(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093519
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】(4S,4AS,5AR,12AS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12A-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4A,5,5A,6,11,12A-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶塩及びそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/65 20060101AFI20230627BHJP
C07C 237/26 20060101ALI20230627BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20230627BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230627BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230627BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
A61K31/65
C07C237/26
A61P17/10
A61P17/00
A61P31/04
A61P29/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060582
(22)【出願日】2023-04-04
(62)【分割の表示】P 2021017922の分割
【原出願日】2012-05-14
(31)【優先権主張番号】61/485,179
(32)【優先日】2011-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517334296
【氏名又は名称】パラテック ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】518039497
【氏名又は名称】アラーガン ファーマシューティカルズ インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コールター,キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンストン,ショーン,エム.
(72)【発明者】
【氏名】セイェディ,ファルザネー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】置換テトラサイクリン化合物の安定性を改善した結晶塩、およびその使用を提供する。
【解決手段】改善された安定性を有する(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ塩酸塩、結晶性モノメシル酸塩及び結晶性モノ硫酸塩を提供する。前記結晶塩を含む医薬組成物、並びに前記結晶塩を投与することを含む炎症性皮膚障害及び細菌性感染症の治療方法も提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶塩であって、モノ塩酸塩、モノメシル酸塩及びモノ硫酸塩からなる群から選択される前記結晶塩を、対象に、経口投与することを含む、座瘡を治療する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年5月12日出願の米国仮出願第61/485,179号に基づく優先権の利益を請求する。この内容をその全体として参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本開示は、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ塩酸塩、モノメシル酸塩及びモノ硫酸塩並びにそれを使用する方法に関する。より具体的には、本開示は、当業界で公知のテトラサイクリン化合物を凌ぐ改善された安定性を有する(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ塩酸塩、モノメシル酸塩及びモノ硫酸塩に関する。さらに、本開示は、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ塩酸塩、モノメシル酸塩又はモノ硫酸塩を含む医薬組成物及び(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ塩酸塩、モノメシル酸塩又はモノ硫酸塩を用いて座瘡、酒さ又はグラム陽性菌感染症を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
テトラサイクリンは公知の「広範囲の」抗生物質であり、治療目的で広く使用されるようになってきている。テトラサイクリンは、リケッチア;いくつかのグラム陽性及びグラム陰性菌;並びに鼠径リンパ肉芽腫症、封入体性結膜炎及びオウム病に関与する病原体に対して、薬理学的に非常に有効であることが分かっている。テトラサイクリン抗生物質が最初に使用された日は、はるか1948年までさかのぼる。薬学的に活性なテトラサイクリン及びテトラサイクリン類似体組成物の例は、米国特許第2,980,584号、同第2,990,331号、同第3,062,717号、同第3,165,531号、同第3,454,697号、同第3,557,280号、同第3,674,859号、同第3,957,980号、同第4,018,889号、同第4,024,272号及び同第4,126,680号に見ることができる。テトラサイクリンは、皮膚炎、乾癬、壊疽性膿皮症、座瘡及び酒さを含む炎症性皮膚障害を治療するためにも使用することができる。
【0004】
座瘡とも称される尋常性座瘡は、炎症性皮膚障害であり細菌性感染症でもある。皮脂腺に影響を及ぼすホルモンに由来する障害であり、これは、毛穴の詰まり及び病変の発現、又は吹き出物をもたらす。座瘡は、米国において最も一般的な皮膚疾患であり、実質的に1700万の人に影響を及ぼしている。重篤な座瘡は、醜い外観及び恒久的な瘢痕をもたらす恐れがある。
【0005】
座瘡は、毛嚢脂腺単位(PSU)の障害とされている。PSUは、実質的に全身上に見られ、通常、毛穴とも称される毛嚢の開口部を通して皮膚表面上に出される油性物質をつくる皮脂腺からなる。毛穴が詰まると、油と細胞の混合物は、皮膚上に通常生存する細菌が、詰まった毛嚢の中で成長することを可能にし、このような細菌は化学物質及び酵素を産生し、炎症を引き起こす白血球を引き付ける。詰まった毛嚢は壊れて、皮脂、流れ出た皮膚細胞及び細菌は近傍の組織中に広がり、病変又は吹き出物をもたらす。
【0006】
座瘡は一般に、細菌の成長を低下させるためのテトラサイクリンを含む抗生物質の全身投与により治療される。効能は、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)(P.アクネス(P.acnes))への作用並びにこれらの抗生物質の固有の抗炎症特性によると考えられる。プロピオニバクテリウム・アクネスは、座瘡と関連する比較的成長が遅く一般に酸素耐性の嫌気性グラム陽性菌(桿菌)である。テトラサイクリンはP.アクネス及び他の細菌を死滅させるのに有効であることが公知であり、その抗菌性及び抗炎症特性のため、座瘡を治療するのに使用されている。
【0007】
酒さは、顔面発赤を特徴とする皮膚障害であり、北西ヨーロッパ人の子孫の個体に主に影響を及ぼす。酒さの初期症状は、顎、鼻、皮膚又は額上の赤み;顔上の目に見られる小さな血管;顔上の隆起物又は吹き出物;並びに目のうるみやチカチカした痛みを含む。酒さの原因は不明なところが多いが、その抗炎症特性と抗菌性の両方のため、テトラサイクリンなどの抗生物質の全身投与が、酒さの治療のために一般に処方されている。
【0008】
重度の病気や疾患と軽度の病気や疾患の両方のためのテトラサイクリンの広範な使用によって、これらの抗生物質への耐性がもたらされて以降、細菌性感染症、炎症、新生物及び他の状態を治療するために置換テトラサイクリン化合物が開発された。「テトラサイクリン化合物」という用語は、テトラサイクリンと類似の環状構造を有する多くの化合物を含む。これらのテトラサイクリン化合物の例には:クロルテトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、メタサイクリン、サンサイクリン、ケロカルジン、ロリテトラサイクリン、リメサイクリン、アピサイクリン;クロモサイクリン、グアメサイクリン、メグルサイクリン、メピルサイクリン、ペニメピサイクリン、ピパサイクリン、エタモサイクリン、ペニモサイクリンが含まれる。例えば、置換テトラサイクリン化合物は国際公開第2008/079339号及び国際公開第2008/079363号に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一つの置換テトラサイクリン化合物は、米国特許出願公開第2008/0312193号、同第2010/0305072号に記載されている(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドである。この化合物の遊離塩基は、活性な薬剤成分として使用するためには不安定であることが証明されている。さらに、当業者は、この化合物の塩の合成をこれまで試みているが、無定形塩のみが生成しており、これらの無定形塩は遊離塩基よりごく僅かしか安定性が改善されないことが分かっている。したがって、当技術分野において、この置換テトラサイクリン化合物の安定性を改善するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、遊離塩基及びこれまでのその公知の塩より優れた安定性を示す、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの新規な結晶性モノ塩酸塩、モノメシル酸塩及びモノ硫酸塩を対象とする。これは最先端技術における重要な前進である。
【0011】
本発明は、その塩がモノ塩酸塩、モノメシル酸塩及びモノ硫酸塩からなる群から選択される、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶塩を対象とする。特定の実施形態では、その結晶塩は実質的に純粋である。一実施形態は、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ塩酸塩を対象とする。特定の実施形態では、この結晶性モノ塩酸塩は、結晶塩の合成後に実質的に
図1に示すような粉末X線回折(XRPD)パターンを有し、好ましい実施形態では、XRPDパターンにおいて、少なくとも約13.4、約20.5及び約23.3に現れる回折角度2θ°の特性ピークを有する。他の実施形態では、この結晶性モノ塩酸塩は、合成後に実質的に
図2に示すような示差走査熱量測定(DSC)曲線を有し、合成後に実質的に
図3に示すような熱重量分析(TGA)曲線を有する。別の実施形態では、この結晶性モノ塩酸塩は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定して、0日目で約0.1ピーク面積パーセント(以下、「ピーク面積%」と称する)~約7.0ピーク面積%のβ異性体含量を有する。
【0012】
本発明の他の実施形態は、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノメシル酸塩及び結晶性モノ硫酸塩を対象とする。特定の実施形態では、結晶性モノメシル酸塩は、結晶塩の合成後に実質的に
