(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093652
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】遺伝子編集のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20230627BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230627BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20230627BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20230627BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20230627BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20230627BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N5/10 ZNA
C12N15/11 Z
C12N15/55
C12N15/864 100Z
C12N15/88 Z
C12N15/31
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023070182
(22)【出願日】2023-04-21
(62)【分割の表示】P 2019545759の分割
【原出願日】2018-02-21
(31)【優先権主張番号】62/461,829
(32)【優先日】2017-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/587,832
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/526,562
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518192998
【氏名又は名称】クリスパー・セラピューティクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】CRISPR Therapeutics AG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(72)【発明者】
【氏名】アント・スヴェン・ランドバーグ
(72)【発明者】
【氏名】サマルト・クルカルニ
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス・クライン
(72)【発明者】
【氏名】ハリ・クマール・パドマナバン
(72)【発明者】
【氏名】イボンヌ・サラ・アラティン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】エクスビボであろうとインビボであろうと、アンジオポエチン様3(ANGPTL3)に関連する1つ以上の状態を有する患者を治療するための材料及び方法を提供する。さらに、ゲノム編集により細胞内のANGPTL3遺伝子の発現を編集及び/又は調節するための材料及び方法を提供する。
【解決手段】ANGPTL3遺伝子において修飾を含む細胞の集団を産生するための組成物であって、前記組成物が、(a)ANGPTL3ゲノム遺伝子座を標的とするガイドRNA(gRNA)又はANGPTL3ゲノム遺伝子座を標的とするgRNA(ANGPTL3 gRNA)をコードする核酸、及び、(b)Cas9エンドヌクレアーゼ又はCas9エンドヌクレアーゼをコードする核酸を含み、前記ANGPTL3 gRNAがスペーサー配列を含み、スペーサー配列がRNA配列であり、TがUに置換されている特定の配列を含む、組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンジオポエチン様3(ANGPTL3)修飾細胞の集団を産生するための方法であって、細胞に(a)ANGPTL3ゲノム遺伝子座を標的とするガイドRNA(gRNA)またはgRNAをコードする核酸、および(b)RNA誘導型エンドヌクレアーゼまたはRNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸を導入することと、前記ANGPTL3遺伝子の修飾を含む細胞の集団を産生することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記集団の前記細胞の少なくとも50%が、前記ANGPTL3遺伝子の修飾を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記集団の前記細胞の50%~70%が、前記ANGPTL3遺伝子の修飾を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記集団の細胞によって分泌されるANGPTL3タンパク質が、対照と比較して少なくとも2倍低減される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記集団の細胞によって分泌されるANGPTL3タンパク質が、対照と比較して少なくとも5倍低減される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記対照が、未修飾細胞の集団および/または前記ANGPTL3遺伝子を標的とする前記gRNAを受容しなかった細胞の集団である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼが、Cas9エンドヌクレアーゼまたはCpf1エンドヌクレアーゼである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記Cas9エンドヌクレアーゼまたはCpf1エンドヌクレアーゼが、S.pyogenes Cas9、S.aureus Cas9、N.meningitides Cas9、S.thermophilus CRISPR1 Cas9、S.thermophilus CRISPR3 Cas9、T.denticola Cas9、L.bacterium ND2006 Cpf1、およびAcidaminococcus sp.BV3L6 Cpf1から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼが、配列番号1~配列番号620から選択される配列を含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼが、Cas9エンドヌクレアーゼである、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記gRNAが、単一ガイドRNA(sgRNA)である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記gRNAが、前記ANGPTL3ゲノム遺伝子座の調節エレメントを標的とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記gRNAが、ヒトおよびカニクイザルに対して交差反応性である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記gRNAが、化学修飾されたgRNAである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記化学修飾されたgRNAが、前記gRNAの3′末端および5′末端にホスホロチオエート化2′-O-メチルヌクレオチドを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記gRNAが、表7から選択されたスペーサー配列を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記gRNAが、CAAAGACCUUCUCCAGACCG(配列番号17071)、GCCAAUGGCCUCCUUCAGUU(配列番号17069)、およびGGCCUCCUUCAGUUGGGACA(配列番号17070)から選択されたスペーサー配列を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記gRNAが、前記スペーサー配列GCCAAUGGCCUCCUUCAGUU(配列番号17069)を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記gRNAおよびRNA誘導型ヌクレアーゼが、リボ核タンパク質粒子(RNP)として配合される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
(a)および/または(b)の前記核酸が、ウイルスベクター、任意にアデノ随伴ウイルスベクター上に存在する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
(a)の前記gRNAもしくは前記gRNAをコードする核酸、および/または(b)の前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼもしくは前記RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸が、リポソームまたは脂質ナノ粒子(LNP)中に配合される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記細胞が、肝細胞を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞の集団が、ANGPTL3関連の状態を有する対象に存在する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
GCCAAUGGCCUCCUUCAGUU(配列番号17069)およびGGCCUCCUUCAGUUGGGACA(配列番号17070)から選択されたスペーサー配列を含む、交差反応性ガイドRNA(gRNA)または交差反応性gRNAをコードする核酸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許法第119(e)条の下、2017年2月22日に出願された米国仮特許出願第62/461,829号、2017年6月29日に出願された米国仮特許出願第62/526,562号、および2017年11月17日に出願された米国仮特許出願第62/587,832号の利益を主張し、それらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、電子形式の配列表とともに提出されている。C154270001WO00-SEQLIST-HJD.txtという名前の配列表ファイルは、2017年10月27日に作成され、サイズは13.2MBである。配列表の電子形式の情報は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、いくつかの態様では、遺伝子編集の分野、例えば、アンジオポエチン様3(ANGPTL3)遺伝子の改変に関する。
【背景技術】
【0004】
ゲノム編集とは、生物の遺伝情報(ゲノム)の標的化した特定の修飾のための戦略および技法を指す。ゲノム編集は、特にヒトの健康の分野で幅広い応用が可能なため、非常に活発な研究分野である。例えば、ゲノム編集を使用して、有害な突然変異を持つ遺伝子を改変(例えば、修正もしくはノックアウト)するか、または遺伝子の機能を調べることができる。導入遺伝子を生細胞に挿入するために開発された初期の技術は、ゲノムへの新しい配列の挿入のランダムな性質によってしばしば制限されていた。ゲノムへのランダムな挿入は、隣接する遺伝子の正常な調節を混乱させ、深刻な望ましくない効果をもたらす場合がある。さらに、ランダムインテグレーション技術は、配列が2つの異なる細胞の同じ場所に挿入される保証がないため、再現性がほとんどない。ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)のような転写活性化因子、ホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)、およびMega TALなどの最近のゲノム編集戦略により、DNAの特定の領域を修飾することができ、それにより、初期技術と比較して改変の精度を高める。これらの新しいプラットフォームは、はるかに高い再現性を提供するが、依然として制限がある。
【0005】
遺伝的障害に取り組んでいる世界中の研究者および医療専門家の努力にもかかわらず、またゲノム編集アプローチの見込みにもかかわらず、ANGPTL3関連の適応症に関係する安全かつ効果的な治療法を開発する必要性が依然として残っている。
【0006】
ゲノム編集ツールを使用して、単一の治療でANGPTL3関連の障害または状態に対処できるゲノムの永続的変更を行うことにより、結果として生じる治療法は、ある特定のANGPTL3関連の適応症および/または疾患を完全に治療することができる。
【発明の概要】
【0007】
いくつかの態様では、本開示は、アンジオポエチン様3(ANGPTL3)遺伝子を修飾するための非常に効率的な遺伝子編集方法を提供する。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書の遺伝子編集方法は、集団の細胞の少なくとも50%、少なくとも60%、または少なくとも70%を修飾するために使用することができる。驚くべきことに、これらの修飾された細胞集団の細胞は、いくつかの実施形態では、ANGPTL3タンパク質分泌の5倍(またはそれ以上)の低減を示す。したがって、これらの方法は、異脂肪血症などのANGPTL3関連の適応症を治療するために特に有用であり得る。さらに、いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、動物モデルからヒトへの実験データのより正確な外挿を可能にする種間(交差反応性)遺伝子編集システムを使用する。
【0008】
いくつかの態様では、アンジオポエチン様3(ANGPTL3)修飾細胞の集団を産生するための方法が本明細書で提供され、この方法は、細胞に(a)ANGPTL3遺伝子座(例えば、配列番号5304)を標的とするガイドRNA(gRNA)またはgRNAを(例えば、交差反応性gRNAとして)コードする核酸、および(b)RNA誘導型エンドヌクレアーゼまたはRNA誘導型エンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9)をコードする核酸を導入することと、ANGPTL3ゲノム遺伝子座の修飾(例えば、挿入、欠失、または少なくとも1つのヌクレオチド突然変異)を含む細胞の集団を産生することと、を含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、ANPTL3ゲノム遺伝子座内(例えば、ANGPTL3遺伝子内、例えば染色体1:62,597,486~1:62,606,304)の配列に相補的な(20bp)スペーサー配列を含む。挿入は、少なくとも1つのヌクレオチドの導入であり、欠失は、少なくとも1つのヌクレオチドの除去であり、突然変異は、少なくとも1つのヌクレオチドの変化である(例えば、Cなどの1つのヌクレオチドからAなどの別のヌクレオチドへ)。
【0009】
いくつかの実施形態では、集団の細胞の少なくとも50%は、ANGPTL3遺伝子の修飾(例えば、挿入、欠失、または少なくとも1つのヌクレオチド突然変異)を含む。例えば、集団の少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%は、AGPTL3遺伝子の修飾を含んでもよい。いくつかの実施形態では、集団の細胞の50%~100%は、ANGPTL3遺伝子の修飾を含む。例えば、集団の細胞の50%~60%、50%~65%、50%~70%、50%~75%、50%~80%、50%~85%、50%~90%、または50%~95%は、ANGPTL3遺伝子の修飾を含んでもよい。いくつかの実施形態では、集団の細胞の50%~70%は、ANGPTL3遺伝子の修飾を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、集団の細胞によって分泌されるANGPTL3タンパク質は、対照と比較して少なくとも2倍低減される。例えば、集団の細胞によって分泌されるANGPTL3タンパク質は、対照と比較して少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、または少なくとも10倍低減され得る。いくつかの実施形態では、集団の細胞によって分泌されるANGPTL3タンパク質は、対照と比較して少なくとも5倍低減される。いくつかの実施形態では、集団の細胞によって分泌されるANGPTL3タンパク質は、対照と比較して2倍~5倍低減される。
【0011】
いくつかの実施形態では、対照は、未修飾細胞の集団および/またはANGPTL3遺伝子の領域に相補的なスペーサー配列を含むgRNAを受容しなかった細胞の集団である。いくつかの実施形態では、対照は、非ANGPTL3遺伝子の領域に相補的なスペーサー配列を含むgRNAを受容する細胞の集団である。
【0012】
いくつかの実施形態では、RNA誘導型エンドヌクレアーゼは、Cas9エンドヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、RNA誘導型ヌクレアーゼは、Cpf1ヌクレアーゼである。他のRNA誘導型ヌクレアーゼを使用してもよい。いくつかの実施形態では、Cas9エンドヌクレアーゼまたはCpf1エンドヌクレアーゼは、S.pyogenes Cas9、S.aureus Cas9、N.meningitides Cas9、S.thermophilus CRISPR1 Cas9、S.thermophilus CRISPR3 Cas9、T.denticola Cas9、L.bacterium ND2006 Cpf1、およびAcidaminococcus sp.BV3L6 Cpf1から選択される。
【0013】
いくつかの実施形態では、gRNAは、単一ガイドRNA(sgRNA)(標的配列(crRNA配列)およびRNA誘導型ヌクレアーゼ補充配列(tracrRNA)を含む)である。
【0014】
いくつかの実施形態では、gRNAは、ANGPTL3ゲノム遺伝子座の調節エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、または他の調節エレメント)を標的とする。
【0015】
いくつかの実施形態では、gRNAは、ヒトおよびカニクイザルに対して交差反応性である(例えば、gRNAのスペーサー配列は、ヒトANGPTL3遺伝子の領域に相補的であり、カニクイザルのANGPTL3遺伝子の領域に相補的である)。
【0016】
いくつかの実施形態では、gRNAは、化学修飾されたgRNAである。いくつかの実施形態では、化学修飾されたgRNAは、gRNAの3′末端および5′末端にホスホロチオエート化2′-O-メチルヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、化学修飾されたgRNAは、gRNAの3′末端にホスホロチオエート化された2′-O-メチルヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、化学修飾されたgRNAは、gRNAの5′末端にホスホロチオエート化された2′-O-メチルヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、化学修飾されたgRNAは、gRNAの3′末端および/または3つの5′末端にホスホロチオエート化2′-O-メチルヌクレオチドを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、細胞は、肝細胞を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、スペーサー配列は、CAAAGACCUUCUCCAGACCG(配列番号17071)、GCCAAUGGCCUCCUUCAGUU(配列番号17069)、およびGGCCUCCUUCAGUUGGGACA(配列番号17070)から選択された配列を含む。いくつかの実施形態では、スペーサー配列は、GCCAAUGGCCUCCUUCAGUU(配列番号17069)を含む。いくつかの実施形態では、スペーサー配列は、GGCCUCCUUCAGUUGGGACA(配列番号17070)を含む。いくつかの実施形態では、スペーサー配列は、CAAAGACCUUCUCCAGACCG(配列番号17071)を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、細胞の集団は、ANGPTL3関連の状態を有する対象に存在する。いくつかの実施形態では、ANGPTL3関連の状態は、脂質異常症(異常な量の脂質(例えば、トリグリセリド、コレステロール、および/または脂肪リン脂質))である。
【0020】
いくつかの実施形態では、gRNAおよびRNA誘導型ヌクレアーゼは、リボ核タンパク質粒子(RNP)として配合(事前に複合)される。
【0021】
いくつかの実施形態では、(a)および/または(b)の核酸は、ウイルスベクター、任意にアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター上に存在する。
【0022】
いくつかの実施形態では、(a)のgRNAもしくはgRNAをコードする核酸、および/または(b)のRNA誘導型エンドヌクレアーゼもしくはRNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸は、リポソームまたは脂質ナノ粒子(LNP)中に配合される。
【0023】
またいくつかの態様では、GCCAAUGGCCUCCUUCAGUU(配列番号17069)およびGGCCUCCUUCAGUUGGGACA(配列番号17070)から選択されたスペーサー配列を含む、交差反応性ガイドRNA(gRNA)または交差反応性gRNAをコードする核酸が本明細書に提供される。
【0024】
したがって、いくつかの態様では、ゲノム編集、およびANGPTL3遺伝子産物の発現または機能を低減もしくは排除することによって、アンジオポエチン様3(ANGPTL3)遺伝子、またはANGPTL3遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列内もしくはその近くに少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、欠失、または突然変異を導入することによって、ゲノムに永続的な変化をもたらすための細胞性、エクスビボ、およびインビボの方法が本明細書に提供され、これは、脂質異常などのANGPTL3関連の状態または障害を治療するために使用され得る。また本明細書では、そのような方法を実施するための成分および組成物、ならびにベクターも提供される。
【0025】
また本明細書では、ゲノム編集により細胞内のANGPTL3遺伝子を編集するための方法であって、1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9)を細胞に導入して、ANGPTL3遺伝子内またはその近くに少なくとも1つのヌクレオチドの1つ以上の永続的な挿入、欠失、または突然変異をもたらす、1つ以上の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)をANGPTL3遺伝子またはANGPTL3調節エレメント内またはその近くにもたらし、それによりANGPTL3遺伝子産物の発現または機能を低減または排除するステップを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、ANGPTL3ゲノム遺伝子座を標的とするgRNAもまた細胞に導入される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本明細書で開示および説明される材料および方法の様々な態様は、添付の図面を参照することにより、よりよく理解することができる。
【0027】
【
図1A】タイプII CRISPR/Casシステムの描写である。
【
図1B】タイプII CRISPR/Casシステムの別の描写である。
【
図2】ANGPTL3遺伝子を標的とするHEK293T細胞におけるS.pyogenes Cas9によるgRNAの切断効率を表すグラフである。
【
図3】ANGPTL3遺伝子を標的とするHEK293T細胞におけるS.pyogenes Cas9によるgRNAの切断効率を表すグラフである。
【
図4】ANGPTL3遺伝子を標的とするHEK293T細胞におけるS.pyogenes Cas9によるgRNAの切断効率を表すグラフである。
【
図5A】初代ヒト肝細胞におけるANGPTL3を標的とするgRNAの切断効率の描写である。
【
図5B】カニクイザルから単離された初代肝細胞におけるANGPTL3を標的とするgRNAの切断効率の描写である。
【
図6A】初代ヒト肝細胞におけるANGPTL3を標的とするgRNAの切断効率の描写である。
【
図6B】初代ヒト肝細胞のANGPTL3タンパク質分泌に対するgRNAによる遺伝子編集の効果を説明する。
【
図7A】は、初代ヒト肝細胞におけるANGPTL3を標的とするgRNAの切断効率の描写である。
【
図7B】初代ヒト肝細胞のANGPTL3タンパク質分泌に対するgRNAによる遺伝子編集の効果を説明する。
【
図8】サル肝細胞におけるANGPTL3タンパク質分泌に対するgRNAによる遺伝子編集の効果を説明する。
【0028】
配列表の簡単な説明
配列番号1~620は、Casエンドヌクレアーゼオルソログ配列である。
【0029】
配列番号621~631は、意図的に空白である。
【0030】
配列番号632~4,715は、マイクロRNA配列である。
【0031】
配列番号4,716~4,733は、意図的に空白である。
【0032】
配列番号4,734~5,302は、AAV血清型配列である。
【0033】
配列番号5,303は、ANGPTL3ヌクレオチド配列である。
【0034】
配列番号5,304は、ANGPTL3遺伝子の上流および/または下流に5キロ塩基対を含む遺伝子配列である。
【0035】
配列番号5,305~5,398は、ANGPTL3遺伝子、またはT.denticola Cas9エンドヌクレアーゼを有するANGPTL3遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列内またはその近くで標的とするための20bpスペーサー配列である。
【0036】
配列番号5,399~5,595は、ANGPTL3遺伝子、またはS.thermophilus Cas9エンドヌクレアーゼを有するANGPTL3遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列内またはその近くで標的とするための20bpスペーサー配列である。
【0037】
配列番号5,596~6,079は、ANGPTL3遺伝子、またはS.aureus Cas9エンドヌクレアーゼを有するANGPTL3遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列内またはその近くで標的とするための20bpスペーサー配列である。
【0038】
配列番号6,080~6,633は、ANGPTL3遺伝子、またはN.meningitides Cas9エンドヌクレアーゼを有するANGPTL3遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列内またはその近くで標的とするための20bpスペーサー配列である。
【0039】
配列番号6,634~10,171は、ANGPTL3遺伝子、またはS.pyogenes Cas9エンドヌクレアーゼを有するANGPTL3遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列内またはその近くで標的とするための20bpスペーサー配列である。
【0040】
配列番号10,172~17,018は、ANGPTL3遺伝子、またはAcidaminococcus、Lachnospiraceae、およびFrancisella Novicida Cpf1エンドヌクレアーゼを有するANGPTL3遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列内またはその近くで標的とするための22bpスペーサー配列である。
【0041】
配列番号17,019~17,048は、意図的に空白である。
【0042】
配列番号17,049は、S.pyogenes Cas9エンドヌクレアーゼのサンプルガイドRNA(gRNA)である。
【0043】
配列番号17,050~17,052は、サンプルsgRNA配列を示す。
【0044】
配列番号17,054~17,057は、サンプルガイド標的配列を示す。
【0045】
配列番号17,059~17,066は、サンプルsgRNA配列を示す。
【0046】
配列番号17,053および17,067は、最小CRISPR RNAと最小tracrRNAとの間の二重鎖内のヌクレオチドの例示的な不対領域である。
【0047】
配列番号17,068~17,071は、ANGPTL3 gRNAスペーサー配列の例である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
I.序論
ゲノム編集
本開示は、生物の遺伝情報(ゲノム)の標的化した特定の改変のための戦略および技法を提供する。本明細書で使用される場合、「改変」または「遺伝情報の改変」という用語は、細胞のゲノム中のあらゆる変更を指す。遺伝的障害の治療の文脈では、改変には、挿入、欠失、および修正が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「挿入」という用語は、DNA配列における1つ以上のヌクレオチドの付加を指す。挿入は、数個のヌクレオチドの小さな挿入から、cDNAまたは遺伝子などの大きなセグメントの挿入に及び得る。「欠失」という用語は、DNA配列中の1つ以上のヌクレオチドの喪失もしくは除去、または遺伝子の機能の喪失もしくは除去を指す。場合によっては、欠失には、例えば、数個のヌクレオチドの喪失、エクソン、イントロン、遺伝子セグメント、または遺伝子の配列全体が含まれ得る。場合によっては、遺伝子の欠失は、遺伝子またはその遺伝子産物の機能または発現の排除または低減を指す。これは、遺伝子内または遺伝子の近くの配列の欠失だけでなく、遺伝子の発現を妨害する他の事象(例えば、挿入、ナンセンス突然変異)からも起こり得る。本明細書で使用される「修正」という用語は、挿入、欠失、または置換によるかどうかにかかわらず、細胞内のゲノムの1つ以上のヌクレオチドの変更を指す。そのような修正は、修正されたゲノム部位に対して、構造であろうと機能であろうと、より好ましい遺伝子型または表現型の結果をもたらし得る。「修正」の1つの非限定的な例には、遺伝子またはその遺伝子産物(複数可)の構造または機能を回復する野生型配列への変異体または欠陥配列の修正が含まれる。突然変異の性質に応じて、本明細書で開示される様々な戦略を介して修正が達成され得る。1つの非限定的な例では、ミスセンス突然変異は、突然変異を含む領域をその野生型の対応物と置き換えることにより修正され得る。別の例として、余分な配列を除去することにより、遺伝子の重複突然変異(例えば、繰り返しの拡大)を修正することができる。
【0049】
いくつかの態様では、改変にはまた、遺伝子のノックイン、ノックアウト、またはノックダウンが含まれてもよい。本明細書で使用される場合、「ノックイン」という用語は、ゲノムへのDNA配列またはその断片の付加を指す。ノックインされるそのようなDNA配列には、遺伝子全体または複数の遺伝子が含まれてもよく、遺伝子または前述の任意の部分または断片に関連する調節配列が含まれてもよい。例えば、野生型タンパク質をコードするcDNAを、変異体遺伝子を運ぶ細胞のゲノムに挿入することができる。ノックイン戦略は、欠陥遺伝子の全部または一部を置き換える必要はない。場合によっては、ノックイン戦略は、既存の配列を提供された配列で置換すること、例えば、突然変異体対立遺伝子を野生型コピーで置換することをさらに含み得る。一方、「ノックアウト」という用語は、遺伝子の排除または遺伝子の発現を指す。例えば、遺伝子は、リーディングフレームの破壊につながるヌクレオチド配列の欠失または付加のいずれかによってノックアウトすることができる。別の例として、遺伝子の一部を無関係な配列で置き換えることにより、遺伝子をノックアウトしてもよい。最後に、本明細書で使用される「ノックダウン」という用語は、遺伝子またはその遺伝子産物(複数可)の発現の低減を指す。遺伝子のノックダウンの結果として、タンパク質の活性または機能が弱められるか、タンパク質レベルが低減または排除される場合がある。
【0050】
ゲノム編集とは、一般に、ゲノムのヌクレオチド配列を、好ましくは正確なまたは所定の方法で修飾するプロセスを指す。本明細書に記載のゲノム編集方法の例には、部位特異的ヌクレアーゼを使用して、ゲノムの正確な標的位置でデオキシリボ核酸(DNA)を切断し、それによりゲノム内の特定の位置で一本鎖または二本鎖DNA切断を作成する方法が含まれる。そのような切断は、Cox et al.,Nature Medicine 21(2),121-31(2015)で最近レビューされたように、相同性指向修復(HDR)および非相同末端結合(NHEJ)などの自然な内因性細胞プロセスであり得、それにより定期的に修復される。これら2つの主要なDNA修復プロセスは、代替経路のファミリーで構成されている。NHEJは、二本鎖切断から生じるDNA末端を直接結合し、時にはヌクレオチド配列の喪失または付加を伴い、遺伝子発現を破壊または増強する場合がある。HDRは、定義されたDNA配列をブレークポイントに挿入するためのテンプレートとして、相同配列またはドナー配列を利用する。相同配列は、姉妹染色分体などの内因性ゲノムに存在し得る。あるいは、ドナーは、ヌクレアーゼ切断された遺伝子座と高い相同領域を有するが、追加の配列または切断された標的遺伝子座に組み込まれ得る欠失を含む配列変化を含むこともできる、プラスミド、一本鎖オリゴヌクレオチド、二本鎖オリゴヌクレオチド、二本鎖オリゴヌクレオチド、またはウイルスなどの外因性核酸であり得る。第3の修復機序は、「代替NHEJ」とも呼ばれるマイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)であり得、遺伝的結果は、小さな欠失および挿入が切断部位で起こり得るNHEJと同様である。MMEJは、DNA切断部位に隣接するいくつかの塩基対の相同配列を利用して、より好ましいDNA末端結合修復の結果を推進することができ、最近の報告では、このプロセスの分子機序がさらに解明された。例えば、Cho and Greenberg,Nature 518,174-76(2015)、Kent et al.,Nature Structural and Molecular Biology,Adv.Online doi:10.1038/nsmb.2961(2015)、Mateos-Gomez et al.,Nature 518,254-57(2015)、Ceccaldi et al.,Nature 528,258-62(2015)を参照されたい。場合によっては、DNA切断部位の潜在的なマイクロホモロジーの分析に基づいて、可能性のある修復結果を予測することが可能であり得る。
【0051】
これらのゲノム編集機序のそれぞれを使用して、所望のゲノム改変を作成することができる。ゲノム編集プロセスのステップは、1つまたは2つのDNA切断を作成することができ、後者は、意図した突然変異部位の近くの標的遺伝子座で、二本鎖切断または2つの一本鎖切断としてである。これは、本明細書に記載および図示されるように、部位特異的ポリペプチドの使用によって達成され得る。
【0052】
CRISPRエンドヌクレアーゼシステム
CRISPR(クラスタ化した規則的な配置の短い回文配列反復)ゲノム遺伝子座は、多くの原核生物(例えば、細菌および古細菌)のゲノムに見ることができる。原核生物では、CRISPR遺伝子座は、ウイルスおよびファージなどの外来侵入物から原核生物を守るのに役立つ免疫系の一種として機能する製品をコードする。CRISPR遺伝子座機能には3つの段階、CRISPR遺伝子座への新しい配列の統合、CRISPR RNA(crRNA)の発現、および外来侵入核酸のサイレンシングがある。5つのタイプのCRISPRシステム(例えば、タイプI、タイプII、タイプIII、タイプU、タイプV)が特定された。
【0053】
CRISPR遺伝子座には、「反復」と呼ばれる短い反復配列が多数含まれている。発現されると、反復は、二次構造(例えば、ヘアピン)を形成し、かつ/または非構造化一本鎖配列を含むことができる。繰り返しは、通常クラスターで発生し、種間で頻繁に分岐する。反復は、「スペーサー」と呼ばれる固有の介在配列で規則的に配置され、反復-スペーサー-反復遺伝子座アーキテクチャをもたらす。スペーサーは、既知の外来侵入物配列と同一であるか、または高い相同性を有する。スペーサー-反復ユニットは、crisprRNA(crRNA)コードし、これはスペーサー-反復ユニットの成熟形態に処理される。crRNAは、標的核酸の標的化に関与する「種」またはスペーサー配列を含む(原核生物の天然に発生する形態では、スペーサー配列は、外来侵入物核酸を標的とする)。スペーサー配列は、crRNAの5′または3′末端に位置する。
【0054】
CRISPR遺伝子座はまた、CRISPR関連(Cas)遺伝子をコードするポリヌクレオチド配列を含む。Cas遺伝子は、原核生物のcrRNA機能の生合成および干渉段階に関与するエンドヌクレアーゼをコードする。いくつかのCas遺伝子は、相同の二次および/または三次構造を含む。
【0055】
タイプII CRISPRシステム
自然界におけるタイプII CRISPRシステムでのcrRNAの生合成は、トランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)を必要とする。タイプII CRISPRシステムの非限定的な例を
図1Aおよび1Bに示す。tracrRNAは、内因性RNaseIIIによって修飾され、次いでpre-crRNAアレイのcrRNA反復にハイブリダイズされ得る。内因性RNaseIIIを動員して、pre-crRNAを切断することができる。切断されたcrRNAをエキソリボヌクレアーゼトリミングに供して、成熟crRNA形態を産生することができる(例えば、5′トリミング)。tracrRNAは、crRNAとハイブリダイズしたままであり得、tracrRNAおよびcrRNAは、部位特異的ポリペプチド(例えば、Cas9)と会合する。crRNA-tracrRNA-Cas9複合体のcrRNAは、crRNAがハイブリダイズできる標的核酸に複合体を導くことができる。crRNAの標的核酸へのハイブリダイゼーションは、標的核酸切断のためにCas9を活性化することができる。タイプII CRISPRシステムの標的核酸は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と呼ばれる。自然界では、PAMは、部位特異的ポリペプチド(例えば、Cas9)の標的核酸への結合を促進するために不可欠である。タイプIIシステム(NmeniまたはCASS4とも呼ばれる)は、タイプII-A(CASS4)およびII-B(CASS4a)にさらに細分される。Jinek et al.,Science,337(6096):816-821(2012)は、CRISPR/Cas9システムが、RNAでプログラム可能なゲノム編集に有用であることを示し、国際特許出願公開第WO2013/176772号は、部位特異的遺伝子編集のためのCRISPR/Casエンドヌクレアーゼシステムの多くの例および適用を提供する。
【0056】
タイプV CRISPRシステム
タイプV CRISPRシステムには、タイプIIシステムといくつかの重要な違いがある。例えば、Cpf1は、タイプIIシステムとは対照的に、tracrRNAを欠く単一のRNA誘導型エンドヌクレアーゼである。実際、Cpf1関連CRISPRアレイは、追加のトランス活性化tracrRNAを必要とせずに、成熟crRNAに処理され得る。タイプV CRISPRアレイは、長さ42~44ヌクレオチドの短い成熟crRNAに処理することができ、各成熟crRNAは、19ヌクレオチドの直接反復で始まり、23~25ヌクレオチドのスペーサー配列が続く。対照的に、タイプIIシステムの成熟crRNAは、20~24ヌクレオチドのスペーサー配列で始まり、約22ヌクレオチドの直接反復が続く。また、Cpf1は、Tリッチプロトスペーサー隣接モチーフを利用することができ、それによりCpf1-crRNA複合体は、タイプIIシステムの標的DNAに続くGリッチPAMとは対照的に、短いTリッチPAMが先行する標的DNAを効率的に切断する。したがって、タイプVシステムは、PAMから離れたポイントで切断するが、タイプIIシステムは、PAMに隣接するポイントで切断する。さらに、タイプIIシステムとは対照的に、Cpf1は、4または5ヌクレオチドの5′オーバーハングで互い違いのDNA二本鎖切断を介してDNAを切断する。タイプIIシステムは、鈍い二本鎖切断によって切断する。タイプIIシステムと同様に、Cpf1は、予測されるRuvC様エンドヌクレアーゼドメインを含むが、タイプIIシステムとは対照的に、第2のHNHエンドヌクレアーゼドメインを欠いている。
【0057】
Cas遺伝子/ポリペプチドおよびプロトスペーサー隣接モチーフ
例示的なCRISPR/Casポリペプチドには、Fonfara et al.,Nucleic Acids Research,42:2577-2590(2014)に公開されているCas9ポリペプチドが含まれる。CRISPR/Cas遺伝子命名システムは、Cas遺伝子が発見されて以来、大幅に書き換えられている。Fonfaraらはまた、様々な種からのCas9ポリペプチドのPAM配列を提供する(配列番号1~620も参照)。
【0058】
II.組成物および方法
