(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009357
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】油脂含有排水から油脂を分離する油脂分離装置及び方法並びに油脂分離回収システム
(51)【国際特許分類】
B01D 17/00 20060101AFI20230113BHJP
B01D 17/025 20060101ALI20230113BHJP
B01D 17/038 20060101ALI20230113BHJP
B03B 5/00 20060101ALI20230113BHJP
C02F 1/40 20230101ALI20230113BHJP
B04B 1/02 20060101ALI20230113BHJP
B04B 11/00 20060101ALI20230113BHJP
B01D 17/02 20060101ALI20230113BHJP
B07B 1/28 20060101ALN20230113BHJP
【FI】
B01D17/00 503A
B01D17/025 502D
B01D17/038
B03B5/00 Z
C02F1/40 B
B04B1/02
B04B11/00 Z
B01D17/02 501Z
B07B1/28 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112538
(22)【出願日】2021-07-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 発明の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書(1) 2021年3月17日、極東貿易株式会社が、日本ハム食品株式会社に、西田直樹が発明した排水油脂分離システム一式(廃油焚ボイラー2台含む)を納品
(71)【出願人】
【識別番号】593061455
【氏名又は名称】極東貿易株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】西田 直樹
【テーマコード(参考)】
4D021
4D051
4D057
4D071
【Fターム(参考)】
4D021AA01
4D021AB02
4D021AC01
4D021CA03
4D021EA10
4D051AA01
4D051AB02
4D051DC02
4D057AA10
4D057AB01
4D057AB03
4D057AC01
4D057AD01
4D057AE03
4D057AF01
4D057BC05
4D057BC11
4D071AA02
4D071AA05
4D071AB03
4D071AB04
4D071AB44
4D071AB62
4D071AB63
4D071CA03
4D071DA15
4D071DA20
(57)【要約】
【課題】 排水から油脂分を固形物に凝集させることなく効率的に分離することにより油脂の液体燃料としての再利用を可能とする。
【解決手段】
排水油脂分離装置1は、排水を貯留する貯留槽2と、浮上油回収用フロート2aと、排水中に浮上した油を浮上油回収用フロートから回収するポンプ3と、回収された浮上油を貯留し、浮上油の上部の油脂を取り出すことにより、さらに油脂と水とに粗く分離する油水分離タンク4と、油水分離タンクにより分離されて回収された油脂を貯えて加温する加温タンク5と、加温タンクから回収油脂を送り出すためのポンプ6と、ポンプ6から送られてきた回収油脂を遠心分離する遠心分離機7と、遠心分離機により分離された分離油をふるいにかけることにより残渣を除去して燃料油を取り出すふるい機9と、ふるい機により残渣が除去された燃料油を貯留する燃料貯留タンク12と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂含有排水から油脂を分離する油脂分離装置であって、
油脂含有排水が貯留されている貯留槽と、
前記貯留槽に貯留された油脂含有排水に浮かぶ浮上油回収用フロートと、
前記油脂含有排水中に浮上した浮上油を前記浮上油回収用フロートから回収する第1のポンプと、
前記第1のポンプにより回収された浮上油を貯留し、該浮上油に含まれる油脂と水とを比重差によりさらに分離する油水分離タンクと、