図4に示すようなXRPDパターンを有し、好ましい実施形態では、XRPDパターンにおいて、少なくとも約9、約15及び約23.8に現れる回折角度2θ°の特性ピークを有する。他の実施形態では、結晶性モノメシル酸塩は、合成後に実質的に
図5に示すようなDSC曲線を有し、合成後に実質的に
図6に示すようなTGA曲線を有する。
【0013】
特定の実施形態では、結晶性モノ硫酸塩は、結晶塩の合成後に実質的に
図7に示すようなXRPDパターンを有し、好ましい実施形態では、XRPDパターンにおいて、少なくとも約15、約17.8及び約23.5に現れる回折角度2θ°の特性ピークを有する。他の実施形態では、結晶性モノ硫酸塩は、合成後に実質的に
図8に示すようなDSC曲線を有し、合成後に実質的に
図9に示すようなTGA曲線を有する。
【0014】
好ましい実施形態では、結晶性モノメシル酸塩は0日目で、HPLCで測定して約2.0ピーク面積%~約10.0ピーク面積%のβ異性体含量を有し、結晶性モノ硫酸塩は0日目で、HPLCで測定して約3.0ピーク面積%~約26.0ピーク面積%のβ異性体含量を有する。
【0015】
本発明はさらに、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ塩酸塩、結晶性モノメシル酸塩又は結晶性モノ硫酸塩、及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を対象とする。一実施形態では、この医薬組成物は、座瘡を治療するために使用される。別の実施形態では、この医薬組成物は、酒さを治療するために使用される。さらに別の実施形態では、この医薬組成物は、グラム陽性菌感染症を治療するために使用される。ここで、グラム陽性菌は、プロピオニバクテリウム・アクネス、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumonia)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)及びクロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)からなる群から選択される。
【0016】
本発明は、治療有効量の(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ塩酸塩、結晶性モノメシル酸塩又は結晶性モノ硫酸塩を対象に投与することを含む、座瘡を治療する方法も対象とする。
【0017】
本発明は、治療有効量の(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ塩酸塩、結晶性モノメシル酸塩又は結晶性モノ硫酸塩を対象に投与することを含む、酒さを治療する方法も対象とする。
【0018】
本発明は、治療有効量の(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ塩酸塩、結晶性モノメシル酸塩又は結晶性モノ硫酸塩を対象に投与することを含む細菌性感染症の治療方法であって、その細菌がプロピオニバクテリウム・アクネス、プロピオニバクテリウム・グラヌローサム(Propionibacterium granulosum)、プロピオニバクテリウム・アビダム(Propionibacterium avidum)、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、肺炎連鎖球菌、化膿連鎖球菌、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、溶血性連鎖球菌(Streptococcus haemolyticus)、大便連鎖球菌(Enterococcus faecalis)、大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)、プロテウス-ミラビリス(Proteus mirabiliss)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)及びクロストリジウム・ディフィシレからなる群から選択される前記治療方法も対象とする。
【0019】
本発明は、治療有効量の(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ塩酸塩、結晶性モノメシル酸塩又は結晶性モノ硫酸塩を対象に投与することを含むグラム陽性菌感染症の治療方法であって、そのグラム陽性菌がプロピオニバクテリウム・アクネス、黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、化膿連鎖球菌及びクロストリジウム・ディフィシレからなる群から選択される前記方法も対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ塩酸塩の合成後、及び40℃、75%の相対湿度(RH)で7日間貯蔵後での粉末X線回折(XRPD)分析を示す図である。
【
図2】(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ塩酸塩の合成後での示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。
【
図3】(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ塩酸塩の合成後での熱重量分析(TGA)曲線を示す図である。
【
図4】(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノメシル酸塩の合成後、及び40℃、75%RHで7日間貯蔵後でのXRPD分析を示す図である。
【
図5】(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノメシル酸塩の合成後でのDSC曲線を示す図である。
【
図6】(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノメシル酸塩の合成後でのTGAを示す図である。
【
図7】(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ硫酸塩の合成後、及び40℃、75%RHで7日間貯蔵後でのXRPD分析を示す図である。
【
図8】(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ硫酸塩の合成後でのDSC曲線を示す図である。
【
図9】(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ硫酸塩の合成後でのTGAを示す図である。
【
図10】(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの無定形ビス塩酸塩のXRPD分析を示す図である。
【
図11】(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの無定形ビス塩酸塩のTGA曲線とDSC曲線を重ねて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
結晶塩
(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの新規な結晶塩を本明細書で開示する。多くの実験と発見の後、本発明者らは、医薬組成物における薬剤活性のある成分として使用できる(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの安定で好ましい塩形態を決定した。本開示は、これらの新規な結晶塩の製造方法、並びに(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの遊離塩基及びこれまで公知のその無定形塩を凌駕する、それら結晶塩の優れた利点を教示する。
【0022】
したがって、本発明の一つの実施形態は、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶塩であって、モノ塩酸塩、モノメシル酸塩及びモノ硫酸塩からなる群から選択される結晶塩ある。
【0023】
好ましい実施形態では、結晶塩は実質的に純粋である。実質的に純粋な結晶塩は、その総不純物含量が、HPLCで測定して約10ピーク面積%未満、好ましくは約4ピーク面積%未満である。より好ましい実施形態では、結晶塩は無定形塩を実質的に含まない。好ましくは、約8ピーク面積%未満の無定形塩しか存在せず、より好ましくは約5ピーク面積%未満の無定形塩しか存在せず、さらにより好ましくは約3ピーク面積%未満の無定形塩しか存在しない。
【0024】
不純物含量のピーク面積%に関して本明細書で使用される「約」という用語は一般に、所与の値又は範囲の10%以内、例えば5%以内を意味する。
【0025】
本明細書で用いる「結晶性」という用語は、結晶の特徴を示す原子、イオン又は分子の周期的に繰り返される三次元の内部配置をもつ固体状態の化合物を指す。この結晶性という用語は、化合物が結晶として存在することを必ずしも意味せず、それが結晶様内部構造配置を有することを意味する。本明細書で用いる「無定形」という用語は、結晶構造に欠けており:繰り返しパターンが存在せず短距離の秩序だけが存在する、広範に不規則な化合物を指す。
【0026】
(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶塩は、細菌性、ウイルス性、寄生性及び真菌性の感染症;癌(例えば、前立腺癌、乳癌、結腸癌、肺メラノーマ及びリンパ癌)及び望ましくない細胞増殖を特徴とする他の障害;関節炎;骨粗しょう症;糖尿病;脳梗塞;急性心筋梗塞;大動脈瘤;神経変性疾患並びにテトラサイクリン化合物がそれに対して活性であることが分かっている他の状態(例えば、米国特許第5,789,395号、同第5,834,450号、同第6,277,061号及び同第5,532,227号(そのそれぞれを明確に参照により本明細書に組み込む)を参照されたい)を治療、予防或いは改善するために使用することができる。さらに、本発明の塩は、リケッチア感染症、性感染症、呼吸気道感染症、細菌性感染症、眼部感染症、炭疽病などの重要な哺乳動物疾患及び獣医学的疾患を予防又は制御するために使用することができ;急性腸アメーバ症、座瘡及びライム病の治療法として役に立つことができ;マラリアなどの予防ために使用することができる。好ましくは、本発明の結晶塩は、これらに限定されないが、湿疹、皮膚炎、乾癬、壊疽性膿皮症、座瘡及び酒さを含む細菌性感染症及び炎症性皮膚障害を治療するために使用することができる。一実施形態では、本発明の結晶塩は、座瘡及び/又は酒さを治療するために使用することができる。例えば、本発明の結晶塩は、座瘡を治療するために使用することができる。本発明の塩で治療できる細菌性感染症の非限定的な例には、グラム陽性生物体のプロピオニバクテリウム・アクネス、黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、化膿連鎖球菌又はクロストリジウム・ディフィシレの感染症が含まれる。
【0027】
特定の実施形態は、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ塩酸塩である。
【0028】
本明細書で用いる「モノ塩酸塩」という用語は、酸と塩基の中和反応によって得られるイオン化合物を指す。イオン化合物(ここではHCl)はカチオンとアニオンからなり、したがってこの化合物は中性である。
【0029】
結晶塩を分析するための一般的方法には、粉末X線回折(XRPD)による結晶分析、示差走査熱量測定(DSC)及び熱重量分析(TGA)が含まれる。
