(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093774
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
C21D 1/63 20060101AFI20230627BHJP
C21D 1/00 20060101ALI20230627BHJP
C21D 1/18 20060101ALI20230627BHJP
C21D 11/00 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
C21D1/63
C21D1/00 121
C21D1/18 V
C21D11/00 105
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076916
(22)【出願日】2023-05-08
(62)【分割の表示】P 2018175565の分割
【原出願日】2018-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000167200
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトサーモシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻田 博己
(72)【発明者】
【氏名】松田 伸
(72)【発明者】
【氏名】勢川 和重
(57)【要約】
【課題】熱処理装置において、装置サイズの大型化を招くことなく、焼入れ後のワークの品質を向上させる。
【解決手段】熱処理装置は、加熱炉1と、当該加熱炉1の下方に設けられた焼入槽2と、加熱炉1と焼入槽2との間でワークを昇降させるための昇降装置3と、を備える。昇降装置3は、ワークを吊下げ支持するための複数の索条部材31と、複数の索条部材31をそれぞれ個別に駆動する複数の駆動部33と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉と、
前記加熱炉の下方に設けられた焼入槽と、
前記加熱炉と前記焼入槽との間でワークを昇降させるための昇降装置と、
を備え、
前記昇降装置は、
前記ワークを吊下げ支持するための複数の索条部材と、
前記複数の索条部材をそれぞれ個別に駆動する複数の駆動部と、
を有する、熱処理装置。
【請求項2】
前記昇降装置は、
前記索条部材ごとに、これに対応する前記駆動部の駆動によって生じる当該索条部材の長手方向についての変位を検出する検出部と、
前記検出部による検出結果に基づいて前記複数の駆動部を制御する制御部と、
を更に有し、
前記制御部は、前記複数の索条部材について前記検出部がそれぞれ検出した前記変位から得られる当該変位間の関係に基づいて、前記ワークの傾きを検出する、請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、検出した前記ワークの傾きに基づいて前記複数の駆動部を制御することにより、前記ワークの傾きを補正する、請求項2に記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記加熱炉の天部には、前記複数の索条部材をそれぞれ個別に貫通させる複数の貫通孔が設けられており、
前記昇降装置は、前記加熱炉内から前記複数の貫通孔にそれぞれ個別に挿通可能な複数のロッドを更に有し、当該複数のロッドは、前記複数の索条部材にそれぞれ連結され、
前記ワークは、前記複数のロッドを介して支持される、請求項2又は3に記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記複数のロッドのそれぞれの位置を検出することにより、当該複数のロッドに連結された前記複数の索条部材のそれぞれの前記変位を検出する、請求項4に記載の熱処理装置。
【請求項6】
前記複数の貫通孔の各々には、対応する前記ロッドの挿通時において当該ロッドの周囲をシールするシール板が設けられており、
前記シール板には、前記ロッドを通す開口と、当該開口から放射状に延びた切込みと、が設けられている、請求項4又は5に記載の熱処理装置。
【請求項7】
前記昇降装置には、前記複数の索条部材の各々に対応させて、前記貫通孔と前記駆動部との間で前記索条部材が通る経路が設定されており、
前記経路の長さが、前記ワークを前記焼入槽に浸漬させたときの当該ワークから前記貫通孔までの距離より大きい、請求項4~6の何れかに記載の熱処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記ワークの降下時に、前記複数の駆動部を制御することにより、それぞれに対応する前記索条部材の繰出し速度を調整することが可能であり、前記ワーク又は当該ワークを収納したケージが焼入槽内の冷却液の液面に達する直前に前記繰出し速度を下げ、前記液面に達した後、前記繰出し速度を上げる、請求項2~7の何れかに記載の熱処理装置。
【請求項9】
前記昇降装置は、前記ワークを保持することが可能なハンガー部を更に有し、