前記油水分離タンクにより分離されて回収された油脂を貯えて加温する加温タンクと、
前記加温タンクから送られてきた回収油脂を遠心分離することによって、さらに水と固形物と油脂とに分離する遠心分離機と、
前記遠心分離機により分離された分離油をふるいにかけることにより残渣を除去して燃料油を取り出すふるい機と、
前記ふるい機により残渣が除去された燃料油を貯留する燃料貯留タンクと、
を備える、油脂分離装置。
【請求項2】
前記加温タンクから前記遠心分離機へ回収油脂を送油する第2のポンプをさらに備える、請求項1に記載の油脂分離装置。
【請求項3】
前記ふるい機により残渣が除去された残渣除去油を一時的に貯留する残渣除去油一時貯留タンクと、
前記残渣除去油一時貯留タンクに貯留された残渣除去油を前記燃料貯留タンクに移送する第3のポンプと、
をさらに備える、請求項1又は2に記載の油脂分離装置。
【請求項4】
前記遠心分離機により分離された水と前記油水分離タンクから分離された水とを前記貯留槽に移送する第4のポンプをさらに備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の油脂分離装置。
【請求項5】
前記遠心分離機により分離された固形物を移送処理するため、該固形物を所定量まで貯めておく脱水ケーキホッパーをさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の油脂分離装置。
【請求項6】
前記脱水ケーキホッパーに貯められた脱水ケーキを外部の脱水ケーキ処理装置及び又は工程へ移送する第5のポンプをさらに備える、請求項1から5のいずれか1項に記載の油脂分離装置。
【請求項7】
前記ふるい機は、少なくとも1つの金網と、前記分離油を該金網を通してふるい分けするとき振動を発生することを可能とする振動発生部と、を備える、請求項1から6のいずれか1項に記載の油脂分離装置。
【請求項8】
油脂含有排水から油脂を分離する油脂分離方法であって、
油脂含有排水を貯留する工程と、
貯留された油脂含有排水に浮上した浮上油を回収する工程と、
回収された浮上油を貯留し、該浮上油に含まれる油脂と水とを比重差によりさらに分離する工程と、
分離されて回収された油脂を加温する工程と、
加温された回収油脂を遠心分離することによって、さらに水と固形物と油脂とに分離する工程と、
遠心分離された分離油をふるいにかけることにより残渣を除去して燃料油を取り出す工程と、
を備える、油脂分離方法。
【請求項9】
前記ふるい工程により残渣が除去された残渣除去油を一時的に貯留する工程と、
前記一時的に貯留された残渣除去油を燃料貯留タンクに移送する工程と、
をさらに備える、請求項8に記載の油脂分離方法。
【請求項10】
前記遠心分離工程により分離された水と前記さらに分離する工程により分離された水とを前記油脂含有排水を貯留する工程で再処理する工程をさらに備える、請求項8又は9に記載の油脂分離方法。
【請求項11】
前記遠心分離工程により分離された固形物である脱水ケーキを所定量まで貯めておく工程と、
前記脱水ケーキが所定量まで貯められとき外部へと移送する工程と、
をさらに備える、請求項8から10のいずれか1項に記載の油脂分離方法。
【請求項12】
前記分離油をふるいにかける工程は、振動を発生させながら該分離油をふるいにかける工程を備える、請求項8から11のいずれか1項に記載の油脂分離方法。
【請求項13】
請求項1から7のいずれか1項に記載の油脂分離装置と、
前記燃料貯留タンクに貯留された燃料を移送する第6のポンプと、
前記第6のポンプにより移送された燃料を利用する回収燃料利用装置と
をさらに備える、油脂分離回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂含有排水から油脂を分離する油脂分離装置及び方法、並びに、当該油脂分離装置及び方法を利用した油脂分離回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油脂分を多く含んだ排水を処理する方法として、凝集剤を用いる方法が知られている。例えば特許文献1には、油脂を含んでいる有機質汚泥に凝集剤を添加し、凝集したフロックを分離した後、脱水機で脱水する有機質汚泥の脱水方法が記載されている。特許文献1に記載の技術によれば、凝集剤として1番目に鉄系もしくはアルミ系酸性無機凝集剤を添加し、2番目にアニオン系有機高分子凝集剤を添加し、3番目に両性有機高分子凝集剤を添加することによって、汚泥をより効率的に凝集させることが可能となる。これによって、排水処理工程に対する負荷を軽減したり汚泥の脱水ケーキ量を減少させて廃棄コストを減少させることが可能となるとされている。
