(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093538
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】放射線療法と併用されるPD-1およびPD-L1に対する拮抗薬を用いたがんの治療法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20230627BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230627BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230627BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230627BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20230627BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20230627BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230627BHJP
A61K 41/00 20200101ALI20230627BHJP
A61N 5/10 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P17/00
A61P1/00
A61P15/00
A61K39/395 N
A61K39/395 U
A61K41/00
A61N5/10 Z
【審査請求】有
【請求項の数】40
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061117
(22)【出願日】2023-04-05
(62)【分割の表示】P 2021171547の分割
【原出願日】2015-06-17
(31)【優先権主張番号】62/013,157
(32)【優先日】2014-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506042265
【氏名又は名称】メディミューン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドベディ,シモン
(72)【発明者】
【氏名】イリッジ,ティム
(72)【発明者】
【氏名】スチュワート,ロス
(72)【発明者】
【氏名】マロー,ミッシェル
(72)【発明者】
【氏名】ウィルキンソン,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ポーン,エドモンド
(57)【要約】 (修正有)
【課題】がんに罹患している患者に最大の利益をもたらす、放射線療法とPD-1および/またはPD-L1拮抗薬を組み合わせた治療法を提供する。
【解決手段】少なくとも1用量の放射線療法を投与するステップと、少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬を投与するステップとを含み、少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬が、放射線療法の投与と同日にまたは4日後までに投与される、患者においてがんを治療する方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.少なくとも1用量の放射線療法を投与するステップと;
b.少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬を投与するステップとを含み、少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬が、放射線療法の投与と同日にまたは4日後までに投与される、患者においてがんを治療する方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬が、少なくとも1つのPD-1および/もしくはPD-L1抗体またはその機能性部分である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
放射線療法の前記用量が約70Gy以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
放射線療法の前記用量が約50Gy以下である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記放射線療法が分割放射線療法である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記分割放射線療法が、2~7回の分割量を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記分割放射線療法が、5回の分割量を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記分割放射線療法が、連日投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記分割放射線療法が、1日目、2日目、3日目、4日目、および5日目に投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記放射線療法が、5回の分割量で約70Gyを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬が、1日目に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬が、5日目に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬が、複数回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬が、週に3回投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抗PD-1および/もしくはPD-L1抗体またはその機能性部分がMEDI4736である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記抗PD-1および/もしくは抗PD-L1抗体またはその機能性部分が、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、BMS-936558、AMP-224、またはMPDL3280Aである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記がんが、メラノーマ、結腸直腸がん、または乳がんである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
2回以上の治療周期が実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
2~8回の治療周期が実施される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記治療周期が、毎週または隔週である、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、その内容全体が参照により援用される、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含む。前記ASCIIコピーは、2015年6月16日に作成され、B7H1-275WO1_SL.txtと命名され、サイズは103,313バイトである。
【0002】
分野
がんの治療法。
【背景技術】
【0003】
放射線療法(RT)は、依然として、固形悪性腫瘍の管理における最重要な非外科治療であり、全てのがん患者の50~60%前後がこの治療を受ける。治療計画へのRTの組み入れは、一般的がんの大多数で疾患再発を低下させ、全生存期間を改善する(1~3)。効果的ではあるが、多くの患者は、局所性再発と転移性疾患の問題を抱えている。
【0004】
RTの直接的細胞減少効果に加えて、新たに出現した証拠は、抗腫瘍免疫応答の発生が、この治療の有効性に重要な役割を果たしてもよいことを提案する(4,5)。RTは、腫瘍細胞上のエクト-カルレティキュリンの発現、ならびに高移動度群ボックス1(HMGB1)およびATPをはじめとするいくつかの障害関連分子パターン(DAMP)の放出をもたらし得て、それは抗原提示細胞(APC)の動員と活性化、そして腫瘍抗原特異的T細胞応答のプライミングをもたらし得る(6~10)。これにもかかわらず免疫逃避免が頻発し、腫瘍再発は、RTを受けた患者の死亡率の主要原因のままである(11)。免疫抑制の主要駆動機構同定および阻害は、抗腫瘍免疫応答を増強してもよく、患者転帰を改善する可能性がある。
【0005】
したがって治療の失敗に関する新しい洞察と、より効果的なRT組み合わせのアプローチが緊急に必要である。
【0006】