前記ワークは、前記ハンガー部を介して前記複数の索条部材で吊下げ支持される、請求項1~8の何れかに記載の熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理装置において加熱炉と焼入槽との間でワークを搬送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱処理装置の1つである焼入装置では、加熱炉で加熱したワークを、ガイドレール等を用いて焼入槽の上方位置まで搬送し、その位置からワークを降下させて焼入槽内の冷却液に浸漬させていた(例えば、特許文献1参照)。即ち、従来の焼入装置では、焼入槽の上方位置までワークを搬送する工程と、その位置からワークを降下させる工程と、を実行する必要があった。このため、加熱が完了してから冷却を実行するまでに時間を要し、それが、焼入れ後のワークの品質を低下させる原因の1つになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、焼入装置において、加熱炉の下方に焼入槽を設け、ワークを載せた載置台を加熱炉と焼入槽との間で昇降させることが考えられている。即ち、ワークを載置台で下から支えることにより、ワークを、加熱炉内で加熱した後、載置台(又はその一部)と一緒に焼入槽内の冷却液に浸漬させて冷却することが考えられている。
【0005】
しかし、上記焼入装置には次の問題があることを、本発明者らは見出した。即ち、載置台(又はその一部)が焼入槽内の冷却液に漬けられるため、載置台には大量の冷却液が付着する。このため、次の工程で載置台が加熱炉内に搬送されたとき、載置台に付着した大量の冷却液が加熱炉内に持ち込まれ、当該冷却液が、加熱炉内の雰囲気に悪影響を与える虞がある。
【0006】
又、載置台の昇降には、加熱炉の外側で載置台を索条部材で吊り下げて昇降させる装置や、載置台を下から持ち上げるシリンダ等、大型の昇降装置が必要である。例えば、載置台をシリンダで昇降させる場合、シリンダを地中に埋設しなければならず、大規模な設置作業が強いられる。又、焼入槽内に載置台が配されているため、交換などのメンテナンスが困難である。更には、一括して処理する量を増やそうとした場合、載置台を大型化させる必要があり、その結果として焼入装置が大型になる。
【0007】
そこで本発明の目的は、熱処理装置において、装置サイズの大型化を招くことなく、焼入れ後のワークの品質を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る熱処理装置は、加熱炉と、当該加熱炉の下方に設けられた焼入槽と、加熱炉と焼入槽との間でワークを昇降させるための昇降装置と、を備える。昇降装置は、ワークを吊下げ支持するための複数の索条部材と、複数の索条部材をそれぞれ個別に駆動する複数の駆動部と、を有する。
【0009】
上記熱処理装置によれば、索条部材でワークを吊り下げるといった簡易な構成でワークを昇降させることができる。又、ワークを降下させて焼入槽内の冷却液に浸漬させるとき、ワークや当該ワークを収納するケージ以外の部分をできるだけ冷却液に浸漬させずに、ワーク全体を冷却液に浸漬させることができる。これにより、ワークやケージ以外の部分に付着する冷却液の量が少なくなり、従って、加熱炉内に持ち込まれる冷却液の量が少なくなる。よって、冷却液が原因となって加熱炉内の雰囲気が受ける悪影響を軽減することができる。
【0010】
又、上記熱処理装置によれば、複数の索条部材のそれぞれの駆動(巻取り及び繰出しを含む)を個別に実行することができる。よって、ワークのバランス等を考慮して、当該ワークの傾き、搬送速度、及び位置等を微調整することができる。又、ワークの搬送(巻取り及び繰出しを含む)に索条部材を用いることにより、チェーン等を用いて搬送を行う場合に比べて、搬送速度の高速化が可能である。よって、加熱炉から焼入槽までワークを移動させる時間(降下時間)を短縮することができる。
【0011】
上記熱処理装置において、検出部と、制御部と、を更に有していてもよい。ここで、検出部は、索条部材ごとに、これに対応する駆動部の駆動によって生じる当該索条部材の長手方向についての変位を検出する。制御部は、検出部による検出結果に基づいて複数の駆動部を制御する。具体的には、制御部は、複数の索条部材について検出部がそれぞれ検出した変位から得られる当該変位間の関係に基づいて、ワークの傾きを検出する。より具体的には、制御部は、検出したワークの傾きに基づいて複数の駆動部を制御することにより、ワークの傾きを補正する。この構成によれば、何らかの影響(例えば、加熱炉からの熱的な影響)で索条部材のそれぞれの長さに差が生じてワークに傾きが発生した場合でも、降下開始前にその傾きを補正することができる。
【0012】
上記熱処理装置において、加熱炉の天部には、複数の索条部材をそれぞれ個別に貫通させる複数の貫通孔が設けられており、昇降装置は、加熱炉内から複数の貫通孔にそれぞれ個別に挿通可能な複数のロッドを更に有し、当該複数のロッドは、複数の索条部材にそれぞれ連結され、ワークは、複数のロッドを介して支持されてもよい。この構成において、ワークが加熱炉内の所定位置に配されたとき、複数の貫通孔のそれぞれにロッドが挿入されることが好ましい。これにより、各貫通孔内のスペースの大半を、対応するロッドで塞ぐことができる。よって、貫通孔を設けたことによって生じ得る加熱への悪影響(例えば、加熱炉内の雰囲気の乱れ等であって、貫通孔からの放熱や貫通孔からの外気の流入等が原因となって生じるもの)を抑制することができる。
【0013】
又、この様な構成においては、検出部は、複数のロッドのそれぞれの位置を検出することにより、当該複数のロッドに連結された複数の索条部材のそれぞれの変位を検出することができる。
