(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093598
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】疾患の診断プローブとしての改変免疫細胞
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20230627BHJP
C12N 5/0786 20100101ALI20230627BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20230627BHJP
C12N 5/0781 20100101ALI20230627BHJP
C12N 5/0784 20100101ALI20230627BHJP
C12N 5/0789 20100101ALI20230627BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20230627BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20230627BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20230627BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N5/0786
C12N5/0783
C12N5/0781
C12N5/0784
C12N5/0789
C12N5/071
C12N15/63 Z
C12N15/113 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023066950
(22)【出願日】2023-04-17
(62)【分割の表示】P 2020544022の分割
【原出願日】2019-02-27
(31)【優先権主張番号】62/635,664
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/794,011
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 尚
(72)【発明者】
【氏名】アーリプア,アミン
(72)【発明者】
【氏名】ガンビール,サンジヴ エス.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】疾患の診断プローブとしての改変免疫細胞を提供する。
【解決手段】病態部位に移動する免疫細胞の能力に基づく超高感度疾患検出に有用な細胞ベースのインビボセンサーの新しいクラスを提供する遺伝子修飾免疫細胞の実施形態が本明細書に記載される。本細胞ベースのセンサーは、癌の早期検出のためのアプローチを提供し、癌を含むがこれに限定されない多様な疾患状態のモニタリングにおける改変免疫細胞の使用を可能にする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種核酸を含む遺伝子修飾免疫細胞であって、前記遺伝子修飾免疫細胞を受容する動物
またはヒト対象における病的状態によって誘導される代謝または分子発現変化に応答して
検出可能な薬剤を発現するように構成されている、遺伝子修飾免疫細胞。
【請求項2】
前記遺伝子修飾免疫細胞が、単球、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラ
ー(NK)細胞、骨髄細胞、幹細胞、または樹状細胞である、請求項1に記載の遺伝子修
飾免疫細胞。
【請求項3】
前記異種核酸が、検出可能な薬剤をコードする核酸配列に作動可能に連結された遺伝子
発現調節領域を含み、前記遺伝子発現調節領域が、病態特異的代謝変化に応答して前記検
出可能な薬剤の発現を誘導する、請求項1に記載の遺伝子修飾免疫細胞。
【請求項4】
前記異種核酸が核酸ベクターである、請求項1に記載の遺伝子修飾免疫細胞。
【請求項5】
前記異種核酸がプラスミドである、請求項4に記載の遺伝子修飾免疫細胞。
【請求項6】
前記遺伝子発現調節領域が遺伝子プロモーター領域を含む、請求項1に記載の遺伝子修
飾免疫細胞。
【請求項7】
前記遺伝子発現調節領域が遺伝子特異的エンハンサーをさらに含む、請求項6に記載の
遺伝子修飾免疫細胞。
【請求項8】
前記遺伝子プロモーターが、ARG1プロモーター、AKT1プロモーター、バーシカ
ンプロモーター、MIFプロモーター、Ym1プロモーター、CD206プロモーター、
FIZZ1プロモーター、DC-SIGNプロモーター、CD209、プロモーター、M
GL-1プロモーター、デクチン-1プロモーター、CD23プロモーター、ガレクチン
-3プロモーター、Merチロシンキナーゼプロモーター、AXL受容体タンパク質プロ
モーター、GAS-6プロモーター、NOS-2プロモーター、CD68プロモーター、
CD86プロモーター、CCL18プロモーター、CD163プロモーター、MMR/C
D206プロモーター、CD200Rプロモーター、TGM2プロモーター、Decoy
Rプロモーター、IL-1RIIプロモーター、IL-10プロモーター、TGF-ベー
タプロモーター、IL-1raプロモーター、CCL17プロモーター、CCL2プロモ
ーター、またはCCL24プロモーターである、請求項6に記載の遺伝子修飾免疫細胞。
【請求項9】
前記検出可能な薬剤が、検出可能なポリペプチドまたは分泌可能な核酸である、請求項
1に記載の遺伝子修飾免疫細胞。
【請求項10】
前記検出可能なポリペプチドが、造影剤、レポーター遺伝子に相補的な結合剤、検出可
能な分子を生成する酵素、光音響レポーター、生物発光レポーター、自己蛍光レポーター
、化学発光レポーター、発光レポーター、または比色レポーター、非侵襲的イメージング
によって検出することができる薬剤、または検出可能な分子の蓄積を促進するトランスポ
ーターである、請求項9に記載の遺伝子修飾免疫細胞。
【請求項11】
前記検出可能な薬剤が分泌可能な核酸であり、前記分泌可能な核酸が、RT-QPCR
、QPCR、ハイブリダイゼーション、シーケンシング、または質量分析によって検出可
能な構造化RNAまたは合成miRNAである、請求項9に記載の遺伝子修飾免疫細胞。
【請求項12】
前記検出可能なポリペプチドがフェリチンである、請求項10に記載の遺伝子修飾免疫
細胞。
【請求項13】
前記検出可能なポリペプチドがガウシアルシフェラーゼ(Gluc)である、請求項1
0に記載の遺伝子修飾免疫細胞。
【請求項14】
前記検出可能なポリペプチドがHSV1-tkである、請求項10に記載の遺伝子修飾
免疫細胞。
【請求項15】
前記検出可能なポリペプチドがドーパミンD2受容体のD80RA変異体である、請求
項10に記載の遺伝子修飾免疫細胞。
【請求項16】
前記検出可能なポリペプチドがヒトヨウ化ナトリウムシンポーター(hNIS)である
、請求項10に記載の遺伝子修飾免疫細胞。
【請求項17】
前記異種核酸が、配列番号1に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%の同一性
を有する、請求項1に記載の遺伝子修飾免疫細胞。
【請求項18】
前記異種核酸が前記検出可能な薬剤をコードする、請求項1に記載の遺伝子修飾免疫細
胞。
【請求項19】
前記遺伝子修飾免疫細胞における腫瘍特異的代謝変化に応答して、前記遺伝子発現調節
領域が前記検出可能な薬剤の発現を誘導する、請求項3に記載の遺伝子修飾免疫細胞。
【請求項20】
前記遺伝子修飾免疫細胞における前記腫瘍特異的代謝変化が、膀胱癌、乳癌、結腸直腸
癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、肺癌、黒色腫、非小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、
子宮癌、子宮頸癌、甲状腺癌、胃癌、脳幹神経膠腫、小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫、
膠芽腫、上衣腫、ユーイング病肉腫ファミリー腫瘍、胚細胞腫瘍、頭蓋外癌、ホジキン病
白血病、肝癌、髄芽腫、神経芽細胞腫、脳腫瘍、骨肉腫、骨の悪性線維性組織球腫、網膜
芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、松果体腫瘍、視経路およ
び視床下部膠腫、ウィルムス腫瘍、食道癌、有毛細胞白血病、腎臓癌、口腔癌、膵臓癌、
皮膚癌、ならびに小細胞肺癌からなる群より選択される癌によって誘導される、請求項1
9に記載の遺伝子修飾免疫細胞。
【請求項21】
前記遺伝子修飾免疫細胞における前記病態特異的代謝変化が炎症によるものである、請
求項3に記載の遺伝子修飾免疫細胞。
【請求項22】
遺伝子修飾免疫細胞を生成する方法であって、
(a)ヒトまたは動物対象から病態応答性免疫細胞の集団を単離するステップと、
(b)(a)で単離された病理応答性免疫細胞の単離された集団の病態応答性免疫細
胞を異種核酸で形質転換して、前記遺伝子修飾免疫細胞を得るステップであって、前記異
種核酸は検出可能な薬剤をコードし、前記遺伝子修飾免疫細胞は、前記遺伝子修飾免疫細
胞を受容する動物またはヒト対象における病的状態によって誘導される代謝変化に応答し
て前記検出可能な薬剤を発現するように構成されているステップと、を含む、方法。
【請求項23】
前記病態応答性免疫細胞が腫瘍応答性免疫細胞である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記腫瘍応答性免疫細胞がマクロファージである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
動物またはヒト対象の病的状態を検出する方法であって、
請求項1~21のいずれかに記載の遺伝子修飾免疫細胞の集団を含む薬学的に許容さ
れる組成物を対象に投与するステップと、
前記動物またはヒト対象から生体液サンプルを得るステップと、
前記分泌可能な検出可能な薬剤の存在を前記生体液サンプル中で検出するステップと
、を含み、前記存在は、前記動物またはヒト患者の病的状態との接触時に前記遺伝子修飾
免疫細胞の表現型変化を誘導する病的状態を有することを示す、方法。
【請求項26】
前記遺伝子修飾免疫細胞が腫瘍応答性マクロファージである、請求項25に記載の方法
。
【請求項27】
前記病的状態が癌である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記病的状態が腫瘍である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記方法が、
前記病的状態に隣接するかまたは付着する病態応答性免疫細胞中の前記検出可能な薬
剤からのシグナルを検出するステップと、
前記対象に対する前記検出可能なシグナルの画像を生成するステップと、
前記対象における局在化されたシグナルの位置を決定するステップと、をさらに含む
、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記生体液が血液である、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
ある量の前記検出可能な薬剤が、前記動物またはヒト患者の病的状態に隣接するかまた
は付着する前記遺伝子修飾免疫細胞によって分泌されない場合に、前記方法を実施するこ
とを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
キットであって、
骨髄由来マクロファージ(BMDM)単離のための装置と、
アルギナーゼ-1(Arg-1)プロモーターに作動可能に連結された検出可能な薬
剤をコードするプラスミドのエンドトキシン不含調製物と、を含むキット。
【請求項33】
対象の病的状態を特定するための方法であって、
(a)検出可能な薬剤をコードする核酸配列を有する異種核酸を含む遺伝子修飾免疫
細胞を前記対象に投与することであって、前記遺伝子修飾免疫細胞は、前記対象における
病的状態によって誘導される代謝変化に応答して前記検出可能な薬剤を発現することと、
(b)前記対象における前記検出可能な薬剤を検出して、前記病的状態を特定するこ
とと、を含む方法。
【請求項34】
前記遺伝子修飾免疫細胞における腫瘍特異的代謝変化に応答するとき、前記遺伝子発現
調節領域が前記検出可能な薬剤の発現を誘導する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記遺伝子修飾免疫細胞における前記腫瘍特異的代謝変化が、膀胱癌、乳癌、結腸直腸
癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、肺癌、黒色腫、非小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、
子宮癌、子宮頸癌、甲状腺癌、胃癌、脳幹神経膠腫、小脳星細胞腫、大脳星細胞腫、膠芽
腫、上衣腫、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、胚細胞腫瘍、頭蓋外癌、ホジキン病白血病
、肝癌、髄芽腫、神経芽腫、脳腫瘍、骨肉腫、骨の悪性線維性組織球腫、網膜芽細胞腫、
横紋筋肉腫、肉腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、松果体腫瘍、視経路および視床下部
膠腫、ウィルムス腫瘍、食道癌、有毛細胞白血病、腎臓癌、口腔癌、膵臓癌、皮膚癌、な
らびに小細胞肺癌からなる群から選択される癌によって誘導される、請求項33に記載の
方法。
【請求項36】
前記遺伝子修飾免疫細胞における前記病態特異的代謝変化が炎症によるものである、請
求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記異種核酸が複数の異なる遺伝子発現調節領域を含み、各調節領域が多種類の検出可
能な薬剤をコードする複数の核酸配列に作動可能に連結されており、前記遺伝子発現調節
領域が、病態特異的代謝変化に応答して、前記検出可能な薬剤の発現を誘導し、その各前
記検出可能な薬剤のレベルは、前記対象の異なる状態の指標である、請求項1に記載の遺
伝子修飾免疫細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年2月27日に出願された「Engineered immune
cells as diagnostic probes of disease」と題
する米国仮特許出願第62/635,664号、および2019年1月18日に出願され
た「Engineered immune cells as diagnostic
probes of disease」と題する米国仮特許出願第62/794,011
号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府支援の研究または開発に関する陳述
本発明は、国立衛生研究所により授与された契約GM007365に基づく政府支援に
よって実施された。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
配列表
本願には、2019年2月13日に作成された「2219072430_ST25」と
題するASCII.txtファイルとして電子形式で提出された配列表が含まれる。配列
表の内容は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0004】
本開示は、一般に、遺伝子改変免疫細胞を含む腫瘍または他の疾患特異的プローブに関
する。本開示はまた、概して、プローブを作製および使用する方法に関する。
【背景技術】
【0005】
原発性疾患と再発の早期発見は、世界的な癌の負担を大幅に軽減するための有望な手段
である。これまでのところ、ほとんどの早期検出の取り組みは、病状に特徴的な内因性バ
イオマーカーの検出に依存してきた。例えば、癌では、タンパク質、循環腫瘍細胞(CT
C)、無細胞循環腫瘍DNA(ctDNA)、癌由来のエキソソーム、腫瘍を含む血小板
、およびマイクロRNAなどのバイオマーカーが多くの研究の対象となっている。内因性
バイオマーカーは、初期の疾患検出努力の最前線にあるが、多くは、疾患管理に影響を与
えるために必要な感度と特異性を欠いている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、もともと患者から単離されていてもまたは単離されていなくてもよい、新規
の改変された(遺伝子修飾された)マクロファージ細胞の実施形態を包含する。遺伝子修
飾は、検出可能なポリペプチドをコードする遺伝子発現カセット、またはmiRNAなど
の核酸の細胞への導入であり、腫瘍または疾患特異的な代謝因子によって誘導可能な遺伝
子プロモーター/エンハンサーの発現制御下にある。
【0007】
したがって、本開示の一態様は、遺伝子修飾免疫細胞を受けた動物またはヒト対象にお
ける病的状態によって誘導される代謝または分子発現変化に応答して検出可能な薬剤を発
現するように構成された異種核酸を含む遺伝子修飾免疫細胞の実施形態を包含する。
【0008】
本開示のこの態様のある実施形態では、遺伝子修飾免疫細胞は、単球、マクロファージ
、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、骨髄細胞、幹細胞、または樹状細胞
であってもよい。
【0009】
本開示のこの態様のある実施形態では、異種核酸は、検出可能な薬剤をコードする核酸
配列に作動可能に連結された遺伝子発現調節領域を含む少なくとも1つの遺伝子発現カセ
ットを含んでもよく、遺伝子発現調節領域は、検出可能な薬剤の発現を誘導するために、
遺伝子修飾免疫細胞における病態特異的代謝変化に応答性であってもよい。
【0010】
本開示のこの態様のある実施形態では、異種核酸は、核酸ベクターであってもよい。
【0011】
本開示のこの態様のある実施形態では、異種核酸はプラスミドであってもよい。
【0012】
本開示のこの態様のある実施形態では、遺伝子発現調節領域は、遺伝子プロモーター領
域を含むことができる。
【0013】
本開示のこの態様のある実施形態では、遺伝子発現調節領域は、遺伝子特異的エンハン
サーをさらに含むことができる。
【0014】
本開示のこの態様のある実施形態では、遺伝子プロモーターは、ARG1プロモーター
、AKT1プロモーター、バーシカンプロモーター、MIFプロモーター、Ym1プロモ
ーター、CD206プロモーター、FIZZ1プロモーター、DC-SIGNプロモータ
ー、CD209プロモーター、MGL-1プロモーター、デクチン-1プロモーター、C
D23プロモーター、ガレクチン-3プロモーター、Merチロシンキナーゼプロモータ
ー、AXL受容体タンパク質プロモーター、GAS-6プロモーター、NOS-2プロモ
ーター、CD68プロモーター、CD86プロモーター、CCL18プロモーター、CD
163プロモーター、MMR/CD206プロモーター、CD200Rプロモーター、T
GM2プロモーター、DecoyRプロモーター、IL-1R IIプロモーター、IL
-10プロモーター、TGF-ベータプロモーター、IL-1raプロモーター、CCL
17プロモーター、CCL2プロモーター、またはCCL24プロモーターであってもよ
い。
【0015】
本開示のこの態様のある実施形態では、検出可能な薬剤は、検出可能なポリペプチドま
たは分泌可能な核酸であってもよい。
【0016】
本開示のこの態様のある実施形態では、検出可能なポリペプチドは、造影剤、レポータ