【0003】
しかしながら、排水処理において凝集剤により油脂を凝集させる特許文献1を始めとする上記従来技術では、凝集されて固形化した油脂を液体燃料として再利用することがきわめて困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実に鑑みなされたもので、排水から油脂分を固形物に凝集させることなく効率的に分離することにより油脂の液体燃料としての再利用を可能とした、排水油脂分離装置及び方法、並びに、該装置及び方法を利用した油脂分離回収システムを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の油脂分離装置は、油脂含有排水が貯留されている貯留槽と、貯留槽に貯留された油脂含有排水に浮かぶ浮上油回収用フロートと、前記油脂含有排水中に浮上した浮上油を前記浮上油回収用フロートから回収する第1のポンプと、前記第1のポンプにより回収された浮上油を貯留し、該浮上油に含まれる油脂と水とを比重差により分離する油水分離タンクと、前記油水分離タンクにより分離されて回収された油脂を貯えて加温する加温タンクと、前記加温タンクから送られてきた回収油脂を遠心分離することによって、さらに水と固形物と油脂とに分離する遠心分離機と、前記遠心分離機により分離された分離油をふるいにかかけることにより残渣を除去して燃料油を取り出すためのふるい機と、前記ふるい機により残渣が除去された燃料油を貯留する燃料貯留タンクと、を備えて構成したものである。
【0007】
また、本発明は、前記の各構成機器とタンクとの間で油脂含有排水や分離油、燃料油を移送するため、必要に応じてポンプをさらに備えていてもよく、また、ポンプで送液する際に必要に応じて一時貯留タンクを設けてもよい。
【0008】
例えば、前記加温タンクから前記遠心分離機へ回収油脂を送油する第2のポンプをさらに備えることができる。また、前記ふるい機により残渣が除去された残渣除去油を一時的に貯留する残渣除去油一時貯留タンクと、前記残渣除去油一時貯留タンクに貯留された残渣除去油を前記燃料貯留タンクに移送する第3のポンプと、をさらに備えることができる。さらには、前記遠心分離機により分離された水と前記油水分離タンクから分離された水とを前記貯留槽に移送する第4のポンプをさらに備えることができる。
【0009】
さらに、本発明の油脂分離装置は、前記遠心分離機により分離された固形物である脱水ケーキを移送処理するため、固形物を所定量まで貯めておく脱水ケーキホッパーや前記脱水ケーキホッパーに貯められた脱水ケーキを外部の脱水ケーキ処理装置及び又は工程へ移送する第5のポンプをさらに備えていてもよい。
【0010】
本発明のさらに好ましい態様は、前記ふるい機は、少なくとも1つの金網と、前記分離油を前記金網を通してふるい分けするとき振動を発生することを可能とする振動発生部と、を備える。この振動によって、金網の目詰まりを防止して分離油のふるい分けを促進することができる。
【0011】
本発明の上記した油脂分離装置は、油脂分離装置により分離された燃料油を回収して利用する油脂分離回収システムに組み込むことが可能である。油脂分離回収システムは、上記した油脂分離装置と、前記燃料貯留タンクに貯留された燃料を移送する第6のポンプと、前記第6のポンプにより移送された燃料を利用する回収燃料利用装置とをさらに備えて構成したものである。ここで、回収燃料利用装置としては、例えば廃油焚ボイラーなどが挙げられるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0012】
本発明の別の態様に係る油脂分離方法は、油脂含有排水を貯留する工程と、貯留された油脂含有排水に浮上した浮上油を回収する工程と、回収された浮上油を貯留し、該浮上油に含まれる油脂と水とを比重差によりさらに分離する工程と、分離されて回収された油脂を加温する工程と、加温された回収油脂を遠心分離することによって、さらに水と固形物と油脂とに分離する工程と、遠心分離された分離油をふるいにかけることにより残渣を除去して燃料油を取り出す工程と、
