(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093679
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】アセスルファムカリウム組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 291/06 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
C07D291/06
【審査請求】有
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071237
(22)【出願日】2023-04-25
(62)【分割の表示】P 2021077233の分割
【原出願日】2017-09-14
(31)【優先権主張番号】62/397,484
(32)【優先日】2016-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/397,495
(32)【優先日】2016-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512225379
【氏名又は名称】セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】モレンコプフ,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】グレール,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ヤーダブ,アービンド
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高純度アセスルファムカリウムを製造するための組成物及び方法を提供する。
【解決手段】環状三酸化イオウ付加体を形成する工程;前記環状三酸化イオウ付加体を加水分解して、アセスルファム-Hを含むアセスルファム-H組成物を形成する工程;前記アセスルファム-H組成物中の前記アセスルファム-Hを中和して、アセスルファムカリウム及び2800wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸を含む粗アセスルファムカリウム組成物を形成する工程(ここで前記中和工程は11.0以下のpHで行う);及び、前記粗アセスルファムカリウム組成物を処理して、アセスルファムカリウム及び37wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸を含む精製アセスルファムカリウム組成物を形成する工程;を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
精製アセスルファムカリウム組成物を製造する方法であって、
(a)環状三酸化イオウ付加体を形成する工程;
(b)前記環状三酸化イオウ付加体を加水分解して、アセスルファム-Hを含むアセスルファム-H組成物を形成する工程;
(c)前記アセスルファム-H組成物中の前記アセスルファム-Hを中和して、アセスルファムカリウム及び2800wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸を含む粗アセスルファムカリウム組成物を形成する工程、ここで前記中和工程は11.0以下のpHで行う;及び
(d)前記粗アセスルファムカリウム組成物を処理して、アセスルファムカリウム及び37wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸を含む前記精製アセスルファムカリウム組成物を形成する工程;
を含む上記方法。
【請求項2】
前記中和工程(c)が、
アセスルファム-Hを、アセスルファム-H/中和剤反応混合物中で中和剤と反応させて前記アセスルファムカリウム組成物を形成すること;
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記中和剤が水酸化カリウムを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記水酸化カリウムが膜プロセスによって製造され、前記精製アセスルファムカリウム組成物が10wppm未満の水銀を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記アセスルファム-H/中和剤反応混合物が、前記アセスルファム-H/中和剤反応混合物の全重量を基準として、1重量%~95重量%の中和剤、及び1重量%~95重量%のアセスルファム-Hを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記中和工程(c)が、前記アセスルファム-H組成物中の前記アセスルファム-Hを中和して、アセトアセタミドを更に含む前記粗アセスルファムカリウム組成物を形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記粗アセスルファムカリウム組成物が500wppm~2375wppmのアセトアセタミド-N-スルホン酸を含み、前記精製アセスルファムカリウム組成物が25wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸を含み、25wppm未満のアセトアセタミドを更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記中和工程(c)を9.0~11.0の範囲のpHで行い、前記粗アセスルファムカリウム組成物が20wppm~2500wppmのアセトアセタミド-N-スルホン酸を含み、前記精製アセスルファムカリウム組成物が25wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸及び15wppm未満のアセトアセタミドを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記中和工程(c)を8~10.3の範囲のpHで行い、前記粗アセスルファムカリウム組成物が600wppm~1200wppmのアセトアセタミド-N-スルホン酸を含み、前記精製アセスルファムカリウム組成物が、10wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸及び10wppm未満のアセトアセタミドを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記中和工程(c)を8~10.3の範囲のpHで行い、前記粗アセスルファムカリウム組成物が2400wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸を含み、前記精製アセスルファムカリウム組成物が、10wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸及び10wppm未満のアセトアセタミドを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記精製アセスルファムカリウム組成物が37wppm未満のアセトアセタミドを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記中和工程(c)を9.0~11.0の範囲のpHで行う、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記中和工程(c)を9.0~10.5の範囲のpHで行う、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記中和工程(c)を8.0~10.3の範囲のpHで行う、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記処理工程(d)を90℃より低い温度で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記処理工程(d)が180分未満の滞留時間を用いる蒸発工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記中和工程を11.0以下のpHに維持する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法によって製造される精製アセスルファムカリウム組成物。
【請求項19】
精製アセスルファムカリウム組成物を製造する方法であって、
(a)スルファミン酸とトリエチルアミンを反応させてアミドスルファミン酸塩を形成する工程;
(b)前記アミドスルファミン酸塩とジケテンを反応させてアセトアセタミド塩を形成する工程;
(c)ジクロロメタンと三酸化イオウを接触させて環化剤組成物を形成する工程;
(d)前記アセトアセタミド塩を前記環化剤組成物中の三酸化イオウと反応させて環状三酸化イオウ付加体を形成する工程;
(e)前記環状三酸化イオウ付加体を加水分解してアセスルファム-Hを含むアセスルファム-H組成物を形成する工程;
(f)前記アセスルファム-H中の前記アセスルファム-Hを中和して、アセスルファムカリウム及び2800wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸を含む粗アセスルファムカリウム組成物を形成する工程、ここで中和工程は11.0以下のpHで行う;
(g)前記粗アセスルファムカリウム組成物を処理して、アセスルファムカリウム及び37wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸を含む前記精製アセスルファムカリウム組成物を形成する工程;
を含み;
工程(a)、(b)、及び(c)は、工程(d)を行う前に任意の順番で行うことができる上記方法。
【請求項20】
前記精製アセスルファムカリウム組成物が20wppm未満のアセトアセタミドを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記中和工程(f)を9.0~11.0の範囲のpHで行い、前記粗アセスルファムカリウム組成物が20wppm~2500wppmのアセトアセタミド-N-スルホン酸を含み、前記精製アセスルファムカリウム組成物が、25wppm未満のアセトアセタミド
-N-スルホン酸及び15wppm未満のアセトアセタミドを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
アセスルファムカリウム、及び25wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸、並びに25wppm未満のアセトアセタミドを含むアセスルファムカリウム組成物。
【請求項23】
0.001wppm~5wppmの有機不純物、及び/又は0.001wppm~5wppmの少なくとも1種類の重金属を更に含む、請求項22に記載のアセスルファムカリウム組成物。
【請求項24】
前記少なくとも1種類の重金属が、水銀、鉛、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項23に記載のアセスルファムカリウム組成物。
【請求項25】
前記水銀が1wppb~20wppmの量で存在する、請求項24に記載のアセスルファムカリウム組成物。
【請求項26】
前記鉛が1wppb~25wppmの量で存在する、請求項24に記載のアセスルファムカリウム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2016年9月21日出願の米国仮特許出願62/397,484、及び2016年9月21日出願の米国仮特許出願62/397,495(これらの全部を参照として本明細書中に包含する)に関連し、それらに対する優先権を主張する。
【0002】