【0030】
本明細書で開示されるXRPD分析は、Cu Kα放射線(40kV、40mA)、自動XYZステージ、自動的なサンプル位置決めのためのレーザービデオ顕微鏡及びHiStar二次元面検出器を用いたBruker AXS C2 GADDS回折計で収集した。X線光学系は、0.3mmのピンホールコリメータを連結した単一のGobel多層ミラーからなる。データ収集のために使用したソフトウェアはWNT4.1.16用のGADDSであり、Diffrac Plus EVA v9.0.0.2又はv13.0.0.2を用いてデータを解析し提示した。サンプルは、受け入れたそのままの粉末を用いて平板試料として、周囲条件下で分析した。約1~2mgのサンプルをスライドガラス上で軽く押圧して平らな表面を得た。非周囲条件下で分析したサンプルを、熱伝導性化合物とともにシリコンウエハー上に取り付けた。次いで、サンプルを妥当な温度まで約20℃/minで加熱し、次いで等温的に約1分間保持し、続いてデータ収集を開始した。
【0031】
特定の実施形態では、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ塩酸塩は、結晶塩の合成後に実質的に
図1に示すようなXRPDパターンを有する。
【0032】
本明細書で用いる「XRPDパターン」という用語は、XRPD分析により収集したデータのグラフ表示を指す。XRPD分析は、多結晶又は粉末状の固体のサンプルにおける結晶学的な構造、サイズ及び好ましい配向性を特性評価するために用いられる技術である。この回折は、不均一固体混合物を特性評価して、存在する結晶性化合物の割合を決定するのにも使用され、未知の物質についての構造情報を提供することができる。
【0033】
XPRDパターンに関連して本明細書で用いる「実質的に」及び「約」という用語は、記載されたピーク(複数可)が、所与の2θ値の0.2°(2θ)以内に現れるXPRDパターンを指し、0.1°(2θ)以内の場合を含む。
【0034】
好ましい実施形態では、結晶性モノ塩酸塩は、XRPDで測定して少なくとも約13.4、約20.5及び約23.3に現れる回折角度2θ°の特性ピークを有する。より好ましい実施形態では、結晶性モノ塩酸塩は、XRPDで測定して少なくとも約9.5、約13.4、約15.5、約20.5及び約23.3に現れる回折角度2θ°の特性ピークを有し、さらにより好ましくは、結晶性モノ塩酸塩は、少なくとも約9.5、約13.4、約15.5、約16.6、約19.2、約20.5、約22.2,及び約23.3に現れる回折角度2θ°の特性ピークを有する。
【0035】
本明細書で用いる「特性ピーク」という用語は、基線ノイズより少なくとも20%、より好ましくは40%強い強度を有する、XRPDパターンにおけるピークを指す。
【0036】
TGA及びDSC分析は熱挙動を測定するのに使用され、多形体間の識別に使用することができる。一つの多形形態は、無定形物質又は別の多形形態とは異なる熱挙動を示すことができる。
【0037】
本明細書で開示するDSC分析は、50位置型オートサンプラーを備えたTA Instruments Q2000を用いて採取した。この計器を、認定済みのインジウムを用いてエネルギー及び温度について較正した。熱容量についての較正はサファイアを用いて実施した。典型的には、ピンホールのあるアルミニウムパンの中の0.5~3.0mgの各サンプルを25℃から250℃まで10℃/minで加熱した。サンプル上への窒素パージを50ml/minで維持した。使用した計器制御ソフトウェアはAdvantage for Q Series v2.8.0.392及びThermal Advantage v4.8.3であり、データはUniversal Analysis v4.4Aを用いて解析した。
【0038】
DSCは、サンプルと対照標準の温度を上昇させるのに必要な熱量の差分を温度の関数として測定する熱分析技術である。DSCは、サンプルのいくつかの特性を測定するのに使用することができ、結晶化事象の観察を可能にする。具体的には、DSCを用いると、固体から液晶へ及び液晶から等方性液体への物質転移として起こる小さなエネルギー変化を観察することが可能である。DSC曲線における事象の存在は、化合物の安定性並びに溶媒和物又は水和物の存在を評価するのに用いることができる。
【0039】
TGAは、温度の変化に関係した重量変化を測定するために使用され、これは、化合物の劣化、及び溶媒和物又は水和物の存在を明らかにすることができる。本明細書で開示するTGA分析は、16位置型オートサンプラーを備えたTA Instruments Q500 TGAを用いて採取した。この計器を、認定済みのアルメルとニッケルを用いて温度較正した。典型的には、5~30mgの各サンプルを、予め計量した白金るつぼ及びアルミニウムDSCパンの上に載せ、10℃/minで周囲温度から300℃まで加熱した。サンプル上への窒素パージを60ml/minで維持した。使用した計器制御及びデータ分析ソフトウェアはAdvantage for Q Series v2.8.0.392及びThermal Advantage v4.8.3であり、データはUniversal Analysis v4.4Aを用いて解析した。
【0040】
特定の実施形態では、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ塩酸塩は、実質的に
図2に示すようなDSC曲線を示す。DSCで分析した結晶性モノ塩酸塩は、結晶塩が劣化するまで事象を示さないことが好ましい。
【0041】
本明細書で用いる「事象」という用語は、サーモグラムにおいてピークとして記録される微分熱流量の変化を引き起こす、熱の吸収(吸熱)又は発生(発熱)に伴うサンプルでの変化を指す。サンプルにおけるそうした変化は、分解、劣化、及び形状又は形態の変化、溶媒和物又は水和物の変化を含む。事象が何ら存在しないことは、その化合物が安定であり、低いエネルギー形態にあることを示す。
【0042】
DSC曲線に関連して本明細書で用いる「実質的に」という用語は、所与の温度の0.5℃以内を含む1℃以内でピーク(複数可)を示すDSC曲線を意味する。
【0043】
特定の実施形態では、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ塩酸塩は、実質的に
図3に示すようなTGA曲線を示す。TGAで分析した結晶性モノ塩酸塩は、約30℃~約200℃で約1%~約5%の重量損失、約200℃~約250℃で約12%~約16%の重量損失、より好ましくは約30℃~約200℃で約3%の重量損失、約200℃~約250℃で約14%~約15%の重量損失を示すことが好ましい。
【0044】
TGA曲線に関連して本明細書で用いる「実質的に」という用語は、温度変化に関して所与の値の0.5%以内を含む1%以内の重量損失割合を示す曲線を意味する。
【0045】
特定の実施形態では、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ塩酸塩は少なくとも4カ月間、より好ましくは少なくとも6カ月間安定である。
【0046】
本明細書で用いる「安定(な)」及び「安定性」という用語は、塩の物理的形状と化学的純度の両方を指す。本明細書で用いる「塩」は、本発明の開示した結晶性モノ塩酸塩、モノメシル酸塩及びモノ硫酸塩を指す。
【0047】
塩の物理的形状の安定性の一つの尺度は、物質が、周囲環境から水分子を吸収又は吸着する傾向である吸湿性である。水分が劣化を促進させる可能性がある場合でも、70%を超える相対湿度(RH)で非吸湿性又は弱吸湿性である場合、その塩は安定である。好ましい実施形態では、塩は80%RH超で非吸湿性又は弱吸湿性であり、より好ましい実施形態では、塩は90%RHまで非吸湿性又は弱吸湿性である。本明細書で用いる「非吸湿性又は弱吸湿性」は、約40℃、約75%のRHで、8時間以内に10w/w%未満の水、好ましくは5w/w%未満の水しか吸収しない、固体結晶形態で約80w/w%超、好ましくは固体結晶形態で約90w/w%超存在する化合物を指す。吸湿性(吸湿度)は、測定の比較点での化合物の重量増加を基にして計算される。物理的安定性の別の尺度は、XPRDで測定できる塩の結晶形態である。
【0048】
化学的純度の一つの尺度は、塩のβ異性体含量によって定義される。多くのテトラサイクリンは光学的に活性であり、一つ以上の不斉中心を含む。そうした中心の非対称性を変更して反対の立体化学を形成させるプロセスはエピマー化と称される。テトラサイクリンに、可逆的エピマー化を施すとより低い活性のエピ-テトラサイクリンになる。エピマー化が起こる速度は、pH、温度、対イオン及び湿度などの多くの因子に依存する。天然由来のエピマーは一般にα体又は活性エピマーと称される。β体として公知の他方のエピマーは生物学的活性をもっていることも、またもっていないこともある。
【0049】
(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドはC4にエピマー中心を有する。(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドのα及びβエピマーは、紫外吸光検出器(HPLC-UV)分析を用いた逆相HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により分離可能で定量化可能であり、ピーク面積%とも称されるパーセント曲線下面積として測定される。(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドのエピマーは非毒性と考えられるが、特定の条件下で(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの抗細菌効能に欠ける可能性があり、したがって望ましくない劣化生成物と考えられる。
【0050】
β異性体含量が低くなればなるほど、塩の化学的純度はより高くなる。β異性体含量を塩の合成後に測定し、指定された期間貯蔵した後の測定β異性体含量と比較する。貯蔵後にβ異性体含量がそれほど増大しない場合、塩の化学的純度に対する貯蔵の悪影響はなく、その塩はその指定された期間安定である。テトラサイクリンによる水分の取り込みはエピマー化の寄与因子である可能性があるので、それほど吸湿性でない塩形態の(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドは、湿度によって引き起こされるエピマー化に対する本質的耐性を提供することができる。
【0051】
化学的純度の別の尺度は、化合物の形態を表す他の関連不純物、副生成物又は塩の劣化生成物の含量によって定義される。HPLC、一般にHPLC-UVで測定して全不純物の含量が少なくなればなるほど、塩の化学的純度はより高くなる。塩の合成後に総不純物含量を測定し、指定された期間貯蔵した後の測定総不純物含量と比較する。貯蔵後に総不純物含量がそれほど増大しない場合、塩の化学的純度に対する貯蔵の悪影響はなく、その塩はその指定された期間安定である。
【0052】
特定の実施形態では、0日目で、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ塩酸塩は、総不純物含量が約8%未満、好ましくは約4%未満である。別の実施形態では、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ塩酸塩は、約40℃、約75%RHで約6カ月間貯蔵した後の総不純物含量が、約10%未満、好ましくは約6%未満である。特定の実施形態では、塩は、約40℃、約75%RHで約6カ月間貯蔵した後の総不純物含量が、約0日目での総不純物含量より多くてもその差は約80ピーク面積%未満であり、好ましくは約0日目での総不純物含量より多くてもその差は約50ピーク面積%未満である。
