、安定な結合を形成しうる、又は例えば水素化ホウ素試薬によって還元されて安定なアミン結合を形成しうる。一実施態様では、グリコシル化された抗体の炭水化物部分と、ガラクトース(glactose)オキシダーゼ又はメタ過ヨウ素酸ナトリウムとの反応により、薬物又は他の部分上の適切な基と反応することができるタンパク質中にカルボニル(アルデヒド及びケトン)基が生じうる(Hermanson,Bioconjugate Techniques)。別の実施態様では、N末端セリン又はスレオニン残基を含有するタンパク質は、メタ過ヨウ素酸ナトリウムと反応して、第一のアミノ酸の代わりにアルデヒドの生成をもたらすことができる(Geoghegan and Stroh, Bioconjugate Chem. 3:138-146 (1992);米国特許第5362852号)。このようなアルデヒドは、薬物部分又はリンカー求核試薬と反応することができる。
【0241】
同様に、一の部分(例えば薬物部分)上の求核基は、(i)NHSエステル、HOBtエステル、ハロホルメート及び酸ハロゲン化物などの活性エステル;(ii)アルキル及びベンジルハロゲン化物、例えばハロアセトアミド;並びに(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシル及びマレイミド基を含む、リンカー部分及びリンカー試薬上の求電子基と反応して共有結合を形成することができる、アミン、チオール、ヒドロキシル、ヒドラジド、オキシム、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレート及びアリールヒドラジド基を含むがこれらに限定されない。
【0242】
別法として、抗体及び細胞傷害性剤を含む融合タンパク質が、例えば組み換え技術又はペプチド合成により作製されうる。DNAの長さは、コンジュゲートの所望の特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域により分離されているか、又は互いに隣接しているコンジュゲートの二つの部分をコードする各領域を含みうる。また別の実施態様では、腫瘍の事前標的化に利用するための「受容体」(例えばストレプトアビジン)に抗体をコンジュゲートし(抗体-受容体コンジュゲートは個体に投与される)、続いて洗浄剤を使用して循環から非結合コンジュゲートを除去し、次いで細胞傷害性剤(例えば放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートさせた「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
【0243】
IX.有用性
本明細書に提供される本発明の方法は、ヘテロ多量体タンパク質の生産に工業的利用性を見出す。本方法は、二つの別個の発酵に固有の技術的困難性である、二つの別個の発酵及び単離に伴う作業量を低減する。更に、先行技術の方法手順のアニール(annealment)及びレドックス工程の排除により、収率が上昇し、処理の複雑性とコストが低減しうる。
【0244】
本明細書に記載されるヘテロ多量体タンパク質は、例えば、インビトロ、エクスビボ及びインビボでの治療方法に用途を見出す。本発明は、このような分子の一又は複数の使用に基づく様々な方法を提供する。特定の病理学的状態では、ヘテロ多量体タンパク質、例えば、多重特異性抗体を利用することが必要である及び/又は望ましい。本発明は、様々な目的、例えば治療的、予防的及び診断的な目的のために使用できる、このようなヘテロ多量体タンパク質を提供する。例えば、本発明は、治療を要する対象に対して本発明のヘテロ多量体タンパク質を投与することを含み、それにより疾患が治療される、疾患の治療方法を提供する。本明細書に記載される本発明のヘテロ多量体タンパク質のいずれもが、本明細書に記載される治療的(又は予防的又は診断的)方法に使用可能である。
【0245】
例えば、ヘテロ多量体タンパク質が多価であるとき、価値ある利点は、同タンパク質がそれに対応する抗原にもたらす結合活性が増強されることである。抗原に対する結合単位(例えば、Fab)ベースで固有の高親和性を有することに加えて、正常なIgG抗体は、結合活性効果を利用して、標的に対して二価結合する結果として抗原との結合を増大させる。
【0246】
同じ抗原分子上において二つの別個のエピトープに向けられたヘテロ多量体タンパク質は、(二価結合により)結合活性を増強するという利点を提供できるだけでなく、親抗体のいずれにも関連付けられない新規の特性を取得することができる。したがって、本発明のヘテロ多量体タンパク質は、例えば、受容体-リガンド相互作用のブロックに用途を見出す。
【0247】
本明細書に記載されるヘテロ多量体タンパク質は、一つの分子を用いて二つの標的のシグナル伝達経路を同時にブロックする適用分野にも用途を見出す。
【0248】
X.治療的使用
本明細書に記載される抗体及び抗体断片(例えば、本明細書に記載される方法に従って作製される抗体及び/又はその断片)は、治療的用途に使用することができる。例えば、このようなヘテロ多量体タンパク質は、前がん性、非転移性、転移性及びがん性腫瘍(例えば、早期ステージのがん)を含む腫瘍の治療のため、アレルギー性若しくは炎症性障害の治療のため、又は自己免疫疾患の治療のため、或いはがん(例えば、乳がん、結腸直腸がん、肺がん、腎細胞癌、神経膠腫、若しくは卵巣がん)、アレルギー性若しくは炎症性障害、又は自己免疫疾患を発症するリスクを有する対象の治療のために使用することができる。
【0249】
がんという用語は、限定しないが、前がん性増殖、良性腫瘍、及び悪性腫瘍を含む増殖性疾患の集合を包含する。良性腫瘍は、発生部位に局在したままであり、浸潤能、侵入能、又は遠位部位への転移能を有さない。悪性腫瘍は、周囲の他の組織に侵入し、それらを損傷する。悪性腫瘍はまた、それが発生した所から離脱して、通常は血流又はリンパ節が位置するリンパ系を通して身体の他の部位に広がる(転移する)能力を獲得することができる。原発腫瘍は、それが生じる組織の種類によって分類され;転移性腫瘍はがん細胞が由来する組織種類により分類される。時間の経過と共に、悪性腫瘍の細胞の異常性は高まっていき、正常細胞には見えなくなる。がん細胞のこのような外観の変化は腫瘍悪性度と呼ばれ、がん細胞は、高分化、中分化、低分化、又は未分化と説明される。高分化細胞は、極めて正常な外観を有し、それらの起源である正常細胞に似ている。未分化細胞は、異常となってもはや細胞の起源を決定することができない細胞である。
【0250】
