(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093472
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】キメラ抗体/T細胞受容体構築物及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230627BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230627BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230627BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230627BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230627BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230627BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230627BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230627BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230627BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230627BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230627BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230627BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230627BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230627BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230627BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20230627BHJP
C07K 14/725 20060101ALN20230627BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
C07K19/00
A61K31/7088
A61K48/00
A61K35/17
A61K38/16
A61P43/00 111
A61P31/00
A61P31/12
A61P35/00
A61K35/76
C12N15/13
C12N15/12
C07K16/28
C07K14/725
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023051860
(22)【出願日】2023-03-28
(62)【分割の表示】P 2019558421の分割
【原出願日】2018-04-24
(31)【優先権主張番号】62/490,576
(32)【優先日】2017-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/490,578
(32)【優先日】2017-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/490,580
(32)【優先日】2017-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】321002949
【氏名又は名称】ユーリカ セラピューティックス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ホラン, ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】シュー, イーヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, ジユアン
(72)【発明者】
【氏名】リュー, ホン
(72)【発明者】
【氏名】モラレス, ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】リュー, リャンシン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ヒトT細胞における発現及び機能性が改善された抗体-TCRキメラ受容体を提供する。
【解決手段】キメラ抗体T細胞受容体構築物(caTCR)であって、標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールと、第1のTCR膜貫通ドメイン(TCR-TM)を含む第1のTCRドメイン(TCRD)と第2のTCR-TMを含む第2のTCRDを含むT細胞受容体モジュール(TCRM)とを含み、前記TCR-TMのうち少なくとも1つが、天然に存在せず、前記TCRMが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を促進し、前記抗原結合モジュールが、天然に存在するT細胞受容体抗原結合部分ではない、caTCRを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗体T細胞受容体(TCR)構築物(caTCR)であって、標的抗原に特異的
に結合する抗原結合モジュールと、第1のTCR膜貫通ドメイン(TCR-TM)を含む
第1のTCRドメイン(TCRD)と第2のTCR-TMを含む第2のTCRDを含むT
細胞受容体モジュール(TCRM)とを含み、前記TCR-TMのうち少なくとも1つが
、天然に存在せず、前記TCRMが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動
員を促進し、前記抗原結合モジュールが、天然に存在するT細胞受容体抗原結合部分では
ない、caTCR。
【請求項2】
前記TCR-TMが両方とも、天然に存在しないものである、請求項1に記載のcaT
CR。
【請求項3】
前記第1のTCR-TMが、前記第1の天然に存在するT細胞受容体の膜貫通ドメイン
の1つに由来し、前記第2のTCR-TMが、前記第1の天然に存在するT細胞受容体の
他の膜貫通ドメインに由来する、請求項1又は2に記載のcaTCR。
【請求項4】
前記第1の天然に存在するT細胞受容体が、γ/δ T細胞受容体である、請求項3に
記載のcaTCR。
【請求項5】
前記TCRMが、前記第1の天然に存在するT細胞受容体膜貫通ドメインを含むTCR
Mと比較して、前記少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化すること
を可能にする、請求項3又は4に記載のcaTCR。
【請求項6】
前記第1のTCR-TMが、その由来となる膜貫通ドメインと比較して5個までのアミ
ノ酸置換を含み、及び/又は前記第2のTCR-TMが、その由来となる膜貫通ドメイン
と比較して5個までのアミノ酸置換を含む、請求項3~5のいずれか一項に記載のcaT
CR。
【請求項7】
前記第1のTCR-TM中の置換アミノ酸が、前記第2のTCR-TM中の置換アミノ
酸に対して近位である、請求項6に記載のcaTCR。
【請求項8】
1つ以上の置換アミノ酸が、CD3に対する結合に関与する前記第1のTCR-TM中
又は前記第2のTCR-TM中のアミノ酸に対して近位である、請求項6又は7に記載の
caTCR。
【請求項9】
1つ以上の置換アミノ酸が、それらの対応する非置換アミノ酸よりも疎水性である、請
求項6~8のいずれか一項に記載のcaTCR。
【請求項10】
前記第1のTCR-TMが、配列番号7及び9~13のいずれか1つのアミノ酸配列を
含み、前記第2のTCR-TMが、配列番号8及び14~26のいずれか1つのアミノ酸
配列を含む、請求項1に記載のcaTCR。
【請求項11】
請求項1に記載のcaTCRであって、前記第1のTCR-TM及び前記第2のTCR
-TMが、(a)それぞれ、配列番号9及び8、
(b)それぞれ、配列番号7及び14、
(c)それぞれ、配列番号7及び15、
(d)それぞれ、配列番号7及び16、
(e)それぞれ、配列番号10及び16、
(f)それぞれ、配列番号7及び17、
(g)それぞれ、配列番号7及び18、
(h)それぞれ、配列番号7及び19、
(i)それぞれ、配列番号7及び20、
(j)それぞれ、配列番号7及び21、
(k)それぞれ、配列番号7及び22、
(l)それぞれ、配列番号11及び23、
(m)それぞれ、配列番号12及び24、
(n)それぞれ、配列番号7及び25、
(o)それぞれ、配列番号13及び26のアミノ酸配列を含む、caTCR。
【請求項12】
前記caTCRが、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインとを含む安定化モジ
ュールを更に含み、前記第1の安定化ドメイン及び前記第2の安定化ドメインが、前記c
aTCRを安定化する互いに対する結合親和性を有する、請求項1~11のいずれか一項
に記載のcaTCR。
【請求項13】
前記安定化モジュールが、CH1-CLモジュール、CH2-CH2モジュール、CH
3-CH3モジュール及びCH4-CH4モジュールからなる群から選択される、実施形
態12に記載のcaTCR。
【請求項14】
前記caTCRが、前記抗原結合モジュールと前記TCRMとの間にスペーサーモジュ
ールを更に含み、前記スペーサーモジュールが、前記TCRMに対して前記抗原結合モジ
ュールを接続する1つ以上のペプチドリンカーを含む、請求項1~13のいずれか一項に
記載のcaTCR。
【請求項15】
前記caTCRが多重特異性である、請求項1~14のいずれか一項に記載のcaTC
R。
【請求項16】
前記抗原結合モジュールが、前記TCRDの1つに結合するVHドメインと、他のTC
RDに結合するVLドメインとを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のcaTC
R。
【請求項17】
前記標的抗原が、細胞表面抗原である、請求項1~16のいずれか一項に記載のcaT
CR。
【請求項18】
前記標的抗原が、ペプチドと主要組織適合抗原複合体(MHC)タンパク質とを含む複
合体である、請求項1~16のいずれか一項に記載のcaTCR。
【請求項19】
caTCRであって、
(a)第1の標的抗原に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと第2の標的抗原に
特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む多重特異性抗原結合モジュールと、
(b)第1のTCR-TMを含む第1のTCRD(TCRD1)と第2のTCR-TM
を含む第2のTCRD(TCRD2)を含むTCRMとを含み、
前記TCRMが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を促進する、c
aTCR。
【請求項20】
前記第1の抗原結合ドメインが、第1の重鎖可変ドメイン(VH1)と第1の軽鎖可変
ドメイン(VL1)を含むFvであり、前記第2の抗原結合ドメインが、重鎖定常ドメイ
ン1(CH1)に融合した第2のVH(VH2)と、軽鎖定常ドメイン(CL)に融合し
た第2のVL(VL2)とを含むFabである、請求項19に記載のcaTCR。
【請求項21】
請求項20に記載のcaTCRであって、
(i)N末端からC末端まで、VH1-L1-VH2-CH1-TCRD1を含む第1
のポリペプチド鎖と、N末端からC末端まで、VL1-L2-VL2-CL-TCRD2
を含む第2のポリペプチド鎖;
(ii)N末端からC末端まで、VH1-L1-VL2-CL-TCRD1を含む第1
のポリペプチド鎖と、N末端からC末端まで、VL1-L2-VH2-CH1-TCRD
2を含む第2のポリペプチド鎖;
(iii)N末端からC末端まで、VL1-L1-VH2-CH1-TCRD1を含む
第1のポリペプチド鎖と、N末端からC末端まで、VH1-L2-VL2-CL-TCR
D2を含む第2のポリペプチド鎖;
又は、
(iv)N末端からC末端まで、VL1-L1-VL2-CL-TCRD1を含む第1
のポリペプチド鎖と、N末端からC末端まで、VH1-L2-VH2-CH1-TCRD
2を含む第2のポリペプチド鎖を含み、
L1及びL2がペプチドリンカーである、caTCR。
【請求項22】
前記第1の抗原結合ドメインが第1のscFv(scFv1)であり、前記第2の抗原
結合ドメインが第2のscFv(scFv2)であり、前記caTCRが、CH1とCL
を更に含む、請求項19に記載のcaTCR。
【請求項23】
請求項22に記載のcaTCRであって、
(i)N末端からC末端まで、scFv1-L1-CH1-TCRD1を含む第1のポ
リペプチド鎖と、N末端からC末端まで、scFv2-L2-CL-TCRD2を含む第
2のポリペプチド鎖;
又は、
(ii)N末端からC末端まで、scFv2-L1-CH1-TCRD1を含む第1の
ポリペプチド鎖と、N末端からC末端まで、scFv1-L2-CL-TCRD2を含む
第2のポリペプチド鎖を含み、
L1及びL2がペプチドリンカーである、caTCR。
【請求項24】
前記第1の抗原結合ドメインがscFvであり、前記第2の抗原結合ドメインが、CH
1に融合したVHとCLに融合したVLとを含むFabである、請求項19に記載のca
TCR。
【請求項25】
請求項24に記載のcaTCRであって、
(i)N末端からC末端まで、scFv-L1-VH-CH1-TCRD1を含む第1
のポリペプチド鎖と、N末端からC末端まで、VL-CL-TCRD2を含む第2のポリ
ペプチド鎖;
又は、
(ii)N末端からC末端まで、VH-CH1-TCRD1を含む第1のポリペプチド
鎖と、N末端からC末端まで、scFv-L2-VL-CL-TCRD2を含む第2のポ
リペプチド鎖を含み、
L1及びL2がペプチドリンカーである、caTCR。
【請求項26】
L1及び/又はL2が、約5~約50アミノ酸長である、請求項21、23又は25に
記載のcaTCR。
【請求項27】
前記第1の標的抗原が、第1の細胞表面抗原であり、前記第2の標的抗原が、第2の細
胞表面抗原である、請求項19~26のいずれか一項に記載のcaTCR。
【請求項28】
前記第1の標的抗原がCD19であり、前記第2の標的抗原がCD22であるか、又は
前記第1の標的抗原がCD22であり、前記第2の標的抗原がCD19である、請求項2
7に記載のcaTCR。
【請求項29】
CD22に特異的に結合する抗原結合ドメインが、配列番号65のアミノ酸配列を含む
VHのHC-CDR1、HC-CDR2及びHC-CDR3を含むVHと、配列番号69
のアミノ酸配列を含むVLのLC-CDR1、LC-CDR2及びLC-CDR3を含む
VLとを含む、請求項28に記載のcaTCR。
【請求項30】
CD19に特異的に結合する抗原結合ドメインが、配列番号74のアミノ酸配列を含む
VHのHC-CDR1、HC-CDR2及びHC-CDR3を含むVHと、配列番号78
のアミノ酸配列を含むVLのLC-CDR1、LC-CDR2及びLC-CDR3を含む
VLとを含む、請求項28又は29に記載のcaTCR。
【請求項31】
前記TCR-TMのうち少なくとも1つが、天然に存在しないものである、請求項19
~30のいずれか一項に記載のcaTCR。
【請求項32】
前記第1のTCRDが、TCRサブユニットの第1の接続ペプチド又はそのフラグメン
トを更に含み、及び/又は前記第2のTCRDが、TCRサブユニットの第2の接続ペプ
チド又はそのフラグメントを更に含む、請求項1~31のいずれか一項に記載のcaTC
R。
【請求項33】
前記第1のTCRDが、TCR細胞内配列を含む第1のTCR細胞内ドメインを更に含
み、及び/又は前記第2のTCRDが、TCR細胞内配列を含む第2のTCR細胞内ドメ
インを更に含む、請求項1~32のいずれか一項に記載のcaTCR。
【請求項34】
請求項1~33のいずれか一項に記載のcaTCRをコードする、1つ以上の核酸。
【請求項35】
請求項34に記載の1つ以上の核酸を含む、1つ以上のベクター。
【請求項36】
請求項1~33のいずれか一項に記載のcaTCRと、CD3δε、CD3γε及びζ
ζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子とを含む、複
合体。
【請求項37】
請求項1~33のいずれか一項に記載のcaTCR又は請求項36に記載の複合体をそ
の表面上に提示するエフェクター細胞。
【請求項38】
標的抗原を提示する標的細胞を死滅させる方法であって、前記標的細胞と、請求項37
に記載のエフェクター細胞とを接触させることを含み、前記caTCRが、前記標的抗原
に特異的に結合する、方法。
【請求項39】
医薬組成物であって、(a)請求項1~33のいずれか一項に記載のcaTCR、請求
項34に記載の1つ以上の核酸、又は請求項35に記載の1つ以上のベクター、又は請求
項37に記載のエフェクター細胞と、(b)医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成
物。
【請求項40】
標的抗原関連疾患の治療を必要とする個体において当該疾患を治療する方法であって、
有効量の請求項39に記載の組成物を前記個体に投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年4月26日出願の米国特許仮出願第62/490,576号、2
017年4月26日出願の米国特許仮出願第62/490,578号及び2017年4月
26日出願の米国特許仮出願第62/490,580号に対する優先権を主張するもので
あり、それらは全て、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
【0002】
ASCIIテキストファイルでの以下の提出物の内容は、参照によりその全体が本明細
書に組み込まれる:コンピュータ可読形態(CRF)の配列表(ファイル名:75004
2000640SEQLIST.txt、記録日:2018年4月24日、サイズ:16
8KB)。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、1つ以上の標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールと、少なくとも
1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能なT細胞受容体モジュールとを
含む、キメラ抗体-TCR構築物に関する。
【背景技術】
【0004】
T細胞性免疫は、ウイルス、細菌、寄生虫感染又は悪性細胞を排除するために、抗原(
Ag)に特異的なTリンパ球を発達させる獲得プロセスである。このプロセスは、自己抗
原の異常な認識も伴う場合があり、自己免疫炎症性疾患を引き起こす。Tリンパ球のAg
特異性は、Ag提示細胞(APC)上の主要組織適合抗原複合体(MHC)分子によって
提示される固有の抗原性ペプチドのT細胞受容体(TCR)による認識に基づく(Bro
ereら、Principles of Immunopharmacology、20
11)。各Tリンパ球は、胸腺の成熟時の発達選択の結果として、細胞表面上で固有のT
CRを発現する。TCRは、αβヘテロ二量体又はγδヘテロ二量体のいずれかとして、
2つの形態で生じる。T細胞は、細胞表面でαβ形態又はγδ形態のTCRのいずれかを
発現する。4つの鎖(α/β/γ/δ)は全て、高度に多型である「免疫グロブリン可変
領域」様N末端ドメインと、「免疫グロブリン定常領域」様の第2のドメインとからなる
特徴的な細胞外構造を有する。これらのドメインは、それぞれ、特徴的なドメイン内ジス
ルフィド架橋を有する。定常領域は、細胞膜の近位にあり、定常領域の後には、接続ペプ
チド、膜貫通領域及び短い細胞質尾部が続く。ヘテロ二量体TCRの2本鎖間の共有結合
は、細胞外定常ドメインと、膜貫通領域とをつなぐ短い接続ペプチド配列内に位置するシ
ステイン残基によって形成される。これらのシステイン残基が、対応する位置にありペア
となるTCR鎖システイン残基とジスルフィド結合を形成する(The T cell
Receptor Factsbook、2001)。
【0005】
αβ及びγδTCRは、非多型膜結合CD3タンパク質と会合し、TCRヘテロ二量体
と、3つの二量体シグナル伝達分子CD3δ/ε、CD3γ/ε及びCD3ζ/ζ又はζ
/ηとからなる機能的な八量体TCR-CD3複合体を形成する。各サブユニットの膜貫
通ドメイン中のイオン化可能な残基は、相互作用により極性の網目構造を形成し、複合体
を共に保持する。T細胞活性化のために、TCRのN末端可変領域は、標的細胞の表面上
に提示されるペプチド/MHC複合体を認識し、一方、CD3タンパク質は、シグナル伝
達に関与する(Callら、Cell.111(7):967-79、2002)。Th
e T cell Receptor Factsbook、2001)。
【0006】
従来のTCRとも呼ばれるαβTCRは、ほとんどのリンパ球で発現されており、グリ
コシル化多型α鎖及びβ鎖からなる。異なるαβTCRは、MHCII分子の表面に埋め
込まれた様々なペプチド(大部分はAPC細胞表面で発現する)及びMHCI分子の表面
に埋め込まれた様々なペプチド(全て有核細胞で発現される)を識別することができ、こ
れらのペプチドの寸法及び形状は比較的一定である。γδTCRは、αβTCRと構造的
に類似しているが、MHC提示とは独立した様式で、炭水化物を保有する抗原、ヌクレオ
チドを保有する抗原又は蛍光体を保有する抗原を認識する(The T cell Re
ceptor Factsbook、2001;Girardiら、J.Invest.
Dermatol.126(1):25-31、2006;Hayesら、Immuni
ty.16(6):827-38、2002)。
【0007】
過去20年間における、免疫学及び腫瘍生物学における基本的な進歩と、多数の腫瘍抗
原の同定とが合わさることで、細胞ベースの免疫治療の分野は顕著に進歩した。自己T細
胞及びex vivoで増殖させたT細胞を患者に移すことによって癌を治療することを
目標としたT細胞療法が細胞系免疫療法の分野において占める割合は大きく、いくつかの
顕著な抗腫瘍応答が得られている(Blattmanら、Science.305(56
81):200-5、2004)。例えば、増殖させた天然に存在する腫瘍浸潤リンパ球
(TIL)の投与は、肝臓、肺、軟組織及び脳を含む複数の部位での大きな浸潤性腫瘍を
含め、黒色腫患者の50~70%の範囲の客観的な応答率にex vivoで介在した(
Rosenbergら、Nat.Rev.Cancer.8(4):299-308、2
008;Dudley MEら、J.Clin.Oncol.23(10):2346-
57、2005)。
【0008】
TIL療法の広範な応用に対する主な制限は、抗腫瘍能(antitumor pot
ential)を有するヒトT細胞の作成が難しいことである。代替的なアプローチとし
て、外来性高親和性TCRを、T細胞操作を通じて患者の正常な自己T細胞に導入するこ
とができる。リンパ球が枯渇した患者へのこれらの細胞の養子移入は、黒色腫、大腸直腸
癌及び滑膜肉腫などの癌の癌退縮に介在することが示されている(Kunert Rら、
Front.Immunol.4:363、2013)。滑膜肉腫に対し抗NY-ESO
-1 TCRを用いた近年の第I相臨床試験は、全奏効率66%であり、T細胞療法を受
けた患者の1人において、完全な応答が達成されたことを報告した(Robbins P
Fら、Clin.Cancer Res.21(5):1019-27、2015)。
【0009】
TCRを操作したT細胞療法の利点の1つは、プロセシングを受けた後にMHC提示に
より細胞表面に送達される、潜在的な細胞内腫瘍特異的タンパク質のアレイ全体を標的と
することができる点である。更に、TCRは高感度であり、ごく少量の抗原ペプチド/M
HC分子によって活性化することができ、この活性化により、サイトカイン分泌、T細胞
増殖及び所定の標的細胞の細胞分解を含む、細胞溶解性T細胞応答がトリガーされる。し
たがって、抗体又は低分子療法と比較して、TCRを操作したT細胞は、標的細胞内抗原
のごく少量の複製によって標的細胞を死滅させるという能力に特に価値がある(Kune
rtら、Front.Immunol.4:363、2013)。
【0010】
しかし、そのほとんどがハイブリドーマ又はディスプレイ技術によって開発される治療
抗体とは異なり、標的に特異的なTCRの同定には、患者T細胞に由来する標的ペプチド
/MHC特異的TCRクローンの樹立と、最適な標的抗原結合親和性を有する正しいα-
β鎖の組み合わせのスクリーニングが必要とされる。非常に多くの場合TCRの標的結合
親和性を更に向上させるために、患者T細胞に由来するTCRのクローニングの後、ファ
ージ/酵母ディスプレイが使用される。この全プロセスは、多くの領域において専門知識
を必要とし、時間がかかるものである(Kobayashi Eら、Oncoimmun
ology.3(1):e27258、2014)。TCR発見プロセスにおける課題が
、TCRを操作したT細胞療法の広範な応用を大きく妨げる。この応用はまた、特に、腫
瘍細胞上で過剰に発現するだけでなく健康な細胞上でも発現する抗原に対してTCRを用
いる場合、又は標的外のペプチド/MHC複合体を認識するTCRを用いる場合に、治療
関連毒性により妨げられる(Rosenberg SAら、Science.348(6
230):62-8、2015)。
【0011】
標的化された癌免疫療法のためにT細胞を組み合わせるために、近年、様々な手法が開
発されてきた。この新たな手法は、キメラ抗原受容体T細胞療法(CAR-T)と呼ばれ
る。この新しい手法は、モノクローナル抗体の優れた標的特異性と、細胞毒性T細胞によ
って与えられる強力な細胞毒性と長期間持続性とを併せもつ。CARは、細胞表面抗原を
認識する細胞外ドメインと、膜貫通領域と、細胞内シグナル伝達ドメインとから構成され
る。細胞外ドメインは、単鎖可変フラグメント(scFv)に融合するモノクローナル抗
体の重鎖及び軽鎖に由来する抗原結合可変領域からなる。細胞内シグナル伝達ドメインは
、免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(ITAM)(例えば、CD3ζ又はFcRγに
由来するもの)と、1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメイン(例えば、CD28、4-1
BB又はOX40に由来するもの)とを含む(Barrett DMら、Annu.Re
v.Med.65:333-47、2014;Davila MLら、Oncoimmu
nology.1(9):1577-1583、2012)。T細胞表面上に導入したC
ARが標的抗原を結合すると、TCR-ペプチド/MHC複合体相互作用とは独立して、
T細胞エフェクター機能をトリガーし得る。したがって、CARを備えたT細胞は、T細
胞上のTCRのMHCの種類は一致していないものの標的細胞表面抗原を発現するものを
含め、多種多様な細胞を攻撃するように再方向付けされてもよい。この手法は、MHC制
限TCR認識の制約を克服し、抗原提示又はMHC分子の発現における欠陥を介して腫瘍
がエスケープすることを回避する。臨床試験は、神経芽腫(Louis CUら、Blo
od.118(23):6050-6056、2011)、B-ALL(Maude,S
Lら、New England Journal of Medicine 371:1
6:1507-1517、2014)、CLL(Brentjens,RJら、Bloo
d 118:18:4817-4828、2011)及びB細胞リンパ腫(Kochen
derfer,JNら、Blood 116:20:4099-4102、2010)に
おけるCAR-T療法について、臨床的に優位な抗腫瘍活性を示した。ある研究では、C
D19-CAR T療法で治療したB-ALL患者30名において90%の完全寛解率を
報告した(Maude,SLら、前掲)。
【0012】
全てではないが、今までに研究されたCARのほとんどは、細胞表面で高発現する腫瘍
抗原を対象としている。既知の全ての腫瘍特異的抗原の95%に該当する、低複製数の細
胞表面腫瘍抗原及び細胞内腫瘍抗原を標的とするために、より強力かつ有効に操作された
細胞療法を開発する必要がある(Cheeverら、Clin.Cancer Res.
15(17):5323-37、2009)。
T細胞受容体エフェクター機能により抗体特異性を有するキメラ受容体分子を操作する
よういくつかの試みがなされてきた。例えば、Kuwana,Yら、Biochem.B
iophys.Res.Commun.149(3):960-968、1987;Gr
oss,Gら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.86:10024-1
0028、1989;Gross,G及びEshhar,Z、FASEB J.6(15
):3370-3378、1992;及び米国特許第7,741,465号を参照。今日
まで、これらのキメラ受容体はいずれも臨床用途に採用されておらず、ヒトT細胞におけ
る発現及び機能性が改善された抗体-TCRキメラ受容体の新規設計が必要とされている
。
本明細書で参照した全ての出版物、特許、特許出願、及び特許出願公開の開示内容は、
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。PCT出願番号PCT/US2016/
058305号は、その全体が本明細書に参考として組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第7,741,465号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Broereら、Principles of Immunopharmacology、2011
【非特許文献2】Callら、Cell.111(7):967-79、2002
【非特許文献3】Girardiら、J.Invest.Dermatol.126(1):25-31、2006
【非特許文献4】Hayesら、Immunity.16(6):827-38、2002
【非特許文献5】Blattmanら、Science.305(5681):200-5、2004
【非特許文献6】Rosenbergら、Nat.Rev.Cancer.8(4):299-308、2008
【非特許文献7】Dudley MEら、J.Clin.Oncol.23(10):2346-57、2005
【非特許文献8】Kunert Rら、Front.Immunol.4:363、2013
【非特許文献9】Robbins PFら、Clin.Cancer Res.21(5):1019-27、2015
【非特許文献10】Kobayashi Eら、Oncoimmunology.3(1):e27258、2014
【非特許文献11】Rosenberg SAら、Science.348(6230):62-8、2015
【非特許文献12】Barrett DMら、Annu.Rev.Med.65:333-47、2014
【非特許文献13】Davila MLら、Oncoimmunology.1(9):1577-1583、2012
【非特許文献14】Louis CUら、Blood.118(23):6050-6056、2011
【非特許文献15】Maude,SLら、New England Journal of Medicine 371:16:1507-1517、2014
【非特許文献16】Brentjens,RJら、Blood 118:18:4817-4828、2011
【非特許文献17】Kochenderfer,JNら、Blood 116:20:4099-4102、2010
【非特許文献18】Cheeverら、Clin.Cancer Res.15(17):5323-37、2009
【非特許文献19】Kuwana,Yら、Biochem.Biophys.Res.Commun.149(3):960-968、1987
【非特許文献20】Gross,Gら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.86:10024-10028、1989
【非特許文献21】Gross,G及びEshhar,Z、FASEB J.6(15):3370-3378、1992
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本出願は、一態様では、T細胞受容体モジュールに融合した抗原結合モジュール(例え
ば、抗体部分)を含む構築物(例えば、単離された構築物)を提供する(当該構築物は、
本明細書で「キメラ抗体TCR分子」又は「caTCR」とも呼ばれる)。いくつかの実
施形態では、caTCRは、標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールと、少なく
とも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能なT細胞受容体モジュール
(TCRM)とを含む。いくつかの実施形態では、標的抗原は、ペプチドとMHCタンパ
ク質(例えば、MHCクラスIタンパク質又はMHCクラスIIタンパク質)とを含む複
合体である。いくつかの実施形態では、標的抗原は、細胞表面抗原である。
【0016】
いくつかの実施形態では、キメラ抗体T細胞受容体(TCR)構築物(caTCR)で
あって、標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールと、第1のTCR膜貫通ドメイ
ン(TCR-TM)を含む第1のTCRドメイン(TCRD)及び第2のTCR-TMを
含む第2のTCRDを含むT細胞受容体モジュール(TCRM)とを含み、TCR-TM
のうち少なくとも1つが、天然に存在せず、TCRMが、少なくとも1つのTCR関連シ
グナル伝達分子の動員を促進し、抗原結合モジュールが、天然に存在するT細胞受容体抗
原結合部分ではない、caTCRが提供される。
【0017】
いくつかの実施形態では、caTCRであって、(a)第1の標的抗原に特異的に結合
する第1の抗原結合ドメインと第2の標的抗原に特異的に結合する第2の抗原結合ドメイ
ンを含む多重特異性(例えば、二重特異性)抗原結合モジュールと、(b)第1のTCR
-TMを含む第1のTCRD(TCRD1)と第2のTCR-TMを含む第2のTCRD
(TCRD2)を含むTCRMとを含み、TCRMが、少なくとも1つのTCR関連シグ
ナル伝達分子の動員を促進する、caTCRが提供される。いくつかの実施形態では、T
CR-TMのうち少なくとも1つは、天然に存在しない。いくつかの実施形態では、第1
のTCR-TM及び第2のTCR-TMは、天然に存在する。
【0018】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRをコードする1つ以上の核酸が
提供される。いくつかの実施形態では、1つ以上の核酸を含む1つ以上のベクターが提供
される。いくつかの実施形態では、1つ以上の核酸又は1つ以上のベクターを含む組成物
が提供される。いくつかの実施形態では、1つ以上の核酸又は1つ以上のベクターを含む
エフェクター細胞が提供される。
【0019】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRと、CD3δε、CD3γε及
びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子とを含む
、複合体が提供される。
【0020】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のエフェクター細胞を含む組成物(例えば、
医薬組成物)が提供される。
【0021】
いくつかの実施形態では、標的抗原を提示する標的細胞を死滅させる方法であって、標
的細胞と、本明細書に記載のエフェクター細胞とを接触させることを含む、方法が提供さ
れる。
【0022】
いくつかの実施形態では、標的抗原関連疾患の治療を必要とする個体において当該疾患
を治療する方法であって、本明細書に記載される有効量の医薬組成物を個体に投与するこ
とを含む、方法が提供される。
【0023】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のエフェクター細胞のため不均一な細胞集団
を濃縮する方法であって、(a)不均一な細胞集団と、標的抗原又はその中に含まれる1
つ以上のエピトープを含むリガンドとを接触させ、リガンドに結合したエフェクター細胞
の複合体を形成することと、(b)この複合体を、不均一な細胞集団から分離し、それに
よって、エフェクター細胞が濃縮された細胞集団を生成することとを含む、方法が提供さ
れる。
【0024】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される複数のcaTCRをコードする配列を
含む核酸ライブラリーが提供される。いくつかの実施形態では、標的抗原に対して高い親
和性を有するcaTCRについて、本明細書に記載のライブラリーをスクリーニングする
方法であって、(a)核酸ライブラリーを複数の細胞に導入し、その結果、caTCRが
複数の細胞の表面で発現することと、(b)複数の細胞を、標的抗原又はその中に含まれ
る1つ以上のエピトープを含むリガンドと共にインキュベートすることと、(c)リガン
ドに結合した細胞を集めることと、(d)工程(c)で集めた細胞から、caTCRをコ
ードする配列を単離し、それによって、標的抗原に特異的なcaTCRを同定することと
を含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】様々な抗原結合モジュールを有する数種類のcaTCR分子の概略図を示す。
【0026】
【
図2】caTCR-1-0構築物の概略図を示し、TM変異体を作製するために変異を導入されたその膜貫通領域を強調している。
【0027】
【
図3】caTCR膜貫通領域のらせん状の輪状突出部を示す。膜貫通変異体を作製するために変異を導入されたアミノ酸位置が強調されている。
【0028】
【
図4】JRT3.1細胞上のcaTCR膜貫通変異体及びCD3の発現を、抗AFP158/HLA-A
*2:01結合部分を含むcaTCR-1-0で形質導入された細胞上のそれぞれのMFI発現の割合として示す。表面CD3ε又はcaTCR受容体のフローサイトメトリー分析を使用し、それぞれの受容体のMFIを計算した。
【0029】
【
図5】内在性CD3複合体とcaTCR-1-0又はcaTCR-1-TM変異体との結合親和性を調べるために使用されるウェスタンブロット分析を示す。caTCR-1-0又はcaTCR-1膜貫通変異体(-TM6、-TM10)を用いて形質導入されたJRT3-T3.5細胞に由来する溶解物又は抗FLAG免疫沈降物を、抗FLAG及び抗CD3ζ抗体を用いてブロットした。
【0030】
【
図6】mock形質導入されたT細胞、又はcaTCR-1-0を形質導入されたT細胞、又は抗AFP158/HLA-A
*2:01結合部分を有するcaTCR-1膜貫通変異体で形質導入されたT細胞が介在する、癌細胞株SK-HEP-1及びSK-HEP-1-AFP-MGの殺傷に由来する特異的溶解率を示す。
【0031】
【
図7】caTCR-1-0で形質導入されたT細胞、又は抗AFP158/HLA-A
*2:01結合部分を有するcaTCR-1膜貫通変異体で形質導入されたT細胞による、癌細胞株SK-HEP-1-AFP-MGのin vitroでの死滅後の上清中に見出されるサイトカインの濃度を示す。
【0032】
【
図8】mock形質導入されたT細胞、又は形質導入されたT細胞caTCR-1-0、又は抗AFP158/HLA-A
*2:01結合部分を有するcaTCR-1膜貫通変異体で形質導入されたT細胞が介在する、癌細胞株SK-HEP-1及びSK-HEP-1-AFP-MGの死滅からの特異的溶解率を示す。
【0033】
【
図9】caTCR-1-0で形質導入されるT細胞、又は抗AFP158/HLA-A
*2:01結合部分を有するcaTCR-1膜貫通変異体で形質導入されるT細胞による、癌細胞株SK-HEP-1-AFP-MGのin vitroでの死滅後の上清中に見出されるサイトカインの濃度を示す。
【0034】
【
図10】形質導入されるT細胞caTCR-1-0、又は抗CD19結合部分を有するcaTCR-TM5膜貫通変異体で形質導入されたT細胞が介在する、癌細胞株NALM6の死滅からの特異的溶解率を示す。
【0035】
【
図11】mock形質導入されたT細胞、又は形質導入されるT細胞caTCR-1-0、又は抗CD19結合部分を有するcaTCR-1ーTM5膜貫通変異体で形質導入されるT細胞による、癌細胞株NALM6のin vitroでの死滅後の上清中に見出されるサイトカインの濃度を示す。
【0036】
【
図12A】NALM6腫瘍細胞による刺激に応答する増殖速度の実証として、形質導入されるT細胞caTCR-1-0、又はcaTCR-1-TM5で形質導入されたT細胞内のCFSEの量を示す。腫瘍細胞溶解後の生存T細胞の数を表5に列挙している。
【
図12B】NALM6腫瘍細胞による刺激に応答する増殖速度の実証として、形質導入されるT細胞caTCR-1-0、又はcaTCR-1-TM5で形質導入されたT細胞内のCFSEの量を示す。腫瘍細胞溶解後の生存T細胞の数を表5に列挙している。
【0037】
【
図13A】例示的な二重特異性caTCR分子の概略的な構造を示す。
【
図13B】例示的な二重特異性caTCR分子の概略的な構造を示す。
【
図13C】例示的な二重特異性caTCR分子の概略的な構造を示す。
【
図13D】例示的な二重特異性caTCR分子の概略的な構造を示す。
【
図13E】例示的な二重特異性caTCR分子の概略的な構造を示す。
【0038】
【
図14】K562、K562-CD19(CD19
+)、K562-CD22(CD22
+)、Raji、及びmock形質導入されたT細胞、又は二重特異性caTCR構築物、抗CD19抗CD22 caTCR-7-2aをコードするベクターで形質導入されたT細胞を含むRaji CD19 K/Oといった癌細胞株をin vitroでインキュベーションした後に上清中に見出されるIFNγの濃度を示す。
【0039】
【
図15】K562、K562-CD19(CD19
+)、K562-CD22(CD22
+)、及び抗CD19 caTCR-1又は4種類の異なる抗CD19抗CD22 caTCR構築物のいずれか1つをコードするベクターで形質導入されたT細胞が介在するK562-CD19/CD22(CD19
+CD22
+)といった癌細胞株の死滅に由来する特異的溶解率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本出願は、一態様では、単離されたキメラ抗体/T細胞受容体構築物(本明細書で「c
aTCR」と呼ばれる)であって、標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールと、
1つ以上の天然に存在しないTCR由来の膜貫通ドメインを含むT細胞受容体モジュール
(TCRM)とを含み、TCRMが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動
員することが可能である、caTCRを提供する。別の態様では、本出願は、2つ以上の
異なる標的抗原又はエピトープに特異的に結合する多重特異性(例えば、二重特異性)抗
原結合モジュールと、天然に存在するか、又は天然に存在しないTCR由来の膜貫通ドメ
インを含むTCRMとを含むcaTCRを提供する。本明細書に記載されるcaTCRは
、標的抗原を発現する疾患細胞を死滅させるために、ヒトT細胞を特異的に再方向付けさ
せる。標的抗原は、細胞表面で発現するタンパク質であってもよく、又はペプチドとMH
Cタンパク質とを含む複合体(本明細書では「pMHC複合体」又は「pMHC」と呼ば
れる)、例えば、疾患細胞表面にあるMHC提示疾患関連抗原ペプチドであってもよい。
caTCRは、T細胞受容体活性化を制御する天然に存在する機構によって制御されるが
、天然に存在するT細胞受容体とは異なり、caTCRは、表面発現及び/又は機能を増
強する改変を含む。
【0041】
本願発明者らは、天然に存在するTCR配列のみを有する同様の構築物と比較して、表
面発現及び/又は機能を改善した、TCR配列の天然に存在しない多様体を含む、一連の
新規な合成キメラ抗体-TCR構築物を開発した。本願発明者らはまた、抗原の逃避を減
らすために複数の標的抗原を特異的に認識する、多重特異性キメラ抗体-TCR構築物を
開発した。caTCRは、T細胞表面上で効率的に発現させることができ、内在性CD3
分子に会合して、安定なTCR様シグナル伝達複合体を形成することが示されている。T
細胞において操作されると、caTCRは、MHC依存性(ペプチド/MHC抗原)の構
成及びMHC非依存性(細胞表面抗原)の構成の両方で、in vitro及びin v
ivoの両方で、T細胞に、標的を有する腫瘍細胞に対する強力な細胞毒性を与えた。
【0042】
したがって、本出願の一態様は、caTCR(例えば、単離されたcaTCR)であっ
て、標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールと、1つ以上の天然に存在しないT
CR由来の膜貫通ドメインを含むT細胞受容体モジュール(TCRM)とを含み、TCR
Mが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能である、ca
TCRを提供する。caTCRは、抗原結合モジュール及び/又はTCRMにおける様々
な多数のフォーマットのうちのいずれかをとることができる。例えば、caTCRは、F
ab、Fab’、(Fab’)
2、Fv及びscFvからなる群から選択される部分を含
む抗原結合モジュールと、膜貫通ドメイン、接続ペプチド及び細胞内ドメインのうち1つ
以上が多様体を含み、α/β及び/又はγ/δ TCRに由来する1つ以上の天然に存在
しない配列を有するTCRMと、を含んでいてもよい。例示的なcaTCR構築物の設計
については、
図1を参照のこと。
【0043】
本出願の別の態様は、caTCRであって、(a)第1の標的抗原に特異的に結合する
第1の抗原結合ドメインと第2の標的抗原に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを
含む多重特異性(例えば、二重特異性)抗原結合モジュールと、(b)第1のTCR-T
Mを含む第1のTCRD(TCRD1)と第2のTCR-TMを含む第2のTCRD(T
CRD2)を含むTCRMとを含み、TCRMが、少なくとも1つのTCR関連シグナル
伝達分子の動員を促進する、caTCRが提供される。いくつかの実施形態では、第1の
標的抗原はCD19であり、第2の標的抗原はCD22であるか、又は第1の標的抗原は
CD22であり、第2の標的抗原はCD19である。いくつかの実施形態では、第1の標
的抗原はCD19であり、第2の標的抗原はCD20であるか、又は第1の標的抗原はC
D20であり、第2の標的抗原はCD22である。いくつかの実施形態では、TCRMは
、1つ以上の天然に存在しないTCR由来の膜貫通ドメインを含む。例示的な多重特異性
caTCR構築物の設計については、
図13A~13Eを参照のこと。
【0044】
別の態様では、caTCRをコードする1つ以上の核酸が提供される。
【0045】
更に別の態様では、caTCRと、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子とを
含む、複合体(本明細書では、「caTCR-CD3複合体」と呼ばれる)が提供される
。複合体は、caTCR、CD3δε、CD3γε及びζζといった4つの二量体を含む
八量体であってもよい。caTCR又はcaTCR-CD3複合体を発現するか、又はこ
れに会合するエフェクター細胞(例えば、T細胞)も提供される。
【0046】
更に別の態様では、caTCRを含む組成物が提供される。組成物は、caTCRを発
現するか、又はこれに会合するcaTCR又はエフェクター細胞(例えば、caTCRを
発現するT細胞)を含む医薬組成物であってもよい。
【0047】
治療目的のために、caTCR(又はcaTCRを発現するか、若しくはこれに会合す
る細胞)を作製し、使用する方法、並びにこのような方法に有用なキット及び製造物品も
提供される。更に、caTCR(又はcaTCRを発現するか、又はこれに会合する細胞
)を用い、疾患を治療する方法が提供される。
定義
【0048】
「抗体」又は「抗体部分」との用語は、完全長抗体及びその抗原結合フラグメントを含
む。完全長抗体は、2つの重鎖と2つの軽鎖とを含む。軽鎖及び重鎖の可変領域は、抗原
結合に関与する。両鎖の可変領域は、一般に、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3つ
のきわめて可変性のループ(LC-CDR1、LC-CDR2及びLC-CDR3を含む
軽鎖(LC)CDRと、HC-CDR1、HC-CDR2及びHC-CDR3を含む重鎖
(HC)CDR)を含む。本明細書に開示される抗体及び抗原結合フラグメントのCDR
の境界は、Kabat、Chothia、又はAl-Lazikaniによって定義又は
同定されてもよい(Al-Lazikani 1997;Chothia 1985;C
hothia 1987;Chothia 1989;Kabat 1987;Kaba
t 1991)。重鎖又は軽鎖の3つのCDRは、フレームワーク領域(FR)として知
られるフランキング伸長部の間に挟まっており、CDRよりも高度に保存され、超可変ル
ープを支えるための骨格を形成する。重鎖及び軽鎖の定常領域は、抗原結合には関与しな
いが、様々なエフェクター機能を示す。抗体は、重鎖の定常領域のアミノ酸配列に基づき
、いくつかのクラスに割り当てられる。抗体の5つの主要なクラス又はアイソタイプは、
IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMであり、それぞれ、α、δ、ε、γ及びμ重
鎖の存在によって特徴付けられる。主要な抗体クラスのいくつかは、例えば、lgG1(
γ1重鎖)、lgG2(γ2重鎖)、lgG3(γ3重鎖)、lgG4(γ4重鎖)、l
gA1(α1重鎖)又はlgA2(α2重鎖)などのサブクラスに分けられる。
【0049】
「抗原結合フラグメント」との用語は、本明細書で使用される場合、例えば、ダイアボ
ディ、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメント、ジスルフィドで安定化さ
れたFvフラグメント(dsFv)、(dsFv)2、二重特異性dsFv(dsFv-
dsFv’)、ジスルフィドで安定化されたダイアボディ(dsダイアボディ)、一本鎖
抗体分子(scFv)、scFv二量体(二価ダイアボディ)、1つ以上のCDRを含む
抗体の一部から形成される多重特異性抗体、ラクダ化されたシングルドメイン抗体、ナノ
ボディ、ドメイン抗体、二価ドメイン抗体、又は抗原に結合するが完全な抗体構造を含ま
ない任意の他の抗体フラグメントを含む、抗体フラグメントを指す。抗原結合フラグメン
トは、親抗体又は親抗体フラグメント(例えば、親scFv)が結合するのと同じ抗原に
結合することができる。いくつかの実施形態では、抗原結合フラグメントは、1つ以上の
異なるヒト抗体由来のフレームワーク領域にグラフトした、特定のヒト抗体由来の1つ以
上のCDRを含んでいてもよい。
【0050】
本明細書で使用される場合、等モル濃度の第1の抗体部分存在下、第1の抗体部分が、
第2の抗体部分の標的抗原結合を少なくとも約50%(例えば、少なくとも約55%、6
0%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%又は99%の
いずれか)まで阻害する場合、第1の抗体部分は、第2の抗体部分と、標的抗原への結合
について「競合する」か、又はその逆が成り立つ。これらの交差競合に基づく抗体の「ビ
ニング」のための高スループットプロセスは、PCT公開第WO 03/48731号に
記載される。
【0051】
本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」又は「~に特異的である」との用語
は、生体分子を含めた異種分子集団の存在下で標的が存在することの指標となる、測定可
能かつ再現性のある相互作用(例えば、標的と抗体又は抗体部分との間の結合)を指す。
例えば、標的(エピトープであってもよい)に特異的に結合する抗体部分は、他の標的に
対する結合よりも大きな親和性で、より大きなアビディティーで、より容易に、及び/又
はより長時間、標的に結合する抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗原に特異的
に結合する抗体部分は、抗原の1つ以上の抗原決定基(例えば、細胞表面抗原又はペプチ
ド/MHCタンパク質複合体)と、他の標的に対する結合親和性の少なくとも約10倍の
結合親和性で反応する。
【0052】
「T細胞受容体」又は「TCR」との用語は、T細胞の表面上で対を形成するαβ鎖又
はγδ鎖で構成されるヘテロ二量体受容体を指す。各α、β、γ、及びδ鎖は、相補性決
定領域(CDR)を介して抗原認識を付与する可変ドメイン(V)と、次いで、接続ペプ
チド及び膜貫通(TM)領域によって細胞膜に固定される定常ドメイン(C)といった2
つのIg様ドメインで構成される。TM領域は、CD3シグナル伝達装置のインバリアン
トなサブユニットと会合する。Vドメインはそれぞれ、3つのCDRを含む。これらのC
DRは、主要組織適合抗原複合体(pMHC)によりコードされるタンパク質に結合した
抗原ペプチド間の複合体と相互作用する(Davis及びBjorkman(1988)
Nature、334、395-402;Davisら(1998)、Annu Rev
Immunol、16、523-544;Murphy(2012)、xix、868
p)。
【0053】
「TCR関連シグナル伝達分子」との用語は、TCR-CD3複合体の一部である細胞
質免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(ITAM)を有する分子を指す。TCR関連シ
グナル伝達分子としては、CD3γε、CD3δε、及びζζ(CD3ζ又はCD3ζζ
としても知られる)が挙げられる。
【0054】
「活性化」は、本明細書で、CD3を発現する細胞に関連して使用される場合、限定さ
れないが、細胞増殖及びサイトカイン産生を含め、下流のCD3シグナル伝達経路のエフ
ェクター機能を検出可能なほどに増強するのに十分に刺激を受けた細胞の状態を指す。
【0055】
「モジュール」との用語は、タンパク質又はタンパク質の一部を指すとき、1つ以上の
ポリペプチド鎖(例えば、二量体タンパク質又は二量体タンパク質の一部)を含むことを
意味する。1つ以上の鎖は、リンカー(例えば、ペプチドリンカー)又は化学結合(例え
ば、ペプチド結合)などによって接続していてもよい。「モジュール」はまた、タンパク
質を構成する1つ以上のポリペプチドの構造及び/又は機能に関連する部分を含むことも
意味する。例えば、二量体受容体の膜貫通モジュールは、膜にまたがる受容体の各ポリペ
プチド鎖の部分を指していてもよい。モジュールはまた、単一のポリペプチド鎖の関連部
分を指す場合もある。例えば、単量体受容体の膜貫通モジュールは、膜にまたがる受容体
の単一のポリペプチド鎖の部分を指していてもよい。モジュールはまた、ポリペプチドの
単一部分のみを含んでもよい。
【0056】
「単離された」構築物(例えば、caTCR)は、本明細書で使用される場合、(1)
自然界で見出されるタンパク質と会合しておらず、(2)同じ供給源に由来する他のタン
パク質を含まず、(3)異なる種に由来する細胞によって発現されるか、又は(4)自然
界では生じない構築物を指す。
【0057】
「単離された核酸」との用語は、本明細書で使用される場合、ゲノム、cDNA、又は
合成された核酸、又はこれらのいくつかの組み合わせを意味することを意図し、その由来
という観点で、「単離された核酸」は、(1)「単離された核酸」が天然に見出されるポ
リヌクレオチドの全て又は一部に会合していない、(2)天然では接続されていないポリ
ヌクレオチドに作動可能に接続されている、又は(3)天然ではより大きな配列の一部と
して生じない。
【0058】
本明細書で使用される場合、「CDR」又は「相補性決定領域」との用語は、重鎖及び
軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内に見出される非連続な抗原結合部位を意味すること
を意図する。これらの具体的な領域は、Kabatら、J.Biol.Chem.252
:6609-6616(1977);Kabatら、U.S.Dept.of Heal
th and Human Services、「Sequences of prot
eins of immunological interest」(1991);Ch
othiaら、J.Mol.Biol.196:901-917(1987);Al-L
azikani B.ら、J.Mol.Biol.、273:927-948(1997
);MacCallumら、J.Mol.Biol.262:732-745(1996
);Abhinandan及びMartin、Mol.Immunol.、45:383
2-3839(2008);Lefranc M.P.ら、Dev.Comp.Immu
nol.、27:55-77(2003);及びHonegger及びPlueckth
un、J.Mol.Biol.、309:657-670(2001)によって記載され
ており、この定義は、互いに比較したときに、アミノ酸残基の重なり合い又は部分集合を
含む。しかしながら、抗体又はグラフト化した抗体又はこれらの多様体のCDRを指すた
めのいずれかの定義の適用は、本明細書で定義され、本明細書で使用される用語の範囲内
であることが意図される。上に引用した参照文献のそれぞれによって定義されるCDRを
包含するアミノ酸残基を、比較として以下の表1に記載する。CDR予測アルゴリズム及
びインターフェースは、当該技術分野において既知であり、例えば、Abhinanda
n及びMartin、Mol.Immunol.、45:3832-3839(2008
);Ehrenmann F.ら、Nucleic Acids Res.、38:D3
01-D307(2010);及びAdolf-Bryfogle J.ら、Nucle
ic Acids Res.、43:D432-D438(2015)を含む。本段落で
引用される参考文献の内容は、本発明で使用するため、また、本明細書の1つ以上の特許
請求の範囲に可能ならば包含するため、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【表1】
1残基の付番は、上掲のKabatらの命名法に従う。
2残基の付番は、上掲のChothiaらの命名法に従う。
3残基付番は、上掲のMacCallumらの命名法に従う。
4残基の付番は、上掲のLefrancらの命名法に従う。
5残基の付番は、上掲のHonegger及びPlueckthunの命名法に従う。
【0059】
用語「キメラ抗体」は、本発明の生物活性を示すものであるという条件で、重鎖及び/
又は軽鎖が、特定の種に由来する抗体又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する
抗体における対応する配列と同一であり又は相同であり、なおかつ鎖の残部は別の種に由
来する抗体又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体、及び係る抗体のフラグ
メントと同一である又は相同である抗体を指す(米国特許第4,816,567号、及び
Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:6851
-6855(1984)を参照)。
【0060】
抗体又は抗体部分を参照して、「半合成」との用語は、その抗体又は抗体部分が、1つ
以上の天然に存在する配列と、1つ以上の天然に存在しない(すなわち、合成の)配列と
を有することを意味する。
【0061】
抗体又は抗体部分を参照して、「完全合成」との用語は、その抗体又は抗体部分が、定
型的なものであり、大部分又は全てが天然に存在するVH/VLフレームワーク対を有す
るが、重鎖及び軽鎖の両方の6つCDRの全てが天然には存在しない(すなわち、合成の
)配列を有することを意味する。天然に存在しないCDRとしては、改変されたヒトCD
R配列を含むもの、例えば、保存的アミノ酸置換又はシステイン残基の導入によって改変
されたCDR配列が挙げられる。
【0062】
非ヒト(例えば、げっ歯類)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト抗体に由来する最小配列
を含むキメラ抗体である。大部分について、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域(
HVR)に由来する残基が、所望の抗体特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット
、ウサギ、又はヒト以外の霊長類などのヒト以外の種(ドナー抗体)の超可変領域に由来
する残基によって置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である
。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)の残基は、ヒトのも
のではない対応する残基によって置き換わっている。更に、ヒト化抗体は、レシピエント
抗体中又はドナー抗体中に見出されない残基を含んでいてもよい。これらの改変は、抗体
性能を更に改良するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的に
は2つの可変ドメインの実質的に全てを含んでいてもよく、超可変ループの全て又は実質
的に全ては、ヒト以外の免疫グロブリンのものと対応し、FRの全て又は実質的に全ては
、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、場合により、免疫グロブリン(
典型的には、ヒト免疫グロブリンの)定常領域(Fc)の少なくとも一部も含むだろう。
更なる詳細については、Jonesら、Nature 321:522-525(198
6);Riechmannら、Nature 332:323-329(1988);及
びPresta、Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(19
92)を参照。
【0063】
「ホモロジー」は、2つのポリペプチド間又は2つの核酸分子間の配列類似性又は配列
同一性を指す。2つの比較配列の両方の位置が、同じ塩基又はアミノ酸単量体サブユニッ
トによって占有される場合、例えば、2つのDNA分子のそれぞれの位置がアデニンによ
って占有される場合、分子は、その位置において「相同」である。2つの配列間の「相同
性(%)」又は「配列同一性(%)」は、配列同一性の一部として任意の保存的置換を考
慮しつつ、2つの配列によって共有される一致する位置又は相同な位置の数を、比較した
位置の数によって割り算し、100を掛け算した関数である。例えば、2つの配列中の位
置の10のうち6が一致しているか、又は相同である場合、2つの配列は、60%相同性
である。例として、DNA配列ATTGCC及びTATGGCは、50%の相同性を共有
する。一般に、相同性が最大となるように2つの配列をアラインメントして、比較が行わ
れる。アミノ酸配列同一性率を決定する目的のためのアラインメントは、当該技術分野に
おける様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、Megali
gn(DNASTAR)又はMUSCLEソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュ
ータソフトウェアを用いて達成することができる。当業者は、比較される配列の完全長に
わたって最大のアラインメントを得るのに必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメ
ント評価用の適切なパラメーターを決定することができる。しかしながら、本明細書の目
的のために、アミノ酸配列同一性%の値は、配列比較コンピュータプログラムMUSCL
Eを用いて作成される(Edgar,R.C.、Nucleic Acids Rese
arch 32(5):1792-1797、2004;Edgar,R.C.、BMC
Bioinformatics 5(1):113、2004)。
【0064】
ヒトIgGの「CH1ドメイン」(「H1」ドメインの「C1」とも呼ばれる)は、通
常、アミノ酸約118~アミノ酸約215まで延在する(EU番号付けシステム)。
【0065】
別途記載のない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いに縮重
態様であり、同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列を含む。句「タンパ
ク質又はRNAをコードするヌクレオチド配列」は、タンパク質をコードするヌクレオチ
ド配列が、ある態様でイントロンを含む程度まで、イントロンも含んでいてもよい。
【0066】
「作動可能に接続した」との用語は、異種核酸配列の発現をもたらす、制御配列と異種
核酸配列との間の機能的接続を指す。例えば、第1の核酸配列が、第2の核酸配列と機能
的な関係で配置されるとき、第1の核酸配列は、第2の核酸配列と作動可能に接続する。
例えば、プロモーターがコード配列の転写又は発現に影響を与える場合、プロモーターは
、コード配列に作動可能に接続する。一般的に、作動可能に接続したDNA配列は、連続
的であり、2つのタンパク質コード領域を接続することが必要とされる場合、同じリーデ
ィングフレーム内にある。
【0067】
「誘導プロモーター」との用語は、1つ以上の特定のシグナルを加えるか、又は除去す
ることによって活性を制御可能なプロモーターを指す。例えば、誘導プロモーターは、例
えば、プロモーターを活性化させるか、及び/又はプロモーターの抑制を緩和する誘導剤
の存在下、特定の一連の条件下で、作動可能に接続した核酸の転写を活性化できる。
【0068】
本明細書で使用される場合、「治療」又は「治療する」は、臨床結果を含めて有益な結
果又は所望の結果を得るための手法である。本発明の目的のために、有益な又は所望の臨
床結果には、以下のうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない。疾患から生じ
る1つ以上の症状を軽減すること、疾患の程度を低減させること、疾患を安定させること
(例えば、疾患の悪化を防止するか、又は遅らせること)、疾患の広がり(例えば、転移
)を防止するか、又は遅らせること、疾患の再発を防止するか、又は遅らせること、疾患
の進行を遅らせるか、又はゆっくりにすること、疾患状態を軽減すること、疾患の寛解(
部分的又は完全に)をもたらすこと、疾患を治療するために必要な1つ以上の他の医薬の
用量を減らすこと、疾患の進行を遅らせること、生活の質を高めるか、又は向上させるこ
と、体重増加を高めること、及び/又は生存期間を延ばすこと。また、「治療」に包含さ
れるのは、疾患に関する病理学的結果(例えば、癌における腫瘍体積など)の低減である
。本発明の方法は、治療のこれらの態様のうちのいずれか1つ以上を企図する。
【0069】
「再発(recurrence)」、「再発する(relapse)」又は「再発する(relapsed)」と
の用語は、疾患が消失したとする臨床評価の後の癌又は疾患の戻りを指す。遠隔転移又は
局所再発の診断は、再発とみなすことができる。
【0070】
「難治性」又は「抵抗性」との用語は、治療に応答しない癌又は疾患を指す。
【0071】
本明細書に開示されるcaTCR又はcaTCRを含む組成物の「有効量」は、具体的
に記載された目的を実現するのに十分な量である。「有効量」は、経験的に、また、記載
された目的に関連する既知の方法によって決定することができる。
【0072】
「治療に有効な量」との用語は、個体において疾患又は障害を「治療する」のに有効な
、本明細書に開示されるcaTCR又はcaTCRを含む組成物の量を指す。癌の場合、
治療に有効な量の本明細書に開示されるcaTCR又はcaTCRを含む組成物は、癌細
胞の数を低減することができ、腫瘍の大きさ又は重量を小さくすることができ、末梢臓器
への癌細胞浸潤を阻害する(すなわち、ある程度まで遅くさせ、好ましくは停止する)こ
とができ、腫瘍転移を阻害する(すなわち、ある程度まで遅くさせ、好ましくは停止する
)ことができ、腫瘍成長をある程度まで阻害することができ、及び/又は癌に関連する症
状のうち1つ以上をある程度まで緩和することができる。本明細書に開示されるcaTC
R又はcaTCRを含む組成物は、増殖を防止し、及び/又は既存の癌細胞を死滅させる
ことができ、細胞増殖抑制性及び/又は細胞毒性であってもよい。いくつかの実施形態で
は、治療有効量は、増殖抑制量である。いくつかの実施形態では、治療有効量は、患者の
無増悪生存率を改善する量である。ウイルス感染などの感染性疾患の場合、治療に有効な
量の本明細書に開示されるcaTCR又はcaTCRを含む組成物は、病原体に感染した
細胞の数を低減することができ、病原体由来抗原の産生又は放出を低減することができ、
病原体の非感染細胞への伝播を阻害し(すなわち、ある程度遅くさせ、好ましくは停止す
る)、及び/又は感染に関連する1つ以上の症状をある程度緩和することができる。いく
つかの実施形態では、治療有効量は、患者の生存期間を延ばす量である。
【0073】
本明細書で使用されるとき、「医薬的に許容される」又は「薬理的に適合される」は、
生物学的又は非生物学的に望ましくないものではない物質を意味し、例えば、その物質を
、望まれない生物学的影響をほとんど起こさずに、又は、それが含有される組成物の別の
なんらかの構成成分と悪い相互作用をせずに、患者に投与される医薬組成物中に組み込む
ことができる。医薬的に許容される担体又は賦形剤は、好ましくは、必要な毒性学的及び
製造的検査基準を満たしており、並びに/又は、U.S.Food and Drug
administrationが作成したInactive Ingredient G
uideに含まれている。
【0074】
本明細書に記載の本発明の実施形態は、実施形態「からなる」及び/又は「から本質的
になる」を含むことを理解されたい。
【0075】
本明細書に記載の「約」のついた値又はパラメーターへの言及は、値又はパラメーター
自体を対象とする変形を含む(及び記載する)。例えば、「約X」に言及する説明は、「
X」の説明を含む。
【0076】
本明細書で使用するとき、「~されない」などの否定(not)を伴うある値又はパラメ
ーターへの言及は、その値又はパラメーター「以外」が肯定されることを一般に意味し、
記載する。例えば、「方法は、タイプXの癌を治療するのに使用されない」は、「方法は
、X以外のタイプの癌を治療するのに使用される」を意味する。
【0077】
本明細書及び添付の「特許請求の範囲」で使用するとき、単数形の「a」、「or」、
及び「the」は、文脈から単数であることが明確に読み取れる場合を除き、対象の複数
形も含まれるものとする。
キメラ抗体/T細胞受容体(caTCR)構築物
【0078】
一態様では、本発明は、標的抗原に特異的なキメラ抗体/T細胞受容体(caTCR)
であって、標的抗原(細胞表面抗原又はペプチド/MHC複合体など)に特異的に結合し
、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子(例えば、CD3δε、CD3γε及び
/又はζζ)を動員することが可能であり、caTCRが、少なくとも1つの天然に存在
しないTCRドメイン(例えば、天然に存在しないTCR膜貫通ドメイン)を含む、ca
TCRを提供する。例えば、いくつかの実施形態では、TCRMは、1つ又は2つの天然
に存在しないTCR膜貫通ドメインを含む。天然に存在しないTCRドメインは、1つ以
上のアミノ酸の置換により、及び/又は対応するドメインの一部と、別のTCRからの類
似したドメインの一部とを置き換えることにより改変された、天然に存在するTCRの対
応するドメインであってもよい。
【0079】
一態様では、本発明は、2つ以上の標的抗原又はエピトープ(2つの異なる細胞表面抗
原など)に特異的に結合し、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子(例えば、C
D3δε、CD3γε及び/又はζζ)を動員することが可能な、多重特異性caTCR
を提供する。いくつかの実施形態では、多重特異性抗原結合モジュールは、二重可変ドメ
イン(DVD)、クロスオーバー二重可変(CODV)ドメイン、又はscFv-Fab
融合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、多重特異性抗原結合モジュールは、第1
のFv及び第2のFv、第1のscFv及び第2のscFv、又はFab及びscFvを
含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、1つ以上の天然に存在しないTCRドメイ
ン(例えば、天然に存在しないTCR膜貫通ドメイン)を含む。いくつかの実施形態では
、TCRMは、天然に存在しないTCR膜貫通ドメインを含まない。
【0080】
本明細書に記載のcaTCRは、抗原特異性を与える抗原結合モジュール(例えば、単
一特異性又は多重特異性の抗原結合モジュール)と、CD3の動員及びシグナル伝達を可
能にするT細胞受容体モジュール(TCRM)とを含む。抗原結合モジュールは、天然に
存在するT細胞受容体抗原結合部分ではない。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュ
ールは、TCRM中のポリペプチド鎖のアミノ末端に結合している。いくつかの実施形態
では、抗原結合モジュールは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、
Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)である。TCRMは
、αβ及び/又はγδ TCRなどの1つ以上のTCRの膜貫通ドメイン(TCR-TM
)に由来する膜貫通モジュールを含み、場合により、TCRの接続ペプチド又はそのフラ
グメント及び/又は1つ以上のTCR細胞内ドメイン又はそのフラグメントの一方又は両
方を更に含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、2つのポリペプチド鎖を含み、各
ポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシ末端まで、接続ペプチド、膜貫通ドメイン
を含み、場合により、TCR細胞内ドメインを含む。いくつかの実施形態では、caTC
Rは、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とを含み、第1のポリペプチド鎖と
第2のポリペプチド鎖が合わさって抗原結合モジュールとTCRMを形成する。いくつか
の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖は、別個のポリペプチド
鎖であり、caTCRは、多量体(例えば、二量体)である。いくつかの実施形態では、
第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖は、例えば、ペプチド結合によって、又は
別の化学結合(例えば、ジスルフィド結合)によって、共有結合している。いくつかの実
施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖は、少なくとも1つのジスル
フィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、caTCRは、1つ以上のT細
胞共刺激シグナル伝達配列を更に含む。1つ以上の共刺激シグナル伝達配列は、個々に、
例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD4
0、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT
、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンドなどを含め、共刺激分
子の細胞内ドメインの全て又は一部であってもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上
の共刺激シグナル伝達配列は、第1のTCR-TMと第1のTCR細胞内ドメインとの間
、及び/又は第2のTCR-TMと第2のTCR細胞内ドメインとの間にある。いくつか
の実施形態では、1つ以上の共刺激シグナル伝達配列は、第1のTCRD及び/又は第2
のTCRDに対してカルボキシ末端にある。いくつかの実施形態では、caTCRは、第
1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインとを含む安定化モジュールを更に含み、第1
の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化する互いに対する結
合親和性を有する。いくつかの実施形態では、安定化モジュールは、抗原結合モジュール
とTCRMとの間に位置している。いくつかの実施形態では、caTCRは、任意の2つ
のcaTCRモジュール又はドメインの間にスペーサーモジュールを更に含む。いくつか
の実施形態では、スペーサーモジュールは、2つのcaTCRモジュール又はドメインを
接続する1つ以上のペプチドリンカーを含む。
【0081】
本明細書に記載のcaTCRは、天然に存在しない膜貫通ドメインを含むcaTCR及
び多重特異性caTCRを含め、この章に記載の1つ以上の特徴を有し得るものである。
本明細書に記載されるcaTCRのそれぞれの構成要素(例えば、抗原結合モジュール、
TCRD、TCR-TM、スペーサーモジュール、安定化モジュール、T細胞共刺激配列
及び様々なリンカーなど)についての特徴のいずれも、それぞれの組み合わせ及び全ての
組み合わせが個々に記載されているかのように、互いに組み合わせることができることが
意図されている。
【0082】
いくつかの実施形態では、抗原結合モジュール(例えば、抗体部分)は、(a)他の分
子に対する結合親和性の少なくとも約10倍(例えば、少なくとも約10倍、20倍、3
0倍、40倍、50倍、75倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、
750倍、1000倍のいずれか、又はもっと多くを含む)の親和性で標的抗原に特異的
に結合するか、又は(b)他の分子に対する結合のKdの約1/10以下(例えば、1/
10以下、1/20以下、1/30以下、1/40以下、1/50以下、1/75以下、
1/100以下、1/200以下、1/300以下、1/400以下、1/500以下、
1/750以下、1/1000以下のいずれか、又はもっと小さい)のKdで標的抗原に
特異的に結合する。結合親和性は、ELISA、蛍光活性化細胞選別(FACS)分析、
又は放射線免疫沈降アッセイ(RIA)などの当該技術分野において既知の方法によって
求めることができる。Kdは、例えばBiacore機器を利用する表面プラズモン共鳴
(SPR)アッセイ、又は例えばSapidyne装置を利用する動的排除アッセイ(K
inExA)などの当該技術分野で既知の方法によって求めることができる。
【0083】
安定化ドメインの例としては、Fc領域;ヒンジ領域;CH3ドメイン;CH4ドメイ
ン;CH1又はCLドメイン;ロイシンジッパードメイン(例えば、jun/fosロイ
シンジッパードメイン、例えば、Kostelneyら、J.Immunol、148:
1547-1553、1992を参照;又は酵母GCN4ロイシンジッパードメイン);
イソロイシンジッパードメイン;細胞表面受容体(例えば、インターロイキン-8受容体
(IL-8R)を二量体化する二量体化領域;又はLFA-1又はGPIIIb/III
aなどのインテグリンヘテロ二量体);分泌される二量体化リガンドの二量体化領域(例
えば、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、インターロイキ
ン-8(IL-8)、血管内皮増殖因子(VEGF)又は脳由来神経栄養因子(BDNF
);例えば、Arakawaら、J.Biol.Chem.269:27833-278
39、1994及びRadziejewskiら、Biochem.32:1350、1
993);コイル状コイル二量体化ドメイン(例えば、WO2014152878号を参
照;Fletcherら、ACS Synth.Biol.1:240-250、201
2;及びThomasら、J.Am.Chem.Soc.135(13):5161-5
166、2013を参照);ポリペプチドと、少なくとも1つのシステイン残基を含む第
2のポリペプチドとの間にジスルフィド結合を形成し得るような、少なくとも1つのシス
テイン残基(例えば、約1、2又は3個から約10個までのシステイン残基)を含むポリ
ペプチドが挙げられる。
【0084】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のTCRMは、(a)第1のTCR膜貫通ド
メイン(TCR-TM)を含む第1のT細胞受容体ドメイン(TCRD)と、(b)第2
のTCR-TMを含む第2のTCRDとを含み、TCRMが、少なくとも1つのTCR関
連シグナル伝達分子の動員を促進し、第1のTCR-TM及び第2のTCR-TMが、天
然に存在するものである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のTCRMは、(a
)第1のTCR膜貫通ドメイン(TCR-TM)を含む第1のT細胞受容体ドメイン(T
CRD)と、(b)第2のTCR-TMを含む第2のTCRDとを含み、TCRMが、少
なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を促進し、第1のTCR-TM及び第
2のTCR-TMが、天然に存在しないものである。いくつかの実施形態では、TCR-
TMは両方とも、天然に存在しないものである。いくつかの実施形態では、第1のTCR
-TMは、天然に存在するT細胞受容体(例えば、αβTCR又はγδTCR)の膜貫通
ドメインの1つに由来し、第2のTCR-TMは、天然に存在するT細胞受容体の他の膜
貫通ドメインに由来する。いくつかの実施形態では、TCRMは、天然に存在するT細胞
受容体の膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナ
ル伝達分子の動員を強化することができる。TCR関連シグナル伝達分子の動員は、TC
R-CD3複合体表面発現のFACS分析、又はCD3サブユニットとcaTCRとの同
時免疫沈降など、当該技術分野において既知の方法によって求めることができる。
【0085】
例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のTCRMの第1のTCR-TMは
、TCRα鎖の膜貫通ドメイン(例えば、GenBank寄託番号:CCI73895)
又はその多様体を含むか、これらから本質的になり、又はこれらからなり、TCRMの第
2のTCR-TMは、TCRβ鎖の膜貫通ドメイン(例えば、GenBank寄託番号:
CCI73893)又はその多様体を含むか、これらから本質的になり、又はこれらから
なる。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TMは、TCRδ鎖の膜貫通ドメイン(
例えば、GenBank寄託番号:AAQ57272)又はその多様体を含むか、これら
から本質的になり、又はこれらからなり、第2のTCR-TMは、TCRγ鎖の膜貫通ド
メイン(例えば、GenBank寄託番号:AGE91788)又はその多様体を含むか
、これらから本質的になり、又はこれらからなる。いくつかの実施形態では、本明細書に
記載のTCRMの第1のTCR-TM及び第2のTCR-TMは、それぞれ、TCRα鎖
定常ドメイン(例えば、配列番号1)の膜貫通ドメイン又はその多様体及びTCRβ鎖定
常ドメイン(例えば、配列番号2)の膜貫通ドメイン又はその多様体を含むか、これらか
ら本質的になり、又はこれらからなる。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM及
び第2のTCR-TMは、それぞれ、TCRδ鎖定常ドメイン(例えば、配列番号3)の
膜貫通ドメイン又はその多様体及びTCRγ鎖定常ドメイン(例えば、配列番号4)の膜
貫通ドメイン又はその多様体を含むか、これらから本質的になり、又はこれらからなる。
いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM及び第2のTCR-TMは、それぞれ、配
列番号5及び6のアミノ酸配列、又はその多様体を含むか、これらから本質的になり、又
はこれらからなる。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM及び第2のTCR-T
Mは、それぞれ、配列番号7及び8のアミノ酸配列、又はその多様体を含むか、これらか
ら本質的になり、又はこれらからなる。膜貫通ドメインの多様体としては、限定されない
が、参照配列と比較して、1つ以上のアミノ酸置換を有する膜貫通ドメインが挙げられる
。いくつかの実施形態では、多様体膜貫通ドメインは、参照配列と比較して、5個以下の
アミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、膜貫通ドメインに対
してアミノ末端に第1の接続ペプチドを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、膜貫通
ドメインに対してアミノ末端に第2の接続ペプチドを更に含む。いくつかの実施形態では
、第1の接続ペプチドは、第1のTCR-TMの由来となるTCRサブユニットの接続ペ
プチドの全て又は一部、又はその多様体を含み、及び/又は第2の接続ペプチドは、第2
のTCR-TMの由来となるTCRサブユニットの接続ペプチドの全て又は一部、又はそ
の多様体を含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチド及び第2の接続ペプチド
は、それぞれ、TCRα鎖定常ドメイン(配列番号1)の接続ペプチドの全て又は一部、
又はその多様体及びTCRβ鎖定常ドメイン(配列番号2)の接続ペプチドの全て又は一
部、又はその多様体を含むか、これらから本質的になり、又はこれらからなる。いくつか
の実施形態では、第1の接続ペプチド及び/又は第2の接続ペプチドは、それぞれ、配列
番号27又は28の接続ペプチドの全て又は一部、又はその多様体及び配列番号29又は
30の接続ペプチドの全て又は一部、又はその多様体を含むか、これらから本質的になる
か、又はそれらからなる。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチド及び/又は第2
の接続ペプチドは、それぞれ、TCRδ鎖定常ドメイン(例えば、配列番号3)の接続ペ
プチドの全て又は一部、又はその多様体及びTCRγ鎖定常ドメイン(例えば、配列番号
4)の接続ペプチドの全て又は一部、又はその多様体を含むか、これらから本質的になり
、又はこれらからなる。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチド及び/又は第2の
接続ペプチドは、それぞれ、配列番号31又は32の接続ペプチドの全て又は一部、又は
その多様体及び配列番号33又は34の接続ペプチドの全て又は一部、又はその多様体を
含むか、これらから本質的になるか、又はそれらからなる。いくつかの実施形態では、第
1のTCRDは、第1のTCR-TMに対してカルボキシ末端に第1のTCR細胞内ドメ
インを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR-TMに対してカルボキシ
末端に第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR
細胞内ドメインは、第1のTCR-TMの由来となるTCRサブユニットの細胞内ドメイ
ンの全て又は一部、又はその多様体を含み、及び/又は第2のTCR細胞内ドメインは、
第2のTCR-TMの由来となるTCRサブユニットの細胞内ドメインの全て又は一部、
又はその多様体を含む。いくつかの実施形態では、第2のTCR細胞内ドメインは、配列
番号35~36のアミノ酸配列又はその多様体のうち、いずれか1つを含む。いくつかの
実施形態では、第1のTCRDは、天然に存在するTCRの1つの鎖のフラグメント又は
その多様体であり、及び/又は第2のTCRDは、天然に存在するTCRの他の鎖のフラ
グメント又はその多様体である。いくつかの実施形態では、TCRDのうち少なくとも1
つは、天然に存在しない。いくつかの実施形態では、第1のTCRDと第2のTCRDは
、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第1のTCRDと第2
のTCRDは、第1の接続ペプチド中の残基と第2の接続ペプチド中の残基との間のジス
ルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、C
D3γε及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分
子を動員することが可能である。いくつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、C
D3γε及びζζのそれぞれを動員して、caTCR-CD3複合体を形成することが可
能である(すなわち、caTCR-CD3複合体形成を促進する)。
【0086】
想定されるcaTCR構築物としては、例えば、細胞表面抗原に特異的に結合するca
TCR、細胞表面提示ペプチド/MHC複合体に特異的に結合するcaTCR、及び細胞
表面抗原と細胞表面提示ペプチド/MHC複合体の両方に特異的に結合するcaTCRが
挙げられる。
【0087】
いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、Fab、Fab’、(Fab’)2
、Fv又は単鎖Fv(scFv)からなる群から選択される抗体部分である。いくつかの
実施形態では、抗体部分は、単一特異性である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、
多重特異性である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、二重特異性である。いくつか
の実施形態では、抗体部分は、タンデムscFv、ダイアボディ(Db)、単鎖ダイアボ
ディ(scDb)、二重親和性再標的化(DART)抗体、二重可変ドメイン(DVD)
抗体、化学的に架橋した抗体、ヘテロ多量体抗体又はヘテロコンジュゲート抗体である。
いくつかの実施形態では、抗体部分は、ペプチドリンカーによって結合した2つのscF
vを含むタンデムscFvである。いくつかの実施形態では、抗体部分は、直接的に結合
していない2つのscFvである。いくつかの実施形態では、抗体部分は、完全にヒトの
もの、ヒト抗体フレームワーク領域を有する半合成のもの、又はヒト化されたものである
。
【0088】
いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、VH抗体ドメインを含む第1の抗原
結合ドメインと、VL抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインとを含む。いくつかの
実施形態では、VH抗体ドメイン及びVL抗体ドメインのCDRは、同じ抗体部分に由来
する。いくつかの実施形態では、VH抗体ドメイン及びVL抗体ドメインのCDRの一部
は、異なる抗体部分に由来する。いくつかの実施形態では、VH抗体ドメイン及び/又は
VL抗体ドメインは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成、又は完全に合成されたものである
。
【0089】
いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、完全なヒト配列と1つ以上の合成領
域とを含む、半合成の抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは
、完全なヒトVLと、完全なヒトFR1、HC-CDR1、FR2、HC-CDR2、F
R3及びFR4領域と合成HC-CDR3とを含む半合成VHとを含む、半合成の抗体部
分である。いくつかの実施形態では、半合成VHは、約5~約25(例えば、約5、6、
7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、2
1、22、23、24又は25のいずれか)のアミノ酸長の配列を含む、完全に合成のH
C-CDR3を含む。いくつかの実施形態では、半合成VH又は合成HC-CDR3は、
約5~約25(例えば、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、
16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25のいずれか)のアミノ