【0014】
上記熱処理装置において、複数の貫通孔の各々には、対応するロッドの挿通時において当該ロッドの周囲をシールするシール板が設けられており、シール板には、ロッドを通す開口と、当該開口から放射状に延びた切込みと、が設けられていてもよい。この構成によれば、シール板により、貫通孔を設けたことによって生じ得る加熱への悪影響を防止することができる。又、切込みの存在により、ロッドが僅かにずれてシール板の開口に挿入された場合でも、その挿入が許容される。即ち、シール板において開口の周縁部が撓むことにより、その表面でロッドを滑らせて、当該ロッドを、開口への挿入が可能となる所定位置へ移動させることができる。
【0015】
上記熱処理装置において、昇降装置には、複数の索条部材の各々に対応させて、貫通孔と駆動部との間で索条部材が通る経路が設定されていてもよい。当該経路の長さは、ワークを焼入槽に浸漬させたときの当該ワークから貫通孔までの距離より大きいことが好ましい。この構成によれば、各索条部材の巻取り時において、ワークを上限位置(加熱炉内の位置)まで上昇させた場合でも、当該索条部材のうちの加熱炉内を通る部分(即ち、ワークの焼入れ時に加熱炉で加熱される可能性のある部分)が駆動部に巻き付くことがない。よって、駆動部に過剰な負荷がかかることを防止することができる。
【0016】
上記熱処理装置において、制御部は、ワークの降下時に、複数の駆動部を制御することにより、それぞれに対応する索条部材の繰出し速度を調整することが可能であってもよい。この構成において、制御部は、ワーク又は当該ワークを収納したケージが焼入槽内の冷却液の液面に達する直前に繰出し速度を下げ、当該液面に達した後、繰出し速度を上げることが好ましい。この構成によれば、ワーク又はケージを、低速で焼入槽内の冷却液に進入させることができる。よって、焼入槽内の冷却液へのワーク又はケージの進入時における当該冷却液の飛散を抑制することができる。又、ワーク又はケージが冷却液の液面に達した後、ワークを加速させることにより、降下時間の更なる短縮化を図ることができる。
【0017】
上記熱処理装置において、昇降装置は、ワークを保持することが可能なハンガー部を更に有し、ワークは、ハンガー部を介して複数の索条部材で吊下げ支持されてもよい。この構成によれば、ワークの大きさ等に拘わらず、ワークの昇降時において各索条部材の状態を鉛直方向に延びた状態で維持できる様に、各索条部材をハンガー部に連結することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、熱処理装置において、装置サイズの大型化を招くことなく、焼入れ後のワークの品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る熱処理装置を示した概念図である。
【
図2】焼入槽内の冷却液にケージを浸漬させた状態を示した図である。
【
図3】昇降装置が有するハンガー機構の上面図である。
【
図4】(A)
図1に示されるIV領域の拡大図、及び(B)シール板の上面図である。
【
図5】制御部及びそれに関連する構成を示したブロック図である。
【
図6】補正処理で制御されるロッドの位置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[1]熱処理装置の構成
図1は、実施形態に係る熱処理装置を示した概念図である。
図1に示される様に、本実施形態の熱処理装置は、アルミニウムや鋼等の金属を主成分とするワークに対して焼入れを行う装置であり、加熱炉1と、焼入槽2と、昇降装置3と、を備える。一例として、熱処理装置は、ワークに対して溶体化処理を行う装置である。又、本実施形態では、複数のワークが、ケージCgに収納された状態で一括して処理される。尚、以下に説明する熱処理装置は、溶体化処理に限らず、加熱直後に冷却を行う様々な処理に適用することができる。
【0021】
加熱炉1は、炉壁11と、電気ヒータやガスバーナ等の加熱手段(不図示)と、を有する。加熱炉1の下方には焼入槽2が設けられており、炉壁11の底部11bには、ケージCgの昇降時に当該ケージCgを通過させる開口部12と、当該開口部12の開閉(
図1及び
図2参照)が可能な扉13と、が設けられている。
【0022】
焼入槽2には、冷却液が貯留されている。又、焼入槽2は、加熱炉1の開口部12から鉛直下方の位置に設けられている。従って、加熱炉1内から鉛直下方へ開口部12を通してケージCgを降下させることにより、当該ケージCgを焼入槽2内の冷却液に浸漬させることができる。本実施形態では、冷却液として水が用いられている。尚、冷却液には、水に限らず、油等の液体が用いられてよい。
【0023】
昇降装置3は、加熱炉1と焼入槽2との間でケージCgを昇降させる装置であり、4本のロープ31と、ハンガー機構32と、4つの駆動部33と、制御部34と、を有する。
【0024】
4本のロープ31は、ケージCgを上から吊して昇降させるためのものである。即ち、4本のロープ31は、ケージCgを吊下げ支持するためのものである。そして、4本のロープ31は、炉壁11の天部11aを貫通して加熱炉1内に導かれる。具体的には、天部11aに、4本のロープ31をそれぞれ個別に貫通させる4つの貫通孔11c(