ー遺伝子に相補的な結合剤、検出可能な分子を生成する酵素、光音響レポーター、生物発
光レポーター、自己蛍光レポーター、化学発光レポーター、発光レポーター、または比色
レポーター、非侵襲的イメージングによって検出することができる薬剤、または検出可能
な分子の蓄積を促進するトランスポーターであってもよい。
【0017】
本開示のこの態様のある実施形態では、検出可能な薬剤は、分泌可能な核酸であっても
よい。
【0018】
本開示のこの態様のある実施形態では、分泌可能な核酸は、RT-QPCR、QPCR
、ハイブリダイゼーション、配列決定、または質量分析によって検出可能な構造化RNA
または合成miRNAであってもよい。
【0019】
本開示のこの態様のある実施形態では、検出可能なポリペプチドはガウシアルシフェラ
ーゼ(Gluc)であってもよい。
【0020】
本開示のこの態様のある実施形態では、検出可能なポリペプチドはフェリチンであって
もよい。
【0021】
本開示のこの態様のある実施形態では、検出可能なポリペプチドは、HSV1-チミジ
ンキナーゼ(HSV1-tk)であってもよい。
【0022】
本開示のこの態様のある実施形態では、検出可能なポリペプチドは、ドーパミンD2受
容体のD80RA変異体であってもよい。
【0023】
本開示のこの態様のある実施形態では、検出可能なポリペプチドは、ヒトヨウ化ナトリ
ウムシンポーター(hNIS)であってもよい。
【0024】
本開示のこの態様のある実施形態では、異種核酸は、配列番号1に示されるヌクレオチ
ド配列と少なくとも80%の同一性を有することができる。
【0025】
本開示のこの態様のある実施形態では、遺伝子発現調節領域は、遺伝子修飾免疫細胞に
おける腫瘍特異的代謝変化に応答して、検出可能な薬剤の発現を誘導することができる。
【0026】
本開示のこの態様のある実施形態では、遺伝子修飾免疫細胞における腫瘍特異的代謝変
化は、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、肺癌、黒色腫、非小細胞肺癌
、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、子宮癌、子宮頸癌、甲状腺癌、胃癌、脳幹神経膠腫、小脳
星細胞腫、大脳星細胞腫、膠芽腫、上衣腫、ユーイング肉腫の家族腫瘍、胚細胞腫瘍、頭
蓋外癌、ホジキン病白血病、肝癌、髄芽腫、神経芽腫、脳腫瘍、骨肉腫、骨の悪性線維性
組織球腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、松果体腫
瘍、視経路および視床下部膠腫、ウィルムス腫瘍、食道癌、有毛細胞白血病、腎臓癌、口
腔癌、膵臓癌、皮膚癌、ならびに小細胞肺癌からなる群より選択される癌によって誘導さ
れる。
【0027】
本開示のある実施形態では、遺伝子修飾免疫細胞における病態特異的代謝変化は、炎症
由来であってもよい。
【0028】
ある実施形態では、異種核酸は、複数の異なる遺伝子発現調節領域を含むことができ、
各調節領域は、多種類の検出可能な薬剤をコードする複数の核酸配列に作動可能に連結さ
れ、遺伝子発現調節領域は、検出可能な作用物質の発現を誘導するための病態特異的代謝
変化に応答し、各検出可能な作用物質のレベルは、対象の異なる状態の指標である。
【0029】
本開示の別の態様は、遺伝子修飾免疫細胞を生成する方法であって、
(a)対象から病理応答性免疫細胞の集団を単離するステップと
(b)(a)で単離された病理応答性免疫細胞の単離された集団の病理応答性免疫細胞
を異種核酸で形質転換して、遺伝子修飾免疫細胞を得るステップであって、異種核酸は検
出可能な薬剤をコードし、遺伝子修飾免疫細胞は、遺伝子修飾免疫細胞を受容する動物ま
たはヒト対象における病的状態によって誘導される代謝変化に応答して検出可能な薬剤を
発現するように構成されているステップと、を含む方法の実施形態を含む。
【0030】
本開示のこの態様のある実施形態では、病変は腫瘍であってもよい。
【0031】
本開示のこの態様のある実施形態では、腫瘍応答性免疫細胞はマクロファージである。
【0032】
本開示のさらに別の態様は、動物またはヒト対象における病的状態を検出する方法であ
って、本開示に従う遺伝子修飾免疫細胞の集団を含む薬学的に許容される組成物を動物ま
たはヒト対象に投与するステップと、動物またはヒト対象から生体液サンプルを得るステ
ップと、生体液サンプルが、動物またはヒトの患者の病的状態と接触または近接した遺伝
子修飾免疫細胞によって発現される分泌可能な検出可能な薬剤を含むかどうかを決定する
ステップと、を含む方法の実施形態を包含する。
【0033】
本開示のこの態様のある実施形態では、生体液は血液であってもよい。
【0034】
本開示のこの態様のある実施形態では、分泌可能な検出可能な薬剤の存在は、動物また
はヒトが、病的状態と接触する遺伝子修飾免疫細胞に表現型変化を誘導する病的状態を有
することを示す。
【0035】
ある実施形態では、遺伝子修飾応答性免疫細胞は腫瘍応答性マクロファージである。
【0036】
本開示のこの態様のある実施形態では、病的状態は癌であってもよい。
【0037】
ある実施形態では、病的状態は腫瘍である。
【0038】
本開示のこの態様のある実施形態では、方法は、病的状態に隣接するか、または病的状
態に付着する病理応答性免疫細胞において検出可能な薬剤からのシグナルを検出するステ
ップと、対象に対する検出可能なシグナルの画像を生成するステップと、対象における局
所シグナルの位置を決定するステップと、をさらに含むことができる。
【0039】
本開示のこの態様のある実施形態では、生体液は血液である。
【0040】
ある実施形態では、この方法は、検出可能な薬剤の量が、動物またはヒト患者の病的状
態に隣接するかまたはそれに付着している遺伝子修飾免疫細胞によって分泌されないとき
に行われる。
【0041】
本開示のさらに別の態様は、骨髄由来マクロファージ(BMDM)単離のための装置と
、アルギナーゼ-1(ARG-1)プロモーターに作動可能に連結された検出可能な薬剤
をコードするプラスミドのエンドトキシンを含まない調製物とを含むキットの実施形態を
包含する。
【0042】
本開示の別の態様は、対象の病的状態を特定する方法であって、(a)検出可能な薬剤
をコードする核酸配列を有する異種核酸を含む遺伝子修飾免疫細胞を対象に投与するステ
ップであって、遺伝子修飾免疫細胞は、対象の病的状態によって誘導される代謝変化に応
答して検出可能な薬剤を発現するステップと、(b)対象の検出可能な薬剤を検出して病
的状態を同定するステップと、を含む、方法の実施形態を包含する。
【0043】
本開示のこの態様のある実施形態では、遺伝子修飾免疫細胞における腫瘍特異的代謝変
化に応答するとき、遺伝子発現調節領域は、検出可能な薬剤の発現を誘導することができ
る。
【0044】
本開示のこの態様の実施形態では、遺伝子修飾免疫細胞における腫瘍特異的代謝変化は
、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、肺癌、黒色腫、非小細胞肺癌、卵
巣癌、前立腺癌、精巣癌、子宮癌、子宮頸癌、甲状腺癌、胃癌、脳幹神経膠腫、小脳星細
胞腫、大脳星細胞腫、膠芽腫、上衣腫、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、胚細胞腫瘍、頭
蓋外癌、ホジキン病白血病、肝癌、髄芽腫、神経芽腫、脳腫瘍、骨肉腫、骨の悪性線維性
組織球腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、松果体腫
瘍、視経路および視床下部膠腫、ウィルムス腫瘍、食道癌、有毛細胞白血病、腎臓癌、口
腔癌、膵臓癌、皮膚癌、ならびに小細胞肺癌からなる群から選択される癌によって誘導す
ることができる。
【0045】
本開示のこの態様のある実施形態では、遺伝子修飾免疫細胞における病態特異的な代謝
変化は、炎症によるものである。
【0046】
遺伝子修飾免疫細胞のある実施形態では、異種核酸は複数の異なる遺伝子発現調節領域
を含み、各調節領域は多種類の検出可能な薬剤をコードする複数の核酸配列に作動可能に
連結されており、遺伝子発現調節領域は、病態特異的代謝変化に応答して、検出可能な薬
剤の発現を誘導し、その各検出可能な薬剤のレベルは、対象の異なる状態の指標である。
【0047】
本開示のさらなる態様は、添付の図面と併せて、以下で説明される、その様々な実施形
態の詳細な説明を検討すると、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】診断用養子細胞移入の模式図である。マクロファージは、「腫瘍関連」代謝プロファイルを採用すると、合成バイオマーカーを分泌するように遺伝子改変されている。改変されたマクロファージは、同系宿主に静脈内注射され、病理学の既存の部位を狙う(home in)ことを許される。次に、血液検査(または他の生体液の検査)を使用して、疾患の存在を示す改変されたマクロファージからのバイオマーカーの分泌を監視することができる。このシステムは、イメージング可能な合成バイオマーカーを使用して、免疫細胞活性化の空間情報も提供することができる。「Macs」という用語はマクロファージを意味する。
【
図2A】[
図2A~2F](a)M2マクロファージが広範なヒトの癌にわたって高発現していること、(b)アルギナーゼ-1が癌のインビトロおよびインビボマウスモデルでM2マクロファージを識別することを示す。[
図2A]広範なヒトの癌における様々な免疫細胞の相対的割合を示すヒートマップを示す。
【
図2B】マウスのBMDMが、qPCRで測定したIL-4、IL-13、および腫瘍馴化培地に応答して、ARG1発現の濃度依存的な増加を示す一連の棒グラフを示す。
【
図2C】RAW264.7マウスマクロファージがqPCRで測定したIL-4、IL-13、および腫瘍馴化培地に応答して、ARG1発現の濃度依存的な増加を示す一連の棒グラフを示す。
【
図2D】IL-4、IL-13、腫瘍馴化培地(TCM)で刺激すると、ARG1レベルが上昇することを示すアルギナーゼ活性アッセイを示す一連の棒グラフを示す。
【
図2E】内因性マクロファージと静脈注射された養子移入(ACT)されたRAW264.7マクロファージが腫瘍と皮下腫瘍担持マウスの脾臓から単離され(左)、腫瘍浸潤マクロファージにおいてその脾臓対応物と比較して見られたARG1発現の倍率の上昇をqPCRで定量化した(右)ことを示す、FACSプロットと棒グラフを示す。腫瘍(AO、その他すべて)の非マクロファージ細胞からのARG1レベルも一括で測定され、脾臓マクロファージと比較して定量化された。*はp<0.05での統計的有意性を示し、***はp<0.001での統計的有意性を示す。エラーバーは、少なくとも3つの生物学的複製の平均(s.e.m)の標準誤差を表す。BMDM、骨髄由来マクロファージ;TCM、腫瘍馴化培地;ACT、養子細胞移入。
【
図2F】内因性マクロファージと養子移入(ACT)RAW264.7マクロファージが、フローサイトメトリーにより、腫瘍、脾臓、肺、肝臓の皮下腫瘍を担持するマウスまたは健常なマウス(左上)とM2遺伝子のフォールドエレベーションから単離されたことを示す肝臓内在性(内因性の場合)または肝ホーミング(ACTの場合)マクロファージと比較した異なる組織での発現が示される(右上)。*はp<0.05での統計的有意性を示し、**はp<0.01での統計的有意性を示し、***はp<0.001での統計的有意性を示す。エラーバーは、平均値の標準誤差(s.e.m)を表す。BMDM、骨髄由来マクロファージ;TCM、腫瘍馴化培地。
【
図3A】[
図3A~3G]マクロファージがインビトロおよびインビボで腫瘍に向かって移動することを示す。[
図3A]化学誘引物質が光学顕微鏡法によるRAW264.7マクロファージ移動の濃度依存的な増加を明らかにし(右)、10倍の視野あたりの移動細胞の定量化が4倍増加を超えることを明らかにした(下)ため、腫瘍馴化培地で実施したトランスウェルアッセイ(図上)を示す。マクロファージは赤い偽色で示される。スケールバーは400μmである。
【
図3B】[
図3Bおよび3C]腫瘍とマクロファージのシグナルが、右肩を横切る首筋からの距離の関数として、輝線トレース上に強く共存することを示す。[
図3B]VivoTrack 680標識化マクロファージがインビボ蛍光顕微鏡で視覚化すると、静脈内注射後1~5日の皮下Fluc発現腫瘍における時間依存性の蓄積を証明することを示す、重ね合わせた偽色での一連のデジタル写真である。スケールバーは1cmである。左と右の放射輝度スケールは、腫瘍とマクロファージシグナルにそれぞれ適用される。
【
図3C】腫瘍とマクロファージのシグナルを示す距離は、右肩を横切る首筋からの距離の関数として、輝き線のトレース上に強く共存することを示す光輝対距離の
図3Bに対応する右肩の輝き線トレースを示すグラフである。
【
図3D】は、5日目以降、各サイトの常駐マクロファージの19~25%が養子移入(VivoTrack680陽性)によるものであり、このことは経時でマクロファージセンサーの腫瘍のコロニー形成と持続を示唆することを証明する、採取した腫瘍と脾臓のフローサイトメトリー(FACSプロット)の結果を示す。
【
図3E】5日目以降、各サイトの19~25%の常駐マクロファージが養子移入によるものであり、このことは経時での腫瘍の定着とマクロファージセンサーの持続性を示唆する、ことを示す円グラフである。
【
図3F】[
図3Fおよび3G]抗CCL2(n=4、p=0.0077)抗体と抗CSF1(n=3、p=0.0049)抗体の中和量が、それぞれのアイソタイプ対照抗体よりもマクロファージの皮下腫瘍への移動を妨害することを示す。[
図3F]抗CCL2(n=4、p=0.0077)および抗CSF1(n=3、p=0.0049)抗体の中和量が、それぞれのアイソタイプ対照抗体よりもマクロファージの皮下腫瘍への移動を妨害することを示す、偽色を重ね合わせデジタル写真を示す。
【
図3G】バックグラウンドを差し引いた輝度値を示す棒グラフである。*p<0.05での統計的有意性を示し、**はp<0.01での統計的有意性を示し、および***はp<0.001での統計的有意性を示す。エラーバーは少なくとも3つの生物学的複製のs.e.mを表す。TCM、腫瘍馴化培地;Ab、抗体;AH、アルメニアハムスター。
【
図4A】[
図4A~4I]マクロファージセンサーがインビボで小さな腫瘍の検出と可視化を可能にすることを示す。[
図4A]pARG1-Glucレポーターを発現するように改変されたRAW264.7マクロファージが、培地からアッセイした場合、腫瘍馴化培地(左)とIL-4/IL-13(右)で刺激されたときに、時間と濃度に依存したGlucの分泌を呈することを示す、1対の棒グラフを示す。
【
図4B】限局性肺微小腫瘍において、4T1担癌マウスの血漿から分析したRLU値が、健常対照(n=7、AUC=0.657、95%CI 0.335~0.979、p=0.372)を超えて上昇しないが、播種性疾患の有意な上昇(n=11、AUC=1.00、p=0.0018)を示すことを示す散布図である。RLU値はバックグラウンドを差し引いて、健常な血液から非特異的なシグナルを排除する。
【
図4C】活性化されたマクロファージの生物発光イメージング(BLI)と腫瘍の播種が、マクロファージセンサーの活性化と疾患部位の顕著な共存を明らかにすることを示す、一連のデジタル写真である。
【
図4D】局在化された皮下CT26モデルで、活性化マクロファージセンサーからバックグラウンドを差し引いた血漿Glucが、AUC=1.00(n=6、p=0.0009)で>50mm
3の腫瘍、およびAUC=0.849(n=6、95%CI 0.620~1.00、p=0.021)で25~50mm
3の腫瘍で確実に検出できたことを示す散布図である。
【
図4E】右肩の腫瘍と活性化されたマクロファージ(白い円)の空間的な重なりが見えるBLIイメージングの一連のデジタル写真である。スケールバーは1cmである。
【
図4F】右肩の腫瘍と活性化マクロファージ(白丸)の空間的な重なりが見える右肩の輝き線の軌跡を示すグラフである。スケールバーは1cmである。
図4Cと4Eの左と右の放射輝度スケールは、それぞれ活性化されたマクロファージと腫瘍シグナルに適用される。*はp<0.05での統計的有意性を示し、**はp<0.01での統計的有意性を示し、***はp<0.001での統計的有意性を示す。エラーバーは、少なくとも3つの生物学的複製のs.e.mを表す。TCM、腫瘍馴化培地;RLU、相対発光単位;AUC、曲線の下の面積。
【
図4G】M-CSFで培養した骨髄由来細胞が単球/マクロファージ成熟マーカーF4/80のレベルを増加させ、培養5日目に単球表現型を示す、蛍光活性化細胞選別(FACS)トレースを示す。
【
図4H】pARG1-GlucレポーターでエレクトロポレーションしたBMDMが、培養培地からアッセイした腫瘍馴化培地でGlucの時間依存性分泌を示すことを示すグラフである。
【
図4I】局在化された皮下CT26腫瘍が60~75mm3の体積に達したときに、活性化BMDMセンサーからバックグラウンドを差し引いた血漿Glucが有意な上昇(n=4、p=0.0342)を示す散布図を示す(AUC=0.813、95%CI 0.555~1.00、p=0.0894)。スケールバーは1cmである。(C)と(E)の左と右の放射輝度スケールは、それぞれ活性化されたマクロファージと腫瘍シグナルに適用される。*はp<0.05での統計的有意性を示し、**はp<0.01での統計的有意性を示し、***はp<0.001での統計的有意性を示す。エラーバーはs.e.mを表すTCM、腫瘍馴化培地;RLU、相対発光単位;AUC、曲線下面積。
【
図5A】[
図5A~5I]マクロファージセンサーが炎症と創傷治癒のモデルにおける免疫学的時間枠を反映していることを示す。[
図5A]BMDMとRAW264.7マクロファージが、qPCRによって定量化された古典的な炎症誘発性サイトカインIFNγおよびTNFαへの曝露時に、qPCRによって定量化されたARG1 mRNAの最小限の上昇を示すことを示す棒グラフである。BMDM ARG1レベルは同様にLPSの影響を受けない。
【
図5B】改変されたpARG1-Gluc発現マクロファージセンサーが、同じ炎症誘発性サイトカインで刺激すると、培地中のGlucレベルが顕著に増加したことを示す棒グラフである。
【
図5C】テレビン油の筋肉内注射後0~10日後肢筋のH&E染色が一次好中球による急性炎症応答(暗い矢印)と、それに続く炎症の解決の後半の段階でマクロファージの浸潤(明るい矢印)の古典的なタイムラインを示す一連のデジタル写真である。スケールバーは50μmである。
【
図5D】炎症の1日目(n=6)または7日目(n=8)(左)に静脈内マクロファージセンサーを注入してから24時間後にバックグラウンドを差し引いた血漿Glucレベルは、急性炎症段階(1日目)に上昇がないことを示したが、回復期(7日目)には有意な上昇とマクロファージ活性化を示したことを示す散布図である。これは、急性炎症時の無差別なAUC=0.643(95%CI 0.332~0.953、p=0.371)にも反映されるが、創傷治癒段階中の堅牢なAUC=0.929(95%CI 0.783~1.00、p=0.006)である。
【