酸長の配列を含む完全に合成のHC-CDR3を含む、半合成ライブラリー(例えば、半
合成ヒトライブラリー)から得られ、この配列中のそれぞれのアミノ酸は、互いに独立し
て、システインを除く標準的なヒトアミノ酸から無作為に選択される。いくつかの実施形
態では、合成HC-CDR3は、約10~約19(例えば、10、11、12、13、1
4、15、16、17、18又は19のいずれか)のアミノ酸長である。いくつかの実施
形態では、抗原結合モジュールは、半合成VLと半合成VHとを含む、半合成抗体部分で
ある。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、固定されたヒトVH/VLフレ
ームワーク対を含むが、重鎖及び軽鎖両方の6個のCDR全てについて無作為な合成配列
を含む、完全に合成の抗体部分である。
【0090】
抗原結合モジュールは、いくつかの実施形態では、1つ以上の抗体部分(例えば、モノ
クローナル抗体)に由来する特定のCDR配列、又は1つ以上のアミノ酸置換を含むこの
ような配列の特定の多様体を含む、抗体部分である。いくつかの実施形態では、多様体配
列中のアミノ酸置換は、抗原結合モジュールが標的抗原に結合する能力を実質的に低下さ
せない。標的抗原結合親和性を実質的に改善するか、又は標的抗原の関連する多様体との
特異性及び/又は交差反応性などのいくつかの他の特性に影響を与える改変も想定される
。
【0091】
いくつかの実施形態では、安定化モジュールは、抗体部分に由来する。例えば、いくつ
かの実施形態では、安定化モジュールは、CH1抗体ドメイン又はその多様体を含む第1
の安定化ドメインと、CL抗体ドメイン又はその多様体を含む第2の安定化ドメインとを
含む。別の実施形態では、安定化モジュールは、CH3抗体ドメイン又はその多様体を含
む第1の安定化ドメインと、CH3抗体ドメイン又はその多様体を含む第2の安定化ドメ
インとを含む。いくつかの実施形態では、安定化モジュールに含まれる抗体重鎖定常ドメ
イン(例えば、CH1又はCH3)は、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3
又はIgG4)、IgA(例えば、IgA1又はIgA2)、IgD、IgM又はIgE
重鎖、場合により、ヒトに由来する。いくつかの実施形態では、安定化モジュールに含ま
れる抗体重鎖定常ドメイン(例えば、CH1又はCH3)は、その由来となる配列と比較
して、1つ以上の改変(例えば、アミノ酸置換、挿入及び/又は欠失)を含む多様体であ
る。いくつかの実施形態では、安定化モジュールに含まれる抗体軽鎖定常ドメイン(CL
)は、κ軽鎖又はλ軽鎖に由来し、場合により、ヒトのものに由来する。いくつかの実施
形態では、安定化モジュールに含まれる抗体軽鎖定常ドメイン(例えば、CL)は、その
由来となる配列と比較して、1つ以上の改変(例えば、アミノ酸置換、挿入及び/又は欠
失)を含む多様体である。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメイン及び/又は第
2の安定化ドメインは、互いに対する結合親和性を実質的に変えない1つ以上の改変を含
む。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメイン及び/又は第2の安定化ドメインは
、互いに対する結合親和性を高め、及び/又は天然に存在しないジスルフィド結合を導入
する1つ以上の改変を含む。いくつかの実施形態では、安定化モジュールは、穴にノブを
入れる(knob-into-hole)改変を含む(例えば、Carter P.J Immunol
Methods.248:7-15、2001を参照)。例えば、いくつかの実施形態
では、安定化モジュールは、穴にノブを入れる改変を含む抗体定常ドメイン領域(例えば
、CH3ドメイン)を含む。いくつかの実施形態では、安定化モジュールは、その会合を
高めるための静電的ステアリングによって改変された抗体定常ドメイン領域(例えば、C
H3ドメイン)を含む(例えば、WO2006106905号及びGunasekara
n Kら、J Biol Chem.285:19637-46、2010を参照)。い
くつかの実施形態では、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインは、ジスルフィド
結合によって結合する。
【0092】
いくつかの実施形態では、caTCRは、本明細書に記載のTCRMに結合する本明細
書に記載の抗原結合モジュールを含み、場合により、安定化モジュールを含む。例えば、
いくつかの実施形態では、caTCRは、TCRDの一方又は両方のN末端に結合した抗
原結合モジュールを含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、TCRMと抗原結合
モジュールとの間に安定化モジュールを含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、
任意の2つのcaTCRモジュール又はドメインの間にスペーサーモジュールを更に含む
。いくつかの実施形態では、スペーサーモジュールは、約5~約70(例えば、5、10
、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65又は70のいず
れか、これらの値の間にある任意の範囲を含む)のアミノ酸長の1つ以上のペプチドリン
カーを含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、1つ以上のアクセサリー細胞内ド
メインを更に含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のアクセサリー細胞内ドメインは
、第1のTCRD及び/又は第2のTCRDに対してカルボキシ末端にある。いくつかの
実施形態では、1つ以上のアクセサリー細胞内ドメインは、第1のTCR-TMと第1の
TCR細胞内ドメインとの間、及び/又は第2のTCR-TMと第2のTCR細胞内ドメ
インとの間にある。いくつかの実施形態では、1つ以上のアクセサリー細胞内ドメインは
、個々に、TCR共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、TCR共刺激ドメイ
ンは、免疫共刺激分子(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX
40、CD30、CD40、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD
2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガン
ドなど)の細胞内ドメインの全て又は一部を含む。いくつかの実施形態では、TCR共刺
激ドメインは、配列番号49~51のアミノ酸配列の全て又は一部又はその多様体を含む
。
【0093】
いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、細胞表面抗原に特異的に結合する。
いくつかの実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物及び脂質からなる群か
ら選択される。いくつかの実施形態では、細胞表面抗原は、疾患細胞中で発現される疾患
関連抗原である。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、ペプチドとMHCタ
ンパク質とを含む複合体に特異的に結合する。ペプチド/MHC複合体としては、例えば
、疾患細胞内で発現する疾患関連抗原に由来するペプチドと、MHCタンパク質とを含む
、表面提示複合体が挙げられる。いくつかの実施形態では、完全長疾患関連抗原は、疾患
細胞表面上で通常は発現しない(例えば、疾患関連抗原は、細胞内タンパク質又は分泌タ
ンパク質である)。いくつかの実施形態では、疾患は癌であり、疾患関連抗原は、癌細胞
中で発現される腫瘍関連抗原である。いくつかの実施形態では、腫瘍関連抗原は、癌タン
パク質である。いくつかの実施形態では、癌タンパク質は、癌原遺伝子における変異の結
果であり、癌タンパク質は、変異を含むネオエピトープを含む。例えば、いくつかの実施
形態では、抗原結合モジュールは、細胞表面腫瘍関連抗原(例えば、ネオエピトープを含
む癌タンパク質)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは
、癌細胞表面上で通常は発現しない腫瘍関連抗原(例えば、細胞内抗原又は分泌型の腫瘍
関連抗原)に由来するペプチド(例えば、ネオエピトープを含む癌タンパク質)とMHC
タンパク質とを含む複合体に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、疾患はウイル
ス感染であり、疾患関連抗原は、感染細胞において発現されるウイルス関連抗原である。
例えば、いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、細胞表面ウイルス関連抗原と
特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、ウイルスに感染し
た細胞表面上で通常は発現しないウイルス関連抗原(例えば、細胞内抗原又は分泌型腫瘍
関連抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む複合体に特異的に結合する。
いくつかの実施形態では、caTCR構築物は、約0.1pM~約500nM(例えば、
約0.1pM、1.0pM、10pM、50pM、100pM、500pM、1nM、1
0nM、50nM、100nM又は500nMのいずれか、これらの値の間にある任意の
範囲を含む)のKdで、標的抗原に結合する。
【0094】
いくつかの実施形態では、caTCRは、細胞表面抗原に特異的に結合する抗原結合モ
ジュールを含み、細胞表面抗原は、CD19、CD20、CD22、CD47、GPC-
3、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5D又はFCRL5であり、これらの多様
体又は変異体を含む。全長抗原(例えば、細胞表面抗原)に対する特異的な結合は、「非
MHC制限結合」と呼ばれることがある。
【0095】
いくつかの実施形態では、caTCRは、ペプチドとMHCタンパク質とを含む複合体
に特異的に結合する抗原結合モジュールを含み、このペプチドは、WT-1、AFP、H
PV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1、K
RAS、Histone H3.3及びPSAからなる群から選択されるタンパク質に由
来し、これらの多様体又は変異体を含む。ペプチドとMHCタンパク質とを含む複合体に
対する特異的な結合は、「MHC制限結合」と呼ばれることがある。
【0096】
いくつかの実施形態では、caTCRは、疾患関連抗原(腫瘍関連抗原又はウイルスに
よってコードされる抗原など)に由来するペプチドとMHCクラスIタンパク質とを含む
複合体に特異的に結合する抗原結合モジュールを含み、MHCクラスIタンパク質は、H
LA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F又はHLA-Gである。い
くつかの実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-A、HLA-B又はHL
A-Cである。いくつかの実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aであ
る。いくつかの実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Bである。いくつ
かの実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Cである。いくつかの実施形
態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-A01、HLA-A02、HLA-A0
3、HLA-A09、HLA-A10、HLA-A11、HLA-A19、HLA-A2
3、HLA-A24、HLA-A25、HLA-A26、HLA-A28、HLA-A2
9、HLA-A30、HLA-A31、HLA-A32、HLA-A33、HLA-A3
4、HLA-A36、HLA-A43、HLA-A66、HLA-A68、HLA-A6
9、HLA-A74又はHLA-A80である。いくつかの実施形態では、MHCクラス
Iタンパク質は、HLA-A02である。いくつかの実施形態では、MHCクラスIタン
パク質は、HLA-A*02:01-555、例えば、HLA-A*02:01、HLA
-A*02:02、HLA-A*02:03、HLA-A*02:04、HLA-A*0
2:05、HLA-A*02:06、HLA-A*02:07、HLA-A*02:08
、HLA-A*02:09、HLA-A*02:10、HLA-A*02:11、HLA
-A*02:12、HLA-A*02:13、HLA-A*02:14、HLA-A*0
2:15、HLA-A*02:16、HLA-A*02:17、HLA-A*02:18
、HLA-A*02:19、HLA-A*02:20、HLA-A*02:21、HLA
-A*02:22又はHLA-A*02:24のうち、いずれか1つである。いくつかの
実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-A*02:01である。
【0097】
いくつかの実施形態では、caTCRは、疾患関連抗原(腫瘍関連抗原又はウイルスに
よってコードされる抗原など)に由来するペプチドとMHCクラスIIタンパク質とを含
む複合体に特異的に結合する抗原結合モジュールを含み、MHCクラスIIタンパク質は
、HLA-DP、HLA-DQ又はHLA-DRである。いくつかの実施形態では、MH
CクラスIIタンパク質は、HLA-DPである。いくつかの実施形態では、MHCクラ
スIIタンパク質は、HLA-DQである。いくつかの実施形態では、MHCクラスII
タンパク質は、HLA-DRである。
【0098】
いくつかの実施形態では、caTCR(例えば、単離されたcaTCR)であって、(
a)標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールと、(b)天然に存在するTCR(
例えば、αβTCR又はγδTCR)の膜貫通ドメインに由来する第1のTCR-TM及
び第2のTCR-TMを含むTCRMとを含み、TCRMが、少なくとも1つのTCR関
連シグナル伝達分子を動員することが可能であり、第1のTCR-TM及び/又は第2の
TCR-TMが、天然に存在しないものである、caTCRが提供される。いくつかの実
施形態では、第1のTCR-TM及び第2のTCR-TMは、天然に存在しないものであ
る。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、TCRM中の1つ以上のポリペプ
チド鎖のアミノ末端に結合している。例えば、いくつかの実施形態では、TCRMは、2
つのポリペプチド鎖を含み、抗原結合モジュールは、TCRMポリペプチド鎖の一方又は
両方のアミノ末端に結合している。いくつかの実施形態では、TCRMは、TCR-TM
に対してアミノ末端に、天然に存在するTCRの少なくとも1つの接続ペプチド又はその
フラグメントを更に含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、TCR-TMに対して
カルボキシ末端に、天然に存在するTCRの細胞内ドメイン由来の配列を含む少なくとも
1つのTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、天然に
存在するTCR鎖のフラグメントに由来するTCRDを含む。TCRDのうち少なくとも
1つは、天然に存在しない。いくつかの実施形態では、caTCRは、TCR-TMに対
してカルボキシ末端にT細胞共刺激シグナル伝達分子(例えば、CD27、CD28、4
-1BB(CD137)、OX40、CD30又はCD40由来)を含む少なくとも1つ
のアクセサリー細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュー
ルは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、VH抗体ドメインと、V
L抗体ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、抗体部分は、ヒト、ヒト化、キメラ
、半合成、又は完全に合成されたものである。いくつかの実施形態では、caTCRは、
第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1
の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化する互いに対する結
合親和性を有する。いくつかの実施形態では、安定化モジュールは、安定化ドメインを結
合する少なくとも1つのジスルフィド結合を含む。いくつかの実施形態では、第1の安定
化ドメイン及び第2の安定化ドメインは、CH1及びCL抗体ドメインなどの抗体部分、
又はその多様体を含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γε
及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員
することが可能である。いくつかの実施形態では、TCRMは、天然に存在するT細胞受
容体膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝
達分子の動員を強化することを可能にする。いくつかの実施形態では、TCRMは、ca
TCR-CD3複合体の形成を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つのcaT
CRモジュール又はドメインの間にスペーサーモジュールが存在する。いくつかの実施形
態では、caTCRは、ヘテロ多量体(例えば、ヘテロ二量体)である。例えば、いくつ
かの実施形態では、caTCRは、第1のTCRDを含む第1のポリペプチド鎖と第2の
TCRDを含む第2のポリペプチド鎖とを含むヘテロ二量体であり、抗原結合モジュール
は、第1のポリペプチド鎖及び/又は第2のポリペプチド鎖に結合している。いくつかの
実施形態では、抗原結合モジュールは、多重特異性(例えば、二重特異性)である。
【0099】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRであって、(a)天
然に存在するTCRの膜貫通ドメインの1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1の
TCRDと天然に存在するTCRの他の膜貫通ドメインに由来する第2のTCR-TMを
含む第2のTCRDを含み、第1のTCRDと第2のTCRDが、少なくとも1つのTC
R関連シグナル伝達分子を動員することが可能なTCRMを形成し、第1のTCR-TM
及び/又は第2のTCR-TMが、天然に存在しないものであり、(b)標的抗原に特異
的に結合する抗原結合モジュールであって、抗原結合モジュールが、第1のTCRD及び
/又は第2のTCRDに結合する、抗原結合モジュールとを含む、caTCRが提供され
る。いくつかの実施形態では、天然に存在するTCRは、αβTCRであり、第1のTC
R-TM及び第2のTCR-TMは、TCRα及びβサブユニット膜貫通ドメインに由来
する。いくつかの実施形態では、天然に存在するTCRは、γδTCRであり、第1のT
CR-TM及び第2のTCR-TMは、TCRγ及びδサブユニット膜貫通ドメインに由
来する。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR接続ペプチド又はそ
のフラグメントを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR接続ペプチド又
はそのフラグメントを更に含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドは、第1
のTCR-TMの由来となるTCRサブユニットの接続ペプチドの全て又は一部、又はそ
の多様体を含み、及び/又は第2の接続ペプチドは、第2のTCR-TMの由来となるT
CRサブユニットの接続ペプチドの全て又は一部、又はその多様体を含む。いくつかの実
施形態では、第1の接続ペプチドと第2の接続ペプチドは、ジスルフィド結合によって結
合する。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更
に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつ
かの実施形態では、第1のTCR細胞内ドメインは、第1のTCR-TMの由来となるT
CRサブユニットの細胞内ドメインに由来する配列を含み、及び/又は第2のTCR細胞
内ドメインは、第2のTCR-TMの由来となるTCRサブユニットの細胞内ドメインに
由来する配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR-TM
の由来となるTCRサブユニットのフラグメントであり、及び/又は第2のTCRDは、
第2のTCR-TMの由来となるTCRサブユニットのフラグメントである。いくつかの
実施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD
28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30又はCD40由来)を含む少なく
とも1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、caTC
Rは、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインとを含む安定化モジュールを更に含
み、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化する互いに
対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメインと第2の安
定化ドメインは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第1の
安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインは、CH1及びCL抗体ドメインなどの抗体部
分、又はその多様体を含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3
γε及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を
動員することが可能である。いくつかの実施形態では、TCRMは、天然に存在するT細
胞受容体膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナ
ル伝達分子の動員を強化することを可能にする。いくつかの実施形態では、TCRMは、
caTCR-CD3複合体の形成を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つのc
aTCRモジュール又はドメインの間にスペーサーモジュールが存在する。いくつかの実
施形態では、抗原結合モジュールは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部
分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)である。いく
つかの実施形態では、抗原結合モジュールは、多重特異性(例えば、二重特異性)である
。
【0100】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRであって、(a)天
然に存在するαβTCRの膜貫通ドメインの1つに由来する第1のTCR-TMと天然に
存在するαβTCRの他の膜貫通ドメインに由来する第2のTCR-TMを含む第2のT
CRDを含み、第1のTCRDと第2のTCRDが、少なくとも1つのTCR関連シグナ
ル伝達分子を動員することが可能なTCRMを形成し、第1のTCR-TM及び/又は第
2のTCR-TMが、天然に存在しないものである、第1のTCRDと、(b)標的抗原
に特異的に結合する抗原結合モジュールであって、抗原結合モジュールが、第1のTCR
D及び/又は第2のTCRDに結合する、抗原結合モジュールとを含む、caTCRが提
供される。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR接続ペプチド又は
そのフラグメントを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR接続ペプチド
又はそのフラグメントを更に含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドは、第
1のTCR-TMの由来となるTCRサブユニットの接続ペプチドの全て又は一部、又は
その多様体を含み、及び/又は第2の接続ペプチドは、第2のTCR-TMの由来となる
TCRサブユニットの接続ペプチドの全て又は一部、又はその多様体を含む。いくつかの
実施形態では、第1の接続ペプチドと第2の接続ペプチドは、ジスルフィド結合によって
結合する。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを
更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いく
つかの実施形態では、第1のTCR細胞内ドメインは、第1のTCR-TMの由来となる
TCRサブユニットの細胞内ドメインに由来する配列を含み、及び/又は第2のTCR細
胞内ドメインは、第2のTCR-TMの由来となるTCRサブユニットの細胞内ドメイン
に由来する配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR-T
Mの由来となるTCRサブユニットのフラグメントであり、及び/又は第2のTCRDは
、第2のTCR-TMの由来となるTCRサブユニットのフラグメントである。いくつか
の実施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、C
D28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30又はCD40由来)を含む少な
くとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、caT
CRは、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含
み、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化する互いに
対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメインと第2の安
定化ドメインは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第1の
安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインは、CH1及びCL抗体ドメインなどの抗体部
分、又はその多様体を含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3
γε及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を
動員することが可能である。いくつかの実施形態では、TCRMは、天然に存在するαβ
T細胞受容体膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シ
グナル伝達分子の動員を強化することを可能にする。いくつかの実施形態では、TCRM
は、caTCR-CD3複合体の形成を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つ
のcaTCRモジュール又はドメインの間にスペーサーモジュールが存在する。いくつか
の実施形態では、抗原結合モジュールは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗
体部分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)である。
いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、多重特異性(例えば、二重特異性)で
ある。
【0101】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRであって、(a)天
然に存在するγδTCRの膜貫通ドメインの1つに由来する第1のTCR-TMと天然に
存在するγδTCRの他の膜貫通ドメインに由来する第2のTCR-TMを含む第2のT
CRDを含み、第1のTCRDと第2のTCRDが、少なくとも1つのTCR関連シグナ
ル伝達分子を動員することが可能なTCRMを形成し、第1のTCR-TM及び/又は第
2のTCR-TMが、天然に存在しないものである、第1のTCRDと、(b)標的抗原
に特異的に結合する抗原結合モジュールであって、抗原結合モジュールが、第1のTCR
D及び/又は第2のTCRDに結合する、抗原結合モジュールとを含む、caTCRが提
供される。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR接続ペプチド又は
そのフラグメントを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR接続ペプチド
又はそのフラグメントを更に含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドは、第
1のTCR-TMの由来となるTCRサブユニットの接続ペプチドの全て又は一部、又は
その多様体を含み、及び/又は第2の接続ペプチドは、第2のTCR-TMの由来となる
TCRサブユニットの接続ペプチドの全て又は一部、又はその多様体を含む。いくつかの
実施形態では、第1の接続ペプチドと第2の接続ペプチドは、ジスルフィド結合によって
結合する。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを
更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いく
つかの実施形態では、第1のTCR細胞内ドメインは、第1のTCR-TMの由来となる
TCRサブユニットの細胞内ドメインに由来する配列を含み、及び/又は第2のTCR細
胞内ドメインは、第2のTCR-TMの由来となるTCRサブユニットの細胞内ドメイン
に由来する配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR-T
Mの由来となるTCRサブユニットのフラグメントであり、及び/又は第2のTCRDは
、第2のTCR-TMの由来となるTCRサブユニットのフラグメントである。いくつか
の実施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、C
D28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30又はCD40由来)を含む少な
くとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、caT
CRは、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含
み、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化する互いに
対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメインと第2の安
定化ドメインは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第1の
安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインは、CH1及びCL抗体ドメインなどの抗体部
分、又はその多様体を含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3
γε及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を
動員することが可能である。いくつかの実施形態では、TCRMは、天然に存在するγδ
T細胞受容体膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シ
グナル伝達分子の動員を強化することを可能にする。いくつかの実施形態では、TCRM
は、caTCR-CD3複合体の形成を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つ
のcaTCRモジュール又はドメインの間にスペーサーモジュールが存在する。いくつか
の実施形態では、抗原結合モジュールは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗
体部分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)である。
いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、多重特異性(例えば、二重特異性)で
ある。
【0102】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRであって、(a)配
列番号1及び配列番号2のアミノ酸配列の1つに含まれる膜貫通ドメインに由来する第1
のTCR-TMを含む第1のTCRDと、他のアミノ酸配列に含まれる膜貫通ドメインに
由来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDを含み、第1のTCRDと第2のTC
RDが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能なTCRM
を形成し、第1のTCR-TM及び/又は第2のTCR-TMが、天然に存在しないもの
であり、(b)標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールであって、抗原結合モジ
ュールが、第1のTCRD及び/又は第2のTCRDに結合する、抗原結合モジュールと
を含む、caTCRが提供される。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1の
TCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第
2のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含む。いくつかの実施形態では、第
1の接続ペプチド及び第2の接続ペプチドは、それぞれ互いに独立して、配列番号1~4
のアミノ酸配列又はこれらの多様体のうちいずれか1つに含まれる接続ペプチドのアミノ
酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチド及び第2の接続ペプチドは
、それぞれ互いに独立して、配列番号27~34又はこれらの多様体のうちいずれか1つ
のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドと第2の接続ペプ
チドは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第1のTCRD
は、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTC
R細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR細胞内ドメイン及
び第2のTCR細胞内ドメインは、それぞれ互いに独立して、配列番号1~4のアミノ酸
配列又はこれらの多様体のうちいずれか1つに含まれる細胞内ドメインのアミノ酸配列を
含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR細胞内ドメイン及び第2のTCR細胞内ド
メインは、それぞれ互いに独立して、配列番号35又は36又はこれらの多様体のアミノ
酸配列を含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列
(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30又はC
D40由来)を含む少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に含む。いくつか
の実施形態では、caTCRは、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインを含む安
定化モジュールを更に含み、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインが、caT
CRを安定化する互いに対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1の安
定化ドメインと第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつか
の実施形態では、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインは、CH1及びCL抗
体ドメインなどの抗体部分、又はその多様体を含む。いくつかの実施形態では、TCRM
は、CD3δε、CD3γε及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR
関連シグナル伝達分子を動員することが可能である。いくつかの実施形態では、TCRM
は、配列番号1及び2に含まれる膜貫通ドメインの配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメ
インを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の再動員
を強化することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3複
合体の形成を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つのcaTCRモジュール又
はドメインの間にスペーサーモジュールが存在する。いくつかの実施形態では、抗原結合
モジュールは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab
’、(Fab’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態では、
抗原結合モジュールは、多重特異性(例えば、二重特異性)である。
【0103】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRであって、(a)配
列番号1及び配列番号2のアミノ酸配列の1つに含まれる膜貫通ドメインに由来する第1
のTCR-TMを含む第1のTCRDと、他のアミノ酸配列に含まれる膜貫通ドメインに
由来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDを含み、TCR-TMの少なくとも1
つが、その由来となるアミノ酸配列と比較して、1つ以上(例えば、2、3、4、5、又
はもっと多く)のアミノ酸置換を含み、第1のTCRDと第2のTCRDが、少なくとも
1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能なTCRMを形成し、(b)標
的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールであって、抗原結合モジュールが、第1の
TCRD及び/又は第2のTCRDに結合する、抗原結合モジュールとを含む、caTC
Rが提供される。いくつかの実施形態では、TCR-TMは、それぞれ互いに独立して、
その由来となるアミノ酸配列と比較して、1つ以上(例えば、2、3、4、5、又はもっ
と多く)のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM及び/又
は第2のTCR-TMは、それぞれ互いに独立して、その由来となるアミノ酸配列と比較
して、5個以下のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、TCR-TMの少なく
とも1つは、その由来となるアミノ酸配列と比較して、単一のアミノ酸置換を含む。いく
つかの実施形態では、TCR-TMは、それぞれ、その由来となるアミノ酸配列と比較し
て、単一のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM中の置換
アミノ酸の少なくとも1つが、caTCRにおいて、第2のTCR-TM中の置換アミノ
酸の少なくとも1つと相互作用し得るように配置される。いくつかの実施形態では、第1
のTCRDは、第1のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含み、及び/又は
第2のTCRDは、第2のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含む。いくつ
かの実施形態では、第1の接続ペプチド及び第2の接続ペプチドは、それぞれ互いに独立
して、配列番号1~4のアミノ酸配列又はこれらの多様体のうちいずれか1つに含まれる
接続ペプチドのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチド及び
第2の接続ペプチドは、それぞれ互いに独立して、配列番号27~34又はこれらの多様
体のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプ
チドと第2の接続ペプチドは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態
では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のT
CRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第1のT
CR細胞内ドメイン及び第2のTCR細胞内ドメインは、それぞれ互いに独立して、配列
番号1~4のアミノ酸配列又はこれらの多様体のうちいずれか1つに含まれる細胞内ドメ
インのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR細胞内ドメイン及び
第2のTCR細胞内ドメインは、それぞれ互いに独立して、配列番号35又は36又はこ
れらの多様体のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、T細胞共
刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX
40、CD30又はCD40由来)を含む少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメイン
を更に含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、第1の安定化ドメインと第2の安
定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1の安定化ドメイン及び第2の安定
化ドメインが、caTCRを安定化する互いに対する結合親和性を有する。いくつかの実
施形態では、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によっ
て結合する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメイン
は、CH1及びCL抗体ドメインなどの抗体部分、又はその多様体を含む。いくつかの実
施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γε及びζζからなる群から選択される少
なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能である。いくつかの実
施形態では、TCRMは、配列番号1及び2に含まれる膜貫通ドメインの配列を有するT
細胞受容体膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグ
ナル伝達分子の再動員を強化することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、
caTCR-CD3複合体の形成を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つのc
aTCRモジュール又はドメインの間にスペーサーモジュールが存在する。いくつかの実
施形態では、抗原結合モジュールは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部
分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)である。いく
つかの実施形態では、抗原結合モジュールは、多重特異性(例えば、二重特異性)である
。
【0104】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRであって、(a)配
列番号1及び配列番号2のアミノ酸配列の1つに含まれる膜貫通ドメインに由来する第1
のTCR-TMを含む第1のTCRDと、他のアミノ酸配列に含まれる膜貫通ドメインに
由来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDを含み、TCR-TMの少なくとも1
つが、配列番号3又は4に含まれる膜貫通ドメインに由来する連続アミノ酸の一部を含む
キメラ配列を含み、第1のTCRDと第2のTCRDが、少なくとも1つのTCR関連シ
グナル伝達分子を動員することが可能なTCRMを形成し、(b)標的抗原に特異的に結
合する抗原結合モジュールであって、抗原結合モジュールが、第1のTCRD及び/又は
第2のTCRDに結合する、抗原結合モジュールとを含む、caTCRが提供される。い
くつかの実施形態では、TCR-TMは、それぞれ互いに独立して、配列番号3又は4に
含まれる膜貫通ドメインに由来する連続アミノ酸の一部を含むキメラ配列を含む。いくつ
かの実施形態では、第1のTCR-TM及び/又は第2のTCR-TMは、それぞれ互い
に独立して、配列番号3又は4に含まれる膜貫通ドメインに由来する約10以下(例えば
、約9、8、7、6、5以下、又はもっと少ない)の連続アミノ酸の一部を含むキメラ配
列を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM中又は第2のTCR-TM中の
キメラ配列は、配列番号3に含まれる膜貫通ドメインに由来し、他方のTCR-TM中の
キメラ配列は、配列番号4に含まれる膜貫通ドメインに由来する。いくつかの実施形態で
は、第1のTCR-TM中のキメラ配列は、第2のTCR-TM中のキメラ配列と相互作
用し得るように配置される。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR
接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のT
CR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含む。いくつかの実施形態では、第1の接
続ペプチド及び第2の接続ペプチドは、それぞれ互いに独立して、配列番号1~4のアミ
ノ酸配列又はこれらの多様体のうちいずれか1つに含まれる接続ペプチドのアミノ酸配列
を含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチド及び第2の接続ペプチドは、それ
ぞれ互いに独立して、配列番号27~34又はこれらの多様体のうちいずれか1つのアミ
ノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドと第2の接続ペプチドは
、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第
1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR細胞
内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR細胞内ドメイン及び第2
のTCR細胞内ドメインは、それぞれ互いに独立して、配列番号1~4のアミノ酸配列又
はこれらの多様体のうちいずれか1つに含まれる細胞内ドメインのアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、第1のTCR細胞内ドメイン及び第2のTCR細胞内ドメイン
は、それぞれ互いに独立して、配列番号35又は36又はこれらの多様体のアミノ酸配列
を含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例え
ば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30又はCD40
由来)を含む少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施
形態では、caTCRは、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインを含む安定化モ
ジュールを更に含み、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインが、caTCRを
安定化する互いに対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ド
メインと第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施
形態では、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインは、CH1及びCL抗体ドメ
インなどの抗体部分、又はその多様体を含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、C
D3δε、CD3γε及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シ
グナル伝達分子を動員することが可能である。いくつかの実施形態では、TCRMは、配
列番号1及び2に含まれる膜貫通ドメインの配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメインを
含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の再動員を強化
することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3複合体の
形成を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つのcaTCRモジュール又はドメ
インの間にスペーサーモジュールが存在する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュ
ールは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(
Fab’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態では、抗原結
合モジュールは、多重特異性(例えば、二重特異性)である。
【0105】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRであって、(a)配
列番号3及び配列番号4のアミノ酸配列の1つに含まれる膜貫通ドメインに由来する第1
のTCR-TMを含む第1のTCRDと、他のアミノ酸配列に含まれる膜貫通ドメインに
由来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDを含み、第1のTCRDと第2のTC
RDが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能なTCRM
を形成し、第1のTCR-TM及び/又は第2のTCR-TMが、天然に存在しないもの
であり、(b)標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールであって、抗原結合モジ
ュールが、第1のTCRD及び/又は第2のTCRDに結合する、抗原結合モジュールと
を含む、caTCRが提供される。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1の
TCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第
2のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含む。いくつかの実施形態では、第
1の接続ペプチド及び第2の接続ペプチドは、それぞれ互いに独立して、配列番号1~4
のアミノ酸配列又はこれらの多様体のうちいずれか1つに含まれる接続ペプチドのアミノ
酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチド及び第2の接続ペプチドは
、それぞれ互いに独立して、配列番号27~34又はこれらの多様体のうちいずれか1つ
のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドと第2の接続ペプ
チドは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第1のTCRD
は、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTC
R細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR細胞内ドメイン及
び第2のTCR細胞内ドメインは、それぞれ互いに独立して、配列番号1~4のアミノ酸
配列又はこれらの多様体のうちいずれか1つに含まれる細胞内ドメインのアミノ酸配列を
含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR細胞内ドメイン及び第2のTCR細胞内ド
メインは、それぞれ互いに独立して、配列番号35又は36又はこれらの多様体のアミノ
酸配列を含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列
(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30又はC
D40由来)を含む少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に含む。いくつか
の実施形態では、caTCRは、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインを含む安
定化モジュールを更に含み、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインが、caT
CRを安定化する互いに対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1の安
定化ドメインと第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつか
の実施形態では、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインは、CH1及びCL抗
体ドメインなどの抗体部分、又はその多様体を含む。いくつかの実施形態では、TCRM
は、CD3δε、CD3γε及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR
関連シグナル伝達分子を動員することが可能である。いくつかの実施形態では、TCRM
は、配列番号3及び4に含まれる膜貫通ドメインの配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメ
インを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の再動員
を強化することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3複
合体の形成を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つのcaTCRモジュール又
はドメインの間にスペーサーモジュールが存在する。いくつかの実施形態では、抗原結合
モジュールは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab
’、(Fab’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態では、
抗原結合モジュールは、多重特異性(例えば、二重特異性)である。
【0106】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRであって、(a)配
列番号3及び配列番号4のアミノ酸配列の1つに含まれる膜貫通ドメインに由来する第1
のTCR-TMを含む第1のTCRDと、他のアミノ酸配列に含まれる膜貫通ドメインに
由来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDを含み、TCR-TMの少なくとも1
つが、その由来となるアミノ酸配列と比較して、1つ以上(例えば、2、3、4、5、又
はもっと多く)のアミノ酸置換を含み、第1のTCRDと第2のTCRDが、少なくとも
1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能なTCRMを形成し、(b)標
的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールであって、抗原結合モジュールが、第1の
TCRD及び/又は第2のTCRDに結合する、抗原結合モジュールとを含む、caTC
Rが提供される。いくつかの実施形態では、TCR-TMは、それぞれ互いに独立して、
その由来となるアミノ酸配列と比較して、1つ以上(例えば、2、3、4、5、又はもっ
と多く)のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM及び/又
は第2のTCR-TMは、それぞれ互いに独立して、その由来となるアミノ酸配列と比較
して、5個以下のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、TCR-TMの少なく
とも1つは、その由来となるアミノ酸配列と比較して、単一のアミノ酸置換を含む。いく
つかの実施形態では、TCR-TMは、それぞれ、その由来となるアミノ酸配列と比較し
て、単一のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM中の置換
アミノ酸の少なくとも1つが、caTCRにおいて、第2のTCR-TM中の置換アミノ
酸の少なくとも1つと相互作用し得るように配置される。いくつかの実施形態では、第1
のTCRDは、第1のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含み、及び/又は
第2のTCRDは、第2のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含む。いくつ
かの実施形態では、第1の接続ペプチド及び第2の接続ペプチドは、それぞれ互いに独立
して、配列番号1~4のアミノ酸配列又はこれらの多様体のうちいずれか1つに含まれる
接続ペプチドのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチド及び
第2の接続ペプチドは、それぞれ互いに独立して、配列番号27~34又はこれらの多様
体のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプ
チドと第2の接続ペプチドは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態
では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のT
CRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第1のT
CR細胞内ドメイン及び第2のTCR細胞内ドメインは、それぞれ互いに独立して、配列
番号1~4のアミノ酸配列又はこれらの多様体のうちいずれか1つに含まれる細胞内ドメ
インのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR細胞内ドメイン及び
第2のTCR細胞内ドメインは、それぞれ互いに独立して、配列番号35又は36又はこ
れらの多様体のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、T細胞共
刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX
40、CD30又はCD40由来)を含む少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメイン
を更に含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、第1の安定化ドメインと第2の安
定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1の安定化ドメイン及び第2の安定
化ドメインが、caTCRを安定化する互いに対する結合親和性を有する。いくつかの実
施形態では、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によっ
て結合する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメイン
は、CH1及びCL抗体ドメインなどの抗体部分、又はその多様体を含む。いくつかの実
施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γε及びζζからなる群から選択される少
なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能である。いくつかの実
施形態では、TCRMは、配列番号3及び4に含まれる膜貫通ドメインの配列を有するT
細胞受容体膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグ
ナル伝達分子の再動員を強化することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、
caTCR-CD3複合体の形成を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つのc
aTCRモジュール又はドメインの間にスペーサーモジュールが存在する。いくつかの実
施形態では、抗原結合モジュールは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部
分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)である。いく
つかの実施形態では、抗原結合モジュールは、多重特異性(例えば、二重特異性)である
。
【0107】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRであって、(a)配
列番号3及び配列番号4のアミノ酸配列の1つに含まれる膜貫通ドメインに由来する第1
のTCR-TMを含む第1のTCRDと、他のアミノ酸配列に含まれる膜貫通ドメインに
由来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDを含み、TCR-TMの少なくとも1
つが、配列番号1又は2に含まれる膜貫通ドメインに由来する連続アミノ酸の一部を含む
キメラ配列を含み、第1のTCRDと第2のTCRDが、少なくとも1つのTCR関連シ
グナル伝達分子を動員することが可能なTCRMを形成し、(b)標的抗原に特異的に結
合する抗原結合モジュールであって、抗原結合モジュールが、第1のTCRD及び/又は
第2のTCRDに結合する、抗原結合モジュールとを含む、caTCRが提供される。い
くつかの実施形態では、TCR-TMは、それぞれ互いに独立して、配列番号1又は2に
含まれる膜貫通ドメインに由来する連続アミノ酸の一部を含むキメラ配列を含む。いくつ
かの実施形態では、第1のTCR-TM及び/又は第2のTCR-TMは、それぞれ互い
に独立して、配列番号1又は2に含まれる膜貫通ドメインに由来する約10以下(例えば
、約9、8、7、6、5以下、又はもっと少ない)の連続アミノ酸の一部を含むキメラ配
列を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM中又は第2のTCR-TM中の
キメラ配列は、配列番号1に含まれる膜貫通ドメインに由来し、他方のTCR-TM中の
キメラ配列は、配列番号2に含まれる膜貫通ドメインに由来する。いくつかの実施形態で
は、第1のTCR-TM中のキメラ配列は、第2のTCR-TM中のキメラ配列と相互作
用し得るように配置される。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR
接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のT
CR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含む。いくつかの実施形態では、第1の接
続ペプチド及び第2の接続ペプチドは、それぞれ互いに独立して、配列番号1~4のアミ
ノ酸配列又はこれらの多様体のうちいずれか1つに含まれる接続ペプチドのアミノ酸配列
を含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチド及び第2の接続ペプチドは、それ
ぞれ互いに独立して、配列番号27~34又はこれらの多様体のうちいずれか1つのアミ
ノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドと第2の接続ペプチドは
、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第
1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR細胞
内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR細胞内ドメイン及び第2
のTCR細胞内ドメインは、それぞれ互いに独立して、配列番号1~4のアミノ酸配列又
はこれらの多様体のうちいずれか1つに含まれる細胞内ドメインのアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、第1のTCR細胞内ドメイン及び第2のTCR細胞内ドメイン
は、それぞれ互いに独立して、配列番号35又は36又はこれらの多様体のアミノ酸配列
を含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例え
ば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30又はCD40
由来)を含む少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施
形態では、caTCRは、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインを含む安定化モ
ジュールを更に含み、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインが、caTCRを
安定化する互いに対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ド
メインと第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施
形態では、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインは、CH1及びCL抗体ドメ
インなどの抗体部分、又はその多様体を含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、C
D3δε、CD3γε及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シ
グナル伝達分子を動員することが可能である。いくつかの実施形態では、TCRMは、配
列番号3及び4に含まれる膜貫通ドメインの配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメインを
含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の再動員を強化
することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3複合体の
形成を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つのcaTCRモジュール又はドメ
インの間にスペーサーモジュールが存在する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュ
ールは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(
Fab’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態では、抗原結
合モジュールは、多重特異性(例えば、二重特異性)である。
【0108】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRであって、(a)配
列番号5及び配列番号6のアミノ酸配列の1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1
のTCRDと、他のアミノ酸配列に由来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDを
含み、第1のTCRDと第2のTCRDが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分
子を動員することが可能なTCRMを形成し、第1のTCR-TM及び/又は第2のTC
R-TMが、天然に存在しないものであり、(b)標的抗原に特異的に結合する抗原結合
モジュールであって、抗原結合モジュールが、第1のTCRD及び/又は第2のTCRD
に結合する、抗原結合モジュールとを含む、caTCRが提供される。いくつかの実施形
態では、第1のTCRDは、第1のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含み
、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に
含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチド及び第2の接続ペプチドは、それぞ
れ互いに独立して、配列番号27~34又はこれらの多様体のうちいずれか1つのアミノ
酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドと第2の接続ペプチドは、
ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1
のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR細胞内
ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR細胞内ドメイン及び第2の
TCR細胞内ドメインは、それぞれ互いに独立して、配列番号35又は36又はこれらの
多様体のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シ
グナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、
CD30又はCD40由来)を含む少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に
含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、第1の安定化ドメインと第2の安定化ド
メインを含む安定化モジュールを更に含み、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメ
インが、caTCRを安定化する互いに対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態
では、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって結合
する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインは、C
H1及びCL抗体ドメインなどの抗体部分、又はその多様体を含む。いくつかの実施形態
では、TCRMは、CD3δε、CD3γε及びζζからなる群から選択される少なくと
も1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能である。いくつかの実施形態
では、TCRMは、配列番号5及び6の配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメインを含む
TCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化するこ
とができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3複合体の形成を
促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つのcaTCRモジュール又はドメインの
間にスペーサーモジュールが存在する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは
、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(Fab
’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態では、抗原結合モジ
ュールは、多重特異性(例えば、二重特異性)である。
【0109】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRであって、(a)配
列番号5及び配列番号6のアミノ酸配列の1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1
のTCRDと、他のアミノ酸配列に由来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDを
含み、TCR-TMの少なくとも1つが、その由来となるアミノ酸配列と比較して、1つ
以上(例えば、2、3、4、5、又はもっと多く)のアミノ酸置換を含み、第1のTCR
Dと第2のTCRDが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが
可能なTCRMを形成し、(b)標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールであっ
て、抗原結合モジュールが、第1のTCRD及び/又は第2のTCRDに結合する、抗原
結合モジュールとを含む、caTCRが提供される。いくつかの実施形態では、TCR-
TMは、それぞれ互いに独立して、その由来となるアミノ酸配列と比較して、1つ以上(
例えば、2、3、4、5、又はもっと多く)のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態
では、第1のTCR-TM及び/又は第2のTCR-TMは、それぞれ互いに独立して、
その由来となるアミノ酸配列と比較して、5個以下のアミノ酸置換を含む。いくつかの実
施形態では、TCR-TMの少なくとも1つは、その由来となるアミノ酸配列と比較して
、単一のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、TCR-TMは、それぞれ、そ
の由来となるアミノ酸配列と比較して、単一のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態
では、第1のTCR-TM中の置換アミノ酸の少なくとも1つが、caTCRにおいて、
第2のTCR-TM中の置換アミノ酸の少なくとも1つと相互作用し得るように配置され
る。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR接続ペプチド又はそのフ
ラグメントを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR接続ペプチド又はそ
のフラグメントを更に含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチド及び第2の接
続ペプチドは、それぞれ互いに独立して、配列番号27~34又はこれらの多様体のうち
いずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドと第
2の接続ペプチドは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第
1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のTCRDは
、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR細胞
内ドメイン及び第2のTCR細胞内ドメインは、それぞれ互いに独立して、配列番号35
又は36又はこれらの多様体のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、caTC
Rは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD
137)、OX40、CD30又はCD40由来)を含む少なくとも1つのアクセサリー
細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、第1の安定化ドメ
インと第2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1の安定化ドメイン
及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化する互いに対する結合親和性を有する
。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインは、ジスルフ
ィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメイン及び第2の
安定化ドメインは、CH1及びCL抗体ドメインなどの抗体部分、又はその多様体を含む
。いくつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γε及びζζからなる群か
ら選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能である
。いくつかの実施形態では、TCRMは、配列番号5及び6の配列を有するT細胞受容体
膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分
子の動員を強化することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-
CD3複合体の形成を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つのcaTCRモジ
ュール又はドメインの間にスペーサーモジュールが存在する。いくつかの実施形態では、
抗原結合モジュールは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab
、Fab’、(Fab’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形
態では、抗原結合モジュールは、多重特異性(例えば、二重特異性)である。
【0110】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRであって、(a)配
列番号5及び配列番号6のアミノ酸配列の1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1
のTCRDと、他のアミノ酸配列に由来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDを
含み、TCR-TMの少なくとも1つが、配列番号7又は8に由来する連続アミノ酸の一
部を含むキメラ配列を含み、第1のTCRDと第2のTCRDが、少なくとも1つのTC
R関連シグナル伝達分子を動員することが可能なTCRMを形成し、(b)標的抗原に特
異的に結合する抗原結合モジュールであって、抗原結合モジュールが、第1のTCRD及
び/又は第2のTCRDに結合する、抗原結合モジュールとを含む、caTCRが提供さ
れる。いくつかの実施形態では、TCR-TMは、それぞれ互いに独立して、配列番号7
又は8に由来する連続アミノ酸の一部を含むキメラ配列を含む。いくつかの実施形態では
、第1のTCR-TM及び/又は第2のTCR-TMは、それぞれ互いに独立して、配列
番号7又は8に由来する約10以下(例えば、約9、8、7、6、5以下、又はもっと少
ない)の連続アミノ酸の一部を含むキメラ配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の
TCR-TM中又は第2のTCR-TM中のキメラ配列は、配列番号7に由来し、他方の
TCR-TM中のキメラ配列は、配列番号8に由来する。いくつかの実施形態では、第1
のTCR-TM中のキメラ配列は、第2のTCR-TM中のキメラ配列と相互作用し得る
ように配置される。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR接続ペプ
チド又はそのフラグメントを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR接続
ペプチド又はそのフラグメントを更に含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチ
ド及び第2の接続ペプチドは、それぞれ互いに独立して、配列番号27~34又はこれら
の多様体のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の接
続ペプチドと第2の接続ペプチドは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実
施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第
2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第
1のTCR細胞内ドメイン及び第2のTCR細胞内ドメインは、それぞれ互いに独立して
、配列番号35又は36又はこれらの多様体のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態
では、caTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4
-1BB(CD137)、OX40、CD30又はCD40由来)を含む少なくとも1つ
のアクセサリー細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、第
1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1の
安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化する互いに対する結合
親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメイ
ンは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメ
イン及び第2の安定化ドメインは、CH1及びCL抗体ドメインなどの抗体部分、又はそ
の多様体を含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γε及びζ
ζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員するこ
とが可能である。いくつかの実施形態では、TCRMは、配列番号5及び6の配列を有す
るT細胞受容体膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連
シグナル伝達分子の動員を強化することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは
、caTCR-CD3複合体の形成を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つの
caTCRモジュール又はドメインの間にスペーサーモジュールが存在する。いくつかの
実施形態では、抗原結合モジュールは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体
部分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)である。い
くつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、多重特異性(例えば、二重特異性)であ
る。
【0111】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRであって、(a)配
列番号7及び配列番号8のアミノ酸配列の1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1
のTCRDと、他のアミノ酸配列に由来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDを
含み、第1のTCRDと第2のTCRDが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分
子を動員することが可能なTCRMを形成し、第1のTCR-TM及び/又は第2のTC
R-TMが、天然に存在しないものであり、(b)標的抗原に特異的に結合する抗原結合
モジュールであって、抗原結合モジュールが、第1のTCRD及び/又は第2のTCRD
に結合する、抗原結合モジュールとを含む、caTCRが提供される。いくつかの実施形
態では、第1のTCRDは、第1のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含み
、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に
含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチド及び第2の接続ペプチドは、それぞ
れ互いに独立して、配列番号27~34又はこれらの多様体のうちいずれか1つのアミノ
酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドと第2の接続ペプチドは、
ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1
のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR細胞内
ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR細胞内ドメイン及び第2の
TCR細胞内ドメインは、それぞれ互いに独立して、配列番号35又は36又はこれらの
多様体のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シ
グナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、
CD30又はCD40由来)を含む少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に
含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、第1の安定化ドメインと第2の安定化ド
メインを含む安定化モジュールを更に含み、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメ
インが、caTCRを安定化する互いに対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態
では、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって結合
する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインは、C
H1及びCL抗体ドメインなどの抗体部分、又はその多様体を含む。いくつかの実施形態
では、TCRMは、CD3δε、CD3γε及びζζからなる群から選択される少なくと
も1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能である。いくつかの実施形態
では、TCRMは、配列番号7及び8の配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメインを含む
TCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化するこ
とができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3複合体の形成を
促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つのcaTCRモジュール又はドメインの
間にスペーサーモジュールが存在する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは
、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(Fab
’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態では、抗原結合モジ
ュールは、多重特異性(例えば、二重特異性)である。
【0112】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRであって、(a)配
列番号7及び配列番号8のアミノ酸配列の1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1
のTCRDと、他のアミノ酸配列に由来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDを
含み、TCR-TMの少なくとも1つが、その由来となるアミノ酸配列と比較して、1つ
以上(例えば、2、3、4、5、又はもっと多く)のアミノ酸置換を含み、第1のTCR
Dと第2のTCRDが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが
可能なTCRMを形成し、(b)標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールであっ
て、抗原結合モジュールが、第1のTCRD及び/又は第2のTCRDに結合する、抗原
結合モジュールとを含む、caTCRが提供される。いくつかの実施形態では、TCR-
TMは、それぞれ互いに独立して、その由来となるアミノ酸配列と比較して、1つ以上(
例えば、2、3、4、5、又はもっと多く)のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態
では、第1のTCR-TM及び/又は第2のTCR-TMは、それぞれ互いに独立して、
その由来となるアミノ酸配列と比較して、5個以下のアミノ酸置換を含む。いくつかの実
施形態では、TCR-TMの少なくとも1つは、その由来となるアミノ酸配列と比較して
、単一のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、TCR-TMは、それぞれ、そ
