IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン・エィ・ダブリュ株式会社の特許一覧 ▶ アイシン精機株式会社の特許一覧

特開2023-93775回転電機用配線構造及び車両用駆動装置
<>
  • 特開-回転電機用配線構造及び車両用駆動装置 図1
  • 特開-回転電機用配線構造及び車両用駆動装置 図2
  • 特開-回転電機用配線構造及び車両用駆動装置 図3
  • 特開-回転電機用配線構造及び車両用駆動装置 図4
  • 特開-回転電機用配線構造及び車両用駆動装置 図5
  • 特開-回転電機用配線構造及び車両用駆動装置 図6
  • 特開-回転電機用配線構造及び車両用駆動装置 図7
  • 特開-回転電機用配線構造及び車両用駆動装置 図8
  • 特開-回転電機用配線構造及び車両用駆動装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093775
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】回転電機用配線構造及び車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/22 20060101AFI20230628BHJP
   B60K 6/26 20071001ALI20230628BHJP
   B60K 6/445 20071001ALI20230628BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20230628BHJP
   F16H 48/06 20060101ALI20230628BHJP
   B60L 9/18 20060101ALN20230628BHJP
【FI】
H02K5/22
B60K6/26 ZHV
B60K6/445
B60L15/20 S
F16H48/06
B60L9/18 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020058740
(22)【出願日】2020-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 洋一
(72)【発明者】
【氏名】杉山 智也
【テーマコード(参考)】
3D202
3J027
5H125
5H605
【Fターム(参考)】
3D202AA03
3D202EE02
3D202EE23
3J027FB02
3J027GC22
3J027GD02
3J027GD03
3J027GD04
3J027GD07
5H125AA01
5H125AC12
5H125FF01
5H605BB01
5H605BB05
5H605BB10
5H605CC06
5H605EC05
5H605EC07
(57)【要約】
【課題】回転電機の回転軸に交差する方向での給電部材関連の配置範囲を比較的狭くする。
【解決手段】それぞれの回転軸(X2、X3)が互いに平行となる関係で配置される2つ以上の回転電機(4、5)に係る配線構造であって、第1回転電機(4)からの第1動力線(400)に接合される第1給電部材(8121、8122、8123、8121B、8122B、8123B)と、第2回転電機(5)からの第2動力線(500)に接合される第2給電部材(8221、8222、8223、8221B、8222B、8223B)とを備え、回転軸の方向に視て、第1動力線の配置範囲及び第1給電部材の配置範囲を合わせた第1領域(A1)と、第2動力線の配置範囲及び第2給電部材の配置範囲を合わせた第2領域(A2)とは、互いに部分的に重なる、配線構造が開示される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの回転軸が互いに平行となる関係で配置される2つ以上の回転電機に係る配線構造であって、
第1回転電機からの第1動力線に接合される第1給電部材と、
第2回転電機からの第2動力線に接合される第2給電部材とを備え、
前記回転軸の方向に視て、前記第1動力線の配置範囲及び前記第1給電部材の配置範囲を合わせた第1領域と、前記第2動力線の配置範囲及び前記第2給電部材の配置範囲を合わせた第2領域とは、互いに部分的に重なる、配線構造。
【請求項2】
前記回転軸の方向に視て、前記第1給電部材の配置範囲と前記第2給電部材の配置範囲は、互いに部分的に重なる、請求項1に記載の配線構造。
【請求項3】
前記第1給電部材及び前記第2給電部材は、前記回転軸の方向にオフセットする、請求項1又は2に記載の配線構造。
【請求項4】
前記第1動力線及び前記第2動力線は、前記回転軸の方向にオフセットしつつ前記回転軸の方向に視て重なる、請求項1又は2に記載の配線構造。
【請求項5】
前記第1給電部材及び前記第2給電部材は、前記第1回転電機及び前記第2回転電機の双方を収容するケース内に配置される、請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の配線構造。
【請求項6】
前記第1給電部材及び前記第2給電部材のうちの少なくともいずれか一方は、前記ケースに支持されるケース側給電部材と、前記ケース側給電部材に接合される中間給電部材とを含む、請求項5に記載の配線構造。
【請求項7】
前記第1回転電機及び前記第2回転電機の双方を収容するケースに固定される樹脂部を有し、
前記樹脂部は、前記第1給電部材及び前記第2給電部材が互いに前記回転軸の方向でオフセットするような位置関係となるように、前記第1給電部材及び前記第2給電部材を封止する、請求項1から6のうちのいずれか1項に記載の配線構造。
【請求項8】
それぞれの回転軸が互いに平行となる関係で配置される第1回転電機及び第2回転電機と、
前記第1回転電機からの第1動力線に接合される第1給電部材と、
前記第2回転電機からの第2動力線に接合される第2給電部材とを備え、
前記回転軸の方向に視て、前記第1動力線の配置範囲及び前記第1給電部材の配置範囲を合わせた第1領域と、前記第2動力線の配置範囲及び前記第2給電部材の配置範囲を合わせた第2領域とは、互いに部分的に重なる、車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線構造及び車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
それぞれの回転軸が互いに平行となる関係で配置される2つの回転電機に係る配線構造として、第1回転電機からの第1動力線に接合される第1給電部材と、第2回転電機からの第2動力線に接合される第2給電部材が、一の方向に並ぶ態様で配置される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-354040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、回転電機の回転軸に交差する方向での給電部材関連の配線構造の配置範囲が比較的広くなるので、各種の軸やギヤ等のレイアウトとの関係で、限られたスペース内に当該配置範囲を確保することが難しい場合がある。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、回転電機の回転軸に交差する方向での給電部材関連の配置範囲を比較的狭くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、それぞれの回転軸が互いに平行となる関係で配置される2つ以上の回転電機に係る配線構造であって、
