(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093686
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】新規な糖衣コーティング方法
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20230627BHJP
A23G 9/48 20060101ALI20230627BHJP
A23L 7/135 20160101ALI20230627BHJP
A23G 4/18 20060101ALI20230627BHJP
A61K 9/28 20060101ALI20230627BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
A23L5/00 F
A23G9/48
A23L7/135
A23G4/18
A61K9/28
A61K47/26
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071417
(22)【出願日】2023-04-25
(62)【分割の表示】P 2020519179の分割
【原出願日】2018-06-18
(31)【優先権主張番号】1755557
(32)【優先日】2017-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ルフェーヴル
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー ルビアン
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン クロッケー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複雑で不規則な形状を有する糖衣コーティングされた固形物を得ることを可能にする糖衣コーティング方法を提供する。
【解決手段】結晶性材料の組成物を含有する糖衣液を動いているコア床に噴霧する工程であって、コアは穴が開いている回転ドラムを備えたチャンバー内に配置されており、噴霧は少なくとも1つの圧縮空気ノズルによって行われる工程(a);噴霧された糖衣液を乾燥させる、工程(a)と同時に行われる少なくとも1つの工程(b);このようにして得た糖衣コーティングされた固形物を回収する工程(c);を含み、結晶性材料の組成物は、糖及びポリオールから選択される少なくとも1種の物質を含み、糖及びポリオールはモノマーから選択され、結晶性材料の含有量は、糖衣液の固形分含有率中、乾燥重量で少なくとも90.0%である、糖衣コーティング方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
・結晶性材料の組成物を含有する糖衣液を動いているコア床に噴霧する工程であって、前記コアは穴が開いている回転ドラムを備えたチャンバー内に配置されており、前記噴霧は少なくとも1つの圧縮空気ノズルによって行われる工程(a);
・前記噴霧された糖衣液を乾燥させる、工程(a)と同時に行われる少なくとも1つの工程(b);
・このようにして得た前記糖衣コーティングされた固形物を回収する工程(c);
を含み、
前記結晶性材料の組成物は、糖及びポリオールから選択される少なくとも1種の物質を含み、前記糖及びポリオールはモノマーから選択され、
前記結晶性材料の含有量は、前記糖衣液の固形分含有率中、乾燥重量で少なくとも90.0%である、糖衣コーティング方法。
【請求項2】
前記糖及びポリオールが、前記糖衣液の結晶性材料の前記組成物の乾燥重量で少なくとも50%を占めることを特徴とする、請求項1に記載の糖衣コーティング方法。
【請求項3】
前記糖及びポリオールが、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、又はこれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の糖衣コーティング方法。
【請求項4】
前記糖衣液が90%未満の結晶性材料濃度を有し、この割合が前記糖衣液の総重量に対する前記糖衣液の結晶性材料の重量に対応することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の糖衣コーティング方法。
【請求項5】
前記圧縮空気ノズルが0.1~2.8mmの範囲から選択される直径を有するオリフィスを有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の糖衣コーティング方法。
【請求項6】
前記結晶性材料の含有量は、前記糖衣液の固形分含有率中、乾燥重量で少なくとも94.0%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の糖衣コーティング方法。
【請求項7】
前記糖衣液の固形分含有率は30重量%以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の糖衣コーティング方法。
【請求項8】
前記工程(a)の前に行われる前記コア床を加熱する工程を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の糖衣コーティング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、不規則な形状を有する新規な糖衣コーティングされた固形物、及びその作製に特に有用な糖衣コーティング方法である。
【背景技術】
【0002】
糖衣コーティングは、特に製菓や製薬で使用される操作であり、様々な理由で保護するために、又は視覚的に若しくは味の観点から魅力的なものにするために、固体又は粉末製品の表面に多少の硬さを有する結晶化したコーティング(「ハード」又は「ソフトコーティング」)を形成することからなる。