プログラム死1(PD-1)/プログラム死リガンド1(PD-L1)系は、T細胞機能阻害および活性化T細胞のアポトーシスを通じて、末梢性免疫寛容の維持および急性炎症性応答の調節に関与する(12,13)。結合PD-1に加えて、PD-L1もまた、CD80との相互作用を通じてT細胞機能を抑制し得る(14)。PD-L1の発現は誘導性であり、局所炎症性環境、特にI型およびIIインターフェロン(IFN)に応答すると考えられる(12,15,16)。大部分の正常組織ではほとんど検出不能であるが、PD-L1の発現が複数の悪性腫瘍で記載されている(概説(17))。重要なことには、PD-1またはPD-L1標的化モノクローナル抗体(mAb)のどちらかを用いた最近の臨床試験が、進行した疾患がある患者において有望な応答を実証している(18~21)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
がんに罹患している患者に最大の利益をもたらす、放射線療法とPD-1および/またはPD-L1拮抗薬を組み合わせた投与ストラテジーが所望される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
説明に従って、患者においてがんを治療する方法は、
a.少なくとも1用量の放射線療法を投与するステップと;
b.少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬を投与するステップと
を含んでなり、少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬は、放射線療法の投与と同日にまたは4日後までに投与される。
【0009】
別の様式では、少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬は、少なくとも1つのPD-1および/もしくはPD-L1抗体またはその機能性部分である。
【0010】
一態様では、放射線療法は分割放射線療法である。一様式では、分割放射線療法は2~7回の分割量(fraction)を含んでなる。別の様式では、分割放射線療法は5回の分割量を含んでなる。
【0011】
一実施形態では、放射線療法分割量は連日投与される。別の実施形態では、放射線療法分割量は、1日目、2日目、3日目、4日目、および5日目に投与される。一実施形態では、放射線療法は、5回の分割量で約10Gyを含む。
【0012】
一態様では、少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬は、少なくとも1日目および/または5日目に投与される。一様式では、少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬は、複数回投与される。例えば、少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬は、週に3回投与されてもよい。
【0013】
一実施形態では、抗PD-1および/もしくはPD-L1抗体またはその機能性部分一部は、MEDI4736である。
【0014】
別の実施形態では、抗PD-1および/もしくは抗PD-L1抗体またはその機能性部分は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、BMS-936558、AMP-224、またはMPDL3280Aである。
【0015】
一態様では、がんは、メラノーマ、結腸直腸がん、または乳がんである。別の態様では、2回以上の治療周期が実施される。さらなる態様では、2~8回の治療周期が実施される。一様式では、治療周期は毎週または隔週である。
【0016】
追加的な目的および利点は、一部は続く説明に記載され、一部は説明から明白であり、または実施によって習得されてもよい。目的および利点は、特に添付の特許請求の範囲で指摘される、構成要素および組み合わせの手段によって実現化され達成される。
【0017】
上述の一般的な説明および以下に述べる詳細な説明は、どちらも具体例であって、例示だけを目的としており、特許請求の範囲の限定を意図するものではない。
【0018】
本明細書に組み込まれてその一部を構成する添付図面は、1つの(いくつかの)実施形態を例証し、記述と共に、本明細書に記載される原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1A-Fは、分割放射線療法の活性を増強する、PD-1/PD-L1系の遮断を例証する。AおよびBは、2Gyの1日分割量5回での約10Gyによる処置の1、3または7日後に、腫瘍から単離されたCT26細胞上における、PD-L1発現の中央値蛍光強度(A)、および典型的なヒストグラム(B)である。CおよびDは、単独で、または10mg/kg 3qwで最高3週間投与されるαPD-1(C)またはαPD-L1(D)mAbのどちらかとの併用で、2Gyの1日分割量5回で送達される約10Gy RTを投与された、CT26腫瘍を有するマウスである。Eは、単独で、またはαPD-L1 mAbとの併用で、4Gyの1日分割量5回で送達される20Gy RTを投与された、4T1腫瘍を有するマウスにおける治療開始10日後の腫瘍体積である。Fは、単独で、またはαPD-L1 mAbとの併用で、2Gyの1日分割量5回で送達される約10Gy RTを投与された、443腫瘍を有するマウスである。実験群は、少なくとも7匹のマウスを含み、少なくとも2つの独立した実験を代表する。A、EおよびFは、平均値±SEMを示す。
*、P<0.05
**、P<0.01、マンホイットニー検定。CおよびD、
*、対照マウスと比較した有意性を示す。
+、単剤療法と比較した有意性を示す。
***/+++、P<0.001、ログランク(マンテル・コックス)検定。
【
図2】
図2A-Cは、分割RTおよびαPD-L1 mAb組み合わせの治療活性が、CD8+Tリンパ球の活性に依存することを示す。Aは、5回の2GyとαPD-L1 mAbとの併用療法の7日および11日後における腫瘍体積である。免疫細胞サブセット(CD8、CD4またはNK細胞のいずれか)は、治療法の1日前に枯渇され、枯渇は2週間にわたり維持された。
***、P>0.001、
*、P>0.01、
*、P>0.05、マンホイットニー検定。B、生存曲線。
***/+++、P<0.001、ログランク(マンテル・コックス)検定。コホートあたり10匹のマウスを代表するデータ。Cは、免疫細胞サブセットの枯渇を裏付ける、末梢血の典型的な密度プロットである。
【
図3】
図3A-Cは、分割RTおよびαPD-L1 mAbの組み合わせが、保護的免疫記憶を生じることを示す。Aは、5×10
5個のCT26細胞の対側性再チャレンジに続く、LTSマウスの生存曲線である。
*P<0.05対照マウスとの比較(ログランク;マンテル・コックス検定)。Bは、腫瘍未感作、または最初にRTおよびαPD-L1 mAbで処置されたLTSマウスのどちらかから単離された、CD8
+T細胞によるIFNγ生産の典型的なドットブロットである。Cは、H2-Ld拘束性ペプチド(AH1(SPSYVYHQF)(配列番号91);規定のCT26腫瘍関連抗原またはβ-ガラクトシダーゼ(TPHPARIGL)(配列番号92);原核生物起源の対照ペプチド)、または5日間にわたり50Gyを照射されたCT26細胞のいずれかとの共培養と、それに続く50Gy照射されたCT26細胞によるプライミングに続いて、腫瘍未感作、または最初にRTおよびαPD-L1 mAbで処置されたLTSマウスのどちらかから単離された、IFNγ
+CD8
+T細胞の出現頻度である。
*P<0.05(マンホイットニー検定)。2つの独立した実験データを代表するデータ。
【
図4】
図4A-Cは、分割RTが、生体内で腫瘍細胞PD-L1発現を増大させ、CD8
+T細胞に依存することを例証する。Aは、生体外RT(2.5~10Gy)による処置後における、CT26細胞上のPD-L1の発現である。BおよびCは、CD8、CD4またはNK細胞枯渇抗体のいずれかとの併用で、2Gyの1日分割量5回で約10Gyを投与された3日後に腫瘍から単離された、(CD45
-細胞としてゲートされた)CT26細胞上のPD-L1発現の典型的な等高線図(B)および中央値蛍光強度(C)である。
*P<0.05(マンホイットニー検定)。実験群は、少なくとも5匹のマウスを含み、少なくとも2つの独立した実験を代表する。
【
図5】
図5A-Eは、分割RTに続いて、CD8
+T細胞のIFNγ生産が、腫瘍細胞上のPD-L1発現上方制御に関与することを示す。Aは、20ng/mlIFNγ、TNFαのどちらかとのまたは双方のサイトカインとの組み合わせとの24時間にわたる共培養に続く、野生型CT26腫瘍細胞(WT)、または非標的化対照(NTC)またはIFNγR1 ShRNAのどちらかによる形質導入細胞上のPD-L1発現である。Bは、PBSまたはホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)およびイオノマイシンのどちらかによる処置に続く、CD8
+T細胞によるIFNγおよびTNFαbyの発現を示す典型的な密度プロットであり、Cは、PBSまたはPMA/イオノマイシン活性化脾細胞のどちらかとの24時間の共培養に続く、PD-L1陽性CT26腫瘍細胞(WT、NTC ShRNAまたはIFNγR1 ShRNA)の出現頻度である。n/s=P>0.05、
***P<0.001
**P<0.01(両側スチューデントt検定)。DおよびEは、生体内のαIFNγブロッキングmAb(またはアイソタイプ対照)の存在下における、RT(5回の分割量で約10Gy)による処置に続く、CT26腫瘍細胞上のPD-L1発現の典型的な等高線図(D)および中央値蛍光強度(E)である。
**P<0.01(マンホイットニー検定)。実験群は、少なくとも5匹のマウスを含んだ。
【
図6】