図5E】は、活性化マクロファージからの細胞内Glucの画像が、バックグラウンド、センサー(対照)を注入された非炎症マウス、およびセンサーを注入された急性炎症マウス(急性Inf.)からの匹敵するシグナルを明らかにする、一連のデジタル生物発光イメージング(BLI)画像である。これは、7日目の回復フェーズ中にマクロファージセンサーが注入されたときのBLI画像とは対照的であり、そこでは、創傷治癒部位(黒丸)でのマクロファージの局在的な活性化がはっきりと見える。スケールバーは1cmを測定する。*はp<0.05での統計的有意性を示し、***はp<0.001での統計的有意性を示す。エラーバーは、少なくとも3つの生物学的反復のs.e.mを表す。RLU、相対発光単位;AUC、曲線下面積。
【
図5F】LPSの鼻腔内接種後のH&E染色された肺の顕微鏡写真が、7時間で好中球浸潤(緑の矢印)が存在し、その後、創傷治癒プロセスが進むにつれて、マクロファージ(黄色の矢印)で徐々に置換される急性炎症の同様のタイムラインを示す、一連のデジタル写真である。創傷治癒はLPS接種後48時間でピークに達し、72時間までに健常な肺構造のいくらかの回復がある。スケールバーは50μmである。
【
図5G】BMDMセンサーを注射されたマウスの血漿Gluc測定値がAUC=0.975(95%CI 0.900-1.00、n=5、p=0.0054)で48時間にピークを示す急性炎症と創傷治癒動態を反映する散布図である。
【
図5H】[
図5Hおよび5I]BMDMセンサーが、血漿Gluc測定によるLPS誘導急性炎症の不在下(AUC=0.975、95%CI 0.900~1.00、n=5、p=0.0054)および存在下(AUC=1.00、95%CI 1.00~1.00、n=4、p=0.0066)の両方で(
図5H)、ならびに活性化マクロファージのBLIを介して(
図5I)、転移性4T1腫瘍を堅牢に別することができることを示す、散布図(
図5H)と一連のデジタルBLI画像(
図5I)を示す。*はp<0.05での統計的有意性を示し、**はp<0.01での統計的有意性を示し、***はp<0.001での統計的有意性を示す。エラーバーはs.e.mを表すLPS、リポ多糖;RLU、相対発光単位;AUC、曲線下面積。
【
図5I】[
図5Hおよび5I]BMDMセンサーが、血漿Gluc測定によるLPS誘導急性炎症の不在下(AUC=0.975、95%CI 0.900~1.00、n=5、p=0.0054)および存在下(AUC=1.00、95%CI 1.00~1.00、n=4、p=0.0066)の両方で(
図5H)、ならびに活性化マクロファージのBLIを介して(
図5I)、転移性4T1腫瘍を堅牢に別することができることを示す、散布図(
図5H)と一連のデジタルBLI画像(
図5I)を示す。*はp<0.05での統計的有意性を示し、**はp<0.01での統計的有意性を示し、***はp<0.001での統計的有意性を示す。エラーバーはs.e.mを表すLPS、リポ多糖;RLU、相対発光単位;AUC、曲線下面積。
【
図6A】[
図6A~6F]マクロファージセンサーが臨床的に使用されている癌再発のバイオマーカーよりも優れていることを示している。[
図6A]皮下移植されたLS174T腫瘍がnu/nuマウス(n=12)で指数関数的増殖を示すことを示すグラフである。
【
図6B】酵素免疫測定法(ELISA)で検出された血漿中CEA濃度の上昇を示すグラフである。
【
図6C】血漿サンプリングの1日目に、マクロファージセンサーからのバックグラウンドを差し引いた血漿Gluc測定値(左)が、CEA測定(右)と比較して、腫瘍担持マウス(n=7)と健常なマウス(n=5)をよりよく識別することができたことを示す散布図である。
【
図6D】改善された感度と特異性が、内因性バイオマーカー(0.829、95%CI 0.590~1、p=0.062)と比較して、マクロファージセンサー(0.914、95%CI 0.738~1.00、p=0.019)で受信者動作特性曲線(receiver operator curve)の改善されたAUC値に反映されることを示すグラフである。*はp<0.05での統計的有意性を示す。AUCは曲線の下の面積を示す。
【
図6E】cfDNAの血漿濃度が、皮下CT26腫瘍体積が1500~2000mm
3に達するまで、健常レベルを超えて有意に増加しなかったことを示すハイブリッドである散布図/ボックスグラフを示す。
【
図6F】アッセイされた変異が、腫瘍が約1300mm
3より大きい体積に達するまでマウスの血漿cfDNA(n=23、左;n=28、右)でqPCRによってqPCRで検出できなかったことを示す、はい/いいえのプロットを示す。下向きのバーは腫瘍を有するマウスを示し、血漿cfDNAで変異が検出されなかった。縦のバーは変異が検出されたことを示す。
【
図7A】[
図7A~7C]は、骨髄由来マクロファージの純度とエレクトロポレーション効率を示す。[
図7A]採取したBMDMが、10ng/mLのマウスコロニー刺激因子(M-CSF)で5日間活性化した後、F4/80染色で97.4%の純度を示したことを示すFACSプロットである。
【
図7B】BMDMが、フローサイトメトリーで定量化した場合、約40%の効率で、pARG1-Glucレポータープラスミドでエレクトロポレーションされたことを示すFACSプロットである。
【
図7C】BMDMが、フローサイトメトリーで定量化した場合、80%以上の効率と約60%の生存率で、pARG1-Glucレポータープラスミドでエレクトロポレーションされたことを示すFACSプロットである。
【
図8】pARG1-Glucレポータープラスミドマップを示す。pARG1-Glucコンストラクトには、3780塩基対のARG1エンハンサー/プロモーターシーケンスのすぐ下流にガウシアDuraルシフェラーゼが含まれている。コンストラクトには、細胞ソーティングおよびトランスフェクションまたはエレクトロポレーション効率の決定のための構成的CMVプロモーターの制御下にある強化された緑色蛍光タンパク質(eGFP)の遺伝子も含まれている。
【
図9】RAW264.7マクロファージのVivoTrack680標識化を示すFACSプロットを示す。マクロファージ(青)の均一な標識化は、染色されていないマクロファージ(赤)を超える4~5桁の蛍光で観察された。
【
図10A】[
図10Aおよび10B]一過性にトランスフェクトされた骨髄由来マクロファージを使用して転移性乳癌の検出を説明する。[
図10A]転移性乳癌(n=5)を有するマウスの血漿からのRLU値が、BMDMセンサーの静脈内注射時に、健常対照(n=5)を越えて顕著に高い(AUC=0.920、95%CI 0.739~1.00、p=0.028)ことを示す分散図である。
【
図10B】活性化されたBMDM(白丸)のBLIを示す一連のデジタル写真であり、転移性結節は後肢の共存を明らかにしている。左と右の放射輝度スケールは、それぞれ活性化されたマクロファージと腫瘍シグナルに適用される。RLU、相対発光単位;AUC、曲線の下の面積。
【
図11】転移性乳癌のモデルにおける肺微小腫瘍を示す。4T1細胞の静脈内注射から1週間後、BLIによって可視化されるように、疾患の負担は肺に限局する(左)。肺のエクスビボ検査でも、肺胸膜の裏張りにある高さのない微小腫瘍が明らかになる(右)。スケールバーは1cmである。
【
図12A】[
図12A~12C]結腸直腸癌の皮下局在モデルにおけるマクロファージセンサーの最適化を説明する。[
図12A]デジタルキャリパーで測定された腫瘍体積が、BLIで推定された腫瘍体積とよく相関していることを示すグラフである(r
2=0.918)。破線は、線形回帰の95%信頼区間を示す。
【
図12B】改変されたマクロファージセンサーが、1500mm
3を超える体積の目に見える壊死性腫瘍を検出できなかったことを示すグラフである。
【
図12C】50~200mm
3の限局性皮下腫瘍の検出を示す散布図であり、健常な対照と比較した血漿Glucの上昇は、マクロファージセンサーの注入から24時間後に明らかになったが、健常マウスと腫瘍担持マウスの両方で、シグナルが次の日に減少した。
【
図13】乳酸はマクロファージでARG1の発現を誘導することを示す1対のボックスグラフである。100mMの乳酸は、刺激後24時間の骨髄由来(左)マクロファージとRAW264.7(右)マクロファージの両方で、FIZZ1およびARG1 mRNAの発現を誘導する。*はp<0.05での統計的有意性を示し、**はp<0.01での統計的有意性を示す。エラーバーは平均の標準誤差を示す。BMDM、骨髄由来マクロファージ。
【
図14A-1】[
図14Aおよび14B]マクロファージ選別のためのフローサイトメトリーゲーティング戦略を示す。[
図14A-1]腫瘍、脾臓、肺、肝臓における養子移入(VT680+)およびネイティブ(VT680-)マクロファージのフローサイトメトリーゲーティング戦略を示す一連のFACSプロットを示す。CD11b+F4/80+細胞の集団は両方の組織で十分に分離されており、養子移入されたマクロファージは、蛍光マイナス1つの対照に基づいてゲートされた。FMO、蛍光マイナス1。
【
図14A-2】腫瘍、脾臓、肺、肝臓における養子移入(VT680+)およびネイティブ(VT680-)マクロファージのフローサイトメトリーゲーティング戦略を示す一連のFACSプロットを示す。CD11b+F4/80+細胞の集団は両方の組織で十分に分離されており、養子移入されたマクロファージは、蛍光マイナス1つの対照に基づいてゲートされた。FMO、蛍光マイナス1。
【
図14A-3】腫瘍、脾臓、肺、肝臓における養子移入(VT680+)およびネイティブ(VT680-)マクロファージのフローサイトメトリーゲーティング戦略を示す一連のFACSプロットを示す。CD11b+F4/80+細胞の集団は両方の組織で十分に分離されており、養子移入されたマクロファージは、蛍光マイナス1つの対照に基づいてゲートされた。FMO、蛍光マイナス1。
【
図14A-4】腫瘍、脾臓、肺、肝臓における養子移入(VT680+)およびネイティブ(VT680-)マクロファージのフローサイトメトリーゲーティング戦略を示す一連のFACSプロットを示す。CD11b+F4/80+細胞の集団は両方の組織で十分に分離されており、養子移入されたマクロファージは、蛍光マイナス1つの対照に基づいてゲートされた。FMO、蛍光マイナス1。
【
図14B】養子移入から5日後の様々な組織に存在する投与された(VT680+)対内因性(VT680-)マクロファージの平均部分構成を示す一連の円グラフを示す。
【
図15】CT26腫瘍における低酸素症と比較したマクロファージの局在化の免疫蛍光を示す。蛍光標識化された骨髄由来単球(下)を注入されたマウスのCT26腫瘍の免疫蛍光顕微鏡写真は、マクロファージと低酸素領域の共存を明らかにしている。ピモニダゾールを注入していない、および蛍光標識化されていない骨髄由来単球を注入したマウスからのCT26腫瘍の免疫蛍光(上)は、特異性を確認する緑または赤のチャネルにシグナルを示さない。画像は10倍の倍率で表示され、スケールバーは250μmである。CB640、CellBrite640;BMDM、骨髄由来単球。
【
図16】静脈内注入されたマクロファージセンサーが腫瘍の進行に及ぼす影響を示す。皮下腫瘍を担持するマウス(n=4)でのBMDMセンサーの静脈内注射を示すプロットは、ビヒクルを注射したマウス(n=3)と比較した腫瘍体積の初期回帰(4日目、p=0.058)に続いて、指数関数的成長を再開する。左のプロットは個々の腫瘍の増殖を示し、右のプロットは平均腫瘍体積を示している。マウスは、あらゆる次元で15mmを超える腫瘍で犠牲にされ、右側のプロットの平均腫瘍体積は、グループ内のすべてのマウスがまだ生存していた時点についてのみ示される。エラーバーは平均の標準誤差を示す。BMDM、骨髄由来マクロファージ。
【
図17】ロックされた核酸プローブによる検出の欠失変異限界を示す1対のグラフである。CT26と野生型Balb/cゲノムDNAのリアルタイムqPCR増幅プロットは、染色体7(左)と19(右)の欠失が対立遺伝子頻度0.1%と1%でそれぞれ検出することができることを示している。各条件は3つずつ表示される。RFU、相対蛍光単位;AF、対立遺伝子頻度。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明をより詳細に説明する前に、本発明は記載された特定の実施形態に限定されず、
したがって、当然のことながら変更され得ることを理解されたい。また、本明細書で使用
される専門用語は、特定の実施形態の説明のみを目的としており、本発明の範囲は添付の
特許請求の範囲によってのみ限定されるため、限定的であることを意図するものではない
ことも理解されたい。
【0050】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限値と下限値の間の、文脈上そうではないと
明確に指示されない限りは下限値の単位の10分の1までの各介在値、およびその記載さ
れる範囲内の任意の他の記載値または介在値が、本発明に包含されることを理解されたい
。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立して、より小さな範囲に含めること
ができ、本発明の範囲内にさらに包含され、記載された範囲内で特に除外された制限を受
ける。述べられる範囲が限界の一方または両方を備える場合、それらの含まれる限界のう
ちのいずれかまたは両方を除外する範囲もまた、本発明に含まれる。
【0051】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本
開示が関係する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に
記載されるものと同様または同等の任意の方法および材料はまた、本発明の実施または試
験においても使用することができるが、好ましい方法および材料をここで説明する。
【0052】
このテキストで引用される出願および特許の各々、ならびに出願および特許の各々で引
用されている各文書または参考文献(各発行された特許の審査中の「出願で引用された文
書」を含む)、およびこれらの出願および特許のいずれかに対応する、および/またはそ
れらから優先権を主張するPCTおよび外国出願または特許の各々、および出願、引用さ
れた文書の各々の引用または参照された文書の各々は、参照により本明細書に明示的に組
み込まれる。さらに、このテキスト、特許請求の範囲の前の参考文献リスト、またはテキ
スト自体内で引用される文書または参考文献、これらの文書または参考文献(「本明細書
で引用された参考文献」)の各々、ならびに各文書または本明細書で引用された参考文献
の各々内で引用された参考文献(製造元の仕様、使用説明書などを含む)は、参照により
本明細書に明示的に組み込まれる。
【0053】
本開示を読むと当業者には明らかであるように、本明細書に説明され例証された個々の
実施形態の各々は、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく、他のある実施形態の
いずれかの特徴から容易に分離され得るか、または組み合わせられ得る個別の要素および
特徴を有する。いかなる列挙された方法も、列挙された事象の順序で、または論理的に可
能ないかなる他の順序で実行することができる。
【0054】
本開示の実施形態は、別段の指示がない限り、当技術分野の範囲内である医学、有機化
学、生化学、分子生物学、薬理学などの技術を用いる。そのような技術は、参考文献にお
いて完全に説明される。
【0055】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、お
よび「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の指示対象を含む
ことが留意されなければならない。したがって、例えば、「担体」への言及は、複数の担
体を含む。本明細書およびそれに続く特許請求の範囲では、反対の意図が明らかでない限
り、以下の意味を有すると定義されるべき多くの用語が参照される。
【0056】
本明細書で使用される場合、以下の用語は、別段の指定がない限り、それらに帰する意
味を有する。この開示において、「含む」、「含むこと」、「含有すること」および「有
する」などは、米国特許法においてそれらに帰する意味を有することができ、「含む」、
「含むこと」などを意味する。「から本質的になる」または「本質的になる」などは、本
開示に包含される方法および組成物に適用される場合、本明細書に開示されるような組成
物を指すが、追加の構造群、組成物成分または方法ステップ(または上で考察されたよう
な類似体もしくはそれらの誘導体)を含んでもよい。しかしながら、そのような追加の構
造群、組成物成分または方法ステップなどは、本明細書に開示される対応する組成物また
は方法の特性と比較して、組成物または方法の基本的および新規の特性に実質的に影響し
ない。「から本質的になる」または「本質的になる」などは、本開示に包含される方法お
よび組成物に適用される場合、米国特許法に帰する意味を有し、用語は制限がなく、記載
されているもののうちの基本的または新規の特徴が記載されているもの以上の存在によっ
て変化しない限り、記載されている以上の存在を可能にするが、先行技術の実施形態を除
外する。
【0057】
エンドポイントによって本明細書に記載されている数値範囲には、その範囲内に含まれ
るすべての数と分数が含まれる(例えば、1~5には、1、1、5、2、2.75、3、
3.90、4、および5が含まれる)。また、すべての数およびその分数は、「約」とい
う用語によって修飾されると推定される。「約」という用語は、参照されている数のプラ
スまたはマイナス0.1~50%、5~50%、または10~40%、好ましくは10~
20%、より好ましくは10%または15%を意味する。
【0058】
様々な実施形態を説明する前に、以下の定義が提供されており、別段の指示がない限り
使用されるべきである。
【0059】
略語
SEAP、分泌型胚性アルカリホスファターゼ;MRI、磁気共鳴画像;BLI、生物
発光イメージング;ROI、関心領域;AUC、曲線下面積;RG、レポーター遺伝子;
TS、腫瘍特異的;Gluc、ガウシアルシフェラーゼ;CTC、循環腫瘍細胞;ctD
NA、循環腫瘍DNA;HSV1-tk、HSV1-チミジンキナーゼ;hNIS、ヒト
ヨウ化ナトリウムシンポーター;ACT、養子細胞移入;RLU、相対発光単位;BMD
M;骨髄由来マクロファージ。
【0060】
定義
本明細書で使用される場合、「養子細胞移入(ACT)」という用語は、患者への細胞
の転送を指す。細胞は患者または別の個体に由来している可能性がある。自己癌免疫療法
では、T細胞は患者から抽出され、遺伝子修飾され、インビトロで培養され、同じ患者に
戻される。
【0061】
本明細書で使用される場合、「自家」という用語、個々の動物またはヒトから単離され
るかまたはそれに由来し、その後、同じ個体に戻される細胞または細胞集団を指す。細胞
は、個体に戻る前に遺伝子修飾または培養されている可能性がある。
【0062】
本明細書で使用される場合、「生体液」という用語は、生体液サンプルを指し、個体か
ら得られた様々な種類の流体サンプルを包含し、診断または監視アッセイで使用すること
ができる。定義には、血液の総量または血清)、脳脊髄液(CSF)、唾液、涙、痰、呼
気、尿、および生物学的起源の他の液体サンプルが含まれる。また、この定義には、個々
のサンプルの混合もしくはプール、試薬による処理、可溶化、または有核細胞、非有核細
胞、病原体などの特定の成分の濃縮など、調達後に何らかの方法で改変されたサンプルも
含まれる。
【0063】
本明細書で使用される場合、「血液サンプル」という用語は、血液、好ましくは末梢(
または循環)血液に由来する生体サンプルである。血液サンプルは、例えば、全血、血漿
