(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093789
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】グリッパ
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20230628BHJP
【FI】
B25J15/08 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208825
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000108498
【氏名又は名称】タイガースポリマー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 圭史
(72)【発明者】
【氏名】八幡 宗夫
(72)【発明者】
【氏名】松尾 來輝
(72)【発明者】
【氏名】工藤 啓悟
(72)【発明者】
【氏名】三浦 貴嗣
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707AS06
3C707BS10
3C707DS01
3C707ES03
3C707ET08
3C707EV14
3C707EV23
3C707EW04
(57)【要約】
【課題】 把持対象物を柔軟に把持しながら、かつ、保持力が高いグリッパを提供する。
【解決手段】 グリッパは爪部材11と、グリップ部材12とを有する。グリップ部材12は、樹脂製の板状の弾性部材131を含む。弾性部材131は、平板状の基部132と、中空部を有する複数の中空突起133を有する。中空突起133は、基部上132に散在するように突出形成されている。中空突起133は、基部132から立設された中空筒状の第1立上り部134と、第1立上り部134の先端から縮径するよう設けられた板状の環状部135と、基部から遠ざかる方向に、環状部135の内周側から立設された第2立上り部136とを有する。第1立上り部134の内径D1が、第2立上り部136の外径D2よりも大きくされていて、把持対象物を把持する際に、第1立上り部134の内側に第2立上り部136の一部が入り込む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持対象物を把持するよう開閉可能に設けられた爪部材と、
把持対象物を把持する際に把持対象物と接触するように爪部材に取り付けられたグリップ部材とを有するグリッパであって、
前記グリップ部材は、樹脂製の板状の弾性部材を含み、
前記弾性部材は、平板状の基部と、中空部を有する複数の中空突起を有するとともに、
中空突起は、基部上に散在するように突出形成されており、
前記中空突起は、
基部から立設された中空筒状の第1立上り部と、
第1立上り部の先端から縮径するよう設けられた板状の環状部と、
基部から遠ざかる方向に前記環状部の内周側から立設された第2立上り部と、
を有しており、
筒状の第1立上り部の内径が、第2立上り部の外径よりも大きくされていて、
把持対象物を把持する際に、中空突起が圧縮されて、第1立上り部の内側に第2立上り部の一部が入り込むように、階段状の中空突起とされている、
グリッパ。
【請求項2】
把持対象物を把持するよう開閉可能に設けられた爪部材と、
把持対象物を把持する際に把持対象物と接触するように爪部材に取り付けられたグリップ部材とを有するグリッパであって、
前記グリップ部材は、ゴム又はエラストマー製の板状の弾性部材を含み、
前記弾性部材は、平板状の基部と、中空部を有する複数の中空凸条を有するとともに、
中空凸条は、基部上に並ぶように突出形成されており、
前記中空凸条は、
基部から立設された中空の第1凸条部と、
第1凸条部の先端から凸条の中心側に向かうよう設けられた板状の段差部と、
基部から遠ざかる方向に、前記段差部の凸条中心側から立設された第2凸条部と、
を有しており、
筒状の第1凸条部の内側の幅が、第2凸条部の外側の幅よりも大きくされていて、
把持対象物を把持する際に、中空凸条が圧縮されて、第1凸条部の内側に第2凸条部の一部が入り込むように、階段状の中空凸条とされている、
グリッパ。
【請求項3】
前記グリップ部材が、さらに、弾性部材と把持対象物との間に位置する把持層を有している、
請求項1または請求項2に記載のグリッパ。
【請求項4】
弾性部材の基部が爪部材の側となるように、前記弾性部材が配置されている、
請求項1または請求項2に記載のグリッパ。
【請求項5】
前記中空突起もしくは中空凸条には、中空突起もしくは中空凸条の外部と中空部とを連通する貫通穴が設けられている、
請求項1または請求項2に記載のグリッパ。
【請求項6】
互いに隣接する中空突起もしくは中空凸条の間に、中空突起もしくは中空凸条の中空部を互いに連通する連通路が設けられている、
請求項1または請求項2に記載のグリッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットなどに使用されるグリッパ、特に、開閉動作により作業対象物を把持するグリッパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、産業用ロボットが部材の搬送や組立等、多彩な用途に使用されている。産業用ロボットによって、作業対象物を搬送する、いわゆるマテリアルハンドリングのための産業用ロボットも実用化されている。産業用ロボットにより、作業対象物の搬送を行う場合には、産業用ロボットのアームに、グリッパ(エンドエフェクタと呼ばれる場合もある)が取り付けられて、グリッパにより作業対象物が操作される。作業対象物の性質や形状により、グリッパが使い分けられるが、グリッパには、磁力や真空引きなどの吸引力を利用するものや、開閉動作により作業対象物を把持するものなどがある。
