(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009380
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】シールド導電路
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6592 20110101AFI20230113BHJP
H01R 13/655 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
H01R13/6592
H01R13/655
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112601
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜田 和明
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA02
5E021FA08
5E021FA14
5E021FB07
5E021FC40
5E021LA09
5E021LA15
5E021LA21
(57)【要約】
【課題】小径化を図る。
【解決手段】シールド導電路Aは、絶縁被覆12を包囲するシールド層13と、シールド層13を包囲するシース14とを有するシールド電線10と、シールド層13のうちシース14の前方へ延出した露出部を包囲し、絶縁被覆12の外周面にかしめ付けられたスリーブ18とを備え、シールド端子20の外導体23に形成されたオープンバレル状の圧着部25は、スリーブ18と、絶縁被覆12のうちスリーブ18よりも後方の領域とを包囲した状態でスリーブ18に圧着され、圧着部25のうち絶縁被覆12を覆う領域には、内周側係止部37と外周側係止部33が形成され、内周側係止部37は、圧着部25のうちスリーブ18を包囲する領域よりも径方向内側に位置し、外周側係止部33は、内周側係止部37の外周面の凹部31に収容された状態で内周側係止部37に係止されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線を包囲する絶縁被覆と、前記絶縁被覆を包囲するシールド層と、前記シールド層を包囲するシースとを有するシールド電線と、
前記シールド層のうち前記シースの前方へ延出した露出部を包囲し、前記絶縁被覆の外周面にかしめ付けられたスリーブと、
外導体を有するシールド端子とを備え、
前記外導体の後端部に形成されたオープンバレル状の圧着部は、前記スリーブと、前記絶縁被覆のうち前記スリーブよりも後方の領域とを包囲した状態で前記スリーブに圧着され、
前記圧着部のうち前記絶縁被覆を覆う領域には、内周側係止部と外周側係止部とが形成され、
前記内周側係止部は、前記圧着部のうち前記スリーブを包囲する領域よりも径方向内側に位置し、
前記外周側係止部は、前記内周側係止部の外周面の凹部に収容された状態で前記内周側係止部に係止されているシールド導電路。
【請求項2】
前記圧着部には、前記スリーブに対して後方から当接する位置、又は前記スリーブに対して後方から近接して対向する位置に配置された抜止部が形成されている請求項1に記載のシールド導電路。
【請求項3】
前記抜止部が、周方向において少なくとも半周以上に亘って連続して延びている請求項2に記載のシールド導電路。
【請求項4】
前記内周側係止部が前記抜止部に形成されている請求項2又は請求項3に記載のシールド導電路。
【請求項5】
前記凹部の深さ寸法は、前記圧着部の板厚と同じ寸法か、それよりも大きい寸法である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のシールド導電路。
【請求項6】
前記内周側係止部と前記外周側係止部のうち一方には、係止孔が形成され、
前記内周側係止部と前記外周側係止部のうち他方には、前記係止孔に係止される係止突部が形成されている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のシールド導電路。
【請求項7】
前記係止孔における前後方向の開口寸法が、前記係止突部の前後方向の寸法よりも大きく設定されている請求項6に記載のシールド導電路。
【請求項8】
前記係止孔における周方向の開口寸法が、前記係止突部の周方向の寸法よりも大きく設定されている請求項6又は請求項7に記載のシールド導電路。
【請求項9】
前記係止孔が前記内周側係止部に形成され、