図4(A)参照)が設けられており、各ロープ31は、対応する貫通孔11cを貫通して加熱炉1内に導かれる。尚、ロープ31は、ケージCgを吊下げ支持するための索条部材の一例であり、ロープ31に代えて、ベルト、ケーブル、チェーン等が索条部材として用いられてもよい。
【0025】
各ロープ31は、適度な耐熱性を有しており、加熱炉1内でワークと同程度の加熱を受けた場合でも熱的な損傷を受け難い。又、各ロープ31は、適度な剛性を有しており、従って、後述するドラム331までのロープ31の経路Rを設定する際に、滑車等を用いて方向を適宜に変えることができる。各ロープ31には、例えば、ステンレス鋼製のロープを用いることができる。尚、適度な耐熱性と適度な剛性を有するものであれば、ステンレス鋼製以外のロープ31が用いられもよいし、ロープ31に代えて、ベルト、ケーブル、チェーン等の索条部材が用いられてもよい。
【0026】
図3は、ハンガー機構32の上面図である。ハンガー機構32は、4本のロープ31でケージCgを上から吊すための機構であり(
図1参照)、ハンガー部321と、4本のロッド322と、を含む。
【0027】
ハンガー部321は、4つのフック321aと、これらのフック321aを揺動自在に支持する支持体321bと、から構成されている。ケージCgの天部には4つの受け部41(
図1参照)が設けられており、当該4つの受け部41に4つのフック321aがそれぞれ個別に引っ掛けられることにより、ハンガー部321にケージCgが保持される。
【0028】
4本のロッド322は、加熱炉1内から4つの貫通孔11cにそれぞれ個別に挿通可能であり、それぞれの基端部がハンガー部321の支持体321bに軸支されている。具体的には、各ロッド322は、支持体321bに軸支された位置を中心として上端部を揺動させることが可能となる様に、基端部が支持体321bに回動可能に支持されている。又、4本のロッド322は、4つの貫通孔11cの位置関係と同じ位置関係で支持体321bに軸支されている。そして、4本のロッド322のそれぞれの先端部に、ロープ31が1つずつ連結されている。
【0029】
更に、各ロッド322の長さは、次の様に設定されている(
図4(A)参照)。即ち、ワークの加熱を実行するためにケージCgを加熱炉1内の所定位置に配したとき、各ロッド322が貫通孔11cに挿入されると共に、当該ロッド322の先端部が炉壁11の天部11aから上方へ突出する様に、各ロッド322の長さが設定されている。従って、ケージCgが所定位置に配されたとき、各貫通孔11c内のスペースの大半が、対応するロッド322で塞がれる。よって、貫通孔11cを設けたことによって生じ得る加熱への悪影響(例えば、加熱炉1内の雰囲気の乱れ等であって、貫通孔11cからの放熱や貫通孔11cからの外気の流入等が原因となって生じるもの)を抑制することができる。尚、本実施形態では、後述するシール板14により、シール性を更に高めて加熱への悪影響を防止している。
【0030】
ハンガー機構32によれば、ケージCgは、ハンガー機構32(ハンガー部321及びロッド322)を介して4本のロープ31で吊下げ支持される。よって、ワークを冷却するとき、ケージCg以外の部分をできるだけ冷却液に浸漬させることなく、ケージCg全体を冷却液に浸漬させることができる。本実施形態では、
図2に示される様に、各フック321aの一部を冷却液に浸漬させるだけで、ケージCg全体を冷却液に浸漬させることができる。これにより、ワークやケージCg以外の部分に付着する冷却液の量が少なくなり、従って、次のワークを加熱炉1内に搬送したときに当該加熱炉1内に持ち込まれる冷却液の量が少なくなる。よって、冷却液が原因となって加熱炉1内の雰囲気が受ける悪影響を軽減し、焼入れ後のワークの品質を向上させることができる。
【0031】
又、ハンガー機構32によれば、各ロープ31を、対応する貫通孔11cの鉛直下方の位置でハンガー部321に連結することができる。よって、ケージCgの大きさ等(本実施形態では、その大きさ等に応じて変化する受け部41及びフック321aの位置)に拘わらず、ハンガー部321への4本のロープ31の連結位置の関係を、4つの貫通孔11cの位置関係と同じ関係で維持することができる。即ち、ケージCgの大きさ等に拘わらず、ケージCgの昇降時において各ロープ31の状態を鉛直方向に延びた状態で維持できる様に、各ロープ31をハンガー部321に連結することができる。これにより、ケージCgの昇降時において、各ロープ31が、貫通孔11cの内壁やシール板14(後述)に接触し難くなる。
【0032】
図4(A)は、
図1に示されるIV領域の拡大図である。
図4(A)に示される様に、本実施形態では、各貫通孔11cにシール板14が設けられている。具体的には、シール板14は、各貫通孔11cに対するロッド322の挿通時において、当該ロッド322の周囲をシールする。より具体的には、以下の通りである。尚、
図4(B)は、シール板14の上面図である。
【0033】
本実施形態では、平板状である2枚の枠体121でシール板14を挟み、当該枠体121を天部11aの外面(上面)に固定することにより、シール板14が、対応する貫通孔11cに外側から設けられている。又、
図4(B)に示される様に、シール板14は、ロッド322を通す開口14aと、当該開口14aから放射状に延びた複数の切込み14bと、が設けられている。ここで、開口14aは、ロッド322の断面形状に一致した形状、又は、必要なシール性を実現することが可能な範囲内で、ロッド322の断面形状より僅かに大きい形状である。シール板14には、例えば、ステンレス鋼板を用いることができる。尚、シール板14には、ステンレス鋼板に限らず、適度な耐熱性と適度な弾性とを有する種々の平板を用いてもよい。