、血清、または細胞成分が溶解されて細胞内内容物が緩衝液または他の液体媒体に放出さ
れているそのような流体の可溶化調製物であってもよい。
【0064】
本明細書で使用される場合、「生物発光」という用語は、生体分子、特にタンパク質に
よる化学発光の一種の発光を指す。生物発光の必須条件は、分子酸素の存在下で基質ルシ
フェリンに作用し、かつこの基質を、より低いエネルギーレベルに戻る際にエネルギーを
光の形態で放出する励起状態に変換するルシフェラーゼであるオキシゲナーゼの存在下で
結合しているかまたは遊離している分子酸素である。
【0065】
本明細書で使用される場合、「バイオマーカー」という用語は、細胞の表面上、細胞の
細胞内成分、または血清サンプル中の可溶性タンパク質などの生体液の成分または構成要
素で見られ得、腫瘍または腫瘍細胞の指標として客観的に測定および評価される特性を有
する、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質(単量体または多量体)等の抗原を指すがこ
れらに限定されない。対象のヒトまたは動物から単離された生体液または生体サンプルに
おけるそのようなバイオマーカーの存在は、対象が病理(例えば、癌)の担い手であるこ
とを示し得る。そのようなバイオマーカーの発現の変化は、疾患または進行のリスクの増
加、または所与の治療に対する疾患の反応の予測と相関する可能性がある。
【0066】
本明細書で使用される場合、「癌」という用語は、異常な細胞が制御なしに分裂する疾
患の一般用語として、その通常の意味が与えられるものとする。特に、癌は血管新生関連
の癌を指す。癌細胞は近くの組織に侵入し、血流やリンパ系を介して身体の他の部分に広
がる可能性がある。
【0067】
癌にはいくつかの主要な種類があり、例えば、癌腫は皮膚や、内臓を埋め尽くすまたは
覆う組織に発生する癌である。肉腫は、骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管、またはその他の結
合組織や支持組織に発生する癌である。白血病は、骨髄などの造血組織で発生する癌であ
り、異常な血球が大量に生成されて血流に入る。リンパ腫は免疫系の細胞で発生する癌で
ある。
【0068】
正常な細胞が特定の、制御され、調整されたユニットとして振る舞う能力を失うと、腫
瘍が形成される。一般に、固形腫瘍は、通常は嚢胞または液体領域を含まない異常な組織
の塊である(一部の脳腫瘍には、嚢胞と液体で満たされた中心壊死領域がある)。単一の
腫瘍は、その内部に異なる種類の細胞を有している可能性があり、異なるプロセスが失敗
している。固形腫瘍は、良性(例:非癌性)または悪性(例:癌性)の場合がある。異な
る種類の固形腫瘍は、それらを形成する細胞の種類にちなんで名付けられる。固形腫瘍の
例は、肉腫、癌腫、およびリンパ腫である。白血病(血液の癌)は一般に固形腫瘍を形成
しない。
【0069】
代表的な癌には、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、肺癌、黒色腫、
非小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、子宮癌、子宮頸癌、甲状腺癌、胃癌、脳幹神
経膠腫、小脳星細胞腫、大脳星細胞腫、膠芽腫、上衣腫、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍
、胚細胞腫瘍、頭蓋外癌、ホジキン病白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、
肝癌、髄芽腫、神経芽腫、一般的に脳腫瘍、非ホジキンリンパ腫、骨肉腫、骨の悪性線維
性組織球腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、一般的に柔組織肉腫、テント上原始神経外胚葉
性腫瘍および松果体腫瘍、視経路および視床下部膠腫、ウィルムス腫瘍、急性リンパ性白
血病、成人急性骨髄性白血病、成人非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄
性白血病、食道癌、有毛細胞白血病、腎臓癌、多発性骨髄腫、口腔癌、膵臓癌、中枢神経
原発リンパ腫、皮膚癌、ならびに小細胞肺癌などを含むが、これらに限定されない。
【0070】
腫瘍は悪性または良性に分類することができる。どちらの場合も、細胞の異常な凝集と
増殖が存在する。悪性腫瘍の場合、これらの細胞はより攻撃的に振る舞い、侵襲性の増加
などの特性を獲得する。結局のところ、腫瘍細胞は、それらが発生した微視的環境から離
れ、身体の別の領域に拡散し(非常に異なる環境であり、通常はその成長を促進しない)
、急速な成長を続け、この新しい場所で分割する能力を獲得さえすることがある。これは
転移と呼ばれる。悪性細胞が転移すると、治癒はより困難である。
【0071】
良性腫瘍は浸潤する傾向が少なく、転移する可能性が低くなる。脳腫瘍は脳内に広がっ
ているが、通常は脳外に転移することはない。神経膠腫は脳の内側に非常に浸潤性であり
、脳半球を横切っている。ただし、制御されない様式で分割される。それらの場所によっ
ては、悪性病変と同様に生命を脅かす可能性がある。これの例は、脳内の良性腫瘍であり
、成長して頭蓋骨内の空間を占め、脳への圧力が増加する可能性がある。
【0072】
本明細書で使用される場合、「細胞または細胞の集団」という用語は、組織から切除さ
れた、または組織培養技術によってインビトロで増殖された、単離された細胞または複数
の細胞を指す。最も具体的には、細胞の集団は、動物またはヒトの組織におけるインビボ
の細胞を指す。
【0073】
本明細書で使用される場合、「コード配列」および「選択されたポリペプチドをコード
する」という用語は、例えば、核酸は生きている細胞(インビボ)に存在し、適切な規制
シーケンス(または「制御要素」)の管理下に配置されるときに、(DNAの場合)転写
され、(mRNAの場合)ポリペプチドに翻訳される核酸分子を指す。
【0074】
本明細書で使用される場合、「制御要素」という用語は、転写プロモーター、転写エン
ハンサー要素、転写終結シグナル、ポリアデニル化配列(翻訳終止コドンの3’に位置)
、翻訳開始の最適化のための配列(コード配列の5’に位置)、および翻訳終結配列を指
すが、これらに限定されない。
【0075】
「サイトカイン」という用語は、細胞間メディエーターとして別の細胞集団に作用する
、ある細胞集団から放出されたタンパク質の総称である。そのようなサイトカインの例は
、リンホカイン、モノカイン、および伝統的なポリペプチドホルモンである。サイトカイ
ンには、ヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモンなどの
成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシ
ン;プロリラキシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄
体形成ホルモン(LH)などの糖タンパク質ホルモン;肝成長因子;線維芽細胞成長因子
;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン;腫瘍壊死因子-アルファおよび-ベータ;ミュラー
管抑制物質;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮増
殖因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF-アルファなどの神経成長
因子;血小板増殖因子;胎盤成長因子、TGF-アルファやTGF-ベータなどのトラン
スフォーミング成長因子(TGF);インスリン様成長因子-1および-11;エリスロ
ポエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロン-アルファ、-ベータ、-ガンマな
どのインターフェロン;マクロファージ-CSF(M-CSF)などのコロニー刺激因子
(CSF);および顆粒球マクロファージ-CSF(GM-CSF);および顆粒球-C
SF(G-CSF);IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、
IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、I
L-15、IL-18、IL-21、IL-22、IL-23、およびIL-33などの
インターロイキン(IL);TNF-アルファまたはTNF-ベータなどの腫瘍壊死因子
;ならびにLIFおよびキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が含まれる
。本明細書で使用する場合、サイトカインという用語には、天然源からの、または組換え
細胞培養物からのタンパク質、および天然配列サイトカインの生物学的に活性な同等物が
含まれる。
【0076】
本明細書で使用される場合、「細胞への送達」という用語は、小分子化合物、核酸、ペ
プチドもしくはポリペプチド、またはインビボ投与のための全身的標的化送達、またはエ
クスビボもしくはインビトロでのエフェクターと細胞とのインキュベーションにより阻害
性核酸またはポリペプチドを発現することができる核酸での細胞の直接標的化を指す。
【0077】
「検出可能な薬剤」という用語は、そのような薬剤の相対または絶対濃度を特異的に検
出するように設計された任意のアッセイによって検出可能な分子(例えば、小分子、ペプ
チド、タンパク質RNA、DNA)を指す。ある実施形態では、検出可能な薬剤は、それ
が導入される免疫細胞にとって外因性のポリペプチドである。検出可能な薬剤は、MRI
イメージング、PETイメージング、SPECTイメージング、および光音響レポーター
、生物発光レポーター、自己蛍光レポーター、化学発光レポーターが含まれる、発光レポ
ーター、または比色レポーターを含むがこれらに限定されない発光イメージングなどの非
侵襲的イメージング法によって検出され得る。好適なMRIレポーター遺伝子には、クレ
アチンキナーゼ;チロシナーゼ;トランスフェリン受容体;フェリチン;Mag A.P
ETイメージングレポーター遺伝子には、単純ヘルペスウイルス1チミジンキナーゼ(H
SV1-tk);ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ;L-アミノ酸デカ
ルボキシラーゼ;ドーパミン2受容体(D2R、変異D2RA80を含む);ソマトスタ
チン受容体;エストロゲン受容体(hERL);ドーパミントランスポーター;ヨウ化ナ
トリウムシンポーター;カテコールアミン輸送体;β-ガラクトシダーゼをコードするも
のなどが含まれるが、これらに限定されない。PET/SPECTイメージングレポータ
ー遺伝子には、単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ、およびHSV1-sr39
tkなどの多数の最適化された変異体、ドーパミン2型受容体;ヨウ化ナトリウムシンポ
ーター;ソマトスタチン2型受容体;ヒトノルエピネフリン輸送体;ヒトエストロゲン受
容体α;ヒトデオキシシチジンキナーゼの変異体;ならびに組換え癌胎児性抗原が含まれ
るが、これらに限定されない。生物発光レポーター遺伝子には、ホタルルシフェラーゼ(
fl);ガウシアルシフェラーゼ(Gluc);合成ウミシイタケルシフェラーゼ(hr
l);強化された緑色蛍光タンパク質(egfp);赤い蛍光タンパク質(rfp);単
量体赤色蛍光タンパク質(mrfp1)などが含まれるが、これに限定されない。本開示
の遺伝子コンストラクトへの組み込みに好適なレポーター遺伝子は、イメージングのマル
チモダリティ法を提供することがさらに可能である。
【0078】
本明細書で使用される場合、「発現カセット」という用語は、関心の遺伝子/コード配
列、ならびにshRNA、microRNA、siRNA、アンチセンスRNAなどの非
翻訳RNAを含む任意のRNA転写物の発現を指向することができる任意の核酸コンスト
ラクトを指す。そのようなカセットは、発現カセットを標的細胞に導入するために、「ベ
クター」、「ベクターコンストラクト」、「発現ベクター」、または「遺伝子導入ベクタ
ー」に構築することができる。したがって、この用語は、クローニングおよび発現ビヒク
ル、ならびにウイルスベクターを含む。
【0079】
本明細書で使用される場合、「発現ベクター」という用語は、本明細書で使用されるタ
ンパク質をコードするDNAを発現するため、およびタンパク質を産生するために有用な
核酸を指す。発現ベクターは、タンパク質をコードする遺伝子を様々な原核および/また
は真核宿主細胞で発現し、このタンパク質を産生する限り、限定されない。酵母、動物細
胞、または昆虫細胞が宿主として使用される場合、発現ベクターは、好ましくは、少なく
ともプロモーター、開始コドン、タンパク質をコードするDNAおよび終止コドンを含む
。それはまた、シグナルペプチドをコードするDNA、エンハンサー配列、タンパク質を
コードする遺伝子の5’-および3’-非翻訳領域、スプライシングジャンクション、ポ
リアデニル化部位、選択マーカー領域、およびレプリコンを含んでもよい。また、発現ベ
クターには、必要に応じて、通常使用される遺伝子増幅用遺伝子(マーカー)が含まれて
もよい。
【0080】
細菌でタンパク質を発現するためのプロモーター/オペレーター領域は、プロモーター
、オペレーター、およびシャイン・ダルガーノ(SD)配列(例えば、AAGG)を含む
。例えば、宿主がエシェリヒア属である場合、好ましくは、Trpプロモーター、lac
プロモーター、recAプロモーター、lambda.PLプロモーター、b 1ppプ
ロモーター、tacプロモーターなどを含む。宿主が哺乳動物細胞などの真核細胞である
場合、その例としては、SV40由来プロモーター、レトロウイルスプロモーター、ヒー
トショックプロモーターなどがある。もちろん、プロモーターは上記の例に限定されない
。また、発現にはエンハンサーを使用することが効果的である。好ましい開始コドンは、
例えば、メチオニンコドン(ATG)である。終止コドンとしては、一般的に使用される
終止コドン(例えば、TAG、TAA、TGA)が例示される。通常、使用される天然ま
たは合成ターミネーターがターミネーター領域として使用される。SV40に由来するも
のなど、当技術分野で通常使用されるエンハンサー配列、ポリアデニル化部位、およびス
プライシングジャンクションも使用することができる。通常用いられる選択マーカーは、
常法に従って使用することができる。その例は、テトラサイクリン、アンピシリン、また
はカナマイシンなどの抗生物質の耐性遺伝子である。
【0081】
本明細書で使用される発現ベクターは、少なくとも上記プロモーター、開始コドン、タ
ンパク質をコードするDNA、終止コドン、ターミネーター領域を適切なレプリコンに連
続的かつ環状に連結することにより調製することができる。必要に応じて、制限酵素によ
る消化やT4 DNAリガーゼによるライゲーションなどの方法で、適切なDNA断片(
リンカー、制限酵素サイトなど)を使用することができる。形質転換体は、上記の発現ベ
クターを宿主細胞に導入することにより調製することができる。
【0082】
本明細書で使用される場合、「異種配列」または「異種核酸」という用語は、特定の宿
主細胞にとって外来の供給源から生じる核酸、または同じ供給源からの場合は、その元の
形態から修飾されている核酸を指す。したがって、細胞内の異種発現カセットは、特定の
宿主細胞に内因性ではない発現カセットであり、例えば、染色体DNAではなく発現ベク
ターからのヌクレオチド配列に連結され、異種プロモーターに連結され、レポーター遺伝
子などに連結される。
【0083】
本明細書で使用される場合、「炎症」という用語は、異常または異常調節された炎症反
応により恒常性が破壊される急性および慢性障害を指す。これらの症状は、酸化ストレス
、ケモカイン、サイトカイン、血液/組織バリアの破壊、自己免疫疾患、またはホメオス
タシスメディエーターの過剰な量の細胞傷害誘発性(pro-cell injury)
、炎症誘発性/ディスラプターを誘導する白血球、単球/マクロファージもしくは実質細
胞に関与する他の症状を含む多数の炎症性因子によって開始および介在される。これらの
疾患は、広範囲の組織や臓器で発生し、現在、コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎
症薬、TNFモジュレーター、COX-2阻害剤などの抗炎症薬によって治療される。
【0084】
本明細書で使用される場合、「インビボイメージング」という用語は、生命の犠牲を必
要とせずに、生物の構造的、機能的、または生理学的状態を検査可能な方法またはプロセ
スを指す。
【0085】
本明細書で使用される場合、「ルシフェラーゼ」という用語は、発光反応を触媒するオ
キシゲナーゼを指す。例えば、細菌のルシフェラーゼは、フラビンモノヌクレオチドと脂
肪族アルデヒドの酸化を触媒し、その結果、反応によって光が発生する。海洋節足動物に
見られる別のクラスのルシフェラーゼはキプリディナルシフェリンの酸化を触媒し、別の
クラスのルシフェラーゼは甲虫類のルシフェリンの酸化を触媒する。したがって、「ルシ
フェラーゼ」は、生物発光反応を触媒する酵素または発光タンパク質を指す。ホタルやウ
ミシイタケルシフェラーゼなどのルシフェラーゼは、触媒作用を発揮する酵素であり、生
物発光生成反応中は変化しない。ルシフェリンが非共有結合しているエクオリンおよびオ
ベリン発光タンパク質などのルシフェラーゼ発光タンパク質は、生物発光生成反応中に、
ルシフェリンの放出によって変化する。ルシフェラーゼは、生物に自然に存在するタンパ
ク質、または天然に存在するタンパク質とは異なる、熱安定性やpH安定性などの1つ以
上の特性を持つ変異誘発によって生成される変異体などの、その変異体もしくは突然変異
体である。ルシフェラーゼおよびその修飾された突然変異体または変異体はよく知られて
いる。例えば、「レニラルシフェラーゼ」への言及は、レニラ属のメンバーから単離され
た酵素、または他の有虫類などの他の供給源から得られた、または合成的に調製された同
等の分子を意味する。「ガウシアルシフェラーゼ」への言及は、ガウシア属のメンバーか
ら単離された酵素を意味する。
【0086】
「生物発光タンパク質」とは、生物発光開始分子基質に作用して生物発光を生成または
放出することができるタンパク質を指す。
【0087】
「生物発光開始剤分子」は、生物発光を生成する生物発光ドナータンパク質と反応する
ことができる分子である。生物発光開始剤分子は、セレンテラジン、その類似体、および
その機能的誘導体を含むがこれらに限定されない。セレンテラジンの誘導体は、セレンテ
ラジン400a、セレンテラジンcp、セレンテラジンf、セレンテラジンfcp、セレ
ンテラジンh、セレンテラジンhcp;セレンテラジンip、セレンテラジンn、セレン
テラジンO、セレンテラジンc、セレンテラジンc、セレンテラジンi、セレンテラジン
icp、セレンテラジン2-メチル、ベンジル-セレンテラジンビスデオキシセレンテラ
ジン、ディープブルーセレンテラジン(DBC)(米国特許第6,020,192号、同
第5,968,750号および同第5,874,304号に詳細が記載されている)を含
むが、これらに限定されない。
【0088】
本明細書で使用される場合、「マクロファージ」という用語は、古典的に活性化された
マクロファージ(M1マクロファージ)および代替的に活性化されたマクロファージ(M