の由来となるアミノ酸配列と比較して、単一のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態
では、第1のTCR-TM中の置換アミノ酸の少なくとも1つが、caTCRにおいて、
第2のTCR-TM中の置換アミノ酸の少なくとも1つと相互作用し得るように配置され
る。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR接続ペプチド又はそのフ
ラグメントを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR接続ペプチド又はそ
のフラグメントを更に含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチド及び第2の接
続ペプチドは、それぞれ互いに独立して、配列番号27~34又はこれらの多様体のうち
いずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドと第
2の接続ペプチドは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第
1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のTCRDは
、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR細胞
内ドメイン及び第2のTCR細胞内ドメインは、それぞれ互いに独立して、配列番号35
又は36又はこれらの多様体のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、caTC
Rは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD
137)、OX40、CD30又はCD40由来)を含む少なくとも1つのアクセサリー
細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、第1の安定化ドメ
インと第2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1の安定化ドメイン
及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化する互いに対する結合親和性を有する
。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインは、ジスルフ
ィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメイン及び第2の
安定化ドメインは、CH1及びCL抗体ドメインなどの抗体部分、又はその多様体を含む
。いくつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γε及びζζからなる群か
ら選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能である
。いくつかの実施形態では、TCRMは、配列番号7及び8の配列を有するT細胞受容体
膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分
子の動員を強化することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-
CD3複合体の形成を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つのcaTCRモジ
ュール又はドメインの間にスペーサーモジュールが存在する。いくつかの実施形態では、
抗原結合モジュールは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab
、Fab’、(Fab’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形
態では、抗原結合モジュールは、多重特異性(例えば、二重特異性)である。
【0113】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRであって、(a)配
列番号7及び配列番号8のアミノ酸配列の1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1
のTCRDと、他のアミノ酸配列に由来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDを
含み、TCR-TMの少なくとも1つが、配列番号5又は6に由来する連続アミノ酸の一
部を含むキメラ配列を含み、第1のTCRDと第2のTCRDが、少なくとも1つのTC
R関連シグナル伝達分子を動員することが可能なTCRMを形成し、(b)標的抗原に特
異的に結合する抗原結合モジュールであって、抗原結合モジュールが、第1のTCRD及
び/又は第2のTCRDに結合する、抗原結合モジュールとを含む、caTCRが提供さ
れる。いくつかの実施形態では、TCR-TMは、それぞれ互いに独立して、配列番号5
又は6に由来する連続アミノ酸の一部を含むキメラ配列を含む。いくつかの実施形態では
、第1のTCR-TM及び/又は第2のTCR-TMは、それぞれ互いに独立して、配列
番号5又は6に由来する約10以下(例えば、約9、8、7、6、5以下、又はもっと少
ない)の連続アミノ酸の一部を含むキメラ配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の
TCR-TM中又は第2のTCR-TM中のキメラ配列は、配列番号5に由来し、他方の
TCR-TM中のキメラ配列は、配列番号6に由来する。いくつかの実施形態では、第1
のTCR-TM中のキメラ配列は、第2のTCR-TM中のキメラ配列と相互作用し得る
ように配置される。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR接続ペプ
チド又はそのフラグメントを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR接続
ペプチド又はそのフラグメントを更に含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチ
ド及び第2の接続ペプチドは、それぞれ互いに独立して、配列番号27~34又はこれら
の多様体のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の接
続ペプチドと第2の接続ペプチドは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実
施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第
2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第
1のTCR細胞内ドメイン及び第2のTCR細胞内ドメインは、それぞれ互いに独立して
、配列番号35又は36又はこれらの多様体のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態
では、caTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4
-1BB(CD137)、OX40、CD30又はCD40由来)を含む少なくとも1つ
のアクセサリー細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、第
1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1の
安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化する互いに対する結合
親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメイ
ンは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメ
イン及び第2の安定化ドメインは、CH1及びCL抗体ドメインなどの抗体部分、又はそ
の多様体を含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γε及びζ
ζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員するこ
とが可能である。いくつかの実施形態では、TCRMは、配列番号7及び8の配列を有す
るT細胞受容体膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連
シグナル伝達分子の動員を強化することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは
、caTCR-CD3複合体の形成を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つの
caTCRモジュール又はドメインの間にスペーサーモジュールが存在する。いくつかの
実施形態では、抗原結合モジュールは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体
部分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)である。い
くつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、多重特異性(例えば、二重特異性)であ
る。
【0114】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRのいずれかに記載のcaTCR
と、CD3δε、CD3γε及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのシグナ
ル伝達分子とを含む、複合体が提供される。いくつかの実施形態では、複合体は、CD3
δε、CD3γε及びζζのそれぞれを含む。したがって、いくつかの実施形態では、c
aTCR、CD3δε、CD3γε及びζζを含む複合体が提供される。
【0115】
異なる態様は、以下の様々な章で更に詳細に論じられる。
TCR-TM多様体
【0116】
本明細書に記載のcaTCRのTCR-TMは、天然に存在するT細胞受容体に由来す
る。いくつかの実施形態では、TCR-TMのうち少なくとも1つは、天然に存在しない
。天然に存在するT細胞受容体に由来する、天然に存在しないTCR-TMは、1つ以上
のアミノ酸置換によって改変された天然に存在するT細胞受容体に由来する膜貫通ドメイ
ンを含む。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸のうち少なくとも1つは、対応する非
置換残基よりも疎水性である残基で置換される。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸
は、それぞれ、対応する非置換残基よりも疎水性である残基で置換される。いくつかの実
施形態では、置換アミノ酸のうちの少なくとも1つは、CD3への結合に関与するTCR
M中のアミノ酸に対して近位(一次配列で、又は空間的に)である。例えば、いくつかの
実施形態では、置換アミノ酸のうちの少なくとも1つは、CD3への結合に関与するTC
RM中のアミノ酸から、3以下の(例えば、0、1、2又は3の)アミノ酸だけ離れてい
る。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸のうちの少なくとも1つは、CD3への結合
に関与するTCRM中のアミノ酸から、約15(例えば、約14、12、10、8、6、
4、2又は1以下のいずれか)Å以内で離れている。いくつかの実施形態では、置換アミ
ノ酸は、それぞれ、CD3への結合に関与するTCRM中のアミノ酸に対して近位である
。
【0117】
例えば、いくつかの実施形態では、天然に存在するT細胞受容体に由来する、天然に存
在しないTCR-TMは、1つ以上のアミノ酸残基の置換によって改変されたα、β、γ
又はδTCRサブユニットの膜貫通ドメインを含むか、これらから本質的になり、又はこ
れらからなる。いくつかの実施形態では、TCRサブユニットの膜貫通ドメインは、5個
以下のアミノ酸残基の置換によって改変される。いくつかの実施形態では、TCRサブユ
ニットの膜貫通ドメインは、単一のアミノ酸残基の置換によって改変される。いくつかの
実施形態では、置換アミノ酸のうち少なくとも1つは、対応する非置換残基よりも疎水性
である残基で置換される。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸は、それぞれ、対応す
る非置換残基よりも疎水性である残基で置換される。いくつかの実施形態では、置換アミ
ノ酸のうち少なくとも1つは、CD3への結合に関与するTCRM中のアミノ酸に対して
近位である。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸は、それぞれ、CD3への結合に関
与するTCRM中のアミノ酸に対して近位である。
【0118】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載する天然に存在するT細胞受容
体に由来する、天然に存在しないTCR-TMは、1つ以上のアミノ酸残基の置換によっ
て改変される、配列番号1に含まれる膜貫通ドメインのアミノ酸配列(例えば、配列番号
5)を含むαTCRサブユニットの膜貫通ドメインを含むか、これらから本質的になり、
又はこれらからなる。いくつかの実施形態では、αTCRサブユニットの膜貫通ドメイン
は、配列番号1に含まれる膜貫通ドメイン中の5個以下のアミノ酸残基の置換によって改
変される。いくつかの実施形態では、αTCRサブユニットの膜貫通ドメインは、配列番
号1に含まれる膜貫通ドメイン中の単一のアミノ酸残基の置換によって改変される。いく
つかの実施形態では、置換アミノ酸のうち少なくとも1つは、対応する非置換残基よりも
疎水性である残基で置換される。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸は、それぞれ、
対応する非置換残基よりも疎水性である残基で置換される。いくつかの実施形態では、置
換アミノ酸のうち少なくとも1つは、CD3への結合に関与するTCRM中のアミノ酸に
対して近位である。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸は、それぞれ、CD3への結
合に関与するTCRM中のアミノ酸に対して近位である。
【0119】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する天然に存在するT細胞受容体に由来する
、天然に存在しないTCR-TMは、1つ以上のアミノ酸残基の置換によって改変される
、配列番号5のアミノ酸配列を含むαTCRサブユニットの膜貫通ドメインを含むか、こ
れらから本質的になり、又はこれらからなる。いくつかの実施形態では、TCRサブユニ
ットの膜貫通ドメインは、配列番号5中の5個以下のアミノ酸残基の置換によって改変さ
れる。いくつかの実施形態では、αTCRサブユニットの膜貫通ドメインは、配列番号5
中の単一のアミノ酸残基の置換によって改変される。いくつかの実施形態では、置換アミ
ノ酸のうち少なくとも1つは、対応する非置換残基よりも疎水性である残基で置換される
。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸は、それぞれ、対応する非置換残基よりも疎水
性である残基で置換される。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸のうち少なくとも1
つは、CD3への結合に関与するTCRM中のアミノ酸に対して近位である。いくつかの
実施形態では、置換アミノ酸は、それぞれ、CD3への結合に関与するTCRM中のアミ
ノ酸に対して近位である。
【0120】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する天然に存在するT細胞受容体に由来する
、天然に存在しないTCR-TMは、1つ以上のアミノ酸残基の置換によって改変される
、配列番号2に含まれる膜貫通ドメインのアミノ酸配列(例えば、配列番号6)を含むβ
TCRサブユニットの膜貫通ドメインを含むか、これらから本質的になり、又はこれらか
らなる。いくつかの実施形態では、βTCRサブユニットの膜貫通ドメインは、配列番号
2に含まれる膜貫通ドメイン中の5個以下のアミノ酸残基の置換によって改変される。い
くつかの実施形態では、βTCRサブユニットの膜貫通ドメインは、配列番号2に含まれ
る膜貫通ドメイン中の単一のアミノ酸残基の置換によって改変される。いくつかの実施形
態では、置換アミノ酸のうち少なくとも1つは、対応する非置換残基よりも疎水性である
残基で置換される。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸は、それぞれ、対応する非置
換残基よりも疎水性である残基で置換される。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸の
うち少なくとも1つは、CD3への結合に関与するTCRM中のアミノ酸に対して近位で
ある。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸は、それぞれ、CD3への結合に関与する
TCRM中のアミノ酸に対して近位である。
【0121】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する天然に存在するT細胞受容体に由来する
、天然に存在しないTCR-TMは、1つ以上のアミノ酸残基の置換によって改変される
、配列番号6のアミノ酸配列を含むβTCRサブユニットの膜貫通ドメインを含むか、こ
れらから本質的になり、又はこれらからなる。いくつかの実施形態では、βTCRサブユ
ニットの膜貫通ドメインは、配列番号6中の5個以下のアミノ酸残基の置換によって改変
される。いくつかの実施形態では、βTCRサブユニットの膜貫通ドメインは、配列番号
6中の単一のアミノ酸残基の置換によって改変される。いくつかの実施形態では、置換ア
ミノ酸のうち少なくとも1つは、対応する非置換残基よりも疎水性である残基で置換され
る。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸は、それぞれ、対応する非置換残基よりも疎
水性である残基で置換される。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸のうち少なくとも
1つは、CD3への結合に関与するTCRM中のアミノ酸に対して近位である。いくつか
の実施形態では、置換アミノ酸は、それぞれ、CD3への結合に関与するTCRM中のア
ミノ酸に対して近位である。
【0122】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する天然に存在するT細胞受容体に由来する
、天然に存在しないTCR-TMは、1つ以上のアミノ酸残基の置換によって改変される
、配列番号3に含まれる膜貫通ドメインのアミノ酸配列(例えば、配列番号7)を含むδ
TCRサブユニットの膜貫通ドメインを含むか、これらから本質的になり、又はこれらか
らなる。いくつかの実施形態では、δTCRサブユニットの膜貫通ドメインは、配列番号
3に含まれる膜貫通ドメイン中の5個以下のアミノ酸残基の置換によって改変される。い
くつかの実施形態では、δTCRサブユニットの膜貫通ドメインは、配列番号3に含まれ
る膜貫通ドメイン中の単一のアミノ酸残基の置換によって改変される。いくつかの実施形
態では、置換アミノ酸のうち少なくとも1つは、対応する非置換残基よりも疎水性である
残基で置換される。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸は、それぞれ、対応する非置
換残基よりも疎水性である残基で置換される。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸の
うち少なくとも1つは、CD3への結合に関与するTCRM中のアミノ酸に対して近位で
ある。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸は、それぞれ、CD3への結合に関与する
TCRM中のアミノ酸に対して近位である。
【0123】
いくつかの実施形態では、天然に存在しないTCR-TMは、配列番号7中のアミノ酸
配列L4、M6、V12、N15、F245及びL25に対応するアミノ酸中の1つ以上
の置換(例えば、より疎水性の残基を用いた置換)によって改変される、配列番号3に含
まれる膜貫通ドメインのアミノ酸配列(例えば、配列番号7)を含む。いくつかの実施形
態では、天然に存在しないTCR-TMは、配列番号7中のアミノ酸配列V12及びN1
5に対応するアミノ酸中の置換(例えば、より疎水性の残基を用いた置換)によって改変
される、配列番号3に含まれる膜貫通ドメインのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形
態では、天然に存在しないTCR-TMは、配列番号7中の置換L4C、M6V、V12
F、N15S、F245S及びL25Sに対応する1つ以上の置換によって改変される、
配列番号3に含まれる膜貫通ドメインのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、
天然に存在しないTCR-TMは、配列番号7中の置換V12F及びN15Sに対応する
置換によって改変される、配列番号3に含まれる膜貫通ドメインのアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、天然に存在しないTCR-TMは、配列番号9~13のいずれ
か1つのアミノ酸配列を含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する天然に存在するT細胞受容体に由来する
、天然に存在しないTCR-TMは、1つ以上のアミノ酸残基の置換によって改変される
、配列番号7のアミノ酸配列を含むδTCRサブユニットの膜貫通ドメインを含むか、こ
れらから本質的になり、又はこれらからなる。いくつかの実施形態では、δTCRサブユ
ニットの膜貫通ドメインは、配列番号7中の5個以下のアミノ酸残基の置換によって改変
される。いくつかの実施形態では、δTCRサブユニットの膜貫通ドメインは、配列番号
7中の単一のアミノ酸残基の置換によって改変される。いくつかの実施形態では、置換ア
ミノ酸のうち少なくとも1つは、対応する非置換残基よりも疎水性である残基で置換され
る。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸は、それぞれ、対応する非置換残基よりも疎
水性である残基で置換される。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸のうち少なくとも
1つは、CD3への結合に関与するTCRM中のアミノ酸に対して近位である。いくつか
の実施形態では、置換アミノ酸は、それぞれ、CD3への結合に関与するTCRM中のア
ミノ酸に対して近位である。
【0125】
いくつかの実施形態では、天然に存在しないTCR-TMは、配列番号7中のアミノ酸
配列L4、M6、V12、N15、F245及びL25に対応するアミノ酸中の1つ以上
の置換(例えば、より疎水性の残基を用いた置換)によって改変される、配列番号7のア
ミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、天然に存在しないTCR-TMは、配列番
号7中のアミノ酸配列V12及びN15に対応するアミノ酸中の置換(例えば、より疎水
性の残基を用いた置換)によって改変される、配列番号7のアミノ酸配列を含む。いくつ
かの実施形態では、天然に存在しないTCR-TMは、配列番号7中の置換L4C、M6
V、V12F、N15S、F245S及びL25Sに対応する1つ以上の置換によって改
変される、配列番号7のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、天然に存在しな
いTCR-TMは、配列番号7中の置換V12F及びN15Sに対応する置換によって改
変される、配列番号7のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、天然に存在しな
いTCR-TMは、配列番号9~13のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する天然に存在するT細胞受容体に由来する
、天然に存在しないTCR-TMは、1つ以上のアミノ酸残基の置換によって改変される
、配列番号4に含まれる膜貫通ドメインのアミノ酸配列(例えば、配列番号8)を含むγ
TCRサブユニットの膜貫通ドメインを含むか、これらから本質的になり、又はこれらか
らなる。いくつかの実施形態では、γTCRサブユニットの膜貫通ドメインは、配列番号
4に含まれる膜貫通ドメイン中の5個以下のアミノ酸残基の置換によって改変される。い
くつかの実施形態では、γTCRサブユニットの膜貫通ドメインは、配列番号4に含まれ
る膜貫通ドメイン中の単一のアミノ酸残基の置換によって改変される。いくつかの実施形
態では、置換アミノ酸のうち少なくとも1つは、対応する非置換残基よりも疎水性である
残基で置換される。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸は、それぞれ、対応する非置
換残基よりも疎水性である残基で置換される。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸の
うち少なくとも1つは、CD3への結合に関与するTCRM中のアミノ酸に対して近位で
ある。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸は、それぞれ、CD3への結合に関与する
TCRM中のアミノ酸に対して近位である。
【0127】
いくつかの実施形態では、天然に存在しないTCR-TMは、配列番号8中のアミノ酸
配列Y1、Y2、M3、L5、L8、V12、V13、F15、A16、I18、C19
、C20及びC21に対応するアミノ酸中の1つ以上の置換(例えば、より疎水性の残基
を用いた置換)によって改変される、配列番号4に含まれる膜貫通ドメインのアミノ酸配
列(例えば、配列番号8)を含む。いくつかの実施形態では、天然に存在しないTCR-
TMは、配列番号8中のアミノ酸配列Y2、M3、A16及びI18に対応するアミノ酸
中の置換(例えば、より疎水性の残基を用いた置換)によって改変される、配列番号4に
含まれる膜貫通ドメインのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、天然に存在し
ないTCR-TMは、配列番号8中のアミノ酸配列L8、V12及びF15に対応するア
ミノ酸中の置換(例えば、より疎水性の残基を用いた置換)によって改変される、配列番
号4に含まれる膜貫通ドメインのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、天然に
存在しないTCR-TMは、配列番号8中の置換Y1Q、Y2L、Y2I、M3V、M3
I、L5C、L8F、V12F、V13Y、F15S、A16V、A16I、I18V、
I18L、C19M、C20M及びC21Gに対応する1つ以上の置換によって改変され
る、配列番号4に含まれる膜貫通ドメインのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態で
は、天然に存在しないTCR-TMは、配列番号8中の置換Y2L、M3V、A16V及
びI18Vに対応する置換によって改変される、配列番号4に含まれる膜貫通ドメインの
アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、天然に存在しないTCR-TMは、配列
番号8中の置換Y2I、M3I、A16I及びI18Lに対応する置換によって改変され
る、配列番号4に含まれる膜貫通ドメインのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態で
は、天然に存在しないTCR-TMは、配列番号8中の置換L8F、V12F及びF15
Sに対応する置換によって改変される、配列番号4に含まれる膜貫通ドメインのアミノ酸
配列を含む。いくつかの実施形態では、天然に存在しないTCR-TMは、配列番号14
~26のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する天然に存在するT細胞受容体に由来する
、天然に存在しないTCR-TMは、1つ以上のアミノ酸残基の置換によって改変される
、配列番号8のアミノ酸配列を含むγTCRサブユニットの膜貫通ドメインを含むか、こ
れらから本質的になり、又はこれらからなる。いくつかの実施形態では、γTCRサブユ
ニットの膜貫通ドメインは、配列番号8中の5個以下のアミノ酸残基の置換によって改変
される。いくつかの実施形態では、γTCRサブユニットの膜貫通ドメインは、配列番号
8中の単一のアミノ酸残基の置換によって改変される。いくつかの実施形態では、置換ア
ミノ酸のうち少なくとも1つは、対応する非置換残基よりも疎水性である残基で置換され
る。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸は、それぞれ、対応する非置換残基よりも疎
水性である残基で置換される。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸のうち少なくとも
1つは、CD3への結合に関与するTCRM中のアミノ酸に対して近位である。いくつか
の実施形態では、置換アミノ酸は、それぞれ、CD3への結合に関与するTCRM中のア
ミノ酸に対して近位である。
【0129】
いくつかの実施形態では、天然に存在しないTCR-TMは、配列番号8中のアミノ酸
配列Y1、Y2、M3、L5、L8、V12、V13、F15、A16、I18、C19
、C20及びC21に対応するアミノ酸中の1つ以上の置換(例えば、より疎水性の残基
を用いた置換)によって改変される、配列番号8のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施
形態では、天然に存在しないTCR-TMは、配列番号8中のアミノ酸配列Y2、M3、
A16及びI18に対応するアミノ酸中の置換(例えば、より疎水性の残基を用いた置換
)によって改変される、配列番号8のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、天
然に存在しないTCR-TMは、配列番号8中のアミノ酸配列L8、V12及びF15に
対応するアミノ酸中の置換(例えば、より疎水性の残基を用いた置換)によって改変され
る、配列番号8のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、天然に存在しないTC
R-TMは、配列番号8中の置換Y1Q、Y2L、Y2I、M3V、M3I、L5C、L
8F、V12F、V13Y、F15S、A16V、A16I、I18V、I18L、C1
9M、C20M及びC21Gに対応する1つ以上の置換によって改変される、配列番号8
のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、天然に存在しないTCR-TMは、配
列番号8中の置換Y2L、M3V、A16V及びI18Vに対応する置換によって改変さ
れる、配列番号8のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、天然に存在しないT
CR-TMは、配列番号8中の置換Y2I、M3I、A16I及びI18Lに対応する置
換によって改変される、配列番号8のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、天
然に存在しないTCR-TMは、配列番号8中の置換L8F、V12F及びF15Sに対
応する置換によって改変される、配列番号8のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態
では、天然に存在しないTCR-TMは、配列番号14~26のいずれか1つのアミノ酸
配列を含む。
【0130】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRであって、(a)配
列番号7及び9~13のアミノ酸配列のいずれか1つを含むか、これらから本質的になり
、又はこれらからなる第1のTCR-TMを含む第1のTCRDと、配列番号8及び14
~26のアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になり、又はこれらからなる第2のT
CR-TMを含む第2のTCRDとを含み、第1のTCRDと第2のTCRDが、少なく
とも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能なTCRMを形成し、第1
のTCR-TM及び/又は第2のTCR-TMが、天然に存在しないものであり、(b)
標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールであって、抗原結合モジュールが、第1
のTCRD及び/又は第2のTCRDに結合する、抗原結合モジュールとを含む、caT
CRが提供される。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM及び第2のTCR-T
Mは、表2に列挙したcaTCRのいずれかに従って選択される。いくつかの実施形態で
は、第1のTCRDは、第1のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含み、及
び/又は第2のTCRDは、第2のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含む
。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドは、配列番号31又は32のアミノ酸配
列又はその多様体を含み、及び/又は第2の接続ペプチドは、配列番号33又は34のア
ミノ酸配列又はその多様体を含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドと第2
の接続ペプチドは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第1
のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、
第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第2のTCR細胞内
ドメインは、配列番号36のアミノ酸配列又はその多様体を含む。いくつかの実施形態で
は、caTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-
1BB(CD137)、OX40、CD30又はCD40由来)を含む少なくとも1つの
アクセサリー細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、第1
の安定化ドメインと第2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1の安
定化ドメイン及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化する互いに対する結合親
和性を有する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメイン
は、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメイ
ン及び第2の安定化ドメインは、C
H1及びC
L抗体ドメインなどの抗体部分、又はその
多様体を含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γε及びζζ
からなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員すること
が可能である。いくつかの実施形態では、TCRMは、配列番号7及び8の配列を有する
T細胞受容体膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シ
グナル伝達分子の動員を強化することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、
caTCR-CD3複合体の形成を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つのc
aTCRモジュール又はドメインの間にスペーサーモジュールが存在する。いくつかの実
施形態では、抗原結合モジュールは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部
分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)である。
【表2】
抗原結合モジュール
【0131】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいずれかのcaTCRによれば、抗原結合
モジュールは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab
’、(Fab’)2、Fv及び単鎖Fv(scFv)からなる群から選択される。いくつ
かの実施形態では、抗体部分が、第1の抗体部分鎖と第2の抗体部分鎖を含む多量体であ
る場合、caTCRは、第1の抗体部分鎖又は第2の抗体部分鎖に結合した第1のTCR
Dと、他の抗体部分鎖に結合した第2のTCRDとを含む。いくつかの実施形態では、抗
体部分は、限定されないが、CD19、CD20、CD22、CD47、GPC-3、R
OR1、ROR2、BCMA、GPRC5D及びFCRL5を含み、これらの多様体又は
変異体を含む、細胞表面抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗体部分は
、ペプチド/MHC複合体に特異的に結合し、ペプチドは、限定されないが、WT-1、
AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HI
V-1、KRAS、Histone H3.3及びPSAを含み、これらの多様体又は変
異体を含む、タンパク質に由来する。
【0132】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいずれかのcaTCRによれば、抗原結合
モジュールは、CH1とCLドメインとを含む抗体部分である。いくつかの実施形態では
、CH1ドメインは、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)重
鎖に由来し、場合により、ヒトのものに由来する。いくつかの実施形態では、CH1ドメ
インは、その由来となる配列と比較して、1つ以上の改変(例えば、アミノ酸置換、挿入
及び/又は欠失)を含む多様体である。いくつかの実施形態では、CH1ドメインは、配
列番号37~47及び86のいずれか1つ又はその多様体のアミノ酸配列を含む。いくつ
かの実施形態では、CH1ドメインは、配列番号37又はその多様体のアミノ酸配列を含
む。いくつかの実施形態では、CLドメインは、κ又はλ軽鎖に由来し、場合により、ヒ
トのものに由来する。いくつかの実施形態では、CLドメインは、その由来となる配列と
比較して、1つ以上の改変(例えば、アミノ酸置換、挿入及び/又は欠失)を含む多様体
である。いくつかの実施形態では、CLドメインは、配列番号48又は87、又はその多
様体のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CH1及び/又はCLドメインは
、互いに対する結合親和性を実質的に変えない1つ以上の改変を含む。いくつかの実施形
態では、CH1及び/又はCLドメインは、互いに対する結合親和性を高め、及び/又は
天然に存在しないジスルフィド結合を導入する1つ以上の改変を含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合する抗体部分を含む本明細書に記載
のcaTCRのいずれかによれば、抗体部分は、標的抗原に特異的な抗体部分のCDR又
は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン)を含む。いくつかの実施形態では、抗体
部分は、CD19に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVLド
メイン)を含む(例えば、WO2017066136A2号を参照)。いくつかの実施形
態では、抗体部分は、CD19に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び
/又はVLドメイン)(例えば、配列番号54のアミノ酸配列を含むか、これらから本質
的になり、又はこれらからなるVHドメイン、及び/又は配列番号55のアミノ酸配列を
含むか、これらから本質的になり、又はこれらからなるVLドメイン、又はその中に含ま
れるCDR)を含む。いくつかの実施形態では、抗体部分は、CD20に特異的な抗体部
分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン)(例えば、配列番号56の
アミノ酸配列を含むか、これらから本質的になり、又はこれらからなるVHドメイン、及
び/又は配列番号57のアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になり、又はこれらか
らなるVLドメイン、又はその中に含まれるCDR)を含む。いくつかの実施形態では、
抗体部分は、CD22に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はV
Lドメイン)を含む(例えば、その内容が全体的に本明細書に参考として組み込まれる、
2018年3月30日に出願されたUSSN 62/650,955号を参照)。いくつ
かの実施形態では、抗体部分は、CD22に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン
(VH及び/又はVLドメイン)(例えば、配列番号65のアミノ酸配列を含むか、これ
らから本質的になり、又はこれらからなるVHドメイン、及び/又は配列番号69のアミ
ノ酸配列を含むか、これらから本質的になり、又はこれらからなるVLドメイン、又はそ
の中に含まれるCDR)を含む。いくつかの実施形態では、抗体部分は、GPC3に特異
的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン)を含む(例えば
、その内容が全体的に本明細書に参考として組み込まれる、2017年4月26日に出願
されたUSSN 62/490,586号を参照)。いくつかの実施形態では、抗体部分
は、GPC3に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイ
ン)(例えば、配列番号58のアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になり、又はこ
れらからなるVHドメイン、及び/又は配列番号59のアミノ酸配列を含むか、これらか
ら本質的になり、又はこれらからなるVLドメイン、又はその中に含まれるCDR)を含
む。いくつかの実施形態では、抗体部分は、ROR1に特異的な抗体部分のCDR又は可
変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン)を含む(例えば、WO2016/18722
0号及びWO2016/187216号を参照)。いくつかの実施形態では、抗体部分は
、ROR2に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン
)を含む(例えば、WO2016/142768号を参照)。いくつかの実施形態では、
抗体部分は、BCMAに特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はV
Lドメイン)を含む(例えば、WO2016/090327号及びWO2016/090
320号を参照)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、GPRC5Dに特異的な抗体
部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン)を含む(例えば、WO2
016/090329号及びWO2016/090312号を参照)。いくつかの実施形
態では、抗体部分は、FCRL5に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及
び/又はVLドメイン)を含む(例えば、WO2016/090337号を参照)。いく
つかの実施形態では、抗体部分は、WT-1に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイ
ン(VH及び/又はVLドメイン)を含む(例えば、WO2012/135854号、W
O2015/070078号及びWO2015/070061号を参照)。いくつかの実
施形態では、抗体部分は、AFPに特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及
び/又はVLドメイン)を含む(例えば、WO2016/161390号を参照)。いく
つかの実施形態では、抗体部分は、HPV16-E7に特異的な抗体部分のCDR又は可
変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン)を含む(例えば、WO2016/18295
7号を参照)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、NY-ESO-1に特異的な抗体
部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン)を含む(例えば、WO2
016/210365号を参照)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、PRAMEに
特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン)を含む(例
えば、WO2016/191246号を参照)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、
EBV-LMP2Aに特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVL
ドメイン)を含む(例えば、WO2016/201124号を参照)。いくつかの実施形
態では、抗体部分は、KRASに特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び
/又はVLドメイン)を含む(例えば、WO2016/154047号を参照)。いくつ
かの実施形態では、抗体部分は、PSAに特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(
VH及び/又はVLドメイン)を含む(例えば、WO2017/015634号を参照)
。いくつかの実施形態では、抗体部分は、VHドメインとCH1ドメインとを含む1つの
Fab鎖と、VLドメインとCLドメインとを含む別のFab鎖とを含む、Fabである
。いくつかの実施形態では、CH1ドメインは、配列番号37~47及び86のいずれか
1つのアミノ酸配列を含み、及び/又はCLドメインは、配列番号48又は87のアミノ
酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CH1ドメインは、配列番号37のアミノ酸配
列を含むか、これらから本質的になり、又はこれらからなり、CLドメインは、配列番号
48のアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になり、又はこれらからなる。
caTCR構築物
【0134】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRであって、(a)天
然に存在するTCRの膜貫通ドメインの1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1の
TCRDと天然に存在するTCRの他の膜貫通ドメインに由来する第2のTCR-TMを
含む第2のTCRDを含み、第1のTCRDと第2のTCRDが、少なくとも1つのTC
R関連シグナル伝達分子を動員することが可能なTCRMを形成し、第1のTCR-TM
及び/又は第2のTCR-TMが、天然に存在しないものであり、(b)標的抗原に特異
的に結合する抗体部分であって、抗体部分が、第1のTCRD及び/又は第2のTCRD
に結合する、抗体部分とを含む、caTCRが提供される。いくつかの実施形態では、抗
体部分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv及び単鎖Fv(scFv)からなる
群から選択される。いくつかの実施形態では、抗体部分は、限定されないが、CD19、
CD20、CD22、CD47、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC
5D及びFCRL5を含み、これらの多様体又は変異体を含む、細胞表面抗原に特異的に
結合する。いくつかの実施形態では、抗体部分は、ペプチド/MHC複合体に特異的に結
合し、ペプチドは、限定されないが、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ES
O-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1、KRAS、Histone H
3.3及びPSAを含み、これらの多様体又は変異体を含む、タンパク質に由来する。い
くつかの実施形態では、caTCRは、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインを
含む安定化モジュールを更に含み、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインが、
caTCRを安定化する互いに対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、安
定化モジュールは、TCRMと抗体部分との間に位置している。
【0135】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRであって、(a)配
列番号7及び9~13のアミノ酸配列のいずれか1つを含むか、これらから本質的になり
、又はこれらからなる第1のTCR-TMを含む第1のTCRDと、配列番号8及び14
~26のアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になり、又はこれらからなる第2のT
CR-TMを含む第2のTCRDとを含み、第1のTCRDと第2のTCRDが、少なく
とも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能なTCRMを形成し、第1
のTCR-TM及び/又は第2のTCR-TMが、天然に存在しないものであり、(b)
標的抗原に特異的に結合する抗体部分であって、抗体部分が、第1のTCRD及び/又は
第2のTCRDに結合する、抗体部分とを含む、caTCRが提供される。いくつかの実
施形態では、第1のTCR-TM及び第2のTCR-TMは、表2に列挙したcaTCR
のいずれかに従って選択される。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab
’、(Fab’)2、Fv及び単鎖Fv(scFv)からなる群から選択される。いくつ
かの実施形態では、抗体部分は、限定されないが、CD19、CD20、CD22、CD
47、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5D及びFCRL5を含み
、これらの多様体又は変異体を含む、細胞表面抗原に特異的に結合する。いくつかの実施
形態では、抗体部分は、ペプチド/MHC複合体に特異的に結合し、ペプチドは、限定さ
れないが、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EB
V-LMP2A、HIV-1、KRAS、Histone H3.3及びPSAを含み、
これらの多様体又は変異体を含む、タンパク質に由来する。いくつかの実施形態では、第
1のTCRDは、第1のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含み、及び/又
は第2のTCRDは、第2のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含む。いく
つかの実施形態では、第1の接続ペプチドは、配列番号31又は32のアミノ酸配列又は
その多様体を含み、及び/又は第2の接続ペプチドは、配列番号33又は34のアミノ酸
配列又はその多様体を含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドと第2の接続
ペプチドは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第1のTC
RDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2の
TCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第2のTCR細胞内ドメイ
ンは、配列番号36のアミノ酸配列又はその多様体を含む。いくつかの実施形態では、c
aTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB
(CD137)、OX40、CD30又はCD40由来)を含む少なくとも1つのアクセ
サリー細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、第1の安定
化ドメインと第2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1の安定化ド
メイン及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化する互いに対する結合親和性を
有する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインは、ジ
スルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、
CD3γε及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達
分子を動員することが可能である。いくつかの実施形態では、TCRMは、配列番号7及
び8の配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも
1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化することができる。いくつかの実施形態
では、TCRMは、caTCR-CD3複合体の形成を促進する。いくつかの実施形態で
は、任意の2つのcaTCRモジュール又はドメインの間にスペーサーモジュールが存在
する。
【0136】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRであって、(a)第
1のTCR-TMを含む第1のTCRDと第2のTCR-TMを含む第2のTCRDであ
って、第1のTCR-TM及び第2のTCR-TMは、それぞれ、配列番号9及び8、7
及び14、7及び15、7及び16、10及び16、7及び17、7及び18、7及び1
9、7及び20、7及び21、7及び22、11及び23、12及び24、7及び25、
又は13及び26のアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になり、又はこれらからな
り、第1のTCRDと第2のTCRDが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子
を動員することが可能なTCRMを形成し、(b)標的抗原に特異的に結合する抗体部分
であって、抗体部分が、第1のTCRD及び/又は第2のTCRDに結合する、抗体部分
とを含む、caTCRが提供される。例えば、いくつかの実施形態では、標的抗原に特異
的に結合するcaTCRであって、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含むか、これらか
ら本質的になり、又はこれらからなる第1のTCR-TMを含む第1のTCRDと、配列
番号8のアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になり、又はこれらからなる第2のT
CR-TMを含む第2のTCRDとを含み、第1のTCRDと第2のTCRDが、少なく
とも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能なTCRMを形成し、(b
)標的抗原に特異的に結合する抗体部分であって、抗体部分が、第1のTCRD及び/又
は第2のTCRDに結合する、抗体部分とを含む、caTCRが提供される。いくつかの
実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv及び単鎖Fv(s
cFv)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、抗体部分は、限定されな
いが、CD19、CD20、CD22、CD47、GPC-3、ROR1、ROR2、B
CMA、GPRC5D及びFCRL5を含み、これらの多様体又は変異体を含む、細胞表
面抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗体部分は、ペプチド/MHC複
合体に特異的に結合し、ペプチドは、限定されないが、WT-1、AFP、HPV16-
E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1、KRAS、H
istone H3.3及びPSAを含み、これらの多様体又は変異体を含む、タンパク
質に由来する。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR接続ペプチド
又はそのフラグメントを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR接続ペプ
チド又はそのフラグメントを更に含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドは
、配列番号31又は32のアミノ酸配列又はその多様体を含み、及び/又は第2の接続ペ
プチドは、配列番号33又は34のアミノ酸配列又はその多様体を含む。いくつかの実施
形態では、第1の接続ペプチドと第2の接続ペプチドは、ジスルフィド結合によって結合
する。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に
含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつか
の実施形態では、第2のTCR細胞内ドメインは、配列番号36のアミノ酸配列又はその
多様体を含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列
(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30又はC
D40由来)を含む少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に含む。いくつか
の実施形態では、caTCRは、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインを含む安
定化モジュールを更に含み、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインが、caT
CRを安定化する互いに対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1の安
定化ドメインと第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつか
の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γε及びζζからなる群から選択され
る少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能である。いくつか
の実施形態では、TCRMは、配列番号7及び8の配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメ
インを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を
強化することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3複合
体の形成を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つのcaTCRモジュール又は
ドメインの間にスペーサーモジュールが存在する。
【0137】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRであって、(a)配
列番号10のアミノ酸配列を有する第1のTCR-TMを含む第1のTCRDと、配列番
号16のアミノ酸配列を有する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDとを含み、第1
のTCRDと第2のTCRDが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員す
ることが可能なTCRMを形成し、(b)標的抗原に特異的に結合する抗体部分であって
、抗体部分が、第1のTCRD及び/又は第2のTCRDに結合する、抗体部分とを含む
、caTCRが提供される。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’、
(Fab’)2、Fv及び単鎖Fv(scFv)からなる群から選択される。いくつかの
実施形態では、抗体部分は、限定されないが、CD19、CD20、CD22、CD47
、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5D及びFCRL5を含み、こ
れらの多様体又は変異体を含む、細胞表面抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態
では、抗体部分は、ペプチド/MHC複合体に特異的に結合し、ペプチドは、限定されな
いが、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-
LMP2A、HIV-1、KRAS、Histone H3.3及びPSAを含み、これ
らの多様体又は変異体を含む、タンパク質に由来する。いくつかの実施形態では、第1の
TCRDは、第1のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含み、及び/又は第
2のTCRDは、第2のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含む。いくつか
の実施形態では、第1の接続ペプチドは、配列番号31又は32のアミノ酸配列又はその
多様体を含み、及び/又は第2の接続ペプチドは、配列番号33又は34のアミノ酸配列
又はその多様体を含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドと第2の接続ペプ
チドは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第1のTCRD
は、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTC
R細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第2のTCR細胞内ドメインは
、配列番号36のアミノ酸配列又はその多様体を含む。いくつかの実施形態では、caT
CRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(C
D137)、OX40、CD30又はCD40由来)を含む少なくとも1つのアクセサリ
ー細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、第1の安定化ド
メインと第2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1の安定化ドメイ
ン及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化する互いに対する結合親和性を有す
る。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインは、ジスル
フィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD
3γε及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子
を動員することが可能である。いくつかの実施形態では、TCRMは、配列番号7及び8
の配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも1つ
のTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化することができる。いくつかの実施形態では
、TCRMは、caTCR-CD3複合体の形成を促進する。いくつかの実施形態では、
任意の2つのcaTCRモジュール又はドメインの間にスペーサーモジュールが存在する
。
【0138】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRであって、(a)天
然に存在するTCRの膜貫通ドメインの1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1の
TCRDに結合する第1のFab鎖を含む第1の抗原結合ドメインを含む第1のポリペプ
チド鎖と、(b)天然に存在するTCRの他の膜貫通ドメインに由来する第2のTCR-
TMを含む第2のTCRDに結合する第2のFab鎖を含む第2の抗原結合ドメインを含
む第2のポリペプチド鎖とを含み、第1のTCRDと第2のTCRDが、少なくとも1つ
のTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能なTCRMを形成し、第1のTCR
-TM及び/又は第2のTCR-TMが、天然に存在しないものであり、第1のFab鎖
及び第2のFab鎖が、標的抗原に特異的に結合するFab様抗原結合モジュールを形成
する、caTCRが提供される。いくつかの実施形態では、(a)第1のFab鎖は、V
H及びCH1抗体ドメインを含み、第2のFab鎖は、VL及びCL抗体ドメインを含み
、又は(b)第1のFab鎖は、VL及びCL抗体ドメインを含み、第2のFab鎖は、
VH及びCH1抗体ドメインを含む。例えば、いくつかの実施形態では、caTCRは、
(a)第1のTCRDに結合するVH及びCH1抗体ドメインを含む第1のFab鎖を含
む第1のポリペプチド鎖と、(b)第2のTCRDに結合するVL及びCL抗体ドメイン
を含む第2のFab鎖とを含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、(a)第1の
TCRDに結合するVL及びCL抗体ドメインを含む第1のFab鎖と、(b)第2のT
CRDに結合するVH及びCH1抗体ドメインを含む第2のFab鎖とを含む。いくつか
の実施形態では、TCRDの一方又は両方と、それらに結合するFab鎖との間にペプチ
ドリンカーが存在する。いくつかの実施形態では、CH1ドメイン中の残基とCLドメイ
ン中の残基との間にジスルフィド結合が存在する。いくつかの実施形態では、CH1及び
/又はCLドメインは、互いに対するFab鎖の結合親和性を高める1つ以上の改変を含
む。いくつかの実施形態では、CH1とCLドメインが交換されており、その結果、Fa
b鎖の一方がVH及びCL抗体ドメインを含み、他方のFab鎖が、VL及びCH1抗体
ドメインを含む。いくつかの実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、限定されな
いが、CD19、CD20、CD22、CD47、GPC-3、ROR1、ROR2、B
CMA、GPRC5D及びFCRL5を含み、これらの多様体又は変異体を含む、細胞表
面抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、
ペプチド/MHC複合体に特異的に結合し、ペプチドは、限定されないが、WT-1、A
FP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV
-1、KRAS、Histone H3.3及びPSAを含み、これらの多様体又は変異
体を含む、タンパク質に由来する。いくつかの実施形態では、caTCRは、第1の安定
化ドメインと第2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1の安定化ド
メイン及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化する互いに対する結合親和性を
有する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメイン又は第2の安定化ドメインは、
第1のTCRDとその結合したFab鎖との間に位置しており、他の安定化ドメインは、
第2のTCRDとその結合したFab鎖との間に位置している。
【0139】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRであって、(a)配
列番号7及び9~13のアミノ酸配列のいずれか1つを含むか、これらから本質的になり
、又はこれらからなる第1のTCR-TMを含む第1のTCRDに結合する第1のFab
鎖を含む第1の抗原結合ドメインを含む第1のポリペプチド鎖と、(b)配列番号8及び
14~26のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になり、又はこれ
らからなる第2のTCR-TMを含む第2のTCRDに結合する第2のFab鎖を含む第
2の抗原結合ドメインを含む第2のポリペプチド鎖とを含み、第1のTCRDと第2のT
CRDが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能なTCR
Mを形成し、第1のTCR-TM及び/又は第2のTCR-TMが、天然に存在しないも
のであり、第1のFab鎖及び第2のFab鎖が、標的抗原に特異的に結合するFab様
抗原結合モジュールを形成する、caTCRが提供される。いくつかの実施形態では、第
1のTCR-TM及び第2のTCR-TMは、表2に列挙したcaTCRのいずれかに従
って選択される。いくつかの実施形態では、(a)第1のFab鎖は、VH及びCH1抗
体ドメインを含み、第2のFab鎖は、VL及びCL抗体ドメインを含み、又は(b)第
1のFab鎖は、VL及びCL抗体ドメインを含み、第2のFab鎖は、VH及びCH1
抗体ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CH1ドメインは、配列番号37~47
及び86のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、及び/又はCLドメインは、配列番号4
8又は87のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CH1ドメインは、配列番
号37のアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になり、又はこれらからなり、CLド
メインは、配列番号48のアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になり、又はこれら
からなる。いくつかの実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、限定されないが、
CD19、CD20、CD22、CD47、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA
、GPRC5D及びFCRL5を含み、これらの多様体又は変異体を含む、細胞表面抗原
に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ペプチ
ド/MHC複合体に特異的に結合し、ペプチドは、限定されないが、WT-1、AFP、
HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1、
KRAS、Histone H3.3及びPSAを含み、これらの多様体又は変異体を含
む、タンパク質に由来する。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR
接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のT
CR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含む。いくつかの実施形態では、第1の接
続ペプチドは、配列番号31又は32のアミノ酸配列又はその多様体を含み、及び/又は
第2の接続ペプチドは、配列番号33又は34のアミノ酸配列又はその多様体を含む。い
くつかの実施形態では、第1の接続ペプチドと第2の接続ペプチドは、ジスルフィド結合
によって結合する。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ド
メインを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含
む。いくつかの実施形態では、第2のTCR細胞内ドメインは、配列番号36のアミノ酸
配列又はその多様体を含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シグ
ナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、C
D30又はCD40由来)を含む少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に含
む。いくつかの実施形態では、caTCRは、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメ
インを含む安定化モジュールを更に含み、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメイ
ンが、caTCRを安定化する互いに対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態で
は、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって結合す
る。いくつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γε及びζζからなる群
から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能であ
る。いくつかの実施形態では、TCRMは、配列番号7及び8の配列を有するT細胞受容
体膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達
分子の動員を強化することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR
-CD3複合体の形成を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つのcaTCRモ
ジュール又はドメインの間にスペーサーモジュールが存在する。
【0140】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRであって、(a)第
1のTCR-TMを含む第1のTCRDに結合する第1のFab鎖を含む第1の抗原結合
ドメインを含む第1のポリペプチド鎖と、第2のTCR-TMを含む第2のTCRDに結
合する第2のFab鎖を含む第2の抗原結合ドメインを含む第2のポリペプチド鎖とを含
み、第1のTCR-TM及び第2のTCR-TMは、それぞれ、配列番号9及び8、7及
び14、7及び15、7及び16、10及び16、7及び17、7及び18、7及び19
、7及び20、7及び21、7及び22、11及び23、12及び24、7及び25、又
は13及び26のアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になり、又はこれらからなり
、第1のTCRDと第2のTCRDが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を
動員することが可能なTCRMを形成し、第1のFab鎖及び第2のFab鎖が、標的抗
原に特異的に結合するFab様抗原結合モジュールを形成する、caTCRが提供される
。いくつかの実施形態では、(a)第1のFab鎖は、VH及びCH1抗体ドメインを含
み、第2のFab鎖は、VL及びCL抗体ドメインを含み、又は(b)第1のFab鎖は
、VL及びCL抗体ドメインを含み、第2のFab鎖は、VH及びCH1抗体ドメインを
含む。いくつかの実施形態では、CH1ドメインは、配列番号37~47及び86のいず
れか1つのアミノ酸配列を含み、及び/又はCLドメインは、配列番号48又は87のア
ミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CH1ドメインは、配列番号37のアミノ
酸配列を含むか、これらから本質的になり、又はこれらからなり、CLドメインは、配列
番号48のアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になり、又はこれらからなる。いく
つかの実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、限定されないが、CD19、CD
20、CD22、CD47、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5D
及びFCRL5を含み、これらの多様体又は変異体を含む、細胞表面抗原に特異的に結合
する。いくつかの実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ペプチド/MHC複合
体に特異的に結合し、ペプチドは、限定されないが、WT-1、AFP、HPV16-E
7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1、KRAS、Hi
stone H3.3及びPSAを含み、これらの多様体又は変異体を含む、タンパク質
に由来する。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR接続ペプチド又
はそのフラグメントを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR接続ペプチ
ド又はそのフラグメントを更に含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドは、
配列番号31又は32のアミノ酸配列又はその多様体を含み、及び/又は第2の接続ペプ
チドは、配列番号33又は34のアミノ酸配列又はその多様体を含む。いくつかの実施形
態では、第1の接続ペプチドと第2の接続ペプチドは、ジスルフィド結合によって結合す
る。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含
み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの
実施形態では、第2のTCR細胞内ドメインは、配列番号36のアミノ酸配列又はその多
様体を含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(
例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30又はCD
40由来)を含む少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に含む。いくつかの
実施形態では、caTCRは、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインを含む安定
化モジュールを更に含み、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインが、caTC
Rを安定化する互いに対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1の安定
化ドメインと第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの
実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γε及びζζからなる群から選択される
少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能である。いくつかの
実施形態では、TCRMは、配列番号7及び8の配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメイ
ンを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強
化することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3複合体
の形成を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つのcaTCRモジュール又はド
メインの間にスペーサーモジュールが存在する。
【0141】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRであって、(a)配
列番号10のアミノ酸配列を有する第1のTCR-TMを含む第1のTCRDに結合する
第1のFab鎖を含む第1の抗原結合ドメインを含む第1のポリペプチド鎖と、配列番号
16のアミノ酸配列を有する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDに結合する第2の
Fab鎖を含む第2の抗原結合ドメインを含む第2のポリペプチド鎖とを含み、第1のT
CRDと第2のTCRDが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員するこ
とが可能なTCRMを形成し、第1のFab鎖及び第2のFab鎖が、標的抗原に特異的
に結合するFab様抗原結合モジュールを形成する、caTCRが提供される。いくつか
の実施形態では、(a)第1のFab鎖は、VH及びCH1抗体ドメインを含み、第2の
Fab鎖は、VL及びCL抗体ドメインを含み、又は(b)第1のFab鎖は、VL及び
CL抗体ドメインを含み、第2のFab鎖は、VH及びCH1抗体ドメインを含む。いく
つかの実施形態では、CH1ドメインは、配列番号37~47及び86のいずれか1つの
アミノ酸配列を含み、及び/又はCLドメインは、配列番号48又は87のアミノ酸配列
を含む。いくつかの実施形態では、CH1ドメインは、配列番号37のアミノ酸配列を含
むか、これらから本質的になり、又はこれらからなり、CLドメインは、配列番号48の
アミノ酸配列を含むか、これらから本質的になり、又はこれらからなる。いくつかの実施
形態では、Fab様抗原結合モジュールは、限定されないが、CD19、CD20、CD
22、CD47、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5D及びFCR
L5を含み、これらの多様体又は変異体を含む、細胞表面抗原に特異的に結合する。いく
つかの実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ペプチド/MHC複合体に特異的
に結合し、ペプチドは、限定されないが、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-
ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1、KRAS、Histone
H3.3及びPSAを含み、これらの多様体又は変異体を含む、タンパク質に由来する
。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR接続ペプチド又はそのフラ
グメントを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR接続ペプチド又はその
フラグメントを更に含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドは、配列番号3
1又は32のアミノ酸配列又はその多様体を含み、及び/又は第2の接続ペプチドは、配
列番号33又は34のアミノ酸配列又はその多様体を含む。いくつかの実施形態では、第
1の接続ペプチドと第2の接続ペプチドは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつ
かの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/
又は第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態で
は、第2のTCR細胞内ドメインは、配列番号36のアミノ酸配列又はその多様体を含む
。いくつかの実施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、C
D27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30又はCD40由来)
を含む少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態で
は、caTCRは、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインとを含む安定化モジュ
ールを更に含み、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安定
化する互いに対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメイ
ンと第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態
では、TCRMは、CD3δε、CD3γε及びζζからなる群から選択される少なくと
も1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能である。いくつかの実施形態
では、TCRMは、配列番号7及び8の配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメインを含む
TCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化するこ
とができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3複合体の形成を
促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つのcaTCRモジュール又はドメインの
間にスペーサーモジュールが存在する。
【0142】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRであって、(a)天
然に存在するTCRの膜貫通ドメインの1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1の
TCRDと天然に存在するTCRの他の膜貫通ドメインに由来する第2のTCR-TMを
含む第2のTCRDを含み、第1のTCRDと第2のTCRDが、少なくとも1つのTC
R関連シグナル伝達分子を動員することが可能なTCRMを形成し、第1のTCR-TM
及び/又は第2のTCR-TMが、天然に存在しないものであり、(b)標的抗原に特異
的に結合するFab’であって、Fab’が、VH、CH1及び部分的なヒンジ抗体ドメ
インを含む第1のFab’鎖と、VL及びCL抗体ドメインを含む第2のFab’鎖とを
含み、第1のFab’鎖が、第1のTCRD又は第2のTCRDに結合し、第2のFab
’鎖が、他のTCRDに結合する、caTCRが提供される。いくつかの実施形態では、
TCRDの一方又は両方と、それらに結合するFab’鎖との間にペプチドリンカーが存
在する。いくつかの実施形態では、CH1ドメイン中の残基とCLドメイン中の残基との
間にジスルフィド結合が存在する。いくつかの実施形態では、CH1及び/又はCLドメ
インは、互いに対するFab’鎖の結合親和性を高める1つ以上の改変を含む。いくつか
の実施形態では、CH1とCLドメインが交換されており、その結果、第1のFab’鎖
が、VH、CL及び部分的なヒンジ抗体ドメインを含み、第2のFab’鎖が、VL及び
CH1抗体ドメインを含む。いくつかの実施形態では、Fab’は、限定されないが、C
D19、CD20、CD22、CD47、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、
GPRC5D及びFCRL5を含み、これらの多様体又は変異体を含む、細胞表面抗原に
特異的に結合する。いくつかの実施形態では、Fab’は、ペプチド/MHC複合体に特
異的に結合し、ペプチドは、限定されないが、WT-1、AFP、HPV16-E7、N
Y-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1、KRAS、Histo
ne H3.3及びPSAを含み、これらの多様体又は変異体を含む、タンパク質に由来
する。いくつかの実施形態では、caTCRは、第1の安定化ドメインと第2の安定化ド
メインを含む安定化モジュールを更に含み、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメ
インが、caTCRを安定化する互いに対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態
では、第1の安定化ドメイン又は第2の安定化ドメインは、第1のTCRDとその結合し
たFab’鎖との間に位置しており、他の安定化ドメインは、第2のTCRDとその結合
したFab’鎖との間に位置している。
【0143】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRであって、(a)天
然に存在するTCRの膜貫通ドメインの1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1の
TCRDと天然に存在するTCRの他の膜貫通ドメインに由来する第2のTCR-TMを
含む第2のTCRDを含み、第1のTCRDと第2のTCRDが、少なくとも1つのTC
R関連シグナル伝達分子を動員することが可能なTCRMを形成し、第1のTCR-TM
及び/又は第2のTCR-TMが、天然に存在しないものであり、(b)標的抗原に特異
的に結合する(Fab’)2であって、(Fab’)2が、VH、CH1及び部分的なヒ
ンジ抗体ドメインを含む第1の(Fab’)2鎖及び第2の(Fab’)2鎖と、VL及
びCL抗体ドメインを含む第3の(Fab’)2鎖及び第4の(Fab’)2鎖とを含み
、第1の(Fab’)2鎖が、第1のTCRD又は第2のTCRDに結合し、第2の(F
ab’)2鎖が、他のTCRDに結合する、caTCRが提供される。いくつかの実施形
態では、TCRDの一方又は両方と、それらに結合する(Fab’)2鎖との間にペプチ
ドリンカーが存在する。いくつかの実施形態では、CH1ドメイン中の残基とCLドメイ
ン中の残基との間にジスルフィド結合が存在する。いくつかの実施形態では、CH1及び
/又はCLドメインは、互いに対する(Fab’)2鎖の結合親和性を高める1つ以上の
改変を含む。いくつかの実施形態では、CH1とCLドメインが交換されており、その結
果、第1の(Fab’)2鎖及び第2の(Fab’)2鎖が、VH、CL及び部分的なヒ
ンジ抗体ドメインを含み、第3の(Fab’)2鎖及び第4の(Fab’)2鎖が、VL
及びCH1抗体ドメインを含む。いくつかの実施形態では、(Fab’)2は、限定され
ないが、CD19、CD20、CD22、CD47、GPC-3、ROR1、ROR2、