[0002]本発明は、概して、アセスルファムカリウム、及びアセスルファムカリウムを製造する方法に関する。より具体的には、本発明は高純度のアセスルファムカリウムを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]アセスルファムカリウムは非常に強い甘味を有しており、多くの食品関連用途において甘味料として用いられている。従来のアセスルファムカリウム製造プロセスにおいては、スルファミン酸とアミン、例えばトリエチルアミンを反応させて、トリアルキルアンモニウムアミドスルファミン酸塩のようなアミドスルファミン酸塩を形成する。次に、アミドスルファミン酸塩をジケテンと反応させてアセトアセタミド塩を形成する。アセトアセタミド塩を、環化、加水分解、及び中和してアセスルファムカリウムを形成することができる。米国特許5,744,010及び9,024,016においては、代表的なアセスルファムカリウム製造プロセスが開示されている。
【0004】
[0004]通常は、アセトアセタミド塩中間体は、無機又は有機溶媒中において三酸化イオウと反応させることによって環化して、環状三酸化イオウ付加体を形成する。この反応において通常用いられる溶媒は、ハロゲン化脂肪族炭化水素溶媒、例えばジクロロメタンのような有機溶媒である。この反応によって形成される付加体を、続いて加水分解し、次に水酸化カリウムで中和してアセスルファムカリウムを形成する。
【0005】
[0005]従来法によって製造されるアセスルファムカリウム生成物及び中間体組成物は、アセトアセタミド-N-スルホン酸のような望ましくない不純物を含む。しばしば、政府規制又は顧客のガイドラインによって種々の不純物の含量に関する限界値が設定される。蒸発、結晶化、及び/又は濾過のような標準的な精製手順を用いてこれらの不純物の多くを分離することは困難であることが判明しており、消費者の不満及び基準を満足できない事態がもたらされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許5,744,010
【特許文献2】米国特許9,024,016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0006]合成中におけるアセトアセタミド-N-スルホン酸のような不純物の形成を減少又は排除する、高純度アセスルファムカリウム組成物を製造するための改良された方法に対する必要性が存在する。
【0008】
[0007]ここで議論する全ての参照文献は、参照として本明細書中に包含する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0008]本出願は、精製アセスルファムカリウム組成物(finished acesulfame potassium
composition)を製造する方法であって、環状三酸化イオウ付加体を形成する工程;環状
三酸化イオウ付加体を加水分解して、アセスルファム-Hを含むアセスルファム-H組成物を形成する工程;アセスルファム-H組成物中のアセスルファム-Hを中和して粗アセスルファムカリウム組成物を形成する工程;及び、粗アセスルファムカリウム組成物を処理して、アセスルファムカリウム及び37wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸を含む精製アセスルファムカリウム組成物を形成する工程;を含む上記方法を開示する。中和工程は、好ましくは11.0以下のpHにおいて行うか、又はかかるpHに維持する。粗アセスルファムカリウム組成物は、アセスルファムカリウム及び2800wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸を含み得る。中和工程には、アセスルファム-Hを、アセスルファム-H/中和剤反応混合物中で中和剤、例えば水酸化カリウムと反応させてアセスルファムカリウム組成物を形成することを含ませることができる。水酸化カリウムは膜プロセスによって製造することができ、精製アセスルファムカリウム組成物は10wppm未満の水銀を含み得る。幾つかの場合においては、アセスルファム-H/中和剤反応混合物は、アセスルファム-H/中和剤反応混合物の全重量を基準として、1重量%~95重量%の中和剤、及び1重量%~95重量%のアセスルファム-Hを含む。中和工程には、アセスルファム-H組成物中のアセスルファム-Hを中和して、アセトアセタミドを更に含む粗アセスルファムカリウム組成物を形成することを含ませることができる。幾つかの態様においては、粗アセスルファムカリウム組成物は500wppm~2375wppmのアセトアセタミド-N-スルホン酸を含み、精製アセスルファムカリウム組成物は25wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸を含み、25wppm未満のアセトアセタミドを更に含む。一態様においては、中和工程は9.0~11.0の範囲のpHで行うか、又はかかるpHに維持し、粗アセスルファムカリウム組成物は20wppm~2500wppmのアセトアセタミド-N-スルホン酸を含み、精製アセスルファムカリウム組成物は25wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸及び15wppm未満のアセトアセタミドを含む。他の態様においては、中和工程は8~10.3の範囲のpHで行うか、又はかかるpHに維持し、粗アセスルファムカリウム組成物は600wppm~1200wppmのアセトアセタミド-N-スルホン酸を含み、精製アセスルファムカリウム組成物は、10wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸及び10wppm未満のアセトアセタミドを含む。他の態様においては、中和工程は8~10.3の範囲のpHで行うか又はかかるpHに維持し、粗アセスルファムカリウム組成物は2400wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸を含み、精製アセスルファムカリウム組成物は、10wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸及び10wppm未満のアセトアセタミドを含む。精製アセスルファムカリウム組成物は、37wppm未満のアセトアセタミド、例えば20wppm未満のアセトアセタミドを含み得る。中和工程は9.0~11.0の範囲のpH、及び/又は9.0~10.5、例えば8.0~10.3の範囲のpHにおいて、及び/又は90℃より低い温度において行うか、又はかかるpH及び温度に維持することができる。処理工程には、180分未満の滞留時間を用いる蒸発工程を含ませることができる。また、精製アセスルファムカリウム組成物を製造する方法であって、スルファミン酸とトリエチルアミンを反応させてアミドスルファミン酸塩を形成する工程;アミドスルファミン酸塩とジケテンを反応させてアセトアセタミド塩を形成する工程;ジクロロメタンと三酸化イオウを接触させて環化剤組成物を形成する工程;アセトアセタミド塩を環化剤組成物中の三酸化イオウと反応させて環状三酸化イオウ付加体を形成する工程;環状三酸化イオウ付加体を加水分解してアセスルファム-Hを含むアセスルファム-H組成物を形成する工程;アセスルファム-H中のアセスルファム-Hを中和して、アセスルファムカリウム及び2800wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸を含む粗アセスルファムカリウム組成物を形成する工程(ここで中和工程は11.0以下のpHで行うか、又はかかるpHに維持する);粗アセスルファムカリウム組成物を処理して、アセスルファムカリウム及び37wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸を含む精製アセスルファムカリウム組成物を形成する工程;を含む上記方法も開示する。好ましくは、工程(a)、(b)、及び(c)は、工程(d)を行う前に任意の順番で行うことができる。中和工程は9.0~11.0の範囲のpHで行うか、又はかかるpHに維持することができ、粗アセスルファムカリウム組成物は20wppm~2500wppmのアセトアセタミド-N-スルホン酸を含み得、精製アセスルファムカリウム組成物は、25wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸及び15wppm未満のアセトアセタミドを含み得る。本出願はまた、ここに記載する方法によって製造されるアセスルファムカリウムの粗組成物、中間組成物、及び精製組成物も記載する。幾つかの場合においては、本出願は、アセスルファムカリウム、及び25wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸、並びに25wppm未満のアセトアセタミドを含むアセスルファムカリウム組成物を記載する。幾つかの場合においては、アセスルファムカリウム組成物は、0.001wppm~5wppmの有機不純物、及び/又は0.001wppm~5wppmの少なくとも1種類の重金属、例えば水銀、鉛、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類の重金属を更に含む。幾つかの場合においては、アセスルファムカリウム組成物は、1wppb~20wppmの量で存在する水銀、及び/又は1wppb~25wppmの量で存在する鉛を更に含む。
【0010】
[0009]下記において、添付の図面を参照して本発明を詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】[0010]
図1は、本発明の一態様によるアセスルファムカリウム製造プロセスのプロセスフローシートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
序論:
[0011]アセスルファムカリウムを製造するための従来のプロセスは、スルファミン酸とアミンを酢酸の存在下で反応させてアミドスルファミン酸塩を形成することを含む。次に、アミドスルファミン酸塩をアセトアセチル化剤、例えばジケテンと反応させて、アセトアセタミド塩を形成する。アセトアセタミド塩を、環化剤、例えば三酸化イオウと反応させて、環状三酸化イオウ付加体を形成する。次に、環状三酸化イオウ付加体を従来の手段によって加水分解及び中和して、アセスルファムカリウムを含む粗アセスルファムカリウム組成物を形成する。この組成物を水相及び有機相に相分離する。アセスルファムカリウムの大部分は水相中に分離される。本明細書において用いる「粗アセスルファムカリウム組成物」という用語は、(更なる精製を行っていない)中和工程の最初の生成物又は相分離工程から形成される水相を指す。粗アセスルファムカリウム組成物は、少なくとも5重量%のアセスルファムカリウムを含む。場合によっては、粗アセスルファムカリウム組成物を処理して、下記において議論する「中間アセスルファムカリウム組成物」及び/又は「精製アセスルファムカリウム組成物」を形成することができる。
【0013】
[0012]従来のアセスルファムカリウム組成物は、幾つかの望ましくない不純物、中でもアセトアセタミド、及びアセトアセタミド塩、例えばアセトアセタミド-N-スルホネートトリエチルアンモニウム塩を含むことが示されている。アセトアセタミド-N-スルホン酸及びその塩も存在する可能性がある。精製アセスルファムカリウム組成物中におけるこれらの化合物に関する含量限界は、しばしば業界の純度基準、及び/又はアセスルファムカリウムを甘味料として用いる特定の最終製品に関して定められている基準によって定められる。幾つかの場合においては、これらの不純物に関する限界は政府規制によって定められる。殆どの用途に関して、高いアセスルファムカリウム純度レベルが好ましい。而して、粗アセスルファムカリウム組成物は、通常は種々の処理操作によって処理してこれらの不純物の存在量を減少させる。かかる処理操作の非限定的なリストとしては、蒸発、結晶化、及び/又は濾過が挙げられる。
【0014】
[0013]理論によっては縛られないが、ここで、加水分解された三酸化イオウ付加体の中
和によって、アセスルファムカリウム分子に対するストレス、例えば熱ストレスが発生する可能性があることが見出された。この熱ストレスはまた、加水分解工程中に形成され、アセスルファムカリウムへの前駆体であるアセスルファム-H(甘味料酸(sweetener acid)としても知られる)にも影響を与える可能性がある。アセスルファムカリウム及び場合によってはアセスルファム-Hに対するこのストレスによって、これらの化合物の分解が引き起こされて、望ましくない不純物の形成がもたらされる可能性がある。幾つかの状況においては、このストレスによって、アセスルファムカリウム/アセスルファム-Hが、その形成反応反応物質、例えばアセトアセタミド及び/又はその塩及び/又はアセトアセタミド-N-スルホン酸に分解する可能性があり、これにより更なる不純物の形成が引き起こされる可能性がある。