本明細書では、ANGPTL3遺伝子またはANGPTL3遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列を欠失または突然変異させることにより、ゲノム編集ツールを使用してゲノムに永続的な変化をもたらすための、細胞性のエクスビボおよびインビボ方法が提供される。そのような方法は、CRISPR関連(Cas9、Cpf1等)ヌクレアーゼなどのエンドヌクレアーゼを使用して、ANGPTL3遺伝子またはANGPTL3遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列のゲノム遺伝子座内またはその近くで永続的に編集する。このようにして、本開示に記載される例は、(患者の生涯にわたって潜在的な治療法を提供するのではなく)単一の治療でANGPTL3遺伝子の発現を低減または排除するのに役立ち得る。
【0059】
部位特異的ポリペプチド(エンドヌクレアーゼ、酵素)
部位特異的ポリペプチドは、ゲノム編集でDNAを切断するために使用されるヌクレアーゼである。部位特異的ポリペプチドは、1つ以上のポリペプチド、またはポリペプチドをコードする1つ以上のmRNAのいずれかとして細胞または患者に投与することができる。配列番号1~620に列記されているか、または本明細書に開示される酵素またはオルソログのいずれも、本明細書の方法に利用することができる。
【0060】
CRISPR/Cas9またはCRISPR/Cpf1システムの文脈では、部位特異的ポリペプチドは、ガイドRNAに結合することができ、次にポリペプチドが向けられる標的DNAの部位を特定する。本明細書に開示されるCRISPR/Cas9またはCRISPR/Cpf1システムでは、部位特異的ポリペプチドは、DNAエンドヌクレアーゼなどのエンドヌクレアーゼであり得る。
【0061】
部位特異的ポリペプチドは、複数の核酸切断(すなわち、ヌクレアーゼ)ドメインを含み得る。2つ以上の核酸切断ドメインは、リンカーを介して一緒に結合することができる。例えば、リンカーは、柔軟なリンカーを含み得る。リンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40以上のアミノ酸の長さを含み得る。
【0062】
天然に発生する野生型Cas9酵素は、HNHヌクレアーゼドメインとRuvCドメインの2つのヌクレアーゼドメインを含む。本明細書において、「Cas9」という用語は、天然に発生するCas9および組換えCas9の両方を指す。本明細書で企図されるCas9酵素は、HNHもしくはHNH様ヌクレアーゼドメイン、および/またはRuvCもしくはRuvC様ヌクレアーゼドメインを含むことができる。
【0063】
HNHまたはHNH様ドメインは、McrA様折り畳みを含む。HNHまたはHNH様ドメインは、2つの逆平行β鎖と1つのαらせんを含む。HNHまたはHNH様ドメインは、金属結合部位(例えば、二価カチオン結合部位)を含む。HNHまたはHNH様ドメインは、標的核酸の一方の鎖(例えば、crRNA標的鎖の相補鎖)を切断することができる。
【0064】
RuvCまたはRuvC様ドメインは、RNaseHまたはRNaseH様折り畳みを含む。RuvC/RNaseHドメインは、RNAおよびDNAの両方に作用することを含む、様々な核酸ベースの機能に関与する。RNaseHドメインは、複数のαらせんに囲まれた5つのβ鎖を含む。RuvC/RNaseHまたはRuvC/RNaseH様ドメインは、金属結合部位(例えば、二価カチオン結合部位)を含む。RuvC/RNaseHまたはRuvC/RNaseH様ドメインは、標的核酸の1つの鎖(例えば、二本鎖標的DNAの非相補鎖)を切断することができる。
【0065】
部位特異的ポリペプチドは、核酸、例えばゲノムDNAに二本鎖切断または一本鎖切断を導入することができる。二本鎖切断は、細胞の内因性DNA修復経路(例えば、相同性依存修復(HDR)またはNHEJまたは代替の非相同末端結合(A-NHEJ)またはマイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ))を刺激することができる。NHEJは、相同テンプレートを必要とせずに、切断された標的核酸を修復することができる。これにより、切断部位の標的核酸に小さな欠失または挿入(インデル)が生じることがあり、遺伝子発現の破壊または改変をもたらし得る。HDRは、相同修復テンプレートまたはドナーが利用可能な場合に発生し得る。相同ドナーテンプレートは、標的核酸切断部位に隣接する配列と相同である配列を含み得る。姉妹染色分体は、細胞によって修復テンプレートとして使用され得る。しかしながら、ゲノム編集の目的のために、修復テンプレートは、プラスミド、二重鎖オリゴヌクレオチド、一本鎖オリゴヌクレオチド、またはウイルス核酸などの外因性核酸として供給され得る。外因性ドナーテンプレートを用いて、追加の核酸配列(導入遺伝子など)または修飾(単一もしくは複数の塩基変化もしくは欠失など)を隣接する相同領域の間に導入して、追加または改変された核酸配列も標的遺伝子座に組み込まれるようにすることができる。MMEJは、小さな欠失および挿入が切断部位で発生し得るという点で、NHEJと同様の遺伝的結果をもたらす可能性がある。MMEJは、切断部位に隣接するいくつかの塩基対の相同配列を利用して、好ましい末端結合DNA修復結果を促進することができる。場合によっては、ヌクレアーゼ標的領域の潜在的なマイクロホモロジーの分析に基づいて、可能性のある修復結果を予測することが可能であり得る。
【0066】
したがって、場合によっては、相同組換えを使用して、外因性ポリヌクレオチド配列を標的核酸切断部位に挿入することができる。外因性ポリヌクレオチド配列は、本明細書において「ドナーポリヌクレオチド」(またはドナーもしくはドナー配列)と呼ばれる。ドナーポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチドの一部、ドナーポリヌクレオチドのコピー、またはドナーポリヌクレオチドのコピーの一部を標的核酸切断部位に挿入することができる。ドナーポリヌクレオチドは、外因性ポリヌクレオチド配列、すなわち、標的核酸切断部位で天然に発生しない配列であり得る。
【0067】
NHEJおよび/またはHDRによる標的DNAの修飾は、例えば、突然変異、欠失、改変、統合、遺伝子修正、遺伝子置換、遺伝子タグ付け、導入遺伝子挿入、ヌクレオチド欠失、遺伝子破壊、転座、および/または遺伝子突然変異につながり得る。ゲノムDNAを欠失させ、非天然核酸をゲノムDNAに統合するプロセスは、ゲノム編集の例である。
【0068】
部位特異的ポリペプチドは、野生型の例示的な部位特異的ポリペプチド[例えば、S.pyogenes由来のCas9、US2014/0068797、配列番号8またはSapranauskas et al.,Nucleic Acids Res,39(21)」9275-9282(2011)]および様々な他の部位特異的ポリペプチドに対して少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。部位特異的ポリペプチドは、10個の連続したアミノ酸にわたって、野生型部位特異的ポリペプチド(例えば、上記のS.pyogenes由来のCas9)に対して少なくとも70、75、80、85、90、95、97、99、または100%の同一性を含み得る。部位特異的ポリペプチドは、10個の連続したアミノ酸にわたって、野生型部位特異的ポリペプチド(例えば、上記のS.pyogenes由来のCas9)に対して最大で70、75、80、85、90、95、97、99、または100%の同一性を含み得る。部位特異的ポリペプチドは、部位特異的ポリペプチドのHNHヌクレアーゼドメイン内の10個の連続したアミノ酸にわたって、野生型部位特異的ポリペプチド(例えば、上記のS.pyogenes由来のCas9)に対して少なくとも70、75、80、85、90、95、97、99、または100%の同一性を含み得る。部位特異的ポリペプチドは、部位特異的ポリペプチドのHNHヌクレアーゼドメイン内の10個の連続したアミノ酸にわたって、野生型部位特異的ポリペプチド(例えば、上記のS.pyogenes由来のCas9)に対して少なくとも70、75、80、85、90、95、97、99、または100%の同一性を含み得る。部位特異的ポリペプチドは、部位特異的ポリペプチドのRuvCヌクレアーゼドメイン内の10個の連続したアミノ酸にわたって、野生型部位特異的ポリペプチド(例えば、上記のS.pyogenes由来のCas9)に対して少なくとも70、75、80、85、90、95、97、99、または100%の同一性を含み得る。部位特異的ポリペプチドは、部位特異的ポリペプチドのRuvCヌクレアーゼドメイン内の10個の連続したアミノ酸にわたって、野生型部位特異的ポリペプチド(例えば、上記のS.pyogenes由来のCas9)に対して最大で70、75、80、85、90、95、97、99、または100%の同一性を含み得る。
【0069】
部位特異的ポリペプチドは、野生型の例示的な部位特異的ポリペプチドの修飾形態を含み得る。野生型の例示的な部位特異的ポリペプチドの修飾形態は、部位特異的ポリペプチドの核酸切断活性を低減する突然変異を含み得る。野生型の例示的な部位特異的ポリペプチドの修飾形態は、野生型の例示的な部位特異的ポリペプチド(例えば、上記のS.pyogenes由来のCas9)の核酸切断活性の90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、または1%未満を有し得る。部位特異的ポリペプチドの修飾形態は、実質的な核酸切断活性を持たない可能性がある。部位特異的ポリペプチドが実質的な核酸切断活性を持たない修飾形態である場合、本明細書では「酵素的に不活性」と呼ばれる。
【0070】
部位特異的ポリペプチドの修飾形態は、標的核酸上で一本鎖切断(SSB)を誘導できるような突然変異を含むことができる(例えば、二本鎖標的核酸の糖リン酸骨格のうちの1つのみを切断することにより)。いくつかの態様では、突然変異は、野生型部位特異的ポリペプチド(例えば、上記のS.pyogenes由来のCas9)の複数の核酸切断ドメインのうちの1つ以上における核酸切断活性の90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、または1%未満をもたらし得る。いくつかの態様では、突然変異は、標的核酸の相補鎖を切断する能力を保持するが、標的核酸の非相補鎖を切断する能力を低減する複数の核酸切断ドメインのうちの1つ以上をもたらし得る。突然変異は、標的核酸の非相補鎖を切断する能力を保持するが、標的核酸の相補鎖を切断する能力を低減する複数の核酸切断ドメインのうちの1つ以上をもたらし得る。例えば、Asp10、His840、Asn854、およびAsn856などの野生型の例示的なS.pyogenes Cas9ポリペプチドの残基は、複数の核酸切断ドメイン(例えば、ヌクレアーゼドメイン)のうちの1つ以上を不活性化するように突然変異する。突然変異させる残基は、野生型の例示的なS.pyogenes Cas9ポリペプチドの残基Asp10、His840、Asn854、およびAsn856に対応し得る(例えば、配列および/または構造的アラインメントにより決定される)。突然変異の非限定的な例には、D10A、H840A、N854A、またはN856Aが含まれる。当業者は、アラニン置換以外の突然変異が適切であり得ることを認識するであろう。
【0071】
いくつかの態様では、D10A突然変異は、H840A、N854A、またはN856A突然変異のうちの1つ以上と組み合わせて、DNA切断活性を実質的に欠く部位特異的ポリペプチドを産生することができる。H840A突然変異は、D10A、N854A、またはN856A突然変異のうちの1つ以上と組み合わせて、DNA切断活性を実質的に欠く部位特異的ポリペプチドを産生することができる。N854A突然変異は、H840A、D10A、またはN856A突然変異のうちの1つ以上と組み合わせて、DNA切断活性を実質的に欠く部位特異的ポリペプチドを産生することができる。N856A突然変異は、H840A、N854A、またはD10A突然変異のうちの1つ以上と組み合わせて、DNA切断活性を実質的に欠く部位特異的ポリペプチドを産生することができる。1つの実質的に不活性なヌクレアーゼドメインを含む部位特異的ポリペプチドは、「ニッカーゼ」と呼ばれる。
【0072】
RNA誘導型エンドヌクレアーゼのニッカーゼ変異体、例えばCas9を使用して、CRISPR媒介ゲノム編集の特異性を高めることができる。野生型Cas9は、通常、標的配列(内因性ゲノム遺伝子座など)の特定の約20ヌクレオチド配列とハイブリダイズするように設計された単一ガイドRNAによってガイドされる。しかしながら、ガイドRNAと標的遺伝子座との間でいくつかのミスマッチが許容され、標的部位での必要な相同の長さを、例えばわずか13ntの相同性に効果的に低減することができ、それによりオフ標的切断としても知られる、標的ゲノムの他の場所におけるCRISPR/Cas9複合体による結合および二本鎖核酸切断の可能性の上昇をもたらす。Cas9のニッカーゼ異形は、それぞれ1本の鎖のみを切断するため、二本鎖切断を作成するために、一対のニッカーゼが標的核酸に近接して反対側の鎖に結合し、それにより一対のニックを作成する必要があり、これは二本鎖切断と同等である。これには、2つの別個のガイドRNA(各ニッカーゼに1つずつ)が、標的核酸に近接して反対側の鎖に結合する必要がある。この要件により、二本鎖切断に必要な相同の最小長が本質的に2倍になり、それにより二本鎖切断事象がゲノムの他の場所で起こる可能性を低減し、2つのガイドRNA部位は(存在する場合)、二本鎖切断の形成を可能にするために、互いに十分に接近する可能性は低い。当該技術分野で説明されているように、ニッカーゼを使用して、HDR対NHEJを促進することもできる。HDRを使用して、所望の変化を効果的に媒介する特定のドナー配列の使用によって、選択した変化をゲノムの標的部位に導入することができる。
【0073】
企図される突然変異には、置換、付加、および欠失、またはそれらの任意の組み合わせが含まれ得る。突然変異は、突然変異したアミノ酸をアラニンに変換する。突然変異は、突然変異したアミノ酸を別のアミノ酸に変換する(例えば、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、リジン、またはアルギニン)。突然変異は、突然変異したアミノ酸を非天然アミノ酸(例えば、セレノメチオニン)に変換する。突然変異は、突然変異したアミノ酸をアミノ酸模倣物(例えば、リン模倣物)に変換する。突然変異は、保存的突然変異であり得る。例えば、突然変異は、突然変異したアミノ酸を、突然変異したアミノ酸のサイズ、形状、電荷、極性、立体配座、および/または回転異性体に似たアミノ酸に変換する(例えば、システイン/セリン突然変異、リジン/アスパラギン突然変異、ヒスチジン/フェニルアラニン突然変異)。突然変異は、リーディングフレームのシフトおよび/または未成熟終止コドンの作成を引き起こす可能性がある。突然変異は、1つ以上の遺伝子の発現に影響を与える遺伝子または遺伝子座の調節領域に変化を引き起こす可能性がある。
【0074】
部位特異的ポリペプチド(例えば、異形、突然変異、酵素的に不活性および/または条件付きで酵素的に不活性な部位特異的ポリペプチド)は、核酸を標的とすることができる。部位特異的ポリペプチド(例えば、異形、突然変異、酵素的に不活性および/または条件付きで酵素的に不活性な部位特異的ポリペプチド)は、DNAを標的とすることができる。部位特異的ポリペプチド(例えば、異形、突然変異、酵素的に不活性および/または条件付きで酵素的に不活性な部位特異的ポリペプチド)は、RNAを標的とすることができる。
【0075】
部位特異的ポリペプチドは、1つ以上の非天然配列を含むことができる(例えば、部位特異的ポリペプチドは融合タンパク質である)。
【0076】
部位特異的ポリペプチドは、細菌由来のCas9(例えば、S.pyogenes)に対して少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列、核酸結合ドメイン、および2つの核酸切断ドメイン(すなわち、HNHドメインおよびRuvCドメイン)を含み得る。
【0077】
部位特異的ポリペプチドは、細菌由来のCas9(例えば、S.pyogenes)に対して少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列、および2つの核酸切断ドメイン(すなわち、HNHドメインおよびRuvCドメイン)を含み得る。
【0078】
部位特異的ポリペプチドは、細菌由来のCas9(例えば、S.pyogenes)に対して少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列、および2つの核酸切断ドメインを含むことができ、核酸切断ドメインの一方または両方は、細菌由来のCas9由来のヌクレアーゼドメイン(例えば、S.pyogenes)に対して少なくとも50%のアミノ酸同一性を含む。
【0079】
部位特異的ポリペプチドは、細菌由来のCas9(例えば、S.pyogenes)に対して少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列、2つの核酸切断ドメイン(すなわち、HNHドメインおよびRuvCドメイン)、および非天然配列(例えば、核局在化シグナル)または部位特異的ポリペプチドを非天然配列に結合するリンカーを含み得る。
【0080】
部位特異的ポリペプチドは、細菌由来のCas9(例えば、S.pyogenes)に対して少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列、2つの核酸切断ドメイン(すなわち、HNHドメインおよびRuvCドメイン)を含み得、部位特異的ポリペプチドは、ヌクレアーゼドメインの切断活性を少なくとも50%低減する核酸切断ドメインの一方または両方に突然変異を含む。
【0081】
部位特異的ポリペプチドは、細菌由来のCas9(例えば、S.pyogenes)に対して少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列、および2つの核酸切断ドメイン(すなわち、HNHドメインおよびRuvCドメイン)を含み得、ヌクレアーゼドメインのうちの1つが、アスパラギン酸10の突然変異を含み、かつ/またはヌクレアーゼドメインのうちの1つが、ヒスチジン840の突然変異を含み得、その突然変異は、ヌクレアーゼドメイン(複数可)の切断活性を少なくとも50%低減する。
【0082】
1つ以上の部位特異的ポリペプチド、例えば、DNAエンドヌクレアーゼは、ゲノムの特定の遺伝子座で一緒に1つの二本鎖切断をもたらす2つのニッカーゼを含み得るか、またはゲノム内の特定の遺伝子座で2つの二本鎖切断を引き起こし得る。あるいは、1つの部位特異的ポリペプチド、例えば、DNAエンドヌクレアーゼは、ゲノム内の特定の遺伝子座で1つの二本鎖切断をもたらし得るか、または引き起こし得る。
【0083】
他の細菌株由来のCas9オルソログの非限定例には、Acaryochloris marina MBIC11017、Acetohalobium arabaticum DSM 5501、Acidithiobacillus caldus、Acidithiobacillus ferrooxidans ATCC 23270、Alicyclobacillus acidocaldarius LAA1、Alicyclobacillus acidocaldarius subsp.acidocaldarius DSM 446、Allochromatium vinosum DSM 180、Ammonifex degensii KC4、Anabaena variabilis ATCC 29413、Arthrospira maxima CS-328、Arthrospira platensis str.Paraca、Arthrospira sp.PCC 8005、Bacillus pseudomycoides DSM 12442、Bacillus selenitireducens MLS10、Burkholderiales bacterium 1_1_47、Caldicelulosiruptor becscii DSM 6725、Candidatus Desulforudis audaxviator MP104C、Caldicellulosiruptor hydrothermalis_108、Clostridium phage c-st、Clostridium botulinum A3 str.Loch Maree、Clostridium botulinum Ba4 str.657、Clostridium difficile QCD-63q42、Crocosphaera watsonii WH 8501、Cyanothece sp.ATCC 51142、Cyanothece sp.CCY0110、Cyanothece sp.PCC 7424、Cyanothece sp.PCC 7822、Exiguobacterium sibiricum 255-15、Finegoldia magna ATCC 29328、Ktedonobacter racemifer DSM 44963、Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus PB2003/044-T3-4、Lactobacillus salivarius ATCC 11741、Listeria innocua、Lyngbya sp.PCC 8106、Marinobacter sp.ELB17、Methanohalobium evestigatum Z-7303、Microcystis phage Ma-LMM01、Microcystis aeruginosa NIES-843、Microscilla marina ATCC 23134、Microcoleus chthonoplastes PCC 7420、Neisseria meningitidis、Nitrosococcus halophilus Nc4、Nocardiopsis dassonvillei subsp.dassonvillei DSM 43111、Nodularia spumigena CCY9414、Nostoc sp.PCC 7120、Oscillatoria sp.PCC 6506、Pelotomaculum_thermopropionicum_SI、Petrotoga mobilis SJ95、Polaromonas naphthalenivorans CJ2、Polaromonas sp.JS666、Pseudoalteromonas haloplanktis TAC125、Streptomyces pristinaespiralis ATCC 25486、Streptomyces pristinaespiralis ATCC 25486、Streptococcus thermophilus、Streptomyces viridochromogenes DSM 40736、Streptosporangium roseum DSM 43021、Synechococcus sp.PCC 7335、およびThermosipho africanus TCF52B(Chylinski et al.,RNA Biol.,2013、10(5):726-737)において同定されたCasタンパク質が含まれるが、これらに限定されない。
【0084】
Cas9オルソログに加えて、不活性なdCas9の融合タンパク質などの他のCas9異形、および異なる機能を有するエフェクタードメインは、遺伝子調節のプラットフォームとして役立ち得る。前述の酵素のいずれも、本開示において有用であり得る。
【0085】
本開示において利用され得るエンドヌクレアーゼのさらなる例は、配列番号1~620に示されている。これらのタンパク質は、使用前に修飾され得るか、またはDNA、RNA、もしくはmRNAなどの核酸配列、または本明細書に教示されるプラスミドもしくはAAVベクターなどのベクター構築物内でコードされ得る。さらに、それらはコドン最適化されてもよい。
【0086】
配列番号1~620は、エンドヌクレアーゼ配列の非網羅的なリストを開示している。
【0087】
ゲノム標的化核酸
本開示は、関連ポリペプチド(例えば、部位特異的ポリペプチド)の活性を標的核酸内の特定の標的配列に向けることができるゲノム標的化核酸を提供する。ゲノム標的化核酸は、RNAであり得る。ゲノム標的化RNAは、本明細書では「ガイドRNA」または「gRNA」と呼ばれる。ガイドRNAは、少なくとも目的の標的核酸配列にハイブリダイズするスペーサー配列と、CRISPR反復配列とを含み得る。タイプIIシステムでは、gRNAはまた、tracrRNA配列と呼ばれる第2のRNAを含む。タイプIIガイドRNA(gRNA)では、CRISPR反復配列とtracrRNA配列は、互いにハイブリダイズして二重鎖を形成する。タイプVガイドRNA(gRNA)では、crRNAは、二重鎖を形成する。両方のシステムにおいて、二重鎖は、部位特異的ポリペプチドに結合することができ、それによりガイドRNAおよび部位特異的ポリペプチドが複合体を形成する。ゲノム標的化核酸は、部位特異的ポリペプチドとの会合により、複合体に標的特異性を提供することができる。したがって、ゲノム標的化核酸は、部位特異的ポリペプチドの活性を配向することができる。
【0088】
例示的なガイドRNAには、ゲノム位置がGRCh38ヒトゲノムアセンブリに基づく、スペーサー配列15~200塩基が含まれる。ANGPTL3遺伝子は、染色体1:62,597,486~62,606,304(Genome Reference Consortium-GRCh38)に位置し得る。
【0089】
例示的なガイドRNAには、配列番号5,305~17,018に提示されるDNA配列のRNAバージョンに基づくスペーサー配列が含まれる。当業者によって理解されるように、各ガイドRNAは、そのゲノム標的配列に相補的なスペーサー配列を含むように設計することができる。例えば、スペーサー配列のそれぞれ、例えば、配列番号5,305~17,018に提示されるDNA配列のRNAバージョンは、単一のRNAキメラまたはcrRNA(対応するtracrRNAとともに)に入れることができる。Jinek et al.,Science,337,816-821(2012)and Deltcheva et al.,Nature,471,602-607(2011)を参照されたい。
【0090】
ゲノム標的化核酸は、二重分子ガイドRNAであり得る。ゲノム標的化核酸は、単一分子ガイドRNAであり得る。
【0091】
二重分子ガイドRNAは、2本のRNA鎖を含み得る。第1の鎖は、5′から3′方向に、任意のスペーサー伸長配列、スペーサー配列、および最小CRISPR反復配列を含む。第2の鎖は、最小のtracrRNA配列(最小のCRISPR反復配列に相補的)、3′tracrRNA配列および任意のtracrRNA伸長配列を含み得る。
【0092】
タイプIIシステムの単一分子ガイドRNA(sgRNA)は、5′から3′方向に、任意のスペーサー伸長配列、スペーサー配列、最小CRISPR反復配列、単一分子ガイドリンカー、最小tracrRNA配列、3′tracrRNA配列、および任意のtracrRNA伸長配列を含み得る。任意のtracrRNA伸長は、ガイドRNAに追加機能(例えば、安定性)を提供する要素を含み得る。単一分子ガイドリンカーは、最小CRISPR反復と最小tracrRNA配列を結合させて、ヘアピン構造を形成することができる。任意のtracrRNA伸長は、1つ以上のヘアピンを含み得る。
【0093】
sgRNAは、sgRNA配列の5′末端に20ヌクレオチドのスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5′末端に20ヌクレオチド未満のスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5′末端に20ヌクレオチド超のスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5′末端に17~30ヌクレオチドの可変長スペーサー配列を含み得る(表1を参照)。
【0094】
sgRNAは、表1の配列番号17,051のように、sgRNA配列の3′末端にウラシルを含まない場合がある。sgRNAは、表1の配列番号17,052のように、sgRNA配列の3′末端に1つ以上のウラシルを含み得る。例えば、sgRNAは、sgRNA配列の3′末端に1ウラシル(U)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3′末端に2ウラシル(UU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3′末端に3ウラシル(UUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3′末端に4ウラシル(UUUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3′末端に5ウラシル(UUUUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3′末端に6ウラシル(UUUUUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3′末端に7ウラシル(UUUUUUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3′末端に8ウラシル(UUUUUUUU)を含み得る。
【0095】
sgRNAは、未修飾または修飾であり得る。例えば、修飾sgRNAは、1つ以上の2′-O-メチルおよび/または2′-O-メチルホスホロチオエートヌクレオチドを含み得る。
【表1】
【0096】
タイプVシステムの単一分子ガイドRNA(sgRNA)は、5′から3′方向に、最小CRISPR反復配列およびスペーサー配列を含み得る。
【0097】
実例として、CRISPR/Cas9またはCRISPR/Cpf1システムで使用されるガイドRNA、または他のより小さなRNAは、以下に示され、当該技術分野で説明されるように、化学的手段により容易に合成できる。化学合成手順は、継続的に拡大しているが、高性能液体クロマトグラフィー(PAGEなどのゲルの使用を回避するHPLC)などの手順によるそのようなRNAの精製は、ポリヌクレオチドの長さが100ヌクレオチド程度を超えて大幅に増加するため、より困難になる傾向がある。より長いRNAを生成するために使用される1つのアプローチは、一緒に結紮される2つ以上の分子を産生することである。Cas9またはCpf1エンドヌクレアーゼをコードするものなど、はるかに長いRNAは、より容易に酵素的に生成される。種々のタイプのRNA修飾は、化学合成および/またはRNAの酵素的生成中または後に導入することができ、例えば、安定性を高める修飾は、当該技術分野で説明されるように、先天性免疫応答の可能性もしくは程度を低減し、かつ/または他の属性を強化する。
【0098】
スペーサー伸長配列
ゲノム標的化核酸のいくつかの実施例では、スペーサー伸長配列は、活性を修飾し、安定性を提供し、かつ/またはゲノム標的化核酸の修飾のための位置を提供することができる。スペーサー伸長配列は、オンターゲットまたはオフターゲットの活性または特異性を修飾することができる。いくつかの実施例では、スペーサー伸長配列が提供され得る。スペーサー伸長配列は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、1000、2000、3000、4000、5000、6000、または7000以上のヌクレオチド以上の長さを有し得る。スペーサー伸長配列は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000以上のヌクレオチド未満の長さを有し得る。スペーサー伸長配列は、長さが10ヌクレオチド未満であり得る。スペーサー伸長配列は、長さが10~30ヌクレオチドであり得る。スペーサー伸長配列は、長さが30~70ヌクレオチドであり得る。
【0099】
スペーサー伸長配列は、別の部分(例えば、安定性制御配列、エンドリボヌクレアーゼ結合配列、リボザイム)を含み得る。この部分は、核酸を標的化する核酸の安定性を減少または増加させることができる。この部分は、転写ターミネーターセグメント(すなわち、転写終結配列)であり得る。この部分は、真核細胞で機能することができる。この部分は、原核細胞で機能することができる。この部分は、真核細胞および原核細胞の両方で機能することができる。適切な部分の非限定的な例には、5′キャップ(例えば、7-メチルグアニル酸キャップ(m7 G))、リボスイッチ配列(例えば、タンパク質およびタンパク質複合体による規制された安定性および/または規制されたアクセシビリティを可能にするため)、dsRNA二重鎖を形成する配列(すなわち、ヘアピン)、RNAを細胞内位置(例えば、核、ミトコンドリア、葉緑体など)に標的する配列、追跡を提供する修飾または配列(例えば、蛍光分子への直接接合、蛍光検出を促進する部分への接合、蛍光検出を可能にする配列など)、および/またはタンパク質(例えば、転写活性化因子、転写抑制因子、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼなどを含む、DNAに作用するタンパク質)の結合部位を提供する修飾もしくは配列が含まれる。
【0100】
スペーサー配列
スペーサー配列は、目的の標的核酸の配列にハイブリダイズする。ゲノム標的化核酸のスペーサーは、ハイブリダイゼーション(すなわち、塩基対形成)を介して、配列特異的な方法で標的核酸と相互作用することができる。スペーサーのヌクレオチド配列は、目的の標的核酸の配列に応じて異なり得る。
【0101】
本明細書のCRISPR/Casシステムでは、スペーサー配列は、システムで使用されるCas9酵素のPAMの5′に位置する標的核酸にハイブリダイズするように設計され得る。スペーサーは、標的配列と完全に一致する場合もあれば、ミスマッチを有する場合もある。各Cas9酵素は、標的DNAで認識する特定のPAM配列を有する。例えば、S.pyogenesは、標的核酸において、配列5′-NRG-3′を含むPAMを認識し、Rは、AまたはGのいずれかを含み、Nは、任意のヌクレオチドであり、Nは、スペーサー配列により標的化された標的核酸の3′のすぐ近くである。
【0102】
標的核酸配列は、20ヌクレオチドを含み得る。標的核酸は、20ヌクレオチド未満を含み得る。標的核酸は、20ヌクレオチド超を含み得る。標的核酸は、少なくとも5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30またはそれ以上のヌクレオチドを含み得る。標的核酸は、最大で5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30またはそれ以上のヌクレオチドを含み得る。標的核酸配列は、PAMの最初のヌクレオチドの5′のすぐ近くに20塩基を含み得る。例えば、5′-NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNRG-3′(配列番号17049)を含む配列において、標的核酸は、Nに対応する配列を含むことができ、Nは、任意のヌクレオチドであり、下線が引かれたNRG配列は、S.pyogenes PAMである。この標的核酸配列は、しばしばPAM鎖と呼ばれ、相補的な核酸配列は、しばしば非PAM鎖と呼ばれる。当業者は、スペーサー配列が標的核酸の非PAM鎖にハイブリダイズすることを認識するであろう(
図1Aおよび1B)。
【0103】
標的核酸にハイブリダイズするスペーサー配列は、少なくとも約6ヌクレオチド(nt)の長さを有し得る。スペーサー配列は、少なくとも約6nt、少なくとも約10nt、少なくとも約15nt、少なくとも約18nt、少なくとも約19nt、少なくとも約20nt、少なくとも約25nt、少なくとも約30nt、少なくとも約35nt、または少なくとも約40nt、約6nt~約80nt、約6nt~約50nt、約6nt~約45nt、約6nt~約40nt、約6nt~約35nt、約6nt~約30nt、約6nt~約25nt、約6nt~約20nt、約6nt~約19nt、約10nt~約50nt、約10nt~約45nt、約10nt~約40nt、約10nt~約35nt、約10nt~約30nt、約10nt~約25nt、約10nt~約20nt、約10nt~約19nt、約19nt~約25nt、約19nt~約30nt、約19nt~約35nt、約19nt~約40nt、約19nt~約45nt、約19nt~約50nt、約19nt~約60nt、約20nt~約25nt、約20nt~約30nt、約20nt~約35nt、約20nt~約40nt、約20nt~約45nt、約20nt~約50nt、または約20nt~約60ntであり得る。いくつかの実施例では、スペーサー配列は、20ヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施例では、スペーサーは、19ヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施例では、スペーサーは、18ヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施例では、スペーサーは、22ヌクレオチドを含み得る。
【0104】
いくつかの実施例では、標的核酸のスペーサー配列と非PAM鎖との間の相補性パーセントは、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%である。いくつかの実施例では、スペーサー配列と標的核酸との間の相補性パーセントは、最大約30%、最大約40%、最大約50%、最大約60%、最大約65%、最大約70%、最大約75%、最大約80%、最大約85%、最大約90%、最大約95%、最大約97%、最大約98%、最大約99%、または100%である。いくつかの実施例では、スペーサー配列と標的核酸との間の相補性パーセントは、標的核酸の相補鎖の標的配列の6つの隣接する5′末端ヌクレオチドにわたって100%である。スペーサー配列と標的核酸との間の相補性パーセントは、約20の連続したヌクレオチドにわたって少なくとも60%であり得る。スペーサー配列および標的核酸の長さは、1~6ヌクレオチドだけ異なっていてもよく、これは1つまたは複数のバルジと考えられ得る。
【0105】
スペーサー配列は、コンピュータープログラムを使用して設計または選択され得る。コンピュータープログラムは、予測融解温度、二次構造形成、予測アニーリング温度、配列同一性、ゲノムコンテキスト、クロマチンアクセシビリティ、%GC、ゲノム発生頻度(例えば、同一または類似しているが、ミスマッチ、挿入、または欠失の結果として1つ以上のスポットで異なる配列の)、メチル化状態、SNPの存在などの変数を使用し得る。
【0106】
最小CRISPR反復配列
いくつかの態様では、最小CRISPR反復配列は、参照CRISPR反復配列(例えば、S.pyogenes由来のcrRNA)に対して少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%の配列同一性を有する配列である。
【0107】
いくつかの態様では、最小のCRISPR反復配列は、細胞内の最小のtracrRNA配列にハイブリダイズできるヌクレオチドを含む。最小CRISPR反復配列および最小tracrRNA配列は、二重鎖、すなわち、塩基対の二本鎖構造を形成することができる。一緒に、最小CRISPR反復配列および最小tracrRNA配列は、部位特異的ポリペプチドに結合することができる。最小CRISPR反復配列の少なくとも一部は、最小tracrRNA配列にハイブリダイズすることができる。いくつかの態様では、最小CRISPR反復配列の少なくとも一部は、最小tracrRNA配列に対して少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%の相補性を含む。最小CRISPR反復配列の少なくとも一部は、最小tracrRNA配列に対して少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%の相補性を含み得る。
【0108】
最小CRISPR反復配列は、約7ヌクレオチド~約100ヌクレオチドの長さを有し得る。例えば、最小CRISPR反復配列の長さは、約7ヌクレオチド(nt)~約50nt、約7nt~約40nt、約7nt~約30nt、約7nt~約25nt、約7nt~約20nt、約7nt~約15nt、約8nt~約40nt、約8nt~約30nt、約8nt~約25nt、約8nt~約20nt、約8nt~約15nt、約15nt~約100nt、約15nt~約80nt、約15nt~約50nt、約15nt~約40nt、約15nt~約30nt、または約15nt~約25ntである。いくつかの態様では、最小CRISPR反復配列は、およそ9ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、最小CRISPR反復配列は、およそ12ヌクレオチドの長さである。
【0109】
最小CRISPR反復配列は、少なくとも6、7、または8連続ヌクレオチドのストレッチにわたって参照最小CRISPR反復配列(例えば、S.pyogenes由来の野生型crRNA)と少なくとも約60%同一であり得る。例えば、最小CRISPR反復配列は、少なくとも6、7、または8連続ヌクレオチドのストレッチにわたって参照最小CRISPR反復配列と、少なくとも約65%同一、少なくとも約70%同一、少なくとも約75%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%、少なくとも約95%同一、少なくとも約98%同一、少なくとも約99%同一、または100%同一であり得る。
【0110】
最小tracrRNA配列
最小tracrRNA配列は、参照tracrRNA配列(例えば、S.pyogenes由来の野生型tracrRNA)に対して少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%の配列同一性を有する配列であり得る。
【0111】
最小tracrRNA配列は、細胞内の最小CRISPR反復配列にハイブリダイズするヌクレオチドを含むことができる。最小tracrRNA配列および最小CRISPR反復配列は、二重鎖、すなわち、塩基対の二本鎖構造を形成する。一緒に、最小tracrRNA配列および最小CRISPR反復は、部位特異的ポリペプチドに結合することができる。最小tracrRNA配列の少なくとも一部は、最小CRISPR反復配列にハイブリダイズすることができる。最小tracrRNA配列は、最小CRISPR反復配列に対して少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%相補性であり得る。
