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  • 特開-浮体構造物 図1
  • 特開-浮体構造物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093811
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】浮体構造物
(51)【国際特許分類】
   B63B 15/00 20060101AFI20230628BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
B63B15/00 Z
B63B25/16 N
B63B25/16 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208866
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大橋 徹也
(72)【発明者】
【氏名】冨永 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 みどり
(72)【発明者】
【氏名】横山 元気
(72)【発明者】
【氏名】黒田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 翔
(57)【要約】
【課題】
設備を設置するための十分なスペースを確保可能な浮体構造物を提供することを目的としている。
【解決手段】
本開示の一態様に係る浮体構造物は、水上に浮かぶ本体と、前記本体の長手方向に所定の構造間距離をとって並ぶ3つ以上の構造体と、隣り合う構造体に挟まれた複数の構造間領域と、前記複数の構造間領域のうちの一部の構造間領域に位置する中央設備と、を備え、前記中央設備が位置する構造間領域に対応する構造間距離は、前記中央設備が位置していない構造間領域に対応する構造間距離よりも大きい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上に浮かぶ本体と、
前記本体の長手方向に所定の構造間距離をとって並ぶ3つ以上の構造体と、
隣り合う構造体に挟まれた複数の構造間領域と、
前記複数の構造間領域のうちの一部の構造間領域に位置する中央設備と、を備え、
前記中央設備が位置する構造間領域に対応する構造間距離は、前記中央設備が位置していない構造間領域に対応する構造間距離よりも大きい、浮体構造物。
【請求項2】
前記本体の長手方向に並ぶ3つ以上の液化ガスタンクをさらに備え、
前記3つ以上の構造体は、前記3つ以上の液化ガスタンクのうちの少なくとも1つを覆い、前記本体の長手方向に所定のカバー間距離をとって並ぶ3つ以上のタンクカバーであり、
前記複数の構造間領域は、隣り合うタンクカバーに挟まれた複数のカバー間領域であり、
前記中央設備は、前記複数のカバー間領域のうちの一部のカバー間領域に位置し、
前記中央設備が位置するカバー間領域に対応するカバー間距離は、前記中央設備が位置していないカバー間領域に対応するカバー間距離よりも大きい、請求項1に記載の浮体構造物。
【請求項3】
前記本体は上甲板を含み、
各タンクカバーは前記上甲板よりも上方に位置しており、
前記中央設備は前記上甲板上に位置している、請求項2に記載の浮体構造物。
【請求項4】
各液化ガスタンクは液化水素を貯蔵し、
前記中央設備は液化水素又は水素ガスを搬送する水素配管を含んでいる、請求項3に記載の浮体構造物。
【請求項5】
前記中央設備は、外部の荷役設備と接続するマニホールドを含む移送設備、又は、水素ガスを昇圧する貨物機器を含む貨物機器設備である、請求項4に記載の浮体構造物。
【請求項6】
前記中央設備が位置するカバー間領域に対応するカバー間距離の寸法は、前記中央設備が位置していないカバー間領域に対応するカバー間距離のうち最も小さいカバー間距離の寸法の3倍以上である、請求項2乃至5のうちいずれか一の項に記載の浮体構造物。
【請求項7】
前記3つ以上の構造体は、前記本体の長手方向に所定のタンク間距離をとって並ぶ3つ以上の液化ガスタンクであり、
前記複数の構造間領域は、隣り合う液化ガスタンクに挟まれた複数のタンク間領域であり、
前記中央設備は、前記複数のタンク間領域のうちの一部のタンク間領域に位置し、