第1回転電機からの第1動力線に接合される第1給電部材と、
第2回転電機からの第2動力線に接合される第2給電部材とを備え、
前記回転軸の方向に視て、前記第1動力線の配置範囲及び前記第1給電部材の配置範囲を合わせた第1領域と、前記第2動力線の配置範囲及び前記第2給電部材の配置範囲を合わせた第2領域とは、互いに部分的に重なる、配線構造が提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本開示によれば、回転電機の回転軸に交差する方向での給電部材関連の配置範囲を比較的狭くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両用駆動装置のスケルトン図である。
図2】軸方向から見た車両用駆動装置のレイアウト図である。
図3】電源系回路の全体構成の一例を概略的に示す図である。
図4】実施例1による第1配線構造及び第2配線部の斜視図である。
図5】実施例1による第1配線構造及び第2配線部の平面図である。
図6】実施例2による第1配線構造及び第2配線部の斜視図である。
図7】実施例2による第1配線構造及び第2配線部の平面図である。
図8】実施例3による第1配線構造及び第2配線部の斜視図である。
図9】実施例3による第1配線構造及び第2配線部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。
【0010】
ここでは、まず、本実施例による配線構造の適用が好適な車両用駆動装置1の機械的な構成を説明した後、本実施例による配線構造に関する説明を行う。
【0011】
図1は、車両用駆動装置1のスケルトン図である。図2は、軸方向から見た車両用駆動装置1のレイアウト図である。
【0012】
車両用駆動装置1は、車輪Wの駆動力源として内燃機関EG及び回転電機4、5の双方を備えるハイブリッド車両用の駆動装置である。この車両用駆動装置1は、いわゆる2モータスプリット方式のハイブリッド車両用の駆動装置として構成されている。また、車両用駆動装置1は、FF(Front Engine Front Drive)車両用の駆動装置として構成されている。
【0013】
図1に示すように、車両用駆動装置1は、入力部材2と、分配用差動歯車機構3と、第1回転電機4と、第2回転電機5と、カウンタギヤ機構6と、出力用差動歯車機構7と、出力部材8とを備えている。これらは、ケース(駆動装置ケース)9内に収容されている。なお、入力部材2の一部と出力部材8の一部とは、ケース9の外部に露出している。
【0014】
入力部材2及び分配用差動歯車機構3は、これらに共通の第1軸X1上に配置されている。第1回転電機4は、第1軸X1とは異なる第2軸X2上に配置されている。第2回転電機5は、第1軸X1及び第2軸X2とは異なる第3軸X3上に配置されている。カウンタギヤ機構6は、第1軸X1、第2軸X2、及び第3軸X3とは異なる第4軸X4上に配置されている。出力用差動歯車機構7は、第1軸X1、第2軸X2、第3軸X3、及び第4軸X4とは異なる第5軸X5上に配置されている。第1軸X1、第2軸X2、第3軸X3、第4軸X4、及び第5軸X5は、互いに平行に配置されている。ここでは、これらの各軸X1~X5に平行な方向を「軸方向L」と称する。また、軸方向Lにおける一方側であって本例では内燃機関EGが配置される側を軸方向第1側L1と称し、軸方向Lにおける他方側であって本例では内燃機関EG側とは反対側を軸方向第2側L2と称する。
【0015】
入力部材2は、内燃機関EGに駆動連結される。内燃機関EGは、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機(ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等)である。内燃機関EGの出力軸(クランクシャフト等の内燃機関出力軸)に、入力部材2が駆動連結されている。なお、入力部材2は、ダンパやクラッチ等を介して内燃機関EGに駆動連結されてもよい。
【0016】
なお、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力(トルクと同義)を伝達可能に連結された状態を意味する。この概念には、2つの回転要素が一体回転するように連結された状態や、1つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態が含まれる。このような伝動部材には、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材(軸、歯車機構、ベルト等)が含まれ、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置(摩擦係合装置や噛み合い式係合装置等)が含まれてもよい。
【0017】
入力部材2は、分配用差動歯車機構3に駆動連結されている。分配用差動歯車機構3は、第1回転要素31、第2回転要素32、及び第3回転要素33の3つの回転要素を有している。分配用差動歯車機構3は、第1回転要素31としてのサンギヤS、第2回転要素32としてのキャリヤC、及び第3回転要素33としてのリングギヤRを有する遊星歯車機構により構成されている。分配用差動歯車機構3はシングルピニオン型の遊星歯車機構であり、3つの回転要素31~33は、回転速度の順に、第1回転要素31(サンギヤS)、第2回転要素32(キャリヤC)、及び第3回転要素33(リングギヤR)となっている。
【0018】
なお、「回転速度の順」とは、各回転要素31~33の回転状態における回転速度の順番のことである。各回転要素31~33の回転速度は、分配用差動歯車機構3の回転状態によって変化するが、各回転要素31~33の回転速度の高低の並び順は、分配用差動歯車機構3の構造によって定まるものであるため一定となる。なお、各回転要素31~33の回転速度の順は、当業者にとって周知の速度線図(共線図とも言う)における各回転要素31~33の配置順に等しい。
【0019】
第1回転要素31(サンギヤS)は、第1軸X1上に配置された連結軸35を介して連結ギヤ36と一体回転するように連結されている。連結ギヤ36は、第1回転要素31(サンギヤS)に対して軸方向第2側L2に配置されている。図示の例では、連結ギヤ36と第1回転要素31(サンギヤS)とが同径に描かれているが、連結ギヤ36は、第1回転要素31(サンギヤS)に対して大径に形成されてもよいし、小径に形成されてもよい。第1回転要素31(サンギヤS)は、連結ギヤ36を介して、第1回転電機4に駆動連結されている。
【0020】
第2回転要素32(キャリヤC)は、第1回転要素31(サンギヤS)及び第3回転要素33(リングギヤR)の両方に噛み合う複数のピニオンギヤを回転可能に支持している。第2回転要素32(キャリヤC)は、入力部材2と一体回転するように連結されている。
【0021】