【0112】
最小tracrRNA配列は、約7ヌクレオチド~約100ヌクレオチドの長さを有し得る。例えば、最小CRISPR反復配列は、約7ヌクレオチド(nt)~約50nt、約7nt~約40nt、約7nt~約30nt、約7nt~約25nt、約7nt~約20nt、約7nt~約15nt、約8nt~約40nt、約8nt~約30nt、約8nt~約25nt、約8nt~約20nt、約8nt~約15nt、約15nt~約100nt、約15nt~約80nt、約15nt~約50nt、約15nt~約40nt、約15nt~約30nt、または約15nt~約25ntの長さであり得る。最小tracrRNA配列は、およそ9ヌクレオチドの長さであり得る。最小tracrRNA配列は、およそ12ヌクレオチドであり得る。最小tracrRNAは、上記のJinekらに記載されているtracrRNA nt23~48から構成され得る。
【0113】
最小tracrRNA配列は、少なくとも6、7、または8連続ヌクレオチドのストレッチにわたって、参照最小tracrRNA(例えば、野生型、S.pyogenes由来のtracrRNA)と少なくとも約60%同一であり得る。例えば、最小tracrRNA配列は、少なくとも6、7、または8連続ヌクレオチドのストレッチにわたって、参照最小tracrRNA配列と少なくとも約65%同一、約70%同一、約75%同一、約80%同一、約85%同一、約90%同一、約95%同一、約98%同一、約99%同一、または100%同一であり得る。
【0114】
最小CRISPR RNAと最小tracrRNAとの間の二重鎖は、二重らせんを構成することができる。最小CRISPR RNAと最小tracrRNAとの間の二重鎖は、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上のヌクレオチドを含むことができる。最小CRISPR RNAと最小tracrRNAとの間の二重鎖は、最大で約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上のヌクレオチドを含むことができる。
【0115】
二重鎖は、ミスマッチを含むことができる(すなわち、二重鎖の2つの鎖は、100%相補的ではない)。二重鎖は、少なくとも約1、2、3、4、または5つのミスマッチを含むことができる。二重鎖は、最大で約1、2、3、4、または5つのミスマッチを含むことができる。二重鎖は、2つまでのミスマッチを含むことができる。
【0116】
バルジ
場合によっては、最小CRISPR RNAと最小tracrRNAとの間の二重鎖に「バルジ」が存在し得る。バルジは、二重鎖内のヌクレオチドの不対領域である。バルジは、部位特異的ポリペプチドへの二重鎖の結合に寄与し得る。バルジは、二重鎖の片側に、不対5′-rrrn-3′(配列番号17,053)(rは、任意のプリンであり、nは、反対の鎖上のヌクレオチドとウォブル対を形成することができるヌクレオチドを含む)、および二重鎖の反対側に不対ヌクレオチド領域を含み得る。二本鎖の両側の不対ヌクレオチドの数は、異なり得る。
【0117】
一実施例では、バルジは、バルジの最小CRISPR反復鎖上の不対プリン(例えば、アデニン)を含むことができる。いくつかの実施例では、バルジは、バルジの最小tracrRNA配列鎖の不対5′-AAGn-3′(配列番号17,067)を含むことができ、nは、最小CRISPR反復鎖上のヌクレオチドとウォブル対を形成することができるヌクレオチドを含む。
【0118】
二重鎖の最小CRISPR反復側のバルジは、少なくとも1、2、3、4、または5個以上の不対ヌクレオチドを含むことができる。二重鎖の最小CRISPR反復側のバルジは、最大で1、2、3、4、または5個以上の不対ヌクレオチドを含むことができる。二重鎖の最小CRISPR反復側のバルジは、1つの不対ヌクレオチドを含むことができる。
【0119】
二重鎖の最小tracrRNA配列側のバルジは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上の不対ヌクレオチドを含むことができる。二重鎖の最小tracrRNA配列側のバルジは、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上の不対ヌクレオチドを含むことができる。二重鎖の第2の側のバルジ(例えば、二重鎖の最小のtracrRNA配列側)は、4つの不対ヌクレオチドを含むことができる。
【0120】
バルジは、少なくとも1つのウォブル対を含むことができる。いくつかの実施例では、バルジは、最大で1つのウォブル対を含むことができる。バルジは、少なくとも1つのプリンヌクレオチドを含むことができる。バルジは、少なくとも3つのプリンヌクレオチドを含むことができる。バルジ配列は、少なくとも5つのプリンヌクレオチドを含むことができる。バルジ配列は、少なくとも1つのグアニンヌクレオチドを含むことができる。いくつかの実施例では、バルジ配列は、少なくとも1つのアデニンヌクレオチドを含むことができる。
【0121】
ヘアピン
様々な例では、1つ以上のヘアピンを3′tracrRNA配列の最小tracrRNAの3′に位置し得る。
【0122】
ヘアピンは、最小CRISPR反復および最小tracrRNA配列二重鎖の最後のヌクレオチド対から少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、または20以上のヌクレオチドの3′から開始し得る。ヘアピンは、最小CRISPR反復および最小tracrRNA配列二重鎖の最後のヌクレオチド対の最大で約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上のヌクレオチドの3′から開始し得る。
【0123】
ヘアピンは、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、または20以上の連続したヌクレオチドを含むことができる。ヘアピンは、最大で約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15以上の連続したヌクレオチドを含むことができる。
【0124】
ヘアピンは、CCジヌクレオチド(すなわち、2つの連続したシトシンヌクレオチド)を含むことができる。
【0125】
ヘアピンは、二重鎖ヌクレオチド(例えば、ヘアピン内のヌクレオチド、一緒にハイブリダイズしたもの)を含むことができる。例えば、ヘアピンは、3′tracrRNA配列のヘアピン二重鎖中のGGジヌクレオチドにハイブリダイズするCCジヌクレオチドを含むことができる。
【0126】
ヘアピンのうちの1つ以上は、部位特異的ポリペプチドのガイドRNA相互作用領域と相互作用することができる。
【0127】
いくつかの実施例では、2つ以上のヘアピンがあり、他の実施例では、3つ以上のヘアピンがある。
【0128】
3′tracrRNA配列
3′tracrRNA配列は、参照tracrRNA配列(例えば、S.pyogenes由来のtracrRNA)に対して少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%の配列同一性を有する配列を含み得る。
【0129】
3′tracrRNA配列は、約6ヌクレオチド~約100ヌクレオチドの長さを有し得る。例えば、3′tracrRNA配列は、約6ヌクレオチド(nt)~約50nt、約6nt~約40nt、約6nt~約30nt、約6nt~約25nt、約6nt~約20nt、約6nt~約15nt、約8nt~約40nt、約8nt~約30nt、約8nt~約25nt、約8nt~約20nt、約8nt~約15nt、約15nt~約100nt、約15nt~約80nt、約15nt~約50nt、約15nt~約40nt、約15nt~約30nt、または約15nt~約25ntの長さを有し得る。3′tracrRNA配列は、およそ14ヌクレオチドの長さを有し得る。
【0130】
3′tracrRNA配列は、少なくとも6、7、または8連続ヌクレオチドのストレッチにわたって、参照3′tracrRNA配列(例えば、S.pyogenes由来の野生型3′tracrRNA配列)と少なくとも約60%同一であり得る。例えば、3′tracrRNA配列は、少なくとも6、7、または8連続ヌクレオチドのストレッチにわたって、参照3′tracrRNA配列(例えば、S.pyogenes由来の野生型3′tracrRNA配列)と少なくとも約60%同一、約65%同一、約70%同一、約75%同一、約80%同一、約85%同一、約90%同一、約95%同一、約98%同一、約99%同一、または100%同一であり得る。
【0131】
3′tracrRNA配列は、2つ以上の二重化領域(例えば、ヘアピン、ハイブリッド化領域)を含むことができる。3′tracrRNA配列は、2つの二重化領域を含むことができる。
【0132】
3′tracrRNA配列は、ステムループ構造を含むことができる。3′tracrRNAのステムループ構造は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、または20以上のヌクレオチドを含むことができる。3′tracrRNAのステムループ構造は、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上のヌクレオチドを含むことができる。ステムループ構造は、機能的部分を含むことができる。例えば、ステムループ構造は、アプタマー、リボザイム、タンパク質相互作用ヘアピン、CRISPRアレイ、イントロン、またはエクソンを含むことができる。ステムループ構造は、少なくとも約1、2、3、4、または5以上の機能的部分を含むことができる。ステムループ構造は、最大で約1、2、3、4、または5以上の機能的部分を含むことができる。
【0133】
3′tracrRNA配列のヘアピンは、Pドメインを含むことができる。いくつかの実施例では、Pドメインは、ヘアピンに二本鎖領域を含むことができる。
【0134】
tracrRNA伸長配列
tracrRNA伸長配列は、単一分子ガイドまたは二重分子ガイドの文脈にあるかどうかに関係なく提供される場合がある。tracrRNA伸長配列は、約1ヌクレオチド~約400ヌクレオチドの長さを有し得る。tracrRNA伸長配列は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、または400ヌクレオチドを超える長さを有し得る。tracrRNA伸長配列は、約20~約5000以上のヌクレオチドの長さを有し得る。tracrRNA伸長配列は、1000ヌクレオチドを超える長さを有し得る。tracrRNA伸長配列は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400未満、またはそれ以上のヌクレオチドの長さを有し得る。tracrRNA伸長配列は、1000ヌクレオチド未満の長さを有し得る。tracrRNA伸長配列は、10ヌクレオチド未満の長さを含み得る。tracrRNA伸長配列は、10~30ヌクレオチドの長さであり得る。tracrRNA伸長配列は、30~70ヌクレオチドの長さであり得る。
【0135】
tracrRNA伸長配列は、機能的部分(例えば、安定性制御配列、リボザイム、エンドリボヌクレアーゼ結合配列)を含むことができる。機能的部分は、転写ターミネーターセグメント(すなわち、転写終結配列)を含むことができる。機能的部分は、約10ヌクレオチド(nt)~約100ヌクレオチド、約10nt~約20nt、約20nt~約30nt、約30nt~約40nt、約40nt~約50nt、約50nt~約60nt、約60nt~約70nt、約70nt~約80nt、約80nt~約90nt、または約90nt~約100nt、約15nt~約80nt、約15nt~約50nt、約15nt~約40nt、約15nt~約30nt、または約15nt~約25ntの全長を有し得る。機能的部分は、真核細胞で機能することができる。機能的部分は、原核細胞で機能することができる。機能的部分は、真核細胞と原核細胞の両方で機能することができる。
【0136】
適切なtracrRNA伸長機能的部分の非限定的な例には、3′ポリ-アデニル化テール、リボスイッチ配列(例えば、タンパク質およびタンパク質複合体による規制された安定性および/または規制されたアクセシビリティを可能にするため)、dsRNA二重鎖を形成する配列(すなわち、ヘアピン)、RNAを細胞内位置(例えば、核、ミトコンドリア、葉緑体など)に標的化する配列、追跡を提供する修飾または配列(例えば、蛍光分子への直接接合、蛍光検出を促進する部分への接合、蛍光検出を可能にする配列など)、および/またはタンパク質(例えば、転写活性化因子、転写抑制因子、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼなどを含む、DNAに作用するタンパク質)の結合部位を提供する修飾もしくは配列が含まれる。tracrRNA伸長配列は、プライマー結合部位または分子インデックス(例えば、バーコード配列)を含むことができる。tracrRNA伸長配列は、1つ以上の親和性タグを含むことができる。
【0137】
単一分子ガイドリンカー配列
単一分子ガイド核酸のリンカー配列は、約3ヌクレオチド~約100ヌクレオチドの長さを有し得る。上記のJinek et al.,Science,337(6096):816-821(2012)では、例えば、単純な4ヌクレオチド「テトラループ」(-GAAA-)が使用された。例示的なリンカーは、約3ヌクレオチド(nt)~約90nt、約3nt~約80nt、約3nt~約70nt、約3nt~約60nt、約3nt~約50nt、約3nt~約40nt、約3nt~約30nt、約3nt~約20nt、約3nt~約10ntの長さを有する。例えば、リンカーは、約3nt~約5nt、約5nt~約10nt、約10nt~約15nt、約15nt~約20nt、約20nt~約25nt、約25nt~約30nt、約30nt~約35nt、約35nt~約40nt、約40nt~約50nt、約50nt~約60nt、約60nt~約70nt、約70nt~約80nt、約80nt~約90nt、または約90nt~約100ntの長さを有し得る。単一分子ガイド核酸のリンカーは、4~40ヌクレオチドであり得る。リンカーは、少なくとも約100、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、または7000以上のヌクレオチドであり得る。リンカーは、最大で約100、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、または7000以上のヌクレオチドであり得る。
【0138】
リンカーは、様々な配列のいずれかを含むことができるが、いくつかの実施例では、リンカーは、ガイドRNAの他の部分と広範な相同領域を有する配列を含まないため、ガイドの他の機能領域を干渉し得る分子内結合を引き起こす場合がある。上記のJinek et al.,Science,337(6096):816-821(2012)では、単純な4ヌクレオチド配列-GAAA-が使用されたが、より長い配列を含む多数の他の配列も同様に使用することができる。
【0139】
リンカー配列は、機能的部分を含むことができる。例えば、リンカー配列は、アプタマー、リボザイム、タンパク質相互作用ヘアピン、タンパク質結合部位、CRISPRアレイ、イントロン、またはエクソンを含む1つ以上の特徴を含むことができる。リンカー配列は、少なくとも約1、2、3、4、または5以上の機能的部分を含むことができる。いくつかの実施例では、リンカー配列は、最大で約1、2、3、4、または5以上の機能的部分を含むことができる。
【0140】
核酸修飾(化学的および構造的修飾)
いくつかの態様では、細胞に導入されるポリヌクレオチドは、本明細書でさらに説明され、当該技術分野で知られているように、例えば、活性、安定性または特異性を高める、送達を変える、宿主細胞における先天性免疫応答を減らす、または他の増強のために、個々にまたは組み合わせて使用することができる1つ以上の修飾を含むことができる。
【0141】
ある特定の例では、修飾ポリヌクレオチドをCRISPR/Cas9またはCRISPR/Cpf1システムで使用することができ、この場合、ガイドRNA(単一分子ガイドまたは2分子ガイドのいずれか)および/または細胞に導入されたCas9もしくはCpf1エンドヌクレアーゼをコードするDNAもしくはRNAは、以下で説明および図示されるように修飾され得る。そのような修飾ポリヌクレオチドをCRISPR/Cas9またはCRISPR/Cpf1システムで使用して、任意の1つ以上のゲノム遺伝子座を編集することができる。
【0142】
CRISPR/Cas9またはCRISPR/Cpf1システムをそのような用途の非限定的な例として使用すると、ガイドRNAの修飾を使用して、ガイドRNAを含むCRISPR/Cas9またはCRISPR/Cpf1ゲノム編集複合体の形成または安定性を強化することができ、単一分子ガイドまたは二重分子、およびCas9またはCpf1エンドヌクレアーゼであり得る。ガイドRNAの修飾はまた、または代替として、ゲノム編集複合体とゲノム内の標的配列との相互作用の開始、安定性、または動力学を強化するために使用することができ、これは、例えば、オンターゲット活性を強化するために使用することができる。ガイドRNAの修飾はまた、または代替として、他の(オフターゲット)部位での効果と比較して、特異性、例えば、オンターゲット部位でのゲノム編集の相対速度を高めるために使用することもできる。
【0143】
修飾はまた、または代替として、例えば、細胞内に存在するリボヌクレアーゼ(RNase)による分解に対する抵抗性を高めることによって、ガイドRNAの安定性を高め、それにより細胞内での半減期を増加させるために使用することができる。エンドヌクレアーゼをコードするRNAと同時に導入されたガイドRNAの半減期を増加させることを使用して、ガイドRNAおよびコードされたCas9またはCpf1エンドヌクレアーゼが細胞内に共存する時間を増加させることができるため、ガイドRNAの半減期を増加させる修飾は、Cas9またはCpf1エンドヌクレアーゼが、エンドヌクレアーゼを生成するために翻訳される必要があるRNAを介して編集される細胞に導入される態様において特に有用であり得る。
【0144】
修飾はまた、または代替として、細胞に導入されたRNAが先天性免疫応答を誘発する可能性または程度を減少させるために使用することができる。下記および当該技術分野で説明するように、低分子干渉RNA(siRNA)を含むRNA干渉(RNAi)の文脈で十分に特徴付けられているそのような応答は、RNAの半減期の低減および/またはサイトカインまたは免疫応答に関連する他の因子の誘発に関連する傾向がある。
【0145】
限定されないが、(例えば、細胞内に存在するRNaseによる分解を増加させることによって)RNAの安定性を高める修飾、結果として生じる産物(すなわち、エンドヌクレアーゼ)の翻訳を強化する修飾、および/または細胞に導入されるRNAが先天性免疫応答を誘発する可能性もしくは程度を減少させる修飾を含む、1種以上の修飾はまた、細胞に導入されたエンドヌクレアーゼをコードするRNAに対して行うことができる。
【0146】
前述のものおよび他のものなどの修飾の組み合わせも同様に使用することができる。例えば、CRISPR/Cas9またはCRISPR/Cpf1の場合、1種以上の修飾をガイドRNA(上記に例示したものを含む)に対して行うことができ、かつ/または1種以上の修飾を、CasエンドヌクレアーゼをコードするRNA(上記に例示したものを含む)に対して行うことができる。
【0147】
実例として、CRISPR/Cas9またはCRISPR/Cpf1システムで使用されるガイドRNA、または他のより小さなRNAは、以下に示され、当該技術分野で説明されるように、化学的手段により容易に合成することができ、多くの修飾が容易に組み込まれるようにする。化学合成手順は、継続的に拡大しているが、高性能液体クロマトグラフィー(PAGEなどのゲルの使用を回避するHPLC)などの手順によるそのようなRNAの精製は、ポリヌクレオチドの長さが100ヌクレオチド程度を超えて大幅に増加するため、より困難になる傾向がある。より長い化学修飾RNAを生成するために使用され得る1つのアプローチは、2つ以上の分子を生成し、それらを一緒に結紮することである。Cas9エンドヌクレアーゼをコードするものなど、はるかに長いRNAは、より容易に酵素的に生成される。酵素的に産生されたRNAで使用するために入手可能な修飾の種類は少ないが、例えば、安定性を高め、先天性免疫応答の可能性もしくは程度を低減し、かつ/または下記および当該技術分野でさらに説明されるように、他の属性を強化するために使用され得る修飾が依然として存在する。
【0148】
様々な種類の修飾、特により小さな化学合成RNAで頻繁に使用される修飾の例として、修飾は、糖の2′位で修飾された1つ以上のヌクレオチド、いくつかの態様では、2′-O-アルキル、2′-O-アルキル-O-アルキル、または2′-フルオロ修飾ヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施例では、RNA修飾には、ピリミジン、脱塩基残基、またはRNAの3′末端の逆塩基のリボースに対する2′-フルオロ、2′-アミノ、または2′-O-メチル修飾が含まれる。そのような修飾は、オリゴヌクレオチドに日常的に組み込まれ、これらのオリゴヌクレオチドは、所与の標的に対する2′-デオキシオリゴヌクレオチドよりも高いTm(すなわち、より高い標的結合親和性)を有することが示されている。
【0149】
多くのヌクレオチドおよびヌクレオシド修飾は、それらが組み込まれているオリゴヌクレオチドを、天然のオリゴヌクレオチドよりもヌクレアーゼ消化に対してより耐性にすることが示されている。これらの修飾オリゴは、未修飾オリゴヌクレオチドよりも長い時間無傷で生存する。修飾オリゴヌクレオチドの具体例には、修飾骨格、例えば、ホスホロチオエート、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、短鎖アルキルもしくはシクロアルキル糖間結合、または短鎖ヘテロ原子もしくは複素環糖間結合を含むものが含まれる。一部のオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート骨格を有するオリゴヌクレオチド、およびヘテロ原子骨格、特にCH2-NH-O-CH2、CH、-N(CH3)-O-CH2(メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格として知られる)、CH2-O-N(CH3)-CH2、CH2-N(CH3)-N(CH3)-CH2、およびO-N(CH3)-CH2-CH2骨格を有するものであり、天然のホスホジエステル骨格は、O-P-O-CH、アミド骨格[De Mesmaeker et al.,Ace.Chem.Res.,28:366-374(1995)を参照]、モルホリノ骨格構造(Summerton and Weller、米国特許第5,034,506号を参照)、ペプチド核酸(PNA)骨格として表される(オリゴヌクレオチドのホスホジエステル骨格は、ポリアミド骨格で置き換えられ、ヌクレオチドは、ポリアミド骨格のアザ窒素原子に直接または間接的に結合される。Nielsen et al.,Science 1991,254,1497を参照)。リン含有結合には、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチル、および3′アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含む他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3′-アミノホスホルアミデートおよびアミノアルキルホスホルアミデートを含むホスホルアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、および正常な3′-5′結合を有するボラノホスフェート、これらの2′-5′結合した類似体、ならびに反転極性を有するもの(ヌクレオシド単位の隣接対が結合されている、3′-5′と5′-3′または2′-5′と5′-2′)が含まれるが、これらに限定されない。米国特許第3,687,808号、同第4,469,863号、同第4,476,301号、同第5,023,243号、同第5,177,196号、同第5,188,897号、同第5,264,423号、同第5,276,019号、同第5,278,302号、同第5,286,717号、同第5,321,131号、同第5,399,676号、同第5,405,939号、同第5,453,496号、同第5,455,233号、同第5,466,677号、同第5,476,925号、同第5,519,126号、同第5,536,821号、同第5,541,306号、同第5,550,111号、同第5,563,253号、同第5,571,799号、同第5,587,361号、および同第5,625,050号を参照されたい。
【0150】
モルホリノ系オリゴマー化合物は、Braasch and David Corey,Biochemistry,41(14):4503-4510(2002)、Genesis,Volume 30,Issue3,(2001)、Heasman,Dev.Biol.,243:209-214(2002)、Nasevicius et al.,Nat.Genet.,26:216-220(2000)、Lacerra et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,97:9591-9596(2000)、および1991年7月23日に発行された米国特許第5,034,506号に記載されている。
【0151】
シクロヘキセニル核酸オリゴヌクレオチド模倣物は、Wang et al.,J.Am.Chem.Soc.,122:8595-8602(2000)に記載されている。
【0152】
リン原子を内部に含まない修飾オリゴヌクレオチド骨格は、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子およびアルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、または1つ以上の短鎖ヘテロ原子もしくは複素環ヌクレオシド間結合によって形成される骨格を有する。これらは、モルホリノ結合(ヌクレオシドの糖部分から一部形成される)を有するもの、シロキサン骨格;硫化物、スルホキシドおよびスルホン骨格;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格;スルホン酸およびスルホンアミド骨格;アミド骨格;ならびにN、O、S、CH2構成部品が混合しているものを含む。米国特許第5,034,506号、同第5,166,315、同第5,185,444、同第5,214,134、同第5,216,141、同第5,235,033、同第5,264,562、同第5,264,564、同第5,405,938、同第5,434,257、同第5,466,677、同第5,470,967、同第5,489,677、同第5,541,307、同第5,561,225、同第5,596,086、同第5,602,240、同第5,610,289、同第5,602,240、同第5,608,046、同第5,610,289、同第5,618,704、同第5,623,070、同第5,663,312、同第5,633,360、同第5,677,437号、および同第5,677,439号を参照されたい。
【0153】
1つ以上の置換糖部分、例えば、以下のうちの1つもまた、2′位に含まれ得る:OH、SH、SCH3、F、OCN、OCH3、OCH3O(CH2)nCH3、O(CH2)nNH2、またはO(CH2)nCH3(式中、nは、1~約10である);C1~C10低級アルキル、アルコキシアルコキシ、置換低級アルキル、アルカリールまたはアラルキル;Cl;Br;CN;CF3;OCF3;O-、S-、またはN-アルキル;O-、S-、またはN-アルケニル;SOCH3;SO2CH3;ONO2;NO2;N3;NH2;ヘテロシクロアルキル;ヘテロシクロアルカリール;アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノ;置換シリル;RNA切断基;レポーター基;挿入剤;オリゴヌクレオチドの薬力学的特性を改善するための基;またはオリゴヌクレオチドおよび同様の特性を有する他の置換基の薬力学的特性を改善するための基。いくつかの態様では、修飾は、2′-O-(2′メトキシエチル)としても知られる、2′-メトキシエトキシ(2′-O-CH2CH2OCH3を含む(Martin et al,HeIv.Chim.Acta,1995,78,486)。他の修飾は、2′-メトキシ(2′-O-CH3)、2′-プロポキシ(2′-OCH2CH2CH3)および2′-フルオロ(2′-F)を含む。同様の修飾は、オリゴヌクレオチドの他の位置、特に3 ′末端ヌクレオチド上の糖の3′位および5′末端ヌクレオチドの5′位で行うこともできる。オリゴヌクレオチドはまた、ペントフラノシル基の代わりにシクロブチルなどの糖模倣物を有していてもよい。
【0154】
いくつかの実施例では、ヌクレオチド単位の糖およびヌクレオシド間結合の両方、すなわち骨格は、新規の基で置き換えることができる。塩基単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持することができる。そのようなオリゴマー化合物の1つである、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているオリゴヌクレオチド模倣物は、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれる。PNA化合物において、オリゴヌクレオチドの糖骨格は、例えば、アミノエチルグリシン骨格などの骨格を含むアミドで置き換えることができる。核酸塩基を保持し、直接または間接的に骨格のアミド部分のアザ窒素原子に結合することができる。PNA化合物の調製を教示する代表的な米国特許は、米国特許第5,539,082号、同第5,714,331号、および同第5,719,262号を含むが、これらに限定されない。PNA化合物のさらなる教示は、Nielsen et al,Science,254:1497-1500(1991)に見ることができる。
【0155】
ガイドRNAは、追加としてまたは代替として、核酸塩基(当該技術分野では単に「塩基」と呼ばれることが多い)修飾または置換を含むこともできる。本明細書で使用される場合、「未修飾」または「天然」核酸塩基には、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、およびウラシル(U)が含まれる。修飾された核酸塩基には、天然核酸に稀にまたは一時的にしか見られない核酸塩基、例えば、ヒポキサンチン、6-メチルアデニン、5-Meピリミジン、特に5-メチルシトシン(5-メチル-2′デオキシシトシンとも呼ばれ、当該技術分野ではしばしば5-Me-Cと呼ばれる)、5-ヒドロキシメチルシトシン(HMC)、グリコシルHMCおよびゲントビオシルHMC、ならびに合成核酸塩基、例えば、2-アミノアデニン、2-(メチルアミノ)アデニン、2-(イミダゾリルアルキル)アデニン、2-(アミノアルキルアミノ)アデニン、または他のヘテロ置換アルキルアデニン、2-チオウラシル、2-チオチミン、5-ブロモウラシル、5-ヒドロキシメチルウラシル、8-アザグアニン、7-デアザグアニン、N6(6-アミノヘキシル)アデニン、および2,6-ジアミノプリンが含まれる。Kornberg,A.,DNA Replication,W.H.Freeman&Co.,San Francisco,pp75-77(1980)、Gebeyehu et al.,Nucl.Acids Res.15:4513(1997)。当該技術分野で知られている「ユニバーサル」塩基、例えばイノシンもまた含まれ得る。5-Me-C置換は、核酸二重鎖の安定性が0.6~1.2℃向上することが示されており(Sanghvi,Y.S.,in Crooke,S.T.and Lebleu,B.,eds.,Antisense Research and Applications,CRC Press,Boca Raton,1993,pp.276-278)、塩基置換の態様である。
【0156】
修飾された核酸塩基は、他の合成および天然の核酸塩基、例えば、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、6-メチルおよびアデニンとグアニンの他のアルキル誘導体、2-プロピルとアデニンとグアニンの他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン、5-ハロウラシルおよびシトシン、5-プロピニルウラシルおよびシトシン、6-アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5-ウラシル(疑似-ウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシルおよび他の8-置換アデニンおよびグアニン、5-ハロ、特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチルおよび他の5-置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルクアニンおよび7-メチルアデニン、8-アザグアニンおよび8-アザアデニン、7-デアザグアニンおよび7-デアザアデニン、および3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニンを含み得る。
【0157】
さらに、核酸塩基は、米国特許第3,687,808号に開示されているもの、′The Concise Encyclopedia of Polymer Science And Engineering′,pages 858-859,Kroschwitz,J.I.,ed.John Wiley&Sons,1990に開示されているもの、Englisch et al.,Angewandle Chemie,International Edition′,1991,30,page 613により開示されているもの、およびSanghvi,Y.S.,Chapter 15,Antisense Research and Applications′,pages 289-302,Crooke,S.T.and Lebleu,B.ea.,CRC Press,1993により開示されるものを含み得る。これらのある特定の核酸塩基は、本開示のオリゴマー化合物の結合親和性を高めるのに特に有用である。これらには、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、ならびにN-2、N-6、および0-6置換プリンが含まれ、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシル、および5-プロピニルシトシンを含む。5-メチルシトシン置換は、核酸二重鎖の安定性を0.6~1.2℃向上させることが示されており(Sanghvi,Y.S.,Crooke,S.T.and Lebleu,B.,eds,′Antisense Research and Applications′,CRC Press,Boca Raton,1993,pp.276-278)、さらにより具体的には2′-O-メトキシエチル糖修飾と組み合わせた場合の塩基置換の態様である。修飾された核酸塩基は、米国特許第3,687,808号、および同第4,845,205号、同第5,130,302号、同第5,134,066号、同第5,175,273号、同第5,367,066号、同第5,432,272号、同第5,457,187号、同第5,459,255号、同第5,484,908号、同第5,502,177号、同第5,525,711号、同第5,552,540号、同第5,587,469号、同第5,596,091号、同第5,614,617号、同第5,681,941号、同第5,750,692号、同第5,763,588号、同第5,830,653号、同第6,005,096号、ならびに米国特許出願公開第2003/0158403号に記載されている。
【0158】
したがって、「修飾された」という用語は、ガイドRNA、エンドヌクレアーゼ、またはガイドRNAとエンドヌクレアーゼの両方に組み込まれる非天然の糖、リン酸、または塩基を指す。所与のオリゴヌクレオチドのすべての位置を均一に修飾する必要はなく、実際、前述の修飾のうちの複数を単一のオリゴヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチド内の単一のヌクレオシドに組み込むことができる。
【0159】
エンドヌクレアーゼをコードするガイドRNAおよび/またはmRNA(またはDNA)は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布、または細胞取り込みを強化する1つ以上の部分または共役体に化学結合することができる。そのような部分は、コレステロール部分[Letsinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:6553-6556(1989)]、コール酸[Manoharan et al.,Bioorg.Med.Chem.Let.,4:1053-1060(1994)]、チオエーテル、例えば、ヘキシル-S-トリチルチオール[Manoharan et al,Ann.N.Y.Acad.Sci.,660:306-309(1992)およびManoharan et al.,Bioorg.Med.Chem.Let.,3:2765-2770(1993)]、チオコールエステロール[Oberhauser et al.,Nucl.Acids Res.,20:533-538(1992)]、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールまたはウンデシル残基[Kabanov et al.,FEBS Lett.,259:327-330(1990)およびSvinarchuk et al.,Biochimie,75:49-54(1993)]、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールまたはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホネート[Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,36:3651-3654(1995)およびShea et al.,Nucl.Acids Res.,18:3777-3783(1990)]、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖[Mancharan et al.,Nucleosides&Nucleotides,14:969-973(1995)]、アダマンタン酢酸[Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,36:3651-3654 (1995)]、パルミチル部分[(Mishra et al.,Biochim.Biophys.Acta,1264:229-237(1995)]、あるいはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ-カルボニル-tオキシコレステロール部分[Crooke et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.,277:923-937(1996)]などの脂質部分を含むが、これらに限定されない。米国特許第4,828,979号、同第4,948,882号、同第5,218,105号、同第5,525,465号、同第5,541,313号、同第5,545,730号、同第5,552,538号、同第5,578,717、5,580,731号、同第5,580,731号、同第5,591,584号、同第5,109,124号、同第5,118,802号、同第5,138,045号、同第5,414,077号、同第5,486,603号、同第5,512,439号、同第5,578,718号、同第5,608,046号、同第4,587,044号、同第4,605,735号、同第4,667,025号、同第4,762,779号、同第4,789,737号、同第4,824,941号、同第4,835,263号、同第4,876,335号、同第4,904,582号、同第4,958,013号、同第5,082,830号、同第5,112,963号、同第5,214,136号、同第5,082,830号、同第5,112,963号、同第5,214,136号、同第5,245,022号、同第5,254,469号、同第5,258,506号、同第5,262,536号、同第5,272,250号、同第5,292,873号、同第5,317,098号、同第5,371,241、5,391,723号、同第5,416,203、5,451,463号、同第5,510,475号、同第5,512,667号、同第5,514,785号、同第5,565,552号、同第5,567,810号、同第5,574,142号、同第5,585,481号、同第5,587,371号、同第5,595,726号、同第5,597,696号、同第5,599,923号、同第5,599、928号、および同第5,688,941号も参照されたい。
【0160】
糖および他の部分を使用して、カチオン性ポリソームおよびリポソームなどのヌクレオチドを含むタンパク質および複合体を特定の部位に標的化することができる。例えば、肝細胞向けの伝達は、アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)を介して媒介され得る。例えば、Hu,et al.,Protein Pept Lett.21(10):1025-30(2014)を参照されたい。当該技術分野で既知であり、定期的に開発されている他のシステムを使用して、本事例で使用する生体分子および/またはその複合体を目的の特定の標的細胞に標的化することができる。
【0161】