腫瘍は、固形腫瘍又は非固形若しくは軟部組織腫瘍である。軟部組織腫瘍の例は、白血病(例:慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、成人急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、成熟B細胞急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、リンパ性白血病又はヘアリー細胞白血病)又はリンパ腫(例:非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫又はホジキン病)を含む。固形腫瘍は、血液、骨髄又はリンパ系以外の体組織の任意のがんを含む。固形腫瘍は、上皮細胞由来のものと非上皮細胞由来のものに更に分けることができる。上皮細胞固形腫瘍の例には、胃腸管、結腸、乳房、前立腺、肺、腎臓、肝臓、膵臓、卵巣、頭頚部、口腔、胃、十二指腸、小腸、大腸、肛門、胆嚢、唇、鼻咽頭、皮膚、子宮、男性生殖器、泌尿器、膀胱及び皮膚の腫瘍が含まれる。非上皮由来の固形腫瘍は、肉腫、脳腫瘍及び骨腫瘍を含む。
【0251】
上皮がんは、通常、良性腫瘍から、前浸潤性のステージ(例えば、上皮内癌)、悪性がん(基底膜に入り込んで上皮下の間質に進入したもの)へと進行する。
【0252】
このような治療的用途においては多重特異性タンパク質複合体も使用することができ、特にHER2に結合する抗体を、乳がん、結腸直腸がん、肺がん、腎細胞癌、神経膠腫、又は卵巣がんの治療に使用することができる。
【0253】
本発明の組成物を受ける候補である他の対象は、血管結合組織の異常増殖、酒土性挫創、後天性免疫不全症候群、動脈閉塞、アトピー性角膜炎、細菌性潰瘍、ベーチェット病、血液媒介腫瘍、頸動脈閉塞性疾患、脈絡膜新生血管、慢性炎症、慢性網膜剥離、慢性ブドウ膜炎、慢性硝子体炎、コンタクトレンズの着け過ぎ、角膜移植後拒絶反応、角膜血管新生、角膜移植血管新生、クローン病、イールズ病、流行性角結膜炎、真菌性潰瘍、単純ヘルペス感染、帯状疱疹感染、過粘着性症候群、カポジ肉腫、白血病、脂肪変性、ライム病、辺縁部表皮剥離、モーレン潰瘍、ハンセン病以外のマイコバクテリア感染、近視、眼血管新生疾患、眼陥没、オスラー・ウェーバー症候群(オスラー・ウェーバー・ランデュ)、変形性関節症、パジェット病、扁平部炎、類天疱瘡、糸球体炎、多発性動脈炎、ポストレーザー合併症、原虫症、弾力線維性仮性黄色腫、乾燥翼状片角膜炎、放射状角膜切開術、網膜血管新生、未熟児網膜症、後水晶体線維増殖症、サルコイド、強膜炎、鎌状赤血球貧血、シェーグレン症候群、固形腫瘍、スターガルト(Stargart’s)病、スティーブンス・ジョンソン病、上輪部角膜炎、梅毒、全身性狼瘡、テリエン周辺角膜変性症、トキソプラズマ症、ユーイング肉腫の腫瘍、神経芽細胞腫の腫瘍、骨肉腫の腫瘍、網膜芽細胞腫の腫瘍、横紋筋肉腫の腫瘍、潰瘍性大腸炎、静脈閉塞、ビタミンA欠乏、ウェゲナーのサルコイドーシス、糖尿病に関連付けられる望ましくない血管新生、寄生虫病、異常創傷治癒、手術後肥大、損傷又は外傷(例えば、急性肺損傷/ARDS)、発毛阻害、排卵及び黄体形成の阻害、着床(implantation)の阻害、及び子宮内胚発生の阻害を有するか、又はそれらを発生する危険がある。
【0254】
本明細書に記載される方法に従って作製される抗体を用いて治療されうるアレルギー性若しくは炎症性障害又は自己免疫疾患若しくは障害の例には、限定されないが、関節炎(関節リウマチ、例えば急性関節炎、慢性関節リウマチ、痛風性関節炎、急性痛風性関節炎、慢性炎症性関節炎、変形性関節炎、感染性関節炎、ライム関節炎、増殖性関節炎、乾癬性関節炎、脊椎関節炎、及び若年発症型関節リウマチ、変形性関節症、慢性進行性関節炎(arthritis chronica progrediente)、変形性関節炎(arthritis deformans)、初期慢性多発性関節炎(polyarthritis chronica primaria)、反応性関節炎、及び強直性脊椎炎)、炎症性過剰増殖皮膚疾患、乾癬、例えば尋常性乾癬、滴状乾癬、嚢胞性乾癬、及び爪の乾癬,接触性皮膚炎、慢性接触性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎、疱疹状皮膚炎、及びアトピー性皮膚炎を含む皮膚炎、x連鎖高IgM症候群、じん麻疹、例えば慢性自己免疫性じん麻疹を含む慢性アレルギー性じん麻疹及び慢性特発性じん麻疹,多発筋炎/皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、中毒性皮膚壊死症、強皮症(全身性強皮症を含む)、硬化症、例えば全身性硬化症、多発性硬化症(MS)、例えば脊椎-眼MS、原発性進行性MS(PPMS)、及び再発寛解型MS(RRMS)、進行性全身性硬化症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化、多発性硬化症(sclerosis disseminate)、及び失調性硬化症、炎症性腸疾患(IBD)(例えば、クローン病、自己免疫-媒介型胃腸疾患、大腸炎、例えば潰瘍性大腸炎、潰瘍性結腸炎、顕微鏡的大腸炎、コラーゲン大腸炎、ポリープ性大腸炎、壊死性腸炎、及び貫壁性大腸炎、及び己免疫性炎症性腸疾患)、壊疽性膿皮症、結節性紅斑、原発性硬化性胆管炎、上強膜炎)、成人又は急性呼吸促迫症候群(ARDS)を含む呼吸促迫症候群、髄膜炎、ブドウ膜の全部又は一部の炎症、虹彩炎、脈絡膜炎、自己免疫性血液学的疾患、リウマチ性脊椎炎、突発性難聴、IgE媒介性疾患、例えばアナフィラキシー並びにアレルギー性及びアトピー性鼻炎、脳炎、例えばラスムッセン脳炎並びに辺縁系及び/又は脳幹脳炎、ブドウ膜炎、例えば前部ブドウ膜炎、急性前部ブドウ膜炎、肉芽腫性ブドウ膜炎、非肉芽腫性ブドウ膜炎、水晶体抗原性ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎、又は自己免疫性ブドウ膜炎、ネフローゼ症候群を伴う又は伴わない糸球体腎炎(GN)、例えば慢性若しくは急性糸球体腎炎、例えば原発性GN、免疫介在性GN、膜性GN(膜性腎症)、特発性膜性GN又は特発性膜性腎障害、I型及びII型、及び急速進行性GNを含む、膜-又は膜性増殖性GN(MPGN)、アレルギー症状、アレルギー性反応,アレルギー性若しくはアトピー性湿疹を含む湿疹、喘息、例えば気管支喘息(asthma bronchiale)、気管支喘息(bronchial