【0034】
この様なシール板14によれば、貫通孔11cを設けたことによって生じ得る加熱への悪影響を防止することができる。又、切込み14bの存在により、ロッド322が僅かにずれて開口14aに挿入された場合でも、その挿入が許容される。即ち、開口14aの周縁部が撓むことにより、その表面でロッド322を滑らせて、当該ロッド322を、開口14aへの挿入が可能となる所定位置へ移動させることができる。
【0035】
4つの駆動部33は、4本のロープ31をそれぞれ個別に駆動する。具体的には、4つの駆動部33は、4本のロープ31をそれぞれ個別に巻き取る。
図1に示される様に、各駆動部33は、ロープ31を巻き取るためのドラム331と、当該ドラム331を回転させるサーボモータ332と、当該サーボモータ332の回転を制御するサーボドライバ333と、を含む。ここで、サーボモータ332は、回転モータとエンコーダ(検出器)とで構成されている(不図示)。そして、サーボドライバ333は、エンコーダが検出する回転モータの回転角(回転位置)や当該回転角から算出される回転速度を電流にフィードバックすることにより、回転モータの回転を、制御部34から指令された回転となる様に精度良く制御する。これにより、ケージCgの位置及び速度にそれぞれ対応するドラム331の回転角及び回転速度が精度良く制御される。
【0036】
この様な4つの駆動部33によれば、4本のロープ31のそれぞれの駆動(巻取り及び繰出し)を個別に実行することができる。よって、ケージCgのバランス等を考慮して、ケージCgの傾き、搬送速度、及び位置等を微調整することができる。又、ケージCgの搬送(巻取り及び繰出し)にロープ31を用いることにより、チェーン等を用いて搬送を行う場合に比べて、搬送速度の高速化が可能である。
【0037】
この様な熱処理装置によれば、ロープ31でワークを吊り下げるといった簡易な構成でワークを昇降させることができる。よって、装置サイズの大型化を招くことがない。
【0038】
本実施形態では更に、各ロープ31に対応させて、貫通孔11cとドラム331との間でロープ31が通る経路Rが設定されている。具体的には、経路Rの長さが、ケージCgを焼入槽2に浸漬させたときの当該ケージCgから貫通孔11cまでの距離L(
図2参照)より大きくなる様に、経路Rが設定されている。本実施形態では、3つの滑車334A~334Cでロープ31の方向を変えることにより、ドラム331までの経路Rの長さを距離Lより大きくしている。又、ロープ31の方向を変えることにより、コンパクトな熱処理装置を構築することが可能になる。尚、距離Lは、ケージCgを焼入槽2に浸漬させたときの、貫通孔11cからのロープ31の長さ(本実施形態では、貫通孔11cからロッド322の先端までの長さ)であってもよい。
【0039】
経路Rの上記設定によれば、各ロープ31の巻取り時において、ケージCgを上限位置(加熱炉1内の位置。
図1参照)まで上昇させた場合でも、当該ロープ31のうちの加熱炉1内を通る部分(即ち、ワークの焼入れ時に加熱炉1で加熱される可能性のある部分)がドラム331に巻き付くことがない。比較例として、加熱されたロープ31をそのままドラム331で巻き取ると、ロープ31は、ドラム331に巻き付いた状態で冷えて収縮しようとするため、ドラム331を締め付ける。このため、ロープ31及びドラム331に過剰な負荷がかかり、それが原因で、ロープ31及びドラム331に強度の低下や劣化が生じる虞がある。そこで、上述した経路Rを設けることにより、駆動部33に過剰な負荷がかかることを防止することができる。
【0040】
制御部34は、4つの駆動部33を個別に制御する。具体的には、制御部34は、4つのサーボドライバ333を制御することにより、当該4つのサーボドライバ333を通じて4つのサーボモータ332をそれぞれ個別に又は同期させて制御する。制御部34が行う一連の制御処理は、CPU(Central Processing Unit)やマイクロコンピュータ等の処理装置により行うことができる。又、当該一連の制御処理は、対応するプログラムを処理装置に実行させることにより、実現されてもよい。そして、その様なプログラムは、読取り可能な状態で記憶媒体(例えば、フラッシュメモリ等)に記憶されてもよいし、昇降装置3が備える記憶部(不図示)に記憶されてもよい。以下、制御部34が行う制御処理について、具体的に説明する。
【0041】
図5は、制御部34及びそれに関連する構成を示したブロック図である。本実施形態では、制御部34は、各サーボドライバ333から得られるドラム331の回転角及び回転速度に関する情報の他に、加熱炉1内のケージCgの位置に関する情報を用いて、各サーボモータ332を制御する。具体的には、昇降装置3は、検出部として、4つの第1センサ35Aと、4つの第2センサ35Bと、を更に有する(
図4(A)参照)。そして、4つの貫通孔11cから上方へ突き出た4本のロッド322の位置が、4つの第1センサ35Aによってそれぞれ個別に検知され、又、4つの第2センサ35Bによってそれぞれ個別に検出される。より具体的には、以下の通りである。
【0042】
