(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009349
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】輪止め装置
(51)【国際特許分類】
B60T 3/00 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
B60T3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112520
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】庄司 光孝
(72)【発明者】
【氏名】矢野 政孝
(72)【発明者】
【氏名】船津 俊明
(57)【要約】
【課題】車輪に対して正しく設置することのできる輪止め装置を提供する。
【解決手段】駐車中の高所作業車の移動を規制する可搬式の輪止め70であって、タイヤ車輪5の踏み面5tと駐車路面との間に差し込まれる輪止め部材71と、輪止め部材71の幅方向の側方に設けられて使用者が把持可能なハンドル90とを備え、ハンドル90はタイヤ車輪5の外側面5aに当接可能なガイド部95を有し、ガイド部95をタイヤ車輪5の外側面5aに当接させた状態で輪止め部材71をタイヤ車輪5の踏み面5tと駐車路面との間に差し込むことで、輪止め部材71をタイヤ車輪5に対する適正位置に設置可能に構成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車中の車両の移動を規制する可搬式の輪止め装置であって、
前記車両に設けられた車輪の踏み面と駐車路面との間に差し込まれて前記車輪を固定する輪止め部材と、
前記輪止め部材の幅方向の側方に設けられて使用者が把持可能なハンドルとを備え、
前記ハンドルは、前記車輪の側面に当接可能な案内部を有し、
前記案内部を前記車輪の側面に当接させた状態で前記輪止め部材を前記車輪の踏み面と前記駐車路面との間に差し込むことで、前記輪止め部材を前記車輪に対する適正位置に設置可能に構成されたことを特徴とする輪止め装置。
【請求項2】
前記ハンドルは、前記輪止め部材に枢結されて少なくとも前記輪止め部材の一方側の側方と他方側の側方との間で揺動自在に構成され、
前記ハンドルを前記輪止め部材の一方側の側方もしくは他方側の側方に揺動させることで、前記車輪の両側面のうち前記車両の左右方向外側に配される側面に前記ハンドルを当接可能に構成されたことを特徴とする請求項1に記載の輪止め装置。
【請求項3】
前記ハンドルを前記輪止め部材の一方側の側方位置もしくは他方側の側方位置に固定するロック機構を備えて構成されることを特徴とする請求項2に記載の輪止め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高所作業車などの車両の逸走を防止する輪止め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業車などの車両においては、車両を駐車して作業を行う場合に、駐車ブレーキ(サイドブレーキ)による車輪の制動に加えて、この車輪と駐車路面との間に楔形状の輪止めを設置することで車両の逸走防止を図っている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車輪に対して輪止めが正しく設置されていなければ、輪止めの効果が十分に発揮されず、車両が逸走するリスクが残り、作業の安全性を十分に確保できないという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、車輪に対して正しく設置することのできる輪止め装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る輪止め装置は、駐車中の車両の移動を規制する可搬式の輪止め装置であって、前記車両に設けられた車輪の踏み面と駐車路面との間に差し込まれて前記車輪を固定する輪止め部材と、前記輪止め部材の幅方向の側方に設けられて使用者が把持可能なハンドルとを備え、前記ハンドルは、前記車輪の側面に当接可能な案内部を有し、前記案内部を前記車輪の側面に当接させた状態で前記輪止め部材を前記車輪の踏み面と前記駐車路面との間に差し込むことで、前記輪止め部材を前記車輪に対する適正位置に設置可能に構成されたことを特徴とする。