【0003】
開閉動作により作業対象物を把持するグリッパとしては、例えば、特許文献1に開示されるものが知られている。特許文献1のグリッパは、板バネとクッション材がアクチュエータにより開閉される。当該グリッパによれば、脆弱な機械的特性を持つ物の把持や搬送ができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のグリッパは、グリッパが把持対象物(搬送作業の対象物)を把持する部分にクッション材を用いているため、把持の際の衝撃力が緩和されるが、その反面、把持する際の保持力が、単純にクッション材と把持対象物の間の摩擦力に依存することになる。そのため、
図12に示すように、把持方向と交差する方向には保持力が弱く、把持対象物が落下したり、把持された把持対象物の位置や姿勢等が変化したりしやすいという課題を有している。
【0006】
本発明の目的は、把持対象物を柔軟に把持しながら、かつ、保持力が高いグリッパを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、鋭意検討の結果、特定の構造を有する中空突起や中空凸条が複数設けられた板状の弾性部材を含むようにグリップ部材を構成すると、把持対象物を柔軟に把持しながら保持力が高められることを知見し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、把持対象物を把持するよう開閉可能に設けられた爪部材と、把持対象物を把持する際に把持対象物と接触するように爪部材に取り付けられたグリップ部材とを有するグリッパであって、前記グリップ部材は、樹脂製の板状の弾性部材を含み、前記弾性部材は、平板状の基部と、中空部を有する複数の中空突起を有するとともに、中空突起は、基部上に散在するように突出形成されており、前記中空突起は、基部から立設された中空筒状の第1立上り部と、第1立上り部の先端から縮径するよう設けられた板状の環状部と、基部から遠ざかる方向に前記環状部の内周側から立設された第2立上り部と、を有しており、筒状の第1立上り部の内径が、第2立上り部の外径よりも大きくされていて、把持対象物を把持する際に、中空突起が圧縮されて、第1立上り部の内側に第2立上り部の一部が入り込むように、階段状の中空突起とされている、グリッパである(第1発明)。
【0009】
また、本発明は、把持対象物を把持するよう開閉可能に設けられた爪部材と、把持対象物を把持する際に把持対象物と接触するように爪部材に取り付けられたグリップ部材とを有するグリッパであって、前記グリップ部材は、ゴム又はエラストマー製の板状の弾性部材を含み、前記弾性部材は、平板状の基部と、中空部を有する複数の中空凸条を有するとともに、中空凸条は、基部上に並ぶように突出形成されており、前記中空凸条は、基部から立設された中空の第1凸条部と、第1凸条部の先端から凸条の中心側に向かうよう設けられた板状の段差部と、基部から遠ざかる方向に、前記段差部の凸条中心側から立設された第2凸条部と、を有しており、筒状の第1凸条部の内側の幅が、第2凸条部の外側の幅よりも大きくされていて、把持対象物を把持する際に、中空凸条が圧縮されて、第1凸条部の内側に第2凸条部の一部が入り込むように、階段状の中空凸条とされている、グリッパである(第2発明)。
【0010】
第1発明もしくは第2発明において、好ましくは、前記グリップ部材が、さらに、弾性部材と把持対象物との間に位置する把持層を有している(第3発明)。また、第1発明もしくは第2発明において、好ましくは、弾性部材の基部が爪部材の側となるように、前記弾性部材が配置されている(第4発明)。また、第1発明もしくは第2発明において、好ましくは、前記中空突起もしくは中空凸条には、中空突起もしくは中空凸条の外部と中空部とを連通する貫通穴が設けられている(第5発明)。また、第1発明もしくは第2発明において、好ましくは、互いに隣接する中空突起もしくは中空凸条の間に、中空突起もしくは中空凸条の中空部を互いに連通する連通路が設けられている(第6発明)。
【発明の効果】
【0011】
本発明のグリッパ(第1発明、第2発明)によれば、把持対象物を柔軟に把持しながら、かつ、保持力が高められるとの効果が得られる。さらに、第3発明もしくは第4発明によれば、より保持力が高められ、また、第5発明もしくは第6発明によれば、グリップ部材をより柔軟なものとできるとともに、弾性部材の復元性が特に良くなり、繰り返し把持する際の柔軟性が特に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のグリッパを取り付けた産業用ロボットの模式図である。
【
図3】本発明第1実施形態のグリッパの爪部材やグリップ部材の構造を示す断面図である。
【
図4】本発明第1実施形態のグリッパにおける弾性部材の斜視図である。
【
図5】本発明第1実施形態のグリッパにおける中空突起の断面図である。
【
図6】本発明第1実施形態のグリッパにより把持対象物を把持する際の、グリップ部材の変形形態を示す断面図である。
【
図7】中空突起の形状および配置の他の例を示す図である。
【
図9】爪部材と弾性部材の位置関係の変形例を示す断面図である。
【
図10】本発明第2実施形態のグリッパに用いられる弾性部材の正面図および断面図である。
【
図11】本発明第3実施形態のグリッパに用いられる弾性部材の正面図、断面図および斜視図である。
【
