(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093851
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】道路渋滞低減支援装置、道路渋滞低減支援方法および道路渋滞低減支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/01 20060101AFI20230628BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20230628BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
G08G1/01 E
G08G1/00 A
G08G1/09 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208947
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大場 義和
(72)【発明者】
【氏名】上野 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 浩輔
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC04
5H181CC12
5H181DD05
5H181FF04
5H181FF12
5H181FF13
(57)【要約】
【課題】手動運転車両の走行台数に比べて自動運転車両の走行台数が少ない交通状況においても自動運転車両の走行が手動運転車両の走行に影響を与え難い道路渋滞低減支援装置を提供する。
【解決手段】道路渋滞低減支援装置は、情報取得部と、渋滞可能性判定部と、渋滞低減支援情報生成部と、出力部と、を備える。情報取得部は、管制対象領域の交通状況情報と、管制対象領域を走行する車両の走行機能情報を含む車両情報とが得られる場合に、これらを取得する。渋滞可能性判定部は、車両情報に基づいて管制対象領域に自動運転車両が含まれると判定される場合、交通状況情報と車両情報とに基づいて管制対象領域で自動運転車両の走行が原因で所定レベル以上の渋滞が発生するか否かを判定する。渋滞低減支援情報生成部は、渋滞が発生すると判定された場合に、渋滞を低減させるために自動運転車両に対する走行支援情報を生成する。出力部は、走行支援情報を出力する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管制対象領域の交通状況情報と、前記管制対象領域を走行する車両の走行機能情報を含む車両情報とが得られる場合に、これらを取得する情報取得部と、
前記車両情報に基づいて前記管制対象領域に自動運転車両が含まれると判定される場合、前記交通状況情報と前記車両情報とに基づいて前記管制対象領域で前記自動運転車両の走行が原因で所定レベル以上の渋滞が発生するか否かを判定する渋滞可能性判定部と、
前記渋滞が発生すると判定された場合に、前記渋滞を低減させるために前記自動運転車両に対する走行支援情報を生成する渋滞低減支援情報生成部と、
前記走行支援情報を出力する出力部と、
を備える、道路渋滞低減支援装置。
【請求項2】
前記渋滞可能性判定部は、前記交通状況情報と前記車両情報とに基づいて前記自動運転車両の前記管制対象領域における混在率を取得し、
前記渋滞低減支援情報生成部は、前記混在率が所定混在率以下の場合、前記走行支援情報として、前記自動運転車両の自動走行状態を当該自動運転車両の周囲を走行する非自動運転車両の走行状態に応じた走行に変更する情報を生成する、請求項1に記載の道路渋滞低減支援装置。
【請求項3】
前記渋滞可能性判定部は、前記交通状況情報に基づいて前記管制対象領域を複数の分割領域に分割して前記分割領域ごとに走行する前記車両ごとの車速分析を行う道路状況分析部を、含み、取得した車速分析結果に基づいて前記渋滞が発生するか否かを判定する、請求項1または請求項2に記載の道路渋滞低減支援装置。
【請求項4】
前記道路状況分析部は、現在の前記交通状況情報を用いた交通流シミュレーションにより前記車速分析を行う、請求項3に記載の道路渋滞低減支援装置。
【請求項5】
前記道路状況分析部は、前記管制対象領域の過去の交通状況情報に基づいて生成した統計モデルを用いて、現在の交通状況情報における前記車速分析を行う、請求項3に記載の道路渋滞低減支援装置。
【請求項6】
前記道路状況分析部は、前記管制対象領域の過去の交通状況情報に基づいて生成した分析マップを用いて、現在の交通状況における前記車速分析を行う、請求項3に記載の道路渋滞低減支援装置。
【請求項7】
前記道路状況分析部は、前記管制対象領域の過去の交通状況情報と類似する類似交通状況情報を取得して、当該類似交通状況情報を用いて、現在の交通状況における前記車速分析を行う、請求項3に記載の道路渋滞低減支援装置。
【請求項8】