【0007】
上記構成の輪止め装置において、前記ハンドルは、前記輪止め部材に枢結されて少なくとも前記輪止め部材の一方側の側方と他方側の側方との間で揺動自在に構成され、前記ハンドルを前記輪止め部材の一方側の側方もしくは他方側の側方に揺動させることで、前記車輪の両側面のうち前記車両の左右方向外側に配される側面に前記ハンドルを当接可能に構成されていることが好ましい。
【0008】
また、上記構成の輪止め装置において、前記ハンドルを前記輪止め部材の一方側の側方位置もしくは他方側の側方位置に固定するロック機構を備えて構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る輪止め装置によれば、車輪の側面に案内部を当接させながら輪止め部材を車輪と駐車路面との間に差し込むという簡単な作業で、輪止めを車輪に正しく設置することができるため、輪止め本来の効果を十分に発揮して車両の逸走防止を図ることができ、作業の安全性を向上させることが可能となる。また、輪止め部材の幅方向の側方にハンドルが設けられ、このハンドルを把持して車輪の左右外側から輪止めの設置作業を行うことができるため、車体の下方に潜り込むことなく容易な姿勢で作業を行うことができ、作業
者の手足や衣服が汚れ難くなるとともに、作業性および安全性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る高所作業車の側面図である。
【
図2】本実施形態に係る安全装置の機能ブロック図である。
【
図3】本実施形態の輪止めをタイヤ車輪の前後に設置した状態の斜視図である。
【
図5】上記輪止めのハンドルが第1基準位置にある状態の斜視図である。
【
図6】上記輪止めのハンドルが第2基準位置にある状態の斜視図である。
【
図9】上記輪止めのロック機構(インデックスプランジャ)の断面図である。
【
図10】上記ハンドルの揺動を説明するための背面図である。
【
図11】上記安全装置の輪止め検出装置の配置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本実施形態に係る高所作業車1を
図1に示しており、まず、この図を参照して高所作業車1の全体構成について説明する。
【0012】
高所作業車1は、
図1に示すように、車体2の前部に運転キャビン7を有し、車体2の前後に配設された左右一対のタイヤ車輪5(前輪5f及び後輪5r)により走行可能なトラック車両をベースに構成されている。車体2は、タイヤ車輪5(前輪5f及び後輪5r)が配設されたシャシフレームと、このシャシフレーム上に取り付けられたサブフレームとからなる車体フレームを備えて構成されている。
【0013】
車体2の前後左右には、高所作業時に車体2を持ち上げ支持するジャッキ装置10が設けられている。ジャッキ装置10は、前輪5fの後方に配設された左右一対のフロントジャッキ10fと、後輪5rの後方に配設された左右一対のリアジャッキ10rとを有して構成される。各ジャッキ10f,10rは、その内部に設けられたジャッキシリンダ11を駆動させて下方に伸長させることで車体2を持ち上げ支持し、これにより車両全体を安定させた状態とする。車体2の後端部には、各ジャッキ10f,10rや後述するブーム30等の作動操作を行うための下部操作装置27が設けられている。
【0014】
車体2における運転キャビン7後方の架装領域には、旋回モータ24により駆動されて上下軸回りに水平旋回動自在に構成された旋回台20が設けられている。この旋回台20から上方に延びた支柱21には、ブーム30の基端部がフートピン22を介して上下方向に揺動自在(起伏自在)に取り付けられている。また、車体2の架装領域の左右には、作業工具や作業機材などを収納するための工具箱26が設けられている。
【0015】
ブーム30は、旋回台20側から順に、基端ブーム30a、中間ブーム30b及び先端ブーム30cが入れ子式に組み合わされた構成を有しており、その内部に設けられた伸縮シリンダ31の伸縮駆動により、ブーム30を軸方向(長手方向)に伸縮動させることができる。また、基端ブーム30aと支柱21との間には起伏シリンダ23が跨設されており、この起伏シリンダ23を伸縮駆動させることにより、ブーム30全体を上下面(垂直面)内で起伏動させることができる。
