(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009348
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】パターンエッジの評価方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20230113BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20230113BHJP
【FI】
H01L21/66 J
G06T7/00 610C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112518
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】301014904
【氏名又は名称】東レエンジニアリング先端半導体MIテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸口 務
【テーマコード(参考)】
4M106
5L096
【Fターム(参考)】
4M106AA01
4M106AA09
4M106BA02
4M106CA39
4M106DB05
4M106DH24
4M106DH33
4M106DJ14
4M106DJ18
4M106DJ21
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA18
5L096DA02
5L096FA12
5L096FA32
5L096FA33
5L096FA69
5L096GA51
5L096JA09
(57)【要約】
【課題】画像上のパターンのエッジの一部が検出できない場合でも、パターンエッジの欠陥を正しく評価できる方法を提供する。
【解決手段】本方法は、パターン54の画像60を生成し、パターン54に対応するCADパターン50を画像60上のパターン54に重ね合わせ、CADパターン50のエッジに垂直な複数の法線65に沿った複数の輝度プロファイルを作成し、複数の輝度プロファイルの形状をそれぞれ表す複数のプロファイル指標を決定し、複数のプロファイル指標の代表値であるエッジ評価値を算定し、エッジ評価値を欠陥しきい値と比較する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピース上のパターンのエッジを評価する方法であって、
前記パターンの画像を生成し、
前記パターンに対応するCADパターンを前記画像上の前記パターンに重ね合わせ、
前記CADパターンのエッジに垂直な複数の法線に沿った複数の輝度プロファイルを作成し、
前記複数の輝度プロファイルの形状をそれぞれ表す複数のプロファイル指標を決定し、
前記複数のプロファイル指標の代表値であるエッジ評価値を算定し、
前記エッジ評価値を欠陥しきい値と比較する、方法。
【請求項2】
前記複数のプロファイル指標のそれぞれは、対応する輝度プロファイルのピーク値とボトム値との差を表すコントラスト値である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のプロファイル指標のそれぞれは、対応する輝度プロファイルの傾きである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記エッジ評価値は、前記複数のプロファイル指標の平均値である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記エッジ評価値は、前記複数のプロファイル指標の標準偏差である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記複数のプロファイル指標のそれぞれは、対応する法線上にエッジが存在することを示すエッジ検出指標、または対応する法線上にエッジが存在しないことを示すエッジ欠落指標である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記エッジ評価値は、前記複数のプロファイル指標の数に対する、前記複数のプロファイル指標に含まれる前記エッジ欠落指標の数の割合である、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの製造に使用されるウェーハなどのワークピース上に形成されたパターンのエッジを評価する方法に関し、より具体的には、画像上のパターンのエッジの欠陥を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイ・ツー・データベース(Die to Database)技術を用いた半導体デバイスのパターン検査方法が知られている(例えば特許文献1参照)。