asthma)、及び自己免疫性喘息、T細胞の浸潤及び慢性炎症性応答を伴う状態、慢性炎症性肺疾患、自己免疫性心筋炎、白血球粘着不全症、全身性紅斑性狼瘡(SLE)又は全身性エリテマトーデス、例えば皮膚性SLE、亜急性皮膚性紅斑性狼瘡、新生児狼瘡症候群(NLE)、播種性紅斑性狼瘡、狼瘡(腎炎、脳炎、小児性、非腎性、腎外、円形脱毛症を含む)、小児インスリン依存性糖尿病(IDDM)を含む若年発症型(I型)糖尿病、成人発症型糖尿病(II型糖尿病)、自己免疫糖尿病、特発性尿崩症、サイトカイン及びTリンパ球によって媒介される急性及び遅延過敏症に関連付けられる免疫応答、結核、サルコイドーシス、リンパ腫様肉芽腫症、ウェグナー肉芽腫症を含む肉芽腫症、無顆粒細胞症,脈管炎(大血管脈管炎(リウマチ性多発筋痛症及び巨細胞(高安)動脈炎を含む)、中血管脈管炎(川崎病及び結節性多発動脈炎を含む)、顕微鏡的多発動脈炎、中枢神経系脈管炎、壊死性、皮膚性、又は過敏症脈管炎、全身性壊死性脈管炎、及びANCA関連脈管炎、例えばチャーグストラウス脈管炎若しくは症候群(CSS)を含む)を含む血管炎、側頭動脈炎、再生不良性貧血、自己免疫再生不良性貧血、クームス陽性貧血症、ダイヤモンドブラックファン貧血症、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)を含む溶血性貧血又は免疫溶血性貧血、悪性貧血(貧血症悪性熱)、アディソン病、純赤血球貧血症若しくは欠如症(PRCA)、第VIII因子欠乏症、血友病A、自己免疫性好中球減少症、汎血球減少、白血球減少症、白血球の血管外遊出を伴う疾患、中枢神経系炎症性疾患、多臓器損傷症候群、例えば敗血症、心的外傷若しくは出血に二次的なもの、抗原-抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病、キャッスルマン症候群、グッドパスチャー症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンス-ジョンソン症候群、類天疱瘡、例えば類天疱瘡水泡性及び皮膚性類天疱瘡、天疱瘡(尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、天疱瘡粘膜類天疱瘡、及び紅斑性天疱瘡を含む)、自己免疫性多腺性内分泌不全症、ライター病若しくは症候群、免疫複合体性腎炎、抗体媒介性腎炎、視神経脊髄炎、多発ニューロパチー、慢性ニューロパチー、例えばIgM多発ニューロパチー又はIgM媒介性ニューロパチー、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)及び自己免疫性若しくは免疫媒介性血小板減少症を含む血小板減少症(例えば心筋梗塞患者に発生するもの)、例えば慢性若しくは急性ITPを含む特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、自己免疫精巣炎及び卵巣炎を含む精巣及び卵巣の自己免疫疾患、原発性甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、甲状腺炎を含む自己免疫性内分泌疾患、例えば自己免疫性甲状腺炎、橋本病、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、又は亜急性甲状腺炎、自己免疫性甲状腺疾患、特発性甲状腺機能低下症、グレーブス病、多腺性症候群、例えば自己免疫性多腺性症候群(又は多腺性内分泌障害症候群)、神経性腫瘍随伴症候群を含む腫瘍随伴症候群、例えばランバートイートン筋無力症候群若しくはイートンランバート症候群、スティフマン若しくは全身硬直症候群、脳脊髄炎、例えばアレルギー性脳脊髄炎若しくは脳脊髄炎(encephalomyelitis allergica)及び実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、重症筋無力症、例えば胸腺腫関連重症筋無力症、小脳変性、神経性筋緊張病、眼球クローヌス又は眼球クローヌスミオクローヌス運動失調症候群(OMS)、及び間隔性ニューロパチー、多巣性運動ニューロパチー、シーハン症候群、自己免疫性肝炎、慢性肝炎、ルポイド肝炎、巨細胞肝炎、慢性活動性肝炎又は自己免疫性慢性活動性肝炎、リンパ性間質性肺炎、閉塞性細気管支炎(非移植)対NSIP、ギランバレー症候群、ベルガー病(IgA腎障害)、特発性IgA腎障害、線状IgA皮膚炎、原発性胆汁性肝硬変、肺線維症、自己免疫性腸症症候群、セリアック病、小児脂肪便症、セリアック病(celiac sprue)(グルテン腸症)、難治性スプルー、特発性スプルー、低温型グロブリン血症、筋委縮性側索硬化症(ALS;ルー・ゲーリック病)、冠動脈疾患、自己免疫性耳疾患、例えば自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性聴力低下、眼球クローヌス・ミオクローヌス運動失調症候群(OMS)、多発性軟骨炎、例えば難治性若しくは再発性多発性軟骨炎、肺胞たん白症、アミロイドーシス、強膜炎、非がん性リンパ球増加症、モノクローナルB細胞リンパ球増加症(例えば、良性単クローン性ガンマグロブリン血症及び意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS))を含む原発性リンパ球増加症、末梢神経障害、腫瘍随伴症候群、チャネル病、例えばてんかん、片頭痛、不整脈、筋障害、聴覚消失、盲目、周期性麻痺、及び中枢神経系のチャネル病、自閉症、炎症性ミオパシー、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、内分泌性眼障害、網膜ぶどう膜炎、網脈絡膜炎、自己免疫性血液疾患、線維筋痛症、多発性内分泌腺不全、シュミット症候群、副腎炎、胃萎縮、初老期認知症、脱髄疾患、例えば自己免疫性脱髄疾患、糖尿病性腎障害、ドレスラー症候群、円形脱毛症、CREST症候群(石灰症、レーノー現象、食道蠕動低下、強指症、及び毛細管拡張症)、男性及び女性の自己免疫性不妊症、混合性結合組織病、ジャガス病、リウマチ熱、反復流産、農夫肺、多形紅斑、心切開術後症候群、下垂体好塩基細胞腺腫、トリ愛好者肺、アレルギー性肉芽腫性脈管炎、良性リンパ性脈管炎、アルポート症候群、肺胞炎、例えばアレルギー性肺胞炎及び線維性肺胞炎、間質性肺疾患、輸血反応、ハンセン病、マラリア、リーシュマニア症、キパノシミアシス(kypanosomiasis)、住血吸虫症、回虫症、アスペルギルス症、サンプター(Sampter’s)症候群、カプラン症候群、デング熱、心内膜炎、心内膜心筋線維症、びまん性間質性肺線維症、間質性肺線維症