前記中央設備が位置するタンク間領域に対応するタンク間距離は、前記中央設備が位置していないタンク間領域に対応するタンク間距離よりも大きい、請求項1に記載の浮体構造物。
【請求項8】
前記中央設備が位置するタンク間領域に対応するタンク間距離の寸法は、前記中央設備が位置していないタンク間領域に対応するタンク間距離のうち最も小さいタンク間距離の寸法の1.5倍以上である、請求項7に記載の浮体構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液化ガスタンクを備えた浮体構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
液化ガス運搬船などの浮体構造物では、複数の液化ガスタンクやタンクカバーなどの構造体が本体(船体)の長手方向に沿って配置されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6067804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような浮体構造物は、航行性能及び製造コストの観点から、全体の寸法は小さいことが望ましいと考えらえている。そのため、液化ガスタンクやタンクカバーなどの構造体の付近において設備を設置するためのスペースを確保することは容易ではない。
【0005】
そこで、本開示は、構造体付近に設備を設置するための十分なスペースを備えた浮体構造物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る浮体構造物は、水上に浮かぶ本体と、前記本体の長手方向に所定の構造間距離をとって並ぶ3つ以上の構造体と、隣り合う構造体に挟まれた複数の構造間領域と、前記複数の構造間領域のうちの一部の構造間領域に位置する中央設備と、を備え、前記中央設備が位置する構造間領域に対応する構造間距離は、前記中央設備が位置していない構造間領域に対応する構造間距離よりも大きい。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成によれば、構造体付近に設備を設置するための十分なスペースを備えた浮体構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、浮体構造物の概略側面図である。
図2図2は、浮体構造物の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る浮体構造物100について説明する。図1は浮体構造物100の概略側面図であり、図2は浮体構造物100の概略平面図である。図1に示すように、本実施形態に係る浮体構造物100は、本体11と、4つの液化ガスタンク21~24と、4つのタンクカバー31~34と、3つのカバー間領域41~43と、中央設備51と、を備えている。以下、これらの構成要素について順に説明する。
【0010】
<本体>
本実施形態に係る浮体構造物100は、液化ガスを運搬する液化ガス運搬船である。本体11は水上に浮かぶ部分であり、本実施形態では船体が本体11に相当する。なお、浮体構造物100は、液化ガス運搬船に限らず、浮体生産貯蔵積出設備(FPSO)、浮体LNG貯蔵再ガス化設備(FSRU)、浮体生産積出設備(FPO)、浮体貯蔵積出設備(FSO)などであってもよい。
【0011】
以下の説明における方向の概念は、浮体構造物100の乗船者が航行する方向(図1及び図2において紙面右方)を見たときの方向の概念と一致する。また、以下では、本体11の前後方向を「長手方向」と、本体11の左右方向を「幅方向」と称する。
【0012】
本体11の後方部分には、乗組員が居住するための居室などを配置した居住区12が位置している。また、居住区12の下方には、主機を収容する機関室13が位置している。ただし、居住区12及び機関室13の位置は上記のものに限定されず、また、浮体構造物100は居住区12及び機関室13を有していなくてもよい。さらに、本体11の長手方向中央部分及び前方部分には外部に露出する上甲板14が位置している。
【0013】
<液化ガスタンク>