【0003】
固形物(コア)のコーティングは、その軸周りを回転する、コーティングドラムとして知られているタンクで行われ、その中には動いている状態の集団を形成する複数のコアが存在し、その表面に、後の外皮の構成材料(「糖衣液又はシロップ」)が液体状態で分布している。この液体を塗布し、前記液体によって導入された水を蒸発させることにより、硬い結晶のコーティングが得られる。
【0004】
糖衣シロップは、主に1種以上の結晶性材料から構成されており、通常アラビアガムやゼラチンなどの結合剤、染料、TiO2などの乳白剤、タルク、シリカ、炭酸カルシウムなどの無機充填剤、高甘味度甘味料、香料、ビタミン、活性剤も含有する。
【0005】
糖衣コーティングは比較的労力を要するプロセスであり、これは多数の連続した工程を含む。「糖衣コーティングサイクル」とも呼ばれるこれらの各工程は、典型的には、糖衣シロップを通常コアに噴霧することによる塗布段階、休止時間とも呼ばれるコア上に前記シロップを分布させる回転段階、及び高温の乾燥空気を吹き付けることによって行われるシロップの各新しい層の乾燥段階を含む。
【0006】
糖衣コーティングは、特に魅力的な外観を有する固形物を得ることを可能にするが、その実施及び得られる見た目に関して柔軟性を欠く。特に、これは本発明の主題であり、糖衣コーティングでは、複雑で不規則な形状、例えばレリーフ刻印又は隆起を有する固形物を得ることが不可能である。これは、そのような不規則性を有する固形物が糖衣コーティングされる場合、後者が糖衣コーティング後に覆い隠されるためである。糖衣液は、レリーフ刻印によって形成された溝及び空洞を充填し(「ロゴ充填」)、また隆起を拡大してその後丸める。また、例えばこれらのコアが粒状の場合など、コアが任意選択的に示す場合がある非対称性を保持することもできない。したがって、糖衣コーティングによって得られる固形物は、通常粗くて丸い全体形状を有しており、出発コアの形状にあまり忠実ではない。
【0007】
そのため、例えば製薬では、錠剤の被膜コーティングが通常好ましい。このプロセスでは、シロップではなく、一般的にヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などのセルロース誘導体、或いは最近では変性デンプンを主体とする被膜形成組成物が塗布される。この被膜形成組成物は、錠剤の表面に薄膜を形成し、有利には、ロゴ、活性分子の名前、又は作用分子の投与量などの錠剤の表面に存在するレリーフ刻印を保持することを可能にする。
【0008】
このプロセスにより、正確な形状を保持することが可能になるものの、それでも、糖衣コーティングされた形態よりもはるかに見た目が悪い外観を有する錠剤になる。更に、被膜コーティングはアモルファスコーティングを生成し、これは糖衣コーティングにより得
られる結晶化したコーティングよりもはるかに不安定である。
【0009】
したがって、現時点では、元の形状を有する糖衣コーティングされた固形物を製造する方法が存在しない。そのため、製造業者が糖衣コーティングされた固形物の表面にロゴ又は他のパターンを表示することを望む場合、それは、糖衣コーティングされた形態の表面に着色組成物を塗布することによって行われる。
【0010】
この問題に対する1つのアプローチは、米国特許出願公開第2008/0026131A1号明細書に記載されている。この文献には、チョコレートの不規則な形状の保持を可能にする糖衣コーティング方法が開示されている。しかしながら、この方法は、複雑で不規則な形状ではなく、粗くて丸い全体形状のみ保持することを可能にする。米国特許出願公開第2008/0026131A1号明細書の教示によっては、隆起又はレリーフ刻印などの複雑で不規則な形状を有する糖衣コーティングされた固形物の作製を可能にできない。特に長時間及び手間を要するこの方法は、複数回の糖衣コーティングサイクル(シロップの塗布/分配/乾燥)を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的
したがって、本発明の目的は、複雑で不規則な形状を有する糖衣コーティングされた固形物、及びこれを得ることを可能にする方法を提供することである。
【0012】
本発明は、固形物に糖衣コーティングするための特に単純で柔軟な方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の提示
出願人は、レリーフ刻印や隆起などの不規則な形状及び非対称の形状が糖衣コーティング後に保持される、糖衣コーティングされた固形物を製造することができた。
【0014】
出願人は、
・結晶性材料の組成物を含有する糖衣液を動いているコア床に噴霧する工程であって、前記コアは穴が開いている回転ドラムを備えたチャンバー内に配置されており、前記噴霧は少なくとも1つの圧縮空気ノズルによって行われる工程(a);
・前記噴霧された糖衣液を乾燥させる、工程(a)と同時に行われる少なくとも1つの工程(b);
・このようにして得た糖衣コーティングされた固形物を回収する工程(c)
を含むことを特徴とする少なくとも新規な1つの糖衣コーティング方法を実施することによりこれを達成した。
【0015】
本発明の方法は、様々な固形物(錠剤、チューインガムなど)に適用され、製造業者に多数の可能性を提供し、特に固体の糖衣コーティングされた形態の新しい見かけを消費者に提供することができる。この方法では、乾燥と噴霧が同時に行われる。実際、驚くべきことに、コアが継続的に濡れた状態であるにもかかわらず、後者は損なわれず、不規則な形状が保持される。
【0016】