前記係止突部が前記外周側係止部に形成されている請求項6から請求項8のいずれか1項に記載のシールド導電路。
【請求項10】
前記係止突部が、前記内周側係止部又は前記外周側係止部の一部を折り返し状に屈曲した形状である請求項6から請求項8のいずれか1項に記載のシールド導電路。
【請求項11】
前記係止突部が、前記内周側係止部又は前記外周側係止部の一部を板厚方向へ切り起こした形状である請求項6から請求項8のいずれか1項に記載のシールド導電路。
【請求項12】
前記係止突部は、前記内周側係止部又は前記外周側係止部を周方向の折り目に沿って曲げ加工した形状である請求項6から請求項8のいずれか1項に記載のシールド導電路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シールド導電路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外導体端子に形成したU字形のかしめ部を、シールド電線のシールド導体の外周に圧着する構造が開示されている。かしめ部の一方の端部には、折り返し状に屈曲した第一の鈎状片が形成され、かしめ部の他方の端部には、折り返し状に屈曲した第二の鈎状片が形成されている。かしめ部をシールド電線に圧着した状態では、第一の鈎状片と第二の鉤状片が係合することによって、かしめ部の拡開変形が防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のかしめ部は、折り返し状をなす第一の鉤状片と折り返し状をなす第二の鉤状片とが、径方向に4層に重なるように係合しているため、かしめ部による圧着部分が径方向に大型化するという問題がある。
【0005】
本開示のシールド導電路は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、小径化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のシールド導電路は、
芯線を包囲する絶縁被覆と、前記絶縁被覆を包囲するシールド層と、前記シールド層を包囲するシースとを有するシールド電線と、
前記シールド層のうち前記シースの前方へ延出した露出部を包囲し、前記絶縁被覆の外周面にかしめ付けられたスリーブと、
外導体を有するシールド端子とを備え、
前記外導体の後端部に形成されたオープンバレル状の圧着部は、前記スリーブと、前記絶縁被覆のうち前記スリーブよりも後方の領域とを包囲した状態で前記スリーブに圧着され、
前記圧着部のうち前記絶縁被覆を覆う領域には、内周側係止部と外周側係止部とが形成され、
前記内周側係止部は、前記圧着部のうち前記スリーブを包囲する領域よりも径方向内側に位置し、
前記外周側係止部は、前記内周側係止部の外周面の凹部に収容された状態で前記内周側係止部に係止されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、小径化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例1のシールド導電路の平面図である。
【
図4】
図4は、圧着前の圧着部の形態をあらわす斜視図である。
【
図6】
図6は、実施例2のシールド導電路におけるY-Y線相当断面図である。
【
図7】
図7は、実施例3のシールド導電路におけるY-Y線相当断面図である。
【
図8】
図8は、実施例4のシールド導電路におけるY-Y線相当断面図である。
【
図9】
図9は、実施例5のシールド導電路の部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示のシールド導電路は、
(1)芯線を包囲する絶縁被覆と、前記絶縁被覆を包囲するシールド層と、前記シールド層を包囲するシースとを有するシールド電線と、前記シールド層のうち前記シースの前方へ延出した露出部を包囲し、前記絶縁被覆の外周面にかしめ付けられたスリーブと、外導体を有するシールド端子とを備え、前記外導体の後端部に形成されたオープンバレル状の圧着部は、前記スリーブと、前記絶縁被覆のうち前記スリーブよりも後方の領域とを包囲した状態で前記スリーブに圧着され、前記圧着部のうち前記絶縁被覆を覆う領域には、内周側係止部と外周側係止部とが形成され、前記内周側係止部は、前記圧着部のうち前記スリーブを包囲する領域よりも径方向内側に位置し、前記外周側係止部は、前記内周側係止部の外周面の凹部に収容された状態で前記内周側係止部に係止されている。本開示のシールド導電路は、内周側係止部が、圧着部のうちスリーブを包囲する領域よりも径方向内側に位置し、外周側係止部が、内周側係止部の外周の凹部に収容されているので、圧着部に内周側係止部と凹部を形成しない場合に比べると、小径化を図ることができる。