本実施形態に係る浮体構造物100は、本体11の長手方向中央部分において、第1液化ガスタンク21、第2液化ガスタンク22、第3液化ガスタンク23、及び、第4液化ガスタンク24を備えており、これらの液化ガスタンク21~24は前方から上記の順で配置されている。つまり、各液化ガスタンク21~24は、本体11の長手方向に沿って一列に並んでいる。ただし、浮体構造物100が備える液化ガスタンクの数は4つに限定されない。本実施形態では、浮体構造物100が3つ以上の液化ガスタンクを備える場合を想定している。
【0014】
また、各液化ガスタンク21~24は球形又は楕円体形であり、上方部分が上甲板14よりも上方に位置している。なお、各液化ガスタンク21~24の形状及び位置は上記のものに限定されない。例えば、各液化ガスタンク21~24は、方形タンクであってもよい。
【0015】
また、各液化ガスタンク21~24は液化ガスを貯蔵している。具体的には、各液化ガスタンク21~24は液化水素を貯蔵している。ただし、各液化ガスタンク21~24は、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)など、液化水素以外の液化ガスを貯蔵していてもよい。各液化ガスタンク21~24に貯蔵されている液化ガス、及び、この液化ガスが気化したガスは、各液化ガスタンク21~24の頂部に位置するドーム部25を介して取り出すことができる。
【0016】
<タンクカバー>
本実施形態に係る浮体構造物100は、第1液化ガスタンク21を覆う第1タンクカバー31と、第2液化ガスタンク22を覆う第2タンクカバー32と、第3液化ガスタンク23を覆う第3タンクカバー33と、第4液化ガスタンク24を覆う第4タンクカバー34と、を備えている。各タンクカバー31~34は半球状であって、対応する液化ガスタンク21~24の上方部分を覆っている。ただし、各タンクカバー31~34は半球状でなくてもよい。なお、浮体構造物100が備えるタンクカバーの数は4つに限定されない。例えば、1つのタンクカバーが複数の液化ガスタンクを覆っていてもよい。ただし、本実施形態では、浮体構造物100が3つ以上のタンクカバーを備える場合を想定している。
【0017】
また、各タンクカバー31~34は、別々のカバー間距離をとって並んでいる。ここでいう「別々のカバー間距離」とは、全てのカバー間距離が異なる場合だけでなく、一部のカバー間距離を除いた全てのカバー間距離が同じである場合も含む。以下では、第1タンクカバー31と第2タンクカバー32のカバー間距離を「第1カバー間距離D1」と称し、第2タンクカバー32と第3タンクカバー33のタンク間距離を「第2カバー間距離D2」と称し、第3タンクカバー33と第4タンクカバー34のタンク間距離を「第3カバー間距離D3」と称する。
【0018】
そうすると、本実施形態では、第2カバー間距離D2は第1カバー間距離D1よりも大きく、かつ、第3カバー間距離D3よりも大きい。つまり、第2カバー間距離D2は、他のいずれのカバー間距離D1、D3よりも大きい。ただし、第1カバー間距離D1と第3カバー間距離D3は同じであってもよく、異なっていてもよい。さらに、第2カバー間距離D2の寸法は、第1カバー間距離D1及び第3カバー間距離D3のうち小さい方の寸法の3倍以上である。
【0019】
<タンク間領域>
本実施形態に係る浮体構造物100は、第1カバー間領域41、第2カバー間領域42、及び、第3カバー間領域43を備えている。第1カバー間領域41は、第1タンクカバー31と第2タンクカバー32で挟まれた領域である。第2カバー間領域42は、第2タンクカバー32と第3タンクカバー33で挟まれた領域である。第3カバー間領域43は、第3タンクカバー33と第4タンクカバー34で挟まれた領域である。なお、浮体構造物100が備えるタンク間領域の数は3つに限定されない。ただし、本実施形態では、浮体構造物100が2つ以上のタンク間領域を備える場合を想定している。
【0020】
各カバー間領域41~43は、立体的な領域であって、鉛直方向から見ても水平方向から見てもタンクカバー31~34の間に位置する領域である。本実施形態では、カバー間領域41~43は、前方から見たとき手前のタンクカバー31~34と重なる領域である。また、各カバー間領域41~43は、対応するカバー間距離D1~D2の大きさに応じた体積を有している。別の言い方をすれば、各カバー間距離D1~D3を調整することにより、各カバー間領域41~43の大きさを設定することができる。本実施形態では、第2カバー間距離D2が第1カバー間距離D1及び第3カバー間距離D3よりも大きいことから、第2カバー間距離D2に対応する第2カバー間領域42は第1カバー間領域41及び第3カバー間領域43よりも大きい。
