(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093727
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
H10K 50/88 20230101AFI20230627BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20230627BHJP
【FI】
H10K50/88
H10K50/10
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074611
(22)【出願日】2023-04-28
(62)【分割の表示】P 2021116179の分割
【原出願日】2014-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000221926
【氏名又は名称】東北パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】大峡 秀隆
(72)【発明者】
【氏名】島崎 健太
(72)【発明者】
【氏名】駒田 昌紀
(72)【発明者】
【氏名】奥山 賢一
(57)【要約】
【課題】発光装置の端子と導電部材の接続抵抗を低くする。
【解決手段】発光装置10は、基板100、発光素子102、及び端子302(第1端子)を備えている。端子302は、第1層324と、第2層326とを備えている。第2層326は、第1層324の上に形成されている。また、第2層326の幅は、第1層324の幅よりも狭い。このため、第1層324の一部は第2層326からはみ出ている。発光装置10は、例えばディスプレイであるが、照明装置であってもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に位置する発光素子と、
前記基板に位置し、前記発光素子に電気的に接続する第1端子と、
を備え、
前記第1端子は、透明導電層及び前記透明導電層の上に位置する導電層を備え、
前記導電層は、第1層及び前記第1層の上に位置する第2層を備え、
前記第2層の幅は、前記第1層の幅よりも狭い発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、
前記発光素子は、透光性を有する第1電極、前記第1電極の上に位置する有機層、及び前記有機層上に位置する第2電極を備え、
前記第1端子は前記第1電極に電気的に接続している発光装置。
【請求項3】
請求項2に記載の発光装置において、
前記第2電極に電気的に接続している第2端子を備え、
前記第2端子は、前記透明導電層及び前記透明導電層の上に位置する前記導電層を備え、
前記導電層は、前記第1層及び前記第1層の上に位置する前記第2層を備え、
前記第1端子の表面粗さは、前記第2端子の表面粗さよりも粗い発光装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記第1層の側面は、前記第2層に近づくにつれて前記第1層の幅が狭くなる方向に傾斜している発光装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記第1層はアルミニウム又はアルミニウム合金からなり、
前記第2層はモリブデン又はモリブデン合金からなる発光装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記第2層の厚さは20nm以下である発光装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記第2層の厚さは5nm以上である発光装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記導電層は、第3層をさらに備え、
前記第3層、前記第1層、及び前記第2層は前記透明導電層に近い側からこの順に積層しており、
前記第2層の厚さは前記第3層の厚さよりも薄い発光装置。
【請求項9】
請求項8に記載の発光装置において、
前記第3層はモリブデン又はモリブデン合金からなる発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、発光装置の光源に有機EL素子が用いられるようになっている。有機EL素子は、有機層を2つの電極で挟んだ構成を有している。そして、これら2つの電極は、配線を介して端子に接続している。
【0003】