プロセス中に必然的に噴霧をかなりの時間停止しなければならなかった(そうでない場合には、コアはひっきりなしに濡れているため、糖衣コーティングに使用される物質が結晶化できず、固形物が損なわれて劣化し、またコアが互いに付着する(くっつき合って塊になる現象))ことが今まで容認されていたため、これは特に驚くべきことである。しか
しながら、この現象は、非常に吸湿性のあるコア、すなわち水を求めるコアであっても、本発明の方法では観察されない。
【0017】
したがって、従来の糖衣コーティングとは対照的に、本発明の方法は、糖衣液が高い固形分含有率(マルチトールを用いた従来の糖衣コーティングについては少なくとも70%)を有することを必要としない。これは、前の段落で述べたものと同じ理由(コアの著しい濡れ)のため、当該技術分野の一般知識にも反する。
【0018】
低固形分含有率を使用できることは、いくつかの利点を有する。第1に、これは低温で糖衣液を使用する可能性を与え、結果として、これらの液体又は糖衣コーティングされるコアの組成物に熱に不安定な成分を取り入れる可能性を与える。実際、糖衣コーティングで高温が従来使用される場合、糖衣溶液が溶液中に高含有率で結晶性材料を有するようにされるべきである。この高い固形分含有率は本発明の方法では不要なため、糖衣液の温度を下げることができる。
【0019】
第2に、これによって、水への溶解度が低い結晶性材料を用いた糖衣コーティング操作を行うことも可能になる。この利点の良い例は、実施例1でポイント1(試験「Man-IN1~IN5」)として示されている。ここでは、糖衣コーティングにマンニトールを使用した。この糖衣コーティングは、先行技術のプロセスとは対照的に、大量の結合剤をそれに添加する必要がない。つまり、結晶性材料がほとんど大部分を占めることができることから、糖衣コーティングが厳密にいえばここで行われる。
【0020】
したがって、本発明の方法は、アラビアガムやポリビニルアルコールなどの過剰量の結合剤の添加を必要とせずに、糖衣層が高含有率のマンニトールを有する糖衣コーティングされた固形物を得ることを初めて可能にした。試験Man-IN5では、結合剤を使用しないことも可能なことさえ示されている。
【0021】
出願人が開発した方法は、特に複雑な不規則な形状を有さない固形物の糖衣コーティングにも有用となる他の利点も有している。特に、本発明の方法は、従来の糖衣コーティングプロセスよりもはるかに柔軟性を有しており、実施が特に簡単な場合がある。
【0022】
更に、この方法は、以下の実施例のポイント1で示されるように、様々な結晶性材料に適用可能である。特にスクロース、キシリトール、エリスリトール、及びマンニトールで非常に満足できる結果が得られる。
【0023】
最後に、本発明の方法は、その実行中にそのパラメータ(乾燥温度、糖衣液の配合など)の大きな修正を必ずしも必要とせず、比較的単純且つコンパクトな装置で実施することができる。
【0024】
先行技術文献のいずれにも、そのような方法の開示又は示唆はなされていない。例えば、上述した文献である米国特許出願公開第2008/0026131A1号明細書では、乾燥と噴霧は同時に行われない。
【0025】
本発明の第1の主題は、少なくとも1つのレリーフ刻印及び/若しくは少なくとも1つの隆起を有し、並びに/又は非対称であり、前記非対称な糖衣コーティングされた固形物の糖衣層がそれが由来するコアの形状に忠実に一致する、糖衣コーティングされた固形物である。
【0026】
本発明の主題は、
・結晶性材料の組成物を含有する糖衣液を動いているコア床に噴霧する工程であって、前
記コアは穴が開いている回転ドラムを備えたチャンバー内に配置されており、前記噴霧は少なくとも1つの圧縮空気ノズルによって行われる工程(a);
・前記噴霧された糖衣液を乾燥させる、工程(a)と同時に行われる少なくとも1つの工程(b);
・このようにして得た糖衣コーティングされた固形物を回収する工程(c)
を含む、複雑で不規則な形状を有する糖衣コーティングされた固形物を作製するために特に有用な方法でもある。
【0027】
本発明の主題は、
- 乾燥重量で少なくとも50%のマンニトールからなる結晶性材料;及び
- 任意選択的な結合剤であって、乾燥重量による結晶性材料/結合剤比が15より大きい結合剤
を含有する、少なくとも1つの糖衣層を含む糖衣コーティングされた固形物でもある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施例の糖衣コーティングされた固形物である。
【
図2】実施例の糖衣コーティングされた固形物である。
【
図3】実施例の糖衣コーティングされた固形物である。
【
図4】実施例の糖衣コーティングされた固形物である。
【
図5】比較の糖衣コーティングされた固形物である。
【
図6】液体の温度の関数としての水中のこれらの結晶性材料の最大濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
したがって、本発明の第1の主題は、少なくとも1つのレリーフ刻印及び/若しくは少なくとも1つの隆起を有し、並びに/又は非対称であり、前記非対称な糖衣コーティングされた固形物の糖衣層がそれが由来するコアの形状に忠実に一致する、糖衣コーティングされた固形物である。
【0030】
本発明の固形物は、特定の不規則な形状、すなわちレリーフ刻印、隆起、又は非対称性を有する。レリーフ刻印の例としては、パターン(ロゴなど)又は刻まれた文字(ブランド名、分子名、投与量など)を挙げることができる。レリーフ刻印は固形物の表面に存在する一方で、隆起は代わりに糖衣コーティングされた固形物の全体形状を特徴付ける一因となる。これらの糖衣コーティングされた固形物は、特にこれらが由来する糖衣コーティングされるコア自体が不規則な形状を有することを特徴とする。これは、特に、糖衣コーティング後も最初のコアのこれらの不規則な形状が保たれることを意味する。これは、特に刻まれた文字が読み取り可能であり、パターンが識別可能であることを意味する。これらの不規則な形状には、非対称な形状、すなわち対称軸を持たない形状も含まれる。これは、ここでは非対称な糖衣コーティングされた固形物の糖衣層が、それらが由来するコアの形状に忠実に一致することを意味する。