前記道路状況分析部は、前記管制対象領域の過去の交通状況情報を学習した機械学習モデルを用いて、現在の交通状況における前記車速分析を行う、請求項3に記載の道路渋滞低減支援装置。
【請求項9】
管制対象領域の交通状況情報と、前記管制対象領域を走行する車両の走行機能情報を含む車両情報と、を取得する情報取得ステップと、
前記車両情報に基づいて前記管制対象領域に自動運転車両が含まれると判定される場合、前記交通状況情報と前記車両情報とに基づいて前記管制対象領域で前記自動運転車両の走行が原因で所定レベル以上の渋滞が発生するか否かを判定する渋滞可能性判定ステップと、
前記渋滞が発生すると判定された場合に、前記渋滞を低減させるために前記自動運転車両に対する走行支援情報を生成する渋滞低減支援情報生成ステップと、
前記走行支援情報を出力する出力ステップと、
を備える、道路渋滞低減支援方法。
【請求項10】
管制対象領域の交通状況情報と、前記管制対象領域を走行する車両の走行機能情報を含む車両情報と、を取得する情報取得処理と、
前記車両情報に基づいて前記管制対象領域に自動運転車両が含まれると判定される場合、前記交通状況情報と前記車両情報とに基づいて前記管制対象領域で前記自動運転車両の走行が原因で所定レベル以上の渋滞が発生するか否かを判定する渋滞可能性判定処理と、
前記渋滞が発生すると判定された場合に、前記渋滞を低減させるために前記自動運転車両に対する走行支援情報を生成する渋滞低減支援情報生成処理と、
前記走行支援情報を出力する出力処理と、
を、コンピュータに実行させる、道路渋滞低減支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、道路渋滞低減支援装置、道路渋滞低減支援方法および道路渋滞低減支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路交通管制装置(システム)は、道路交通状況に関する種々の情報を取得し、それを解析し、渋滞情報や事故情報、目的地到達予定時刻等を把握することで、道路交通の安全と円滑を図るとともに、これらに役立つ支援情報を車両の運転者等に提供している。また、近年では、自動運転技術の研究も進み、各地で自動運転車両の走行実験が進められている。そして、自動運転車両と非自動運転車両(以下、手動運転車両という)とが混在して走行する場合に、交通状況に与える影響等をシミュレーションする研究等も進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-114094号公報
【特許文献2】特開2020-95334号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「高速道路交通管制技術ハンドブック」、高速道路交通管制技術ハンドブック編集委員会編、電気書院、2005年、p.7,8,48,121
【非特許文献2】「高速道路における自動運転車混在時の道路交通状況評価手法に関する検討」、大場義和、上野秀樹、第18回ITSシンポジウム2020、1-A-06
【非特許文献3】「自動運転車と人間が運転する自動車の混在下で発生する渋滞シミュレーション」、戸田賢、高松敦子 著、交通流と自己駆動粒子系シンポジウム論文集、巻23、出版者 交通流数理研究会、2017http://traffic.phys.cs.is.nagoya-u.ac.jp/~mstf/article_list/mstf2017-20.htmlhttp://traffic.phys.cs.is.nagoya-u.ac.jp/~mstf/pdf/mstf2017-20.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、自動運転車両の普及率が低い段階で、多くの手動運転車両の中に制御性能が高い自動運転車両が混在する場合、自動運転車両の高性能制御走行が手動運転車両の走行に影響を及ぼしてしまう場合がある。例えば、自動運転車両の挙動が手動運転車両の走行ペースに影響を与えて、手動運転車両の加減速の頻度が増加して、渋滞の原因の一つとなってしまう場合が考えられる。したがって、手動運転車両の走行台数に比べて自動運転車両の走行台数が少ない交通状況においても自動運転車両の走行が手動運転車両の走行に影響を与え難い道路渋滞低減支援が実現できれば、車両のスムーズな走行の実現が図れて有意義である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態にかかる道路渋滞低減支援装置は、情報取得部と、渋滞可能性判定部と、渋滞低減支援情報生成部と、出力部と、を備える。情報取得部は、管制対象領域の交通状況情報と、管制対象領域を走行する車両の走行機能情報を含む車両情報とが得られる場合に、これらを取得する。渋滞可能性判定部は、車両情報に基づいて管制対象領域に自動運転車両が含まれると判定される場合、交通状況情報と車両情報とに基づいて管制対象領域で自動運転車両の走行が原因で所定レベル以上の渋滞が発生するか否かを判定する。