【0015】
[0014]また、ここで、特定の反応パラメーターを用いることによって、アセスルファムカリウム(又はアセスルファム-H)に対するストレスを有利に減少又は排除、及び/又は生成物の分解を有利に減少又は排除することができ、これにより更なる不純物の形成が減少又は排除され、最終的に高純度の最終生成物がもたらされることも発見された。
【0016】
[0015]特に、ここで、特定のpH範囲又は限界内で中和工程を行うことによって、アセスルファムカリウム(又はアセスルファム-H)の分解及び不純物の形成(その例としては、アセトアセタミド-N-スルファミン酸の形成、及び/又はアセトアセタミド塩の(再)形成が挙げられる)が驚くほど減少又は排除されることが見出された。伝統的に、中和工程は、アセスルファム-Hのアセスルファムカリウムへの中和が最大になり、得られる粗アセスルファムカリウム組成物中のアセスルファム-Hの含量が最小になるように、非常に高いpHレベルで行うか、又はかかるpHレベルに維持している。アセスルファムカリウム及びアセスルファム-Hの分解が減少することによって、ここで議論するようにより高純度の粗アセスルファムカリウム組成物の形成が直接的に導かれ、これによりアセスルファムカリウムの中間組成物又は精製組成物を形成するためのその後の処理操作が簡単になる。またこのプロセスによって、低いアセトアセタミド-N-スルファミン酸及び/又はアセトアセタミドの含量を有するアセスルファムカリウムの中間組成物及び精製組成物の形成も有利にもたらされる。
【0017】
[0016]中和工程中に形成されるストレスに加えて、粗アセスルファムカリウム組成物中のアセスルファムカリウムから不純物を除去するために用いる処理操作によって、アセスルファムカリウム自体(又はアセスルファム-H)に対するストレス、例えば熱ストレスももたらされる可能性があり、これによって分解が引き起こされる可能性もある。かかるストレス下においては、アセトアセタミド-N-スルファミン酸は、アセトアセタミド及びN-スルホン酸(及び、場合によってはN-スルホン酸誘導体)に分解(及び場合によっては加水分解)する可能性があると考えられる。而して、処理操作中の熱ストレスによって、更なる望ましくない副生成物、例えばアセトアセタミドの形成がもたらされる可能性がある。有利なことに、粗アセスルファムカリウム組成物中のアセトアセタミド-N-スルファミン酸の含量を減少させることによって、更にその後の処理操作において形成される可能性があるアセトアセタミドの含量がこれに付随して減少し、これにより向上した効率、及び最終的に得られる精製アセスルファムカリウム組成物中のアセトアセタミド含量の減少がもたらされる。
【0018】
[0017]ここで、本明細書において用いる更なる具体的な用語を規定する。本明細書において用いる「アセトアセタミド」とは、次の分子を指す。
【0019】
【0020】
[0018]本明細書において用いる「アセトアセタミド-N-スルホン酸」とは、下記に示す分子を指す。幾つかの場合においては、アセトアセタミド-N-スルホン酸は、アセスルファムカリウム又はアセスルファム-Hの分解生成物であってよい。本明細書において用いる「アセトアセタミド-N-スルホン酸」という用語はまた、アセトアセタミド-N-スルファミン酸の塩、例えばカリウム塩、ナトリウム塩、及び他のアルカリ金属塩も包含する。
【0021】
【0022】
[0019]粗アセスルファム組成物は、処理して中間アセスルファムカリウム組成物及び精製アセスルファム組成物を形成することができ、この処理工程には1以上の濃縮又は分離操作を含めることができる。
【0023】
[0020]「中間アセスルファムカリウム組成物」とは、粗アセスルファムカリウム組成物の濃縮、例えば粗アセスルファムカリウム組成物からの水の除去によって得られる組成物を指す。この中間アセスルファムカリウム組成物は、中間アセスルファムカリウム組成物の全重量を基準として少なくとも10重量%のアセスルファムカリウムを含み、粗アセスルファムカリウム組成物のものよりも高いアセスルファムカリウムの重量%を有する。
【0024】
[0021]「精製アセスルファムカリウム組成物」とは、中間アセスルファムカリウム組成物の分離、例えば結晶化及び/又は濾過によって(好ましくは直接的に)得られる組成物を指す。精製アセスルファムカリウム組成物は、精製アセスルファムカリウム組成物の全重量%を基準として少なくとも15重量%のアセスルファムカリウムを含み、中間アセスルファムカリウム組成物のものよりも高いアセスルファムカリウムの重量%を有する。
【0025】
[0022]本明細書において用いる「滞留時間」とは、処理する組成物(又は流れ)、例えば粗アセスルファムカリウム組成物を特定の処理操作中に保持する時間を指す。滞留時間は、処理する組成物を処理操作に導入する時点で開始され、滞留時間は、(処理によって形成される)得られる組成物が処理操作から排出される時点で終了する。1つの特定の例として、濃縮操作、例えば蒸発に関する滞留時間とは、粗アセスルファムカリウム組成物
を蒸発器に導入する時点から、中間アセスルファムカリウム組成物が蒸発器から排出されるまでの時間を指す。他の例として、分離操作、例えば結晶化に関する滞留時間とは、粗アセスルファムカリウム組成物を結晶化装置に導入する時点から、中間アセスルファムカリウム組成物が結晶化装置から排出されるまでの時間を指す。
【0026】
[0023]本明細書において用いる「環化反応時間」とは、アセトアセタミド塩の供給の開始からアセトアセタミド塩の供給の終了までの時間を指す。幾つかの場合においては、示されている場合、環化反応時間には、アセトアセタミド塩の供給の終了後の更なる時間、例えば追加の5分間又は追加の1分間を含めることができる。
【0027】
[0024]粗アセスルファムカリウム組成物の処理は、1以上の操作、例えば濃縮操作及び/又は分離操作を伴うことができる。一般に、濃縮操作は分離操作とはみなされない。幾つかの態様においては、1つ又は複数の濃縮操作及び1つ又は複数の分離操作が粗アセスルファムカリウム組成物の処理全体を構成し、これにより精製アセスルファムカリウム組成物が得られる。幾つかの場合においては、濃縮操作全体に、複数の個々の濃縮操作又はユニットを含めることができ、分離操作全体に、複数の個々の分離操作又はユニットを含めることができる。
【0028】
[0025]本明細書において用いる「wppm」及び「wppb」は、それぞれ重量100万分率又は重量10億分率を意味し、それぞれの組成物全体の全重量、例えば粗アセスルファムカリウム組成物全体又は精製アセスルファムカリウム組成物全体の全重量を基準とする。
【0029】
アセスルファムカリウムの形成(pH制御):
[0026]高純度のアセスルファムカリウム組成物を製造する方法をここに記載する。一態様においては、この方法は、環状三酸化イオウ付加体を形成する工程、環状三酸化イオウ付加体を加水分解して、アセスルファム-Hを含むアセスルファム-H組成物を形成する工程、及びアセスルファム-H組成物中のアセスルファム-Hを中和して(及び場合によっては中和反応生成物を相分離して)粗アセスルファムカリウム組成物を形成する工程を含む。粗アセスルファムカリウム組成物は、アセスルファムカリウム、及び存在していたとしても非常に低い量で存在する不純物、例えばアセトアセタミド-N-スルホン酸を含む。
【0030】
[0027]また、上述のプロセス工程において他の不純物も形成される可能性がある。例えば、環状三酸化イオウ付加体の形成によって、環状三酸化イオウ付加体、並びに更なる反応副生成物及び不純物を含む環状三酸化イオウ付加体組成物が生成する可能性がある。同様に、アセスルファム-Hの形成によって、アセスルファム-H、並びに更なる反応副生成物及び不純物を含むアセスルファム-H組成物が生成する可能性がある。
【0031】
[0028]環状三酸化イオウ付加体の形成には、スルファミン酸とトリエチルアミンを反応させてアミドスルファミン酸塩を形成する工程;アミドスルファミン酸塩とジケテンを反応させてアセトアセタミド塩を形成する工程;溶媒、例えばジクロロメタンと、環化剤、例えば三酸化イオウを接触させて、環化剤組成物を形成する工程;及びアセトアセタミド塩を環化剤組成物中の三酸化イオウと反応させて環状三酸化イオウ付加体を形成する工程;を含ませることができる。アミドスルファミン酸塩形成反応、アセトアセタミド塩形成反応、及び溶媒と環化剤との接触は、これらの工程をアセトアセタミド塩と環化剤組成物中の環化剤との反応の前に行う限りにおいて任意の順番で行うことができる。
【0032】
[0029]上述したように、中和工程においては、中和剤によってアセスルファム-Hを中和してアセスルファムカリウムを形成する。重要なことには、中和工程は低いpHレベル
で行うか、又はかかるpHレベルに維持し、及び/又は中和工程のpHは低いレベルに維持し、これにより、粗アセスルファムカリウム組成物中の幾つかの不純物、例えばアセトアセタミド-N-スルホン酸の形成が減少又は排除される。この文脈において「行う」とは、中和工程を低いpHレベルにおいて開始することを意味し、「維持」とは、工程を、中和工程全体にわたってpHが低いpH範囲内に確実に維持されるように行うことを意味する。
【0033】
[0030]一態様においては、中和工程は、11.0以下、例えば10.5以下、10以下、9.5以下、9.0以下、8.5以下、8.0以下、7.5以下、7.0以下、又は6.5以下のpHで行うか、又はかかるpHに維持する。幾つかの態様においては、中和工程のpHは上述の限界値より低い値(限界値自体は含まれない)で行うか、又はかかる値に維持する。範囲に関しては、中和工程は、好ましくは、6.0~11.0、例えば7.0~11.0、7.5~11.0、9.0~11.0、9~10.5、7.0~10.5、7.0~10.0、8~10.5、8~10.3、8~10、又は7.5~9.0の範囲のpHにおいて行うか、又はかかるpHに維持する。中和工程のpHは、好ましくは、上述の範囲内(端点は含まれない)で行うか、又はかかる範囲内に維持する。
【0034】
[0031]好ましい態様においては、中和工程は、アセスルファム-H組成物中のアセスルファム-Hを中和剤と反応させてアセスルファムカリウム組成物を形成することを含む。
[0032]これらのpH範囲及び限界を用いることによって、得られる粗アセスルファムカリウム組成物(及び精製アセスルファムカリウム組成物)中のアセスルファム-H及びアセスルファムカリウム分解生成物の含量を最小にしながら、アセスルファム-Hのアセスルファムカリウムへの優れた転化率が与えられる。本発明の幾つかの態様によれば低いpHレベルが一般に望ましいが、ここで、中和工程のpHが過度に低いと、アセスルファムカリウムへのアセスルファム-Hの転化率が望ましくなく低下する可能性があることが見出された。中和工程のpHが過度に高いと、アセスルファムカリウムが望まれていない副生成物に分解する。アセスルファム-Hはアセスルファムカリウムよりも安定性が低く、したがってより分解しやすいことが知られている。上述のpH範囲及び限界を用いることによって、アセスルファムカリウムを確実に形成しながら、より少ないアセスルファム-H分子がその前駆体、例えばアセトアセタミドに分解する。粗アセスルファムカリウム組成物中の減少したアセトアセタミド-N-スルホン酸のレベルに加えて、低いpHレベルはまた、中和工程の下流で形成される可能性がある他の不純物に対しても有益な効果を有する可能性がある。例えば、アセトアセタミド-N-スルホン酸含量を減少させることによって、蒸発及び/又は結晶化工程中におけるその分解副生成物の形成も減少する。
【0035】
[0033]中和剤は、好ましくはカリウム含有化合物を含む。好ましくは、中和剤は水酸化カリウムを含む。中和剤の他の好適な例としては、KHCO3、K2CO3、及びカリウムアルコラートが挙げられる。好ましい態様においては、中和剤は塩基、例えば水酸化物化合物を含む。水酸化カリウムを用いる場合には、水酸化カリウムは膜プロセスによって製造することができる。或いは、水酸化カリウムはアマルガムプロセスによって製造することができる。