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑、胎子赤芽球症、好酸球性筋膜炎、シュルマン症候群、フェルティ症候群、フィラリア症、毛様体炎、例えば慢性毛様体炎、異時性毛様体炎、虹彩毛様体炎、若しくはフックス毛様体炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症、エコーウイルス感染症、心筋症、アルツハイマー病、パルボウイルス感染症、風疹ウイルス感染症、予防接種後症候群、先天性風疹感染症、エプスタイン・バーウイルス感染症、おたふくかぜ、エヴァンズ症候群、自己免疫性腺機能不全、シドナム舞踏病、連鎖球菌感染後腎炎、閉塞性血栓血管炎、甲状腺中毒症、脊髄ろう、脈絡膜炎、巨細胞多発性筋痛、内分泌性胃眼障害、慢性過敏性肺炎、乾性角結膜炎、流行性角結膜炎、特発性腎延性症候群、微小変化群腎障害、良性家族性及び虚血再灌流傷害、網膜自己免疫、関節炎、気管支炎、慢性閉塞性気道疾患、ケイ肺症、アフタ、アフタ性口内炎、動脈硬化性障害、精子形成欠如(aspermiogenese)、自己免疫性溶血、ベック病、低温型グロブリン血症、デピュイトラン拘縮、水晶体過敏性眼内炎、結節性腸炎、らい性結節性紅斑、特発性顔面麻痺、慢性疲労症候群、リウマチ熱、ハンマン・リッチ病、感音性難聴、ヘモグロビン尿症発作、性腺機能低下症、回腸炎、白血球減少症、単核球感染症、横断性脊髄炎、原発性特発性粘液水腫、ネフローゼ、眼科症候群、抗癌肉芽腫、膵炎、多発性硬化症、壊疽性膿皮症、カーベーン甲状腺炎、後天性脊髄萎縮、抗精子抗体による不妊症、非悪性胸腺腫、白斑、SCID及びエプスタイン・バーウイルス-関連疾患、後天性免疫不全症候群(AIDS)、寄生虫病、例えばリーシュマニア属、毒素ショック症候群、食中毒、T細胞の浸潤を伴う状態、白血球粘着不全症、サイトカイン及びTリンパ球によって媒介される急性及び遅延性過敏症に関連する免疫応答、白血球の血管外遊出を伴う疾患、多臓器損傷症候群、抗原-抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、アレルギー性神経炎、自己免疫性多発性内分泌障害、卵巣炎、原発性粘液水腫、自己免疫性萎縮性胃炎、交感性眼炎、リウマチ性疾患、混合性結合組織病、ネフローゼ症候群、膵島炎、多内分泌不全、末梢神経障害、I型自己免疫性多腺性症候群、成人発症型特発性副甲状腺機能低下症(AOIH)、完全脱毛症、拡張型心筋症、後天性表皮水泡症(EBA)、ヘモクロマトーシス、心筋炎、ネフローゼ症候群、原発性硬化性胆管炎、化膿性若しくは非化膿性副鼻腔炎、急性若しくは慢性副鼻腔炎、篩骨、前頭骨、上顎骨、若しくは蝶形骨の副鼻腔炎、好酸球関連障害、例えば、好酸球増加、好酸球増多症を伴う肺浸潤、好酸球増多筋痛症候群、レフラー症候群、慢性好酸球性肺炎、熱帯性肺好酸球増多症、気管支肺アスペルギルス症、アスペルギルス菌種、又は好酸球を含有する肉芽腫、アナフィラキシー、血清陰性脊椎関節炎、多分内分泌自己免疫性疾患、硬化性胆管炎、強膜、上強膜、慢性皮膚粘膜カンジダ症、ブルートン症候群、幼児期の一過性低ガンマグロブリン血症、ウィスコット・アルドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調、コラーゲン疾患に関連する自己免疫性障害、リウマチ、
神経性疾患、虚血性再灌流障害、血圧応答の低下、血管機能不全、抗結核症、組織傷害、心血管虚血、痛覚過敏、脳虚血、及び血管新生に付随する疾患、アレルギー性過敏症障害、糸球体腎炎、再灌流傷害、心筋若しくは他の組織の再灌流傷害、急性炎症成分を有する皮膚疾患、急性化膿性髄膜炎又はその他の中枢神経系炎症性障害、眼球及び眼窩の炎症性障害、顆粒球輸血関連症候群、サイトカイン誘導毒性、急性重篤感染症、慢性難治性炎症、腎盂炎、肺線維症、糖尿病網膜症、糖尿病性大血管障害、動脈内膜過形成、消化性潰瘍、弁膜炎、及び子宮内膜症が含まれる。
【0255】
治療的使用に加えて、本発明の抗体は、診断方法、例えば本明細書に記載される疾患及び障害の診断方法を含む他の目的のために使用することができる。
【0256】
XI.投薬量、製剤化及び期間
本発明のタンパク質は、医学実行動規範に合致する方法で処方され、調剤され、投与される。この観点において考慮すべき要因は、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の対象の臨床状態、障害の原因、薬剤送達部位、投与方法、投与日程及び医療従事者に既知の他の要因を含む。投与されるタンパク質の「治療的有効量」は、このような考慮事項によって決まり、特定の障害(例えば、がん、アレルギー性若しくは炎症性障害、又は自己免疫障害)を予防、改善又は治療するために必要な最小量である。このタンパク質は、必ずしも必須ではないが任意選択的に、疾患を予防若しくは治療するのに目下使用されている一又は複数の薬剤と共に製剤化される。このような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在するタンパク質の量、疾患又は治療の種類、及び上記以外の要因によって決まる。このような他の薬剤は通常、上文で用いられたのと同じ用量及び投与経路で、又は従来用量の約1から99%で使用される。一般に、がんの緩和又は治療は、がんに関連付けられる一又は複数の症候又は医療上の問題を軽減することを含む。治療的有効量の薬物は、以下のうちの一つ又は組み合わせを達成することができる:(少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%又はそれを上回る)がん細胞の数を減少させる;腫瘍の大きさ又は腫瘍負荷を縮小又は抑制する;末梢臓器へのがん細胞の浸潤を阻害する(即ち、ある程度減及び/又は停止させる);腺腫の場合のホルモン分泌を減少させる;血管密度を低下させる;腫瘍転移を阻害する;腫瘍増殖を低減又は阻害する;及び/又はがんに関連付けられる症候の一又は複数をある程度軽減する。いくつかの実施態様では、タンパク質は、対象中のがん又は自己免疫障害の発生又は再発を予防するために使用される。
【0257】
一実施態様では、本発明は、がん又は自己免疫障害に罹患し易い又はそのように診断されたヒト対象の生存期間を延長するために使用することができる。生存期間は、薬物の初回投与から死亡までの時間と定義される。生存期間は、治療中に対象が死亡するリスクを表す、治療群対コントロール群の層別化されたハザード比(HR)によっても測定することができる。
【0258】