これらの標的化部分または共役体は、一次または二次ヒドロキシル基などの官能基に共有結合した共役基を含み得る。本開示の共役基には、挿入剤、レポーター分子、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、オリゴマーの薬力学的特性を高める基、およびオリゴマーの薬力学的特性を高める基が含まれる。典型的な共役基には、コレステロール、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン、葉酸、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、および色素が含まれる。本開示の文脈において、薬力学的特性を強化する基には、取り込みを改善し、分解に対する耐性を強化し、かつ/または標的核酸との配列特異的ハイブリダイゼーションを強化する基が含まれる。本開示の文脈において、薬力学的特性を強化する基には、本開示の化合物の取り込み、分布、代謝、または排泄を改善する基が含まれる。代表的な共役基は、1992年10月23日に出願された国際特許出願第PCT/US92/09196号(WO1993/007883として公開)、および米国特許第6,287,860号に開示されている。共役部分には、脂質部分、例えば、コレステロール部分、コール酸、チオエーテル、例えば、ヘキシル-5-トリチルチオール、チオコレステロール、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールもしくはウンデシル残基、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールもしくはトリエチルアンモニウム、1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホネート、ポリアミン、もしくはポリエチレングリコール鎖、またはアダマンタン酢酸、パルミチル部分、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分が含まれるが、これらに限定されない。例えば、米国特許第4,828,979号、同第4,948,882号、同第5,218,105号、同第5,525,465号、同第5,541,313号、同第5,545,730号、同第5,552,538号、同第5,578,717、5,580,731号、同第5,580,731号、同第5,591,584号、同第5,109,124号、同第5,118,802号、同第5,138,045号、同第5,414,077号、同第5,486,603号、同第5,512,439号、同第5,578,718号、同第5,608,046号、同第4,587,044号、同第4,605,735号、同第4,667,025号、同第4,762,779号、同第4,789,737号、同第4,824,941号、同第4,835,263号、同第4,876,335号、同第4,904,582号、同第4,958,013号、同第5,082,830号、同第5,112,963号、同第5,214,136号、同第5,082,830号、同第5,112,963号、同第5,214,136号、同第5,245,022号、同第5,254,469号、同第5,258,506号、同第5,262,536号、同第5,272,250号、同第5,292,873号、同第5,317,098号、同第5,371,241、5,391,723号、同第5,416,203、5,451,463号、同第5,510,475号、同第5,512,667号、同第5,514,785号、同第5,565,552号、同第5,567,810号、同第5,574,142号、同第5,585,481号、同第5,587,371号、同第5,595,726号、同第5,597,696号、同第5,599,923号、同第5,599,928号、および同第5,688,941号を参照されたい。
【0162】
化学合成の影響を受けにくく、通常は酵素的合成によって産生されるより長いポリヌクレオチドもまた、様々な手段によって修飾され得る。そのような修飾には、例えば、ある特定のヌクレオチド類似体の導入、分子の5′または3′末端での特定の配列または他の部分の組み込み、および他の修飾が含まれ得る。例として、Cas9をコードするmRNAは、長さがおよそ4kbであり、インビトロ転写により合成することができる。mRNAの修飾は、例えば、その翻訳または安定性を高めるために(例えば、細胞での分解に対する耐性を高めることによって)適用するか、またはRNAが細胞でしばしば観察される先天性免疫応答を誘発する傾向を低減した後、外因性RNA、特にCas9をコードするようなより長いRNAを導入するために適用され得る。
【0163】
多くのそのような修飾、例えば、ポリAテール、5′キャップ類似体(例えば、アンチリバースキャップアナログ(ARCA)もしくはm7G(5′)ppp(5′)G(mCAP))、修飾された5′もしくは3′非翻訳領域(UTR)、修飾された塩基の使用(例えば、擬似-UTP、2-チオ-UTP、5-メチルシチジン-5′-トリホスフェート(5-メチル-CTP)もしくはN6-メチル-ATPなど)の使用、または5′末端リン酸を除去するためのホスファターゼによる処置は、当該技術分野において説明されている。これらおよび他の修飾は、当該技術分野で知られており、RNAの新しい修飾が定期的に開発されている。
【0164】
例えば、TriLink Biotech,AxoLabs,Bio-Synthesis Inc.,Dharmacon、およびその他多くを含む、修飾RNAの多数の商業的サプライヤーが存在する。TriLinkに記載されているように、例えば、5-メチル-CTPを使用して、ヌクレアーゼ安定性の増加、翻訳の増加、または先天性免疫受容体と転写RNAとの相互作用の低減などの望ましい特性を付与することができる。5-メチルシチジン-5′-トリホスフェート(5-メチル-CTP)、N6-メチル-ATP、擬似-UTPおよび2-チオ-UTPはまた、下記で参照されるKormannらおよびWarrenらによる刊行物において説明されるように、培養物中および生体内で先天性免疫刺激を低減する一方で、翻訳を強化することが示されている。
【0165】
インビボで送達される化学修飾されたmRNAを使用して、改善された治療効果を達成できることが示されている。例えば、Kormann et al.,Nature Biotechnology 29,154-157(2011)を参照されたい。そのような修飾を使用して、例えば、RNA分子の安定性を高め、かつ/またはその免疫原性を低減することができる。擬似-U、N6-メチル-A、2-チオ-U、および5-メチル-Cなどの化学修飾を使用して、ウリジンおよびシチジン残基の4分の1だけを2-チオ-Uおよび5-メチル-Cはそれぞれ、マウスのmRNAのtoll様受容体(TLR)媒介認識の有意な減少をもたらした。先天性免疫系の活性化を低減させることにより、これらの修飾を使用して、インビボでのmRNAの安定性と寿命を効果的に高めることができる。例えば、上記のKormannらを参照されたい。
【0166】
また、先天性抗ウイルス応答をバイパスするように設計された修飾を組み込んだ合成メッセンジャーRNAを繰り返し投与すると、分化したヒト細胞を多能性に再プログラムできることが示されている。例えば、Warren,et al.,Cell Stem Cell,7(5):618-30(2010)を参照されたい。一次再プログラミングタンパク質として作用するこのような修飾mRNAは、複数のヒト細胞型を再プログラミングする効率的な手段であり得る。このような細胞は、誘導多能性幹細胞(iPSC)と呼ばれ、5-メチル-CTP、疑似-UTP、およびアンチリバースキャップアナログ(ARCA)を組み込んだ酵素合成RNAを使用して、細胞の抗ウイルスを効果的に回避できることがわかった。例えば、上記のWarrenらを参照されたい。
【0167】
当該技術分野に記載されたポリヌクレオチドの他の修飾には、例えば、ポリAテールの使用、5′キャップ類似体の付加(m7G(5′)ppp(5′)G(mCAP)など)、5′または3′非翻訳領域(UTR)の修飾、または5′末端リン酸を除去するためのホスファターゼによる処置が含まれ、新しいアプローチが定期的に開発されている。
【0168】
本明細書で使用するための修飾RNAの生成に適用可能な多くの組成物および技法が、低分子干渉RNA(siRNA)を含むRNA干渉(RNAi)の修飾に関連して開発されてきた。 siRNAは、mRNA干渉を介した遺伝子サイレンシングへの影響が一般に一過性であり、反復投与を必要とし得るため、インビボで特定の課題を提示する。さらに、siRNAは、二本鎖RNA(dsRNA)であり、哺乳動物細胞は、多くの場合、ウイルス感染の副産物であるdsRNAを検出し、中和するために進化した免疫応答を有する。したがって、PKR(dsRNA応答性キナーゼ)などの哺乳動物酵素、およびdsRNAに対する細胞応答を媒介することができる潜在的にレチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-I)、ならびにそのような分子に応答してサイトカインの誘導を引き起こすことができるToll様受容体(TLR3など)が存在する。例えば、Angart et al.,Pharmaceuticals(Basel)6(4):440-468(2013)、Kanasty et al.,Molecular Therapy 20(3):513-524(2012)、Burnett et al.,BiotechnolJ.6(9):1130-46(2011)、Judge and MacLachlan,Hum Gene Ther 19(2):111-24(2008)によるレビュー、およびそこに引用されている参考文献を参照されたい。
【0169】
本明細書に記載されるように、RNAの安定性を高め、先天性免疫応答を低減し、かつ/またはヒト細胞へのポリヌクレオチドの導入に関連して有用であり得る他の利点を達成するために、多種多様な修飾が開発および適用されている。例えば、Whitehead KA et al.,Annual Review of Chemical and Biomolecular Engineering,2:77-96(2011)、Gaglione and Messere,Mini Rev Med Chem,10(7):578-95(2010)、Chernolovskaya et al,Curr Opin Mol Ther.,12(2):158-67(2010)、Deleavey et al.,Curr Protoc Nucleic Acid Chem Chapter 16:Unit 16.3(2009)、Behlke,Oligonucleotides 18(4):305-19(2008)、Fucini et al.,Nucleic Acid Ther 22(3):205-210(2012)、Bremsen et al.,Front Genet 3:154(2012)によるレビューを参照されたい。
【0170】
上記のように、修飾RNAの多くの商業的サプライヤーがあり、その多くは、siRNAの有効性を改善するように設計された修飾に特化している。文献で報告されている様々な発見に基づいて、様々なアプローチが提供されている。例えば、Dharmaconは、Kole,Nature Reviews Drug Discovery 11:125-140(2012)によって報告されているように、非架橋酸素の硫黄(ホスホロチオエート、PS)への置換が、siRNAのヌクレアーゼ耐性を改善するために広く使用されていることに注目している。リボースの2′位の修飾は、ヌクレオチド間リン酸結合のヌクレアーゼ耐性を向上させる一方で、二重鎖の安定性(Tm)を高めることが報告されており、これはまた、免疫活性からの保護を提供することも示されている。中程度のPS骨格修飾と小さな良好な耐容性の2′置換(2′-O-メチル、2′-フルオロ、2′-ハイドロ)の組み合わせは、Soutschek et al.Nature 432:173-178(2004)によって報告されたインビボでの適用のための安定性の高いsiRNAと関連付けられており、2′-O-メチル修飾は、Volkov,Oligonucleotides 19:191-202(2009)によって報告された安定性の改善に効果的であると報告されている。先天性免疫応答の誘導の低下に関して、特定の配列を2′-O-メチル、2′-フルオロ、2′-ハイドロで修飾すると、一般にサイレンシング活性を維持しながら、TLR7/TLR8相互作用を低減することが報告されている。例えば、Judge et al.,Mol.Ther.13:494-505(2006)、およびCekaite et al.,J.Mol.Biol.365:90-108(2007)を参照されたい。2-チオウラシル、擬似ウラシル、5-メチルシトシン、5-メチルウラシル、およびN6-メチルアデノシンなどの追加の修飾もまた、TLR3、TLR7、TLR8によって媒介される免疫効果を最小限に抑えることが示されている。例えば、Kariko,K.et al.,Immunity 23:165-175(2005)を参照されたい。
【0171】
当該技術分野において知られ、市販されているように、本明細書で使用するために、例えば、コレステロール、トコフェロールおよび葉酸、脂質、ペプチド、ポリマー、リンカー、およびアプタマーを含む細胞による送達および/または取り込みを増強することができるRNAなどのポリヌクレオチドに多くの共役体を適用することができる。例えば、Winkler,Ther.Deliv.4:791-809(2013)によるレビューおよびそこに引用されている参考文献を参照されたい。
【0172】
コドン最適化
部位特異的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、目的の標的DNAを含む細胞での発現について、当該技術分野で標準的な方法に従ってコドン最適化することができる。例えば、意図された標的核酸がヒト細胞にある場合、Cas9をコードするヒトコドン最適化ポリヌクレオチドは、Cas9ポリペプチドを産生するための使用が企図される。
【0173】
ゲノム標的化核酸と部位特異的ポリペプチドとの複合体
ゲノム標的化核酸は、部位特異的ポリペプチド(例えば、Cas9などの核酸誘導ヌクレアーゼ)と相互作用し、それにより複合体を形成する。ゲノム標的化核酸は、部位特異的ポリペプチドを標的核酸に誘導する。
【0174】
リボ核タンパク質複合体(RNP)
部位特異的ポリペプチドおよびゲノム標的化核酸はそれぞれ、細胞または患者に別々に投与することができる。一方で、部位特異的ポリペプチドは、1つ以上のガイドRNA、またはtracrRNAと一緒に1つ以上のcrRNAと事前に複合することができる。次いで、事前に複合された材料を、細胞または患者に投与することができる。このような事前に複合された材料は、リボ核タンパク質粒子(RNP)として知られている。RNPの部位特異的ポリペプチドは、例えば、Cas9エンドヌクレアーゼまたはCpf1エンドヌクレアーゼであり得る。部位特異的ポリペプチドは、1つ以上の核局在化シグナル(NLS)によってN末端、C末端、またはN末端とC末端の両方に隣接することができる。例えば、Cas9エンドヌクレアーゼは、N末端に位置する1つのNLSとC末端に位置する第2のNLSの2つのNLSに隣接することができる。NLSは、SV40 NLSなどの当該技術分野で知られている任意のNLSであり得る。RNPのゲノム標的化核酸と部位特異的ポリペプチドとの重量比は、1:1であり得る。例えば、RNPでのsgRNAとCas9エンドヌクレアーゼの重量比は、1:1であり得る。
【0175】
核酸をコードするシステム構成要素
本開示は、本開示のゲノム標的化核酸、本開示の部位特異的ポリペプチド、および/または本開示の方法の態様を実施するのに必要な任意の核酸もしくはタンパク質分子をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0176】
本開示のゲノム標的化核酸、本開示の部位特異的ポリペプチド、および/または本開示の方法の態様を実施するのに必要な任意の核酸もしくはタンパク質分子をコードする核酸は、ベクター(例えば、組換え発現ベクター)を含み得る。
【0177】
「ベクター」という用語は、結合された別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。ベクターの1つのタイプは、「プラスミド」であり、これは、追加の核酸セグメントが結紮され得る環状二本鎖DNAループを指す。別のタイプのベクターは、ウイルスベクターであり、追加の核酸セグメントをウイルスゲノムに結紮することができる。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞内で自律複製が可能である(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それにより宿主ゲノムとともに複製される。
【0178】
いくつかの実施例では、ベクターは、それらが動作可能に結合されている核酸の発現を指示することができる可能性がある。そのようなベクターは、本明細書において「組換え発現ベクター」、またはより単純に「発現ベクター」と呼ばれ、同等の機能を果たす。
【0179】
「動作可能に結合された」という用語は、目的のヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の発現を可能にする方法で調節配列(複数可)に結合されていることを意味する。「調節配列」という用語は、例えば、プロモーター、エンハンサー、および他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図される。そのような調節配列は、当該技術分野で周知であり、例えば、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,CA(1990)に記載されている。調節配列には、多くのタイプの宿主細胞でヌクレオチド配列の構成的発現を指示するもの、およびある特定の宿主細胞でのみヌクレオチド配列の発現を指示するもの(例えば、組織特異的調節配列)が含まれる。当業者は、発現ベクターの設計が、標的細胞の選択、所望の発現レベルなどのような要因に依存し得ることを理解するであろう。
【0180】
企図される発現ベクターには、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、レトロウイルス(例えば、ネズミ白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、およびRous肉腫ウイルス、Harvey肉腫ウイルス、鳥類白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、乳腺腫瘍ウイルスなどのレトロウイルスに由来するベクター)、ならびに他の組換えベクターが含まれるが、これらに限定されない。真核生物の標的細胞について企図される他のベクターには、ベクターpXT1、pSG5、pSVK3、pBPV、pMSG、およびpSVLSV40(Pharmacia)が含まれるが、これらに限定されない。宿主細胞と適合する限り、他のベクターを使用することができる。
【0181】
いくつかの実施例では、ベクターは、1つ以上の転写および/または翻訳制御要素を含むことができる。利用される宿主/ベクター系に応じて、構成的かつ誘導性のプロモーター、転写エンハンサー要素、転写ターミネーターなどを含む、多数の適切な転写および翻訳制御要素のいずれかを発現ベクターで使用することができる。ベクターは、ウイルス配列またはCRISPR機構の構成要素または他の要素のいずれかを不活性化する自己不活性化ベクターであり得る。
【0182】
適切な真核生物プロモーター(すなわち、真核生物細胞で機能するプロモーター)の非限定的な例には、サイトメガロウイルス(CMV)極初期、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ、初期および後期SV40、レトロウイルス由来の長い末端反復(LTR)、ヒト伸長因子-1プロモーター(EF1)、ニワトリβ-アクチンプロモーター(CAG)、マウス幹細胞ウイルスプロモーター(MSCV)、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1遺伝子座プロモーター(PGK)、およびマウスメタロチオネイン-Iに融合したサイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーを含むハイブリッド構築物に由来するものが含まれる。
【0183】
Casエンドヌクレアーゼに関連して使用されるガイドRNAを含む、低分子RNAの発現には、例えばU6およびH1を含むRNAポリメラーゼIIIプロモーターなどの様々なプロモーターが有利であり得る。そのようなプロモーターの使用を強化するための説明およびパラメータは、当該技術分野で知られており、追加の情報およびアプローチが定期的に説明されている。例えば、Ma,H.et al.,Molecular Therapy-Nucleic Acids 3,e161(2014)doi:10.1038/mtna.2014.12を参照されたい。
【0184】
発現ベクターはまた、翻訳開始のためのリボソーム結合部位と転写ターミネーターを含むこともできる。発現ベクターはまた、発現を増幅させるための適切な配列も含み得る。発現ベクターはまた、部位特異的ポリペプチドに融合され、したがって融合タンパク質をもたらす非天然タグ(例えば、ヒスチジンタグ、血球凝集素タグ、緑色蛍光タンパク質など)をコードするヌクレオチド配列を含み得る。
【0185】
プロモーターは、誘導性プロモーター(例えば、熱ショックプロモーター、テトラサイクリン調節プロモーター、ステロイド調節プロモーター、金属調節プロモーター、エストロゲン受容体調節プロモーターなど)であり得る。プロモーターは、構成的プロモーター(例えば、CMVプロモーター、UBCプロモーター)であり得る。場合によっては、プロモーターは、空間的に制限されたおよび/または時間的に制限されたプロモーター(例えば、組織特異的プロモーター、細胞型特異的プロモーターなど)であり得る。
【0186】
本開示のゲノム標的化核酸および/または部位特異的ポリペプチドをコードする核酸は、細胞への送達のために送達ビヒクルの表面または表面上にパッケージ化され得る。企図される送達媒体には、ナノスフェア、リポソーム、量子ドット、ナノ粒子、ポリエチレングリコール粒子、ヒドロゲル、およびミセルが含まれるが、これらに限定されない。当該技術分野で説明されているように、様々な標的化部分を使用して、そのようなビヒクルと所望の細胞型または位置との優先的相互作用を強化することができる。
【0187】
本開示の複合体、ポリペプチド、および核酸の細胞への導入は、ウイルスまたはバクテリオファージ感染、トランスフェクション、接合、プロトプラスト融合、リポフェクション、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、粒子銃技術、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクション、ナノ粒子媒介核酸送達などによって起こり得る。
【0188】
治療的アプローチ
本明細書では、脂質異常症の患者を治療するための方法が提供される。そのような方法の態様は、エクスビボの細胞ベースの治療法である。例えば、患者の肝臓の生検が行われる。次いで、肝臓特異的前駆細胞または初代肝細胞が、生検材料から単離される。次に、これらの前駆細胞または初代肝細胞の染色体DNAは、本明細書に記載の材料および方法を使用して修正される。最後に、前駆細胞または初代肝細胞が患者に移植される。任意のソースまたはタイプの細胞を、前駆細胞として使用することができる。
【0189】
そのような方法の別の態様は、エクスビボの細胞ベースの治療法である。例えば、患者特異的な誘導多能性幹細胞(iPSC)を作成することができる。次いで、これらのiPS細胞の染色体DNAは、本明細書に記載の材料および方法を使用して編集することができる。次に、ゲノム編集されたiPSCを他の細胞に分化することができる。最後に、分化した細胞を患者に移植する。
【0190】
そのような方法のさらに別の態様は、エクスビボの細胞ベースの治療法である。例えば、間葉系幹細胞を患者から単離することができ、これは患者の骨髄または末梢血から単離することができる。次に、これらの間葉系幹細胞の染色体DNAは、本明細書に記載の材料および方法を使用して編集することができる。次に、ゲノム編集された間葉系幹細胞は、あらゆるタイプの細胞、例えば肝細胞に分化することができる。最後に、分化した細胞、例えば肝細胞を患者に移植する。
【0191】
エクスビボ細胞療法アプローチの1つの利点は、投与前に治療薬の包括的な分析を実施できることである。ヌクレアーゼベースの治療法は、ある程度のオフターゲット効果を有し得る。エクスビボで遺伝子編集を行うと、移植前に編集された細胞集団を特徴付けることができる。本開示は、編集された細胞の全ゲノムを配列決定して、もしあれば、オフターゲット効果が患者への最小リスクに関連するゲノム位置にあり得ることを保証することを含む。さらに、移植前に、クローン集団を含む特定の細胞集団を単離することができる。
【0192】
エクスビボ細胞療法の別の利点は、他の主要な細胞源と比較したiPSCの遺伝子修飾に関するものである。iPSCは豊富であり、細胞ベースの治療法に必要な多数の細胞の入手をより容易にする。さらに、iPSCは、クローン単離を行うための理想的な細胞型である。これにより、生存率が低下する危険を冒すことなく、正しいゲノム修飾のスクリーニングが可能になる。対照的に、肝細胞などの他の初代細胞は、数回の継代でのみ生存可能であり、クローン的に拡大することは困難である。したがって、脂質異常症の治療のためのiPSCの操作ははるかに容易になり得、所望の遺伝子修飾を行うために必要な時間を短縮することができる。
【0193】
方法には、インビボベースの治療法も含まれ得る。患者の細胞の染色体DNAは、本明細書に記載の材料および方法を使用して編集される。
【0194】
ある特定の細胞は、エクスビボでの治療および治療法のための魅力的な標的を提示するが、送達における効力の増加は、そのような細胞への直接的なインビボ送達を可能にし得る。理想的には、標的化および編集は、関連細胞に向けられる。ある特定の細胞および/または発生段階でのみ活性なプロモーターを使用することにより、他の細胞の切断を防ぐこともできる。追加のプロモーターは、誘導可能であるため、ヌクレアーゼがプラスミドとして送達される場合、一時的に制御することができる。送達されたRNAおよびタンパク質が細胞内に留まる時間もまた、半減期を変更するために追加された治療またはドメインを使用して調整することができる。インビボ治療は、多くの治療ステップを排除するが、送達速度を低くするには、編集速度を高くする必要があり得る。インビボ治療は、エクスビボ治療および生着による問題と損失を排除することができる。
【0195】
インビボ遺伝子療法の利点は、治療的産生および投与の容易さであり得る。同じ治療アプローチおよび治療法は、複数の患者、例えば同じまたは類似の遺伝子型または対立遺伝子を共有する多くの患者を治療するために使用される可能性を有する。対照的に、エクスビボ細胞療法では、通常、患者自身の細胞を使用する必要があり、それらの細胞は単離され、操作され、同じ患者に戻される。
【0196】
また本明細書では、ゲノム編集により細胞内のANGPTL3遺伝子を編集するための細胞法も提供される。例えば、細胞は、患者または動物から単離することができる。次いで、細胞の染色体DNAは、本明細書に記載の材料および方法を使用して編集することができる。
【0197】
本明細書で提供される方法は、細胞性またはエクスビボまたはインビボの方法に関係なく、1つ以上の挿入、欠失、または突然変異を、ANGPTL3遺伝子またはANGPTL3遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列内またはその近くに導入することによって、ANGPTL3遺伝子の発現を低減(ノックダウン)または排除(ノックアウト)することを伴い得る。
【0198】
例えば、ノックダウンまたはノックアウト戦略は、不正確なNHEJ修復経路のために生じるランダムな挿入または欠失(インデル)を導入することによって、ANGPTL3遺伝子のリーディングフレームを破壊することを伴い得る。これは、1つの一本鎖切断もしくは二本鎖切断を、1つ以上のCRISPRエンドヌクレアーゼおよびgRNA(例えば、crRNA+tracrRNA、もしくはsgRNA)を有する目的の遺伝子に、または2つ以上の一本鎖切断もしくは二本鎖切断を、2つ以上のCRISPRエンドヌクレアーゼおよび2つ以上のsgRNAを有する目的の遺伝子に誘導することによって達成することができる。このアプローチは、ANGPTL3遺伝子のsgRNAの開発および最適化を必要とし得る。
【0199】
あるいは、ノックダウンまたはノックアウト戦略はまた、ANGPTL3遺伝子またはANGPTL3遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列内またはその近くに1つ以上のセグメントの欠失を伴い得る。この欠失戦略には、ANGPTL3遺伝子内またはその近くの2つの異なる部位と1つ以上のCRISPRエンドヌクレアーゼに結合できるgRNA(例えば、crRNA+tracrRNA、またはsgRNA)の少なくとも一対が必要である。2つのgRNAで構成されたCRISPRエンドヌクレアーゼは、所望の位置で2つの二本鎖切断を誘導する。切断後、平滑末端またはオーバーハングの有無にかかわらず、2つの末端はNHEJによって接合され得、介在セグメントの欠失をもたらす。NHEJ修復経路は、接合部での挿入、欠失、または突然変異をもたらし得る。
【0200】
上記のゲノム編集戦略に加えて、別の戦略は、調節配列の編集によってANGPTL3の発現、機能、または活性を調節することを伴う。
【0201】
上記の編集オプションに加えて、Cas9または類似のタンパク質を使用して、編集のために特定され得る同じ標的部位、またはエフェクタードメインの範囲内の追加の標的部位に、エフェクタードメインを標的することができる。一連のクロマチン修飾酵素、メチラーゼ、またはデメチラーゼを使用して、標的遺伝子の発現を変更することができる。1つの可能性は、突然変異が望ましくない活性をもたらす場合、ANGPTL3タンパク質の発現を低下させることである。これらのタイプの後成的制御には、特にそれらが可能なオフターゲット効果に制限されるため、いくつかの利点がある。
【0202】
コーディングおよびスプライシング配列に加えて、多くのタイプのゲノム標的部位が存在し得る。
【0203】
転写および翻訳の調節は、細胞タンパク質またはヌクレオチドと相互作用する部位の多くの異なるクラスに関係している。多くの場合、転写因子または他のタンパク質のDNA結合部位は、部位の役割を研究するために突然変異または欠失のために標的され得るが、それらはまた、遺伝子発現を変更するために標的にすることもできる。NHEJに接合する非相同末端を介して、または相同性修復(HDR)による直接ゲノム編集によって、部位を付加することができる。ゲノム配列の使用の増加、RNA発現、および転写因子結合のゲノム全体の研究により、部位が発生的または一時的な遺伝子調節にどのようにつながるかを特定する能力が向上した。これらの制御システムは直接的であり得るか、または複数のエンハンサーからの活性の統合を必要とし得る広範な協調的規制を伴い得る。転写因子は、通常、6~12bp長の縮退DNA配列に結合する。個々の部位によって提供される低レベルの特異性は、複雑な相互作用および規則が、結合および機能的結果に関与していることを示唆する。縮退の少ない結合部位は、より簡単な調節手段を提供することができる。人工転写因子は、ゲノム内の類似配列が少なく、オフターゲット切断の可能性が低い長い配列を指定するように設計することができる。これらのタイプの結合部位はいずれも、遺伝子の調節または発現の変化を可能にするために、突然変異、欠失、または作成することができる(Canver,M.C.et al.,Nature(2015))。
【0204】
これらの特徴を持つ別のクラスの遺伝子調節領域は、microRNA(miRNA)結合部位である。miRNAは、転写後の遺伝子調節において重要な役割を果たす非コーディングRNAである。miRNAは、すべての哺乳類タンパク質をコードする遺伝子の30%の発現を調節することができる。二本鎖RNA(RNAi)による特異的かつ強力な遺伝子サイレンシングに加え、さらに小さな非コーディングRNAが発見された(Canver,M.C.et al.,Nature(2015))。遺伝子サイレンシングに重要な非コーディングRNAの最大クラスは、miRNAである。哺乳動物では、miRNAは、最初に長いRNA転写産物として転写され、これは、別個の転写ユニット、タンパク質イントロンの一部、または他の転写産物であり得る。長い転写産物は、不完全に塩基対合したヘアピン構造を含む、初代miRNA(pri-miRNA)と呼ばれる。これらのpri-miRNAは、Droshaが関与する核内のタンパク質複合体であるマイクロプロセッサーによって、1つ以上のより短い前駆体miRNA(pre-miRNA)に切断され得る。
【0205】
Pre-miRNAは、2-ヌクレオチドの3′オーバーハングを有する、長さ約70ヌクレオチドの短いステムループであり、成熟した19~25ヌクレオチドmiRNA:miRNA*二重鎖にエクスポートされる。塩基対安定性が低いmiRNA鎖(ガイド鎖)は、RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)の上に負荷され得る。パッセンジャー鎖(*でマークされる)は機能し得るが、通常は劣化する。成熟したmiRNAは、RISCを、主に3′非翻訳領域(UTR)内に見られる標的mRNAの部分相補配列モチーフにつなぎ、転写後遺伝子サイレンシングを誘導する(Bartel,D.P.Cell 136,215-233(2009)、Saj,A.&Lai,E.C.Curr Opin Genet Dev 21,504-510(2011))。
【0206】
miRNAは、開発、分化、細胞周期、および成長制御において、また哺乳動物および他の多細胞生物の実質的にすべての生物学的経路において重要であり得る。miRNAはまた、細胞周期の制御、アポトーシスおよび幹細胞の分化、造血、低酸素、筋肉の発達、神経新生、インスリン分泌、コレステロール代謝、老化、ウイルス複製、および免疫応答にも関与する。
【0207】
単一のmiRNAは、数百の異なるmRNA転写産物を標的とすることができるが、個々のmiRNA転写産物は、多くの異なるmiRNAによって標的され得る。miRBaseの最新リリース(v.21)では、28645超のmicroRNAに注釈が付けられている。いくつかのmiRNAは、複数の遺伝子座によってコードされ、そのうちのいくつかは、タンデムに同時転写されたクラスターから発現され得る。この機能により、複数の経路とフィードバック制御とを備えた複雑な調節ネットワークが可能になる。miRNAは、これらのフィードバックおよび調節回路の不可欠な部分であり得、タンパク質の産生を制限内に保つことで遺伝子発現の調節に役立ち得る(Herranz,H.&Cohen,S.M.Genes Dev 24,1339-1344(2010)、Posadas,D.M.&Carthew,R.W.Curr Opin Genet Dev 27,1-6(2014))。
【0208】
miRNAはまた、異常なmiRNA発現に関連する多くのヒト疾患でも重要であり得る。この関連は、miRNA調節経路の重要性を強調する。最近のmiRNA欠失研究は、miRNAを免疫応答の調節と関連付けている(Stern-Ginossar,N.et al.,Science 317,376-381(2007))。
【0209】
miRNAはまた、癌との強いつながりがあり、様々な種類の癌で役割を果たすことができる。miRNAは、多くの腫瘍で下方調節されることがわかっている。miRNAは、細胞周期制御およびDNA損傷応答などの主要な癌関連経路の調節に重要であり得るため、診断に使用することができ、臨床的に標的とすることができる。MicroRNAは、血管新生のバランスを微妙に調節することができ、それによりすべてのmicroRNAを枯渇させる実験により、腫瘍血管新生が抑制される(Chen,S.et al.,Genes Dev 28,1054-1067(2014))。
【0210】
タンパク質をコードする遺伝子について示されているように、miRNA遺伝子は、癌とともに発生する後成的変化の影響も受け得る。多くのmiRNA遺伝子座は、CpGアイランドに関連付けられ、DNAメチル化による調節の機会を増やす(Weber,B.,Stresemann,C.,Brueckner,B.&Lyko,F.Cell Cycle 6,1001-1005(2007))。ほとんどの研究では、クロマチンリモデリング薬による治療を使用して、後成的にサイレンシングされたmiRNAを明らかにしている。
【0211】
RNAサイレンシングにおける役割に加えて、miRNAは翻訳を活性化することもできる(Posadas,D.M.&Carthew,R.W.Curr Opin Genet Dev 27,1-6(2014))。miRNA部位をノックアウトすると、標的遺伝子の発現の減少につながる場合があるが、これらの部位を導入すると発現が増加する場合がある。
【0212】
個々のmiRNAは、シード配列(microRNAの塩基2~8)を突然変異させることによって最も効果的にノックアウトすることができ、これは、結合特異性にとって重要であり得る。この領域での切断と、それに続くNHEJによる誤修復は、標的部位への結合をブロックすることにより、miRNA機能を効果的に無効にし得る。miRNAは、パリンドローム配列に隣接する特別なループ領域の特定の標的化によっても阻害され得る。触媒的に不活性なCas9を使用して、shRNA発現を阻害することもできる(Zhao,Y.et al.,Sci Rep 4,3943(2014))。miRNAの標的化に加えて、miRNAによるサイレンシングを防ぐために、結合部位を標的化および突然変異させることもできる。
【0213】
本開示によれば、microRNA(miRNA)またはそれらの結合部位のうちのいずれかを、本開示の組成物に組み込むことができる。
【0214】
組成物は、限定されないが、配列番号632~4,715に列記されたmicroRNAのうちのいずれかの配列、配列番号632~4,715に列記されたmicroRNAの逆相補体、または配列番号632~4,715に列記されているmicroRNAのうちのいずれかのmicroRNAアンチシード領域を含む領域を有し得る。
【0215】
本開示の組成物は、1つ以上のmicroRNA標的配列、microRNA配列、またはmicroRNAシードを含み得る。そのような配列は、米国特許公開第US2005/0261218号および米国特許公開第US2005/0059005号に教示されているものなどの任意の既知のmicroRNAに対応し得る。非限定的な実施形態として、ヒトゲノムにおける既知のmicroRNA、それらの配列、およびそれらの結合部位配列は、配列番号632~4,715に列記されている。
【0216】
microRNA配列は、「シード」配列、すなわち、成熟microRNAの位置2~8の領域の配列を含み、その配列は、miRNA標的配列に対して完全なワトソン・クリック相補性を有する。microRNAシードは、成熟microRNAの2~8位または2~7位を含み得る。いくつかの態様では、microRNAシードは、7ヌクレオチド(例えば、成熟microRNAのヌクレオチド2~8)を含むことができ、対応するmiRNA標的のシード相補部位は、microRNA位置1とは反対のアデニン(A)に隣接している。いくつかの態様では、microRNAシードは、6ヌクレオチド(例えば、成熟microRNAのヌクレオチド2~7)を含むことができ、対応するmiRNA標的のシード相補部位は、microRNA位置1とは反対のアデニン(A)に隣接している。例えば、Grimson A,Farh KK,Johnston WK,Garrett-Engele P,Lim LP,Bartel DP;Mol Cell.2007 Jul 6;27(1):91-105を参照されたい。microRNAシードの塩基は、標的配列との完全な相補性を有する。
【0217】
microRNA、microRNA標的領域、およびそれらの発現パターンと生物学における役割の同定が報告されている(Bonauer et al.,Curr Drug Targets 2010 11:943-949、Anand and Cheresh Curr Opin Hematol 2011 18:171-176、Contreras and Rao Leukemia 2012 26:404-413(2011 Dec 20.doi:10.1038/leu.2011.356)、Bartel Cell 2009 136:215-233、Landgraf et al,Cell,2007 129:1401-1414、Gentner and Naldini,Tissue Antigens.2012 80:393-403)。
【0218】
例えば、組成物が肝臓に送達されることを意図していないが、最終的に肝臓に存在する場合、肝臓で豊富なmicroRNAであるmiR-122は、miR-122の1つ以上の標的部位がその標的配列をコードするポリヌクレオチドに組み込まれる場合、送達された配列の発現を阻害し得る。異なるmicroRNAの1つ以上の結合部位の導入を操作して、寿命、安定性、およびタンパク質の翻訳をさらに減少させることができ、したがって攻撃に耐えられる追加の層を提供する。
【0219】
本明細書で使用される場合、「microRNA部位」という用語は、microRNA標的部位もしくはmicroRNA認識部位、またはmicroRNAが結合もしくは会合する任意のヌクレオチド配列を指す。「結合」は、従来のワトソン・クリックハイブリダイゼーション規則に従い得るか、またはmicroRNA部位における、もしくはそれに隣接した標的配列との、microRNAとの安定した会合を反映し得ることを理解されたい。
【0220】
逆に、本開示の組成物の目的のために、microRNA結合部位は、特定の組織でのタンパク質発現を増加させるために、それらが天然に発生する配列から操作(すなわち、除去)することができる。例えば、miR-122結合部位を除去して、肝臓でのタンパク質発現を改善することができる。
【0221】