第3回転要素33(リングギヤR)は、円筒状に形成されたギヤ形成部材38の内周面に形成されている。ギヤ形成部材38の外周面には、外周ギヤ39が形成されている。これにより、第3回転要素33(リングギヤR)と外周ギヤ39とが一体回転するように連結されている。径方向に視て、第3回転要素33(リングギヤR)と外周ギヤ39とが重複して配置されている。ここで、2つの部材の配置に関して、「ある方向に視て重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線に直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの部材の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを意味する。第3回転要素33(リングギヤR)は、外周ギヤ39を介して、第2回転電機5に駆動連結されているとともに、さらにカウンタギヤ機構6を介して、出力用差動歯車機構7に駆動連結されている。
【0022】
第1回転電機4は、ケース9に固定された第1ステータ41と、当該第1ステータ41の径方向内側に回転自在に支持された第1ロータ42とを有する。第1ロータ42は、第1ロータ軸43と一体回転するように連結されている。第1ロータ軸43の軸方向第1側L1の端部には、第1出力ギヤ44が形成されている。第1出力ギヤ44は、連結ギヤ36に噛み合っている。このようにして、第1ロータ42は、互いに噛み合う第1出力ギヤ44と連結ギヤ36とを介して、分配用差動歯車機構3の第1回転要素31(サンギヤS)に駆動連結されている。
【0023】
第1回転電機4は、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを果たすことが可能である。第1回転電機4は、蓄電装置(バッテリやキャパシタ等;図示せず)に電気的に接続されている。第1回転電機4は、主に分配用差動歯車機構3を介して入力される入力部材2(内燃機関EG)のトルクにより発電を行うジェネレータとして機能する。なお、車両の高速走行時や内燃機関EGの始動時等には、第1回転電機4がモータとして機能する場合もある。
【0024】
第2回転電機5は、ケース9に固定された第2ステータ51と、当該第2ステータ51の径方向内側に回転自在に支持された第2ロータ52とを有する。第2ロータ52は、第2ロータ軸53と一体回転するように連結されている。第2ロータ軸53の軸方向第1側L1の端部には、第2出力ギヤ54が形成されている。第2出力ギヤ54は、外周ギヤ39に噛み合っている。このようにして、第2ロータ52は、互いに噛み合う第2出力ギヤ54と外周ギヤ39とを介して、さらにカウンタギヤ機構6を介して、出力用差動歯車機構7に駆動連結されている。
【0025】
第2回転電機5も、モータとしての機能とジェネレータとしての機能とを果たすことが可能であり、蓄電装置(図示せず)に電気的に接続されている。第2回転電機5は、主に車両を走行させるための駆動力を補助するモータ(アシストモータ)として機能する。なお、車両の減速時等には、第2回転電機5がジェネレータとして機能する場合もある。
【0026】
第1回転電機4と第2回転電機5とが別軸に配置されており、さらに、第1回転電機4及び第2回転電機5のそれぞれが、入力部材2及び分配用差動歯車機構3と別軸に配置されている。このため、第1回転電機4及び第2回転電機5のそれぞれの配置自由度が高くなっている。
【0027】
第1回転電機4及び第2回転電機5は、分配用差動歯車機構3に対して軸方向第2側L2に配置されている。また、第1回転電機4及び第2回転電機5は、それぞれのステータ41、51の軸方向Lの配置領域が重なっている(同じ軸方向Lの領域を少なくとも含むように配置されている)。このため、第1回転電機4の第1ステータ41と第2回転電機5の第2ステータ51とは、軸方向に視て重複していない(図2を参照)。
【0028】
カウンタギヤ機構6は、分配用差動歯車機構3(具体的には、第3回転要素33)と出力用差動歯車機構7との間の動力伝達経路に設けられている。カウンタギヤ機構6は、第1カウンタギヤ61と、この第1カウンタギヤ61とは軸方向Lの異なる位置に設けられた第2カウンタギヤ62と、これら2つのカウンタギヤ61、62を連結するカウンタ軸63とを有する。第2カウンタギヤ62は、第1カウンタギヤ61に対して軸方向第2側L2に配置されている。また、第2カウンタギヤ62は、第1カウンタギヤ61よりも小径に形成されている。第1カウンタギヤ61は、第3回転要素33(リングギヤR)と一体回転する外周ギヤ39に噛み合っている。第2カウンタギヤ62は、出力用差動歯車機構7の差動入力ギヤ71に噛み合っている。カウンタギヤ機構6は、分配用差動歯車機構3からの出力回転を減速して(同時に分配用差動歯車機構3からの出力トルクを増幅して)出力用差動歯車機構7に伝達する減速機構として機能する。
【0029】
出力用差動歯車機構7は、差動入力ギヤ71を有しており、この差動入力ギヤ71に入力される回転を一対の出力部材8に分配する。一対の出力部材8は、それぞれ車輪Wに駆動連結される。出力用差動歯車機構7は、カウンタギヤ機構6を介して分配用差動歯車機構3側から差動入力ギヤ71に入力される回転及びトルクを、左右2つの出力部材8(すなわち、左右2つの車輪W)に分配して伝達する。
【0030】
ここで、図2に示すように、入力部材2の回転軸心である第1軸X1を包含する鉛直面を第1仮想平面P1とし、第1軸X1を包含する水平面を第2仮想平面P2とする。また、上記の第1軸X1と出力用差動歯車機構7の回転軸心である第5軸X5とを包含する仮想平面を第3仮想平面P3とし、上記の第1軸X1とカウンタギヤ機構6の回転軸心である第4軸X4とを包含する仮想平面を第4仮想平面P4とする。これらの仮想平面P1~P4との関係における、軸方向に視たときの各軸X1~X5及び各部品の配置は、以下のようになっている。
【0031】
第1仮想平面P1に対して、第2軸X2と第4軸X4と第5軸X5とが同じ側に配置されている。そして、第1仮想平面P1に対して、第3軸X3と、第2軸X2、第4軸X4、及び第5軸X5とが両側に分かれて配置されている。また、第2軸X2を回転軸心とする第1回転電機4は、その配置領域が第1仮想平面P1を含むように配置されている。第3軸X3を回転軸心とする第2回転電機5は、その全体が第1仮想平面P1に対して水平方向Hの一方側である水平方向第1側H1(本例では車両前後方向の前側)に位置するように配置されている。第4軸X4を回転軸心とするカウンタギヤ機構6及び第5軸X5を回転軸心とする出力用差動歯車機構7は、その全体が第1仮想平面P1に対して水平方向Hの他方側である水平方向第2側H2(本例では車両前後方向の後ろ側)に位置するように配置されている。
【0032】
第2仮想平面P2に対して、第2軸X2と第5軸X5とが同じ側(本例では鉛直方向Vの下方側)に配置され、それとは反対側(本例では鉛直方向Vの上方側)に第3軸X3と第4軸X4とが配置されている。また、第2軸X2を回転軸心とする第1回転電機4は、その全体が第2仮想平面P2に対して鉛直方向Vの下方側に位置するように配置されている。第5軸X5を回転軸心とする出力用差動歯車機構7は、その配置領域(より具体的には、上方側の配置領域)が第2仮想平面P2を含むように配置されている。第3軸X3を回転軸心とする第2回転電機5及び第4軸X4を回転軸心とするカウンタギヤ機構6は、その配置領域(より具体的には、それぞれ下方側の配置領域)が第2仮想平面P2を含むように配置されている。
【0033】