【0021】
<中央設備>
中央設備51は、液化ガスタンク21~24付近、すなわち本体11の長手方向中央部分に位置する設備である。本実施形態の中央設備51は、上甲板14上に位置する移送設備である。つまり、本実施形態の中央設備51は、陸上又は海上に位置する外部の荷役設備との間で液化水素を移送する設備である。なお、上甲板14上とは、上甲板14の表面に接する位置のみならず上甲板14よりも上方の位置も含まれる。本実施形態の中央設備51は、水素配管52と、マニホールド53とを含んでいる。なお、水素配管52は本体11の右舷側から左舷側まで配置されていてよい。
【0022】
水素配管52は、液化水素又は水素ガスを搬送する配管である。水素配管52は、第2カバー間領域42を通って、マニホールド53と各液化ガスタンク21~24のドーム部25とをつないでいる。ここで、液化水素はLNG等に比べて温度が低いため、液化水素及び水素ガスが通過する水素配管52は真空二重配管とし、又は、非常に厚い防熱材を取り付ける必要がある。そのため、水素配管52の外径は大きくなる傾向にある。したがって、水素配管52を含む中央設備51を設置するには、特に大きな設置スペースを確保する必要がある。
【0023】
マニホールド53は、外部の荷役設備と接続する装置である。マニホールド53は、本体11の幅方向中央寄りの一部分が第2カバー間領域42に位置している。また、マニホールド53は、上甲板14上に位置している。マニホールド53の高さ位置は、外部の荷役設備における取合い部分の高さによって決まる。そのため、マニホールド53の位置を際限なく高くして液化ガスタンク21~24との干渉を避けることは実施的に不可能である。つまり、本実施形態では、上甲板14の上面近くにマニホールド53を設置するためのスペースを確保する必要がある。
【0024】
上記のとおり中央設備51(水素配管52のマニホールド53側の一部分及びマニホールド53の一部分)が第2カバー間領域42に位置している。つまり、第2カバー間領域42は、中央設備51を設置するための設置スペースである。一方、第1カバー間領域41及び第3カバー間領域43には、中央設備51が位置していない。そして、前述のとおり、第2カバー間領域42は第1カバー間領域41及び第3カバー間領域43よりも大きいことから、本実施形態では中央設備51を設置するための十分なスペースを確保することができる。別の言い方をすれば、第2カバー間領域42に中央設備51が設置できるように、第2カバー間距離D2が調整されている。また、上記の実施形態では、中央設備51の一部分が第2カバー間領域42に位置し、残りの部分が第2カバー間領域42外に位置しているが、中央設備51の全部(水素配管52の全部及びマニホールド53の全部)が第2カバー間領域42に位置していてもよい。つまり、本開示における「カバー間領域に位置する中央設備」には、「一部がカバー間領域に位置する中央設備」と「全部がカバー間領域に位置する中央設備」の両方が含まれる。
【0025】
なお、本実施形態のように第2カバー間距離D2を第1カバー間距離D1及び第3カバー間距離D3よりも大きくすると、本体11の長手方向寸法が大きくなる。従来、本体11が大きくなると、航行性能が低下し製造コストが増加すると考えられていた。しかしながら、本体11の長手方向の長さが大きくなっても本体11の前面投影面積は同じであり、航行性能への影響は少ない。また、第2カバー間距離D2を大きくせずに狭いままである場合、中央設備51を配置できたとしても複雑な構造にせざるを得ず、これにより生じる製造コストの増加も少なくない。したがって、本実施形態に係る浮体構造物100の構造は、従来懸念されていた問題は大きくなく、従来の常識を覆すものである。
【0026】
<変形例>
上記の実施形態では、中央設備51が第2カバー間領域42に位置していたが、中央設備51は第2カバー間領域42以外のカバー間領域に位置していてもよい。例えば、中央設備51が第3カバー間領域43に位置していてもよい。この場合、第3カバー間領域43に対応する第3カバー間距離D3を第1カバー間距離D1及び第2カバー間距離D2よりも大きくすればよい。これにより、中央設備51の設置スペースを確保することができる。