具体的には、microRNAは、抗原提示細胞(APC)(例えば、樹状細胞およびマクロファージ)、マクロファージ、単球、Bリンパ球、Tリンパ球、顆粒球、ナチュラルキラー細胞などの免疫細胞(造血細胞とも呼ばれる)で差次的に発現することが知られている。免疫細胞特異的microRNAは、免疫原性、自己免疫、感染に対する免疫反応、炎症、ならびに遺伝子療法および組織/臓器移植後の望ましくない免疫反応に関与している。免疫細胞特異的microRNAは、造血細胞(免疫細胞)の発達、増殖、分化、およびアポトーシスの多くの側面も調節する。例えば、miR-142およびmiR-146は、もっぱら免疫細胞において発現し、特に骨髄樹状細胞で豊富である。本開示のポリペプチドの3′-UTRにmiR-142結合部位を導入すると、miR-142媒介mRNA分解により抗原提示細胞の遺伝子発現を選択的に抑制することができ、プロフェッショナルAPC(例えば、樹状細胞)における抗原提示を制限し、それにより遺伝子送達後の抗原媒介免疫応答を防ぐ(Annoni A et al.,blood,2009,114,5152-5161を参照)。
【0222】
一実施形態では、免疫細胞、特に抗原提示細胞で発現することが知られているmicroRNA結合部位を、ポリヌクレオチドに組み込んで、microRNA媒介RNA分解によりAPCにおけるポリヌクレオチドの発現を抑制し、抗原媒介免疫応答を緩和するが、ポリヌクレオチドの発現は、免疫細胞特異的microRNAが発現しない非免疫細胞で維持される。
【0223】
様々な癌細胞/組織および他の疾患におけるmicroRNAの差次的発現をプロファイルするために、多くのmicroRNA発現研究が実施されており、当該技術分野で説明されている。いくつかのmicroRNAは、ある特定の癌細胞で異常に過剰発現され、他の癌細胞は、過少発現される。例えば、microRNAは、癌細胞(WO2008/154098、US2013/0059015、US2013/0042333、WO2011/157294)、癌幹細胞(US2012/0053224)、膵臓癌および疾患(US2009/0131348、US2011/0171646、US2010/0286232、US8389210)、喘息および炎症(US8415096)、前立腺癌(US2013/0053264)、肝細胞癌(WO2012/151212、US2012/0329672、WO2008/054828、US8252538)、肺癌細胞(WO2011/076143、WO2013/033640、WO2009/070653、US2010/0323357)、皮膚T細胞リンパ腫(WO2013/011378)、結腸直腸癌細胞(WO2011/0281756、WO2011/076142)、癌陽性リンパ節(WO2009/100430、US2009/0263803)、鼻咽頭癌(EP2112235)、慢性閉塞性肺疾患(US2012/0264626、US2013/0053263)、甲状腺癌(WO2013/066678)、卵巣癌細胞(US2012/0309645、WO2011/095623)、乳癌細胞(WO2008/154098、WO2007/081740、US2012/0214699)、白血病およびリンパ腫(WO2008/073915、US2009/0092974、US2012/0316081、US2012/0283310、WO2010/018563)において差次的に発現される。
【0224】
microRNA配列ならびに標的組織および/または細胞の非限定的な例は、配列番号632~4,715に記載されている。
【0225】
ゲノム操作戦略
いくつかの態様では、本開示の方法は、対立遺伝子の一方または両方の編集を伴い得る。対立遺伝子(複数可)を修正するための遺伝子編集には、標的遺伝子または遺伝子産物を永続的に改変するという利点がある。
【0226】
本開示のエクスビボ方法のステップは、ゲノム操作を使用して患者から単離された肝細胞を編集することを含み得る。あるいは、本開示のエクスビボ方法のステップは、患者特異的iPSCまたは間葉系幹細胞を編集することを含み得る。同様に、本開示のインビボ方法のステップは、ゲノム操作を使用して異脂肪血症患者の細胞を編集することを含む。同様に、本開示の細胞法のステップは、ゲノム操作によりヒト細胞のANGPTL3遺伝子を編集することを含み得る。
【0227】
脂質異常症患者は、ANGPTL3遺伝子に異なる突然変異を示す場合がある。本開示の方法では、任意のCRISPRエンドヌクレアーゼを使用することができ、各CRISPRエンドヌクレアーゼは、疾患特異的であってもなくてもよい独自の関連PAMを有する。
【0228】
例えば、ANGPTL3遺伝子の発現は、不正確なNHEJ修復経路により生じるランダムな挿入または欠失(インデル)を導入することによって破壊または排除され得る。標的領域は、ANGPTL3遺伝子のコード配列(すなわち、エクソン)であり得る。ヌクレオチドを遺伝子のコード配列に挿入させるか、または欠失させると、通常の3文字のコドンパターンが乱れる「フレームシフト」を引き起こす場合がある。このようにして、遺伝子発現、ひいてはタンパク質産生を低減または排除することができる。このアプローチはまた、配列の改変がANGPTL3遺伝子の発現を妨げる可能性があるANGPTL3遺伝子のイントロン、イントロン:エクソン接合部、または調節DNA要素を標的とするために使用することもできる。
【0229】
別の例として、NHEJを使用して、遺伝子内またはその近くのセグメントを、直接または複数の位置を標的とする1つのgRNAまたは複数のgRNAによる切断によりスプライスドナーまたはアクセプター部位を改変することのいずれかによって欠失させることもできる。これは、小さなランダムインデルが標的遺伝子をノックアウトするのに非効率的である場合に役立ち得る。このタイプの欠失には、ガイド鎖の対が使用されている。
【0230】
ドナーが存在しない場合、DNA末端が接合部でほとんどまたはまったく塩基対合せずに接合される、いくつかの非相同修復経路を使用して、DNA切断からの末端または異なる切断からの末端を接合することができる。標準的なNHEJに加えて、alt-NHEJなどの同様の修復機序がある。2つの切断がある場合、介在するセグメントを欠失または反転させることができる。NHEJ修復経路は、接合部での挿入、欠失、または突然変異をもたらし得る。
【0231】
NHEJはまた、相同性に依存しない標的統合につながり得る。例えば、ドナープラスミド上のヌクレアーゼ標的部位の包含は、ドナーと染色体の両方のインビボでのヌクレアーゼ切断後の染色体二本鎖切断への導入遺伝子の組み込みを促進することができる(Cristea.,Biotechnol Bioeng.2013 Mar;110(3):871-80)。NHEJを使用して、ヌクレアーゼ切断後に15kbの誘導性遺伝子発現カセットをヒト細胞株の定義された遺伝子座に挿入した。(例えば、Maresca,M.,Lin,V.G.,Guo,N.&Yang,Y.,Genome Res 23,539-546(2013)、Cristea et al.Biotechnology and Bioengineering 2013,871-80,10.1002/bit.24733を参照)。組み込まれた配列は、ANGPTL3遺伝子のリーディングフレームを破壊するか、または遺伝子の構造を改変することができる。
【0232】
さらなる代替法として、相同性指向修復(HDR)を使用して、遺伝子をノックアウトするか、または遺伝子機能を改変することもできる。HDRは、本質的に、DSB修復時にテンプレートとして提供された相同DNA配列を使用するエラーのない機序である。HDRの割合は、突然変異と切断部位との間の距離の関数であるため、重複するまたは最も近い標的部位を選択することが重要である。テンプレートには、相同領域に挟まれた余分な配列を含めることができるか、またはゲノム配列とは異なる配列を含めることができるため、配列編集が可能である。
【0233】
例えば、HDRノックアウト戦略には、遺伝子に挿入するか、または遺伝子の一部を非機能的もしくは無関係な配列で置き換えることにより、ANGPTL3遺伝子の構造または機能を破壊することが含まれ得る。これは、細胞性DSB応答をHDRに向けるために外因的に導入されたドナーDNAテンプレートの存在下で、1つの一本鎖切断もしくは二本鎖切断を、1つ以上のCRISPRエンドヌクレアーゼおよびgRNA(例えば、crRNA+tracrRNA、もしくはsgRNA)を有する目的の遺伝子に、または2つ以上の一本鎖切断もしくは二本鎖切断を、1つ以上のCRISPRエンドヌクレアーゼおよび2つ以上のgRNAを有する目的の遺伝子に誘導することによって達成することができる(ドナーDNAテンプレートは、短い一本鎖オリゴヌクレオチド、短い二本鎖オリゴヌクレオチド、長い一本鎖または二本鎖DNA分子であり得る)。このアプローチでは、ANGPTL3遺伝子のgRNAおよびドナーDNA分子の開発と最適化を必要とし得る。
【0234】
相同性指向修復は、DSBを修復するための細胞機序である。最も一般的な形態は、相同的組換えである。一本鎖アニーリングおよび代替HDRを含む、HDRには追加の経路がある。ゲノム操作ツールにより、研究者は、細胞の相同的組換え経路を操作して、ゲノムに対する部位特異的修飾を作成することができる。トランスで提供される合成ドナー分子を使用して、細胞が二本鎖切断を修復できることがわかっている。したがって、特定の突然変異の近くに二本鎖切断を導入し、適切なドナーを提供することにより、ゲノムに標的を絞った変更を加えることができる。特異的切断により、HDRの割合は、相同性ドナーのみを受けた106個の細胞中の1個の割合よりも1,000倍以上増加する。特定のヌクレオチドでの相同性指向修復(HDR)の割合は、切断部位までの距離の関数であるため、重複するまたは最も近い標的部位を選択することが重要である。遺伝子編集は、原位置で編集するとゲノムの残りの部分が影響を受けないままであるため、遺伝子の付加よりも利点がある。
【0235】
HDRによる編集のために提供されるドナーは著しく異なるが、ゲノムDNAへのアニーリングを可能にするために、小さなまたは大きな隣接している相同性アームを有する、意図した配列を含むことができる。導入された遺伝的変化に隣接する相同領域は、30bp以下、またはプロモーター、cDNAなどを含むことができるマルチキロベースカセットと同じ大きさであり得る。一本鎖および二本鎖の両方のオリゴヌクレオチドドナーが使用されている。これらのオリゴヌクレオチドは、サイズが100nt未満から数kbを超えるが、より長いssDNAを生成して使用することもできる。PCRアンプリコン、プラスミド、およびミニサークルなどの二本鎖ドナーを使用することができる。一般に、個々のドナーのパッケージングの制限は5kb未満であるが、AAVベクターは、ドナーテンプレートの送達の非常に効果的な手段であり得ることがわかっている。ドナーの活発な転写によりHDRが3倍増加し、プロモーターを含めると変換が増加し得ることを示す。逆に、ドナーのCpGメチル化は、遺伝子発現とHDRを減少させた。
【0236】
Cas9などの野生型エンドヌクレアーゼに加えて、1つまたは他のヌクレアーゼドメインが不活性化され、1本のDNA鎖のみが切断されるニッカーゼ変異体が存在する。HDRは、個々のCasニッカーゼから、または標的領域に隣接するニッカーゼの対を使用して指向され得る。ドナーは、一本鎖、ニック、またはdsDNAであり得る。
【0237】
ドナーDNAは、ヌクレアーゼとともに、または様々な異なる方法によって、例えば、トランスフェクション、ナノ粒子、マイクロインジェクション、またはウイルス形質導入によって独立して供給され得る。HDRに対するドナーの可用性を高めるために、一連のテザリングオプションが提案されている。例には、ドナーをヌクレアーゼに結合する、近くに結合するDNA結合タンパク質に結合する、またはDNA末端の結合もしくは修復に関与するタンパク質に結合することが含まれる。
【0238】
修復経路の選択は、細胞周期に影響する条件などの多くの培養条件、またはDNA修復と関連タンパク質の標的化によって導かれ得る。例えば、HDRを増加させるために、KU70、KU80、DNAリガーゼIVなどの主要なNHEJ分子を抑制することができる。
【0239】
NHEJまたはHDRによるゲノム編集に加えて、NHEJ経路およびHDRの両方を使用する部位特異的遺伝子挿入が行われた。組合せアプローチは、恐らくはイントロン/エクソン境界を含む、ある特定の設定で適用される場合がある。NHEJは、イントロンでの結紮に効果的であることを証明することができるが、エラーのないHDRは、コード領域においてより適している可能性がある。
【0240】
ANGPTL3遺伝子は、表3に示されるように、多くのエクソンを含んでいる。リーディングフレームを破壊し、最終的にANGPTL3タンパク質活性を排除する1つ以上の挿入または欠失を作成するために、これらのエクソンまたは近くのイントロンのうちのいずれか1つ以上を標的とすることができる。
【0241】
いくつかの実施形態では、この方法は、望ましくない配列に隣接する位置で遺伝子を2回切断することによって欠失を行う、gRNA対を提供することができる。この配列は、1つ以上のエクソン、イントロン、イントロン:エクソン接合部、ANGPTL3遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列、またはそれらの組み合わせを含み得る。切断は、それぞれがゲノムにDSBを作製する一対のDNAエンドヌクレアーゼによって、またはゲノムにDSBを一緒に作製する複数のニッカーゼによって達成することができる。
【0242】
あるいは、この方法は、1つのgRNAを提供して、コーディング配列またはスプライシング配列内で1つの二本鎖切断を行うことができる。二本鎖切断は、単一のDNAエンドヌクレアーゼまたはゲノム内でDSBを一緒に作製する複数のニッカーゼによって作製することができる。
【0243】
スプライシングドナーおよびアクセプターは、一般に、隣接するイントロンから100塩基対以内にある。いくつかの実施例では、方法は、目的の各エクソン/イントロン接合部に関しておよそ+/-100~3100bpを切断するgRNAを提供することができる。
【0244】
ゲノム編集戦略のうちのいずれについても、遺伝子編集は、配列決定またはPCR分析によって確認することができる。
【0245】
標的配列の選択
本明細書でさらに説明および例示されるように、編集のために選択されたエンドヌクレアーゼ系に部分的に依存する、特定の参照遺伝子座に対する5′境界および/または3′境界の位置のシフトを使用して、遺伝子編集の特定の適用を促進または強化することができる。
【0246】
そのような標的配列選択の最初の非限定的な例では、多くのエンドヌクレアーゼ系には、CRISPRタイプIIまたはタイプVエンドヌクレアーゼの場合に、DNA切断部位に隣接した特定の位置でのPAM配列モチーフの要件など、切断の潜在的な標的部位の初期選択を導くことができる規則または基準がある。
【0247】
標的配列の選択または最適化の別の非限定的な例では、標的配列および遺伝子編集エンドヌクレアーゼの特定の組み合わせのオフターゲット活性の頻度(すなわち、選択された標的配列以外の部位で生じるDSBの頻度)を、オンターゲット活性の頻度に対して評価することができる。場合によっては、所望の遺伝子座で正しく編集された細胞は、他の細胞と比較して選択的な利点を有し得る。選択的利点の例示的であるが非限定的な例には、複製率の向上、持続性、ある特定の条件に対する耐性、生着の成功率の向上または患者への導入後のインビボでの持続性などの属性の獲得、およびそのような細胞の数または生存率の維持または増加に関連する他の属性が含まれる。他の場合には、正しく編集された細胞を特定、分類、または他の方法で選択するために使用される1つ以上のスクリーニング方法により、所望の遺伝子座で正しく編集された細胞を適切に選択することができる。選択的利点と有向選択方法の両方が、改変に関連する表現型を利用することができる。場合によっては、意図した細胞集団を選択または精製するために使用される新しい表現型を作成する第2の修飾を作成するために、細胞を2回以上編集することができる。そのような第2の修飾は、選択可能またはスクリーニング可能なマーカーに第2のgRNAを付加することで作成され得る。場合によっては、cDNAおよび選択可能なマーカーを含むDNA断片を使用して、所望される遺伝子座で細胞を正しく編集することができる。
【0248】
特定の場合に任意の選択的利点が適用可能であるか、または任意の有向選択が適用されるかに関係なく、標的配列の選択はまた、適用の有効性を高め、かつ/または所望の標的以外の部位での望ましくない改変の可能性を低減するために、オフターゲット頻度の考慮によって導かれ得る。本明細書および当該技術分野でさらに説明および例示されるように、オフターゲット活性の発生は、標的部位と様々なオフターゲット部位との間の類似性および非類似性、ならびに使用される特定のエンドヌクレアーゼを含む多くの要因によって影響を受ける可能性がある。オフターゲット活性の予測を支援する生物情報学的ツールを利用することができ、また頻繁に、そのようなツールを使用して、オフターゲット活性の最も可能性の高い部位を特定することもでき、次いで、実験設定で評価して、オンターゲット活性に対するオフターゲットの相対頻度を評価することができ、それにより高い相対オンターゲット活性を有する配列の選択を可能にする。そのような技法の例示的な例が本明細書で提供され、他のものは当該技術分野で知られている。
【0249】
標的配列の選択の別の態様は、相同的組換え事象に関する。相同領域を共有する配列は、介在配列の欠失をもたらす相同的組換え事象の焦点として機能し得る。そのような組換え事象は、染色体および他のDNA配列の通常の複製過程で、またDNA配列が合成されている他の時点で、例えば、通常の細胞複製サイクル中に規則的に起こるが、様々な事象の発生(UV光および他のDNA切断の誘導物質など)またはある特定の薬剤の存在(様々な化学的誘導物質など)によって強化され得る、二本鎖切断(DSB)の修復の場合に発生する。そのような誘導物質の多くは、DSBをゲノム内で無差別に発生させ、DSBは、正常細胞で定期的に誘導および修復することができる。修復中、元の配列は、完全に忠実に再構築することができるが、場合によっては、小さな挿入または欠失(「インデル」と呼ばれる)が、DSB部位で導入される。
【0250】
本明細書に記載のエンドヌクレアーゼ系の場合のように、特定の位置でDSBを特異的に誘導することもでき、これを使用して選択された染色体位置で有向または選好的遺伝子修飾事象を引き起こすことができる。相同配列がDNA修復(および複製)の文脈で組換えの対象となる傾向は、多くの状況で利用することができ、CRISPRなどの遺伝子編集系の1つの適用の基礎となっており、相同性指向修復を使用して、「ドナー」ポリヌクレオチドの使用により提供される目的の配列を所望の染色体位置に挿入する。
【0251】
わずか10以下の塩基対を含み得る「マイクロホモロジー」の小さな領域であり得る、特定の配列間の相同領域を使用して、所望の欠失を引き起こすこともできる。例えば、単一のDSBを、近くの配列でマイクロホモロジーを示す部位に導入することができる。そのようなDSBの通常の修復過程において、高頻度で生じる結果は、DSBおよび付随する細胞修復プロセスによって促進される組換えの結果としての介在配列の欠失である。
【0252】
しかしながら、状況によっては、相同領域内で標的配列を選択すると、遺伝子融合(欠失がコード領域にある場合)を含む、はるかに大きな欠失が生じる可能性もあり、特定の状況では望ましい場合とそうでない場合がある。
【0253】
本明細書で提供される例は、ANGPTL3タンパク質活性の低下または排除をもたらす挿入、欠失、または突然変異を誘導するように設計されたDSBの作成のための様々な標的領域の選択、ならびにオンターゲット事象に対してオフターゲット事象を最小化するように設計されている、そのような領域内の特定の標的配列の選択をさらに説明する。
【0254】
ヒト細胞
本明細書において説明および例示されるように、異脂肪血症またはANGPTL3に関連する任意の障害を改善するために、遺伝子編集の主要な標的は、ヒト細胞である。例えば、エクスビボ方法では、ヒト細胞は体細胞であり得、記載された技法を使用して修飾された後、分化細胞、例えば肝細胞または前駆細胞を生じさせることができる。例えば、インビボ方法では、ヒト細胞は、肝細胞、腎細胞、または他の影響を受けた器官からの細胞であり得る。
【0255】
必要な患者に由来する、したがって既に完全に一致している自己細胞で遺伝子編集を行うことにより、患者に安全に再導入され得る細胞を生成し、患者の疾患に関連する1つ以上の臨床状態の改善に効果的となる、細胞集団を効果的に生じさせることが可能である。
【0256】
幹細胞は、増殖とより多くの前駆細胞の発生の両方が可能であり、これらは順に分化したまたは分化可能な娘細胞を発生させることができる多数の母細胞を生成する能力を有する。娘細胞自体は、親の発生能を有する1つ以上の細胞を保持しながら、増殖し、後に1つ以上の成熟細胞型に分化する子孫を産生するように誘導することができる。次いで、「幹細胞」という用語は、特定の状況下でより特殊化または分化した表現型に分化する能力または可能性を有し、ある特定の状況下で実質的に分化することなく増殖する能力を保持する細胞を指す。一態様では、前駆細胞または幹細胞という用語は、胚細胞および組織の進行性の多様化において起こるように、分化によって、例えば、完全に個々の特性を獲得することによって、その子孫(子孫)がしばしば異なる方向に特化する、一般化された母細胞を指す。細胞分化は、通常、多くの細胞分裂を通じて発生する複雑なプロセスである。分化した細胞は、それ自体が多能性細胞などに由来する、多能性細胞に由来し得る。これらの多能性細胞はそれぞれ、幹細胞と見なされる場合があるが、それぞれが生じる可能性のある細胞型の範囲は、かなり異なる場合がある。いくつかの分化した細胞はまた、より大きな発生能の細胞を生じさせる能力も持している。そのような能力は自然であり得るか、または様々な要因による治療で人為的に誘導され得る。多くの生物学的な例では、幹細胞はまた、複数の別個の細胞型の子孫を産生することができるため、「多能性」であり得るが、これは「幹細胞性」には必要ない。
【0257】
自己再生は、幹細胞の別の重要な態様であり得る。理論的には、2つの主要な機序のいずれかによって自己再生が発生し得る。幹細胞は、非対称に分裂する可能性があり、一方の娘は幹の状態を保持し、もう一方の娘はいくつかの別個の他の特定機能と表現型を発現し得る。あるいは、集団内の幹細胞のうちのいくつかは、2つの幹に対称的に分裂できるため、集団内の一部の幹細胞は全体として維持されるが、集団内の他の細胞は分化した子孫のみを生じる。一般的に、「前駆細胞」は、より原始的な(すなわち、完全に分化した細胞よりも発達経路または進行に沿った初期段階にある)細胞表現型を有する。多くの場合、前駆細胞はまた、有意なまたは非常に高い増殖能も持する。前駆細胞は、発生経路および細胞が発生および分化する環境に応じて、複数の別個の分化細胞型または単一の分化細胞型を生じさせることができる。
【0258】
細胞個体発生の文脈では、「分化した」または「分化する」という形容詞は、相対的な用語である。「分化細胞」は、比較対象の細胞よりも発生経路をさらに進んだ細胞である。したがって、幹細胞は、系列制限前駆細胞(筋細胞前駆細胞など)に分化することができ、これは順に、経路をさらに進んだ他の種類の前駆体細胞(筋細胞前駆体など)に、次いで筋細胞などの、ある特定の組織型において特徴的な役割を果たし、さらに増殖する能力を保持していてもしていなくてもよい最終段階の分化細胞に分化し得る。
【0259】
誘導多能性幹細胞
本明細書に記載の遺伝子操作されたヒト細胞は、誘導多能性幹細胞(iPSC)であり得る。iPSCを使用する利点は、細胞が、前駆細胞が投与されるのと同じ対象に由来し得ることである。すなわち、体細胞は、対象から得られ、誘導多能性幹細胞に再プログラムされ、次いで対象に投与される前駆細胞(例えば、自己細胞)に再分化され得る。前駆細胞は本質的に自己起源に由来するため、生着拒絶またはアレルギー反応のリスクは、別の対象または対象群由来の細胞を使用する場合に比べて低減され得る。さらに、iPSCを使用すると、胚源から取得した細胞の必要性がなくなる。したがって、一態様では、開示された方法で使用される幹細胞は、胚性幹細胞ではない。
【0260】
分化は、一般に生理学的な状況では不可逆的であるが、体細胞をiPSCに再プログラムするためのいくつかの方法が最近開発された。例示的な方法は、当業者に知られており、下記で簡単に説明する。
【0261】
「再プログラミング」という用語は、分化細胞(例えば、体細胞)の分化状態を改変または反転させるプロセスを指す。別の言い方をすれば、再プログラミングとは、細胞の分化をより未分化またはより原始的な細胞型に逆行させるプロセスを指す。多くの初代細胞を培養すると、完全に分化した特性のいくらかの喪失につながり得ること留意されたい。したがって、分化細胞という用語に含まれるそのような細胞を単に培養しても、これらの細胞は分化していない細胞(例えば、未分化細胞)または多能性細胞にはならない。分化細胞の多能性への移行には、培養中の分化特性の部分的な喪失につながる刺激を超えた再プログラミング刺激が必要である。再プログラムされた細胞はまた、一般に培養中の限られた数の分裂の能力しか持たない初代細胞の親と比較して、成長能力を喪失することなく長期継代する能力の特徴を有している。
【0262】
再プログラムされる細胞は、再プログラミングの前に部分的または末端的のいずれかに分化させることができる。再プログラミングは、分化細胞(例えば、体細胞)の分化状態の多能性状態または多分化能状態への完全な反転を包含し得る。再プログラミングは、分化細胞(例えば、体細胞)の分化状態から未分化細胞(例えば、胚様細胞)への完全または部分的な反転を包含し得る。再プログラミングは、細胞による特定の遺伝子の発現をもたらす可能性があり、その発現は、再プログラミングにさらに寄与する。本明細書に記載のある特定の例では、分化細胞(例えば、体細胞)の再プログラミングは、分化細胞を未分化状態(例えば、未分化細胞)にみなすことができる。得られた細胞は、「再プログラムされた細胞」または「誘導多能性幹細胞(iPSCまたはiPS細胞)」と呼ばれる。
【0263】
再プログラミングは、細胞分化中に発生する、核酸修飾の少なくとも一部の遺伝的パターン(例えば、メチル化)、クロマチン凝縮、後成的変化、ゲノム刷り込みなどの改変(例えば、反転)に関係し得る。再プログラミングは、既に多能性である細胞の既存の未分化状態を単に維持すること、または既に多分化能細胞である細胞(例えば、筋原性幹細胞)の既存の完全に分化していない状態を維持することとは異なる。本明細書に記載の組成物および方法は、いくつかの実施例ではそのような目的に使用することもできるが、再プログラミングはまた、既に多能性または多分化能である細胞の自己再生または増殖の促進とは異なる。
【0264】
当該技術分野では、体細胞から多能性幹細胞を生成するために使用できる多くの方法が知られている。体細胞を多能性表現型に再プログラムするそのような方法は、本明細書に記載の方法での使用に適しているだろう。
【0265】
転写因子の定義された組み合わせを使用して多能性細胞を生成するための再プログラミング方法論が記載されている。マウスの体細胞は、Oct4、Sox2、Klf4、およびc-Mycの直接形質導入により、発生能が拡大したES細胞様細胞に変換することができる。例えば、Takahashi and Yamanaka,Cell 126(4):663-76(2006)を参照されたい。iPSCは、多能性関連の転写回路と後成的なランドスケープの多くを復元するため、ES細胞に似ている。さらに、マウスiPSCは、多能性のすべての標準アッセイ、具体的には、3つの胚葉の細胞型へのインビトロ分化、奇形腫形成、キメラへの寄与、生殖系列伝達[例えば、Maherali and Hochedlinger,Cell Stem Cell.3(6):595-605(2008)]、および四倍体補完を満たす。
【0266】
ヒトiPSCは、同様の形質導入法を使用して取得することができ、転写因子トリオ、OCT4、SOX2、およびNANOGは、多能性を支配する転写因子のコアセットとして確立されている。例えば、Budniatzky and Gepstein,Stem Cells Transl Med.3(4):448-57(2014)、Barrett et al.,Stem Cells Trans Med 3:1-6 sctm.2014-0121(2014)、Focosi et al.,Blood Cancer Journal 4:e211(2014)、およびそこに引用されている参考文献を参照されたい。iPSCの産生は、歴史的にウイルスベクターを使用して、幹細胞関連遺伝子をコードする核酸配列を成体の体細胞に導入することによって達成することができる。
【0267】
iPSCは、成体幹細胞または体性幹細胞と同様に、最終分化した体細胞から生成または誘導することができる。すなわち、再プログラミングによって、非多能性前駆細胞を多能性または多分化能にすることができる。そのような場合、最終分化細胞を再プログラムするのに必要な数の再プログラミング因子を含める必要はない場合がある。さらに、再プログラミング因子の非ウイルス性導入によって、例えば、タンパク質自体の導入によって、または再プログラミング因子をコードする核酸の導入によって、または翻訳時に再プログラミング因子を産生するメッセンジャーRNAの導入によって、再プログラミングを誘導することができる(例えば、Warren et al.,Cell Stem Cell,7(5):618-30(2010))。再プログラミングは、例えば、Oct-4(Oct-3/4またはPouf51とも呼ばれる)、Sox1、Sox2、Sox3、Sox15、Sox18、NANOG、Klf1、Klf2、Klf4、Klf5、NR5A2、c-Myc、1-Myc、n-Myc、Rem2、Tert、およびLIN28を含む、幹細胞関連遺伝子をコードする核酸の組み合わせを導入することによって達成することができる。本明細書に記載の方法および組成物を使用する再プログラミングは、Oct-3/4、Soxファミリーのメンバー、Klfファミリーのメンバー、およびMycファミリーのメンバーのうちの1つ以上を体細胞に導入することをさらに含み得る。本明細書に記載の方法および組成物は、再プログラミングのためにOct-4、Sox2、Nanog、c-MYC、およびKlf4のそれぞれの1つ以上を導入することをさらに含み得る。上記のように、再プログラミングに使用される正確な方法は、本明細書に記載の方法および構成にとって必ずしも重要ではない。しかしながら、再プログラムされた細胞から分化した細胞が、例えば、ヒトの治療法に使用される場合、一態様では、再プログラミングは、ゲノムを改変する方法によって影響を受けない。したがって、そのような例では、例えば、ウイルスまたはプラスミドベクターを使用せずに、再プログラミングを達成することができる。
【0268】
開始細胞の集団に由来する再プログラミングの効率(つまり、再プログラムされた細胞の数)は、Shi et al.,Cell-Stem Cell 2:525-528(2008)、Huangfu et al.,Nature Biotechnology 26(7):795-797(2008)、およびMarson et al.,Cell-Stem Cell 3:132-135(2008)に示されているように、様々な薬剤、例えば小分子の付加によって強化することができる。したがって、誘導された多能性幹細胞産生の効率または速度を高める薬剤または薬剤の組み合わせは、患者特異的または疾患特異的iPSCの産生に使用することができる。再プログラミング効率を高める薬剤のいくつかの非限定的な例には、中でも可溶性Wnt、Wnt馴化培地、BIX-01294(G9aヒストンメチルトランスフェラーゼ)、PD0325901(MEK阻害剤)、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤、バルプロ酸、5′-アザシチジン、デキサメタゾン、スベロイルアニリド、ヒドロキサム酸(SAHA)、ビタミンC、およびトリコスタチン(TSA)が含まれる。
【0269】
再プログラミング促進剤の他の非限定的な例には、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA(例えば、MK0683、ボリノスタット)および他のヒドロキサム酸)、BML-210、デプデシン(例えば、(-)-デプデシン)、HCトキシン、ヌルスクリプト(4-(1,3-ジオキソ-1H、3H-ベンゾ[de]イソキノリン-2-イル)-N-ヒドロキシブタンアミド)、フェニル酪酸(例えば、フェニル酪酸ナトリウム)およびバルプロ酸((VP A)および他の短鎖脂肪酸)、Scriptaid、スラミンナトリウム、トリコスタチンA(TSA)、APHA化合物8、アピシジン、酪酸ナトリウム、ピバロイルオキシメチルブチレート(Pivanex、AN-9)、トラポキシンB、クラミドシン、デプシペプチド(FR901228またはFK228としても知られる)、ベンズアミド(例えば、CI-994(例えば、N-アセチルジナリン)およびMS-27-275)、MGCD0103、NVP-LAQ-824、CBHA(m-カルボキシケイ皮酸ビスヒドロキサム酸)、JNJ16241199、ツバシン、A-161906、プロキサミド、オキサムフラチン、3-Cl-UCHA(例えば、6-(3-クロロフェニルウレイド)カプロン酸ヒドロキサム酸)、AOE(2-アミノ-8-オキソ-9、10-エポキシデカン酸)、CHAP31およびCHAP50が含まれる。他の再プログラミング促進剤には、例えば、HDACのドミナントネガティブ形態(例えば、触媒的に不活性な形態)、HDACのsiRNA阻害剤、およびHDACに特異的に結合する抗体が含まれる。そのような阻害剤は、例えば、BIOMOL International、Fukasawa Merck Biosciences、Novartis、Gloucester Pharmaceuticals、Titan Pharmaceuticals、MethylGene、およびSigma Aldrichから入手可能である。
【0270】
本明細書に記載の方法で使用するための多能性幹細胞の誘導を確認するために、幹細胞マーカーの発現について単離されたクローンを試験することができる。体細胞に由来する細胞におけるそのような発現は、細胞を誘導多能性幹細胞として識別する。幹細胞マーカーは、SSEA3、SSEA4、CD9、Nanog、Fbxl5、Ecatl、Esgl、Eras、Gdf3、Fgf4、Cripto、Daxl、Zpf296、Slc2a3、Rexl、Utfl、およびNatlを含む非限定的な群から選択することができる。ある場合には、例えば、Oct4またはNanogを発現する細胞が、多能性として識別される。そのようなマーカーの発現を検出するための方法には、例えば、RT-PCRおよびコードされたポリペプチドの存在を検出する免疫学的方法、例えばウエスタンブロットまたはフローサイトメトリー分析が含まれ得る。検出には、RT-PCRだけでなく、タンパク質マーカーの検出も含まれ得る。細胞内マーカーは、RT-PCR、または免疫細胞化学などのタンパク質検出法によって最もよく識別され得るが、細胞表面マーカーは、例えば、免疫細胞化学によって容易に識別される。
【0271】
単離された細胞の多能性幹細胞特性は、iPSCが3つの胚葉のそれぞれの細胞に分化する能力を評価する試験によって確認され得る。一例として、ヌードマウスの奇形腫形成を使用して、単離されたクローンの多能性を評価することができる。細胞をヌードマウスに導入し、細胞から生じる腫瘍に対して組織学および/または免疫組織化学を行うことができる。例えば、3つの胚葉すべてからの細胞を含む腫瘍の成長は、細胞が多能性幹細胞であることをさらに示す。
【0272】
肝細胞
いくつかの態様では、本明細書に記載の遺伝子操作されたヒト細胞は、肝細胞である。肝細胞は、肝臓の主要な実質組織の細胞である。肝細胞は、肝臓の質量の70~85%を占める。これらの細胞は、タンパク質合成、タンパク質貯蔵、炭水化物の変換、コレステロール、胆汁塩、およびリン脂質の合成、外因性および内因性物質の解毒、修飾、および排泄、ならびに胆汁の形成および分泌の開始に関与している。
【0273】
患者特異的iPSCの作成
本開示のエクスビボ方法の1つのステップは、1つの患者特異的iPS細胞、複数の患者特異的iPS細胞、または患者特異的iPS細胞株を作成することを含み得る。Takahashi and Yamanaka 2006、Takahashi,Tanabe et al.2007に記載されているように、患者特異的iPS細胞を作成するための多くの確立された方法が、当該技術分野において存在する。例えば、作成ステップは、a)患者から皮膚細胞または線維芽細胞などの体細胞を単離することと、b)細胞を多能性幹細胞に誘導するために、多能性関連遺伝子のセットを体細胞に導入することと、を含み得る。多能性関連遺伝子のセットは、OCT4、SOX1、SOX2、SOX3、SOX15、SOX18、NANOG、KLF1、KLF2、KLF4、KLF5、c-MYC、n-MYC、REM2、TERT、およびLIN28からなる群から選択される1つ以上の遺伝子であり得る。
【0274】
患者の肝臓または骨髄の生検または穿刺の実施
生検または穿刺液は、身体から採取した組織または体液の試料である。多くの異なる種類の生検または穿刺液が存在する。それらのほとんどすべては、鋭いツールを使用して少量の組織を除去することを伴う。生検が皮膚または他の敏感な領域にある場合、麻痺薬を最初に適用することができる。生検または穿刺は、当該技術分野で既知の方法のうちのいずれかに従って実施され得る。例えば、生検では、腹部の皮膚から肝臓に針を刺し込み、肝組織を捕捉する。例えば、骨髄穿刺では、大きな針を使用して骨盤骨に入り、骨髄を採取する。
【0275】
肝臓特異的前駆細胞または初代肝細胞の単離
肝臓特異的前駆細胞および初代肝細胞は、当該技術分野で既知の任意の方法に従って単離され得る。例えば、ヒト肝細胞は、新鮮な手術標本から単離される。健康な肝組織は、コラゲナーゼ消化により肝細胞を単離するために使用される。得られた細胞懸濁液を、100mmナイロンメッシュで濾過し、50gで5分間遠心分離して沈殿させ、再懸濁し、冷洗浄液で2~3回洗浄する。ヒト肝幹細胞は、新鮮な肝標本から得られた肝細胞の厳しい条件下で培養することにより得られる。コラーゲンでコーティングしたプレートに播種された肝細胞を2週間培養する。2週間後、生き残った細胞を取り除き、幹細胞マーカーの発現を特徴付ける(Herrera et al.,STEM CELLS 2006;24:2840-2850)。
【0276】
間葉系幹細胞の単離
間葉系幹細胞は、患者の骨髄または末梢血などから、当該技術分野で知られている任意の方法に従って単離することができる。例えば、骨髄穿刺液は、ヘパリンを含む注射器に集めることができる。細胞を洗浄し、Percollで遠心分離することができる。細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)を含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(低グルコース)で培養することができる(Pittinger MF,Mackay AM,Beck SC et al.,Science 1999;284:143-147)。
【0277】
遺伝子組換え細胞
「遺伝子組換え細胞」という用語は、ゲノム編集(例えば、CRISPR/Cas9またはCRISPR/Cpf1系を使用)により導入された少なくとも1つの遺伝子組換えを含む細胞を指す。本明細書のいくつかのエクスビボの例では、遺伝子組換え細胞は、遺伝子組換え前駆細胞であり得る。本明細書のいくつかのインビボの例では、遺伝子組換え細胞は、遺伝子組換え肝細胞であり得る。外因性ゲノム標的化核酸および/またはゲノム標的化核酸をコードする外因性核酸を含む遺伝子組換え細胞が、本明細書で企図される。
【0278】
「対照処理された集団」という用語は、ゲノム編集構成要素の付加を除き、同一の培地、ウイルス誘導、核酸配列、温度、培養密度、フラスコサイズ、pHなどで処理された細胞の集団を説明する。当該技術分野で既知の任意の方法を使用して、ANGPTL3遺伝子またはタンパク質の発現または活性の転写を測定するか(例えば、ANGPTL3タンパク質のウエスタンブロット分析)、またはANGPTL3 mRNAを定量化することができる。
【0279】
「単離された細胞」という用語は、最初に発見された生物から除去された細胞、またはそのような細胞の子孫を指す。任意に、細胞は、例えば、定義された条件下または他の細胞の存在下で、インビトロで培養することができる。任意に、細胞は、後で第2の生物に導入されるか、またはそれ(またはそれが由来する細胞)が単離された生物に再導入され得る。
【0280】
単離された細胞集団に関する「単離された集団」という用語は、混合または不均一な細胞集団から除去および分離された細胞集団を指す。場合によっては、単離された集団は、細胞が単離または濃縮された異種集団と比較して、実質的に純粋な細胞集団であり得る。場合によっては、単離された集団は、ヒト前駆細胞およびヒト前駆細胞が由来する細胞を含む細胞の異種集団と比較して、ヒト前駆細胞の単離された集団、例えば、ヒト前駆細胞の実質的に純粋な集団であり得る。
【0281】
特定の細胞集団に関して「実質的に強化された」という用語は、例えば、脂質異常症を改善するためのそのような細胞の所望のレベルに応じて、特定の細胞型の発生が既存または参照レベルに対して少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも400倍、少なくとも1000倍、少なくとも5000倍、少なくとも20000倍、少なくとも100000倍以上増加する細胞集団を指す。
【0282】
特定の細胞集団に関して「実質的に濃縮された」という用語は、総細胞集団を構成する細胞に関して、少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%以上である細胞の集団を指す。
【0283】
特定の細胞集団に関して「実質的に濃縮された」または「実質的に純粋な」という用語は、総細胞集団を構成する細胞に関して、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%純粋である細胞の集団を指す。すなわち、前駆細胞の集団に関して「実質的に純粋」または「本質的に精製された」という用語は、本明細書における用語で定義される前駆細胞ではない細胞の約20%、約15%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、約1%、または1%未満を含有する細胞の集団を指す。