図12】従来のグリッパにより把持対象物を把持した際の、クッション部材の変形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面を参照しながら、産業用ロボットに取り付けられるグリッパを例として、発明の実施形態について説明する。なお、発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。例えば、本発明のグリッパは、産業用ロボットだけでなく、家庭内や病院等で用いられるロボットにも使用できる。
【0014】
図1は、本発明第1実施形態のグリッパ10を取り付けた産業用ロボットの模式図である。グリッパ10は、ロボットのアームAの先端部に取り付けられて使用される。ロボットのアームの具体的形式や形態は特に限定されない。アームAは多関節式であってもよいし、平行移動式のアームであってもよい。
【0015】
図2は、本発明のグリッパ10の構成を示す図である。本発明のグリッパは、開閉動作によって、把持対象物99(作業対象物とも記載する)を把持することができ、本発明のグリッパを備える産業用ロボットは把持対象物を把持して搬送することができる。
【0016】
グリッパ10は、駆動部19と爪基部18,18を有する。駆動部19に備えられた動力装置(例えばモータや圧力シリンダー等)と機構(例えば減速機構や、リンク、カム等)により爪基部18,18が開閉運動し、後述する爪部材11,11やグリップ部材12,12を開閉する。例えば、本実施形態では、電動モータとボールねじを組み合わせて、爪基部18,18が平行に開閉するよう、駆動部19が構成されている。なお、駆動部19や爪基部18の具体的構成や機構は、特に限定されず、爪部材やグリップ部材を平行に開閉させるものであってもよく、コンパス状に開閉させるものであってもよい。また、爪基部18,18は必須ではなく、駆動部19により後述する爪部材11,11が直接開閉駆動されてもよい。爪基部18,18があれば、グリッパ10において爪部材11やグリップ部材12を交換しやすくなって便利である。
【0017】
グリッパ10は、爪部材11,11とグリップ部材12,12とを有する。爪部材11は、グリッパ10が把持対象物99を把持するよう、開閉可能に設けられている。本実施形態では、爪部材11は爪基部18にネジ等によって取り付けられて、開閉可能とされている。グリップ部材12は、爪部材11に取り付けられており、爪部材とともに開閉動作する。また、グリップ部材12は、把持対象物99を把持する際に、把持対象物99と直接接触するように設けられる。
【0018】
グリッパ10の把持動作に伴い、爪部材11およびグリップ部材12が移動する方向を以下、「把持方向」という。
図2において、把持方向は、図の左右方向である。
また、本実施形態では、爪部材11とグリップ部材12とが、それぞれ、対をなすように2つ設けられている。これにより、グリップ部材12,12の間に置かれた把持対象物が、爪部材11,11の間隔が狭まることにより、グリップ部材12,12の間に把持される。爪部材11とグリップ部材12の数は、2つに限定されず、1つ、もしくは3つ以上であってもよい。
【0019】
爪部材11やグリップ部材12の構成について、以下、より詳細に説明する。
図3は、第1実施形態のグリッパ10における爪部材11とグリップ部材12の構造を示す断面図である。
図3の左上の図が、
図2における左側の爪部材11とグリップ部材12に対応した視点での断面図となっている。
図3の左上の図および、
図3左下の図(X-X断面図)において、把持方向は図の左右方向となっており、
図3右上の図(Y-Y断面図)において、把持方向は紙面奥行き方向となっている。
【0020】
爪部材11は、駆動部19により与えられる爪基部18の開閉運動が、グリップ部材12に良く伝わるように、金属やプラスチック等、グリップ部材12に比べ硬質な材料で形成されている。必須ではないが、グリッパ10による把持が行われる際に、爪部材11と把持対象物99の間にグリップ部材12が挟まれるようになって、爪部材11が、グリップ部材12を介して把持対象物99を押すように、爪部材11が構成されていることが好ましい。
【0021】
グリップ部材12は、爪部材11に比べ柔軟であり、グリッパ10が把持対象物99を把持する際には、グリップ部材12が変形しながら、把持対象物99が把持される。
グリップ部材12は、弾性部材131を含む。必須ではないが、好ましくは、グリップ部材12は把持層121も含む。把持層121が設けられる場合には、グリップ部材12は、把持層121と弾性部材131が把持対象物(99)の側から順番に並ぶ構造に構成される。
【0022】
弾性部材131は、把持対象物99を把持した際に弾性変形可能な可撓性を有するよう、樹脂により形成されている。弾性部材131を構成する樹脂は、ゴムや熱可塑性エラストマーや、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などであってもよい。限定はされないが、典型的には、弾性部材131を構成する樹脂はゴム又はエラストマーであり、その硬度は、デュロA硬度で50度~85度程度であることが好ましい。また、必須ではないが、好ましくは本実施形態のように、弾性部材131を構成する樹脂の硬度が、把持層121を構成する樹脂の硬度よりも高くされる。
【0023】
弾性部材131は板状である。弾性部材131は、平板状の基部132と、中空部を有する複数の中空突起133,133を有する。中空突起133,133は、所定の間隔を隔てて散在するように基部132上に突出形成されている。本実施形態では、直交する格子状に、中空突起133,133が設けられている。