【0031】
好ましくは、本発明のこの固形物は、少なくとも1つのレリーフ刻印及び/又は少なくとも1つの隆起、より好ましくは少なくとも1つのレリーフ刻印を有する。
【0032】
本発明の主題は、
- 乾燥重量で少なくとも50%のマンニトールからなる結晶性材料;及び
- 任意選択的な結合剤であって、乾燥重量による結晶性材料/結合剤比が15より大きい結合剤
を含有する、少なくとも1つの糖衣層を含むことを特徴とする、任意選択的には上述したような不規則な形状を有する糖衣コーティングされた固形物でもある。
【0033】
好ましくは、この糖衣コーティングされた固形物の糖衣層の結晶性材料は、乾燥重量で少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%のマンニトールからなり、或いは更にはマンニトールのみからなる。
【0034】
より好ましくは、これらの糖衣コーティングされた固形物の糖衣層では、乾燥重量による結晶性材料/結合剤比は20より大きく、更には30より大きく、更には40よりも大きい。糖衣層は、有利には結合剤を含まなくてもよい。
【0035】
糖衣コーティングにおいて、用語「固形物」は、通常、糖衣コーティングされる物質の任意の固体状態を示す形態(「糖衣コーティングされた固形物」)又は糖衣コーティング操作を受けることができる固体状態を示す形態(「コア」)を意味する。典型的な例は、錠剤、ハードジェルカプセル、ソフトカプセル、ペレット、ミクロスフェア、顆粒、種子、クッキー、朝食用シリアル、菓子(チューインガム、飴玉、チューイングキャンディ、グミ、チョコレートなど)、果物、野菜、又は粉末及び/若しくは結晶形態の他の製品である。これらの固形物は、例えば、食品、医薬品、獣医学的、又は化粧品の目的を有し得る。これらは、成人若しくは子供によるヒトの消費、又は動物を対象としていてもよい。これらは化学的又は農学的な目的の製品であってもよいが、本発明との関係からは摂取されることが意図される固形物が好ましい。好ましくは、これらの固形物は、錠剤及びチューインガムから選択される。
【0036】
好ましくは、本発明の糖衣コーティングされた固形物は、少なくとも1つの糖衣層を含み、その組成は、本発明の糖衣コーティング方法で使用される糖衣液の組成と同一である;ここでは、糖衣液の固体を構成するもののみ考慮されることが理解される。
【0037】
好ましくは、本発明の糖衣コーティングされた固形物は、1%より大きい糖衣割合を有する。この「糖衣割合」は、「質量増加率」としても知られており、通常以下の方法で決定される:
(糖衣コーティングされた固形物の重量-コアの重量)/コアの重量×100。
【0038】
好ましくは、この糖衣割合は、3%より大きく、好ましくは5%より大きく、好ましくは7%より大きく、好ましくは10%より大きく、例えば少なくとも15%、更には少なくとも20%である。
【0039】
本発明の主題は、
・結晶性材料の組成物を含有する糖衣液を動いているコア床に噴霧する工程であって、前記コアは穴が開いている回転ドラムを備えたチャンバー内に配置されており、前記噴霧は少なくとも1つの圧縮空気ノズルによって行われる工程(a);
・前記噴霧された糖衣液を乾燥させる、工程(a)と同時に行われる少なくとも1つの工程(b);
・このようにして得た糖衣コーティングされた固形物を回収する工程(c)
を含む、本発明の糖衣コーティングされた固形物を作製するために特に有用な糖衣コーティング方法でもある。
【0040】
本発明の方法を実施するために使用される装置は、典型的には、糖衣液を糖衣液噴霧装置に移送するための少なくとも1つの出口を含む糖衣液貯蔵ユニットを含む。糖衣液は、チャンバーに入っているコア床に噴霧するための装置によって塗布され、前記チャンバーは、前記コア床を動かすための回転ドラムを備えている。より具体的には、ドラムは穴が開いている回転ドラムであり、選択された噴霧装置は少なくとも1つの圧縮空気ノズルを含む。装置は、ドラムチャンバーの高さに、糖衣液を乾燥させるための空気導入口も備え
ている。乾燥空気は、特に回転ドラムの穴により、特にチャンバーからの空気の吸引により排出される。
【0041】
本発明に有用な装置の要素は市販されており、その構成は当業者にとって特に難しいものではない。
【0042】
本発明に有用な糖衣液は、結晶性材料の組成物を含む。
【0043】
用語「結晶性材料の組成物」は、通常、それらが溶解している溶媒の蒸発によって結晶化できる物質からなる組成物を意味する。
【0044】
好ましくは、本発明に有用な糖衣液の結晶性材料の組成物は、糖及びポリオールから選択される、好ましくはモノマー及び二量体から選択される少なくとも1種の物質を含有する。
【0045】
有利には、糖及びポリオールは、糖衣液の結晶性材料の組成物の乾燥重量で少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、更に好ましくは少なくとも90%を占める。最も好ましくは、糖衣液の結晶性材料の組成物は、糖及びポリオールから選択される物質から完全に構成される。
【0046】
本発明において、化合物の乾燥質量について言及される場合、この質量には存在し得る不純物が含まれることが理解される。
【0047】
好ましくは、これらの糖及びポリオールは、キシリトール、スクロース、エリスリトール、マンニトール、デキストロース、イソマルト、マルチトール、又は必要に応じてそれらの組み合わせから選択される。最も好ましくは、これらの糖及びポリオールは、スクロース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、又は必要に応じてそれらの組み合わせから、より好ましくはスクロース、マンニトール、キシリトール、又は必要に応じてそれらの組み合わせから選択される。
