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  • 特開-乾乳期乳牛用飼料の添加剤および飼料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093770
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】乾乳期乳牛用飼料の添加剤および飼料
(51)【国際特許分類】
   A23K 50/10 20160101AFI20230627BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20230627BHJP
【FI】
A23K50/10
A23K10/30
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076614
(22)【出願日】2023-05-08
(62)【分割の表示】P 2019092857の分割
【原出願日】2019-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】391009877
【氏名又は名称】雪印種苗株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】北村 亨
(72)【発明者】
【氏名】高橋 強
(72)【発明者】
【氏名】高浦 一希
(57)【要約】
【課題】乾乳期に当たる分娩前後の乳牛の体調変化を調整する飼料を開発する。
【解決手段】マリアアザミ抽出物を有効成分とする乾乳期の乳牛用飼料の添加剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マリアアザミ抽出物を有効成分とする乾乳期の乳牛用飼料の添加剤。
【請求項2】
ペレット剤型であることを特徴とする請求項1記載の添加剤。
【請求項3】
マリアアザミ抽出物がシリマリンを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の添加剤。
【請求項4】
シリマリンが1~10g含有されていることを特徴とする請求項3記載の添加剤。
【請求項5】
請求項1~4に記載されているいずれかの添加剤を含むことを特徴とする乾乳期の乳牛
用飼料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾乳期の牛用の飼育管理技術に関し、そのために与える飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
乳牛は、搾乳を続けるために分娩を繰り返すが、分娩前後には搾乳を休止する期間があり、この期間が乾乳期といわれる。分娩前後に乳牛の疾病や事故が多く、乳量や繁殖成績を低下させ、酪農経営に大きな損失となっている。分娩前後の代謝障害や繁殖障害は乾乳期の栄養管理との関連が強いと言われ、乾乳期の飼料管理が重要とされている。
乳牛は、泌乳期(搾乳期)には多くの栄養を使って乳を生産していて、特に最盛期では餌から得られる栄養だけでは消費した分に追いつけずに、痩せてきて、乾乳期に太る傾向にある。このように身体の変化の激しい牛は、健康状態を損ねやすい傾向があり、乾乳期に太りすぎた牛は分娩後に事故を起こしやすい可能性が高くなる。乳牛に発生する疾病の多く(約6割)は分娩前後に発生する。そのような乳牛の体調を管理する目安としてボディコンディションスコア(BCS)が用いられており、3を標準として1~5までのスコアが用いられる。乾乳期には3.5程度、泌乳期には3.0程度に安定した状態に保つのが目安とする報告もある。
乳牛のサイクル例を次に挙げ、図4に示す。
乳牛も人間と同じく分娩をするとお乳を出す。これを泌乳といい、この泌乳期間は約9~10カ月、乳量は分娩後60日目ぐらいを最高として、徐々に低下していく。この時期に次の分娩のために人工受精が行われ、分娩から約300日目頃(次の分娩の2~3カ月前)になると、1日の乳量も約10kg程度と、最高時の3分の1まで減る。この時期に搾乳を中止し、乳牛の体を休ませることを乾乳と呼ぶ。乾乳をすることにより、母牛の体力回復や胎児への栄養補給、次の泌乳への養分蓄積も可能となる。この乾乳期はおよそ50日前後、そして分娩を迎える。
【0003】
このように乾乳期に乳牛の管理が重要なことは知られており、餌の量や添加剤についてもたくさん提案されている。