【0053】
本発明の特定の実施形態では、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ塩酸塩は安定であり、約40℃、約75%RHで約75日間貯蔵した後のβ異性体含量が、約0日目でのβ異性体含量より多くてもその差は約20ピーク面積%未満である。好ましい実施形態では、塩は、約40℃、約75%RHで約75日間貯蔵した後のβ異性体含量が、約0日目でのβ異性体含量より多くてもその差は約10ピーク面積%未満であり;より好ましい実施形態では、約40℃、約75%RHで約75日間貯蔵した後のβ異性体含量は、約0日目でのβ異性体含量より多くてもその差は約1ピーク面積%未満であり;さらに好ましい実施形態では、約40℃、約75%RHで約75日間貯蔵した後のβ異性体含量は約0日目でのβ異性体含量と実質的に等しい。本明細書で用いる「合成後」は、合成を確認した時から約1日未満を指し、「0日目」とも称される。
【0054】
特定の実施形態では、0日目での(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ塩酸塩のβ異性体含量は、約0.1%~約7.0ピーク面積%、好ましくは約1.0%~約6.0ピーク面積%、より好ましくは約2.0%~約4.0ピーク面積%、最も好ましくは約3.0%~約4.0ピーク面積%である。特定の実施形態では、少なくとも3カ月間貯蔵した後の(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ塩酸塩のβ異性体含量は、約2.0%~約8.0ピーク面積%、より好ましくは約3.0%~約4.0ピーク面積%である。他の実施形態では、少なくとも6カ月間貯蔵した後のβ異性体含量は約0.1%~約10.0ピーク面積%、より好ましくは約2.0%~約8.0ピーク面積%である。特定の実施形態では、0日目での(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ塩酸塩のβ異性体含量は約6.0ピーク面積%未満であり、周囲条件で約75日間貯蔵した後は約6.0ピーク面積%未満である。好ましくは、0日目でのβ異性体含量は約4.5ピーク面積%未満であり、周囲条件で約75日間貯蔵した後は約4.5ピーク面積%未満であり、さらに他の実施形態では、0日目でのβ異性体含量は約3.8ピーク面積%であり、周囲条件で約75日間貯蔵した後は約3.8ピーク面積%である。
【0055】
本明細書で用いる周囲条件は、約20℃~約25℃の温度及び約40%のRHを意味する。
【0056】
本発明の別の実施形態は、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノメシル酸塩である。
【0057】
本明細書で用いる「モノメシル酸塩」という用語は、酸と塩基の中和反応によって得られるイオン化合物を指す。この化合物はカチオンとアニオン(ここではCH3SO2
-)からなり、したがってこの化合物は中性である。
【0058】
特定の実施形態では、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノメシル酸塩は、結晶塩の合成後に実質的に
図4に示すようなXRPDパターンを有する。
【0059】
好ましい実施形態では、結晶性モノメシル酸塩は、XRPDで測定して少なくとも約9、約15及び約23.8に現れる回折角度2θ°の特性ピークを有する。より好ましい実施形態では、結晶性モノメシル酸塩は、XRPDで測定して少なくとも約9、約15、約22.7及び約23.8に現れる回折角度2θ°の特性ピークを有し、さらにより好ましくは、結晶性モノメシル酸塩は、少なくとも約9、約15、約22、約22.7及び約23.8に現れる回折角度2θ°の特性ピークを有する。
【0060】
特定の実施形態では、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノメシル酸塩は、実質的に
図5に示すようなDSC曲線を示す。DSCで分析した結晶性モノメシル酸塩は、結晶塩が劣化するまで事象を示さないことが好ましい。
【0061】
特定の実施形態では、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノメシル酸塩は、実質的に
図6に示すようなTGA曲線を示す。TGAで分析した結晶性モノメシル酸塩は、約30℃~約200℃で約1%~約4%の重量損失、約200℃~約250℃で約3%~約10%の重量損失、より好ましくは約30℃~約200℃で約2%~約3%の重量損失、約200℃~約250℃で約6%~約7%の重量損失を示すことが好ましい。
【0062】
本発明の特定の実施形態では、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノメシル酸塩は安定であり、約40℃、約75%RHで約75日間貯蔵した後のβ異性体含量は、約0日目でのβ異性体含量より多くてもその差は約20ピーク面積%未満である。好ましい実施形態では、塩は、約40℃、約75%RHで約75日間貯蔵した後のβ異性体含量が、約0日目でのβ異性体含量より多くてもその差は約10ピーク面積%未満であり;より好ましい実施形態では、約40℃、約75%RHで約75日間貯蔵した後のβ異性体含量は、約0日目でのβ異性体含量より多くてもその差差は約1ピーク面積%未満であり;さらに好ましい実施形態では、約40℃、約75%RHで約75日間貯蔵した後のβ異性体含量は約0日目でのβ異性体含量と実質的に等しい。
【0063】
特定の実施形態では、0日目での(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノメシル酸塩のβ異性体含量は、約2.0%~約10.0ピーク面積%、好ましくは約2.0%~約6.0ピーク面積%、より好ましくは約2.0%~約3.0ピーク面積%である。
【0064】
本発明の別の実施形態は、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ硫酸塩である。
【0065】
本明細書で用いる「モノ硫酸塩」という用語は、酸と塩基の中和反応によって得られるイオン化合物を指す。この化合物はカチオンとアニオン(ここではSO4
2-)からなり、したがってこの化合物は中性である。
【0066】
特定の実施形態では、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ硫酸塩は、結晶塩の合成後に実質的に
図7に示すようなXRPDパターンを有する。
【0067】
好ましい実施形態では、結晶性モノ硫酸塩は、XRPDで測定して少なくとも約15、約17.8及び約23.5に現れる回折角度2θ°の特性ピークを有する。より好ましい実施形態では、結晶性モノ硫酸塩は、XRPDで測定して少なくとも約15、約17.8、約22.5及び約23.5に現れる回折角度2θ°の特性ピークを有する。さらにより好ましい実施形態では、結晶性モノ硫酸塩は、XRPDで測定して少なくとも約15、約17.8、約19.0、約22.5及び約23.5に現れる回折角度2θ°の特性ピークを有する。
【0068】
特定の実施形態では、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ硫酸塩は、実質的に
図8に示すようなDSC曲線を示す。DSCで分析した結晶性モノ硫酸塩は、結晶塩が劣化するまで事象を示さないことが好ましい。
【0069】
特定の実施形態では、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ硫酸塩は、実質的に
図9に示すようなTGA曲線を示す。TGAで分析した結晶性モノ硫酸塩は、約30℃~約200℃で約1%~約5%の重量損失、約200℃~約250℃で約12%~約16%の重量損失、より好ましくは約30℃~約200℃で約3%~約4%の重量損失、約200℃~約250℃で約13%~約14%の重量損失を示すことが好ましい。
【0070】
本発明の特定の実施形態では、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ硫酸塩は安定であり、約40℃、約75%RHで約75日間貯蔵した後のβ異性体含量は、約0日目でのβ異性体含量より多くてもその差は約20ピーク面積%未満である。好ましい実施形態では、塩は、約40℃、約75%RHで約75日間貯蔵した後のβ異性体含量が、約0日目でのβ異性体含量より多くてもその差は約10ピーク面積%未満であり;より好ましい実施形態では、約40℃、約75%RHで約75日間貯蔵した後のβ異性体含量は、約0日目でのβ異性体含量より多くてもその差は約1ピーク面積%未満であり;さらに好ましい実施形態では、約40℃、約75%RHで約75日間貯蔵した後のβ異性体含量は約0日目でのβ異性体含量と実質的に等しい。
【0071】
特定の実施形態では、0日目での(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ硫酸塩のβ異性体含量は、約3.0%~約26.0ピーク面積%、好ましくは約5.0%~約20.0ピーク面積%、最も好ましくは約6.0%~約10.0ピーク面積%である。
【0072】
医薬組成物
本発明の一つの実施形態は、モノ塩酸塩、モノメシル酸塩及びモノ硫酸塩からなる群から選択される(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶塩、並びに薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を対象とする。
【0073】
本発明の医薬組成物は、有効量の結晶塩、薬学的に許容される賦形剤を含み、いくつかの実施形態では、それは一つ以上の付加的活性成分も含むことができる。本発明の医薬組成物中の結晶塩の含量は、変数の中でとりわけ、投与の対象、投与経路及び標的疾患に応じて変動する。本発明の医薬組成物は、経口、局所(例えば、経皮等)、経膣、経直腸又は非経口(例えば、静脈内等)で投与することができる。好ましくは、本発明の医薬組成物は、細菌性感染症及び炎症性皮膚障害を治療するために使用することができる。例えば、本発明の医薬組成物は、座瘡及び/又は酒さを治療する、例えば座瘡を治療する、或いはグラム陽性菌の感染症を治療するために使用することができる。ここで、グラム陽性菌は、プロピオニバクテリウム・アクネス、黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、化膿連鎖球菌及びクロストリジウム・ディフィシレからなる群から選択される。
【0074】
医薬組成物の局所投与の例には、経皮、頬側又は舌下での施用が含まれる。局所施用のためには、医薬組成物を、ゲル、軟膏、ローション又はクリームなどの薬理学的に不活性な局所用担体中に適切に混合することができる。そうした薬理学的に不活性な局所用担体には、水、グリセロール、アルコール、プロピレングリコール、脂肪アルコール、トリグリセリド、脂肪酸エステル又は鉱油が含まれる。他の可能な薬理学的に不活性な局所用担体は、流動ワセリン、パルミチン酸イソプロピル、ポリエチレングリコール、エタノール95%、ポリオキシエチレンモノラウリエート5%水溶液、ラウリル硫酸ナトリウムの5%水溶液などである。さらに、酸化防止剤、保湿剤、粘度安定剤などの材料も加えることができる。
【0075】