を備えて構成したものである。
【0013】
本発明の方法は、前記ふるい工程により残渣が除去された残渣除去油を一時的に貯留する工程と、前記一時的に貯留された残渣除去油を燃料貯留タンクに移送する工程と、をさらに備えていてもよい。
【0014】
また、前記遠心分離工程により分離された水と前記さらに分離する工程により含有油脂を分離された水とを前記油脂含有排水を貯留する工程で再処理する工程をさらに備えていてもよい。さらに、前記遠心分離工程により分離された固形物である脱水ケーキを所定量まで貯めておく工程と、前記脱水ケーキが所定量まで貯められたとき外部へと移送する工程と、をさらに備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る油脂分離装置を備える、油脂分離回収システムの概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る排水油脂分離方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図1の排水油脂分離装置の原水槽で用いられる浮上油回収用フロートの概略構造図である。
【
図4】
図4は、
図1の排水油脂分離装置の油水分離タンクの概略構造図である。
【
図5】
図5は、
図1の排水油脂分離装置の加温タンクの概略構造図である。
【
図6】
図6は、
図1の排水油脂分離装置の遠心分離機の概略構造図である。
【
図7】
図7は、
図1の排水油脂分離装置の振動ふるい機の概略構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
【0017】
図1には、本発明の一実施形態に係る排水油脂分離装置1の概略図が示されている。
図1に示されるように、排水油脂分離装置1は、油脂含有排水を貯留する貯留槽2と、貯留槽2に貯留された油脂含有排水に浮かぶ浮上油回収用フロート2aと、油脂含有排水中に浮上した浮上油脂を浮上油回収用フロート2aから回収するポンプ3と、ポンプ3により回収された浮上油を貯留し、該浮上油に含まれる油脂と水を比重差によりさらに分離する油水分離タンク4と、油水分離タンク4により分離されて回収された油脂を貯えて加温する加温タンク5と、加温タンク5から回収油脂を送り出すためのポンプ6と、ポンプ6から送られてきた回収油脂を遠心分離することによって、さらに水と固形物と油脂とに分離する遠心分離機7と、遠心分離機7により分離された水と油水分離タンク4から分離された水とを貯留槽2に移送するポンプ8と、遠心分離機7により分離された分離油をふるいにかけることにより残渣を除去して燃料油を取り出すふるい機9と、ふるい機9により残渣が除去された残渣除去油を一時的に貯留する残渣除去油一時貯留タンク10と、残渣除去油一時貯留タンク10に貯留された残渣除去油を移送する残渣除去油移送ポンプ11と、残渣除去油移送ポンプ11から移送された残渣除去油を燃料油として貯留する燃料貯留タンク12と、遠心分離機7により分離された固形物(脱水ケーキ)を所定量まで貯めておく脱水ケーキホッパー13と、を備えている。
【0018】
さらに、排水油脂分離装置1は、脱水ケーキホッパー13に貯められた脱水ケーキを図示しない脱水ケーキ処理装置及び又は工程へ移送するポンプ14を備えることができる。脱水ケーキ処理装置は排水油脂分離装置1の外部に設けられていてもよい。
【0019】
本発明の一実施形態に係る油脂分離回収システム1aは、上述した排水油脂分離装置1と、燃料貯留タンク12に貯留された燃料を移送するポンプ15と、ポンプ15により排水油脂分離装置1から送られてきた燃料油を回収して利用する回収燃料利用装置16とを備えて構成したものである。回収燃料利用装置16の例としては、送られてきた燃料を燃焼させる廃油焚ボイラーなどが考えられるが、本発明は、この例に限定されるものではない。回収燃料利用装置16として廃油焚ボイラーを使用した場合、ボイラーの燃焼熱で発生した蒸気を様々な用途に使用することができる。例えば、この蒸気を、発電機に連結されたタービンを回すことに使用することによって発電することも可能となる。
【0020】
次に、