例えば、特許文献1(特許第5864807号公報)には、硫酸カルシウム及び/又はその水和物を乾乳牛に73~131g/日給与し、硫酸カルシウム及びその水和物以外の陰イオン供給源に由来する塩素及びイオウの給与量の総計を400mEq/頭・日以下として、牛の嗜好性及び飼料摂取量を低下させることなく、分娩前後の低カルシウム血症及び乳熱ならびにそれらと併発する周産期疾病(第四胃変位、ケトーシス等)を予防する乳牛用飼料が提案されている。
特許文献2(特開平10-99028号公報)には、陰イオン元素の塩素、硫黄を多く含む飼料原料に陽イオンに比し陰イオンの勝る塩類を加えて調整材とし、該調整材を給与飼料に混入することによって、該給与飼料の電解質平衡を正の範囲において、負の方向に変動を与える乾乳期飼料の電解質平衡調整法が開示されている。
【0004】
マリアアザミ抽出物を含む動物用飼料として次のような提案がある。特許文献3(特開2008-11731号公報)には、飼料中の乳糖を20重量%以上含有させると共に、粗たん白質の含量を20重量%以下に抑え、マリアアザミ、アニス、ガーリック、コロハのいずれか1種以上、あるいは該ハーブと有機酸を添加し、尚且つ子豚の発育に必要な量のアミノ酸を含有して栄養設計する下痢を抑制するほ乳期子豚育成用配合飼料が開示されている。
特許文献4(特開2015-218121号公報)には、重量%基準で、センシンレン抽出物5~15%、キクニガナ根粉末5~15%、タカサブロウ抽出物5~15%、マリアアザミ抽出物5~15%、キダチコミカンソウ抽出物5~15%、イヌホオズキ抽出物5~15%、甘草抽出物5~15%、植物油5~15%、カボチャの種子末0~5%、オオバコの種子末0~5%、スイカズラの花末0~5%、ベニバナの花末0~5%および大豆油0~5%からなる、卵胞嚢腫等の卵巣機能低下を引き起こす症状のみられる黒毛和牛繁殖母牛用の飼料添加剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5864807号公報
【特許文献2】特開平10-099028号公報
【特許文献3】特開2008-011731号公報
【特許文献4】特開2015-218121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
乳牛は分娩前の乾乳期(搾乳しない期間)には、飼料を制限して体型を維持するように管理しているが(太らないように管理)、分娩後に泌乳が始まると飼料の摂取が追い付かずに、身を削って牛乳を出すことから、急激に痩せる。出産のストレスとこの急激な体重変化により、分娩前後(周産期)は疾病にかかりやすい時期である。
本発明は、乾乳期に当たる分娩前後の母牛の体調の変化を調整する飼料を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成からなる。
1.マリアアザミ抽出物を有効成分とする乾乳期の乳牛用飼料の添加剤。
2.ペレット剤型であることを特徴とする1.記載の添加剤。
3.マリアアザミ抽出物がシリマリンを含むことを特徴とする1.又は2.記載の添加剤。
4.シリマリンが1~10g含有されていることを特徴とする3.記載の添加剤。
5.1.~4.に記載されているいずれかの添加剤を含むことを特徴とする乾乳期の乳牛用飼料。
【発明の効果】
【0008】
1.シリマリンを含むマリアザミ抽出物を乾乳期の乳牛に投与することにより、投与していない牛に比べて、分娩前後のボディコンディションスコアの低下が少なく、分娩後に高い初回乳量が得られた。乾乳期を上手に飼うことは次期の泌乳期の生産性アップにつながるので、乾乳期は泌乳期の終わりではなく次回の泌乳の始まりである。本発明では、マリアアザミ抽出物を投与することによって、体調の変化が少なく、乳量の向上につながっている。シリマリンの投与量は1~10gが適している。
2.初期の乳量が多くなることは、泌乳期全体の嵩上げになり、全体搾乳量の増加となる。
3.本発明では、飼料用添加剤あるいはマリアアザミ抽出物を添加した乾乳期の乳牛用飼料として提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ボディコンディションスコア(BCS)の変化を示すグラフ。
図2】分娩後の乳量を示すグラフ。
図3】血液検査の結果を示す図。
図4】乳牛のサイクル例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、乾乳期の乳牛の管理に関する発明であり、シリマリンを含むマリアアザミの抽出物を有効成分とする乾乳期の飼料添加剤又は該添加剤を含む乾乳期の飼料である。