図6A-Dは、投与計画が予後に影響することを示し、RT相乗作用は同時αPD-L1 mAb療法のみで観察され、逐次療法では観察されない。Aは、投与日程計画研究のスキーマである。マウスは、RT周期1日目(スケジュールA)、RT周期5日目(スケジュールB)、またはRT最終投与の7日後(スケジュールC)のいずれかに開始して、単独で、またはαPD-L1 mAbとの併用で、(2Gyの1日分割量5回で約10Gyとして)分割RTを投与された。B、治療法の生存曲線。
++、P<0.01単剤療法との比較(ログランク;マンテル・コックス検定)。CおよびDは、RT最終投与の24時間および7日後における、PD-1onCD4
+(C)およびCD8
+(D)T細胞の発現である。
*P<0.05(マンホイットニー検定)。実験群は、少なくとも5匹のマウスを含み、少なくとも2つの独立した実験を代表する。
【
図7】
図7は、PD-1およびPD-L1の双方の遮断が、CT26-腫瘍を有するマウスにおいて、分割RTとの併用で有効性をさらに向上させないことを示す。A)単独で、または3週間にわたり3qw投与されるαPD-1、αPD-L1または双方のmAb組み合わせとの併用で、(2Gyの1日分割量5回で約10Gyとして)分割投与されたRTに続く生存曲線。n/s、P>0.05、ログランク;マンテル・コックス検定。実験群は、少なくとも5匹のマウスを含み、2つの(at 2)独立した実験を代表する。
【
図8】
図8A-Bは、分割RTとαPD-1またはαPD-L1 mAbのどちらかとによる併用療法が、マウスにおいて良好に耐えられたことを示す。単独で、または3週間または1週間のどちらかにわたり10mg/kg 3qwで投与されるαPD-L1 mAbとの併用で、2Gyの1日分割量5回で送達される10Gy RTを投与された、CT26腫瘍を有するマウス。実験群は、少なくとも7匹のマウスを含み、少なくとも2つの独立した実験を代表する。n/s、P>0.05、マンホイットニー検定。
【
図9】
図9A-Cは、生体外において、αPD-1またはαPD-L1 mAbによる腫瘍細胞の治療が、照射誘導細胞死を感作させないことを例証する。2μg/mlのαPD1またはαPD-L1の存在不在下で、RT(2.5-10Gy)で処置された、CT26細胞(A)、4T1細胞(B)、および4434細胞(C)のクローン原性生存曲線。
【
図10】
図10A-Cは、投与計画が、予後に影響することを示す。A)RT周期1日目(スケジュールA)、RT周期5日目(スケジュールB)、またはRT最終投与の7日後(スケジュールC)のいずれかに開始して、単独で、またはαPD-L1 mAbとの併用で、(2Gyの1日分割量5回で10Gyとして)投与された分割RTに続く腫瘍体積。BおよびC)異なる投与スケジュールにわたり、同等の腫瘍体積を示すRT処置マウスの腫瘍体積。n/s、P>0.05、マンホイットニー検定。実験群は、少なくとも5匹のマウスを含み、2つの(at 2)独立した実験を代表する。
【
図11】
図11は、αPD-L1 mAbの急性投与と慢性投与の対比は、併用療法の有効性に影響を及ぼさないことを示す。単独で、または3週間または1週間のどちらかにわたり10mg/kg 3qwで投与されるαPD-L1 mAbとの併用で、2Gyの1日分割量5回で送達される10Gy RTを投与された、CT26腫瘍を有するマウス。実験群は、少なくとも7匹のマウスを含み、少なくとも2つの独立した実験を代表する。n/s、P>0.05、ログランク;マンテル・コックス検定。
【発明を実施するための形態】
【0020】
配列説明
表1は、検討中の実施形態で参照される特定の配列一覧を提供する。CDRは、下線付き太字で示される。
【0021】
【0022】
実施形態の説明
I.治療法
本方法は、少なくとも1用量(one dose)の放射線療法投与と、少なくとも1用量の少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬の投与を用いる、がん治療を包含する。例えば、患者においてがんを治療する方法は、少なくとも1用量の放射線療法を投与するステップと、少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬を投与するステップとを含んでもよく、少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬は、放射線療法の投与と同日にまたは4日後までに投与される。
【0023】
がんを治療する方法は、1回(単回治療周期として)実施されてもよく、またはそれは、毎週、隔週、3週間毎、または毎月の周期などで、1回を超えて(すなわち、複数回治療周期で)実施されてもよい。方法が1回を超えて実施される場合、それは2、3、4、5、6、7、または8回以上実施されてもよい。
【0024】
理論に束縛されるものではない一方で、本発明者らは、確立された同系腫瘍モデルの範囲内で、低用量の分割RTが、生体内で腫瘍細胞のPD-L1発現の上方制御をもたらしたことを発見した。本発明者らは、αPD-1またはαPD-L1 mAbとの併用で送達される分割RTが、効果的な抗腫瘍CD8+応答を生じ、それが、局所性腫瘍制御をおよび長期生存を改善し、腫瘍抗原特異的記憶免疫応答の誘導によって、腫瘍再チャレンジから保護したことを示す。IFNγのCD8+T細胞産生は、分割RTに続く腫瘍細胞上のPD-L1の上方制御に関与することが発見された。さらに、分割RTの送達に対する抗PD-L1 mAbの日程計画は、治療成績に影響を及ぼすようであり;RTと同日のまたは最初の分割RTの投与の4日後までの拮抗薬の投与は、放射線療法終結の7日後を超える拮抗薬の投与に優る利点を示す。そして理論に束縛されるものではない一方で、診療所で慣例的に使用されるような分割RTの低用量に応答する、腫瘍細胞PD-L1発現の上方制御は、腫瘍細胞による適応型免疫学的耐性機序のようであり;したがってPD-L1/PD-1シグナル伝達系は、治療の失敗に潜在的に寄与する。RTとPD-1/PD-L1シグナル伝達系遮断との併用療法は、この耐性を克服する可能性を有するが、本発明者らの前臨床試験によれば、投薬のタイミングは治療結果に影響を及ぼし、診療所への橋渡しに重要で新しい洞察を提供する。
【0025】
A.治療法で使用するためのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬
一実施形態では、本方法で使用するための少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬は、抗PD-1および/もしくは抗PD-L1抗体またはその機能性部分である。
【0026】
少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬は、放射線療法の投与と同日にまたは4日後までに投与される。例えば、一態様では、放射線療法が治療周期の1日目に提供されるのであれば、少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬もまた、治療周期の1日目に投与されてもよい(すなわち、放射線療法投与と同日)。別の態様では、放射線療法治療周期の1日目に提供されるのであれば、少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬が、5日目(すなわち、4日後)に投与される。さらなる態様では、PD-1および/またはPD-L1拮抗薬は、治療周期の1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目および/または7日目に投与されてもよい(単回および複数回治療スケジュールの双方を含む)。
【0027】
一実施形態では、治療周期中に、少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬が複数回投与される。別の実施形態では、少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬が、治療周期中に2、3、4、5回以上投与される。例えば、拮抗薬は、1週間の治療周期にわたり毎週3回投与されてもよく、または上述されるような2以上週間の治療周期にわたり、毎週3回投与されてもよい。
【0028】
一態様では、抗体またはその機能性部分は、これらの抗体およびその機能性部分の教示について参照により援用される、米国特許公開第2010/0028330号明細書で開示されるものから選択される。一実施形態では、抗体は(antibody if)、MEDI4736である。
【0029】
別の実施形態では、抗-PD-1および/または抗-PD-L1抗体は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、BMS-936558、AMP-224、またはMPDL3280Aである。
【0030】
抗体またはその機能性部分は、治療有効量で投与される。通常、治療有効量は、対象の年齢、病状、および性別、ならびに対象の疾患の重症度によって異なってもよい。抗体またはその機能性部分の治療有効量は、約0.001~約30mg/kg体重、約0.01~約25mg/kg体重、約0.1~約20mg/kg体重、または約1~約10mg/kgの範囲にわたる。用量は、観察された治療効果に適するように、必要に応じて調節されてもよい。適切な用量は、治療医師によって、臨床的適応に基づいて選択される。
【0031】
抗体は、ボーラス投与として投与されて、投与後最大時間にわたり抗体の循環レベルが最大化されてもよい。持続注入もまた、ボーラス投与後に使用されてもよい。
【0032】