【0016】
先端ブーム30cの先端部には、垂直ポスト(図示せず)が上下方向に揺動自在に枢支されている。この垂直ポストは、先端ブーム30cの先端部との間に跨設された上部レベ
リングシリンダ(図示せず)と、基端ブーム30aと支柱21との間に跨設された下部レベリングシリンダ25とにより、ブーム30の起伏の如何に拘らず常時垂直姿勢に保持されるように揺動制御(レベリング制御)される。この垂直ポストには、作業者搭乗用の作業台40が作業台ブラケット(図示せず)を介して取り付けられている。この作業台ブラケットの内部には首振りモータ34(
図2を参照)が設けられており、この首振りモータ34を駆動させることにより、作業台40全体を垂直ポスト回りに首振り動(水平旋回動)させることができる。ここで、垂直ポストは、上述のように常時垂直姿勢が保たれるため、結果として作業台40の床面はブーム30の起伏角度によらず常時水平に保持される。
【0017】
作業台40には、これに搭乗した作業者が操作する操作レバーや操作スイッチ、操作ダイヤル等の各操作手段を備えた上部操作装置45が設けられている。そのため、作業台40に搭乗した作業者は、上部操作装置45を操作することにより、旋回台20の旋回作動(旋回モータ24の回転作動)、ブーム30の起伏作動(起伏シリンダ23の伸縮作動)、ブーム30の伸縮作動(伸縮シリンダ31の伸縮作動)、作業台40の首振り作動(首振りモータ34の回転作動)などの各作動操作を行うことができる。
【0018】
車体2に設けられたジャッキ装置10(ジャッキ10f,10r)及び高所作業装置(旋回台20、ブーム30、作業台40等)の作動機構は、
図2に示すように、上部操作装置45や下部操作装置27からの操作信号を受けて、ジャッキシリンダ11、旋回モータ24、起伏シリンダ23、伸縮シリンダ31及び首振りモータ34等(以下、まとめて「油圧アクチュエータ」とも称する)を制御するコントローラ60と、この油圧アクチュエータを作動させるために作動油を供給する油圧ユニット50と、ジャッキ装置10及び高所作業装置等を作動させる動力源となる架装部バッテリ59とを備えて構成される。
【0019】
上部操作装置45もしくは下部操作装置27の操作により出力された操作信号は、コントローラ60に入力される。コントローラ60の作動制御部61は、その操作信号に応じた指令信号を油圧ユニット50(制御バルブ53)に出力する。
【0020】
油圧ユニット50は、作動油を吐出する油圧ポンプ51と、油圧ポンプ51を駆動するポンプ駆動モータ52と、油圧ポンプ51から各油圧アクチュエータに供給する作動油の供給方向及び供給量を制御する制御バルブ53とを有して構成される。ポンプ駆動モータ52は、架装部バッテリ59からインバータ54を介して供給される電力により回転駆動される。制御バルブ53は、ジャッキシリンダ11に対応する電磁比例制御バルブV1、旋回モータ24に対応する電磁比例制御バルブV2、起伏シリンダ23に対応する電磁比例制御バルブV3、伸縮シリンダ31に対応する電磁比例制御バルブV4、首振りモータ34に対応する電磁比例制御バルブV5を有している。この制御バルブ53は、コントローラ60の作動制御部61からの指令信号に基づき、各電磁比例制御バルブV1~V5のスプールを電磁駆動して、油圧ポンプ51から各油圧アクチュエータに供給される作動油の供給方向及び供給量を制御し、各油圧アクチュエータの作動方向及び作動速度を制御する(ジャッキ装置10及び高所作業装置の作動方向及び作動速度を制御する)。
【0021】
このような構成の高所作業車1では、目的の作業現場に駐車して所要の作業を行う場合、その作業の開始前(各ジャッキ10f,10rの作動操作を行う前)に、駐車ブレーキ(パーキングブレーキ)を作動させて左右の後輪5rを制動させてから、その駐車路面とタイヤ車輪5の踏み面(トレッド面)との間に楔形状の輪止め70(
図3等を参照)を設置して、車両の逸走防止を図るようになっている。また、本実施形態では、タイヤ車輪5に輪止め70が正しく設置されていない状態で、ジャッキ10f,10rの作動操作が行われることを防止するための安全装置が備えられている。
【0022】
次に、本実施形態の輪止め70の構造について
図3~
図10を参照して説明する。以下では、説明の便宜上、輪止め70の長さ方向(差し込み方向)を「前後方向」、輪止め70の幅方向を「左右方向」、輪止め70の高さ方向を「上下方向」と定めるが、輪止め70の配置方向を特定するものではない。