【0010】
(2)前記圧着部には、前記スリーブに対して後方から当接する位置、又は前記スリーブに対して後方から近接して対向する位置に配置された抜止部が形成されていることが好ましい。この構成によれば、シールド電線に対して後方への引張り荷重が作用したときに、スリーブの後端が抜止部に係止することによって、シールド電線がシールド端子に対して後方へ相対変位することを防止できる。
【0011】
(3)(2)において、前記抜止部が、周方向において少なくとも半周以上に亘って連続して延びていることが好ましい。この構成によれば、シールド電線に対して後方への引張り荷重が作用したときに、シールド電線がシールド端子に対して後方へ相対変位することを、確実に防止することができる。
【0012】
(4)(2)又は(3)において、前記内周側係止部が前記抜止部に形成されていることが好ましい。この構成によれば、内周側係止部を抜止部とは別の部位に形成する場合に比べると、圧着部の形状を簡素化することができる。
【0013】
(5)前記凹部の深さ寸法は、前記圧着部の板厚と同じ寸法か、それよりも大きい寸法であることが好ましい。この構成によれば、外周側係止部の全体が凹部内に収容されるので、圧着部の外周面から外周側係止部が部分的に突き出すことを回避できる。
【0014】
(6)前記内周側係止部と前記外周側係止部のうち一方には、係止孔が形成され、前記内周側係止部と前記外周側係止部のうち他方には、前記係止孔に係止される係止突部が形成されていることが好ましい。この構成によれば、係止突部が係止孔の孔縁に係止することによって、圧着部の開きが防止される。
【0015】
(7)(6)において、前記係止孔における前後方向の開口寸法が、前記係止突部の前後方向の寸法よりも大きく設定されていることが好ましい。この構成によれば、圧着部の寸法公差や圧着時の組付誤差が大きくても、係止孔と係止突部を確実に係止させることができる。
【0016】
(8)(6)又は(7)において、前記係止孔における周方向の開口寸法が、前記係止突部の周方向の寸法よりも大きく設定されていることが好ましい。この構成によれば、圧着部の寸法公差や圧着時の組付誤差が大きくても、係止孔と係止突部を確実に係止させることができる。
【0017】
(9)(6)~(8)において、前記係止孔が前記内周側係止部に形成され、前記係止突部が前記外周側係止部に形成されていることが好ましい。この構成によれば、係止孔の孔縁と係止突部との係止部分が、外周側係止部によって覆い隠されるので、係止孔と係止突部との係止部部に異物が干渉することを防止できる。
【0018】
(10)(6)~(8)において、前記係止突部が、前記内周側係止部又は前記外周側係止部の一部を折り返し状に屈曲した形状であることが好ましい。実施例1,2と対応する。この構成によれば、内周側係止部又は外周側係止部の先端縁部を直角に曲げた係止突部に比べると、係止突部の係止強度が高い。
【0019】
(11)(6)~(8)において、前記係止突部が、前記内周側係止部又は前記外周側係止部の一部を板厚方向へ切り起こした形状であることが好ましい。実施例3,4と対応する。この構成によれば、内周側係止部又は外周側係止部の外周縁から面一状に延出された部位を曲げ加工するものに比べると、材料コストを低減できる。
【0020】
(12)(6)~(8)において、前記係止突部は、前記内周側係止部又は前記外周側係止部を周方向の折り目に沿って曲げ加工した形状であることが好ましい。実施例5と対応する。この構成によれば、係止突部は、周方向の外力に対して高い剛性を有しているので、係止突部の変形に起因する圧着部の拡開変形を防止することができる。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示を具体化した実施例1を、
図1~
図5を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明において、前後の方向については、
図1,2,4における左方を前方と定義する。前後方向と軸線方向は同義で用いる。
【0022】
本実施例1のシールド導電路Aは、
図1,2に示すように、シールド電線10と、シールド電線10に外嵌されたスリーブ18と、シールド電線10の前端部にスリーブ18を用いて接続されたシールド端子20とを備えている。
【0023】