本明細書の用法では、抗体またはその機能性部分という用語は、最も広い意味で使用される。それは、従来のハイブリドーマ技術、組換え技術によって生成される、モノクローナル抗体(mAb)および/またはそれらの機能性断片などの人造であってもよい。それは、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、単一特異性抗体、二重特異性抗体、多特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、動物抗体(例えば、ラクダ科動物抗体)、キメラ抗体などの未変化の免疫グロブリン分子、ならびに例えば、軽鎖を欠いている免疫グロブリン、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、抗体断片、二特異抗体、Fd、CDR領域、または抗原またはエピトープに結合できる抗体の任意の部分またはペプチド配列などの(酵素的切断、ペプチド合成、または組換え技術などであるが、これに限定されるものではない、任意の周知の技術によって提供される)それらの部分、断片、領域、ペプチド、および誘導体の双方を含んでもよい。一実施形態では、機能性部分は、一本鎖抗体、一本鎖可変断片(scFv)、Fab破片、またはF(ab’)2断片である。
【0033】
抗体または機能性部分は、分子と特異的に反応する能力があり、その結果、分子が抗体に結合すれば、「結合できる」分子と言われる。抗体フラグメントまたは部分は、未変化抗体のFc断片が欠如して、循環からより迅速に除去されてもよく、未変化抗体よりも低い非特異的組織結合を有してもよい。当該技術分野で周知の方法を使用して、未変化抗体から生成されもよい抗体の例は、例えば、(Fab断片を生じる)パパインまたは(F(ab’)2断片を生じる)ペプシンなどの酵素を用いる、タンパク質分解的切断による。抗体部分は、上記方法のいずれかによって生成されてもよく、または組換え分子の一部の発現によって生成されてもよい。例えば、組換え抗体のCDR領域は、単離されて、適切な発現ベクターにサブクローニングされてもよい。
【0034】
一実施形態では、抗体または機能性部分は、ヒト抗体である。ヒトの治療のためのヒト抗体の使用は、非ヒト配列に対する、ヒト個人における免疫学的反応のために、副作用の確率を小さくしてもよい。別の実施形態では、抗体または機能性部分はヒト化される。別の実施形態では、抗体または機能性部分はキメラ抗体である。このようにして、例えば、関心のある結合部位などの関心のある配列は、抗体または機能性部分に包含され得る。
【0035】
一実施形態では、抗体は、IgG、IgA、IgM、またはIgEアイソタイプを有してもよい。一実施形態では、抗体はIgGである。
【0036】
B.治療法で使用される放射線療法
高線量イオン化照射としてもまた知られている放射線療法は、検討中の治療的アプローチの構成要素である。
【0037】
一様式では、放射線療法は分割放射線療法である。一様式では、分割放射線療法は、2~7回の分割量を含んでなる。別の実施形態では、分割放射線療法は、3~6回の分割量を含んでなる。別の実施形態では、分割放射線療法は、4~5回の分割量を含んでなる。一様式では、分割放射線療法は、2、3、4、5、6、または7回の分割量を含んでなる。一実施形態では、分割放射線療法は、5回の分割量を含んでなる。
【0038】
一様式では、放射線療法分割量は、連日投与される。一様式では、放射線療法は、毎日2回以上の投与および/または連日投与を含んでもよい。一様式では、放射線療法分割量は、1日目、2日目、3日目、4日目、および5日目に投与される。別の様式では、放射線療法は、5回の分割量で約10Gyを含む(すなわち、各日2Gyで5日間)。
【0039】
加速分割(より大量に毎日または毎週投与で与えられ、治療週数を短縮させる治療)、過分割(1日に1回を超えて与えられるより小量の放射線投与)、または少分割(1日に1回以下与えられて、多くの場合、治療数を短縮させるより大量の投与)をはじめとするその他の分割スケジュールが用いられてもよい。
【0040】
放射線療法は、X線、γ線、または荷電粒子であってもよい。放射線療法は、外部ビーム放射線療法または内部放射線療法(近接放射線療法とも称される)であってもよい。放射性ヨウ素などの放射性物質を使用する、全身放射線療法はまた、用いられてもよい。
【0041】
外部ビーム放射線療法としては、3D立体構造放射線療法、強度調節放射線療法、画像誘導放射線療法、トモセラピー、定位的放射線治療、陽子線治療法、またはその他の荷電粒子ビームが挙げられる。
【0042】
C.治療されるがん
本方法は、多様ながん型を治療するために使用されてもよい。一態様では、方法は、メラノーマ、結腸直腸がん、または乳がんを治療するのに使用されてもよい。一実施形態では、乳がんは、トリプルネガティブ乳がんである。
【0043】
一実施形態では、がんは、がんは(cancer is cancer is)、副腎皮質腫瘍、副腎がん、肛門がん、胆管がん、膀胱がん、骨がん、脳腫瘍、乳がん、中枢神経系がん、子宮頸がん、胸部がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、類表皮がん、食道がん、眼がん、神経膠芽腫、神経膠腫、胆嚢がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質性腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、頭頸部、ホジキン病、カポジ肉腫、腎がん、喉頭および下咽頭がん、白血病、肝臓がん(肝細胞がんなど)、肺がん(非小細胞、小細胞、および肺カルチノイド腫瘍をはじめとする)、リンパ節がん、リンパ腫、皮膚のリンパ腫、メラノーマ、中皮腫、口腔がん、多発性骨髄腫、鼻腔および副鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、口腔および中咽頭がん、骨肉腫、卵巣がん、膵臓がん、陰茎がん、下垂体がん、前立腺がん、小児悪性腫瘍、直腸がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺、肉腫、皮膚がん、小腸がん、胃がん、精巣がん、胸線がん、喉がん、甲状腺がん、子宮がん、膣がん、または外陰がんである。
【0044】
ここで、その例が添付図面で図示される検討中の例示的な実施形態に、詳細に言及する。可能であれば常に、図面全体を通じて同一参照番号が使用されて、同一または類似部分を指す。その他の実施形態は、ここで開示される明細書および実施の考察から、当業者には明らかになるであろう。実施形態は、以下の実施例でさらに説明される。これらの実施例は、特許請求の範囲を制限せず、単に特定の実施形態の明確化に役立つ。明細書および実施例は、例示としてのみ考慮され、真の範囲と精神は、以下の特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【実施例0045】
実施例1.方法
A)マウスおよび細胞株
BALB/cおよびC57Bl/6マウスは、Harlan、U.K.から入手された。全ての動物実験は、地方倫理委員会によって承認され、英国内務省免許の下で実施された。CT26マウス結腸がん細胞(ATCC)および4434細胞は、BRafV600E p16-/-マウス(Richard Marias,Cancer Research UK,Manchester Institute)から単離されて、DMEM中で維持され、4T1トリプルネガティブ乳がん(ATCC)は、10%FCS、1%L-グルタミン(Invitrogen,U.K.)が添加されたRPMI-1640中で維持された。全ての細胞株は慣例的にスクリーニングされ、マイコプラズマ属(Mycoplasma)混入の不在が確認された。
【0046】
B)腫瘍治療
マウスには、5×105個のCT26、1×105個の4T1または5×106個の4434細胞のいずれかが皮下接種(s.c.)された。照射は、Pantak HF-320320 kV X線ユニット(Gulmay Medical,U.K.)を使用して、接種の7~10日後に(腫瘍が少なくとも100mm3の時点で)実施された。装置は300kV、9.2mAで操作され、X線ビームに濾過装置が装着されて2.3mm Cu半価層の放射線の質を与えた。マウスはX線焦点から350mmの距離に配置されて、投与量速度は0.80Gy/分であった。αPD-1(クローンRMPI-14)、αPD-L1(クローン10F.9G2)(どちらもBiolegend)またはアイソタイプ対照mAb(それぞれIgG2aおよびIgG2b)投与は、(特に断りのない限り)分割RT周期の1日目に開始されて、3qwで最高3週間までのPBS中の100μl/10gの投与量中の10mg/kg用量で腹腔内投与(i.p.)された。細胞およびサイトカイン枯渇実験マウスには、αCD8 mAb;クローンYTS169(M.Glennie,Southampton Universityからの贈与)、αCD4 mAb;クローンGK1.5(Biolegend)、αAsialo-GM1(Wako Chemicals)またはαIFNγ;クローンXMG1.2(BioXcell)のいずれかが投与された。末梢血が処置中に採取され、細胞枯渇が確認された。腫瘍再チャレンジ実験では、長期生存(LTS)マウスに、以前の腫瘍移植の最低限100日後に、腫瘍細胞が対側性に移植された。追加的な対照マウスもまた移植を受けて、腫瘍増殖が確認された。実験群は、少なくとも5匹/群のマウスを含み、少なくとも2つの独立した実験を代表する。