【0023】
輪止め70は、タイヤ車輪5の踏み面5tと駐車路面G(
図4を参照)との間に差し込まれる輪止め部材71と、この輪止め部材71に設けられた可動式のハンドル90とを主体に構成されている。
【0024】
輪止め部材71は、例えば合成樹脂材料(プラスチック材料)を用いて楔形状に形成されている。この輪止め部材71は、駐車路面Gに接地される底部をなす接地部72と、タイヤ車輪5に当接する車輪当接部73と、最上部を形成する頂部74と、接地部71と頂部74とを繋ぐ背面部75と、一対の側面部76とを有している。以下では、
図4に示すように、輪止め70(輪止め部材71)の前後方向の向きとして、タイヤ車輪5の踏み面5tと駐車路面Gとの間に差し込まれる側(図中の左側)を「先端側」と呼称し、その反対側(図中の右側)を「基端側」と呼称する。
【0025】
接地部72には、前後方向に沿って山部と谷部が連続的に形成されることで地面に対する滑り止めをなす滑り止め部72aが形成されている。車輪当接部73は、先端側から基端側に向けて高くなるとともに斜め上方に向けて凹となる湾曲面として形成されており、タイヤ車輪5の踏み面5tに当接可能に構成されている。なお、この車輪当接部73は、一部もしくは全てが傾斜面により形成されていてもよい。背面部75の下寄りの位置には、輪止め70を持ち運ぶ際などに作業者が把持する断面T字形の持ち手77が突出形成されている。また、この背面部75の上寄りの位置には、ハンドル90を支持するための立板状のブラケット部80が突出形成されている。
【0026】
ブラケット部80には、
図8に示すように、中空円筒状に形成されたボス部81と、このボス部81の左右斜め下方に形成された一対のストッパ部(第1ストッパ部82、第2ストッパ部83)と、ボス部81の左右側方に形成された一対の位置決め孔(第1位置決め孔84、第2位置決め孔85)とが設けられている。
【0027】
ボス部81は、前後方向に延びる円筒状に形成され、その中心には挿通孔81aが貫通形成されている。この挿通孔81aには、ハンドル90の揺動軸となるボルト86のボルト軸部86aが挿通される。このボルト軸部86aの先端側には、このボルト軸部86aを挿通孔81aから抜け止めするためのナット(緩み止めナット)87が螺着されている。ストッパ部82,83は、前後方向に延びる角柱状に形成されており、その上面側にはハンドル90を当接させるための座面が形成されている。位置決め孔84,85は、ブラケット部80の表裏に貫通された貫通孔であり、後述のロックピン93bが係合可能(挿入可能)に構成されている。
【0028】
ハンドル90は、ブラケット部80にボルト軸部86aを介して枢結されるL字状のハンドルアーム91と、このハンドルアーム91に固定されたグリップ98とを備えて構成される。
【0029】
ハンドルアーム91は、合成樹脂材料を用いて一体的に形成されている。このハンドルアーム91は、左右方向に延びるアーム基体部92と、このアーム基体部92の端部からほぼ垂直に屈曲して前後方向に延びるガイド部95とを有し、全体としてL字状に形成されている。アーム基体部92には、前後方向に貫通する連結孔92a(
図9を参照)が形成されており、この連結孔92aにボルト軸部86aが挿通されている。このアーム基体部92の連結孔92aに挿通されたボルト軸部86aを揺動軸として、ハンドル90全体
がブラケット部80に揺動自在に枢結される。また、アーム基体部92の略中央には、前後方向に貫通するネジ孔92b(
図9を参照)が形成されており、このネジ孔92bにハンドル90の位置を固定するためのインデックスプランジャ93が螺着されている。
【0030】
インデックスプランジャ93は、公知の機械要素であり、アーム基体部92に螺着されるボディ93aと、このボディ93aに摺動自在に設けられて各位置決め孔84,85に係合可能なロックピン93bと、このロックピン93bの基端部に設けられてロックピン93bを操作するためのノブ93cとを備えて構成されている。ロックピン93bは、ボディ93a内に内蔵された不図示のバネによって、このボディ93aから突出する方向(位置決め孔84,85に係合する方向)に常時付勢されている。このロックピン93bは、ノブ93cをバネの付勢力に抗して引き操作することで当該ロックピン93bの先端部をボディ93a内に引き込む退避位置と、ノブ93cを離して戻し操作することで当該ロックピン93bの先端部をバネの付勢力によってボディ93a内から突出させるロック位置との間で進退自在に構成されている。それにより、ロックピン93bは、ブラケット80に設けられたストッパ部82,83および位置決め孔84,85と協働して、ハンドル90を位置決めするとともに、ハンドル90の揺動可能な範囲を規制する。