また別の実施態様では、本発明の治療は、様々な抗癌療法により治療される、がんに罹患し易い又はがんと診断されたヒト対象群における奏功率を有意に上昇させる。奏功率は、治療に応答した治療対象の割合と定義される。一態様では、本発明のタンパク質と、外科手術、放射線療法、又は一又は複数の化学療法剤とを用いた本発明の併用治療は、外科手術、放射線療法、又は化学療法のみによる治療群と比較して、治療対象群の奏効率を有意に上昇させる(上昇は0.005未満のカイ二乗p値を有する)。がんの治療の治療有効性の更なる測定値は、米国特許出願公開第20050186208号に記載されている。
【0259】
特定の実施態様では、本明細書に記載に記載される方法のいずれかに従って生成されたヘテロ多量体タンパク質と、薬学的に許容される担体とを含む組成物が提供される。治療製剤は、任意選択の生理学的に許容される担体、賦形剤又は安定剤と、所望の純度を有する活性成分とを混合することによって、当技術分野で周知の標準的な方法を用いて調製される(Remington’s Pharmaceutical Sciences (20th edition), ed. A. Gennaro, 2000, Lippincott, Williams & Wilkins, Philadelphia, PA)。許容される担体は、生理食塩水、又はバッファー、例えばホスフェート、シトレート及び他の有機酸;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む単糖類、二糖類及び他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えばマンニトール又はソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;及び/又は非イオン性界面活性剤、例えばTWEENTM、PLURONICSTM又はPEGを含む。
【0260】
任意選択的にであるが好ましくは、製剤は、概ね生理的濃度で薬学的に許容される塩(好ましくは、塩化ナトリウム)を含有することが好ましい。任意選択的に、本発明の製剤は、薬学的に許容される防腐剤を含有しうる。いくつかの実施態様では、防腐剤濃度は、通常v/vで0.1から2.0%の範囲である。適切な防腐剤は、製薬技術分野で知られているものを含む。ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、メチルパラベン及びプロピルパラベンは好ましい防腐剤である。任意選択的に、本発明の製剤は、0.005から0.02%の濃度の薬学的に許容される界面活性剤を含みうる。
【0261】
また、本明細書中の製剤は治療される特定の徴候に必要な一を超える活性化合物、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものも含有していてよい。そのような分子は、適切には、意図される目的に有効な量の組み合わせで存在する。
【0262】
また、活性成分は、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、ミクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)で、又はマクロエマルジョンで、例えば、コアセルベーション法により、又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに封入されてもよい。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(上掲)に開示されている。
【0263】
徐放性製剤が調製されてもよい。徐放性製剤の好適な例は、ヘテロ多量体タンパク質を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、このマトリックスが成形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリラート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3773919号)、L-グルタミン酸とγ-エチル-L-グルタメートとのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOTTM(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注射用ミクロスフェア)のような分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸などのポリマーは100日間以上の分子放出を可能にするが、特定のヒドロゲルはより短い時間タンパク質を放出する。カプセル化された(一又は複数の)ヘテロ多量体タンパク質が体内に長時間残留する場合、37℃で水分に曝される結果、変性又は凝集して、生物活性を消失させ、場合によっては免疫原性を変化させうる。関与する機構に応じて、安定化のための合理的な方策を考案することができる。例えば、凝集機構がチオ-ジスルフィド交換による分子間S-S結合形成であることが分かれば、スルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、含水量の制御、適切な添加剤の使用、及び特定のポリマーマトリックス組成物の開発によって安定化が達成されうる。
【0264】
本明細書に記載されるタンパク質(例えば、本明細書に記載される方法に従って作製される多重特異性抗体のようなヘテロ多量体タンパク質)は、ヒト対象に対して、ボーラス又はある期間にわたる連続的注入による静脈内投与、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑膜内、髄腔内、口腔内、局所又は吸入経路による投与などの既知の方法に従って投与される。広範な副作用又は毒性が、タンパク質によって認識される標的分子に対する拮抗作用に関連付けられる場合、局所投与は特に望ましいと思われる。エクスビボ戦略も、治療的用途に使用することができる。エクスビボ戦略は、対象から得られた細胞を、本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを用いてトランスフェクト又は形質導入することを含む。トランスフェクト又は形質導入された細胞は、次いで対象に戻される。細胞は、限定しないが、造血細胞(例えば、骨髄細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、T細胞、又はB細胞)、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、又は筋細胞を含む、広範囲の種類のいずれかとすることができる。