特許文献1には、配線の一部に透明導電膜と金属膜の積層構造を用いることが記載されている。特許文献1において、配線の金属層には、クロム、アルミニウム、アルミニウム合金、銀、銀合金、モリブデン、チタン、タングステン、タンタルなどの単層又はこれらの金属の2層~3層の積層膜が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発光装置の端子は、リード端子やボンディングワイヤなどの導電部材を介して、制御回路に接続している。ここで、発光装置の消費電力を低下させたり寿命を延ばすためには、発光装置の端子と導電部材の接続抵抗を低くする必要がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題としては、発光装置の端子と導電部材の接続抵抗を低くすることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一例は、基板と、
前記基板に形成された発光素子と、
前記基板に形成され、前記発光素子に電気的に接続する第1端子と、
を備え、
前記第1端子は、第1層と、前記第1層の上に形成された第2層を備え、
前記第2層の幅は、前記第1層の幅よりも狭い発光装置である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る発光装置の構成を示す平面図である。
【
図3】端子の構成を説明するためのA-A断面図である。
【
図5】
図4から封止部材、隔壁、第2電極、有機層、及び絶縁層を取り除いた図である。
【
図10】実施例2に係る発光装置の構成を示す平面図である。
【
図11】
図10から封止部材、隔壁、第2電極、有機層、及び絶縁層を取り除いた図である。
【
図13】実施例3に係る発光装置の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0010】
図1は、実施形態に係る発光装置10の構成を示す平面図である。
図2は、発光素子102の構成を示すための断面図である。
図3は、端子302の構成を説明するためのA-A断面図である。実施形態に係る発光装置10は、基板100、発光素子102、及び端子302(第1端子)を備えている。端子302は、第1層324と、第2層326とを備えている。第2層326は、第1層324の上に形成されている。また、第2層326の幅は、第1層324の幅よりも狭い。このため、第1層324の一部は第2層326からはみ出ている。発光装置10は、例えばディスプレイであるが、照明装置であってもよい。以下、詳細に説明する。
【0011】
基板100は、例えばガラス基板や樹脂基板などの透明基板である。基板100は、可撓性を有していてもよい。この場合、基板100の厚さは、例えば10μm以上1000μm以下である。この場合においても、基板100は無機材料及び有機材料のいずれで形成されていてもよい。基板100は、例えば矩形などの多角形である。
【0012】
発光素子102は、例えば有機EL素子であり、
図2に示すように、第1電極110及び第2電極150の間に有機層140を挟んだ構成を有している。有機層140は、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層をこの順に積層した構成を有している。第1電極110が陽極の場合は、正孔輸送層が第1電極110の上に形成される。また、第1電極110が陰極の場合は、電子輸送層が第1電極110の上に形成される。なお、正孔輸送層と発光層の間に正孔注入層が設けられていても良いし、電子輸送層と発光層の間に電子注入層が設けられていても良い。有機層140の各層は、塗布法によって形成されても蒸着法によって形成されてもよく、一部を塗布法、残りを蒸着法で形成しても良い。なお、有機層140は蒸着材料を用いて蒸着法で形成してもよく、また、塗布材料を用いて、インクジェット法、印刷法、スプレー法で形成してもよい。
【0013】
第1電極110及び第2電極150のうち少なくとも一方は透光性の電極になっている。また、残りの電極は、例えばAlやAgなどの金属によって形成されている。透光性の電極の材料は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)等の無機材料、またはポリチオフェン誘導体などの導電性高分子、又は銀もしくは炭素からなるナノワイヤを利用した網目状電極である。本図に示す例では、ボトムエミッション型の発光素子102であって、第1電極110は透光性の電極になっており、第2電極150は、Alなど光を反射する電極になっている。また、トップエミッション型の発光素子102であって、基板100の上に第1電極110、有機層140、及び第2電極150をこの順に積層した構成を有している場合、第1電極110はAlなど光を反射する電極になっており、第2電極150は透光性の電極になっている。また、両方の電極(第1電極110、第2電極150)を透光性の電極として、透光型の発光装置としても良い(デュアルエミッション型)。