【0031】
ガイド部95は、輪止め部材71の差し込み方向と平行な方向(前後方向)に延びる平板状に形成されている。このガイド部95の内側面95aは、タイヤ車輪5の外側面(左右の側面のうち外側にくる方の側面)5aに当接可能に形成されており、タイヤ車輪5に輪止め70を設置するときの幅方向の位置決め部として機能する(詳細後述)。また、このガイド部95の先端側には、後述の輪止め検出装置100(
図2、
図11を参照)により検出される被検出体96が取り付けられている。被検出体96は、例えば、合成樹脂材料にアルミニウムなどの金属を蒸着させて反射面を形成してなる反射部材である。
【0032】
グリップ98は、ハンドル90の揺動時や、輪止め70の運搬時、設置時および撤去時などに作業者が把持する部分である。グリップ98の一端部はアーム基体部92に固定され、グリップ98の他端部はガイド部95に固定されている。このグリップ98とハンドルアーム91との間には、グリップ98を把持するときに手指を挿通可能な空隙99(
図7を参照)が形成されている。
【0033】
かかる構成のハンドル90は、ブラケット部80に設けられたボルト軸部86aを揺動軸として、アーム基体部92が第1ストッパ部82の上面に当接してガイド部95が輪止め部材71の幅方向の一方側の側方に配置される第1基準位置(
図5を参照)と、アーム基体部92が第2ストッパ部83の上面に当接してガイド部95が輪止め部材71の幅方向の他方側の側方に配置される第2基準位置(
図6を参照)との間で揺動自在に構成されている。ハンドル90が第1基準位置に揺動すると、インデックスプランジャ93のロックピン93bと第1位置決め孔84とが位置整合し、ノブ93cを操作してロックピン93bを第1位置決め孔84に係合させることで、ハンドル90が第1基準位置に固定される。ハンドル90が第2基準位置に揺動すると、インデックスプランジャ93のロックピン93bと第2位置決め孔85とが位置整合し、ノブ93cを操作してロックピン93bを第2位置決め孔85に係合させることで、ハンドル90が第2基準位置に固定される。このようにハンドル90を第1基準位置または第2基準位置に揺動させてインデックスプランジャ93により固定することで、ハンドル90を第1基準位置と第2基準位置とに選択的に配置することができる。
【0034】
ここで、本実施形態では、ハンドル90が第1基準位置または第2基準位置にある場合、ガイド部95の内側面95aが輪止め部材71の側面部76と平行な状態(左右方向に相対向する状態)に保持され、輪止め部材71の幅方向の中心位置からガイド部95の内側面95aまでの平面視の距離は、タイヤ車輪5の幅(タイヤ幅)の1/2とほぼ等しく
なるように構成されている(
図7を参照)。それにより、ハンドル90を第1基準位置または第2基準位置に揺動させた状態で、ガイド部95の内側面95aをタイヤ車輪5の外側面5aに当接させると(ガイド部95の内側面95aの位置とタイヤ車輪5の外側面5aの位置とが合致すると)、輪止め部材71の幅方向の中心がタイヤ車輪5の幅方向の中心と合致する適正な位置関係となる(輪止め部材71がタイヤ車輪5の幅方向の中心に位置決めされることになる)。
【0035】
次に、本実施形態の輪止め70を設置する手順について説明する。まず、輪止め70のハンドル90を揺動させて、このハンドル90を対象のタイヤ車輪5の配列位置(外側面5aの方位)に応じた揺動位置(第1基準位置または第2基準位置)に固定する。具体的には、ハンドル90のガイド部95がタイヤ車輪5の外側面5a(左側のタイヤ車輪5であれば左側面、右側のタイヤ車輪5であれば右側面)側にくるように、ハンドル90を第1基準位置または第2基準位置に選択的に揺動させる。こうしてハンドル90を第1基準位置または第2基準位置に揺動させた後、インデックスプランジャ93のノブ93cを操作して、ロックピン93bを対応する方の位置決め孔84,85に係合させることで、ハンドル90がその揺動位置に固定される。このように対象のタイヤ車輪5の外側面5aの方位に合わせてハンドル90の揺動位置(第1基準位置、第2基準位置)を選択的に切り替えることで、輪止め70の設置作業を車体2の下方に潜り込むことなくタイヤ車輪5の外側(車体2の左右側方の位置)から容易な姿勢で行うことができるようになる。