本発明のマリアアザミ抽出物含有添加剤を含む餌を投与すると、分娩後のボディコンディションスコアの落ち込みが小さくなり、乾乳期に体調の悪化が抑制され、良好な体調を維持して泌乳期を迎え、初回乳量が増加し、泌乳期の総乳量の増加が期待できる。
本発明の添加剤は、あらかじめ必要とする栄養成分や添加成分を計算し、必要なサイレージや乾燥牧草、わらなど粗飼料と濃厚飼料を混合した混合飼料(Total Mixed Ration:以下「TMR」)に添加して給餌される。あるいは、乾乳期の乳牛の場合は、TMRではなく、サイレージや乾草、配合飼料をそのまま給与するケースもあり、その粗飼料に添加する場合もある。
剤型は、ペレット(錠剤)、カプセル、粉体、錠剤、液状など限定されるものではないが、ペレット剤型が投与量も明確であり、扱いやすい。なお、体重がほぼ同程度であるので一頭当たりの投与する量で管理することができる。
【0011】
<マリアザミ抽出物およびシリマリンについて>
シリマリン(Silymarin;CASNo.65666-07-1)は、キク科マリアアザミ(学名シリバム・マリアナムSilibum marianum Gaertn、別名オオアザミ、オオヒレアザミ、ミルクアザミ;CASNo.84604-20-6)から抽出されるフラボノリグナンの総称であり、分子式C25H22O10で表される、シリビン(Silybin;CASNo.22888-70-6)、シリジアニン(Silydianin;CAS No.29782-68-1)、シリクリスチン(Silychristin;CAS No.33889-69-9)、イソシリビン(Isosilybin;CAS No.72581-71-6)などを含有している組成物である(「天然薬物事典、奥田拓男編、廣川書店、昭和61年3月3日発行」参照)。本発明においては、マリアアザミ抽出物に含有されるこれらのフラボノリグナンを含有している組成物を従来技術と同様、シリマリンと呼ぶ。またシリマリンは前記の通りフラボノリグナンの混合物であり、シリマリンとしての植物抽出物や植物中の含有量は、分光光度計による測定に基づいた方法(「Wagner,H.,etal.,Arznein.Forsch,18,696,1968.」参照)、薄層クロマトグラフィーによる方法(「Wagner,H.,etal.,Arznein.Forsch,24,466,1974.」参照)、高速液体クロマトグラフィーによる方法(「Tittel,G.,etal.,J.Chromatogr.,135,499,1977.」参照)により測定可能である。これらの測定法の中でも、分光光度計による測定に基づいた方法の一つである2,4-ジニトロフェニルヒドラジン分析は、ドイツ薬局方(Silybum marianumの果実に関するモノグラフ)に報告されており、広く用いられている。
【0012】
シリマリンをマリアアザミの果実から高純度で単離する方法として、70~80%の純度で単離する方法や90~96%の純度で単離する方法(特公昭63-41396号公報)が既に報告されている。シリマリンは通常マリアアザミの種実からエタノール、酢酸エチル、アセトンなどにより抽出し、スプレードライにより乾燥粉末として得られる抽出物原料として市販されている。本発明に使用するシリマリンはこのようにして調製されて、市販されているシリマリンをそのまま用いることができる。また、マリアアザミからシリビン、シリジアニン、シリクリスチン、イソシリビンなどのシリマリンの構成成分を濃縮した抽出物及びそれらを単離、精製して化合物として用いることができる。
本発明におけるシリマリンを含む植物体は、葉、茎、芽、花、木質部、木皮部(樹皮)などの地上部、根、塊茎などの地下部、種子、樹脂などのすべての部位が使用可能である。
本発明におけるシリマリン及びそれを含む植物体は、それら自体を乾燥させた乾燥物及びそれらを各種溶媒を用いて溶解した溶解物として使用できる。例えば、水またはエタノール、メタノールなどのアルコール類、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールなどの多価アルコール、エーテル、アセトン、酢酸エチルなどの有機溶媒を用いて溶解した溶解物として使用できる。
本発明におけるシリマリンを含む植物体は、天然乾燥、熱風乾燥、凍結乾燥させたり、醗酵させたりしたものをそのまま使用することができる。また植物抽出物を調製する場合は常法に従って、抽出、濃縮、粉末化などの処理を行って得られたものを使用することができる。