【0284】
ゲノム編集されたiPSCの他の細胞型への分化
本開示のエクスビボ方法の別のステップは、ゲノム編集されたiPSCを肝細胞に分化させることを含み得る。分化ステップは、当該技術分野で知られている任意の方法に従って実行することができる。例えば、hiPSCは、アクチビンおよびB27サプリメント(Life Technology)を含む様々な治療を使用して、胚体内胚葉に分化する。胚体内胚葉は、さらに肝細胞に分化し、治療には、FGF4、HGF、BMP2、BMP4、Oncostatin M,Dexametasonなど(Duan et al,STEM CELLS;2010;28:674-686,Ma et al,STEM CELLS TRANSLATIONAL MEDICINE 2013;2:409-419)が含まれる。
【0285】
ゲノム編集された間葉系幹細胞の肝細胞への分化
本開示のエクスビボ方法の別のステップは、ゲノム編集された間葉系幹細胞を肝細胞に分化させることを含み得る。分化ステップは、当該技術分野で知られている任意の方法に従って実行することができる。例えば、hMSCは、インスリン、トランスフェリン、FGF4、HGF、胆汁酸を含む様々な因子およびホルモンで治療される(Sawitza I et al,Sci Rep.2015;5:13320)。
【0286】
患者への細胞の移植
本開示のエクスビボ方法の別のステップは、肝細胞を患者に移植することを含み得る。この移植ステップは、当該技術分野で知られている任意の移植方法を使用して達成することができる。例えば、遺伝子組換え細胞は、患者の血液に直接注入することができるか、または他の方法で患者に投与されてもよい。
【0287】
本開示のエクスビボ方法の別のステップは、前駆細胞または初代肝細胞を患者に移植することを含む。この移植ステップは、当該技術分野で知られている任意の移植方法を使用して達成することができる。例えば、遺伝子組換え細胞は、患者の肝臓に直接注入することができるか、または他の方法で患者に投与されてもよい。
【0288】
III.製剤および送達
薬学的に許容される担体
本明細書で企図される対象に前駆細胞を投与するエクスビボの方法は、前駆細胞を含む治療用組成物の使用を伴う。
【0289】
治療用組成物は、細胞組成物とともに生理学的に許容される担体、および任意に活性成分として内部に溶解または分散した本明細書に記載の少なくとも1つの追加の生物活性剤を含むことができる。場合によっては、治療用組成物は、望まない限り、治療目的で哺乳動物またはヒトの患者に投与される場合、実質的に免疫原性ではない。
【0290】
一般に、本明細書に記載の前駆細胞は、薬学的に許容される担体を含む懸濁液として投与され得る。当業者は、細胞組成物に使用される薬学的に許容される担体は、対象に送達される細胞の生存率を実質的に干渉する量の緩衝液、化合物、凍結保存剤、防腐剤、または他の薬剤を含まないことを認識するであろう。細胞を含む製剤は、例えば、細胞膜の完全性を維持することを可能にする浸透圧緩衝液、および任意に、投与時に細胞生存率を維持するか、または生着を増強する栄養素を含むことができる。そのような製剤および懸濁液は、当業者に既知であり、かつ/または日常的な実験を使用して、本明細書に記載されるように前駆細胞との使用に適合させることができる。
【0291】
乳化手順が細胞の生存率に悪影響を与えない限り、細胞組成物を乳化またはリポソーム組成物として提示することもできる。細胞および任意の他の活性成分は、薬学的に許容され、活性成分と適合する賦形剤と、本明細書に記載の治療方法での使用に適した量で混合することができる。
【0292】
細胞組成物に含まれる追加の薬剤は、その中に成分の薬学的に許容される塩を含むことができる。薬学的に許容される塩には、例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸で形成される酸付加塩(ポリペプチドの遊離アミノ基で形成される)が含まれる。遊離カルボキシル基で形成される塩は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムまたは水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から誘導することもできる。
【0293】
生理学的に許容される担体は、当該技術分野で周知である。例示的な液体担体は、活性成分および水に加えて材料を含まないか、または生理学的pH値のリン酸ナトリウムなどの緩衝液、生理食塩水、もしくはリン酸緩衝食塩水などの両方を含む滅菌水溶液である。なおさらに、水性担体は、複数の緩衝塩、ならびに塩化ナトリウムおよび塩化カリウム、デキストロース、ポリエチレングリコール、ならびに他の溶質などの塩を含むことができる。液体組成物はまた、水に加えて、および水の排除に加えて、液相を含むことができる。そのような追加の液相の例は、グリセリン、綿実油などの植物油、および水油エマルジョンである。特定の障害または状態の治療に有効な細胞組成物で使用される活性化合物の量は、障害または状態の性質に依存する可能性があり、標準的な臨床技法によって決定され得る。
【0294】
ガイドRNA製剤
本開示のガイドRNAは、特定の投与様式および剤形に応じて、担体、溶媒、安定剤、アジュバント、希釈剤などの薬学的に許容される賦形剤とともに製剤化することができる。ガイドRNA組成物は、製剤および投与経路に応じて、生理学的に適合するpHを達成するように製剤化することができ、約pH3~約pH11、約pH3~約pH7の範囲であり得る。場合によっては、pHを約pH5.0~約pH8の範囲に調整することができる。場合によっては、組成物は、治療有効量の本明細書に記載の少なくとも1つの化合物を、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とともに含むことができる。任意に、組成物は、本明細書に記載の化合物の組み合わせを含むことができるか、または細菌増殖の治療または予防に有用な第2の活性成分を含むことができるか(例えば、限定されないが、抗細菌剤または抗菌剤)、または本開示の試薬の組み合わせを含むことができる。
【0295】
適切な賦形剤には、例えば、タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸共重合体、および不活性ウイルス粒子などの、大きくゆっくりと代謝される高分子を含む担体分子が含まれる。他の例示的な賦形剤には、抗酸化剤(例えば、限定されないが、アスコルビン酸)、キレート剤(例えば、限定されないが、EDTA)、炭水化物(例えば、限定されないが、デキストリン、ヒドロキシアルキルセルロース、およびヒドロキシアルキルメチルセルロース)、ステアリン酸、液体(例えば、限定されないが、油、水、生理食塩水、グリセロール、およびエタノール)、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質などが含まれ得る。
【0296】
送達
ガイドRNAポリヌクレオチド(RNAもしくはDNA)および/またはエンドヌクレアーゼポリヌクレオチド(複数可)(RNAまたはDNA)は、当該技術分野で既知のウイルスまたは非ウイルス送達媒体によって送達され得る。あるいは、エンドヌクレアーゼポリペプチド(複数可)は、電気穿孔または脂質ナノ粒子など、当該技術分野で知られているウイルスまたは非ウイルス送達媒体によって送達することができる。さらなる代替態様では、DNAエンドヌクレアーゼは、1つ以上のポリペプチドとして、単独で、または1つ以上のガイドRNAと、または1つ以上のcrRNAとtracrRNAとを事前に複合してのいずれかで送達され得る。
【0297】
ポリヌクレオチドは、ナノ粒子、リポソーム、リボ核タンパク質、正荷電ペプチド、低分子RNA共役体、アプタマーRNAキメラ、RNA融合タンパク質複合体を含むが、これらに限定されない非ウイルス送達媒体によって送達され得る。いくつかの例示的な非ウイルス性送達ビヒクルは、Peer and Lieberman,Gene Therapy,18:1127-1133(2011)(他のポリヌクレオチドの送達にも有用なsiRNAの非ウイルス性送達ビヒクルに焦点を当てている)に記載されている。
【0298】
本開示のポリヌクレオチドについて、製剤は、例えば、国際特許出願第PCT/US2012/069610号に教示されているもののうちのいずれかから選択することができる。
【0299】
ガイドRNA、sgRNA、およびエンドヌクレアーゼをコードするmRNAなどのポリヌクレオチドは、脂質ナノ粒子(LNP)によって細胞または患者に送達され得る。
【0300】
LNPは、1000nm、500nm、250nm、200nm、150nm、100nm、75nm、50nm、または25nm未満の直径を有する任意の粒子を指す。あるいは、ナノ粒子は、サイズが1~1000nm、1~500nm、1~250nm、25~200nm、25~100nm、35~75nm、または25~60nmの範囲であってもよい。
【0301】
LNPは、カチオン性、アニオン性、または中性脂質から作製され得る。融合性リン脂質DOPEまたは膜成分コレステロールなどの中性脂質は、トランスフェクション活性とナノ粒子の安定性を高めるための「ヘルパー脂質」としてLNPに含まれる場合がある。カチオン性脂質の限界には、安定性が低く、クリアランスが速いことによる有効性の低下、ならびに炎症反応または抗炎症反応の生成が含まれる。
【0302】
LNPはまた、疎水性脂質、親水性脂質、または疎水性脂質と親水性脂質の両方で構成されてもよい。
【0303】
当該技術分野で知られている任意の脂質または脂質の組み合わせを使用して、LNPを産生することができる。LNPを産生するために使用される脂質の例は、DOTMA、DOSPA、DOTAP、DMRIE、DC-コレステロール、DOTAP-コレステロール、GAP-DMORIE-DPyPE、およびGL67A-DOPE-DMPE-ポリエチレングリコール(PEG)である。カチオン性脂質の例は、98N12-5、C12-200、DLin-KC2-DMA(KC2)、DLin-MC3-DMA(MC3)、XTC、MD1、および7C1である。中性脂質の例は、DPSC、DPPC、POPC、DOPE、およびSMである。PEG修飾脂質の例は、PEG-DMG、PEG-CerC14、およびPEG-CerC20である。
【0304】
脂質を任意のモル比で組み合わせて、LNPを産生することができる。さらに、ポリヌクレオチド(複数可)を脂質(複数可)と広範囲のモル比で組み合わせてLNPを産生することができる。
【0305】
前述のように、部位特異的ポリペプチドおよびゲノム標的化核酸はそれぞれ、細胞または患者に別々に投与することができる。一方で、部位特異的ポリペプチドは、1つ以上のガイドRNA、またはtracrRNAと一緒に1つ以上のcrRNAと事前に複合することができる。次いで、事前に複合された材料を、細胞または患者に投与することができる。このような事前に複合された材料は、リボ核タンパク質粒子(RNP)として知られている。
【0306】
RNAは、RNAまたはDNAと特定の相互作用を形成することができる。この特性は、多くの生物学的プロセスで活用されているが、核酸が豊富な細胞環境での無差別な相互作用のリスクも伴う。この問題に対する1つの解決策は、リボ核タンパク質粒子(RNP)の形成であり、この場合、RNAは、エンドヌクレアーゼと事前に複合される。RNPの別の利点は、RNAの分解からの保護である。
【0307】
RNPのエンドヌクレアーゼは、修飾または未修飾であり得る。同様に、gRNA、crRNA、tracrRNA、またはsgRNAは、修飾または未修飾であり得る。当該技術分野では、多くの修飾が知られており、使用することができる。
【0308】
エンドヌクレアーゼおよびsgRNAは、一般に1:1のモル比で組み合わせることができる。あるいは、エンドヌクレアーゼ、crRNAおよびtracrRNAは、一般に1:1:1のモル比で組み合わせることができる。しかしながら、広範囲のモル比を使用して、RNPを産生することができる。
【0309】
AAV(アデノ関連ウイルス)
組換えアデノ関連ウイルス(AAV)ベクターを送達に使用することができる。送達されるポリヌクレオチドを含む、パッケージ化されるAAVゲノム、repおよびcap遺伝子、ならびにヘルパーウイルス機能が細胞に提供される、rAAV粒子を産生する技法は、当該技術分野において標準的である。rAAVの産生は、以下の成分、rAAVゲノム、rAAVゲノムから分離した(すなわち、その中に存在しない)AAV repおよびcap遺伝子、ならびにヘルパーウイルス機能が、単一細胞(本明細書でパッケージング細胞と表される)内に存在することを必要とする。AAV repおよびcap遺伝子は、組換えウイルスが由来し得る任意のAAV血清型に由来してもよく、またrAAVゲノムITRとは異なるAAV血清型に由来してもよく、本明細書に記載のAAV血清型を含むが、それらに限定されない。偽型rAAVの産生は、例えば、国際特許出願公開第WO01/83692号に開示されている。
【0310】
AAV血清型
本開示の組成物をコードするポリヌクレオチド、例えば、本開示のエンドヌクレアーゼ、ドナー配列、またはRNAガイド分子をパッケージングするAAV粒子は、任意の天然または組換えAAV血清型を含むか、またはそれに由来し得る。本開示によれば、AAV粒子は、以下の血清型のうちのいずれかから選択される血清型、およびその異形を利用するか、またはそれに基づいてもよく、AAV1、AAV10、AAV106.1/Hu.37、AAV11、AAV114.3/Hu.40、AAV12、AAV127.2/Hu.41、AAV127.5/Hu.42、AAV128.1/Hu.43、AAV128.3/Hu.44、AAV130.4/Hu.48、AAV145.1/Hu.53、AAV145.5/Hu.54、AAV145.6/Hu.55、AAV16.12/Hu.11、AAV16.3、AAV16.8/Hu.10、AAV161.10/Hu.60、AAV161.6/Hu.61、AAV1-7/RH.48、AAV1-8/RH.49、AAV2、AAV2.5T、AAV2-15/RH.62、AAV223.1、AAV223.2、AAV223.4、AAV223.5、AAV223.6、AAV223.7、AAV2-3/RH.61、AAV24.1、AAV2-4/RH.50、AAV2-5/RH.51、AAV27.3、AAV29.3/bb.1、AAV29.5/bb.2、AAV2G9、AAV-2-pRE-miRNA-101、AAV3、AAV3.1/Hu.6、AAV3.1/Hu.9、AAV3-11/RH.53、AAV3-3、AAV33.12/Hu.17、AAV33.4/Hu.15、AAV33.8/Hu.16、AAV3-9/RH.52、AAV3A、AAV3b、AAV4、AAV4-19/RH.55、AAV42.12、AAV42-10、AAV42-11、AAV42-12、AAV42-13、AAV42-15、AAV42-1b、AAV42-2、AAV42-3A、AAV42-3b、AAV42-4、AAV42-5A、AAV42-5b、AAV42-6b、AAV42-8、AAV42-AA、AAV43-1、AAV43-12、AAV43-20、AAV43-21、AAV43-23、AAV43-25、AAV43-5、AAV4-4、AAV44.1、AAV44.2、AAV44.5、AAV46.2/Hu.28、AAV46.6/Hu.29、AAV4-8/R11.64、AAV4-8/RH.64、AAV4-9/RH.54、AAV5、AAV52.1/Hu.20、AAV52/Hu.19、AAV5-22/RH.58、AAV5-3/RH.57、AAV54.1/Hu.21、AAV54.2/Hu.22、AAV54.4R/Hu.27、AAV54.5/Hu.23、AAV54.7/Hu.24、AAV58.2/Hu.25、AAV6、AAV6.1、AAV6.1.2、AAV6.2、AAV7、AAV7.2、AAV7.3/Hu.7、AAV8、AAV-8b、AAV-8H、AAV9、AAV9.11、AAV9.13、AAV9.16、AAV9.24、AAV9.45、AAV9.47、AAV9.61、AAV9.68、AAV9.84、AAV9.9、AAVA3.3、AAVA3.4、AAVA3.5、AAVA3.7、AAV-b、AAVC1、AAVC2、AAVC5、AAVCH.5、AAVCH.5R1、AAVCy.2、AAVCy.3、AAVCy.4、AAVCy.5、AAVCy.5R1、AAVCy.5R2、AAVCy.5R3、AAVCy.5R4、AAVCy.6、AAV-DJ、AAV-DJ8、AAVF3、AAVF5、AAV-H、AAVH-1/Hu.1、AAVH2、AAVH-5/Hu.3、AAVH6、AAVHE1.1、AAVHER1.14、AAVHER1.16、AAVHER1.18、AAVHER1.23、AAVHER1.35、AAVHER1.36、AAVHER1.5、AAVHER1.7、AAVHER1.8、AAVHER2.16、AAVHER2.29、AAVHER2.30、AAVHER2.31、AAVHER2.36、AAVHER2.4、AAVHER3.1、AAVHu.1、AAVHu.10、AAVHu.11、AAVHu.11、AAVHu.12、AAVHu.13、AAVHu.14/9、AAVHu.15、AAVHu.16、AAVHu.17、AAVHu.18、AAVHu.19、AAVHu.2、AAVHu.20、AAVHu.21、AAVHu.22、AAVHu.23.2、AAVHu.24、AAVHu.25、AAVHu.27、AAVHu.28、AAVHu.29、AAVHu.29R、AAVHu.3、AAVHu.31、AAVHu.32、AAVHu.34、AAVHu.35、AAVHu.37、AAVHu.39、AAVHu.4、AAVHu.40、AAVHu.41、AAVHu.42、AAVHu.43、AAVHu.44、AAVHu.44R1、AAVHu.44R2、AAVHu.44R3、AAVHu.45、AAVHu.46、AAVHu.47、AAVHu.48、AAVHu.48R1、AAVHu.48R2、AAVHu.48R3、AAVHu.49、AAVHu.5、AAVHu.51、AAVHu.52、AAVHu.53、AAVHu.54、AAVHu.55、AAVHu.56、AAVHu.57、AAVHu.58、AAVHu.6、AAVHu.60、AAVHu.61、AAVHu.63、AAVHu.64、AAVHu.66、AAVHu.67、AAVHu.7、AAVHu.8、AAVHu.9、AAVHu.t 19、AAVLG-10/RH.40、AAVLG-4/RH.38、AAVLG-9/Hu.39、AAVLG-9/Hu.39、AAV-LK01、AAV-LK02、AAVLK03、AAV-LK03、AAV-LK04、AAV-LK05、AAV-LK06、AAV-LK07、AAV-LK08、AAV-LK09、AAV-LK10、AAV-LK11、AAV-LK12、AAV-LK13、AAV-LK14、AAV-LK15、AAV-LK17、AAV-LK18、AAV-LK19、AAVN721-8/RH.43、AAV-PAEC、AAV-PAEC11、AAV-PAEC12、AAV-PAEC2、AAV-PAEC4、AAV-PAEC6、AAV-PAEC7、AAV-PAEC8、AAVpi.1、AAVpi.2、AAVpi.3、AAVRH.10、AAVRH.12、AAVRH.13、AAVRH.13R、AAVRH.14、AAVRH.17、AAVRH.18、AAVRH.19、AAVRH.2、AAVRH.20、AAVRH.21、AAVRH.22、AAVRH.23、AAVRH.24、AAVRH.25、AAVRH.2R、AAVRH.31、AAVRH.32、AAVRH.33、AAVRH.34、AAVRH.35、AAVRH.36、AAVRH.37、AAVRH.37R2、AAVRH.38、AAVRH.39、AAVRH.40、AAVRH.43、AAVRH.44、AAVRH.45、AAVRH.46、AAVRH.47、AAVRH.48、AAVRH.48、AAVRH.48.1、AAVRH.48.1.2、AAVRH.48.2、AAVRH.49、AAVRH.50、AAVRH.51、AAVRH.52、AAVRH.53、AAVRH.54、AAVRH.55、AAVRH.56、AAVRH.57、AAVRH.58、AAVRH.59、AAVRH.60、AAVRH.61、AAVRH.62、AAVRH.64、AAVRH.64R1、AAVRH.64R2、AAVRH.65、AAVRH.67、AAVRH.68、AAVRH.69、AAVRH.70、AAVRH.72、AAVRH.73、AAVRH.74、AAVRH.8、AAVRH.8R、AAVRH8R、AAVRH8R A586R変異体、AAVRH8R R533A変異体、BAAV、BNP61 AAV、BNP62 AAV、BNP63 AAV、ウシAAV、ヤギAAV、日本人AAV 10、真型AAV(ttAAV)、UPENN AAV 10、AAV-LK16、AAAV、AAV Shuffle 100-1、AAV Shuffle 100-2、AAV Shuffle 100-3、AAV Shuffle 100-7、AAV Shuffle 10-2、AAV Shuffle 10-6、AAV Shuffle 10-8、AAV SM 100-10、AAV SM 100-3、AAV SM 10-1、AAV SM 10-2、および/またはAAV SM 10-8が含まれるが、これらに限定されない。
【0311】
いくつかの態様では、AAV血清型は、限定されないが、AAV9.9、AAV9.11、AAV9.13、AAV9.16、AAV9.24、AAV9.45、AAV9.47、AAV9.61、AAV9.68、AAV9.84などの、N Pulicherla et al.(Molecular Therapy 19(6):1070-1078(2011))によって記載されるAAV9配列の突然変異であり得るか、またはそれを有し得る。
【0312】
いくつかの態様では、AAV血清型は、限定されないが、AAV3B(US6156303の配列番号1および10)、AAV6(US6156303の配列番号2、7、および11)、AAV2(US6156303の配列番号3および8)、AAV3A(US6156303の配列番号4および9)などの米国特許第6156303号に記載される配列、またはその誘導体であり得るか、またはそれを有し得る。
【0313】
いくつかの態様では、血清型は、Grimm et al.(Journal of Virology 82(12):5887-5911(2008)によって記載されているように、AAVDJまたはAAVDJ8(もしくはAAV-DJ8)などのその異形であってもよい。AAVDJ8のアミノ酸配列は、ヘパリン結合ドメイン(HBD)を除去するために2つ以上の突然変異を含む場合がある。非限定的な例として、米国特許第7,588,772号に配列番号1として記載されているAAV-DJ配列には、2つの突然変異(1)R587Q(アミノ酸587におけるアルギニン(R、Arg)が、グルタミン(Q、Gln)に変更される)および(2)R590T(アミノ酸590におけるアルギニン(R、Arg)が、トレオニン(T、Thr)に変更される)が含まれ得る。別の非限定的な例として、3つの突然変異(1)K406R(アミノ酸406におけるリジン(K、Lys)が、アルギニン(R、Arg)に変更される)、(2)R587Q(アミノ酸587におけるアルギニン(R、Arg)が、グルタミン(Q、Gln)に変更される)、および(3)R590T(アミノ酸590におけるアルギニン(R、Arg)が、トレオニン(T、Thr)に変更される)を含み得る。
【0314】
いくつかの実施形態では、AAV血清型は、限定されないが、真型AAV(ttAAV)(WO2015/121501の配列番号2)、「UPenn AAV10」(WO2015/121501の配列番号8)、「日本人AAV10」(WO2015/121501の配列番号9)などの、国際特許公開第WO2015/121501号に記載されているような配列、またはその異形であり得るか、またはそれを有し得る。
【0315】
本開示によれば、AAVカプシド血清型の選択または使用は、様々な種に由来し得る。一実施例では、AAVは、トリAAV(AAAV)であり得る。AAAV血清型は、限定されないが、AAAV(US9,238,800の配列番号1、2、4、6、8、10、12、および14)などの、米国特許第9238800号に記載されているような配列、またはその異形であり得るか、またはそれを有し得る。
【0316】
一実施例では、AAVは、ウシAAV(BAAV)であり得る。BAAV血清型は、限定されないが、BAAV(US9193769の配列番号1および6)などの、米国特許第9,193,769号に記載されているような配列、またはその異形であり得るか、またはそれを有し得る。BAAV血清型は、限定されないが、BAAV(US7427396の配列番号5および6)などの、米国特許第7427396号に記載されるような配列、またはその異形であり得るか、またはそれを有し得る。
【0317】
一実施例では、AAVは、ヤギAAVであり得る。ヤギAAV血清型は、限定されないが、ヤギAAV(US7427396の配列番号3)などの、米国特許第7427396号に記載されているような配列、またはその異形であり得るか、またはそれを有し得る。
【0318】
他の例では、AAVは、2つ以上の親血清型からのハイブリッドAAVとして操作されてもよい。一実施例では、AAVは、AAV2およびAAV9からの配列を含むAAV2G9であり得る。AAV2G9 AAV血清型は、米国特許公開第US2016/0017005号に記載されているような配列であり得るか、またはそれを有し得る。
【0319】
一実施例では、AAVは、Pulicherla et al.(Molecular Therapy 19(6):1070-1078(2011)に記載されているように、アミノ酸390~627(VP1番号付け)に突然変異を有するAAV9カプシドライブラリーによって生成された血清型であり得る。血清型および対応するヌクレオチドアミノ酸およびアミノ酸置換基は、限定されないが、AAV9.1(G1594C、D532H)、AAV6.2(T1418AおよびT1436X、V473DおよびI479K)、AAV9.3(T1238A、F413Y)、AAV9.4(T1250CおよびA1617T、F417S)、AAV9.5(A1235G、A1314T、A1642G、C1760T;Q412R、T548A、A587V)、AAV9.6(T1231A、F411I)、AAV9.9(G1203A、G1785T;W595C)、AAV9.10(A1500G、T1676C;M559T)、AAV9.11(A1425T、A1702C、A1769T;T568P、Q590L)、AAV9.13(A1369C、A1720T;N457H、T574S)、AAV9.14(T1340A、T1362C、T1560C、G1713A;L447H)、AAV9.16(A1775T;Q592L)、AAV9.24(T1507C、T1521G;W503R)、AAV9.26(A1337G、A1769C;Y446C、Q590P)、AAV9.33(A1667C;D556A)、AAV9.34(A1534G、C1794T;N512D)、AAV9.35(A1289T、T1450A、C1494T、A1515T、C1794A、G1816A;Q430L、Y484N、N98K、V606I)、AAV9.40(A1694T、E565V)、AAV9.41(A1348T、T1362C;T450S)、AAV9.44(A1684C、A1701T、A1737G;N562H、K567N)、AAV9.45(A1492T、C1804T;N498Y、L602F)、AAV9.46(G1441C、T1525C、T1549G;G481R、W509R、L517V)、9.47(G1241A、G1358A、A1669G、C1745T;S414N、G453D、K557E、T582I)、AAV9.48(C1445T、A1736T;P482L、Q579L)、AAV9.50(A1638T、C1683T、T1805A;Q546H、L602H)、AAV9.53(G1301A、A1405C、C1664T、G1811T;R134Q、S469R、A555V、G604V)、AAV9.54(C1531A、T1609A;L511I、L537M)、AAV9.55(T1605A;F535L)、AAV9.58(C1475T、C1579A;T492I、H527N)、AAV.59(T1336C;Y446H)、AAV9.61(A1493T;N498I)、AAV9.64(C1531A、A1617T;L511I)、AAV9.65(C1335T、T1530C、C1568A;A523D)、AAV9.68(C1510A;P504T)、AAV9.80(G1441A;G481R)、AAV9.83(C1402A、A1500T;p468T、E500D)、AAV9.87(T1464C、T1468C;S490P)、AAV9.90(A1196T;Y399F)、AAV9.91(T1316G、A1583T、C1782G、T1806C;L439R、K528I)、AAV9.93(A1273G、A1421G、A1638C、C1712T、G1732A、A1744T、A1832T;S425G、Q474R、Q546H、P571L、G578R、T582S、D611V)、AAV9.94(A1675T;M559L)、およびAAV9.95(T1605A;F535L)であり得る。
【0320】
一実施例では、AAVは、少なくとも1つのAAVカプシドCD8+T細胞エピトープを含む血清型であり得る。非限定的な例として、血清型は、AAV1、AAV2、またはAAV8であり得る。
【0321】
一実施例では、AAVは、Deverman.2016.Nature Biotechnology.34(2):204-209に記載されるようなPHP.AまたはPHP.Bなどの異形であり得る。
【0322】
一実施例では、AAVは、配列番号4,734~5,302および表2に見られるもののうちのいずれかから選択される血清型であり得る。
【0323】
一実施例では、AAVは、配列番号4,734~5,302に記載されるような配列、断片、または異形によってコードされ得る。
【0324】
rAAV産生の一般原理は、例えば、Carter,1992,Current Opinions in Biotechnology,1533-539、およびMuzyczka,1992,Curr.Topics in Microbial.and Immunol.,158:97-129)においてレビューされている。様々なアプローチは、Ratschin et al.,Mol.Cell.Biol.4:2072(1984)、Hermonat et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6466(1984)、Tratschin et al.,Mo1.Cell.Biol.5:3251(1985)、McLaughlin et al.,J.Virol.,62:1963(1988)、およびLebkowski et al.,1988 Mol.Cell.Biol.,7:349(1988)、Samulski et al.(1989,J.Virol.,63:3822-3828)、米国特許第5,173,414号、WO95/13365および対応する米国特許第5,658,776号、WO95/13392、WO96/17947、PCT/US98/18600、WO97/09441(PCT/US96/14423)、WO97/08298(PCT/US96/13872)、WO97/21825(PCT/US96/20777)、WO97/06243(PCT/FR96/01064)、WO99/11764、Perrin et al.(1995)Vaccine 13:1244-1250、Paul et al.(1993)Human Gene Therapy 4:609-615、Clark et al.(1996)Gene Therapy 3:1124-1132、米国特許第5,786,211号、米国特許第5,871,982号、および米国特許第6,258,595号に記載されている。
【0325】
AAVベクターの血清型は、標的細胞型に適合させることができる。例えば、以下の例示的な細胞型は、中でも示されたAAV血清型によって形質導入され得る。
【表2】
【0326】
アデノ関連ウイルスベクターに加えて、他のウイルスベクターを使用することができる。そのようなウイルスベクターには、レンチウイルス、アルファウイルス、エンテロウイルス、ペスチウイルス、バキュロウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタインバーウイルス、パポバウイルス、ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、および単純ヘルペスウイルスが含まれるが、これらに限定されない。
【0327】
いくつかの態様では、Cas9 mRNA、ANGPTL3遺伝子の1つまたは2つの遺伝子座を標的とするsgRNA、およびドナーDNAは、それぞれ別々に脂質ナノ粒子に製剤化され得るか、またはすべて1つの脂質ナノ粒子に共製剤化される。
【0328】
いくつかの態様では、Cas9 mRNAは、脂質ナノ粒子に製剤化することができ、sgRNAおよびドナーDNAは、AAVベクターで送達され得る。
【0329】
Cas9ヌクレアーゼをDNAプラスミドとして、mRNAとして、またはタンパク質として送達するオプションが利用可能である。ガイドRNAは、同じDNAから発現され得るか、またはRNAとして送達することもできる。RNAを化学的に修飾して、その半減期を改変もしくは改善し得るか、または免疫応答の可能性もしくは程度を低減することができる。エンドヌクレアーゼタンパク質は、送達前にgRNAと複合することができる。ウイルスベクターは、効率的な送達を可能にし、Cas9の分割バージョンおよびCas9の小さなオーソログは、HDRのドナーと同様にAAVにパッケージ化され得る。これらの各成分を送達できる一連の非ウイルス性送達方法も存在するか、または非ウイルス性およびウイルス性の方法を組み合わせて用いることもできる。例えば、ナノ粒子を使用してタンパク質とガイドRNAを送達することができる一方で、AAVを使用してドナーDNAを送達することができる。
【0330】
IV.服用量および投与
「投与する」、「導入する」、および「移植する」という用語は、所望の効果(複数可)がもたらされるように、損傷または修復部位などの所望の部位に導入された細胞の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法または経路による、細胞、例えば、前駆細胞の対象への配置の文脈で互換的に使用される。細胞、例えば、前駆細胞、またはそれらの分化した子孫は、移植された細胞または細胞の成分の少なくとも一部が生存している対象の所望の位置への送達をもたらす任意の適切な経路によって投与することができる。対象への投与後の細胞の生存期間は、数時間の短期間、例えば、24時間、数日、数年もの長期間、またはさらには患者の寿命であり得る。例えば、本明細書に記載のいくつかの態様では、有効量の肝前駆細胞は、腹腔内または静脈内経路などの全身投与経路を介して投与される。
【0331】
「個体」、「対象」、「宿主」、および「患者」という用語は、本明細書で互換的に使用され、診断、治療、または治療法が望まれる任意の対象を指す。いくつかの態様では、対象は哺乳動物である。いくつかの態様では、対象はヒトである。
【0332】
予防的に提供される場合、本明細書に記載の前駆細胞は、脂質異常症の任意の症状の前に対象に投与することができる。したがって、前駆細胞集団の予防的投与は、脂質異常症の予防に役立つ。
【0333】
本明細書に記載の方法に従って投与される前駆細胞集団は、1人以上のドナーから得られた同種前駆細胞を含むことができる。そのような前駆細胞は、任意の細胞または組織起源、例えば、肝臓、筋肉、心臓などのものであり得る。「同種」とは、1つ以上の遺伝子座の遺伝子が同一ではない、同じ種の1人以上のドナーから得られた前駆体を含む、前駆細胞または生体試料を指す。例えば、対象に投与される肝前駆細胞集団は、1人以上の無関係のドナー対象、または1人以上の同一でない兄弟姉妹に由来し得る。場合によっては、遺伝的に同一の動物または一卵性双生児から得られたものなど、同系前駆細胞集団を使用することができる。前駆細胞は、自己細胞であり得る。すなわち、前駆細胞は、対象から取得または単離され、同じ対象に投与される。すなわち、ドナーとレシピエントは同じである。
【0334】
「有効量」という用語は、異脂肪血症の少なくとも1つ以上の兆候または症状を予防または緩和するために必要な前駆細胞集団またはその子孫の量を指し、所望の効果を提供する、例えば、異脂肪血症を有する対象を治療するのに十分な量の組成物に関する。したがって、「治療有効量」という用語は、脂質異常症を患っているか、またはリスクのある典型的な対象に投与したときに特定の効果を促進するのに十分な前駆細胞または前駆細胞を含む組成物の量を指す。有効量には、疾患の症状の発症を予防または遅延させ、疾患の症状の経過を変更する(例えば、限定されないが、疾患の症状の進行を遅らせる)のに十分な量も含まれるか、または疾患の症状を反転させる。任意の所与の場合について、適切な「有効量」は、通常の実験を使用して当業者によって決定され得ることが理解される。
【0335】
本明細書に記載の様々な態様で使用するために、有効量の前駆細胞は、少なくとも102前駆細胞、少なくとも5 ×102前駆細胞、少なくとも103前駆細胞、少なくとも5×103前駆細胞、少なくとも104前駆細胞、少なくとも5×104前駆細胞、少なくとも105前駆細胞、少なくとも2×105前駆細胞、少なくとも3×105前駆細胞、少なくとも4×105前駆細胞、少なくとも5×105前駆細胞、少なくとも6×105前駆細胞、少なくとも7×105前駆細胞、少なくとも8×105前駆細胞、少なくとも9×105前駆細胞、少なくとも1×106前駆細胞、少なくとも2×106前駆細胞、少なくとも3×106前駆細胞、少なくとも4×106前駆細胞、少なくとも5×106前駆細胞、少なくとも6×106前駆細胞、少なくとも7×106前駆細胞、少なくとも8×106前駆細胞、少なくとも9×106前駆細胞、またはその倍数を含む。前駆細胞は、1人以上のドナーに由来し得るか、または自己起源から得ることができる。本明細書に記載のいくつかの実施例では、前駆細胞は、それを必要とする対象への投与の前に培養で増殖させることができる。
【0336】
ANGPTL3関連障害を有する患者の細胞で発現されるANGPTL3のレベルのわずかで漸進的な減少は、疾患の1つ以上の症状の改善、長期生存の増加、および/または他の治療に関連する副作用の軽減に有益であり得る。そのような細胞をヒト患者に投与すると、ANGPTL3のレベルを低下させる前駆細胞の存在は有益である。場合によっては、対象の効果的な治療により、治療対象の全ANGPTL3と比較して、ANGPTL3レベルが少なくとも約3%、5%、または7%低下する。いくつかの実施例では、ANGPTL3の低減は、ANGPTL3全体の少なくとも約10%になる。いくつかの実施例では、ANGPTL3の低減は、ANGPTL3全体の少なくとも約20%~30%になる。同様に、ANGPTL3のレベルが大幅に低減した細胞の比較的限られた亜集団の導入は、状況によっては正常化された細胞が罹患細胞と比較して選択的な利点があるため、様々な患者にとって有益であり得る。しかしながら、ANGPTL3のレベルが低減した前駆細胞の適度なレベルでさえ、患者の脂質異常症の1つ以上の態様を改善するために有益であり得る。いくつかの実施例では、肝前駆細胞が投与される患者におけるそのような細胞の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%以上は、ANGPTL3のレベルを低下させている。
【0337】
「投与される」とは、所望の部位での細胞組成物の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法または経路による、対象への前駆細胞組成物の送達を指す。細胞組成物は、対象における効果的な治療をもたらす任意の適切な経路によって投与することができ、すなわち、投与は、対象の所望の位置への送達をもたらし、送達される組成物の少なくとも一部、すなわち少なくとも1×104細胞が、一定期間にわたって所望の位置に送達される。
【0338】
本方法の一態様では、薬学的組成物は、限定されないが、経腸(腸内)、胃腸内、硬膜外(硬膜内)、経口(口経由)、経皮、硬膜周囲、脳内(大脳内)、脳室内(大脳室内)、皮膚上(皮膚への適用)、皮内、(皮膚自体へ)、皮下(皮膚下)、鼻腔内投与(鼻から)、静脈内(静脈中)、静脈内ボーラス、静脈内点滴、動脈内(動脈中)、筋肉内(筋肉中)、心臓内(心臓中)、骨内注入(骨髄中)、髄腔内(脊柱管中)、腹腔内(腹腔中への注入または注射)、膀胱内注入、硝子体内、(眼を通して)、海綿体内注射(病的腔中)、腔内(陰茎の基部中)、膣内投与、子宮内、羊膜外イオティック投与、経皮(全身分布のための無傷の皮膚を介した拡散)、経粘膜(粘膜を介した拡散)、経膣、通気(鼻息)、舌下、唇下、浣腸、点眼薬(結膜上)、点耳、耳介(耳内または耳経由)、頬(頬に向けて)、結膜、皮膚、歯科(1つまたは複数の歯)、電気浸透、子宮頸部内、内腔、気管内、体外、血液透析、浸潤、間質、腹部内、羊膜内、関節内、胆管内、気管支内、嚢内、軟骨内(軟骨内)、尾内(馬尾内)、大槽内(大槽大槽内)、角膜内(角膜内)、歯科角膜内(dental intracornal)、冠動脈内(冠動脈内)、海綿体内(陰茎海綿体の拡張可能な空間内)、椎間板内(椎間板内)、管内(腺の管内)、十二指腸内(十二指腸内)、硬膜内(硬膜内または硬膜下)、表皮内(表皮へ)、食道内(食道へ)、胃内(胃内)、歯肉内(歯肉内)、回腸内(小腸の遠位部内)、病変内(局所病変内または局所病変に直接導入)、管腔内(チューブの内腔内)、リンパ管内(リンパ内)、髄内(骨の髄腔内)、髄膜内(髄膜内)、心筋内(心筋内)、眼内(眼内)、卵巣内(卵巣内)、心膜内(心膜内)、胸膜内(胸膜内)、前立腺内(前立腺内)、肺内(肺またはその気管支内)、鼻腔内(鼻腔または眼窩周囲洞内)、脊髄内(脊柱内)、滑液嚢内(関節の滑膜腔内)、腱内(腱内)、精巣内(睾丸内)、髄腔内(脳脊髄軸の任意のレベルの脳脊髄液内)、胸腔内(胸郭内)、管内(器官の尿細管内)、腫瘍内(腫瘍内)、鼓室内(中耳内)、血管内(1つまたは複数の血管内)、心室内(心室内)、イオン導入(可溶性塩のイオンが体の組織に移動する電流による)、灌注(開放創または体腔を浸すかまたは洗い流すため)、喉頭(喉頭に直接)、経鼻胃(鼻から胃へ)、閉塞性包帯法(局所的経路投与は、その後、領域を閉塞する包帯剤で覆われる)、眼科(外眼へ)、口腔咽頭(口と咽頭に直接)、非経口、経皮、関節周囲、硬膜周囲、神経周囲、歯周、直腸、呼吸器(局所または全身効果のために経口または鼻から吸入することにより気道内)、球後(脳橋の後ろまたは眼球の後ろ)、心筋内(心筋に入る)、軟部組織、クモ膜下、結膜下、粘膜下、局所、経胎盤(胎盤を通過または通過)、気管(気管壁を通過)、経鼓膜(鼓膜全体または鼓膜腔を介して)、尿管(尿管へ)、尿道(尿道へ)、膣、尾ブロック、診断、神経ブロック、胆管灌流、心臓灌流、フォトフェレーシスおよび脊髄などの経路を介して投与され得る。