【0036】
続いて、輪止め70を対象のタイヤ車輪5の近傍(駐車路面G)に載置して、輪止め部材71の先端部をタイヤ車輪5の踏み面5tに向けて指向させる。次いで、輪止め70のグリップ98を把持して、ガイド部95の内側面95aをタイヤ車輪5の外側面5aに当接させる。そして、そのままガイド部95をタイヤ車輪5の外側面5aに当接(摺接)させながら、輪止め部材71をタイヤ車輪5の踏み面5tと駐車路面Gとの間に差し込む。それにより、輪止め70全体がタイヤ車輪5の外側面5a(ガイド部95とタイヤ車輪5との当接面)に沿って案内されて、輪止め部材71の幅方向の中心位置とタイヤ車輪5の幅方向の中心位置とが一致した状態で、輪止め部材71が左右に傾くことなくタイヤ車輪5の外側面5aに沿って平行に移動し、車輪当接部73がタイヤ車輪5の踏み面5tに当接することになる。このようにハンドル90のガイド部95がタイヤ車輪5の外側面5aに当接した状態で、輪止め部材71の車輪当接部73がタイヤ車輪5の踏み面5tに当接することで、輪止め70がタイヤ車輪5に対する適正位置(タイヤ車輪5の幅方向の中心)に設置される。
【0037】
次に、本実施形態の高所作業車1に設けられた安全装置について説明する。本実施形態の安全装置は、
図2等に示すように、タイヤ車輪5に設置された輪止め70を検出する輪止め検出装置100と、車体2の傾斜を検出する車体傾斜検出器110と、車体2に設けられたコントローラ60とを備えて構成されている。
【0038】
輪止め検出装置100は、
図11に示すように、車体2の下部において左右の前輪5fの前方に取り付けられた一対の前輪側前設置輪止め検出器101(101L,101R)と、車体2の下部において左右の後輪5rの前方に取り付けられた一対の後輪側前設置輪止め検出器102(102L,102R)と、車体2の下部において左右の後輪5rの後方に取り付けられた一対の後輪側後設置輪止め検出器103(103L,103R)とを備えている。前輪側前設置輪止め検出器101は、前輪5fの前側に設置された輪止め70の被検出体96を検出して、この検出信号をコントローラ60に出力する。後輪側前設置輪止め検出器102は、後輪5rの前側に設置された輪止め70の被検出体96を検出して、この検出信号をコントローラ60に出力する。後輪側後設置輪止め検出器103は、後輪5rの後側に設置された輪止め70の被検出体96を検出して、この検出信号をコントローラ60に出力する。
【0039】
各輪止め検出器101,102,103は、対象物に向けてレーザ光を照射する発光部(発光素子)と、対象物から反射した光を受光する受光部(受光素子)とを備えた反射型のレーザセンサである。各輪止め検出器101,102,103は、輪止め70のハンドル90に設けられた被検出体(対象物)96からの反射光を検出することにより、輪止め70がタイヤ車輪5(前輪5fまたは後輪5r)に設置されているか否かを検出する。本実施形態では、輪止め検出器101,102,103によってハンドル90に設けられた被検出体96を検出することで、タイヤ車輪5の側面位置にハンドル90が配置されたこと、すなわち、輪止め70がタイヤ車輪5に対する適正位置に設置されたこと(輪止め70が正しく設置されたこと)を検出する。
【0040】
車体傾斜検出器110は、水平面に対する車体2の傾斜角度(車体2の前後方向の傾斜角度)を検出する。車体傾斜検出器110は、車体2の傾斜角度(車体2の前後方向の傾斜角度)を検出して、その検出した傾斜角度に応じた電圧信号(検出信号)をコントローラ60に出力する。この車体2の傾斜角度は、例えば、車体2が前上がり(頭上げ)になっている状態では正の角度(プラスの角度)となり、車体2が前下がり(頭下げ)になっている状態では負の角度(マイナスの角度)となる。
【0041】
コントローラ60は、作動制御部61と、車体傾斜判定部62と、輪止め判定部63とを有している。
【0042】