このパターン検査方法は、ウェーハまたはガラス基板などのワークピース上のパターンの画像を走査電子顕微鏡により生成し、画像上のパターンとCADパターンとを重ね合わせ、画像上のパターンのエッジとCADパターンのエッジと距離に基づいてワークピース上のパターンエッジの欠陥を検出する。CADパターンは、設計データ(CADデータともいう)に含まれるパターンの設計情報(位置、長さ、大きさなど)に基づいて作成された仮想的なパターンである。
【0003】
パターンエッジの欠陥を検出する前に、画像上のパターンのエッジは次のようにして検出される。コンピュータは、
図12に示すように、CADパターン505を、画像500上のパターン501に重ね合わせる。次に、コンピュータは、CADパターン505のエッジに対して法線方向に延びる複数の探索線507を生成し、これら探索線507に沿った画像500の輝度プロファイルを作成する。
図12では、図面を簡素化するために、複数の探索線507のうちの一部のみが描かれている。
【0004】
図13は、
図12に示す探索線507に沿った輝度プロファイルを示す図である。
図13の縦軸は輝度を表し、横軸は探索線507上の位置を表している。コンピュータは、輝度プロファイル上の輝度が所定の基準値と等しいエッジ点510を検出する。コンピュータは、同様の動作を繰り返し、すべての探索線507に沿った輝度プロファイル上の複数のエッジ点を決定する。これら複数のエッジ点を結ぶ線は、画像500上のパターン501のエッジに決定される。
【0005】
このようにして決定された画像500上のパターン501のエッジは、CADパターン505のエッジと比較され、比較結果に基づいてパターン501のエッジの欠陥が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、画像500上のパターン501のエッジとCADパターン505のエッジとの乖離が大きすぎる場合、パターン501のエッジの欠陥を検出できないことがある。例えば、
図14に示す例では、パターン501のエッジの一部が欠落しており、パターン501のエッジが探索線507上に存在しない。
図15に示す例では、隣接する2つのパターン501の一部がつながってブリッジを形成しており、ブリッジ内の探索線507上にエッジが存在しない。
【0008】
図14および
図15は、パターンエッジの欠陥の例を示しており、このような欠陥を検出することは重要である。しかしながら、これらの例では、パターン501のエッジ自体が検出できないため、CADパターン505のエッジとパターン501のエッジとの比較ができず、結果としてパターンエッジの欠陥を検出することができなかった。
【0009】
そこで、本発明は、画像上のパターンのエッジの一部が検出できない場合でも、パターンエッジの欠陥を正しく評価できる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様では、ワークピース上のパターンのエッジを評価する方法であって、前記パターンの画像を生成し、前記パターンに対応するCADパターンを前記画像上の前記パターンに重ね合わせ、前記CADパターンのエッジに垂直な複数の法線に沿った複数の輝度プロファイルを作成し、前記複数の輝度プロファイルの形状をそれぞれ表す複数のプロファイル指標を決定し、前記複数のプロファイル指標の代表値であるエッジ評価値を算定し、前記エッジ評価値を欠陥しきい値と比較する、方法が提供される。
【0011】
一態様では、前記複数のプロファイル指標のそれぞれは、対応する輝度プロファイルのピーク値とボトム値との差を表すコントラスト値である。
一態様では、前記複数のプロファイル指標のそれぞれは、対応する輝度プロファイルの傾きである。
一態様では、前記エッジ評価値は、前記複数のプロファイル指標の平均値である。
一態様では、前記エッジ評価値は、前記複数のプロファイル指標の標準偏差である。
一態様では、前記複数のプロファイル指標のそれぞれは、対応する法線上にエッジが存在することを示すエッジ検出指標、または対応する法線上にエッジが存在しないことを示すエッジ欠落指標である。