必須ではないが、本実施形態では、基部132が爪部材11側に位置し、突出する中空突起133の先端側(一端)131aが把持対象物(99)側に位置するよう、弾性部材131が爪部材11に取り付けられている。
【0024】
基部132に複数の中空突起133,133が立設された弾性部材131の斜視図を
図4に示す。また、弾性部材131の中空突起133の断面構造を
図5に示す。
中空突起133は、第1立上り部134と、板状の環状部135と、第2立上り部136とを有している。
【0025】
第1立上り部134は、平板状の基部132から基部の厚み方向に立ち上がるように筒状に立設されている。筒状の第1立上り部134の内部空間が、中空突起133の中空部となっている。第1立上り部134は、典型的には、円筒状に設けられる。第1立上り部134は、角筒状であってもよい。第1立上り部134は、テーパ状に設けられていてもよい。
【0026】
板状の環状部135は、第1立上り部134の先端(134a)から縮径するよう設けられている。本実施形態では、環状部135は、基部132と略平行な平板状に設けられている。環状部135は、基部132に対する傾きがプラスマイナス30度以内となるような円錐面状に設けられていてもよい。
【0027】
第2立上り部136は、環状部135の内周側135aから、基部132から遠ざかり把持対象物(99)に向かう方向に立設されている。第2立上り部136は、中空の筒状であってもよいし、中実の柱状や半球状であってもよい。本実施形態では、第2立上り部136は、中空円筒状に設けられており、第2立上り部の先端部(中空突起133の先端部131a)は平板状に閉じられている。なお、第2立上り部136は、角筒状であってもよく、先端部が解放されていてもよい。また、先端部は平坦であってもよいが、球面状等であってもよい。
【0028】
筒状の第1立上り部134の内径D1が、第2立上り部136の外径D2よりも大きくされている。把持対象物を把持する際には、中空突起が弾性部材131の厚み方向に圧縮されることになるが、その際に、筒状の第1立上り部134の内側に第2立上り部136の一部が入り込むように、中空突起133は、階段状の中空突起とされている。
【0029】
なお、必須ではないが、本実施形態においては、弾性部材131は、基部132と中空突起133が連続した1枚のシート状に一体成型されて構成されている。すなわち、中空突起133が設けられた部分には、基部132に穴が開けられていて、かかる穴により、中空突起133の中空部と外部との間で空気の通流が可能である。このような形態の弾性部材131は、射出成型や真空成形、プレス成型などにより成型できる。
【0030】
必須ではないが、本実施形態のように、グリップ部材12は、把持層121を有していてもよい。把持層121は、把持対象物と接触するように設けられた層である。また、把持層121の外表面を、以後、把持面12Sと呼ぶ。
把持層121は、平板状に形成された層である。好ましくは、把持層121は、JIS-K6253に準拠するデュロA硬度で30~80HDAの樹脂により構成される。把持層121が樹脂により構成される場合には、把持層121を構成する樹脂は、シリコーンゴムやアクリロニトリルブタジエンゴムや、ウレタンゴム等のゴムや熱硬化性樹脂であってもよく、オレフィン系熱可塑性エラストマーやスチレン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーであってもよく、軟質塩化ビニル樹脂や酢酸ビニル樹脂(EVA樹脂)などの熱可塑性樹脂であってもよい。これら樹脂には、必要に応じ、各種添加剤やフィラー等が配合されていてもよい。
【0031】
把持層121を構成する材料は樹脂に限定されない。また、把持層121を構成する材料にやや硬質な材料が含まれていても、把持層121の厚みを薄く、例えば0.3~1.5mmとすれば、把持層121を把持方向に柔軟に変形可能にできる。把持層を構成する他の材料や素材の例としては、例えば布材に樹脂を塗布もしくは含浸させた材料(例えば、人工皮革素材やターポリン材等)や、布(織布や不織布)や紙や樹脂シート等を積層した積層材料などが例示できる。もちろん、把持層121は単層で構成されていてもよい。
【0032】
また、必須ではないが、本実施形態では、弾性部材131は、中空突起の先端131aが把持層121に当接するように設けられる。必須ではないが、弾性部材131が、把持層121に対し、接着されていてもよい。また、弾性部材131が、把持層121に対し、粘着、溶着もしくは一体成型されていてもよい。
【0033】
弾性部材131が把持層121の背後に、把持層121に当接しつつ配置されることにより、弾性部材131の中空突起の先端131aと把持層121が接触する部位と、弾性部材131と把持層121が接触しない部位とが、把持方向に沿って見て海島状に分布することになる。把持層121は把持方向に柔軟に変形しうるが、弾性部材131と接触する部位では、把持層121は弾性部材131により支持されて、把持方向の変形が制限される。かかる海島構造と把持層の組み合わせは、柔軟性と保持力を高めることに貢献する。
【0034】
また、必須ではないが、好ましくは、本実施形態のように、グリップ部材12は、外皮部材120を含むように構成される。本実施形態では、外皮部材120は、その一部が把持層121となるように構成された中空構造の部材である。そして、弾性部材131が、外皮部材120の内側(中空構造の中空部)に配置されることが好ましい。
【0035】
また、必須ではないが、好ましくは本実施形態のように、グリップ部材12には、把持対象物99を把持した際に外皮部材120内部の空気が外皮部材の外に抜ける通気口124が設けられている。通気口124が設けられることにより、把持対象物を把持する際のグリップ部材12の柔軟な変形が促される。