第3仮想平面P3に対して、第2軸X2と第3軸X3とが同じ側に配置されている。そして、第3仮想平面P3に対して、第2軸X2及び第3軸X3と、第4軸X4とが両側に分かれて配置されている。また、第3軸X3を回転軸心とする第2回転電機5は、その配置領域が第3仮想平面P3を含むように配置されている。第2軸X2を回転軸心とする第1回転電機4は、その全体が第3仮想平面P3に対して下方側に位置するように配置されている。第4軸X4を回転軸心とするカウンタギヤ機構6は、その全体が第3仮想平面P3に対して上方側に位置するように配置されている。
【0034】
第4仮想平面P4に対して、第2軸X2と第5軸X5とが同じ側に配置されている。そして、第4仮想平面P4に対して、第2軸X2及び第5軸X5と、第3軸X3とが両側に分かれて配置されている。また、第2軸X2を回転軸心とする第1回転電機4及び第5軸X5を回転軸心とする出力用差動歯車機構7は、その全体が第4仮想平面P4に対して下方側に位置するように配置されている。第3軸X3を回転軸心とする第2回転電機5は、その配置領域(より具体的には、下方側の配置領域)が第4仮想平面P4を含むように配置されている。
【0035】
なお、図1及び図2に示す車両用駆動装置1では、第1回転電機4を分配用差動歯車機構3と別軸に配置することで、車両用駆動装置1の全体の大型化を抑えつつ、分配用差動歯車機構3に対して出力用差動歯車機構7とは反対側に第2回転電機5を配置できている。これにより、鉛直方向Vにおける出力用差動歯車機構7よりも上方であって、かつ、カウンタギヤ機構6よりも水平方向第2側H2の空間には、従来仕様の駆動装置とは異なり、第2回転電機5が配置されない。このため、仮に車両用駆動装置1が搭載される車両に、例えばステアリングシャフトやブレーキサーボ等の設置物OB(図2を参照)が存在していても、当該設置物OBとの干渉を回避することができる。すなわち、車両搭載性に優れた車両用駆動装置1を実現することができる。
【0036】
なお、図1及び図2では、本実施例による配線構造の適用が好適な車両用駆動装置1の機械的な構成が示されるが、本実施例による配線構造の適用可能な車両用駆動装置1は、それぞれの回転軸が互いに平行となる関係で配置される2つ以上の回転電機を有する限り、他の構成は任意である。従って、例えば、本実施例による配線構造の適用可能な車両用駆動装置1は、特開2017-71328号公報に開示されるような構成であってもよい。
【0037】
図3は、第1回転電機4及び第2回転電機5を駆動するための電源系回路300の全体構成の一例を概略的に示す図である。図3には、ケース9が非常に模式的に示される。なお、以下の説明において、特に言及しない限り、各種の要素間の“接続”という用語は、“電気的な接続”を意味する。電源系回路300は、高圧バッテリ10の電力を用いて第1回転電機4及び第2回転電機5を駆動する。
【0038】
電源系回路300は、図3に示すように、高圧バッテリ10、平滑コンデンサC1、及びインバータ4A、5Aを備える。
【0039】
高圧バッテリ10は、電力を蓄積して直流電圧を出力する任意の蓄電装置であり、ニッケル水素バッテリ、リチウムイオンバッテリや電気2重層キャパシタ等の容量性素子を含んでよい。高圧バッテリ10は、典型的には、定格電圧が100Vを超えるバッテリであり、定格電圧が例えば288Vである。
【0040】
平滑コンデンサC1は、高圧バッテリ10の正極に接続される正極ラインと、高圧バッテリ10の負極に接続される負極ラインとの間に接続される。なお、高圧バッテリ10と平滑コンデンサC1との間には、図3に示すように、高圧バッテリ10から電力供給を遮断するための遮断用スイッチSW1が設けられる。遮断用スイッチSW1は、半導体スイッチやリレー等で構成されてもよい。遮断用スイッチSW1は、常態でオン状態であり、例えば車両の衝突検出時等にオフとされる。
【0041】
インバータ4A、5Aは、正極ラインと負極ラインとの間に互いに並列に接続される。具体的には、高電圧側(ハイサイド)の端子Pに正極ラインが接続され、低電圧側(ローサイド)の端子Nに負極ラインが接続される。
【0042】
インバータ4A、5Aは、それぞれ、3つの上下アームを備える。各上下アームは、正極ラインと負極ラインとの間に互いに並列に接続される。ここでは、インバータ4Aの3つの上下アームを、「第1上下アーム11」、「第2上下アーム12」、及び「第3上下アーム13」と表記し、インバータ5Aの3つの上下アームを、「第4上下アーム14」、「第5上下アーム15」、及び「第6上下アーム16」と表記する。
【0043】
第1上下アーム11は、正極ラインと負極ラインとの間に直列に接続されたスイッチング素子(本例ではIGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)Q1、Q2を含む。同様に、第2上下アーム12は、正極ラインと負極ラインとの間に直列に接続されたスイッチング素子(本例ではIGBT)Q3、Q4を含む。同様に、第3上下アーム13は、正極ラインと負極ラインとの間に直列に接続されたスイッチング素子(本例ではIGBT)Q5、Q6を含む。また、各スイッチング素子Q1~Q6のコレクタ-エミッタ間には、それぞれ、エミッタ側からコレクタ側に電流を流すようにダイオードD11~D16が配置される。なお、スイッチング素子Q1~Q6は、MOSFET(metal oxide semiconductor field-effect transistor)のような、IGBT以外の他のスイッチング素子であってもよい。
【0044】
第4上下アーム14は、第1上下アーム11と同様であり、第5上下アーム15は、第2上下アーム12と同様であり、第6上下アーム16は、第3上下アーム13と同様である。
【0045】
インバータ4A、5Aは、図3に示すように、第1回転電機4及び第2回転電機5にそれぞれ接続される。具体的には、インバータ4Aは、第1回転電機4に第1配線部81を介して接続され、インバータ5Aは、第2回転電機5に第2配線部82を介して接続される。
【0046】
なお、図3に示す例では、電源系回路300は、DC/DCコンバータを備えていないが、高圧バッテリ10とインバータ4A、5Aの間にDC/DCコンバータを備えてもよい。
【0047】
次に、図4以降を参照して、第1配線部81及び第2配線部82に係る配線構造ついて、いくつかの実施例に分けて詳説する。
【0048】
[実施例1]
図4及び図5は、実施例1による配線構造(第1配線部81及び第2配線部82)の説明図であり、図4は、第1配線部81及び第2配線部82の斜視図であり、図5は、第1配線部81及び第2配線部82を軸方向に視た平面図である。なお、図4及び図5(後出する図6から図9も同様)は、第1配線部81及び第2配線部82の説明図であるので、ケース9とともに第1回転電機4及び第2回転電機5が非常に模式的に示されている。また、ケース9については、内部の構成がわかるように、一部が切除された状態で非常に模式的に示されている。また、ケース9は、軸方向に視て、矩形の外形で図示されているが、ケース9の外形は、周辺の設置物OB(図2参照)のレイアウトに応じて凹凸を有してよい。また、図4には、説明用に、軸方向に平行なY方向が定義され、Y方向に沿ったY1側とY2側が定義されている。
【0049】
第1配線部81は、第1中間バスバーユニット811と、第1端子台812とを含む。
【0050】