【0014】
基板100の上には、発光素子102を区画するために、絶縁層120が形成されている。絶縁層120は開口122を有しており、発光素子102は開口122の中に形成されている。絶縁層120は、例えばポリイミド系樹脂などの感光性の樹脂であり、露光及び現像されることによって、所望のパターンに形成されている。絶縁層120としては、例えば、ポジ型の感光性樹脂が用いられる。なお、絶縁層120はポリイミド系樹脂以外の樹脂、例えばエポキシ系樹脂やアクリル系樹脂であっても良い。
【0015】
発光装置10がディスプレイの場合、絶縁層120には複数の開口122が形成されており、これら複数の開口122を用いて複数の発光素子102が形成されている。また発光装置10が照明装置の場合、絶縁層120には一つの開口122が形成されている場合もあれば、複数の開口122が形成されている場合もある。後者の場合、これら複数の開口122を用いて複数の発光素子102が形成されている。
【0016】
端子302と発光素子102は、配線300を介して互いに接続している。配線300は、導電層によって形成されている。本図に示す例では、配線300は透明導電層310によって形成されている。透明導電層310は、例えば発光素子102が有する2つの電極のうち基板100側に位置する電極と同様の材料(例えば透光性の導電材料)によって形成されている。
【0017】
そして
図3に示すように、端子302は、透明導電層310の上に導電層320を積層した構成を有している。導電層320は、第3層322、第1層324、及び第2層326をこの順に積層した多層構造になっている。第1層324は、例えばAl又はAl合金で形成されており、第2層326及び第3層322は、Mo又はMo合金で形成されている。第1層324がAlNd合金で形成されている場合、第2層326及び第3層322は、MoNb合金で形成されている。第2層326の幅は第1層324の幅よりも狭い。このため、第1層324の縁は第2層326で覆われていない。
【0018】
また、第2層326は第3層322よりも薄い。第3層322の厚さは、例えば40nm以上60nm以下であり、第2層326の厚さは、例えば5nm以上20nm以下である。そして、第1層324の側面は、上に行くにつれて第1層324の幅が細くなる方向に傾斜している。第1層324の厚さは、例えば100nm以上1000nm以下である。
【0019】
ここで、発光素子102の配線300は、透明導電層310としてITO、導電層320としてアルミニウムを利用する場合が多い。特に、導電層320は、MoNb/AlNd/MoNbの積層構造を採用している場合が多い。この理由は、以下の通りである。
【0020】
まず、アルミニウムとITOとを直接接触させた場合、電気化学的効果により、ITOの化学的耐性が弱まる。また、アルミニウムとITOとの電気的な接触は粗悪であり、これらの間の接触抵抗は経時劣化してしまう。これらの問題を避けるため、アルミニウムとITOとの間にモリブデン(Mo)、クロム(Cr)など異種金属を介在させ、直接の接触を絶つことが好ましい。特に、Moは、アルミニウムとITOとの反応を遮断し、両者との接触抵抗も低い。
【0021】
更に、アルミニウムやアルミニウムにネオジウム(Nd)を含有したAlNd合金には酸化しやすいものが多い。導電層320を形成する材料が酸化された場合、その酸化物中の酸素がアルミニウムやAlNd合金に拡散するおそれが生じる。この現象を抑制するために、特定の数量のニオブ(Nb)を含有したMoNb合金層を導電層320の表面に保護膜として形成する。この保護層(MoNb)およびAlNd合金の導電層320は燐酸、酢酸、及び硝酸の混合水溶液よりなるエッチング液で一括エッチングすることも可能である。有機EL素子を用いた一般的な発光装置において、絶縁層120の材料であるポリイミド膜をスピンコーティングし、フォトリソ工程でパターニングを行った後、320℃程度の温度で熱処理することにより、絶縁層120を作成する。この熱処理により、導電層320のAlNd合金の抵抗を低くすることができる。この理由は、熱処理の熱でNdがAlの粒界に移動するためと考えられる。