一態様では、前記エッジ評価値は、前記複数のプロファイル指標の数に対する、前記複数のプロファイル指標に含まれる前記エッジ欠落指標の数の割合である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、画像上のパターンのエッジの一部が検出できない場合であっても、エッジ評価値に基づいて、エッジの欠陥を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】画像生成システムの一実施形態を示す模式図である。
【
図3】
図2に示すCADパターンに従って形成されたワークピース上の実パターンの画像の一例を示す模式図である。
【
図4】画像上の実パターンとCADパターンとが重ね合わされた状態を示す図である。
【
図5】評価対象エリア内のCADパターンのエッジ上に複数の法線を配列する工程を説明する図である。
【
図6】
図6(a)は、欠陥がない位置に置かれた法線に沿った輝度プロファイルの一例を示す図であり、
図6(b)は、欠陥がある位置に置かれた法線に沿った輝度プロファイルの一例を示す図である。
【
図7】
図7(a)および
図7(b)のそれぞれは、他の種類の欠陥を有するパターンの例と、対応する輝度プロファイルを示す図である。
【
図8】画像上のパターンのエッジの欠陥を検出する方法の一実施形態を説明するフローチャートである。
【
図9】プロファイル指標としてエッジの輝度プロファイルの傾きが用いられる一実施形態を説明するための図である。
【
図10】
図10(a)は、パターンのエッジに欠陥がない例を示す模式図であり、
図10(b)は、パターンのエッジに欠陥がある例を示す模式図である。
【
図11】
図11(a)乃至
図11(c)は、エッジ検出指標およびエッジ欠落指標を説明するための図である。
【
図12】CADパターンを、画像上のパターンに重ね合わせた状態を示す図である。
【
図13】
図12に示す探索線に沿った輝度プロファイルを示す図である。
【
図14】パターンエッジの欠陥の一例を示す図である。
【
図15】パターンエッジの欠陥の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、画像生成システムの一実施形態を示す模式図である。画像生成システムは、ワークピースWの画像を生成する走査電子顕微鏡1と、走査電子顕微鏡1の動作を制御する動作制御部5を備えている。ワークピースWの例としては、半導体デバイスの製造に使用されるウェーハ、マスク、パネル、基板などが挙げられる。
【0015】
動作制御部5は、少なくとも1台のコンピュータから構成される。動作制御部5は、プログラムが格納された記憶装置5aと、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する処理装置5bを備えている。記憶装置5aは、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの主記憶装置と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などの補助記憶装置を備えている。処理装置5bの例としては、CPU(中央処理装置)、GPU(グラフィックプロセッシングユニット)が挙げられる。ただし、動作制御部5の具体的構成は本実施形態に限定されない。
【0016】
動作制御部5は、走査電子顕微鏡1に通信線で接続されたエッジサーバであってもよいし、インターネットまたはローカルネットワークなどの通信ネットワークによって走査電子顕微鏡1に接続されたクラウドサーバであってもよいし、あるいは走査電子顕微鏡1に接続されたネットワーク内に設置されたフォグコンピューティングデバイス(ゲートウェイ、フォグサーバ、ルーターなど)であってもよい。動作制御部5は、複数のサーバの組み合わせであってもよい。例えば、動作制御部5は、インターネットまたはローカルネットワークなどの通信ネットワークにより互いに接続されたエッジサーバとクラウドサーバとの組み合わせであってもよい。他の例では、動作制御部5は、ネットワークで接続されていない複数のサーバ(コンピュータ)を備えてもよい。
【0017】
走査電子顕微鏡1は、電子ビームを放出する電子銃15、電子銃15から放出された電子ビームを集束する集束レンズ16、電子ビームをX方向に偏向するX偏向器17、電子ビームをY方向に偏向するY偏向器18、電子ビームを試料の一例であるワークピースWにフォーカスさせる対物レンズ20、ワークピースWを支持するステージ31を有する。電子銃15の構成は特に限定されない。例えば、フィールドエミッタ型電子銃、または半導体フォトカソード型電子銃などが電子銃15として使用できる。