図1に示された幾つかの構成要件(2a、4、5、7、9)を
図3から
図7を用いて各々詳細に説明する。
【0021】
図3には、浮上油回収用フロート2aの概略構造が示されている。
図3に示されるように、浮上油回収用フロート2aは、貯留槽2内の排水中に浮かぶことができる1又は複数個のフロート部分30と、該フロート部分30に連結されたフレーム31と、を備える。フレーム31には、吸引口を上方に向けた吸引部34が取り付けられ、吸引部34は、図示しないホース等により、ポンプ3を介して油水分離タンク4へと接続されている。吸引部34の吸引口が排水面37の直ぐ下方に位置するようにフロート部分30の浮力が設定されており、これによって、吸引口から原水槽2の排水の最上部に浮上している比重の軽い油脂を吸引することが可能となる。
【0022】
なお、フロート部分30が安定した状態で浮上油を吸引することを可能にするための好ましい構造として、フレーム31は、貯水槽2に固定された一対のバー38,39と交差する位置に貫通孔35、36を有し、該貫通孔35、36にバー38,39が各々貫通することにより、フロート部分30が、排水面37の位置に応じてバー38,39に沿って上下に摺動する構造を設けてもよい。本発明の浮上油回収用フロート2aは、フロート部分30を上下に摺動させる図示の例に限定されるものではなく、種々に変更可能である。
【0023】
図4には、油水分離タンク4の概略構造が示されている。
図4に示されるように、油水分離タンク4は、貯留槽2から送られてきた排水を貯留することが可能な貯留部40と、分離油配管41と、貯留槽2からの浮上油を貯留部40に導入するための導入口44と、貯留部40内の排水を吐出するための吐出口45と、を備えている。分離油配管41は、貯留部40内の上部に位置する入口開口42と、貯留部40の外部に延在する出口開口43と、を備えている。貯留槽2から送られてきた浮上油脂を含む排水が貯留部40内に貯留された際に、排水に含まれる油脂と水が比重差により分離する。46の位置まで貯留部40内に貯留されたとき、分離油配管41の入口開口42は、排水面46の直ぐ下方に位置しているため、排水の最上部に浮上している比重の軽い油脂47は入口開口42から分離油配管41を通って出口開口43から分離油として回収される。貯留部40内の下部に貯留した油脂と分離した水は、吐出口45から貯留槽2へポンプ8により戻される。
【0024】
図5には、加温タンク5の概略構造が示されている。
図5に示されるように、加温タンク5は、油水分離タンク4からの回収油脂を貯留する貯留部50と、貯留部50内に配置された蒸気熱交換管51と、分離油管54と、貯留部50内に貯留された油脂の温度を検出する温度センサ55と、を備えている。蒸気熱交換管51は、蒸気配管入口52と、蒸気配管出口53とを有し、蒸気が蒸気配管入口52から供給され、蒸気配管出口53から出る間に、蒸気熱交換管51内の蒸気は貯留部50内の回収油脂を加温する。温度センサ55によって検出された回収油脂の温度が所定範囲の温度となるように蒸気熱交換管51を流れる蒸気量が調節される。なお、加温タンク5は、貯留部50内の回収油脂を攪拌するための攪拌装置を備えるのが好ましい。
【0025】
図6には、遠心分離機7の概略構造が示されている。
図6に示されるように、遠心分離機7は、ボウル60と、ボウル60の内部に配置されたスクリューコンベア61と、ボウル60の回転軸部分63を支持するベアリング64、68と、ボウル60を回転させる動力を伝達するためのプーリー65と、加温タンク5からの油脂をボウル60の内部に供給するため回転軸部分63の内部を通ってボウル60の内部へと延在する供給配管66と、スクリューコンベア61の回転軸67に連結されたギアボックス69と、スクリューコンベア61の回転動力を伝達するためギアボックス69を介して回転軸67に連結されたプーリー70と、ボウル60の小径側排出口71と、ボウル60の大径側排出口72と、大径側排出口72の手前に配置された仕切り板74と、ハウジング73と、を備えている。なお、スクリューコンベア61はボウル60と同じ方向に回転させられるが、僅かに回転速度に差が生じるように、ギアボックス69のギア比が調整されている。
【0026】