本実施形態においては、中空箱状に形成された外皮部材120の一側面が取り除かれたようになっており、その部分が通気口124となっている。通気口の具体的形態は他の形態であってもよい。
【0036】
必須ではないが、本実施形態におけるグリップ部材12の外皮部材120は、以下の形態を有していてもよい。外皮部材120は、把持層121となる平板状の壁(以下「把持壁」とも記載する)と、側壁122,123を有するような、箱状の中空形状に一体成型されている。
ここで、側壁122,123とは、把持動作の開閉方向(把持方向)に沿って延在する壁部のことであり、かつ、側壁122,123は、把持壁(121)に対し把持対象物99と反対方向に延在している。把持方向に沿って延在する側壁122,123は、好ましくは、平板状もしくは円筒状に設けられる。
【0037】
平板状の把持層121は、完全な平板である必要はなく、やや膨らんだりへこんだりした湾曲面や球面の把持層であっても、おおむね平らであれば、平板状の把持層に含まれる。
また、把持層121が把持対象物99と接触する把持面12Sには、摩擦力や表面の粘着性を調節するために、突起、穴、凸条や凹溝、チェッカリング、ドットパターンや、梨地、しわ、シボ、などの地模様が設けられていてもよい。把持層121の把持面12S側が樹脂により構成される場合には、樹脂にシリカ粒やゴム粒などの粒状体を練りこんで、当該粒状体が把持面12Sに露出するようにしてもよい。あるいは、把持面12Sには、シリコーンゴムやEVA樹脂、不織布、樹脂フィルム(ポリイミドフィルム、PETフィルム等)などの、把持壁とは異なる材料で構成される表面層が設けられていてもよい。
【0038】
グリップ部材12と爪部材11の一体化(取り付け)は、特に限定されない。本実施形態では、外皮部材120に、袋状の穴を設けた取り付け部125を設けておき、取り付け部125の穴に爪部材11を挿入して、グリップ部材12と爪部材11の一体化が行われる。脱落防止等の必要に応じて、外皮部材120と爪部材11の間をねじ止めしたり、両者を接着剤や粘着剤、粘着テープなどで固定したりしてもよい。あるいは、爪部材11に、弾性部材131、把持層121を、接着剤等により順次一体化して、グリップ部材12を構成しつつ爪部材11に一体化してもよい。
【0039】
上記グリッパ10を構成するための部材等の製造方法について説明する。
駆動部19や爪基部18、爪部材11等については、従来公知の産業用ロボットの部材と同様に製造できる。グリップ部材12の把持層121(外皮部材120)については、ゴム材料や熱可塑性エラストマー材料の射出成型や注型成形等により製造することができる。また、グリップ部材12の弾性部材131については、ゴム材料や熱可塑性エラストマー材料を射出成型したり、ゴム材料や熱可塑性エラストマー材料のシート材をプレス加工したりして製造できる。得られた弾性部材131を外皮部材120の内側に押し込んでこれらを互いに外れないように一体化すれば、上記グリップ部材12が得られる。
【0040】
上記第1実施形態のグリッパ10の作用効果について説明する。
上記グリッパ10によれば、把持対象物99を把持する際に、弾性部材131の中空突起133,133が特定の形態に変形して把持対象物99を把持するので、把持対象物を柔軟に把持しながら、かつ、保持力が高められる。そして、把持対象物を柔軟に把持できれば、多様な形状の把持対象物を多様な姿勢で把持できるようになり、把持操作のロバスト性が高められる。
【0041】
ここで、把持対象物99を把持する際の保持力とは、把持方向に対し直交する方向(例えば
図2における上下方向)に把持対象物を動かそうとする際に、それに抗しうる力の大きさのことである。保持力が小さいと、
図1や
図2のようなグリッパの姿勢で把持対象物99を鉛直方向上方に持ち上げようとしても、把持対象物が落ちやすい。
【0042】
特許文献1にあるような従来のクッション材(例えばウレタンスポンジ)82,82を爪部材81,81の先端に備えるグリッパを
図12に示すが、こうした従来技術では、保持力がもっぱら、クッション材82と把持対象物の間の摩擦力に依存していたため、クッション材82が柔軟であるとクッション材が把持方向と直交する方向に変形して保持力が低下しやすく、把持対象物99が滑って、簡単に抜け落ちやすい。すなわち、従来公知のクッション材では、クッション材の柔軟さとグリッパの保持力を共に向上させることはできなかった。
【0043】
図6に、把持対象物を把持する前後の、弾性部材131や把持層121の形状変化を模式的に示す。
図6(a)が把持前の状態であり、
図6(b)が把持後の状態である。
上記第1実施形態のグリッパ10においては、グリップ部材12は、中空部を有する複数の中空突起133、133を有する板状の弾性部材131を有しており、中空突起133,133は、所定の間隔を隔てて散在するように基部132上に突出形成されており、中空突起133は、中空筒状の第1立上り部134と、第1立上り部の先端から縮径するよう設けられた板状の環状部135と、基部から遠ざかる方向に環状部の内周側から立設された第2立上り部136と、を有しており、さらに、中空突起133において、筒状の第1立上り部134の内径D1が、第2立上り部136の外径D2よりも大きく(すなわちD1>D2)されていて、把持対象物を把持する際に、中空突起133が圧縮されて、第1立上り部134の内側に第2立上り部136の一部が入り込むような、階段状の中空突起とされている。
【0044】
係る構成により、把持対象物を把持する際には、環状部135が柱状部材133の把持方向の変形を促すように変形し、