シールド電線10は、芯線11を絶縁被覆12で包囲し、絶縁被覆12の外周に筒状のシールド層13を重ね、シールド層13の外周をシース14で包囲した形態である。シールド層13は編組線によって構成されている。シールド電線10の前端部は、軸線方向を前後方向に向けて配置されている。
図2に示すように、シールド電線10の前端部においては、シース14が除去され、芯線11と絶縁被覆12とシールド層13がシース14に前方において露出している。シース14よりも前方においては、絶縁被覆12が除去され、芯線11が絶縁被覆12の前方において露出している。
【0024】
シールド層13の外周面のうち絶縁被覆12の前端よりも後方の領域には、スリーブ18が外嵌されている。スリーブ18は、シールド層13と絶縁被覆12を包囲している。シールド層13の前端部は、後方へ折り返されてスリーブ18の外周を覆っている。シールド層13のうちスリーブ18を包囲する領域を折返部15と定義する。折返部15の後端は、スリーブ18の後端よりも少し前方に位置する。スリーブ18の前端は絶縁被覆12の前端よりも少し後方に位置する。スリーブ18の後端は、シース14の前端よりも前方に位置する。シールド電線10のうち、シース14の前端とスリーブ18の後端との間の領域を、シース14及び折返部15よりも小径の機能部16と定義する。
【0025】
シールド端子20は、
図2に示すように、芯線11の前端部に接続した内導体21と、内導体21を収容した誘電体22と、誘電体22の外周を包囲した状態で誘電体22に取り付けられた外導体23とを備えて構成されている。外導体23は、外導体23の前端部を構成する筒状の本体部24と、本体部24の後端に連って外導体23の後端部を構成する円筒状の圧着部25とを備えて構成されている。外導体23の軸線方向は、シールド電線10の軸線方向と同軸状をなし、前後方向を向いている。本体部24内には、内導体21と誘電体22が収容されている。
【0026】
圧着部25は、外導体23をシールド電線10の外周面に固着するための部位である。圧着部25をシールド電線10に圧着することによって、シールド電線10の前端部とシールド端子20の後端部とが軸線方向への離脱を規制された状態に接続されるとともに、外導体23とシールド層13とが導通可能に接続される。
【0027】
図3,4に示すように、圧着部25は、本体部24の後端から後方へ延出した基板部26と、基板部26から周方向における一方向(
図3における反時計回り方向)へ延出した第1かしめ部27と、基板部26から周方向において第1かしめ部27とは反対方向(
図3における時計回り方向)へ延出した第2かしめ部28とを有している。
図4に示すように、圧着部25がシールド電線10に圧着されていない状態では、圧着部25は前端から後端に向かって次第に拡径するようなテーパ状をなす。第1かしめ部27の延出方向先端側の縁部である第1延出端縁27Eと、第2かしめ部28の延出方向先端側の縁部である第2延出端縁28Eとが周方向に離隔した状態となっている。
【0028】
圧着部25のうち、前後方向において機能部16を包囲する領域には、周方向に延びる抜止部29が形成されている。抜止部29は、圧着部25の一部を径方向内側へ叩き出した形状である。抜止部29の底板部30は、圧着部25のうちシース14と折返部15及びスリーブ18を包囲する領域よりも、内周側へ突出している。抜止部29の外周面には、周方向の凹部31が形成されている。周方向における抜止部29の形成領域は、第1延出端縁27Eよりも基板部26側の位置から、第2延出端縁28Eに至る範囲である。圧着部25を圧着した状態では、抜止部29が、周方向における大部分、即ち少なくとも半周以上の領域に亘って連続して延びている。
【0029】
第1かしめ部27には外周側係止部33が一体に形成されている。
図4に示すように、外周側係止部33は、第1延出端縁27Eから第2延出端縁28E側に向かって周方向に突出している。
図5に示すように、外周側係止部33は、抜止部29の延長線上に位置する。つまり、外周側係止部33は、第1かしめ部27のうち機能部16を包囲する領域に配置されている。外周側係止部33は、第1かしめ部27から面一状に突出した基部34と、基部34の突出端から径方向内側へ折り返した係止突部35とを有する。基部34の外周面と第1かしめ部27の外周面は滑らかに連続し、基部34の内周面と第1かしめ部27の内周面は滑らかに連続している。
【0030】