2マクロファージ)を指す。Martinez et al.,Annu.Rev.Im
munol.27:451-483(2009)。一般に、M1マクロファージは、1型
Tヘルパーリンパ球(Th1)応答を連想させる強力な公金特性を示す。対照的に、M2
マクロファージは2型Tヘルパーリンパ球(Th2)のような応答を促進し、より少ない
炎症誘発性サイトカインを分泌し、栄養因子の合成と食作用による炎症の解決を支援する
。Mosser et al.,Nature Rev.8:958-969(2008
)。M2マクロファージは、特定のサイトカインプロファイルによって定義される3つの
異なるサブクラス、すなわちM2a、M2b、およびM2cにさらに分類することができ
る。Mantovani et al、Trends Immunol 25:677-
686(2004)。M2マクロファージは一般に、IL-12などの炎症誘発性サイト
カインの産生量が少ないことと、IL-10などの抗炎症性サイトカインの産生量が多い
ことを特徴とするが、M2bマクロファージは、TNF-αおよびIL-6などの炎症性
サイトカイン産生量が多い(Mosser、J.Leukocyte Biol.73:
209-212(2003))。
【0089】
マクロファージは、それらの微小環境によって分極化され、炎症および治癒の異なる段
階に関連する異なる表現型を想定することができる。Stout et al.,J.I
mmunol.175:342-349(2005)。特定のマクロファージは、創傷治
癒に不可欠である。それらは、細胞動員の初期段階および組織防御の初期段階、ならびに
組織恒常性および修復の後期段階に参加する。(Pollard,Nature Rev
.9:259-270(2009)。末梢血単球由来のマクロファージは、難治性潰瘍の
治療に使用されてきた。Danon et al.,Exp.Gerontol。32:
633-641(1997);Zuloff-Shani et al、Transfu
s.Apher.Sci.O:163-167(2004)。それらの各々は、その全体
が示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0090】
本明細書で使用される場合、「遺伝子発現のレベルを修飾する」という用語は、遺伝子
の転写産物または翻訳産物の量の減少または増加のいずれかである変化を生じさせること
を指す。遺伝子の転写産物は、本明細書では、遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA
)転写産物を指すことを意図しており、スプライス前またはスプライス後のいずれのmR
NAであってもよい。あるいは、「遺伝子発現のレベルを修飾する」という用語は、si
RNAと細胞の内容との相互作用の結果として細胞によって生成されるタンパク質、ポリ
ペプチドまたはペプチドの量の変化を指す場合がある。例えば、限定するものではないが
、遺伝子に由来するポリペプチドの量は、対応するmRNA種が細胞に導入されたsiR
NAとの会合の結果として分解を受けやすい場合に低減され得る。
【0091】
「調節する」という用語は、細胞増殖、増殖、アポトーシスなどを含むがこれらに限定
されない細胞機能の態様に影響を与える(例えば、促進または遅延させる)組成物の活性
を指す。
【0092】
「核酸」、「核酸配列」、または「オリゴヌクレオチド」という用語はまた、ポリヌク
レオチドを包含する。「ポリヌクレオチド」は、一方のヌクレオシドの3’-ヒドロキシ
ル基と2番目のヌクレオシドの5’-ヒドロキシル基の間のホスホジエステル結合によっ
て接続されたヌクレオチドの直線鎖を指し、次にその3’-ヒドロキシル基を介して3番
目のヌクレオシドの5’-ヒドロキシル基など、ホスホジエステルバックボーンで連結さ
れたヌクレオシドで構成されるポリマーを形成する。「修飾されたポリヌクレオチド」は
、天然ヌクレオチドが修飾されたヌクレオチドで部分的に置換されているポリヌクレオチ
ドを指す。
【0093】
「作動可能に連結された」とは、そのように記載された構成要素が、それらの通常の機
能を果たすように構成されている要素の配置を指す。したがって、コード配列に機能的に
連結された所与のプロモーター(例えば、レポーター発現カセット)は、適切な酵素が存
在する場合、コード配列の発現に影響を与えることができる。プロモーターまたは他の制
御要素は、それらがコード配列の発現を指示するように機能する限り、コード配列と連続
している必要はない。例えば、介在する翻訳されないが転写される配列が、プロモーター
配列とコード配列との間に存在し得、プロモーター配列はなおコード配列に「作動可能に
連結している」と見なされ得る。
【0094】
本明細書で使用される場合、「プライマー」という用語は、増幅または複製されるDN
Aセグメントに相補的なオリゴヌクレオチドを指す。通常、プライマーはPCRで使用さ
れる。プライマーは鋳型DNAとハイブリダイズ(または「アニール」)し、ポリメラー
ゼ酵素によって複製/増幅プロセスの開始点として使用される。「相補的」とは、プライ
マー配列が鋳型と安定な水素結合複合体を形成することができることを意味する。
【0095】
「プロモーター」という用語は、ポリヌクレオチドの転写を指示するDNA配列である
。典型的には、プロモーターは、転写されるポリヌクレオチドの5’領域に、そのような
ポリヌクレオチドの転写開始部位の近位に位置することができる。より一般的には、プロ
モーターは最初のエクソンの上流の領域として、より典型的には、多数の転写開始部位の
最初の上流の領域として定義される。しばしばプロモーターは、プロモーターの3’側に
ある相補的DNA鎖の各々上に位置する遺伝子の転写を指示することができる。言い換え
ると、多くのプロモーターは双方向性を示し、いずれかの方向に存在する場合、下流の遺
伝子の転写を指示することができる(すなわち、遺伝子のコード領域に対して5’から3
’または3’から5’)。さらに、プロモーターはまた、上流要素などの少なくとも1つ
の制御要素を含んでもよい。そのような要素は、上流活性化因子領域(UAR)と、場合
により合成上流要素などのポリヌクレオチドの転写に影響を与える他のDNA配列を含む
。本開示の実施形態での使用に有利なプロモーターには、AKT1プロモーター、バーシ
カンプロモーター、MIFプロモーター、Ym1プロモーター、CD206プロモーター
、FIZZ1プロモーター、DC-SIGNプロモーター、CD209プロモーター、M
GL-1プロモーター、デクチン-1プロモーター、CD23プロモーター、ガレクチン
-3プロモーター、Merチロシンキナーゼプロモーター、AXL受容体タンパク質プロ
モーター、GAS-6プロモーター、NOS-2プロモーター、CD68プロモーター、
CD86プロモーター、CCL18プロモーター、CD163プロモーター、MMR/C
D206プロモーター、CD200Rプロモーター、TGM2プロモーター、Decoy
Rプロモーター、IL-1R IIプロモーター、IL-10プロモーター、TGF-ベ
ータプロモーター、IL-1raプロモーター、CCL17プロモーター、CCL2プロ
モーター、またはCCL24プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸のポリマー鎖を
指す。「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、ポリペプチドという用語と互換
的に使用され、アミノ酸のポリマー鎖も指す。「ポリペプチド」という用語は、天然また
は人工のタンパク質、タンパク質断片およびタンパク質配列のポリペプチド類似体を包含
する。ポリペプチドは、モノマー性またはポリマー性であってもよい。
【0097】
「qPCR」という用語は、リアルタイムのポリメラーゼ連鎖反応を指し、定量的リア
ルタイムポリメラーゼ連鎖反応(Q-PCR/qPCR/qrt-PCR)とも呼ばれ、
標的DNA分子の量を増幅して同時に検出するために使用される。量は、コピー数または
入力DNAに対して正規化された相対量として表現することができる。検出は、反応産物
がその終点で検出される標準的なPCRとは異なり、反応がリアルタイムで進行するにつ
れて進行する。リアルタイムPCRで産物を検出するための2つの一般的な方法は、(1
)二本鎖DNAを挿入する非特異的蛍光色素、および(2)蛍光レポーターで標識化され
、検出後の配列特異的オリゴヌクレオチド相補的なDNAターゲットへのハイブリダイゼ
ーション、である。
【0098】
用語「形質転換」は、外因性DNAが宿主細胞に入るプロセスを指す。形質転換は、当
技術分野で周知の様々な方法を使用して、自然または人工条件下で起こる。形質転換は、
原核生物または真核生物の宿主細胞に外来核酸配列を挿入するための任意の既知の方法に
依拠する。この方法は、形質転換される宿主細胞に基づいて選択され、ウイルス感染、エ
レクトロポレーション、リポフェクション、および粒子衝撃を含み得るがこれらに限定さ
れない。そのような「形質転換された」細胞には、挿入されたDNAが自律複製プラスミ
ドとして、または宿主染色体の一部としてのいずれかで複製することができる安定に形質
転換された細胞が含まれる。また、挿入されたDNAまたはRNAを限られた時間一過的
に発現する細胞も含まれる。
【0099】
組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、組織培養および形質転換(例えば、エレクト
ロポレーション、リポフェクション)には標準的な技術を使用することができる。酵素反
応および精製技術は、製造業者の仕様書に従って、または当技術分野で一般的に達成され
るように、または本明細書に記載されるように実施することができる。前述の技法および
手順は、本明細書全体にわたって引用および考察される様々な一般的でより具体的な参考
文献に記載されている従来の方法に従って一般に実行することができる。例えば、Sam
brook et al(1989)Molecular Cloning:A Lab
oratory Manual(第2版、Cold Spring Harbour L
aboratory Press、Cold Spring Harbour、NY)を
参照。
【0100】
「ベクター」という用語は、リンクされている別の核酸を輸送することが可能な核酸分
子を指す。ベクターの1つの種類は「プラスミド」であり、これは、追加のDNAセグメ
ントがライゲーションされ得る環状の二本鎖DNAループを指す。別の種類のベクターは
ウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントをウイルスゲノムに連結することがで
きる。特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞において自律複製することができ
る(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)
。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿
主細胞のゲノムに組み込むことができ、それにより、宿主ゲノムとともに複製される。さ
らに、特定のベクターは、それらが機能的に連結されている遺伝子の発現を指示すること
ができる。このようなベクターは、本明細書では「組換え発現ベクター」(または単に「
発現ベクター」)と呼ばれる。一般的に、組換えDNA技術で有用な発現ベクターは、し
ばしばプラスミドの形態である。本明細書において、「プラスミド」および「ベクター」
は、プラスミドがベクターの最も一般的に使用される形態であるため、交換可能に使用さ
れ得る。しかしながら、さらなる実施形態は、同等の機能を果たすウイルスベクター(例
えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)などのその
ような他の形態の発現ベクターを含む。
【0101】
考察
現在の内因性バイオマーカーベースの癌テストは、少なくとも一部は血液からの迅速な
バイオマーカーのクリアランス、健常な組織からの高いバックグラウンドシグナル、また
は交絡する疾患状態、および末梢循環の比較的低い濃度により、初期の悪性または前悪性
の段階で疾患を確実に検出するために必要な感度と特異性に欠けている。
【0102】
疾患検出のための内因性バイオマーカーの検出および定量化への従来の依存に代わる診
断戦略は、疾患の存在下で選択的に活性化され、続いて体液のイメージングまたはサンプ
リングのいずれかによって検出可能なシグナルを生成する外因性プローブの全身送達であ
る。それらは、例えば、たまたま疾患に関連する内因性バイオマーカーの免疫学的検出可
能性によって制限されないため、これらの活性化可能な外因性プローブを使用して疾患を
検出するアプローチは、内因性をバイオマーカー使用するアプローチよりも高い感度とシ
グナル対雑音比を持っている可能性がある。これまでのところ、合成バイオマーカー戦略
は、(i)プローブの生体適合性、(ii)疾患の多様な部位へのプローブの効率的な送
達、(iii)生化学的に複雑な疾患環境の多数の機能をアッセイするプローブの能力、
または(iv)空間位置情報と患者サンプルからのはい/いいえの回答の両方を提供する
能力、のいずれかによって制限されていた。
【0103】
本開示は、疾患の超高感度検出のための新しい細胞ベースのインビボセンサープラット
フォームを提供する遺伝子改変免疫細胞の実施形態を包含する。「腫瘍関連」代謝プロフ
ァイルを採用すると、同系マクロファージの養子移入は合成バイオマーカーを生成するよ
うに改変される。場合によっては、このプラットフォームは25~50mm3の小さな腫
瘍の検出を可能にし、炎症モデルでの免疫学的応答を効果的に追跡し、臨床的に使用され
る腫瘍再発のバイオマーカーよりも感度が高いである。この技術は、早期の癌検出に対す
る高度に生体適合性があり、臨床的に翻訳可能なアプローチを確立し、癌を含むがこれに
限定されない多くの疾患状態のモニタリングのための改変免疫細胞の使用のための概念的
フレームワークを提供する。
【0104】
内因性のバイオマーカーでは、初期段階で疾患を検出し、または出現部位を確実に特定
することができないため、疾患活性化可能なプローブは、疾患の早期発見、特定、モニタ
リングへの有望なアプローチであり続ける。本開示は、診断センサーとして改変免疫細胞
を使用する、疾患の早期検出のための新規のプラットフォーム技術を提供する。マクロフ
ァージにおける疾患固有の代謝変更を活用することにより、免疫細胞センサーが少なくと
も直径4mmの腫瘍を検出することができ、臨床で使用されている腫瘍の再発/発生のバ
イオマーカーよりも高い感度を示すことが示される。本開示の改変マクロファージによっ
て検出可能な25~50mm3の腫瘍体積および直径は、現在の臨床PET分子イメージ
ングの検出限界(それぞれ約200mm3および7mm)を下回っており、このことは、
マクロファージが初期の腫瘍形成におけるそれらの代謝状態に移動し、それを変更するこ
とができ、小さな腫瘍の診断センサーとして有利であることを示す。さらに、炎症のモデ
ルを通じて、そのようなセンサーが高い特異性を潜在的に達成し、癌以外の病状のモニタ
リングに有用に適用することができることが示される。
【0105】
したがって、本開示は、元々患者から単離されていてもされていなくてもよい、改変さ
れた(例えば遺伝子修飾された)マクロファージ細胞の実施形態を包含する。場合によっ
ては、遺伝子修飾は、腫瘍特異的代謝因子によって誘導可能な遺伝子プロモーター/エン
ハンサーの発現制御下で検出可能な薬剤(例えば、検出可能なポリペプチドまたは合成R
NA)をコードする遺伝子発現ベクターを細胞に導入することによって達成される。腫瘍
特異的代謝因子によって誘導可能な遺伝子プロモーター/エンハンサーは、マクロファー
ジが腫瘍の存在下にあるときにM2マクロファージで誘導されるARG1の調節配列を含
んでもよい。サイトカインと他の腫瘍媒介因子、例えば、酸性度の増加は、ARG1のプ
ロモーター活性を誘導することがある。
【0106】
したがって、例えば、ARG1の発現制御下で検出可能な薬剤をコードする核酸を配置
すると、改変マクロファージが腫瘍に接触するか、または腫瘍のすぐ近くにあるときに検
出可能な薬剤の発現がもたらされることが見出されている。マクロファージから血流に分
泌され得る検出可能な薬剤の選択は、血液サンプル中の薬剤の検出を可能にし、それによ
り、患者における腫瘍の存在の可能性を示すことがさらに見出されている。血液サンプル
中の薬剤の検出は、有利には患者における腫瘍の存在を決定するための迅速かつ経済的な
アプローチを許容するが、発現された産物のパーセンテージはまた、腫瘍と接触している
マクロファージ内に保持される。このこと、患者の体内の腫瘍の空間的検出をさらに可能
にすることができる。
【0107】
本開示の1実施形態では、検出可能な薬剤は、ガウシアルシフェラーゼ(Gluc)で
あってもよく、他の検出方法と比較して腫瘍の検出の感度を大幅に向上させることが可能
であることがわかった。しかしながら、本開示のコンストラクトによって発現可能な代替
の検出可能な薬剤もまた可能である。したがって、例えば、本開示のある実施形態では、
検出可能な薬剤は、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)またはその誘導体であってもよ
く、分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)、または人工分泌型マイクロRNAなど
の非タンパク質バイオマーカーさえも使用することができるSEAPには検出可能な薬剤
として多くの理想的な特性がある。それは、胚形成中にのみ発現する人工のC末端短縮型
分泌型ヒト胎盤アルカリホスファターゼ(PLAP)であり、よって、通常は血中では見
つからないユニークなレポーターであり、バックグラウンドがゼロに近いはずである(B
erger et al、(1988)Gene 66:1-10)。PLAPと比較し
て、SEAPは異常に熱安定性があり、したがって、サンプルを65℃まで加熱すると、
SEAPを特異的にアッセイすることを可能にする(Bronstein et al、
(1994)BioTechniques 17:172-174、76-177)。市
販のSEAP検出アッセイは、少なくとも4対数オーダーの濃度範囲で非常に感度が高く
、検出限界はピコグラム/mlの範囲である。SEAPはまた、1)それが、マウスおよ
び大型動物における非ウイルス遺伝子導入の効果的な長期モニタリングを示し(Brow
n et al、(2008)Methods Mol.Biol.423:215-2
24)、2)そのヒト起源は、免疫適格性マウスのマウスSEAP(muSEAP)で示
されたものと同様に、患者の免疫原性の可能性が低下またはゼロになる可能性があること
を意味し(Wang et al、(2001)Gene 279:99-108)、そ
して、3)SEAPがHPV16/18 AS04アジュバントワクチン投与後の抗体レ
ベル監視するために臨床で使用されている(Kemp et al、(2008)Vac
cine 26:3608-3616)ことから、臨床への転用に有利なタンパク質ベー
スのレポーターでもある。
【0108】
本明細書に記載される開示の改変免疫細胞プラットフォームは、競合するアプローチが
直面する臨床翻訳への多くのハードルを克服する。例えば、ナノ粒子ベースのセンサーと
改変された細菌センサーは、癌、線維症、血栓症、インビボ炎症などの疾患プロセスをモ