加温タンク5からの油脂が供給配管66を通ってボウル60の内部へと供給され、ボウル60が高速回転されるとき、発生した遠心力によって油脂中の固形物が沈降分離されて、ボウル60の内壁に堆積される。このとき、スクリューコンベア61もボウル60と同じ方向に僅かに異なる回転速度で回転されるため、ボウル60の内壁に堆積された固形物は、スクリューコンベア61の作用によってボウル60の小径側に運ばれる。ボウル60の小径側へと運ばれる固形物はボウル60の傾斜面にて脱水されて小径側排出口71から排出される。一方、液体部分は、ボウル60の遠心力により、ボウル60のより内壁側に比重の大きい重液(水)が、ボウル60のより中心側に比重の小さい軽液(油脂)が集まり、これによって水と油脂とが分離される。大径側排出口72の手前にある仕切り板74により大径側排出口72がより径の大きい側にある第1の排出口75と、より径の小さい側にある第2の排出口76とに分割されているため、ボウル60のより内壁側に集まった重液は第1の排出口75から排出され、ボウル60のより中心側に集まった軽液(油脂)は、第2の排出口76から排出される。このように大径側排出口72に仕切り板74がある機械構造により、油脂と水とを遠心力により適切に分離することができるため、水分の含水率の少ない油脂に分離できる点が特に廃油ボイラー等の燃料用油として使用するために重要である。小径側排出口71から排出された固形物は脱水ケーキとして脱水ケーキホッパー10(
図1)へと運ばれ、第1の排出口75から排出された水は貯留槽2へポンプ8により戻され、第2の排出口76から排出された油脂は分離油としてふるい機9(
図1)へと運ばれる。かくして、遠心分離によって、加温された回収油脂は、脱水ケーキと、水と、分離油とに分離される。
【0027】
図7には、ふるい機9の概略構造が示されている。
図7に示されるように、ふるい機9は、分離油が供給される供給口80と、分離油をふるい分けするためのふるい分け部81とを備える。
【0028】
ふるい分け部81は、少なくとも1つの金網83と、金網83を通過した残渣除去油を受ける受け皿部83bと、残渣除去油が排出される排出口84と、残渣排出口85と、を備えている。金網83の目開きより小さい粒子や液体は、金網83を通過することができるが、金網83の目開きより大きい粒子は金網83を通過することができない。かくして、金網83を通過し受け皿部83bで受けた油脂を残渣除去油として残渣除去油排出口84から取り出すことが可能となり、金網83を通過しない固形物を残渣として残渣排出口85から排出することができる。
【0029】
本実施形態に係るふるい機9は、好ましくは、金網83によるふるい分けを促進するため、ふるいにかけられる分離油に振動を与える振動発生部82を備えている。一例としての振動発生部82は、モータ86と、モータ86のシャフト87の一端部に偏心して取り付けられた偏心ウェイト88とから構成することができる。モータ86を回転させると、偏心ウェイト88に生じる遠心力により振動を発生させることができる。この振動は、ふるい分け部81の分離油に伝搬され、金網83の目詰まりを防止して、ふるい分けを促進させることができる。なお、偏心ウェイトは、モータ86のシャフト87の両端部に設けることもできる。
【0030】
本発明は、振動発生部82の構成を
図7の例に限定するものではなく、振動を発生させて金網83の目詰まりを防止可能な任意構成を採用することができる。また、金網83は、一つだけでなく目開きのサイズの異なる複数の金網を用いてもよい。
【0031】
次に、排水油脂分離装置1で実行される排水油脂分離処理の流れを
図2のフローチャートを使用して説明する。
【0032】
図2に示されるように、先ず貯留槽2に油脂含有排水を貯留する(ステップ100)。油脂は水よりも比重が小さいため、貯留槽2内に貯留された排水中で、油脂はより上部へと浮上する。
【0033】
次に、ポンプ3を駆動させることにより、排水中で浮上した油脂を、浮上油回収用フロート2aから回収する(ステップ102)。回収された油脂は、ポンプ3により、油水分離タンク4へと送られる。
【0034】
次に、回収された浮上油を油水分離タンク4に貯留し、油水分離タンク4から該浮上油の上部にある比重の軽い油脂を取り出すことにより、さらに油脂と水とに粗く分離する(ステップ104)。油水分離タンク4から取出された油脂は加温タンク5に送られ、油水分離タンク4の残留水は、ポンプ8により、貯留槽2に再び戻されて同様の処理が繰り返される。