【0022】
次に、発光装置10の製造方法について説明する。まず、基板100上に第1電極110となる導電層を形成する。次いで、この導電層をエッチング(例えばドライエッチング又はウェットエッチング)などを利用し、選択的に除去する。これにより、基板100上には、第1電極110及び配線300の透明導電層310が形成される。
【0023】
次いで、基板100上及び透明導電層310上に、導電層320の第3層322となる導電層、第1層324となる導電層、及び第2層326となる導電層をこの順に形成する。これらの各層は、例えばスパッタリング法や蒸着法を用いて形成される。次いで、これらの導電層の上にレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとしてエッチング(例えばウェットエッチング)を行う。これにより、透明導電層310上には導電層320が形成される。
【0024】
ここで、第1層324は第2層326よりもエッチングされやすい。このため、第2層326を厚く形成した場合、第2層326のうちレジストパターンで覆われていない領域が除去される前に、第1層324が側面からエッチングされていく。このため、第1層324の側面は第2層326の側面よりも配線300の内側に位置してしまう。これに対して本実施形態では、第2層326の厚さは20nm以下である。このため、第1層324の側面が第2層326の側面よりも配線300の内側に位置することを抑制できる。例えば、透明導電層310の幅の設計値を15.0μm、MoNb合金層の第2層326の厚さを5~20nmの範囲とした場合、側面からのエッチングにより、AlNd合金の第1層324の幅14.4μm、第2層326は14.0μmとなる。この結果、第1層324の側面は、上に行くにつれて第1層324の幅が狭くなる方向に傾斜する。そして、第2層326の幅は、第1層324の幅よりも片側が0.2μmづつ狭くなる。なお、端子302の先端においても、第2層326の縁は、第1層324の縁よりも端子302の内側に位置している。
【0025】
なお、第2層326の厚さが5nm未満の場合、このエッチングにおいて第2層326の全てが除去される可能性が出てくる。この場合、第1層324もエッチングによって除去される可能性が高くなる。
【0026】
次いで、基板100上、第1電極110上、及び配線300に絶縁層を形成し、この絶縁層を、薬液(例えば現像液)を利用して選択的に除去する。これにより、絶縁層120及び開口122が形成される。絶縁層120が絶縁層で形成されている場合、絶縁層120及び開口122は、露光処理及び現像処理によって形成される。絶縁層120がポリイミドで形成されている場合、絶縁層120には、さらに加熱処理が行われる。これにより、絶縁層120のイミド化が進む。
【0027】
次いで、開口122内に有機層140を形成する。有機層140は、全ての層を塗布法によって形成されてもよいし、全ての層を蒸着法によって形成されてもよいし、一部を塗布法、残りを蒸着法で形成しても良い。有機層140を構成する少なくとも一つの層(例えば正孔輸送層)は、例えばスプレー塗布、ディスペンサー塗布、インクジェット、又は印刷などの塗布法を用いて形成されてもよい。なお、有機層140の残りの層は、例えば蒸着法を用いて形成されるが、これらの層も塗布法を用いて形成されてもよい。
【0028】
次いで、有機層140上に第2電極150を、例えば蒸着法やスパッタリング法を用いて形成する。
【0029】
以上、本実施形態によれば、端子302は、第1層324及び第2層326を有している。そして、第2層326の幅は第1層324の幅よりも狭い。従って、第2層326から第1層324が食み出している。その結果、端子302に接続する導通部材(例えばリード端子やボンディングワイヤ)は、第1層324及び第2層326の双方に接触することができる。従って、導通部材が第2層326のみと接触する場合と比較して、導通部材と端子302の接続部には金属間化合物が形成されやすい。従って端子302と導通部材の接続を強固にして、これらの間の接続抵抗を低くすることができる。
【0030】
また、第2層326の厚さは20nm以下である。従って、容易に第2層326の幅を第1層324の幅よりも狭くすることができる。
【実施例0031】
(実施例1)
図4は、実施例1に係る発光装置10の平面図である。
図5は、
図4から封止部材200、隔壁170、第2電極150、有機層140、及び絶縁層120を取り除いた図である。
図6は
図4のB-B断面図であり、
図7は
図4のC-C断面図であり、