BCMA、GPRC5D及びFCRL5を含み、これらの多様体又は変異体を含む、細胞
表面抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、(Fab’)2は、ペプチド/
MHC複合体に特異的に結合し、ペプチドは、限定されないが、WT-1、AFP、HP
V16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1、KR
AS、Histone H3.3及びPSAを含み、これらの多様体又は変異体を含む、
タンパク質に由来する。いくつかの実施形態では、caTCRは、第1の安定化ドメイン
と第2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1の安定化ドメイン及び
第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化する互いに対する結合親和性を有する。い
くつかの実施形態では、第1の安定化ドメイン又は第2の安定化ドメインは、第1のTC
RDとその結合した(Fab’)2鎖との間に位置しており、他の安定化ドメインは、第
2のTCRDとその結合した(Fab’)2鎖との間に位置している。
【0144】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRであって、(a)天
然に存在するTCRの膜貫通ドメインの1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1の
TCRDと天然に存在するTCRの他の膜貫通ドメインに由来する第2のTCR-TMを
含む第2のTCRDを含み、第1のTCRDと第2のTCRDが、少なくとも1つのTC
R関連シグナル伝達分子を動員することが可能なTCRMを形成し、第1のTCR-TM
及び/又は第2のTCR-TMが、天然に存在しないものであり、(b)標的抗原に特異
的に結合するFvであって、Fvが、VH抗体ドメインを含む第1のFv鎖と、VL抗体
ドメインを含む第2のFv鎖とを含み、第1のFv鎖が、第1のTCRD又は第2のTC
RDに結合し、第2のFv鎖が、他のTCRDに結合する、caTCRが提供される。い
くつかの実施形態では、TCRDの一方又は両方と、それらに結合するFv鎖との間にペ
プチドリンカーが存在する。いくつかの実施形態では、Fvは、限定されないが、CD1
9、CD20、CD22、CD47、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、GP
RC5D及びFCRL5を含み、これらの多様体又は変異体を含む、細胞表面抗原に特異
的に結合する。いくつかの実施形態では、Fvは、ペプチド/MHC複合体に特異的に結
合し、ペプチドは、限定されないが、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ES
O-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1、KRAS、Histone H
3.3及びPSAを含み、これらの多様体又は変異体を含む、タンパク質に由来する。い
くつかの実施形態では、caTCRは、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインを
含む安定化モジュールを更に含み、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインが、
caTCRを安定化する互いに対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第
1の安定化ドメイン又は第2の安定化ドメインは、第1のTCRDとその結合したFv鎖
との間に位置しており、他の安定化ドメインは、第2のTCRDとその結合したFv鎖と
の間に位置している。
【0145】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRであって、(a)天
然に存在するTCRの膜貫通ドメインの1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1の
TCRDと天然に存在するTCRの他の膜貫通ドメインに由来する第2のTCR-TMを
含む第2のTCRDを含み、第1のTCRDと第2のTCRDが、少なくとも1つのTC
R関連シグナル伝達分子を動員することが可能なTCRMを形成し、第1のTCR-TM
及び/又は第2のTCR-TMが、天然に存在しないものであり、(b)標的抗原に特異
的に結合する第1のscFvであって、第1のscFvが、VH及びVL抗体ドメインを
含み、第1のscFvが、第1のTCRD及び/又は第2のTCRDに結合する、抗体部
分とを含む、caTCRが提供される。いくつかの実施形態では、caTCRは、第1の
scFvに結合するか、又は第1のscFvに結合しないTCRDに結合する第2の抗原
結合モジュールを更に含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合モジュールは、標
的抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合モジュールは、標
的抗原以外の抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合モジュ
ールは、第2のscFvである。いくつかの実施形態では、第1のscFvとその結合し
たTCRDとの間、及び/又は第2のscFvとその結合したscFv又はTCRDとの
間にペプチドリンカーが存在する。いくつかの実施形態では、scFvは、限定されない
が、CD19、CD20、CD22、CD47、GPC-3、ROR1、ROR2、BC
MA、GPRC5D及びFCRL5を含み、これらの多様体又は変異体を含む、細胞表面
抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、scFvは、ペプチド/MHC複合
体に特異的に結合し、ペプチドは、限定されないが、WT-1、AFP、HPV16-E
7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1、KRAS、Hi
stone H3.3及びPSAを含み、これらの多様体又は変異体を含む、タンパク質
に由来する。いくつかの実施形態では、caTCRは、第1の安定化ドメインと第2の安
定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1の安定化ドメイン及び第2の安定
化ドメインが、caTCRを安定化する互いに対する結合親和性を有する。いくつかの実
施形態では、第1の安定化ドメイン又は第2の安定化ドメインは、第1のscFvとその
結合したTCRDとの間に位置しており、他の安定化ドメインは、第2のTCRDに結合
している。
【0146】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRであって、(a)天
然に存在するTCRの膜貫通ドメインの1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1の
TCRDと天然に存在するTCRの他の膜貫通ドメインに由来する第2のTCR-TMを
含む第2のTCRDを含み、第1のTCRDと第2のTCRDが、少なくとも1つのTC
R関連シグナル伝達分子を動員することが可能なTCRMを形成し、第1のTCR-TM
及び/又は第2のTCR-TMが、天然に存在しないものであり、(b)標的抗原に特異
的に結合する第1のscFvと、第2のscFvを含み、第1のscFv及び第2のsc
Fvが、VH及びVL抗体ドメインを含み、第1のscFvが、第1のTCRD又は第2
のTCRDに結合し、第2のscFvが、他のTCRDに結合する、caTCRが提供さ
れる。いくつかの実施形態では、第2のTCRDは、標的抗原に特異的に結合する。いく
つかの実施形態では、第2のscFvは、第1のscFvのアミノ酸配列を含むか、これ
らから本質的になり、又はこれらからなる。いくつかの実施形態では、第2のscFvは
、標的抗原以外の抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1のscFv及
び/又は第2のscFvは、独立して、限定されないが、CD19、CD20、CD22
、CD47、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5D及びFCRL5
を含み、これらの多様体又は変異体を含む、細胞表面抗原に特異的に結合する。いくつか
の実施形態では、第1のscFv及び/又は第2のscFvは、独立して、ペプチド/M
HC複合体に特異的に結合し、ペプチドは、限定されないが、WT-1、AFP、HPV
16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1、KRA
S、Histone H3.3及びPSAを含み、これらの多様体又は変異体を含む、タ
ンパク質に由来する。いくつかの実施形態では、caTCRは、第1の安定化ドメインと
第2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1の安定化ドメイン及び第
2の安定化ドメインが、caTCRを安定化する互いに対する結合親和性を有する。いく
つかの実施形態では、第1の安定化ドメイン又は第2の安定化ドメインは、第1のscF
vとその結合したTCRDとの間に位置しており、他の安定化ドメインは、第2のscF
vとその結合したTCRDとの間に位置している。
多重特異性caTCR
【0147】
本出願の一態様は、2つ以上(例えば、2、3、4、又はもっと多く)の異なる標的抗
原又はエピトープに特異的に結合する多重特異性caTCRを提供する。いくつかの実施
形態では、多重特異性caTCRは、2つ以上(例えば、2、3、4、又はもっと多く)
の異なる標的抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、多重特異性caTCR
は、同じ標的抗原上の2つ以上(例えば、2、3、4、又はもっと多く)の異なる標的抗
原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、多重特異性caTCRは、それぞれの
抗原又はエピトープのための抗原結合モジュールを含む。いくつかの実施形態では、多重
特異性caTCRは、少なくとも1つの抗原又はエピトープのための2個より多い抗原結
合モジュールを含む。いくつかの実施形態では、多重特異性caTCRは、抗原又はエピ
トープにそれぞれ特異的に結合する2つ以上(例えば、2、3、4、又はもっと多く)の
抗原結合ドメインを含む多重特異性抗原結合モジュールを含む。いくつかの実施形態では
、多重特異性caTCRは、二重特異性である。いくつかの実施形態では、多重特異性c
aTCRは、三重特異性である。
【0148】
多重特異性分子は、少なくとも2つの異なる抗原又はエピトープに対する結合特異性を
有する分子である(例えば、二重特異性抗体は、2つの抗原又はエピトープに対する結合
特異性を有する)。2より大きい価数及び/又は特異性を有する多重特異性caTCRも
想定される。二重特異性抗体は、例えば、Brinkmann U.及びKonterm
ann R.E.(2017)MABS、9(2)、182-212を参照。三重特異性
抗体を調製することができる。Tuttら、J.Immunol.147:60(199
1)を参照。当業者は、当該技術分野において既知の個々の多重特異性分子の適切な特徴
を選択して、多重特異性caTCRを形成することができることを理解されたい。
【0149】
いくつかの実施形態では、caTCR(本明細書では「多重特異性caTCR」とも呼
ばれる)であって、(a)第1の標的抗原に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと
第2の標的抗原に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む多重特異性(例えば、
二重特異性)抗原結合モジュールと、(b)第1のTCR-TMを含む第1のTCRD(
TCRD1)と第2のTCR-TMを含む第2のTCRD(TCRD2)を含むTCRM
とを含み、TCRMが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を促進する
、caTCRが提供される。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR
接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のT
CR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含む。いくつかの実施形態では、第1の接
続ペプチドは、第1のTCR-TMの由来となるTCRサブユニットの接続ペプチドの全
て又は一部、又はその多様体を含み、及び/又は第2の接続ペプチドは、第2のTCR-
TMの由来となるTCRサブユニットの接続ペプチドの全て又は一部、又はその多様体を
含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドと第2の接続ペプチドは、ジスルフ
ィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR
細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメイン
を更に含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR細胞内ドメインは、第1のTCR-
TMの由来となるTCRサブユニットの細胞内ドメインに由来する配列を含み、及び/又
は第2のTCR細胞内ドメインは、第2のTCR-TMの由来となるTCRサブユニット
の細胞内ドメインに由来する配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、
第1のTCR-TMの由来となるTCRサブユニットのフラグメントであり、及び/又は
第2のTCRDは、第2のTCR-TMの由来となるTCRサブユニットのフラグメント
である。いくつかの実施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例え
ば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30又はCD40
由来)を含む少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施
形態では、caTCRは、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインを含む安定化モ
ジュールを更に含み、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインが、caTCRを
安定化する互いに対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ド
メインと第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施
形態では、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインは、CH1及びCL抗体ドメ
インなどの抗体部分、又はその多様体を含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、C
D3δε、CD3γε及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シ
グナル伝達分子を動員することが可能である。いくつかの実施形態では、TCRMは、天
然に存在するαβT細胞受容体膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも1
つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化することを可能にする。いくつかの実施形
態では、TCRMは、caTCR-CD3複合体の形成を促進する。いくつかの実施形態
では、任意の2つのcaTCRモジュール又はドメインの間にスペーサーモジュールが存
在する。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM及び第2のTCR-TMは、両方
とも天然に存在する。いくつかの実施形態では、TCR-TMのうち少なくとも1つは、
天然に存在しない。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TMは、その由来となる膜
貫通ドメインと比較して5個までのアミノ酸置換(例えば、単一のアミノ酸置換)を含み
、及び/又は第2のTCR-TMは、その由来となる膜貫通ドメインと比較して5個まで
のアミノ酸置換(例えば、単一のアミノ酸置換)を含む。いくつかの実施形態では、第1
のTCR-TM中の置換アミノ酸は、第2のTCR-TM中の置換アミノ酸に対して近位
である。いくつかの実施形態では、1つ以上の置換アミノ酸は、CD3に対する結合に関
与する第1のTCR-TM中又は第2のTCR-TM中のアミノ酸に対して近位である。
いくつかの実施形態では、1つ以上の(例えば、それぞれの)置換アミノ酸は、それらの
対応する非置換アミノ酸よりも疎水性である。いくつかの実施形態では、第1のTCR-
TMは、配列番号7及び9~13のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、第2のTCR-
TMは、配列番号8及び14~26のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0150】
二重特異性caTCRの例示的な構造を
図13A~13Eに示し、ここで、標的抗原は
、CD19及びCD22であるが、当業者は、他の標的抗原又はエピトープを標的とする
二重特異性caTCRを同じ構造フォーマットを使用して調製してもよいことを容易に理
解するだろう。
【0151】
例えば、DVD IgGに由来する二重可変ドメイン(DVD)(DiGiammar
inoら、mAbs 3(5):487-494を参照)を、caTCR中の二重特異性
抗原結合モジュールとして使用することができる(
図13A)。外側可変ドメインと内側
可変ドメインの融合のための種々のリンカーが開発され、DVD-Igについて最適化さ
れており、このリンカーは、DVDモジュールを有する二重特異性caTCRを構築する
のに有用であろう。しかし、DVDモジュールにおける可変ドメインのスタッキング手法
は、内側可変ドメインの折りたたみ及び標的結合親和性に影響を与える場合がある。2つ
の可変ドメイン間のリンカーと、この2つの可変ドメインの順序は、caTCRの効能に
影響を与える場合がある。
【0152】
いくつかの実施形態では、caTCRであって、(a)第1の標的抗原に特異的に結合
するFvと、第2の標的抗原に特異的に結合するFabとを含む、多重特異性(例えば、
二重特異性)抗原結合モジュールと、(b)第1のTCR-TMを含む第1のTCRD(
TCRD1)と第2のTCR-TMを含む第2のTCRD(TCRD2)とを含むTCR
Mとを含み、TCRMが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を促進す
る、caTCRが提供される。
【0153】
いくつかの実施形態では、caTCRであって、(i)N末端からC末端まで、V
H1
-L1-V
H2-C
H1-TCRD1を含む第1のポリペプチド鎖と、N末端からC末端
まで、V
L1-L2-V
L2-C
L-TCRD2を含む第2のポリペプチド鎖;(ii)
N末端からC末端まで、V
H1-L1-V
L2-C
L-TCRD1を含む第1のポリペプ
チド鎖と、N末端からC末端まで、V
L1-L2-V
H2-C
H1-TCRD2を含む第
2のポリペプチド鎖;(iii)N末端からC末端まで、V
L1-L1-V
H2-C
H1
-TCRD1を含む第1のポリペプチド鎖と、N末端からC末端まで、V
H1-L2-V
L2-C
L-TCRD2を含む第2のポリペプチド鎖;又は(iv)N末端からC末端ま
で、V
H1-L1-V
L2-C
L-TCRD1を含む第1のポリペプチド鎖と、N末端か
らC末端まで、V
H1-L2-V
H2-C
H1-TCRD2を含む第2のポリペプチド鎖
を含み、V
H1とV
L1は、第1の標的抗原に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン
を形成し、V
H2とV
L2は、第2の標的抗原に特異的に結合する第2の抗原結合ドメイ
ンを形成し、TCRD1とTCRD2が、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子
を動員することが可能なTCRMを形成し、L1及びL2がペプチドリンカーである、c
aTCRが提供される。いくつかの実施形態では、L1及び/又はL2は、約5~約50
(例えば、約5~10、約10~15、又は約15~30)のアミノ酸長である。いくつ
かの実施形態では、L1及び/又はL2は、配列番号83~85のいずれか1つのアミノ
酸配列を含む。いくつかの実施形態では、L1とL2は、同じ長さを有する。いくつかの
実施形態では、L1とL2は、同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、L
1とL2は、異なる長さを有する。いくつかの実施形態では、L1とL2は、異なるアミ
ノ酸配列を有する。例示的な二重特異性caTCRを
図13Aに示す。
【0154】
CODV-IgGに由来するクロスオーバー二重可変ドメイン(CODV)(Stei
nmetzら、mAbs(2016)、8(5):867-878)を、caTCR中の
二重特異性抗原結合モジュールとして使用することができる(
図13B)。CODVは、
各Fvに対する比較的障害のない抗原結合部位を可能にする。重鎖及び軽鎖の可変ドメイ
ンの融合のための種々のリンカーが開発され、CODV-Igについて最適化されている
。このリンカーは、CODVモジュールを有する二重特異性caTCRを構築するのに有
用であろう。しかし、CODVモジュールの適切な折り畳みは困難な場合があり、COD
Vモジュールにおいて使用される長いリンカーは、免疫原性の原因となる可能性があり、
タンパク質分解による切断を受けやすい場合がある。
【0155】
いくつかの実施形態では、caTCRであって、(a)第1の標的抗原に特異的に結合
する第1のFvと、第2の標的抗原に特異的に結合する第2のFabとを含む、多重特異
性(例えば、二重特異性)抗原結合モジュールと、(b)第1のTCR-TMを含む第1
のTCRD(TCRD1)と第2のTCR-TMを含む第2のTCRD(TCRD2)と
を含むTCRMとを含み、TCRMが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の
動員を促進する、caTCRが提供される。いくつかの実施形態では、caTCRは、C
H1とCLを更に含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、caTCRであって、(i)N末端からC末端まで、V
H1
-L1-V
H2-C
H1-TCRD1を含む第1のポリペプチド鎖と、N末端からC末端
まで、V
L2-L2-V
L1-C
L-TCRD2を含む第2のポリペプチド鎖;又は(i
i)N末端からC末端まで、V
L1-L1-V
L2-C
L-TCRD1を含む第1のポリ
ペプチド鎖と、N末端からC末端まで、V
H2-L2-V
H1-C
H1-TCRD2を含
む第2のポリペプチド鎖を含み、V
H1とV
L1は、第1の標的抗原に特異的に結合する
第1の抗原結合ドメインを形成し、V
H2とV
L2は、第2の標的抗原に特異的に結合す
る第2の抗原結合ドメインを形成し、TCRD1とTCRD2が、少なくとも1つのTC
R関連シグナル伝達分子の動員を促進することが可能なTCRMを形成し、L1及びL2
がペプチドリンカーである、caTCRが提供される。いくつかの実施形態では、L1及
び/又はL2は、約5~約50(例えば、約5~20、約15~30、又は約30~50
)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、L1及び/又はL2は、配列番号83
~85のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、L1とL2は、
同じ長さを有する。いくつかの実施形態では、L1とL2は、同じアミノ酸配列を有する
。いくつかの実施形態では、L1とL2は、異なる長さを有する。いくつかの実施形態で
は、L1とL2は、異なるアミノ酸配列を有する。例示的な二重特異性caTCRを
図1
3Bに示す。
【0157】
scFv融合タンパク質に由来する二重特異性抗原結合モジュール、例えば、Chen
ら、mAbs 8(4):761-774に記載されるものを、二重特異性caTCRで
使用してもよい(
図13C)。同様の融合フォーマットを有する二重特異性抗体の発現は
、このフォーマットの適切な折り畳み及び安定性を示している。scFvを定常ドメイン
に融合させるための種々のリンカーが開発され、これらの二重特異性抗体について最適化
されている。このリンカーは、同様のscFv融合ドメインを有する二重特異性caTC
Rを構築するのに有用であろう。しかし、scFv間の立体障害が、標的抗原に対するs
cFvの結合を損なう場合がある。
【0158】
いくつかの実施形態では、caTCRであって、(a)第1の標的抗原に特異的に結合
する第1のscFvと、第2の標的抗原に特異的に結合する第2のscFvとを含む、多
重特異性(例えば、二重特異性)抗原結合モジュールと、(b)第1のTCR-TMを含
む第1のTCRD(TCRD1)と第2のTCR-TMを含む第2のTCRD(TCRD
2)とを含むTCRMとを含み、TCRMが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達
分子の動員を促進する、caTCRが提供される。いくつかの実施形態では、caTCR
は、CH1とCLを更に含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、caTCRであって、(i)N末端からC末端まで、scF
v1-L1-C
H1-TCRD1を含む第1のポリペプチド鎖と、N末端からC末端まで
、scFv2-L2-C
L-TCRD2を含む第2のポリペプチド鎖;又は(ii)N末
端からC末端まで、scFv2-L1-C
H1-TCRD1を含む第1のポリペプチド鎖
と、N末端からC末端まで、scFv1-L2-C
L-TCRD2を含む第2のポリペプ
チド鎖を含み、ここで、scFv1は、第1の標的抗原に特異的に結合し、scFv2は
、第2の標的抗原に特異的に結合し、TCRD1及びTCRD2は、少なくとも1つのT
CR-関連シグナル伝達分子の動員を促進するTCRMを形成し、L1及びL2がペプチ
ドリンカーである、caTCRが提供される。いくつかの実施形態では、L1及び/又は
L2は、約5~約50(例えば、約5~10、約10~15、又は約15~30)のアミ
ノ酸長である。いくつかの実施形態では、L1及び/又はL2は、配列番号83~85の
いずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、L1とL2は、同じ長さ
を有する。いくつかの実施形態では、L1とL2は、同じアミノ酸配列を有する。いくつ
かの実施形態では、L1とL2は、異なる長さを有する。いくつかの実施形態では、L1
とL2は、異なるアミノ酸配列を有する。例示的な二重特異性caTCRを
図13Cに示
す。
【0160】
IgG-scFv二重特異性抗体又はFab-scFv-Fc二重特異性抗体に由来す
る二重特異性抗原結合モジュールを、二重特異性caTCRに使用してもよい。あるフォ
ーマット(
図13D)において、scFvは、FabのV
H又はV
Lのいずれかに接続し
、scFvの可撓性を大きくし、それにより、Fabのその標的抗原へのアクセスを大き
くすることを可能にする。しかしながら、scFv-Fabモジュールには、安全性の問
題があり得る。第2のフォーマット(
図13E)において、Fabは、第1のTCRDに
融合し、scFvは、第2のTCRDに融合する。
【0161】
いくつかの実施形態では、caTCRであって、(a)第1の標的抗原に特異的に結合
するscFvと、第2の標的抗原に特異的に結合するFabとを含む、多重特異性(例え
ば、二重特異性)抗原結合モジュールと、(b)第1のTCR-TMを含む第1のTCR
D(TCRD1)と第2のTCR-TMを含む第2のTCRD(TCRD2)とを含むT
CRMとを含み、TCRMが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を促
進する、caTCRが提供される。
【0162】
いくつかの実施形態では、caTCRであって、(i)N末端からC末端まで、scF
v-L1-V
H-C
H1-TCRD1を含む第1のポリペプチド鎖と、N末端からC末端
まで、V
L-C
L-TCRD2を含む第2のポリペプチド鎖;又は(ii)N末端からC
末端まで、V
H-C
H1-TCRD1を含む第1のポリペプチド鎖と、N末端からC末端
まで、scFv-L2-V
L-C
L-TCRD2を含む第2のポリペプチド鎖を含み、こ
こで、scFVは、第1の標的抗原に特異的に結合し、V
H及びV
Lは、第2の標的抗原
に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを形成し、TCRD1及びTCRD2は、少
なくとも1つのTCR-関連シグナル伝達分子の動員を促進するTCRMを形成し、L1
及びL2がペプチドリンカーである、caTCRが提供される。いくつかの実施形態では
、L1及び/又はL2は、約5~約50(例えば、約5~10、約10~15、又は約1
5~30)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、L1及び/又はL2は、配列
番号83~85のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。例示的な二重特異性caTCRを
図13Dに示す。
【0163】
いくつかの実施形態では、caTCRであって、(i)N末端からC末端まで、V
L-
C
L-L1-TCRD1を含む第1のポリペプチド鎖と、N末端からC末端まで、V
H-
C
H1を含む第2のポリペプチド鎖と、N末端からC末端まで、scFv-L2-TCR
D2を含む第3のポリペプチド鎖;(ii)N末端からC末端まで、V
H-C
H1-L1
-TCRD1を含む第1のポリペプチド鎖と、N末端からC末端まで、V
L-C
Lを含む
第2のポリペプチド鎖と、N末端からC末端まで、scFv-L2-TCRD2を含む第
3のポリペプチド鎖;(iii)N末端からC末端まで、scFv-L1-TCRD1を
含む第1のポリペプチド鎖と、N末端からC末端まで、V
H-C
H1を含む第2のポリペ
プチド鎖と、N末端からC末端まで、V
L-C
L-L2-TCRD2を含む第3のポリペ
プチド鎖;又は(iv)N末端からC末端まで、scFv-L1-TCRD1を含む第1
のポリペプチド鎖と、N末端からC末端まで、V
L-C
Lを含む第2のポリペプチド鎖と
、N末端からC末端まで、V
H-C
H1-L2-TCRD2を含む第3のポリペプチド鎖
を含み、ここで、scFVは、第1の標的抗原に特異的に結合し、V
H及びV
Lは、第2
の標的抗原に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを形成し、TCRD1及びTCR
D2は、少なくとも1つのTCR-関連シグナル伝達分子の動員を促進するTCRMを形
成し、L1及びL2がペプチドリンカーである、caTCRが提供される。いくつかの実
施形態では、L1及び/又はL2は、約5~約50(例えば、約5~10、約10~15
、又は約15~30)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、L1及び/又はL
2は、配列番号83~85のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。例示的な二重特異性c
aTCRを
図13Eに示す。scFvとTCRDとの間のペプチドリンカーの長さと、F
abとTCRDとの間のペプチドリンカーの長さは、その標的抗原に対するscFv及び
Fabのアクセス性に影響を与え得るように最適化することができる。
【0164】
多重特異性caTCRの多重特異性抗原結合モジュールは、標的抗原又はエピトープの
任意の好適な組み合わせに特異的に結合し得る。いくつかの実施形態では、多重特異性抗
原結合モジュールは、少なくとも1つの細胞表面抗原に特異的に結合する。いくつかの実
施形態では、少なくとも1つの細胞表面抗原は、CD19、CD20、CD22、CD4
7、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5D及びFCRL5からなる
群から選択され、これらの多様体又は変異体を含む。いくつかの実施形態では、多重特異
性抗原結合モジュールは、少なくとも1つのペプチド/MHC複合体に特異的に結合する
。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのペプチド/MHC複合体は、WT-1、A
FP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV
-1、KRAS、Histone H3.3及びPSAからなる群から選択され、これら
の多様体又は変異体を含む、タンパク質に由来するペプチドを含む。いくつかの実施形態
では、多重特異性抗原結合モジュールは、第1の細胞表面抗原及び第2の細胞表面抗原に
特異的に結合する。いくつかの実施形態では、多重特異性抗原結合モジュールは、CD1
9及びCD22に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、多重特異性抗原結合モジ
ュールは、CD19及びCD20に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、多重特
異性抗原結合モジュールは、第1のペプチド/MHC複合体及び第2のペプチド/MHC
複合体に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、多重特異性抗原結合モジュールは
、細胞表面抗原及びペプチド/MHC複合体に特異的に結合する。
【0165】
第1の抗原結合ドメイン及び第2の抗原結合ドメインは、好適な抗体に由来する抗体部
分であってもよい。例示的な抗CD19抗体及び抗CD22抗体は、当該技術分野におい
て既知である。例えば、WO2017066136A2号に記載されている抗CD19抗
体、及び2018年3月30日に出願されたUSSN 62/650,955号(その内
容が、全体的に本明細書に参考として組み込まれる)に記載されている抗CD22抗体を
参照。
【0166】
いくつかの実施形態では、caTCRであって、(a)CD19に特異的に結合する第
1の抗原結合ドメインとCD22に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む多重
特異性(例えば、二重特異性)抗原結合モジュールと、(b)第1のTCR-TMを含む
第1のTCRD(TCRD1)と第2のTCR-TMを含む第2のTCRD(TCRD2
)を含むTCRMとを含み、TCRMが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子
の動員を促進する、caTCRが提供される。
【0167】
いくつかの実施形態では、caTCRであって、(a)配列番号74のアミノ酸配列を
含むVHのHC-CDR1、HC-CDR2及びHC-CDR3を含むVHと、配列番号
78のアミノ酸配列を含むVLのLC-CDR1、LC-CDR2及びLC-CDR3を
含むVLとを含む、CD19に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、(ii)配
列番号65のアミノ酸配列を含むVHのHC-CDR1、HC-CDR2及びHC-CD
R3を含むVHと、配列番号69のアミノ酸配列を含むVLのLC-CDR1、LC-C
DR2及びLC-CDR3を含むVLとを含む、CD22に特異的に結合する第1の抗原
結合ドメインとを含む、多重特異性(例えば、二重特異性)抗原結合モジュールと、(b
)第1のTCR-TMを含む第1のTCRD(TCRD1)と第2のTCR-TMを含む
第2のTCRD(TCRD2)を含むTCRMとを含み、TCRMが、少なくとも1つの
TCR関連シグナル伝達分子の動員を促進する、caTCRが提供される。いくつかの実
施形態では、CD19に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、配列番号71のア
ミノ酸配列を含むHC-CDR1、配列番号72のアミノ酸配列を含むHC-CDR2及
び配列番号73のアミノ酸配列を含むHC-CDR3を含むVHと、配列番号75のアミ
ノ酸配列を含むLC-CDR1、配列番号76のアミノ酸配列を含むLC-CDR2及び
配列番号77のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含むVLとを含む。いくつかの実施
形態では、CD22に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、配列番号62のアミ
ノ酸配列を含むHC-CDR1、配列番号63のアミノ酸配列を含むHC-CDR2及び
配列番号64のアミノ酸配列を含むHC-CDR3を含むVHと、配列番号66のアミノ
酸配列を含むLC-CDR1、配列番号67のアミノ酸配列を含むLC-CDR2及び配
列番号68のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含むVLとを含む。いくつかの実施形
態では、CD19に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、配列番号74のアミノ
酸配列を含むVHと、配列番号78のアミノ酸配列を含むVLとを含む。いくつかの実施
形態では、CD22に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、配列番号65のアミ
ノ酸配列を含むVHと、配列番号69のアミノ酸配列を含むVLとを含む。いくつかの実
施形態では、CD19に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、配列番号79のア
ミノ酸配列を含むscFvを含む。いくつかの実施形態では、CD19に特異的に結合す
る第1の抗原結合ドメインは、配列番号70のアミノ酸配列を含むscFvを含む。いく
つかの実施形態では、TCRD1は、配列番号80のアミノ酸配列を含み、TCRD2は
、配列番号81のアミノ酸配列を含むか、又はTCRD1は、配列番号81のアミノ酸配
列を含み、TCRD2は、配列番号80のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では
、caTCRは、TCRD1に融合するCH1と、TCRD2に融合するCLとを含むか
、又はTCRD1に融合するCLと、TCRD2に融合するCH1とを含む。いくつかの
実施形態では、CH1は、配列番号37のアミノ酸配列を含み、CLは、配列番号48の
アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CH1及びCLは、二量体形成を安定化
させる1つ以上の変異を含む。いくつかの実施形態では、CH1は、配列番号86のアミ
ノ酸配列を含み、CLは、配列番号87のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では
、第1の抗原結合ドメイン又はそのフラグメント(例えば、VH又はVL)は、ペプチド
リンカーを介して、第2の抗原結合ドメイン又はそのフラグメント(例えば、VH又はV
L)に融合する。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合ドメイン又はそのフラグメン
ト(例えば、VH又はVL)は、ペプチドリンカーを介して、CH1又はCLに融合する
。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合ドメイン又はそのフラグメント(例えば、V
H又はVL)は、ペプチドリンカーを介して、CH1又はCLに融合する。いくつかの実
施形態では、ペプチドリンカーは、約5~約50アミノ酸長である。いくつかの実施形態
では、ペプチドリンカーは、配列番号83~85のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0168】
いくつかの実施形態では、CD19及びCD20に特異的に結合するcaTCRであっ
て、(i)配列番号88のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドと、配列番号89のア
ミノ酸配列を含む第2のポリペプチド、(ii)配列番号90のアミノ酸配列を含む第1
のポリペプチドと、配列番号91のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド、(iii)
配列番号92のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドと、配列番号93のアミノ酸配列
を含む第2のポリペプチド、(iv)配列番号94のアミノ酸配列を含む第1のポリペプ
チドと、配列番号95のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド、(v)配列番号96の
アミノ酸配列を含む第1のポリペプチドと、配列番号97のアミノ酸配列を含む第2のポ
リペプチド、(vi)配列番号98のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドと、配列番
号99のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド、(vii)配列番号100のアミノ酸
配列を含む第1のポリペプチドと、配列番号101のアミノ酸配列を含む第2のポリペプ
チド、(viii)配列番号102のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドと、配列番
号103のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド、(ix)配列番号104のアミノ酸
配列を含む第1のポリペプチドと、配列番号105のアミノ酸配列を含む第2のポリペプ
チド、(x)配列番号106のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドと、配列番号10
7のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド、(xi)配列番号108のアミノ酸配列を
含む第1のポリペプチドと、配列番号109のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド、
(xii)配列番号110のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドと、配列番号111
のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド、又は(xiii)配列番号112のアミノ酸
配列を含む第1のポリペプチドと、配列番号113のアミノ酸配列を含む第2のポリペプ
チドを含む、caTCRが提供される。
【0169】
いくつかの実施形態では、caTCRであって、(a)CD19に特異的に結合する第
1の抗原結合ドメインとCD20に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む多重
特異性(例えば、二重特異性)抗原結合モジュールと、(b)第1のTCR-TMを含む
第1のTCRD(TCRD1)と第2のTCR-TMを含む第2のTCRD(TCRD2
)を含むTCRMとを含み、TCRMが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子
の動員を促進する、caTCRが提供される。いくつかの実施形態では、CD19に特異
的に結合する抗原結合ドメインは、配列番号74のアミノ酸配列を含むVHのHC-CD
R1、HC-CDR2及びHC-CDR3を含むVHと、配列番号78のアミノ酸配列を
含むVLのLC-CDR1、LC-CDR2及びLC-CDR3を含むVLとを含む。い
くつかの実施形態では、CD20に特異的に結合する抗原結合ドメインは、配列番号56
のアミノ酸配列を含むVHのHC-CDR1、HC-CDR2及びHC-CDR3を含む
VHと、配列番号57のアミノ酸配列を含むVLのLC-CDR1、LC-CDR2及び
LC-CDR3を含むVLとを含む。いくつかの実施形態では、CD19に特異的に結合
する第1の抗原結合ドメインは、配列番号74のアミノ酸配列を含むVHを含み、VLは
、配列番号78のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CD20に特異的に結
合する第2の抗原結合ドメインは、配列番号56のアミノ酸配列を含むVHを含み、VL
は、配列番号57のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、TCRD1は、配列
番号80のアミノ酸配列を含み、TCRD2は、配列番号81のアミノ酸配列を含むか、
又はTCRD1は、配列番号81のアミノ酸配列を含み、TCRD2は、配列番号80の
アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、TCRD1に融合するC
H1と、TCRD2に融合するCLとを含むか、又はTCRD1に融合するCLと、TC
RD2に融合するCH1とを含む。いくつかの実施形態では、CH1は、配列番号37の
アミノ酸配列を含み、CLは、配列番号48のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態
では、CH1及びCLは、二量体形成を安定化させる1つ以上の変異を含む。いくつかの
実施形態では、CH1は、配列番号86のアミノ酸配列を含み、CLは、配列番号87の
アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合ドメイン又はそのフラグ
メント(例えば、VH又はVL)は、ペプチドリンカーを介して、第2の抗原結合ドメイ
ン又はそのフラグメント(例えば、VH又はVL)に融合する。いくつかの実施形態では
、第1の抗原結合ドメイン又はそのフラグメント(例えば、VH又はVL)は、ペプチド
リンカーを介して、CH1又はCLに融合する。いくつかの実施形態では、第2の抗原結
合ドメイン又はそのフラグメント(例えば、VH又はVL)は、ペプチドリンカーを介し
て、CH1又はCLに融合する。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約5~
約50アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号83
~85のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
キメラ共刺激受容体(CSR)構築物
【0170】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRのいずれか1つと、キメラ共刺
激受容体(CSR)とを含む、免疫細胞(例えば、T細胞)であって、キメラ共刺激受容
体(CSR)は、(i)標的リガンドと結合するか、又は相互作用することが可能なリガ
ンド結合モジュールと、(ii)膜貫通モジュールと、(iii)共刺激信号を免疫細胞
に与えることが可能な共刺激免疫細胞シグナル伝達モジュールとを含み、リガンド結合モ
ジュールと共刺激免疫細胞シグナル伝達モジュールは、同じ分子に由来せず、CSRが、
機能的な一次免疫細胞シグナル伝達ドメインを欠いている、免疫細胞が提供される。この
ような免疫細胞は、本明細書では「caTCR+CSR免疫細胞」とも呼ばれる。
【0171】
本明細書に記載のリガンド特異的キメラ共刺激受容体(CSR)は、標的リガンド(例
えば、細胞表面抗原又はペプチド/MHC複合体)に特異的に結合し、標的リガンドが結
合すると機能的に発現する表面で免疫細胞を刺激することが可能である。CSRは、リガ
ンド結合特異性を与えるリガンド結合モジュールと、膜貫通モジュールと、免疫細胞を刺
激することが可能な共刺激免疫細胞シグナル伝達モジュールとを含む。CSRは、機能的
な一次免疫細胞シグナル伝達配列を欠いている。いくつかの実施形態では、CSRは、任
意の一次免疫細胞シグナル伝達配列を欠いている。いくつかの実施形態では、CSRは、
リガンド結合モジュールと、膜貫通モジュールと、共刺激シグナル伝達モジュールとを含
む、単一のポリペプチド鎖を含む。いくつかの実施形態では、CSRは、第1のポリペプ
チド鎖と第2のポリペプチド鎖とを含み、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖
が合わさって、リガンド結合モジュール、膜貫通モジュール及び共刺激シグナル伝達モジ
ュールを形成する。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチ
ド鎖は、別個のポリペプチド鎖であり、CSRは、多量体(例えば、二量体)である。い
くつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖は、例えば、ペプ
チド結合によって、又は別の化学結合(例えば、ジスルフィド結合)によって、共有結合
している。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖は、
少なくとも1つのジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、caT
CR+CSR免疫細胞におけるCSRの発現は、誘導性である。いくつかの実施形態では
、caTCR+CSR免疫細胞の発現は、caTCRを介してシグナル伝達するときに誘
導性である。
【0172】
本発明のCSRで使用するための共刺激免疫細胞シグナル伝達ドメインの例は、caT
CRと協働して作用し、caTCR係合後のシグナル伝達を開始させることができる、T
細胞受容体(TCR)の細胞質配列、及びこれらの配列の任意の誘導体又は多様体、及び
同じ機能能力を有する任意の合成配列が挙げられる。
【0173】
いくつかの状況下では、TCRのみによって生成されたシグナルは、T細胞の完全な活
性化には不十分であり、二次シグナル又は共刺激シグナルも必要である。したがって、い
くつかの実施形態では、T細胞活性化には、TCRによる抗原依存性一次活性化を開始さ
せるもの(本明細書では、「一次T細胞シグナル伝達配列」と呼ばれる)と、二次シグナ
ル又は共刺激シグナルを与える抗原非依存性の様式で作用するもの(本明細書では、「共
刺激性T細胞シグナル伝達配列」と呼ばれる)といった、2つの別個のクラスの細胞内シ
グナル伝達配列が介在している。
【0174】
刺激による経路で作用する一次免疫細胞シグナル伝達配列は、免疫受容体チロシン由来
の活性化モチーフ、又はITAMとして知られる、シグナル伝達モチーフを含んでいても
よい。ITAMを含有する一次免疫細胞シグナル伝達配列の例としては、TCRζ、Fc
Rγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD
79b及びCD66dに由来するものが挙げられる。「機能的」一次免疫細胞シグナル伝
達配列は、適切な受容体に作動可能に接続すると、免疫細胞活性化シグナルを形質導入す
ることが可能な配列である。「非機能的」一次免疫細胞シグナル伝達配列は、一次免疫細
胞シグナル伝達配列のフラグメント又は多様体を含んでいてもよいが、免疫細胞活性化シ
グナルを形質導入することができない。本明細書に記載のCSRは、機能的一次免疫細胞
シグナル伝達配列(例えば、ITAMを含む機能的シグナル伝達配列)を欠いている。い
くつかの実施形態では、CSRは、任意の一次免疫細胞シグナル伝達配列を欠いている。
【0175】
共刺激免疫細胞シグナル伝達配列は、例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD
137)、OX40、CD27、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原
-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83
と特異的に結合するリガンドなどを含め、共刺激分子の細胞内ドメインの一部であっても
よい。
【0176】
いくつかの実施形態では、標的リガンドは、細胞表面抗原である。いくつかの実施形態
では、標的リガンドは、ペプチド/MHC複合体である。いくつかの実施形態では、標的
リガンドは、同じ免疫細胞で発現されたcaTCRの標的抗原と同じである。いくつかの
実施形態では、標的リガンドは、同じ免疫細胞で発現されたcaTCRの標的抗原とは異
なる。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、標的抗原を提示する細胞の表面上に提
示される分子である。例えば、いくつかの実施形態では、caTCRの標的抗原は、癌細
胞上に提示される癌関連抗原であり、標的リガンドは、インテグリンなどの癌細胞の表面
上に発現されるユビキチン分子である。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、疾患
関連リガンドである。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、癌関連リガンドである
。いくつかの実施形態では、癌関連リガンドは、例えば、CD19、CD20、CD22
、CD47、IL4、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5D又はF
CRL5である。いくつかの実施形態では、癌関連リガンドは、WT-1、AFP、HP
V16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A及びPSAを含むタ
ンパク質に由来するペプチドを含む、ペプチド/MHC複合体である。いくつかの実施形
態では、標的リガンドは、ウイルス関連リガンドである。いくつかの実施形態では、標的
リガンドは、免疫チェックポイント分子である。いくつかの実施形態では、免疫チェック
ポイント分子は、PD-L1、PD-L2、CD80、CD86、ICOSL、B7-H
3、B7-H4、HVEM、4-1BBL、OX40L、CD70、CD40及びGAL
9を含む。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、アポトーシス分子である。いくつ
かの実施形態では、アポトーシス分子は、FasL、FasR、TNFR1及びTNFR
2を含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、リガンド結合モジュールは、抗体部分である。いくつかの実
施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv又は単鎖Fv(sc
Fv)である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、限定されないが、CD19、CD
20、CD22、CD47、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5D
及びFCRL5を含む、細胞表面抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗
体部分は、ペプチド/MHC複合体に特異的に結合し、ペプチドは、限定されないが、W
T-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2
A及びPSAを含む、タンパク質に由来する。いくつかの実施形態では、抗体部分は、C
D19に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン)を
含む(例えば、WO2017066136A2号を参照)。いくつかの実施形態では、抗
体部分は、CD19に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVL
ドメイン)(例えば、配列番号54のアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になり、
又はこれらからなるVHドメイン、及び/又は配列番号55のアミノ酸配列を含むか、こ
れらから本質的になり、又はこれらからなるVLドメイン、又はその中に含まれるCDR
)を含む。いくつかの実施形態では、抗体部分は、CD20に特異的な抗体部分のCDR
又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン)(例えば、配列番号56のアミノ酸配
列を含むか、これらから本質的になり、又はこれらからなるVHドメイン、及び/又は配
列番号57のアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になり、又はこれらからなるVL
ドメイン、又はその中に含まれるCDR)を含む。いくつかの実施形態では、抗体部分は
、CD22に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン
)を含む(例えば、その内容が全体的に本明細書に参考として組み込まれる、2018年
3月30日に出願されたUSSN 62/650,955号を参照)。いくつかの実施形
態では、抗体部分は、CD22に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び
/又はVLドメイン)(例えば、配列番号65のアミノ酸配列を含むか、これらから本質
的になり、又はこれらからなるVHドメイン、及び/又は配列番号69のアミノ酸配列を
含むか、これらから本質的になり、又はこれらからなるVLドメイン、又はその中に含ま
れるCDR)を含む。いくつかの実施形態では、抗体部分は、GPC3に特異的な抗体部
分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン)を含む(例えば、その内容
が全体的に本明細書に参考として組み込まれる、2017年4月26日に出願されたUS
SN 62/490,586号を参照)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、GPC
3に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン)(例え
ば、配列番号58のアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になり、又はこれらからな
るVHドメイン、及び/又は配列番号59のアミノ酸配列を含むか、これらから本質的に
なり、又はこれらからなるVLドメイン、又はその中に含まれるCDR)を含む。いくつ
かの実施形態では、抗体部分は、ROR1に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン
(VH及び/又はVLドメイン)を含む(例えば、WO2016/187220号及びW
O2016/187216号を参照)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、ROR2
に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン)を含む(
例えば、WO2016/142768号を参照)。いくつかの実施形態では、抗体部分は
、BCMAに特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン
)を含む(例えば、WO2016/090327号及びWO2016/090320号を
参照)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、GPRC5Dに特異的な抗体部分のCD
R又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン)を含む(例えば、WO2016/0
90329号及びWO2016/090312号を参照)。いくつかの実施形態では、抗
体部分は、FCRL5に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はV
Lドメイン)を含む(例えば、WO2016/090337号を参照)。いくつかの実施
形態では、抗体部分は、WT-1に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及
び/又はVLドメイン)を含む(例えば、WO2012/135854号、WO2015
/070078号及びWO2015/070061号を参照)。いくつかの実施形態では
、抗体部分は、AFPに特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はV
Lドメイン)を含む(例えば、WO2016/161390号を参照)。いくつかの実施
形態では、抗体部分は、HPV16-E7に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン
(VH及び/又はVLドメイン)を含む(例えば、WO2016/182957号を参照
)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、NY-ESO-1に特異的な抗体部分のCD
R又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン)を含む(例えば、WO2016/2
10365号を参照)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、PRAMEに特異的な抗
体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン)を含む(例えば、WO
2016/191246号を参照)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、EBV-L
MP2Aに特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン)
を含む(例えば、WO2016/201124号を参照)。いくつかの実施形態では、抗
体部分は、KRASに特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVL
ドメイン)を含む(例えば、WO2016/154047号を参照)。いくつかの実施形
態では、抗体部分は、PSAに特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/
又はVLドメイン)を含む(例えば、WO2017/015634号を参照)。
【0178】
いくつかの実施形態では、リガンド結合モジュールは、標的リガンドの受容体の細胞外
ドメインの全て又は一部である(又はこれらに由来する)。いくつかの実施形態では、受
容体は、例えば、FasR、TNFR1、TNFR2、PD-1、CD28、CTLA-
4、ICOS、BTLA、KIR、LAG-3、4-1BB、OX40、CD27及びT
IM-3を含む。
【0179】
いくつかの実施形態では、膜貫通モジュールは、例えば、CD28、CD3ε、CD3
ζ、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD
37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137又はCD154に由来す
る1つ以上の膜貫通ドメインを含む。
【0180】
いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達モジュールは、例えば、CD27、CD
28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、ICOS、リンパ球
機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H
3、CD83と特異的に結合するリガンドなどを含む、免疫細胞共刺激分子の細胞内ドメ
インの全て又は一部を含むか、これらから本質的になり、又はこれらからなる。いくつか
の実施形態では、共刺激性シグナル伝達分子は、配列番号49又は118のアミノ酸配列
を含むCD28のフラグメントを含む。いくつかの実施形態では、共刺激性シグナル伝達
分子は、配列番号50又は119のアミノ酸配列を含む4-1BBのフラグメントを含む
。いくつかの実施形態では、共刺激性シグナル伝達分子は、配列番号51又は120のア
ミノ酸配列を含むOX40のフラグメントを含む。いくつかの実施形態では、共刺激性シ
グナル伝達分子は、配列番号122又は123のアミノ酸配列を含むCD27のフラグメ
ントを含む。いくつかの実施形態では、共刺激性シグナル伝達分子は、配列番号124又
は125のアミノ酸配列を含むCD30のフラグメントを含む。いくつかの実施形態では
、共刺激性シグナル伝達分子は、配列番号121のアミノ酸配列を含むCD8のフラグメ
ントを含む。
【0181】
いくつかの実施形態では、CSRは、リガンド結合モジュール、膜貫通モジュール及び
共刺激シグナル伝達モジュールのいずれかの間にスペーサーモジュールを更に含む。いく
つかの実施形態では、スペーサーモジュールは、2つのCSRモジュールを接続する1つ
以上のペプチドリンカーを含む。いくつかの実施形態では、スペーサーモジュールは、約
5~約70(例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、5
5、60、65又は70のいずれか、これらの値の間にある任意の範囲を含む)のアミノ
酸長の1つ以上のペプチドリンカーを含む。
【0182】
いくつかの実施形態では、リガンド結合モジュール(例えば、抗体部分)は、(a)他
の分子に対する結合親和性の少なくとも約10倍(例えば、少なくとも約10倍、20倍
、30倍、40倍、50倍、75倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500
倍、750倍、1000倍のいずれか、又はもっと多くを含む)の親和性で標的抗原に特
異的に結合するか、又は(b)他の分子に対する結合のKdの約1/10以下(例えば、
1/10以下、1/20以下、1/30以下、1/40以下、1/50以下、1/75以
下、1/100以下、1/200以下、1/300以下、1/400以下、1/500以
下、1/750以下、1/1000以下のいずれか、又はもっと小さい)のKdで標的抗
原に特異的に結合する抗体部分を含む。結合親和性は、ELISA、蛍光活性化細胞選別
(FACS)分析、又は放射線免疫沈降アッセイ(RIA)などの当該技術分野において
既知の方法によって決定することができる。Kdは、例えばBiacore機器を利用す
る表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイ、又は例えばSapidyne装置を利用する
動的排除アッセイ(KinExA)などの当該技術分野で既知の方法によって決定するこ
とができる。
【0183】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCSRは、標的リガンド(例えば、細胞表
面抗原又はペプチド/MHC複合体)に特異的に結合し、(a)標的リガンド結合ドメイ
ン(LBD)と、(b)膜貫通ドメインと、(c)共刺激シグナル伝達ドメインとを含み
、CSRは、標的リガンド結合の際に機能的に発現される表面で免疫細胞を刺激すること
が可能である。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、細胞表面抗原である。いくつ
かの実施形態では、標的リガンドは、ペプチド/MHC複合体である。いくつかの実施形
態では、標的リガンドは、同じ免疫細胞で発現されたcaTCRの標的抗原と同じである
。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、同じ免疫細胞で発現されたcaTCRの標
的抗原とは異なる。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、疾患関連リガンドである
。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、癌関連リガンドである。いくつかの実施形
態では、癌関連リガンドは、例えば、CD19、CD20、CD22、CD47、IL4
、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5D又はFCRL5である。い
くつかの実施形態では、癌関連リガンドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY
-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A及びPSAを含むタンパク質に由来する
ペプチドを含む、ペプチド/MHC複合体である。いくつかの実施形態では、標的リガン
ドは、ウイルス関連リガンドである。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、免疫チ
ェックポイント分子である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子は、P
D-L1、PD-L2、CD80、CD86、ICOSL、B7-H3、B7-H4、H
VEM、4-1BBL、OX40L、CD70、CD40及びGAL9を含む。いくつか
の実施形態では、標的リガンドは、アポトーシス分子である。いくつかの実施形態では、
アポトーシス分子は、FasL、FasR、TNFR1及びTNFR2を含む。いくつか
の実施形態では、リガンド結合ドメインは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、
抗体部分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)である
。いくつかの実施形態では、リガンド結合ドメインは、標的リガンドの受容体の細胞外ド
メインの全て又は一部である(又はこれらに由来する)。いくつかの実施形態では、受容
体は、例えば、FasR、TNFR1、TNFR2、PD-1、CD28、CTLA-4
、ICOS、BTLA、KIR、LAG-3、4-1BB、OX40、CD27及びTI
M-3を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通モジュールは、例えば、CD28、CD
3ε、CD3ζ、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、C
D33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137又はCD1
54を含む、膜貫通タンパク質に由来する膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態で
は、CSRは、膜貫通タンパク質(fTMP)のフラグメントを含み、fTMPは、CS
R膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、例
えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40
、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、
NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンドなどを含む、免疫細胞共
刺激分子の細胞内ドメインの全て又は一部を含むか、これらから本質的になり、又はこれ
らからなる。いくつかの実施形態では、CSRは、免疫細胞共刺激分子(fCSM)のフ
ラグメントを含み、fCSMは、CSR膜貫通ドメインと、CSR共刺激シグナル伝達ド
メインとを含む。いくつかの実施形態では、CSRは、リガンド結合ドメイン、膜貫通ド
メイン及び共刺激シグナル伝達ドメインのいずれかの間にスペーサードメインを更に含む
。いくつかの実施形態では、スペーサードメインは、2つのCSRドメインを接続するペ
プチドリンカーを含む。
【0184】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCSRは、標的リガンドに特異的に結合し
、(a)標的リガンド結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)共刺激シグナル
伝達ドメインとを含み、標的リガンドは、細胞表面抗原であり、CSRは、標的リガンド
結合の際に機能的に発現される表面で免疫細胞を刺激することが可能である。いくつかの
実施形態では、標的リガンドは、同じ免疫細胞で発現されたcaTCRの標的抗原と同じ
である。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、同じ免疫細胞で発現されたcaTC
Rの標的抗原とは異なる。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、疾患関連リガンド
である。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、癌関連リガンドである。いくつかの
実施形態では、癌関連リガンドは、例えば、CD19、CD20、CD22、CD47、
IL4、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5D又はFCRL5であ
る。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、ウイルス関連リガンドである。いくつか
の実施形態では、標的リガンドは、免疫チェックポイント分子である。いくつかの実施形
態では、免疫チェックポイント分子は、PD-L1、PD-L2、CD80、CD86、
ICOSL、B7-H3、B7-H4、HVEM、4-1BBL、OX40L、CD70
、CD40及びGAL9を含む。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、アポトーシ
ス分子である。いくつかの実施形態では、アポトーシス分子は、FasL、FasR、T
NFR1及びTNFR2を含む。いくつかの実施形態では、リガンド結合ドメインは、抗
体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(Fab’)
2、Fv又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態では、リガンド結合ドメ
インは、標的リガンドの受容体の細胞外ドメインの全て又は一部である(又はこれらに由
来する)。いくつかの実施形態では、受容体は、例えば、FasR、TNFR1、TNF
R2、PD-1、CD28、CTLA-4、ICOS、BTLA、KIR、LAG-3、
4-1BB、OX40、CD27及びTIM-3を含む。いくつかの実施形態では、膜貫
通モジュールは、例えば、CD28、CD3ε、CD3ζ、CD45、CD4、CD5、
CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD
86、CD134、CD137又はCD154を含む、膜貫通タンパク質に由来する膜貫
通ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CSRは、膜貫通タンパク質(fTMP)
のフラグメントを含み、fTMPは、CSR膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態
では、共刺激シグナル伝達ドメインは、例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD
137)、OX40、CD30、CD40、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LF
A-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に
結合するリガンドなどを含む、免疫細胞共刺激分子の細胞内ドメインの全て又は一部を含
むか、これらから本質的になり、又はこれらからなる。いくつかの実施形態では、CSR
は、免疫細胞共刺激分子(fCSM)のフラグメントを含み、fCSMは、CSR膜貫通
ドメインと、CSR共刺激シグナル伝達ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、C
SRは、リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び共刺激シグナル伝達ドメインのいず
れかの間にスペーサードメインを更に含む。いくつかの実施形態では、スペーサードメイ
ンは、2つのCSRドメインを接続するペプチドリンカーを含む。
【0185】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCSRは、標的リガンドに特異的に結合し
、(a)標的リガンド結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)共刺激シグナル
伝達ドメインとを含み、標的リガンドは、ペプチド/MHC複合体であり、CSRは、標
的リガンド結合の際に機能的に発現される表面で免疫細胞を刺激することが可能である。
いくつかの実施形態では、標的リガンドは、同じ免疫細胞で発現されたcaTCRの標的
抗原と同じである。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、同じ免疫細胞で発現され
たcaTCRの標的抗原とは異なる。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、疾患関
連リガンドである。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、癌関連リガンドである。
いくつかの実施形態では、癌関連リガンドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、N
Y-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A及びPSAを含むタンパク質に由来す
るペプチドを含む、ペプチド/MHC複合体である。いくつかの実施形態では、標的リガ
ンドは、ウイルス関連リガンドである。いくつかの実施形態では、リガンド結合ドメイン
は、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(Fa
b’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態では、膜貫通モジ
ュールは、例えば、CD28、CD3ε、CD3ζ、CD45、CD4、CD5、CD8
、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、
CD134、CD137又はCD154を含む、膜貫通タンパク質に由来する膜貫通ドメ
インを含む。いくつかの実施形態では、CSRは、膜貫通タンパク質(fTMP)のフラ
グメントを含み、fTMPは、CSR膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態では、
共刺激シグナル伝達ドメインは、例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137
)、OX40、CD30、CD40、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1
)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合す
るリガンドなどを含む、免疫細胞共刺激分子の細胞内ドメインの全て又は一部を含むか、
これらから本質的になり、又はこれらからなる。いくつかの実施形態では、CSRは、免
疫細胞共刺激分子(fCSM)のフラグメントを含み、fCSMは、CSR膜貫通ドメイ
ンと、CSR共刺激シグナル伝達ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、CSRは
、リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び共刺激シグナル伝達ドメインのいずれかの
間にスペーサードメインを更に含む。いくつかの実施形態では、スペーサードメインは、
2つのCSRドメインを接続するペプチドリンカーを含む。
【0186】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCSRは、標的リガンド(例えば、細胞表
面抗原又はペプチド/MHC複合体)に特異的に結合し、(a)標的リガンド結合ドメイ
ンと、(b)膜貫通ドメインと、(c)共刺激シグナル伝達ドメインとを含み、リガンド
結合ドメインは、抗体部分であり、CSRは、標的リガンド結合の際に機能的に発現され
る表面で免疫細胞を刺激することが可能である。いくつかの実施形態では、標的リガンド
は、細胞表面抗原である。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、ペプチド/MHC
複合体である。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、同じ免疫細胞で発現されたc
aTCRの標的抗原と同じである。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、同じ免疫
細胞で発現されたcaTCRの標的抗原とは異なる。いくつかの実施形態では、標的リガ
ンドは、疾患関連リガンドである。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、癌関連リ
ガンドである。いくつかの実施形態では、癌関連リガンドは、例えば、CD19、CD2
0、CD22、CD47、IL4、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、GPR
C5D又はFCRL5である。いくつかの実施形態では、癌関連リガンドは、WT-1、
AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A及びP
SAを含むタンパク質に由来するペプチドを含む、ペプチド/MHC複合体である。いく
つかの実施形態では、標的リガンドは、ウイルス関連リガンドである。いくつかの実施形
態では、標的リガンドは、免疫チェックポイント分子である。いくつかの実施形態では、
免疫チェックポイント分子は、PD-L1、PD-L2、CD80、CD86、ICOS
L、B7-H3、B7-H4、HVEM、4-1BBL、OX40L、CD70、CD4
0及びGAL9を含む。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、アポトーシス分子で
ある。いくつかの実施形態では、アポトーシス分子は、FasL、FasR、TNFR1
及びTNFR2を含む。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(F
ab’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態では、膜貫通モ
ジュールは、例えば、CD28、CD3ε、CD3ζ、CD45、CD4、CD5、CD
8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86
、CD134、CD137又はCD154を含む、膜貫通タンパク質に由来する膜貫通ド
メインを含む。いくつかの実施形態では、CSRは、膜貫通タンパク質(fTMP)のフ
ラグメントを含み、fTMPは、CSR膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態では
、共刺激シグナル伝達ドメインは、例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD13
7)、OX40、CD30、CD40、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-
1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合
するリガンドなどを含む、免疫細胞共刺激分子の細胞内ドメインの全て又は一部を含むか
、これらから本質的になり、又はこれらからなる。いくつかの実施形態では、CSRは、
免疫細胞共刺激分子(fCSM)のフラグメントを含み、fCSMは、CSR膜貫通ドメ
インと、CSR共刺激シグナル伝達ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、CSR
は、リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び共刺激シグナル伝達ドメインのいずれか
の間にスペーサードメインを更に含む。いくつかの実施形態では、スペーサードメインは
、2つのCSRドメインを接続するペプチドリンカーを含む。
【0187】
いくつかの実施形態では、CSRは、CD28のfCSMを含む。いくつかの実施形態
では、CSRは、(a)標的リガンド結合ドメインと、(b)配列番号118のアミノ酸
配列を含むCD28のフラグメントとを含む。いくつかの実施形態では、CSRは、標的
リガンド結合ドメインと、配列番号126のアミノ酸配列を含むCSRドメインとを含む
。
【0188】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCSRは、標的リガンド(例えば、細胞表
面抗原又はペプチド/MHC複合体)に特異的に結合し、(a)標的リガンド結合ドメイ
ンと、(b)膜貫通ドメインと、(c)共刺激シグナル伝達ドメインとを含み、リガンド
結合ドメインは、標的リガンドの受容体の細胞外ドメインの全て又は一部であるか(又は
これらに由来し)、CSRは、標的リガンド結合の際に機能的に発現される表面で免疫細
胞を刺激することが可能である。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、細胞表面抗
原である。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、同じ免疫細胞で発現されたcaT
CRの標的抗原と同じである。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、同じ免疫細胞
で発現されたcaTCRの標的抗原とは異なる。いくつかの実施形態では、標的リガンド
は、疾患関連リガンドである。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、癌関連リガン
ドである。いくつかの実施形態では、癌関連リガンドは、例えば、CD19、CD20、
CD22、CD47、IL4、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5
D又はFCRL5である。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、免疫チェックポイ
ント分子である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子は、PD-L1、
PD-L2、CD80、CD86、ICOSL、B7-H3、B7-H4、HVEM、4
-1BBL、OX40L、CD70、CD40及びGAL9を含む。いくつかの実施形態
では、標的リガンドは、アポトーシス分子である。いくつかの実施形態では、アポトーシ
ス分子は、FasL、FasR、TNFR1及びTNFR2を含む。いくつかの実施形態
では、標的リガンド受容体は、例えば、FasR、TNFR1、TNFR2、PD-1、
CD28、CTLA-4、ICOS、BTLA、KIR、LAG-3、4-1BB、OX
40、CD27及びTIM-3を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、例
えば、CD28、CD3ε、CD3ζ、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、C
D16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、
CD137又はCD154に由来する膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態では、
共刺激シグナル伝達ドメインは、例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137
)、OX40、CD30、CD40、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1
)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合す
るリガンドなどを含む、免疫細胞共刺激分子の細胞内ドメインの全て又は一部を含むか、
これらから本質的になり、又はこれらからなる。いくつかの実施形態では、CSRは、リ
ガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び共刺激シグナル伝達ドメインのいずれかの間に
スペーサードメインを更に含む。いくつかの実施形態では、スペーサードメインは、2つ
のCSRドメインを接続するペプチドリンカーを含む。
【0189】
いくつかの実施形態では、CD19に特異的に結合する本明細書に記載のCSRは、(
a)配列番号74のアミノ酸配列を有するVHドメインと配列番号78のアミノ酸配列を
有するVLドメインと、(b)配列番号49又は118のアミノ酸配列を含むか、これら
から本質的になり、又はこれらからなるCD28のフラグメントとを含む。いくつかの実
施形態では、CD28のフラグメントは、配列番号118のアミノ酸配列を含む。いくつ
かの実施形態では、CSRは、アミノ末端からカルボキシ末端まで、scFvと、ペプチ
ドリンカーと、CD28のフラグメントとを含む。いくつかの実施形態では、CSRは、
配列番号127のアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になり、又はこれらからなる
。
【0190】
いくつかの実施形態では、GPC3に特異的に結合する本明細書に記載のCSRは、(
a)配列番号58のアミノ酸配列を有するVHドメインと配列番号59のアミノ酸配列を
有するVLドメインと、(b)配列番号49又は80のアミノ酸配列を含むか、これらか
ら本質的になり、又はこれらからなるCD28のフラグメントとを含む。いくつかの実施
形態では、scFvは、配列番号117のアミノ酸配列を含むか、これらから本質的にな
り、又はこれらからなる。いくつかの実施形態では、CD28のフラグメントは、配列番
号118のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CSRは、アミノ末端からカ
ルボキシ末端まで、scFvと、ペプチドリンカーと、CD28のフラグメントとを含む
。いくつかの実施形態では、CSRは、配列番号128のアミノ酸配列を含むか、これら
から本質的になり、又はこれらからなる。
【0191】
いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞におけるCSRの発現は、誘導
性である。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞は、本明細書に記載の
誘導プロモーターのいずれかを含む、誘導プロモーターに作動可能に接続するCSRをコ
ードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞におけ
るCSRの発現は、caTCRを介してシグナル伝達するときに誘導性である。いくつか
のこのような実施形態では、caTCR+CSR免疫細胞は、caTCRによるシグナル
伝達に応答してプロモーター又は調節エレメントに作動可能に接続するCSRをコードす
る核酸配列を組む。いくつかの実施形態では、CSRをコードする核酸配列は、活性化T
細胞(NFAT)由来プロモーターの核因子に作動可能に接続する。いくつかの実施形態
では、NFAT由来プロモーターは、NFAT由来最小プロモーターである(例えば、D
urand,D.ら、Molec.Cell.Biol.8、1715-1724(19
88);Clipstone,NA、Crabtree,GR.Nature.1992
357(6380):695-7;Chmielewski,M.ら、Cancer
research 71.17(2011):5697-5706;及びZhang,L