【0018】
電子銃15から放出された電子ビームは集束レンズ16で集束された後に、X偏向器17、Y偏向器18で偏向されつつ対物レンズ20により集束されてワークピースWの表面に照射される。ワークピースWに電子ビームの一次電子が照射されると、ワークピースWからは二次電子および反射電子などの電子が放出される。ワークピースWから放出された電子は電子検出器26により検出される。電子検出器26の電子検出信号は、画像取得装置28に入力され画像に変換される。このようにして、走査電子顕微鏡1は、ワークピースWの表面の画像を生成する。画像取得装置28は動作制御部5に接続されている。
【0019】
ワークピースWに形成されている、配線などの電子回路を形成するためのパターンの設計データは、記憶装置5aに記憶されている。設計データは、ワークピースW上に形成されたパターンの頂点の座標、パターンの位置、形状、および大きさ、パターンが属する層の番号などのパターンの設計情報を含む。動作制御部5は、ワークピースWに形成されているパターンの設計データを記憶装置5aから読み出すことが可能である。
【0020】
次に、走査電子顕微鏡1によって生成された画像上のパターンと、設計データ上の対応するCADパターンとの対比に基づいて、画像上のパターンのエッジの欠陥を検出する方法の一実施形態について説明する。CADパターンは、設計データに含まれるパターンの設計情報によって定義される仮想パターンであり、ポリゴン形状を有している。ワークピースW上のパターンは、対応するCADパターンに従って形成される。CADは、コンピュータ支援設計(computer-aided design)の略語である。
図2は、CADパターンの一例を示す模式図である。
図2の符号50は、CADパターンを示している。以下の説明では、ワークピースWに既に形成されているパターンを実パターンということがある。
【0021】
動作制御部5は、走査電子顕微鏡1に指令を発して、ワークピースW上の実パターンの画像を生成させる。
図3は、
図2に示すCADパターン50に従って形成されたワークピースW上の実パターン54の画像60の一例を示す模式図である。
図3に示す例では、
図2に示すCADパターン50に従って形成された実パターン54の一部のみが画像60上に現れている。
【0022】
上述したように、ワークピースW上の実パターン54は、CADパターン50に従って形成されるが、CADパターン50と全く同じ形状を有してはいない。
図3に示す例では、実パターン54のエッジの一部には欠落があり、このようなエッジの欠落は、実パターン54のエッジの欠陥として検出されるべきものである。
【0023】
動作制御部5は、
図3に示す実パターン54の画像60を走査電子顕微鏡1から取得する。次に、動作制御部5は、画像60上の実パターン54と、設計データから作成されたCADパターン50とのマッチング(パターンマッチングとも言う)を行う。
図4は、パターンマッチングの結果を表す模式図であり、画像60上の実パターン54とCADパターン50とが重ね合わされた状態を示している。
【0024】
上記パターンマッチングは、公知の方法に従って実行される。例えば、動作制御部5は、画像60上の実パターン54とCADパターン50とを重ね合わせ、CADパターン50のエッジを起点として設定された範囲で画像60の輝度プロファイルを作成し、輝度プロファイルから画像60上の実パターン54のエッジを決定し、決定されたエッジの位置と、対応するCADパターン50のエッジの位置とのバイアス値が最小になるマッチング位置を決定する。バイアス値は、輝度プロファイルから決定されたエッジと、CADパターン50のエッジとのずれ量(距離)を示す指標値である。
【0025】
図5に示すように、動作制御部5は、予め定められた評価対象エリア63内のCADパターン50のエッジ上に複数の法線65を配列する。これらの法線65は、CADパターン50のエッジに垂直である。法線65は同じ長さを有する線分であり、CADパターン50のエッジ上に等間隔で配列される。評価対象エリア63の大きさおよび形状は予め設定される。
【0026】
動作制御部5は、CADパターン50のエッジ上に配列された複数の法線65に沿った複数の輝度プロファイルを作成する。
図6(a)は、