図8は
図4のD-D断面図である。
図9は
図4のE-E断面図である。なお、
図4のF-F断面図も、
図9と同様である。本図に示す発光装置10は、例えばディスプレイとして用いられる。
【0032】
発光装置10は、基板100、第1電極110、発光素子102、絶縁層120、複数の開口122、複数の開口124、複数の引出配線130、複数の第1端子136、有機層140、第2電極150、複数の引出配線160、複数の第2端子166、及び複数の隔壁170を有している。第1端子136及び第2端子166は、実施形態における端子302に対応しており、引出配線130,160は、実施形態における配線300に対応している。
【0033】
第1電極110は、基板100の第1面側に形成され、第1方向(
図4におけるY方向)にライン状に延在している。第1電極110は実施形態に示した透光性の電極である。第1電極110は、光が透過する程度に薄い金属薄膜であっても良い。そして第1電極110の端部は、引出配線130に接続している。
【0034】
引出配線130は、第1電極110を第1端子136に接続する配線である。本図に示す例では、引出配線130の一端側は第1電極110に接続しており、引出配線130の他端側は第1端子136となっている。引出配線130は、実施形態における配線300の一例であり、透明導電層310の上に導電層320を積層した構成を有している。透明導電層310は第1電極110と一体になっている。
【0035】
絶縁層120は、
図4、及び
図6~
図8に示すように、複数の第1電極110上及びその間の領域に形成されている。絶縁層120には、複数の開口122及び複数の開口124が形成されている。複数の第2電極150は、詳細を後述するように、第1電極110と交差する方向(例えば直交する方向:
図4におけるX方向)に互いに平行に延在している。そして、複数の第2電極150の間には、詳細を後述する隔壁170が延在している。開口122は、平面視で第1電極110と第2電極150の交点に位置している。複数の開口122は、所定の間隔を空けて設けられている。そして、複数の開口122は、第1電極110が延在する方向(
図4におけるY方向)に並んでいる。また、複数の開口122は、第2電極150の延在方向(
図4におけるX方向)にも並んでいる。このため、複数の開口122はマトリクスを構成するように配置されていることになる。
【0036】
開口124は、平面視で複数の第2電極150のそれぞれの一端側に位置している。また開口124は、開口122が構成するマトリクスの一辺に沿って配置されている。そしてこの一辺に沿う方向(例えば
図4におけるY方向、すなわち第1電極110に沿う方向)で見た場合、開口124は、所定の間隔で配置されている。開口124からは、引出配線160の一部分が露出している。そして、引出配線160は、開口124を介して第2電極150に接続している。言い換えると、複数の引出配線160は、互いに異なる発光素子102に接続している。
【0037】
引出配線160は、第2電極150を第2端子166に接続する配線である。引出配線160の一端側は開口124の下に位置しており、引出配線160の他端側は、絶縁層120の外部に引き出されている。そして本図に示す例では、引出配線160の他端側が第2端子166となっている。引出配線160は実施形態における配線300の一例であり、第2端子166は、実施形態の端子302の一例である。引出配線160は、透明導電層310の上に導電層320を積層した構成を有している。この透明導電層310も第1電極110と同様の材料によって形成されている。また、この導電層320も実施形態における導電層320と同様の構成を有している。
【0038】
なお、本図に示す例において、引出配線130において、導電層320の第2層326の縁は、平面視において複数の凹凸を有している。言い換えると、平面視において、引出配線130の第2層326の縁は、引出配線160の第2層326の縁と比較して大きな凹凸を有している。これは、詳細を後述するように、導電層320をウェットエッチングで形成するときに、引出配線130は第1電極110に接続しているため、電気化学的な条件に差が生じるため、と考えられる。
【0039】
また、引出配線130の第2層326の表面粗さRaは、引出配線160の第2層326の表面粗さRaよりも大きい。例えば4μm×4μmにおいて、引出配線130の第2層326の表面粗さRaは、6.3nm以上7.0nm以下であり、引出配線160の第2層326の表面粗さRaは5.2nm以上5.8nm以下である。このため、第2端子166よりも第1端子136のほうがボンディングワイヤなどの導通部材と接続しやすい。