.ら、Molecular therapy 19.4(2011):751-759を
参照)。いくつかの実施形態では、NFAT由来プロモーターは、配列番号116のヌク
レオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、CSRをコードする核酸配列は、IL-
2プロモーターに作動可能に接続する。
分泌二次エフェクター(SSE)構築物
【0192】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRのいずれか1つを含む免疫細胞
(例えば、T細胞)が提供され、当該免疫細胞は、分泌二次エフェクター(SSE)を分
泌することが可能である。このような免疫細胞は、本明細書では「caTCR+SSE免
疫細胞」とも呼ばれる。SSEは、機能的に発現され、分泌型であり、caTCR+SS
E免疫細胞が介在する免疫応答を強化する。いくつかの実施形態では、SSEは、他の免
疫細胞(例えば、バイスタンダーT細胞又はNK細胞)を、標的疾患細胞(又は、標的癌
細胞)に再指向させることが可能である。いくつかの実施形態では、SSEは、免疫細胞
(例えば、T細胞又はNK細胞)及び疾患細胞(例えば、癌細胞)を標的とする多重特異
性抗体(例えば、二重特異性抗体)である。いくつかの実施形態では、SSEは、免疫抑
制腫瘍環境などの免疫抑制環境からcaTCR+SSE免疫細胞を保護する。いくつかの
実施形態では、SSEは、caTCR+SSE免疫細胞上での刺激受容体の自己分泌活性
化を与える。いくつかの実施形態では、SSEは、外来性増殖因子又は刺激サイトカイン
である。いくつかの実施形態では、caTCR+SSE免疫細胞におけるSSEの発現は
、誘導性である。いくつかの実施形態では、caTCR+SSE免疫細胞におけるSSE
の発現は、caTCRを介してシグナル伝達するときに誘導性である。いくつかの実施形
態では、caTCR+SSE免疫細胞は、本明細書に記載されるCSRのうちのいずれか
の1つを更に含む。
【0193】
いくつかの実施形態では、SSEは、T細胞及び疾患細胞を標的とする多重特異性抗体
(例えば、二重特異性抗体)である。いくつかの実施形態では、SSEは、T細胞の表面
抗原に特異的に結合する抗体部分を含む。いくつかの実施形態では、T細胞表面抗原は、
CD3である。いくつかの実施形態では、SSEは、疾患関連抗原(例えば、癌関連抗原
)に特異的に結合する抗体部分を含む。いくつかの実施形態では、疾患関連抗原は、疾患
細胞(癌細胞など)の表面抗原である。いくつかの実施形態では、疾患関連抗原は、グリ
ピカン-3(GPC3)、CD47、ムチン-16(MUC16)、CD19、CD20
、CD22、EpCAM、EGFR、HER2、CEA、PSMA、AFP、PSA、B
CMA、FCRL5、NY-ESO、HPV16又はFoxP3であり、これらの多様体
又は変異体を含む。いくつかの実施形態では、SSEは、タンデムscFv、ダイアボデ
ィ(Db)、単鎖ダイアボディ(scDb)、二重親和性再標的化(DART)抗体及び
二重可変ドメイン(DVD)抗体からなる群から選択される多重特異性抗体である。いく
つかの実施形態では、SSEは、二重特異性である。いくつかの実施形態では、SSEは
、T細胞表面抗原を標的とする第1のscFvと、疾患関連抗原を標的とする第2のsc
Fvとを含む、タンデムscFvである。
【0194】
いくつかの実施形態では、SSEは、CD3を標的とする第1のscFvと、疾患関連
抗原を標的とする第2のscFvとを含む、タンデムscFvである。いくつかの実施形
態では、疾患関連抗原は、GPC3、CD47、MUC16、CD19、CD20、CD
22、EpCAM、EGFR、HER2、CEA、PSMA、AFP、PSA、BCMA
、FCRL5、NY-ESO、HPV16又はFoxP3であり、これらの多様体又は変
異体を含む。
【0195】
いくつかの実施形態では、SSEは、CD3を標的とする第1のscFvと、GPC3
を標的とする第2のscFvとを含む、タンデムscFvである。いくつかの実施形態で
は、第2のscFvは、配列番号58のアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になり
、又はこれらからなるVHドメインと、配列番号59のアミノ酸配列を含むか、これらか
ら本質的になり、又はこれらからなるVLドメインとを含む。いくつかの実施形態では、
VHドメインは、VLドメインに対してアミノ末端にある。いくつかの実施形態では、V
Lドメインは、VHドメインに対してアミノ末端にある。いくつかの実施形態では、第2
のscFvは、配列番号117のアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になり、又は
これらからなる。いくつかの実施形態では、第1のscFvは、第2のscFvに対して
アミノ末端にある。いくつかの実施形態では、第2のscFvは、第1のscFvに対し
てアミノ末端にある。いくつかの実施形態では、SSEは、配列番号129のアミノ酸配
列を含むか、これらから本質的になり、又はこれらからなる。
【0196】
いくつかの実施形態では、SSEは、CD3を標的とする第1のscFvと、CD47
を標的とする第2のscFvとを含む、タンデムscFvである。いくつかの実施形態で
は、SSEは、CD3を標的とする第1のscFvと、MUC16を標的とする第2のs
cFvとを含む、タンデムscFvである。
【0197】
いくつかの実施形態では、SSEは、NK細胞及び疾患関連抗原(例えば、癌関連抗原
)を標的とする多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である。いくつかの実施形態
では、SSEは、NK細胞の表面抗原に特異的に結合する抗体部分を含む。いくつかの実
施形態では、NK細胞表面抗原は、CD16aである。いくつかの実施形態では、SSE
は、疾患関連抗原(例えば、癌関連抗原)に特異的に結合する抗体部分を含む。いくつか
の実施形態では、疾患関連抗原は、疾患細胞(癌細胞など)の表面抗原である。いくつか
の実施形態では、疾患関連抗原は、GPC3、CD47、MUC16、CD19、CD2
0、CD22、EpCAM、EGFR、HER2、CEA、PSMA、AFP、PSA、
BCMA、FCRL5、NY-ESO、HPV16又はFoxP3であり、これらの多様
体又は変異体を含む。いくつかの実施形態では、SSEは、タンデムscFv、ダイアボ
ディ(Db)、単鎖ダイアボディ(scDb)、二重親和性再標的化(DART)抗体及
び二重可変ドメイン(DVD)抗体からなる群から選択される多重特異性抗体である。い
くつかの実施形態では、SSEは、二重特異性である。いくつかの実施形態では、SSE
は、NK細胞表面抗原を標的とする第1のscFvと、疾患関連抗原を標的とする第2の
scFvとを含む、タンデムscFvである。
【0198】
いくつかの実施形態では、SSEは、CD16aを標的とする第1のscFvと、疾患
関連抗原を標的とする第2のscFvとを含む、タンデムscFvである。いくつかの実
施形態では、疾患関連抗原は、GPC3、CD47、MUC16、CD19、CD20、
CD22、EpCAM、EGFR、HER2、CEA、PSMA、AFP、PSA、BC
MA、FCRL5、NY-ESO、HPV16又はFoxP3であり、これらの多様体又
は変異体を含む。
【0199】
いくつかの実施形態では、SSEは、CD16aを標的とする第1のscFvと、GP
C3を標的とする第2のscFvとを含む、タンデムscFvである。いくつかの実施形
態では、SSEは、CD16aを標的とする第1のscFvと、CD47を標的とする第
2のscFvとを含む、タンデムscFvである。いくつかの実施形態では、SSEは、
CD16aを標的とする第1のscFvと、MUC16を標的とする第2のscFvとを
含む、タンデムscFvである。
【0200】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のSSEは、疾患関連抗原に特異的に結合す
る抗体部分を含み、抗体部分は、疾患関連抗原に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメ
イン(VH及び/又はVLドメイン)を含む。いくつかの実施形態では、抗体部分は、C
D19に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン)を
含む(例えば、WO2017066136A2号を参照)。いくつかの実施形態では、抗
体部分は、CD19に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVL
ドメイン)(例えば、配列番号54のアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になり、
又はこれらからなるVHドメイン、及び/又は配列番号55のアミノ酸配列を含むか、こ
れらから本質的になり、又はこれらからなるVLドメイン、又はその中に含まれるCDR
)を含む。いくつかの実施形態では、抗体部分は、CD20に特異的な抗体部分のCDR
又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン)(例えば、配列番号56のアミノ酸配
列を含むか、これらから本質的になり、又はこれらからなるVHドメイン、及び/又は配
列番号57のアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になり、又はこれらからなるVL
ドメイン、又はその中に含まれるCDR)を含む。いくつかの実施形態では、抗体部分は
、CD22に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン
)を含む(例えば、その内容が全体的に本明細書に参考として組み込まれる、2018年
3月30日に出願されたUSSN 62/650,955号を参照)。いくつかの実施形
態では、抗体部分は、CD22に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び
/又はVLドメイン)(例えば、配列番号65のアミノ酸配列を含むか、これらから本質
的になり、又はこれらからなるVHドメイン、及び/又は配列番号69のアミノ酸配列を
含むか、これらから本質的になり、又はこれらからなるVLドメイン、又はその中に含ま
れるCDR)を含む。いくつかの実施形態では、抗体部分は、GPC3に特異的な抗体部
分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン)を含む(例えば、その内容
が全体的に本明細書に参考として組み込まれる、2017年4月26日に出願されたUS
SN 62/490,586号を参照)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、GPC
3に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン)(例え
ば、配列番号58のアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になり、又はこれらからな
るVHドメイン、及び/又は配列番号59のアミノ酸配列を含むか、これらから本質的に
なり、又はこれらからなるVLドメイン、又はその中に含まれるCDR)を含む。いくつ
かの実施形態では、抗体部分は、ROR1に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン
(VH及び/又はVLドメイン)を含む(例えば、WO2016/187220号及びW
O2016/187216号を参照)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、ROR2
に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン)を含む(
例えば、WO2016/142768号を参照)。いくつかの実施形態では、抗体部分は
、BCMAに特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン
)を含む(例えば、WO2016/090327号及びWO2016/090320号を
参照)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、GPRC5Dに特異的な抗体部分のCD
R又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン)を含む(例えば、WO2016/0
90329号及びWO2016/090312号を参照)。いくつかの実施形態では、抗
体部分は、FCRL5に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はV
Lドメイン)を含む(例えば、WO2016/090337号を参照)。いくつかの実施
形態では、抗体部分は、WT-1に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及
び/又はVLドメイン)を含む(例えば、WO2012/135854号、WO2015
/070078号及びWO2015/070061号を参照)。いくつかの実施形態では
、抗体部分は、AFPに特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はV
Lドメイン)を含む(例えば、WO2016/161390号を参照)。いくつかの実施
形態では、抗体部分は、HPV16-E7に特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン
(VH及び/又はVLドメイン)を含む(例えば、WO2016/182957号を参照
)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、NY-ESO-1に特異的な抗体部分のCD
R又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン)を含む(例えば、WO2016/2
10365号を参照)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、PRAMEに特異的な抗
体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン)を含む(例えば、WO
2016/191246号を参照)。いくつかの実施形態では、抗体部分は、EBV-L
MP2Aに特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン)
を含む(例えば、WO2016/201124号を参照)。いくつかの実施形態では、抗
体部分は、KRASに特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVL
ドメイン)を含む(例えば、WO2016/154047号を参照)。いくつかの実施形
態では、抗体部分は、PSAに特異的な抗体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/
又はVLドメイン)を含む(例えば、WO2017/015634号を参照)。いくつか
の実施形態では、抗体部分は、scFvである。いくつかの実施形態では、SSEは、(
a)T細胞(例えば、CD3)又はNK細胞(例えば、CD16a)の表面抗原に特異的
に結合する第1のscFvと、(b)抗体部分とを含み、抗体部分が第2のscFvであ
る、タンデムscFvである。いくつかの実施形態では、SSEは、ペプチドリンカーに
よって接続した第1のscFvと第2のscFvとを含む。いくつかの実施形態では、第
1のscFvは、第2のscFvに対してアミノ末端にある。いくつかの実施形態では、
第2のscFvは、第1のscFvに対してアミノ末端にある。
【0201】
いくつかの実施形態では、SSEは、1つ以上の可溶性免疫抑制剤を標的とする多重特
異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である。このようなSSEは、可溶性免疫抑制剤を
その標的から隔離するための捕捉剤として作用し、それによって、その免疫抑制効果を減
らすことができる。いくつかの実施形態では、SSEは、1つ以上の可溶性免疫抑制剤に
特異的に結合する1つ以上の抗体部分を含む。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤は、
免疫抑制性サイトカインである。いくつかの実施形態では、免疫抑制性サイトカインとし
ては、TGF-βファミリーメンバー(例えば、TGF-β1~4)、IL-4及びIL
-10(これらの多様体又は変異体を含む)が挙げられる。いくつかの実施形態では、S
SEは、タンデムscFv、ダイアボディ(Db)、単鎖ダイアボディ(scDb)、二
重親和性再標的化(DART)抗体及び二重可変ドメイン(DVD)抗体からなる群から
選択される多重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、SSEは、二重特異性であ
る。例えば、いくつかの実施形態では、SSEは、第1の免疫抑制サイトカイン(例えば
、TGFβ)を標的とする第1のscFvと、第2の免疫抑制サイトカイン(例えば、I
L-4)を標的とする第2のscFvとを含む、タンデムscFvである。
【0202】
いくつかの実施形態では、SSEは、免疫チェックポイント分子を標的とする抗体部分
である。いくつかの実施形態では、SSEは、阻害性免疫チェックポイント分子のアンタ
ゴニストである。いくつかの実施形態では、阻害免疫チェックポイント分子は、PD-1
、PD-L1、CTLA-4、HVEM、BTLA、KIR、LAG-3、TIM-3及
びA2aRからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、SSEは、刺激性免疫
チェックポイント分子のアゴニストである。いくつかの実施形態では、刺激免疫チェック
ポイント分子は、CD28、ICOS、4-1BB、OX40、CD27及びCD40か
らなる群から選択される。いくつかの実施形態では、抗体部分は、完全長抗体、Fab、
Fab’、(Fab’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態
では、抗体部分は、scFvである。
【0203】
いくつかの実施形態では、SSEは、PD-1を標的とするアンタゴニスト性抗体部分
である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、PD-1に特異的なアンタゴニスト性抗
体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン)を含む(例えば、WO
2016/210129号を参照)。いくつかの実施形態では、アンタゴニスト抗体部分
は、完全長抗体、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)で
ある。いくつかの実施形態では、アンタゴニスト性抗体部分は、scFvである。
【0204】
いくつかの実施形態では、SSEは、CD47を標的とするアンタゴニスト性抗体部分
である。いくつかの実施形態では、アンタゴニスト性抗体部分は、CD47に特異的な抗
体部分のCDR又は可変ドメイン(VH及び/又はVLドメイン)(例えば、配列番号6
0のアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になり、又はこれらからなるVHドメイン
、及び/又は配列番号61のアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になり、又はこれ
らからなるVLドメイン、又はその中に含まれるCDR)を含む。いくつかの実施形態で
は、アンタゴニスト抗体部分は、完全長抗体、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv
又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態では、アンタゴニスト性抗体部分
は、scFvである。
【0205】
いくつかの実施形態では、SSEは、(a)他の分子に対する結合親和性の少なくとも
約10倍(例えば、少なくとも約10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、1
00倍、200倍、300倍、400倍、500倍、750倍、1000倍のいずれか、
又はもっと多くを含む)の親和性で標的抗原に特異的に結合するか、又は(b)他の分子
に対する結合のKdの約1/10以下(例えば、1/10以下、1/20以下、1/30
以下、1/40以下、1/50以下、1/75以下、1/100以下、1/200以下、
1/300以下、1/40以下、1/500以下、1/750以下、1/1000以下の
いずれか、又はもっと小さい)のKdで標的抗原に特異的に結合する抗体部分を含む。結
合親和性は、ELISA、蛍光活性化細胞選別(FACS)分析、又は放射線免疫沈降ア
ッセイ(RIA)などの当該技術分野において既知の方法によって決定することができる
。Kdは、例えばBiacore機器を利用する表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイ
、又は例えばSapidyne装置を利用する動的排除アッセイ(KinExA)などの
当該技術分野で既知の方法によって決定することができる。
【0206】
いくつかの実施形態では、SSEは、免疫抑制受容体のリガンドに特異的に結合する可
溶性分子である。いくつかの実施形態では、SSEは、免疫抑制受容体の細胞外ドメイン
に由来するリガンド結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、リガンド結合ドメイ
ンは、受容体の細胞外ドメインの一部である。いくつかの実施形態では、免疫抑制受容体
は、FasR、TNFR1、TNFR2、SIRPα、PD-1、CD28、CTLA-
4、ICOS、BTLA、KIR、LAG-3、4-1BB、OX40、CD27、CD
40及びTIM-3からなる群から選択される。
【0207】
いくつかの実施形態では、SSEは、免疫抑制受容体に特異的に結合し、拮抗作用をも
たらす可溶性分子である。いくつかの実施形態では、SSEは、免疫抑制受容体のリガン
ドの細胞外ドメインに由来する受容体結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、受
容体結合ドメインは、リガンドの細胞外ドメインの一部である。いくつかの実施形態では
、リガンドは、FasL、PD-L1、PD-L2、CD47、CD80、CD86、I
COSL、HVEM、4-1BBL、OX40L、CD70、CD40L及びGAL9か
らなる群から選択される。
【0208】
いくつかの実施形態では、SSEは、外来性刺激サイトカインである。本明細書に記載
の外来性サイトカインは、外来性遺伝子から発現されるサイトカインである。いくつかの
実施形態では、外来性刺激サイトカインは、IL-12ファミリーメンバーである。いく
つかの実施形態では、IL-12ファミリーメンバーは、IL-12、IL-23、IL
-27又はIL-35である。いくつかの実施形態では、外来性刺激サイトカインは、I
L-2、IL-15、IL-18又はIL-21である。いくつかの実施形態では、外来
性刺激サイトカインは、caTCR+SSE免疫細胞上のサイトカインの受容体の自己分
泌活性化を与えることができる。
【0209】
いくつかの実施形態では、caTCR+SSE免疫細胞におけるSSEの発現は、誘導
性である。いくつかの実施形態では、caTCR+SSE免疫細胞は、本明細書に記載の
誘導プロモーターのいずれかを含む、誘導プロモーターに作動可能に接続するSSEをコ
ードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、caTCR+SSE免疫細胞におけ
るSSEの発現は、caTCRを介してシグナル伝達するときに誘導性である。いくつか
のこのような実施形態では、caTCR+SSE免疫細胞は、caTCRによるシグナル
伝達に応答してプロモーター又は調節エレメントに作動可能に接続するSSEをコードす
る核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、SSEをコードする核酸配列は、活性化T
細胞(NFAT)由来プロモーターの核因子に作動可能に接続する。いくつかの実施形態
では、NFAT由来プロモーターは、NFAT由来最小プロモーターである(例えば、D
urand,D.ら、Molec.Cell.Biol.8、1715-1724(19
88);Clipstone,NA、Crabtree,GR.Nature.1992
357(6380):695-7;Chmielewski,M.ら、Cancer
research 71.17(2011):5697-5706;及びZhang,L
.ら、Molecular therapy 19.4(2011):751-759を
参照)。いくつかの実施形態では、NFAT由来プロモーターは、配列番号116のヌク
レオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、SSEをコードしている核酸配列は、I
L-2プロモーターに操作可能に連結されている。
核酸
【0210】
本明細書に記載されるcaTCR、CSR及び/又はSSEをコードする核酸分子も想
定される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるcaTCR、CSR及び/又
はSSEのいずれかによれば、caTCR、CSR及び/又はSSEをコードする核酸(
又は核酸のセット)が提供される。
【0211】
本発明はまた、本発明の核酸が挿入されるベクターも提供する。
【0212】
簡潔に要約すると、caTCRをコードする核酸によるcaTCRの発現は、核酸を適
切な発現ベクターに挿入することによって達成することができ、その結果、核酸は、5’
及び3’調節エレメント(例えば、プロモーター(例えば、リンパ球に特異的なプロモー
ターを含む))及び3’非翻訳領域(UTR)に作動可能に接続する。ベクターは、真核
生物宿主細胞における複製及び組み込みに適している場合がある。典型的なクローニング
及び発現ベクターは、転写及び翻訳停止部と、開始配列と、所望の核酸配列の発現の制御
に有用なプロモーターとを含む。
【0213】
本発明の核酸は、標準的な遺伝子送達プロトコルを用いて、核酸免疫化及び遺伝子治療
に使用することも可能である。遺伝子送達の方法は、当該技術分野において既知である。
例えば、その全体が本明細書に参考として組み込まれる米国特許第5,399,346号
、同第5,580,859号、同第5,589,466号を参照。いくつかの実施形態で
は、本発明は、遺伝子治療ベクターを提供する。
【0214】
核酸は、多数の種類のベクターにクローニングすることができる。例えば、核酸は、限
定されないが、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス及びコスミド
を含むベクターにクローニングすることができる。特定の目的のベクターとしては、発現
ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター及びシークエンシングベクターが挙げら
れる。
【0215】
更に、発現ベクターは、ウイルスベクターの形態で細胞に提供されてもよい。ウイルス
ベクター技術は、当該技術分野において周知であり、例えば、Sambrookら(20
01、Molecular Cloning:A Laboratory Manual
、Cold Spring Harbor Laboratory、New York)
に記載されており、他のウイルス学及び分子生物学のマニュアルに記載されている。ベク
ターとして有用なウイルスとしては、限定されないが、レトロウイルス、アデノウイルス
、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス及びレンチウイルスが挙げられる。一般に、好
適なベクターは、少なくとも1つの有機体と、プロモーター配列と、簡便な制限エンドヌ
クレアーゼ部位と、1つ以上の選択可能なマーカーとを含む(例えば、国際公開第01/
96584号;国際公開第01/29058号及び米国特許第6,326,193号を参
照)。
【0216】
哺乳類細胞への遺伝子導入のために、多数のウイルス由来の系が開発されてきた。例え
ば、レトロウイルスは、遺伝子送達系に簡便なプラットフォームを提供する。選択された
遺伝子をベクターに挿入し、当該技術分野において既知の技術を使用してレトロウイルス
粒子に封入することができる。次いで、組換えウイルスを単離し、in vivo又はe
x vivoのいずれかで対象の細胞に送達することができる。多くのレトロウイルス系
が当該技術分野において既知である。いくつかの実施形態では、アデノウイルスベクター
が使用される。多くのアデノウイルスベクターが当該技術分野において既知である。いく
つかの実施形態では、レンチウイルスベクターが使用される。レンチウイルスなどのレト
ロウイルス由来のベクターは、長期間の遺伝子転写を達成するのに適したツールである。
これらのベクターは、長期間にわたる導入遺伝子の安定した組み込み及び娘細胞における
その伝播を可能にするからである。レンチウイルスベクターは、肝細胞などの非増殖性細
胞を形質導入することができるという点で、マウス白血病ウイルスなどの癌性レトロウイ
ルス由来のベクターと比較して、利点を有する。これらのベクターはまた、免疫原性が低
いという更なる利点も有する。
【0217】
例えば、エンハンサーなどの更なるプロモーター配列は、転写開始の頻度を調節する。
典型的には、これらは、開始部位から30~110bp上流の領域に位置しているが、近
年、多くのプロモーターが、同様に開始部位の下流に機能配列を含むことが示されている
。プロモーター配列間の間隔は、多くの場合、フレキシブルであり、そのため、配列が互
いに対して反転しているか、又は移動するときにも、プロモーター機能が保存される。チ
ミジンキナーゼ(tk)プロモーターでは、プロモーター配列間の間隔は、活性が低下し
始める前に、50bpまで増加させることができる。
【0218】
好適なプロモーターの一例は、前初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配
列である。このプロモーター配列は、作動可能に接続した任意のポリヌクレオチド配列の
高レベルでの発現を促すことが可能な、強力な構成型プロモーター配列である。好適なプ
ロモーターの別の例は、伸長増殖因子-1α(EF-1α)である。しかしながら、他の
構成型プロモーター配列としては、限定されないが、シミアンウイルス40(SV40)
初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HI
V)長末端反復(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイル
スプロモーター、エプスタインバールウイルスの前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイル
スプロモーター、及びヒト遺伝子プロモーター、限定されないが、アクチンプロモーター
、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター及びクレアチンキナーゼプロモータ
ーが挙げられ、これらも使用可能である。
【0219】
更に、本発明は、構成型プロモーターの使用に限定されるべきではない。誘導プロモー
ターもまた、本発明の一部として想定される。誘導プロモーターの使用は、作動可能に接
続したポリヌクレオチド配列の発現を、このような発現が望ましいときにオンにするか、
又は発現が望ましくないときに発現をオフにすることが可能な分子スイッチを与える。真
核細胞で使用するための例示的な誘導プロモーター系としては、限定されないが、ホルモ
ン応答配列(例えば、Mader,S.及びWhite,J.H.(1993)Proc
.Natl.Acad.Sci.USA 90:5603-5607を参照)、合成リガ
ンド制御要素(例えば、Spencer,D.M.ら、1993)Science 26
2:1019-1024を参照)及びイオン化照射制御要素(例えば、Manome,Y
.ら、(1993)Biochemistry 32:10607-10613;Dat
ta,R.ら、(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1
014-10153を参照)が挙げられる。in vitro又はin vivoの哺乳
動物系で使用するための更なる例示的な誘導プロモーター系は、Gingrichら(1
998)Annual Rev.Neurosci 21:377-405にまとめられ
ている。
【0220】
本発明で使用するための例示的な誘導プロモーター系は、Tet系である。係る系は、
Gossenら(1993)によって記載されるTetシステムに基づく。例示的な実施
形態では、目的のポリヌクレオチドは、1つ以上のTet操作(TetO)部位を含むプ
ロモーターの制御下にある。非活性状態では、Tetリプレッサー(TetR)は、Te
tO部位に結合し、プロモーターからの転写を抑制する。活性状態では、例えば、テトラ
サイクリン(Tc)、無水テトラサイクリン、ドキシサイクリン(Dox)、又はその活
性類似体などの誘導剤存在下で、誘導剤は、TetOからTetRを放出させ、それによ
って、転写を行うことができる。ドキシサイクリンは、抗生物質であるテトラサイクリン
ファミリーの一員であり、1-ジメチルアミノ-2,4a,5,7,12-ペンタヒドロ
キシ-11-メチル-4,6-ジオキソ-1,4a,11,11a,12,12a-ヘキ
サヒドロテトラセン-3-カルボキサミドの化学名を有する。
【0221】
一実施形態では、TetRは、哺乳類細胞、例えば、マウス又はヒト細胞における発現
のためにコドン最適化される。大部分のアミノ酸は、遺伝子コードの縮重により、1つよ
り多いコドンによりコードされており、核酸によりコードされるアミノ酸配列を何ら変更
することなく、所与の核酸のヌクレオチド配列の実質的な多様性を可能にする。しかし、
多くの生物は、使用コドンにおいて違いを示し、この違いは、「コドンバイアス」(すな
わち、所与のアミノ酸についての特定のコドンの使用に関する偏り)としても知られる。
コドンバイアスは、多くは、特定のコドンについての主なtRNA種の存在と相関関係に
あり、ひいてはmRNA翻訳の効率を高める。したがって、特定の生物(例えば、原核生
物)由来のコード配列は、コドン最適化を介して、異なる生物(例えば、真核生物)にお
ける発現の改善に合わせて調整されてもよい。
【0222】
Tet系の他の特定の変形例としては、以下の「Tet-Off」及び「Tet-On
」系が挙げられる。Tet-Off系では、Tc又はDox存在下、転写は不活性である
。この系では、テトラサイクリン制御性転写活性化タンパク質(tTA)は、ヘルペス単
純ウイルス由来のVP16の強力な転写活性化ドメインに融合したTetRで構成されて
おり、テトラサイクリン応答性プロモーター配列(TRE)の転写制御下にある標的核酸
の発現を調整する。TREは、プロモーター(一般的に、ヒトサイトメガロウイルス(h
CMV)前初期プロモーターに由来する最小プロモーター配列)に融合したTetO配列
コンカテマーで構成される。Tc又はDoxが存在しない状態では、tTAはTREに結
合し、標的遺伝子の転写を活性化する。Tc又はDoxが存在する状態では、tTAは、
TREに結合することができず、標的遺伝子からの発現は、不活性なままである。
【0223】
逆に、Tet-On系では、転写は、Tc又はDoxが存在する状態で活性である。T
et-On系は、逆テトラサイクリン制御転写活性化剤rtTAに基づく。tTAと同様
に、rtTAは、TetRリプレッサーとVP16転写活性化ドメインとで構成される融
合タンパク質である。しかし、TetR DNA結合部分中の4つのアミノ酸の変化は、
Dox存在下で標的転写遺伝子のTRE中のtetO配列のみを認識することができるよ
うに、rtTAの結合特性を変える。したがって、Tet-Onシステムでは、TRE制
御された標的遺伝子の転写は、Doxの存在下、rtTAのみによって刺激される。
【0224】
別の誘導プロモーター系は、E.coli由来のlacリプレッサー系である。(Br
ownら、Cell 49:603-612(1987)を参照。)lacリプレッサー
系は、lacオペレーター(lacO)を含むプロモーターに作動可能に接続する目的の
ポリヌクレオチドの転写を制御することによって機能する。lacリプレッサー(lac
R)は、LacOに結合し、それにより、目的のポリヌクレオチドの転写を抑制する。目
的のポリヌクレオチドの発現は、適切な誘導剤、例えば、イソプロピル-β-D-チオガ
ラクトピラノシド(IPTG)によって誘導される。
【0225】
ポリペプチド又はその部分の発現を評価するために、細胞に導入される発現ベクターは
、ウイルスベクターによってトランスフェクションされるか、又は感染することが求めら
れる細胞集合からの発現細胞の同定及び選択を容易にするために、選択可能なマーカー遺
伝子又はレポーター遺伝子又はこれらを両方とも含んでいてもよい。他の態様では、選択
可能なマーカーは、DNAの別個の断片上に保有され、同時導入法で使用されてもよい。
選択可能なマーカー及びレポーター遺伝子が両方とも、宿主細胞における発現を可能にす
るために適切な調節配列と隣接していてもよい。有用な選択可能なマーカーとしては、例
えば、neoなどの抗生物質耐性遺伝子が挙げられる。
【0226】
レポーター遺伝子は、トランスフェクションされ得る細胞を同定するため、また、調節
配列の機能性を評価するために使用される。一般に、レポーター遺伝子は、レシピエント
生物又は組織内に存在しないか、又は発現していない遺伝子であり、一部の容易に検出可
能な特性、例えば、酵素活性によって発現が示されるポリペプチドをコードする遺伝子で
ある。DNAがレシピエント細胞に導入された後、レポーター遺伝子の発現を好適な時間
でアッセイする。好適なレポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダ
ーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌アルカリホスファターゼ
、又は緑色蛍光タンパク質遺伝子をコードする遺伝子を挙げることができる(例えば、U
i-Telら、2000 FEBS Letters 479:79-82)。好適な発
現系は周知であり、既知の技術を使用して調製することができ、又は商業的に入手するこ
とができる。一般に、レポーター遺伝子の発現の最高レベルを示す最小5’隣接領域を有
する構築物は、プロモーターとして同定される。このようなプロモーター領域を、レポー
ター遺伝子に接続させて、プロモーターによって促される転写を調節する能力について薬
剤を評価するために使用してもよい。
【0227】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRのいずれかに係るcaTCRを
コードする核酸が提供される。いくつかの実施形態では、caTCRをコードする核酸は
、caTCRの全てのポリペプチド鎖をコードする1つ以上の核酸配列を含む。いくつか
の実施形態では、1つ以上の核酸配列はそれぞれ、別個のベクター上に位置する。いくつ
かの実施形態では、核酸配列の少なくとも一部は、同じベクター上に位置する。ベクター
は、例えば、哺乳動物発現ベクター及びウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、ア
デノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス及びレンチウイルス由来のもの)
からなる群から選択されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、caTCRは、第
1のcaTCRポリペプチド鎖と第2のcaTCRポリペプチド鎖とを含み、caTCR
をコードする核酸が、第1のcaTCRポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列と、
第2のcaTCR鎖をコードする第2の核酸配列とを含む、二量体である。いくつかの実
施形態では、第1の核酸配列は、第1のベクター上に位置し、第2の核酸配列は、第2の
ベクター上に位置する。いくつかの実施形態では、第1の核酸配列と第2の核酸配列は、
同じベクター上に位置する。いくつかの実施形態では、第1の核酸配列は、第1のプロモ
ーターの制御下にあり、第2の核酸配列は、第2のプロモーターの制御下にある。いくつ
かの実施形態では、第1のプロモーターと第2のプロモーターは、同じ配列を有する。い
くつかの実施形態では、第1のプロモーターと第2のプロモーターは、異なる配列を有す
る。いくつかの実施形態では、第1の核酸配列及び第2の核酸配列は、多重シストロン性
(例えば、二重シストロン性)ベクターにおいて、単一プロモーター制御下で、単一の転
写物として発現される。例えば、Kim,JHら、PLoS One 6(4):e18
556、2011を参照。いくつかの実施形態では、第1のプロモーター、第2のプロモ
ーター及び/又は単一のプロモーターは、誘導性である。いくつかの実施形態では、第1
の核酸配列は、宿主細胞(T細胞など)における発現レベルが、宿主細胞中の第2の核酸
配列の発現レベルとほぼ同じである。いくつかの実施形態では、第1の核酸配列は、宿主
細胞(T細胞など)における発現レベルが、宿主細胞における第2の核酸配列の発現レベ
ルの少なくとも約2倍である(例えば、少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍のいずれか
、又はもっと多い)。いくつかの実施形態では、第1の核酸配列は、宿主細胞(T細胞な
ど)における発現レベルが、宿主細胞における第2の核酸配列の発現レベルの約1/2以
下である(例えば、約1/2、1/3、1/4、1/5以下のいずれか、又はもっと少な
い)。発現は、mRNAレベル又はタンパク質レベルで求めることができる。mRNA発
現レベルは、ノーザンブロット、定量的RT-PCR、マイクロアレイ解析などを含む種
々の周知の方法を用い、核酸から転写されたmRNAの量を測定することによって求める
ことができる。タンパク質の発現レベルは、免疫細胞化学染色、酵素結合免疫吸着アッセ
イ(ELISA)、ウェスタンブロット分析、発光アッセイ、質量分析、高速液体クロマ
トグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析などを含む既知の方法に
よって測定することができる。本明細書に記載される実施形態の特徴は、caTCRをコ
ードする核酸が、3つ以上の核酸配列を含む実施形態(例えば、caTCRが、3つ以上
の別個のポリペプチド鎖を含む場合)、又は単一の核酸配列を含む実施形態(例えば、c
aTCRが、単一のポリペプチド鎖を含む場合)を包含するように採用され、組み合わさ
せることが可能であることを理解すべきである。
【0228】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRのいずれかに係る
第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とを含む二量体caTCRをコードする核
酸であって、(a)caTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列と、
(b)caTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列とを含み、第1の
核酸配列が、第1のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)上に位置し、第1のプ
ロモーターに作動可能に接続し、第2の核酸配列が、第2のベクター(例えば、レンチウ
イルスベクター)上に位置し、第2のプロモーターに作動可能に接続する、核酸が提供さ
れる。いくつかの実施形態では、第1のプロモーターと第2のプロモーターは、同じ配列
を有する。いくつかの実施形態では、第1のプロモーターと第2のプロモーターは、異な
る配列を有する。いくつかの実施形態では、第1のプロモーター及び/又は第2のプロモ
ーターは、誘導性である。いくつかの実施形態では、第1の核酸配列は、宿主細胞(T細
胞など)における発現レベルが、宿主細胞における第2の核酸配列の発現レベルとほぼ同
じである。いくつかの実施形態では、第1の核酸配列は、宿主細胞(T細胞など)におけ
る発現レベルが、宿主細胞における第2の核酸配列の発現レベルの少なくとも約2倍であ
る(例えば、少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍のいずれか、又はもっと多い)。いく
つかの実施形態では、第1の核酸配列は、宿主細胞(T細胞など)における発現レベルが
、宿主細胞における第2の核酸配列の発現レベルの約1/2以下である(例えば、約1/
2、1/3、1/4、1/5以下のいずれか、又はもっと少ない)。いくつかの実施形態
では、第1のベクター及び/又は第2のベクターは、ウイルスベクター(例えば、レンチ
ウイルスベクター)である。
【0229】
いくつかの実施形態では、ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)であって、(
a)caTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列に作動可能に接続し
た第1のプロモーターと、(b)caTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の
核酸配列に作動可能に接続した第2のプロモーターとを含む、本明細書に記載のcaTC
Rのいずれかに係る第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とを含む二量体caT
CRをコードする核酸を含む、ベクターが提供される。いくつかの実施形態では、第1の
プロモーターと第2のプロモーターは、同じ配列を有する。いくつかの実施形態では、第
1のプロモーターと第2のプロモーターは、異なる配列を有する。いくつかの実施形態で
は、第1のプロモーター及び/又は第2のプロモーターは、誘導性である。いくつかの実
施形態では、第1の核酸配列は、宿主細胞(T細胞など)における発現レベルが、宿主細
胞における第2の核酸配列の発現レベルとほぼ同じである。いくつかの実施形態では、第
1の核酸配列は、宿主細胞(T細胞など)における発現レベルが、宿主細胞における第2
の核酸配列の発現レベルの少なくとも約2倍である(例えば、少なくとも約2倍、3倍、
4倍、5倍のいずれか、又はもっと多い)。いくつかの実施形態では、第1の核酸配列は
、宿主細胞(T細胞など)における発現レベルが、宿主細胞における第2の核酸配列の発
現レベルの約1/2以下である(例えば、約1/2、1/3、1/4、1/5以下のいず
れか、又はもっと少ない)。いくつかの実施形態では、ベクターは、ウイルスベクター(
例えば、レンチウイルスベクター)である。
【0230】
いくつかの実施形態では、ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)であって、本
明細書に記載のcaTCRのいずれかに係る第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド
鎖とを含む二量体caTCRをコードする核酸を含み、caTCRが、(a)caTCR
の第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列と、(b)caTCRの第2のポリ
ペプチド鎖をコードする第2の核酸配列とを含み、第1の核酸配列と第2の核酸配列が、
単一のプロモーターの制御下にある、ベクターが提供される。いくつかの実施形態では、
プロモーターは、第1の核酸配列の5’末端に作動可能に接続し、第1の核酸配列には、
配列内リボソーム進入部位(IRES)、及び第1の核酸配列の3’末端を第2の核酸配
列の5’に接続する自己切断型2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2A又はF2
A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列
と第2の核酸配列が、プロモーター制御下、単一のRNAとして転写される。いくつかの
実施形態では、プロモーターは、第2の核酸配列の5’末端に作動可能に接続し、第2の
核酸配列には、配列内リボソーム進入部位(IRES)、及び第2の核酸配列の3’末端
を第1の核酸配列の5’に接続する自己切断型2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、
E2A又はF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、
第1の核酸配列と第2の核酸配列が、プロモーター制御下、単一のRNAとして転写され
る。いくつかの実施形態では、プロモーターは、誘導性である。いくつかの実施形態では
、ベクターは、ウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)である。
【0231】
遺伝子を細胞に導入し、発現させる方法は、当該技術分野において既知である。発現ベ
クターの文脈において、ベクターは、当該技術分野における任意の方法により、宿主細胞
、例えば、哺乳類、細菌、酵母又は昆虫細胞に容易に導入することができる。例えば、発
現ベクターは、物理的、化学的又は生物学的手段によって、宿主細胞に移行することがで
きる。
【0232】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する物理的な方法としては、リン酸カルシウム沈殿
、リポフェクション、粒子衝突、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションな
どが挙げられる。ベクター及び/又は外因性核酸を含む細胞を産生する方法は、当該技術
分野において周知である。例えば、Sambrookら(2001、Molecular
Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring
Harbor Laboratory、New York)を参照。いくつかの実施形
態では、宿主細胞へのポリヌクレオチドの導入は、リン酸カルシウムによるトランスフェ
クションによって行われる。
【0233】
宿主細胞に目的のポリヌクレオチドを導入するための生物学的方法としては、DNA及
びRNAベクターの使用が挙げられる。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクター
は、哺乳動物(例えば、ヒト)の細胞に遺伝子を挿入するための最も広く使用されている
方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、ヘル
ペスウイルス1、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルスなどに由来していてもよい。例
えば、米国特許第5,350,674号及び同第5,585,362号も参照。
【0234】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための化学的手段としては、コロイド状分散系
、例えば、高分子複合体、ナノカプセル、微小球、ビーズ、水中油エマルションを含む脂
質由来の系、ミセル、混合ミセル及びリポソームが挙げられる。in vitro及びi
n vivoでの送達ビヒクルとして使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム
(例えば、人工膜小胞)である。
【0235】
非ウイルス送達系が利用される場合、例示的な送達ビヒクルは、リポソームである。脂
質製剤の使用は、核酸の宿主細胞への(in vitro、ex vivo又はin v
ivoで)導入について想定されている。別の態様では、核酸は、脂質と会合していても
よい。脂質と会合する核酸は、リポソームの水性内側に封入され、リポソームの脂質二重
層内に散在し、リポソーム及びオリゴヌクレオチドの両方に会合する接続分子を介してリ
ポソームに接続し、リポソーム内に捕捉され、リポソームと複合体化し、脂質を含有する
溶液中に分散し、脂質と混合され、脂質と組み合わせられ、脂質中の懸濁物として含まれ
、ミセルと共に含まれるか、又はミセルと複合体化し、又はその他の様式で脂質と会合し
てもよい。脂質、脂質/DNA又は脂質/発現ベクターの会合組成物は、溶液中の任意の
特定の構造に限定されない。例えば、これらは、ミセルとして、又は「潰れた」構造を有
する二重層構造で存在してもよい。これらはまた、単に溶液中に散在してもよく、場合に
よっては、大きさ又は形状が均一ではない凝集体を形成してもよい。脂質は、天然に存在
し得る脂肪物質又は合成脂質である。例えば、脂質としては、天然に細胞質中に生じる脂
肪液滴や、長鎖脂肪族炭化水素及びその誘導体(例えば、脂肪酸、アルコール、アミン、
アミノアルコール及びアルデヒド)を含む化合物群が挙げられる。
【0236】
外因性核酸を宿主細胞に導入するために使用される方法、又はその他、本発明の阻害剤
に細胞をさらす方法に関わらず、宿主細胞中の組換えDNA配列の存在を確認するために
、様々なアッセイを実施することができる。このようなアッセイとしては、例えば、サザ
ンブロット法及びノーザンブロット法、RT-PCR及びPCRなどの当業者に周知の「
分子生物学的」アッセイ、「生化学」アッセイ、例えば、免疫学的手法(ELISA及ぶ
ウェスタンブロット法)によって、又は本発明の範囲内に含まれる薬剤を同定するための
本明細書に記載のアッセイによる、例えば、特定のペプチドの有無を検出するものが挙げ
られる。
caTCRエフェクター細胞
【0237】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRのいずれかに係るcaTCRを
その表面上に提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞)が提供される。いくつかの実
施形態では、エフェクター細胞は、caTCRをコードする核酸を含み、caTCRは、
核酸から発現して、エフェクター細胞表面に局在する。いくつかの実施形態では、caT
CRは、外因的に発現し、エフェクター細胞と組み合わされる。いくつかの実施形態では
、エフェクター細胞は、T細胞である。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、
細胞毒性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞及びサプレッサーT細胞から
なる群から選択される。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、caTCRのT
CR-TMの由来となるTCRサブユニットを発現しない。例えば、いくつかの実施形態
では、エフェクター細胞はαβT細胞であり、導入されたcaTCRのTCR-TMは、
TCRδ及びγ鎖に由来する配列を含むか、又は、T細胞はγδT細胞であり、導入され
たcaTCRのTCR-TMは、TCRα及びβ鎖に由来する配列を含む。いくつかの実
施形態では、エフェクター細胞は、caTCRのTCRDの由来となる内在性TCRサブ
ユニットのうちの一方又は両方の発現を遮断するか、又は減少させるように改変される。
例えば、いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、TCRα及び/又はβ鎖の発現
を遮断するか、又は減少させるように改変されたαβT細胞であり、導入されたcaTC
RのTCRDは、TCRα及びβ鎖に由来する配列を含むか、又は、エフェクター細胞は
、TCRγ及び/又はδ鎖の発現を遮断するか、又は減少させるように改変されたγδT
細胞であり、導入されたcaTCRのTCRDは、TCRγ及びδ鎖に由来する配列を含
む。遺伝子発現を破壊する細胞の改変としては、例えば、RNA干渉(例えば、siRN
A、shRNA、miRNA)、遺伝子編集(例えば、CRISPR系又はTALEN系
の遺伝子ノックアウト)などを含む、当該技術分野において既知の任意のそのような技術
が挙げられる。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、キメラ共刺激受容体(C
SR)を更に含む。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、caTCRが介在す
る免疫応答を増強することが可能な分泌二次エフェクター(SSE)を分泌することが可
能である。
【0238】
例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRのいずれかに係るca
TCRをコードする核酸を含むエフェクター細胞(例えば、T細胞)であって、caTC
Rが、核酸から発現し、エフェクター細胞表面に局在化する、エフェクター細胞が提供さ
れる。いくつかの実施形態では、caTCRをコードする核酸は、caTCRの第1のポ
リペプチド鎖をコードする第1の核酸配列と、caTCRの第2のポリペプチド鎖をコー
ドする第2の核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、第1の核酸配列は、第1のベ
クター上に位置し、第2の核酸配列は、第2のベクター上に位置する。いくつかの実施形
態では、第1の核酸配列と第2の核酸配列は、同じベクター上に位置する。ベクターは、
例えば、哺乳動物発現ベクター及びウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、アデノ
ウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス及びレンチウイルス由来のもの)から
なる群から選択されてもよい。いくつかの実施形態では、ベクターのうちの1つ以上は、
エフェクター細胞の宿主ゲノムに組み込まれる。いくつかの実施形態では、第1の核酸配
列は、第1のプロモーターの制御下にあり、第2の核酸配列は、第2のプロモーターの制
御下にある。いくつかの実施形態では、第1のプロモーターと第2のプロモーターは、同
じ配列を有する。いくつかの実施形態では、第1のプロモーターと第2のプロモーターは
、異なる配列を有する。いくつかの実施形態では、第1の核酸と第2の核酸は、単一のプ
ロモーターの制御下にある。いくつかの実施形態では、第1のプロモーター、第2のプロ
モーター及び/又は単一のプロモーターは、誘導性である。いくつかの実施形態では、第
1のポリペプチド鎖の発現は、第2のポリペプチド鎖の発現とほぼ同じである。いくつか
の実施形態では、第1のポリペプチド鎖の発現は、第2のポリペプチド鎖の発現の少なく
とも約2倍である(例えば、少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍のいずれか、又はもっ
と多い)。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖の発現は、第2のポリペプチ
ド鎖の発現の約1/2以下である(例えば、約1/2、1/3、1/4、1/5以下のい
ずれか、又はもっと少ない)。発現は、mRNAレベル又はタンパク質レベルで求めるこ
とができる。mRNA発現レベルは、ノーザンブロット、定量的RT-PCR、マイクロ
アレイ解析などを含む種々の周知の方法を用い、核酸から転写されたmRNAの量を測定
することによって求めることができる。タンパク質の発現レベルは、免疫細胞化学染色、
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロット分析、発光アッセイ、質
量分析、高速液体クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析
などを含む既知の方法によって測定することができる。いくつかの実施形態では、エフェ
クター細胞は、細胞毒性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞及びサプレッ
サーT細胞からなる群から選択される。
【0239】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRのいずれかに係る
caTCRをその表面上で発現するcaTCRエフェクター細胞(例えば、T細胞)であ
って、caTCRエフェクター細胞が、(a)caTCRの第1のポリペプチド鎖をコー
ドする核酸配列に作動可能に接続した第1のプロモーターを含む第1の核酸と、(b)c
aTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする核酸配列に作動可能に接続した第2のプロ
モーターを含む第2の核酸とを含み、第1のポリペプチド鎖が第1の核酸から発現し、第
2のポリペプチド鎖が第2の核酸から発現して、caTCRを形成し、caTCRが、エ
フェクター細胞の表面に局在する、caTCRエフェクター細胞が提供される。いくつか
の実施形態では、第1のプロモーターと第2のプロモーターは、同じ配列を有する。いく
つかの実施形態では、第1のプロモーターと第2のプロモーターは、異なる配列を有する
。いくつかの実施形態では、第1のプロモーター及び/又は第2のプロモーターは、誘導
性である。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖の発現は、第2のポリペプチ
ド鎖の発現とほぼ同じである。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖の発現は
、第2のポリペプチド鎖の発現の少なくとも約2倍である(例えば、少なくとも約2倍、
3倍、4倍、5倍のいずれか、又はもっと多い)。いくつかの実施形態では、第1のポリ
ペプチド鎖の発現は、第2のポリペプチド鎖の発現の約1/2以下である(例えば、約1
/2、1/3、1/4、1/5以下のいずれか、又はもっと少ない)。いくつかの実施形
態では、エフェクター細胞は、caTCRのTCR-TMの由来となるTCRサブユニッ
トを発現しない。例えば、いくつかの実施形態では、エフェクター細胞はαβT細胞であ
り、導入されたcaTCRのTCR-TMは、TCRδ及びγ鎖に由来する配列を含むか
、又は、エフェクター細胞はγδT細胞であり、導入されたcaTCRのTCR-TMは
、TCRα及びβ鎖に由来する配列を含む。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞
は、caTCRのTCRDの由来となる内在性TCRサブユニットのうちの一方又は両方
の発現を遮断するか、又は減少させるように改変される。例えば、いくつかの実施形態で
は、エフェクター細胞は、TCRα及び/又はβ鎖の発現を遮断するか、又は減少させる
ように改変されたαβT細胞であり、導入されたcaTCRのTCRDは、TCRα及び
β鎖に由来する配列を含むか、又は、エフェクター細胞は、TCRγ及び/又はδ鎖の発
現を遮断するか、又は減少させるように改変されたγδT細胞であり、導入されたcaT
CRのTCRDは、TCRγ及びδ鎖に由来する配列を含む。いくつかの実施形態では、
エフェクター細胞は、細胞毒性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞及びサ
プレッサーT細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ベクターは、エ
フェクター細胞の宿主ゲノムに組み込まれたウイルスベクター(例えば、レンチウイルス
ベクター)である。
【0240】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRのいずれかに係るcaTCRを
その表面上で発現するcaTCRエフェクター細胞(例えば、T細胞)であって、caT
CRエフェクター細胞が、(a)caTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の
核酸配列に作動可能に接続した第1のプロモーターを含む第1のベクターと、(b)ca
TCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列に作動可能に接続した第2の
プロモーターを含む第2のベクターとを含み、第1のポリペプチド鎖が第1の核酸配列か
ら発現し、第2のポリペプチド鎖が第2の核酸配列から発現して、caTCRを形成し、
caTCRが、エフェクター細胞の表面に局在する、caTCRエフェクター細胞が提供
される。いくつかの実施形態では、第1のプロモーターと第2のプロモーターは、同じ配
列を有する。いくつかの実施形態では、第1のプロモーターと第2のプロモーターは、異
なる配列を有する。いくつかの実施形態では、第1のプロモーター及び/又は第2のプロ
モーターは、誘導性である。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖の発現は、
第2のポリペプチド鎖の発現とほぼ同じである。いくつかの実施形態では、第1のポリペ
プチド鎖の発現は、第2のポリペプチド鎖の発現の少なくとも約2倍である(例えば、少
なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍のいずれか、又はもっと多い)。いくつかの実施形態
では、第1のポリペプチド鎖の発現は、第2のポリペプチド鎖の発現の約1/2以下であ
る(例えば、約1/2、1/3、1/4、1/5以下のいずれか、又はもっと少ない)。
いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、caTCRのTCR-TMの由来となる
TCRサブユニットを発現しない。例えば、いくつかの実施形態では、エフェクター細胞
はαβT細胞であり、導入されたcaTCRのTCR-TMは、TCRδ及びγ鎖に由来
する配列を含むか、又は、エフェクター細胞はγδT細胞であり、導入されたcaTCR
のTCR-TMは、TCRα及びβ鎖に由来する配列を含む。いくつかの実施形態では、
エフェクター細胞は、caTCRのTCRDの由来となる内在性TCRサブユニットのう
ちの一方又は両方の発現を遮断するか、又は減少させるように改変される。例えば、いく
つかの実施形態では、エフェクター細胞は、TCRα及び/又はβ鎖の発現を遮断するか
、又は減少させるように改変されたαβT細胞であり、導入されたcaTCRのTCRD
は、TCRα及びβ鎖に由来する配列を含むか、又は、エフェクター細胞は、TCRγ及
び/又はδ鎖の発現を遮断するか、又は減少させるように改変されたγδT細胞であり、
導入されたcaTCRのTCRDは、TCRγ及びδ鎖に由来する配列を含む。いくつか
の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞毒性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキ
ラーT細胞及びサプレッサーT細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では
、第1ベクター及び第2のベクターは、エフェクター細胞の宿主ゲノムに組み込まれたウ
イルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)である。
【0241】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRのいずれかに係るcaTCRを
その表面上で発現するcaTCRエフェクター細胞(例えば、T細胞)であって、caT
CRエフェクター細胞が、(a)caTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の
核酸配列に作動可能に接続した第1のプロモーターと、(b)caTCRの第2のポリペ
プチド鎖をコードする第2の核酸配列に作動可能に接続した第2のプロモーターとを含み
、第1のポリペプチド鎖が第1の核酸配列から発現し、第2のポリペプチド鎖が第2の核
酸配列から発現して、caTCRを形成し、caTCRが、エフェクター細胞の表面に局
在する、caTCRエフェクター細胞が提供される。いくつかの実施形態では、第1のプ
ロモーターと第2のプロモーターは、同じ配列を有する。いくつかの実施形態では、第1
のプロモーターと第2のプロモーターは、異なる配列を有する。いくつかの実施形態では
、第1のプロモーター及び/又は第2のプロモーターは、誘導性である。いくつかの実施
形態では、第1のポリペプチド鎖の発現は、第2のポリペプチド鎖の発現とほぼ同じであ
る。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖の発現は、第2のポリペプチド鎖の
発現の少なくとも約2倍である(例えば、少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍のいずれ
か、又はもっと多い)。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖の発現は、第2
のポリペプチド鎖の発現の約1/2以下である(例えば、約1/2、1/3、1/4、1
/5以下のいずれか、又はもっと少ない)。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞
は、caTCRのTCR-TMの由来となるTCRサブユニットを発現しない。例えば、
いくつかの実施形態では、エフェクター細胞はαβT細胞であり、導入されたcaTCR
のTCR-TMは、TCRδ及びγ鎖に由来する配列を含むか、又は、エフェクター細胞
はγδT細胞であり、導入されたcaTCRのTCR-TMは、TCRα及びβ鎖に由来
する配列を含む。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、caTCRのTCRD
の由来となる内在性TCRサブユニットのうちの一方又は両方の発現を遮断するか、又は
減少させるように改変される。例えば、いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、
TCRα及び/又はβ鎖の発現を遮断するか、又は減少させるように改変されたαβT細
胞であり、導入されたcaTCRのTCRDは、TCRα及びβ鎖に由来する配列を含む
か、又は、エフェクター細胞は、TCRγ及び/又はδ鎖の発現を遮断するか、又は減少
させるように改変されたγδT細胞であり、導入されたcaTCRのTCRDは、TCR
γ及びδ鎖に由来する配列を含む。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、細胞
毒性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞及びサプレッサーT細胞からなる
群から選択される。いくつかの実施形態では、第1ベクター及び第2のベクターは、エフ
ェクター細胞の宿主ゲノムに組み込まれたウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベ
クター)である。
【0242】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRのいずれかに係るcaTCRを
その表面上で発現するcaTCRエフェクター細胞(例えば、T細胞)であって、caT
CRエフェクター細胞が、(a)caTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の
核酸配列に作動可能に接続した第1のプロモーターと、(b)caTCRの第2のポリペ
プチド鎖をコードする第2の核酸配列に作動可能に接続した第2のプロモーターとを含み
、第1のポリペプチド鎖が第1の核酸配列から発現し、第2のポリペプチド鎖が第2の核
酸配列から発現して、caTCRを形成し、caTCRが、エフェクター細胞の表面に局
在する、caTCRエフェクター細胞が提供される。いくつかの実施形態では、第1のプ
ロモーターと第2のプロモーターは、同じ配列を有する。いくつかの実施形態では、第1
のプロモーターと第2のプロモーターは、異なる配列を有する。いくつかの実施形態では
、第1のプロモーター及び/又は第2のプロモーターは、誘導性である。いくつかの実施
形態では、第1のポリペプチド鎖の発現は、第2のポリペプチド鎖の発現とほぼ同じであ
る。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖の発現は、第2のポリペプチド鎖の
発現の少なくとも約2倍である(例えば、少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍のいずれ
か、又はもっと多い)。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖の発現は、第2
のポリペプチド鎖の発現の約1/2以下である(例えば、約1/2、1/3、1/4、1
/5以下のいずれか、又はもっと少ない)。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞
は、caTCRのTCR-TMの由来となるTCRサブユニットを発現しない。例えば、
いくつかの実施形態では、エフェクター細胞はαβT細胞であり、導入されたcaTCR
のTCR-TMは、TCRδ及びγ鎖に由来する配列を含むか、又は、エフェクター細胞
はγδT細胞であり、導入されたcaTCRのTCR-TMは、TCRα及びβ鎖に由来
する配列を含む。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、caTCRのTCRD
の由来となる内在性TCRサブユニットのうちの一方又は両方の発現を遮断するか、又は
減少させるように改変される。例えば、いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、
TCRα及び/又はβ鎖の発現を遮断するか、又は減少させるように改変されたαβT細
胞であり、導入されたcaTCRのTCRDは、TCRα及びβ鎖に由来する配列を含む
か、又は、エフェクター細胞は、TCRγ及び/又はδ鎖の発現を遮断するか、又は減少
させるように改変されたγδT細胞であり、導入されたcaTCRのTCRDは、TCR
γ及びδ鎖に由来する配列を含む。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、細胞
毒性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞及びサプレッサーT細胞からなる
群から選択される。
【0243】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRのいずれかに係るcaTCRを
その表面上で発現するcaTCRエフェクター細胞(例えば、T細胞)であって、caT
CRエフェクター細胞が、(a)caTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の
核酸配列と、(b)caTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列とを
含み、第1の核酸配列と第2の核酸配列が、単一のプロモーターの制御下にあり、第1の
ポリペプチド鎖が第1の核酸配列から発現し、第2のポリペプチド鎖が第2の核酸配列か
ら発現して、caTCRを形成し、caTCRが、エフェクター細胞の表面に局在する、
caTCRエフェクター細胞が提供される。いくつかの実施形態では、プロモーターは、
第1の核酸配列の5’末端に作動可能に接続し、第1の核酸配列には、配列内リボソーム
進入部位(IRES)、及び第1の核酸配列の3’末端を第2の核酸配列の5’に接続す
る自己切断型2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2A又はF2A)をコードする
核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列と第2の核酸配列
が、プロモーター制御下、単一のRNAとして転写される。いくつかの実施形態では、プ
ロモーターは、第2の核酸配列の5’末端に作動可能に接続し、第2の核酸配列には、配
列内リボソーム進入部位(IRES)、及び第2の核酸配列の3’末端を第1の核酸配列
の5’に接続する自己切断型2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2A又はF2A
)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列と
第2の核酸配列が、プロモーター制御下、単一のRNAとして転写される。いくつかの実
施形態では、プロモーターは、誘導性である。いくつかの実施形態では、エフェクター細
胞は、caTCRのTCR-TMの由来となるTCRサブユニットを発現しない。例えば
、いくつかの実施形態では、エフェクター細胞はαβT細胞であり、導入されたcaTC
RのTCR-TMは、TCRδ及びγ鎖に由来する配列を含むか、又は、エフェクター細
胞はγδT細胞であり、導入されたcaTCRのTCR-TMは、TCRα及びβ鎖に由
来する配列を含む。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、caTCRのTCR
Dの由来となる内在性TCRサブユニットのうちの一方又は両方の発現を遮断するか、又
は減少させるように改変される。例えば、いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は
、TCRα及び/又はβ鎖の発現を遮断するか、又は減少させるように改変されたαβT
細胞であり、導入されたcaTCRのTCRDは、TCRα及びβ鎖に由来する配列を含
むか、又は、エフェクター細胞は、TCRγ及び/又はδ鎖の発現を遮断するか、又は減
少させるように改変されたγδT細胞であり、導入されたcaTCRのTCRDは、TC
Rγ及びδ鎖に由来する配列を含む。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、細
胞毒性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞及びサプレッサーT細胞からな
る群から選択される。いくつかの実施形態では、ベクターは、エフェクター細胞の宿主ゲ
ノムに組み込まれたウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)である。
【0244】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCRのいずれかに係るcaTCRを
その表面上で発現するcaTCRエフェクター細胞(例えば、T細胞)であって、caT
CRエフェクター細胞が、(a)caTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の
核酸配列と、(b)caTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列とを
含む、宿主ゲノムに組み込まれたレンチウイルスベクターを含み、第1の核酸配列と第2
の核酸配列が、単一のプロモーターの制御下にあり、第1のポリペプチド鎖が第1の核酸
配列から発現し、第2のポリペプチド鎖が第2の核酸配列から発現して、caTCRを形
成し、caTCRが、エフェクター細胞の表面に局在する、caTCRエフェクター細胞
が提供される。いくつかの実施形態では、第1の核酸配列の5’末端に作動可能に接続し
たプロモーターが存在し、配列内リボソーム進入部位(IRES)、及び第1の核酸配列
の3’末端を第2の核酸配列の5’末端に接続する自己切断型2Aペプチド(例えば、P
2A、T2A、E2A又はF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リン
カーが存在し、第1の核酸配列と第2の核酸配列が、プロモーター制御下、単一のRNA
として転写される。いくつかの実施形態では、第2の核酸配列の5’末端に作動可能に接
続したプロモーターが存在し、配列内リボソーム進入部位(IRES)、及び第2の核酸
配列の3’末端を第1の核酸配列の5’末端に接続する自己切断型2Aペプチド(例えば
、P2A、T2A、E2A又はF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸
リンカーが存在し、第1の核酸配列と第2の核酸配列が、プロモーター制御下、単一のR
NAとして転写される。いくつかの実施形態では、プロモーターは、誘導性である。いく
つかの実施形態では、エフェクター細胞は、caTCRのTCR-TMの由来となるTC
Rサブユニットを発現しない。例えば、いくつかの実施形態では、エフェクター細胞はα
βT細胞であり、導入されたcaTCRのTCR-TMは、TCRδ及びγ鎖に由来する
配列を含むか、又は、エフェクター細胞はγδT細胞であり、導入されたcaTCRのT
CR-TMは、TCRα及びβ鎖に由来する配列を含む。いくつかの実施形態では、エフ
ェクター細胞は、caTCRのTCRDの由来となる内在性TCRサブユニットのうちの
一方又は両方の発現を遮断するか、又は減少させるように改変される。例えば、いくつか
の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRα及び/又はβ鎖の発現を遮断するか、又
は減少させるように改変されたαβT細胞であり、導入されたcaTCRのTCRDは、
TCRα及びβ鎖に由来する配列を含むか、又は、エフェクター細胞は、TCRγ及び/
又はδ鎖の発現を遮断するか、又は減少させるように改変されたγδT細胞であり、導入
されたcaTCRのTCRDは、TCRγ及びδ鎖に由来する配列を含む。いくつかの実
施形態では、エフェクター細胞は、細胞毒性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラー
T細胞及びサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
caTCR、CSR及びSSEの調製
【0245】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCR、CSR及びSSEのいずれか
によれば、抗原結合モジュールは、モノクローナル抗体由来の配列を含むFab様抗原結
合モジュールを含む。いくつかの実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、モノク
ローナル抗体からのVH、CH1、VL及びCLドメインを含む。いくつかの実施形態で
は、抗原結合モジュールは、モノクローナル抗体由来の配列を含むFv又はscFvを含
む。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、モノクローナル抗体に由来する1
つ以上のFab、Fv及びscFvを含む二重特異性融合ドメインを含む。モノクローナ
ル抗体は、例えば、Kohler及びMilstein、Nature、256:495
(1975)及びSergeevaら、Blood、117(16):4262-427
2に記載されるような、例えば、ハイブリドーマ法を用いて調製することができる。
【0246】
ハイブリドーマ法では、ハムスター、マウス、又は他の適切な宿主動物を、典型的には
、免疫剤を用いて免疫し、免疫剤に特異的に結合する抗体を産生するか、又は産生するこ
とが可能なようにリンパ球を導く。あるいは、リンパ球をin vitroで免疫しても
よい。免疫剤は、目的のタンパク質のポリペプチド又は融合タンパク質、又は少なくとも
2つの分子を含む複合体、例えば、ペプチドとMHCタンパク質とを含む複合体を含んで
いてもよい。一般に、ヒト由来の細胞が望まれる場合は、末梢血リンパ球(「PBL」)
を使用し、又は、供給源としてヒト以外の哺乳類が望まれる場合は、脾臓細胞又はリンパ
節細胞を使用する。その後、リンパ球を、好適な融合剤、例えばポリエチレングリコール
を用いて不死化細胞株と融合し、ハイブリドーマ細胞を形成する。例えば、Goding
、Monoclonal Antibodies:Principles and Pr
actice(New York:Academic Press、1986)、pp.
59-103を参照。不死化細胞株は、通常は、形質転換された哺乳類細胞、特に、げっ
歯類、ウシ及びヒト由来の骨髄腫細胞である。通常は、ラット又はマウス骨髄腫細胞株を
用いる。ハイブリドーマ細胞を、適切な培地中で培養してもよく、当該培地は、好ましく
は、融合していない不死化細胞の増殖又は生存を阻害する1つ以上の物質を含む。例えば
、親細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPR
T又はHPRT)を欠損している場合、ハイブリドーマ用の培養培地は、典型的には、ヒ
ポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含み(HAT培地)、この培地は、HGP
RT欠損細胞の増殖を抑制する。
【0247】
いくつかの実施形態では、不死化細胞株は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞
による抗体の安定な高レベル発現を補助し、HAT培地などの培地に感受性である。いく
つかの実施形態では、不死化細胞株は、マウス骨髄腫株であり、例えば、Salk In
stitute Cell Distribution Center(サンディエゴ、
カリフォルニア)及びAmerican Type Culture Collecti
on(マナサッス、バージニア)から得ることができる。ヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘ
テロ骨髄腫細胞株もまた、ヒトモノクローナル抗体の産生について記載されている。Ko
zbor、J.Immunol.、133:3001(1984);Brodeurら、
Monoclonal Antibody Production Technique
s and Applications(Marcel Dekker,Inc.:Ne
w York、1987)、pp.51-63。
【0248】
次いで、ハイブリドーマ細胞を培養する培養培地を、ポリペプチドに対して指向するモ
ノクローナル抗体の存在についてアッセイすることができる。ハイブリドーマ細胞によっ
て産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降法により、又は、ラジオイム
ノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などのin vit
ro結合アッセイによって求めることができる。このような技術及びアッセイは、当該技
術分野において既知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson
及びPollard、Anal.Biochem.、107:220(1980)のSc
atchard分析によって決定されてもよい。
【0249】
所望のハイブリドーマ細胞を同定した後、限界希釈法によってクローンをサブクローニ
ングし、標準的な方法により増殖させることができる。Goding(前掲)。この目的
のための好適な培地としては、例えば、ダルベッコ変法イーグル培地及びRPMI-16
40培地が挙げられる。あるいは、ハイブリドーマ細胞を哺乳動物体内の腹水などといっ
たin vivoで増殖させてもよい。
【0250】
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、例えば、プロテインA-セフ
ァロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィ
ニティクロマトグラフィーなどの従来の免疫グロブリン精製手順によって、培養培地又は
腹水液から単離されるか、又は精製されてもよい。
【0251】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるcaTCR、CSR及びSSEのいず
れかによれば、抗原結合モジュールは、抗体部分ライブラリー(scFv又はFabフラ
グメントを提示するファージライブラリーなど)から選択されるクローンに由来する配列
を含む抗体部分である。クローンは、所望の活性又は複数の活性を有する抗体フラグメン
トのコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって同定されてもよい
。例えば、ファージディスプレイライブラリーを生成し、所望の結合特性を有する抗体に
ついて係るライブラリーをスクリーニングするための様々な方法が当該技術分野において
既知である。このような方法は、例えば、Hoogenboomら、Methods i
n Molecular Biology 178:1-37(O’Brienら編集、
Human Press、Totowa、N.J.、2001)にまとめられており、更
に、例えば、McCaffertyら、Nature 348:552-554;Cla
cksonら、Nature 352:624-628(1991);Marksら、J
.Mol.Biol.222:581-597(1992);Marks及びBradb
ury、Methods in Molecular Biology 248:161
-175(Lo編集、Human Press、Totowa、N.J.、2003);
Sidhuら、J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004);L
eeら、J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004);Fe
llouse、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12
467-12472(2004);及びLeeら、J.Immunol.Methods
284(1-2):119-132(2004)に記載されている。
【0252】
特定のファージディスプレイ方法では、VH及びVL遺伝子のレパートリーを、ポリメ
ラーゼ連鎖反応(PCR)によって別々にクローニングし、ファージライブラリーにおい
て無作為に再結合し、次いで、Winterら、Ann.Rev.Immunol.、1
2:433-455(1994)に記載されるように、抗原結合ファージについてスクリ
ーニングしてもよい。ファージは、典型的には、単鎖Fv(scFv)フラグメント又は
Fabフラグメントのいずれかとして抗体フラグメントを提示する。免疫源からのライブ
ラリーは、ハイブリドーマを構築する必要なく、免疫原に対して高親和性の抗体を提供す
る。あるいは、ナイーブ型レパートリーを(例えば、ヒトから)クローン化して、Gri
ffithsら、EMBO J、12:725-734(1993)に記載されているよ
うな免疫を行わずに、広範囲の非自己抗原及び自己抗原に対し単一の抗体源を提供するこ
とができる。最後に、ナイーブライブラリーはまた、Hoogenboom及びWint
er、J.Mol.Biol.、227:381-388(1992)に記載されている
ように、幹細胞からの再配置されていないV遺伝子をクローニングし、ランダム配列を含
むPCRプライマーを用い、高度に可変性のCDR3領域をコードし、in vitro
での再配置を達成することによって、合成することができる。ヒト抗体ファージライブラ
リーを記載する特許刊行物としては、例えば、米国特許第5,750,373号、及び米
国特許出願公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第
2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/016
0598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号及び同
第2009/0002360号が含まれる。
【0253】
抗体部分は、標的抗原(ペプチド/MHCクラスI/II複合体又は細胞表面抗原など
)に特異的な抗体のライブラリーをスクリーニングするために、ファージディスプレイを
使用して調製することができる。ライブラリーは、少なくとも1×109(例えば、少な
くとも約1×109、2.5×109、5×109、7.5×109、1×1010、2
.5×1010、5×1010、7.5×1010、又は1×1011のいずれか)の多
様性を有するヒトscFvファージディスプレイライブラリーであってもよい。いくつか
の実施形態では、ライブラリーは、ヒトPMBCから抽出されたDNA及び健康なドナー
の脾臓から構築されたナイーブ型ヒトライブラリーであり、全てのヒト重鎖及び軽鎖サブ
ファミリーを包含する。いくつかの実施形態では、ライブラリーは、自己免疫疾患患者、
癌患者及び感染性疾患を有する患者などの様々な疾患を有する患者から単離されたPBM
Cから抽出されたDNAから構築されたナイーブ型ヒトライブラリーである。いくつかの
実施形態では、ライブラリーは、半合成ヒトライブラリーであり、重鎖CDR3は、完全
にランダム化され、全てのアミノ酸(システイン以外)は、任意の所与の位置に存在する
可能性が等しくなる(例えば、Hoet,R.M.ら、Nat.Biotechnol.