ニターするために使用されており、かなりの成功を収めている。これにもかかわらず、彼
らの臨床翻訳は、不利な薬物動態(PK)、疾患部位への信頼性の低い配信、およびセン
サーの固有の免疫原性によって妨げられている。
【0109】
対照的に、現在開示されている改変マクロファージプラットフォームは、病理部位への
生化学的媒介の自然な応答を示し、生体適合性の問題を克服するために対象自身の(自己
)細胞を使用することができる。さらに、分泌された腫瘍または疾患によって誘導される
バイオマーカーを生成する能力と、臨床イメージングの前に関連する血液検査を使用する
方が経済的であり、すべての対象に対して費用と時間のかかる臨床イメージングを必要と
するスクリーニング検査よりも効率的に投与することができる。さらに、現在説明されて
いる、または臨床的に使用されている人工センサーのほとんどは、病理の単一の特徴(例
えば、プロテアーゼの過剰発現、または18FDG PETの場合はワールブルグ効果)
の監視に限定されている。対照的に、本明細書に記載の改変免疫細胞プラットフォームの
細胞は、代謝環境の発現を変更するために、疾患環境(TMEなど)を構成する多数の複
雑な物理的および生化学的合図を統合することができる。このようにして、細胞ベースの
センサーは、広範な改変なしで検出感度と特異性を改善する回路を提供するための自然の
複雑な遺伝的および/または生化学的経路を活用することができる。
【0110】
本開示の組成物および方法は、病状、免疫細胞サブタイプ、およびレポーターコンスト
ラクトの選択に適応するというさらなる利点を有する。概念実証はマクロファージの標準
的な例を使用しており、関連するM2表現型は癌の診断代用として機能するが、T細胞、
B細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞などの他の免疫サブタイプはすべて、腫瘍微小
環境(TME)および他の病状の存在下で主要な代謝遺伝子を調節する。したがって、患
者の病理部位に移動し得るそのような免疫細胞はまた、腫瘍または疾患特異的細胞センサ
ーとして作用するように、本開示の方法に従って改変され得る。特にT細胞は、翻訳の観
点から魅力的である。すでにCART細胞療法を受けている患者のために、診断コンスト
ラクトをキメラ抗原受容体(CAR)とともに導入することができるためである。これに
より、治療中にT細胞の代謝を動的に評価して、残存する疾患の負担を検出し、またはT
細胞の消耗などの臨床的に有効な表現型を監視することさえできる。さらに、Glucは
シンプルで高感度な検出方法が利用可能なため(例えば、ルシフェラーゼアッセイ)、G
lucは最初は合成バイオマーカーとして使用されるが、他の免疫原性の低い合成バイオ
マーカー(例えば、泌胎盤アルカリホスファターゼ(SEAP)または分泌合成RNA/
microRNA)を使用することができる。
【0111】
本研究では、活性化マクロファージからのBLIシグナルと病理部位との共局在によっ
て示されるように、本明細書に記載の改変マクロファージプラットフォームによって提供
される空間情報は、臨床的意思決定に役立つ。PETを使用してHSV1-tkレポータ
ー遺伝子を含む養子移入されたCAR T細胞の追跡が報告されている。したがって、本
明細書に記載の人工免疫細胞プラットフォームの実施形態は、GlucをHSV1-tk
で置き換え、M2分極の領域を視覚化するためにPETを実行し、BLIシグナルの空間
分布を観察して患者の疾患状態を評価することによって適応することができる。そのよう
なイメージング手順の前例はすでに存在している。1つは、患者の好中球を放射性標識化
し、SPECTを用いてインビボで追跡するインジウム-111白血球スキャンを使用し
て、感染の可能性のある領域を特定する。または、酸化鉄ナノ粒子は、固形腫瘍における
腫瘍関連マクロファージを磁気共鳴画像法(MRI)でイメージングするために使用され
ている。
【0112】
ここで説明するシステムには、免疫細胞プローブの個別開発が含まれる場合があるが、
このシステムの一般的な適用性を改善するためのいくつかの選択肢がある。関心の免疫サ
ブセットへのインビボ遺伝子送達などの手法により、細胞の単離や改変なしで診断センサ
ーをインサイチュで生成することを可能にする。
【0113】
改変細胞
一過性および安定性の両方のトランスフェクション、および本明細書で利用されるよう
な初代体細胞の多数の技術が確立されている。一過性の手法には、リポフェクション、ポ
リエチレンイミン(PEI)を介したトランスフェクション、およびリン酸カルシウムを
介したトランスフェクション、エレクトロポレーション、またはヌクレオフェクションを
介した核酸(例えば、本明細書に記載の合成バイオマーカーコンストラクトなどの合成遺
伝子要素を有するDNAプラスミドまたはDNAミニサークル)の送達が含まれる。安定
したトランスフェクションには、ウイルス技術と非ウイルス技術の両方が含まれる。ウイ
ルス技術には、合成遺伝子要素(例えば、本明細書に記載の合成バイオマーカー構築物)
を含むように改変された複製欠損ビリオンを用いる、レンチウイルスベース、アデノウイ
ルスベース、またはアデノ随伴ウイルスベースの形質導入が含まれる。非ウイルス技術に
は、エピソーム維持要素を含むDNAベクター(例えば、S/MARを含むプラスミドま
たはCELiDベクター)によるトランスフェクション、環状または線形合成DNA分子
のトランスフェクションおよびランダムな統合、およびCRISPRによる切断および環
状または線形合成DNA分子を使用した相同性による修復が含まれる。
【0114】
アルギナーゼ-1の発現は腫瘍関連マクロファージを特定する
広く適用可能な診断センサーの場合、広範なヒトの癌にわたって広く存在する免疫細胞
サブセットを選択することができる。ゲノムプロファイル(iPRECOG)データセッ
トからの臨床転帰の免疫予測からの5,782個の腫瘍標本における腫瘍浸潤白血球の部
分的有病率の分析は、M2マクロファージが固形腫瘍の大部分に存在する優勢な免疫細胞
集団であることを示し、最大0.43(髄膜腫)(
図2A)の部分存在比は本明細書に記
載されたプラットフォームにおける汎癌診断センサーとしてのその有用性を示す。
【0115】
マウスでは、腫瘍関連M2分極は、免疫抑制微小環境の育成に関与する遺伝子産物(例
えば、ARG1)のアップレギュレーションを特徴とする。したがって、ARG1式が腫
瘍微小環境(TME)とのマクロファージの出会いの診断代理として使用することができ
るかどうかを調査した。TMEは、アシドーシス、低酸素症、IL-4およびIL-13
を含むTヘルパー2(Th2)サイトカインの高濃度、腫瘍由来のサイトカインおよび代
謝産物を特徴とする複雑なニッチである。BMDMとRAW264.7マクロファージ細
胞株の両方は、定量的PCR(qPCR)(
図2Bおよび2C)およびアルギナーゼ活性
アッセイ(
図2D)で測定した場合、IL-4とIL-13で刺激すると、それぞれ、A
RG1特異的mRNAの発現と活性に同様の濃度依存的な増加を示した。この用量依存効
果はまた、CT26マウス結腸癌細胞株から腫瘍馴化培地(TCM)への曝露時にも再現
され、BMDMはARG1発現が600±65倍以上増加した(
図2Bおよび2Cおよび
2D)。この効果は、腫瘍由来のサイトカインとTCMの酸性度の両方によって媒介され
る。この効果は腫瘍由来のサイトカインと乳酸を含む代謝中間体によって媒介されるよう
である(
図13)。
【0116】
養子移入されたマクロファージが担癌マウスの腫瘍関連表現型をとることができるかど
うかを評価するために、同系の25~50mm
3皮下結腸直腸腫瘍を有するBALB/c
マウスに静脈注射する前に、RAW264.7細胞をVivoTrack 680(VT
680)膜色素で標識化した。マクロファージの均一な標識がフローサイトメトリーによ
って確認された(
図9)。標識化されたマクロファージの注射の5日後、腫瘍と脾臓を採
取し、かつ内因性(CD11b+、F4/80+、VT680-)および養子移入(CD
11b+、F4/80+、VT680+)マクロファージをフローサイトメトリーにより
単離した(
図2E)。インビトロデータと一致して、内因性および養子移入腫瘍浸潤マク
ロファージはそれぞれ、肝臓ホーミングおよび常在マクロファージと比較して上昇(qP
CRによって約200倍の増加)ARG1レベルを示し、このことにより、養子移入マク
ロファージは、ホストに存在する病態に応答して代謝状態を変更できることが確認される
。腫瘍体積が25~50mm
3であることは、マクロファージが腫瘍形成の初期に存在し
、早期癌検出の有望な候補であることも示している。
【0117】
養子移入されたマクロファージは腫瘍微小環境に移動して蓄積する
プローブベースの診断の翻訳に対する障壁の1つは、疾患部位への非効率的な送達であ
る。免疫細胞の動員は癌を含む多くの疾患状態の共通の特徴であるため、マクロファージ
センサーは自然に悪性腫瘍の部位に移動すると考えられた。CSF-1などの腫瘍由来サ
イトカインに対するマクロファージ走化性の報告と一致して、マクロファージは、24時
間トランスウェルアッセイにおいて、条件なし培地に比べてTCMに対して最大4倍まで
濃度依存的な移動を示した(
図3A)。インビボで、VT680標識化された養子移入マ
クロファージは、近赤外色素の蛍光イメージングによって視覚化されるように、5日間に
わたって25~50mm
3の皮下結腸直腸腫瘍に移動した(
図3B~3C)。切除された
腫瘍の免疫蛍光法により、マクロファージと低酸素領域との共局在が明らかになった(図
15)。蛍光シグナルは、右肩に沿った輝き線トレースによって証明されるように、Fl
ucトランスフェクトCT26腫瘍からの生物発光シグナルと強く共存する(
図3D)。
脾臓と腫瘍の両方のマクロファージのフローサイトメトリー分析により、各部位に存在す
るマクロファージの20~25%が養子移入(CD11b+、F4/80+、VT680
+)からのものであることがわかり、健常な臓器と疾患部位の両方にセンサーの有意なコ
ロニー形成が示唆された(
図2Dおよび3E)。
【0118】
募集のメカニズムを調査するために、CSF1、CCL2、およびCCL5などの移行
に役割を果たすと説明されているケモカイン受容体の表面発現を分析した。内因性および
養子移入腫瘍浸潤マクロファージは、脾臓マクロファージと比較して、同族受容体CSF
1R、CCR2、およびCCR5の発現の増加を示した(
図3D)。腫瘍への補充または
維持の媒介におけるケモカインの役割を説明するために、CCL2およびCSF1に対す
る中和用量の抗体を投与し、再びVT680+マクロファージの移動をモニターした。ど
ちらかのケモカインの中和は、移動を大幅に減少させ、動員のメカニズムを確認した(図
3D)。
【0119】
分泌されたバイオマーカーは、マクロファージ活性化の非侵襲的モニタリングを可能にす
る
マクロファージの分極の変化を非侵襲的にインビボでアッセイするために、ARG1の
活性化が、生きている対象の血液または末梢血サンプルでアッセイすることができる分泌
バイオマーカーの生成に結びつくように、マクロファージが改変された。Glucは主に
(95%)分泌された合成バイオマーカーであり、ホタルおよびウミシイタケルシフェラ
ーゼと比較して高感度を示し、20分の半減期で血清中で安定しており、活性化プロセス
の動的モニタリングを可能にし、GlucのBLIによるARG1マクロファージ発現の
空間追跡の可能性も提供する細胞内に捕捉された。したがって、分泌されたGlucの上
流約3.8kb ARG1プロモーターとエンハンサー領域がクローン化され、M2分極
の非侵襲的モニタリングのためのpARG1-Glucレポーターコンストラクトの安定
した発現を伴うRAW264.7細胞株に改変された。
【0120】
TCM、IL-4、およびIL-13を使用したエクスビボ活性化時間経過実験では、
培養液のサンプリングにより、Gluc発光シグナルの濃度と時間依存性が、24時間以
上で、IL-4/IL-13について最大2倍、「高」TCMの場合は60倍に増加した
ことが明らかになった(
図4A)。
【0121】
改変されたマクロファージセンサーは50mm
3未満の腫瘍を検出することができる。
改変されたマクロファージプラットフォームがインビボで腫瘍を検出することができる
かどうかを判断するために、ARG-1型のセンサーを含む上記のマクロファージを腫瘍
保有マウスに静脈内導入し、続いて活性化をモニターするためにマウスの血漿をGluc
についてアッセイした。転移性乳癌の同系モデルが採用され、静脈内注射された4T1細
胞は最初に肺に限局性の微小腫瘍を形成し、その後脳、肝臓、骨に影響を与える転移性疾
患が出現した。センサーは、100%の感度と特異性(曲線下面積(AUC)=1.00
、n=11、p=0.0018)で健常な対照から転移性疾患を識別し、注射24時間後
に血漿をサンプリングした(
図4B)。一時的にトランスフェクトされたBMDMでも同
様の結果が得られ、初代マクロファージでもアプローチの実行可能性が実証された(
図1
0A)。このタイムスケールは、インビボでの移動と生体外でのマクロファージの活性化
の動態と一致している。さらに、Glucは主に分泌型バイオマーカーであるが、細胞内
に濃縮されたままの約5%をBLIで視覚化して、活性化マクロファージを空間的に追跡
することができる。別々の日に活性化マクロファージ(Gluc)と転移(Fluc)の
両方をイメージングすると、脳内(
図4C、
図10B)を含む、活性化マクロファージと
転移部位の顕著な共局在が明らかになり、マクロファージセンサーが効果的に示された病
気の場所へのトラフィックと非常に制限された活性化パターンを受ける。特に、腫瘍負荷
が4T1注射後早期に触知不可能な肺微小腫瘍に局在化した場合(
図4B、
図11)、セ
ンサーはおそらく高酸素化肺での不十分な発達TMEによる疾患を検出しなかった。
【0122】
センサーで検出可能な腫瘍体積の大きさを決定するために、上記のマクロファージセン
サーを、体積が0~250mm
3のCT26大腸癌の皮下モデルに適用した。臨床PET
は、直径約7mmの腫瘍結節および約200mm
3の体積を確実に検出することができる
。センサーの注入日に腫瘍のサイズをノギス(
図12Aおよび12B)で測定し、翌日に
は血漿を測定した。キャリパー測定値は、BLIで測定された腫瘍サイズと相関していた
(r
2=0.918、
図12A)。センサー注入後24時間で、体積が50mm
3を超え
る腫瘍(例えば、50~250mm
3の平均が117.19+/-74.87mm
3)を
100%の感度と特異性で検出でき得た(AUC=1.00、n=6、p=0.0009
)(
図3D)。特に、体積が25~50mm
3(平均39.43+/-7.90)の腫瘍
は、AUC=0.849(95%CI 0.620-1.00、n=6、p=0.021
)の健常対照者からも区別され、本明細書に記載の活性化可能な免疫センサーは、現在臨
床PETで可能であるよりも低い検出限界を達成する。
【0123】
25mm
3未満の腫瘍体積は確実に検出されなかった。体積が約1500mm
3を超え
る目に見える壊死性腫瘍または潰瘍性腫瘍もセンサーでは検出されなかった(
図12B)
。おそらくTMEの存在下でさえ、血管新生が不十分な壊死性コアへの免疫浸潤が限られ
ているためである。GlucのイメージングによりCTZ基質代謝から非特異的な肝臓シ
グナルが得られたが、活性化マクロファージと腫瘍部位との共局在がBLIで観察され(
図4E)、右肩を横切る放射輝度ライントレースによって確認された(
図4F)。
【0124】
この限局性の疾患モデルにより、活性化の特徴を調査することもできた。これは、癌の
播種の変数が追加された転移モデルでは、他の方法では調査することが難しいためである
。例えば、センサー注入後4日間までGlucの血漿を分析すると、健常なマウスと腫瘍
を有するマウスの両方で24時間後にシグナルの一貫した低下が明らかになった(
図12
C)。これは、おそらく、最初の日後の合成バイオマーカーの免疫原性および促進された
クリアランスに因るものである。限局性疾患の管理モデルにおけるこれらの初期の最適化
は、早期の血漿サンプリングを主張し、将来の研究でさらに細胞数の線量を最適化するた
めのフレームワークを提供する。
【0125】
アプローチの翻訳可能性のさらなる証拠として、1次BMDMによる腫瘍検出も実証さ
れた。単球は骨髄から生成され、表現型は成熟マーカーF4/80の中間発現をアッセイ
することで確認された(
図4G)。pARG1-Glucコンストラクトは80%を超え
る効率でエレクトロポレーションによって導入され(
図7B)、得られたセンサーは「低
」および「高」の両方のTCMによって約10倍活性化された(
図4H)。BMDMセン
サーはまた、AUCが0.813(95%CI 0.555~1.00、n=4、p=0
.0894)で、インビボで60~75mm
3の低いCT26腫瘍体積(n=4、p=0
.0342)を検出した(図.4I)。BMDMを注射したマウスの腫瘍は初期の退行(
4日目、p=0.058)を示したが、その後の成長動態の変更は見られず(
図16)、
センサーM2分極が腫瘍の進行を加速しないようである。
【0126】
炎症と創傷治癒のモデルにおけるマクロファージセンサー
炎症は、癌の診断にとって重要な交絡疾患である。このようにして、炎症のインビトロ
およびインビボモデルにおける炎症誘発性サイトカインへの曝露時の偽陽性センサー活性
化の程度が調査された。免疫浸潤は多くの病的状態の特徴であるが、診断マーカーとして
代謝マーカーを使用することの利点の1つは、様々な疾患状態での厳密に制御された明確
な転写調節である。炎症誘発性M1マクロファージのよく特徴付けられたプロファイルと
一致して、RAW264.7マクロファージは、IFNγ/LPSやTNFαなどの炎症
性サイトカインによる刺激時に、qPCRによる比較的最小限の上昇(3倍未満)または
ARG1発現の抑制を示した(図.5A)。RAW264.7 ARG1発現は同様にT
NFαの影響を受けなかったが、IFNγ/LPSによって誘導された。高用量のIFN
γまたはTNFαはARG1発現に有意な影響を与えなかったため、この誘導は主にLP
Sによって媒介される。これらと同じ炎症性メディエーターを用いるpARG1-Glu
c改変BMDMおよびRAW264.7マクロファージの刺激は、Gluc分泌の増加を
最小限に抑えた(
図5B)。
【0127】
センサーの特異性は、テレビン油で誘導された後肢の炎症のモデルでも評価された。テ
レビン油の筋肉内注射後1~10日間の後脚の筋肉の組織学は、炎症と創傷治癒の定型的
なタイムラインを明らかにした、すなわち、1~3日目は、深い好中球浸潤を特徴とする
急性炎症フェーズを反映し、7~10日目は、デブリを除去するマクロファージのより大
きな浸潤と炎症の回復を反映した(
図5C)。本開示のマクロファージセンサーの1日目
(急性炎症中およびテレビン油と同じ日)の静脈内投与は、24時間後に有意に上昇した
血漿Glucを生じず、免疫センサーの特異性を裏付けた(
図5D)。
【0128】
さらに、M2マクロファージは創傷治癒と炎症の回復にも関与しているため、回復フェ
ーズ中の7日目のセンサーの注入をテストして、注入部位にセンサーの活性化があるかど
うかを確認した。記載されているM2活性化の生態と創傷治癒プロセス中のARG1誘導
と一致して、センサーがこのフェーズ中に注入されたとき、血漿Glucは有意に上昇し
た(AUC=0.929、95%CI 0.783~1.00、n=8、p=0.006