【0036】
[0034]中和工程においてpHを所望の範囲内に維持するために用いる具体的な方法は広く変化させることができる。幾つかの態様においては、中和工程におけるpHは、中和工程において用いる中和剤、好ましくは塩基性化合物、例えば水酸化物の量を制御することによって、所望の範囲内で行うか又は維持する。一態様においては、連続プロセスを用いる場合には、中和工程のpHは、連続プロセスを維持するpHである。一態様においては、バッチプロセスを用いる場合には、中和工程のpHは、中和反応混合物の最終pH、例えばバッチ操作の終了時におけるpHである。
【0037】
[0035]幾つかの場合においては、中和工程中のpHは、アセスルファム-H及び中和剤(及び更には溶媒)を含む中和反応混合物の成分を操作することによって所望の範囲内に維持することができる。例えば、中和反応混合物の組成物には、1重量%~95重量%、例えば10重量%~85重量%、又は25重量%~75重量%の中和剤;及び1重量%~95重量%、例えば10重量%~85重量%、又は25重量%~75重量%のアセスルファム-Hを含ませることができる。これらの濃度範囲は、中和剤及びアセスルファム-Hの混合物(溶媒を含まない)を基準とする。
【0038】
[0036]幾つかの態様においては、粗アセスルファムカリウム組成物の処理を行う温度は、低いレベルに維持する。また、幾つかの態様においては、処理プロセスの1以上の操作における(粗アセスルファムカリウム組成物又はその誘導体の)滞留時間は、低いレベルに維持する。これらのパラメーター下での処理を用いることによって、アセトアセタミド-N-スルホン酸の他の不純物への分解が有利に減少/排除される。
【0039】
[0037]幾つかの態様においては、粗アセスルファムカリウム組成物の処理、例えば処理操作を構成する工程の1以上は、低い温度で行うか、又はかかる温度に維持する。好ましくは、処理操作は濃縮操作及び分離操作を含み、これらの操作を低い温度で行う。
【0040】
[0038]幾つかの態様においては、濃縮操作、例えば濃縮操作を構成する工程の1以上は、低い温度、例えば90℃より低く、例えば88℃より低く、85℃より低く、83℃より低く、80℃より低く、78℃より低く、75℃より低く、73℃より低く、70℃より低く、65℃より低く、55℃より低く、50℃より低く、又は46℃より低い温度で行うか、又はかかる温度に維持する。幾つかの場合においては、濃縮操作の温度は、0℃より高く、例えば10℃より高く、15℃より高く、20℃より高く、22℃より高く、25℃より高く、35℃より高く、40℃より高く、又は50℃より高い温度に維持することができる。範囲に関しては、濃縮操作の温度は、0℃~90℃、例えば25℃~90℃、55℃~90℃、10℃~88℃、10℃~85℃、75℃~88℃、80℃~88℃、15℃~85℃、75℃~85℃、20℃~83℃、20℃~80℃、22℃~78℃、25℃~75℃、25℃~73℃、15℃~50℃、25℃~65℃、22℃~50℃、20℃~55℃、25℃~70℃、又は30℃~60℃の範囲であってよい。
【0041】
[0039]幾つかの態様においては、分離操作、例えば分離操作を構成する工程の1以上は、低い温度、例えば35℃より低く、30℃より低く、25℃より低く、20℃より低く、15℃より低く、10℃より低く、8℃より低く、6℃より低く、5℃より低く、又は0℃より低い温度で行うか、又はかかる温度に維持する。幾つかの場合においては、分離操作の温度は、-25℃より高く、例えば-10℃より高く、0℃より高く、5℃より高く、10℃より高く、15℃より高く、25℃より高く、又は30℃より高い温度に維持することができる。範囲に関しては、分離操作の温度は、-25℃~35℃、例えば-10℃~35℃、0℃~35℃、5℃~30℃、-10℃~30℃、-10℃~25℃、-10℃~20℃、-10℃~15℃、0℃~25℃、又は-10℃~30℃の範囲であってよい。処理において上述の温度を用いると、最終生成物純度が有利に向上する。
【0042】
[0040]幾つかの態様においては、粗アセスルファムカリウム組成物の処理、例えば処理操作を構成する工程の1以上は、短い滞留時間で行うか、又はかかる時間に維持する。好ましくは、処理操作は濃縮操作及び分離操作を含み、これらの操作は短い滞留時間及び/又は低いpHで行う。
【0043】
[0041]幾つかの態様においては、濃縮操作、例えば濃縮操作を構成する工程の1以上は、短い滞留時間で行うか、又はかかる時間に維持する。一態様においては、滞留時間は、180分未満、例えば170分未満、150分未満、120分未満、100分未満、90分未満、75分未満、50分未満、40分未満、30分未満、20分未満、又は10分未満である。下限に関しては、滞留時間は、少なくとも1秒、例えば少なくとも10秒、少なくとも1分、少なくとも10分、又は少なくとも15分であってよい。範囲に関しては、滞留時間は、1秒~180分、例えば10秒~180分、1分~180分、10分~150分、1分~50分、1分~30分、10分~100分、1分~80分、10分~80分、10分~50分、15分~90分、又は15分~75分の範囲であってよい。分離操作、例えば分離操作を構成する工程の1以上に、同じ滞留時間の限界及び範囲を適用することができる。濃縮操作及び/又は分離操作において滞留時間を用いることによって、最終生成物純度が有利に向上する。
【0044】
[0042]幾つかの態様においては、濃縮操作、例えば濃縮操作を構成する工程の1以上は、低いpHで行うか、又はかかるpHに維持する。一態様においては、分離のpHは、10.0より低く、例えば9.5より低く、9.0より低く、8.5より低く、8.0より低く、7.5より低く、7.0より低く、又は6.5より低く維持する。範囲に関しては、濃縮操作のpHは、好ましくは、6.0~10.0の間、例えば6.5~9.5の間、7.0~9.0の間、又は7.5~8.5の間に維持する。分離操作、例えば分離操作を構成する工程の1以上に、同じpH限界及び範囲を適用することができる。濃縮操作又は分離操作において低いpHレベルを用いることによって、最終生成物純度が有利に向上する。
[0043]ここに記載した1つ又は複数のプロセスによって形成される精製アセスルファムカリウム組成物は高い純度を有する。
【0045】
アセスルファムカリウム組成物:
[0044]粗アセスルファムカリウム組成物は、ここで議論したように、環状三酸化イオウ付加体を加水分解してアセスルファム-H組成物を形成し、アセスルファム-H組成物中のアセスルファム-Hを中和して、粗アセスルファムカリウム組成物を形成することによって形成される。中和工程の生成物を、水相及び有機相に相分離する。粗アセスルファムカリウム組成物は、水相から(更なる精製を行わないで)得ることができる。粗アセスルファムカリウム組成物は、アセスルファムカリウム、及びアセトアセタミド-N-スルホン酸、例えば2800wppm未満、例えば2700wppm未満、2600wppm未満、2500wppm未満、2400wppm未満、2000wppm未満、1500wppm未満、1000wppm未満、500wppm未満、又は100wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸を含む。範囲に関しては、粗アセスルファムカリウム組成物は、1wppm~2800wppm、例えば1wppm~2700wppm、10wppm~2700wppm、20wppm~2500wppm、100wppm~2500wppm、500wppm~2500wppm、1500~2400wppm、500wppm~2375wppm、600wppm~2000wppm、900~1900wppm、300wppm~1500wppm、400wppm~1400wppm、600wppm~1200wppm、又は700wppm~1100wppmのアセトアセタミド-N-スルホン酸を含み得る。
【0046】
[0045]粗アセスルファムカリウム組成物はアセトアセタミドを更に含む可能性があり、これはアセトアセタミド-N-スルホン酸に関して上記で議論した量で存在し得る。
[0046]通常は最終消費者の使用のために好適である精製アセスルファムカリウム組成物は、粗アセスルファムカリウム組成物を処理して不純物を除去することによって形成される。幾つかの場合において、精製アセスルファムカリウム組成物は、通常は販売される製品である。精製アセスルファムカリウム組成物は、好ましくは、アセスルファムカリウムと、37wppm未満、例えば35wppm未満、30wppm未満、25wppm未満、20wppm未満、15wppm未満、12wppm未満、10wppm未満、7wppm未満、5wppm未満、3wppm未満、1wppm未満、0.8wppm未満、0
.5wppm未満、又は0.3wppm未満のアセトアセタミドの混合物を含む。幾つかの場合においては、精製アセスルファムカリウム組成物は、アセトアセタミドを含まず、例えばアセトアセタミドを実質的に含まない(検出できない)。範囲に関しては、精製アセスルファムカリウム組成物は、1wppb~37wppm、例えば10wppb~35wppm、10wppb~25wppm、10wppb~15wppm、10wppb~12wppm、10wppb~10wppm、10wppb~7wppm、10wppb~5wppm、10wppb~3wppm、100wppb~15wppm、100wppb~10wppm、又は100wppb~5wppmのアセトアセタミドを含み得る。
【0047】
[0047]精製アセスルファムカリウム組成物は、好ましくは、アセスルファムカリウムと、37wppm未満、例えば35wppm未満、30wppm未満、25wppm未満、20wppm未満、15wppm未満、12wppm未満、10wppm未満、7wppm未満、5wppm未満、3wppm未満、1wppm未満、0.8wppm未満、0.5wppm未満、又は0.3wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸の混合物を含む。幾つかの場合においては、精製アセスルファムカリウム組成物は、アセトアセタミド-N-スルホン酸を含まず、例えばアセトアセタミド-N-スルホン酸を実質的に含まない(検出できない)。範囲に関しては、精製アセスルファムカリウム組成物は、1wppb~37wppm、例えば10wppb~35wppm、10wppb~25wppm、10wppb~15wppm、10wppb~12wppm、10wppb~10wppm、10wppb~7wppm、10wppb~5wppm、10wppb~3wppm、100wppb~15wppm、100wppb~10wppm、又は100wppb~5wppmのアセトアセタミド-N-スルホン酸を含み得る。
【0048】
[0048]アセスルファムカリウムの粗組成物、中間組成物、又は精製組成物中のアセトアセタミド-N-スルホン酸及び/又はアセトアセタミドの含量は、薄層クロマトグラフィーに関するヨーロッパ薬局方ガイドライン(2017)(HPLCに適合している)に基づき、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によって測定することができる。特定の測定方法は、CBM-20 Shimadzuコントローラーを有し、IonPac NS1((5μm)150×4mm)分析カラム及びIonPac NG1保護カラム(35×4.0mm)を装備したShimadzu製のLC SystemsHPLCユニットを用いる。(270nm及び280nmの波長における)検出のために、Shimadzu SPD-M20Aフォトダイオードアレイ検出器を用いることができる。分析は、23℃のカラム温度において行うことができる。第1の溶離液として、テトラブチルアンモニウムハイドロジェンスルフェート(3.4g/L)、アセトニトリル(300mL/L)、及び水酸化カリウム(0.89g/L)の水性混合物を用いることができ;第2の溶離液として、テトラブチルアンモニウムハイドロジェンスルフェート(3.4g/L)、及び水酸化カリウム(0.89g/L)の水性混合物を用いることができる。溶離は、次の第2の溶離液フロープロファイルにしたがって、勾配モードで行うことができる。