図6(b)に示すように、第2立上り部136が、その下部から、第1立上り部134の内側の中空部に入り込むように、中空突起133が圧縮変形する。したがって、中空突起133は、把持方向(
図6の上下方向)に柔軟なものとなり、把持対象物の動きに柔軟に追従できる。
【0045】
また、
図6(b)において、把持対象物が把持された状態では、把持対象物99の突出した部分が、所定の間隔を隔てて設けられた中空突起133,133の間に、すなわち海島構造の海の部分に、入り込むようになって、把持対象物99がグリッパ10に把持されるが、このような状態となると、把持対象物が
図6の横方向に抜けようとしても、中空突起133が把持対象物に引っかかるようになって、保持力が高められる。
そして、中空突起133において、筒状の第1立上り部134の内径D1が、第2立上り部36の外径D2よりも大きくされていて、把持対象物を把持する際に、第2立上り部136が、第1立上り部134の内側の中空部に入り込むように、中空突起133が圧縮変形できるので、第2立上り部136が、第1立上り部134によって、
図6の横方向に支持されることになって、柱状部材133の先端131aの剛性(
図6における横方向の剛性)が高められる。これにより、
図6(b)の把持状態から、把持対象物が抜ける方向に力が働いても、柱状部材が横倒しになって把持対象物が抜け出してしまうことが、より確実に抑制される。すなわち、保持力がより高められる。
【0046】
発明者らは、上記第1実施形態のグリッパに対し保持力の比較試験を行った。
把持方向のストロークに対する把持力が同等に生ずるように、すなわち、把持方向の柔軟性が同等となるように、上記第1実施形態のグリッパに相当する実施例サンプルと、比較例サンプルを準備した。なお、比較例サンプルは、外皮部材や爪部材は実施例サンプルと同等であり、外皮部材の中にゲル材料からなる平板状の弾性部材を入れたものとした。
80Nの把持力で球状の把持対象物を把持した状態で、把持対象物をグリッパから抜き出す方向に変位させて、抜け出しを阻止する保持力の測定を行ったところ、実施例サンプルでは94Nの保持力となり、比較例サンプルでは48Nの保持力であった。上記実施形態のグリッパ10は、柔軟でありながら高い保持力を有している。
【0047】
以上のように、上記第1実施形態のグリッパによれば、把持対象物を柔軟に把持しながら、かつ、保持力が高められる。なお、上記実施形態の説明では、弾性部材131と把持対象物(99)の間に把持層121が配される例を示したが、上記効果は、
図9に示したような、把持層がない実施形態であっても生ずる効果である。
【0048】
また、さらに、上記第1実施形態のグリッパ10のように、把持層121を有する場合には、
図6(b)に示されるように、把持層121が把持対象物(99)の表面に密着するように変形するため、把持層121と把持対象物99の間に十分大きな摩擦力を発生させることができて、保持力が特に高められる。
【0049】
保持力をより高める観点からは、把持層121は、JIS-K6253に準拠するデュロA硬度で30~80HDAの樹脂製であり、かつ、弾性部材が樹脂製であり、弾性部材を構成する樹脂の硬度が、把持層を構成する樹脂の硬度および支持体を構成する樹脂の硬度よりも高いことが好ましい。このようにされていると、グリップ部材12がより柔軟なものとなるとともに、弾性部材131が当接する部分が把持層121を裏側からしっかりと支えることになり、把持層121がより把持対象物99に引っかかりやすくなって、より保持力が高められるからである。
【0050】
また、必須ではないが、上記第1実施形態のグリッパ10のように、また、
図9(a)に示したように、弾性部材131の基部132が爪部材11の側となるように、弾性部材131が配置されていると、保持力が特に高められる。このような形態であると、所定の間隔で散在する中空突起133,133の間に、把持対象物の突出した部分がはまり込みやすくなるからである。
なお、基部132が柔軟であれば、
図9(b)に示したように、弾性部材131の基部132が把持対象物(99)の側となるように、弾性部材131が配置されていても、保持力は十分に高められる。
【0051】
また、弾性部材131を把持層121と簡単に一体化させるとの観点からは、本実施形態のように、グリップ部材12は、外皮部材120を含むように構成され、外皮部材120の一部が前記把持層121となるように、外皮部材120は中空構造に構成され、弾性部材131が、外皮部材120の内側(中空部)に配置されていることが好ましい。
【0052】
また、保持力をより高める観点からは、本実施形態のように、さらに、把持動作の開閉方向に沿って見て、少なくとも、把持対象物99がグリップ部材12に接触する領域を挟むように、弾性部材の中空突起133,133が対をなして設けられることが好ましい。このように中空突起133,133が対をなして設けられると、中空突起133,133が把持対象物99を挟み込むように変形しながら、把持対象物99を支持するようになるため、特に保持力が高められる。
【0053】
上記第1実施形態のグリッパ10にかかる発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分については同じ番号を付して説明し、その詳細な説明を省略する。また、これら実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施できる。
【0054】
上記実施形態における弾性部材131の具体的構成は変更可能である。上記第1実施形態の説明では、中空突起133,133が、直交格子の交点上に配置されるような弾性部材131の形態を例示したが、把持方向に沿って見てこれら中空突起133,133が配置される平面パターンは、三角形や六角形を仮想的に敷き詰めた際の各頂点に中空突起133,133が位置するような平面パターンであってもよい。