作動制御部61は、前述したように、上部操作装置45または下部操作装置27からの操作信号に基づいて、制御バルブ53を電磁駆動して各油圧アクチュエータを作動させることで、ブーム30やジャッキ10f,10rなどの作動を制御する。
【0043】
車体傾斜判定部62は、車体傾斜検出器110により検出された車体2の傾斜角度と、予め定められた所定角度範囲とを比較して、車体2の傾斜角度が所定角度範囲内である場合には、車体2が水平姿勢である(駐車路面Gが平坦地である)ことを判定し、車体2の傾斜角度が所定角度範囲を超過している場合には、車体2が傾斜姿勢である(駐車路面Gが傾斜地である)ことを判定する。「所定角度範囲」は、車体2が水平姿勢であるとみなすことのできる角度範囲(例えば±3度)に設定されている。
【0044】
さらに、車体傾斜判定部62は、車体2の傾斜角度が所定角度範囲を超過していると判定した場合、すなわち、車体2が傾斜姿勢である(駐車路面Gが傾斜地である)ことを判定した場合には、車体2の傾斜角度が正の角度(プラスの角度)であるか負の角度(マイナスの角度)であるかを判定する。車体傾斜判定部62は、車体2の傾斜角度が正の角度である場合には、車体2が前上がりの傾斜姿勢(前上がり駐車)であると判定し、車体2の傾斜角度が負の角度である場合には、車体2が前下がりの傾斜姿勢(前下がり駐車)であると判定する。
【0045】
(駐車路面が平坦地である場合)
輪止め判定部63は、車体傾斜判定部62により車体2が水平姿勢である(駐車路面Gが平坦地である)と判定された場合、後輪側前設置輪止め検出器102および後輪側後設置輪止め検出器103からの検出情報に基づき、後輪5rの前後に輪止め70が正しく設置されているか否かを判定する。この輪止め判定部63は、後輪5rの前後に輪止め70が正しく設置されていると判定した場合にはジャッキ10f,10rの伸縮作動を許可し、後輪5rの前後に輪止め70が正しく設置されていないと判定した場合にはジャッキ10f,10rの伸縮作動を規制する。
【0046】
(駐車路面が前下がりの傾斜地である場合)
輪止め判定部63は、車体傾斜判定部62により車体2が前下がりの傾斜姿勢である(駐車路面Gが前下がりの傾斜地である)と判定された場合、前輪側前設置輪止め検出器101および後輪側前設置輪止め検出器102からの検出情報に基づき、前輪5fの前側と後輪5rの前側とに輪止め70が正しく設置されているか否かを判定する(前輪5fの坂下側と後輪5rの坂下側とに輪止め70が正しく設置されているか否かを判定する)。この輪止め判定部63は、前輪5fの前側と後輪5rの前側とに輪止め70が正しく設置されていると判定した場合にはジャッキ10f,10rの伸縮作動を許可し、前輪5fの前側と後輪5rの前側とに輪止め70が正しく設置されていないと判定した場合にはジャッキ10f,10rの伸縮作動を規制する。
【0047】
(駐車路面が前上がりの傾斜地である場合)
輪止め判定部63は、車体傾斜判定部62により車体2が前上がりの傾斜姿勢である(駐車路面Gが前上がりの傾斜地である)と判定された場合には、車体2が不安定な状態でのジャッキ10f,10rの伸縮作動となるおそれがあるため、各輪止め検出器101,102,103からの検出情報の如何を問わず(輪止め70が正しく設置されているかどうかを問わず)、ジャッキ10f,10rの伸縮作動を規制する。
【0048】
なお、このような輪止め判定部63によるジャッキ10f,10rの作動規制は、ジャッキ操作が行われても作動制御部61がその操作信号を受け付けないようにする、あるいは、作動制御部61がジャッキ操作に基づく操作信号を受け付けたとしてもジャッキシリンダ11に対応する電磁比例制御バルブV1を電磁駆動しないようにする、など作動制御部61に対して動作制限が課されるようにすることにより行われる。
【0049】
以上、本実施形態によれば、タイヤ車輪5の外側面5aにガイド部95を当接させながら輪止め部材7をタイヤ車輪5と駐車路面Gとの間に差し込むという簡単な作業で、輪止め70をタイヤ車輪5に正しく設置することができるため、輪止め本来の効果を十分に発揮して車両の逸走防止を図ることができ、作業の安全性を向上させることが可能となる。また、輪止め部材71の幅方向の側方にハンドル90が設けられ、このハンドル90を把持してタイヤ車輪5の左右外側から輪止め70の設置作業を行うことができるため、車体2の下方に潜り込むことなく容易な姿勢で作業を行うことができ、作業者の手足や衣服が汚れ難くなるとともに、作業性および安全性を向上させることが可能となる。