本発明の添加剤に含まれるシリマリンの濃度は0.1%以上が好ましく、0.7%以上がさらに好ましい。例えば、シリマリンは株式会社MARUEIグループから市販されており、これを利用することができる。この市販剤のシリマリン濃度は70%である。
【0013】
<投与剤型について>
本発明で用いる飼料添加剤の剤型は、ペレット(錠剤)、粉剤、顆粒材、液状剤、カプセル剤など各種の形態がある。飼料用添加剤としてペレットが普通に用いられているので、牛および酪農家にとってなじみやすいので、ペレット剤が適している。また、乳牛の体重は一定の範囲にあるので、投与量は一頭単位で行うことができるので、粉体や液体などのように計量に適した剤型にせずに扱いやすい形状が適している。
投与形態は、TMRなどの餌に混合することもできるが、餌の上に載せるだけで、本試験では牛が摂取したので、ペレットが容易である。
【0014】
<BCSについて>
牛の管理目安として、ボディコンディションスコア(BCS)が用いられている。
ボディコンディションスコア(Body Condition Score : 以下 BCS)は、乳牛の栄養状態の指標として利用されているものであり、具体的には乳牛の皮下脂肪量またはエネルギー蓄積量を目測する方法である。乳用牛の痩せ具合、太り具合をあらわす指標ともなる。
乳用牛は泌乳期に多くの栄養を使って乳を生産している。特に泌乳最盛期では、エサから得られる栄養だけでは消費した分に追いつけず、泌乳初期から最盛期に痩せてきて、乾乳期に太ってくるという傾向がある。このように痩せたり、太ったりといった身体の状態の変化が激しい牛は、健康状態を損ねやすい傾向にあり、また、乾乳期に太りすぎてしまった牛は、分娩時に事故を起こす可能性が高くなる。
【0015】
BCSのつけ方は多くの方法があり、胸部や背部、けん部、尾根部といった部位をチェックする方法が一般的なようである。正確にBCSをつけたい場合は、獣医師の指示に従った方がよいが、比較的簡単な方法でチェックすることもできる。
BCSは5段階評価法があり、3を標準として、数字が小さくなったら痩せぎみ、大きくなったら太りぎみとなる。乾乳期には3.5、泌乳期には3.0くらいの安定した状態に保つのが、健康で生産性の高い牛であるとされる。そのために1日当りの乳量に応じた飼料給与が大切になる。5段階評価は、0.25ごとにスコアを付けるシステムが一般的であり、17個のスコア数となる。これに対して、9段階表示があり、9個のスコアのみを使用し、小数点以下のスコアで採点していない。標準は、5段階評価では3、9段階評価では5となる。
BCSは、産乳量と繁殖性の牛群管理に利用されることが多く、さらに代謝病や他の周産期の疾病を減少させるための飼養管理の指標に応用されている。
【0016】
【表1】
【0017】
乾乳期には3.5程度、泌乳期には3.0程度に安定した状態に保つのが目安とする報告もある。
【0018】
<飼料について>
給与飼料として、サイレージや乾草、わらなど粗飼料や濃厚飼料、あるいはそれらを混合した混合飼料(Total Mixed Ration:以下「TMR」)、ビタミン、ミネラルなどを給餌する。
TMRの原料の配合比率は、通常はサイレージ0~50質量%、濃厚配合飼料10~70質量%、乾草5~40%、食品加工副産物(ビール粕やおからなど)5~50%、トウモロコシなどの穀類飼料5~30%などを基本構成として、その他栄養成分を添加して構成される。混合されたTMRは、そのまま牛に給餌するか、あるいはポリエチレン製の袋に軽度に脱気しながら密封し、一時保管する。また、TMRセンターから酪農家に配送する。具体的な配合比率は、酪農家やTMRセンターが独自に処方する。
また、大規模酪農家においては、泌乳期では常時TMRを給餌し、自由摂取できるようにしている場合もあるが、乾乳期において、太りすぎは適切でないので、BCSを管理する上で、個々の牛の状態に応じて給餌量は設定される。
【実施例0019】
以下、本発明を実施例、試験例によってさらに具体的に説明する。
<試験方法>
1.試験対象牛:分娩予定のホルスタイン経産牛16頭を次の2区分に分けて試験した。
2.処理区分:
●無処理区(C区)8頭、
●シリマリン給与区(S区)8頭
3.給与飼料
●乾乳前期:TMR10kg、ターボライザー100g、乾草飽食
●乾乳後期:TMR6kg、スノードライバランス3kg、ターボライザー100g、乾草飽食
●分娩直後5日間:TMR飽食、ターボライザー100g、乾草少々
※一般牛はTMR飽食となる。