各第1センサ35Aは、加熱炉1内でのケージCgの停止位置を決定するための情報を取得するセンサである。具体的には、第1センサ35Aは、対応するロッド322が通る貫通孔11cの上方に設けられており、当該ロッド322の上端が所定高さP1(
図4(A)参照)に達したときに、当該上端を検知して検知信号を出力する。ここで、所定高さP1は、ケージCgが加熱炉1内の停止位置(即ち、上述した所定位置)に達したときにロッド322の上端が到達する位置である。即ち、第1センサ35Aがロッド322の上端を検知したとき、その検知結果を以て、ケージCgが加熱炉1内の停止位置に達したと判断することができる。
【0043】
第1センサ35Aには、例えば、ファイバセンサを用いることができる。尚、第1センサ35Aには、ファイバセンサに限らず、所望の位置で対象物を検知することが可能な種々のセンサを用いてもよい。又、第1センサ35Aは、ロッド322の上端に限らず、ロッド322の別の箇所を検知対象にしてもよい。
【0044】
各第2センサ35Bは、加熱炉1内でのケージCgの降下開始位置を決定するための情報を取得するセンサである。具体的には、第2センサ35Bは、対応するロッド322が通る貫通孔11cの上方において第1センサ35Aよりも高い位置に設けられており、鉛直方向における所定範囲S(
図4(A)参照)内において当該ロッド322の上端の位置を検出し、その位置に応じた検出信号を出力する。本実施形態では、ケージCgが加熱炉1内の降下開始位置に正常姿勢で達したときにロッド322の上端の位置として許容できる範囲が、所定範囲Sのうちの一部の領域Scで検出される。即ち、4つの第1センサ35A全てが、対応するロッド322の上端を領域Sc内で検出したとき、検出結果を以て、ケージCgが加熱炉1内の降下開始位置に達すると共にそのときの姿勢は正常姿勢であると判断することができる。
【0045】
第2センサ35Bには、例えば、レーザセンサを用いることができる。尚、第2センサ35Bには、レーザセンサに限らず、対象物の位置を検出することが可能な種々のセンサを用いてもよい。又、第2センサ35Bは、ロッド322の上端の位置に限らず、ロッド322の別の箇所の位置を検出対象にしてもよい。
【0046】
[2]熱処理装置の制御
以下に説明する制御において、制御部34は、4つのサーボドライバ333を通じて4つのサーボモータ332を制御する。そして、4つのサーボモータ332を制御するに際し、制御部34は、必要に応じて、同期制御と非同期制御とを切り替えて実行することができる。ここで、同期制御は、全てのサーボモータ332において同じ動作が実現される様に当該サーボモータ332を制御する制御方式である。又、非同期制御は、サーボモータ332がそれぞれ個別に動作する様に当該サーボモータ332を制御する制御方式である。
【0047】
[2-1]搬送処理(上昇処理)
ケージCgを上昇させる場合、制御部34は、4つのサーボモータ332を同期させて制御すること(同期制御)により、4つのドラム331の回転を同期させて4本のロープ31を巻き取る(上昇処理)。そして、制御部34は、4つの第1センサ35Aの少なくとも何れか1つから検知信号を受け取ったとき、4つのサーボモータ332全てを停止させることにより、ケージCgを所定位置に停止させる(停止処理)。その後、制御部34は、加熱炉1でのワークの加熱を実行する前に、扉13を閉じる。尚、ここで説明した搬送処理(上昇処理)及び停止処理は、制御部34において、搬送処理部341(
図5参照)で実行することができる。又、制御部34が停止処理を実行するタイミングは、4つの第1センサ35A全てから検知信号を受け取ったときであってもよいし、それらの幾つかから検知信号を受け取ったときであってもよい。
【0048】
[2-2]補正処理
ワークの加熱完了後、ケージCgを焼入槽2へ降下させる場合、制御部34は、ケージCgの降下を開始する前に、ケージCgを降下開始位置へ移動させる。具体的には、制御部34は、4つのサーボモータ332を個別に制御すること(非同期制御)により、4本のロープ31を低速で巻き取り、これによりケージCgを低速で上昇させる。
【0049】
その後、制御部34は、ケージCgが降下開始位置に近づくことで各第2センサ35Bから出力される検出信号に基づき、各ロッド322の上端の位置が領域Scに入る様に、サーボモータ332を制御する(補正処理。
図6参照)。そして、制御部34は、制御の結果として4本のロッド322全ての上端の位置が領域Scに入った場合、4つのサーボモータ332全てを停止させる。これにより、何らかの影響(例えば、加熱炉1からの熱的な影響)でロープ31のそれぞれの長さに差が生じてケージCgに傾きが発生した場合でも、降下開始前にその傾きを補正することができる。即ち、ケージCgを、正常姿勢で降下開始位置に配置することができる。ここで、正常姿勢とは、ケージCgを降下させた場合に、加熱炉1の開口部12(扉13等を含む)や焼入槽2の縁に衝突することがない姿勢である。尚、ここで説明した補正処理は、制御部34において、補正処理部342(
図5)で実行することができる。
【0050】
この様に、降下開始前にケージCgの傾きを補正することにより、ケージCgを正常姿勢で降下させることができ、その結果として、ケージCgが傾いていたとすれば生じ得る加熱炉1の開口部12(扉13等を含む)や焼入槽2の縁への衝突を防止することができる。
【0051】