【0035】
次に、加温タンク5において、油水分離タンク4から送られてきた油脂を加温する(ステップ106)。加温タンク5では、排水含有油脂の性状に合わせて液状になる様な温度(例えば、約60度)に油脂が加温され、これによって後工程での油脂と水との分離がさらに容易となる。
【0036】
加温された油脂は、ポンプ6によって、遠心分離機7に送られ、遠心分離機7は、遠心力によって、分離油をさらに水と固形物と油脂とに分離する(ステップ108)。
【0037】
遠心分離機7によって遠心分離された油脂は、ふるい機9に送られ、ふるい機9は、油脂をふるいにかけて残滓を除去する(ステップ110)。かくして、残渣除去油としての燃料油が取り出される。
【0038】
残渣除去油としての燃料油は、ふるい機9から出ると、一時的に残渣除去油一時貯留タンク10に貯留され、残渣除去油移送ポンプ11によって燃料貯蓄タンク12に送られ、燃料貯蓄タンク12に貯留される(ステップ112)。
【0039】
本実施形態の油脂分離装置1によれば、従来技術のように凝集剤を用いることなく、油脂含有排水から約30%の高い比率で液体の燃料油を取り出すことが可能となる。すなわち、燃料油としてこれまで汚泥として産廃処理されていた排水含有油脂を再利用することがきわめて容易となる。また、
図1に例示した油脂分離回収システム1aにおいて、回収燃料利用装置16として廃油焚ボイラーを用いる場合、油脂分離装置1からの燃料油を重油等の燃料と混ぜることなく用いることが可能であり、廃油焚ボイラーにて連続的に蒸気を発生させることができる。
【0040】
以上が本発明の実施形態であるが、本発明は上記例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で任意好適に変更可能である。例えば、本発明の排水油脂分離装置は、
図1の各構成機器と同じ作用を有するものであれば、
図3~
図7に例示された各構成機器とは異なる構成の構成機器を用いてもよい。また、本発明の排水油脂分離方法は、
図2のフローチャートの各ステップと同じ作用を有するものであれば、
図1、
図3~
図7に示される各構成機器と異なる構成機器を用いてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 排水油脂分離装置
1a 油脂分離回収システム
2 貯留槽
2a 浮上油回収用フロート
3 ポンプ
4 油水分離タンク
5 加温タンク
6 ポンプ
7 遠心分離機
8 ポンプ
9 ふるい機
10 残渣除去油一時貯留タンク
11 残渣除去油移送ポンプ
12 燃料貯留タンク
13 脱水ケーキホッパー
14 ポンプ
15 ポンプ
16 回収燃料利用装置
30 フロート部分
31 フレーム
34 吸引部
35,36 貫通孔
37 排水面
38,39 バー
40 貯留部
41 分離油配管
42 入口開口
43 出口開口
44 導入口
45 吐出口
46 排水面
47 排水の最上部に浮上している油脂
50 貯留部
51 蒸気熱交換管
52 蒸気配管入口
53 蒸気配管出口
54 分離油管
55 温度センサ
60 ボウル
61 スクリューコンベア
63 回転軸部分
64,68 ベアリング
65、70 プーリー
66 供給配管
67 回転軸
69 ギアボックス
71 小径側排出口
72 大径側排出口
73 ハウジング
74 仕切り板
75 水(重液)排出口(第1の排出口)
76 油脂(軽液)排出口(第2の排出口)
80 供給口
81 ふるい分け部
82 振動発生部
83 金網
83b 残渣除去油受け皿部
84 残渣除去油排出口
85 残渣排出口
86 モータ
87 シャフト
88 偏心ウェイト
【手続補正書】
【提出日】2022-02-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂含有排水から油脂を分離する油脂分離装置であって、
油脂含有排水が貯留されている貯留槽と、
前記貯留槽に貯留された油脂含有排水に浮かぶ浮上油回収用フロートと、
前記油脂含有排水中に浮上した浮上油を前記浮上油回収用フロートから回収する第1のポンプと、
前記第1のポンプにより回収された浮上油を貯留し、該浮上油に含まれる油脂と水とを比重差によりさらに分離する油水分離タンクと、