【0048】
好ましくは、糖衣液の結晶性材料の組成物は、完全に単一の物質からなる。したがって、例えば、そして有利には、本発明に有用な結晶性材料の組成物は、キシリトール又はスクロース又はエリスリトール又はマンニトール又はデキストロース又はイソマルト又はマルチトールである。
【0049】
糖衣液の結晶性材料の濃度は、結晶性材料が前記糖衣液に溶解するように選択される。
【0050】
典型的には、特に糖衣液が水性液体である場合、本発明の糖衣液は90%未満の結晶性材料の濃度を有し、この割合は前記糖衣液の総重量に対する糖衣液の結晶性材料の乾燥重量に対応する。好ましくは、この濃度は、70%以下、好ましくは60%以下、好ましくは60%未満、更には55%以下、更には50%以下、更には45%以下、又は40%以下、更には35%以下、更には30%以下、更には25%以下、更には20%である。この濃度は、通常10%よりも大きく、更には少なくとも15%、更には少なくとも20%である。
【0051】
結晶性材料の最大濃度は、当然、これらの結晶性材料の性質、及び糖衣液の温度にも依存する。キシリトール、スクロース、エリスリトール、マンニトール、デキストロース、イソマルト、及びマルチトールについては、例えば、液体の温度の関数としての水中のこれらの結晶性材料の最大濃度を示す
図6を参照することができる。したがって、例えば、20℃での糖衣液の結晶性材料の濃度は、好ましくは、結晶性材料の組成物がスクロース
からなる場合は67%以下であり、マンニトールの場合には15%以下であり、マルチトールの場合には61%以下であり、キシリトールの場合には63%以下であり、イソマルトの場合には25%以下であり、エリスリトールの場合には27%以下であり、デキストロースの場合には48%以下である。
【0052】
通常、本発明の糖衣液は、特に得られる糖衣コーティングされた固形物の品質及び/又はプロセスの操作性に関して本発明で望まれる特性と矛盾しない限り、結晶性材料以外の物質を含有する。そのような他の化合物は、例えば、
- アラビアガム、ポリビニルアルコールなどの結合剤;
- 顔料や乳白剤(例えば二酸化チタン)などの着色物質;
- 香料、甘味料;
- 例えば医薬品、栄養食品、栄養補助食品、又は植物検疫の対象となるものなどの活性剤。
【0053】
好ましくは、本発明の糖衣液は、90重量%未満、好ましくは85重量%未満、好ましくは80重量%未満、好ましくは75重量%未満、好ましくは70重量%以下、好ましくは60重量%以下、好ましくは60重量%未満、更には55重量%以下、更には50重量%以下、更には45重量%以下、更には40重量%以下、更には35重量%以下、更には30重量%以下、更には25重量%以下、更には20重量%の固形分含有率を有する。この固形分含有率は、通常10%より大きく、好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%である。
【0054】
したがって、好ましくは、本発明の糖衣液の固形分含有率は、
- 乾燥重量で50.0%~100.0%の、具体的には上で定義した結晶性材料;
- 乾燥重量で0.0%~50.0%の、具体的には上で定義した他の成分
からなり、これらの割合の合計は100.0%である。
【0055】
好ましくは、本発明の糖衣液の固形分含有率は、乾燥重量で少なくとも60.0%、好ましくは少なくとも70.0%、好ましくは少なくとも80.0%、好ましくは少なくとも90.0%、更には少なくとも94.0%、更には少なくとも95.0%、更には少なくとも96.0%の量の結晶性材料を含む。
【0056】
通常、本発明の糖衣液の固形分含有率は、乾燥重量で5.0%未満、好ましくは4.0%未満、好ましくは3.0%未満の量の顔料及び/又は染料を含む。
【0057】
通常、本発明の糖衣液の固形分含有率は、乾燥重量で5.0%未満、好ましくは4.0%未満、好ましくは3.0%未満、好ましくは3.0%未満、好ましくは2.0%未満の量の乳白剤を含む。
【0058】
通常、本発明の糖衣液の固形分含有率は、乾燥重量で15.0%未満、好ましくは10.0%未満、更には8.0%未満、更には5.0%未満の量の結合剤を含む。
【0059】
本発明に従って使用される糖衣液は、典型的には極性であり、好ましくは主溶媒として水を含み、最も好ましくは唯一の溶媒として水を含む。
【0060】
ある有利な実施形態では、単純さのため及び可能なことから、本発明による糖衣コーティング方法は単一の糖衣液を使用する。すなわち、糖衣液は、糖衣コーティングを継続している期間を通して一定の配合を有する。
【0061】
糖衣液の温度は、典型的には、噴霧される前記糖衣液に結晶性材料がよく溶解するよう
に選択される。したがって、この温度は、液体中に存在する結晶性材料の量にも依存する。本発明の方法では、この温度は典型的には20~90℃の範囲から選択される。好ましくは、この温度は、85℃未満、好ましくは80℃未満、好ましくは75℃未満、好ましくは70℃未満、更には65℃未満、更には60℃未満、更には55℃未満、更には50℃未満、更には45℃未満、更には40℃未満、更には35℃未満、更には30℃未満である。この温度は、通常少なくとも15℃、更には少なくとも20℃である。これは、例えば典型的には20~25℃の範囲である周囲温度に相当する。
【0062】
ある有利な実施形態では、糖衣液は、包まれた単純な貯蔵ユニットの中に貯蔵される、及び/又は本発明の方法に有用な機器は、糖衣液を加熱するための装置がない。これは、本発明の方法が必ずしも高い糖衣液温度の使用を必要としないことから、これらの装置が本発明の方法に必須ではないためである。