経口投与のために、本発明の結晶塩をカプセル剤、錠剤又は顆粒剤として投与することができる。錠剤は、微結晶性セルロース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム及びグリシンなどの種々の賦形剤を、ポリビニルピロリドン、スクロース、ゼラチン及びアカシアのような顆粒結合剤と一緒に、デンプン(好ましくはコーンスターチ、バレイショデンプン又はタピオカデンプン)、アルギン酸及び特定の複合ケイ酸塩などの種々の崩壊剤とともに含むことができる。特定の実施形態では、錠剤はフィルムコーティングされていてもよい。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム及びタルクなどの滑沢剤はしばしば錠剤に非常に有用である。他の固体組成物を、ゼラチンカプセル剤中のフィラー剤として用いることもでき;この関連で好ましい材料には、ラクトース又は乳糖並びに高分子量ポリエチレングリコールも含まれる。経口投与用に水性懸濁剤及び/又はエリキシル剤が望ましい場合、結晶塩を、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン及びその同様の種々の組合せなどの希釈剤と一緒に、種々の甘味剤又は香味剤、着色物質又は染料、望むなら乳化剤及び/又は懸濁化剤と混合することができる。本発明の医薬組成物を、投与後ある期間にわたってその結晶塩が放出されるように処方することができる。
【0076】
薬学的に許容される賦形剤及び任意選択の付加的活性成分と一緒に、本発明の結晶塩のそうした医薬組成物を調製することは、当業界で公知の慣用的な任意の技術により実施することができる。
【0077】
一実施形態では、医薬組成物中に存在する結晶塩は、全組成物に対して約0.01%~約90%(重量)である。結晶塩の適切な治療有効量は一般に、一日当たり約0.01mg/kg~約1g/kg体重;別の実施形態では、一日当たり約1mg/kg~約600mg/kg体重;別の実施形態では、一日当たり約1mg/kg~約250mg/kg体重;別の実施形態では、一日当たり約10mg/kg~約400mg/kg体重;別の実施形態では、一日当たり約10mg/kg~約200mg/kg体重;別の実施形態では、一日当たり約10mg/kg~約100mg/kg体重;一実施形態では、一日当たり約10mg/kg~約25mg/kg体重;別の実施形態では、一日当たり約1mg/kg~約10mg/kg体重;別の実施形態では、一日当たり約0.001mg/kg~約100mg/kg体重;別の実施形態では、一日当たり約0.001mg/kg~約10mg/kg体重;別の実施形態では、一日当たり約0.001mg/kg~約1mg/kg体重の範囲となる。特定の実施形態では、本明細書で説明する医薬組成物を経口で投与する場合、結晶塩の適切な治療有効量は、一日当たり約0.01~約100mg/レシピエントkg体重、好ましくは一日当たり約0.1~約50mg/レシピエントkg体重、より好ましくは一日当たり約0.1~約20mg/レシピエントkg体重、さらにより好ましくは一日当たり約0.1~約10mg/レシピエントkg体重である。所望用量は、1日1回、又は1日を通した妥当な間隔での複数回の分割用量、例えば2~5回の分割用量で、或いは他の適切なスケジュールで投与することができる。
【0078】
本明細書で用いる「薬学的に許容される賦形剤」という用語には、これらに限定されないが、以下のもの:ポリマー、樹脂、可塑剤、フィラー剤、滑沢剤、希釈剤、結合剤、崩壊剤、溶媒、共溶媒、界面活性剤、緩衝系、保存剤、甘味剤、香味剤、医薬品グレードの染料又は顔料、キレート剤、粘性剤及びその組合せの一つ以上が含まれる。薬学的に許容される賦形剤は、剤形、すなわちコア錠剤又はコーティングを作製する際の任意の成分中で使用することができる。本明細書でとりわけ有用な香味剤並びに染料及び顔料には、これらに限定されないが、Handbook of Pharmaceutical Excipients(4th Ed.,Pharmaceutical Press 2003年)に記載されているものが含まれる。適切な共溶媒には、これらに限定されないが、エタノール、イソプロパノール、アセトン及びその組合せが含まれる。適切な界面活性剤には、これらに限定されないが、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル、スクロースモノエステル、シメチコン乳剤、ラウリル硫酸ナトリウム、Tween 80(登録商標)及びラノリンエステル、エーテル及びその組合せが含まれる。適切な保存剤には、これらに限定されないが、フェノール、パラヒドロキシ安息香酸のアルキルエステル、安息香酸及びその塩、ホウ酸及びその塩、ソルビン酸及びその塩、クロルブタノール、ベンジルアルコール、チメロサール、酢酸フェニル水銀及び硝酸フェニル水銀、ニトロメルゾール、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、メチルパラベン、プロピルパラベン及びその組合せが含まれる。適切なフィラー剤には、これらに限定されないが、デンプン、ラクトース、スクロース、マルトデキストリン及び微結晶性セルロースが含まれる。適切な可塑剤には、これらに限定されないが、クエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、フタル酸ジブチル、ヒマシ油、アセチル化モノグリセリド、トリアセチン及びその組合せが含まれる。適切なポリマーには、これらに限定されないが、エチルセルロース、酢酸トリメリット酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルアセテートフタレート並びにEudragit(登録商標)L30-D、Eudragit(登録商標)L100-55、Eudragit(登録商標)F530D及びEudragit(登録商標)S100(Rohm Pharma GmbH and Co.KG、Darmstadt、Germany)、Acryl-EZE(登録商標)及びSureteric(登録商標)(Colorcon、Inc.、West Point、Pa.)及びその組合せが含まれる。適切な滑沢剤には、これらに限定されないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク及びその組合せが含まれる。
【0079】
本明細書で用いる「付加的活性成分」という用語には、医薬組成物によって治療される状態の症状を治療、予防又は軽減するための当業界で公知の任意の作用剤が含まれる。そうした作用剤には、これらに限定されないが、細菌性感染症及び炎症性皮膚障害の症状を治療、予防又は軽減するための公知の作用剤が含まれる。
【0080】
本発明の結晶塩の安定性の改善は、その結晶の吸湿性が小さい、すなわち湿度に対する感度が低く、それによって、結晶塩を含む医薬組成物を従来公知の医薬組成物より長期間保存できることを意味する。
【0081】
特定の実施形態では、医薬組成物は、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドのモノ塩酸塩及び薬学的に許容される賦形剤を含む。別の実施形態では、医薬組成物は、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドのモノメシル酸塩及び薬学的に許容される賦形剤を含む。さらに他の実施形態では、医薬組成物は、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドのモノ硫酸塩及び薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0082】
特定の実施形態では、本発明は、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミド又は薬学的に許容されるその塩並びに薬学的に許容される賦形剤を含む、細菌性感染症、例えば化膿連鎖球菌及びクロストリジウム・ディフィシレ細菌性感染症を治療するのに使用するための医薬組成物を対象とする。好ましい実施形態では、医薬組成物は、モノ塩酸塩、モノメシル酸塩及びモノ硫酸塩からなる群から選択される、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶塩を含む。
【0083】
本明細書で用いる化合物の「薬学的に許容される塩」という語句は、薬学的に許容され、親化合物の所望薬理学的活性を保持する塩を意味する。薬学的に許容される塩には、本発明の化合物中に存在する酸性又は塩基性基の塩が含まれる。薬学的に許容される酸付加塩には、これらに限定されないが、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、メシル酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、酸性酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、サッカラート、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩及びパモン酸塩(すなわち、1,1'-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))が含まれる。適切な塩基塩には、これらに限定されないが、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛及びジエタノールアミンの塩が含まれる。好ましくは、薬学的に許容される塩は結晶塩である。さらにより好ましくは、薬学的に許容される塩は、モノ塩酸塩、モノメシル酸塩及びモノ硫酸塩から選択される結晶塩である。
【0084】
使用方法
本発明の一つの実施形態は、治療有効量の(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶塩であって、モノ塩酸塩、モノメシル酸塩及びモノ硫酸塩からなる群から選択される結晶塩を対象に投与することを含む座瘡及び/又は酒さを治療する方法を対象とする。一実施形態では、本発明は、座瘡を治療する方法を対象とする。別の実施形態では、本発明は、酒さを治療する方法を対象とする。
【0085】
本明細書で用いる「治療する」という用語は、座瘡及び/又は酒さ又は本明細書で説明する他の状態の治療的及び/又は予防的処置を含む。この処置は、座瘡及び/又は酒さに付随する少なくとも一つの症状或いは本明細書で説明する別の状態に付随する少なくとも一つの症状の減退又は緩和を含む。
【0086】
本明細書で用いる「治療有効量」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、治療しようとする症状及び/又は状態を有意に確実に改変するのに十分多いが重篤な副作用(妥当なリスク/便益比で)を回避するのに十分少ない化合物又は組成物の量を意味する。本発明の方法において使用するための治療有効量の活性成分は本明細書では、治療を受ける具体的な状態、治療を受ける患者の年齢及び健康状態、その状態の重症度、治療の期間、同時に受けている治療の性質、使用される具体的な活性成分、使用される具体的な薬学的に許容される賦形剤並びに専門の医師又は獣医の知識及び専門的技術の範囲内の因子などによって変わることになる。様々な適切な治療有効量は上述されている。
【0087】
本明細書で用いる「対象」という用語は、動物である。「対象」には、これらに限定されないが、ヒト、マウス、ラット、テンジクネズミ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、サル、チンパンジー、ヒヒ又はアカゲザルが含まれる。一実施形態では、「対象」は哺乳動物である。別の実施形態では、「対象」はヒトである。
【0088】