渋滞低減支援情報生成部は、渋滞が発生すると判定された場合に、渋滞を低減させるために自動運転車両に対する走行支援情報を生成する。出力部は、走行支援情報を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態にかかる道路渋滞低減支援装置及び道路渋滞低減支援装置と情報の送受が可能な道路交通管制システムを示す例示的かつ模式的なブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかる道路渋滞低減支援装置が支援対象とする自動運転車両と手動運転車両とが混在した状態で高速道路上のサグを通過する際に発生し得る影響を示す例示的かつ模式的な説明図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかる道路渋滞低減支援装置の詳細を示す例示的かつ模式的なブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態にかかる道路渋滞低減支援装置の処理の流れを示す例示的なフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態にかかる道路渋滞低減支援装置の道路状況分析部で利用可能な分析マップを示す例示的かつ模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。以下に記載する実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、あくまで一例であって、以下の記載内容に限られるものではない。
【0009】
図1は、実施形態にかかる道路渋滞低減支援装置10及び当該道路渋滞低減支援装置10と情報の送受が可能な道路交通管制システム100を示す例示的かつ模式的なブロック図である。
【0010】
道路交通管制システム100は、主として、入力側の構成、処理側の構成、出力側の構成を備える。入力側の構成としては、道路側センサ102および路車間通信システム104等を含む。処理側の構成としては、交通管制部106およびデータベース108等を含む。出力側の構成としては、情報提供部110、他システム情報提供部112等を含む。
【0011】
道路側センサ102や路車間通信システム104は、道路管制の対象となる管制対象領域において、道路管制に利用可能な各種データを取得する。本実施形態において管制対象領域は、例えば、高速道路を複数の区分に分割した場合の一つであってもよく、道路交通管制システム100の管轄領域である。
【0012】
道路側センサ102は、例えば、路側に設置されている車両感知器や、路側カメラ等である。道路側センサ102は、設置地点の交通量、走行する車両の速度、時間占有率等の車両感知器情報を取得可能で、逐次、交通管制部106に取得した情報を送信する。なお、走行車両の車速は、路側カメラ等から得られる動画を用いた画像処理により、取得してもよい。
【0013】
路車間通信システム104は、例えば、ETC2.0等が利用可能である。路車間通信システム104は、通過する車両との間で通信を行い、通過車両から種々の情報を取得して、逐次、交通管制部106に送信する。また、路車間通信システム104は、他システム情報提供部112から出力される種々の情報を通過する車両に提供することもできる。なお、ETC2.0は、従来のETCに比べて、大量の情報の送受信が可能となる。したがって、管制及び走行に有用な情報をスムーズに送受信することができる。例えば、高速道路のインターチェンジの出入り情報だけでなく、経路情報等の送受信も可能である。
【0014】
また、路車間通信システム104は、道路渋滞低減支援装置10において、利用する走行性能情報を含む車両情報も取得可能である。走行性能情報としては、例えば、急ブレーキの情報等が考えられる。なお、本実施形態において、路車間通信システム104は、走行性能情報として、車両が自動運転可能か否かを示す情報を取得可能であるとすることを想定する。路車間通信システム104は、通信対象の車両が自動運転車両の場合、自動運転状況情報を取得することが可能である。自動運転状況情報としては、自動運転パラメータ情報、自動運転車のGPS(Global Positioning System)からの通過位置、通過時間情報等を想定する。なお、同様な情報は、例えば、自動運転車両に搭載されたカーナビゲーションシステム等を用いて送受信することを想定可能である。
【0015】
交通管制部106は、道路側センサ102からの車両感知器情報(例えば、交通量、速度、時間占有率等)と、路車間通信システム104からの車両情報(自動運転状況情報、自動運転パラメータ、位置情報、通過時間情報等)を取得する。そして、交通管制部106は、情報提供部110を介して管制対象領域の路側等に設置された情報板への情報提供をするために情報や、路車間通信システム104を介して路車間通信車両に対して提供するための情報等を生成する。また、交通管制部106は、他システム情報提供部112を用いて、自動運転車両を対象とする、路車間通信システムや、VICS(登録商標)(Vehicle Information and Communication System)等に対して提供する情報の生成を行うことができる。