【0040】
開口122と重なる領域には、有機層140が形成されている。有機層140の正孔輸送層は第1電極110に接しており、有機層140の電子輸送層は第2電極150に接している。このようにして、有機層140は第1電極110と第2電極150の間で挟持されている。
【0041】
なお、
図6及び
図7に示す例では、有機層140を構成する各層は、いずれも開口122の外側まではみ出している場合を示している。そして
図4に示すように、有機層140を構成する各層は、隔壁170が延在する方向において、隣り合う開口122の間にも連続して形成されていてもよいし、連続して形成していなくてもよい。ただし、
図8に示すように、有機層140は、開口124には形成されていない。
【0042】
上記したように、有機層140は、第1電極110及び第2電極150に挟持されている。第2電極150は、
図4、
図6~
図8に示すように、有機層140より上に形成され、第1方向と交わる第2方向(
図4におけるX方向)に延在している。第2電極150は、有機層140に電気的に接続している。例えば第2電極150は、有機層140上に形成されていても良いし、有機層140の上に形成された導電層の上に形成されていても良い。発光装置10は、互いに平行な複数の第2電極150を有している。一つの第2電極150は、複数の開口122上を通過する方向に形成されている。
【0043】
隣り合う第2電極150の間には、隔壁170が形成されている。隔壁170は、第2電極150と平行すなわち第2方向に延在している。隔壁170の下地は、例えば絶縁層120である。隔壁170は、例えばポリイミド系樹脂などの感光性の樹脂であり、露光及び現像されることによって、所望のパターンに形成されている。隔壁170は、例えばネガ型の感光性樹脂を用いて形成される。なお、隔壁170はポリイミド系樹脂以外の樹脂、例えばエポキシ系樹脂やアクリル系樹脂、二酸化珪素等の無機材料で構成されていても良い。
【0044】
隔壁170は、断面が台形の上下を逆にした形状(逆台形)になっている。すなわち隔壁170の上面の幅は、隔壁170の下面の幅よりも大きい。このため、隔壁170を第2電極150より前に形成しておくと、蒸着法やスパッタリング法を用いて、第2電極150を基板100の一面側に形成することで、複数の第2電極150を一括で形成することができる。
【0045】
また、隔壁170は、有機層140を分断する機能も有している。
【0046】
また、発光装置10は封止部材200を備えている。封止部材200は、複数の発光素子102を封止しており、基板100と同様の多角形の金属箔又は金属板(例えばAl箔又はAl板)の縁部の全周を押し下げた形状を有している。そして、縁部は接着材202(又は粘着剤)で基板100に固定されている。ただし、封止部材200はガラスで形成されていてもよい。
【0047】
次に、本実施例における発光装置10の製造方法を説明する。まず、基板100上に第1電極110、引出配線130,160の透明導電層310を形成する。これらの形成方法は、実施形態と同様である。
【0048】
次いで透明導電層310上を含む基板100の上に、導電層320となる導電層を形成する。次いで、この導電層のうち導電層320となる領域をレジストパターンで覆う。次いで、このレジストパターンをマスクとしてウェットエッチングを行う。これにより、導電層320が形成される。この工程において、引出配線130の導電層320は第1電極110に接続している。このため、引出配線130において、導電層320の第2層326には、第1電極110を一方の電極とした電池化学反応が生じ、これによって引出配線130の第2層326の縁には凹凸が形成される。また、引出配線130の第2層326の表面は、引出配線160の第2層326の表面よりも粗くなる。
【0049】
次いで、絶縁層120を形成する。絶縁層120の形成方法は、実施形態と同様である。この工程において、複数の開口122及び複数の開口124が形成される。次いで、絶縁層120上に隔壁170を形成し、さらに有機層140及び第2電極150を形成する。これらの形成方法は、実施形態と同様である。
【0050】
本実施例によっても、第1端子136の導電層320及び第2端子166の導電層320は、実施形態における導電層320と同様の構成を有している。その結果、第1端子136及び第2端子166に接続する導通部材(例えばリード端子やボンディングワイヤ)は、導電層320の第1層324及び第2層326の双方に接触することができる。従って、第1端子136及び第2端子166は導通部材に接続しやすくなる。