特定の実施形態は、治療有効量の(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ塩酸塩を対象に投与することを含む座瘡を治療する方法を対象とする。その実施形態では、使用するモノ塩酸塩の量は約10mg~約2000mg、好ましくは約25mg~約500mgである。特定の実施形態では、モノ塩酸塩を少なくとも月1回、好ましくは週1回、より好ましくは週2回投与し、最も好ましくはモノ塩酸塩を毎日投与する。
【0089】
別の実施形態は、治療有効量の(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノメシル酸塩を対象に投与することを含む、座瘡を治療する方法を対象とする。その特定の実施形態では、使用する結晶性モノメシル酸塩の量は約10mg~約2000mg、好ましくは約25mg~約500mgである。特定の実施形態では、モノメシル酸塩を少なくとも月1回、好ましくは週1回、より好ましくは週2回投与し、最も好ましくはモノメシル酸塩を毎日投与する。
【0090】
他の実施形態は、治療有効量の(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ硫酸塩を対象に投与することを含む、座瘡を治療する方法を対象とする。特定の実施形態では、使用する結晶性モノ硫酸塩の量は約10mg~約2000mg、好ましくは約25mg~約500mgである。特定の実施形態では、モノ硫酸塩を少なくとも月1回、好ましくは週1回、より好ましくは週2回投与し、最も好ましくはモノ硫酸塩を毎日投与する。
【0091】
本発明のさらに別の実施形態は、その結晶塩がモノ塩酸塩、モノメシル酸塩及びモノ硫酸塩からなる群から選択される、治療有効量の(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶塩を対象に投与することを含む、グラム陽性菌感染症を治療する方法を対象とする。グラム陽性菌感染症には、プロピオニバクテリウム・アクネス、黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、化膿連鎖球菌及びクロストリジウム・ディフィシレ感染症が含まれる。
【0092】
本発明のさらなる実施形態は、治療有効量の(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミド又は薬学的に許容されるその塩を対象に投与することを含む、細菌性感染症、例えば化膿連鎖球菌及びクロストリジウム・ディフィシレ感染症から選択されるグラム陽性菌感染症を治療する方法を対象とする。好ましい実施形態では、その方法は、好ましくは治療有効量の(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶塩であって、モノ塩酸塩、モノメシル酸塩又はモノ硫酸塩である結晶塩を対象に投与することを含む。
【0093】
以下の実施例で、好ましい実施形態のいくつかにおける本発明の実践を例示することとする。特許請求の範囲内の他の実施形態は当業者に明らかであろう。
【実施例0094】
[実施例]
以下の実施例は、本明細書で説明する化合物の合成を例示する。
【0095】
(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミド(「遊離塩基」)の合成
【化1】
【0096】
N,N-ジメチルアセトアミド(15mL)中の7-ホルミルサンサイクリンTFA塩(2.23g)及びN,0-ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(780mg)の溶液をアルゴン雰囲気下、室温で10分間撹拌した。この溶液に、シアノ水素化ほう素ナトリウム(302mg)を加えた。溶液を5分間撹拌し、LC-MSで監視した。反応混合物をジエチルエーテルに注加し、得られた沈殿物を真空下でろ取した。粗生成物を、C18カラム(20mM水性トリエタノールアミン中の線形勾配10~40%アセトニトリル、pH7.4)を用いて分取(prep)HPLCにより精製した。分取HPLC画分を収集し、減圧下で有機溶媒(アセトニトリル)を蒸発させた。得られた水溶液を清浄なPDVB SPEカラムにロードし、蒸留水で洗浄し、続いて0.1M酢酸ナトリウム溶液、次いで蒸留水で洗浄した。生成物をアセトニトリルで溶出させた。溶出液を減圧下で濃縮し、385mgを遊離塩基として得た。
【0097】
(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ塩酸塩(「結晶性モノ塩酸塩」)の合成
【化2】
【0098】
粗製(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミド(100g、app.35%含有率)を分取カラムクロマトグラフィーで精製した。所望の画分(8~10リットル)を合わせ、水酸化アンモニウムでpHを7.0~7.5に調節した。この水溶液をジクロロメタンで3回(各回4リットル)抽出した。ジクロロメタン層を合わせ、減圧下で濃縮した。残留物をエタノール(800ml)に懸濁させ、20mlの水を加えた。メタノール中の1.25M塩酸を用いてpHをpH1.6~1.3に徐々に調節し、混合物を20~60分間撹拌した。その時点で遊離塩基は完全に溶解した。溶液を減圧下で200~250mlまで濃縮し、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドモノHCl結晶(100~200mg)を種晶として加えた。撹拌を2~18時間続行し、その間スラリーを≦5℃で保持した。得られた結晶をろ過し、エタノール(50mL)で洗浄し、減圧下で一定重量になるまで乾燥した。20gの結晶性(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドモノ塩酸塩を≧90%の純度及び≧90%の含有率で単離した。
【0099】
(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸の結晶性モノメシル酸塩(「結晶性メシル酸塩」)の合成
(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミド遊離塩基(74mg)をエタノール(740μl)に懸濁させ、撹拌しながら60℃(浴温)に加熱した。メタンスルホン酸(1.1eq、167μl、THF中に1M溶液として)を加え、固体の大部分を溶解させた。5分後、懸濁液を約1.75時間かけて周囲温度に冷却した(油浴中で制御なしで)。53℃で固体が沈澱した。これを減圧下、周囲温度でろ過した。懸濁液が粘性であったため、追加分量のエタノール(200μl)を加えてろ過を助けた。ケーキをn-ヘキサン(400μl)で洗浄し、フィルター上で約30分間空気乾燥して59mg(67%収率)の黄色固体を得た。
【0100】
(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸の結晶性モノ硫酸塩(「結晶性硫酸塩」)の合成
(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミド遊離塩基(86mg)をエタノール(500μl)に懸濁させ、撹拌しながら63℃(浴温)に加熱した。その温度で遊離塩基の大部分は溶解した。硫酸(1.1eq、194μl、1M水溶液として)を加え、固体のすべてを溶解させた。溶液を約1.75時間かけて周囲温度に冷却した(油浴中で制御なしで)。この温度で固体は沈澱しなかった。メチルt-ブチルエーテル(MtBE)をアンチソルベント(4×50μl)として加えた。各添加は雲り点をもたらしたが、撹拌すると固体は再溶解した。溶液をストッパーで約3時間撹拌し、その後、固体は沈澱した。固体を減圧下でろ過し、MtBE(3×200μl)で洗浄し、フィルター上で約45分間空気乾燥して93mg(90%収率)の黄色固体を得た。
【0101】
[比較例1]
(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの無定形ビス塩酸塩の合成
(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミド遊離塩基(1g)をメタノール(50mL)に懸濁させた。過剰のメタノールHClを加えて遊離塩基を塩酸塩に転換させ、次いで減圧下で蒸発させて1.1gの黄色固体を得た:MS(Mz+1=488)。1H NMR(300MHz, CD30D) δ 7.46(d, 1H, J=8.6Hz), 6.81(d, 1H, J=8.6Hz), 4.09(d, 1H, J=1.0Hz), 3.79(d, 1H, J=13.1Hz), 3.73(d, 1H, J=13.1Hz), 3.36(m, 1H), 3.27(s, 3H), 3.08-2.95(8H), 2.61(s, 3H), 2.38(t, 1H, J=14.8), 2.22(m, 1H), 1.64(m, 1H).XRPDパターンを
図10に示し、TGA曲線とDSC曲線を重ねて
図11に示す。
【0102】
[比較例2]
(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの無定形モノ塩酸塩の合成
結晶性モノ塩酸塩(2.09g)のサンプルを水(250ml、120vol)に溶解し、ろ過し、-78℃浴中で凍結させた。凍結乾燥機を用いて、固化したサンプルから水を110時間かけて除去して無定形モノ塩酸塩を綿毛状黄色固体として得た。これは、XRPD分析により無定形であることが確認された。
【0103】
テスト
結晶性モノ塩酸塩の安定性を判定するために、塩のβ異性体含量をHPLC-UV分析で測定し、その塩を琥珀色のガラスバイアル中に周囲条件で約75日間貯蔵した後、算出したβ異性体含量と比較した。結果を以下の表1に示す。収集したデータによって証明されるように、β異性体含量は経時的に増大しておらず、したがって、貯蔵は結晶性モノ塩酸塩の化学的純度に悪影響を及ぼさなかった。
【表1】
【0104】
結晶性モノ塩酸塩の他のサンプルをHPLC-UVで分析したところ、合成プロセスにおける変動が小さいため、0日目での純度は93.8%(3.5%β異性体)及び95.8%(3.4%β異性体)であることが分かった。貯蔵後でのこれらのサンプルについての化学的純度はテストしなかった。
【0105】
安定性のさらなる証拠が、0日目、及び再度約40℃、約75%RHで約6カ月間貯蔵した後のHPLC-UVによる結晶性モノ塩酸塩の総不純物含量の分析により実証された。それぞれ4ピーク面積%及び6ピーク面積%であることが分かった。
【0106】
比較例1の安定性について実施したテストにおいて、約40℃、約75%RHでちょうど48時間貯蔵した後、β異性体含量は、0日目での3.6ピーク面積%から31.7ピーク面積%に増大した。約25℃、約60%RHで36日間貯蔵した後、β異性体含量は8.7ピーク面積%と算出された。別のテストでは、比較例1の化合物は、0日目で4.2ピーク面積%、約40℃、約75%RHで約2日間貯蔵した後に34.6ピーク面積%の総不純物含量を有していた。したがって、比較例1はずっと高い総不純物含量の増大を示しており、結晶性モノ塩酸塩より大幅に不安定であった。
【0107】
比較例2のβ異性体含量をやはり0日目でHPLC-UV分析により測定し、化合物を周囲条件で約75日間透明ガラスバイアル中に貯蔵した後に算出されたβ異性体含量と比較した。結果を以下の表2に示す。データによって証明されるように、75日間貯蔵した後、β異性体含量は80%増大した。したがって貯蔵は比較例2の化学的純度に悪影響を及ぼした。
【表2】
【0108】
結晶性モノ塩酸塩の安定性を、比較例2の無定形モノ塩酸塩と比較した。結晶性モノ塩酸塩及び比較例2の有利な点及び不利な点を実証する種々のテスト結果を以下の表3に示す。
【表3】
【0109】
HPLC-UV及びXRPD分析を、結晶性モノ塩酸塩、結晶性メシル酸塩及び結晶性硫酸塩の0日目、及び40℃、75%RHで7日間貯蔵した後のサンプルについて実施した。