)。活性化のこれらの時間的傾向は、センサー注射の24時間後に摂取したGlucのB
LIでも明らかであった(
図5E)。
【0129】
同様の傾向は、LPS誘導の肺炎症モデルでBMDMセンサーを使用して観察された。
組織学はこのモデルの動態を確認し、急性炎症と7時間での好中球の流入、創傷治癒と4
8時間でピークを迎えるマクロファージの流入、72時間で健常な肺胞形態が徐々に回復
することを明らかにした(
図5F)。血漿サンプリングの7、24、48、または72時
間前にLPSを鼻腔内投与すると、これらの動態が再現される。7時間の時点で急性炎症
中に血漿Glucは上昇しなかったため、センサーの特異性のさらなる証拠が得られた。
予想通り、血漿Glucは24時間で創傷治癒中に徐々に上昇し(AUC=0.771、
95%CI 0.501~1.00、n=6、p=0.093)、最終的に48時間でピ
ークに達した(AUC=0.975、95%CI 0.900~1.00、n=5、p=
0.0054)(
図5G)。レベルはベースラインに向かって72時間まで減少し始め(
AUC=0.792、95%CI 0.540~1.00、n=6、p=0.071)、
正常な肺構造が回復した。
【0130】
共存する炎症がインビボで腫瘍を検出するセンサーの能力に影響を与える能力も調べた
。転移性4T1のモデルを採用すると、BMDMセンサーを使用した場合、LPS誘導急
性肺炎症の不在下(AUC=0.975、95%CI 0.900~1.00、n=5、
p=0.0054)または存在下(AUC=1.00、95%CI 1.00~1.00
、n=4、p=0.0066)でも血漿Glucに有意差はなかったことが観察された(
図5H)。活性化されたBMDMセンサーのBLIは同様に影響を受けなかった(
図5I
)。
【0131】
急性炎症時のマクロファージのイメージングでは活性化や局所的な偏りは明らかにされ
なかったが、右後肢のマクロファージの分極は、回復期に容易に観察できた。データは、
ここで説明する免疫センサーが癌(急性炎症)の最も交絡する病状を回避することができ
る一方で、早期の癌検出の使用には禁忌となるであろう病的状態のコホート(創傷治癒な
ど)があることを示している。あるいは、マクロファージ表現型シフトの頑健性は、創傷
治癒のモニタリングにおける用途を含む、腫瘍検出以外の免疫センサーの拡張された使用
を主張する。特定の適用はまた、プロモーターの選択に影響を及ぼし、pARG1以外の
プロモーターの選択により、癌の早期発見のための特異性がさらに高まる可能性がある。
【0132】
マクロファージセンサーは臨床的に使用されている腫瘍再発のバイオマーカーよりも優れ
ている
最後に、免疫細胞センサーの臨床的関連性の証拠として、マクロファージセンサーが、
臨床的に使用されている再発/発生のバイオマーカーよりも早く腫瘍の存在を検出する能
力を評価した。免疫センサーはまずこれらの適応症に臨床的に翻訳される可能性が高いた
め、センサー感度を、大腸癌の治療モニタリングおよび疾患再発の検出に使用される臨床
バイオマーカーである癌胎児性抗原(CEA)と比較した。CEA分泌天然マウス細胞株
の明らかな欠如を説明するために、BALB/cNU/NUマウス(n=7)の皮下局在
で(CEAを放出する)CEA分泌ヒト細胞株LS174Tを使用した結腸直腸腺癌の皮
下モデルが開発された。腫瘍の平均体積が25mm3を超えたら、腫瘍のサイズをノギス
で測定し、血漿を採取してCEAが酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)で検出可能か
どうかを確認した。この日の24時間前にマクロファージセンサーを注入し、同じ血漿サ
ンプルからGlucレベルも測定した。その後、CEAの血漿を3日ごとに監視した。
【0133】
腫瘍の増殖は指数関数的に続き、腫瘍が平均体積136.62+/-110.71mm
3であった場合、CEAは血漿採取の2日目(4日目)までに検出可能であった(
図6A
および6B)。最初の血漿サンプリング中に、平均体積44.82+/-40.12mm
3(4日目より67%小さい)の腫瘍は、CEAを使用して統計的有意性で検出できなか
ったが、マクロファージセンサーからのGluc測定に基づいて識別された(
図6C)。
これは、CEAで0.829(95%CI 0.590~1、p=0.062)からマク
ロファージセンサーで0.914(95%CI 0.738~1.00、p=0.019
)に改善されたAUCにも反映されている(
図6D)。臨床的に使用されているバイオマ
ーカーを上回るセンサーの能力は、モデルの固有の制限を考えると、特に有望である。1
つには、NU/NUモデルには、そうでなければ腫瘍へのマクロファージ移動の媒介およ
びTMEの形成に寄与する内因性免疫細胞の手掛かりが欠けている。さらに、LS174
Tは、ATCCによって特徴付けられる2番目に高いCEA発現細胞株であり、マクロフ
ァージセンサーによる早期検出の向上は、バイオマーカーをあまり積極的に放出しない腫
瘍モデルでさらに顕著になる可能性がある。
【0134】
次に、本明細書に記載の改変免疫細胞センサーの感度を、2番目の診断モダリティであ
る無細胞DNA(cfDNA)の感度と比較した。ここで説明するセンサーは25~50
mm
3のCT26腫瘍を検出することができるため(
図4D)、cfDNA濃度の定量化
または血漿中の変異の検出のいずれかによって検出することができる最小サイズの腫瘍が
決定された。CT26細胞株の変異のデータベースを使用して、2つの欠失が特定され、
対立遺伝子頻度限界がそれぞれ0.1%と1%でqPCRアッセイが設計された。これは
、既存のシーケンス手法の感度と同様である(
図17)。
【0135】
cfDNA濃度は、腫瘍が1500~2000mm
3の体積に達するまで、腫瘍担持マ
ウスと健常なマウスを区別できなかった(
図6E)。同様に、腫瘍が最小容積の1300
mm
3に達するまで、どちらの欠失変異も血漿中で検出できなかった(
図6F)。私たち
のモデルの一般化可能性は、腫瘍の血管新生、細胞死の速度、腫瘍のDNA放出の速度な
どの変数によって制限されるが、データは、ここで説明するマクロファージセンサーがc
fDNAで可能な大きさよりも1桁小さい腫瘍を検出することができることを示す突然変
異についての先見的な知識が与えられた。
【0136】
キット
本開示はまた、本開示の1つ以上の化合物を含むキットを企図する。本開示の態様では
、本開示のキットは容器を含む。特定の態様では、本開示のキットは、容器と、緩衝液を
含む第2の容器とを含む。キットには、バッファーおよび希釈剤、フィルター、針、シリ
ンジ、およびここに開示された方法を実行するための指示を含む添付文書を含むがこれら
に限定されない、商業的およびユーザーの観点から望ましい他の材料がさらに含まれる場
合がある(例えば、本明細書に開示される疾患を治療するための方法)。本開示のキット
中の医薬品または製剤は、本明細書に開示されている製剤または組成物のいずれかを含ん
でもよい。
【0137】
本開示の1態様は、遺伝子修飾免疫細胞を受容する動物またはヒト対象における病的状
態によって誘導される代謝変化に応答して検出可能な薬剤を発現する異種核酸を含む遺伝
子修飾免疫細胞の実施形態を包含する。
【0138】
本開示のこの態様のある実施形態では、免疫細胞は、単球、マクロファージ、T細胞、
B細胞、ナチュラルキラー細胞、または樹状細胞であってもよい。
【0139】
本開示のこの態様のある実施形態では、異種核酸は、検出可能な薬剤をコードする核酸
配列に作動可能に連結された遺伝子発現調節領域を含む少なくとも1つの遺伝子発現カセ
ットを含み得、遺伝子発現調節領域は、遺伝子修飾免疫細胞の代謝変化に応答して、検出
可能な物質の発現を誘導する。
【0140】
本開示のこの態様のある実施形態では、異種核酸は、核酸ベクターであってもよい。
【0141】
本開示のこの態様のある実施形態では、異種核酸はプラスミドであってもよい。
【0142】
本開示のこの態様のある実施形態では、遺伝子発現調節領域は、遺伝子プロモーター領
域を含むことができる。
【0143】
本開示のこの態様のある実施形態では、遺伝子発現調節領域は、遺伝子特異的エンハン
サーをさらに含むことができる。
【0144】
本開示のこの態様のある実施形態では、遺伝子プロモーターは、ARG1プロモーター
、AKT1プロモーター、CD163プロモーター、MMR/CD206プロモーター、
CD200Rプロモーター、TGM2プロモーター、DecoyRプロモーター、IL-
1RIIプロモーター、IL-10プロモーター、TGF-ベータプロモーター、IL-
1raプロモーター、CCL17プロモーター、CCL2プロモーター、またはCCL2
4プロモーターであってもよい。
【0145】
本開示のこの態様のある実施形態では、検出可能な作用物質は、ポリペプチドまたは分
泌可能な核酸であってもよい。
【0146】
本開示のこの態様のある実施形態では、検出可能なポリペプチドはガウシアルシフェラ
ーゼ(Gluc)であってもよい。
【0147】
本開示のこの態様のある実施形態では、検出可能なポリペプチドはフェリチンであって
もよい。
【0148】
本開示のこの態様のある実施形態では、検出可能なポリペプチドは、HSV-1チミジ
ンキナーゼ(HSV1-tk)であってもよい。
【0149】
本開示のこの態様のある実施形態では、検出可能なポリペプチドは、ドーパミンD2受
容体のD80RA変異体であってもよい。
【0150】
本開示のこの態様のある実施形態では、検出可能なポリペプチドは、ヒトヨウ化ナトリ
ウムシンポーター(hNIS)であってもよい。
【0151】
本開示のこの態様のある実施形態では、検出可能なポリペプチドは、造影剤、レポータ
ー遺伝子に相補的な結合剤、検出可能な分子を生成する酵素、または検出可能な分子の蓄
積を促進するトランスポーターであってもよい。
【0152】
本開示のこの態様のある実施形態では、検出可能な薬剤は、分泌可能な核酸であっても
よい。
【0153】
本開示のこの態様のある実施形態では、異種核酸は、配列番号1に示されるヌクレオチ
ド配列を有することができる。
【0154】
本開示のこの態様のある実施形態では、遺伝子発現調節領域は、遺伝子修飾免疫細胞に
おける腫瘍特異的代謝変化に応答して、検出可能な薬剤の発現を誘導することができる。
【0155】
本開示のこの態様のある実施形態では、遺伝子組み換え免疫細胞における腫瘍特異的代
謝変化は、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、肺癌、黒色腫、非小細胞
肺癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、子宮癌、子宮頸癌、甲状腺癌、胃癌、脳幹神経膠腫、
小脳星細胞腫、大脳星細胞腫、膠芽腫、上衣腫、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、胚細胞
腫瘍、頭蓋外癌、ホジキン病白血病、肝癌、髄芽腫、神経芽腫、脳腫瘍、骨肉腫、骨の悪
性線維性組織球腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、
松果体腫瘍、視経路および視床下部膠腫、ウィルムス腫瘍、食道癌、有毛細胞白血病、腎
臓癌、口腔癌、膵臓癌、皮膚癌、ならびに小細胞肺癌からなる群から選択される癌によっ
て誘導される。
【0156】
本開示のこの態様のある実施形態では、遺伝子修飾免疫細胞における病態特異的代謝変
化は、炎症からでもよい。
【0157】
本開示の別の態様は、遺伝子修飾免疫細胞を生成する方法であって、病理応答性免疫細
胞集団を動物またはヒト対象から単離するステップと、遺伝子修飾免疫細胞を受容する動
物またはヒト対象の病的状態によって誘導される代謝変化に応答して検出可能な薬剤を発
現する異種核酸で、単離された病理応答性免疫細胞集団を形質転換するステップと、を含
む方法の実施形態を包含する。
【0158】
本開示のこの態様のある実施形態では、病変は腫瘍であってもよい。
【0159】
本開示のこの態様のある実施形態では、腫瘍応答性免疫細胞はマクロファージである。
【0160】
本開示のさらに別の態様は、動物またはヒト対象における病的状態を検出する方法であ
って、本開示の遺伝子修飾免疫細胞の集団を含む薬学的に許容される組成物を対象に投与
するステップと、動物またはヒト対象から生体液サンプルを得るステップと、生体液サン
プル中の動物またはヒト対象の病的状態と接触または近接した遺伝子修飾免疫細胞によっ
て発現される分泌可能な検出可能な薬剤の存在を検出するステップであって、当該存在は
、存在は、動物またはヒトは代謝変化を誘導する病的状態を有することを示すステップと
を含む方法、の実施形態を包含する。
【0161】
本開示のこの態様のある実施形態では、生体液は血液であってもよい。
【0162】
本開示のこの態様のある実施形態では、遺伝子修飾免疫細胞は、腫瘍応答性マクロファ
ージであってもよい。
【0163】
本開示のこの態様のある実施形態では、病理学的状態は癌であってもよい。
【0164】
本開示のこの態様のある実施形態では、病的状態は腫瘍であってもよい。
【0165】
本開示のこの態様のある実施形態では、方法は、病的状態に隣接するか、または病的状
態に付着する免疫細胞内の検出可能な薬剤からのシグナルを検出するステップと、動物ま
たはヒトに対する検出可能なシグナルの画像を生成するステップと、動物またはヒトにお
ける局在化されたシグナルの位置を決定するステップとをさらに含む。
【0166】
ある実施形態では、方法は、分泌の不在を検出すること、およびそのような不在を使用
して、病理の不在を動物またはヒト対象に割り当てることを含むことができる。
【0167】
本開示のさらに別の態様は、骨髄由来マクロファージ(BMDM)単離のための装置と
、ARG-1プロモーターに作動可能に連結された検出可能な薬剤をコードするプラスミ
ドのエンドトキシンを含まない調製物とを含むキットの実施形態を包含する。
【0168】
本開示の別の態様は、対象の病的状態を特定する方法であって、(a)検出可能な薬剤
をコードする核酸配列を有する異種核酸を含む遺伝子修飾免疫細胞を対象に投与するステ
ップであって、遺伝子修飾免疫細胞は、対象の病的状態によって誘導される代謝変化に応
答して検出可能な薬剤を発現するステップと、(b)対象の検出可能な薬剤を検出して病
的状態を同定するステップと、を含む方法の実施形態を包含する。
【0169】
本開示のこの態様のある実施形態では、遺伝子修飾免疫細胞における腫瘍特異的代謝変
化に応答するとき、遺伝子発現調節領域は、検出可能な薬剤の発現を誘導することができ
る。
【0170】
本開示のこの態様の実施形態では、遺伝子修飾免疫細胞における腫瘍特異的代謝変化は
、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、肺癌、黒色腫、非小細胞肺癌、卵
巣癌、前立腺癌、精巣癌、子宮癌、子宮頸癌、甲状腺癌、胃癌、脳幹神経膠腫、小脳星細
胞腫、大脳星細胞腫、膠芽腫、上衣腫、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、胚細胞腫瘍、頭
蓋外癌、ホジキン病白血病、肝癌、髄芽腫、神経芽腫、脳腫瘍、骨肉腫、骨の悪性線維性
組織球腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、松果体腫
瘍、視経路および視床下部膠腫、ウィルムス腫瘍、食道癌、有毛細胞白血病、腎臓癌、口
腔癌、膵臓癌、皮膚癌、ならびに小細胞肺癌からなる群から選択される癌によって誘導す
ることができる。
【0171】
本開示のこの態様のある実施形態では、遺伝子修飾免疫細胞における病態特異的な代謝
変化は、炎症によるものである。
【0172】
遺伝子修飾免疫細胞のある実施形態では、異種核酸は複数の異なる遺伝子発現調節領域
を含み、各調節領域は多種類の検出可能な薬剤をコードする複数の核酸配列に作動可能に
連結されており、遺伝子発現調節領域は、病態特異的代謝変化に応答して、検出可能な薬
剤の発現を誘導し、その各検出可能な薬剤のレベルは、対象の異なる状態の指標である。
【0173】
本開示の実施形態は、実施例ならびに対応するテキストおよび図に関連して説明される
が、本開示をこれらの説明の実施形態に限定する意図はない。逆に、その意図は、本開示
の実施形態の精神および範囲内に含まれるすべての代替、修正、および均等物を網羅する
ことである。
【実施例0174】
実施例1
腫瘍浸潤白血球プロファイリング:様々な癌のトランスクリプトームプロファイリング
による部分的な免疫細胞の構成は、スタンフォード大学iPRECOGデータベースから
取得した。腫瘍サンプルの多数のコホート各種癌の下にリストされているため、各コホー
トで分析された腫瘍サンプルの数に基づいて、免疫細胞分画の加重平均が各癌について計
算した。
【0175】
実施例2
骨髄由来マクロファージ(BMDM)の準備とエレクトロポレーション:6~8週齢の
雌のBALB/cマウスから大腿骨と脛骨を単離し、骨髄を5mLの冷PBSで洗い流し
た。骨髄を繰り返しピペッティングすることにより均一な溶液に再懸濁し、40μmフィ
ルターに通して破片を取り除いた。300xgで5分間遠心分離した後、骨髄を氷上で5
分間、ACK溶解バッファー(Invitrogen、Waltham、MA)に再懸濁
した。ACKをPBSで10倍に希釈し、溶液を再び300xgで5分間遠心分離した。
細胞を、10%の熱不活化ウシ胎児血清(FBS)、1%抗菌/抗真菌(A/A)溶液(
ThermoFisher)および10ng/mlのマウスコロニー刺激因子(M-CS
F、Peprotech、Rocky Hill,NJ)を補充したIMDM 10mL
の(ThermoFisher,Waltham,MA)中に4×106個の細胞/10
cmのペトリ皿の密度でプレートし、ダウンストリーム用のセルリフターで採取する前の
5日間、37℃の加湿、5%CO2インキュベーター中で維持した。
【0176】
すべてのインビボ試験でBMD単球を作製するために、細胞を6×10
6個の細胞/ウ
ェルの密度で、6ウェルのCorning.RTM Costar.RTM超低接着プレ
ート(Corning、Corning、NY)で、6mLの20ng/mL M-CS
Fを添加した培地で播種した。5日後、付着細胞(マクロファージ)を捨て、付着してい
ない細胞を回収した。純度は、アイソタイプ対照と比較して、F4/80(Bioleg
end、San Diego、CA)の染色によるフローサイトメトリーで96%を超え
ると判断された(
図7A)。
【0177】
一過性のトランスフェクションは、マウスマクロファージ用のNucleofecto
rキット(Lonza,バーゼル、スイス)を使用したエレクトロポレーションと、関連
するNucleofector 2bデバイスでのプロトコルY-001によって行った
。各反応は2×10
6個のBMDMおよび12μgプラスミドDNAを含み、平均で約4
0%の効率を達成した(
図7B)。
【0178】
実施例3
細胞株:RAW264.7マウスマクロファージ、CT26マウス結腸癌、4T1マウ
ス乳癌、およびLS174Tヒト結腸直腸腺癌は、ATCC(Manassas,VA)
から入手し、10%FBSおよび1%抗菌/抗真菌溶液(ThermoFisher)を
補充したDMEM(RAW264.7、LS174T)またはRPMI(CT26、4T
1)で培養し、加湿した5%CO2インキュベーターで37℃に維持した。CT26 e
GFP-ホタルルシフェラーゼ(Fluc)および4T1 eGFP-Fluc細胞株は