【0047】
C)長期生存マウスから単離されたCD8+T細胞によるサイトカイン生産の測定
生体外刺激では、50Gyで照射された1×106個の腫瘍細胞または1μmol/mlのH2-Ld拘束性ペプチドSPSYVYHQF(配列番号91)(AH1)/TPHPARIGL(配列番号92)(β-ガラクトシダーゼ)(Anaspec,U.K.)のどちらかの存在下で、LTSまたは対照マウスのどちらかからの3.5×106個の脾細胞が、10%FCS、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、1%L-グルタミン、50μMの2-MEおよび10IU/mlのヒト組換えIL-2が添加されたRPMI-1640中で、5日間にわたり培養された。実験群は3~5匹のマウスを含み、2つの独立した実験を代表する。5日間の培養後に、3μg/mlのBrefeldin A(BD Pharmingen,U.K.)および100IU/mlのヒト組換え体IL-2(Chiron,NL)の存在下において、1:1の比率で16時間にわたり50Gy照射腫瘍細胞で細胞が再刺激された。FACS分析のために、細胞は洗浄されてラット抗-CD16/32(eBioscience,U.K.)と共に培養され、非特異的結合がブロックされて、次にFITCコンジュゲート抗CD8αmAb(eBioscience、U.K.)で染色された。次に細胞は、固定/透過処理されて、APCコンジュゲートmAb(eBioscience,U.K.)を使用して、IFNγの発現について染色された。
【0048】
D)フローサイトメトリー(flow cytomtery)による腫瘍および免疫細胞表現形の決定
単細胞懸濁液を得るために、gentleMacs Dissociatorおよびマウス腫瘍分離キット(Miltenyi Biotec,U.K.)を使用して、腫瘍が処理された。分析のために、上述されるように非特異的結合がブロックされ、多重パラメータフローサイトメトリーによって、CD4、CD8(BD Biosciences,UK)、CD45、NKP46、PD-1およびPD-L1の発現が調べられた(特に断りのない限り全てeBioscience)。
【0049】
E)生体外同時培養
腫瘍細胞は、上述されるようなフローサイトメトリーによるPD-L1発現の評価に先だって、20ng/mlのIFNγおよび/またはTNFαの存在下で24時間にわたって培養された。共培養アッセイでは、(それぞれPBSまたはホルボール12-ミリステート13-アセテートおよびイオノマイシン細胞刺激混合物、(eBioscience,UK)で処理された)休止または活性化脾細胞のどちらかが、腫瘍細胞と1:1の比率で共培養されて、PD-L1の腫瘍細胞発現が、上述されるように評価された。IFNγR1発現のサイレンシングは、ShRNAがある細胞のレンチウイルス形質導入によって達成された(細胞はまた、対照として非標的化ShRNAでも形質導入された)(Thermo Scientific,UK)。脾細胞サイトカイン産生(IFNγおよびTNFα)の測定値は、上述されるような細胞内フローサイトメトリーによって測定された。
【0050】
実施例2.PD-1またはPD-L1の遮断はRTの治療効果を高める
放射線療法は、腫瘍細胞の免疫原性を調節することが示されているが、それは全身性の抗腫瘍免疫のみをもたらす、耐久性のある治療応答をめったに生じ得ない。本発明者らは、5回の分割量で約10Gyとして送達される低用量の局所性分割投与RTが、腫瘍細胞のPD-L1発現の増大をもたらし、発現の上昇は、RTの最終投与の1、3、および5日後に、時間を整合させた未処置(NT)マウスと比較して、明白であることを示す(
図1AおよびB)。この腫瘍細胞PD-L1発現のRT媒介増大は、RTの最終投与の72時間後にピークに達し、それはRTの7日後に有意に低下するが(1および3日目における発現との比較;それぞれP<0.05およびP<0.01、マンホイットニー検定)、NTマウスと比較して上昇したままである(P<0.05、マンホイットニー検定)。
【0051】
これらの観察を所与として、本発明者らは、RTに続いて生じた免疫応答が、PD-1/PD-L1系を通じて制限されてもよいという仮説を立てた。5回の1日分割量で約10Gyとして送達される局所RTは、NT対照と比較して、確立されたCT26腫瘍を有するマウスの生存期間を有意に改善することが認められた(
図1CおよびD;P<0.05ログランク;マンテル・コックス検定)。本発明者らのデータは、αPD-L1 mAbまたはαPD-1 mAbのどちらかとの併用を通じて、このRT媒介局所腫瘍制御が、実質的に改善され得ることを示す(
図1CおよびD;P<0.001ログランク;マンテル・コックス検定)。併用療法は、相乗的抗腫瘍応答をもたらし、それは、それぞれαPD-L1 mAbまたはαPD-1 mAbとの併用でRTを投与された、66%および80%のマウスで治癒的であった。RTとの併用とは対照的に、αPD-L1 mAbまたはαPD-1 mAbのどちらかによる単剤療法は、生存期間を有意に改善しなかった(
図1CおよびD;P>0.05ログランク;マンテル・コックス検定)。さらに、どちらかのmAbのみとの併用との対比で、αPD-1およびαPD-L1 mAbの双方との併用で、RTがマウスに投与された場合に、顕著な利点は観察されなかった(
図7)。
【0052】
PD-L1の遮断はまた、確立された4T1腫瘍を有するマウスにおけるRTに対する反応を改善し、併用療法は、RTのみと比較して、腫瘍量を有意に38%低下させた(
図1E;治療開始10日後;それぞれ184.3±13.5mm
2対292.8±14.3mm
2、P<0.01マンホイットニー検定)および有意に改善された生存期間(P<0.001ログランク;マンテル・コックス検定;データ未掲載)。同様の結果はまた、確立された4434メラノーマを有するマウスでも観察された(
図1F)。PD-1またはPD-L1のどちらかを標的化する局所RTおよびmAbによる併用療法は、BALB/cおよびC57Bl/6マウスの双方で良好に耐えられた(
図8AおよびB)。これらの前臨床データは、PD-1/PD-L1系の遮断を通じて、確立された固形腫瘍の低用量分割RTに続く予後を改善する可能性を明確に示す。
【0053】
実施例3.NK細胞は併用療法に続いて局所腫瘍制御に寄与するが長期生存はCD8
+T細胞に依存する
次に本発明者らは、組み合わせRTおよびαPD-L1 mAb療法に続いて観察された、長期腫瘍制御の基礎となる機序を調べた。最初にコロニー形成アッセイを使用して、αPD-1およびαPD-L1 mAbが、腫瘍細胞との直接相互作用を通じて、放射線増感剤として作用しないことを確認した(
図9A~C)。抗体枯渇を使用して、次に本発明者らは、RT/αPD-L1 mAb併用療法に続く、抗腫瘍活性の仲介におけるエフェクターT細胞およびNK細胞の役割を調査した。本発明者らのデータは、(RT周期の1日目に開始するαPD-L1 mAb療法による)5日間の分割RT周期開始の早くも7日後に、NTマウスと比較して、併用療法に続いて、マウスにおける腫瘍量低下が明白であることを実証する(それぞれ207.5±29.2mm
2対409.4±86.88mm
2;P=0.067、マン・ホイットニーU検定)(
図2A)。しかし、体積を低下させるこの統計学的傾向は、CD8
+T細胞またはNK細胞のどちらかの枯渇に続いて失われ、腫瘍体積には、NTコホート(それぞれP=0.52およびP=0.70、マン・ホイットニーU検定)からの有意差がなかったが、免疫細胞枯渇なしで併用療法を投与されたマウスよりも有意に大きかった(P<0.01;併用療法と対比したCD8枯渇、およびP<0.05;併用療法と対比したNK細胞枯渇、マン・ホイットニーU検定)。処置後11日目までに、併用療法は、NT対照と比較して腫瘍量を有意に減少させた(P<0.001、マン・ホイットニーU検定)。この時点におけるCD8
+T細胞またはNK細胞のどちらかの枯渇は、併用療法(それぞれP<0.001およびP<0.05、マン・ホイットニーU検定)の有効性を低下させる一方で、CD8
+T細胞およびNK細胞の相対的貢献度はより明白になり、CD8対NK細胞枯渇マウスで、腫瘍制御を有意に低下させる(P<0.05、マン・ホイットニーU検定)。本発明者らのデータはまた、CD4
+T細胞の枯渇が、併用療法に続く局所腫瘍制御を改善したことも示す(それぞれ153.2±27.0mm
2対72.7±17.3mm
2;P<0.05、マン・ホイットニーU検定)。
【0054】
併用RT/αPD-L1 mAb療法に続く早期腫瘍制御とは対照的に、長期生存(LTS)は、NK細胞の枯渇によって影響を受けなかった(RT/αPD-L1による処置に続くLTSマウスの70%対NK細胞枯渇による併用療法に続く77.8%)(
図2B)。CD4
+Tリンパ球枯渇は、LTSマウスの出現頻度を70%から87.5%に増大させたが(組み合わせ対組み合わせ+CD4枯渇)、これは有意差に達しなかった(P>0.05ログランク;マンテル・コックス検定)。しかし、CD8
+T細胞の枯渇は、組み合わせRT/αPD-L1 mAb療法の治療効果を完全に抑制した(P<0.001ログランク;マンテル・コックス検定)。免疫細胞集団の枯渇は、末梢血液サンプル上のフローサイトメトリーによって確認された(
図2C)。これらのデータは、NK細胞がいくらかの局所腫瘍制御を発現してもよい一方で、これは全生存影響を及ぼさず、CD4
+T細胞は不必要であり、または応答を抑制さえできる一方で、CD8