【0051】
また、第1端子136の第2層326の縁は、第2端子166の第2層326の縁と比較して大きな凹凸を有している。このため、第1端子136は、第2端子166よりも導通部材に接続しやすくなる。
【0052】
(実施例2)
図10は、実施例2に係る発光装置10の構成を示す平面図である。
図11は、
図10から封止部材200、隔壁170、第2電極150、有機層140、及び絶縁層120を取り除いた図である。
図12は、
図10のG-G断面図である。なお、
図10のH-H断面図も、
図12と同様である。本実施例に係る発光装置10は、以下の点を除いて、実施例1に係る発光装置10と同様の構成である。
【0053】
まず、引出配線130のうち絶縁層120の縁126と重なる部分には、導電層320が形成されていない。同様に、引出配線160のうち縁126と重なる部分には、導電層320が形成されていない。引出配線130,160のうち導電層320が形成されていない部分の長さは、例えば10μm以上500μm以下である。絶縁層120の縁126から絶縁層120の下に位置する導電層320の縁までの距離は、例えば5μm以上250μm以下である。また、絶縁層120の縁126から絶縁層120の外に位置する導電層320の縁までの距離は、例えば5μm以上250μm以下である。このような領域は、例えば導電層320を形成するときのレジストパターンの形状を変更することにより、実現できる。
【0054】
そして、本実施例では、引出配線130,160の一部は透明導電層310のみで形成されている。このため、ウェットエッチングにより導電層320を形成するときに、引出配線160の導電層320においても、透明導電層310のうち導電層320で覆われていない部分を電極とした電池化学反応が生じる。このため、引出配線160の第2層326の縁にも凹凸が形成される。
【0055】
本実施例によっても、第1端子136の導電層320及び第2端子166の導電層320は、実施形態における導電層320と同様の構成を有している。このため、第1端子136及び第2端子166はボンディングワイヤ400などの導通部材に接続しやすくなる。また、第2端子166の第2層326の縁も凹凸を有している。従って、第2端子166も導通部材に接続しやすくなる。
【0056】
(実施例3)
図13は、実施例3に係る発光装置10の構成を示す平面図である。
図14は、
図12のE-E断面図である。
図13は、実施例1の
図4に対応しており、
図14は実施例1の
図9に対応している。本実施例に係る発光装置10は、封止部材200の代わりに封止膜210(被覆膜)を備えている点を除いて、実施例1に係る発光装置10と同様の構成である。
【0057】
封止膜210は、例えば酸化アルミニウム膜であり、例えばALD(Atomic Layer Deposition)法を用いて形成されている。封止膜210の膜厚は、例えば10nm以上200nm以下である。封止膜210は、絶縁層120、発光素子102、引出配線160、及び引出配線130を被覆している。なお、封止膜210は、ALD法以外の成膜法、例えばCVD法を用いて形成されても良い。封止膜210は、段差被覆性が高い。このため、封止膜210は、基板100の上及び配線300の端面も連続して被覆している。
【0058】
なお、封止膜210は、発光装置10の第1端子136及び第2端子166を覆っていない。そして第1端子136及び第2端子166には、導電部材の一端、例えばボンディングワイヤ400の一端が接続している。導電部材の他端、例えばボンディングワイヤ400の他端は、回路基板に接続している。この回路基板には、発光装置10の制御回路が形成されている。
【0059】
ボンディングワイヤ400のうち第1端子136(又は第2端子166)に接続している側の端部の幅は、第2層326の幅よりも広くなっている。このため、ボンディングワイヤ400の端部は、第2層326のみではなく第1層324にも接続している。このため、第1端子136及び第2端子166はボンディングワイヤ400に接続しやすい。また、ACF(異方性導電膜)を利用する場合でも、導電粒子が第2層326を突き破るため、第1層324と物理的に接触することができるため、これまでの発光装置よりも低抵抗な端子構造になる。
【0060】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。