【0027】
また、中央設備51が、第2カバー間領域42に加え、他のカバー間領域に位置していてもよい。例えば、中央設備51が第2カバー間領域42及び第3カバー間領域43に位置していてもよい。この場合、第2カバー間距離D2及び第3カバー間距離D3を第1カバー間距離D1よりも大きくすればよい。これにより、中央設備51の設置スペースを確保することができる。なお、このとき、第2カバー間距離D2と第3カバー間距離D3は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0028】
また、上記の実施形態では、中央設備51が移送設備であったが、中央設備51は移送設備以外の設備であってもよい。例えば、中央設備51は、貨物機器設備であってもよい。この場合、中央設備51は、水素配管52を含むとともに、マニホールド53に代えて貨物機器を含む。なお、貨物機器とは、液化ガスタンク21~24が貯蔵する液化水素が自然に気化した又は強制的に気化させた水素ガスを昇圧する機器、液化水素を強制的に気化させる気化器、水素ガスを温調する熱交換器、窒素ガス発生装置、荷役ポンプおよびこれらの機器を運用するための清水ポンプ、海水ポンプ、潤滑油ポンプなどである。また、中央設備51が移送設備と貨物機器設備の両方を含んでいてもよい。例えば、第2カバー間領域42の主に幅方向中央よりも右側部分に移送設備を配置し、第2カバー間領域42の主に幅方向中央よりも左側部分に貨物機器設備を配置してもよい。
【0029】
なお、上記の実施形態においては、「タンクカバー31~34」、「カバー間領域41~43」、「カバー間距離D1~D3」が、本開示の「構造体」、「構造間領域」、「構造間距離」に相当する。
【0030】
<タンクカバーがない場合等>
上記の実施形態では、各液化ガスタンク21~24の上方部分が上甲板14よりも上方に位置していたが、各液化ガスタンク21~24は全体が上甲板14よりも下方に位置していてもよい。つまり、浮体構造物100はタンクカバー31~34を備えていなくてもよい。この場合、タンクカバー31~34が存在しないため、上述した実施形態の「カバー間距離」及び「カバー間領域」は、それぞれ「タンク間距離」及び「タンク間領域」に読み替えることができる。つまり、この場合、中央設備51は、複数のタンク間領域のうちの一部のタンク間領域に位置しており、中央設備51が位置するタンク間領域に対応するタンク間距離は、中央設備51が位置していないタンク間領域に対応するタンク間距離よりも大きい。
【0031】
同様に、1つのタンクカバーが複数の液化ガスタンクを覆うことでカバー間領域がない場合やカバー間領域が1つしかない場合、さらに中央設備51が上甲板14よりも下方に位置しているような場合も、「カバー間距離」及び「カバー間領域」は、それぞれ「タンク間距離」及び「タンク間領域」に読み替えることができる。なお、上甲板14よりも下方に位置する中央設備51とは、例えば、タンク間領域を幅方向に通り抜けるアクセス通路、海水を収容して浮体構造物100の喫水及び傾斜を調整するためのバラストタンク、浮体構造物100の横揺れを減衰させるためのアンチローリングタンク、燃料油を貯蔵する燃料油タンク、消火設備室、及び、機器室などである。
【0032】
以上のような場合、中央設備51が位置するタンク間領域に対応するタンク間距離の寸法は、中央設備51が位置していないタンク間領域に対応するタンク間距離のうち最も小さいタンク間距離の寸法の1.5倍以上である。
【0033】
なお、上記の変形例においては、「液化ガスタンク21~24」、「タンク間領域」、「タンク間距離」が、本開示の「構造体」、「構造間領域」、「構造間距離」に相当する。
【0034】
<まとめ>
以上で説明した浮体構造物は、水上に浮かぶ本体と、前記本体の長手方向に所定の構造間距離をとって並ぶ3つ以上の構造体と、隣り合う構造体に挟まれた複数の構造間領域と、前記複数の構造間領域のうちの一部の構造間領域に位置する中央設備と、を備え、前記中央設備が位置する構造間領域に対応する構造間距離は、前記中央設備が位置していない構造間領域に対応する構造間距離よりも大きい。
【0035】
この構成によれば、中央設備が位置する構造間領域が大きいため、中央設備を設置するための十分なスペースを確保することができる。また、中央設備へのアクセスが容易となり、中央設備のメンテナンスコストやメンテナンス期間を抑制することができる。