【0265】
一例では、タンパク質複合体(例えば、本明細書に記載される方法に従って作製された多重特異性抗体といったヘテロ多量体タンパク質)は、例えば、障害又は腫瘍の位置が許せば直接的な注射により、局所的に投与され、注射は定期的に繰り返すことができる。タンパク質複合体は、局所的再発又は転移を予防又は低減するために、対象に全身的に送達することも、腫瘍細胞、例えば、腫瘍若しくは腫瘍の外科的切除後の腫瘍床に直接に送達することもできる。
【0266】
XII.製造品
本発明の別の実施態様は、本明細書に記載される一又は複数のヘテロ多量体タンパク質と、障害(例えば、自己免疫疾患又はがん)の治療又は診断に有用な物質とを含む製造品である。製造品は、容器と容器上の又は容器に付随するラベル又は添付文書を含む。適切な容器は、例えばボトル、バイアル、シリンジなどを含む。容器はガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成されうる。容器は、病態を治療するのに有効な組成物を保持し、無菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、皮下注射針によって穿孔可能なストッパーを有する静脈注射用溶液のバッグ又はバイアルとすることができる)。組成物中の少なくとも一つの活性な薬剤は、本発明のヘテロ多量体タンパク質(例えば、抗体又は抗体断片)である。ラベル又は添付文書は、組成物が特定の状態を治療するために使用されることを示す。ラベル又は添付文書は更に、対象に対してヘテロ多量体タンパク質組成物を投与することに関する指示を含むであろう。本明細書に記載されるコンビナトリアルセラピーを含む製造品及びキットも考慮される。
【0267】
添付文書は、このような治療製品の使用に関する、指示、使用法、用量、投与、禁忌及び/又は注意事項についての情報を含む、治療製品の商品包装に通例含まれる説明書を指す。特定の実施態様では、添付文書は、組成物が、乳がん、結腸直腸がん、肺がん、腎細胞癌、神経膠腫、又は卵巣がんを治療するために使用されることを示す。
【0268】
加えて、製造品は、薬学的に許容可能なバッファー、例えば注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液及びデキストロース溶液を含む第二の容器を更に含んでもよい。製造品は、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針及びシリンジを含む、商業的及び使用者の観点から考慮された他の材料を更に含むことができる。
【0269】
様々な目的、例えば、細胞由来の抗原の精製又は免疫沈降法に有用なキットも提供される。抗原の単離及び精製のために、キットは、ビーズ(例えば、セファロースビーズ)に結合したヘテロ多量体タンパク質を含むことができる。ELISA又はウェスタンブロットにおけるインビトロでの抗原の検出及び定量化のための(一又は複数の)ヘテロ多量体タンパク質を含むキットを提供することができる。製造品と同様に、キットは、容器と容器上の又は容器に付随するラベル又は添付文書とを含む。容器は、本発明の少なくとも一つのヘテロ多量体タンパク質(例えば、多重特異性抗体又は抗体断片)を含む組成物を保持する。例えば希釈剤及びバッファー又はコントロール抗体を含む追加の容器を含めてもよい。ラベル又は添付文書は、組成物の説明、並びに意図されるインビトロ又は診断用途のための指示を提供してもよい。
【0270】
上述の説明は、当業者が本発明を実施することを可能にするのに十分であると考えられる。後述する実施例は、例示のみを目的に提供されているのであって、いかなる意味でも本発明の範囲を限定することを意図していない。実際、本明細書に示され、記載されるもの以外に、上記説明から当業者には本発明の種々の修正例が明らかであり、それら修正例は特許請求の範囲に含まれる。
【0271】
後述する実験の開示において、以下の略語が用いられる::eq(当量);M(モル);μM(マイクロモル濃度);N(正常);mol(モル);mmol(ミリモル);μmol(マイクロモル);nmol(ナノモル);g(グラム);mg(ミリグラム);kg(キログラム);μg(マイクログラム);L(リットル);ml(ミリメートル);μl(マイクロリットル);cm(センチメートル);mm(ミリメートル);μm(マイクロメートル);nm(ナノメートル);℃(摂氏温度);h(時間);min(分);sec(秒);msec(ミリ秒);ADCC(抗体依存性細胞傷害));BsAb(二重特異性抗体);CL(軽鎖の定常ドメイン);CH(重鎖の定常ドメイン);CMC(補体媒介性細胞傷害);Fab(抗体結合断片);Fc(結晶化断片);Fv(可変断片(VL+VH));EGFR(上皮増殖因子受容体);HC(重鎖);IGFR(インスリン様成長因子受容体);LC(軽鎖);scFv(アミノ酸リンカーによって連結された単鎖可変断片(VL及びVH);VEGF(血管内皮増殖因子);VEGFR2(血管内皮増殖因子受容体2);VH(可変重ドメイン);VL(可変軽ドメイン)。
【実施例0272】
いかなる意味でも特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定することを意図しない以下の実施例において、本発明について更に詳細に説明する。添付図面は、本明細書及び本発明の記載に欠くことのできない一部として考慮されることを意図している。引用されるすべての参照文献は、その中記載されるすべてに関して、参照により本明細書に具体的に包含される。以下の実施例は、説明のために提供されているのであって、本発明の特許請求の範囲を限定するために提供されているのではない。
【0273】
実施例1:混合細胞培養物中における二重特異性抗体の単量体成分のモル比は、細胞:細胞比を調節することにより制御することができる
以下の実施例は、各々がノブ半抗体又はホール半抗体を発現する二つの哺乳動物の細胞株(CHO細胞)を同じ培養物中において増殖させたときの、ノブ半抗体とホール半抗体のモル比を示す。
【0274】
各細胞株について、生成力価(即ち、ヘテロ二量体、ホモ二量体及び単量体半抗体を含む細胞により生成される抗体の総量)を決定するために生成試験を実施した。個々の細胞株を、個々の細胞株に関する生成力価データが入手可能となるまで、種培養培地中において3又は4日毎に継代培養した。
【0275】