23(3):344-348、2005を参照)。いくつかの実施形態では、半合成ヒト
ライブラリーの重鎖CDR3は、約5~約24(例えば、約5、6、7、8、9、10、
11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23又は
24のいずれか)のアミノ酸長を有する。いくつかの実施形態では、ライブラリーは、完
全合成ファージディスプレイライブラリーである。いくつかの実施形態では、ライブラリ
ーは、ヒト以外のファージディスプレイライブラリーである。
【0254】
高親和性で標的抗原に結合するファージクローンは、固体支持体(例えば、溶液パニン
グのためのビーズ又は細胞パニングのための哺乳動物細胞など)に結合させた標的抗原に
対しファージを結合させて、その後、結合していないファージを除去し、特異的に結合し
たファージを溶出することを反復して選択することができる。溶液パニングの一例では、
標的抗原は、固体支持体への固定のためにビオチン化されてもよい。ビオチン化標的抗原
は、ファージライブラリー及び固体支持体(例えば、ストレプトアビジン標識したDyn
abeads M-280)と混合され、次いで、標的抗原ファージビーズ複合体が単離
される。次いで、結合したファージクローンを溶出させ、発現及び精製のために、E.c
oli XL1-Blueなどの適切な宿主細胞を感染させる。細胞パニングの一例では
、AFPペプチドを保有するT2細胞(TAP欠乏、HLA-A*02:01+リンパ芽
細胞株)をファージライブラリーと混合した後、細胞を集め、結合したクローンを溶出さ
せ、発現及び精製のために適切な宿主細胞を感染させるために使用される。パニングは、
標的抗原に特異的に結合するファージクローンを濃縮するために、溶液パニング、細胞パ
ニング、又はそれらの両方の組み合わせのいずれかで、複数回(2、3、4、5、6回、
又はもっと多くのいずれか)行うことができる。濃縮されたファージクローンは、例えば
、ELISA及びFACSを含め、当該技術分野において既知の任意の方法による標的抗
原への特異的結合について試験することができる。
ヒト及びヒト化抗体部分
【0255】
caTCR、CSR及びSSE抗体部分は、ヒトであってもよく、又はヒト化されたも
のであってもよい。ヒト以外(例えば、マウス)の抗体部分をヒト化させたものは、典型
的にはヒト以外の免疫グロブリン由来の配列を最小限で含む、キメラ免疫グロブリン、免
疫グロブリン鎖又はそのフラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)
2、又はその他抗体の抗原結合サブ配列)である。ヒト化抗体部分としては、レシピエン
トのCDRに由来する残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット又
はウサギなどのヒト以外の種のCDR(ドナー抗体)に由来する残基と置き換わった、ヒ
ト免疫グロブリン、ヒト免疫グロブリン鎖、又はこれらのフラグメント(レシピエント抗
体)が挙げられる。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、
対応するヒト以外の残基で置換される。ヒト化抗体の部分はまた、レシピエント抗体部分
又は移入されたCDR又はフレームワーク配列のいずれにおいても見られない残基も含ん
でよい。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質
的に全てを含んでいてもよく、CDR領域の全て又は実質的に全ては、非ヒト免疫グロブ
リンのものと対応し、FR領域の全て又は実質的に全ては、ヒト免疫グロブリンコンセン
サス配列のものである。例えば、Jonesら、Nature、321:522-525
(1986);Riechmannら、Nature、332:323-329(198
8);Presta、Curr.Op.Struct.Biol.、2:593-596
(1992)を参照。
【0256】
一般的に、ヒト化抗体部分は、ヒト以外の供給源から導入された1つ以上のアミノ酸残
基を有する。これらのヒト以外のアミノ酸残基は、典型的には「移入」可変ドメインから
取り込まれた「移入」残基と呼ばれることが多い。いくつかの実施形態によれば、ヒト化
は、ヒト抗体部分の対応する配列のためにげっ歯類CDR又はCDR配列を置換すること
により、Winter及び共同研究者らの方法(Jonesら、Nature、321:
522-525(1986)Riechmannら、Nature、332:323-3
27(1988);Verhoeyenら、Science、239:1534-153
6(1988))に本質的に従って行うことができる。したがって、このような「ヒト化
」抗体部分は、抗体部分(米国特許第4,816,567号)であり、加工を受けていな
いヒト可変ドメインより実質的に小さい部分が、非ヒト種由来の対応する配列によって置
換されている。実際には、ヒト化抗体部分は、典型的には、いくつかのCDR残基及び可
能ならいくつかのFR残基が、げっ歯類抗体の類似部位に由来する残基で置換された、ヒ
ト抗体部分である。
【0257】
ヒト化の代替として、ヒト抗体部分を作成してもよい。例えば、今では、免疫によって
、内因性免疫グロブリンを産生せずにヒト抗体の完全なレパートリーを産生可能なトラン
スジェニック動物(例えば、マウス)を作製可能である。例えば、キメラ及び生殖系変異
マウスの抗体重鎖連結領域(JH)遺伝子のホモ結合型欠失により、内因性抗体の産生を
完全に阻害することが記載されている。ヒト生殖系免疫グロブリン遺伝子アレイをこのよ
うな生殖系変異マウスに導入すると、抗原チャレンジ時にヒト抗体が産生する。例えば、
Jakobovitsら、PNAS USA、90:2551(1993);Jakob
ovitsら、Nature、362:255-258(1993);Bruggema
nnら、Year in Immunol.、7:33(1993);米国特許第5,5
45,806号、同第5,569,825号、同第5,591,669号;同第5,54
5,807号及び国際公開第97/17852号を参照。あるいは、ヒト免疫グロブリン
遺伝子座を、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的に又は完全に不活性化されている、ト
ランスジェニック動物、例えば、マウスに導入することによって、ヒト抗体を作製するこ
とができる。チャレンジ時、遺伝子再配置、アセンブリ及び抗体レパートリーなどの全て
の点において、ヒトで見られるものとよく似たヒト抗体産生が観察される。この手法は、
例えば、米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569
,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;及び同第5,66
1,016号、及びMarksら、Bio/Technology、10:779-78
3(1992);Lonbergら、Nature、368:856-859(1994
);Morrison、Nature、368:812-813(1994);Fish
wildら、Nature Biotechnology、14:845-851(19
96);Neuberger、Nature Biotechnology、14:82
6(1996);Lonberg及びHuszar、Intern.Rev.Immun
ol.、13:65-93(1995)に記載される。
【0258】
ヒト抗体はまた、in vitroでの活性化B細胞(米国特許第5,567,610
号及び同第5,229,275号を参照)によって、又はファージディスプレイライブラ
リーを含む当該技術分野において既知の様々な技術を使用することによって生成されても
よい。Hoogenboom及びWinter、J.Mol.Biol.、227:38
1(1991);Marksら、J.Mol.Biol.、222:581(1991)
を参照)。Coleら及びBoernerらの技術もまた、ヒトモノクローナル抗体の調
製に利用可能である。Coleら、Monoclonal Antibodies an
d Cancer Therapy、Alan R.Liss、p.77(1985)及
びBoernerら、J.Immunol.、147(1):86-95(1991)。
多様体
【0259】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗原結合モジュールのアミノ酸配列の
多様体が想定される。例えば、多様体は、抗原結合モジュールの結合親和性及び/又はそ
の他の生物学的特性を改善するのに望ましい場合がある。抗原結合モジュールのアミノ酸
配列多様体は、抗原結合モジュールをコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入す
ることによって、又はペプチド合成によって、調製することができる。このような改変と
しては、例えば、抗原結合モジュールのアミノ酸配列内の残基の欠失及び/又は挿入及び
/又は置換が挙げられる。最終構築物が所望の特徴(例えば、抗原結合)を有するように
最終構築物に達するように、欠失、挿入及び置換の任意の組み合わせが行われてもよい。
【0260】
いくつかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗原結合モジュール変異体
が提供される。置換変異導入の目的の部位としては、抗体部分のHVR及びFRが挙げら
れる。アミノ酸置換は、例えば、抗原結合の保持/改善、又は免疫原性低減などといった
所望の活性についてスクリーニングされた、対象の抗原結合モジュール及び生成物に導入
することができる。
【0261】
【0262】
アミノ酸は、共通の側鎖特性に従って、異なるクラスに分類されてもよい。
a.疎水性:Norleucine、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
b.中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
c.酸性:Asp、Glu;
d.塩基性:His、Lys、Arg;
e.鎖の向きに影響を与える残基:Gly、Pro
f.芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0263】
非保存的置換は、これらの分類のうち1つを別の分類のものに交換することを伴う。
【0264】
例示的な置換多様体は、親和性成熟した抗体部分であり、例えば、ファージディスプレ
イをベースとした親和性成熟技術を使用し、簡便に生成することができる。簡潔に述べる
と、1つ以上のCDR残基に変異を導入し、ファージ上に表示された当該多様体抗体部分
を、特定の生体活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。例えば、抗体
部分の親和性を改善するために、改変(例えば、置換)をHVRで作製することができる
。このような改変は、HVR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高
頻度で変異を受けるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury、M
ethods Mol.Biol.207:179-196(2008)を参照)、及び
/又は特異性決定残基(SDR)でなされてもよく、得られた多様体VH又はVLは、結
合親和性について試験される。二次ライブラリーを構築し、再選択することによる親和性
成熟は、例えば、Hoogenboomら、Methods in Molecular
Biology 178:1-37(O’Brienら編集、Human Press
、Totowa、NJ(2001))に記載されている。
【0265】
親和性成熟のいくつかの実施形態では、多様性は、多様な方法(例えば、エラープロー
ンPCR、連鎖シャッフル、又はオリゴヌクレオチド指向突然変異誘発)のいずれかによ
って、成熟のために選択された可変遺伝子に導入される。次いで、二次ライブラリーが作
成される。次いで、このライブラリーをスクリーニングし、所望の親和性を有する任意の
抗体部分多様体を同定する。多様性を導入するための別の方法は、いくつかのHVR残基
(例えば、一度に4~6残基)がランダム化される、HVRを対象とする手法を伴う。抗
原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異導入又はモデリング
を用いて特異的に同定されてもよい。CDR-H3及びCDR-L3は、特に標的とされ
ることが多い。
【0266】
いくつかの実施形態では、置換、挿入又は欠失は、このような改変により抗体部分の抗
原結合能を実質的に低下させないようにして、1つ以上のHVR内で行われてもよい。例
えば、結合親和性を実質的に低下させない保存的改変(例えば、本明細書で提供される保
存的置換)が、HVRにおいて行われてもよい。このような変更は、HVR「ホットスポ
ット」又はSDRの外側にあってもよい。上に提供された多様体VH及びVL配列のいく
つかの実施形態では、各HVRは、変更されていないか、又は1つ以下、2つ又は3つ以
下のアミノ酸置換を含む。
【0267】
変異導入のために標的とされ得る抗原結合モジュールの残基又は領域の同定に有用な方
法は、「アラニンスキャニング変異導入」と呼ばれ、Cunningham及びWell
s(1989)Science,244:1081-1085に記載されている。この方
法では、標的残基又は標的残基群(例えば、arg、asp、his、lys及びglu
などの帯電した残基)が同定され、中性又は負に帯電したアミノ酸(例えば、アラニン又
はポリアラニン)によって置き換えられ、抗原結合モジュールと抗原との相互作用が影響
を受けているかどうかを判定する。更なる置換は、初期の置換に対する機能的感受性を示
すアミノ酸位置に導入されてもよい。あるいは、又更に、抗原-抗原-結合モジュール複
合体の結晶構造を決定し、抗原結合モジュールと抗原との間の接触点を同定することがで
きる。このような接触残基及び隣接する残基は、置換の候補として標的とされてもよく、
又は除外されてもよい。多様体をスクリーニングし、所望の特性を含有するかどうかを判
定してもよい。
【0268】
アミノ酸配列挿入として、1つの残基から100以上の残基を含むポリペプチドまで長
さに幅がある、アミノ及び/又はカルボキシル末端融合、並びに、単一若しくは複数のア
ミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を
有する抗原結合モジュールが挙げられる。抗原結合モジュールのその他の挿入多様体とし
ては、酵素に対する抗原結合モジュールのN末端又はC末端への融合(例えば、ADEP
T向け)、又は抗原結合モジュールの血清半減期を延長するポリペプチドが挙げられる。
誘導体
【0269】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるcaTCRsのいずれかに係るcaT
CR、本明細書に記載されるCSRのいずれかに係るCSR、及び/又は本明細書に記載
のSSEのいずれかに係るSSEは、当該技術分野において既知であり、容易に入手可能
な更なる非タンパク質性部分を含有するように更に改変されてもよい。caTCR及び/
又はCSR及び/又はSSEの誘導体化に好適な部分としては、水溶性ポリマーが挙げら
れるが、これに限定されない。水溶性ポリマーの非限定例としては、限定されないが、ポ
リエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリ
マー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニル
ピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン
/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのい
ずれか)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール
、プロプロピレン(propropylene)グリコールホモポリマー、プロリプロピレン(prolyp
ropylene)オキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例
えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物が挙げられる。ポリ
エチレングリコールプロピオンアルデヒドは、その水中安定性から、製造における利点を
有し得る。ポリマーは、任意の分子量であってよく、分枝型又は非分枝型であってよい。
caTCR及び/又はCSR及び/又はSSEに接続するポリマーの数は、様々であって
もよく、1つより多いポリマーが接続する場合、ポリマーは、同じ分子であってもよく、
又は異なる分子であってもよい。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又は
種類は、改良されるcaTCR及び/又はCSR及び/又はSSEの特定の性質又は機能
、caTCR及び/又はCSR及び/又はSSE誘導体が、所定の条件などで治療に使用
されるかどうかなどを含むがこれらに限定されない検討事項に基づいて決定することがで
きる。
【0270】
いくつかの実施形態では、放射線への曝露によって選択的に加熱され得るcaTCR及
び/又はCSR及び/又はSSE及び非タンパク質性部分の標識が提供される。いくつか
の実施形態では、非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブである(Kamら、Pr
oc.Natl.Acad.Sci.USA 102:11600-11605(200
5))。放射線は、任意の波長を有するものであってもよく、限定されないが、通常の細
胞を害しないが、caTCR-及び/又はCSR-及び/又はSSE-非タンパク質性部
分の近位の細胞が死滅する温度に非タンパク質性部分を加熱する波長が挙げられる。
caTCRエフェクター細胞の調製
【0271】
本発明は、一態様では、caTCRを発現するエフェクター細胞(例えば、リンパ球、
例えばT細胞)を提供する。caTCRを発現するエフェクター細胞(例えば、T細胞)
(caTCRエフェクター細胞、例えば、caTCR T細胞)を調製する例示的な方法
が、本明細書で提供される。
【0272】
いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞(caTCR T細胞など)は
、標的抗原(例えば、疾患関連抗原)に特異的に結合するcaTCR(例えば、本明細書
に記載のcaTCRのいずれか)をコードする1つ以上の核酸(例えば、レンチウイルス
ベクターを含む)をエフェクター細胞に導入することによって生成することができる。エ
フェクター細胞への1つ以上の核酸の導入は、核酸について本明細書に記載される技術な
ど、当該技術分野において既知の技術を使用して達成することができる。いくつかの実施
形態では、本発明のcaTCRエフェクター細胞(例えば、caTCR T細胞)は、i
n vivoで複製することができ、その結果、標的抗原(例えば、癌又はウイルス感染
)の発現に関連する疾患の持続的な制御をもたらし得る、長期持続性をもたらす。
【0273】
いくつかの実施形態では、本発明は、例えば癌又はウイルス感染を含む標的抗原の発現
に関連する疾患及び/又は障害(本明細書では、「標的抗原陽性」又は「TA陽性」疾患
又は障害とも呼ばれる)を発症するか、又は発症するリスクがある患者の治療のために、
本明細書に記載のcaTCRのいずれかに係る標的抗原に特異的に結合するcaTCRを
発現する遺伝子改変T細胞を、リンパ球注入を用いて投与することに関する。いくつかの
実施形態では、自己リンパ球注入が、治療に使用される。自己PBMCは、治療を必要と
する患者から集められ、T細胞は、本明細書に記載され、当該技術分野において既知の方
法を使用して活性化され、増殖され、次いで患者に注入により戻される。
【0274】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcaTCR(本明細書では「caTCR
T細胞」とも呼ばれる)のいずれかに係る標的抗原に特異的に結合するcaTCRを発現
するT細胞が提供される。本発明のcaTCR T細胞は、安定したin vivoでの
T細胞増殖を受けることができ、血液及び骨髄の中で長期間にわたって高レベルを維持す
る標的抗原に特異的なメモリー細胞を確立することができる。いくつかの実施形態では、
患者に注入された本発明のcaTCR T細胞は、標的抗原に関連する疾患を有する患者
について、in vivoで標的抗原提示細胞(例えば、標的抗原提示癌又はウイルスに
よって感染した細胞)を排除することができる。いくつかの実施形態では、患者に注入さ
れた本発明のcaTCR T細胞は、少なくとも1つの従来の治療に対して難治性の標的
抗原関連疾患を有する患者についてin vivoで標的抗原提示細胞(例えば、標的抗
原提示癌又はウイルスに感染した細胞)を排除することができる。
【0275】
T細胞の増殖及び遺伝子改変の前に、T細胞源は、対象から得られる。T細胞は、末梢
血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸膜
滲出液、脾臓組織及び腫瘍を含む多数の供給源から得ることができる。本発明のいくつか
の実施形態では、当該技術分野において利用可能な任意の数のT細胞株を使用することが
できる。本発明のいくつかの実施形態では、T細胞は、FICOLL(商標)分離などの
当業者に既知の任意の数の技術を使用して、対象から採取された血液単位から得ることが
できる。いくつかの実施形態では、個体の循環血液由来の細胞は、アフェレーシスによっ
て得られる。アフェレーシス製品は、典型的には、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の
有核白血球、赤血球、及び血小板を含むリンパ球を含有する。いくつかの実施形態では、
アフェレーシスによって収集された細胞を洗浄して血漿画分を除去し、後続の処理工程の
ために適切な緩衝液又は培地に細胞を配置することができる。いくつかの実施形態では、
細胞は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄される。いくつかの実施形態では、洗浄
溶液はカルシウムを含まず、マグネシウムを含まなくてもよく、又は二価カチオンが全く
存在しない場合には、多く存在しなくてもよい。当業者であれば、製造業者の指示に従っ
て、半自動化「フロースルー」遠心分離器(例えば、Cobe 2991細胞処理機、B
axter CytoMate,又はHaemonetics Cell Saver
5)を使用するなどして、当該技術分野において既知の方法によって洗浄工程を達成して
もよいことを容易に理解するだろう。洗浄後、細胞は、Ca2+を含まず、Mg2+を含
まないPBS、PlasmaLyte A、又は緩衝剤を含むか、又は含まない他の生理
食塩水溶液などの様々な生体適合性緩衝液中に再懸濁されてもよい。あるいは、アフェレ
ーシスサンプルの望ましくない成分を除去し、細胞を培地に直接再懸濁させてもよい。
【0276】
いくつかの実施形態では、T細胞は、赤血球細胞を溶解し、単球を枯渇させることによ
り、例えばPERCOLL(商標)勾配による遠心分離、又は対向流遠心分離溶出によっ
て、末梢血リンパ球から単離される。CD3+、CD28+、CD4+、CD8+、CD
45RA+及びCD45RO+T細胞などのT細胞の特定の部分集合は、陽性又は陰性の
選択法によって更に単離されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、T細胞は、所
望のT細胞を陽性選択するのに十分な時間にわたって、抗CD3/抗CD28(すなわち
、3×28)標識ビーズ(例えば、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3
/CD28 T)とのインキュベーションによって、所望のT細胞の陽性選択に十分な時
間にわたって、T細胞を単離する。いくつかの実施形態では、期間は、約30分である。
いくつかの実施形態では、期間は、30分~36時間の範囲、又はもっと長い(これらの
値の間の全ての範囲を含む)。いくつかの実施形態では、期間は、少なくとも1時間、2
時間、3時間、4時間、5時間又は6時間である。いくつかの実施形態では、期間は、1
0~24時間である。いくつかの実施形態では、インキュベーション時間は、24時間で
ある。白血病患者からT細胞を単離する際、24時間などのより長いインキュベーション
時間を用いることよって、細胞収率を増加させることができる。腫瘍浸潤リンパ球(TI
L)を腫瘍組織から単離する際、又は免疫不全の個体から腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を
単離する際、他の細胞型と比較して、数種類のT細胞が存在する任意の状況でT細胞を単
離するために、より長いインキュベーション時間を使用することができる。更に、より長
いインキュベーション時間の使用は、CD8+T細胞の捕捉効率を高めることができる。
したがって、T細胞をCD3/CD28ビーズに結合させる時間を単純に短くするか、又
は長くすることによって、及び/又はT細胞に対するビーズの比率を増やすか、又は減ら
すことによって、T細胞の分集団を、培養開始のために、又は培養開始に対して、又はこ
のプロセス中の他の時点で優先的に選択することができる。更に、ビーズ又は他の表面上
の抗CD3抗体及び/又は抗CD28抗体の比を増加させるか、又は減少させることによ
って、T細胞の分集団は、培養開始のために、又は培養開始時に、又は他の所望な時間点
で優先的に選択されてもよい。当業者は、本発明の文脈において、複数回の選択を使用し
てもよいことを認識するだろう。いくつかの実施形態では、選択手順を実行し、活性化及
び増殖プロセスにおいて、「選択されていない」細胞を使用することが望ましい場合があ
る。「選択されていない」細胞にも、更なる選択を行ってもよい。
【0277】
陰性選択によるT細胞集団の濃縮は、負に選択された細胞に固有の表面マーカーを対象
とする抗体の組み合わせで達成することができる。1つの方法は、負であると選択された
細胞上に存在する細胞表面マーカーを指向するモノクローナル抗体のカクテルを使用する
、陰性磁気免疫接着又はフローサイトメトリーによる細胞選別及び/又は選択である。例
えば、陰性選択によってCD4+細胞を濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは
、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR及びCD8に
対する抗体を含む。いくつかの実施形態では、典型的には、CD4+、CD25+、CD
62Lhi、GITR+及びFoxP3+を発現する制御T細胞を濃縮するか、又は陽性
選択することが望ましい場合がある。あるいは、いくつかの実施形態では、制御性T細胞
は、抗CD25標識したビーズ又は他の同様の選択方法によって消耗される。
【0278】
陽性選択又は陰性選択による所望の細胞集団の単離のために、細胞及び表面(例えば、
ビーズなどの粒子)の濃度を変化させることができる。いくつかの実施形態では、細胞と
ビーズとを確実に最大限に接触させるために、ビーズと細胞が一緒に混合される体積を著
しく減少させる(すなわち、細胞の濃度を増加させる)ことが望ましい場合がある。例え
ば、いくつかの実施形態では、約20億細胞/mLの濃度が使用される。いくつかの実施
形態では、約10億細胞/mLの濃度が使用される。いくつかの実施形態では、約1億細
胞/mLより多く使用される。いくつかの実施形態では、約1千万、1千5百万、2千万
、2千5百万、3千万、3千5百万、4千万、4千5百万又は5千万個の細胞/mLのい
ずれかの細胞濃度が使用される。いくつかの実施形態では、約7千5百万、8千万、8千
5百万、9千万、9千5百万又は1億個の細胞/mLのいずれかの細胞濃度が使用される
。いくつかの実施形態では、約1億2千5百万細胞/mL又は約1億5千万細胞/mLの
濃度が使用される。高濃度を使用すると、細胞収率、細胞活性化及び細胞増殖を増加させ
ることができる。更に、高い細胞濃度を用いることで、CD28陰性T細胞などの目的の
標的抗原を弱く発現し得る細胞、又は多くの腫瘍細胞が存在するサンプル(すなわち、白
血病血液、腫瘍組織など)からの、より効率的な細胞の捕捉を可能にする。このような細
胞集団は、治療価値を有し得るものであり、治療価値が得られることが望ましいだろう。
例えば、高濃度の細胞を使用することにより、CD28発現が通常より弱いCD8+T細
胞のより効率的な選択を可能にする。
【0279】
本発明のいくつかの実施形態では、T細胞は、治療直後に患者から得られる。この点に
関し、特定の癌治療後、特に、免疫系を損傷する薬物による治療に続いて、患者が通常治
療から回復する期間中に、治療からすぐ後に、得られるT細胞の質は、ex vivoで
増殖する能力に関して最適であるか、又は改善され得ることが観察されている。同様に、
本明細書に記載される方法を使用したex vivoでの操作に続いて、これらの細胞は
、強化された生着及びin vivoでの増殖のための好ましい状態であってもよい。し
たがって、本発明の文脈内では、この回復期間中に、T細胞、樹状細胞、又は造血系の他
の細胞を含む血液細胞を集めることが、本発明の文脈内で想定される。更に、いくつかの
実施形態では、動員(例えば、GM-CSFによる動員)及びコンディショニングレジメ
ンを使用して、対象において、特に治療後の定義された期間に、特定の細胞型の再増殖、
再循環、再生、及び/又は増殖が有利である条件をもたらす事ができる。例示的な細胞型
としては、T細胞、B細胞、樹状細胞、及び免疫系の他の細胞が挙げられる。
【0280】
所望なcaTCRを発現するためのT細胞の遺伝子改変の前又は後に、多くの場合、例
えば、米国特許第6,352,694号、同第6,534,055号;同第6,905,
680号;同第6,692,964号;同第5,858,358号;同第6,887,4
66号;同第6,905,681号;同第7,144,575号;同第7,067,31
8号;同第7,172,869号;同第7,232,566号;同第7,175,843
号;同第5,883,223号;同第6,905,874号;同第6,797,514号
;同第6,867,041号;及び米国特許出願公開第20060121005号に記載
されている方法を使用して、T細胞が活性化され、増殖されてもよい。
【0281】
一般的に、本発明のT細胞は、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する薬剤と、
T細胞の表面上にある共刺激分子を刺激するリガンドと、T細胞に接続されている表面と
を接触させることによって増殖される。特に、T細胞集団は、例えば、抗CD3抗体又は
その抗原結合フラグメント、又はある表面に固定された抗CD2抗体との接触によって、
又はカルシウムイオノフォアと組み合わせたタンパク質キナーゼC活性化因子(例えば、
ブリオスタチン)との接触によって、刺激されてもよい。T細胞表面上のアクセサリー分
子の共刺激のために、アクセサリー分子に結合するリガンドが使用される。例えば、T細
胞集団は、T細胞の増殖を刺激するのに適切な条件で、抗CD3抗体及び抗CD28抗体
と接触してもよい。CD4+T細胞又はCD8+T細胞のいずれかの増殖を刺激するため
の、抗CD3抗体及び抗CD28抗体。抗CD28抗体の例としては、9.3、B-T3
、当該技術分野で一般的に知られる他の方法であり得るような、使用可能なXR-CD2
8(Diaclone、ブザンソン、フランス)が挙げられる(Bergら、Trans
plant Proc.30(8):3975-3977、1998;Haanenら、
J.Exp.Med.190(9):13191328、1999;Garlandら、
J.Immunol.Meth.227(1-2):53-63、1999)。
【0282】
本明細書に記載される任意のそのような実施形態のいくつかにおいて、caTCRエフ
ェクター細胞の調製は、caTCRエフェクター細胞の疲弊を最小限に抑えるか、又は実
質的に全くもたらさない。例えば、いくつかの実施形態では、調製によって、約50%未
満(例えば、約45、40、35、30、25、20、15、10又は5%未満などのい
ずれか)のcaTCRエフェクター細胞が消耗する。エフェクター細胞の疲弊は、本明細
書に記載される任意の手段を含め、当該技術分野において既知の任意の手段によって求め
ることができる。
【0283】
本明細書に記載される任意のそのような実施形態のいくつかにおいて、caTCRエフ
ェクター細胞の調製は、caTCRエフェクター細胞の最終分化を最小限に抑えるか、又
は実質的に全くもたらさない。例えば、いくつかの実施形態では、調製によって、約50
%未満(例えば、約45、40、35、30、25、20、15、10又は5%未満など
のいずれか)のcaTCRエフェクター細胞が最終分化する。エフェクター細胞の分化は
、本明細書に記載される任意の手段を含め、当該技術分野において既知の任意の手段によ
って判定することができる。
【0284】
本明細書に記載される任意のそのような実施形態のいくつかにおいて、caTCRエフ
ェクター細胞の調製は、caTCRエフェクター細胞のcaTCRの内在化を最小限に抑
えるか、又は実質的に全くもたらさない。例えば、いくつかの実施形態では、調製によっ
て、caTCRエフェクター細胞の約50%未満(例えば、約45、40、35、30、
25、20、15、10又は5%未満などのいずれか)のcaTCRが内在化する。ca
TCRエフェクター細胞でのcaTCRの内在化は、本明細書に記載される任意の手段を
含め、当該技術分野において既知の任意の手段によって判定することができる。
遺伝子改変
【0285】
いくつかの実施形態では、本発明のcaTCRエフェクター細胞(例えば、caTCR
T細胞)は、本明細書に記載のcaTCRをコードするウイルスベクターを用いてエフ
ェクター細胞(本明細書に記載の方法によって調製されるT細胞など)に形質導入するこ
とによって生成される。ウイルスベクター送達システムは、エフェクター細胞への送達後
にエピソーム又は統合ゲノムのいずれかを有するDNA及びRNAウイルスを含む。遺伝
子治療手技の概説としては、Anderson、Science 256:808-81
3(1992);Nabel及びFeigner、TIBTECH 11:211-21
7(1993);Mitani及びCaskey、TIBTECH 11:162-16
6(1993);Dillon、TIBTECH 11:167-175(1993);
Miller、Nature 357:455-460(1992);Van Brun
t、Biotechnology 6(10):1149-1 154(1988);V
igne、Restorative Neurology and Neuroscie
nce 8:35-36(1995);Kremer & Perricaudet、B
ritish Medical Bulletin 51(l):31-44(1995
);及びYuら、Gene Therapy 1:13-26(1994)を参照のこと
。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターであり、ca
TCRエフェクター細胞は、caTCRエフェクター細胞ゲノムに組み込まれたレンチウ
イルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞は、その
ゲノムに組み込まれたレンチウイルスベクターを含むcaTCR T細胞である。
【0286】
いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞は、その内在性TCR鎖のうち
の一方又は両方の発現を遮断するか、又は減少させるように改変されたT細胞である。例
えば、いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞は、TCRα及び/又はβ
鎖の発現を遮断するか、又は減少させるように改変されたαβT細胞であり、導入された
caTCRのTCRDは、TCRα及びβ鎖に由来する配列を含むか、又は、caTCR
エフェクター細胞は、TCRγ及び/又はδ鎖の発現を遮断するか、又は減少させるよう
に改変されたγδT細胞であり、導入されたcaTCRのTCRDは、TCRγ及びδ鎖
に由来する配列を含む。遺伝子発現を破壊する細胞の改変としては、例えば、RNA干渉
(例えば、siRNA、shRNA、miRNA)、遺伝子編集(例えば、CRISPR
系又はTALEN系の遺伝子ノックアウト)などを含む、当該技術分野において既知の任
意のそのような技術が挙げられる。
【0287】
いくつかの実施形態では、T細胞の内在性TCR鎖の一方又は両方の発現が減少したc
aTCR T細胞は、CRISPR/Cas系を使用して生成される。遺伝子編集のCR
ISPR/Casシステムの概説としては、例えば、Jian W及びMarraffi
ni LA、Annu.Rev.Microbiol.69、2015;Hsu PDら
、Cell、157(6):1262-1278、2014;及びO’Connell
MRら、NatureVolume:516:263-266、2014を参照。いくつ
かの実施形態では、T細胞の内在性TCR鎖の一方又は両方の発現が減少したcaTCR
T細胞は、TALEN系のゲノム編集を使用して生成される。
濃縮
【0288】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるcaTCRエフェクター細胞のいずれ
かに係るcaTCRエフェクター細胞の不均一な細胞集団を濃縮する方法が提供される。
【0289】
標的抗原に特異的に結合するcaTCRエフェクター細胞(例えば、caTCR T細
胞)の特定の分集団は、陽性選択技術によって濃縮することができる。例えば、いくつか
の実施形態では、caTCRエフェクター細胞(例えば、caTCR T細胞)は、所望
のcaTCRエフェクター細胞を陽性選択するのに十分な時間にわたる、標的抗原結合ビ
ーズとのインキュベーションによって濃縮される。いくつかの実施形態では、期間は、約
30分である。いくつかの実施形態では、期間は、30分~36時間の範囲、又はもっと
長い(これらの値の間の全ての範囲を含む)。いくつかの実施形態では、期間は、少なく
とも1時間、2時間、3時間、4時間、5時間又は6時間である。いくつかの実施形態で
は、期間は、10~24時間である。いくつかの実施形態では、インキュベーション時間
は、24時間である。不均一な細胞集団において低濃度で存在するcaTCRエフェクタ
ー細胞の単離のために、更に長いインキュベーション時間(例えば24時間)を使用する
と、細胞収率を高めることができる。他の細胞型と比較して存在するcaTCRエフェク
ター細胞が少ない任意の状況において、caTCRエフェクター細胞を単離するために、
更に長いインキュベーション時間を使用してもよい。当業者は、本発明の文脈において、
複数回の選択を使用してもよいことを認識するだろう。
【0290】
陽性選択によりcaTCRエフェクター細胞の所望の集団を単離するために、細胞と表
面(例えば、ビーズなどの粒子)の濃度を変えてもよい。いくつかの実施形態では、細胞
とビーズの最大接触を確実にするために、ビーズと細胞が一緒に混合される(すなわち、
細胞の濃度を増加させる)体積を著しく減少させることが望ましい場合がある。例えば、
いくつかの実施形態では、約20億細胞/mLの濃度が使用される。いくつかの実施形態
では、約10億細胞/mLの濃度が使用される。いくつかの実施形態では、約1億細胞/
mLより多く使用される。いくつかの実施形態では、約1千万、1千5百万、2千万、2
千5百万、3千万、3千5百万、4千万、4千5百万又は5千万細胞/mLのいずれかの
細胞濃度が使用される。いくつかの実施形態では、約7千5百万、8千万、8千5百万、
9千万、9千5百万又は1億細胞/mLのいずれかの細胞濃度が使用される。いくつかの
実施形態では、約1億2千5百万又は約1億5千万細胞/mLの濃度が使用される。高濃
度を使用すると、細胞収率、細胞活性化及び細胞増殖を増加させることができる。更に、
高い細胞濃度の使用は、caTCRを弱く発現し得るcaTCRエフェクター細胞のより
効率的な捕捉を可能にする。
【0291】
本明細書に記載される任意のそのような実施形態のいくつかにおいて、濃縮は、caT
CRエフェクター細胞の疲弊を最小限に抑えるか、又は実質的に全くもたらさない。例え
ば、いくつかの実施形態では、濃縮によって、約50%未満(例えば、約45、40、3
5、30、25、20、15、10又は5%未満などのいずれか)のcaTCRエフェク
ター細胞が枯渇する。エフェクター細胞の疲弊は、本明細書に記載される任意の手段を含
め、当該技術分野において既知の任意の手段によって決定することができる。
【0292】
本明細書に記載される任意のそのような実施形態のいくつかにおいて、濃縮は、caT
CRエフェクター細胞の最終分化を最小限に抑えるか、又は実質的に全くもたらさない。
例えば、いくつかの実施形態では、濃縮によって、約50%未満(例えば、約45、40
、35、30、25、20、15、10又は5%未満などのいずれか)のcaTCRエフ
ェクター細胞が最終分化する。エフェクター細胞の分化は、本明細書に記載される任意の
手段を含め、当該技術分野において既知の任意の手段によって判定することができる。
【0293】
本明細書に記載される任意のそのような実施形態のいくつかにおいて、濃縮は、caT
CRエフェクター細胞のcaTCRの内在化を最小限に抑えるか、又は実質的に全くもた
らさない。例えば、いくつかの実施形態では、濃縮によって、caTCRエフェクター細
胞の約50%未満(例えば、約45、40、35、30、25、20、15、10又は5
%未満などのいずれか)のcaTCRエフェクター細胞が内在化する。caTCRエフェ
クター細胞でのcaTCRの内在化は、本明細書に記載される任意の手段を含め、当該技
術分野において既知の任意の手段によって判定することができる。
【0294】
本明細書に記載される任意のそのような実施形態のいくつかにおいて、濃縮は、caT
CRエフェクター細胞の増殖を増加させる。例えば、いくつかの実施形態では、濃縮によ
って、濃縮後のcaTCRエフェクター細胞の数を少なくとも約10%(例えば、少なく
とも約20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、4
00、500、1000%のいずれか、又はもっと多く)増加させる。
【0295】
したがって、いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的に結合するcaTCRを発現
するcaTCRエフェクター細胞の不均一な細胞集団を濃縮する方法であって、(a)不
均一な細胞集団と、標的抗原又はその中に含まれる1つ以上のエピトープを含む捕捉分子
とを接触させ、捕捉分子に結合するcaTCRエフェクター細胞を含む複合体を形成する
ことと、(b)この複合体を、不均一な細胞集団から分離し、それによって、caTCR
エフェクター細胞が濃縮された細胞集団を生成することとを含む、方法が提供される。い
くつかの実施形態では、捕捉分子は、固体支持体に固定される。いくつかの実施形態では
、固体支持体は、粒状物(ビーズなど)である。いくつかの実施形態では、固体支持体は
、表面(ウェルの底部など)である。いくつかの実施形態では、捕捉分子は、タグで標識
される。いくつかの実施形態では、タグは、蛍光分子、親和性タグ又は磁気タグである。
いくつかの実施形態では、本方法は、捕捉分子からcaTCRエフェクター細胞を溶出さ
せ、溶出物を回収することを更に含む。
ライブラリースクリーニング
【0296】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的な候補caTCR構築物を単離するために
、caTCRライブラリー(例えば、複数のcaTCRをコードする核酸のライブラリー
を発現する細胞)が、標的抗原又はその中に含まれる1つ以上のエピトープを含む捕捉分
子にさらされてもよく、その後、捕捉分子に特異的に結合するライブラリーの親和性メン
バーの単離が行われてもよい。いくつかの実施形態では、捕捉分子は、固体支持体上に固
定される。いくつかの実施形態では、支持体は、ビーズ、マイクロタイタープレート、免
疫チューブ、又はそのような目的に有用な当該技術分野において既知の任意の材料の表面
であってもよい。いくつかの実施形態では、相互作用は、タグ付き捕捉分子(例えば、ビ
オチン化捕捉分子)により、溶液中で起こる。いくつかの実施形態では、この手順は、非
特異的かつ非反応性のライブラリーメンバーを除去するための1つ以上の洗浄工程(パニ
ング)を含む。いくつかの実施形態では、溶液中の複合体を精製するために、複合体は、
固定又は遠心分離のいずれかによって集められる。いくつかの実施形態では、親和性メン
バーは、可溶性ビオチン化捕捉分子上に捕捉され、その後、ストレプトアビジンビーズ上
への親和性複合体(親和性メンバーと捕捉分子)の固定が続く。いくつかの実施形態では
、固体支持体は、ビーズである。いくつかの実施形態では、ビーズとしては、例えば、磁
気ビーズ(例えば、Bangs Laboratories、Polysciences
inc.、Dynal Biotech、Miltenyi Biotech又はQu
antum Magnetic製)、非磁気ビーズ(例えば、Pierce and U
pstate technology)、単分散ビーズ(例えば、Dynal Biot
ech及びMicroparticle Gmbh)及び多分散ビーズ(例えば、Che
magen)が挙げられる。磁気ビーズの使用は、文献(Uhlen,Mら(1994)
、Advances in Biomagnetic Separation、BioT
echniques press、ウェストボロー、MA)に記載されている。いくつか
の実施形態では、親和性メンバーは、陽性選択によって精製される。いくつかの実施形態
では、親和性メンバーは、望ましくないライブラリーメンバーを除去するために、陰性選
択によって精製される。いくつかの実施形態では、親和性メンバーは、陽性選択工程及び
陰性選択工程の両方によって精製される。
【0297】
一般に、ライブラリー構築物を調製するために使用される技術は、既知の遺伝子工学技
術に基づく。これに関し、ライブラリー内で発現されるcaTCRをコードする核酸配列
は、使用される発現系の種類に適した発現ベクターに組み込まれる。CD3+細胞などの
細胞における提示に使用するのに適した発現ベクターは、周知であり、当該技術分野にお
いて記載されている。例えば、いくつかの実施形態では、発現ベクターは、ウイルスベク
ター(例えば、レンチウイルスベクター)である。
【0298】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される実施形態のいずれか1つに係る複数の
caTCRをコードする配列を含む核酸ライブラリーが提供される。いくつかの実施形態
では、核酸ライブラリーは、複数のcaTCRをコードするウイルスベクターを含む。い
くつかの実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。
【0299】
いくつかの実施形態では、標的抗原に特異的なcaTCRをコードする配列について、
本明細書に記載の実施形態のいずれかに係る核酸ライブラリーをスクリーニングする方法
であって、(a)核酸ライブラリーを複数の細胞に導入し、その結果、caTCRが複数
の細胞の表面で発現することと、(b)複数の細胞を、標的抗原又はその中に含まれる1
つ以上のエピトープを含む捕捉分子と共にインキュベートすることと、(c)捕捉分子に
結合した細胞を集めることと、(d)工程(c)で集めた細胞から、caTCRをコード
する配列を単離し、それによって、標的抗原に特異的なcaTCRを同定することとを含
む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、1つ以上の洗浄工程を更に
含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の洗浄工程は、工程(b)と工程(c)との間
で実施される。いくつかの実施形態では、複数の細胞は、複数のCD3+細胞である。い
くつかの実施形態では、捕捉分子は、固体支持体上に固定される。いくつかの実施形態で
は、固体支持体は、ビーズである。いくつかの実施形態では、捕捉分子に結合した細胞を
集めることは、固体支持体に結合した捕捉リガンドから細胞を溶出させることと、溶出物
を集めることとを含む。いくつかの実施形態では、捕捉分子は、タグで標識される。いく
つかの実施形態では、タグは、蛍光分子、親和性タグ又は磁気タグである。いくつかの実
施形態では、捕捉分子に結合した細胞を集めることは、細胞と標識されたリガンドとを含
む複合体を単離することを含む。いくつかの実施形態では、細胞は、複合体から解離され
る。
MHCタンパク質
【0300】
MHCクラスIタンパク質は、主要組織適合抗原複合体(MHC)分子の2つの主要な
クラスの1つであり(他方はMHCクラスIIである)、身体のほぼ全ての有核細胞に見
出される。それらの機能は、T細胞に対し、細胞内からのタンパク質のフラグメントを提
示するためのものであり、健康な細胞は無視されるが、外来タンパク質又は変異タンパク
質を含有する細胞は、免疫系によって攻撃されるであろう。MHCクラスIタンパク質は
、細胞質タンパク質に由来するペプチドを提示するため、MHCクラスI提示の経路は、
細胞質経路又は内在性経路と呼ばれることが多い。クラスI MHC分子は、プロテアソ
ームによる細胞質タンパク質の分解から主に生成されたペプチドに結合する。MHC I
:ペプチド複合体を、次いで、細胞の形質膜に挿入する。ペプチドは、クラスI MHC
分子の細胞外部分に結合する。したがって、クラスI MHCの機能は、細胞内タンパク
質を細胞毒性T細胞(CTL)に提示することである。しかし、クラスI MHCはまた
、交差提示として知られるプロセスにおいて、外因性タンパク質から生成されたペプチド
も提示することができる。
【0301】
MHCクラスIタンパク質は、2つのポリペプチド鎖であるα及びβ2-ミクログロブ
リン(β2M)からなる。この2つの鎖は、β2Mとα3ドメインとの相互作用によって
、非共有結合的に結合する。α鎖のみが多型であり、HLA遺伝子によりコードされてお
り、一方、β2Mサブユニットは、多型ではなく、β-2ミクログロブリン遺伝子により
コードされる。α3ドメインは、形質膜に広がっており、T細胞のCD8共受容体と相互
作用する。α3-CD8相互作用によりMHC I分子が所定の位置に保持される一方で
、細胞毒性T細胞の表面上のT細胞受容体(TCR)がそのα1-α2ヘテロ二量体リガ
ンドに結合し、結合したペプチドの抗原性を調べる。α1ドメイン及びα2ドメインは、
結合するペプチドのための溝を形成するように折り畳まれる。MHCクラスIタンパク質
は、8~10アミノ酸長のペプチドに結合する。
【0302】
MHCクラスII分子は、樹状細胞、単核食細胞、一部の内皮細胞、胸腺上皮細胞及び
B細胞などの抗原提示細胞上にのみ通常見出される分子のファミリーである。クラスII
ペプチドによって提示される抗原は、細胞外タンパク質(クラスIのような細胞質ではな
い)由来であり、したがって、抗原提示のMHCクラスII依存的経路は、エンドサイト
ーシス経路又は外因性経路と呼ばれる。MHCクラスII分子のローディングは、食作用
によって生じる。細胞外タンパク質は、取り込まれ、リソソーム内で消化され、得られた
エピトープペプチドフラグメントは、細胞表面に移動する前に、MHCクラスII分子上
にロードされる。
【0303】
MHCクラスI分子と同様に、クラスII分子もヘテロ二量体であるが、この場合、2
つの均一なペプチドであるα鎖及びβ鎖からなる。サブ表記であるα1、α2などは、H
LA遺伝子内の別個のドメインを指す。各ドメインは、通常、遺伝子内の異なるエクソン
によってコードされ、いくつかの遺伝子は、リーダー配列、膜貫通配列などをコードする
更なるドメインを有する。MHCクラスII分子の抗原結合溝は両端で開放しており、一
方、クラスI分子上の対応する溝は、各末端で閉じているため、MHCクラスII分子に
よって提示される抗原は、より長く、一般的に、15~24アミノ酸長である。
【0304】
ヒト白血球抗原(HLA)遺伝子は、MHC遺伝子のヒト態様である。ヒトにおける3
つの主要なMHCクラスIタンパク質は、HLA-A、HLA-B及びHLA-Cであり
、一方、3つの少数のMHCクラスIタンパク質は、HLA-E、HLA-F及びHLA
-Gである。ヒトにおける抗原提示に関与する3つの主要なMHCクラスIIタンパク質
は、HLA-DP、HLDA-DQ及びHLA-DRであり、一方、他のMHCクラスI
Iタンパク質は、HLA-DM及びHLA-DOであり、初期の処理及び抗原のローディ
ングに関与する。進化が最も速いコード配列を持つHLA-Aは、ヒトの遺伝子の中でラ
ンク付けされる。2013年12月の時点で、1740個の活性タンパク質及び117個
のヌルタンパク質をコードする2432個の既知のHLA-A対立遺伝子が存在した。H
LA-A遺伝子は、6番染色体の短腕上に位置し、HLA-Aのより大きなα鎖構成要素
をコードする。HLA-Aα鎖の変動は、HLA機能にとって鍵となる。この変動によっ
て、集団における遺伝的多様性を促進する。各HLAは、特定の構造のペプチドについて
異なる親和性を有するため、HLAが多様であるほど、細胞表面に「提示される」抗原が
より多様であることを意味し、この集団の分集団が、任意の所与の外来侵入物に対して耐
性である可能性を高める。これにより、単一の病原体が、ヒト集団全体を一掃する能力を
有する可能性が減少する。各個体は、これらの親それぞれから1つずつ、2種類までのH
LA-Aを発現してもよい。個体の一部は、両方の親から同じHLA-Aを受け継ぎ、こ
の個体のHLA多様性は減少する。しかし、個体の大部分は、2種類の異なるHLA-A
の複製物を受け取る。この同じパターンは、全てのHLA群について成り立つ。言い換え
ると、ヒトは、2432個の既知のHLA-A対立遺伝子の1つ又は2つのいずれかのみ
を発現することができる。
【0305】
全ての対立遺伝子は、少なくとも4桁の分類、例えば、HLA-A*02:12を受け
取る。Aは、対立遺伝子がどのHLA遺伝子に属するかを意味する。多くのHLA-A対
立遺伝子が存在し、その結果、血清型による分類が、カテゴリー化を単純化する。次の1
対の数字は、この割り当てを示す。例えば、HLA-A*02:02、HLA-A*02
:04及びHLA-A*02:324は、全てA2血清型のメンバーである(*02とい
う接頭語によって示される)。この群は、HLA適合性に関与する主要な因子である。そ
の後の全ての数字は、血清型によって決定することはできず、遺伝子配列決定によって指
定される。2番目の数字のセットは、どのHLAタンパク質が産生されるかを示す。これ
らは、発見の順序で割り当てられ、2013年12月時点で、456個の異なるHLA-
A-A02タンパク質が既知である(割り当てられた名称はHLA-A*02:01から
HLA-A*02:456)。最も短い可能なHLA名は、これらの詳細の両方を含む。
これを超えるそれぞれの長くなった部分は、タンパク質を変化させてもよく、又は変化さ
せなくてもよいヌクレオチド変化を示す。
【0306】
いくつかの実施形態では、Fab様抗原結合分子は、疾患関連抗原(腫瘍関連抗原又は
ウイルスによってコードされる抗原など)に由来するペプチドとMHCクラスIタンパク
質とを含む複合体に特異的に結合し、MHCクラスIタンパク質は、HLA-A、HLA
-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F又はHLA-Gである。いくつかの実施形態
では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-A、HLA-B又はHLA-Cである。い
くつかの実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。いくつかの実
施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Bである。いくつかの実施形態では
、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Cである。いくつかの実施形態では、MHCク
ラスIタンパク質は、HLA-A01、HLA-A02、HLA-A03、HLA-A0
9、HLA-A10、HLA-A11、HLA-A19、HLA-A23、HLA-A2
4、HLA-A25、HLA-A26、HLA-A28、HLA-A29、HLA-A3
0、HLA-A31、HLA-A32、HLA-A33、HLA-A34、HLA-A3
6、HLA-A43、HLA-A66、HLA-A68、HLA-A69、HLA-A7
4又はHLA-A80である。いくつかの実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、
HLA-A02である。いくつかの実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA
-A*02:01-555、例えば、HLA-A*02:01、HLA-A*02:02
、HLA-A*02:03、HLA-A*02:04、HLA-A*02:05、HLA
-A*02:06、HLA-A*02:07、HLA-A*02:08、HLA-A*0
2:09、HLA-A*02:10、HLA-A*02:11、HLA-A*02:12
、HLA-A*02:13、HLA-A*02:14、HLA-A*02:15、HLA
-A*02:16、HLA-A*02:17、HLA-A*02:18、HLA-A*0
2:19、HLA-A*02:20、HLA-A*02:21、HLA-A*02:22
又はHLA-A*02:24のうち、いずれか1つである。いくつかの実施形態では、M
HCクラスIタンパク質は、HLA-A*02:01である。HLA-A*02:01は
、全白人の39~46%で発現され、したがって、本発明で使用するためのMHCクラス
Iタンパク質の好適な選択を表す。
【0307】
いくつかの実施形態では、Fab様抗原結合分子は、疾患関連抗原(腫瘍関連抗原又は
ウイルスによってコードされる抗原など)に由来するペプチドとMHCクラスIIタンパ
ク質とを含む複合体に特異的に結合し、MHCクラスIIタンパク質は、HLA-DP、
HLA-DQ又はHLA-DRである。いくつかの実施形態では、MHCクラスIIタン
パク質は、HLA-DPである。いくつかの実施形態では、MHCクラスIIタンパク質
は、HLA-DQである。いくつかの実施形態では、MHCクラスIIタンパク質は、H
LA-DRである。
【0308】
Fab様抗原結合モジュールの生成に使用するのに好適なペプチドは、例えば、当業者
に既知のコンピュータ予測モデルを使用して、HLA(例えば、HLA-A*02:01
)結合モチーフと、プロテアソーム及び免疫プロテアソームの切断部位の存在に基づいて
決定することができる。MHC結合部位を予測するために、このようなモデルとしては、
限定されないが、ProPred1(Singh and Raghava,ProPr
ed:prediction of HLA-DR binding sites.BI
OINFORMATICS 17(12):1236-1237、2001に更に詳細な
記載)及びSYFPEITHI(Schulerら、SYFPEITHI,Databa
se for Searching and T-Cell Epitope Pred
iction.in Immunoinformatics Methods in M
olecular Biology、vol 409(1):75-93、2007を参
照)が挙げられる。
【0309】
適切なペプチドが同定されたら、当業者に周知のプロトコルに従ってペプチド合成を行
うことができる。本発明のペプチドは、大きさが比較的小さいため、従来のペプチド合成
技術に従って、溶液中又は固体支持体上で直接合成されてもよい。様々な自動合成装置が
市販されており、既知のプロトコルに従って使用することができる。溶液相中のペプチド
の合成は、合成ペプチドの大規模生産のための十分に確立された手順となっており、した
がって、本発明のペプチドを調製するための好適な代替方法である(例えば、John
Morrow Stewart及びMartinらによるSolid Phase Pe
ptide Synthesis、Application of Almez-med
iated Amidation Reactions to Solution Ph
ase Peptide Synthesis、Tetrahedron Letter
s Vol.39、ページ1517-1520、1998を参照)。
医薬組成物
【0310】
本明細書では、本明細書に記載される実施形態のいずれかに係るcaTCR、又は本明
細書に記載される実施形態のいずれかに係るcaTCRをコードする核酸、又は本明細書
に記載される実施形態のいずれかに係るcaTCRエフェクター細胞を含む、組成物(例
えば、医薬組成物、本明細書では製剤とも呼ばれる)も提供される。いくつかの実施形態
では、組成物は、本明細書に記載のcaTCRのいずれかに係るcaTCRをその表面上
に提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞)を含む、caTCRエフェクター細胞組
成物(例えば、医薬組成物)である。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター
細胞組成物は、医薬組成物である。
【0311】
組成物は、同じ細胞型を有し、同じcaTCRを発現するcaTCRエフェクター細胞
を含む均一な細胞集団を含んでいてもよく、又は異なる細胞型を有し、及び/又は異なる
caTCRを発現するcaTCRエフェクター細胞を含む複数のcaTCRエフェクター
細胞集団を含む不均一な細胞集団を含んでいてもよい。組成物は、caTCRエフェクタ
ー細胞ではない細胞を更に含んでもよい。
【0312】
したがって、いくつかの実施形態では、同じ細胞型を有し、同じcaTCRを発現する
caTCRエフェクター細胞(例えば、caTCR T細胞)を含む均一な細胞集団を含
むcaTCRエフェクター細胞組成物が提供される。いくつかの実施形態では、caTC
Rエフェクター細胞は、T細胞である。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクタ
ー細胞は、細胞毒性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞及びサプレッサー
T細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細
胞組成物は、医薬組成物である。
【0313】
いくつかの実施形態では、異なる細胞型を有し、及び/又は異なるcaTCRを発現す
るcaTCRエフェクター細胞を含む複数のcaTCRエフェクター細胞集団を含む不均
一な細胞集団を含むcaTCRエフェクター細胞組成物が提供される。いくつかの実施形
態では、caTCRエフェクター細胞は、T細胞である。いくつかの実施形態では、ca
TCRエフェクター細胞の各集団は、互いに独立して、細胞毒性T細胞、ヘルパーT細胞
、ナチュラルキラーT細胞及びサプレッサーT細胞からなる群から選択される細胞型を有
する。いくつかの実施形態では、組成物中のcaTCRエフェクター細胞の全ては、同じ
細胞型を有する(例えば、全てのcaTCRエフェクター細胞は、細胞毒性T細胞である
)。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞の少なくとも1つの集団は、
他とは異なる細胞型を有する(例えば、caTCRエフェクター細胞の1つの集団は細胞
毒性T細胞からなり、caTCRエフェクター細胞の他の集団は、ナチュラルキラーT細
胞からなる)。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞の各集団は、同じ
caTCRを発現する。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞の少なく
とも1つの集団は、他の集団とは異なるcaTCRを発現する。いくつかの実施形態では
、caTCRエフェクター細胞の各集団は、他の集団とは異なるcaTCRを発現する。
いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞の各集団は、同じ標的抗原に特異
的に結合するcaTCRを発現する。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター
細胞の少なくとも1つの集団は、他の集団とは異なる標的抗原に特異的に結合するcaT
CRを発現する(例えば、caTCRエフェクター細胞の1つの集団は、pMHC複合体
に特異的に結合し、caTCRエフェクター細胞の他の集団は、細胞表面受容体に特異的
に結合する)。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞の少なくとも1つ
の集団が、異なる標的抗原に特異的に結合するcaTCRを発現する場合、caTCRエ
フェクター細胞の各集団は、同じ疾患又は障害と関連する標的抗原に特異的に結合するc
aTCRを発現する(例えば、それぞれの標的抗原は、癌、例えば、乳癌に関連する)。
いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞組成物は、医薬組成物である。
【0314】
したがって、いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞組成物であって、
本明細書に記載される実施形態のいずれかに係る複数のcaTCRエフェクター細胞集団
を含み、組成物中のcaTCRエフェクター細胞の全てが、同じ細胞型を有し(例えば、
caTCRエフェクター細胞の全てが、細胞毒性T細胞である)、caTCRエフェクタ
ー細胞のそれぞれの集団が、他とは異なるcaTCRを発現する、caTCRエフェクタ
ー細胞組成物が提供される。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞は、
T細胞である。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞は、細胞毒性T細
胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞及びサプレッサーT細胞からなる群から選
択される。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞の各集団は、同じ標的
抗原に特異的に結合するcaTCRを発現する。いくつかの実施形態では、caTCRエ
フェクター細胞の少なくとも1つの集団は、他の集団とは異なる標的抗原に特異的に結合
するcaTCRを発現する(例えば、caTCRエフェクター細胞の1つの集団は、pM
HC複合体に特異的に結合し、caTCRエフェクター細胞の他の集団は、細胞表面受容
体に特異的に結合する)。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞の少な
くとも1つの集団が、異なる標的抗原に特異的に結合するcaTCRを発現する場合、c
aTCRエフェクター細胞の各集団は、同じ疾患又は障害と関連する標的抗原に特異的に
結合するcaTCRを発現する(例えば、それぞれの標的抗原は、癌、例えば、乳癌に関
連する)。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞組成物は、医薬組成物
である。
【0315】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される実施形態のいずれかに係る複数のca
TCRエフェクター細胞集団を含む組成物であって、caTCRエフェクター細胞の少な
くとも1つの集団が、他とは異なる細胞型である、組成物が提供される。いくつかの実施
形態では、caTCRエフェクター細胞の集団は全て、異なる細胞型を有する。いくつか
の実施形態では、caTCRエフェクター細胞は、T細胞である。いくつかの実施形態で
は、caTCRエフェクター細胞の各集団は、互いに独立して、細胞毒性T細胞、ヘルパ
ーT細胞、ナチュラルキラーT細胞及びサプレッサーT細胞からなる群から選択される細
胞型を有する。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞の各集団は、同じ
caTCRを発現する。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞の少なく
とも1つの集団は、他の集団とは異なるcaTCRを発現する。いくつかの実施形態では
、caTCRエフェクター細胞の各集団は、他の集団とは異なるcaTCRを発現する。
いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞の各集団は、同じ標的抗原に特異
的に結合するcaTCRを発現する。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター
細胞の少なくとも1つの集団は、他の集団とは異なる標的抗原に特異的に結合するcaT
CRを発現する(例えば、caTCRエフェクター細胞の1つの集団は、pMHC複合体
に特異的に結合し、caTCRエフェクター細胞の他の集団は、細胞表面受容体に特異的
に結合する)。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞の少なくとも1つ
の集団が、異なる標的抗原に特異的に結合するcaTCRを発現する場合、caTCRエ
フェクター細胞の各集団は、同じ疾患又は障害と関連する標的抗原に特異的に結合するc
aTCRを発現する(例えば、それぞれの標的抗原は、癌、例えば、乳癌に関連する)。
いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞組成物は、医薬組成物である。
【0316】
組成物の調製中の様々な点において、細胞を凍結保存することが必要であるか、又は有
益な場合がある。「凍結され/凍結」及び「凍結保存され/冷凍保存」との用語は、相互
に置き換え可能に使用することができる。凍結は、凍結乾燥を含む。
【0317】
当業者には理解されるように、細胞の凍結は破壊的な場合がある(Mazur,P.、
1977、Cryobiology 14:251-272を参照)が、このような損傷
を防ぐために利用可能な多くの手順が存在する。例えば、損傷は、(a)凍結保護剤(cr
yoprotective agent)の使用、(b)凍結速度の制御及び/又は(c)分解反応を最小
限にするのに十分に低い温度での保存によって避けることができる。例示的な凍結保護剤
としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)(Lovelock及びBishop、1
959、Nature 183:1394-1395;Ashwood-Smith、1
961、Nature 190:1204-1205)、グリセロール、ポリビニルピロ
リジン(Rinfret、1960、Ann.N.Y.Acad.Sci.85:576
)、ポリエチレングリコール(Sloviter及びRavdin、1962、Natu
re 196:548)、アルブミン、デキストラン、ショ糖、エチレングリコール、i
-エリスリトール、D-リビトール、D-マンニトール(Roweら、1962、Fed
.Proc.21:157)、D-ソルビトール、i-イノシトール、D-ラクトース、
塩化コリン(Benderら、1960、J.Appl.Physiol.15:520
)、アミノ酸(Phan The Tran and Bender、1960、Exp
.Cell Res.20:651)、メタノール、アセトアミド、グリセロールモノア
セテート(Lovelock、1954、Biochem.J.56:265)、及び無
機塩(Phan The Tran and Bender、1960、Proc.So
c.Exp.Biol.Med.104:388;Phan The Tran and
Bender、1961、Radiobiology、Proceedings of
the Third Australian Conference on Radi
obiology、llbery編集、Butterworth、London、p.5
9)が挙げられる。特定の実施形態では、DMSOを使用することができる。血漿の添加
(例えば、20~25%の濃度になるまで)によって、DMSOの保護効果を増強するこ
とができる。DMSOを添加した後、1%のDMSO濃度は4℃より高い温度では毒性な
場合があるため、凍結するまで細胞を0℃に維持してもよい。
【0318】
細胞の凍結保存において、冷却速度をゆっくりに制御することが重要な場合があり、凍
結保護剤が異なる場合(Rapatzら、1968、Cryobiology 5(1)
:18-25)及び細胞型が異なる場合は、最適冷却速度が異なる(例えば、幹細胞の生
存及びその移植可能性に対する冷却速度の影響について、Rowe及びRinfret、
1962、Blood 20:636;Rowe、1966、Cryobiology
3(1):12-18;Lewisら、1967、Transfusion 7(1):
17-32;及びMazur、1970、Science 168:939-949を参
照)。水が氷になるときの融合相の熱は、最小限であるべきである。冷却手順は、例えば
、プログラム可能な凍結装置又はメタノール浴手順の使用によって実施することができる
。プログラム可能な冷凍装置は、最適な冷却速度の決定を可能にし、標準的な再現可能な
冷却を容易にする。
【0319】
特定の実施形態では、DMSO処理した細胞を、氷であらかじめ冷却し、冷却メタノー
ルを含むトレーに移してもよく、次に、これを-80℃の機械的冷蔵庫(例えば、Har
ris又はRevco)内に入れる。メタノール浴及びサンプルの熱電対測定値は、1℃
~3℃/分の冷却速度が好ましい場合があることを示している。少なくとも2時間後、標
本は、温度-80℃に達してもよく、液体窒素(-196℃)に直接入れられてもよい。
【0320】
十分に凍結させた後、長期凍結保存容器に細胞をすぐに移してもよい。好ましい実施形
態では、サンプルは、液体窒素(-196℃)又は蒸気(-1℃)中で凍結保存されても
よい。このような保存は、高効率の液体窒素冷蔵庫が利用可能であれば促進される。
【0321】
細胞の操作、凍結保存及び長期保存のための更なる検討事項及び手順は、以下の例示的
な参考文献中に見出すことができる。米国特許第4,199,022号;同第3,753
,357号及び同第4,559,298号Gorin、1986、Clinics In
Haematology 15(1):19-48;Bone-Marrow Con
servation,Culture and Transplantation,Pr
oceedings of a Panel,Moscow、7月22~26日、196
8年、International Atomic Energy Agency、Vi
enna、pp.107-186;Livesey及びLinner、1987、Nat
ure 327:255;Linnerら、1986、J.Histochem.Cyt
ochem.34(9):1 123-1 135;Simione、1992、J.P
arenter.Sci.Technol.46(6):226-32)。
【0322】
凍結保存の後、凍結した細胞を、当業者に既知の方法に従って、使用するために解凍し
てもよい。凍結した細胞は、好ましくは迅速に解凍され、解凍直後に冷却される。特定の
実施形態では、凍結した細胞を含有するバイアルを、温水浴中にその首部まで浸漬しても
よく、穏やかに回転させることにより、解凍に伴い、細胞懸濁物を確実に混合し、温水か
ら内部の氷塊への熱移動を増加させる。氷が完全に融けたらすぐに、バイアルを氷上に置
いてもよい。
【0323】
特定の実施形態では、解凍中の細胞凝集を防止するための方法を使用することができる
。例示的な方法としては、凍結前及び/又は凍結後のDNaseの添加(Spitzer
ら、1980、Cancer 45:3075-3085)、低分子量デキストラン及び
クエン酸、ヒドロキシエチルデンプンの添加(Stiffら、1983、Cryobio
logy 20:17-24)などが挙げられる。[0162]当業者には理解されるよ
うに、ヒトに毒性がある凍結保護剤が使用される場合、治療目的の使用の前に除去するべ
きである。DMSOは、重大な毒性を有していない。
【0324】
細胞の例示的な担体及び投与態様は、米国特許公開第2010/0183564号のペ
ージ14-15に記載されている。更なる医薬担体は、Remington:The S
cience and Practice of Pharmacy、21st Edi
tion、David B.Troy編集、Lippicott Williams及び
Wilkins(2005)に記載されている。
【0325】
特定の実施形態では、細胞を培養培地から収集し、洗浄し、治療有効量で担体に濃縮す
ることができる。例示的な担体としては、食塩水、緩衝化食塩水、生理食塩水、水、Ha
nks溶液、Ringer溶液、Nonnosol-R(Abbott Labs)、P
lasmaLyte A(R)(Baxter Laboratories,Inc.、
モートングローブ、IL)、グリセロール、エタノール、及びこれらの組み合わせが挙げ
られる。
【0326】
特定の実施形態では、担体は、ヒト血清アルブミン(HSA)又は他のヒト血清成分又
はウシ胎児血清を追加してもよい。特定の実施形態では、注入用担体は、5%HAS又は
デキストロースを含む緩衝化食塩水を含む。更なる等張化剤として、三価以上の糖アルコ
ールを含む多価糖アルコール、例えば、グリセリン、エリスリトール、アラビトール、キ
シリトール、ソルビトール及びマンニトールが挙げられる。
【0327】
担体としては、緩衝剤、例えば、クエン酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤、フ
マル酸緩衝剤、グルコン酸緩衝剤、シュウ酸緩衝剤、乳酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、リン酸緩
衝剤、ヒスチジン緩衝剤、及び/又はトリメチルアミン塩を挙げることができる。
【0328】
安定化剤は、増量剤から、容器壁への細胞の付着を防止するのに役立つ添加剤までの機
能範囲であり得る広範なカテゴリーの賦形剤を指す。典型的な安定化剤としては、多価糖
アルコール;アミノ酸、例えば、アルギニン、リジン、グリシン、グルタミン、アスパラ
ギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチン、L-ロイシン、2-フェニルアラニン、グル
タミン酸及びスレオニン;有機糖又は糖アルコール、例えば、ラクトース、トレハロース
、スタキオース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、ミオニシト
ール、ガラクチトール、グリセロール及びシクリトール、例えば、イノシトール;PEG
;アミノ酸ポリマー;硫黄含有還元剤、例えば、尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオ
グリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α-モノチオグリセロール及びチオ硫酸ナ
トリウム;低分子量ポリペプチド(すなわち、10残基未満);HSA、ウシ血清アルブ
ミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質;親水性ポリマー、例えば、ポリ
ビニルピロリドン;単糖類、例えば、キシロース、マンノース、フルクトース及びグルコ
ース;二糖類、例えば、ラクトース、マルトース及びショ糖;三糖類、例えば、ラフィノ
ース、及び多糖類、例えば、デキストランが挙げられる。
【0329】
必要な場合又は有益な場合、組成物は、注射部位での痛みを和らげるリドカインなどの
局所麻酔薬を含んでいてもよい。
【0330】
例示的な防腐剤としては、フェノール、ベンジルアルコール、メタ-クレゾール、メチ
ルパラベン、プロピルパラベン、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、
ハロゲン化ベンザルコニウム、塩化ヘキサメトニウム、アルキルパラベン、例えば、メチ
ルパラベン又はプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール及
び3-ペンタノールが挙げられる。
【0331】
組成物内の細胞の治療有効な量は、102個より多く、103個より多く、104個よ
り多く、105個より多く、106個より多く、107個より多く、108個より多く、
109個より多く、1010個より多く、又は1011個より多くてもよい。
【0332】
本明細書に開示される組成物及び製剤において、細胞は、一般的に、1リットル以下、
500mL以下、250mL以下、又は100mL以下の体積である。したがって、投与
される細胞の密度は、典型的には、104個/mLより大きく、107個/mLより大き
く、又は108個/mLより大きい。
【0333】
本明細書では、本明細書に記載されるcaTCRをコードする核酸のいずれかを含む、
caTCR核酸組成物(例えば、医薬組成物、本明細書では製剤とも呼ばれる)も提供さ
れる。いくつかの実施形態では、caTCR核酸組成物は、医薬組成物である。いくつか
の実施形態では、caTCR核酸組成物は、等張化剤、賦形剤、希釈剤、増粘剤、安定化
剤、緩衝剤、及び/又は防腐剤、及び/又は水性ビヒクル、例えば、精製水、水性糖溶液
、緩衝液、生理食塩水、水性ポリマー溶液、又はRNaseフリー水のいずれかを更に含
む。添加されるこのような添加剤及び水性ビヒクルの量は、caTCR核酸組成物の使用
形態に従って好適に選択することができる。
【0334】
本明細書に開示される組成物及び製剤は、例えば、注射、注入、灌流、又は洗浄によっ
て投与するために調製することができる。組成物及び製剤は、更に、骨髄、静脈内、皮内
、動脈内、節内、リンパ管内、腹腔内、病変内、前立腺内、膣内、直腸内、局所、髄腔内
、腫瘍内、筋肉内、小胞内及び/又は皮下注射用に配合することができる。
【0335】
in vivo投与に使用される製剤は、無菌でなければならない。これは、例えば、
滅菌濾過膜を通した濾過によって容易に達成される。
caTCRを使用した治療方法
【0336】
本発明のcaTCR及び/又は組成物は、例えば、癌及び感染性疾患(例えばウイルス
感染)を含め、標的抗原(TA)発現に関連する疾患及び/又は障害(本明細では、「標
的抗原陽性」又は「TA陽性」疾患又は障害とも呼ばれる)を治療するために、個体(例
えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与することができる。したがって、本出願は、いくつか
の実施形態では、個体において標的抗原陽性疾患(例えば、癌又はウイルス感染)を治療
するための方法であって、抗体部分を含むcaTCR(例えば、本明細書に記載のcaT
CRのいずれか1つ)を含む組成物(例えば、医薬組成物)を有効量、個体に投与するこ
とを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、caTCRに関連する
細胞(エフェクター細胞など)を更に含む。いくつかの実施形態では、癌は、例えば、副
腎皮質癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、胆管癌、大腸癌、食道癌、神経膠芽腫、神経膠腫、
肝細胞癌、頭頸部癌、腎臓癌、肺癌、黒色腫、中皮腫、多発性骨髄腫、膵臓癌、褐色細胞
腫、形質細胞腫、神経芽腫、卵巣癌、前立腺癌、肉腫、胃癌、子宮癌及び甲状腺癌からな
る群から選択される。いくつかの実施形態では、ウイルス感染は、例えば、サイトメガロ
ウイルス(CMV)、エプスタインバールウイルス(EBV)、B型肝炎ウイルス(HB
V)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)、ヒトパピローマウイルス(HPV
)、伝染性軟属腫ウイルス(MCV)、ヒトT細胞白血病ウイルス1(HTLV-1)、
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)及びC型肝炎ウイルス(HCV)からなる群から選択さ
れるウイルスによって引き起こされる。
【0337】
例えば、いくつかの実施形態では、標的抗原関連疾患の治療を必要とする個体において
、当該疾患を治療する方法であって、(a)天然に存在するTCRの膜貫通ドメインの1
つに由来する第1のTCR-TMを含む第1のTCRDと天然に存在するTCRの他の膜
貫通ドメインに由来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDを含み、TCR-TM
のうち少なくとも1つが天然に存在しないものであり、第1のTCRDと第2のTCRD
が、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能なTCRMを形
成し、(b)標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールであって、抗原結合モジュ
ールが、第1のTCRD及び/又は第2のTCRDに結合する、抗原結合モジュールを含
む、その表面上でcaTCR(例えば、単離されたcaTCR)を提示するエフェクター
細胞(例えば、T細胞又はナチュラルキラー細胞)を含む組成物を有効量、個体に投与す