又、上述した補正処理では、補正処理時に調整されるロッド322の上端の位置に適度な許容幅(領域Sc)が設けられている。従って、あるロッド322の位置が、別のロッド322の位置を調整したときに、それに引きずられてずれることがあったとしても、4本のロッド322全てについて、それらの上端の位置を所望の位置(領域Sc内の位置)へ容易に導くことができる。
【0052】
尚、本実施形態において、第2センサ35Bは、鉛直方向における所定範囲S(
図4(A)参照)内においてロッド322の上端の位置を検出することができる。従って、第2センサ35Bを、ロープ31ごとに、これに対応する駆動部33の駆動によって生じる当該ロープ31の長手方向(ここでは鉛直方向)についての変位を検出する検出部と把握することができる。具体的には、第2センサ35Bは、4つのロッド322のそれぞれの位置を検出することにより、当該4つのロッド322に連結された4つのロープ31のそれぞれの変位を検出する。そして、制御部34は、4つのロープ31について4つの第2センサ35Bがそれぞれ検出した変位から得られる当該変位間の関係に基づいて、ワークの傾きを検出してもよい。この場合、制御部34(具体的には、補正処理部342)は、検出したワークの傾きに基づいて4つの駆動部33を制御することにより、ワークの傾きを補正することができる。
【0053】
[2-3]搬送処理(降下処理)
ケージCgを降下させる場合、制御部34は、扉13を開いた後、4つのサーボモータ332を同期させて制御すること(同期制御)により、4つのドラム331の回転を同期させて4本のロープ31を繰り出す(降下処理)。このとき、制御部34は、4つのサーボモータ332を同期させて制御すること(同期制御)により、それぞれに対応するロープ31の繰出し速度を調整する。具体的には、制御部34は、ケージCgが焼入槽2内の冷却液の液面に達する直前まで、ケージCgを高速(チェーン等を用いて降下させる場合に比べて十分に速くという意味を含む)で降下させる。これにより、加熱炉1から焼入槽2までケージCgを移動させる時間(降下時間)を短縮することができる。よって、焼入れ後のワークの品質を向上させることができる。
【0054】
そして、制御部34は、ケージCgが焼入槽2内の冷却液の液面に達する直前に、繰出し速度を下げることでケージCgを減速させる。そして、ケージCgが冷却液の液面に達した後、制御部34は、繰出し速度を上げることでケージCgを加速させる。このとき、ケージCgの位置は、各サーボドライバ333から得られるドラム331の回転角から算出することができる。このため、制御部34は、回転角から算出したケージCgの位置と、焼入槽2内の冷却液の液面の位置と、を比較することにより、ケージCgが冷却液の液面に達する直前であるか否か、又、ケージCgが冷却液の液面に達したか否かを判断することができる。尚、ここで説明した搬送処理(降下処理)は、制御部34において、搬送処理部341(
図5参照)で実行することができる。
【0055】
この様に、降下時において、ケージCgを、焼入槽2内の冷却液の液面に達する直前に減速させることにより、低速で焼入槽2内の冷却液に進入させることができる。よって、焼入槽2内の冷却液へのケージCgの進入時における当該冷却液の飛散を抑制することができる。又、ケージCgの冷却液の液面に達した後、ケージCgを加速させることにより、降下時間の更なる短縮化を図ることができる。
【0056】
[3]変形例
図7は、上述した熱処理装置の変形例を示した概念図である。上述した熱処理装置において、昇降装置3は、ロープ31の巻取り及び繰出しによってケージCgを昇降させるものに限らず、
図7に示される様に、4本のロープ31を介してケージCgと釣り合うバランスウェイト335を更に有し、各ロープ31について、当該ロープ31が掛けられた滑車の1つ(
図7では滑車334B)をサーボモータ332で駆動することにより、ケージCgを昇降させるものであってもよい。
【0057】
[4]他の変形例
上述した熱処理装置において、ケージCgの昇降に使用するロープ31の本数は、4本に限定されない複数本であってもよく、ロープ31の本数に応じて、各部(駆動部33、ロッド322、貫通孔11c等)の数を変更することができる。
【0058】
上述した熱処理装置において、補正処理でケージCgを移動させる降下開始位置は、加熱炉1内の所定位置(加熱時にケージCgを配置する位置)より下側に設定されていてもよい。この場合、第2センサ35Bは、第1センサ35Aより低い位置に設けられる。
【0059】
又、熱処理装置は、昇降装置3が、ワークを上から吊す複数のロープ31と、当該複数のロープ31をそれぞれ個別に駆動する(巻き取る)複数の駆動部33と、を有することのみを特徴としたものであってもよい。そして、この特徴をメインとしつつ、熱処理装置には、上述した各部構成(制御方法を含む)が、適宜、部分的又は全体的に加えられてもよい。
【0060】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。更に、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
1 加熱炉
2 焼入槽
3 昇降装置
11 炉壁
11a 天部
11b 底部
11c 貫通孔
12 開口部
13 扉
14 シール板
14a 開口
14b 切込み
31 ロープ(索条部材)
32 ハンガー機構
33 駆動部
34 制御部