次いで二つの細胞株を増殖させ、別々の培養物中においてノブ半抗体又はホール半抗体を発現するように誘導した。3又は4日ごとに細胞培地中において、個々のノブ及びホール細胞株培養物を40mL容量の振盪フラスコ内で継代培養した。培養物を混合する日に、細胞数をVicell(Beckman Coulter)により測定した。
【0276】
次いで別個の培養物を特定のノブ宿主細胞:ホール宿主細胞比で混合した。ノブ宿主細胞:ホール宿主細胞比を、個々の細胞株について既知の生成力価に基づいて算出した。各小規模生産のために、約40x106個の細胞を要した。Vicell数(細胞数/mL)を用いて、所望のノブ宿主細胞:ホール宿主細胞比を達成するために、混合培養物に加えることが必要な各細胞株の体積を決定することが可能であった。ノブ細胞株及びホール細胞株の各々の適切な体積を、生成培地中最終体積40mLで新しい振盪フラスコ内で混合した。
【0277】
回収の15時間前に、最終的なGSH原液濃度が250mMとなるように、GSHを、400mMのコハク酸中1Mのアルギニン(pH=9.0)に溶解することにより、グルタチオン(GSH)原液を調製した。GSHの最終濃度が15mMとなるように、GSH原液を生成培養物に加えた。次いで混合培養培地を回収し、各混合培養物について、%ノブ半抗体及び%ホール半抗体を、還元条件下における逆相により決定した。試験した各比について形成された%共有結合的二重特異性抗体を、
図2に記載されるようにして決定した。
【0278】
以下のノブ半抗体/ホール半抗体対を用いてこのような実験を実施した:
抗標的A(ノブ)/抗標的B(ホール)
抗標的C(ノブ)/抗標的D(ホール)
抗標的D(ノブ)/抗標的C(ホール)
抗標的E(ノブ)/抗標的F(ホール)
【0279】
これら実験の結果を以下の表2に示す:
【0280】
【0281】
表2に示すように、%共有結合的二重特異性抗体の収率は、ノブ半抗体:ホール半抗体のモル比が約1:1であるか又は1:1に近いときに向上した。二重特異性形成に最適なモル比は、特定の二重特異性抗体のそれぞれについて決定されると思われる。1:1のノブ半抗体:ホール半抗体のモル比を生成するノブ宿主細胞:ホール宿主細胞比は、細胞株によって変動し、実験により決定される。
【0282】
実施例2:還元剤の添加のタイミング及び混合細胞培養物中における二重特異性抗体の生成の間に添加される還元剤の濃度
以下の実施例は、抗標的A(ノブ)及び抗標的B(ホール)を含む二重特異性抗体の生成の異なる工程の間の還元剤の添加を示す。まず、抗標的A(ノブ)又は抗標的B(ホール)を発現する二つの哺乳動物細胞株を増殖させ、別々の培養物中においてノブ半抗体又はホール半抗体を発現するように誘導し、次いでこれらを複数の別個の生成培養物中で混合し、上述のようにして抗標的A(ノブ):抗標的B(ホール)に1:1のモル比を達成した。GSH原液を生成培養物に、最終濃度が2mM、4mM、又は10mMとなるように回収の24時間、15時間、又は4時間前に加えたか、又は培養物を未処理のまま放置した。次いで生成培養物の各々由来の混合培養培地を回収し、各混合培養物について、%ノブ半抗体及び%ホール半抗体を、還元条件下における逆相により決定した。試験した各比について形成された%共有結合的二重特異性抗体を、
図2に記載されるようにして決定した。
【0283】
図3に示すように、10mMの最終GSH濃度を有する生成培養物中における共有結合的二重特異性抗体の収率は、2mM又は4mMの最終GSH濃度を有する生成培養物中における二重特異性抗体の収率又は未処理のコントロール群における収率と比較して向上した。GSHを加える生成の工程が、共有結合的二重特異性抗体の収率に影響することは示されなかった。
【0284】
更なる実験において、抗標的A(ノブ)又は抗標的B(ホール)を発現する細胞株をまず増殖させ、別々の培養物中においてノブ半抗体又はホール半抗体を発現するように誘導し、次いでこれらを複数の別個の生成培養物中で混合し、上述のようにして抗標的A(ノブ):抗標的B(ホール)に0.82:1のモル比又は1:1のモル比を達成した。GSH原液を生成培養物に、最終濃度が5mM、若しくは10mMとなるように回収の15時間前に加えたか、又は未処理とした(「0mM」)。各混合細胞培養物の細胞生存率を回収時に決定し、次いで、試験した各条件下で形成される%二重特異性抗体を、
図2に示すイオン交換アッセイにより決定した。実験の結果を以下の表3に示す。
【0285】
【0286】
表3に示すように、10mMの最終GSH濃度を有する生成培養物中における共有結合的二重特異性抗体の収率は、5mMの最終GSH濃度を有する生成培養物中における二重特異性抗体の収率又は未処理の場合の収率と比較して向上した。最終濃度が10mMとなるまで混合細胞培養物にGSHを加えても、細胞生存率又は全抗体生成に対する影響は見られなかった。望ましくない混合ジスルフィド形成又はタンパク質スクランブリングは、10mMのGSHにおいて観察されなかった(データは示さない)。
【0287】
各々が抗標的D(ノブ)又は抗標的C(ホール)を発現する他の二つの哺乳動物細胞株を用いて同様の実験を実施した。まず二つの細胞株を増殖させ、別々の培養物中において抗標的D(ノブ)又は抗標的C(ホール)を発現するように誘導し、次いでこれらを複数の別個の生成培養物中において混合し、上述のようにして、抗標的D(ノブ):抗標的C(ホール)に0.82:1のモル比を達成した。GSH原液を生成培養物に、最終濃度が10mM、15mM、若しくは20mMとなるように回収の15時間前に加えたか、又は未処理とした(「0mM」)。各混合細胞培養物の細胞生存率を回収時に決定し、次いで、試験した各条件下で形成される%二重特異性抗体を、
図2に示すようにして決定した。これら実験の結果を以下の表4に示す:
【0288】
【0289】
表4に示すように、20mMの最終GSH濃度を有する生成培養物中における共有結合的二重特異性抗体の収率は、10mM、又は15mMの最終GSH濃度を有する生成培養物中における二重特異性抗体の収率又は未処理の場合の収率と比較して向上した。最終濃度が20mMとなるまで混合細胞培養物にGSHを加えても、力価に対する影響は見られなかった。しかしながら、最終濃度が20mMとなるまで生成培養物にGSHを加えたとき、GSHによる半抗体の共有結合的修飾が観察された(データは示さない)。
【0290】
実施例3:インビトロアセンブリと比較した場合の、混合培養培地中に形成される二重特異性抗体の収率