【0339】
投与方法には、注射、注入、点滴、および/または摂取が含まれる。「注射」には、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下、脳室内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、脳脊髄内、胸骨内注射および注入が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施例では、経路は静脈内である。細胞の送達のために、注射または注入による投与を行うことができる。
【0340】
細胞は、全身投与することができる。「全身投与」、「全身投与される」、「末梢投与」、および「末梢投与される」という語句は、標的部位、組織、または器官への直接以外の前駆細胞集団の投与を指し、代わりにそれが入る、対象の循環系であり、したがって代謝および他の同様のプロセスの影響を受ける。
【0341】
脂質異常症の治療のための組成物を含む治療の有効性は、熟練した臨床医によって決定され得る。しかしながら、ANGPTL3のレベルのうちの1つまたはすべての兆候または症状が有益な方法で変更された(例えば、少なくとも10%減少した)場合、または他の臨床的に認められた症状または疾患のマーカーが改善または改良される場合、治療は「効果的な治療」と見なされる。有効性はまた、入院または医学的介入の必要性(例えば、疾患の進行が停止するか、少なくとも遅くなる)によって評価されるように、個人が悪化しないことによって測定することもできる。これらの指標を測定する方法は、当業者に既知であり、かつ/または本明細書に記載されている。治療には、個体または動物の疾患の任意の治療(いくつかの非限定的な例にはヒトまたは哺乳動物が含まれる)が含まれ、(1)疾患を抑制すること、例えば、症状の進行を停止もしくは遅延させること、または(2)疾患を緩和すること、例えば、症状の退行を引き起こすこと、および(3)症状の発生の可能性を防止または低減することを含む。
【0342】
本開示による治療は、個体におけるANGPTL3の量を減少または変更することにより、脂質異常症に関連する1つ以上の症状を改善することができる。
【0343】
V.アンジオポエチン様3(ANGPTL3)遺伝子の特徴および性質
ANGPTL3は、限定されないが、動脈硬化、アテローム性動脈硬化、心血管疾患、冠状動脈性心疾患、糖尿病、糖尿病、インスリン非依存性糖尿病、脂肪肝、高インスリン症、高脂血症、高トリグリセリド血症、低ベータリポタンパク質血症、炎症、インスリン抵抗性、代謝性疾患、肥満、口の悪性新生物、脂質代謝障害、口唇および口腔癌、脂質異常症、メタボリックシンドロームX、低トリグリセリド血症、オピッツ三角頭蓋症候群、虚血性脳卒中、高トリグリセリド血症、低ベータリポタンパク質血症(家族性2)、家族性低ベータリポタンパク質血症、および虚血性脳血管障害などの疾患および障害に関連している。本明細書に記載の方法のうちのいずれかを使用してANGPTL3遺伝子を編集することは、本明細書に記載の疾患および障害の症状を治療、予防、および/または緩和するために使用することができる。
【0344】
ANGPTL3遺伝子は、ヒトの高密度リポタンパク質(HDL)レベルの決定要因である、アンジオポエチン様3タンパク質をコードする。血漿トリグリセリドおよびHDLコレステロールと正の相関がある。ANGPTL3の活性は、主に肝臓で発現している。ANGPTL3は、脂質異常症に関連している。脂質異常症は、動脈血栓(アテローム性動脈硬化症)の発生に寄与する、血中の脂質レベルの上昇を特徴とする遺伝性疾患である。これらの脂質には、血漿コレステロール、トリグリセリド、または高密度リポタンパク質が含まれる。脂質異常症は、心臓発作、脳卒中、または他の循環の懸念のリスクを高める。現在の管理には、運動や食事の修正などのライフスタイルの変更、およびスタチンなどの脂質低下薬の使用が含まれる。非スタチン脂質低下薬には、胆汁酸封鎖剤、コレステロール吸収阻害剤、ホモ接合型家族性高コレステロール血症薬、フィブラート系薬剤、ニコチン酸、オメガ-3脂肪酸、および/または併用製品が含まれる。治療オプションは通常、特定の脂質異常に依存するが、異なる脂質異常がしばしば共存する。食事の変更を実施するのが難しく、脂質低下療法の効果が証明されていないため、子供の治療はより困難である。
【0345】
ANGPTL3はまた、低ベータリポタンパク質血症を引き起こすことが知られている。低ベータリポタンパク質血症は、世界中で1000人に1人~3000人に1人の割合で発症する遺伝性疾患(常染色体劣性)である。低ベータリポタンパク質血症の一般的な症状には、5パーセンタイル以下のLDLコレステロールまたはアポリポタンパク質Bの血漿濃度が含まれ、身体が脂肪を吸収および輸送する能力を損ない、網膜変性、神経障害、凝固障害、または脂肪肝と呼ばれる肝臓の異常な脂肪蓄積につながり得る。重篤な患者では、脂肪肝は慢性肝疾患(肝硬変)に進行する場合がある。低ベータリポタンパク質血症の現在の治療には、脂肪吸収を改善するために長鎖脂肪酸を1日あたり15グラムに厳しく制限することが含まれる。低ベータリポタンパク質血症の乳児では、中鎖トリグリセリドの短時間の補充が効果的であり得るが、肝臓毒性を避けるために量を厳密に監視しなければならない。低ベータリポタンパク質血症を治療する別の選択肢は、神経学的合併症を防ぐために高用量のビタミンEを投与することである。あるいは、プロトロンビン時間の上昇がビタミンKの枯渇を示唆している場合、ビタミンA(10,000~25,000IU/日)の補充が効果的であり得る。
【0346】
一実施例では、本明細書に記載の組成物および方法の標的組織は、肝組織である。
【0347】
一実施例では、遺伝子は、アンジオポエチン様3(ANGPTL3)であり、アンジオポエチン5、ANGPT5、ANG-5、アンジオポエチン様タンパク質3、アンジオポエチン-5、FHBL2、およびANL3と呼ばれる場合もある。ANGPTL3の細胞遺伝学的位置は、1p31.3であり、ゲノム座標は、位置62,597,487~62,606,159のフォワード鎖の染色体1上にある。ANGPTL3のヌクレオチド配列は、配列番号5303として示されている。USP1は、フォワード鎖上のANGPTL3の上流の遺伝子であり、ATG4Cは、フォワード鎖上のANGPTL3の下流の遺伝子である。DOCK7は、ANGPTL3の反対側の逆鎖に位置する遺伝子である。ANGPTL3のNCBI遺伝子IDは27329、Uniprot IDはQ9Y5C1、Ensembl遺伝子IDはENSG00000132855である。ANGPTL3は、2SNP、9イントロン、および12エクソンを有する。Ensemblからのエクソン識別子、およびイントロンとエクソンの開始/停止部位を表3に示す。
【表3】
【0348】
表4は、Ensemblデータベースに基づいたANGPTL3遺伝子のすべての転写に関する情報を提供する。表4には、Ensemblからの転写IDとその転写に対応するNCBI RefSeq ID、Ensemblからの翻訳ID、タンパク質に対応するNCBI RefSeq ID、Ensemblによって分類された転写配列のバイオタイプ、および表3の情報に基づいた転写のエクソンとイントロンが提供される。
【表4】
【0349】
ANGPTL3には2つのSNPがあり、このANGPTL3遺伝子のUniProt VAR番号は、VAR_049071およびVAR_067283である。
【0350】
一実施例では、本開示で使用されるガイドRNAは、表5に列記される少なくとも1つの20ヌクレオチド(nt)標的核酸配列を含み得る。表5には、遺伝子の遺伝子記号と配列識別子(遺伝子配列番号)、標的遺伝子の上流および/または下流に1~5キロ塩基対を含む遺伝子配列(拡張遺伝子配列番号)、および20ntの標的核酸配列(20ntの標的配列配列番号)が提供される。それぞれの標的遺伝子を列記する配列には、遺伝子を標的とする鎖(配列リストでは(+)鎖または(-)鎖で示される)、関連するPAMタイプおよびPAM配列が20ntの標的核酸配列(配列番号5305~17018)のそれぞれについて記載されている。当該技術分野では、「T」が「U」であるスペーサー配列は、表5に列記された20ntの配列に対応するRNA配列であり得ることが理解される。
【表5】
【0351】
一実施例では、本開示で使用されるガイドRNAは、「T」が「U」である場合、限定されないが、配列番号5305~17018のうちのいずれかなどの、20ヌクレオチド(nt)標的配列に対応するRNA配列であり得る、少なくとも1つのスペーサー配列を含み得る。
【0352】
一実施例では、本開示で使用されるガイドRNAは、「T」が「U」である場合、限定されないが、配列番号5305~17018のうちのいずれかなどの、20nt配列に対応するRNA配列であり得る、少なくとも1つのスペーサー配列を含み得る。
【0353】
一実施例では、ガイドRNAは、限定されないが、NAAAAC、NNAGAAW、NNGRRT、NNNNGHTT、NRG、またはYTNなどの、PAMタイプに関連する20ヌクレオチド(nt)標的核酸配列を含み得る。非限定的な例として、特定の標的遺伝子および特定のPAMタイプの20nt標的核酸配列は、「T」が「U」である場合、表6の20nt核酸配列のうちのいずれか1つに対応するRNA配列であり得る。
【表6】
【0354】
一実施例では、ガイドRNAは、YTN PAMタイプに関連する22ヌクレオチド(nt)標的核酸配列を含み得る。非限定的な例として、特定の標的遺伝子の22nt標的核酸配列は、20ntコア配列を含むことができ、20ntコア配列は、「T」が「U」である場合、配列番号10172~17018に対応するRNA配列であり得る。別の非限定的な例として、特定の標的遺伝子の22nt標的核酸配列は、コア配列を含むことができ、このコア配列は、「T」が「U」である場合、配列番号10172~17018のうちのいずれかに対応するRNA配列の断片、セグメント、または領域であり得る。
【0355】
VI.他の治療的アプローチ
遺伝子編集は、特定の配列を標的とするように操作されたヌクレアーゼを使用して実施することができる。これまでに、4つの主要なタイプのヌクレアーゼがある:メガヌクレアーゼとその誘導体、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、エフェクターヌクレアーゼのような転写活性化因子(TALEN)、およびCRISPR-Cas9ヌクレアーゼシステム。特にZFNおよびTALENの特異性は、タンパク質とDNAの相互作用によるものであり、RNAとDNAの相互作用は主にCas9を導くため、ヌクレアーゼプラットフォームは、設計の難易度、標的密度、および作用モードが異なる。
【0356】
本開示の方法では、Cas9などのCRISPRエンドヌクレアーゼを使用することができる。しかしながら、治療標的部位などの本明細書に記載の教示は、ZFN、TALEN、HE、またはMegaTALなどの他の形態のエンドヌクレアーゼに適用することができるか、またはヌクレアーゼの組み合わせを使用できる。しかしながら、本開示の教示をそのようなエンドヌクレアーゼに適用するために、とりわけ、特定の標的部位に向けられたタンパク質を操作する必要があるだろう。
【0357】
追加の結合ドメインをCas9タンパク質に融合して、特異性を高めることができる。これらの構築物の標的部位は、特定されたgRNA指定部位にマッピングされるが、ジンクフィンガードメインなどの追加の結合モチーフを必要とする。Mega-TALの場合、メガヌクレアーゼをTALE DNA結合ドメインに融合することができる。メガヌクレアーゼドメインは、特異性を高め、切断を提供する。同様に、不活化または死んだCas9(dCas9)は切断ドメインに融合でき、sgRNA/Cas9標的部位および融合DNA結合ドメインの隣接結合部位を必要とする。これには、追加の結合部位なしで結合を減少させるために、触媒の不活性化に加えて、dCas9のタンパク質工学がいくらか必要になるであろう。
【0358】
ジンクフィンガーヌクレアーゼ
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、タイプIIエンドヌクレアーゼFokIの触媒ドメインにリンクされた操作されたジンクフィンガーDNA結合ドメインで構成されるモジュール式タンパク質である。FokIは、二量体としてのみ機能するため、ZFNの一対は、触媒活性FokI二量体の形成を可能にするために、対向するDNA鎖上の同種の標的「ハーフサイト」配列に、正確な間隔で結合するように操作する必要がある。それ自体は配列特異性を持たないFokIドメインの二量体化により、ゲノム編集の開始ステップとして、ZFNハーフサイト間にDNA二本鎖切断が生成される。
【0359】
各ZFNのDNA結合ドメインは、通常、豊富なCys2-His2アーキテクチャの3~6個のジンクフィンガーで構成され、各フィンガーは主に標的DNA配列の1本の鎖のヌクレオチドのトリプレットを認識するが、第4のヌクレオチドとの鎖間相互作用もまた重要である。DNAとの重要な接触を行う位置でのフィンガーのアミノ酸の改変は、特定のフィンガーの配列特異性を改変する。したがって、4本指のジンクフィンガータンパク質は、12bp標的配列を選択的に認識し、標的配列は、各フィンガーが寄与するトリプレット選好の複合体であるが、トリプレット選好は、隣接するフィンガーによって異なる程度で影響され得る。ZFNの重要な側面は、単に個々のフィンガーを修正することによって、それらをほぼすべてのゲノムアドレスに容易に再標的することができるが、これを良好に行うにはかなりの専門知識が必要である。ZFNのほとんどの適用では、4~6フィンガーのタンパク質が使用され、それぞれ12~18bpを認識する。したがって、ZFNの一対は、通常、ハーフサイト間の典型的な5~7bpスペーサーを含まない、24~36bpの結合標的配列を認識するであろう。結合部位は、15~17bpを含むより大きなスペーサーでさらに分離され得る。この長さの標的配列は、設計プロセス中に反復配列または遺伝子ホモログが除外されると仮定すると、ヒトゲノムにおいて固有である可能性がある。それにもかかわらず、ZFNタンパク質-DNA相互作用は、特異性が絶対的ではないため、2つのZFN間のヘテロ二量体として、またはZFNの一方または他方のホモ二量体としてのいずれかで、オフ標的結合および切断イベントが発生する。後者の可能性は、FokIドメインの二量体化接触面を操作して、それら自体ではなく、互いにのみ二量体化し得る、絶対ヘテロ二量体異形とも呼ばれる「プラス」および「マイナス」異形を作成することにより効果的に排除された。絶対ヘテロ二量体を強制すると、ホモ二量体の形成が防止される。これにより、ZFN、ならびにこれらのFokI異形を採用する任意の他のヌクレアーゼの特異性が大幅に向上した。
【0360】
様々なZFNベースのシステムが、当該技術分野で説明されており、その修正が定期的に報告されており、多くの参考文献がZFNの設計を導くために使用される規則およびパラメータを説明している。例えば、Segal et al.,Proc Natl Acad Sci USA 96(6):2758-63(1999)、Dreier B et al.,J Mol Biol.303(4):489-502(2000)、Liu Q et al.,J BiolChem.277(6):3850-6(2002)、Dreier et al.,J Biol Chem 280(42):35588-97(2005)、およびDreier et al.,J BiolChem.276(31):29466-78(2001)を参照されたい。
【0361】
転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)
TALENは、ZFNと同様に、操作されたDNA結合ドメインがFokIヌクレアーゼドメインに結合されているモジュラーヌクレアーゼの別の形式を表し、一対のTALENが連携して、標的DNA切断を実現する。ZFNとの主な違いは、DNA結合ドメインの性質と、関連する標的DNA配列認識特性である。TALEN DNA結合ドメインは、植物細菌病原体Xanthomonas種に本来記載されているTALEタンパク質に由来する。TALEは、33~35アミノ酸反復のタンデムアレイで構成され、各反復は、典型的に最大20bp長であり、標的配列全長が最大40bpである、標的DNA配列中の単一の塩基対を認識する。各反復のヌクレオチド特異性は、反復変数二残基(RVD)によって決定され、これは、位置12および13に2つのアミノ酸のみを含む。塩基のグアニン、アデニン、シトシン、およびチミンは、主に4つのRVD、Asn-Asn、Asn-Ile、His-Asp、およびAsn-Glyによってそれぞれ認識される。これは、ジンクフィンガーよりもはるかに簡単な認識コードを構成し、したがって、ヌクレアーゼ設計に関して後者を超える利点を表す。それにもかかわらず、ZFNと同様に、TALENのタンパク質-DNA相互作用は、それらの特異性において絶対的ではなく、TALENは、オフ標的活性を低減するためにFokIドメインの絶対ヘテロ二量体異形の使用からも恩恵を受けている。
【0362】
触媒機能が無効になっている、FokIドメインの追加の異形が作成されている。TALEN一対またはZFN一対のいずれかの半分に不活性なFokIドメインが含まれている場合、DSBではなく、標的部位で一本鎖DNA切断(ニッキング)のみが発生する。結果は、Cas9切断ドメインのうちの1つが不活性化されたCRISPR/Cas9またはCRISPR/Cpf1「ニッカーゼ」変異体の使用に匹敵する。DNAニックを使用して、HDRによるゲノム編集を駆動することができるが、DSBよりも効率が低くなる。主な利点は、NHEJを介した誤修復の傾向があるDSBとは異なり、オフターゲットのニックが迅速かつ正確に修復されることである。
【0363】
様々なTALENベースのシステムが当該技術分野で説明されており、その修正が定期的に報告されている。例えば、Boch,Science 326(5959):1509-12(2009)、Mak et al.,Science 335(6069):716-9(2012)、およびMoscou et al.,Science 326(5959):1501(2009)を参照されたい。「ゴールデンゲート」プラットフォームまたはクローニングスキームに基づくTALENの使用は、複数のグループによって説明されている。例えば、Cermak et al.,Nucleic Acids Res.39(12):e82(2011)、Li et al.,Nucleic Acids Res.39(14):6315-25(2011)、Weber et al.,PLoS One.6(2):e16765(2011)、Wang et al.,J Genet Genomics 41(6):339-47,Epub 2014 May 17(2014)、およびCermak T et al.,Methods Mol Biol.1239:133-59(2015)を参照されたい。
【0364】
ホーミングエンドヌクレアーゼ
ホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)は、長い認識配列(14~44塩基対)を有し、多くの場合、ゲノムで固有の部位において、高い特異性でDNAを切断する配列特異的エンドヌクレアーゼである。GIY-YIG、His-Cisボックス、H-N-H、PD-(D/E)xK、および広範囲の宿主(真核生物、原生生物、細菌、古細菌、シアノバクテリア、およびファージを含む)に由来するVsr様を含む構造によって分類される、少なくとも6つの既知のHEファミリーがある。ZFNおよびTALENと同様に、HEを使用して、ゲノム編集の最初のステップとして標的遺伝子座にDSBを作成することができる。さらに、一部の天然および操作されたHEは、DNAの一本鎖のみを切断し、それにより部位特異的ニッカーゼとして機能する。HEの大きな標的配列とそれらが提供する特異性により、HEは部位特異的DSBを作成する魅力的な候補になった。
【0365】
様々なHEベースのシステムが当該技術分野で説明されており、その修正が定期的に報告されている。例えば、Steentoft et al.,Glycobiology 24(8):663-80(2014),Belfort and Bonocora,Methods Mol Biol.1123:1-26(2014)、Hafez and Hausner,Genome 55(8):553-69(2012)によるレビュー、およびそこに引用されている参考文献を参照されたい。
【0366】
MegaTAL/Tev-mTALEN/MegaTev
ハイブリッドヌクレアーゼのさらなる例として、MegaTALプラットフォームおよびTev-mTALENプラットフォームは、TALEの調整可能なDNA結合および特異性の両方、ならびにHEの切断配列特異性を利用して、TALE DNA結合ドメインおよび触媒活性HEの融合を使用する。例えば、Boissel et al.,NAR 42:2591-2601(2014)、Kleinstiver et al.,G3 4:1155-65(2014)、およびBoissel and Scharenberg,Methods Mol.Biol.1239:171-96(2015)を参照されたい。
【0367】
さらなる変化において、MegaTevアーキテクチャは、メガヌクレアーゼ(Mega)とGIY-YIGホーミングエンドヌクレアーゼI-TevI(Tev)に由来するヌクレアーゼドメインとの融合である。2つの活性部位は、DNA基板上で約30bp離れて位置付けられ、互換性のない粘着末端を有する2つのDSBを生成する。例えば、Wolfs et al.,NAR 42,8816-29(2014)を参照されたい。既存のヌクレアーゼベースのアプローチの他の組み合わせが進化し、本明細書に記載の標的ゲノム修飾を達成するのに役立つと予想される。
【0368】
dCas9-FokIまたはdCpf1-Fok1および他のヌクレアーゼ
上記のヌクレアーゼプラットフォームの構造的かつ機能的な特性を組み合わせることにより、固有の欠陥のいくつかを潜在的に克服することができるゲノム編集へのさらなるアプローチが提供される。例として、CRISPRゲノム編集システムは、典型的に、単一のCas9エンドヌクレアーゼを使用してDSBを作成する。標的化の特異性は、標的DNAとワトソン・クリック塩基対合を行うガイドRNAの20または24ヌクレオチド配列(さらに、S.pyogenes由来のCas9の場合、隣接したNAGまたはNGG PAM配列における追加の2塩基)によって駆動される。そのような配列は、ヒトゲノムにおいて固有であるのに十分な長さであるが、RNA/DNA相互作用の特異性は絶対的ではなく、特に標的配列の5′半分でかなりの混乱が許容されることがあり、特異性を促進する塩基の数を効果的に低減する。これに対する解決策の1つは、RNA誘導型DNA結合機能のみを保持するCas9またはCpf1触媒機能を完全に不活性化し、代わりにFokIドメインを不活性化したCas9に融合することである。例えば、Tsai et al.,Nature Biotech 32:569-76(2014)、およびGuilinger et al.,Nature Biotech.32:577-82(2014)を参照されたい。FokIは、触媒的に活性化するために二量体化しなければならないため、2つのFokI融合体を近接させて二量体を形成し、DNAを切断するには2つのガイドRNAが必要である。これにより、複合された標的部位の塩基数が本質的に2倍になり、それによりCRISPRベースのシステムによる標的化の厳密性が高まる。
【0369】
さらなる例として、TALE DNA結合ドメインとI-TevIなどの触媒活性HEへの融合は、TALEの調整可能なDNA結合および特異性、ならびにI-TevIの切断配列特異性の両方を利用し、オフターゲット切断がさらに低減され得ると期待される。
【0370】
VII.キット
本開示は、本明細書に記載の方法を実行するためのキットを提供する。キットは、ゲノム標的化核酸、ゲノム標的化核酸をコードするポリヌクレオチド、部位特異的ポリペプチド、部位特異的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および/または本明細書に記載の方法の態様を実行するために必要な任意の核酸もしくはタンパク質分子のうちの1つ以上、あるいはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0371】
キットは、(1)ゲノム標的化核酸をコードするヌクレオチド配列を含むベクター、(2)部位特異的ポリペプチドまたは部位特異的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むベクター、ならびに(3)ベクター(複数可)またはポリペプチドの再構成および/または希釈のための試薬を含むことができる。
【0372】
キットは、(1)(i)ゲノム標的化核酸をコードするヌクレオチド配列、および(ii)部位特異的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むベクター、ならびに(2)ベクターの再構成および/または希釈のための試薬を含むことができる。
【0373】
上記のキットのいずれにおいても、キットは、単一分子ガイドのゲノム標的化核酸を含むことができる。上記のキットのいずれにおいても、キットは、二重分子ゲノム標的化核酸を含むことができる。上記のキットのいずれにおいても、キットは、2つ以上の二重分子ガイドまたは単一分子ガイドを含むことができる。キットは、核酸標的化核酸をコードするベクターを含むことができる。
【0374】
上記のキットのいずれにおいても、キットは、所望の遺伝子修飾をもたらすために挿入されるポリヌクレオチドをさらに含むことができる。
【0375】
キットの構成要素は、別々の容器に入れるか、または単一の容器にまとめることもできる。
【0376】
上記の任意のキットは、1種以上の追加の試薬をさらに含むことができ、そのような追加の試薬は、緩衝液、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを細胞に導入するための緩衝液、洗浄緩衝液、対照試薬、対照ベクター、対照RNAポリヌクレオチド、DNAからのポリペプチドのインビトロ産生のための試薬、配列決定のためのアダプターなどから選択される。緩衝液は、安定化緩衝液、再構成緩衝液、希釈緩衝液などであり得る。キットはまた、エンドヌクレアーゼによるオンターゲット結合もしくはDNAの切断を促進または増強するため、または標的化の特異性を改善するために使用できる1つ以上の成分を含むこともできる。
【0377】
上述の構成要素に加えて、キットは、キットの構成要素を使用して方法を実施するための指示書をさらに含むことができる。この方法を実施するための指示書は、適切な記録媒体に記録され得る。例えば、指示書は、紙またはプラスチック等の基材に印刷することができる。指示書は、添付文書として、キットの容器またはその構成要素のラベル等(すなわち、包装または分包装に関連する)に存在し得る。指示書は、適切なコンピューター読み取り可能な記憶媒体、例えばCD-ROM、ディスケット、フラッシュドライブ等に存在する電子記憶データファイルとして存在し得る。場合によって、実際の指示書はキットに存在しないが、リモートソースから(例えば、インターネット経由で)指示書を取得するための手段を提供することができる。この場合の例は、指示書を見ることができる、および/または指示書をダウンロードすることができるウェブアドレスを含むキットである。指示書と同様に、指示書を入手するためのこの手段は、適切な基材に記録することができる。
【0378】
VIII.特定の方法および組成物
したがって、本開示は、特に、本開示による以下の非限定的な方法に関し、第1の方法、方法1では、本開示は、ゲノム編集による細胞内のアンジオポエチン様3(ANGPTL3)遺伝子の編集方法を提供し、本方法は、1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを細胞に導入して、ANGPTL3遺伝子内またはその近くに少なくとも1つのヌクレオチドの1つ以上の永続的な挿入、欠失、または突然変異をもたらす、1つ以上の1本鎖切断(SSB)または2本鎖切断(DSB)をANGPTL3遺伝子またはANGPTL3調節エレメント内またはその近くに導入し、それによりANGPTL3遺伝子産生物の発現または機能を低減または排除するステップを含む。
【0379】
別の方法、方法2では、本開示は、ANGPTL3関連状態または障害を有する患者を治療するためのエクスビボ方法を提供し、本方法は、患者から肝細胞を単離するステップと、ANGPTL3遺伝子または肝細胞のANGPTL3遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列内またはその近くで編集するステップと、ゲノム編集された肝細胞を患者に移植するステップと、を含む。
【0380】
別の方法、方法3では、本開示は、方法2の方法を提供し、ここで、編集ステップは、肝細胞に1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入して、ANGPTL3遺伝子内またはその近くに少なくとも1つのヌクレオチドの1つ以上の永続的な挿入、欠失、または突然変異をもたらす、1つ以上の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)をANGPTL3遺伝子またはANGPTL3調節エレメント内またはその近くにもたらし、それによりANGPTL3遺伝子産物の発現または機能を低減または排除することを含む。
【0381】
別の方法、方法4では、本開示は、ANGPTL3関連状態または障害を有する患者を治療するためのエクスビボ方法を提供し、本方法は、患者特異的な誘導型多能性幹細胞(iPSC)を作成するステップと、ANGPTL3遺伝子またはiPSCのANGPTL3遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列内またはその近くで編集するステップと、ゲノム編集されたiPSCを肝細胞に分化するステップと、肝細胞を患者に移植するステップと、を含む。
【0382】
別の方法、方法5では、本開示は、方法4の方法を提供し、ここで、編集ステップは、iPSCに1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入して、ANGPTL3遺伝子内またはその近くで少なくとも1つのヌクレオチドの1つ以上の永続的な挿入、欠失、または突然変異をもたらす、1つ以上の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)をANGPTL3遺伝子またはANGPTL3調節エレメント内またはその近くにもたらし、それによりANGPTL3遺伝子産物の発現または機能を低減または排除することを含む。
【0383】
別の方法、方法6では、本開示は、ANGPTL3関連状態または障害を有する患者を治療するためのエクスビボ方法を提供し、本方法は、間葉系幹細胞を患者から単離するステップと、ANGPTL3遺伝子または間葉系幹細胞のANGPTL3遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列内またはその近くで編集するステップと、ゲノム編集された間葉系幹細胞を肝細胞に分化するステップと、肝細胞を患者に移植するステップと、を含む。
【0384】
別の方法、方法7では、本開示は、方法6の方法を提供し、ここで、編集ステップは、間葉系幹細胞に1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入して、ANGPTL3遺伝子内またはその近くに少なくとも1つのヌクレオチドの1つ以上の永続的な挿入、欠失、または突然変異をもたらす、1つ以上の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)をANGPTL3遺伝子またはANGPTL3調節エレメント内またはその近くにもたらし、それによりANGPTL3遺伝子産物の発現または機能を低減または排除することを含む。
【0385】
別の方法、方法8では、本開示は、ANGPTL3関連障害を有する患者を治療するためのインビボ方法を提供し、本方法は、患者の細胞内のANGPTL3遺伝子を編集するステップを含む。
【0386】
別の方法、方法9では、本開示は方法8の方法を提供し、ここで、編集ステップは、細胞に1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入して、ANGPTL3遺伝子内またはその近くに少なくとも1つのヌクレオチドの1つ以上の永続的な挿入、欠失、または突然変異をもたらす、1つ以上の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)をANGPTL3遺伝子またはANGPTL3調節エレメント内またはその近くにもたらし、それによりANGPTL3遺伝子産物の発現または機能を低減または排除することを含む。
【0387】
別の方法、方法10では、本開示は、方法8または9のいずれかの方法を提供し、ここで、細胞は、肝細胞である。
【0388】
別の方法、方法11では、本開示は、方法10の方法を提供し、ここで、1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼは、局所注射、全身注入、またはそれらの組み合わせによって肝細胞に送達される。
【0389】
別の方法、方法12では、本開示は、細胞中のANGPTL3遺伝子の連続ゲノム配列を改変する方法を提供し、本方法は、細胞を1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼと接触させて、1つ以上の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)をもたらすことを含む。
【0390】
別の方法、方法13では、本開示は、方法12の方法を提供し、ここで、連続したゲノム配列の改変は、ANGPTL3遺伝子の1つ以上のエクソンで発生する。
【0391】
別の方法、方法14では、本開示は、方法1~13のうちのいずれか1つの方法を提供し、ここで、1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼは、配列番号1~620に列記されたもののうちのいずれか、および配列番号1~620に列記されたもののうちのいずれかと少なくとも70%の相同性を有する異形から選択される。
【0392】
別の方法、方法15では、本開示は、方法14の方法を提供し、ここで、1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼは、1つ以上のタンパク質またはポリペプチドである。
【0393】
別の方法、方法16では、本開示は、方法14の方法を提供し、ここで、1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼは、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼをコードする1つ以上のポリヌクレオチドである。
【0394】
別の方法、方法17では、本開示は、方法16の方法を提供し、ここで、1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼは、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼをコードする1つ以上のリボ核酸(RNA)である。
【0395】
別の方法、方法18では、本開示は、方法17の方法を提供し、ここで、1つ以上のリボ核酸(RNA)は、1つ以上の化学修飾されたRNAである。
【0396】
別の方法、方法19では、本開示は、方法18の方法を提供し、ここで、1つ以上のリボ核酸(RNA)は、コード領域内で化学修飾される。
【0397】
別の方法、方法20では、本開示は、方法16~19のうちのいずれか1つの方法を提供し、ここで、1つ以上のポリヌクレオチドまたは1つ以上のリボ核酸(RNA)は、コドン最適化されている。
【0398】
別の方法、方法21では、本開示は、方法1~20のうちのいずれか1つの方法を提供し、ここで、この方法は、1つ以上のgRNAまたは1つ以上のsgRNAを細胞に導入することをさらに含む。
【0399】
別の方法、方法22では、本開示は、方法21の方法を提供し、ここで、1つ以上のgRNAまたは1つ以上のsgRNAは、ANGPTL3遺伝子のコード配列のセグメントに相補的なスペーサー配列を含む。
【0400】
別の方法、方法23では、本開示は、方法21の方法を提供し、ここで、1つ以上のgRNAまたは1つ以上のsgRNAは、ANGPTL3遺伝子またはANGPTL3遺伝子の調節エレメントをコードする他の配列に隣接する配列に相補的なスペーサー配列を含む。
【0401】
別の方法、方法24では、本開示は、方法21~23のうちのいずれかの方法を提供し、ここで、1つ以上のgRNAまたは1つ以上のsgRNAは、化学修飾されている。
【0402】
別の方法、方法25では、本開示は、方法21~24のうちのいずれか1つの方法を提供し、ここで、1つ以上のgRNAまたは1つ以上のsgRNAは、1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼと事前に複合されている。
【0403】
別の方法、方法26では、本開示は、方法25の方法を提供し、ここで、事前複合は、1つ以上のgRNAまたは1つ以上のsgRNAの、1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼへの共有結合を伴う。
【0404】
別の方法、方法27では、本開示は、方法14~26のうちのいずれか1つの方法を提供し、ここで、1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼは、リポソームまたは脂質ナノ粒子中に配合される。
【0405】
別の方法、方法28では、本開示は、方法21~27のうちのいずれか1つの方法を提供し、ここで、1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼは、1つ以上のgRNAまたは1つ以上のsgRNAも含むリポソームまたは脂質ナノ粒子中に配合される。
【0406】
別の方法、方法29では、本開示は、方法12または21~23のうちのいずれか1つの方法を提供し、ここで、1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼは、AAVベクター粒子中でコードされ、AAVベクター血清型は、配列番号4,734~5,302および表2に列記されたものから選択される。
【0407】
別の方法、方法30では、本開示は、方法21~23のうちのいずれかの方法を提供し、ここで、1つ以上のgRNAまたは1つ以上のsgRNAは、AAVベクター粒子中でコードされ、AAVベクター血清型は、配列番号4,734~5,302および表2に列記されたものから選択される。
【0408】
別の方法、方法31では、本開示は、方法21~23のうちのいずれかの方法を提供し、ここで、1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼは、1つ以上のgRNAまたは1つ以上のsgRNAもコードするAAVベクター粒子にコードされ、AAVベクター血清型は、配列番号4,734~5,302および表2に列記されたものから選択される。
【0409】
本開示はまた、配列番号5305~17018のうちのいずれかに対応するRNA配列である少なくともスペーサー配列を含む単一分子ガイドRNAを含む組成物、組成物1も提供する。
【0410】
別の組成物、組成物2では、本開示は、組成物1の単一分子ガイドRNAを提供し、ここで、単一分子ガイドRNAは、スペーサー伸長領域をさらに含む。
【0411】
別の組成物、組成物3では、本開示は、組成物1の単一分子ガイドRNAを提供し、ここで、単一分子ガイドRNAは、tracrRNA伸長領域をさらに含む。
【0412】
別の組成物、組成物4では、本開示は、組成物1~3の単一分子ガイドRNAを提供し、ここで、単一分子ガイドRNAは、化学修飾されている。
【0413】
別の組成物、組成物5では、本開示は、組成物1~4の単一分子ガイドRNAを提供し、ここで、単一分子ガイドRNAは、DNAエンドヌクレアーゼと事前に複合されている。
【0414】
別の組成物、組成物6では、本開示は、組成物5の単一分子ガイドRNAを提供し、ここで、DNAエンドヌクレアーゼは、Cas9またはCpf1エンドヌクレアーゼである。
【0415】
別の組成物、組成物7では、本開示は、組成物6の単一分子ガイドRNAを提供し、ここで、Cas9またはCpf1エンドヌクレアーゼは、S.pyogenes Cas9、S.aureus Cas9、N.meningitides Cas9、S.thermophilus CRISPR1 Cas9、S.thermophilus CRISPR3 Cas9、T.denticola Cas9、L.bacterium ND2006 Cpf1、およびAcidaminococcus sp.BV3L6 Cpf1、ならびにこれらの酵素と少なくとも70%の相同性を有する異形から選択される。
【0416】
別の組成物、組成物8では、本開示は、組成物7の単一分子ガイドRNAを提供し、ここで、Cas9またはCpf1酵素は、1つ以上の核局在化シグナル(NLS)を含む。
【0417】
別の組成物、組成物9では、本開示は、組成物8の単一分子ガイドRNAを提供し、ここで、少なくとも1つのNLSは、Cas9またはCpf1エンドヌクレアーゼのアミノ末端の50アミノ酸またはその内部にあり、および/または少なくとも1つのNLSは、Cas9またはCpf1エンドヌクレアーゼのカルボキシ末端の50アミノ酸またはその内部にある。
【0418】