係止突部35は、基部34の内周面に重なるように配置され、基部34よりも径方向内側に位置する。係止突部35は、第1かしめ部27から径方向内側へ突出した突起状をなしている。係止突部35の軸線方向の幅寸法は、基部34の軸線方向の幅寸法と同じ寸法である。係止突部35は、周方向において基部34の突出方向とは反対方向に面する第1係止面36を有している。
【0031】
抜止部29のうち第2延出端縁28Eに近い領域は、内周側係止部37として機能する。内周側係止部37は、抜止部29を外周側から内周側へ貫通した方形の係止孔38を有している。係止孔38の開口縁に沿った内周面のうち、軸線方向と平行であり、かつ周方向において第2延出端縁28Eに近い側の内面は、第2係止面39として機能する。
【0032】
図1,4に示すように、第1延出端縁27Eのうち外周側係止部33よりも前方の領域には、第1変位規制部40が形成されている。第1変位規制部40は、第1延出端縁27Eを周方向に切り欠いた形状である。第2延出端縁28Eのうち抜止部29及び内周側係止部37よりも前方の領域には、第2変位規制部41が形成されている。第2変位規制部41は、第2延出端縁28Eから周方向に突出した形状である。
【0033】
シールド電線10に対する圧着部25の圧着は、圧着部25とシールド電線10の前端部をアプリケータ(図示省略)にセットして行う。圧着工程では、第1かしめ部27と第2かしめ部28が、縮径変形し、シールド電線10の外周に対して巻き付くようにかしめ付けられる。圧着部25をシールド電線10に圧着した状態では、圧着部25のうち外周側係止部33、抜止部29及び内周側係止部37よりも前方の領域が、スリーブ18及び折返部15の外周面にかしめ付けられ、折返部15がスリーブ18と圧着部25との間で径方向に挟まれる。これにより、折返部15とスリーブ18と圧着部25とが、一体化された状態で導通可能に固着される。
【0034】
圧着部25をシールド電線10に圧着した状態では、外周側係止部33と抜止部29と内周側係止部37が機能部16を包囲する。機能部16の外径寸法は、シース14の外径寸法及び折返部15の外径寸法よりも小径なので、抜止部29の底板部30の内周面が、機能部16の外周面に対して当接した状態、又は機能部16の外周面に対して接触した状態となる。外周側係止部33は、抜止部29の外周面の凹部31に収容され、内周側係止部37の外周面に重なった状態となる。外周側係止部33の係止突部35が内周側係止部37の係止孔38に収容され、第1係止面36と第2係止面39が周方向に当接して係止した状態となる。第1係止面36と第2係止面39の係止によって、圧着部25が周方向に開くように変形することが防止され、圧着部25がシールド電線10の外周に対して確実に固着される。
【0035】
抜止部29の前端は、スリーブ18の後端に対して後方から当接する位置、又はスリーブ18の後端に対して後方から近接して対向する位置に配置されている。これにより、シールド端子20に対してシールド電線10が後方へ引っ張られたときには、スリーブ18の後端が抜止部29の前端に引っ掛かる。したがって、シールド電線10とシールド端子20は、軸線方向に離脱することなく、固着した状態に確実に保持される。
【0036】
圧着部25のうち外周側係止部33及び内周側係止部37よりも前方では、第1変位規制部40と第2変位規制部41が嵌合することにより、第1かしめ部27と第2かしめ部28が軸線方向への相対変位を規制されている。外周側係止部33は抜止部29の凹部31に収容されるので、外周側係止部33の外周面は、圧着部25のうち抜止部29が形成されていない領域の外周面から径方向外方へ突出していない。
【0037】
本実施例1のシールド導電路Aは、シールド電線10と、スリーブ18と、シールド端子20とを備えている。シールド電線10は、芯線11を包囲する絶縁被覆12と、絶縁被覆12を包囲するシールド層13と、シールド層13を包囲するシース14とを有する。スリーブ18は、シールド層13のうちシース14の前方へ延出した露出部を包囲し、絶縁被覆12の外周面にかしめ付けられている。シールド端子20は、外導体23を有する。外導体23の後端部にはオープンバレル状の圧着部25が形成されている。圧着部25は、スリーブ18と、絶縁被覆12のうちスリーブ18よりも後方の領域とを包囲した状態でスリーブ18に圧着されている。
【0038】
圧着部25のうち絶縁被覆12を覆う領域には、内周側係止部37と外周側係止部33とが形成されている。内周側係止部37は、圧着部25のうちスリーブ18を包囲する領域よりも径方向内側に位置する。外周側係止部33は、内周側係止部37の外周面の凹部31に収容された状態で内周側係止部37に係止されている。したがって、圧着部25に内周側係止部37と凹部31を形成しない場合に比べると、本実施例1のシールド導電路Aは、小径化を図ることができる。凹部31の深さ寸法d(