【0050】
また、本実施形態によれば、ハンドル90を可動式に構成して、タイヤ車輪5の配置(配列位置)に応じてハンドル90の揺動位置(第1基準位置、第2基準位置)を選択的に切り替えることで、全てのタイヤ車輪5に対して1種類の輪止め70のみで対応することができるため(左側のタイヤ車輪5と右側のタイヤ車輪5とで異なる種類の輪止めを用意する必要がないため)、タイヤ車輪5の配置に応じて輪止め70を使い分ける必要もなく、輪止め70の設置や管理、保管が容易になる。
【0051】
また、本実施形態によれば、ハンドル90の揺動位置を固定するロック機構(インデックスプランジャ93)を備えることで、このハンドル90を把持して輪止め70の設置作業を行っている最中に、誤ってハンドル90の位置がずれてしまうことが防止され、輪止め部材71がタイヤ車輪5に対して左右に傾いたり適正な位置からずれたりすることもなく、輪止め70の設置作業の信頼性を一層向上させることが可能となる。
【0052】
また、本実施形態によれば、輪止め70のハンドル90部分に検出体96を設けて、輪止め検出装置100により該検出体96を検出することで、輪止め70がタイヤ車輪5に対して適正な位置に設置されたことを検出できるため、作業者が誤って輪止め70の設置を忘れたり、輪止め70の設置位置がばらついたりするといった、ヒューマンエラーを防止することが可能になるとともに、タイヤ車輪5に輪止め70が設置されていない状態で
作業が開始されること(例えばジャッキ10f,10rの伸縮作動が行われること)が未然に防止され、作業の安全性を一層向上させることが可能となる。
【0053】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば適宜改良可能である。
【0054】
上記実施形態では、被検出体96を反射部材により構成して、この反射部材をレーザセンサ(輪止め検出器101~103)により検出するように構成したが、この構成に限定されるものではなく、例えば、被検出体96をICタグにより構成して、このICタグをICタグリーダ(輪止め検出器101~103)により検出するように構成してもよい。
【0055】
上記実施形態では、ガイド部95の先端側に被検出体96を設けているが、この構成に限定されるものではなく、例えば検出方式や作業環境などに応じて被検出体96の設置位置は適宜変更可能である。また、輪止め検出器101~103の検出部は、輪止め70がタイヤ車輪5に正しく設置された状態で、ハンドル90の被検出体96に向けて指向していることが好ましい。
【0056】
上記実施形態では、本発明に係る車両(作業車両)として、トラックマウント式の高所作業車を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、クレーン車などの他の作業車両や、ダンプトラックなどの運搬車両等に適用してもよい。また、上記実施形態では、電気駆動型(バッテリ駆動型)の高所作業車を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、エンジンの動力をPTO機構(パワーテイクオフ機構)によって取り出して油圧ポンプを駆動するPTO駆動型の高所作業車や、その両者を具備して動力源を選択的に切り替えるハイブリッド型の高所作業車であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 高所作業車
2 車体
5 タイヤ車輪
5a 外側面
5t 踏み面
10 ジャッキ装置
27 下部操作装置
45 上部操作装置
60 コントローラ
61 作動制御部
62 車体傾斜判定部
63 輪止め判定部
70 輪止め
71 輪止め部材
72 接地部
73 車輪当接部
80 ブラケット部
82 第1ストッパ部
83 第2ストッパ部
84 第1位置決め孔
85 第2位置決め孔
90 ハンドル
95 ガイド部(案内部)
96 検出体
98 グリップ
93 インデックスプランジャ(ロック機構)
100 輪止め検出装置
101 前輪側前設置輪止め検出器
102 後輪側前設置輪止め検出器
103 後輪側後設置輪止め検出器
110 車体傾斜検出器
G 駐車路面