別の組成物、組成物10では、本開示は、組成物9の単一分子ガイドRNAを提供し、ここで、Cas9またはCpf1エンドヌクレアーゼは、真核細胞での発現に最適化されたコドンである。
【0419】
別の組成物、組成物11では、本開示は、組成物1~3の単一分子ガイドRNAをコードするDNA提供する。
【0420】
別の組成物、組成物12では、本開示は、組成物8~10のCRISPR/CasシステムをコードするDNAを提供する。
【0421】
別の組成物、組成物13では、本開示は、組成物11または12のDNAを含むベクターを提供する。
【0422】
別の組成物、組成物14では、本開示は、組成物13のベクターを提供し、ここで、ベクターは、プラスミドである。
【0423】
別の組成物、組成物15では、本開示は、組成物13のベクターを提供し、ここで、ベクターは、AAVベクター粒子であり、AAVベクター血清型は、配列番号4,734~5,302および表2に列記されているものから選択される。
【0424】
IX.定義
「含む(comprising)」または「含む(comprises)」という用語は、本発明に必須であるが、必須であるかどうかにかかわらず、不特定の要素の包含に対して開かれている組成物、方法、およびそのそれぞれの構成要素(複数可)に関して使用される。
【0425】
「から本質的になる」という用語は、特定の態様に必要な要素を指す。この用語は、本発明のその態様の基本的かつ新規または機能的特徴(複数可)に実質的に影響を与えない追加の要素の存在を可能にする。
【0426】
「からなる」という用語は、本明細書に記載の組成物、方法、およびそのそれぞれの構成要素を指し、態様のその説明に列挙されていないいかなる要素をも除外する。
【0427】
単数形「a」、「an」、および「the」には、文脈上特に明記されていない限り、複数形の指示対象が含まれる。
【0428】
本明細書に提示される特定の数値の前には、「約」という用語が付いている。「約」という用語は、列挙された数値の±10%以内の数値を意味する。
【0429】
数値の範囲が本明細書で提示される場合、範囲の下限と上限の間の各介入値、範囲の上限と下限である値、およびその範囲とともに記載されたすべての値は、本開示に包含される。範囲の下限および上限内のすべての可能な下位範囲も、本開示により企図されている。
【0430】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、下記の付随する説明に記載されている。本開示の実施または試験において、本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の材料および方法を使用することができるが、好ましい材料および方法をここで説明する。本発明の他の特徴、目的および利点は、説明から明らかになるであろう。説明において、文脈が明らかにそうでないと指示しない限り、単数形は複数形も含む。別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本説明が優先する。
【0431】
本明細書で列挙される任意の数値範囲は、列挙された範囲内に含まれる同じ数値精度の(すなわち、指定された数字の数が同じである)すべての部分範囲を記述する。例えば、「1.0~10.0」の列挙された範囲は、「2.4~7.6」の範囲は、明細書の本文に明示的に列挙されていないとしても、例えば「2.4~7.6」などの、列挙される最小値1.0と列挙された最大値10.0との間のすべての部分範囲を示す。したがって、出願人は、本明細書で明示的に列挙された範囲内に含まれる同じ数値精度の任意の部分範囲を明示的に列挙するために、特許請求の範囲を含む本明細書を修正する権利を留保する。このような範囲はすべて、本明細書に本質的に記載されており、そのような部分範囲を明示的に列挙する修正は、書面による説明、説明の十分性、および米国特許法第112(a)条および第123条(2)EPCの要件を含む、追加事項要件に準拠する。また、明示的に指定されているか、または別途文脈で必要とされていない限り、本明細書で説明されているすべての数値パラメータ(例えば、値、範囲、量、パーセンテージなどを表すもの)は、「約」という言葉が数値の前に明示的に現れていない場合でも、「約」という言葉が前置されているかのように読むことができる。さらに、本明細書で説明されている数値パラメータは、報告された有効桁数、数値精度に照らして、および通常の四捨五入手法を適用することによって解釈する必要がある。また、本明細書に記載の数値パラメータは、パラメータの数値を決定するために使用される基礎となる測定技法の固有の変動特性を必然的に保有することも理解される。
【0432】
本開示の1つ以上の態様の詳細は、下記の付随する説明に記載されている。本開示の実施または試験において、本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の材料および方法を使用することができるが、好ましい材料および方法をここで説明する。本開示の他の特徴、目的、および利点は、説明から明らかとなるであろう。説明において、文脈が明らかにそうでないと指示しない限り、単数形は複数形も含む。別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本説明が優先する。
【0433】
本発明は、以下の非限定的な実施例によりさらに説明される。
【0434】
X.実施例
本発明は、本開示の例示的で非限定的な態様を提供する以下の実施例を参照することにより、より完全に理解されるであろう。
【0435】
実施例は、ANGPLT3遺伝子の永続的な欠失または突然変異をもたらすANGPTL3遺伝子において、ANGPTL3タンパク質の活性を低減または排除する、本明細書で「ゲノム修飾」と呼ばれる定義された治療的ゲノム欠失、挿入、または置換を作成するための例示的なゲノム編集技法としてのCRISPRシステムの使用について説明する。定義された治療的修正の導入は、本明細書で説明および例示されるように、脂質異常症の潜在的な改善のための新規な治療戦略を表す。
【0436】
実施例1-ANGPTL3遺伝子のCRISPR/SpCas9標的部位
ANGPTL3遺伝子の領域は、標的部位について走査される。配列NRGを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)について、各領域を走査する。次いで、配列表の配列番号6,634~10,171に示されるように、PAMに対応するgRNA 20bpスペーサー配列が同定される。
【0437】
実施例2-ANGPTL3遺伝子のCRISPR/SaCas9標的部位
ANGPTL3遺伝子の領域は、標的部位について走査される。配列NNGRRTを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)について、各領域を走査する。次いで、配列表の配列番号5,596~6,079~10,171に示されるように、PAMに対応するgRNA 20bpスペーサー配列を同定する。
【0438】
実施例3-ANGPTL3遺伝子のCRISPR/StCas9標的部位
ANGPTL3遺伝子の領域は、標的部位について走査される。配列NNAGAAWを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)について、各領域を走査する。次いで、配列表の配列番号5,399~5,595に示されるように、PAMに対応するgRNA 20bpスペーサー配列を同定する。
【0439】
実施例4-ANGPTL3遺伝子のCRISPR/TdCas9標的部位
ANGPTL3遺伝子の領域は、標的部位について走査される。配列NAAAACを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)について、各領域を走査する。次いで、配列表の配列番号5,305~5,398に示されるように、PAMに対応するgRNA 20bpスペーサー配列を同定する。
【0440】
実施例5-ANGPTL3遺伝子のCRISPR/NmCas9標的部位
ANGPTL3遺伝子の領域は、標的部位について走査される。配列NNNNGATTを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)について、各領域を走査する。次いで、配列表の配列番号6,080~6,633に示されるように、PAMに対応するgRNA 20bpスペーサー配列を同定する。
【0441】
実施例6-ANGPTL3遺伝子のCRISPR/Cpf1標的部位
ANGPTL3遺伝子の領域は、標的部位について走査される。配列TTNまたはYTNを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)について、各領域を走査する。次いで、配列表の配列番号10,172~17,018に示されるように、PAMに対応するgRNA 22bpスペーサー配列を同定する。
【0442】
実施例7-ガイド鎖のバイオインフォマティクス分析
次いで、候補ガイドは、オンターゲット部位およびオフターゲット部位の両方で理論的な結合と実験的に評価された活動の両方を含む単一プロセスまたはマルチステッププロセスでスクリーニングおよび選択された。例として、意図されるもの以外の染色体位置の効果の可能性を評価するために、特定のオンターゲット部位、例えばANGPTL3遺伝子内の部位を、隣接するPAMと一致させる配列を有する候補ガイドを、下記でより詳細に説明および例示されるように、オフターゲット結合を評価するために利用可能な様々なバイオインフォマティクスツールのうちの1つ以上を使用して、同様の配列を有するオフターゲット部位を切断する能力について評価した。
【0443】
次に、オフターゲット活性の可能性が比較的低いと予測される候補を、実験的に評価して、様々な部位でのオンターゲット活性、次いでオフターゲット活性を測定した。好ましいガイドは、選択された遺伝子座での望ましいレベルの遺伝子編集を達成するのに十分高いオンターゲット活性と、他の染色体遺伝子座での改変の可能性を低減する比較的低いオフターゲット活性と、を有する。オンターゲット活性とオフターゲット活性との比率は、多くの場合、ガイドの「特異性」と呼ばれる。
【0444】
予測されるオフターゲット活性の初期スクリーニングには、最も可能性の高いオフターゲット部位を予測するために使用できる既知の公開されたバイオインフォマティクスツールがいくつかあり、CRISPR/Cas9またはCRISPR/Cpf1ヌクレアーゼシステムの標的部位への結合は、相補配列間のワトソン・クリック塩基対合によって駆動されるため、非類似性の程度(したがって、オフターゲット結合の可能性の低下)は、本質的に、一次配列の相違:ミスマッチとバルジ、すなわち、非相補的な塩基に変化する塩基、および標的部位に対する潜在的なオフターゲット部位の挿入または欠失に関する。COSMID(ミスマッチ、挿入、および欠失を伴うCRISPRオフターゲット部位)(crispr.bme.gatech.eduでウェブ上で入手可能)と呼ばれる例示的なバイオインフォマティクスツールは、このような類似性をコンパイルする。他のバイオインフォマティクスツールには、autoCOSMIDおよびCCTopが含まれるが、これらに限定されない。
【0445】
バイオインフォマティクスは、突然変異と染色体再編成の有害な影響を低減するために、オフターゲット切断を最小限に抑えるために使用される。CRISPR/Cas9系に関する研究は、特にPAM領域から遠い位置での塩基対ミスマッチおよび/またはバルジを伴うDNA配列へのガイド鎖の非特異的ハイブリダイゼーションによる高いオフターゲット活性の可能性を示唆した。したがって、塩基対のミスマッチに加えて、RNAガイド鎖とゲノム配列との間に挿入および/または欠失を有する潜在的なオフターゲット部位を特定できるバイオインフォマティクスツールを有することが重要である。オフターゲット予測アルゴリズムCCTopに基づくバイオインフォマティクスツールを使用して、CRISPRのオフターゲット部位の可能性があるゲノムを検索した(CCTopは、crispr.cos.uni-heidelberg.de/でウェブ上で入手可能である)。COSMID出力は、ミスマッチの数と場所に基づいて、潜在的なオフターゲット部位のリストをランク付けし、標的部位のより多くの情報に基づいた選択を可能にし、オフターゲット切断の可能性が高い部位の使用を回避する。
【0446】
ある領域のgRNA標的化部位の推定されたオンターゲット活性および/またはオフターゲット活性を評価する追加のバイオインフォマティクスパイプラインが採用されている。活動を予測するために使用できる他の機能には、問題の細胞型、DNAアクセシビリティ、クロマチン状態、転写因子結合部位、転写因子結合データ、および他のCHIP配列データに関する情報が含まれる。gRNAの対の相対的な位置と方向、ローカル配列の特徴、およびマイクロホモロジーなど、編集の効率を予測する追加の要因を検討する。
【0447】
CRISPR/Cas9標的部位の初期評価およびスクリーニングは、ANGPTL3~200bp 5′上流配列、エクソン1~6(7エクソンのうち)およびイントロン1~6の領域に焦点を合わせた。完全なイントロン配列を評価した。またはエクソン-イントロン接合部に近い約100~300bpの配列を、大きなイントロンについて評価した。エクソン配列内のgRNAを使用して、タンパク質配列の変化および/またはタンパク質の切断によりタンパク質の機能の喪失につながるインデルを作成することができる。5′UTR配列のgRNAを単独で、またはエクソン内のgRNAと組み合わせてのいずれかで使用して、翻訳開始部位を除去し、タンパク質合成を防ぐことができる。イントロンのgRNAを単独で、またはエクソン内のgRNAと組み合わせて使用して、スプライスドナーおよびアクセプター部位を除去し、切断されたタンパク質の産生とその結果としての機能喪失を引き起こし得る。
【0448】
初期のバイオインフォマティクス分析により、ANGPTL3遺伝子を標的とするおよそ203のガイドが特定された。このガイドのサブセットをさらに分析した。予測されるオフターゲット部位(1つまたは2つのミスマッチ)を有するガイドは排除され、0.0002を超えるマイナー対立遺伝子頻度を有するSNPと重複するガイドも排除された。また、Angptl3配列内の位置に基づいて、スクリーニングのためにgRNAに優先順位を付けた。5′エクソンを標的とするgRNAが優先された。この分析により、インビトロ転写ベースのガイドスクリーニングプロトコルのガイドに優先順位を付けた192のガイドのプールが残った(表7)。
【0449】
実施例8-オンターゲット活性の細胞内の優先ガイドの試験
同種のDNA標的領域を編集できるgRNAの大きなスペクトルを特定するために、インビトロ転写(IVT)gRNAスクリーンを実施した。関連するゲノム配列を、gRNA設計ソフトウェアを使用した分析のために提出した。結果のgRNAのリストは、配列の固有性に基づいて約200gRNAのリストに絞り込まれ(ゲノム内のどこかに完全な一致を有しないgRNAのみをスクリーニングした)、予測されるオフターゲットは最小限であった。このgRNAのセットは、インビトロで転写され、Lipofectamine MessengerMAXを使用して、Cas9を構成的に発現するHEK293T細胞にトランスフェクトされた。トランスフェクションの48時間後に細胞を回収し、ゲノムDNAを単離し、TIDE分析を使用して切断効率を評価した(
図2~4)。
【0450】
HEK細胞でスクリーニングされた192個のガイドの中から、編集効率が高く、CCTopオフターゲットスコアが低いガイドを特定した(表7および
図2~4)。
【0451】
次に、有意な活性を持つgRNAを培養細胞中で追跡して、ANGPTL3遺伝子の改変を測定した(例11~13)。特に、以下で説明するインビトロ編集実験のために、ヒトANGPTL3配列と、ヒトおよびサル(交差反応性)ANGPTL3(利用可能なカニクイザルおよびアカゲザルANGPTL3配列と100%一致)の両方を標的とする2つのgRNAを特異的に標的とする2つのガイドを選択した(例えば、表8を参照)。オフオフターゲット事象を再び追従することができる。様々な細胞にトランスフェクトし、遺伝子編集のレベルおよび可能なオフターゲット事象を測定することができる。これらの実験は、ヌクレアーゼおよびドナーの設計および送達の最適化を可能にする。
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
【表7-5】
【表7-6】
【0452】
実施例10-初代肝細胞におけるANGPTL3を標的とするgRNAの交差反応活性
本実施例は、Cas9 mRNAおよびgRNAを含むリポフェクタミントランスフェクション複合体によるノックアウト後、カニクイザルおよびヒトドナーから単離された初代肝細胞におけるANGPTL3 gRNAの効率的な交差反応活性を示す。
【0453】
ヒトおよびカニクイザルから単離された初代肝細胞(In Vitro ADMET Laboratories,Maryland)を、コンフルエントな単層に播種し、ANGPTL3を標的とするCas9 mRNAおよびgRNAでトランスフェクトした。AXOLabsによって合成されたANGPTL3を標的とするgRNAは、以下のフォーマットを使用して化学修飾した。n*n*n*NNNNNNNNNNNNNNNNNGUUUUAGAgcuaGAAAuagcAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCaacuuGAAAaaguggcaccgagucggugcu*u*u*U、ここで
大文字:未修飾ヌクレオチド、小文字:2′-O-メチル修飾を有するヌクレオチド、nまたはN:任意のヌクレオチド、*:ホスホロチオエート結合(配列番号17,058)。修飾されたgRNAを表8に示す。
【0454】
手短に言えば、細胞を0.35×106細胞/ウェルで24ウェルのI型コラーゲンでコーティングされたプレート(Corning Biocoat Collagen Iマルチウェルプレート、カタログ番号356408)のコンフルエントな単層に播種し、InVitroGRO培養プレート培地(BioreclamationIVT,Z990003)において5% CO2中37℃でインキュベートした。gRNAをCas9 mRNAと複合して播種した3~5時間後に、肝細胞単層をトランスフェクトした。ヒト肝細胞を、ヒト特異的gRNAまたは種交差反応性gRNAのいずれかでトランスフェクトし、サル肝細胞を種交差反応性gRNAでトランスフェクトした。gRNAのトランスフェクションは、Lipofectamine(商標)MessengerMax(商標)トランスフェクション試薬(ThermoFisher、カタログ番号LMRNA003)を使用して、製造業者のプロトコルに従い、200ngの最終gRNA量で行った。
【0455】
「MOCK」試料を生成するために、Cas9およびgRNAを含まないLipofectamine MessengerMaxでも肝細胞をトランスフェクトした。さらに、肝細胞の種ごとに既知の編集効率範囲で一貫して活性であることが知られているCas9 mRNAおよびgRNA対照で肝細胞をトランスフェクトした(例えば、ヒト肝細胞のC3 gRNAまたはサル肝細胞のPCSK9 gRNA)。細胞は、トランスフェクションの16時間後に新鮮なInVitroGRO培養培地の培地交換を受け、gRNA-リポフェクタミン複合体で48時間インキュベートし、その時点で製造元のプロトコルに従い、それらをprepGEM(ZyGem)に溶解した。
【0456】
肝細胞をCas9およびANGPTL3 gRNAでトランスフェクトし、モックトランスフェクタント(対照群)を、分解によるインデルの追跡(TIDE)分析によって分析した(Brinkman EK,Chen T,Amendola M,van Steensel B.Easy quantitative assessment of genome editing by sequence trace decomposition.Nucleic Acids Res.2014 Dec 16;42(22):e168.doi:10.1093/nar/gku936)。簡単に言うと、ゲノムDNAがKAPA HiFi PCRキットを使用したPCRのテンプレートとして使用された。
【0457】
PCRアンプリコンは、AxyPrep Mag PCRクリーンアップキット(Axygen)を使用して精製した。アンプリコンは、分解アルゴリズムを使用して配列決定および分析した。gRNA活性は、非標的鎖上のS.py.Cas9の予測切断部位に隣接した(すなわち、PAM(NGG)の上流のヌクレオチド-4とヌクレオチド-3の間)、および標的鎖上のPAM相補配列(CCN)の下流の3ヌクレオチドと4ヌクレオチドとの間に様々なインデル(1~50ntの挿入、または1~50ntの欠失)を持つ対立遺伝子の比として測定した。
【0458】
TIDE分析は、ANGPTL3 gRNA EX2、T6、およびT9がヒト肝細胞で約50%~60%のInDelを誘導し、EX1 gRNAが平均で20%未満の効率を誘導したことを示した(
図5Aを参照)。交差反応性ガイドT6およびT9は、活性であり、サル肝細胞で遺伝子編集を誘導した。gRNA T6の編集効率は最高であり、サル肝細胞のInDelは60%を超えていた(
図5Bを参照)。
【表8】
【0459】
実施例11-遺伝子編集された初代ヒト肝細胞におけるANGPTL3タンパク質分泌
本実施例は、T6 gRNAによる効率的な遺伝子編集と、初代ヒト肝細胞における分泌されたANGPTL3タンパク質の低減との相関関係を示す。
【0460】
初代ヒト肝細胞(In Vitro ADMET Laboratories)を0.35x106細胞/ウェルで24ウェルのI型コラーゲンでコーティングされたプレート(Corning Biocoat Collagen I Multiwell Plates、カタログ番号356408)のコンフルエントな単層に播種し、InVitroGRO培養プレート培地(BioreclamationIVT,Z990003)において5% CO2中37℃でインキュベートした。肝細胞単層を、Cas9 mRNAと複合して、ANGPTL3 T6 gRNAまたはC3 gRNA(ヒトC3を効率的にノックアウトするが、ANGPTL3遺伝子を編集しない非関連gRNA)のいずれかを播種した3~5時間後にトランスフェクトした。gRNAのトランスフェクションは、Lipofectamine MessengerMaxを使用して、製造元のプロトコルに従い、200ngの最終gRNA量で行った。「MOCK」試料を生成するために、Cas9 mRNAおよびgRNAを含まないLipofectamine MessengerMaxでも肝細胞をトランスフェクトした。細胞は、トランスフェクションの16時間後に新鮮なInVitroGRO培養培地の培地交換を受けた。試料を、gRNA-リポフェクタミン複合体とともに48時間インキュベートし、その時点で上清をヒトANGPTL3タンパク質分析用に収集し、製造元のプロトコルに従って細胞をprepGEM(ZyGem)に溶解した。
【0461】
Cas9およびT6 gRNA、またはCas9およびC3 gRNAでトランスフェクトした肝細胞、ならびに「MOCK」トランスフェクタント(対照群)を、TIDEによって分析した。TIDE分析は、ANGPTL3がT6 gRNA(InDel約60%)によって編集されたことを示した(
図6A)。同様に、C3 gRNAは、ヒトC3遺伝子を効率的に編集し、同じヒトドナーでのInDel頻度は約55%であった(
図6A)。
【0462】
ヒトANGPTL3タンパク質のサンドイッチ酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)(ヒトANGPTL3 ELISAキット、R&D Systems、カタログ番号DY3829)を使用して、遺伝子編集試料から収集した上清中のANGPTL3タンパク質の濃度を検出した。結果は、T6 gRNAによるANGPTL3遺伝子の編集において約60%の効率を有する初代肝細胞の上清が、1ng/mL未満のANGPTL3タンパク質を含み、対照群と比較して、ANGPTL3タンパク質レベルの有意な低減を示す(
図6B)。対照群「MOCK」およびC3は、それぞれ約2.8ng/ml(
図6B)および約2.6ng/mL(
図6B)のANGPTL3タンパク質の同様のレベルを示した。本研究は、ANGPTL3遺伝子の効果的な編集が、初代肝細胞における分泌されたANGPTL3タンパク質の機能的低減をもたらしたことを示している。
【0463】
ANGPTL3タンパク質ノックダウンの検出ウィンドウを増やすために、共培養した初代ヒト肝細胞を培養し、gRNAおよびCas9でトランスフェクトした。
【0464】
初代ヒト肝細胞(In Vitro ADMET Laboratories)は、単離されたマウス3T3線維芽細胞の存在下(SN Bhatia,UJ Balis,ML Yarmush,M Toner.″Effect of cell-cell interactions in preservation of cellular phenotype:cocultivation of hepatocytes and nonparenchymal cells″The FASEB Journal 13(14),1883-1900,SN Bhatia,ML Yarmush,M Toner.″Controlling cell interactions of micropatterning in co-cultures:hepatocytes and 3T3 fibroblasts″J.Biomedical Materials Research 34(2),189-199)、共培養フォーマットで、24ウェルのI型コラーゲンでコーティングされたプレート(Corning Biocoat Collagen I Multiwell Plates,Cat#356408)中で培養し、InVitroGRO培養プレート培地(BioreclamationIVT,Z990003)において5% CO2中37℃でインキュベートした。肝細胞共培養物を、培養開始の24時間後にgRNA(表8)およびCas9 mRNAでトランスフェクトした。gRNAのトランスフェクションは、Lipofectamine MessengerMaxを使用して、製造元のプロトコルに従い、200ngの最終gRNA量で行った。肝細胞はまた、Lipofectamine MessengerMaxでトランスフェクトした。細胞は、トランスフェクションgRNA-リポフェクタミン複合体の6時間後および24時間毎に合計10日間、新鮮なInVitroGRO培地の培地交換を受けた。
【0465】
Cas9およびT6 gRNA、またはCas9およびC3 gRNAでトランスフェクトした共培養初代肝細胞、ならびに「MOCK」トランスフェクタント(対照群)を、TIDEによって分析した。TIDE分析は、ANGPTL3がT6 gRNA(InDel約60%)によって編集されたことを示した(
図7A)。同様に、C3 gRNAは、ヒトC3遺伝子を効率的に編集し、同じヒトドナーでのInDel頻度は約52%であった(
図7A)。これらのデータは、単一培養および共培養フォーマットの初代ヒト肝細胞の一貫した編集プロファイルを示している。
【0466】
ヒトANGPTL3タンパク質のサンドイッチ酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)(ヒトANGPTL3 ELISAキット、R&D Systems、カタログ番号DY3829)を使用して、遺伝子編集試料から収集した上清中のANGPTL3タンパク質の濃度を検出した。結果は、T6 gRNAによるANGPTL3遺伝子の編集において約60%の効率を有する初代肝細胞の上清が、約1ng/mLのANGPTL3タンパク質を含み、対照群と比較して、ANGPTL3タンパク質レベルの有意な低減を示す(
図7B)。対照群「MOCK」およびC3は、それぞれ約29ng/mLおよび約31ng/mLのANGPTL3タンパク質の同様のレベルを示した。共培養した初代肝細胞は、単培養肝細胞と比較して、5倍高いレベルのANGPTL3タンパク質を分泌し、ANGPTL3遺伝子の破壊により分泌されたANGPTL3タンパク質が確実に低減することを示した。
【0467】
実施例12-遺伝子編集された初代サル肝細胞におけるANGPTL3タンパク質分泌
本実施例は、T6 gRNAによる効率的な遺伝子編集と、初代サル肝細胞における分泌されたANGPTL3タンパク質の低減との相関関係を示す。
【0468】
初代サル肝細胞(In Vitro ADMET Laboratories)を0.35x106細胞/ウェルで24ウェルのI型コラーゲンでコーティングされたプレート(Corning Biocoat Collagen I Multiwell Plates、カタログ番号356408)のコンフルエントな単層に播種し、InVitroGRO培養プレート培地(BioreclamationIVT,Z990003)において5% CO2中37℃でインキュベートした。肝細胞単層を、Cas9 mRNAと複合して、ANGPTL3 T6 gRNAまたはPCSK9 gRNA(サルゲノム中のPCSK9遺伝子を効率的にノックアウトするが、ANGPTL3遺伝子を編集しない非関連gRNA)のいずれかを播種した3~5時間後にトランスフェクトした。gRNAのトランスフェクションは、Lipofectamine MessengerMaxを使用して、製造元のプロトコルに従い、200ngの最終gRNA量で行った。「MOCK」試料を生成するために、Cas9 mRNAおよびgRNAを含まないLipofectamine MessengerMaxでも肝細胞をトランスフェクトした。細胞は、トランスフェクションの16時間後に新鮮なInVitroGRO培養培地の培地交換を受けた。試料を、gRNA-リポフェクタミン複合体とともに48時間インキュベートし、その時点で上清をヒトANGPTL3タンパク質分析用に収集し、製造元のプロトコルに従って細胞をprepGEM(ZyGem)に溶解した。
【0469】
Cas9およびT6 gRNA、T9 gRNA、またはPCSK9 gRNAでトランスフェクトしたサル肝細胞、ならびに「MOCK」トランスフェクタント(対照群)を、TIDEによって分析した。TIDE分析は、ANGPTL3がT6 gRNA(InDel約67%)およびT9 gRNA(InDel約29%)によって編集されたことを示した(
図5B)。同様に、PCSK9 gRNAは、サルPCSK9遺伝子を効率的に編集し、同じサルドナーでのInDel頻度は約41%であった(
図5B)。
【0470】
サルANGPTL3タンパク質のサンドイッチ酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)(サルANGPTL3 ELISAキット、LifeSpan Bio、カタログ番号LS_F38518)を使用して、遺伝子編集試料から収集した上清中のANGPTL3タンパク質の濃度を検出した。結果は、T6 gRNAによるANGPTL3遺伝子の編集において約67%の効率を有する初代肝細胞の上清が、1ng/mL未満のANGPTL3タンパク質を含み、対照群と比較して、ANGPTL3タンパク質レベルの有意な低減を示す(
図8)。対照群「MOCK」およびC3は、それぞれ約3ng/mLおよび約2.5ng/mLのANGPTL3タンパク質の同様のレベルを示した。本研究は、交差反応性gRNA、T6によるANGPTL3遺伝子の効果的な編集が、初代サル肝細胞における分泌されたANGPTL3タンパク質の機能的低減をもたらしたことを示している。
【0471】
実施例13-関連する動物モデルでのインビボ試験
CRISPR-Cas9/ガイドの組み合わせを評価した後、リード製剤を動物モデルにおいてインビボで試験する。
【0472】
初代ヒト肝細胞、Cas9 mRNAおよびgRNAの複合体のANGPTL3遺伝子の欠失の効率が高い異種間ANGPTL3 gRNAの組み合わせは、送達のために脂質ナノ粒子中に配合される。
【0473】
カニクイザルは、ANGPTL3阻害のためのモノクローナル抗体およびアンチセンスオリゴヌクレオチド療法の両方で前臨床データが取得されているため、大型動物モデルとして使用される。これらの治療法は、現在、家族性高コレステロール血症患者におけるANGPTL3阻害とトリグリセリド、LDLコレステロール、およびHDLコレステロールの低減との相関を評価するための第I/II相臨床試験を完了している。
【0474】
Cas9 mRNAおよびT6 gRNAと複合した脂質ナノ粒子をサルに注入し、全血試料は、投与後1日目および14日間にわたって3日毎に毎時収集する。投与前のベースライン全血採取も行われる。対照群には、生理食塩水を注入した動物が含まれる。
【0475】
体重は、研究を通してモニターされ、血漿および血清試料は、サイトカインおよび補体活性化(炎症反応)および臨床脂質パネル(総コレステロール、HDL、LDL-C、およびトリグリセリド)についてモニターされる。14日間の完了時に、肝組織を収集し、ANGPTL3遺伝子の遺伝子編集について評価する。
【0476】
肝組織は、対照および投与動物の両方からホモジナイズされ、有効なANGPTL3遺伝子編集の証拠のためにTIDE分析によって分析される。
【0477】
研究期間中のTIDE分析と脂質化学の結果は、InDel頻度とコレステロールレベルの修正との相関関係をもたらし、主要な生物学的マーカーであるLDL-Cの低減に重点が置かれる。
【0478】
上記のように、ヒト細胞での培養により、ヒトの標的と背景のヒトゲノムの直接試験も可能になる。
【0479】
さらに、マウスモデルにおける修飾マウスまたはヒト肝細胞の生着により、前臨床の有効性と安全性の評価を観察することができる。修飾された細胞は、生着後数ヶ月で観察できる。
【0480】
実施例14-オフターゲット活性についての細胞内の優先ガイドの試験
上記実施例のIVTスクリーニングから最高のオンターゲット活性を有するgRNAは、他の方法に加えて、ハイブリッドキャプチャアッセイ、GUIDE Seq、および全ゲノム配列決定を使用して、オフターゲット活性について試験される。
【0481】
XI.同等物および範囲
当業者は、本明細書に記載の本発明による特定の実施形態に対する多くの同等物を認識し、または日常的な実験のみを使用して確認することができるであろう。本発明の範囲は、上記の説明に限定されるものではなく、むしろ添付の特許請求の範囲に記載されているものである。
【0482】
グループの1つ以上のメンバーを含む「または」メンバー間の特許請求の範囲または説明は、反対のことが示されない限り、またはそうでなければ文脈から明らかでない限り、所与の製品またはプロセスに1つ、複数、またはすべてのグループメンバーが存在する、採用される、または他の方法で関連する場合、満たされていると見なされる。本開示は、グループの正確に1つのメンバーが、所与の製品またはプロセスに存在する、用いられる、または他の方法で関連する実施形態を含む。本開示は、所与の製品またはプロセスに複数の、またはグループ全体のメンバーが存在する、用いられる、または他の方法で関連する実施形態を含む。
【0483】
加えて、先行技術に含まれる本開示の特定の実施形態は、特許請求の範囲のうちのいずれか1つ以上から明示的に除外され得ることを理解されたい。そのような実施形態は、当業者に知られているとみなされるため、除外が本明細書に明示的に記載されていなくても、除外することができる。本開示の組成物の任意の特定の実施形態(例えば、任意の抗生物質、治療または活性成分、任意の製造方法、任意の使用方法など)は、理由の如何を問わず、先行技術の存在に関連しているか否かにかかわらず、1つ以上の特許請求の範囲から除外することができる。
【0484】
使用された言葉は限定ではなく説明の言葉であり、そのより広い態様における本開示の真の範囲および趣旨から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲の範疇内で変更がなされ得ることを理解されたい。
【0485】
本開示は、いくつかの説明された実施形態に関してある程度詳細に説明されたが、そのような詳細または実施形態または任意の特定の実施形態に限定されるべきではないが、先行技術を考慮して、そのような特許請求の範囲の可能な限り広い解釈を提供し、したがって、本開示の意図された範囲を効果的に包含するように、添付の特許請求の範囲に対する参照と解釈されるべきである。
【0486】
実施例に関する注記
本開示は、本開示の様々な態様および/またはその潜在的な用途を例示する目的で様々な特定の態様の説明を提供するが、当業者が変形および修正を想到することが理解される。したがって、本明細書に記載の1つまたは複数の発明は、少なくとも特許請求の範囲と同じくらい広く、本明細書で提供される特定の例示的な態様によってより狭く定義されるものではないことを理解されたい。
【0487】
本明細書で特定される任意の特許、出版物、または他の開示資料は、特に明記しない限り、組み込まれた資料が、本明細書に明示的に記載される既存の説明、定義、ステートメント、または他の開示資料と明示的に矛盾しない範囲でのみ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。そのため、必要な範囲で、本明細書に記載される明示的な開示は、参照により組み込まれた任意の矛盾する資料に優先する。参照により本明細書に組み込まれると言われているが、本明細書に記載されている既存の定義、ステートメント、または他の開示資料と矛盾する任意の資料またはその一部は、その組み込まれた資料と既存の開示資料との間に矛盾が生じない範囲でのみ組み込まれる。出願人は、参照により本明細書に組み込まれる任意の主題またはその一部を明示的に列挙するために、本明細書を修正する権利を留保する。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-04-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンジオポエチン様3(ANGPTL3)遺伝子において修飾を含む細胞の集団を産生するための組成物であって、前記組成物が、
(a)ANGPTL3ゲノム遺伝子座を標的とするガイドRNA(gRNA)またはANGPTL3ゲノム遺伝子座を標的とするgRNA(ANGPTL3 gRNA)をコードする核酸、および
(b)Cas9エンドヌクレアーゼまたはCas9エンドヌクレアーゼをコードする核酸を含み、
前記ANGPTL3 gRNAがスペーサー配列を含み、スペーサー配列がRNA配列であり、TがUに置換されている配列番号9109、7094、7168、7061、7165、または9110の配列を含む、組成物。
【請求項2】
前記細胞の集団の細胞の少なくとも50%が、前記ANGPTL3遺伝子の修飾を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記細胞の集団の細胞の50%~70%が、前記ANGPTL3遺伝子の修飾を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記Cas9エンドヌクレアーゼが、S.pyogenes Cas9、S.aureus Cas9、N.meningitides Cas9、S.thermophilus CRISPR1 Cas9、S.thermophilus CRISPR3 Cas9、およびT.denticola Cas9からなる群から選択される、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記gRNAが、単一ガイドRNA(sgRNA)である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記gRNAが、化学修飾されたgRNAである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記化学修飾されたgRNAがホスホロチオエート骨格、および/または前記gRNAの3′末端および/または5′末端に2′-O-メチルヌクレオチドを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が(a)ANGPTL3 gRNAおよび(b)Cas9エンドヌクレアーゼを含み、前記ANGPTL3 gRNAおよびCas9ヌクレアーゼが、リボ核タンパク質粒子(RNP)として配合される、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が(a)ANGPTL3 gRNAをコードする核酸および(b)Cas9エンドヌクレアーゼをコードする核酸を含み、(a)および/または(b)がウイルスベクター上に存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルスベクターである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
(a)の前記gRNAもしくは前記gRNAをコードする核酸、(b)の前記Cas9エンドヌクレアーゼもしくは前記Cas9エンドヌクレアーゼをコードする核酸、またはその両方が、リポソームまたは脂質ナノ粒子(LNP)中において細胞の集団に送達される、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記細胞の集団が、肝細胞を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記細胞の集団が、ANGPTL3関連の状態を有する対象に存在する、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
対象がヒトである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
(a)ANGPTL3ゲノム遺伝子座を標的とするガイドRNA(gRNA)またはANGPTL3ゲノム遺伝子座を標的とするgRNA(ANGPTL3 gRNA)をコードする核酸、および(b)Cas9エンドヌクレアーゼまたはCas9エンドヌクレアーゼをコードする核酸を含む組成物、ここで前記ANGPTL3 gRNAはスペーサー配列を含み、スペーサー配列はRNA配列であり、TがUに置換されている配列番号7094の配列を含む。
【請求項16】
(a)ANGPTL3ゲノム遺伝子座を標的とするガイドRNA(ANGPTL3 gRNA)、および(b)Cas9エンドヌクレアーゼをコードするmRNAを含む組成物、ここで前記ANGPTL3 gRNAはスペーサー配列を含み、スペーサー配列はRNA配列であり、TがUに置換されている配列番号7094の配列を含む。
【外国語明細書】