図1、
図4及び
図7は、0日目、及び40℃、75%RHで貯蔵した後での結晶性モノ塩酸塩、結晶性メシル酸塩及び結晶性硫酸塩のXRPD分析を、比較のため重ね合せたグラフで示す。
図1に示すように、結晶性モノ塩酸塩は、貯蔵した後の結晶形態の変化を示さなかった。
図4に示すように、結晶性メシル酸塩もやはり貯蔵した後の結晶形態の変化を示さなかった。図で示した変化は、存在する場合、結晶形態の変化を示唆するピーク位置ではなく、強度及び分離度の変化である。したがって、
図1及び
図4に示すように結晶性モノ塩酸塩及び結晶性メシル酸塩は物理的に安定である。
図7に示すように、結晶性硫酸塩は、貯蔵した後、結晶含量の増大を示している。
【0110】
結晶性メシル酸塩及び結晶性硫酸塩の同じサンプルについてのHPLC-UV分析の結果を表4に示す。貯蔵した後β異性体含量は増大していないので、これらの塩は、貯蔵によって悪影響を及ぼされてはいなかった。
【表4】
【0111】
さらに、合成後の結晶性モノ塩酸塩、結晶性メシル酸塩及び結晶性硫酸塩の示差走査熱量測定(DSC)及び熱重量(TGA)分析を実施した。DSC曲線を
図2、
図5及び
図8に示し、TGA曲線を
図3、
図6及び
図9に示す。これらの図は、DSC分析により、塩の劣化まで事象が存在しないことを示しており、したがって高温での塩の安定性が認められる。TGA曲線は、水和物も溶媒和物も存在しなかったことを示している。観察された見掛けの重量損失は、装置の不安定性に起因するものである。
【0112】
以下の表5は、本発明の結晶塩のDSC及びTGA分析と、結晶性遊離塩基及び比較例1のDSC及びTGA分析とを比較するものである。
【表5】
【0113】
したがって、結晶性モノ塩酸塩、結晶性メシル酸塩及び結晶性硫酸塩は、結晶性遊離塩基及び比較例1より安定である。
【0114】
抗菌活性
結晶性モノ塩酸塩の抗菌活性を、抗嫌気活性、本明細書で詳述する作用機序及びインビボでの効能試験にしたがって評価した。テストする前にその化合物は溶液中に入るので、これらの試験用のサンプルを調製するために(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの無定形ビス塩酸塩又は結晶性モノ塩酸塩のいずれを使用しても、効能データがすべての塩形態について同じとなることは当業界において十分理解されている。したがって、(4S,4aS,5aR,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-7-[(メトキシ(メチル)アミノ)-メチル]-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミドの結晶性モノ塩酸塩又は無定形ビス塩酸塩のいずれでスタートしても、テストされるものは、遊離塩基(上記に定義したように;本明細書では「活性体」)である。
【0115】
以下の試験のため、サンプルをビス塩酸塩で調製し、データを、遊離塩基(「活性体」)をベースにして表した。結晶性モノ塩酸塩の総括的な抗嫌気性微生物活性は、嫌気性細菌の37の代表的菌株に対する活性体のインビトロでの試験によって見ることができ、その結果を表6にまとめる。この活性体は、P.アクネスを含むグラム陽性菌の多くの種に対して、比較的強力な活性(すなわち、4μg/mL以下の最小阻害濃度(MIC))を示した。全体として、活性体の活性は、テトラサイクリン及びドキシサイクリンの活性と類似していたが、ミノサイクリンの活性より小さかった。活性体について高いMIC値(MIC≧16μg/mL)を有する生物体には、ウェルシュ菌(C.perfringens)及びS.コンステラタス(S.constellatus)が含まれる。
【0116】
グラム陰性の嫌気性生物についてのMIC値を表6に示す。テトラサイクリン耐性菌株は、活性体に対して交差耐性を示した。活性体及び他のテトラサイクリンは、E.コロデンス(E.corrodens)及びフゾバクテリウム属(Fusobacterium spp.)に対して強力な活性を示し、P.メラニノゲニカ(P.melaninogenica)(2菌株のうちの一つ)及びV.パルビュラ(V.parvula)に対して中程度の活性を示し、P.アサカロリティカ(P.asaccharolytica)に対して弱い活性を示した。
【表6】
【0117】
活性の抗菌スペクトル
活性体の活性の抗菌スペクトルの評価を、様々なグラム陽性及びグラム陰性の好気性及び嫌気性生物体についてのインビトロでのMIC判定法によりいくつかの試験で判定した。これらのアッセイの結果(表7にまとめる)は、活性体が、プロピオニバクテリウム(propionibacterium)及び臨床上用いられるテトラサイクリンより狭い活性スペクトルを有する他のグラム陽性生物体に対して、活性を示すことを表している。テトラサイクリンに耐性のある菌株は、活性体に交差耐性を示す。各生物体群についての活性を、表に続く本文において論じる。
【表7】
【0118】
プロピオニバクテリウムに対する活性体のインビトロでの抗菌活性
尋常性座瘡病原体P.アクネスに対する活性体のインビトロでの抗菌活性を、嫌気性生物のための臨床検査標準化協会(Clinical and Laboratory Standards Institute)(CLSI)承認の寒天希釈法を用いて評価した。感受性テストを、いくつかのマクロライド耐性菌株を含むP.アクネスのスクリーニングパネルに対するMICを測定することによって実施した。活性体について測定した値を、臨床上用いられる座瘡治療剤、ドキシサイクリン及びミノサイクリンを含むテトラサイクリンの部類の抗生物質の類似のメンバーと比較した(表7)。13のテトラサイクリン感受性P.アクネスのパネルに対して、活性体はドキシサイクリン及びミノサイクリンに匹敵するMICを示した。
【0119】
拡大試験において、活性体を、いくつかのテトラサイクリンコンパレータ(表7)と一緒に、プロピオニバクテリウムの62の最近の臨床分離株に対してテストした。過去3年以内に得た26の分離株を含む過去7年以内に単離されたP.アクネスの55の菌株に対して、活性体は、ドキシサイクリンと同様の活性を示した。
【0120】
ブドウ球菌(Staphylococci)に対する活性体のインビトロでの抗菌活性
黄色ブドウ球菌(S.aureus)の30の菌株を、活性体(表7)及び従来型のテトラサイクリン類(テトラサイクリン、ドキシサイクリン及びミノサイクリン)に対してテストした。公知の耐性機序、リボゾーム保護及び能動排出を有する基準株(Typed strain)を含めた。活性は可変であり、ドキシサイクリン及びミノサイクリンと比較した。
【0121】
連鎖球菌(Streptococci)に対する活性体のインビトロでの抗菌活性
連鎖球菌(それぞれ10の化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)、S.アガラクティエ(S.agalactiae)及び肺炎球菌(S.pneumoniae))の30の菌株を、活性体及び従来型のテトラサイクリン類(テトラサイクリン、ドキシサイクリン及びミノサイクリン)に対してテストした。tetM又はtetOによって媒介されるリボゾーム保護を特徴とする、テトラサイクリン及びミノサイクリンに対して公知の耐性を有する基準株を含めた。ブドウ球菌と同様に、MIC範囲及びMIC90値(表7)は、ミノサイクリンとドキシサイクリンに最も近接していた。活性体は、化膿性連鎖球菌の感受性菌株に対して良好な活性を示し、MICはドキシサイクリン及びミノサイクリンに匹敵していた。
【0122】
活性体はS.アガラクティエについて二峰性分布のMIC値を示し、7菌株は0.25μg/mL以下で阻害され、その分離株の残りは、阻害のために16~32μg/mLを必要とした。高いMIC値は、テトラサイクリンに対する耐性に追随するものであった。活性体についてのMIC50及びMIC90値は、ドキシサイクリン及びミノサイクリンの値と同様であったが、テトラサイクリンの値より小さかった。
【0123】
活性体は、PSSPに対して強力な活性を示し、3菌株を除くすべてが0.25μg/mL以下で阻害された。高いMIC値は、テトラサイクリンに対する耐性に追随するものであった。活性は、テトラサイクリン、ドキシサイクリン及びミノサイクリンの活性と同様であった。
【0124】
活性体は、化膿性連鎖球菌に対して強力な活性を示し、6菌株を除くすべてが0.25μg/mL以下で阻害された。高いMIC(≧4μg/mL)が、テトラサイクリンに対する耐性に追随する5菌株について観察された。活性体についてのMIC90値は、ドキシサイクリン及びミノサイクリンの値と同様であったが、テトラサイクリンの値より小さかった。
【0125】
活性体は、グループCの連鎖球菌について二峰性分布のMIC値を示し、19菌株は0.25μg/mL以下で阻害され、その分離株の残りは、阻害のために4~16μg/mLを必要とした。高いMIC値は、テトラサイクリンに対する耐性に追随するものであった。活性体についてのMIC50及びMIC90値は、テトラサイクリンの値と同様であったが、ドキシサイクリン及びミノサイクリンの値より大きかった。
【0126】
腸球菌(Enterococci)に対する活性体のインビトロでの抗菌活性
十分に特性評価されている11のテトラサイクリン耐性菌株を含む20の腸球菌株(それぞれ10のフェカリス菌(E.faecalis)及びフェシウム菌(E.faecium))を、活性体及び従来型のテトラサイクリン類(テトラサイクリン、ドキシサイクリン及びミノサイクリン)に対してテストした(表7)。ブドウ球菌とは異なり、活性体は、どのテトラサイクリン耐性菌株に対しても、排出(tetK又はtetLによって媒介される)又はリボゾーム保護(tetM又はtetO)により活性ではなかった。活性体は、フェカリス菌及びフェシウム菌のテトラサイクリン感受性菌株に対して活性を示した。これはドキシサイクリンのそれに匹敵していた。
【0127】
活性体は、バンコマイシン感受性フェカリス菌について二峰性分布のMIC値を示し、8菌株は0.5μg/mL以下で阻害され、その分離株の残りは、阻害のために16~32μg/mLを必要とした。高いMIC値は、テトラサイクリンに対する耐性に追随するものであった。活性体についてのMIC50及びMIC90値は、テトラサイクリンの値と同様であり、ドキシサイクリン及びミノサイクリンより大きかった。
【0128】
活性体は、バンコマイシン感受性フェシウム菌についても二峰性分布のMIC値を示し、17菌株は0.5μg/mL以下で阻害され、その分離株の残りは、阻害のために16~32μg/mLを必要とした。高いMIC値は、テトラサイクリンに対する耐性に追随するものであった。活性体についてのMIC50及びMIC90値は、ドキシサイクリン及びミノサイクリンの値と同様であり、MIC90値はテトラサイクリンの値より小さかった。
【0129】
活性体は、バンコマイシン耐性フェシウム菌について広い範囲のMIC値を示した。高いMIC値は、テトラサイクリンに対する耐性に追随するものであった。活性体についてのMIC50値は、テトラサイクリン及びドキシサイクリンの値と同様であり、ミノサイクリンの値より8倍大きかった。活性体についてのMIC90値は、テトラサイクリンの値より小さく、ドキシサイクリン及びミノサイクリンの値より大きかった。高い割合の菌株が、テスト作用剤の残りに対して耐性を示した。
【0130】
グラム陰性菌に対するインビトロでの抗菌活性