図1参照)は、圧着部25の板厚t(
図2参照)と同じ寸法か、それよりも大きい寸法である。この構成によれば、外周側係止部33の全体が凹部31内に収容されるので、圧着部25の外周面から外周側係止部33が部分的に突き出すことを回避できる。
【0039】
圧着部25には、スリーブ18に対して後方から当接する位置、又はスリーブ18に対して後方から近接して対向する位置に配置された抜止部29が形成されている。シールド電線10に対して後方への引張り荷重が作用したときに、スリーブ18の後端が抜止部29に係止することによって、シールド電線10がシールド端子20に対して後方へ相対変位することを防止できる。抜止部29は、周方向において少なくとも半周以上に亘って連続して延びている。この構成によれば、シールド電線10に対して後方への引張り荷重が作用したときに、シールド電線10がシールド端子20に対して後方へ相対変位することを、確実に防止することができる。
【0040】
本実施例1のシールド導電路Aの内周側係止部37は、抜止部29に形成されている。内周側係止部37を抜止部29とは別の部位に形成する場合に比べると、本実施例1のシールド導電路Aは、圧着部25の形状を簡素化することができる。
【0041】
内周側係止部37には、係止孔38が形成され、外周側係止部33には、係止孔38に係止される係止突部35が形成されている。係止突部35が係止孔38の孔縁に係止することによって、圧着部25の開きが防止される。この構成によれば、係止孔38の孔縁と係止突部35との係止部分が、外周側係止部33によって覆い隠されるので、係止孔38と係止突部35との係止部部に異物が干渉することを防止できる。
図5に示すように、係止孔38における前後方向の開口寸法Waは、係止突部35の前後方向の寸法Wbよりも大きく設定されている。係止孔38における周方向の開口寸法Daは、係止突部35の周方向の寸法Dbよりも大きく設定されている。この構成によれば、圧着部25の寸法公差や圧着時の組付誤差が大きくても、係止孔38と係止突部35を確実に係止させることができる。
【0042】
本実施例1の係止突部35は、外周側係止部33の一部を折り返し状に屈曲した形状である。外周側係止部の先端縁部を直角に曲げた係止突部に比べると、本実施例1のシールド導電路Aは、係止突部35による係止強度が高い。
【0043】
[実施例2]
本開示を具体化した実施例2を、
図6を参照して説明する。本実施例2のシールド導電路Bは、外導体50の圧着部51を上記実施例1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0044】
本実施例2の圧着部51は、基板部26と、基板部26から周方向における一方向へ延出した第1かしめ部27と、基板部26から周方向において第1かしめ部27とは反対方向へ延出した第2かしめ部28とを有している。圧着部51がシールド電線10に圧着されていない状態では、圧着部51は前端から後端に向かって次第に拡径するようなテーパ状をなす。圧着部51のうち、前後方向においてシールド電線10の機能部16を包囲する領域には、実施例1と同様の周方向に延びる抜止部29が形成されている。
【0045】
第1かしめ部27には外周側係止部52が一体に形成されている。外周側係止部52は、第1かしめ部27の第1延出端縁(図示省略)から第2かしめ部28の第2延出端(図示省略)側に向かって周方向に突出している。外周側係止部52は、抜止部29の延長線上に位置する。つまり、外周側係止部52は、第1かしめ部27のうち機能部16を包囲する領域に配置されている。外周側係止部52の外周面と第1かしめ部27の外周面は滑らかに連続し、外周側係止部52の内周面と第1かしめ部27の内周面は滑らかに連続している。外周側係止部52は、外周側係止部52を外周側から内周側へ貫通した方形の係止孔53を有している。係止孔53の開口縁に沿った内周面のうち、軸線方向と平行であり、かつ第1延出端縁から遠い側の内面は、第1係止面54として機能する。
【0046】
抜止部29のうち第2延出端縁に近い領域は、内周側係止部55として機能する。内周側係止部55は、抜止部29の底板部30のうち第2延出端縁から径方向外側へ折り返した係止突部57とを有する。係止突部57は、底板部30の外周面に重なるように配置され、底板部30よりも径方向内側に位置する。係止突部57は、底板部30から径方向外側へ突出した突起状をなし、内周側係止部55の外周面の凹部31内に収容されている。係止突部57は、周方向に面する第2係止面58を有している。