【0063】
糖衣液の噴霧のために、使用される圧縮空気ノズルの数は、製造者の推奨に従って、糖衣コーティングチャンバーの寸法に応じて通常選択される。ノズルのこの数は、典型的には、糖衣コーティングチャンバーの直径が40cmの区域当たり1~2個のノズルである。ノズルのこの数は、例えば1~10個、例えば1~6個の範囲である。
【0064】
好ましくは、本発明の方法は、噴霧のために圧縮空気ノズルのみを使用する。
【0065】
好ましくは、本発明に従って使用されるノズルは、0.1~2.8mm、好ましくは0.1~2.5mm、好ましくは0.1~2.2mm、例えば0.3~2.0mm、又は0.5~1.8mm、又は0.5~1.5mm、又は0.5~1.2mm、又は0.5~1.0mmの範囲から選択される直径を有するオリフィスを有する。
【0066】
好ましくは、噴霧流量は、0.5~20.0、好ましくは1.0~20.0、好ましくは2.0~20.0、例えば2.0~15.0、更には2.0~10.0g/分/コアのkgの範囲から選択される。
【0067】
ある有利な実施形態では、糖衣コーティング中に噴霧のために選択される流量が増加する。特に、本発明者らは、特定の結晶性材料について、糖衣コーティングの開始時に低流量を使用すると、コアの表面で起こる最初の結晶化相を促進できることに気付いた。糖衣コーティングを加速するために、その後流量を増やすことができる。
【0068】
噴霧のためには、霧化及び圧縮の圧力は、流量とノズルのオリフィスに応じて、及び製造者の推奨に従って調整される。これらの霧化及び圧縮の圧力は、典型的には、霧化圧力については0.5~4.0bar、好ましくは0.5~3.5bar、例えば0.7~2.5barの範囲で選択され、及び/又は圧縮圧力については0.7~3.5barの範囲で選択される。
【0069】
本発明では、糖衣液は、回転ドラムによって動かされるコア床上に噴霧される。
【0070】
これらのコアの性質は、好ましくは、固形物について上で定義された通りである。これらは例えば錠剤やチューインガムである。これらのコアは完全にむき出しであってもよく、或いは1つ以上の層、例えばガム状層、フィルムコーティング層、更には糖衣層でコーティングされていてもよく、前記層は好ましくは本発明の糖衣コーティング方法で使用されるものと同じ装置で得られる。
【0071】
コア床を動かすために、ドラムの回転速度は、チャンバーの寸法と糖衣コーティングされるコアのサイズとに応じて選択される。これは、通常3~30rpmの範囲、例えば1
0~20rpmの範囲で選択される。
【0072】
1つの有利な実施形態では、特に単純さ及び/又は占有される空間の量の理由のため、並びに本発明の方法がそれを可能にするため、コア床を動かすプロセスは、前記コアの縦軸方向の移送は除外される。これは、特に、糖衣コーティングを受けるコアが1つのチャンバーから別のチャンバーに移送されないこと、すなわち、これらが単一のチャンバーで糖衣コーティングされること、及び/又はコア床が移送される縦方向のチャンバーで糖衣コーティングされないことを意味する。
【0073】
乾燥のために、乾燥空気用に選択される温度は、好ましくは100℃未満、好ましくは80℃以下、好ましくは75℃以下、好ましくは70℃以下、更には65℃以下、更には60℃以下、更には55℃以下、更には50℃以下、更には45℃以下、更には40℃以下、更には35℃以下、更には30℃以下、又は25℃以下である。この乾燥温度は通常少なくとも15℃、好ましくは少なくとも20℃である。
【0074】
乾燥のために、流量は、50~8000m3/hの範囲、例えば100~7000m3/hの範囲、例えば100~1000m3/hの範囲で選択することができる。
【0075】
乾燥空気は、有利には穴が開いている回転ドラムの穴による空気の吸引によって排出される。
【0076】
好ましくは、本発明に有用な回転ドラムの穴の開いている壁のゾーンは、好ましくは、前記ドラム壁の表面積の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%を占める。最も好ましくは、ドラム壁はその表面積全体にわたって穴を有している。
【0077】
好ましくは、糖衣コーティングを受けるコア床の温度は、最大70℃、好ましくは最大60℃、好ましくは最大55℃、好ましくは最大50℃、好ましくは最大45℃、更には最大40℃、更には最大35℃、更には最大30℃、更には最大25℃である。糖衣コーティングを受けるコア床のこの温度は、通常少なくとも10℃、更には少なくとも15℃である。
【0078】
好ましくは、糖衣コーティングの開始前、すなわち噴霧開始前に、本発明の方法は、糖衣コーティングされるコア床を加熱する工程を含む。この工程は、特にコア床を目標温度にすることを目的とする。
【0079】
本発明の糖衣コーティング方法は、噴霧液の噴霧及び乾燥を同時に行う。
【0080】
しかしながら、これが本発明において望まれる特性、特に得られる糖衣コーティングされた固形物の品質及び/又はプロセスの操作性に関して矛盾しない限り、乾燥のない状態で分配工程(「休止時間」)及び噴霧工程の導入を想定することが可能である。
【0081】
好ましくは、乾燥と同時に噴霧が任意選択的に行われない間の糖衣コーティングプロセス段階は、糖衣コーティングプロセス時間の50%未満、好ましくは40%未満、好ましくは30%未満、好ましくは20%未満、好ましくは10%未満、好ましくは5%未満を占める。最も好ましくは、糖衣コーティングは、乾燥がない噴霧段階を含まない。
【0082】
好ましくは、任意選択的な休止時間(噴霧も乾燥も行われない2つの噴霧段階の間の時間)は、糖衣コーティングプロセス時間の50%未満、好ましくは40%未満、好ましくは30%未満、好ましくは20%未満、好ましくは10%未満、好ましくは5%未満を占