前記油水分離タンクにより分離されて回収された油脂を貯えて加温する加温タンクと、
前記加温タンクから送られてきた回収油脂を遠心分離することによって、さらに水と固形物と油脂とに分離する遠心分離機と、
前記遠心分離機により分離された分離油を振動を発生させながらふるいにかけることにより残渣を除去して燃料油を取り出す振動ふるい機と、
前記振動ふるい機により残渣が除去された燃料油を貯留する燃料貯留タンクと、
を備える、油脂分離装置。
【請求項2】
前記加温タンクから前記遠心分離機へ回収油脂を送油する第2のポンプをさらに備える、請求項1に記載の油脂分離装置。
【請求項3】
前記振動ふるい機により残渣が除去された残渣除去油を一時的に貯留する残渣除去油一時貯留タンクと、
前記残渣除去油一時貯留タンクに貯留された残渣除去油を前記燃料貯留タンクに移送する第3のポンプと、
をさらに備える、請求項1又は2に記載の油脂分離装置。
【請求項4】
前記遠心分離機により分離された水と前記油水分離タンクから分離された水とを前記貯留槽に移送する第4のポンプをさらに備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の油脂分離装置。
【請求項5】
前記遠心分離機により分離された固形物を移送処理するため、該固形物を所定量まで貯めておく脱水ケーキホッパーをさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の油脂分離装置。
【請求項6】
前記脱水ケーキホッパーに貯められた脱水ケーキを外部の脱水ケーキ処理装置及び又は工程へ移送する第5のポンプをさらに備える、請求項1から5のいずれか1項に記載の油脂分離装置。
【請求項7】
前記振動ふるい機は、少なくとも1つの金網と、前記分離油を該金網を通してふるい分けするとき振動を発生することを可能とする振動発生部と、を備える、請求項1から6のいずれか1項に記載の油脂分離装置。
【請求項8】
前記振動ふるい機は、前記金網を通過しない固形物を残渣として排出する残渣排出口をさらに備える、請求項7に記載の油脂分離装置。
【請求項9】
前記振動発生部は、モータと、該モータのシャフトの一端部又は両端部に偏心して取り付けられた偏心ウェイトと、を備える、請求項7又は8に記載の油脂分離装置。
【請求項10】
油脂含有排水から油脂を分離する油脂分離方法であって、
油脂含有排水を貯留する工程と、
貯留された油脂含有排水に浮上した浮上油を回収する工程と、
回収された浮上油を貯留し、該浮上油に含まれる油脂と水とを比重差によりさらに分離する工程と、
分離されて回収された油脂を加温する工程と、
加温された回収油脂を遠心分離することによって、さらに水と固形物と油脂とに分離する工程と、
遠心分離された分離油を振動を発生させながらふるいにかけることにより残渣を除去して燃料油を取り出す工程と、
を備える、油脂分離方法。
【請求項11】
前記ふるい工程により残渣が除去された残渣除去油を一時的に貯留する工程と、
前記一時的に貯留された残渣除去油を燃料貯留タンクに移送する工程と、
をさらに備える、請求項10に記載の油脂分離方法。
【請求項12】
前記遠心分離工程により分離された水と前記さらに分離する工程により分離された水とを前記油脂含有排水を貯留する工程で再処理する工程をさらに備える、請求項10又は11に記載の油脂分離方法。
【請求項13】
前記遠心分離工程により分離された固形物である脱水ケーキを所定量まで貯めておく工程と、
前記脱水ケーキが所定量まで貯められとき外部へと移送する工程と、
をさらに備える、請求項10から12のいずれか1項に記載の油脂分離方法。
【請求項14】
前記分離油をふるいにかける工程は、振動ふるい機を使用する工程であり、前記振動ふるい機は、少なくとも1つの金網と、前記分離油を該金網を通してふるい分けするとき振動を発生することを可能とする振動発生部と、前記金網を通過しない固形物を残渣として排出する残渣排出口とを備える、請求項10から13のいずれか1項に記載の油脂分離方法。
【請求項15】
請求項1から9のいずれか1項に記載の油脂分離装置と、
前記燃料貯留タンクに貯留された燃料を移送する第6のポンプと、
前記第6のポンプにより移送された燃料を利用する回収燃料利用装置と
をさらに備える、油脂分離回収システム。