【0047】
圧着部51をシールド電線10に圧着した状態では、外周側係止部52と抜止部29と内周側係止部55が機能部16を包囲する。機能部16の外径寸法は、シース(図示省略)の外径寸法及び折返部(図示省略)の外径寸法よりも小径なので、抜止部29の内周面が機能部16の外周面に対して当接した状態、又は機能部16の外周面に対して接触した状態となる。外周側係止部52は、抜止部29の外周面の凹部31に収容され、内周側係止部55の外周面に重なった状態となる。内周側係止部55の係止突部57が外周側係止部52の係止孔53に収容され、第1係止面54と第2係止面58が周方向に当接して係止した状態となる。第1係止面54と第2係止面58の係止によって、圧着部51が周方向に開くように変形することが防止され、圧着部51がシールド電線10の外周に対して確実に固着される。
【0048】
[実施例3]
本開示を具体化した実施例3を、
図7を参照して説明する。本実施例3のシールド導電路Cは、外導体60の圧着部61を構成する外周側係止部62を上記実施例1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施例2と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0049】
本実施例3の外周側係止部62は、第1かしめ部27の外周側係止部62の一部を径方向内周側へ切り起こした係止突部63を有している。係止突部63は、屈曲部64と突当部65とを有する。屈曲部64は、外周側係止部62の先端部側から基端部側に向かって周方向に突出している。屈曲部64は、外周側係止部62の先端部よりも径方向内側へ突出するように屈曲した形状である。突当部65は、屈曲部64の突出端から周方向に延出した形態である。外周側係止部62からの突当部65の径方向内側への突出寸法は、内周側係止部37の板厚と同じ寸法である。突当部65の延出端面は、周方向に対して直交する第1係止面66として機能する。
【0050】
圧着部61をシールド電線10に圧着した状態では、外周側係止部62が、抜止部29の凹部31内に収容され、内周側係止部37の外周に重ね合わされる。係止突部63の一部が内周側係止部37の係止孔38に入り込む。即ち、屈曲部64の一部と突当部65の全体が、係止孔38に収容される。第1係止面66が係止孔38の第2係止面39に対して周方向に当接し、第1係止面66と第2係止面39が係止した状態となる。この係止作用によって、圧着部61の拡開変形が防止され、シールド電線10に対して圧着部61の圧着状態が保持される。
【0051】
係止突部63は、外周側係止部62の一部を外周側係止部62の板厚方向へ切り起こした形状である。外周側係止部62の外周縁から面一状に延出された部位を曲げ加工するものに比べると、本実施例3のシールド導電路Cは、材料コストを低減できる。
【0052】
[実施例4]
本開示を具体化した実施例4を、
図8を参照して説明する。本実施例4のシールド導電路Dは、外導体70の圧着部71を構成する外周側係止部72を上記実施例1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0053】
本実施例4の外周側係止部72は、第1かしめ部27の一部を径方向内周側へ切り起こした係止突部73を有している。係止突部73は、外周側係止部72の先端部側から基端部側に向かって周方向に突出ている。外周側係止部72からの係止突部73の径方向内側への突出寸法は、内周側係止部37の板厚と同じ寸法である。
【0054】
圧着部71をシールド電線10に圧着した状態では、外周側係止部72が、抜止部29の凹部31内に収容され、内周側係止部37の外周に重ね合わされる。係止突部73の一部が内周側係止部37の係止孔38に収容され、係止突部73の突出端縁が、係止孔38の第2係止面39に対し、線接触状態で周方向に係止される。この係止作用によって、圧着部71の拡開変形が防止され、シールド電線10に対して圧着部71の圧着状態が保持される。
【0055】
係止突部73は、外周側係止部72の一部を外周側係止部72の板厚方向へ切り起こした形状である。この構成によれば、外周側係止部72の外周縁から面一状に延出された部位を曲げ加工するものに比べると、本実施例4のシールド導電路Dは、材料コストを低減できる。
【0056】
[実施例5]
本開示を具体化した実施例5を、
図9~