第1中間バスバーユニット811は、U、V、W相の3相のそれぞれに係るバスバー8111、8112、8113(第1給電部材、中間給電部材の一例)を含む。なお、本明細書において、第1配線部81(第2配線部82についても同様)に係る「バスバー」とは、インバータ4Aと第1回転電機4とを接続する任意の形態の導体を意味する。なお、バスバー8111、8112、8113は、例えば平板状の形態(すなわち板金の形態)であるが、線状の形態で実現されてもよい。
【0051】
第1中間バスバーユニット811は、バスバー8111、8112、8113を樹脂で封止して形成されてよい。すなわち、第1中間バスバーユニット811は、バスバー8111、8112、8113をセットした所定の金型内に樹脂材料を注入することで形成されてよい。この場合、バスバー8111、8112、8113は、第1動力線400に接合する端子部分と、バスバー8121、8122、8123に接合する端子部分とが、樹脂部830から露出する。なお、端子部分における接合は、例えばボルト締めを伴って実現されてよい。
【0052】
第1端子台812は、ケース9に支持される。例えば、第1端子台812は、ケース9にビス等により固定される。第1端子台812は、U、V、W相の3相のそれぞれに係るバスバー8121、8122、8123(第1給電部材、ケース側給電部材の一例)(図5では、封止する樹脂により可視でない)を含む。第1端子台812は、バスバー8121、8122、8123を樹脂で封止して形成されてよい。
【0053】
第1配線部81では、第1中間バスバーユニット811のバスバー8111、8112、8113は、それぞれ、一端がU、V、W相の第1動力線400に接合され、他端が第1端子台812のバスバー8121、8122、8123に接合される。また、第1端子台812のバスバー8121、8122、8123は、一端が上述のように第1中間バスバーユニット811のバスバー8111、8112、8113に接合され、他端がケース9の外側でインバータ4Aからのバスバー(図示せず)又はその類の給電部品(図示せず)に接合される。
【0054】
第2配線部82は、第2中間バスバーユニット821と、第2端子台822とを含む。
【0055】
第2中間バスバーユニット821は、U、V、W相の3相のそれぞれに係るバスバー8211、8212、8213(第2給電部材、中間給電部材の一例)を含む。第2中間バスバーユニット821は、バスバー8211、8212、8213を樹脂で封止して形成されてよい。すなわち、第2中間バスバーユニット821は、バスバー8211、8212、8213をセットした所定の金型内に樹脂材料を注入することで形成されてよい。この場合、バスバー8211、8212、8213は、第2動力線500に接合する端子部分と、バスバー8221、8222、8223に接合する端子部分とが、樹脂部830から露出する。なお、端子部分における接合は、例えばボルト締めを伴って実現されてよい。
【0056】
第2端子台822は、ケース9に支持される。例えば、第2端子台822は、ケース9にビス等により固定される。第2端子台822は、U、V、W相の3相のそれぞれに係るバスバー8221、8222、8223(第2給電部材、ケース側給電部材の一例)を含む。第2端子台822は、バスバー8221、8222、8223を樹脂で封止して形成されてよい。
【0057】
第2配線部82では、第2中間バスバーユニット821のバスバー8211、8212、8213は、それぞれ、一端がU、V、W相の第2動力線500に接合され、他端が第2端子台822のバスバー8221、8222、8223に接合される。また、第2端子台822のバスバー8221、8222、8223は、一端が上述のように第2中間バスバーユニット821のバスバー8211、8212、8213に接合され、他端がケース9の外側でインバータ5Aからのバスバー(図示せず)に接合される。
【0058】
なお、本実施例では、一例として、第1端子台812及び第2端子台822は、一体成形される。すなわち、第1端子台812及び第2端子台822は、バスバー8121、8122、8123及びバスバー8221、8222、8223を樹脂で封止して形成される。従って、第1端子台812及び第2端子台822は、樹脂部830と、樹脂部830に封止されるバスバー8121、8122、8123及びバスバー8221、8222、8223とを含む。なお、バスバー8121、8122、8123及びバスバー8221、8222、8223は、端子部分が樹脂部830から露出する。このような構成によれば、樹脂部830内でバスバー8121、8122、8123及びバスバー8221、8222、8223のそれぞれの間の距離を比較的小さくできるので、第1端子台812及び第2端子台822全体としての体格を低減できる。すなわち、部品点数の低減を図りつつ、第1端子台812及び第2端子台822の搭載スペースを低減できる。
【0059】
このようにして本実施例では、第1中間バスバーユニット811(及びそれに伴いバスバー8111、8112、8113)は、ケース9に設けられる第1端子台812を介して、ケース9に支持される。また、第2中間バスバーユニット821(及びそれに伴いバスバー8211、8212、8213)は、ケース9に設けられる第2端子台822を介して、ケース9に支持される。
【0060】
ところで、ケース9内には、図4及び図5には省略されているが、図1及び図2を参照して上述した分配用差動歯車機構3やカウンタギヤ機構6、出力用差動歯車機構7等が設けられ、ケース9よりも上方には、インバータ4A、5A等が配置される。従って、軸方向に視たケース9の外形は、これらの第1回転電機4、第2回転電機5、分配用差動歯車機構3等を含む機構を収容し、かつ、外部の上方にインバータ4A、5A等の搭載スペースが確保されるように、設計される。このようなレイアウト上の各種制約に起因して、第1配線部81及び第2配線部82の配置範囲が制約を受ける場合がある。
【0061】
特に、軸方向に交差する方向(水平方向H、鉛直方向V、及びこれらの組み合わせ)でのケース9の大型化(寸法の増加)は、当該方向でのケース9まわりの搭載物の搭載性に比較的大きな影響を与える。例えば、鉛直方向Vは、インバータ4A、5Aや他の設置物OBとの関係で制約が多くなりやすく、限られたスペースで、配線構造(第1配線部81及び第2配線部82)を成り立たせることが有用である。
【0062】
そこで、本実施例では、軸方向に視て、第1動力線400の配置範囲及びバスバー8111、8112、8113、8123、8121、8122、8123の配置範囲を合わせた第1領域A1と、第2動力線500の配置範囲及びバスバー8211、8212、8213、8221、8222、8223の配置範囲を合わせた第2領域A2とは、互いに部分的に重なる。なお、軸方向に視て、2つの領域が互いに部分的に重なるとは、通常の意味であり、軸方向に垂直な平面に投影した際の各領域が互いに部分的に重なることを意味する。また、軸方向に視た、ある部品の配置範囲とは、軸方向に視て、当該部品を隙間なく外側から囲繞したときに内側に形成される範囲(すなわち当該部品に外接する範囲)に対応する。
【0063】
このようにして、本実施例によれば、軸方向に視て、第1領域A1と第2領域A2とは、互いに部分的に重なるので、第1領域A1と第2領域A2とが重ならない場合に比べて、軸方向に交差する方向(水平方向H、鉛直方向V、及びこれらの組み合わせ)でのバスバー関連の配置範囲を比較的狭くできる。この結果、ケース9まわりの搭載物の搭載性を高めることができる。換言すると、軸方向に視たときのケース9の外形の最小化を図ることができる。