【0049】
・0~3分:80%(v/v)で一定;
・3~6分:50%(v/v)に直線状に減少;
・6~15分:50%(v/v)で一定;
・15~18分:0%に直線状に減少;
・18~22分:0%で一定;
・22~24分:80%(v/v)に直線状に増加;
・24~35分:80%(v/v)で一定。
溶離液の全流量は、約1.2mL/分であってよい。データの回収及び計算は、Shimadzu製のLabSolutionソフトウエアを用いて行うことができる。
【0050】
[0049]上述したように、粗アセスルファムカリウム組成物は、上述の反応、加水分解、
及び中和によって形成され、精製アセスルファムカリウム組成物は、粗アセスルファムカリウム組成物の処理によって形成される。好ましい態様においては、中和は、11.0以下、例えば10.5以下、10以下、9.5以下、9.0以下、8.5以下、8.0以下、7.5以下、7.0以下、又は6.5以下のpH(場合によっては、7.5~11、例えば9.0~11.0、9~10.5、7.0~10.5、7.0~10.0、8~10.5、8~10.3、8~10、又は7.5~9.0の範囲のpH)において行うか、又はかかるpHに維持することができ;粗アセスルファムカリウム組成物は、2800wppm未満、例えば2700wppm未満、2600wppm未満、2500wppm未満、2400wppm未満、2000wppm未満、1500wppm未満、1000wppm未満、500wppm未満、又は100wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸(場合によっては、1wppm~2800wppm、例えば1wppm~2800wppm、10wppm~2700wppm、20wppm~2500wppm、100wppm~2500wppm、500wppm~2500wppm、1500~2400wppm、500wppm~2375wppm、600wppm~2000wppm、900~1900wppm、300wppm~1500wppm、400wppm~1400wppm、600wppm~1200wppm、又は700wppm~1100wppmのアセトアセタミド-N-スルホン酸)を含み得;精製アセスルファムカリウム組成物は、37wppm未満、例えば35wppm未満、30wppm未満、25wppm未満、20wppm未満、15wppm未満、12wppm未満、10wppm未満、7wppm未満、5wppm未満、3wppm未満、1wppm未満、0.8wppm未満、0.5wppm未満、又は0.3wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸(場合によっては、1wppb~37wppm、例えば10wppb~35wppm、10wppb~25wppm、10wppb~15wppm、10wppb~12wppm、10wppb~10wppm、10wppb~7wppm、10wppb~5wppm、10wppb~3wppm、100wppb~15wppm、100wppb~10wppm、又は100wppb~5wppmのアセトアセタミド-N-スルホン酸);及び、37wppm未満、例えば35wppm未満、30wppm未満、25wppm未満、20wppm未満、15wppm未満、12wppm未満、10wppm未満、7wppm未満、5wppm未満、3wppm未満、1wppm未満、0.8wppm未満、0.5wppm未満、又は0.3wppm未満のアセトアセタミド(場合によっては、10wppb~37wppm、例えば10wppb~35wppm、10wppb~15wppm、10wppb~12wppm、10wppb~10wppm、10wppb~7wppm、10wppb~5wppm、10wppb~3wppm、100wppb~15wppm、100wppb~10wppm、又は100wppb~5wppmのアセトアセタミド)を含み得る。
【0051】
[0050]特定の態様においては、粗アセスルファムカリウム組成物は500wppm~2375wppmのアセトアセタミド-N-スルホン酸を含み、精製アセスルファムカリウム組成物は25wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸を含み、25wppm未満のアセトアセタミドを更に含む。
【0052】
[0051]他の特定の態様においては、中和は9.0~11.0の範囲のpHで行うか、又はかかるpHに維持し、粗アセスルファムカリウム組成物は20wppm~2500wppmのアセトアセタミド-N-スルホン酸を含み、精製アセスルファムカリウム組成物は25wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸、及び15wppm未満のアセトアセタミドを含む。
【0053】
[0052]他の特定の態様においては、中和は8.0~10.3の範囲のpHで行うか、又はかかるpHに維持し、粗アセスルファムカリウム組成物は600wppm~1200wppmのアセトアセタミド-N-スルホン酸を含み、精製アセスルファムカリウム組成物
は10wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸、及び10wppm未満のアセトアセタミドを含む。
【0054】
[0053]他の特定の態様においては、中和は8~10.3の範囲のpHで行うか、又はかかるpHに維持し、粗アセスルファムカリウム組成物は2400wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸を含み、精製アセスルファムカリウム組成物は10wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸、及び10wppm未満のアセトアセタミドを含む。
【0055】
[0054]他の特定の態様においては、中和は9.0~11.0の範囲のpHで行うか、又はかかるpHに維持し、粗アセスルファムカリウム組成物は500wppm~2375wppmのアセトアセタミド-N-スルホン酸を含み、精製アセスルファムカリウム組成物は10wppb~10wppmのアセトアセタミド-N-スルホン酸、及び10wppb~10wppmのアセトアセタミドを含む。
【0056】
[0055]アセスルファムカリウム組成物(粗組成物及び/又は精製組成物)は、幾つかの場合においては他の不純物を含む可能性がある。代表的な不純物としては、中でもハロ-アセスルファムカリウムが挙げられる。アセスルファムカリウム組成物(粗組成物及び/又は精製組成物)はまた、重金属も含む可能性がある。有機不純物及び/又は重金属は、それぞれのアセスルファムカリウム組成物(粗組成物又は精製組成物)の全重量を基準として、1wppb~25wppm、例えば100wppb~20wppm、100wppb~15wppm、500wppb~10wppm、又は1wppm~5wppmの範囲の量で存在し得る。重金属は、比較的高い密度、例えば3g/cm3より高く、又は7g/cm3より高い密度を有する金属として定義される。代表的な重金属としては、鉛及び水銀が挙げられる。幾つかの場合においては、粗又は精製アセスルファムカリウム組成物は、1wppb~25wppm、例えば100wppb~20wppm、100wppb~15wppm、500wppb~10wppm、又は1wppm~5wppmの範囲の量の水銀を含み得る。限界に関しては、粗又は精製アセスルファムカリウム組成物は、25wppm未満、例えば20wppm未満、15wppm未満、10wppm未満、又は5wppm未満の水銀を含み得る。幾つかの場合においては、粗又は精製アセスルファムカリウム組成物は、1wppb~25wppm、例えば100wppb~20wppm、100wppb~15wppm、500wppb~10wppm、又は1wppm~5wppmの範囲の量の鉛を含み得る。限界値に関しては、粗又は精製アセスルファムカリウム組成物は、25wppm未満、例えば20wppm未満、15wppm未満、10wppm未満、又は5wppm未満の鉛を含み得る。幾つかの場合においては、膜プロセスによって水酸化カリウムが形成される場合には、得られる粗又は精製アセスルファムカリウム組成物は、存在したとしても非常に低いレベルの水銀、例えば10wppm未満、5wppm未満、3wppm未満、1wppm未満、500wppb未満、又は100wppb未満の水銀を有し得る。
【0057】
中間反応パラメーター:
[0056]高純度のアセスルファムカリウムを製造するための反応を下記においてより詳細に記載する。
【0058】
アミドスルファミン酸塩形成反応:
[0057]第1の反応工程においては、スルファミン酸とアミンを反応させてスルファミン酸塩を形成する。アミンとしてトリエチルアミンを用いてトリエチルアンモニウムスルファミン酸塩を生成させる代表的な反応スキームを、下記の反応(1)において示す。
【0059】
【0060】
[0058]第1の反応混合物中には酢酸も存在し、下記の反応(2)において示されるように、これがアミン、例えばトリエチルアミンと反応してトリエチルアンモニウムアセテートが形成される。
【0061】
【0062】
[0059]これらの反応において用いるアミンは広く変化してよい。好ましくは、アミンはトリエチルアミンを含む。一態様においては、アミンは、トリメチルアミン、ジエチルプロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、エチルジイソプロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリシクロヘキシルアミン、エチルジシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、ベンジルジメチルアミン、ピリジン、置換ピリジン類、例えばピコリン、ルチジン、コリジン、又はメチルエチルピリジン、N-メチルピペリジン、N-エチルピペリジン、N-メチルモルホリン、N,N-ジメチルピペラジン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-ノン-5-エン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-ウンデス-7-エン、1,4-ジアザビシクロオクタン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルプロピレンジアミン、テトラメチルブチレンジアミン、1,2-ジモルホリルエタン、ペンタメチルジエチルトリアミン、ペンタエチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、テトラメチルジアミノメタン、テトラプロピルジアミノメタン、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ヘキサメチルトリプロピレンテトラミン、ジイソブチレントリアミン、トリイソプロピレントリアミン、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0063】
アセトアセタミド塩形成反応:
[0060]反応(1)において形成されたら、スルファミン酸塩をアセトアセチル化剤と反応させて、アセトアセタミド塩、好ましくはアセトアセタミド-N-スルホネートトリエチルアンモニウム塩を形成する。好ましくは、アセトアセチル化剤はジケテンを含むが、ジケテンと共にか又はジケテンを用いないで他のアセトアセチル化剤を用いることができる。
【0064】
[0061]一態様においては、得られるアセトアセタミド塩は次式(3)に対応する。
【0065】
【0066】
式中、M+は適当なイオンである。好ましくは、M+は、アルカリ金属イオン又はN+R1R2R3R4である。R1、R2、R3、及びR4は、互いに独立して、有機基又は水素、好ましくはH、又はC1~C8アルキル、C6~C10シクロアルキル、アリール、及び/又はアラルキルであってよい。好ましい態様においては、R1は水素であり、R
2、R3、及びR4はアルキル、例えばエチルである。
【0067】
[0062]アセトアセタミド塩を形成するための代表的な反応スキームは、反応物質としてトリアルキルアンモニウムアミドスルファミン酸塩及びジケテンを用いて、下記の反応(4)において示すようにアセトアセタミドトリエチルアンモニウム塩を生成させる。