【0016】
より具体的には、交通管制部106は、例えば、速度と道路長から走行所要時間情報を作成したり、速度情報を基に渋滞状況を示す情報を生成したりする。また。道路における工事情報や事故情報等のイベント情報を生成する。更に、交通管制部106は、道路渋滞低減支援装置10が交通管制部106から取得する各種情報、例えば、車両感知器情報(交通量、速度等)、車両情報(自動運転状況情報、自動運転パラメータ情報、位置情報等)に基づいて生成した走行支援情報を、他システム情報提供部112を介して出力する機能を有すると想定する。道路渋滞低減支援装置10が生成する走行支援情報については後述する。
【0017】
交通管制部106は、管制センタに設置された中央処理装置P1(例えば、一般的なPC(Personal Computer)等のコンピュータ資源)上で機能する。管制センタには、大型のモニタ装置Mが配置され、コンソールNに着座した複数の管制担当者Wにより管制、操作、管理等の各種業務が効率的に行えるようになっている。中央処理装置P1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記憶部と、通信インターフェースと、入出力インターフェース等で構成されている。なお、交通管制部106を有する中央処理装置P1は、取得した情報をデータベース108(DB)に蓄積している。そして、交通管制部106が、データベース108に蓄積した情報を過去のデータとして再利用可能することができる。なお、データベース108は、中央処理装置P1内に搭載されていてもよし、
図1に示されるように、外付けで実装されていてもよい。
【0018】
情報提供部110は、上述したように、交通管制部106が生成した各種情報を、管制対象領域の路側等の設置された情報板へ提供し、管制対象領域を走行する車両の運転者等に提示したり、路車間通信システム104を介して路車間通信車両に対して提供したりする。
【0019】
同様に、他システム情報提供部112は、交通管制部106や道路渋滞低減支援装置10で生成した情報を、管制対象領域を走行する自動運転車両に提供し、直接自動運転車両を制御したり、その自動運転車両を利用している(運転している)利用者に自動運転に関する運転支援を行ったりする。なお、この場合。他システム情報提供部112は、路車間通信システム104を介して、情報を提供してもよしいし、他の通信方法を用いて情報提供を行ってもよい。
【0020】
続いて、道路渋滞低減支援装置10について説明する。なお、道路渋滞低減支援装置10は、信号機等が設置されていない、高速道路等における渋滞低減に顕著な効果を奏する。したがって、以下の説明において、管制対象領域は、例えば、高速道路として説明する。
【0021】
道路渋滞低減支援装置10は、例えば、パーソナルコンピュータP2上で実現される。道路渋滞低減支援装置10は、例えば、管制対象領域において、通常車両、つまり、非自動運転車両(手動運転車両)と自動運転車両とが混在して存在する場合で、自動運転車の在線割合が低い場合(自動運転車の手動運転車両に対する混在率が低い場合)、自動運転車両に対して、走行支援情報を提供する。例えば、自動運転車両は、手動運転車両の運転者による操縦よりも制御性能が高く、制御遅れや制御量の過不足が抑制されるように制御される。換言すれば、自動運転車両は、走行位置や路面状況等を検出しながら、安全かつ効率的な運転制御を実現し、搭乗者に違和感や不快感を与え難いように走行している。
【0022】
その一方で、自動運転車両の適切な制御に対して、自動運転車両の周囲を走行する手動運転車両の運転者が自動運転車両の走行(制御)に追従できない場合があると考えられる。また、自動運転車両の挙動は、安全かつ適切であるにも拘わらず、手動運転車両の運転者がその挙動に動揺して不要な減速(例えば急制動等)や車線変更を行ってしまったりする場合がある。つまり、自動運転車両の高性能制御が、周囲の手動運転車両(特に後続走行車両)の運転に影響し、渋滞が発生してしまう場合がある。
【0023】
道路渋滞低減支援装置10は、このような状況を予測し、自動運転車両に対して、必要に応じて周囲の手動運転車両と同等の制御性能で自動運転することを促す情報を作成したり、渋滞の可能性を低減させるために自動運転から手動運転に一時的に切り替えてもらうことを促す情報等を作成したりする。
【0024】
図2は、道路渋滞低減支援装置10が支援対象とする自動運転車両ACと、その周囲を走行する手動運転車両MCとが混在した状態で高速道路上のサグRCを通過する際に発生し得る影響を示す例示的かつ模式的な説明図である。サグRCとは、下り坂から上り坂にさしかかる凹部のことである。
【0025】