図5に示す、欠陥がない位置に置かれた法線65に沿った輝度プロファイルの一例を示す図である。輝度プロファイルは、法線65上に分布する輝度の配列である。輝度は、グレースケールの画像では、例えば、0から255までの数値である。この輝度の0から255までの数値範囲は一例であり、他の数値範囲であってもよい。
【0027】
一般に、走査電子顕微鏡1によって生成された画像上のパターンのエッジは、いわゆるエッジ効果に起因して高い輝度を有している。したがって、
図6(a)から分かるように、輝度プロファイルは、エッジ付近にピーク値を持つ。一方、パターンが存在していない領域の輝度は低く、したがって、輝度プロファイルは、エッジの外側にボトム値を持つ。
【0028】
図6(b)は、
図5に示す、欠陥がある位置に置かれた法線65に沿った輝度プロファイルの一例を示す図である。
図6(b)から分かるように、パターンエッジが欠落している位置に置かれた法線65に沿った輝度プロファイルは、全体的に平坦であり、かつ全体的に低い輝度を有する。
図6(b)に示す輝度プロファイルの形状は、
図6(a)に示す輝度プロファイルの形状とは明らかに異なる。
【0029】
動作制御部5は、複数の輝度プロファイルの形状をそれぞれ表す複数のプロファイル指標を決定する。本実施形態における各プロファイル指標は、各輝度プロファイルの形状を数値化したものである。より具体的には、輝度プロファイルの形状を表すプロファイル指標は、輝度プロファイルのピーク値とボトム値との差を表すコントラスト値である。
図6(a)に示す輝度プロファイルのピーク値とボトム値との差は、ある程度大きいのに対して、
図6(b)に示す輝度プロファイルのピーク値とボトム値との差はほぼ0である。したがって、コントラスト値からなるプロファイル指標は、輝度プロファイルの形状を表す指標として用いることができる。
【0030】
動作制御部5は、複数の法線65にそれぞれ沿った複数の輝度プロファイルの形状を表す複数のプロファイル指標の代表値であるエッジ評価値を算定する。本実施形態では、エッジ評価値は、複数のプロファイル指標(本実施形態では複数のコントラスト値)の平均値である。動作制御部5は、複数のプロファイル指標の合計値を、複数のプロファイル指標の数(すなわち、複数の法線65の数)で割り算することで、エッジ評価値を算定することができる。
【0031】
図7(a)および
図7(b)のそれぞれは、他の種類の欠陥を有するパターンの例と、対応する輝度プロファイルを示す図である。
図7(a)および
図7(b)に示す例では、互いに並列に延びる2つの隣接するCADパターン50がある。しかしながら、本来接続されるべきでない、隣接する2つの実パターン54がブリッジで結合されている欠陥が生じている。ブリッジの大きさは
図7(a)および
図7(b)とでは異なる。このようなブリッジの大きさの違いに起因して、複数のプロファイル指標(複数のコントラスト値)の平均値であるエッジ評価値も変わる。
【0032】
図6および
図7から分かるように、エッジ評価値が小さいほど、欠陥の程度は大きい。そこで、動作制御部5は、エッジ評価値を欠陥しきい値と比較するように構成されている。欠陥しきい値は、予め定められた値であり、過去の評価、実験などに基づいて任意に設定することができる。動作制御部5は、エッジ評価値が欠陥しきい値よりも小さい場合は、画像60上のパターン54のエッジに欠陥が存在すると判定する。
図7の例では、エッジの欠陥が存在するパターン54の部位は、評価対象エリア63内にある。動作制御部5は、評価対象エリア63をCADパターン50のエッジに沿って少しずつ移動させながら、同じようにしてエッジ評価値を算定し、エッジ評価値を欠陥しきい値と比較することで、画像60上のパターン54の全体のエッジを評価することができる。
【0033】
エッジ評価値は、複数のプロファイル指標の代表的な値を示すものであれば、複数のプロファイル指標の平均値には限定されない。一実施形態では、エッジ評価値は、複数のプロファイル指標の標準偏差であってもよい。
図7(a)および
図7(b)から分かるように、パターン54のエッジに欠陥(ブリッジ)が存在すると、評価対象エリア63内の複数のプロファイル指標のばらつきが大きくなる。複数のプロファイル指標のばらつきを示す標準偏差が大きいほど、欠陥の程度は大きい。そこで、動作制御部5は、標準偏差からなるエッジ評価値を欠陥しきい値と比較するように構成されてもよい。欠陥しきい値は、予め定められた値であり、過去の評価、実験などに基づいて任意に設定することができる。
【0034】
動作制御部5は、標準偏差からなるエッジ評価値が欠陥しきい値よりも大きい場合は、画像60上のパターン54のエッジに欠陥が存在すると判定する。標準偏差は、以下の式から算定される。