める。最も好ましくは、糖衣コーティングは休止時間を含まない。
【0083】
好ましくは、本発明の方法により得られた糖衣コーティングされた固形物は、1%より大きく、好ましくは3%より大きく、好ましくは5%より大きく、好ましくは7%より大きく、好ましくは10%より大きく、例えば少なくとも15%、更には少なくとも20%の糖衣割合を有する。
【0084】
好ましくは、この糖衣割合は、単位時間あたり、少なくとも0.05%毎分、好ましくは少なくとも0.10%毎分、好ましくは少なくとも0.13%毎分、更には少なくとも0.15%毎分、更には少なくとも0.20%毎分、更には少なくとも0.30%毎分である。
【0085】
本発明の方法は、これが本発明において望まれる特性、特に得られる糖衣コーティングされた固形物の品質及び/又はプロセスの操作性に関して矛盾しない限り、固形物の糖衣コーティングを目的としたもの以外の通常の工程も含んでいてもよい。他の工程の例としては、例えば、ガム状化、平滑化、研磨、着色を挙げることができる。有利には、そのような工程が行われる場合、それらは本発明の糖衣コーティングプロセスで使用されるものと同じ装置で行われる。使用される組成物が、結晶化した物質、特には糖及び/又はポリオールの結晶化した物質の層を効果的に形成するような量の結晶性材料を含む場合、例えばガム状化や着色などのこれらの工程のいくつかを糖衣コーティング工程に同化できる場合があることが理解される。
【0086】
これらの他の通常の工程に関して、本発明の方法に従って行われる糖衣コーティングにより、既に固形物を優れたレベルで平滑化できることに注目することは興味深い。更に、糖衣液に着色剤を添加することにより、着色を直接行うことができる。
【0087】
本発明の方法は、開始工程も含み得る。この開始工程は、粉末組成物を糖衣コーティングされるコア床に1回以上塗布すること、又は糖衣コーティングを行うこと、好ましくは糖衣コーティングを行うことからなる。この粉末組成物は、典型的には結晶性材料を含む。これらの結晶性材料は、典型的には糖衣液の結晶性材料と同じ性質のものであるが、異なるものであってもよい。塗布される粉末組成物の量は、典型的には、錠剤の重量に対して10重量%未満、好ましくは5重量%未満である。
【0088】
好ましくは、デキストロース、イソマルト、マルチトール、又はこれらの組み合わせが使用される場合、方法は追加の開始工程を含む。好ましくは、スクロース、キシリトール、マンニトール、エリスリトール、又はこれらの組み合わせが使用される場合、方法はこの開始工程を除外する。
【0089】
本発明に有用な装置は、これが本発明において望まれる特性、特に得られる糖衣コーティングされた固形物の品質及び/又はプロセスの操作性に関して矛盾しない限り、通常糖衣コーティングで使用される他の要素も含んでいてもよい。
【0090】
この点に関して、先行技術が砕塊機の使用に言及していることがあり、その目的は糖衣コーティング中の塊の出現防止であることに注目することは興味深い。そのような砕塊機は、本発明の方法においては必要とされない。したがって、好ましくは、また、本発明の方法との関係において有利に可能であるため、本発明に従って使用されるドラムのチャンバーには砕塊機がない。
【0091】
本発明は、例示的且つ非限定的な以下の実施例によってより明確に理解されるであろう。
【実施例0092】
1.本発明による糖衣コーティング試験
1.1.使用装置
以下の特徴を有する装置を使用した:
- 穴開き回転ドラム:直径30.48cm、容積2L;
- 滑り止めバー×6;
- 1本の圧縮空気噴霧ノズル(Schlick970/7-1 S75);オリフィス径0.8mm;
- 蠕動ポンプ(Watson Marlow323型);3ローラーヘッド(313DW);
- チューブ:内径2mm:外径6mm。
【0093】
1.2.糖衣液
試験した糖衣液は以下の配合を有していた(乾燥基準の%)。
【0094】
【0095】
これらの糖衣液は全て、周囲温度(20~25℃)の単一シェルの貯蔵タンクの中に含まれていた。
【0096】
1.3.コア
コアの以下のバッチを糖衣コーティング基材として使用した。
【0097】
【0098】
1.4.プロセス及び結果
全ての試験に共通する条件は次の通りである:運転圧力4bar;霧化及び圧縮圧力1.0又は1.3bar(製造者の推奨の通りに溶液の粘度に応じて選択);差圧-0.25mbar;ドラムの回転速度18rpm;乾燥風量100m3/h。
【0099】
噴霧の開始前に、コア床を望みの温度に到達させるために錠剤の床を2分間加熱した。
その後、噴霧及び乾燥は、プロセスを通して同時に行った(休止時間なし)。糖衣コーティングの終わりに噴霧を停止し、固形物を更に2分間乾燥させた。
【0100】
以下の表は、得られた結果と、各試験固有のプロセス特性を示している。
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
1.5.考察
本発明の方法は、有利には非常に簡単なプロセスに従ってあらゆる種類の固形物を糖衣コーティングすることを可能にし、レリーフ刻印、隆起、及び非対称形状などの複雑で不規則な形状をうまく保持することを可能にする。
【0106】
したがって、本発明者らは、それらが吸湿性(「Comp-SORB」及び「CG」)であるか又は非吸湿性(「Comp-MANN」)であるかに関わらず、同時にその表面に存在するレリーフ刻印を保ちながらも、例えば錠剤及びチューインガムを糖衣コーティングすることに成功した。
【0107】
驚くべきことに、コアの継続的な濡れにも関わらず、後者は損なわれず、複雑で不規則な形状が保たれた(「ロゴ充填」がない、すなわちレリーフ刻印によって形成された溝及び空洞が充填されない)。例えば、試験「Man-IN1~IN5」では、20%の固形分のみを含む糖衣液を用いた。実際、得られた糖衣錠は、はっきりと目で分かる不規則な形状(