、レンチウイルス形質導入とそれに続く、2.5%のeGFP発現のための3回の選別に
よって生成された。ガウシアルシフェラーゼ(pARG1-Gluc)細胞株を駆動する
RAW264.7アルギナーゼ-1プロモーターは、リポフェクタミン3000(The
rmoFisher)によるトランスフェクションと、eGFP発現の最大2.5%に対
する3回の選別によって生成された。
【0179】
実施例4
インビトロマクロファージ活性化:マクロファージ(RAW264.7またはBMDM
)を2.5mLの培地中の6ウェルプレートに1×106個の細胞/ウェルの密度で播種
した。24時間後、培地を腫瘍馴化培地(TCM)に置き換えるか、IL-4、IL-1
3、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、またはインターフェロン癌マ(IFNγ)で補
充した。「高」および「低」のTCMは、6ウェルプレートのウェルあたり2.5mLの
培地で2×106または3×106個のCT26細胞をそれぞれ24時間培養することで
生成された。馴化培地を300xgで10分間遠心分離して、使用前に破片を取り除いた
。24時間後、RNA単離のためにマクロファージを採取するか、20μLの培養培地を
収集して、製造元の指示に従って、BioLuxガウシアルシフェラーゼアッセイキット
(New England BioLabs,Ipswich,MA)を使用してGlu
cをアッセイした。発光測定は、TD 20/20ルミノメーター(Turner De
signs,San Jose,CA)で行われ、10秒間の積分と、相対発光単位(R
LU)で表される発光である。
【0180】
実施例5
アルギナーゼ(ARG-1)遺伝子発現アッセイ:全RNAは、製造者の指示に従って
RNeasy Mini Kit(Qiagen、Hilden、Germany)を使
用してマクロファージから抽出した。細胞培養におけるマクロファージからのRNAの抽
出は、ウェル内での直接溶解によるものであったが、腫瘍および脾臓浸潤マクロファージ
からの抽出は、フローサイトメトリー中にRNeasy溶解バッファーに直接ソーティン
グすることで行われた。cDNA合成では、製造元の指示に従って、iScript c
DNA合成キット(Bio-rad、Hercules、CA)を使用した。定量的PC
R(qPCR)反応は、1xSsoAdvanced Universal Probe
s Supermix(Bio-Rad)、1μLの遺伝子特異的加水分解プローブ、2
μLのcDNA、およびヌクレアーゼ不含水(Bio-rad)を含む20μL容量であ
った。ARG1およびGAPDHのFAMフルオロフォア共役加水分解プローブは市販さ
れている(Bio-rad)。cDNA合成とqPCRの両方のサーマルサイクリングは
、以下のプロトコルをも使用してCFX96リアルタイムシステムC1000タッチサー
マルサイクラー(Bio-Rad)を使用した:25℃で5分間、46℃で20分間、9
5℃で1分間(cDNA合成)および95℃で3分間、その後95℃で15秒間および5
9℃で30秒間の60サイクル(qPCR)。すべてのサンプルの技術的複製を2回繰り
返した。陰性対照は、cDNAの代わりにヌクレアーゼを含まない水で行った。サイクル
閾値は、自動的に決定された(CFX Manager Softwareバージョン3
.1を使用して)単一の閾値であり、すべてのCq値がアッセイの線形定量可能範囲内に
あった。
【0181】
実施例6
アルギナーゼ(ARG-1)活性アッセイ:マクロファージをPBSで1回洗浄し、回
収して、1xHalt Protease Inhibitor Cocktail(T
hermoFisher)を含む100μLのPierce IP Lysis Buf
fer(ThermFisher)で氷上で10分間溶解した。ライセートを4℃、10
分間14,000xgで遠心分離し、上澄みのアルギナーゼ活性を、製造元の指示に従っ
て比色定量用のQuantiChromアルギナーゼアッセイキット(BioAssay
Systems,Hayward,CA)を使用して測定した。Synergy 4マ
イクロプレートリーダー(BioTek、Winooski,VT)で430nmの光学
密度を測定した。
【0182】
実施例7
インビトロ移動アッセイ:インビトロ移動アッセイは、8.0μMのポアサイズのポリ
エステルメンブレン(Corning、Corning、NY)を備えた6.5mmのT
ranswell組織培養処理インサートを使用して行った。1×105個のRAW26
4.7マクロファージを膜チャンバーの上部にある100μLのDMEMに播種し、チャ
ンバーを「高」腫瘍馴化培地または非馴化培地のいずれかを含むウェルに沈める前に10
分間付着させた。24時間後、インサートを取り外し、メンブレン上部の移動していない
細胞を綿棒で取り除き、インサートを70%エタノール600μLで10分間固定した。
膜を15分間乾燥させた後、細胞染色のために600μLの0.2%クリスタルバイオレ
ット(CV)溶液に10分間浸した。最後に、メンブレンをPBSで5回洗浄して過剰な
CVを除去し、インサートから除去し、移動した細胞の数をEVOSイメージングシステ
ム(ThermoFisher)の10個のランダムな10倍視野の明視野でカウントし
た。
【0183】
実施例8
インビボ移動アッセイ:6~8週齢のメスのBALB/cマウス(Charles R
iver,Wilmington,MA)に、100μLのPBS中の1×106個のC
T26 eGFP-Fluc細胞を右肩に皮下移植した。7日後、腫瘍の摂取を確認する
ために100μLのPBSに30mg/kgのD-ルシフェリンを腹腔内注射した後、I
VISスペクトル(PerkinElmer,Waltham,MA)デバイスで生物発
光イメージング(BLI)により腫瘍をイメージングした。腫瘍移植の10日後、1×1
07個の同系RAW264.7マクロファージを近赤外蛍光膜色素(VivoTrack
680、PerkinElmer)で標識化し、100μLのPBSに静脈内注射した
。640nmの励起と700nmの発光フィルターセットを用いるインビボ蛍光イメージ
ングは、腫瘍への移行を視覚化するために、マクロファージ注入後1、3、および5日目
にIVISスペクトルを使用して行われた。関心領域(ROI)とライントレースは、L
iving Image 4.5.2ソフトウェアを使用して描画され、マクロファージ
の移動と腫瘍との共局在の範囲をそれぞれ、光子・s-1・cm-2・ステラジアン-1
の平均放射輝度に基づいて定量化した。
【0184】
実施例9
マクロファージ染色と細胞選別:切除した腫瘍をはさみで機械的に分離し、10μg/
mL DNase I(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)と25
μg/mLリベラーゼ(Roche,Basel,Switzerland)を含む5m
Lのハンクス平衡塩類溶液(HBSS)で、37℃で45分間消化した。次に、溶液を冷
たいPBSで希釈し、70μmフィルターで濾過し、300xgで5分間遠心分離した後
、FACSバッファー(PBS+2%FBS+1%A/A)に再懸濁した。採取した脾臓
を、1mLシリンジプランジャーの背面を使用して40μmフィルターに通し、PBSで
洗浄した。300xgで5分間回転させた後、脾細胞を5mLのACK溶解バッファーに
再懸濁し、氷上に5分間置いた。次に、赤血球を含まない画分を遠心分離し、FACSバ
ッファーに再懸濁した。
【0185】
マクロファージの選別実験では、腫瘍と脾臓の単一細胞懸濁液を、F4/80およびC
D11b(Biolegend)に対する各抗体0.2μgを含む100μLのHBSS
で染色し、生/死染色(ヨウ化プロピジウム)で染色し、FACSAria IIベンチ
トップセルソーター(Becton Dickinson,Franklin Lake
s,NJ)で分類し、UltraComp eBeads(ThermoFisher)
またはVivoTrack 680のシングルステインセルを使用して補償した。陽性細
胞と陰性細胞は、蛍光マイナス1つの対照を使用してゲートされた。
【0186】
実施例10
レポータープラスミドの構築:プラスミドは、標準的なPCRベースのクローニング技
術を使用して構築され、シーケテック(カリフォルニア州マウンテンビュー)によってシ
ーケンスされた。pARG1-Glucレポータープラスミド(
図8)は、ガウシアDu
raルシフェラーゼ(Genecopoeia、Rockville、MD)のシーケン
スの上流に以前に記載された-31/-3810 ARG1プロモーター/エンハンサー
(Addgene,Cambridge,MA)配列をクローニングすることにより形成
された。ヌクレオチド配列は、
図18に示されるように、配列番号1で与えられる。
【0187】
実施例11
マウス腫瘍モデルと血液採取:転移性乳癌の同系モデルは、2.5×105個の4T1
eGFP-Fluc細胞を150μLのPBSでメスのBALB/cマウスに静脈注射
することで確立された。疾患のローカライズされたモデルでは、マクロファージセンサー
(3×106個の細胞RAW264.7または1×106個のBMDM)が、BLIによ
って可視化されるように、疾患が肺に限定されている可能性が高い7日後に注入された。
転移モデルでは、腫瘍量が肺を超えて広がったら、14日後にセンサーを注入した。セン
サー注射の24時間後にマウスの下顎静脈から採血し、K3-EDTAチューブ(Gre
iner,Baden-Wurttemberg,Germany)で採血し、4℃で1
0分間、1,000xgで遠心分離した。前述のように、20μLの血漿からGlucを
アッセイした。150μLのPBSで希釈した35μgのセレンテラジン(CTZ)基質
(Promega、Madison、WI)の静脈内注射によるマクロファージ注射の4
8時間後に、活性化マクロファージ(細胞内Gluc)がBLIによってイメージングさ
れた。
【0188】
同系皮下大腸癌モデルは、改変マクロファージ注射前に0~25mm3、25~50m
m3または50~200mm3のいずれかまで増殖させた腫瘍について移行研究に記載さ
れているように確立された。腫瘍体積は、方程式V=0.5×L×W2で概算された。L
とWは、腫瘍スフェロイドのすぐ垂直な長径と短径を表す。寸法はデジタルキャリパーで
測定された。センサー注入後最大4日間、24時間間隔でマウスは顎下静脈から採血(5
0μL)され、注入から48時間後に活性化マクロファージのBLIイメージングが行わ
れた。
【0189】
実施例12
マウス炎症モデル:筋肉炎症のモデルでは、6~8週齢の雌のBALB/cマウスの右
後肢に30μLのテレピン油(Sigma-Aldrich)を筋肉内注射した。PBS
を注入した健常な対側の筋肉と、注入後1、3、7、10日目に犠牲になったマウスの炎
症を起こした筋肉を収集し、48時間10%ホルマリンで固定し、パラフィンに包埋し、
ヘマトキシリン&エオシン(H&E)染色用に処理した以下の標準プロトコル(Hist
o-Tec Laboratory、Hayward,CA)。RAW264.7マクロ
ファージセンサー(3×106個の細胞)は、テレピン油注入後1日目または7日目に、
100μLPBSに静脈内注入され、50μLの血液採取、血漿Gluc測定を行い、お
よび細胞注入の24時間後に活性化マクロファージのBLIが発生した。
【0190】
急性肺炎症のLPS誘導モデルでは、6~8週齢の雌BALB/cマウスに、20μL
PBSに再懸濁した50μgのLPSを鼻腔内接種した。生理食塩水の鼻腔内投与が肺の
炎症を誘導する可能性があるため、対照マウスにはビヒクルを与えなかった。健常な肺ま
たはLPS投与後7、24、48、72時間の肺を固定し、前述のようにH&E染色用に
処理した。創傷治癒のモニタリングでは、BMDMセンサー(3×106個の生きたトラ
ンスフェクト細胞)を100μLのPBSで静脈内注射し、LPSを注射後0、24、4
8、または65時間のいずれかで投与した。BMDMセンサーからの血漿Glucは注射
の72時間後に分析されたため、このスケジュールでは、それぞれ72時間、48時間、
24時間、または7時間の炎症でのセンサー活動の調査が可能になった。
【0191】
共存腫瘍と急性炎症のモデルでは、転移性4T1腫瘍を有するBalb/cマウスにB
MDMセンサーを注射し、65時間後にLPSを鼻腔内に接種した(血漿Glucをアッ
セイする前の7時間)。採血直後に活性化BMDMセンサーのBLIを実施した。
【0192】
実施例13
癌胎児性抗原放出モデル:LS174T細胞(50μLのPBSで2×106個)を、
女性免疫不全BALB/c NU/NUマウス(Charles River)の右肩に
皮下移植した。腫瘍体積は、キャリパー測定によって概算され、血液(50μL)は、移
植後10日目から開始して3日ごとに収集された。RAW264.7マクロファージセン
サー(PBS 100μLに3×106個の細胞)に1日目(移植後10日)に、Glu
cおよびCEA検出のために24時間後に50μLの血液を採取した。血漿CEA濃度は
、検出限界200pg/mLの市販のELISAキット(ThermoFisher)で
測定した。
【0193】
実施例14
統計分析:ウェルチ修正を伴うパラメトリック対応のないt検定を使用して統計分析を
実行した。すべての統計分析は、GraphPad Prismバージョン7.03で実
行された。
【0194】
実施例15
免疫蛍光法:10日齢のCT26腫瘍を担持する6~8週齢の雌のBALB/cマウス
に、製造元の指示に従って、CellBrite(商標)Fix 640色素(Biot
ium、Fremont、CA)で標識化された1×107個のBMDMを静脈内注射し
た。4日後、腫瘍を低酸素状態の検出のために60mg/kg塩酸ピモニダゾール(Ha
yward,CA,MA)の腹腔内注射の90分後に採取した。切除直後に腫瘍を最適な
切断温度の化合物(Sakura Finetek、Torrance、CA)で凍結し
、ミクロトームを使用して厚さ10μmの切片に切り、つや消しの顕微鏡スライド上にマ
ウントした。次に、組織スライドを免疫蛍光ブロッキングバッファー(Cell Sig
naling Technology、Danvers、MA)で30分間ブロックした
後、1:50(1.2μg/mL)FITC抗ピモニダゾール(Hypoxyprobe
)で4℃で1晩染色した。スライドをPBSで3回洗浄し、透明なマニキュアで密封する
前に、DAPI(ThermoFisher)を備えたProLong RTM Gol
d Antifade Reagentを使用してカバースリップをマウントした。画像
はNanoZoomer 2.0-RS全体スライドイメージャー(Hamamatsu
,Hamamatsu City,Japan)を使用して取得された。
【0195】
実施例16
無細胞DNAモデル:皮下CT26腫瘍を0~2000mm
3の体積まで成長させ、マ
ウスの顎下静脈から最終的に出血させた。NextPrep-Mag(商標)cfDNA
Isolation Kit(Bioo Scientific、Austin、TX
)を使用して血漿から無細胞DNA(cfDNA)を抽出し、Quant-iT(商標)
高感度dsDNAアッセイキット(ThermoFisher)を使用して定量化した。
cfDNAがAgilent 2100バイオアナライザー(Agilent,Sant
a Clara,CA)を使用して主にモノヌクレオソームのサイズプロファイル(14
0~180塩基対)を示し、大きなフラグメントのゲノムDNAの混入があるサンプルを
除外したことを確認した。プライマーおよびロックされた核酸(LNA)プローブは、I
DT(San Jose,CA)から、表1に示す配列で入手した。
【表1】
【0196】
qPCRのサーマルサイクリングは、CFX96リアルタイムシステムC1000タッ
チサーマルサイクラー(Bio-Rad)を使用して、以下のプロトコルを使用して行わ
れた:95℃で3分間、続いて95℃で15秒および69.4℃(chr7_13872
039_del)または67.9℃(chr19_39237841_del)で15秒
間の50サイクル。対立遺伝子頻度の検出実験は、健常なBalb/cゲノムDNA(S
igma-Aldrich)で希釈したPureLink(商標)Genomic DN
A Mini Kit(ThermoFisher)を使用してCT26細胞から単離し
たゲノムDNAを使用して行い、以前に報告された100%(chr7_1387203
9_del)および9%(chr19_39237841_del)の初期対立遺伝子頻
度に基づいて、5%、1%および0.1%の対立遺伝子頻度を得た。反応には、5ngの
cfDNA、500nMのフォワードおよびリバースプライマー濃度、および合計20μ
Lの容量で200nMのプローブ濃度が含まれていた。
【0197】
本開示の疾患活性化可能プローブは、内因性バイオマーカーが直面する生物学的および
数学的制限が考慮される場合に有利である。例えば、cfDNAでは、変異対立遺伝子の
頻度が疾患の負担とともに減少し、10mLの採血中に変異の単一コピーが存在しない可
能性が高まる。腫瘍は、血漿4mLに腫瘍DNAと同等のゲノムが1つでも存在するため
には、1,000mm3(対立遺伝子頻度0.01%に相当)を超える量に達しなければ
ならないと推定されている。しかしながら、本開示のマクロファージセンサーは、cfD
NA変異検出で可能であるよりも体積が最大50倍小さい腫瘍を検出することができる。
本開示のマクロファージセンサーを使用するバイオマーカー検出の方法は、探すべきDN
A変異を知ることを必要としない。
【0198】
本明細書に記載されるアプローチは、疾患、免疫細胞、およびレポーターの選択におけ
るモジュール性の利点を有する。免疫成分を伴う他の疾患は、橋本甲状腺炎、関節リウマ
チ、1型糖尿病などの自己免疫疾患を含むがこれらに限定されない癌、および、アテロー
ム性動脈硬化症、糖尿病、膵炎、COPD、慢性腎疾患、急性腎障害、潰瘍性大腸炎(U
C)およびクローン病、非アルコール性脂肪肝疾患、てんかん、アルツハイマー病および
パーキンソン病を含むがこれらに限定されない全身性エリテマトーデスまたは炎症性疾患
を含む。マクロファージを超える他の免疫サブタイプ(例えば、T細胞、B細胞、および
ナチュラルキラー細胞)はすべて腫瘍における代謝遺伝子を調節し、したがって、本開示
の改変免疫細胞および方法を使用して有利に検出することができる。さらに、ガウシアル
シフェラーゼ(Gluc)はレポーター、として有用であるが、分泌型胎盤アルカリホス
ファターゼ(SEAP)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、合成RNAまたは合成
miRNaテンプレート、分割レポーター分子の半分などの他の非免疫原性合成バイオマ
ーカーを使用することができる。
【0199】
本発明の好ましい実施形態を本明細書に示して説明してきたが、そのような実施形態が
例としてのみ提供されていることは当業者には明らかであろう。当業者は、本発明から逸
脱することなく、数多くの変形、変更、および置換を思いつくであろう。本明細書に記載
されている本発明の実施形態の様々な代替形態が、本発明を実施する際に用いられ得るこ
とを理解されたい。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義し、これらの特許請求の
範囲の範囲内の方法および構造ならびにそれらの均等物がそれによってカバーされること
が意図されている。