【0064】
また、本実施例によれば、軸方向に視て、第1動力線400の配置範囲と、第2動力線500の配置範囲とは、互いに部分的に重なる。換言すると、第1動力線400は、第2動力線500に対して、軸方向でオフセットしつつ、軸方向に視て交差するように、配索(レイアウト)される。例えば、図5では、軸方向に視て、3本の第1動力線400のうちの、2本が第2動力線500に重なる。なお、変形例では、、軸方向に視て、3本の第1動力線400のうちの、1本のみが又は3本ともに、第2動力線500に重なってもよい。
【0065】
これにより、軸方向に視て、第1動力線400における第1中間バスバーユニット811側の端部位置と、第2動力線500における第2中間バスバーユニット821側の端部位置とを近づけることができる。この結果、第1中間バスバーユニット811のバスバー8111、8112、8113と、第2中間バスバーユニット821のバスバー8211、8212、8213とを、軸方向に視て重なる又は近接する関係にレイアウトできる。従って、第1中間バスバーユニット811と第2中間バスバーユニット821とを合わせた搭載スペースであって、軸方向に交差する方向での搭載スペースを効率的に低減できる。また、更にその結果、第1端子台812のバスバー8121、8122、8123と、第2端子台822のバスバー8221、8222、8223とを、軸方向に視て重なる又は近接する関係にレイアウトできる。従って、第1端子台812と第2端子台822とを合わせた搭載スペースであって、軸方向に交差する方向での搭載スペースを効率的に低減できる。
【0066】
また、本実施例によれば、第1端子台812における第1中間バスバーユニット811のバスバー8111、8112、8113との接合位置、及び、第2端子台822における第2中間バスバーユニット821のバスバー8211、8212、8213は、上下方向(鉛直方向V)に視て第1回転電機4と重なり、かつ、水平方向Hに視て第2回転電機5と重なる。これにより、第1回転電機4及び第2回転電機5の周辺のスペースを利用した効率的な配線構造を実現できる。
【0067】
また、本実施例によれば、第1中間バスバーユニット811と第2中間バスバーユニット821が設けられるので、第1端子台812及び第2端子台822がケース9におけるY方向Y2側に位置する場合(例えば第1回転電機4の軸方向の中心よりもY方向Y2側に位置する場合)でも、第1回転電機4からの第1動力線400及び第2回転電機5からの第2動力線500を適切に配索(レイアウト)できる。すなわち、第1回転電機4からの第1動力線400及び第2回転電機5からの第2動力線500は、第1中間バスバーユニット811と第2中間バスバーユニット821を介して、ケース9側の第1端子台812及び第2端子台822に接続されるので、第1動力線400及び第2動力線500のY方向の延在範囲を低減できる。この結果、第1中間バスバーユニット811と第2中間バスバーユニット821が設けられない場合よりも、第1動力線400及び第2動力線500を短くでき、クランプ等の必要性を低減できる。
【0068】
なお、本実施例では、第1端子台812のバスバー8121、8122、8123と、第2端子台822のバスバー8221、8222、8223とは、軸方向に視て、隣接する関係であるが、重なる関係であってよい。すなわち、本実施例では、図5に示すように、軸方向に視て、バスバー8221とバスバー8222との間にバスバー8121が位置し、バスバー8222とバスバー8223との間にバスバー8122が位置し、バスバー8122とバスバー8123との間にバスバー8223が位置するが、これに限られない。例えば、軸方向に視て、第1端子台812のバスバー8121、8122、8123の少なくともいずれか1つが、第2端子台822のバスバー8221、8222、8223に重なってもよい。
【0069】
また、本実施例では、第1動力線400と第2動力線500は、それぞれ第1回転電機4及び第2回転電機5側の端部の位置が互いに対して軸方向にオフセットしているが、これに限られない。第1動力線400と第2動力線500は、それぞれ第1回転電機4及び第2回転電機5側の端部の軸方向の位置は同じであってもよい。この場合、第1動力線400は、第1回転電機4側の端部から第1中間バスバーユニット811側の端部までの区間で軸方向Y1側にオフセットしてもよいし、それに代えて又は加えて、第2動力線500は、第2回転電機5側の端部から第2中間バスバーユニット821側の端部までの区間で軸方向Y2側にオフセットしてもよい。
【0070】
また、本実施例では、基本的に、第1動力線400が第2動力線500よりも軸方向Y2側に位置し、第1中間バスバーユニット811のバスバー8111、8112、8113が、第2中間バスバーユニット821のバスバー8211、8212、8213よりも軸方向Y2側に位置し、第1端子台812のバスバー8121、8122、8123が第2端子台822のバスバー8221、8222、8223よりも軸方向Y2側に位置しているが、これに限られない。例えば、全て逆であってもよい。すなわち、第1動力線400が第2動力線500よりも軸方向Y1側に位置し、第1中間バスバーユニット811のバスバー8111、8112、8113が、第2中間バスバーユニット821のバスバー8211、8212、8213よりも軸方向Y1側に位置し、第1端子台812のバスバー8121、8122、8123が第2端子台822のバスバー8221、8222、8223よりも軸方向Y1側に位置してもよい。また、第1端子台812のバスバー8121、8122、8123の少なくともいずれか1つが、第2端子台822のバスバー8221、8222、8223と同じ軸方向の位置であってもよい。
【0071】
[実施例2]
なお、以下の実施例2に係る説明において、上述した実施例1と実質的に同様でよい構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0072】
図6及び図7は、実施例2による第1配線部81A及び第2配線部82Aの説明図であり、図6は、第1配線部81A及び第2配線部82Aの斜視図であり、図7は、第1配線部81A及び第2配線部82Aを軸方向に視た平面図である。なお、図6には、前出の図4と同様、軸方向に平行なY方向が定義され、Y方向に沿ったY1側とY2側が定義されている。
【0073】
本実施例による第1配線部81Aは、上述した実施例1による第1配線部81に対して、第1中間バスバーユニット811が省略された点が異なる。すなわち、第1配線部81Aは、第1端子台812を含む。第1端子台812は、上述した実施例1による第1配線部81で説明したとおりであってよい。
【0074】
本実施例による第2配線部82Aは、上述した実施例1による第2配線部82に対して、第2中間バスバーユニット821が省略された点が異なる。すなわち、第2配線部82Aは、第2端子台822を含む。第2端子台822は、上述した実施例1による第2配線部82で説明したとおりであってよい。
【0075】
このように、本実施例は、上述した実施例1に対して、第1中間バスバーユニット811及び第2中間バスバーユニット821が省略された点が異なる。ただし、本実施例による第1端子台812及び第2端子台822は、ケース9に対して、上述した実施例1による第1端子台812及び第2端子台822よりもY方向Y1側に支持されてよい。