+T細胞は、RTおよびαPD-L1 mAbによる処置に続いて、効果的な長期腫瘍制御を媒介するようであることを示唆する。
【0055】
実施例4.αPD-L1 mAbおよびRTによる処置は保護的腫瘍抗原特異的記憶T細胞応答を生じる
次に本発明者らは、RTおよびαPD-L1 mAbによる処置に続いて、免疫記憶が生じたかどうかを調べた。本発明者らは、最初にRTおよびαPD-L1 mAbで処置されたLTSマウスが、対側性再チャレンジ(
図3A)に続いて、腫瘍を完全に拒絶できることを示す。この記憶応答を定量化するために、100日を超える無病生存期間を有するLTSマウスから脾細胞が収穫されて、CT26腫瘍関連抗原に由来するペプチド(AH1:SPSYVYHQF(配列番号91))、対照ペプチド(β-ガラクトシダーゼ:TPHARIGL(配列番号93))、または照射CT26細胞との共培養に続いて、IFNγを産生するCD8
+T細胞の能力が評価された(
図3BおよびC)。本発明者らのデータは、AH1ペプチドとの共培養に続いて、LTSマウスに、未感作マウスよりも有意に高いIFNγ産生CD8
+Tリンパ球の出現頻度が与えられたことを示す(それぞれ6.6%±0.8対2.3%±0.2;P<0.05、マンホイットニー検定)。同様の応答が、脾細胞のCT26細胞との共培養に続いて観察された。ペプチドおよび腫瘍細胞の同時培養の比較は、記憶CD8
+T細胞の出現頻度が、LTSマウスでは腫瘍細胞との共培養に続いて、AH1ペプチドとの共培養の約3倍低かったことを明らかにし、T細胞活性化の腫瘍細胞媒介抑制を反映するかもしれない。総合するとこれらのデータは、マウスモデルにおいて、RTがPD-1/PD-L1系の遮断と組み合わされた場合に、それが長期生存者において保護的免疫記憶を生じ得ることを示す。
【0056】
実施例5.分画RTは腫瘍細胞PD-L1発現にCD8
+T細胞依存性適応型上方制御をもたらす
最初に本発明者らは、生体外における一連のRT投与による腫瘍細胞の治療が、PD-L1の発現にいかなる直接的影響も有しないことを確認した(
図4A)。腫瘍微小環境内のどの細胞集団が、PD-L1の腫瘍細胞発現の調節に関与するのかを同定するために、分割RT周期が、CD8、CD4またはNK細胞枯渇抗体との併用でマウスに投与された。本発明者らのデータは、NK細胞でなくCD8
+T細胞の枯渇が、腫瘍細胞上のPD-L1のRT媒介上方制御を完全に抑止することを示す(
図4BおよびC)。興味深いことに、CD4
+T細胞の枯渇は、腫瘍細胞上のPD-L1のRT媒介上方制御をさらに増強することが分かった(RTのみによる処置と比較して約2倍)。
【0057】
実施例6.分画RTに続く腫瘍細胞によるPD-L1の適応型上方制御は、IFNγ依存性である
腫瘍微小環境内のIFNγとPD-L1発現(16)の間の臨床相関、およびこの応答に対するTNFαの影響(22)を所与として、本発明者らは、本発明者らの細胞株内のPD-L1に対するこれらのサイトカインの影響を評価した。腫瘍細胞と組換えIFNγの共培養は、生体外でPD-L1の細胞表面発現に顕著な20倍の増大をもたらす(
図5A)。さらに、組換えTNFαのみの添加が、腫瘍細胞のPD-L1発現に影響を及ぼさない一方で、IFNγおよびTNFαの双方の混合物は,IFNγのみによる発現と比較して、腫瘍細胞PD-L1発現をさらに増強し得る(約2倍)(
図5A)。本発明者らは、ShRNAを使用したCT26腫瘍細胞上のIFN-γ-受容体1(IFNγR1)のサイレンシングが、組換えIFNγとの、またはIFNγおよびTNFαの双方との共培養に続いて、PD-L1の上方制御を完全に抑止することを示す(
図5A)。
【0058】
活性化免疫細胞が、IFNγおよびTNFαの産生を通じて腫瘍細胞のPD-L1発現に適応変化をもたらし得るかどうかを確立するために、単離された休止(PBS処理)および活性化(ホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)およびイオノマイシン処理)脾細胞(
図5BおよびC)と、WT CT26細胞、そして非標的化ShRNA(NTC ShRNA)およびIFNγR1 ShRNAのどちらかで形質導入されたものを共培養した。重要なことには、これらの実験は、活性化免疫細胞が、腫瘍細胞PD-L1発現をIFNγR1-依存様式で、生理学的に妥当なIFNγおよびTNFαの濃度に上昇させ得ることを示す。
【0059】
生体内RTに応答した、腫瘍細胞のPD-L1発現に対するIFNγの役割を確認するために、RTが、αIFNγ遮断抗体(またはアイソタイプ対照)との併用でマウスに投与された。IFNγ遮断は、NTマウスにおいて、腫瘍細胞のPD-L1発現を生体外培養されたCT26細胞上で観察されたレベルの2.6倍低下させ;腫瘍の移植に続いて起きるPD-L1の適応型上方制御が示唆された(
図5DおよびE)。しかし、RTに続いて観察されたPD-L1の顕著な上方制御は(NT対照と比較して2.4倍)、IFNγ遮断によって完全に抑制され、これがRT処置に続くPD-L1の適応型腫瘍細胞発現の駆動機構であることが確認される。
【0060】
実施例7.αPD-L1 mAbおよびRTの併用日程計画は効果的な抗腫瘍免疫応答を生じる
本発明者らは、確立されたCT26腫瘍を有するマウスに、分割RT周期の1日目(スケジュールA)、周期の5日目(スケジュールB)またはRT完了の7日後(スケジュールC)のいずれかに開始するαPD-L1 mAbの投与と共に、5回の分割量で約10Gyの分割RT周期が投与される、3つの異なる組み合わせスケジュールを評価した(
図6A)。スケジュールAおよびBの間で全生存期間の有意差は見られず、LTSは、それぞれ60%および57であった(P>0.05ログランク;マンテル・コックス検定)(
図6Bおよび
図10A)。対照的に、検群全体にわたる同様の腫瘍量にもかかわらず、RTとそれに続く7日後のαPD-L1 mAbによる逐次処置(スケジュールC)は、RTのみと比較して、全生存期間を向上させる上で完全に無効であった(それぞれ30日間および35日間の生存期間中央値数;P>0.05ログランク;マンテル・コックス検定)(
図10BおよびC)。
【0061】
RTの最終投与の24時間後における、腫瘍浸潤性CD4
+およびCD8
+T細胞の解析は、時間を整合させたNT対照と比較してPD-1の発現増大を示す(P<0.05、マンホイットニー検定)(
図6C)。対照的に、RTの7日後には、CD4
+T細胞上のPD-1発現の変化は明白でなく、時間を整合させたNT対照と比較して、CD8
+T細胞上で有意に低下することが分かった(P<0.05、マンホイットニー検定)(
図6D)。PD-1の発現は、一貫して、CD4
+T細胞よりも、腫瘍浸潤性CD8
+上でより高いことが分かった(
図6CおよびD)。次に本発明者らは、RTと同時の3用量のmAb、または同じもののさらに2週間の長期間投与(3qw)のどちらかがマウスに投与される、急性対長期αPD-L1 mAb投与プロトコルに続いて、活性を比較した。長期αPD-L1 mAb投与による、追加的な利点は観察されなかった(
図11)。
【0062】
総合するとこれらのデータは、低用量分割RTによる処置が、T細胞上のPD-1発現の急性増大をもたらし、そしてRT周期が完了するまで、PD-1/PD-L1シグナル伝達系の遮断が遅延される逐次療法が、腫瘍反応性CD8+T細胞の欠失またはアネルギーのために、潜在的に無効であってもよいことを示す。
【0063】
実施例8.前述の実施例の考察
低用量の分割RTは、CD8+T細胞のIFNγ産生に続発して、腫瘍細胞上におけるPD-L1発現の上方制御をもたらす。メラノーマ、結腸直腸、および乳がんのマウスモデルにおいて、本発明者らは、αPD-L1 mAbとの併用を通じてRTの活性が向上され得て、長期生存マウスにおいて、腫瘍再発から保護できる免疫記憶の発生をもたらすことを示す。さらに、本発明者らのデータは、投与計画が予後に影響を及ぼしてもよく、同時のしかし逐次でない治療法が、局所腫瘍制御および生存期間を改善するのに効果的であることを示す。
【0064】
これは、分割RTが、CD8+T細胞のIFNγ PD-L1産生を通じて、腫瘍細胞発現の増大をもたらすことを示す、最初の前臨床試験である。ここで、腫瘍細胞のPD-L1発現は、局所性抗腫瘍応答の生物マーカーの機能を果たしてもよく、局所RTが、CD8+T細胞応答を刺激するのに十分であってもよいことが示唆される。しかし、RTのみによる処置が持続性の抗がん免疫を生じ得ない一方で、活性は、PD-1またはPD-L1のどちらかのmAb媒介遮断を通じて向上されることが分かり、この系を介するシグナル伝達系が、RTに対する免疫応答を制限してもよいことが示唆される。本発明者らは、αPD-1またはαPD-L1のどちらかとの併用、または双方のmAbとの併用で到達されるRTの間で、全生存期間における有意差を観察しなかった。この観察を所与として、RTとの併用で送達される場合、これらのmAbの活性は、PD-1/PD-L1シグナル伝達の遮断を通じて起こり、PD-L1/CD80またはPD-1/PD-L2系を通じて媒介されないようであるが、これを確認するためにはさらなる実験が必要である。
【0065】