※「ターボライザー」は、出願人が市販しているビタミン・ミネラル混合飼料であり、ビタミンB群、バイパスコリン、ビオチン、ミネラルが含有されており、100gにナイアシンが6g、バイパスコリンが20g、ビオチンが20mgが含まれている。
※「スノードライバランス」は、出願人が市販している分娩前3週間に投与する乾乳期・周産期用配合飼料である。スノードライバランス には次の組成が含まれる。
●CP19%-TDN72.5%(租蛋白質 (CrudeProtein : CP) 、可消化養分総量(TDN))を、ペレット、フレークタイプで含む。
●第一胃の絨毛発育を保つためNFC源(NFC :Non Fibers Carbohydrate、植物の細胞内
容物 (OCC)に含まれる炭水化物が主体であり、糖,澱粉,ペクチンが含まれる。)をアップ。
●ビタミンEとセレンなどのバランスで免疫力を保つ。
●周産期の健康維持のためにキレート鉄・銅を配合。
【0020】
4.添加剤
乾乳後期と分娩直後において、午前中のTMR給与時に次の添加剤をトップドレスした。
●C区:添加剤なし
●S区:シリマリン6%含有ペレット100g
※株式会社MARUEIグループから市販されている、シリマリン濃度70%を使用。
5.調査項目
1)血液性状:BUN、総コレステロール、遊離脂肪酸(NEFA)、β-ヒドロキシ酪酸(BHBA)、GOT、γGTP、Ca、P、Mg、血糖
2)血液採血時期:乾乳前(I期)、乾乳後期前(II期)、分娩直後2、3日後(III期)、分娩30日後(IV期)
3)BCS測定:4回の採血時測定
4)分娩後乳量
【0021】
6.試験結果について
1)血液検査の結果について
血液検査の結果は、各項目とも採血時期によって数値の大きな変動はあったが、シリマリン添加、無添加の処理区間に顕著な差は認められなかった。各項目の結果は次のとおりである。この結果から、シリマリンを供与することによる、血液検査の範囲での弊害はないと考えられる。
●BUNは各区とも乾乳時から乾乳後期にかけて急減し、分娩後穏やかに回復した。
●総コレステロールは、各区とも分娩後に底を打ち上昇した。
●NEFは、各区とも分娩直後に急上昇し、その後は低下し、S区では半減した。一方、BHBAは、分娩に向けて上昇し、その後も穏やかに上昇を続けた。
●GOTは、各区とも乾乳後期に向けて急低下し、分娩後にほぼ元に戻り、γGTPも同様に推移した。
●Caは、各区とも乾乳後期までほとんど変化がなく、分娩後に低下し、その後回復した。Pは、乾乳後期に上昇し、分娩後に低下した。Mgは、分娩までに低下して分娩直後に最低値を示し、その後はほぼV字拡幅した。
●血糖は、両区とも分娩直後に低地を示し、その後回復した。
【0022】
2)BCSについて
乾乳前(I期)にBCSを3.5程度に調整した各区の牛のBCSの変化を図1に示す。
全体傾向は、分娩後に向けて低下しているが、シリマリンを給与したS区の牛は、BCS3.0にとどまっており、C区の2.8より高くなっている。
3)初回乳量について
分娩後の補正乳量を図2及び表2に示す。C区は42.66kg、S区は43.85kg、S区は、他より1kgほど多い結果が得られた。初回の乳量は、その後の泌乳期全体に影響するので、大きな増量となる。
なお、「補正乳量」は、乳量は月1回決まった日に北海道酪農検定検査協会で調査していますが、調査日における各牛の分娩後の日数とその時の乳量から305日補正乳量を計算します。それを305日に割った数字が今回のグラフに使っている数字である(その乳期の生産性を表す数字としてはこの数字の方が適している)。
【0023】
【表2】
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-05-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾乳期の搾乳牛に対して、マリアアザミ抽出物を有効成分とする添加剤を飼料に添加して給与して、乾乳期の搾乳牛のボディコンディションを調整する方法。
【請求項2】
シリマリンを含むマリアアザミ抽出物であって、1~10g/日・頭のシリマリンを含有するマリアアザミ抽出物を給与することを特徴とする請求項1記載の乾乳期の搾乳牛のボディコンディションを調整する方法。
【請求項3】
添加剤の剤形がペレット剤型であることを特徴とする請求項1又は2記載の乾乳期の搾乳牛のボディコンディションを調整する方法。
【請求項4】
マリアアザミ抽出物を有効成分とする乾乳期の搾乳牛用のボディコンディション調整剤。