【0076】
本実施例においても、軸方向に視て、第1動力線400の配置範囲及びバスバー8121、8122、8123の配置範囲を合わせた第1領域A1と、第2動力線500の配置範囲及びバスバー8221、8222、8223の配置範囲を合わせた第2領域A2とは、互いに部分的に重なる。
【0077】
従って、本実施例においても、上述した実施例1と同様の効果が得られる。
【0078】
また、本実施例によれば、上述した実施例1と同様、軸方向に視て、第1動力線400の配置範囲と、第2動力線500の配置範囲とは、互いに部分的に重なる。換言すると、第1動力線400は、第2動力線500に対して、軸方向でオフセットしつつ、軸方向に視て交差するように、配索(レイアウト)される。これにより、軸方向に視て、第1動力線400における第1端子台812側の端部位置と、第2動力線500における第2端子台822側の端部位置とを近づけることができる。この結果、第1端子台812のバスバー8121、8122、8123と、第2端子台822のバスバー8221、8222、8223とを、軸方向に視て近接する関係にレイアウトできる。従って、第1端子台812と第2端子台822とを合わせた搭載スペースであって、軸方向に交差する方向での搭載スペースを効率的に低減できる。
【0079】
また、本実施例によれば、第1中間バスバーユニット811と第2中間バスバーユニット821が省略されるので、上述した実施例1に比べて、部品点数を低減できる。
【0080】
[実施例3]
なお、以下の実施例3に係る説明において、上述した実施例1と実質的に同様でよい構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0081】
図8及び図9は、実施例3による第1配線部81B及び第2配線部82Bの説明図であり、図8は、第1配線部81B及び第2配線部82Bの斜視図であり、図9は、第1配線部81B及び第2配線部82Bを軸方向に視た平面図である。なお、図8には、前出の図4と同様、軸方向に平行なY方向が定義され、Y方向に沿ったY1側とY2側が定義されている。
【0082】
本実施例による第1配線部81Bは、上述した実施例1による第1配線部81に対して、第1中間バスバーユニット811が省略され、かつ、第1端子台812が第1端子台812Bで置換された点が異なる。この場合、第1配線部81Bは、第1端子台812Bを含む。
【0083】
第1端子台812Bは、上述した実施例1による第1端子台812に対して、バスバー8121、8122、8123がバスバー8121B、8122B、8123Bで置換された点が異なる。
【0084】
バスバー8121B、8122B、8123Bは、上述した実施例1によるバスバー8121、8122、8123に対して、後述する第2端子台822Bのバスバー8221B、8222B、8223Bとの位置関係が異なる。具体的には、バスバー8121B、8122B、8123Bは、軸方向に視て、後述する第2端子台822Bのバスバー8221B、8222B、8223Bに対して水平方向の位置がそれぞれ同じである。
【0085】
本実施例による第2配線部82Bは、上述した実施例1による第2配線部82に対して、第2中間バスバーユニット821が省略され、かつ、第2端子台822が第2端子台822Bで置換された点が異なる。この場合、第2配線部82Bは、第2端子台822Bを含む。
【0086】
第2端子台822Bは、上述した実施例1による第2端子台822に対して、バスバー8221、8222、8223がバスバー8221B、8222B、8223Bで置換された点が異なる。
【0087】
バスバー8221B、8222B、8223Bは、上述した実施例1によるバスバー8221、8222、8223に対して、第1端子台812Bのバスバー8121B、8122B、8123Bとの位置関係が上述したように異なる。すなわち、バスバー8221B、8222B、8223Bは、バスバー8121B、8122B、8123Bに対して軸方向でオフセットしつつ、軸方向に視て、それぞれ同一の水平方向Hの位置で上下方向に延在する。
【0088】
また、バスバー8221B、8222B、8223Bにおける第2動力線500との接合位置は、バスバー8121B、8122B、8123Bにおける第1動力線400との接合位置に対して、上下方向でオフセットされる。これにより、これらの接合のための軸方向の作業性が良好となる。例えば、バスバー8221B、8222B、8223Bと第2動力線500との接合、及び、バスバー8121B、8122B、8123Bと第1動力線400との接合を、軸方向のボルト締め等により容易に実現できる。
【0089】
なお、本実施例による第1端子台812B及び第2端子台822Bは、上述した実施例1と同様、一体に成形されてもよい。また、第1端子台812B及び第2端子台822Bは、ケース9に対して、上述した実施例1による第1端子台812及び第2端子台822よりもY方向Y1側に支持されてよい。
【0090】
本実施例においても、軸方向に視て、第1動力線400の配置範囲及びバスバー8121B、8122B、8123Bの配置範囲を合わせた第1領域A1と、第2動力線500の配置範囲及びバスバー8221B、8222B、8223Bの配置範囲を合わせた第2領域A2とは、互いに部分的に重なる。
【0091】
従って、本実施例においても、上述した実施例1と同様の効果が得られる。
【0092】
また、本実施例によれば、上述した実施例1と同様、軸方向に視て、第1動力線400の配置範囲と、第2動力線500の配置範囲とは、互いに部分的に重なる。換言すると、第1動力線400は、第2動力線500に対して、軸方向でオフセットしつつ、軸方向に視て交差するように、配索(レイアウト)される。これにより、軸方向に視て、第1動力線400における第1端子台812B側の端部位置と、第2動力線500における第2端子台822B側の端部位置とを近づけることができる。この結果、第1端子台812Bのバスバー8121B、8122B、8123Bと、第2端子台822Bのバスバー8221B、8222B、8223Bとを、上述したように、軸方向に視て、略全体にわたり重なる関係でレイアウトできる。すなわち、第1端子台812Bと第2端子台822Bとを、軸方向でオフセットしつつ、水平方向Hで略同じ位置に配置できる。これにより、第1端子台と第2端子台とを水平方向Hに並べて配置する場合に比べて、第1端子台812Bと第2端子台822Bとを合わせた搭載スペースであって、水平方向Hでの搭載スペースを効率的に低減できる。
【0093】
また、本実施例によれば、第1中間バスバーユニット811と第2中間バスバーユニット821が省略されるので、上述した実施例1に比べて、部品点数を低減できる。
【0094】
なお、本実施例(上述した実施例1及び実施例2も同様)では、ケース9における第1端子台812B及び第2端子台822Bの取付面9Bは、水平方向Hに延在するが、上述したようにケース9の外形に応じて、取付面9Bは、水平面に対して傾斜されてもよい。この場合、バスバー8121B、8122B、8123B及び/又はバスバー8221B、8222B、8223Bは、水平方向Hに対して傾斜した方向に並んで配置されてもよい。
【0095】