本発明者らの前臨床データは、NK細胞の枯渇が、初期時点で(RT完了の最高11日後)局所腫瘍制御を低下させるが、全生存期間には影響を及ぼさなかったことを示す。さらに、NK細胞の枯渇は、RTに続く腫瘍細胞のPD-L1発現に影響を及ぼさず、局所IFNγ産生に対するそれらの限定的貢献度が示唆された。対照的に、併用療法に続いて、CD4+T細胞の枯渇が生存期間に影響を及ぼさなかった一方で、RT後の腫瘍細胞のPD-L1発現のかなりの増大が観察された。CD4+T細胞の枯渇は、ヘルパーT細胞およびTreg数の双方に影響する。これらのCD4+T細胞亜集団の相対的貢献度を描写するためにはさらなる研究が必要であるが、本発明者らは、本発明者らのモデルにおいて、RT/PD-L1 mAb治療法の後に効果的なCD8+T細胞応答を生じるのに、CD4+ヘルパーT細胞が不要であり、どちらかのヘルパーT細胞、おそらくはTregが、局所腫瘍環境内でIFNγ産生を能動的に抑制してもよいと推測し得る。したがって、Treg枯渇によって抗腫瘍応答を促進する治療能力は、腫瘍細胞のPD-L1発現向上を通じて、少なくとも部分的に減衰されてもよい。
【0066】
PD-L1発現は、1型および2型IFN、TNFα、およびTGFβをはじめとするいくつかのサイトカインによって調節され得る(16,22,30-32)。本発明者らは、腫瘍細胞のPD-L1発現が、IFNγとの共培養に続いて向上され得て、TNFαの添加が、この反応をさらに増強し得ることを示す。しかし、IFNγR1の遮断またはIFNγの生体内枯渇は、PD-L1の上方制御のIFNγ媒介シグナル伝達への依存を実証し、TNFαのみでは腫瘍細胞PD-L1発現は調節できない。興味深いことに、IFNγの生体内枯渇は、同系腫瘍細胞上でPD-L1発現を低下させて、生体外における腫瘍細胞発現プロファイルと一致する。これは、治療的介入不在下における局所腫瘍微小環境が、腫瘍発生を支持してもよい免疫学的に駆動される腫瘍適応を助長してもよいことを提案する。同様に、ヒトメラノサイト病変では、PD-L1の発現がCD8+T細胞浸潤領域と共局在化することが示されており、免疫逃避の適応機序に相当することが想定される(16)。しかし、本発明者らの前臨床マウスモデルでは、PD-1/PD-L1標的化mAbによる単剤療法は、軽微な活性のみを実証し、この系のみを標的化することが、全ての状況で持続性の抗腫瘍免疫応答をもたらしそうにないことが示唆され、コンビナトリアルアプローチに対する必要が強調される。
【0067】
単回12Gy投与(30)の使用とは対照的に、本発明者らの結果は、1日分割量を5回で約10Gyを使用する分割RT送達を伴うはるかにより低い生物学的有効量で、PD-L1の上方制御が生じることを示す。この分割投与が日常的臨床診療でより一般に使用されることを考えると、これは重要な発見である。いくつかの研究が、RT分割投与の影響を評価しており;抗腫瘍免疫応答発生と腫瘍微小環境について、単回切除用量、少分割、および分割RTを比較している(4、5、25、26、33、34)。しかしこれらの研究の結果は曖昧であり、最適RT送達および腫瘍細胞のPD-L1発現に対するRT分割投与の影響は、さらに研究を要する。
【0068】
以前は、いかなる研究もRTおよびαPD-L1 mAb療法に対する、活動順序の影響に対処していなかった。これは、診療所において、耐容性を最大化するストラテジーとして、順序組み合わせ計画を採用する傾向を考えると、特に適切である。本発明者らは、RT送達時点のPD-L1遮断のみが、マウスモデルにおいて治療反応を向上させ得て、RT完了7日後の治療が、もはやRTのみによる処置より良好ではないことを示す。さらに、本発明者らのデータは、分割RT周期完了の24時間後までにPD-L1発現が上昇し、少なくとも完了7日後も依然として上昇したまであることを示す。さらに、本発明者らは、対照コホートと比較して、RTの24時間後における、腫瘍浸潤性CD4+およびCD8+T細胞上のPD-1発現上昇を発見した。PD-1の発現は、CD4+T細胞との対比でCD8+上で、一貫してより高いことが分かった。総合するとこれらのデータは、局所分割RTが、抗腫瘍CD8+T細胞応答を刺激し得るが、これらは、PD-1/PD-L1系を介するシグナル伝達によって減衰されてもよく、この系の初期阻害が、持続性の有効な抗腫瘍応答を生じてもよいことを示唆する。さらに、RTと組み合わせた場合における、PD-1/PD-L1系の急性遮断と対比した慢性遮断に対する必要は、不明確である。本発明者らは、最高3週間の長期スケジュールとの対比で、1週間にわたりRT送達と同時にαPD-L1 mAbが3qwで投与された場合の生存期間の差異を観察しなかった。これらのデータは、RTとの組み合わせアプローチが、治療的抗腫瘍免疫応答を達成するのに要するαPD-1/PD-L1 mAb療法の持続期間を低下できるようにしてもよいことを示唆する。総合してこれらのデータは、臨床試験デザインに対して重要な意味を有する。
【0069】
要約すると、この治験は、分割RTによる処置が腫瘍細胞のPD-L1発現に上方制御をもたらし、がんの複数同系マウスモデルにおいて、PD-1/PD-L1系の遮断が、分割RTに対する免疫応答を向上させ得ることを実証する。本発明者らのデータは、RTとαPD-L1 mAbの投与計画が、腫瘍量を低下させ生存期間を改善する能力によって、治療的免疫応答を生じてもよいことを示唆する。この治療組み合わせは、RTが一般に使用される多くの固形悪性腫瘍の治療に取り組む上で有望であってもよく、初期臨床試験への橋渡しが、明らかに正当化される。
【0070】
実施例9.治療プロトコル
患者Aは、結腸直腸がんを有する。1週目に、患者Aには、5回の分割量(fractopms)で、有効量の放射線療法が投与される。1週目に、患者Aには、1日目、3日目、および5日目に、MEDI4736の治療用量もまた投与される。患者Aは、このスケジュールを2、3、4、および5週目に反復する。
【0071】
患者Bは、乳がんを有する。1週目に、患者Bには、有効量の放射線療法が投与される。1週目に、患者Bには、5日目に治療用量のMEDI4736もまた投与される。患者は、このスケジュールを3、5、および7週目に反復する。
【0072】
実施例10.特定の実施形態
以下の項目は、本明細書で開示される特定の実施形態を提供する。
【0073】
項目1.
a.少なくとも1用量の放射線療法を投与するステップと;
b.少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬を投与するステップと
を含み、少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬が、放射線療法の投与と同日にまたは4日後までに投与される患者においてがんを治療する方法。
【0074】
項目2.少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬が、少なくとも1つのPD-1および/もしくはPD-L1抗体またはその機能性部分である、項目1の方法。
【0075】
項目3.放射線療法の前記用量が約11Gy以下である、項目1~2のいずれか1つの方法。
【0076】
項目4.放射線療法の前記用量が約10Gy以下である、項目3の方法。
【0077】
項目5.放射線療法が分割放射線療法である、項目1~4のいずれか1つの方法。
【0078】
項目6.分割放射線療法が、2~7回の分割量を含む、項目5の方法。
【0079】
項目7.分割放射線療法が、5回の分割量を含む、項目6の方法。
【0080】
項目8.放射線療法分割量が連日投与される、項目5~7のいずれか1つの方法。
【0081】
項目9.放射線療法分割量が1日目、2日目、3日目、4日目、および5日目に投与される、項目5~8のいずれか1つの方法。
【0082】
項目10.放射線療法が5回の分割量で約10Gyを含む、項目7~9のいずれか1つの方法。
【0083】
項目11.少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬が1日目に投与される、項目1~10のいずれか1つの方法。
【0084】
項目12.少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬が5日目に投与される、項目1~11のいずれか1つの方法。
【0085】
項目13.少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬が複数回投与される、項目1~12のいずれか1つの方法。
【0086】
項目14.少なくとも1つのPD-1および/またはPD-L1拮抗薬が毎週3回投与される、項目1~13のいずれか1つの方法。
【0087】
項目15.抗PD-1および/もしくはPD-L1抗体またはその機能性部分がMEDI4736である、項目1~14のいずれか1つの方法。
【0088】
項目16.抗PD-1および/もしくは抗PD-L1抗体またはその機能性部分が、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、BMS-936558、AMP-224、またはMPDL3280Aである、項目1~15のいずれか1つの方法。
【0089】
項目17.がんがメラノーマ、結腸直腸がん、または乳がんである、項目1~16のいずれか1つの方法。
【0090】
項目18.2回以上の治療周期が実施される、項目1~17のいずれか1つの方法。
【0091】
項目19.2~8回の治療周期が実施される、項目18の方法。
【0092】
項目20.治療周期が毎週である、項目18~19のいずれか1つの方法。
【0093】
項目21.治療周期が隔週である、項目18~19のいずれか1つの方法。
【0094】
参考文献
1.D. Verellen et al., Innovations in image-guided radiotherapy. Nat Rev Cancer 7, 949-960 (2007).