大腸菌(E.coli)の七つのテトラサイクリン感受性菌株に対して、活性体は、インビトロでドキシサイクリン及びミノサイクリンより活性は低かった(表7)。活性体について、肺炎桿菌(K.pneumoniae)のテトラサイクリン感受性菌株に対してさらに低い活性が観察された。対照的に、ドキシサイクリン及びミノサイクリンは、これらの生物体に対して活性体より高い活性を示した。予想されたように、活性体について、tetB又はtetDによって媒介される活性体排出を示す六つのテトラサイクリン耐性菌株に対して活性は観察されなかった。
【0131】
活性体は一般にE.クロアカエ(E.cloacae)に対して活性は低かったが、少数の菌株(30のうち七つ)は1μg/mL以下で阻害された。MIC50値は、他のテトラサイクリンの値より16~32倍大きかった。活性体についてのMIC90値はテトラサイクリンと同じであり、ドキシサイクリン又はミノサイクリンの値より大きかった。
【0132】
活性体は、大腸菌に対して、テトラサイクリンのうちで最も活性の小さいものであり、それぞれ16及び>64μg/mLのMIC50及びMIC90値であった。活性体は、肺炎桿菌に対して、テトラサイクリンのうちでの最も活性の小さいものであった。活性体は一般にサルモネラ属(Salmonella spp.)に対して活性は低く、テトラサイクリンのうちでの最も活性の小さいものであった。
【0133】
作用機序
以下の試験のため、ビス塩酸塩でサンプルを調製し、データを、遊離塩基(「活性体」)をベースにして表した。結晶性モノ塩酸塩の作用機序を、以下で説明するように、活性体の試験を介した異なる二つのアプローチにより測定した。
【0134】
第1のアプローチでは、抗菌性の作用機序:細菌の転写及び翻訳のインビトロでの阻害、活性体が細菌のタンパク質合成を阻害する能力を、インビトロでの無細胞の細菌転写及び翻訳アッセイ(Promega Corporation、Madison、WIから市販されている)(Beckler、G.、Promega Notes 31(1991)3~6頁)を用いて評価した。活性体は、レポータータンパク質の合成を8.3±0.18μMのIC50で阻害した。この値は、コンパレータテトラサイクリン、ドキシサイクリン及びミノサイクリンについて測定したIC50値に匹敵していた(それぞれ4.7±0.48及び2.4±0.22μMのIC50値)。これらの結果は、細菌のタンパク質合成を阻害することによって、活性体が古典的なテトラサイクリンとして機能するという証拠を提供している。
【0135】
第2のアプローチでは、抗菌性の作用機序:黄色ブドウ球菌における巨大分子合成の阻害、活性体が細菌のタンパク質合成を標的とする能力を、グラム陽性生物体、黄色ブドウ球菌における巨大分子合成の全細胞アッセイにおいてさらに確認した。活性体は、用量依存的な仕方で、成長期の生物体のタンパク質中への[3H]ロイシンの取り込みを、MICの0.25~8倍(0.063~2μg/mL)の濃度範囲内で阻害した。80%の最大阻害率は、MICの8倍で観察された。これは、テトラサイクリンコンパレータのドキシサイクリン及びミノサイクリンについて得られた値に匹敵していた。対照的に、活性体はMICの8倍で、テスト細菌の細胞壁、DNA、RNA及び脂質成分の合成について20%未満の阻害率を示した。この試験の結果は、活性体が、公知のテトラサイクリンに匹敵する濃度で、細菌のタンパク質合成の選択的阻害剤として作用することを示している。
【0136】
上述したインビトロでの感受性試験には、特徴的なテトラサイクリン耐性遺伝子を有するテトラサイクリン耐性菌株を含めた。菌株は、最も一般的なテトラサイクリン耐性遺伝子:排出(tetK、tet38、tetL、tetS、tetB及びtetD)、リボゾーム保護(tetM及びtetO)を有する菌株並びにrRNA点変異により耐性を有するP.アクネスを選択した。これらの選択された菌株についてのMIC値は、表8に示すように、活性体と他のテトラサイクリンとの間である程度の交差耐性を示した。テトラサイクリン耐性遺伝子の存在は、感受性菌株に対して活性体のMICを増大させた(黄色ブドウ球菌におけるtetKを例外として)。MIC値はドキシサイクリン及び/又はミノサイクリンの値と同様であったが、一般にテトラサイクリンの値より小さかった。
【表8】
【0137】
感染症の動物モデル
以下の試験のため、サンプルをビス塩酸塩で調製し、データを、遊離塩基(「活性体」)をベースにして表した。インビボでの効能試験を、活性体を用いて、三つの別個の動物感染症モデル及び一つの炎症モデルで実施した。活性体に匹敵する活性を有することによって、試験は:1)P.アクネスと類似したインビトロでの感受性を有する代表的なグラム陽性病原体に対する、他の市販のテトラサイクリン座瘡医薬品(ドキシサイクリン及びミノサイクリン)と比較した結晶性モノ塩酸塩の抗感染効能;及び2)結晶性モノ塩酸塩の抗炎症活性を示す。
【0138】
コンパレータを、滅菌水のビヒクル中に10mg/mLの濃度で投与し、その活性部分のパーセントについて補正した。大腿創傷及びラット足蹠浮腫試験を除くすべての試験をCD-1雄マウスで実施した。大腿創傷モデルを、CD-1雌マウスを用いて実施し、ラット足蹠浮腫試験をSD雄ラットで実施した。
【0139】
表9は、活性体の効能を評価する以下の三つの試験により集めたデータを示す。
【0140】
第1の試験において、黄色ブドウ球菌の全身性腹腔内負荷(IPC)モデルで活性体を評価した。目的は、急性感染モデルで、尋常性座瘡のための市販のテトラサイクリン処置と比較して、グラム陽性生物体に対する活性体のインビボでの活性を評価するためであった。細菌培養物は、テトラサイクリン感受性黄色ブドウ球菌RN450-1を終夜成長させ、次いで滅菌したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈して調製した。各実験のため、合計30匹のマウスを、5%の滅菌した細菌学用ムチン中の500μlの7.5×107CFUで腹腔内腔に注射して感染させた。各5匹のマウスの4~5治療群を、滅菌水中に0.01~0.5mg/kgの範囲の用量で、活性体、ドキシサイクリン及び/又はミノサイクリンの単回注射によって処置した。これらの用量を感染後1時間で、皮下(SC)投与した。5匹のマウスの追加的な感染群を陰性対照(未処置)群として含めた。一つを除くすべての試験について、陽性対照群(複数可)(例えば、ドキシサイクリン、ミノサイクリン又はシプロフロキサシン)を含めた。マウスを、生存について最大で7日間監視した。効能を、感染後48時間でのPD50を計算して決定した。PD50(保護用量、50%)は50%の生存を達成するのに必要な用量である。報告したPD50値は、各テスト薬物についての二つ~三つの独立した実験の平均値である。
【0141】
活性体は、黄色ブドウ球菌RN450-1に対して0.25mg/kgのPD50をもたらす強力な活性を示し、代表的なグラム陽性病原体に対してドキシサイクリンと同様の活性を示した。
【0142】
第2の試験である黄色ブドウ球菌大腿創傷感染症モデルにおける活性体の効能を、代表的なグラム陽性感染症に対する活性体の活性を組織ベースの感染症モデルで調べた。活性体の効能を、免疫低下マウスの大腿創傷モデルで黄色ブドウ球菌RN450-1に対して試験した。合計40匹のマウス(群当たりn=4~8匹のマウス)を、感染4日前(150mg/kg)と感染1日前(100mg/kg)でのシクロホスファミド処置により、好中球減少の状態にした。細菌培養物は、黄色ブドウ球菌RN450-1を終夜成長させ、滅菌PBSで希釈して調製した。100μLの滅菌PBS中の約1×106CFU/mLの注射液を大腿部に注射した。各薬物について四つの群のマウスに、感染後2及び6時間で静脈内に0.33、1、3又は9mg/kgの用量で施した。未処置マウスの追加の群は、陰性対照群としての目的を果たした。感染後24時間で、大腿部を無菌で採取し、ホモジナイズしプレーティングして大腿部当たりの菌量を数えた。データをED50値として報告した。ED50(有効用量、50%)は、未処置対照と比較して、標的臓器における細菌負荷(コロニー形成単位[CFU]/全臓器)の2 log10の減少を達成するのに必要な用量である。
【0143】
表9に示すように、活性体は、黄色ブドウ球菌大腿創傷モデルにおいて、尋常性座瘡のために一般に用いられる処置であるドキシサイクリンと同等の効能を示した。
【0144】
第3の試験、急性肺炎球菌呼吸気道感染症(RTI)モデルにおける活性体の効能は、ドキシサイクリンと比較して、追加の組織ベースの感染症モデルにおいて活性体の活性を示した。活性体及びドキシサイクリンを、免疫低下マウスにおいて、肺炎球菌誘発急性肺炎に対して独立にテストした。各実験において、35匹のマウスを、感染4日前(150mg/kg)と感染1日前(100mg/kg)でのシクロホスファミドの腹腔内(IP)注射により、好中球減少の状態にした。テトラサイクリン感受性肺炎球菌PBS1339をプレート上で終夜成長させ、コロニーを収集し、滅菌PBSに再懸濁させた。マウスを、約6×106CFU/マウスを含む50μLのこの細菌懸濁液で鼻腔内感染させた。感染後2時間でそれぞれ5匹からなる4~5群のマウスを、滅菌水に溶解した5(活性体のみ)、10、20、40又は80mg/kgで、活性体又はドキシサイクリンの単一の静脈内(IV)投与により処置した。各試験は、未処置対照群及び陽性対照化合物(例えば、20mg/kg IVでバンコマイシン)を施された群も含んだ。効能を、感染後72時間でのPD50を計算することによって決定した。
【0145】
活性体の単一のIV投与は、4.66mg/kgのPD
50での好中球減少性、致死性肺炎球菌RTIモデルにおいて活性を示した(表9に示すように)。この用量は、ドキシサイクリンについてPD
50を達成するのに必要な7.18mg/kg用量より若干低かった。活性体は、この追加の組織ベースの感染症モデルにおいて、ドキシサイクリンの活性に匹敵する又はそれより若干良好な活性を示した。
【表9】
【0146】
試験、ラットカラゲニン誘発足蹠浮腫の炎症モデルにおけるインビボでの活性体の効能を実施して、ミノサイクリン及びドキシサイクリンと比較した活性体の抗炎症性の特性を評価した。3~8匹のラットの群に、後足において、炎症性カラゲニン溶液(1mg/100μL)の注射の5分前に活性体、ドキシサイクリン、ミノサイクリン及び/又は生理食塩水対照をIP注射した。各試験は、生理食塩水処置した対照群(3~8匹のラット/群)も含んだ。活性体を、5、10、25、50、75、100又は150mg/kgでテストした。ミノサイクリンを、25、50、75又は100mg/kgでテストし、ドキシサイクリンを75及び100mg/kgでテストした。カラゲニン注射の直後及び注射後3時間で、後足の容積を、デジタル水式容積測定装置で測定した。結果を、3時間にわたる足容積を基準の足容積で除したパーセント変化として計算し、次いで未処置対照での平均炎症パーセントについて補正し、これを表10に示す。活性体、ドキシサイクリン及びミノサイクリンはどれも、テストしたすべての用量で抗炎症活性を示した。活性体は、炎症の標準動物モデルにおいて、尋常性座瘡の治療において一般に使用される他の市販のテトラサイクリンに匹敵する抗炎症活性を示した。
【表10】
【0147】
本明細書で開示した好ましい実施形態の多くの改変形態、修正形態及び変更形態は当業者に明らかであろう。それらはすべて、本発明の特許請求の趣旨及び範囲内であると予想され且つ考えられる。例えば、特定の実施形態を詳細に説明してきたが、当業者は、種々のタイプの置換、追加又は代替の材料を取り込むために、先行する実施形態及び変更形態を修正できることを理解されよう。したがって、本発明の変更形態の僅かだけが本明細書で説明されているが、そうした追加の修正形態及び変更形態並びにその均等形態の実践は、以下の特許請求の範囲で定義されるような本発明の趣旨及び範囲内にあることを理解すべきである。本明細書で引用したすべての特許出願、特許及び他の印刷物をその全体として参照により本明細書に組み込む。