ることを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、天然に存在するTCRは、
αβTCRであり、第1のTCR-TM及び第2のTCR-TMは、TCRα及びβサブ
ユニット膜貫通ドメインに由来する。いくつかの実施形態では、天然に存在するTCRは
、γδTCRであり、第1のTCR-TM及び第2のTCR-TMは、TCRγ及びδサ
ブユニット膜貫通ドメインに由来する。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第
1のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含み、及び/又は第2のTCRDは
、第2のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含む。いくつかの実施形態では
、第1の接続ペプチドは、第1のTCR-TMの由来となるTCRサブユニットの接続ペ
プチドの全て又は一部、又はその多様体を含み、及び/又は第2の接続ペプチドは、第2
のTCR-TMの由来となるTCRサブユニットの接続ペプチドの全て又は一部、又はそ
の多様体を含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドと第2の接続ペプチドは
、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第
1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR細胞
内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR細胞内ドメインは、第1
のTCR-TMの由来となるTCRサブユニットの細胞内ドメインに由来する配列を含み
、及び/又は第2のTCR細胞内ドメインは、第2のTCR-TMの由来となるTCRサ
ブユニットの細胞内ドメインに由来する配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のT
CRDは、第1のTCR-TMの由来となるTCRサブユニットのフラグメントであり、
及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR-TMの由来となるTCRサブユニットのフ
ラグメントである。いくつかの実施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達
配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30又
はCD40由来)を含む少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に含む。いく
つかの実施形態では、caTCRは、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインとを
含む安定化モジュールを更に含み、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインが、
caTCRを安定化する互いに対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第
1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって結合する。い
くつかの実施形態では、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインは、CH1及び
CL抗体ドメインなどの抗体部分、又はその多様体を含む。いくつかの実施形態では、T
CRMは、CD3δε、CD3γε及びζζからなる群から選択される少なくとも1つの
TCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能である。いくつかの実施形態では、T
CRMは、天然に存在するT細胞受容体膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少な
くとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化することを可能にする。いくつか
の実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3複合体の形成を促進する。いくつかの
実施形態では、抗原結合モジュール、安定化モジュール及びTCRMのいずれかの間にス
ペーサーモジュールが存在する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、抗体
部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(Fab’)2
、Fv又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュール
は、多重特異性(例えば、二重特異性)である。いくつかの実施形態では、標的抗原は、
細胞表面抗原である。いくつかの実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物
及び脂質からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、細胞表面抗原は、腫瘍関
連抗原又はウイルスによってコードされる抗原などの疾患関連抗原である。いくつかの実
施形態では、細胞表面抗原は、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5D
又はFCRL5である。いくつかの実施形態では、標的抗原は、表面提示ペプチド/MH
C複合体である。いくつかの実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(
腫瘍関連抗原又はウイルスによってコードされる抗原など)に由来するペプチドと、MH
Cタンパク質とを含む。いくつかの実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチド
とMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY
-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1、KRAS、Histon
e H3.3及びPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来し、これらの多様体
又は変異体を含む。いくつかの実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタン
パク質である。いくつかの実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aであ
る。いくつかの実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。いくつかの実施形
態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。いくつかの実施形態では、
エフェクター細胞は、γδT細胞である。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は
、TCRα鎖及び/又はβ鎖の発現を遮断するか、又は減少させるように改変されている
αβT細胞である。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、細胞毒性T細胞、ヘ
ルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞及びサプレッサーT細胞からなる群から選択され
る。
【0338】
いくつかの実施形態では、標的抗原関連疾患(例えば、癌又はウイルス感染)の治療を
必要とする個体において、当該疾患を治療する方法であって、(a)天然に存在するTC
Rの膜貫通ドメインの1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1のTCRDと天然に
存在するTCRの他の膜貫通ドメインに由来する第2のTCR-TMを含む第2のTCR
Dを含み、TCR-TMのうち少なくとも1つが天然に存在しないものであり、第1のT
CRDと第2のTCRDが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員するこ
とが可能なTCRMを形成し、(b)標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールで
あって、抗原結合モジュールが、第1のTCRD及び/又は第2のTCRDに結合する、
抗原結合モジュールを含む、その表面上で、標的抗原を特異的に認識するcaTCRを提
示するエフェクター細胞(例えば、T細胞又はナチュラルキラー細胞)を含む組成物を有
効量、個体に投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、第1の
TCRDは、第1のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含み、及び/又は第
2のTCRDは、第2のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含む。いくつか
の実施形態では、第1の接続ペプチドは、第1のTCR-TMの由来となるTCRサブユ
ニットの接続ペプチドの全て又は一部、又はその多様体を含み、及び/又は第2の接続ペ
プチドは、第2のTCR-TMの由来となるTCRサブユニットの接続ペプチドの全て又
は一部、又はその多様体を含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドと第2の
接続ペプチドは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第1の
TCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第
2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR細胞内ド
メインは、第1のTCR-TMの由来となるTCRサブユニットの細胞内ドメインに由来
する配列を含み、及び/又は第2のTCR細胞内ドメインは、第2のTCR-TMの由来
となるTCRサブユニットの細胞内ドメインに由来する配列を含む。いくつかの実施形態
では、第1のTCRDは、第1のTCR-TMの由来となるTCRサブユニットのフラグ
メントであり、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR-TMの由来となるTCRサ
ブユニットのフラグメントである。いくつかの実施形態では、caTCRは、T細胞共刺
激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX4
0、CD30又はCD40由来)を含む少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを
更に含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、第1の安定化ドメインと第2の安定
化ドメインとを含む安定化モジュールを更に含み、第1の安定化ドメイン及び第2の安定
化ドメインが、caTCRを安定化する互いに対する結合親和性を有する。いくつかの実
施形態では、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によっ
て結合する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメイン
は、CH1及びCL抗体ドメインなどの抗体部分、又はその多様体を含む。いくつかの実
施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γε及びζζからなる群から選択される少
なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能である。いくつかの実
施形態では、TCRMは、天然に存在するαβT細胞受容体膜貫通ドメインを含むTCR
Mと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化することを可
能にする。いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3複合体の形成を促
進する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュール、安定化モジュール及びTCRM
のいずれかの間にスペーサーモジュールが存在する。いくつかの実施形態では、抗原結合
モジュールは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab
’、(Fab’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態では、
抗原結合モジュールは、多重特異性(例えば、二重特異性)である。
【0339】
いくつかの実施形態では、標的抗原関連疾患(例えば、癌又はウイルス感染)の治療を
必要とする個体において、当該疾患を治療する方法であって、(a)天然に存在するγδ
TCRの膜貫通ドメインの1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1のTCRDと天
然に存在するγδTCRの他の膜貫通ドメインに由来する第2のTCR-TMを含む第2
のTCRDを含み、TCR-TMのうち少なくとも1つが天然に存在しないものであり、
第1のTCRDと第2のTCRDが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動
員することが可能なTCRMを形成し、(b)標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジ
ュールであって、抗原結合モジュールが、第1のTCRD及び/又は第2のTCRDに結
合する、抗原結合モジュールを含む、その表面上で、標的抗原を特異的に認識するcaT
CRを提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞又はナチュラルキラー細胞)を含む組
成物を有効量、個体に投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では
、第1のTCRDは、第1のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含み、及び
/又は第2のTCRDは、第2のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含む。
いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドは、第1のTCR-TMの由来となるTC
Rサブユニットの接続ペプチドの全て又は一部、又はその多様体を含み、及び/又は第2
の接続ペプチドは、第2のTCR-TMの由来となるTCRサブユニットの接続ペプチド
の全て又は一部、又はその多様体を含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチド
と第2の接続ペプチドは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では
、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のTCR
Dは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR
細胞内ドメインは、第1のTCR-TMの由来となるTCRサブユニットの細胞内ドメイ
ンに由来する配列を含み、及び/又は第2のTCR細胞内ドメインは、第2のTCR-T
Mの由来となるTCRサブユニットの細胞内ドメインに由来する配列を含む。いくつかの
実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR-TMの由来となるTCRサブユニット
のフラグメントであり、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR-TMの由来となる
TCRサブユニットのフラグメントである。いくつかの実施形態では、caTCRは、T
細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)
、OX40、CD30又はCD40由来)を含む少なくとも1つのアクセサリー細胞内ド
メインを更に含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、第1の安定化ドメインと第
2の安定化ドメインとを含む安定化モジュールを更に含み、第1の安定化ドメイン及び第
2の安定化ドメインが、caTCRを安定化する互いに対する結合親和性を有する。いく
つかの実施形態では、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結
合によって結合する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化
ドメインは、CH1及びCL抗体ドメインなどの抗体部分、又はその多様体を含む。いく
つかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γε及びζζからなる群から選択
される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能である。いく
つかの実施形態では、TCRMは、天然に存在するγδT細胞受容体膜貫通ドメインを含
むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化する
ことを可能にする。いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3複合体の
形成を促進する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュール、安定化モジュール及び
TCRMのいずれかの間にスペーサーモジュールが存在する。いくつかの実施形態では、
抗原結合モジュールは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab
、Fab’、(Fab’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形
態では、抗原結合モジュールは、多重特異性(例えば、二重特異性)である。
【0340】
いくつかの実施形態では、標的抗原関連疾患(例えば、癌又はウイルス感染)の治療を
必要とする個体において、当該疾患を治療する方法であって、(a)配列番号5及び配列
番号6のアミノ酸配列の1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1のTCRDと、他
のアミノ酸配列に由来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDとを含み、TCR-
TMのうち少なくとも1つが天然に存在しないものであり、第1のTCRDと第2のTC
RDが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能なTCRM
を形成し、(b)標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールであって、抗原結合モ
ジュールが、第1のTCRD及び/又は第2のTCRDに結合する、抗原結合モジュール
を含む、その表面上で、標的抗原を特異的に認識するcaTCRを提示するエフェクター
細胞(例えば、T細胞又はナチュラルキラー細胞)を含む組成物を有効量、個体に投与す
ることを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1の
TCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第
2のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含む。いくつかの実施形態では、第
1の接続ペプチド及び第2の接続ペプチドは、それぞれ互いに独立して、配列番号27~
34又はこれらの多様体のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態
では、第1の接続ペプチドと第2の接続ペプチドは、ジスルフィド結合によって結合する
。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み
、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実
施形態では、第1のTCR細胞内ドメイン及び第2のTCR細胞内ドメインは、それぞれ
互いに独立して、配列番号35又は36又はこれらの多様体のアミノ酸配列を含む。いく
つかの実施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27
、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30又はCD40由来)を含む
少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、c
aTCRは、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインとを含む安定化モジュールを
更に含み、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化する
互いに対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメインと第
2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、
第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインは、CH1及びCL抗体ドメインなどの
抗体部分、又はその多様体を含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、
CD3γε及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達
分子を動員することが可能である。いくつかの実施形態では、TCRMは、配列番号5及
び6の配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも
1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化することができる。いくつかの実施形態
では、TCRMは、caTCR-CD3複合体の形成を促進する。いくつかの実施形態で
は、抗原結合モジュール、安定化モジュール及びTCRMのいずれかの間にスペーサーモ
ジュールが存在する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、抗体部分である
。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv又は
単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、多重特
異性(例えば、二重特異性)である。
【0341】
いくつかの実施形態では、標的抗原関連疾患(例えば、癌又はウイルス感染)の治療を
必要とする個体において、当該疾患を治療する方法であって、(a)配列番号5及び配列
番号6のアミノ酸配列の1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1のTCRDと、他
のアミノ酸配列に由来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDを含み、TCR-T
Mの少なくとも1つが、その由来となるアミノ酸配列と比較して、1つ以上(例えば、2
、3、4、5、又はもっと多く)のアミノ酸置換を含み、第1のTCRDと第2のTCR
Dが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能なTCRMを
形成し、(b)標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールであって、抗原結合モジ
ュールが、第1のTCRD及び/又は第2のTCRDに結合する、抗原結合モジュールと
を含む、その表面上で、標的抗原を特異的に認識するcaTCRを提示するエフェクター
細胞(例えば、T細胞又はナチュラルキラー細胞)を含む組成物を有効量、個体に投与す
ることを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、TCR-TMは、それぞれ
互いに独立して、その由来となるアミノ酸配列と比較して、1つ以上(例えば、2、3、
4、5、又はもっと多く)のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、第1のTC
R-TM及び/又は第2のTCR-TMは、それぞれ互いに独立して、その由来となるア
ミノ酸配列と比較して、5個以下のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、TC
R-TMの少なくとも1つは、その由来となるアミノ酸配列と比較して、単一のアミノ酸
置換を含む。いくつかの実施形態では、TCR-TMは、それぞれ、その由来となるアミ
ノ酸配列と比較して、単一のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、第1のTC
R-TM中の置換アミノ酸の少なくとも1つが、caTCRにおいて、第2のTCR-T
M中の置換アミノ酸の少なくとも1つと相互作用し得るように配置される。いくつかの実
施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に
含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを
更に含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチド及び第2の接続ペプチドは、そ
れぞれ互いに独立して、配列番号27~34又はこれらの多様体のうちいずれか1つのア
ミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドと第2の接続ペプチド
は、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、
第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR細
胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR細胞内ドメイン及び第
2のTCR細胞内ドメインは、それぞれ互いに独立して、配列番号35又は36又はこれ
らの多様体のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、T細胞共刺
激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX4
0、CD30又はCD40由来)を含む少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを
更に含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、第1の安定化ドメインと第2の安定
化ドメインとを含む安定化モジュールを更に含み、第1の安定化ドメイン及び第2の安定
化ドメインが、caTCRを安定化する互いに対する結合親和性を有する。いくつかの実
施形態では、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によっ
て結合する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメイン
は、CH1及びCL抗体ドメインなどの抗体部分、又はその多様体を含む。いくつかの実
施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γε及びζζからなる群から選択される少
なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能である。いくつかの実
施形態では、TCRMは、配列番号5及び6の配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメイン
を含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化
することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3複合体の
形成を促進する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュール、安定化モジュール及び
TCRMのいずれかの間にスペーサーモジュールが存在する。いくつかの実施形態では、
抗原結合モジュールは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab
、Fab’、(Fab’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形
態では、抗原結合モジュールは、多重特異性(例えば、二重特異性)である。
【0342】
いくつかの実施形態では、的抗原関連疾患(例えば、癌又はウイルス感染)の治療を必
要とする個体において、当該疾患を治療する方法であって、(a)配列番号5及び配列番
号6のアミノ酸配列の1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1のTCRDと、他の
アミノ酸配列に由来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDを含み、TCR-TM
の少なくとも1つが、配列番号7又は8に由来する連続アミノ酸の一部を含むキメラ配列
を含み、第1のTCRDと第2のTCRDが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達
分子を動員することが可能なTCRMを形成し、(b)標的抗原に特異的に結合する抗原
結合モジュールであって、抗原結合モジュールが、第1のTCRD及び/又は第2のTC
RDに結合する、抗原結合モジュールを含む、その表面上で、標的抗原を特異的に認識す
るcaTCRを提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞又はナチュラルキラー細胞)
を含む組成物を有効量、個体に投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施
形態では、TCR-TMは、それぞれ互いに独立して、配列番号7又は8に由来する連続
アミノ酸の一部を含むキメラ配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM
及び/又は第2のTCR-TMは、それぞれ互いに独立して、配列番号7又は8に由来す
る約10以下(例えば、約9、8、7、6、5以下、又はもっと少ない)の連続アミノ酸
の一部を含むキメラ配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM中又は第
2のTCR-TM中のキメラ配列は、配列番号7に由来し、他方のTCR-TM中のキメ
ラ配列は、配列番号8に由来する。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM中のキ
メラ配列は、第2のTCR-TM中のキメラ配列と相互作用し得るように配置される。い
くつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR接続ペプチド又はそのフラグメ
ントを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR接続ペプチド又はそのフラ
グメントを更に含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチド及び第2の接続ペプ
チドは、それぞれ互いに独立して、配列番号27~34又はこれらの多様体のうちいずれ
か1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドと第2の接
続ペプチドは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第1のT
CRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2
のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR細胞内ドメ
イン及び第2のTCR細胞内ドメインは、それぞれ互いに独立して、配列番号35又は3
6又はこれらの多様体のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、
T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137
)、OX40、CD30又はCD40由来)を含む少なくとも1つのアクセサリー細胞内
ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、第1の安定化ドメインと
第2の安定化ドメインとを含む安定化モジュールを更に含み、第1の安定化ドメイン及び
第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化する互いに対する結合親和性を有する。い
くつかの実施形態では、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインは、ジスルフィド
結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメイン及び第2の安定
化ドメインは、CH1及びCL抗体ドメインなどの抗体部分、又はその多様体を含む。い
くつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γε及びζζからなる群から選
択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能である。い
くつかの実施形態では、TCRMは、配列番号5及び6の配列を有するT細胞受容体膜貫
通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の
動員を強化することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-CD
3複合体の形成を促進する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュール、安定化モジ
ュール及びTCRMのいずれかの間にスペーサーモジュールが存在する。いくつかの実施
形態では、抗原結合モジュールは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分
は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)である。いくつ
かの実施形態では、抗原結合モジュールは、多重特異性(例えば、二重特異性)である。
【0343】
いくつかの実施形態では、標的抗原関連疾患(例えば、癌又はウイルス感染)の治療を
必要とする個体において、当該疾患を治療する方法であって、(a)配列番号7及び配列
番号8のアミノ酸配列の1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1のTCRDと、他
のアミノ酸配列に由来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDとを含み、TCR-
TMのうち少なくとも1つが天然に存在しないものであり、第1のTCRDと第2のTC
RDが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能なTCRM
を形成し、(b)標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールであって、抗原結合モ
ジュールが、第1のTCRD及び/又は第2のTCRDに結合する、抗原結合モジュール
を含む、その表面上で、標的抗原を特異的に認識するcaTCRを提示するエフェクター
細胞(例えば、T細胞又はナチュラルキラー細胞)を含む組成物を有効量、個体に投与す
ることを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1の
TCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第
2のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含む。いくつかの実施形態では、第
1の接続ペプチド及び第2の接続ペプチドは、それぞれ互いに独立して、配列番号27~
34又はこれらの多様体のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態
では、第1の接続ペプチドと第2の接続ペプチドは、ジスルフィド結合によって結合する
。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み
、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実
施形態では、第1のTCR細胞内ドメイン及び第2のTCR細胞内ドメインは、それぞれ
互いに独立して、配列番号35又は36又はこれらの多様体のアミノ酸配列を含む。いく
つかの実施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27
、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30又はCD40由来)を含む
少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、c
aTCRは、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインとを含む安定化モジュールを
更に含み、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化する
互いに対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメインと第
2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、
第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインは、CH1及びCL抗体ドメインなどの
抗体部分、又はその多様体を含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、
CD3γε及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達
分子を動員することが可能である。いくつかの実施形態では、TCRMは、配列番号7及
び8の配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも
1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化することができる。いくつかの実施形態
では、TCRMは、caTCR-CD3複合体の形成を促進する。いくつかの実施形態で
は、抗原結合モジュール、安定化モジュール及びTCRMのいずれかの間にスペーサーモ
ジュールが存在する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、抗体部分である
。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv又は
単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM及び第2の
TCR-TMは、表2に列挙したcaTCRのいずれかに従って選択される。いくつかの
実施形態では、抗原結合モジュールは、多重特異性(例えば、二重特異性)である。
【0344】
いくつかの実施形態では、標的抗原関連疾患(例えば、癌又はウイルス感染)の治療を
必要とする個体において、当該疾患を治療する方法であって、(a)配列番号7及び配列
番号8のアミノ酸配列の1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1のTCRDと、他
のアミノ酸配列に由来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDを含み、TCR-T
Mの少なくとも1つが、その由来となるアミノ酸配列と比較して、1つ以上(例えば、2
、3、4、5、又はもっと多く)のアミノ酸置換を含み、第1のTCRDと第2のTCR
Dが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能なTCRMを
形成し、(b)標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールであって、抗原結合モジ
ュールが、第1のTCRD及び/又は第2のTCRDに結合する、抗原結合モジュールと
を含む、その表面上で、標的抗原を特異的に認識するcaTCRを提示するエフェクター
細胞(例えば、T細胞又はナチュラルキラー細胞)を含む組成物を有効量、個体に投与す
ることを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、TCR-TMは、それぞれ
互いに独立して、その由来となるアミノ酸配列と比較して、1つ以上(例えば、2、3、
4、5、又はもっと多く)のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、第1のTC
R-TM及び/又は第2のTCR-TMは、それぞれ互いに独立して、その由来となるア
ミノ酸配列と比較して、5個以下のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、TC
R-TMの少なくとも1つは、その由来となるアミノ酸配列と比較して、単一のアミノ酸
置換を含む。いくつかの実施形態では、TCR-TMは、それぞれ、その由来となるアミ
ノ酸配列と比較して、単一のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、第1のTC
R-TM中の置換アミノ酸の少なくとも1つが、caTCRにおいて、第2のTCR-T
M中の置換アミノ酸の少なくとも1つと相互作用し得るように配置される。いくつかの実
施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に
含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを
更に含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチド及び第2の接続ペプチドは、そ
れぞれ互いに独立して、配列番号27~34又はこれらの多様体のうちいずれか1つのア
ミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドと第2の接続ペプチド
は、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、
第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR細
胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR細胞内ドメイン及び第
2のTCR細胞内ドメインは、それぞれ互いに独立して、配列番号35又は36又はこれ
らの多様体のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、T細胞共刺
激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX4
0、CD30又はCD40由来)を含む少なくとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを
更に含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、第1の安定化ドメインと第2の安定
化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化
ドメインが、caTCRを安定化する互いに対する結合親和性を有する。いくつかの実施
形態では、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインは、ジスルフィド結合によって
結合する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインは
、CH1及びCL抗体ドメインなどの抗体部分、又はその多様体を含む。いくつかの実施
形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γε及びζζからなる群から選択される少な
くとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能である。いくつかの実施
形態では、TCRMは、配列番号7及び8の配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメインを
含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化す
ることができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3複合体の形
成を促進する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュール、安定化モジュール及びT
CRMのいずれかの間にスペーサーモジュールが存在する。いくつかの実施形態では、抗
原結合モジュールは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab、
Fab’、(Fab’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態
では、第1のTCR-TM及び第2のTCR-TMは、表2に列挙したcaTCRのいず
れかに従って選択される。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、多重特異性
(例えば、二重特異性)である。
【0345】
いくつかの実施形態では、標的抗原関連疾患(例えば、癌又はウイルス感染)の治療を
必要とする個体において、当該疾患を治療する方法であって、(a)第1のTCR-TM
を含む第1のTCRDと第2のTCR-TMを含む第2のTCRDであって、第1のTC
R-TM及び第2のTCR-TMは、それぞれ、配列番号9及び8、7及び14、7及び
15、7及び16、10及び16、7及び17、7及び18、7及び19、7及び20、
7及び21、7及び22、11及び23、12及び24、7及び25、又は13及び26
のアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になり、又はこれらからなり、第1のTCR
Dと第2のTCRDが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが
可能なTCRMを形成し、(b)標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールであっ
て、抗原結合モジュールが、第1のTCRD及び/又は第2のTCRDに結合する、抗原
結合モジュールとを含む、その表面上で、標的抗原を特異的に認識するcaTCRを提示
するエフェクター細胞(例えば、T細胞又はナチュラルキラー細胞)を含む組成物を有効
量、個体に投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、抗体部分
は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv及び単鎖Fv(scFv)からなる群から
選択される。いくつかの実施形態では、抗体部分は、限定されないが、CD19、CD2
0、CD22、CD47、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5D及
びFCRL5を含み、これらの多様体又は変異体を含む、細胞表面抗原に特異的に結合す
る。いくつかの実施形態では、抗体部分は、ペプチド/MHC複合体に特異的に結合し、
ペプチドは、限定されないが、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1
、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1、KRAS、Histone H3.3
及びPSAを含み、これらの多様体又は変異体を含む、タンパク質に由来する。いくつか
の実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを
更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR接続ペプチド又はそのフラグメン
トを更に含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドは、配列番号31又は32
のアミノ酸配列又はその多様体を含み、及び/又は第2の接続ペプチドは、配列番号33
又は34のアミノ酸配列又はその多様体を含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペ
プチドと第2の接続ペプチドは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形
態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2の
TCRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第2の
TCR細胞内ドメインは、配列番号36のアミノ酸配列又はその多様体を含む。いくつか
の実施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、C
D28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30又はCD40由来)を含む少な
くとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、caT
CRは、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含
み、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化する互いに
対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメインと第2の安
定化ドメインは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、TCR
Mは、CD3δε、CD3γε及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTC
R関連シグナル伝達分子を動員することが可能である。いくつかの実施形態では、TCR
Mは、配列番号7及び8の配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメインを含むTCRMと比
較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化することができる。
いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3複合体の形成を促進する。い
くつかの実施形態では、任意の2つのcaTCRモジュール又はドメインの間にスペーサ
ーモジュールが存在する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、多重特異性
(例えば、二重特異性)である。
【0346】
いくつかの実施形態では、標的抗原関連疾患(例えば、癌又はウイルス感染)の治療を
必要とする個体において、当該疾患を治療する方法であって、(a)配列番号10のアミ
ノ酸配列を有する第1のTCR-TMを含む第1のTCRDと、配列番号16のアミノ酸
配列を有する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDとを含み、第1のTCRDと第2
のTCRDが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能なT
CRMを形成し、(b)標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールであって、抗原
結合モジュールが、第1のTCRD及び/又は第2のTCRDに結合する、抗原結合モジ
ュールを含む、その表面上で、標的抗原を特異的に認識するcaTCRを提示するエフェ
クター細胞(例えば、T細胞又はナチュラルキラー細胞)を含む組成物を有効量、個体に
投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、抗体部分は、Fab
、Fab’、(Fab’)2、Fv及び単鎖Fv(scFv)からなる群から選択される
。いくつかの実施形態では、抗体部分は、限定されないが、CD19、CD20、CD2
2、CD47、GPC-3、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5D及びFCRL
5を含み、これらの多様体又は変異体を含む、細胞表面抗原に特異的に結合する。いくつ
かの実施形態では、抗体部分は、ペプチド/MHC複合体に特異的に結合し、ペプチドは
、限定されないが、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAM
E、EBV-LMP2A、HIV-1、KRAS、Histone H3.3及びPSA
を含み、これらの多様体又は変異体を含む、タンパク質に由来する。いくつかの実施形態
では、第1のTCRDは、第1のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含み、
及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR接続ペプチド又はそのフラグメントを更に含
む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドは、配列番号31又は32のアミノ酸
配列又はその多様体を含み、及び/又は第2の接続ペプチドは、配列番号33又は34の
アミノ酸配列又はその多様体を含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドと第
2の接続ペプチドは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第
1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のTCRDは
、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第2のTCR細胞
内ドメインは、配列番号36のアミノ酸配列又はその多様体を含む。いくつかの実施形態
では、caTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4
-1BB(CD137)、OX40、CD30又はCD40由来)を含む少なくとも1つ
のアクセサリー細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、第
1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1の
安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化する互いに対する結合
親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメイ
ンは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、TCRMは、CD
3δε、CD3γε及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグ
ナル伝達分子を動員することが可能である。いくつかの実施形態では、TCRMは、配列
番号7及び8の配列を有するT細胞受容体膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少
なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を強化することができる。いくつかの
実施形態では、TCRMは、caTCR-CD3複合体の形成を促進する。いくつかの実
施形態では、任意の2つのcaTCRモジュール又はドメインの間にスペーサーモジュー
ルが存在する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、多重特異性(例えば、
二重特異性)である。
【0347】
いくつかの実施形態では、標的抗原関連疾患(例えば、癌又はウイルス感染)の治療を
必要とする個体において、当該疾患を治療する方法であって、(a)配列番号7及び配列
番号8のアミノ酸配列の1つに由来する第1のTCR-TMを含む第1のTCRDと、他
のアミノ酸配列に由来する第2のTCR-TMを含む第2のTCRDを含み、TCR-T
Mの少なくとも1つが、配列番号5又は6に由来する連続アミノ酸の一部を含むキメラ配
列を含み、第1のTCRDと第2のTCRDが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝
達分子を動員することが可能なTCRMを形成し、(b)標的抗原に特異的に結合する抗
原結合モジュールであって、抗原結合モジュールが、第1のTCRD及び/又は第2のT
CRDに結合する、抗原結合モジュールを含む、その表面上で、標的抗原を特異的に認識
するcaTCRを提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞又はナチュラルキラー細胞
)を含む組成物を有効量、個体に投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実
施形態では、TCR-TMは、それぞれ互いに独立して、配列番号5又は6に由来する連
続アミノ酸の一部を含むキメラ配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR-T
M及び/又は第2のTCR-TMは、それぞれ互いに独立して、配列番号7又は8に由来
する約10以下(例えば、約9、8、7、6、5以下、又はもっと少ない)の連続アミノ
酸の一部を含むキメラ配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM中又は
第2のTCR-TM中のキメラ配列は、配列番号5に由来し、他方のTCR-TM中のキ
メラ配列は、配列番号6に由来する。いくつかの実施形態では、第1のTCR-TM中の
キメラ配列は、第2のTCR-TM中のキメラ配列と相互作用し得るように配置される。
いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR接続ペプチド又はそのフラグ
メントを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR接続ペプチド又はそのフ
ラグメントを更に含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチド及び第2の接続ペ
プチドは、それぞれ互いに独立して、配列番号27~34又はこれらの多様体のうちいず
れか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドと第2の
接続ペプチドは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第1の
TCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第
2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第1のTCR細胞内ド
メイン及び第2のTCR細胞内ドメインは、それぞれ互いに独立して、配列番号35又は
36又はこれらの多様体のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、caTCRは
、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD13
7)、OX40、CD30又はCD40由来)を含む少なくとも1つのアクセサリー細胞
内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、caTCRは、第1の安定化ドメイン
と第2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含み、第1の安定化ドメイン及び
第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化する互いに対する結合親和性を有する。い
くつかの実施形態では、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインは、ジスルフィド
結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメイン及び第2の安定
化ドメインは、CH1及びCL抗体ドメインなどの抗体部分、又はその多様体を含む。い
くつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γε及びζζからなる群から選
択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を動員することが可能である。い
くつかの実施形態では、TCRMは、配列番号7及び8の配列を有するT細胞受容体膜貫
通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の
動員を強化することができる。いくつかの実施形態では、TCRMは、caTCR-CD
3複合体の形成を促進する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュール、安定化モジ
ュール及びTCRMのいずれかの間にスペーサーモジュールが存在する。いくつかの実施
形態では、抗原結合モジュールは、抗体部分である。いくつかの実施形態では、抗体部分
は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)である。いくつ
かの実施形態では、抗原結合モジュールは、多重特異性(例えば、二重特異性)である。
【0348】
いくつかの実施形態では、第1の標的抗原及び第2の標的抗原に関連する疾患(例えば
、癌又はウイルス感染)の治療を必要とする個体において、当該疾患を治療する方法であ
って、その表面上でcaTCRを提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞又はナチュ
ラルキラー細胞)を含む組成物を有効量、個体に投与することを含み、このcaTCRが
、(a)第1の標的抗原に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと第2の標的抗原に
特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む多重特異性(例えば、二重特異性)抗原
結合モジュールと、(b)第1のTCR-TMを含む第1のTCRD(TCRD1)と第
2のTCR-TMを含む第2のTCRD(TCRD2)を含むTCRMとを含み、TCR
Mが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を促進する、caTCRが提
供される。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR接続ペプチド又は
そのフラグメントを更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR接続ペプチド
又はそのフラグメントを更に含む。いくつかの実施形態では、第1の接続ペプチドは、第
1のTCR-TMの由来となるTCRサブユニットの接続ペプチドの全て又は一部、又は
その多様体を含み、及び/又は第2の接続ペプチドは、第2のTCR-TMの由来となる
TCRサブユニットの接続ペプチドの全て又は一部、又はその多様体を含む。いくつかの
実施形態では、第1の接続ペプチドと第2の接続ペプチドは、ジスルフィド結合によって
結合する。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインを
更に含み、及び/又は第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインを更に含む。いく
つかの実施形態では、第1のTCR細胞内ドメインは、第1のTCR-TMの由来となる
TCRサブユニットの細胞内ドメインに由来する配列を含み、及び/又は第2のTCR細
胞内ドメインは、第2のTCR-TMの由来となるTCRサブユニットの細胞内ドメイン
に由来する配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR-T
Mの由来となるTCRサブユニットのフラグメントであり、及び/又は第2のTCRDは
、第2のTCR-TMの由来となるTCRサブユニットのフラグメントである。いくつか
の実施形態では、caTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、C
D28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30又はCD40由来)を含む少な
くとも1つのアクセサリー細胞内ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、caT
CRは、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインを含む安定化モジュールを更に含
み、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインが、caTCRを安定化する互いに
対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第1の安定化ドメインと第2の安
定化ドメインは、ジスルフィド結合によって結合する。いくつかの実施形態では、第1の
安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインは、CH1及びCL抗体ドメインなどの抗体部
分、又はその多様体を含む。いくつかの実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3
γε及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子を
動員することが可能である。いくつかの実施形態では、TCRMは、天然に存在するαβ
T細胞受容体膜貫通ドメインを含むTCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シ
グナル伝達分子の動員を強化することを可能にする。いくつかの実施形態では、TCRM
は、caTCR-CD3複合体の形成を促進する。いくつかの実施形態では、任意の2つ
のcaTCRモジュール又はドメインの間にスペーサーモジュールが存在する。いくつか
の実施形態では、第1のTCR-TM及び第2のTCR-TMは、両方とも天然に存在す
る。いくつかの実施形態では、TCR-TMのうち少なくとも1つは、天然に存在しない
。いくつかの実施形態では、第1の標的抗原はCD19であり、第2の標的抗原はCD2
2であるか、又は第1の標的抗原はCD22であり、第2の標的抗原はCD19である。
いくつかの実施形態では、第1の標的抗原はCD19であり、第2の標的抗原はCD20
であるか、又は第1の標的抗原はCD20であり、第2の標的抗原はCD19である。い
くつかの実施形態では、疾患は、白血病である。
【0349】
また、標的抗原関連疾患を治療する必要がある個体において、当該疾患を治療する方法
であって、異なるcaTCRを発現する複数のエフェクター細胞を含む組成物を個体に投
与することを含む方法も想定される。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に
記載される個体において標的抗原関連疾患を治療するための方法のいずれかによれば、組
成物は、本明細書に記載されるような不均一なcaTCRエフェクター細胞組成物である
。
【0350】
例えば、いくつかの実施形態では、標的抗原関連疾患(例えば、癌又はウイルス感染)
の治療を必要とする個体において、当該疾患を治療する方法であって、本明細書に記載の
いずれかの実施形態に係る複数のcaTCRエフェクター細胞の集団を含む不均一なca
TCRエフェクター細胞組成物を有効量、個体に投与することを含み、組成物中のcaT
CRエフェクター細胞の全てが、同じ細胞型を有し(例えば、caTCRエフェクター細
胞の全てが細胞毒性T細胞である)、caTCRエフェクター細胞のそれぞれの集団が、
他の集団とは異なるcaTCRを発現し、caTCRエフェクター細胞の少なくとも1つ
の集団が、標的抗原に特異的に結合するcaTCRを発現する、方法が提供される。いく
つかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞は、T細胞である。いくつかの実施形
態では、caTCRエフェクター細胞は、細胞毒性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラル
キラーT細胞及びサプレッサーT細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態で
は、caTCRエフェクター細胞の各集団は、標的抗原に特異的に結合するcaTCRを
発現する。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞の少なくとも1つの集
団は、異なる標的抗原に特異的に結合するcaTCRを発現する。いくつかの実施形態で
は、caTCRエフェクター細胞の少なくとも1つの集団が、異なる標的抗原に特異的に
結合するcaTCRを発現する場合、異なる標的抗原はそれぞれ、標的抗原関連疾患と関
連する。
【0351】
いくつかの実施形態では、標的抗原関連疾患(例えば、癌又はウイルス感染)の治療を
必要とする個体において、当該疾患を治療する方法であって、本明細書に記載のいずれか
の実施形態に係る複数のcaTCRエフェクター細胞の集団を含む不均一なcaTCRエ
フェクター細胞組成物を有効量、個体に投与することを含み、caTCRエフェクター細
胞の少なくとも1つの集団が、他の集団とは異なる細胞型を有し、caTCRエフェクタ
ー細胞の少なくとも1つの集団が、標的抗原に特異的に結合するcaTCRを発現する、
方法が提供される。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞の集団は全て
、異なる細胞型を有する。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞は、T
細胞である。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞の各集団は、互いに
独立して、細胞毒性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞及びサプレッサー
T細胞からなる群から選択される細胞型を有する。いくつかの実施形態では、caTCR
エフェクター細胞の各集団は、同じcaTCRを発現する。いくつかの実施形態では、c
aTCRエフェクター細胞の少なくとも1つの集団は、他の集団とは異なるcaTCRを
発現する。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞の各集団は、他の集団
とは異なるcaTCRを発現する。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細
胞の各集団は、標的抗原に特異的に結合するcaTCRを発現する。いくつかの実施形態
では、caTCRエフェクター細胞の少なくとも1つの集団は、異なる標的抗原に特異的
に結合するcaTCRを発現する。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細
胞の少なくとも1つの集団が、異なる標的抗原に特異的に結合するcaTCRを発現する
場合、異なる標的抗原はそれぞれ、標的抗原関連疾患と関連する。
【0352】
いくつかの実施形態では、複数の標的抗原に関連する疾患の治療を必要とする個体にお
いて、当該疾患を治療する方法であって、本明細書に記載のいずれかの実施形態に係る複
数のcaTCRエフェクター細胞の集団を含む不均一なcaTCRエフェクター細胞組成
物を有効量、個体に投与することを含み、組成物中のcaTCRエフェクター細胞の全て
が、同じ細胞型を有し(例えば、caTCRエフェクター細胞の全てが細胞毒性T細胞で
ある)、caTCRエフェクター細胞のそれぞれの集団が、他の集団とは異なるcaTC
Rを発現し、複数の標的抗原のそれぞれの標的抗原について、caTCRエフェクター細
胞の少なくとも1つの集団が、標的抗原に特異的に結合するcaTCRを発現する、方法
が提供される。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞は、T細胞である
。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞は、細胞毒性T細胞、ヘルパー
T細胞、ナチュラルキラーT細胞及びサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0353】
いくつかの実施形態では、複数の標的抗原に関連する疾患の治療を必要とする個体にお
いて、当該疾患を治療する方法であって、本明細書に記載のいずれかの実施形態に係る複
数のcaTCRエフェクター細胞の集団を含む不均一なcaTCRエフェクター細胞組成
物を有効量、個体に投与することを含み、caTCRエフェクター細胞の少なくとも1つ
の集団が、他の集合とは異なる細胞型を有し、複数の標的抗原のそれぞれの標的抗原につ
いて、caTCRエフェクター細胞の少なくとも1つの集団が、標的抗原に特異的に結合
するcaTCRを発現する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、caTCRエ
フェクター細胞の集団は全て、異なる細胞型を有する。いくつかの実施形態では、caT
CRエフェクター細胞は、T細胞である。いくつかの実施形態では、caTCRエフェク
ター細胞の各集団は、互いに独立して、細胞毒性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキ
ラーT細胞及びサプレッサーT細胞からなる群から選択される細胞型を有する。いくつか
の実施形態では、caTCRエフェクター細胞の各集団は、他の集団とは異なるcaTC
Rを発現する。
【0354】
いくつかの実施形態では、個体は、哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、ラット、
マウス、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコなど)である。いくつかの実施形
態では、個体はヒトである。いくつかの実施形態では、個体は、臨床患者、臨床試験志願
者、実験動物などである。いくつかの実施形態では、個体は、約60歳より若い(例えば
、50歳、40歳、30歳、25歳、20歳、15歳又は10歳より若いのいずれかを含
む)。いくつかの実施形態では、個体は、約60歳よりも年上である(例えば、70歳、
80歳、90歳又は100歳より年上のいずれかを含む)。いくつかの実施形態では、個
体は、本明細書に記載の疾患又は障害(例えば、癌又はウイルス感染)の1つ以上である
と診断されているか、又は環境的又は遺伝的にこれらにかかりやすい。いくつかの実施形
態では、個体は、本明細書に記載の1つ以上の疾患又は障害に関連する1つ以上のリスク
因子を有する。
【0355】
いくつかの実施形態では、本発明のcaTCRエフェクター細胞組成物は、標的抗原の
発現を伴う疾患又は障害を治療するために、第2、第3又は第4の薬剤(例えば、抗新生
物剤、成長阻害剤、細胞毒性剤又は化学療法剤)と組み合わせて投与される。いくつかの
実施形態では、caTCRエフェクター細胞組成物は、サイトカイン(IL-2など)と
組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、caTCRは、MHCタンパク質の
発現を増加させるか、及び/又はMHCタンパク質によるペプチドの表面提示を増強する
薬剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、薬剤としては、例えば、IF
N受容体アゴニスト、Hsp90阻害剤、p53発現のエンハンサー及び化学療法剤が挙
げられる。いくつかの実施形態では、薬剤は、例えば、IFNγ、IFNβ及びIFNα
を含むIFN受容体アゴニストである。いくつかの実施形態では、薬剤は、例えば、タネ
スピマイシン(17-AAG)、アルベスピマイシン(17-DMAG)、レタスピマイ
シン(IPI-504)、IPI-493、CNF2024/BIIB021、MPC-
3100、Debio 0932(CUDC-305)、PU-H71、ガネテスピブ(
STA-9090)、NVP-AUY922(VER-52269)、HSP990、K
W-2478、AT13387、SNX-5422、DS-2248及びXL888を含
む、Hsp90阻害剤である。いくつかの実施形態では、薬剤は、例えば、5-フルオロ
ウラシル及びヌトリン-3を含む、p53発現のエンハンサーである。いくつかの実施形
態では、薬剤は、例えば、トポテカン、エトポシド、シスプラチン、パクリタキセル及び
ビンブラスチンを含む化学療法剤である。
【0356】
いくつかの実施形態では、標的抗原陽性疾患の治療を必要とする個体において、当該疾
患を治療する方法であって、本明細書に記載の実施形態のいずれかに係るcaTCRエフ
ェクター細胞組成物を、サイトカイン(例えばIL-2)と組み合わせて個体に投与する
ことを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞
組成物とサイトカインは、同時に投与される。いくつかの実施形態では、caTCRエフ
ェクター細胞組成物とサイトカインは、順次投与される。
【0357】
いくつかの実施形態では、標的抗原陽性疾患の治療を必要とする個体において、当該疾
患を治療する方法であって、標的抗原を発現する細胞が、標的抗原とMHCクラスIタン
パク質とを含む複合体がその表面に通常は存在しないか、又は比較的低レベルで存在し、
この方法は、本明細書に記載の実施形態のいずれかに係るcaTCRエフェクター細胞組
成物を、MHCクラスIタンパク質の発現を高めるか、及び/又はMHCクラスIタンパ
ク質によって標的抗原の表面提示を増強させる薬剤と組み合わせて個体に投与することを
含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、薬剤としては、例えば、IFN受容
体アゴニスト、Hsp90阻害剤、p53発現のエンハンサー及び化学療法剤が挙げられ
る。いくつかの実施形態では、薬剤は、例えば、IFNγ、IFNβ及びIFNαを含む
IFN受容体アゴニストである。いくつかの実施形態では、薬剤は、例えば、タネスピマ
イシン(17-AAG)、アルベスピマイシン(17-DMAG)、レタスピマイシン(
IPI-504)、IPI-493、CNF2024/BIIB021、MPC-310
0、Debio 0932(CUDC-305)、PU-H71、ガネテスピブ(STA
-9090)、NVP-AUY922(VER-52269)、HSP990、KW-2
478、AT13387、SNX-5422、DS-2248及びXL888を含む、H
sp90阻害剤である。いくつかの実施形態では、薬剤は、例えば、5-フルオロウラシ
ル及びヌトリン-3を含む、p53発現のエンハンサーである。いくつかの実施形態では
、薬剤は、例えば、トポテカン、エトポシド、シスプラチン、パクリタキセル及びビンブ
ラスチンを含む化学療法剤である。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細
胞組成物と薬剤は、同時に投与される。いくつかの実施形態では、caTCRエフェクタ
ー細胞組成物と薬剤は、順次投与される。
【0358】
いくつかの実施形態では、標的抗原関連疾患の治療を必要とする個体において、当該疾
患(例えば、癌又はウイルス感染)を治療する方法であって、本明細書に記載の実施形態
のいずれかに係るcaTCRをコードする核酸を含む組成物を有効量、個体に投与するこ
とを含む、方法が提供される。遺伝子送達の方法は、当該技術分野において既知である。
例えば、その全体が本明細書に参考として組み込まれる米国特許第5,399,346号
、同第5,580,859号、同第5,589,466号を参照。
【0359】
癌治療は、例えば、腫瘍退縮、腫瘍の重量又は大きさの収縮、進行するまでの時間、生
存期間、無増悪生存率、全奏効率、応答期間、生活の質、タンパク質発現及び/又は活性
によって評価することができる。治療の効能を判定するための手法は、例えば、放射線イ
メージングによる応答の測定を含め、利用することができる。
【0360】
いくつかの実施形態では、治療の効能は、腫瘍成長阻害率(%TGI)として測定され
、式100-(T/C×100)を用いて計算され、ここで、Tは、治療される腫瘍の平
均相対腫瘍体積であり、Cは、治療されていない腫瘍の平均相対腫瘍体積である。いくつ
かの実施形態では、%TGIは、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、
約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、
約95%であるか、又は95%より大きい。
【0361】
ウイルス感染治療は、例えば、ウイルス負荷、生存期間、生活の質、タンパク質発現及
び/又は活性によって評価することができる。
疾患
【0362】
caTCRエフェクター細胞は、いくつかの実施形態では、標的抗原と関連する癌を治
療するのに有用であり得る。本明細書に記載される方法のいずれかを使用して治療され得
る癌としては、血管形成されていないか、又はまだ実質的に血管形成されていない腫瘍、
及び血管形成された腫瘍が挙げられる。癌は、非固形腫瘍(例えば、血液腫瘍、例えば、
白血病及びリンパ腫)を含んでもよく、又は固形腫瘍を含んでもよい。本発明のcaTC
Rエフェクター細胞で治療される癌の種類としては、限定されないが、癌腫、芽腫及び肉
腫、及び特定の白血病又はリンパ系悪性腫瘍、良性及び悪性の腫瘍、及び悪性腫瘍、例え
ば、肉腫、癌腫及び黒色腫が挙げられる。成人腫瘍/癌及び小児腫瘍/癌もまた含まれる
。
【0363】
血液癌は、血液又は骨髄の癌である。血液学的(又は血液系)癌の例としては、急性白
血病(急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病及び骨髄芽球性、前
骨髄球性、骨髄球性、単球性及び赤血球性白血病など)、慢性白血病(慢性骨髄球性(顆
粒球)白血病など)、慢性骨髄性白血病及び慢性リンパ性白血病)、真性多血症、リンパ
腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(緩慢性及び高悪性度形態)、多発性骨髄腫、形質
細胞腫、ワルデンストロムマクログロブリン血症、重鎖病、骨髄異形成症候群、有毛細胞
白血病及び骨髄異形成症が挙げられる。
【0364】
固形腫瘍は、通常、嚢胞又は液体領域を含まない、異常な組織の塊である。固形腫瘍は
、良性であってもよく、又は悪性であってもよい。異なる種類の固形腫瘍は、それらを形
成する細胞の種類について命名されている(例えば、肉腫、癌腫及びリンパ腫)。肉腫及
び癌腫などの固形腫瘍の例としては、副腎皮質癌、胆管癌、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉
腫、軟骨肉腫、骨肉腫、及び他の肉腫、滑液腫瘍、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫
、横紋筋肉腫、結腸癌、胃癌、リンパ腫悪性疾患、膵臓癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺
癌、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺癌(例えば、髄甲状腺癌
及び乳頭甲状腺癌)、褐色細胞腫、脂腺癌、乳頭癌、乳糖腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細
胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌(例えば、子宮頸癌及び子宮頸
部異形成)、大腸直腸癌、肛門、肛門管又は肛門直腸の癌、膣癌、陰門癌(例えば、扁平
上皮癌、上皮内癌、腺癌及び線維肉腫)、陰茎癌、口腔咽頭癌、食道癌、頭部癌(例えば
、扁平上皮癌)、頸部癌(例えば、扁平上皮癌)、精巣癌(例えば、精上皮腫、奇形腫、
胎生期癌、奇形癌、絨毛腫、肉腫、ライディッヒ細胞腫、線維腫、線維腺腫、類腺腫瘍及
び脂肪腫)、膀胱癌、腎臓癌、黒色腫、子宮の癌(例えば、子宮内膜癌)、尿路上皮癌(
例えば、扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌、尿管癌及び膀胱癌)、及びCNS腫瘍(例えば
、神経膠腫(例えば、脳幹神経膠腫及び混合性神経膠腫)、膠芽細胞腫(多形性膠芽腫と
しても知られている)、星状細胞腫、CNSリンパ腫、胚細胞腫、髄芽腫、シュワンノー
マ頭蓋骨髄腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、神経
芽細胞腫、網膜芽腫及び脳転移)が挙げられる。
【0365】
癌治療は、例えば、腫瘍退縮、腫瘍の重量又は大きさの収縮、進行するまでの時間、生
存期間、無増悪生存率、全奏効率、応答期間、生活の質、タンパク質発現及び/又は活性
によって評価することができる。治療の効能を判定するための手法は、例えば、放射線イ
メージングによる応答の測定を含め、利用することができる。
【0366】
他の実施形態におけるcaTCRエフェクター細胞は、病原体関連(ウイルスによって
コードされる)抗原を標的とすることによって感染症を治療するのに有用であり得る。予
防されるか、又は治療される感染症は、例えば、ウイルス、細菌、原虫又は寄生体によっ
て引き起こされ得る。標的抗原は、病原体によって引き起こされる疾患に関与する病原性
タンパク質、ポリペプチド、若しくはペプチドであってもよく、病原体に感染した宿主に
おいて免疫応答を誘導し得るものである。caTCRエフェクター細胞によって標的とす
ることができる病原性抗原としては、限定されないが、Acinetobacter b
aumannii、Anaplasma genus、Anaplasma phago
cytophilum、Ancylostoma braziliense、Ancyl
ostoma duodenale、Arcanobacterium haemoly
ticum、Ascaris lumbricoides、Aspergillus g
enus、Astroviridae、Babesia genus、Bacillus
anthracis、Bacillus cereus、Bartonella he
nselae、BK virus、Blastocystis hominis、Bla
stomyces dermatitidis、Bordetella pertuss
is、Borrelia burgdorferi、Borrelia genus、B
orrelia spp、Brucella genus、Brugia malayi
、Bunyaviridaeファミリー、Burkholderia cepacia及
び他のBurkholderia種、Burkholderia mallei、Bur
kholderia pseudomallei、Caliciviridaeファミリ
ー、Campylobacter属、Candida albicans、Candid
a spp、Chlamydia trachomatis、Chlamydophil
a pneumoniae、Chlamydophila psittaci、CJDプ
リオン、Clonorchis sinensis、Clostridium botu
linum、Clostridium difficile、Clostridium
perfringens、Clostridium perfringens、Clos
tridium spp、Clostridium tetani、Coccidioi
des spp、coronaviruses、Corynebacterium di
phtheriae、Coxiella burnetii、Crimean-Cong
o出血熱ウイルス、Cryptococcus neoformans、Cryptos
poridium属、サイトメガロウイルス(CMV)、デングウイルス(DEN-1、
DEN-2、DEN-3及びDEN-4)、Dientamoeba fragilis
、エボラウイルス(EBOV)、Echinococcus属、Ehrlichia c
haffeensis、Ehrlichia ewingii、Ehrlichia属、
Entamoeba histolytica、Enterococcus属、エンテロ
ウイルス属、エンテロウイルス、主に、Coxsackie Aウイルス及びエンテロウ
イルス71(EV71)、Epidermophyton spp、エプスタインバール
ウイルス(EBV)、Escherichia coli O157:H7、O111及
びO104:H4、Fasciola hepatica及びFasciola gig
antica、FFIプリオン、Filarioideaスーパーファミリー、フラビウ
イルス、Francisella tularensis、Fusobacterium
属、Geotrichum candidum、Giardia intestinal
is、Gnathostoma spp、GSSプリオン、Guanaritoウイルス
、Haemophilus ducreyi、Haemophilus influen
zae、Helicobacter pylori、ヘニパウイルス(Hendraウイ
ルス、Nipahウイルス)、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝
炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、ヘルペス単純ウイルス1
型及び2型(HSV-1及びHSV-2)、Histoplasma capsulat
um、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)、Hortaea werneckii、ヒトボ
カウイルス(HBoV)、ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)及びヒトヘルペスウイ
ルス7(HHV-7)、ヒトメタニューもウイルス(hMPV)、ヒトパピローマウイル
ス(HPV)、ヒトパラインフルエンザウイルス(HPIV)、ヒトT細胞白血病ウイル
ス1(HTLV-1)、日本脳炎ウイルス、JCウイルス、Juninウイルス、カポジ
肉腫に関連するヘルペスウイルス(KSHV)、Kingella kingae、Kl
ebsiella granulomatis、Kuruプリオン、ラッサウイルス、L
egionella pneumophila、Leishmania属、Leptos
pira属、Listeria monocytogenes、リンパ球性脈絡髄膜炎ウ
イルス(LCMV)、Machupoウイルス、Malassezia spp、Mar
burgウイルス、Measlesウイルス、Metagonimus yokagaw
ai、Microsporidia phylum、伝染性軟属腫ウイルス(MCV)、
Mumpsウイルス、Mycobacterium leprae及びMycobact
erium lepromatosis、Mycobacterium tubercu
losis、Mycobacterium ulcerans、Mycoplasma
pneumoniae、Naegleria fowleri、Necator ame
ricanus、Neisseria gonorrhoeae、Neisseria
meningitidis、Nocardia asteroides、Nocardi
a spp、Onchocerca volvulus、Orientia tsuts
ugamushi、Orthomyxoviridaeファミリー(インフルエンザ)、
Paracoccidioides brasiliensis、Paragonimu
s spp、Paragonimus westermani、Parvovirus
B19、Pasteurella genus、Plasmodium属、Pneumo
cystis jirovecii、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、呼吸系発疹ウイ
ルス(RSV)、ライノウイルス、ライノウイルス、Rickettsia akari
、Rickettsia属、Rickettsia prowazekii、Ricke
ttsia rickettsii、Rickettsia typhi、リフトバレー
熱ウイルス、ロタウイルス、風疹ウイルス、サビアウイルス、Salmonella属、
Sarcoptes scabiei、SARSコロナウイルス、Schistosom
a属、Shigella属、Sin Nombreウイルス、ハンタウイルス、Spor
othrix schenckii、Staphylococcus属、Staphyl
ococcus属、Streptococcus agalactiae、Strept
ococcus pneumoniae、Streptococcus pyogene
s、Strongyloides stercoralis、Taenia属、Taen
ia solium、ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)、Toxocara can
is又はToxocara cati、Toxoplasma gondii、Trep
onema pallidum、Trichinella spiralis、Tric
homonas vaginalis、Trichophyton spp、Trich
uris trichiura、Trypanosoma brucei、Trypan
osoma cruzi、Ureaplasma urealyticum、水痘帯状疱
疹ウイルス(VZV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、Variola major
又はVariola minor、vCJDプリオン、ベネズエラ馬脳炎ウイルス、Vi
brio cholerae、西ナイルウイルス、西部馬脳脊髄炎ウイルス、Wuche
reria bancrofti、黄熱ウイルス、Yersinia enteroco
litica、Yersinia pestis及びYersinia pseudot
uberculosisに由来する抗原が挙げられる。
【0367】
いくつかの実施形態では、caTCRエフェクター細胞は、発癌ウイルスによる感染な
どの発癌性感染疾患を治療するために使用される。発癌ウイルスとしては、CMV、EB
V、HBV、KSHV、HPV、MCV、HTLV-1、HIV-1及びHCVが挙げら
れるが、これらに限定されない。caTCRの標的抗原は、Tax、E7、E6/E7、
E6、HBx、EBNAタンパク質(例えば、EBNA3 A、EBNA3 C及びEB
NA 2)、v-サイクリン、LANA1、LANA2、LMP-1、k-bZIP、R
TA、KSHV K8、及びこれらのフラグメントを含む、ウイルス由来の癌タンパク質
であってもよい。Ahuja、Richaら、Curr.Sci.、2014を参照。
製造物品及びキット
【0368】
本発明のいくつかの実施形態では、標的抗原陽性疾患、例えば、癌(例えば、副腎皮質
癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、胆管癌、大腸癌、食道癌、神経膠芽腫、神経膠腫、肝細胞
癌、頭頸部癌、腎臓癌、肺癌、黒色腫、中皮腫、多発性骨髄腫、膵臓癌、褐色細胞腫、形
質細胞腫、神経芽腫、卵巣癌、前立腺癌、肉腫、胃癌、子宮癌又は甲状腺癌)又はウイル
ス感染(例えば、CMV、EBV、HBV、KSHV、HPV、MCV、HTLV-1、
HIV-1又はHCVによる感染)の治療に有用な物質を含む製造物品が提供される。製
品は、容器と、この容器上にある又はこの容器に付随したラベル又は添付文書と、を含む
ことができる。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジなどが挙げら
れる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成されてもよい。一般に
、容器は、本明細書に記載の疾患又は障害を処置するのに有効な組成物を保持するもので
あり、無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって貫通可能な
ストッパーを有する静脈輸液バッグ又はバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも
1つの活性薬剤は、その表面上に本発明のcaTCRを提示するエフェクター細胞である
。ラベル又は添付文書は、組成物が特定の状態を治療するために使用されることを示す。
ラベル又は添付文書は、caTCRエフェクター細胞組成物を患者に投与するための指示
書を更に含む。本明細書に記載の併用療法を含む製造物品及びキットも想定される。
【0369】
添付文書は、治療用製品の商品パッケージに習慣的に含まれている、このような治療用
製品の使用に関しての指示、使用法、用量、投与、禁忌及び/又は警告に関する情報を記
載している説明書を参照する。いくつかの実施形態では、添付文書は、組成物が、標的抗
原陽性癌(例えば、副腎皮質癌、膀胱癌、白血病、乳癌、子宮頸癌、胆管癌、大腸癌、食
道癌、神経膠芽腫、神経膠腫、肝細胞癌、頭頸部癌、腎臓癌、肺癌、黒色腫、中皮腫、多
発性骨髄腫、膵臓癌、褐色細胞腫、形質細胞腫、神経芽腫、卵巣癌、前立腺癌、肉腫、胃
癌、子宮癌又は甲状腺癌)を治療するために使用されることを示す。他の実施形態では、
添付文書は、組成物が標的抗原陽性ウイルス感染(例えば、CMV、EBV、HBV、K
SHV、HPV、MCV、HTLV-1、HIV-1又はHCVによる感染)を治療する
ために使用されることを示す。
【0370】
更に、製造物品は、医薬的に許容される緩衝剤、例えば、静菌注射用水(BWFI)、
リン酸緩衝食塩水、Ringer液及びデキストロース液などを含む第2の容器を更に含
んでいてもよい。これは、他の緩衝液、希釈液、濾過器、針、及び注射器を含めて、商業
上及び利用者の立場からの他の好ましい材料を更に含んでよい。
【0371】
例えば、本明細書に記載される標的抗原陽性疾患又は障害の治療のために、場合により
、製造物品と組み合わせて、様々な目的で有用なキットも提供される。本発明のキットは
、caTCRエフェクター細胞組成物(又は単位剤形及び/又は製造物品)を含む1つ以
上の容器を含み、いくつかの実施形態では、別の薬剤(本明細書に記載の薬剤など)及び
/又は本明細書に記載される方法のいずれかに従って使用するための指示書を更に含む。
このキットは、処置に適している個体の選択についての説明を更に含んでよい。本発明の
キットで提供される使用説明書は、典型的には、ラベル又は添付文書(例えば、キットに
含まれる紙シート)に書かれた説明書であるが、機械読み出し可能な命令(例えば、磁気
又は光学記憶ディスクで実行される命令)も許容される。
【0372】
例えば、いくつかの実施形態では、キットは、その表面上にcaTCRを提示するエフ
ェクター細胞を含む組成物を含む。いくつかの実施形態では、キットは、(a)その表面
上にcaTCRを提示するエフェクター細胞を含む組成物と、(b)有効量の少なくとも
1つの他の薬剤とを含み、他の薬剤は、MHCタンパク質の発現を増加させ、及び/又は
MHCタンパク質によるペプチド(例えば、IFNγ、IFNβ、IFNα又はHsp9
0阻害剤)の表面提示を強化する。いくつかの実施形態では、キットは、(a)その表面
上にcaTCRを提示するエフェクター細胞を含む組成物と、(b)標的抗原陽性疾患(
例えば、癌又はウイルス感染)の治療のためにcaTCRエフェクター細胞組成物を個体
に投与するための使用説明書とを含む。いくつかの実施形態では、キットは、(a)その
表面上にcaTCRを提示するエフェクター細胞を含む組成物と、(b)有効量の少なく
とも1つの他の薬剤であって、MHCタンパク質の発現を増加させ、及び/又はMHCタ
ンパク質によるペプチド(例えば、IFNγ、IFNβ、IFNα又はHsp90阻害剤
)の表面提示を強化する、薬剤と、(c)標的抗原陽性疾患(例えば、癌又はウイルス感
染)の治療のためにcaTCRエフェクター細胞組成物と他の薬剤とを個体に投与するた
めの使用説明書と、を含む。caTCRエフェクター細胞組成物及び他の薬剤は、別個の
容器に存在してもよく、又は単一の容器内に存在してもよい。例えば、キットは、1つの
別個の組成物又は2つ以上の組成物を含んでもよく、1つの組成物はcaTCRエフェク
ター細胞を含み、別の組成物は他の薬剤を含む。
【0373】
いくつかの実施形態では、キットは、(a)caTCRを含む組成物と、(b)caT
CRとエフェクター細胞(例えば、個体に由来する、T細胞又はナチュラルキラー細胞な
どのエフェクター細胞)とを合わせ、その表面上にcaTCRを提示するエフェクター細
胞を含む組成物を生成し、標的抗原陽性疾患(例えば、癌又はウイルス感染)の治療のた
めにcaTCRエフェクター細胞組成物を個体に投与するための使用説明書とを含む。い
くつかの実施形態では、キットは、(a)caTCRを含む組成物と、(b)エフェクタ
ー細胞(細胞毒性細胞など)を含む。いくつかの実施形態では、キットは、(a)caT
CRを含む組成物と、(b)エフェクター細胞(例えば、細胞毒性細胞)と、(c)ca
TCRとエフェクター細胞とを合わせ、その表面上にcaTCRを提示するエフェクター
細胞を含む組成物を生成し、標的抗原陽性疾患(例えば、癌又はウイルス感染)の治療の
ためにcaTCRエフェクター細胞組成物を個体に投与するための使用説明書とを含む。
【0374】
いくつかの実施形態では、キットは、caTCRをコードする核酸(又は核酸のセット
)を含む。いくつかの実施形態では、キットは、(a)caTCRをコードする核酸(又
は核酸のセット)と、(b)核酸(又は核酸のセット)を発現するための宿主細胞(例え
ば、エフェクター細胞)とを含む。いくつかの実施形態では、キットは、(a)caTC
Rをコードする核酸(又は核酸のセット)と、(b)(i)宿主細胞(例えば、エフェク
ター細胞、例えば、T細胞)でcaTCRを発現し、(ii)caTCRを発現する宿主
細胞を含む組成物を調製し、(iii)標的抗原陽性疾患(例えば、癌又はウイルス感染
)の治療のためにcaTCRを発現する宿主細胞を含む組成物を個体に投与するための使
用説明書とを含む。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、個体に由来する。いくつかの
実施形態では、キットは、(a)caTCRをコードする核酸(又は核酸のセット)と、
(b)核酸(又は核酸のセット)を発現するための宿主細胞(例えば、エフェクター細胞
)と、(c)(i)宿主細胞でcaTCRを発現し、(ii)caTCRを発現する宿主
細胞を含む組成物を調製し、(iii)標的抗原陽性疾患(例えば、癌又はウイルス感染
)の治療のためにcaTCRを発現する宿主細胞を含む組成物を個体に投与するための使
用説明書とを含む。
【0375】
本発明のキットは、好適なパッケージに入っている。好適なパッケージには、バイアル
、ボトル、ジャー、可撓性パッケージ(例えば、密閉マイラー又はプラスチック袋)など
が挙げられるが、これらに限定されない。キットは、任意追加的に、緩衝剤及び解釈的情
報など追加の構成要素を提供してよい。したがって、本願はまた、バイアル(密閉バイア
ルなど)、ボトル、ジャー、可撓性パッケージなどを含む製品を提供する。
【0376】
caTCRエフェクター細胞組成物の使用に関する使用説明書は、意図する治療向けの
用量、投与スケジュール及び投与経路に関する情報を概ね含む。容器は、単位用量、大量
容器(例えば、多用量パッケージ)又は分割単位用量(sub-unit doses)であってよい
。例えば、長期間(例えば、1週間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、
13日間、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、
7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間のいずれか、又はもっと長く)にわたって個体に有効な治
療を与えるのに十分な用量の本明細書に記載のcaTCRエフェクター細胞組成物を含む
キットが提供されてもよい。キットはまた、複数単位用量のcaTCRと医薬組成物と、
使用のための指示書とを含んでいてもよく、例えば、院内薬局及び調剤薬局など薬局での
保管及び使用に十分な量で包装されてもよい。
【0377】
当業者は、本発明の範囲及び趣旨内でいくつかの実施形態が可能であることを理解する
であろう。次に、以下の非限定的な実施例を参照して、本発明を更に詳細に説明する。以
下の実施例は、本発明を更に説明するが、当然のことながら、決してその範囲を限定する
ものとして解釈されるべきではない。
例示的な実施形態
【0378】
実施形態1.キメラ抗体T細胞受容体(TCR)構築物(caTCR)であって、標的
抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールと、第1のTCR膜貫通ドメイン(TCR-
TM)を含む第1のTCRドメイン(TCRD)と第2のTCR-TMを含む第2のTC
RDを含むT細胞受容体モジュール(TCRM)とを含み、TCR-TMのうち少なくと
も1つが、天然に存在せず、TCRMが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子
の動員を促進し、抗原結合モジュールが、天然に存在するT細胞受容体抗原結合部分では
ない、caTCR。
【0379】
実施形態2.TCR-TMが両方とも、天然に存在しないものである、実施形態1に記
載のcaTCR。
【0380】
実施形態3.第1のTCR-TMが、第1の天然に存在するT細胞受容体の膜貫通ドメ
インの1つに由来し、第2のTCR-TMが、第1の天然に存在するT細胞受容体の他の
膜貫通ドメインに由来する、実施形態1又は2に記載のcaTCR。
【0381】
実施形態4.TCRMが、第1の天然に存在するT細胞受容体の膜貫通ドメインを含む
TCRMと比較して、少なくとも1つのTCR関連シグナ伝達分子の動員を強化すること
を可能にする、実施形態3に記載のcaTCR。
【0382】
実施形態5.第1のTCR-TMが、その由来となる膜貫通ドメインと比較して5個ま
でのアミノ酸置換を含み、及び/又は第2のTCR-TMが、その由来となる膜貫通ドメ
インと比較して5個までのアミノ酸置換を含む、実施形態3又は4に記載のcaTCR。
【0383】
実施形態6.第1のTCR-TMが、1個のアミノ酸置換を含み、及び/又は第2のT
CR-TMが、1個のアミノ酸置換を含む、実施形態5に記載のcaTCR。
【0384】
実施形態7.第1のTCR-TM中の置換アミノ酸が、第2のTCR-TM中の置換ア
ミノ酸に対して近位である、実施形態5又は6に記載のcaTCR。
【0385】
実施形態8.1つ以上の置換アミノ酸が、CD3に対する結合に関与する第1のTCR
-TM中又は第2のTCR-TM中のアミノ酸に対して近位である、実施形態5~7のい
ずれか1つに記載のcaTCR。
【0386】
実施形態9.1つ以上の置換アミノ酸が、それらの対応する非置換アミノ酸よりも疎水
性である、実施形態5~8のいずれか1つに記載のcaTCR。
【0387】
実施形態10.置換アミノ酸はそれぞれ、それらの対応する非置換アミノ酸よりも疎水
性である、実施形態9に記載のcaTCR。
【0388】
実施形態11.第1のTCR-TMが、配列番号7及び9~13のいずれか1つのアミ
ノ酸配列を含み、第2のTCR-TMが、配列番号8及び14~26のいずれか1つのア
ミノ酸配列を含む、実施形態1に記載のcaTCR。
【0389】
実施形態12.実施形態1に記載のcaTCRであって、第1のTCR-TM及び第2
のTCR-TMが、(a)それぞれ、配列番号9及び8、(b)それぞれ、配列番号7及
び14、(c)それぞれ、配列番号7及び15、(d)それぞれ、配列番号7及び16、
(e)それぞれ、配列番号10及び16、(f)それぞれ、配列番号7及び17、(g)
それぞれ、配列番号7及び18、(h)それぞれ、配列番号7及び19、(i)それぞれ
、配列番号7及び20、(j)それぞれ、配列番号7及び21、(k)それぞれ、配列番
号7及び22、(l)それぞれ、配列番号11及び23、(m)それぞれ、配列番号12
及び24、(n)それぞれ、配列番号7及び25、(o)それぞれ、配列番号13及び2
6のアミノ酸配列を含む、caTCR。
【0390】
実施形態13.caTCRが、第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインを含む安
定化モジュールを更に含み、第1の安定化ドメイン及び第2の安定化ドメインが、caT
CRを安定化する互いに対する結合親和性を有する、実施形態1~12のいずれか1つに
記載のcaTCR。
【0391】
実施形態14.安定化モジュールが、CH1-CLモジュール、CH2-CH2モジュ
ール、CH3-CH3モジュール及びCH4-CH4モジュールからなる群から選択され
る、実施形態13に記載のcaTCR。
【0392】
実施形態15.第1の安定化ドメインと第2の安定化ドメインとの間に共有結合が存在
する、実施形態13又は14に記載のcaTCR。
【0393】
実施形態16.共有結合がジスルフィド結合である、実施形態15に記載のcaTCR
。
【0394】
実施形態17.安定化モジュールが、抗原結合モジュールとTCRMとの間に位置して
いる、実施形態13~16のいずれか1つに記載のcaTCR。
【0395】
実施形態18.caTCRが、抗原結合モジュールとTCRMとの間にスペーサーモジ
ュールを更に含み、スペーサーモジュールが、TCRMに対して抗原結合モジュールを接
続する1つ以上のペプチドリンカーを含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載のc
aTCR。
【0396】
実施形態19.ペプチドリンカーが、約5~約50アミノ酸長である、実施形態18に
記載のcaTCR。
【0397】
実施形態20.抗原結合モジュールが、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv及び
単鎖Fv(scFv)からなる群から選択される抗体部分である、実施形態1~19のい
ずれか1つに記載のcaTCR。
【0398】
実施形態21.caTCRが、2つ以上の抗原結合モジュールを含む、実施形態1~2
0のいずれか1つに記載のcaTCR。
【0399】
実施形態22.caTCRが多重特異性である、実施形態21に記載のcaTCR。
【0400】
実施形態23.抗原結合モジュールが、TCRDの少なくとも1つに結合する少なくと
も1つのscFvを含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載のcaTCR。
【0401】
実施形態24.抗原結合モジュールが、TCRDの1つに結合するVHドメインと、他
のTCRDに結合するVLドメインとを含む、実施形態1~23のいずれか1つに記載の
caTCR。
【0402】
実施形態25.caTCRが、第1のTCRDを含む第1のポリペプチド鎖と、第2の
TCRDを含む第2のポリペプチド鎖とを含む、ヘテロダイマーである、実施形態1~2
4のいずれか1つに記載のcaTCR。
【0403】
実施形態26.標的抗原が、細胞表面抗原である、実施形態1~25のいずれか1つに
記載のcaTCR。
【0404】
実施形態27.細胞表面抗原が、タンパク質、炭水化物及び脂質からなる群から選択さ
れる、実施形態26に記載のcaTCR。
【0405】
実施形態28.細胞表面抗原が、CD19、CD20、CD22、CD47、GPC-
3、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5D及びFCRL5からなる群から選択さ
れる、実施形態26に記載のcaTCR。
【0406】
実施形態29.標的抗原が、ペプチドと主要組織適合抗原複合体(MHC)タンパク質
とを含む複合体である、実施形態1~25のいずれか1つに記載のcaTCR。
【0407】
実施形態30.ペプチドが、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1
、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1、KRAS、Histone H3.3
及びPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する、実施形態29に記載のca
TCR。
【0408】
実施形態31.caTCRが、約0.1pM~約500nMの平衡解離定数(Kd)で
標的抗原に結合する、実施形態1~30のいずれか1つに記載のcaTCR。
【0409】
実施形態32.caTCRであって、(a)第1の標的抗原に特異的に結合する第1の
抗原結合ドメインと第2の標的抗原に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む多
重特異性抗原結合モジュールと、(b)第1のTCR-TMを含む第1のTCRD(TC
RD1)と第2のTCR-TMを含む第2のTCRD(TCRD2)を含むTCRMとを
含み、TCRMが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子の動員を促進する、c
aTCR。
【0410】
実施形態33.第1の抗原結合ドメインが、第1の重鎖可変ドメイン(VH1)と第1
の軽鎖可変ドメイン(VL1)を含むFvであり、第2の抗原結合ドメインが、重鎖定常
ドメイン1(CH1)に融合した第2のVH(VH2)と、軽鎖定常ドメイン(CL)に
融合した第2のVL(VL2)とを含むFabである、実施形態32に記載のcaTCR
。
【0411】
実施形態34.実施形態33に記載のcaTCRであって、(i)N末端からC末端ま
で、VH1-L1-VH2-CH1-TCRD1を含む第1のポリペプチド鎖と、N末端
からC末端まで、VL1-L2-VL2-CL-TCRD2を含む第2のポリペプチド鎖
;(ii)N末端からC末端まで、VH1-L1-VL2-CL-TCRD1を含む第1
のポリペプチド鎖と、N末端からC末端まで、VL1-L2-VH2-CH1-TCRD
2を含む第2のポリペプチド鎖;(iii)N末端からC末端まで、VL1-L1-VH
2-CH1-TCRD1を含む第1のポリペプチド鎖と、N末端からC末端まで、VH1
-L2-VL2-CL-TCRD2を含む第2のポリペプチド鎖;又は(iv)N末端か
らC末端まで、VL1-L1-VL2-CL-TCRD1を含む第1のポリペプチド鎖と
、N末端からC末端まで、VH1-L2-VH2-CH1-TCRD2を含む第2のポリ
ペプチド鎖を含み、L1及びL2がペプチドリンカーである、caTCR。
【0412】
実施形態35.第1の抗原結合ドメインが、VH1とVL1を含む第1のFvであり、
第2の抗原結合ドメインが、VH2とVL2を含む第2のFvであり、caTCRが、C
H1とCLを更に含む、実施形態32に記載のcaTCR。
【0413】
実施形態36.実施形態35に記載のcaTCRであって、(i)N末端からC末端ま
で、VH1-L1-VH2-CH1-TCRD1を含む第1のポリペプチド鎖と、N末端
からC末端まで、VL2-L2-VL1-CL-TCRD2を含む第2のポリペプチド鎖
;又は(ii)N末端からC末端まで、VL1-L1-VL2-CL-TCRD1を含む
第1のポリペプチド鎖と、N末端からC末端まで、VH2-L2-VH1-CH1-TC
RD2を含む第2のポリペプチド鎖を含み、L1及びL2がペプチドリンカーである、c
aTCR。
【0414】
実施形態37.第1の抗原結合ドメインが第1のscFv(scFv1)であり、第2
の抗原結合ドメインが第2のscFv(scFv2)であり、caTCRが、CH1とC
Lを更に含む、実施形態32に記載のcaTCR。
【0415】
実施形態38.実施形態37に記載のcaTCRであって、(i)N末端からC末端ま
で、scFv1-L1-CH1-TCRD1を含む第1のポリペプチド鎖と、N末端から
C末端まで、scFv2-L2-CL-TCRD2を含む第2のポリペプチド鎖;又は(
ii)N末端からC末端まで、scFv2-L1-CH1-TCRD1を含む第1のポリ
ペプチド鎖と、N末端からC末端まで、scFv1-L2-CL-TCRD2を含む第2
のポリペプチド鎖を含み、L1及びL2がペプチドリンカーである、caTCR。
【0416】
実施形態39.第1の抗原結合ドメインがscFvであり、第2の抗原結合ドメインが
、CH1に融合したVHとCLに融合したVLとを含むFabである、実施形態32に記
載のcaTCR。
【0417】
実施形態40.実施形態39に記載のcaTCRであって、(i)N末端からC末端ま
で、scFv-L1-VH-CH1-TCRD1を含む第1のポリペプチド鎖と、N末端
からC末端まで、VL-CL-TCRD2を含む第2のポリペプチド鎖;又は(ii)N
末端からC末端まで、VH-CH1-TCRD1を含む第1のポリペプチド鎖と、N末端
からC末端まで、scFv-L2-VL-CL-TCRD2を含む第2のポリペプチド鎖
を含み、L1及びL2がペプチドリンカーである、caTCR。
【0418】
実施形態41.実施形態39に記載のcaTCRであって、(i)N末端からC末端ま
で、VL-CL-L1-TCRD1を含む第1のポリペプチド鎖と、N末端からC末端ま
で、VH-CH1を含む第2のポリペプチド鎖と、N末端からC末端まで、scFv-L
2-TCRD2を含む第3のポリペプチド鎖;(ii)N末端からC末端まで、VH-C
H1-L1-TCRD1を含む第1のポリペプチド鎖と、N末端からC末端まで、VL-
CLを含む第2のポリペプチド鎖と、N末端からC末端まで、scFv-L2-TCRD
2を含む第3のポリペプチド鎖;(iii)N末端からC末端まで、scFv-L1-T
CRD1を含む第1のポリペプチド鎖と、N末端からC末端まで、VH-CH1を含む第
2のポリペプチド鎖と、N末端からC末端まで、VL-CL-L2-TCRD2を含む第
3のポリペプチド鎖;又は(iv)N末端からC末端まで、scFv-L1-TCRD1
を含む第1のポリペプチド鎖と、N末端からC末端まで、VL-CLを含む第2のポリペ
プチド鎖と、N末端からC末端まで、VH-CH1-L2-TCRD2を含む第3のポリ
ペプチド鎖を含み、L1及びL2がペプチドリンカーである、caTCR。
【0419】
実施形態42.L1及び/又はL2が、約5~約50アミノ酸長である、実施形態34
、36、38、40又は41に記載のcaTCR。
【0420】
実施形態43.L1及び/又はL2が、配列番号82~85のいずれか1つのアミノ酸
配列を含む、実施形態42に記載のcaTCR。
【0421】
実施形態44.第1の標的抗原が、第1の細胞表面抗原であり、第2の標的抗原が、第
2の細胞表面抗原である、実施形態32~43のいずれか1つに記載のcaTCR。
【0422】
実施形態45.第1の標的抗原がCD19であり、第2の標的抗原がCD22であるか
、又は第1の標的抗原がCD22であり、第2の標的抗原がCD19である、実施形態4
4に記載のcaTCR。
【0423】
実施形態46.第1の標的抗原がCD19であり、第2の標的抗原がCD20であるか
、又は第1の標的抗原がCD20であり、第2の標的抗原がCD19である、実施形態4
4に記載のcaTCR。
【0424】
実施形態47.CD22に特異的に結合する抗原結合ドメインが、配列番号65のアミ
ノ酸配列を含むVHのHC-CDR1、HC-CDR2及びHC-CDR3を含むVHと
、配列番号69のアミノ酸配列を含むVLのLC-CDR1、LC-CDR2及びLC-
CDR3を含むVLとを含む、実施形態45又は46に記載のcaTCR。
【0425】
実施形態48.CD22に特異的に結合する抗原結合ドメインが、配列番号65のアミ
ノ酸配列を含むVHと、配列番号69のアミノ酸配列を含むVLとを含む、実施形態47
に記載のcaTCR。
【0426】
実施形態49.CD19に特異的に結合する抗原結合ドメインが、配列番号74のアミ
ノ酸配列を含むVHのHC-CDR1、HC-CDR2及びHC-CDR3を含むVHと
、配列番号78のアミノ酸配列を含むVLのLC-CDR1、LC-CDR2及びLC-
CDR3を含むVLとを含む、実施形態45~48のいずれか1つに記載のcaTCR。
【0427】
実施形態50.CD19に特異的に結合する抗原結合ドメインが、配列番号74のアミ
ノ酸配列を含むVHと、配列番号78のアミノ酸配列を含むVLとを含む、実施形態49
に記載のcaTCR。
【0428】
実施形態51.第1のTCR-TM及び第2のTCR-TMが、両方とも天然に存在す
るものである、実施形態32~50のいずれか1つに記載のcaTCR。
【0429】
実施形態52.TCR-TMのうち少なくとも1つが、天然に存在しないものである、
実施形態32~50のいずれか1つに記載のcaTCR。
【0430】
実施形態53.多重特異性抗原結合モジュールが二重特異性である、実施形態32~5
2のいずれか1つに記載のcaTCR。
【0431】
実施形態54.第1のTCRDが、TCRサブユニットの第1の接続ペプチド又はその
フラグメントを更に含む、実施形態1~53のいずれか1つに記載のcaTCR。
【0432】
実施形態55.第2のTCRDが、TCRサブユニットの第2の接続ペプチド又はその
フラグメントを更に含む、実施形態1~54のいずれか1つに記載のcaTCR。
【0433】
実施形態56.TCRMが、第1の接続ペプチド中の残基と第2の接続ペプチド中の残
基との間にジスルフィド結合を含む、実施形態55に記載のcaTCR。
【0434】
実施形態57.第1のTCRDが、TCR細胞内配列を含む第1のTCR細胞内ドメイ
ンを更に含む、実施形態1~56のいずれか1つに記載のcaTCR。
【0435】
実施形態58.第2のTCRDが、TCR細胞内配列を含む第2のTCR細胞内ドメイ
ンを更に含む、実施形態1~57のいずれか1つに記載のcaTCR。
【0436】
実施形態59.caTCRが、共刺激細胞内シグナル伝達配列を含む第1のアクセサリ
ー細胞内ドメインを更に含む、実施形態1~58のいずれか1つに記載のcaTCR。
【0437】
実施形態60.TCR関連シグナル伝達分子が、CD3δε、CD3γε及びζζから
なる群から選択される、実施形態1~59のいずれか1つに記載のcaTCR。
【0438】
実施形態61.第1の天然に存在するT細胞受容体が、γ/δ T細胞受容体である、
実施形態3~60のいずれか1つに記載のcaTCR。
【0439】
実施形態62.第1の天然に存在するT細胞受容体が、α/β T細胞受容体である、
実施形態3~60のいずれか1つに記載のcaTCR。
【0440】
実施形態63.実施形態1~62のいずれか1つに記載のcaTCRをコードする、1
つ以上の核酸。
【0441】
実施形態64.caTCRが、同じ核酸分子上にコードされる、実施形態63に記載の
1つ以上の核酸。
【0442】
実施形態65.実施形態63又は64に記載の1つ以上の核酸を含む、1つ以上のベク
ター。
【0443】
実施形態66.1つ以上の核酸を含む単一のベクターを含む、実施形態65に記載の1
つ以上のベクター。
【0444】
実施形態67.実施形態63又は64に記載の1つ以上の核酸、又は実施形態65又は
66に記載の1つ以上のベクターを含む、組成物。
【0445】
実施形態68.実施形態1~62のいずれか1つに記載のcaTCRと、CD3δε、
CD3γε及びζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達
分子とを含む、複合体。
【0446】
実施形態69.複合体が、caTCRと、CD3δε、CD3γε及びζζとを含む八
量体である、実施形態68に記載の複合体。
【0447】
実施形態70.実施形態1~62のいずれか1つに記載のcaTCR又は実施形態68
又は69に記載の複合体をその表面上に提示するエフェクター細胞。
【0448】
実施形態71.実施形態63又は64に記載の1つ以上の核酸、又は実施形態65又は
66に記載の1つ以上のベクターを含み、エフェクター細胞がcaTCRを発現する、エ
フェクター細胞。
【0449】
実施形態72.エフェクター細胞が、第1及び/又は第2のTCRDと対を形成するこ
とが可能な内在性T細胞受容体サブユニットを発現しない、実施形態70又は71に記載
のエフェクター細胞。
【0450】
実施形態73.エフェクター細胞が、第1及び/又は第2のTCRDと対を形成するこ
とが可能な内在性T細胞受容体サブユニットを天然には発現しない、実施形態72に記載
のエフェクター細胞。
【0451】
実施形態74.エフェクター細胞が、第1の内在性TCRサブユニット及び/又は第2
の内在性TCRサブユニットの発現を遮断するか、又は減少させるように改変されている
、実施形態72に記載のエフェクター細胞。
【0452】
実施形態75.エフェクター細胞がCD3+細胞である、実施形態70~74のいずれ
か1つに記載のエフェクター細胞。
【0453】
実施形態76.CD3+細胞が、細胞毒性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラー
T細胞及びサプレッサーT細胞からなる群から選択される、実施形態75に記載のエフェ
クター細胞。
【0454】
実施形態77.caTCRがヘテロ二量体であり、(a)第1のプロモーターの制御下
で、caTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列を含む第1のベクタ
ーと、(b)第2のプロモーターの制御下で、caTCRの第2のポリペプチド鎖をコー
ドする第2の核酸配列を含む第2のベクターとを含む、実施形態70~76のいずれか1
つに記載のエフェクター細胞。
【0455】
実施形態78.caTCRがヘテロ二量体であり、(a)第1のプロモーターの制御下
で、caTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列と、(b)第2のプ
ロモーターの制御下で、caTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列
とを含む、ベクターを含む、実施形態70~76のいずれか1つに記載のエフェクター細
胞。
【0456】
実施形態79.caTCRがヘテロ二量体であり、(a)caTCRの第1のポリペプ
チド鎖をコードする第1の核酸配列とcaTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第
2の核酸配列を含むベクターを含み、第1の核酸配列と第2の核酸配列が、単一のプロモ
ーターの制御下にある、実施形態70~76のいずれか1つに記載のエフェクター細胞。
【0457】
実施形態80.caTCRの第1のポリペプチド鎖の発現が、caTCRの第2のポリ
ペプチド鎖の発現の2倍より多い、実施形態70~78のいずれか1つに記載のエフェク
ター細胞。
【0458】
実施形態81.標的抗原を提示する標的細胞を死滅させる方法であって、標的細胞と、
実施形態70~80のいずれか1つに記載のエフェクター細胞とを接触させることを含み
、caTCRが、標的抗原に特異的に結合する、方法。
【0459】
実施形態82.接触させることが、in vivoでの接触である、実施形態81に記
載の方法。
【0460】
実施形態83.接触させることが、in vitroでの接触である、実施形態81に
記載の方法。
【0461】
実施形態84.医薬組成物であって、(a)実施形態1~62のいずれか1つに記載の
caTCR、実施形態63又は64に記載の1つ以上の核酸、又は実施形態65又は66
に記載の1つ以上のベクター、又は実施形態70~80のいずれか1つに記載のエフェク
ター細胞と、(b)医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【0462】
実施形態85.標的抗原関連疾患の治療を必要とする個体において当該疾患を治療する
方法であって、有効量の実施形態84に記載の組成物を個体に投与することを含む、方法
。
【0463】
実施形態86.標的抗原関連疾患が癌である、実施形態85に記載の方法。
【0464】
実施形態87.癌が、副腎皮質癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、胆管癌、大腸癌、食道癌
、神経膠芽腫、神経膠腫、肝細胞癌、頭頸部癌、腎臓癌、白血病、肺癌、リンパ腫、黒色
腫、中皮腫、多発性骨髄腫、膵臓癌、褐色細胞腫、形質細胞腫、神経芽腫、卵巣癌、前立
腺癌、肉腫、胃癌、子宮癌及び甲状腺癌からなる群から選択される、実施形態86に記載
の方法。
【0465】
実施形態88.標的抗原関連疾患がウイルス感染である、実施形態85に記載の方法。
【0466】
実施形態89.ウイルス感染が、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバー
ルウイルス(EBV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス
(KSHV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、伝染性軟属腫ウイルス(MCV)、
ヒトT細胞白血病ウイルス1(HTLV-1)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)及びC
型肝炎ウイルス(HCV)からなる群から選択されるウイルスによって引き起こされる、
実施形態88に記載の方法。
【0467】
実施形態90.実施形態70~80のいずれか1つに記載のエフェクター細胞のための
不均一な細胞集団を濃縮する方法であって、(a)不均一な細胞集団と、標的抗原又はそ
の中に含まれる1つ以上のエピトープを含むリガンドとを接触させ、リガンドに結合した
エフェクター細胞の複合体を形成することと、(b)この複合体を、不均一な細胞集団か
ら分離し、それによって、エフェクター細胞が濃縮された細胞集団を生成することとを含
む、方法。
【0468】
実施形態91.実施形態1~62のいずれか1つに記載の複数のcaTCRをコードす
る配列を含む、核酸ライブラリー。
【0469】
実施形態92.標的抗原に対して高い親和性を有するcaTCRについて、実施形態9
1に記載のライブラリーをスクリーニングする方法であって、(a)核酸ライブラリーを
複数の細胞に導入し、その結果、caTCRが複数の細胞の表面で発現することと、(b
)複数の細胞を、標的抗原又はその中に含まれる1つ以上のエピトープを含むリガンドと
共にインキュベートすることと、(c)リガンドに結合した細胞を集めることと、(d)
工程(c)で集めた細胞から、caTCRをコードする配列を単離し、それによって、標
的抗原に特異的なcaTCRを同定することとを含む、方法が提供される。
【実施例0470】
材料及び方法
細胞サンプル、細胞株及び抗体
細胞株HepG2(ATCC HB-8065;HLA-A2+、AFP+)、SK-
HEP-1(ATCC HTB-52;HLA-A2+、AFP-)、Raji(ATC
C CCL-86;CD19+)、CA46(ATCC CRL-1648;CD19+
)、Jurkat(ATCC CRL-2899、CD19-)、J.RT3-T3.5
(ATCC TIB-153)、Jeko-1(ATCC CRL-3006;CD19
+)、K562(ATCC CC-243、CD19-)、THP-1(ATCC TI
B-202、CD19-)、Daudi(ATCC CCL-213;CD19+)、H
eLa(ATCC CCL-2)、MDA-MB-231(ATCC HTB-26)及
びMCF-7(ATCC HTB-22)を、American Type Cultu
re Collectionから得た。Jurkatは、T細胞白血病由来のヒトTリン
パ球細胞株である。J.RT3-T3.5は、T細胞受容体β鎖を欠く、Jurkat細
胞由来の突然変異株である。Rajiは、CD19を発現するバーキットリンパ腫細胞株
である。Raji-CD19ノックアウト(Raji-CD19KO)株を、CRISP
R技術によって作成した。Raji細胞中のCD19を標的とするために、3種類のガイ
ド配列を設計した。CRISPR-Cas9ベクターをOrigeneから購入し、各ガ
イドを、pCas-Guideベクターに別々にクローニングした。エレクトロポレーシ
ョンの3日後、各ガイドによるノックアウト効率をフローサイトメトリーによって評価し
、限界希釈によって、クローン選択のために最良のCD19ノックアウトプールを選択し
た。選択されたクローンを、配列決定によって完全なCD19ノックアウトであると確認
した。別のコントロール細胞株SK-HEP-1-AFP-MGは、AFPペプチドAF
P158を発現するミニ遺伝子カセットを用いてSK-HEP-1細胞株に形質導入する
ことによって生成され、AFP158/HLA-A*02:01複合体の高レベルの細胞
表面発現をもたらす。K562は、慢性骨髄性白血病(CML)細胞株である。K562
-CD22は、CD22を発現するベクターを用い、K562細胞株に形質導入すること
によって生成した。K562-CD19は、CD19を発現するベクターを用い、K56
2細胞株に形質導入することによって生成した。K562-CD19/CD22は、CD
19を発現するベクター及びCD22を発現するベクターを用い、K562細胞株に形質
導入することによって生成した。全ての細胞株を、37℃/5%CO2で、10%FBS
及び2mMグルタミンを添加したRPMI 1640又はDMEM中で培養した。
【0471】
FITC又はAPC標識したヒトHLA A02(クローンBB7.2)に対するモノ
クローナルAb、FITC又はAPC標識したそのアイソタイプコントロールマウスIg
G2b、ヒト又はマウスCD3に対する抗体、ヒトT細胞受容体の種々のサブユニット、
3×Flagタグ、HAタグ、FITC又はAPCに標識したヤギF(ab)2抗ヒトI
gG、蛍光標識したヤギF(ab’)2抗マウスIg(Invitrogen)を購入し
た。AFP158/HLA-A*02:01に特異的な抗体に対する抗イディオタイプ抗
体を開発し、Eureka Therapeuticsにおいて、社内で製造した。フロ
ーサイトメトリーデータをBD FACSCanto IIを使用して集め、FlowJ
oソフトウェアパッケージを使用して分析した。
【0472】
全てのペプチドを購入し、Elim Biopharmaにより合成した。ペプチドは
、90%超の純度であった。ペプチドをDMSOに溶解するか、又は食塩水で10mg/
mLになるまで希釈し、-80℃で凍結させた。ビオチン化単鎖AFP158/HLA-
A*02:01及びコントロールペプチド/HLA-A*02:01複合体単量体を、組
換えHLA-A*02:01及びβ-2ミクログロブリン(β2M)を用いてペプチドを
再折り畳みすることにより生成した。単量体は、BirA酵素によるHLA-A*02:
01細胞外ドメイン(ECD)のC末端に接続するBSPペプチドを介してビオチン化し
た。蛍光標識ストレプトアビジンをビオチン化ペプチド/HLA-A*02:01複合体
単量体と混合して、蛍光標識されたペプチド/HLA-A*02:01四量体を形成した
。
【0473】
ヒトCD19に特異的又はAFP158/HLA-A*02:01に特異的なCAR又
はcaTCRを含有するレンチウイルスを、例えば、キメラ構築物をコードするベクター
を用いた293T細胞のトランスフェクションによって作製した。初代ヒトT細胞を、1
00U/mLのインターロイキン-2(IL-2)の存在下で、CD3/CD28ビーズ
(DYNABEADS(登録商標)、Invitrogen)による1日間の刺激後に形
質導入に使用した。濃縮レンチウイルスを、レトロネクチン(Takara)コーティン
グされた6ウェルプレート中のT細胞に96時間適用した。抗AFP及び抗CD19キメ
ラ構築物の形質導入効率を、それぞれPE標識したストレプトアビジン又は抗myc抗体
を含むビオチン化AFP158/HLA-A*02:01四量体(「AFP158四量体
」)を使用して、フローサイトメトリーによって評価した。フローサイトメトリーによる
反復分析を、5日目と、その後に3~4日おきに行った。
【0474】
細胞株には、caTCR構築物の2つのサブユニットをコードする1つ又は2つのベク
ターのいずれかを用いて形質導入した。形質導入から5日後に、抗HA(抗HAタグ抗体
-ChIPグレード、Abcam)又は抗Flag抗体(ウサギで作られた抗Flag抗
体、Sigma)を使用し、ウェスタンブロットのために細胞溶解物を生成した。
【0475】
腫瘍細胞毒性を、Cytox 96非放射性LDH細胞毒性アッセイ(Promega
)によりアッセイした。CD3+T細胞は、CD14、CD16、CD19、CD20、
CD36、CD56、CD66b、CD123、グリコホリンAを発現する細胞を負に枯
渇させるEasySep Human T Cell Isolation Kit(S
temCell Technologies)を使用し、PBMCを濃縮した全血から調
製した。ヒトT細胞を活性化し、例えば、製造元のプロトコルに従ってCD3/CD28
Dynabeads(Invitrogen)で増殖させた。活性化T細胞(ATC)
を培養し、10%FBS+100U/mL IL-2を添加したRPMI1640培地で
維持し、7~14日目に使用した。活性化T細胞(エフェクター細胞)及び標的細胞を、
様々なエフェクターと標的の比率(例えば、2:1、2.5:1又は5:1)で16時間
共培養し、細胞毒性についてアッセイした。
実施例1.キメラ抗体-T細胞受容体(caTCR)の設計
【0476】
様々なキメラ抗体-T細胞受容体(caTCR)の設計が想定され、6種類の異なる例
が
図1に示される(caTCR-1、caTCR-2、caTCR-3、caTCR-4
、caTCR-5及びcaTCR-6)。これらの設計では、様々な抗体部分(Fab、
Fab’、(Fab’)2、Fv又はscFv)は、可変ドメイン及び定常ドメインを欠
くT細胞受容体α/β鎖又はγ/δ鎖のアミノ末端に融合され、それらの接続ペプチドの
全て又は一部(定常ドメインの後の領域)、それらの膜貫通ドメイン又はその変異体、及
び任意の細胞内ドメインを含み、T細胞の表面上で発現され得るcaTCRヘテロ二量体
を形成する。ネイティブなTCRでは、Vα/Vβ又はVδ/Vγドメインは、TCRの
抗原結合ドメインを形成する。本願発明者らの設計は、Vα-Cα/Vβ-Cβ領域又は
Vδ-Cδ/Vγ-Cγ領域を種々の抗体部分と置き換え、少なくとも1つのTCR膜貫
通ドメイン多様体を導入し、それにより、抗体の結合特異性を構築物に付与し、CD3δ
ε、CD3γε及びCD3ζζなどのTCR複合体において、天然に存在するTCR膜貫
通ドメインのみを有するTCR又は関連する構築物と比較して、アクセサリー分子を動員
する構築物の能力が向上する。caTCR構築物は、以下のように命名された。caTC
R[設計番号]-[多様体の位置][番号]。設計番号1は、Fab抗体部分を有するc
aTCRに対応し、設計番号2は、Fab’抗体部分を有するcaTCRに対応し、設計
番号3は、(Fab’)2抗体部分を有するcaTCRに対応し、設計番号4は、Fv抗
体部分を有するcaTCRに対応し、設計番号5は、単一のscFv抗体部分を有するc
aTCRに対応し、設計番号6は、2つのscFv抗体部分を有するcaTCRに対応す
る(
図1参照)。多様体の位置がなく、0番(例えば、caTCR-1-0)は、天然に
存在するTCRドメインを有する構築物に対応し、1以上の番号は、多様体の位置に特定
の多様体を有するcaTCRに対応する(例えば、caTCR-1-TM1は、1つの膜
貫通ドメイン多様体に対応し、caTCR-1-EC1は、1つの細胞外ドメイン多様体
に対応する。表2を参照のこと)。
【0477】
caTCR-1(IgVH-IgCH1-TCRδ/IgVL-IgCL-TCRγ)
の設計では、抗体重鎖の可変ドメイン及び第1定常ドメイン(IgVH-IgCH1)が
、TCRδ鎖のアミノ末端部分を、Vδ-Cδ領域の後のTCRδ鎖の細胞外ドメイン中
の接続ペプチドの境界の位置、又はその中にある位置まで、置き換え、場合により、TC
Rδ鎖の膜貫通ドメインが、例えば、1つ以上のアミノ酸の置換によって改変されている
。対応する抗体軽鎖の可変ドメイン及び定常ドメイン(IgVL-IgCL)は、TCR
γ鎖のアミノ末端部分を、Vγ-Cγ領域の後のTCRγ鎖の細胞外ドメイン中の接続ペ
プチドの境界の位置、又はその中にある位置まで、置き換え、場合により、TCRγ鎖の
膜貫通ドメインが、例えば、1つ以上のアミノ酸の置換によって改変されている。
【0478】
caTCR-1の一実施形態では、1つの鎖は、膜貫通ドメインとTCRγ鎖の接続ペ
プチドの全て又は一部とを含むTCRδ鎖のカルボキシ末端部分に融合した、抗AFP1
58/HLA-A*02:01抗体(配列番号52)のIgVHドメイン(配列番号37
)を含み、他の鎖は、膜貫通ドメインとTCRγ鎖の接続ペプチドの全て又は一部とを含
むTCRγ鎖のカルボキシ末端部分に融合した、IgCLドメイン(配列番号48)に融
合した抗AFP158/HLA-A*02:01抗体(配列番号53)のIgVLドメイ
ンを含み、TCRドメインの少なくとも1つ(例えば、TCR膜貫通ドメイン)は、1つ
以上のアミノ酸置換を含む天然に存在しない多様体である。いくつかの実施形態では、T
CRδ鎖のカルボキシ末端部分は、配列番号31又は32のアミノ酸配列を有する接続ペ
プチドを含む。いくつかの実施形態では、TCRδ鎖のカルボキシ末端部分は、配列番号
7及び9~13のいずれか1つのアミノ酸配列を有する膜貫通ドメインを含む。いくつか
の実施形態では、TCRγ鎖のカルボキシ末端部分は、配列番号33又は34のアミノ酸
配列を有する接続ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、TCRγ鎖のカルボキシ末
端部分は、配列番号8及び14~26のいずれか1つのアミノ酸配列を有する膜貫通ドメ
インを含む。
【0479】
caTCR-2(IgVH-IgCH1-ヒンジ-TCRδ/IgVL-IgCL-リ
ンカー-TCRγ)の設計では、抗体重鎖の可変ドメイン、第1定常ドメイン及びヒンジ
(IgVH-IgCH1-ヒンジ)が、TCRδ鎖のアミノ末端部分を、Vδ-Cδ領域
の後のTCRδ鎖の細胞外ドメイン中の接続ペプチドの境界の位置、又はその中にある位
置まで、置き換え、場合により、TCRδ鎖の膜貫通ドメインは、1つ以上のアミノ酸の
置換によって改変される。リンカーに融合した、対応する抗体軽鎖の可変ドメイン及び定
常ドメイン(IgVL-IgCL-リンカー)は、TCRγ鎖のアミノ末端部分を、TC
Rγ鎖の細胞外ドメイン内の接続ペプチドの境界の位置、又はその中にある位置まで、置
き換え、場合により、TCRγ鎖の膜貫通ドメインは、例えば、1つ以上のアミノ酸の置
換によって改変される。
【0480】
caTCR-3(IgVH-IgCH1-ヒンジ-TCRδ/IgVH-IgCH1-
ヒンジ-TCRγ+IgVL-IgCL)の設計において、抗体重鎖の可変ドメイン、第
1定常ドメイン、ヒンジ(IgVH-IgCH1)が、TCRδ鎖のアミノ末端部分を、
Vδ-Cδ領域の後のTCRδ鎖の細胞外ドメイン中の接続ペプチドの境界の位置、又は
その中にある位置まで、置き換え、場合により、TCRδ鎖の膜貫通ドメインが、例えば
、1つ以上のアミノ酸の置換によって改変されている。抗体重鎖の可変ドメイン、第1の
定常ドメイン及びヒンジ(IgVH-IgCH1-ヒンジ)は、TCRγ鎖のアミノ末端
部分を、Vγ-Cγ領域の後のTCRγ鎖の細胞外ドメイン中の接続ペプチドの境界の位
置、又はその中にある位置まで、置き換え、場合により、TCRγ鎖の膜貫通ドメインが
、例えば、1つ以上のアミノ酸の置換によって改変されている。対応する抗体軽鎖の可変
ドメイン及び定常ドメイン(IgVL-IgCL)は、IgVH-IgCH1ドメインと
関連がある。
【0481】
caTCR-4(IgVH-TCRδ/IgVL-TCRγ)の設計では、抗体重鎖の
可変ドメイン(IgVH)が、TCRδ鎖のアミノ末端部分を、Vδ-Cδ領域の後のT
CRδ鎖の細胞外ドメイン中の接続ペプチドの境界の位置、又はその中にある位置まで、
置き換え、場合により、TCRδ鎖の膜貫通ドメインが、例えば、1つ以上のアミノ酸の
置換によって改変されている。対応する抗体軽鎖の可変ドメイン(IgVL)は、TCR
γ鎖のアミノ末端部分を、Vγ-Cγ領域の後のTCRγ鎖の細胞外ドメイン中の接続ペ
プチドの境界の位置、又はその中にある位置まで、置き換え、場合により、TCRγ鎖の
膜貫通ドメインが、例えば、1つ以上のアミノ酸の置換によって改変されている。
【0482】
caTCR-5(IgVH-IgVL-TCRδ/TCRγ)の設計では、対応する抗
体軽鎖の可変ドメインに融合した抗体重鎖の可変ドメイン(IgVH-IgVL又はIg
VL-IgVH)は、Vδ-Cδ領域の後に、TCRδ鎖のアミノ末端部分を、TCRδ
鎖の細胞外ドメイン中の接続ペプチドの境界の位置、又はその中にある位置まで、置き換
え、場合により、TCRδ鎖の膜貫通ドメインが、例えば、1つ以上のアミノ酸の置換に
よって改変されている。Vγ-Cγ領域の後に、TCRγ鎖の細胞外ドメイン中の接続ペ
プチドの境界の位置、又はその中にある位置までのTCRγ鎖のアミノ末端部分が削除さ
れ、場合により、TCRγ鎖の膜貫通ドメインが、例えば、1つ以上のアミノ酸の置換に
よって改変されている。
【0483】
caTCR-6(IgVH-IgVL-TCRδ/IgVH-IgVL-TCRγ)の
設計では、対応する抗体軽鎖の可変ドメインに融合した抗体重鎖の可変ドメイン(IgV
H-IgVL又はIgVL-IgVH)が、TCRδ鎖のアミノ末端部分を、Vδ-Cδ
領域の後のTCRδ鎖の細胞外ドメイン中の接続ペプチドに属するか、又はその中にある
位置まで、置き換え、場合により、TCRδ鎖の膜貫通ドメインが、例えば、1つ以上の
アミノ酸の置換によって改変されている。対応する抗体軽鎖の可変ドメインに融合した抗
体重鎖の可変ドメイン(IgVH-IgVL又はIgVL-IgVH)は、TCRγ鎖の
アミノ末端部分を、Vγ-Cγ領域の後のTCRγ鎖の細胞外ドメイン内の接続ペプチド
に属するか、又はその中にある位置まで、置き換え、場合により、TCRγ鎖の膜貫通ド
メインは、例えば、1つ以上のアミノ酸の置換によって改変される。
実施例2:caTCR-1-TM多様体を作製するために置換された膜貫通アミノ酸
【0484】
この実施例は、caTCR-1-TM構築物の生成に使用される、天然に存在するTC
R膜貫通ドメインの多様体を記載する。caTCR-1受容体は、δ及びγTCRサブユ
ニットに由来の膜貫通ドメインを含有していた。caTCR-1受容体の概略図を
図2に
示し、膜貫通ドメインが強調されている。caTCR治療の効能を高めるための置換は、
2つの鎖の膜貫通ドメインを構成するアミノ酸に焦点を合わせた。caTCR-1-0受
容体を構成する膜貫通領域のαヘリックス様の輪状突出部は、caTCR-1-TM膜貫
通変異体を形成するように変異した位置を強調している(
図3)。
【0485】
δTCRサブユニットの天然に存在する膜貫通ドメインは、配列番号7のアミノ酸配列
を有し、以下の置換によって改変された。L4C;M6V;V12F及びN15S;F2
45S;又はL25S。γTCRサブユニットの天然に存在する膜貫通ドメインは、配列
番号8のアミノ酸配列を有し、以下の置換によって改変された。Y2L、M3V、A16
V及びI18V;Y2I、M3I、A16I及びI18L;L8F、V12F及びF15
S;Y1Q;Y2L;M3V;M3I;L5C;V13Y;A16V;I18V;C19
M;又はC21G。作成したcaTCR-1-TM多様体を表2にまとめる。
実施例3.フローサイトメトリーによるcaTCR細胞表面発現及びTCR-CD3複
合体形成の検出
【0486】
caTCR-1-0と共に、3種類の膜貫通変異体受容体(caTCR-1-TM3、
-TM4、-TM5)は、個々にJ.RT3-T3.5細胞に形質導入された。caTC
R-1-0及びcaTCR-1-TM変異体構築物を用いて形質導入された細胞を、抗C
D3ε抗体によって評価し、TCR陰性J.RT3-T3.5細胞及びPE標識されたA
FP158/HLA-A*02:01四量体上でのCD3ε発現の補助を評価し、細胞表
面でのcaTCR構築物の発現を測定した。フローサイトメトリー分析を使用し、細胞の
表面上のCD3及びcaTCRのMFIを測定した。CD3又はcaTCRの発現は、c
aTCR-1-0形質導入細胞に対するMFI測定値の百分率として表される。
【0487】
結果を
図4に示す。Mock形質導入は、AFP158/HLA-A
*02:01四量
体への結合を与えず、J.RT3-T3.5細胞表面上でCD3εの発現をもたらさなか
った。JRT3-T3.5細胞を個別に形質導入して変異体受容体を発現させ、蛍光標識
されたAFP158/HLA-A
*02:01で染色し、抗CD3εは、caTCR-1
-0で観察されたMFI値を上回る蛍光強度の別個のピークを示した。顕著には、変異体
受容体は、TCR陰性JRT3-T3.5細胞株におけるCD3εの細胞表面発現を補助
することができただけでなく、細胞表面でのcaTCR-1-0の発現に関連する上述の
CD3シグナル伝達複合体の発現を増加させることも可能であった。
【0488】
このことから、膜貫通変異体が、内在性CD3複合体を動員するためのcaTCRの重
要な要件を改善することができたことが実証された。これは、TCRの定常ドメインが、
CD3鎖との相互作用に寄与しているため、予想されないものとして見ることができ(K
uhns and Davis、Front.Immunol.2012;3:159;
及びWang及びReinherz、Immunol.Rev.2012、250:10
2)、TCR-CD3シグナル伝達複合体の安定性に関するTCR膜貫通領域の役割は、
正しく評価されていない。更に、本キメラは、TCR定常ドメインをIgG CH1で置
換しており、このことは、TCR定常ドメインが、アッセイしたいずれのcaTCR受容
体とのCD3アセンブリにも必要ではないことを示している。これは、試験した外因性c
aTCRキメラの全てが、それらの同族抗原に結合し得る機能的な受容体を形成し、J.
RT3-T3.5細胞上のCD3複合体の細胞表面発現を補助することができることを示
す。
実施例4.caTCR-1-TM変異体を用いたCD3ζのCo-IPプルダウン
【0489】
抗FLAG免疫沈降は、(
図4)のように形質導入されたJRT3-T3.5細胞の細
胞溶解物から行い、caTCR複合体を、caTCR受容体の全ての鎖IIに融合したF
LAGタグによってプルダウンした。形質導入されたJRT3-T3.5細胞を溶解し、
caTCR複合体を非イオン性洗剤で洗浄し、そのまま精製した(Cohenら、200
6 Cancer Res.)。抗Flag抗体を使用し、ウェスタンブロットで、ca
TCR鎖IIの発現を検出した(
図5)。CD3複合体とのFLAGタグ化caTCRの
会合は、抗CD3ζ抗体とのウェスタンブロットによって可視化した(
図5)。caTC
R-1-TM4及びcaTCR-1-TM5は、2つの受容体によってプルダウンされた
CD3ζの量の増加によって分かるように、CD3複合体に対してより高い親和性を有し
た(
図5、矢印)。caTCR-1-TM4は、鎖II上に変異を有し、一方、caTC
R-1-TM5は、鎖1上の更なる変異と共に、鎖IIに同一の変異を有する。
実施例5.caTCR-1膜貫通変異体で形質導入されたT細胞を用いた、AFP陽性
腫瘍のin vitroでの死滅活性の特性決定
【0490】
初代T細胞を、mock形質導入するか、又は抗AFP158/HLA-A
*02:0
1結合部分(それぞれ、配列番号52及び53のV
Hドメイン及びV
Lドメイン)をコー
ドするcaTCR-1-0又はcaTCR-1膜貫通変異体(-TM1~-TM5、及び
-TM14~-TM16)を用いて形質導入した。形質導入効率は、PE標識されたAF
P158/HLA-A
*02:01テトラマーで染色することによって決定した。全ての
caTCR-1 T細胞を、mock T細胞と混合することによって、受容体陽性率4
0%で一致させた。2つの細胞株SK-HEP-1(AFP-/HLA-A2+)及びS
K-HEP-1-AFP-MG(AFPミニ遺伝子で形質導入されたSK-HEP-1)
を、エフェクターと標的の比率2.5:1で使用した。Cytox 96 Non-ra
dioactive Cytotoxicity Assay(Promega)を使用
し、16時間インキュベーションした後に、特異的なT細胞溶解を測定した。抗AFP1
58/HLA-A
*02:01結合部分を有する全てのcaTCR-1-TM変異体で形
質導入されたT細胞は、抗原陽性細胞株SK-HEP-1-AFP-MGの死滅を指向し
たが、抗原陰性細胞株SK-HEP-1の死滅は引き起こさなかった(
図6)。全てのc
aTCR-1-TM変異体で形質導入された細胞で観察される特異的溶解のレベルは、c
aTCR-1-0で形質導入されたT細胞のレベルに匹敵するものであり、このことは、
TM変異体(TM1~TM5)が、抗原陽性腫瘍細胞に対してT細胞の細胞毒性をシグナ
ル伝達する機能的能力を保持していることを示している。
実施例6.caTCR-1-TM変異体T細胞を用いた、SK-HEP-1-AFP-
MG腫瘍細胞株のin vitroでの死滅中に放出されるサイトカイン
【0491】
初代T細胞を、mock形質導入するか、又は抗AFP158/HLA-A
*02:0
1結合部分(それぞれ、配列番号52及び53のV
Hドメイン及びV
Lドメイン)をコー
ドするcaTCR-1-0又はcaTCR-1膜貫通変異体(-TM1~-TM5)を用
いて形質導入した。形質導入効率は、PE標識されたAFP158/HLA-A
*02:
01テトラマーで染色することによって決定した。全てのcaTCR-1 T細胞を、m
ock T細胞と混合することによって、受容体陽性率40%で一致させた。SK-HE
P-1-AFP-MG(AFPミニ遺伝子で形質導入されたSK-HEP-1)を、エフ
ェクターと標的の比率2.5:1で使用した。16時間のSK-HEP1-AFP-MG
in vitro死滅アッセイ(
図6)の後に、IL-2、IL-10、GM-CSF
、IFN-γ及びTNF-αの培地へのサイトカイン放出を、Bio-plex Pro
Human Cytokine 8-plex Assay(BioRad)を備えた
Magpix multiplexシステム(Luminex)を用いて測定した。SK
-HEP-1-AFP-MG標的反応からのアッセイ上清を10倍に希釈した。サイトカ
イン濃度は、BioRad Bio-plexキットにより供給される標準曲線を用いて
測定された(
図7)。膜貫通変異体を用いたときのサイトカイン放出のわずかな増加は、
特定の膜貫通変異体が、毒性レベルのサイトカイン放出を防ぐ制御機構を維持しつつ、抗
原により誘導されるT細胞シグナル伝達強度を増加させ得ることを示唆している。
実施例7.caTCR-1膜貫通変異体で形質導入されたT細胞を用いた、AFP陽性
腫瘍のin vitroでの死滅活性の特性決定
【0492】
初代T細胞を、mock形質導入するか、又は抗AFP158/HLA-A
*02:0
1結合部分(それぞれ、配列番号52及び53のV
Hドメイン及びV
Lドメイン)をコー
ドするcaTCR-1-0又はcaTCR-1膜貫通変異体(-TM5~-TM13)を
用いて形質導入した。形質導入効率は、PE標識されたAFP158/HLA-A
*02
:01テトラマーで染色することによって求めた。全てのcaTCR-1 T細胞を、m
ock T細胞と混合することによって、受容体陽性率40%で一致させた。3つの細胞
株SK-HEP-1(AFP-/HLA-A2+)、SK-HEP-1-AFP-MG(
AFPミニ遺伝子で形質導入されたSK-HEP-1)、及び内因性のAFP発現Hep
G2(AFP+/HLA-A2+)を、エフェクターと標的の比率2.5:1で使用した
。Cytox 96 Non-radioactive Cytotoxicity A
ssay(Promega)を使用し、16時間インキュベーションした後に、特異的な
T細胞溶解を測定した。抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分を有する全て
のcaTCR-1-TM変異体で形質導入されたT細胞は、抗原陽性細胞株HepG2及
びSK-HEP-1-AFP-MGの死滅を指向したが、抗原陰性細胞株SK-HEP-
1の死滅は引き起こさなかった(
図8)。AFP陽性腫瘍細胞であるSK-HEP1-A
FP-MG及びHepG2の両方の特異的溶解は、全てのcaTCR-1-TM変異体で
形質導入されたT細胞の間に匹敵するものであり、このことは、TM変異体(-TM5~
-TM13)が、抗原陽性腫瘍細胞に対してT細胞の細胞毒性をシグナル伝達する機能的
能力を保持していることを示している。
実施例8.caTCR-1-TM変異体T細胞を用いた、HepG2腫瘍細胞株のin
vitroでの死滅中に放出されるサイトカイン
【0493】
初代T細胞を、mock形質導入するか、又は抗AFP158/HLA-A
*02:0
1結合部分(それぞれ、配列番号52及び53のV
Hドメイン及びV
Lドメイン)をコー
ドするcaTCR-1-0又はcaTCR-1膜貫通変異体(-TM5~-TM13)を
用いて形質導入した。形質導入効率は、PE標識されたAFP158/HLA-A
*02
:01テトラマーで染色することによって決定した。全てのcaTCR-1 T細胞を、
mock T細胞と混合することによって、受容体陽性率40%で一致させた。HepG
2細胞を、エフェクターと標的の比率2.5:1で使用した。16時間のHepG2 i
n vitro死滅アッセイ(
図8)の後にGM-CSF、IFN-γ及びTNF-αの
培地へのサイトカイン放出を、Bio-plex Pro Human Cytokin
e 8-plex Assay(BioRad)を備えたMagpix multipl
exシステム(Luminex)を用いて測定した。HepG2標的反応からのアッセイ
上清を4倍に希釈した。サイトカイン濃度は、BioRad Bio-plexキットに
より供給される標準曲線を用いて測定した(
図9)。HepG2を死滅させるときのca
TCR-1-TM5を用いたサイトカイン放出の顕著な増加は、caTCR-1-TM5
受容体内の膜貫通変異が、細胞毒性シグナル伝達能力を増加させていることを示す。
実施例9.caTCR-1-TM5で形質導入されたT細胞を用いたCD19陽性NA
LM6腫瘍のin vitroでの死滅
【0494】
初代T細胞を、caTCR-1-0、又は抗CD19結合部分(それぞれ、配列番号5
4及び55のV
Hドメイン及びV
Lドメイン)をコードするcaTCR-1-TM5を用
いて形質導入した。形質導入効率を決定し、T細胞を、mock T細胞と混合すること
によって、受容体陽性率40%で一致させた。NALM6標的細胞をCFSEで5分間標
識した後、エフェクターと標的の比率1:1、1:2又は1:4で、適切なT細胞を4時
間インキュベーションした。FACS分析によりCFSE陽性細胞の数を計数し、T細胞
を含まないウェル中のCFSE陽性細胞の数で除算することによって、死滅率を決定した
(
図10)。CD19陽性NALM6腫瘍のin vitroでの死滅効率は、親のca
TCR-1-0と変異体caTCR-1-TM5で形質導入された細胞の間に相当する効
率を維持しており、このことは、caTCR-1-TM5変異体が、抗CD19モデルに
おいて、その細胞毒性シグナル伝達機能を維持していることを示している。
実施例10.caTCR-1-TM5 T細胞を用いた、NALM6腫瘍細胞株のin
vitroでの死滅中に放出されるサイトカイン
【0495】
初代T細胞を、caTCR-1-0、又は抗CD19結合部分(それぞれ、配列番号5
4及び55のV
Hドメイン及びV
Lドメイン)をコードするcaTCR-1-TM5を用
いて形質導入した。形質導入効率を決定し、T細胞を、mock T細胞と混合すること
によって、受容体陽性率40%で一致させた。NALM6細胞を、エフェクターと標的の
比率2.5:1で使用した。16時間のNALM6 in vitro死滅アッセイ(図
10)の後に、IL-2、GM-CSF、IFN-γ及びTNF-αの培地へのサイトカ
イン放出を、Bio-plex Pro Human Cytokine 8-plex
Assay(BioRad)を備えたMagpix multiplexシステム(L
uminex)を用いて測定した。NALM6標的反応からのアッセイ上清を4倍に希釈
した。サイトカイン濃度は、BioRad Bio-plexキットにより供給される標
準曲線を用いて測定した(
図11)。NALM6を死滅させるときのcaTCR-1-T
M5を用いたサイトカイン放出の増加は、caTCR-1-TM5変異体受容体が、抗C
D19モデルにおいて、細胞毒性シグナル伝達能力を維持していることを示す。
実施例11.CD19陽性標的細胞に応答した細胞内サイトカイン産生
【0496】
サイトカイン発現に対するcaTCR-1シグナル伝達の結果をより直接的に求めるた
めに、抗原陽性腫瘍細胞による刺激に応答する細胞内サイトカイン産生を測定した。初代
T細胞を、caTCR-1-0、又は抗CD19結合部分(それぞれ、配列番号54及び
55のV
Hドメイン及びV
Lドメイン)をコードするcaTCR-1-TM5を用いて形
質導入した。形質導入効率を決定し、T細胞を、mock T細胞と混合することによっ
て、受容体陽性率40%で一致させた。サイトカイン分泌を防ぐために、タンパク質輸送
阻害剤カクテル(eBioscienceカタログ番号00498003)と共に、Mo
ck形質導入されたT細胞、又はcaTCR-1-0又はcaTCR-1-TM5で形質
導入されたT細胞を、NALM6又はRaji標的細胞と共に比率2.5:1で培養した
。4時間の治療後、T細胞を、抗TNF-α、抗IFN-γ、又は抗IL-2抗体と共に
、caTCR-1受容体及び抗CD4抗体に対して染色した。フローサイトメトリーを使
用して、caTCR-1受容体陽性細胞に対しゲーティングすることで、細胞内TNF-
α、IFN-γ及びIL-2について陽性の細胞の割合を計算した(表4)。caTCR
-1-TM5変異体受容体による刺激は、細胞内サイトカイン発現を伴う細胞の増加をも
たらし、caTCR-1-TM5における膜貫通変異が、T細胞の細胞毒性シグナル伝達
能の増加をもたらす能力を更に実証する。
【表4】
実施例12.caTCR-1受容体による刺激後の増殖及び持続性
【0497】
初代T細胞を、caTCR-1-0、又は抗CD19結合部分(それぞれ、配列番号5
4及び55のV
Hドメイン及びV
Lドメイン)をコードするcaTCR-1-TM5を用
いて形質導入した。形質導入効率を決定し、T細胞を、mock T細胞と混合すること
によって、受容体陽性率40%で一致させた。T細胞をCFSEで標識し、Raji又は
NALM6標的細胞で刺激した。5×10
4個のNALM6細胞を、エフェクターと標的
の比率2:1で使用した。FACS分析を用い、CFSE蛍光を測定した(
図12A及び
12B)。CFSE蛍光強度は、各細胞分裂と共に減少するため、これを、抗原刺激に応
答したT細胞の増殖力をアッセイするために使用することができる。刺激後に生存するT
細胞の生存期間(persistence)を観察するために、標的細胞の曝露から3日後に残った
生存T細胞の総数を数えた(表5)。caTCR-1-TM5受容体を介する刺激は、3
日目のCFSEピークの左方向へのシフト及び生存T細胞総数の生存期間に見られるよう
に、両方の増殖能の増加を示した。養子T細胞療法中のT細胞の生存期間及び増殖の両方
が、より良好な臨床転帰に関連するため、これらは重要な特性である。
【表5】
実施例13.二重特異性抗CD19抗CD22 caTCRの構築及び特性決定
【0498】
単一の標的抗原を標的とするキメラ抗原受容体を用いた療法は、標的抗原遺伝子の消失
、代替的スプライシング及びエピトープ喪失に起因して、抗原のエスケープに対して脆弱
な場合がある。二重特異性caTCRは、抗原がエスケープする可能性を減らすことによ
って、有効性の改善された治療を提供するように設計された。
【0499】
抗CD19抗体に由来する1つの抗原結合ドメインと、抗CD22抗体に由来する1つ
の抗原結合ドメインとを有する二重特異性caTCRを構築した(本明細書では、「抗C
D19抗CD22 caTCR」と称されるか、又は「CD19 CD22 CATCR
」と略される)。抗CD19抗体は、国際公開第2017066136(A2)号に既報
である。抗CD22抗体は、2018年3月30日に出願されたUSSN 62/650
,955号に記載の「抗CD22クローン2」として知られている。各抗CD19抗CD
22 caTCRは、2つのポリペプチドを含み、1つはTCR δドメインを含有し、
1つはTCRγドメインを含有する。異なる構造フォーマット及びリンカー(異なる長さ
及び配列)を構築物に使用した。抗CD19抗CD22 caTCR-9-2変異をCH
1(S64E及びS66V変異)及びCL(S69L及びT71S変異)ドメインに導入
して二量体形成を安定化させた。他の抗CD19抗CD22 caTCR構築物は、リン
カー、安定化ドメイン及び/又は膜貫通ドメインを変更することによって(例えば、変異
膜貫通ドメインを使用して)、及び/又は抗原結合ドメインを交換することによって、生
成することができる。
【0500】
以下の表6は、各抗CD19抗CD22 caTCR構築物における各ポリペプチドの
N末端からC末端への構造的特徴を示す。抗CD19抗CD22 caTCR構築物のポ
リペプチドの各対をコードするレンチウイルスベクターを調製した。
【表6】
サイトカイン分泌
【0501】
初代T細胞を、mock形質導入するか、又は抗CD19抗CD22caTCR-7-
2a構築物をコードするレンチウイルスベクターを用いて形質導入した。形質導入された
T細胞を、K562(CD19 CD22二重陰性)、K562-CD22(CD22で
形質導入されたK562)、K562-CD19(CD19で形質導入されたK562)
、Raji(CD19及びCD22の両方を発現するRaji)、又はRaji CD1
9 K/O(CD19ノックアウトを有するRaji)細胞と、エフェクターと標的との
比率2.5:1で混合した。T細胞は、標的リガンドとのTCRエンゲージメントによっ
て活性化されると、IFN-γを分泌する。IFN-γのサイトカイン放出レベルを測定
し、受容体のシグナル伝達電位の指標として使用した(レベルが高いほど、受容体のシグ
ナル伝達電位及び細胞毒性T細胞活性が高い)。Bio-plex Pro Human
Cytokine 8 plexアッセイ(BioRad)を用い、Magpix多重
系(Luminex)を使用して、16時間の共培養後にサイトカイン濃度を測定した。
【0502】
図14に示すように、一連のCD19
+及び/又はCD22
+細胞株にわたって、抗原
特異的IFN-γ放出が観察された。抗CD19抗CD22 caTCR-7-2a構築
物を発現するT細胞は、CD19抗原又はCD22抗原のいずれかを発現するK562と
共にインキュベートしたときに、IFN-γ分泌を特異的に活性化した。caTCR-7
-2a T細胞はまた、CD19遺伝子がCD19
+CD22
+Rajiリンパ腫細胞株
(Raji CD19 K/O)からノックアウトされた抗原エスケープモデルにおいて
IFN-γを放出し、したがって、単一のcaTCR-7が2つの独立した抗原に結合す
る能力を実証した。
in vitroでの死滅
【0503】
様々な抗CD19抗CD22 caTCR-7構築物のin vitroでの細胞死滅
活性を、方法に記載のLDH細胞毒性アッセイによって評価した。簡潔に述べると、ドナ
ー(R177)由来のヒト初代T細胞を、mock形質導入し、又は抗CD19 caT
CR-1をコードするレンチウイルス又は抗CD19抗CD22 caTCR構築物(c
aTCR-7-1b、caTCR-7-2b、caTCR-7-1c又はcaTCR-7
-2c)をコードするレンチウイルスを用いて形質導入した。形質導入されたT細胞を、
K562、K562-CD22(CD22を発現するK562)、K562-CD19(
CD19を発現するK562)、又はK562-CD19/CD22(CD19及びCD
22抗原を発現するK562細胞)細胞と、エフェクターと標的の比率2:1で混合した
。Cytox 96 Non-radioactive Cytotoxicity A
ssay(Promega)を使用し、16時間インキュベーションした後に、特異的な
T細胞溶解を測定した。
【0504】
図15に示すように、様々な二重特異性抗CD19抗CD22 caTCRsを発現す
るT細胞は、CD19、CD22、又はCD19及びCD22の両方を発現するK562
標的細胞を溶解させることができた。しかしながら、単一特異性CD19 caTCR-
1を発現するT細胞は、CD19を発現するK562標的細胞を溶解させることのみが可
能であった。
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
【表7-5】
【表7-6】
【表7-7】
【表7-8】
【表7-9】
【表7-10】
【表7-11】