【0068】
【0069】
[0063]一態様においては、反応は、触媒(広く変化してよい)の存在下で行う。幾つかの態様においては、触媒は1種類以上のアミン及び/又はホスフィンを含む。好ましくは、触媒はトリエチルアミンを含む。幾つかの場合においては、トリメチルアミンは触媒及び反応物質の両方として働く。
【0070】
[0064]アミドスルファミン酸塩形成反応及びアセトアセタミド塩形成反応を別々の反応器内で行う一態様においては、第2の反応混合物は、アミドスルファミン酸塩、ジケテン、及び触媒、例えばトリエチルアミンを含む。好ましくは、触媒を第1の反応から第2の反応の反応混合物に繰り越す。次に、第2の反応混合物を、アセトアセタミド塩を形成するのに有効な条件にかける。
【0071】
[0065]一態様においては、第2の反応混合物の組成は第1の反応混合物の組成と同様であってよい。好ましい態様においては、アミドスルファミン酸塩形成反応の反応生成物が、第2の反応混合物のアミドスルファミン酸塩成分を与える。上述の成分に加えて、第2の反応混合物は、第1の反応からの反応副生成物、又は未反応の出発物質を更に含む可能性がある。
【0072】
[0066]一態様においては、アセトアセチル化剤、例えばジケテンの量は、少なくとも供給される反応物質のアミドスルファミン酸塩と等モル量でなければならない。一態様においては、このプロセスは、30モル%未満、例えば10モル%未満過剰のジケテンを用いることができる。より大きな過剰量も意図される。
【0073】
[0067]アミドスルファミン酸塩形成反応及び/又はアセトアセタミド塩形成反応は、有機溶媒を用いることができる。好適な不活性有機溶媒としては、反応において出発物質、環化剤、最終生成物、及び/又は触媒と望ましくない形態で反応しない任意の有機溶媒が挙げられる。溶媒は、好ましくはアミドスルファミン酸塩を少なくとも部分的に溶解する能力を有する。代表的な有機溶媒としては、好ましくは4個以下の炭素原子を有するハロゲン化脂肪族炭化水素、例えば塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロフルオロエチレン;脂肪族ケトン、好ましくは3~6個の炭素原子を有するもの、例えばアセトン、メチルエチルケトン;脂肪族エーテル、好ましくは4又は5個の炭素原子を有する環式脂肪族エーテル、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン;低級脂肪族カルボン酸、好ましくは2~6個の炭素原子を有するもの、例えば酢酸、プロピオン酸;脂肪族ニトリル、好ましくはアセトニトリル;炭酸及び低級脂肪族カルボン酸のN-アルキル置換アミド、好ましくは5個以下の炭素原子を有するアミド、例えばテトラメチル尿素、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン;脂肪族スルホキシド、好ましくはジメチルスルホキシド、及び脂肪族スルホン、好ましくはスルホランが挙げられる。
【0074】
[0068]特に好ましい溶媒としては、ジクロロメタン(塩化メチレン)、1,2-ジクロロエタン、アセトン、氷酢酸、及びジメチルホルムアミドが挙げられ、ジクロロメタン(塩化メチレン)が特に好ましい。溶媒は、単独か又は混合物のいずれかで用いることができる。一態様においては、溶媒はハロゲン化脂肪族炭化水素溶媒であり、好ましくは溶媒はジクロロメタンである。クロロホルム及びテトラクロロメタンも代表的な溶媒である。
【0075】
[0069]一態様においては、アセトアセタミド塩形成反応は、-30℃~50℃、例えば0℃~25℃の範囲の温度で行う。反応圧は広く変化させることができる。好ましい態様においては反応は大気圧で行うが、他の圧力も意図される。反応時間は、好ましくは0.5時間~12時間、例えば1時間~10時間の範囲で広く変化させることができる。一態様においては、反応は、アミドスルファミン酸塩を導入してジケテンを計量投入することによって行う。他の態様においては、反応は、ジケテンを導入してアミドスルファミン酸塩を計量投入することによって行う。反応は、ジケテン及びアミドスルファミン酸を導入して触媒を計量投入することによって行うことができる。
【0076】
[0070]形成されたら、場合によってはそれぞれの反応生成物を1以上の精製工程にかける。例えば、溶媒を、例えば蒸留によって反応生成物から分離することができ、残渣(主としてアセトアセタミド-N-スルホネート)を、例えばアセトン、酢酸メチル、又はエタノールのような好適な溶媒から再結晶することができる。
【0077】
環化及び加水分解:
[0071]アセトアセタミド塩を、溶媒の存在下において、環化剤、例えば環化剤組成物中の環化剤と反応させて、環状三酸化イオウ付加体、及び幾つかの場合においては不純物を含む環状(三酸化イオウ)付加体組成物を形成する。幾つかの場合においては、環状三酸化イオウ付加体形成反応の前に冷却工程を行う。一態様においては、環化は、少なくとも等モル量の環化剤を用いることによって行う。環化剤は、不活性の無機又は有機溶媒中に溶解することができる。環化剤は、一般にモル過剰、例えばアセトアセタミド塩の全モル数を基準として20倍以下過剰量、又は10倍以下過剰量で用いる。環化剤として三酸化イオウを用いる代表的な環化反応を下記の反応(5)において示す。
【0078】
【0079】
[0072]一態様においては、環化剤組成物中の溶媒と環化剤との重量比は、少なくとも1:1、例えば少なくとも2:1、又は少なくとも5:1である。一態様においては、環化剤組成物中の溶媒と環化剤との重量比は、1:1~25:1、例えば1:1~10:1、2:1~10:1、又は5:1~10:1の範囲である。
【0080】
[0073]環化剤は、アセトアセタミド塩の閉環を開始する任意の化合物であってよい。三酸化イオウが好ましい環化剤であるが、他の環化剤の使用が意図される。
[0074]環化剤は、固体又は液体形態のいずれかで、或いは蒸気中で凝縮させることによって反応混合物に加えることができる。好適な不活性無機又は有機溶媒は、三酸化イオウ、或いは反応の出発物質又は最終生成物と望ましくない形態で反応しない液体である。好ましい有機溶媒としては、好ましくは4個以下の炭素原子を有するハロゲン化脂肪族炭化水素、例えば塩化メチレン(ジクロロメタン)、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロフルオロエチレン;炭酸と低級脂肪族アルコール、好ましくはメタノール又はエタノールとのエステル;好ましくは4個以下の炭素原子を有するニトロアルカン、特にニトロメタン;アルキル置換ピリジン類、好ましくはコリジン;及び脂肪族スルホン、好ましくはスルホランが挙げられるが、これらに限定されない。環化反応のために特に好ましい溶媒としては、ジクロロメタン(塩化メチレン)、1,2-ジクロロエタン、アセトン、氷酢酸、及びジメチルホルムアミドが挙げられ、ジクロロメタン(二塩化メチレン)が特に好ましい。他の溶媒、例えばここで言及した他の溶媒も溶媒として好適である可能性がある。溶媒は、単独か又は混合物のいずれかで用いることができる。一態様においては、溶媒はハロゲン化脂肪族炭化水素溶媒であり、好ましくは溶媒はジクロロメタンである。このプロセスは、これらの溶媒を単独か又はその混合物で用いることができる。
【0081】
[0075]幾つかの場合においては、環化剤組成物中の溶媒は、(1)濃硫酸、(2)液体二酸化イオウ、又は(3)不活性有機溶媒から選択することができる。
[0076]好ましい態様においては、アセトアセタミド塩形成反応及び環化反応の両方において同じ溶媒を用いる。1つの利益として、アセトアセタミド塩形成反応において得られる溶液を、アセトアセタミド塩形成反応生成物を単離することなく、環化において直ちに用いることができる。
【0082】
[0077]一態様においては、環化反応のための反応温度は、-70℃~175℃、例えば-40℃~60℃の範囲である。反応を行う圧力は広く変化させることができる。一態様においては、反応は、0.01MPa~10MPa、例えば0.1MPa~5MPaの範囲の圧力で行う。好ましくは、反応は大気圧で行う。
【0083】
[0078]アセトアセタミド塩を環化反応器に導入することができ、冷却した環化剤組成物、例えば場合によっては溶媒中の環化剤の溶液を反応器中に計量投入することができる。好ましい態様においては、両方の反応物質(アセトアセタミド塩及び環化剤)を同時に反応器中に供給する。一態様においては、まず冷却した環化剤組成物を反応器中に導入し、アセトアセタミド塩を加える。好ましくは、環化剤組成物の少なくとも一部を反応器中に導入し、次に、好ましくは上記に記載の温度を維持しながら、アセトアセタミド塩及び(更なる)環化剤を連続的か又は何回かに分けて計量投入する。
【0084】
[0079]アセトアセタミド塩を反応器に導入することができ、環化剤組成物を反応器中に計量投入することができる。好ましい態様においては、両方の反応物質を同時に反応器中に供給する。一態様においては、まず環化剤組成物を反応器中に導入し、アセトアセタミド塩を加える。好ましくは、環化剤組成物の少なくとも一部を反応器中に導入し、次に、好ましくは上記に記載の温度を維持しながら、アセトアセタミド塩及び(更なる)環化剤を連続的か又は何回かに分けて計量投入する。
【0085】
[0080]環状三酸化イオウ付加体組成物からの粗アセスルファムカリウム組成物の形成は、幾つかの態様においては、環状三酸化イオウ付加体を加水分解してアセスルファム-H組成物を形成する工程;アセスルファム-H組成物中のアセスルファム-Hを中和して粗アセスルファムカリウム組成物を形成する工程;及び粗アセスルファムカリウム組成物からアセスルファムカリウム組成物を形成する工程;を含む。
【0086】
[0081]環状三酸化イオウ付加体は、通常の手段によって、例えば水を用いて加水分解することができる。而して、形成工程に、環状三酸化イオウ付加体を加水分解してアセスルファム-H組成物を形成する工程を含ませることができる。アセスルファム-Hは甘味料
酸と呼ばれる。
【0087】
[0082]代表的な加水分解反応スキームを下記の反応(6)において示す。
【0088】
【0089】
[0083]水を加えることによって相分離が引き起こされる。加水分解によって形成される甘味料酸のアセスルファム-H(6-メチル-3,4-ジヒドロ-1,2,3-オキサチアジン-4-オン2,2-ジオキシド)の大部分、例えば少なくとも60重量%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%は、有機相中に存在する。甘味料酸の残りは水相中に存在し、これは抽出して、場合によっては有機相中の甘味料酸に加えることができる。反応媒体としてジクロロメタンを用いる場合には、例えば三酸化イオウを基準としてモル過剰の水又は氷を、環状三酸化イオウ付加体/三酸化イオウ溶液に加えることができる。
【0090】
[0084]幾つかの場合においては、加水分解工程は、水を環状三酸化イオウ付加体に加えることを含む。好ましい態様においては、水とアセトアセタミド塩との重量比は、1.3:1より高く、例えば1.5:1より高く、1.7:1より高く、2:1より高く、又は2.2:1より高い。これらの比を用いることによって、中和された粗アセスルファムカリウム組成物中におけるアセトアセタミド-N-スルホン酸及び/又はアセトアセタミドの形成の減少をもたらすことができ、例えば粗アセスルファムカリウム組成物がここで議論する量のアセトアセタミド-N-スルホン酸を含むようにすることができる。
【0091】
[0085]水を加えた後、反応溶媒、例えばジクロロメタンを蒸留によって除去することができ、或いは有機相中に残留するアセスルファム-Hをより好適な溶媒で抽出することができる。好適な溶媒は、硫酸に対して十分に安定で、満足できる溶解能力を有するものである。他の好適な溶媒としては、炭酸のエステル、例えば炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、及び炭酸エチレン、又は有機モノカルボン酸のエステル、例えばギ酸イソプロピル及びギ酸イソブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、及び酢酸ネオペンチル、或いはジカルボン酸のエステル又は水と非混和性のアミド、例えばテトラブチル尿素が好適である。酢酸イソプロピル及び酢酸イソブチルが特に好ましい。