【0036】
また、本実施形態に係る浮体構造物は、前記本体の長手方向に並ぶ3つ以上の液化ガスタンクをさらに備え、前記3つ以上の構造体は、前記3つ以上の液化ガスタンクのうちの少なくとも1つを覆い、前記本体の長手方向に所定のカバー間距離をとって並ぶ3つ以上のタンクカバーであり、前記複数の構造間領域は、隣り合うタンクカバーに挟まれた複数のカバー間領域であり、前記中央設備は、前記複数のカバー間領域のうちの一部のカバー間領域に位置し、前記中央設備が位置するカバー間領域に対応するカバー間距離は、前記中央設備が位置していないカバー間領域に対応するカバー間距離よりも大きい。
【0037】
この構成によれば、中央設備が位置するカバー間領域が大きいため、中央設備を設置するための十分なスペースを確保することができる。また、中央設備へのアクセスが容易となり、中央設備のメンテナンスコストやメンテナンス期間を抑制することができる。
【0038】
また、本実施形態に係る浮体構造物は、前記本体は上甲板を含み、各タンクカバーは前記上甲板よりも上方に位置しており、前記中央設備は前記上甲板上に位置している。
【0039】
このような構成では、一般的に中央設備の設置スペースを確保することが容易でない。このような場合であっても、中央設備を設置するための十分なスペースを確保できる。
【0040】
また、本実施形態に係る浮体構造物は、各液化ガスタンクは液化水素を貯蔵し、前記中央設備は液化水素又は水素ガスを搬送する水素配管を含んでいる。
【0041】
水素配管を含む中央設備の設置には大きな設置スペースが必要となる。中央設備がこのような水素配管を含む構成であっても、中央設備を設置するための十分なスペースを確保することができる。
【0042】
また、本実施形態に係る浮体構造物では、前記中央設備は、外部の荷役設備と接続するマニホールドを含む移送設備、又は、水素ガスを昇圧する貨物機器を含む貨物機器設備である。
【0043】
中央設備が移送設備及び貨物機器設備であれば設置場所がある程度限定される。このような場合であっても、中央設備を設置するための十分なスペースを確保できる。
【0044】
また、本実施形態に係る浮体構造物は、前記中央設備が位置するカバー間領域に対応するカバー間距離の寸法は、前記中央設備が位置していないカバー間領域に対応するカバー間距離のうち最も小さいカバー間距離の寸法の3倍以上である。
【0045】
この構成によれば、中央設備を設置するための十分なスペースを確保することができる。
【0046】
また、本実施形態の変形例に係る浮体構造物では、前記3つ以上の構造体は、前記本体の長手方向に所定のタンク間距離をとって並ぶ3つ以上の液化ガスタンクであり、前記複数の構造間領域は、隣り合う液化ガスタンクに挟まれた複数のタンク間領域であり、前記中央設備は前記複数のタンク間領域のうちの一部のタンク間領域に位置し、前記中央設備が位置するタンク間領域に対応するタンク間距離は、前記中央設備が位置していないタンク間領域に対応するタンク間距離よりも大きい。
【0047】
この構成によれば、中央設備が位置するタンク間領域が大きいため、中央設備を設置するための十分なスペースを確保することができる。また、中央設備へのアクセスが容易となり、中央設備のメンテナンスコストやメンテナンス期間を抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態の変形例に係る浮体構造物では、前記中央設備が位置するタンク間領域に対応するタンク間距離の寸法は、前記中央設備が位置していないタンク間領域に対応するタンク間距離のうち最も小さいタンク間距離の寸法の1.5倍以上である。
【0049】
この構成によれば、中央設備を設置するための十分なスペースを確保することができる。
【符号の説明】
【0050】
11 本体
14 上甲板
21 第1液化ガスタンク
22 第2液化ガスタンク
23 第3液化ガスタンク
24 第4液化ガスタンク
31 第1タンクカバー
32 第2タンクカバー
33 第3タンクカバー
34 第4タンクカバー
41 第1カバー間領域
42 第2カバー間領域
43 第3カバー間領域
51 中央設備
52 水素配管
53 マニホールド
100 浮体構造物
図1
図2