【数1】
nは、評価対象エリア63内のプロファイル指標の総数(すなわち法線65の総数)である。
【0035】
図8は、画像60上のパターン54と、対応するCADパターン50との対比に基づいて、画像60上のパターン54のエッジの欠陥を検出する方法の一実施形態を説明するフローチャートである。
【0036】
ステップ1では、動作制御部5は、走査電子顕微鏡1に指令を発して、ワークピースW上のパターン54の画像60を生成させる。動作制御部5は、パターン54の画像60を走査電子顕微鏡1から取得する。
ステップ2では、動作制御部5は、画像60上のパターン54に対応するCADパターン50を記憶装置5aから読み出し、CADパターン50を画像60上のパターン54に重ね合わせる。より具体的には、動作制御部5は、CADパターン50と画像60上のパターン54とのパターンマッチングを実行する。
【0037】
ステップ3では、動作制御部5は、CADパターン50のエッジに垂直な複数の法線65に沿った複数の輝度プロファイルを作成する(
図6参照)。
ステップ4では、動作制御部5は、複数の輝度プロファイルの形状をそれぞれ表す複数のプロファイル指標を決定する。各プロファイル指標は、例えば、輝度プロファイルのピーク値とボトム値との差を示すコントラスト値である。
ステップ5では、動作制御部5は、複数のプロファイル指標の代表値であるエッジ評価値を算定する。エッジ評価値は、例えば、複数のプロファイル指標の平均値または標準偏差である。
【0038】
ステップ6では、動作制御部5は、エッジ評価値を欠陥しきい値と比較する。
ステップ7では、動作制御部5は、エッジ評価値が欠陥しきい値よりも小さい(または大きい)場合は、画像60上のパターン54のエッジに欠陥が存在すると判定する。
このようにして、動作制御部5は、画像60上のパターン54の欠陥部分のエッジを検出できなくても、エッジ評価値に基づいてパターンエッジの欠陥を正しく検出(評価)することができる。
【0039】
各プロファイル指標は、各輝度プロファイルの形状を表す数値であり、上述の実施形態では、輝度プロファイルのピーク値とボトム値との差であるコントラスト値がプロファイル指標に用いられている。しかしながら、プロファイル指標は、輝度プロファイルの形状に従って変化するものであれば、コントラスト値には限定されない。一実施形態では、プロファイル指標は、以下に説明するように、輝度プロファイルの傾きであってもよい。
【0040】
図9は、プロファイル指標として、画像60上のパターン54のエッジの輝度プロファイルの傾きが用いられる一実施形態を説明するための図である。特に説明しない本実施形態の詳細は、
図1乃至
図8を参照して説明した上記実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0041】
図9に示すように、一実施形態では、パターンエッジの輝度プロファイルの傾きは、輝度プロファイルのピーク点とボトム点とを結ぶ直線の傾きである。より具体的には、輝度プロファイルの傾きは、以下の式から算定される。
輝度プロファイルの傾き=(輝度プロファイルのピーク値-輝度プロファイルのボトム 値)/(ピーク値の位置-ボトム値の位置)
【0042】
ただし、輝度プロファイルの傾きを算定する方法は上記式を用いた方法に限定されず、例えば、輝度プロファイルの接線の傾きを算定してもよい。
【0043】
動作制御部5は、複数の法線65にそれぞれ沿った複数の輝度プロファイルの形状を表す複数のプロファイル指標として複数の傾きを算定し、算定された複数の傾きの平均値であるエッジ評価値を算定する。
【0044】
図10(a)は、パターン54のエッジに欠陥がない例を示す模式図であり、
図10(b)は、パターン54のエッジに欠陥がある例を示す模式図である。
図10(a)に示すように、パターン54のエッジに欠陥がない場合、各法線65に沿った輝度プロファイルの傾きは大きいが、
図10(b)に示すように、エッジの欠陥がある位置に置かれた法線65に沿った輝度プロファイルの傾きは小さい。結果として、エッジに欠陥がある場合は、複数の傾きの平均値からなるエッジ評価値は小さくなる。
【0045】