2.L. J. Lee et al., Innovations in radiation therapy (RT) for breast cancer. Breast 18 Suppl 3, S103-111 (2009).
3.E. Kapiteijn et al., Preoperative radiotherapy combined with total mesorectal excision for resectable rectal cancer. N Engl J Med 345, 638-646 (2001).
4.Y. Lee et al., Therapeutic effects of ablative radiation on local tumor require CD8+ T cells: changing strategies for cancer treatment. Blood 114, 589-595 (2009).
5.A. A. Lugade et al., Local radiation therapy of B16 melanoma tumors increases the generation of tumor antigen-specific effector cells that traffic to the tumor. J Immunol 174, 7516-7523 (2005).
6.L. Apetoh et al., Toll-like receptor 4-dependent contribution of the immune system to anticancer chemotherapy and radiotherapy. Nat Med 13, 1050-1059 (2007).
7.S. J. Gardai et al., Cell-surface calreticulin initiates clearance of viable or apoptotic cells through trans-activation of LRP on the phagocyte. Cell 123, 321-334 (2005).
8. F. Ghiringhelli et al., Activation of the NLRP3 inflammasome in dendritic cells induces IL-1beta-dependent adaptive immunity against tumors. Nat Med 15, 1170-1178 (2009).
9. Y. Ma et al., Anticancer chemotherapy-induced intratumoral recruitment and differentiation of antigen-presenting cells. Immunity 38, 729-741 (2013).
10. J. Honeychurch et al., Immunogenic potential of irradiated lymphoma cells is enhanced by adjuvant immunotherapy and modulation of local macrophage populations. Leuk Lymphoma 54, 2008-2015 (2013).
11. B. Cummings et al., Five year results of a randomized trial comparing hyperfractionated to conventional radiotherapy over four weeks in locally advanced head and neck cancer. Radiother Oncol 85, 7-16 (2007).
12. H. Dong et al., Tumor-associated B7-H1 promotes T-cell apoptosis: a potential mechanism of immune evasion. Nat Med 8, 793-800 (2002).
13. G. J. Freeman et al., Engagement of the PD-1 immunoinhibitory receptor by a novel B7 family member leads to negative regulation of lymphocyte activation. J Exp Med 192, 1027-1034 (2000).
14. M. J. Butte et al., Programmed death-1 ligand 1 interacts specifically with the B7-1 costimulatory molecule to inhibit T cell responses. Immunity 27, 111-122 (2007).
15. S. Spranger et al., Up-regulation of PD-L1, IDO, and T(regs) in the melanoma tumor microenvironment is driven by CD8(+) T cells. Sci Transl Med 5, 200ra116 (2013).
16. J. M. Taube et al., Colocalization of inflammatory response with B7-h1 expression in human melanocytic lesions supports an adaptive resistance mechanism of immune escape. Sci Transl Med 4, 127ra137 (2012).
17. M. Sznol et al., Antagonist antibodies to PD-1 and B7-H1 (PD-L1) in the treatment of advanced human cancer. Clin Cancer Res 19, 1021-1034 (2013).
18. J. R. Brahmer et al., Phase I study of single-agent anti-programmed death-1 (MDX-1106) in refractory solid tumors: safety, clinical activity, pharmacodynamics, and immunologic correlates. J Clin Oncol 28, 3167-3175 (2010).
19. J. R. Brahmer et al., Safety and activity of anti-PD-L1 antibody in patients with advanced cancer. N Engl J Med 366, 2455-2465 (2012).
20. O. Hamid et al., Safety and tumor responses with lambrolizumab (anti-PD-1) in melanoma. N Engl J Med 369, 134-144 (2013).
21. E. J. Lipson et al., Durable cancer regression off-treatment and effective reinduction therapy with an anti-PD-1 antibody. Clin Cancer Res 19, 462-468 (2013).
22. A. Kondo et al., Interferon-gamma and tumor necrosis factor-alpha induce an immunoinhibitory molecule, B7-H1, via nuclear factor-kappaB activation in blasts in myelodysplastic syndromes. Blood 116, 1124-1131 (2010).
23. S. L. Topalian et al., Safety, activity, and immune correlates of anti-PD-1 antibody in cancer. N Engl J Med 366, 2443-2454 (2012).
24. S. L. Topalian et al., Durable Tumor Remission, and Long-Term Safety in Patients With Advanced Melanoma Receiving Nivolumab. J Clin Oncol, (2014).
25. M. Z. Dewan et al., Fractionated but not single-dose radiotherapy induces an immune-mediated abscopal effect when combined with anti-CTLA-4 antibody. Clin Cancer Res 15, 5379-5388 (2009).
26. S. J. Dovedi et al., Systemic delivery of a TLR7 agonist in combination with radiation primes durable antitumor immune responses in mouse models of lymphoma. Blood 121, 251-259 (2013).
27. J. Honeychurch et al., Anti-CD40 monoclonal antibody therapy in combination with irradiation results in a CD8 T-cell-dependent immunity to B-cell lymphoma. Blood 102, 1449-1457 (2003).
28. B. C. Burnette et al., The efficacy of radiotherapy relies upon induction of type i interferon-dependent innate and adaptive immunity. Cancer Res 71, 2488-2496 (2011).
29. J. Y. Kim et al., Increase of NKG2D ligands and sensitivity to NK cell-mediated cytotoxicity of tumor cells by heat shock and ionizing radiation. Exp Mol Med 38, 474-484 (2006).
30. L. Deng et al., Irradiation and anti-PD-L1 treatment synergistically promote antitumor immunity in mice. J Clin Invest 124, 687-695 (2014).
31. J. N. Ou et al., TNF-alpha and TGF-beta counter-regulate PD-L1 expression on monocytes in systemic lupus erythematosus. Sci Rep 2, 295 (2012).
32. S. Terawaki et al., IFN-alpha directly promotes programmed cell death-1 transcription and limits the duration of T cell-mediated immunity. J Immunol 186, 2772-2779 (2011).
33. D. Schaue et al., Maximizing tumor immunity with fractionated radiation. Int J Radiat Oncol Biol Phys 83, 1306-1310 (2012).
【0095】
同等物
前述の書面による明細書は、当業者が実施形態を実施できるようにするのに十分であると見なされる。前述の説明および実施例は、特定の実施形態を詳述し、本発明者らによって検討される最良の態様を記載する。しかし、前述の事項がテキスト中でいかに詳述されたとしても、実施形態は、多くの様式で実施されてもよく、特許請求の範囲はそれらの任意の同等物を含むことが理解されるであろう。
【0096】
本明細書の用法では、約という用語は、明示的に示されるか否かを問わず、例えば、整数、分数、および百分率をはじめとする数値を指す。約という用語は、通常、当業者が列挙された値と同等であると見なす(例えば、同一機能または結果を有する)、一連の数値(例えば、列挙された値の+/-5~10%)を指す。場合によっては、約という用語は、最も近い有効数字に端数を丸めた数値を含んでもよい。