35A 第1センサ
35B 第2センサ
41 受け部
121 枠体
321 ハンガー部
321a フック
321b 支持体
322 ロッド
331 ドラム
332 サーボモータ
333 サーボドライバ
334A、334B、334C 滑車
335 バランスウェイト
341 搬送処理部
342 補正処理部
L 距離
R 経路
S 所定範囲
Cg ケージ
Sc 領域
【手続補正書】
【提出日】2023-06-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉と、前記加熱炉の下方に設けられた焼入槽と、前記加熱炉と前記焼入槽との間でワークを昇降させるための昇降装置とを備え、
前記昇降装置は、
前記ワークを、吊り下げ支持するための複数の索条部材と、
前記複数の索条部材をそれぞれ個別に駆動する複数の駆動部と、
前記索条部材ごとに、対応する駆動部の駆動によって生ずる当該索条部材の長手方向の
変位に応じて、前記ワークの停止位置を決定するために索条部材が前記長手方向の特定の領域に到達したことを検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて前記複数の駆動部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記検出部が、前記索条部材が長手方向の特定の領域に到達したことを検出すると、複数の駆動部全てを停止させるように制御を行い、
前記駆動部の全てが停止されたときに、前記ワークの傾きが補正される熱処理装置。
【請求項2】
前記複数の索条部材の各々に対応する複数のロッドを有し、
前記複数のロッドは、各々が対応する索条部材に連結され、当該索条部材とともに駆動
されるようにされており、
前記検出部が検出を行う、前記索条部材が前記長手方向の特定の領域に到達したことを検出する部位は、前記ロッドの部位である、請求項1に記載された熱処理装置。
【請求項3】
前記加熱炉の天部には、前記複数の索条部材をそれぞれ個別に貫通させる複数の貫通孔が設けられており、
前記複数のロッドは、各々に対応する貫通孔に前記加熱炉内から挿通可能とされており、
前記ワークは前記複数のロッドを介して支持される、請求項2に記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記ワークを収納する収納部材をさらに備え、
前記収納部材は、前記複数のロッドを介して前記索条部材により複数個所で吊り下げ
支持される請求項3に記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記ワークの傾きの補正は、一の熱処理工程と、前記一の熱処理工程より後に実行される他の熱処理工程との間に実行される、請求項1~4のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項6】
加熱炉と、
前記加熱炉の下方に設けられた焼入槽と、
前記加熱炉と前記焼入槽との間でワークを昇降させるための昇降装置と、
を備え、
前記昇降装置は、
前記ワークを吊下げ支持するための複数の索条部材と、
前記複数の索条部材をそれぞれ個別に駆動する複数の駆動部と、を備え、
前記昇降装置は、前記ワークの前記加熱炉と前記焼入槽の間の昇降時に前記ワークの降下時の前記索条部材の繰出し速度と前記ワークの上昇時の前記索条部材の繰出し速度とが異なるように調整可能とする、熱処理装置。
【請求項7】
前記昇降装置は、前記ワークの降下時の前記索条部材の繰出し速度が前記ワークの上昇時の前記索条部材の繰出し速度より速くなるように調整する、請求項6記載の熱処理装置。
【請求項8】
前記加熱炉の天部には、前記複数の索条部材をそれぞれ個別に貫通させる複数の貫通孔が設けられており、
前記昇降装置は、前記加熱炉内から前記複数の貫通孔にそれぞれ個別に挿通可能な複数のロッドを更に有し、当該複数のロッドは、前記複数の索条部材にそれぞれ連結され、
前記ワークは、前記複数のロッドを介して支持される、請求項6または7に記載の熱処理装置。
【請求項9】
前記複数の貫通孔の各々には、対応する前記ロッドの挿通時において当該ロッドの周囲をシールするシール板が設けられており、
前記シール板には、前記ロッドを通す開口と、当該開口から放射状に延びた切込みと、が設けられている、請求項3、4または8に記載の熱処理装置。
【請求項10】
前記昇降装置には、前記複数の索条部材の各々に対応させて、前記貫通孔と前記駆動部との間で前記索条部材が通る経路が設定されており、
前記経路の長さが、前記ワークを前記焼入槽に浸漬させたときの当該ワークから前記貫通孔までの距離より大きい、請求項3、4、8、9の何れかに記載の熱処理装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記ワークの降下時に、前記複数の駆動部を制御することにより、それぞれに対応する前記索条部材の繰出し速度を調整することが可能であり、前記ワーク又は当該ワークを収納したケージが焼入槽内の冷却液の液面に達する直前に前記繰出し速度を下げ、前記液面に達した後、前記繰出し速度を上げる、請求項1~5の何れかに記載の熱処理装置。
【請求項12】
前記昇降装置は、前記ワークを保持することが可能なハンガー部を更に有し、
前記ワークは、前記ハンガー部を介して前記複数の索条部材で吊下げ支持される、請求項1~11の何れかに記載の熱処理装置。