なお、上述した配線構造に係る各実施例は、適宜、組み合わせることも可能である。例えば、第1配線部81と第2配線部82A又は第2配線部82Bとが組み合わせて実現されてもよい。この場合、第1端子台812と第2端子台822又は第2端子台822Bとは、別体であってもよいし、一体成形されてもよい。また、同様に、第2配線部82と第1配線部81A又は第1配線部81Bとが組み合わせて実現されてもよい。この場合も、第2端子台822と第1端子台812又は第1端子台812Bとは、別体であってもよいし、一体成形されてもよい。
【0096】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0097】
例えば、上述した各実施例は、第1回転電機4及び第2回転電機5の2つの回転電機に関する配線構造に関するが、3つ以上の回転電機に関する配線構造にも適用可能である。また、上述した各実施例では、第1回転電機4及び第2回転電機5は、ともに車両の駆動力を発生させるが、2つ以上の回転電機に係る機能は任意である。例えば、2つ以上の回転電機のうちの1つは、補機用モータ(例えばオイルポンプ用の回転電機)であってもよい。
【0098】
また、上述した各実施例は、図1及び図2に示した車両用駆動装置1に適用されるのが好適であるが、他の構成の車両用駆動装置に対しても適用可能である。
【0099】
<付記>
以上の実施例に関し、更に以下を開示する。なお、以下で記載する効果のうちの、一の形態に対する追加的な各形態に係る効果は、当該追加的な各形態に起因した付加的な効果である。
【0100】
(1)一の形態は、それぞれの回転軸(X2、X3)が互いに平行となる関係で配置される2つ以上の回転電機(4、5)に係る配線構造であって、
第1回転電機(4)からの第1動力線(400)に接合される第1給電部材(8121、8122、8123、8121B、8122B、8123B)と、
第2回転電機(5)からの第2動力線(500)に接合される第2給電部材(8221、8222、8223、8221B、8222B、8223B)とを備え、
前記回転軸の方向に視て、前記第1動力線の配置範囲及び前記第1給電部材の配置範囲を合わせた第1領域(A1)と、前記第2動力線の配置範囲及び前記第2給電部材の配置範囲を合わせた第2領域(A2)とは、互いに部分的に重なる、配線構造である。
【0101】
本形態によれば、回転軸の方向に視て第1領域及び第2領域が一切重ならない場合に比べて、回転軸の方向に視て、第1領域及び第2領域を合わせた領域を、比較的狭くすることが可能となる。
【0102】
(2)また、本形態においては、好ましくは、前記回転軸の方向に視て、前記第1給電部材の配置範囲と前記第2給電部材の配置範囲は、互いに部分的に重なる。
【0103】
この場合、回転軸の方向に視て第1給電部材の配置範囲と第2給電部材の配置範囲が一切重ならない場合に比べて、回転軸の方向に視て、第1給電部材の配置範囲と第2給電部材の配置範囲を合わせた領域を、比較的狭くすることが可能となる。
【0104】
(3)また、本形態においては、好ましくは、前記第1給電部材及び前記第2給電部材は、前記回転軸の方向にオフセットする。
【0105】
この場合、回転軸の方向のスペースを利用することで、回転軸の方向に視て、第1給電部材の配置範囲と第2給電部材の配置範囲を合わせた領域を、効率的に狭くできる。
【0106】
(4)また、本形態においては、好ましくは、前記第1動力線及び前記第2動力線は、前記回転軸の方向にオフセットしつつ前記回転軸の方向に視て重なる。
【0107】
この場合、回転軸の方向のスペースを利用することで、回転軸の方向に視て、第1動力線の配置範囲と第2動力線の配置範囲を合わせた領域を、効率的に狭くできる。なお、ここでいう「重なる」とは、全体が重なる態様のみならず、部分的に重なる態様(回転軸の方向に視て交差する態様)も含む。
【0108】
(5)また、本形態においては、好ましくは、前記第1給電部材及び前記第2給電部材は、前記第1回転電機及び前記第2回転電機の双方を収容するケース(9)内に配置される。
【0109】
この場合、第1回転電機等の収容物やケース外部の設置物等に起因して内部スペースの限られたケース内においても、当該限られた内部スペースを効率的に利用して配線構造を成立させることができる。この結果、ケースの外形等の形状自由度を高めることができる。
【0110】
(6)また、本形態においては、好ましくは、前記第1給電部材及び前記第2給電部材のうちの少なくともいずれか一方は、前記ケースに支持されるケース側給電部材と、前記ケース側給電部材に接合される中間給電部材とを含む。
【0111】
この場合、第1回転電機及び第2回転電機からの配線が軸方向に比較的長くなる場合でも、中間給電部材を利用して、上述した各種の効果を実現できる。
【0112】
(7)また、本形態においては、好ましくは、前記第1回転電機及び前記第2回転電機の双方を収容するケースに固定される樹脂部(830)を有し、
前記樹脂部は、前記第1給電部材及び前記第2給電部材が互いに前記回転軸の方向でオフセットするような位置関係となるように、前記第1給電部材及び前記第2給電部材を封止する。
【0113】
この場合、樹脂部を利用してケースに第1給電部材及び第2給電部材を支持できる。また、第1給電部材及び第2給電部材を樹脂部で封止するので、樹脂部内における第1給電部材及び第2給電部材間の距離(電気的な絶縁を確保する観点から離される距離)を比較的短くできる。
【0114】
(8)また、他の一の形態は、それぞれの回転軸(X2、X3)が互いに平行となる関係で配置される第1回転電機(4)及び第2回転電機(5)と、
前記第1回転電機からの第1動力線(400)に接合される第1給電部材(8121、8122、8123、8121B、8122B、8123B)と、
前記第2回転電機からの第2動力線(500)に接合される第2給電部材(8221、8222、8223、8221B、8222B、8223B)とを備え、
前記回転軸の方向に視て、前記第1動力線の配置範囲及び前記第1給電部材の配置範囲を合わせた第1領域(A1)と、前記第2動力線の配置範囲及び前記第2給電部材の配置範囲を合わせた第2領域(A2)とは、互いに部分的に重なる、車両用駆動装置(1)である。
【0115】
本形態によれば、回転軸の方向に視て第1領域及び第2領域が一切重ならない場合に比べて、回転軸の方向に視て、第1領域及び第2領域を合わせた領域を、比較的狭くすることが可能となる。これにより、配線構造の省スペース化を図ることができ、車両用駆動装置の小型化を効果的に図ることができる。
【符号の説明】
【0116】
1 車両用駆動装置
2 入力部材
3 連結ギヤ
3 外周ギヤ
3 分配用差動歯車機構
4 第1回転電機
4A インバータ
5 第2回転電機
5A インバータ
6 カウンタギヤ機構
7 出力用差動歯車機構
8 出力部材
9 ケース
9B 取付面
300 電源系回路
400 第1動力線
500 第2動力線
811 第1中間バスバーユニット
8111、8112、8113 バスバー
812、812B 第1端子台
8121、8122、8123、8121B、8122B、8123B バスバー
821 第2中間バスバーユニット
8211、8212、8213 バスバー
822、822B 第2端子台
8221、8222、8223、8221B、8222B、8223B バスバー
830 樹脂部
A1 第1領域
A2 第2領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9