図7に、弾性部材の変形例として、把持方向に沿って見た際の中空突起133,133の変形例と配置の平面パターンを例示する。
図7(a)では、段付き円筒状の中空突起133,133が、正三角形を敷き詰めたような平面パターンで配置された例を示す。また、
図7(b)では、段付き四角筒状の中空突起133’,133’が、正六角形を敷き詰めたような平面パターンで配置された例を示す。また、中空突起133,133は、基部上にランダムに散在していてもよい。
【0055】
中空突起133,133は、把持方向に沿う方向に延在して突出するよう設けられるが、中空突起133,133の延在方向が、把持方向や把持面12Sの法線に対し傾くように設けられていてもよい。中空突起133,133が傾いて設けられる場合には、爪部材11から把持層121に向かうにしたがって、爪部材11の先端部11tから爪部材の根元部分に向かうような方向に傾いて設けられることが好ましい。
【0056】
図8には、中空突起の他の変形例を示す。
図8では、弾性部材中の中空突起の断面を示している。図の上下方向が把持方向である。
図8(a)の実施形態の中空突起133Xのように、中空突起は、第2立上り部に相当する部分136Xが、中実であってもよい。このような中空突起133Xであっても、筒状の第1立上り部134Xの内径が、第2立上り部136Xの外径よりも大きくされていて、把持対象物を把持する際に、中空突起が圧縮されて、第1立上り部134Xの内側に第2立上り部136Xの一部が入り込むような、階段状の中空突起とされていれば、同様に、把持対象物を柔軟に把持しながら、かつ、把持方向に直交する方向の保持力を高めることができるとの効果が生ずる。
【0057】
また、
図8(b)の実施形態の中空突起133Yのように、中空突起は、さらに、第2立上り部136Yの先端部から、より小径な第3立上り部137Yが立設されたような、3階建ての中空突起とされていてもよく、このような中空突起133Yであっても、筒状の第1立上り部134Yの内径が、第2立上り部136Yの外径よりも大きくされていて、把持対象物を把持する際に、中空突起が圧縮されて、第1立上り部の内側に第2立上り部の一部が入り込むような、階段状の中空突起とされていれば、同様に、把持対象物を柔軟に把持しながら、かつ、把持方向に直交する方向の保持力を高めることができるとの効果が生ずる。
この場合、第2立上り部136Yも中空とされていて、中空筒状の第2立上り部136Yの内径が、第3立上り部137Yの外径よりも大きくされていて、把持対象物を把持する際に、中空突起が圧縮されて、第2立上り部の内側に第3立上り部の一部が入り込むようにされていると、柔軟性がさらに向上して好ましい。
【0058】
また、
図8(c)の実施形態の中空突起133Zのように、中空突起は、さらに、第2立上り部136Zと環状部135Zが接続する部分から、第1立上り部134Zの中空部に向かって突出するように、突出部137が設けられることが好ましい。突出部137を設けることにより、柱状部材の柔軟性を高めつつ、把持動作の際には突出部137が爪部材11の側に当接して、把持力を十分に立ち上げることができ、保持力が高められる。
【0059】
図9には、上記第1実施形態のグリッパ10において、把持層を備えない場合の実施形態を示す。
図9(a)の例では、弾性部材131が爪部材11に貼り付けられて、グリッパが構成されている。また、
図9(b)の例では、基部132の側が把持対象物(99)の側に面するような向きで、弾性部材131が爪部材11に貼り付けられて、グリッパが構成されている。
図9(a)、(b)いずれの形態においても、把持対象物を柔軟に把持しながら、かつ、把持方向に直交する方向の保持力を高めることができるとの効果が生ずる。
【0060】
図10には、第2実施形態のグリッパに用いられる弾性部材231の正面図および断面図を示す。この弾性部材231は、上記第1実施形態の弾性部材131と同様な形態でグリッパを構成できる。
図10に示した弾性部材231は、平板状の基部232から、所定の平面パターンで中空部を有する中空突起233,233が突出形成されていて、中空突起233,233が、同様に階段状の中空突起とされている点は、第1実施形態の弾性部材131と同様である。
図10に示した弾性部材231では、さらに、互いに隣接する中空突起233,233の間には、中空突起の中空部237,237を互いに連通する連通路238,238が設けられている。特に、本実施形態においては、中空円筒状の第1立上り部234の側壁同士の間を、トンネル状につなぐように、連通路が形成されている。
【0061】
係る構成により、本実施形態の弾性部材231では、中空突起233,233の中空部が互いに連通して、空気が互いに通流可能とされている。連通路がないと、中空部を有する中空突起が把持動作の際に圧縮されると、中空突起内部の空気が抜け出した後、把持を解放しても、吸盤のようになって、圧縮された中空突起の根元の基部が爪部材側に張り付いてしまい、中空突起の収縮状態が解放されないということが起こりやすい。そのような状態となると、連続して把持と開放を繰り返す際にグリップ部材が固くなってしまい、把持動作が不安定になってしまうおそれがある。一方、本実施形態の弾性部材231を用いれば、中空部の間に連通路238,238が設けられて、互いに空気が通流するようにされているので、中空突起の内部空間の間で空気をやりくりすることができ、把持を解放した際に吸盤のように張り付いてしまうことが抑制される。したがって、このような弾性部材231を備えさせれば、弾性部材の復元性が特に良くなり、繰り返し把持する際のグリップ部材の柔軟性が特に優れたものとなる。