【0092】
[0086]有機相を合わせて、例えばNa2SO4で乾燥し、蒸発させる。アルカリ水溶液を有機相に適当に加えることによって、抽出において繰り越された硫酸を除去することができる。この目的のために、水相において到達するpHが、抽出剤及び水の同じ二相系中の同じ濃度の純粋な6-メチル-3,4-ジヒドロ-1,2,3-オキサチアジン-4-オン2,2-ジオキシドのものに相当するようになるまで、アルカリ希水溶液を有機相に加えることができる。
【0093】
中和:
[0087]アセスルファム-Hの中和によって、アセスルファム-Hの非毒性の塩、例えばアセスルファムカリウムが生成する。一態様においては、中和は、アセスルファム-Hを適当な塩基、例えば水酸化カリウム、特に膜法で製造された水酸化カリウムと反応させることによって行う。他の好適な塩基としては、例えばKOH、KHCO3、K2CO3、
及びカリウムアルコラートが挙げられる。中和剤として水酸化カリウムを用いる代表的な反応スキームを下記の反応(7)において示す。
【0094】
【0095】
[0088]一態様においては、カリウム塩基水溶液を用いて、アセスルファム-Hを中和して、精製された有機抽出相から直接抽出することができる。次に、アセスルファムカリウムを、適当な場合には溶液の蒸発後に結晶形態で沈澱析出させ、これはまた精製のために再結晶することができる。
【0096】
[0089]一態様においては、このプロセスは、小規模バッチプロセス又は実験室スケールのプロセスではない。例えば、精製アセスルファムカリウム組成物を製造するための本発明方法は、バッチあたり少なくとも50グラム、例えばバッチあたり少なくとも100グラム、バッチあたり少なくとも500グラム、バッチあたり少なくとも1キログラム、又はバッチあたり少なくとも10キログラムの精製アセスルファムカリウム組成物を生産することができる。速度に関しては、本発明方法は、1時間あたり少なくとも50グラム、例えば1時間あたり少なくとも100グラム、1時間あたり少なくとも500グラム、1時間あたり少なくとも1キログラム、又は1時間あたり少なくとも10キログラムの精製アセスルファムカリウム組成物を生産することができる。
【0097】
[0090]
図1は、ここに記載した方法にしたがう代表的なアセスルファムカリウムプロセス100を示す。プロセス100は、アミドスルファミン酸塩形成反応器102、及びアセトアセタミド塩形成反応器104を含む。
図1は2つの中間体形成反応のための別々の反応器を示しているが、他の構成、例えば一反応器プロセスは本方法の意図の範囲内である。スルファミン酸供給ライン106を通して、スルファミン酸をアミドスルファミン酸塩形成反応器102に供給する。アミン供給ライン108を通して、1種類又は複数のアミン、好ましくはトリエチルアミンをアミドスルファミン酸塩形成反応器102に供給する。スルファミン酸及び1種類又は複数のアミンに加えて、酢酸も(供給ライン110を通して)アミドスルファミン酸塩形成反応器102に供給する。アミドスルファミン酸塩形成反応器102内で得られる反応混合物は、上記で議論した通りである。アミドスルファミン酸塩形成反応器102内において、スルファミン酸とアミンを(酢酸の存在下で)反応させて粗アミドスルファミン酸塩組成物を生成させて、ライン112を通して反応器102から排出する。示してはいないが、アミドスルファミン酸塩形成反応器102内に、反応溶媒、例えばジクロロメタンも存在させることができる。
【0098】
[0091]ライン112内の粗アミドスルファミン酸塩組成物を、アセトアセタミド塩形成反応器104に送る。供給ライン114を通して、ジケテンをアセトアセタミド塩形成反応器104に供給する。アセトアセタミド塩形成反応器104内において、アミドスルファミン酸塩とジケテンを反応させて粗アセトアセタミド塩組成物を生成させ、ライン118を通して反応器104から排出する。示しはいないが、アセトアセタミド塩形成反応器104内にジクロロメタンも存在させることができる。
【0099】
[0092]供給ライン121及び123を通して、環化剤(二酸化イオウ)及び溶媒(ジクロロメタン)を容器119に供給する。容器119は、好ましくは、その中でこれらの2つの成分を含む環化剤組成物が形成される容器である。ライン125を通して、環化剤及び溶媒の両方を含む環化剤組成物を容器119から排出する。
【0100】
[0093]ライン118を通して、粗アセトアセタミド塩組成物を環化反応器120に送る。また、(ライン125を通して)環化剤組成物も環化反応器120に送る。ライン125は、好ましくは、ここで議論した材料で、且つここで議論した滞留時間を容易にするような寸法及び形状で形成される。環化反応器120内において、ライン118内の粗アセトアセタミド塩組成物中のアセトアセタミド塩を環化して、ライン124を通して環状三酸化イオウ付加体流を排出する。
【0101】
[0094]ライン124内の環状三酸化イオウ付加体は、加水分解反応器126に送る。水供給ライン128を通して水を加水分解反応器126に供給する。加水分解反応器126内において、環状三酸化イオウ付加体を加水分解して粗アセスルファム-H組成物を生成させ、これをライン130を通して加水分解反応器126から排出して、相分離ユニット132に送る。相分離ユニット132によって、ライン130の内容物を、有機相134及び水相136に分離する。有機相134は、主要量のライン130内のアセスルファム-H、及び溶媒、例えば塩化メチレンを含む。水相136は、ライン137を通して排出され、これはトリエチルアンモニウムスルフェート、並びに場合によっては硫酸及び少量のアセスルファム-Hを含む。水相は、更に精製して、アセスルファム-H及び/又はトリエチルアンモニウムスルフェートを分離及び/又は回収することができる。回収されたアセスルファム-Hは、有機相からのアセスルファムと合わせることができる(図示せず)。
【0102】
[0095]有機相134を相分離ユニット132から排出し、これは(ライン140を通して)抽出カラム138に送る。水供給ライン142を通して水を抽出カラム138に供給する。水によってライン140の内容物から残留スルフェートを抽出し、精製されたアセスルファム-H組成物をライン144を通して抽出カラム138から排出する。抽出されたスルフェートはライン145を通して抽出カラム138から排出する。
【0103】
[0096]ライン144内の精製されたアセスルファム-H組成物は、中和ユニット146に送る。また、中和ユニット146に(ライン148を通して)水酸化カリウムも供給する。(ライン148による)中和ユニット146への水酸化カリウムの添加は、ここで議論した中和中における所望のpHレベルを達成し、及び/又はそれを維持するように調節することができる。水酸化カリウムによって精製されたアセスルファム-H組成物中のアセスルファム-Hが中和されて、アセスルファムカリウム、ジクロロメタン、水、水酸化カリウム、及び不純物、例えばアセトアセタミド-N-スルホン酸又はアセトアセタミドを含む生成物が生成し、これをライン150を通して中和ユニット146から排出する。この生成物は、粗アセスルファムカリウム組成物とみなすことができる。
【0104】
[0097]ライン150内の粗アセスルファムカリウム生成物流は、処理区域156に送って精製アセスルファムカリウムを回収することができる(流れ152によって排出されるように示されている)。精製アセスルファムカリウムに加えて、流れ154によって示されるように、ジクロロメタン及び水酸化カリウムを粗アセスルファムカリウム生成物流から分離することができる。流れ154の内容物は、回収及び/又はプロセスに再循環することができる。処理区域156には、ここに記載した処理操作の1以上、例えばストリッ
ピング、蒸発、結晶化、及び濾過を含ませることができる。
【0105】
[0098]ライン150内の生成物は、相分離ユニット160に送る。相分離ユニット160は、ライン150内の生成物を有機相162及び水相164に分離する。水相164は、主要量のライン150内のアセスルファムカリウム及び若干の不純物を含む。有機相162は、水酸化カリウム、ジクロロメタン、及び水を含み、これらの成分を回収するために更に処理することができる。水相164(更なる処理を行っていない)は、粗アセスルファムカリウム組成物とみなすことができる。水相164は、場合によっては処理して精製アセスルファムカリウム組成物を形成することができる。
【0106】
[0099]水相164は、ライン166を通して処理ユニット156に送る。処理ユニット156内において、水相164を処理して精製アセスルファムカリウム組成物(販売することができる製品)を得る(流れ152を通して排出するように示されている)。精製アセスルファムカリウム組成物に加えて、ジクロロメタン及び水酸化カリウムを分離することができる。これらの成分は、ライン154を通して処理ユニット156から排出する。流れ154の内容物は、回収及び/又はプロセスに再循環することができる。
【0107】
[0100]本発明はまた次の形態に関する。
[0101]形態1:精製アセスルファムカリウム組成物を製造する方法であって、
(a)環状三酸化イオウ付加体を形成する工程;
(b)前記環状三酸化イオウ付加体を加水分解して、アセスルファム-Hを含むアセスルファム-H組成物を形成する工程;
(c)前記アセスルファム-H組成物中の前記アセスルファム-Hを中和して、アセスルファムカリウム及び2800wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸を含む粗アセスルファムカリウム組成物を形成する工程、ここで中和工程は11.0以下のpHで行う;及び
(d)前記粗アセスルファムカリウム組成物を処理して、アセスルファムカリウム及び37wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸を含む精製アセスルファムカリウム組成物を形成する工程;
を含む上記方法。
【0108】
[0102]形態2:前記中和工程(c)が、
アセスルファム-Hを、アセスルファム-H/中和剤反応混合物中で中和剤と反応させてアセスルファムカリウム組成物を形成すること;
を含む、形態1の方法。
【0109】
[0103]形態3:前記中和剤が水酸化カリウムを含む、上記の形態のいずれかの方法。
[0104]形態4:前記水酸化カリウムが膜プロセスによって製造され、前記精製アセスルファムカリウム組成物が10wppm未満の水銀を含む、上記の形態のいずれかの方法。
【0110】
[0105]形態5:前記アセスルファム-H/中和剤反応混合物が、前記アセスルファム-H/中和剤反応混合物の全重量を基準として、1重量%~95重量%の中和剤、及び1重量%~95重量%のアセスルファム-Hを含む、上記の形態のいずれかの方法。
【0111】
[0106]形態6:前記中和工程(c)が、前記アセスルファム-H組成物中の前記アセスルファム-Hを中和して、アセトアセタミドを更に含む前記粗アセスルファムカリウム組成物を形成することを含む、上記の形態のいずれかの方法。
【0112】
[0107]形態7:前記粗アセスルファムカリウム組成物が500wppm~2375wppmのアセトアセタミド-N-スルホン酸を含み、前記精製アセスルファムカリウム組成
物が25wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸を含み、25wppm未満のアセトアセタミドを更に含む、上記の形態のいずれかの方法。
【0113】
[0108]形態8:前記中和工程(c)を9.0~11.0の範囲のpHで行い、前記粗アセスルファムカリウム組成物が20wppm~2500wppmのアセトアセタミド-N-スルホン酸を含み、前記精製アセスルファムカリウム組成物が25wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸及び15wppm未満のアセトアセタミドを含む、上記の形態のいずれかの方法。
【0114】