図2a)、特に完全に識別可能なレリーフ刻印(
図2.b)~2.e))を有する。
【0108】
本発明の方法は、無視できないことに、従来の形状を有する固形物を糖衣コーティングするためにも同様に有用である他の利点も有する。
【0109】
使用される糖衣液は、あらゆる種類の結晶性材料を含んでいてもよく、配合の点で非常に簡素にすることができる。例えば、試験「Xyl-IN3」及び「Man-IN5」は、結合剤を含まない(「BF」)糖衣液も本発明の方法に適していることを示している。本発明の方法は、特に二酸化チタンを含まない「天然」の糖衣液で固形物をうまく糖衣コーティングすることも可能にする(糖衣液「N」を使用する試験「Xyl-IN4」)。
【0110】
更に、本発明の方法は、非常に低い固形分含有率を使用することを可能にし、これも糖衣コーティングで知られていないことである。本明細書で示される全ての試験では、固形分含有率が60%を超えない糖衣液が使用されている。したがって、本発明の方法は、糖衣コーティングのために水への溶解度が低い炭水化物(例えばマンニトール)を使用することを可能にする。
【0111】
本発明の方法は、比較的低い乾燥温度を使用することも可能にする。試験「Man-IN1」の主な目的は、この効果を例示することであり、前記試験は、25℃の温度を使用したマンニトールでの糖衣コーティングが可能であることを示している。得られた糖衣コーティングされた固形物は、出発コアの形状に忠実な非常にはっきりとした形状を有している(
図2.a)。特に低い乾燥温度を使用できることは、特に同様に低いコア床温度を得ることを可能にし、そのため、特定の活性剤(特には医薬活性剤)の場合と同様に、熱に不安定な成分を有するコアの組成物の糖衣コーティングを可能にする。したがって、試験「Man-IN1」では、錠剤床の温度は26℃を超えない。
【0112】
本発明の方法は、糖衣液が溶液中に大量の結晶性材料を含むことを必ずしも必要としないため、後者の温度を非常に低くすることもできる。これらの試験では、実際、使用された糖衣液は周囲温度(20~25℃)であった。これにより、プロセスを実施し易くすることに加えて、これらの液体中で熱に不安定な成分を使用することが可能になる。
【0113】
最後に、本発明の方法によって得られる固形物は、それらの色及び表面の感触に関しても満足できるものである。
【0114】
2.比較の糖衣コーティング試験
このパートでは、発明者らは、上述した米国特許出願公開第2008/0026131A1号明細書に従って、レリーフ刻印を有するComp-SORB錠剤1kgを糖衣コーティングすることを試みた。
【0115】
2.1.使用装置
以下の特徴を有する装置を使用した:
- 回転ドラム:直径30cm;
- 滑り止めバー×8;
- 1本の圧縮空気噴霧ノズル(BINKS460);オリフィス径0.8mm;
- 蠕動ポンプ(Watson Marlow323型);3ローラーヘッド(313DW);
- チューブ:内径2mm:外径6mm。
【0116】
2.2.糖衣液
米国特許出願公開第2008/0026131A1号明細書の実施例1に従って使用した糖衣液は以下のものであった:
- 「ガムシロップ」:配合(乾燥基準の%):スクロース96.0%;アラビアガム4
.0%(固形分40重量%の溶液形態で添加);固形分含有率:72%。
- 「平滑化シロップ」:配合(乾燥基準の%):スクロース97.0%;グルコースシロップ2.0%;二酸化チタン1.0%;固形分含有率:70%。
- 「着色シロップ」:配合(乾燥重量%):スクロース98.0%;青色顔料(青色1号レーキ)2.0%;固形分含有率:69%。
必要に応じて、化合物を完全に可溶化するためにこれらの液体の温度を調整した。
【0117】
2.3.プロセス及び結果
以下の試験では、米国特許出願公開第2008/0026131A1号明細書の実施例1の条件に忠実に従った(乾燥温度、固体など)。噴霧流量やドラムの回転速度などのパラメータは、発明者が利用可能な糖衣コーティングチャンバーの大きさに合わせて調節した。
【0118】
試験Sac-CP1:
最初の試験は、以下の表に従って、それぞれ噴霧段階、その後の休止時間(分配)、その後の乾燥工程からなる複数回のサイクルを実行することにより行った。
【0119】
【0120】
この試験は、米国特許出願公開第2008/0026131A1号明細書に記載のものよりも高い装置の乾燥能力(15.3m3/hと比較して50m3/h)にもかかわらず、過剰にくっつき合って塊になるため完了することができず、停止した。
【0121】
そのため、くっつき合って塊になるこの現象を回避し、米国特許出願公開第2008/0026131A1号明細書の実施例1全体を再現できるようにするために、2回目の試験を行った。
【0122】
試験Sac-CP2:
試験Sac-CP1の失敗を受けて、第1段階の最初のサイクルを修正した。コアの塊を砕くためにオペレーターが介入し、運転条件を変更した。この試験は、以下の表に従って行った。
【0123】
【0124】
得られた結果を
図5.a)に示す。このように糖衣コーティングした錠剤は非常にざらざらしており、粗く丸い全体形状を有している。コアに存在していたロゴ及び刻印は覆われており、もはや識別不可能である。本発明者らは、糖衣コーティングの最初のサイクルで錠剤の表面が損傷したことに気付いた。使用した糖衣液が高い固形分含有率を有しているにもかかわらず、錠剤は最初の2分から可溶化され、更に結晶化は非常に困難であった。
【0125】
試験Sac-CP3:試験Sac-CP2の「平滑化」糖衣コーティング段階のみを行う3回目の試験を行った。試験Sac-CP2の結果と同様の結果が得られた(
図5.b)):糖衣錠は、粗くて丸い全体形状を有しており、レリーフ刻印は覆われていた。