図10を参照して説明する。本実施例5のシールド導電路Eは、外導体80の圧着部81を構成する外周側係止部82を上記実施例1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0057】
本実施例5の外周側係止部82は、基部83と、前後一対の係止突部84とを有する。基部83は、第1延出端縁27Eから第1かしめ部27と面一状をして周方向に突出している。一対の係止突部84は、基部83の前縁部と後縁部を基部83と直角に曲げ加工したものである。基部83と係止突部84との境界線、つまり係止突部84の折り目85は、周方向に沿って延びている。係止突部84は、基部83及び第1かしめ部27の内周面よりも径方向内側へ突出した形態である。係止突部84の径方向の突出寸法は、第2かしめ部28及び内周側係止部37の板厚と同じ寸法である。係止突部84は、第1延出端縁27Eから周方向に離隔した位置、即ち、基部83の突出端側の領域に配置されている。係止突部84のうち第1延出端縁27E側に臨む面は、周方向と直交する第1係止面86として機能する。
【0058】
圧着部81をシールド電線10に圧着した状態では、外周側係止部82が、抜止部29の凹部31内に収容され、内周側係止部37の外周に重ね合わされる。前後一対の係止突部84が内周側係止部37の係止孔38に収容され、係止突部84の第1係止面86が、係止孔38の第2係止面39に対して周方向に係止される。この係止作用によって、圧着部81の拡開変形が防止され、シールド電線10に対して圧着部81の圧着状態が保持される。
【0059】
係止突部84は、外周側係止部82を周方向の折り目85に沿って曲げ加工した形状であるから、周方向の外力に対して高い剛性を有している。したがって、本実施例5のシールド導電路Eは、係止突部84の変形に起因する圧着部81の拡開変形を防止することができる。
【0060】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記のような実施形態も含まれることが意図される。
上記実施例1から5では、1つの抜止部が周方向に連続して延びているが、複数の抜止部を周方向に間隔を空けて配置し、周方向において外周側係止部に最も近い抜止部に内周側抜止部を形成してもよい。
上記実施例1~5では、抜止部が周方向における大部分(少なくとも半周以上の領域)に亘って延びているが、抜止部は、外周側係止部と係止するために必要最少の領域にみに形成してもよい。
上記実施例1~5では、内周側係止部を抜止部に形成したが、内周側係止部を抜止部とは別の部位に形成してもよい。
上記実施例1~5では、シールド層の前端部は、後方へ折り返されてスリーブの外周面を包囲する折返部となっているが、シールド層の前端部を折り返さない形態としてもよい。
上記実施例1~5では、圧着部がシースの外周面を包囲しているが、圧着部は、シースの外周面を包囲しないものであってもよい。
上記実施例1~5では、編組線によってシールド層を構成したが、シールド層は金属箔であってもよい。
実施例3~5において、係止突部を内周側係止部に形成し、係止孔を外周側係止部に形成してもよい。
【符号の説明】
【0061】
A…シールド導電路
B…シールド導電路
C…シールド導電路
D…シールド導電路
E…シールド導電路
Da…係止孔における周方向の開口寸法
Db…係止突部の周方向の寸法
Wa…係止孔における前後方向の開口寸法
Wb…係止突部の前後方向の寸法
d…凹部の深さ寸法
t…圧着部の板厚
10…シールド電線
11…芯線
12…絶縁被覆
13…シールド層
14…シース
15…折返部
16…機能部
18…スリーブ
20…シールド端子
21…内導体
22…誘電体
23…外導体
24…本体部
25…圧着部
26…基板部
27…第1かしめ部
27E:第1延出端縁
28…第2かしめ部
28E:第2延出端縁
29…抜止部
30…底板部
31…凹部
33…外周側係止部
34…基部
35…係止突部
36…第1係止面
37…内周側係止部
38…係止孔
39…第2係止面
40…第1変位規制部
41…第2変位規制部
50…外導体
51…圧着部
52…外周側係止部
53…係止孔
54…第1係止面
55…内周側係止部
57…係止突部
58…第2係止面
60…外導体
61…圧着部
62…外周側係止部
63…係止突部
64…屈曲部
65…突当部
66…第1係止面
70…外導体
71…圧着部
72…外周側係止部
73…係止突部
80…外導体
81…圧着部
82…外周側係止部
83…基部
84…係止突部
85…折り目
86…第1係止面