動作制御部5は、エッジ評価値を欠陥しきい値と比較するように構成されている。欠陥しきい値は、予め定められた値であり、過去の評価、実験などに基づいて任意に設定することができる。動作制御部5は、エッジ評価値が欠陥しきい値よりも小さい場合は、画像60上のパターン54のエッジに欠陥が存在すると判定する。一実施形態では、エッジ評価値は複数の傾きの標準偏差であってもよい。この場合は、動作制御部5は、エッジ評価値が欠陥しきい値よりも大きい場合は、画像60上のパターン54のエッジに欠陥が存在すると判定する。
【0046】
次に、各プロファイル指標として、輝度プロファイルのコントラスト値または傾きに代えて、以下に説明するエッジ検出指標およびエッジ欠落指標が用いられる一実施形態について説明する。特に説明しない本実施形態の詳細は、
図1乃至
図10を参照して説明した上記実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0047】
エッジ検出指標は、法線65上にエッジが存在することを示す指標であり、エッジ欠落指標は、法線65上にエッジが存在しないことを示す指標である。以下、エッジ検出指標およびエッジ欠落指標について、
図11(a)乃至
図11(c)を参照して説明する。
図11(a)に示す例では、評価対象エリア63内のパターン54のエッジには欠陥が存在しない。したがって、評価対象エリア63内の複数の法線65に沿った輝度プロファイルのプロファイル指標のすべては、エッジ検出指標である。一方、
図11(b)および
図11(c)に示す例では、評価対象エリア63内のパターン54のエッジの一部に欠陥が存在する。したがって、評価対象エリア63内の複数の法線65に沿った輝度プロファイルのプロファイル指標の一部は、エッジ欠落指標であり、他はエッジ検出指標である。
【0048】
一実施形態では、各法線65上にパターン54のエッジが存在するか否かは、各法線65に沿った輝度プロファイルのピーク値とボトム値との差(または輝度プロファイルの傾き)と所定のエッジ検出基準値との比較に基づいて決定される。より具体的には、動作制御部5は、ある法線65に沿った輝度プロファイルのピーク値とボトム値との差(または輝度プロファイルの傾き)がエッジ検出基準値よりも大きい場合(例えば
図6(a)参照)は、その法線65上にパターン54のエッジが存在すると判定し、ある法線65に沿った輝度プロファイルのピーク値とボトム値との差(または輝度プロファイルの傾き)がエッジ検出基準値よりも小さい場合(例えば
図6(b)参照)は、その法線65上にパターン54のエッジは存在しないと判定する。
【0049】
図11(a)乃至
図11(c)から分かるように、複数のプロファイル指標のそれぞれは、対応する法線65上にエッジが存在することを示すエッジ検出指標、または対応する法線65上にエッジが存在しないことを示すエッジ欠落指標のいずれか一方である。すなわち、
図11(a)に示す例では、複数のプロファイル指標の全てはエッジ検出指標であるが、
図11(b)および
図11(c)に示す例では、複数のプロファイル指標は、エッジ検出指標およびエッジ欠落指標の両方を含む。言い換えれば、複数のプロファイル指標の1つ1つは、エッジ検出指標またはエッジ欠落指標のいずれか一方である。
【0050】
動作制御部5は、評価対象エリア63内の複数のプロファイル指標の数に対する、エッジ欠落指標の数の割合である、エッジ評価値を算定する。さらに、動作制御部5は、エッジ評価値を欠陥しきい値と比較するように構成されている。欠陥しきい値は、予め定められた値であり、過去の評価、実験などに基づいて任意に設定することができる。動作制御部5は、エッジ評価値が欠陥しきい値よりも大きい場合は、画像60上のパターン54のエッジに欠陥が存在すると判定する。
【0051】
以上説明したように、上述したそれぞれの実施形態によれば、動作制御部5は画像60上のパターン54のエッジの一部が検出されない場合であっても、エッジ評価値に基づいて、エッジの欠陥を評価することができる。
【0052】
動作制御部5は、上述した複数の実施形態におけるエッジ評価値のいずれかを単独で用いてエッジの欠陥を評価してもよいし、あるいはそれぞれの実施形態で使用された複数のエッジ評価値を組み合わせてエッジの欠陥を評価してもよい。
【0053】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0054】
W ワークピース
1 走査電子顕微鏡
5 動作制御部
5a 記憶装置
5b 処理装置
15 電子銃
16 集束レンズ
17 X偏向器
18 Y偏向器
20 対物レンズ
26 電子検出器
31 ステージ
50 CADパターン
54 画像上のパターン
60 画像
63 評価対象エリア
65 法線