また、このような連通路があると、中空突起233の中空部に空気が閉じ込められて空気バネのように作用してしまうことが抑制される。そのため、グリップ材をより柔軟なものとできる。
【0062】
弾性部材の復元性をより良くするとの観点からは、連通路238,238を、弾性部材231の周縁部231Eまで達するように設けて、外気と連通可能として、中空突起の内部空間が互いに接続され、さらに外気とも連通可能とされることが特に好ましい。
【0063】
また、連通路238,238を設ける場合には、隣接する中空突起233,233の間のより多くの位置に、特に好ましくはすべての位置に、連通路をトンネル状に設けることが好ましい。連通路を画定するトンネル状の壁は、筒状の第1立上り部234,234を横方向に支持する作用を有するため、連通路238,238が多く設けられるほど、第1立上り部234,234が横倒れしにくくなり、その結果、グリップ部材の柔軟性を高めながら保持力をより高めることが可能となる。
【0064】
また、弾性部材の復元性をより良くするとの観点からは、
図8(b)に示した断面の中空突起133Yのように、中空突起の外部と中空部138とを連通する貫通穴139,139が、中空突起に設けられていてもよい。このような構成であっても、把持を解放した際に吸盤のように張り付いてしまうことが抑制され、弾性部材の復元性が特に良くなり、繰り返し把持する際のグリップ部材の柔軟性が特に優れたものとなる。
また、このような貫通穴があると、中空突起133Yの中空部に空気が閉じ込められて空気バネのように作用してしまうことが抑制される。そのため、グリップ材をより柔軟なものとできる。
【0065】
図11には、第3実施形態のグリッパに用いられる弾性部材331の正面図、断面図および斜視図を示す。この弾性部材331は、上記第1実施形態の弾性部材131と同様な形態でグリッパ10を構成できる。
図11に示した弾性部材331は、平板状の基部332と、中空部を有する複数の中空凸条333を有する。中空凸条333は、所定の間隔を隔てて並ぶように、基部332上に突出形成されている。中空凸条333は、直線状であってもよく、折れ線状であってもよい。本実施形態では、曲線状、特に円弧状である。なお、中空凸条333,333の間の間隔は一定であってもよいが、変化していてもよく、凸条の間ごとに異なる間隔であってもよい。
【0066】
中空凸条333は、基部332から立設された中空の第1凸条部334と、第1凸条部334の先端から凸条の中心側に向かうよう設けられた板状の段差部335と、基部332から遠ざかる方向に、段差部335の凸条中心側から立設された第2凸条部336と、を有している。
そして、中空凸条333では、筒状の第1凸条部334の内側の幅D3が、第2凸条部336の外側の幅D4よりも大きくされていて、把持対象物を把持する際に、中空凸条333が圧縮されて、第1凸条部334の内側に第2凸条部336の一部が入り込むように、階段状の中空凸条とされている。
【0067】
かかる構成を弾性部材331が備えることにより、第3実施形態のグリッパも、第1実施形態と同様に、グリップ部材の柔軟性を高めながら保持力を高めることが可能となる。
【0068】
本実施形態のように、中空凸条が円弧状に設けられる場合には、把持動作の際に円弧が鉛直方向下側に向かって凸となるように、グリッパに取り付けられることが好ましい。このようにすると、保持力が特に高くなる。
【0069】
また、必須ではないが、本実施形態においても、互いに隣接する中空凸条の中空部を連通させる連通路338,338が設けられている。連通路が設けられることにより、弾性部材331がより柔軟となるとともに、把持が解放された際の中空凸条333の復元性が良くなる。
【0070】
好ましくは、本実施形態の弾性部材331も、把持層121と併用される。また、好ましくは、本実施形態の弾性部材331も、基部332が爪部材11の側に位置し、中空凸条333が把持対象物に向かう方向に突出するように、爪部材11に取り付けられる。
【0071】
上記実施形態の説明では、主に爪部材が硬質な部材である形態を中心に説明したが、把持の際に、爪部材と把持対象物の間に柔軟なグリップ部材を介して、把持する力を把持対象物に伝えられるものである限りにおいて、爪部材は特に限定されない。例えば、爪部材は金属製や硬質プラスチック製などの剛性の高い部材であってもよいが、爪部材はゴム製や軟質プラスチック製であってもよい。また、爪部材を中空として、内部に気体や液体を入れて爪部材の剛性を可変にしてもよい。また、爪部材は、可動部を有し、屈曲等の能動的な変形が可能となるように構成されたものであってもよい。
【0072】
グリッパにより把持されるべき把持対象物の形状や性質は、把持操作が可能なものであれば、特に限定されない。上記実施形態のグリッパは柔軟性に富んでいるため、直方体状や円筒、多角錘、多面体、球体、楕円体など、多彩な形状の把持対象物を、多様な姿勢で把持することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
グリッパはロボットアームの先端に取り付けられて、例えば搬送作業に使用でき、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0074】
A ロボットアーム
10 グリッパ
11 爪部材
12 グリップ部材
120 外皮部材
121 把持層
131 弾性部材
132 基部
133 中空突起
134 第1立上り部
135 環状部
136 第2立上り部
99 把持対象物