抗標的E(ノブ)及び抗標的F(ホール)を用いて、抗標的Eを発現する哺乳動物宿主細胞(例えば、CHO細胞)及び抗標的Fを発現する哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)の混合培養物により得られる二重特異性抗体の収率と、プロテインAカラムを用いて精製された抗標的E(ノブ)及び精製された抗標的F(ホール)をインビトロで混合することにより得られる二重特異性抗体の収率とを比較する追加実験を実施した。簡潔に説明すると、まず、各々が抗標的E(ノブ)又は抗標的F(ホール)を発現する二つの哺乳動物細胞株を増殖させ、別々の培養物中においてノブ半抗体又はホール半抗体を発現するように誘導した。次いで別々の培養物を混合し、更に時間をかけて増殖させた。混合培養培地を回収し、次いで形成された二重特異性抗体(%)を、
図2に示すカチオン交換アッセイにより決定した。並行して、二重特異性抗体を、精製された抗標的E(ノブ)と抗標的F(ホール)をインビトロで混合することにより形成した(例えば、国際公開第2013/055958号参照)。両方の条件下で形成された二重特異性抗体の最終的な収率は同等であった(データは示さない)。
【0291】
実施例4:二重特異的生成
抗標的G(ノブ)及び抗標的H(ホール)を用いて抗標的G/抗標的Gホモ二量体を含む精製された抗標的Gの半抗体の調製物、及び抗標的H/抗標的H ホモ二量体を含む精製された抗標的Hの半抗体の調製物から、二重特異性の抗標的G/抗標的H抗体が形成できるかどうかを試験する追加実験を実施した。半抗体の抗標的G(ノブ)を一過性に発現する哺乳動物宿主細胞(例えば、CHO細胞)、及び半抗体の抗標的H(ホール)を一過性に発現する哺乳動物宿主細胞(例えば、CHO細胞)の、別個の培養物を、上述のように増殖させて回収した。
【0292】
各半抗体を、5mLのMabSURE SELECTプロテインAカラム上で捕獲した。次いでカラムを10カラム体積(CV)の以下のバッファーで洗浄した:50mMのTRIS(pH8.0)、150mMのNaCl、0.05%のTriton X-100、0.05%のTriton X-114、25mMのクエン酸ナトリウム(pH6.0)からなる洗浄バッファーからなる平衡バッファー。各群を、0.15Mの酢酸ナトリウム(pH2.7)中に溶出した。各半抗体の同一性はMSにより確認した。
【0293】
二重特異性の場合、各半抗体を、それぞれ1MのTRISアルギニン(pH9.0)を1:10で用いてpH5.0まで滴定し、次いで1:1の比で合わせた。次いで混合物を、1MのTRISアルギニン(pH9.0)を1:10で用いてpH8.5に滴定し、新しく調製した0.5Mの余分な還元L-グルタチオン(Sigma Aldrich)を1:200のモル比で加えた後、室温で3日間置いた。反応物を、MSにより二重特異性IDについてチェックした。
【0294】
4~20%のTris-グリシンSDS PAGEで、ノブ及びホール捕獲プールを実行したところ、各捕獲プール中における半抗体とホモ二量体の分子量に対応する帯域の存在が明らかとなった。
図4を参照。以下のMabSURE SELECT捕獲に加えて、各0.5mgを疎水性カラム(2.1×100mm)に充填した。ランニングバッファーは、25mMのリン酸カリウム、1Mの硫酸アンモニウム(pH6.5)であり、溶出バッファーは25mMのリン酸カリウム(pH6.5)、25%のイソプロパノールであった。クロマトグラムは、ゲルに見られる不均一性を反映しており、メインピークの保持時間における差異も明らかにした。
図5A及び5Bには、それぞれ、抗標的G(ノブ)及び抗標的H(ホール)のクロマトグラムが示されている。捕獲プール中のホモ二量体及び半抗体の量は、特異的な抗体によって変化しうる。
【0295】
グルタチオン処理に続いて、二重特異性を更に疎水性カラムに充填した。クロマトグラムにより、持続時間が各半抗体の持続時間の間に位置する単一のメインピーク(>90%)が明らかになった。
図6を参照。MSにより、メインピークが二重特異性であることが確認された。このような結果は、半抗体の捕獲プール中に共有結合的ホモ二量体が存在すること、及びホモ二量体が、上記アセンブリ条件を用いて破壊可能であり、二重特異性の形成に利用可能であることを示唆するものである。
【0296】
二重特異性のアセンブリ条件は更に、GSHの非存在下と10mMのGSHの存在下とを対比させて、混合培養培地中での抗標的A(ノブ)及び抗標的B(ホール)のアセンブリを比較することにより試験された。
【0297】
CHO細胞を、製造者の推奨(Invitrogen、Carlsbad、CA)に従ってLipofectamine 2000を用いてトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞を、様々な濃度のMSX(メチオニンスルホキシイミン、25及び50 uM)において選択した。選択したコロニーを、コロニーから上清をサンプリングし、ELISAによる分析を行うことにより抗体生成について評価した。安定なプールを作製するために、ELISAの力価に基づき、上位48のコロニーを混合して拡大した。個々のクローンも、抗体生産性の評価のために拡張及び拡大し、上位クローンを決定した。
【0298】
次に、40Lの培養物を使用して、細胞を、1.2x106個の細胞数/mLで2.8Lの培養培地に播種した。培養物を規則的に分割し、90rpmで撹拌し、7.0±0.03及び30%の溶解酸素(dO2)のpH設定点に維持した。11日目に15mMのGSHを加え、続いて12日目に細胞を回収した。
【0299】
未処理及びGSH処理した無細胞培地をそれぞれMabSURE SELECTで処理し、捕獲プールをESI-TOFを用いて分析した。
図7Aを参照。
図7Bは、二重特異性抗体のピークのm/z範囲の拡大図である(
図7Aの右のピーク)。
図7Cは、半抗体のピークのm/z範囲の拡大図である(7Aの左のピーク)。
【0300】
図7A~Cは、ホモ二量体及び半抗体のピークの存在量が、10mMのGSHを培養物に加えたときに目に見えて低減することを示しており、二重特異性形成が、共培養物中に存在する半抗体及びホモ二量体両方の含有量によって促進されることを実証している。各ホモ二量体が二重特異性抗体形成に参画する範囲は、特定の半抗体に応じて決まる。
【0301】
当業者であれば、本発明の範囲及び精神の範囲内で複数の実施態様が可能であることを理解するであろう。本発明を以下の非限定的な実施例を参照してより詳細に説明する。以下の実施例は更に本発明を説明するが、言うまでもなく、如いかなるいみでもその範囲を限定するものではない。