[0109]形態9:前記中和工程(c)を8~10.3の範囲のpHで行い、前記粗アセスルファムカリウム組成物が600wppm~1200wppmのアセトアセタミド-N-スルホン酸を含み、前記精製アセスルファムカリウム組成物が、10wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸及び10wppm未満のアセトアセタミドを含む、上記の形態のいずれかの方法。
【0115】
[0110]形態10:前記中和工程(c)を8~10.3の範囲のpHで行い、前記粗アセスルファムカリウム組成物が2400wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸を含み、前記精製アセスルファムカリウム組成物が、10wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸及び10wppm未満のアセトアセタミドを含む、上記の形態のいずれかの方法。
【0116】
[0111]形態11:前記精製アセスルファムカリウム組成物が37wppm未満のアセトアセタミドを含む、上記の形態のいずれかの方法。
[0112]形態12:前記中和工程(c)を9.0~11.0の範囲のpHで行う、上記の形態のいずれかの方法。
【0117】
[0113]形態13:前記中和工程(c)を9.0~10.5の範囲のpHで行う、上記の形態のいずれかの方法。
[0114]形態14:前記中和工程(c)を8.0~10.3の範囲のpHで行う、上記の形態のいずれかの方法。
【0118】
[0115]形態15:前記処理工程(d)を90℃より低い温度で行う、上記の形態のいずれかの方法。
[0116]形態16:前記処理工程(d)が180分未満の滞留時間を用いる蒸発工程を含む、上記の形態のいずれかの方法。
【0119】
[0117]形態17:前記中和工程を11.0以下のpHに維持する、上記の形態のいずれかの方法。
[0118]形態18:形態1~17のいずれかの方法によって製造されるか又は製造することができるか、或いは得ることができるか又は得られる精製アセスルファムカリウム組成物。
【0120】
[0119]形態19:精製アセスルファムカリウム組成物を製造する方法であって、
(a)スルファミン酸とトリエチルアミンを反応させてアミドスルファミン酸塩を形成する工程;
(b)前記アミドスルファミン酸塩とジケテンを反応させてアセトアセタミド塩を形成する工程;
(c)ジクロロメタンと三酸化イオウを接触させて環化剤組成物を形成する工程;
(d)前記アセトアセタミド塩を前記環化剤組成物中の三酸化イオウと反応させて環状三酸化イオウ付加体を形成する工程;
(e)前記環状三酸化イオウ付加体を加水分解してアセスルファム-Hを含むアセスルファム-H組成物を形成する工程;
(f)前記アセスルファム-H中の前記アセスルファム-Hを中和して、アセスルファムカリウム及び2800wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸を含む粗アセスルファムカリウム組成物を形成する工程、ここで中和工程は11.0以下のpHで行う;
(g)前記粗アセスルファムカリウム組成物を処理して、アセスルファムカリウム及び37wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸を含む精製アセスルファムカリウム組成物を形成する工程;
を含み;
工程(a)、(b)、及び(c)は、工程(d)を行う前に任意の順番で行うことができる上記方法。
【0121】
[0120]形態20:前記精製アセスルファムカリウム組成物が20wppm未満のアセトアセタミドを更に含む、形態19の方法。
[0121]形態21:前記中和工程(f)を9.0~11.0の範囲のpHで行い、前記粗アセスルファムカリウム組成物が20wppm~2500wppmのアセトアセタミド-N-スルホン酸を含み、前記精製アセスルファムカリウム組成物が、25wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸及び15wppm未満のアセトアセタミドを含む、上記の形態のいずれかの方法。
【0122】
[0122]形態22:アセスルファムカリウム、及び25wppm未満のアセトアセタミド-N-スルホン酸、並びに25wppm未満のアセトアセタミドを含むアセスルファムカリウム組成物。
【0123】
[0123]形態23:0.001wppm~5wppmの有機不純物、及び/又は0.001wppm~5wppmの少なくとも1種類の重金属を更に含む、形態22のアセスルファムカリウム組成物。
【0124】
[0124]形態24:前記少なくとも1種類の重金属が、水銀、鉛、及びこれらの混合物からなる群から選択される、上記の形態のいずれかのアセスルファムカリウム組成物。
[0125]形態25:前記水銀が1wppb~20wppmの量で存在する、上記の形態のいずれかのアセスルファムカリウム組成物。
【0125】
[0126]形態26:前記鉛が1wppb~25wppmの量で存在する、上記の形態のいずれかのアセスルファムカリウム組成物。
【実施例0126】
[0127]以下の実施例はプロセス及び組成物を示すために含めるものであり、本出願の範囲を限定することは意図しない。
実施例1a~c及び比較例A:
[0128]100ミリモルの純度99.5%のスルファミン酸を、還流を行いながら、フラスコ内の50mLのジクロロメタン中に懸濁した。連続撹拌下において、105ミリモルのトリメチルアミンを約3分以内に加えた。この時間中に、酸/塩基発熱反応のために温度が約42℃(ジクロロメタンの沸点)まで上昇した。この第1の反応混合物を、フラスコ内に固体の沈澱が見られなくなるまで、更に約15分間撹拌した。次に、第1の反応混合物に10ミリモルの酢酸を加えて、更に約15分間撹拌した。この時点で、酢酸添加の7分以内に110ミリモルのジケテンを滴加して第2の反応混合物を形成した。ジケテンの全部を第2の反応混合物に加えて、約15分間の反応時間の後、この第2の反応混合物を冷却した。得られた冷却した第2の反応混合物は、約30%のアセトアセタミド-N-
スルホネートトリエチルアンモニウム塩を含んでいた。必要に応じて、冷却した第2の反応混合物の更なるバッチを調製した。
【0127】
[0129]別の容器内において、2つの成分を互いと接触させることによって、約15重量%の三酸化イオウ及び約85重量%のジクロロメタンを含む三酸化イオウ/ジクロロメタン組成物を調製した。
【0128】
[0130]第2のフラスコ(メカニカルスターラー、温度計、及び供給容器を取り付けた4口丸底フラスコ)を、イソプロパノール及びドライアイスの混合物を含む冷却浴中に配置した。約200gのアセトアセタミド-N-スルホネートトリエチルアンモニウム塩溶液、及び約577gの三酸化イオウ/ジクロロメタン組成物を計量した。まず、三酸化イオウ/ジクロロメタン組成物全体の約15重量%(約87g)を、メカニカルスターラーによる連続撹拌下で反応フラスコに供給した。フラスコ内容物の温度が(冷却バッチによって)-35℃に達した時点で、三酸化イオウ/ジクロロメタン組成物の残り、及びアセトアセタミド-N-スルホネートトリエチルアンモニウム塩溶液の全部を第2のフラスコ中に供給した。環状三酸化イオウ付加体の形成前、例えばアセトアセタミド-N-スルホネートトリエチルアンモニウム塩溶液を第2のフラスコに供給する前に溶媒が環化剤と接触した時間は、1時間未満であった。供給速度は、供給/環化反応中において第2のフラスコの内容物の温度が-25℃~-35℃の間に維持されるように制御した。反応物質を供給した後、反応を更に約1分間進行させた。次に、冷却浴を取り外した。
【0129】
[0131]約1分後、フラスコ内容物の温度は約-22℃に達した。この時点で、脱イオン水をフラスコに供給することによって、加水分解を開始した。水は10分間にわたって供給した。加水分解反応は発熱性であった。水は、温度が-20℃~-5℃の間に維持されるようにゆっくりと加えた。水を加えた後、反応混合物を室温に到達させた。
【0130】
[0132]加水分解のために加えた水とジクロロメタン溶液中のアセトアセタミド-N-スルホネートトリエチルアンモニウム塩との重量比は、実施例1a~c及び比較例Aに関して一定に維持した。
【0131】
[0133]加水分解生成物を、分液漏斗によって相分離した。より重質の有機甘味料酸-ジクロロメタン相(アセスルファム-H組成物)を分離して取り出し、残留した水相は廃棄した。
【0132】
[0134]アセスルファム-H組成物中のアセスルファム-Hを、10%水酸化カリウム溶液で中和した。中和は25℃±1℃で行った。水酸化カリウムの添加は20分以内に完了した。中和は、表1に示す種々のpHレベルで行った。
【0133】
[0135]中和工程が完了した後、分液漏斗を用いて更なる相分離を行って、アセスルファムカリウム(及び若干の不純物)を含む水相、及び有機相を得た。水相を表1における粗アセスルファムカリウム組成物とみなした。有機相中の残りのジクロロメタンは廃棄した。
【0134】
[0136]実施例1a~c及び比較例Aの粗アセスルファムカリウム試料を、アセトアセタミド-N-スルホン酸含量に関して試験した。試験はここで議論したHPLC装置及び技術を用いて行った。特に、HPLC分析は、CBM-20 Shimadzuコントローラーを有し、IonPac NS1((5μm)150×4mm)分析カラム及びIonPac NG1保護カラム(35×4.0mm)を装備したShimadzu製のLC SystemsHPLCユニットを用いて行った。(270nm及び280nmの波長における)検出のために、Shimadzu SPD-M20Aフォトダイオードアレイ検出器を用いた。分析は、23℃のカラム温度において行った。第1の溶離液として、テトラブチルアンモニウムハイドロジェンスルフェート(3.4g/L)、アセトニトリル(300mL/L)、及び水酸化カリウム(0.89g/L)の水性混合物を用い;第2の溶離液として、テトラブチルアンモニウムハイドロジェンスルフェート(3.4g/L)、及び水酸化カリウム(0.89g/L)の水性混合物を用いた。計算は、Shimadzu製のLabSolutionソフトウエアを用いて行った。溶離は、次の第2の溶離液フロープロファイルにしたがって、勾配モードで行った。
【0135】
・0~3分:80%(v/v)で一定;
・3~6分:50%(v/v)に直線状に減少;
・6~15分:50%(v/v)で一定;
・15~18分:0%に直線状に減少;
・18~22分:0%で一定;
・22~24分:80%(v/v)に直線状に増加;
・24~35分:80%(v/v)で一定。
【0136】
溶離液の全流量は、約1.2mL/Lであった。データの回収及び計算は、Shimadzu製のLabSolutionソフトウエアを用いて行った。
[0137]結果を表1に示す。
【0137】
【0138】
[0138]表1において示されるように、中和工程を11.0以下のpHで行うと、得られる粗アセスルファムカリウム組成物中のアセトアセタミド-N-スルホン酸含量は、高いpHを用いる場合よりも非常に低く、最小で23%低い(比較例A vs 実施例1c:3066-2361/3066=23%)
[0139]重要なことには、粗アセスルファムカリウム組成物中のアセトアセタミド-N-スルホン酸含量が減少することにより、その後の分離操作におけるアセトアセタミドの形成(例えばアセトアセタミド-N-スルホン酸の分解による)が付随して減少し、これにより、得られる精製アセスルファムカリウム組成物中における減少したアセトアセタミド含量がもたらされる。
【0139】
[0140]本発明を詳細に記載したが、発明の精神及び範囲内の修正は当業者に容易に明らかになるであろう。上記の議論、当該技術における関連する知識、並びに背景及び詳細な説明に関連して上記で議論した参照文献(これらの開示事項は全て参照として本明細書中に包含する)を考慮すると。更に、上記及び/又は添付の特許請求の範囲において示されている本発明の複数の形態並びに種々の態様及び種々の特徴の複数の部分を、完全か又は部分的に結合又は交換することができることを理解すべきである。当業者に認められるように、種々の態様の上記の記載においては他の態様を示すこれらの態様を他の態様と適当
に組み合わせることができる。更に、当業者であれば、上記の記載は例示のみの目的であり、本発明を限定することは意図しないことを認識するであろう。