図2は、例えば、5台の手動運転車両MC1~MC5の中に1台の自動運転車両ACが混在した状態で車列が形成され、時間経過(タイミングT1~タイミングT8)の各車両の移動状態が示されている。なお、
図2の場合、自動運転実行中の自動運転車両ACが、車列の3台目に存在する例である。つまり、自動運転車両ACの手動運転車両MCに対する混在率は、1/6(約17%)で、自動運転車両ACの混在率が低い場合を示す。また、
図2の場合、手動運転車両MC1~MC5および自動運転車両ACは、高速道路Rの平坦部R1から下り坂部R2に進入し、サグRCを経て、上り坂部R3を通過し、上り坂終点RTを経て、再び平坦部R4を走行する例である。
【0026】
タイミングT1において、サグRCを有する高速道路Rに、自動運転車両AC(前から3台目)を含む車列が走行してきている(初期段階)。なお、この時点で、自動運転車両ACは平坦部R1を走行している。
【0027】
続いて、タイミングT2は、自動運転車両ACが下り坂部R2を走行している状況である。自動運転車両ACは自動運転をしているため、若干、下り坂部R2の影響を受けるものの(速度が加速してしまうものの)、すぐに自車両が目標とする目標速度(例えば、平坦部R1等における車列の流れに応じて設定された速度)に制御される。なお、手動運転車両MC1や手動運転車両MC2は、運転者の技量により速度変化への反応遅れ等があるため、下り坂部R2の影響により、速度増加が生じる。そして、運転者が増速に気が付く場合、しばらくしてから制動操作が行われることになる。このような場合、ブレーキランプの点灯により後続車がつられて制動操作を行ってしまう場合がある。
【0028】
タイミングT3およびタイミングT4は、自動運転車両ACが下り坂部R2から上り坂部R3に転じるサグRCを通過するタイミングである。サグRCの走行においても、自動運転車両ACは、自動運転中なので、高い制御性能で走行が可能であるため、サグRCの影響で自車両の速度が加減速したとしても、反応遅れが少ない状況で目標速度へ制御可能となる。
【0029】
タイミングT4とタイミングT5において、自動運転車両ACは、自動走行制御により目標速度へ速やかに制御することが可能である。これに対して、自動運転車両ACの前方車両(手動運転車両MC2)は、手動運転であるため、サグRCからの上り坂部R3に進入した場合、運転者が上り坂部R3に進入したことに気づかずに減速してしまう場合がある。このため、上り坂部R3の影響による手動運転車両MC2等の速度低下が、継続される場合がある。
【0030】
この場合、自動運転車両AC自体の目標速度への回復が早かったとしても、タイミングT5に示されるように、前方の手動運転車両MC2との車間距離を確保するために、手動運転車両MC2と同等の速度となるように速やかに制御(例えば、減速制御)される。
【0031】
さらに、タイミングT6は、車列の走行が継続され、自動運転車両ACが上り坂部R3を登り切り、上り坂終点RTに到達しようとするタイミングである。
【0032】
自動運転車両ACや手動運転車両MCにおいて、上り坂部R3を上り切ったところでは、上り坂部R3の影響がなくなり、若干速度が加速する方向に変化する可能性がある。この場合、手動運転車両MC2等の運転者は、上り坂部R3の影響がなくなったことにより自車両の速度が速くなる(アクセル踏力が上り坂部R3のままで上り坂の影響がなくなるため増速する)ことに気づかない反応遅れがある場合がある。この場合、自車両の速度が速くなってしまったことに対して、それまでの速度(目標速度)に戻す操作(操縦)が遅れてしまうことになる。
【0033】
これに対し、自動運転車両ACの自動運転制御は、手動運転車両MC2等の運転者のような反応遅れはほぼないため、ほとんど増速することなく目標速度に制御される(タイミングT7)。
【0034】
つまり、タイミングT8において、自動運転車両ACは自動運転制御により、上り坂終点RTの部分で上り坂部R3の影響がなくなった場合においても速度が速くなる現象が生じることが抑制される。
【0035】
一方、自動運転車両ACの後方を走行する手動運転車両MC3(自動運転車両ACの追従車両)は、上述したように上り坂部R3の影響がなくなった場合に、運転者の反応遅れの影響で、速度が速くなってしまう場合がある。
【0036】
その結果、前走車である自動運転車両ACと後続車である手動運転車両MC3との車間距離が短くなり、手動運転車両MC3の運転者は、適正な車間距離をとろうとして、制動操作を行ってしまう場合がある。この制動操作によるブレーキランプの点灯により、手動運転車両MC3に後続する手動運転車両MC4は、敏感に反応し上り坂部R3の走行中であるにも拘わらず制動操作を行ってしまう場合がある。この制動操作は、順次後続車に伝搬し、結果的に車列の速度が遅くなり、渋滞の原因の一つとなる。
【0037】
一方、車列に自動運転車両ACが含まれない場合、全ての手動運転車両MCが上り坂終点RTを通過した際の影響を受けることになる。このとき、各手動運転車両MCの制動力の大きさには多少の違いはある場合があるが、運転者の反応遅れが発生するため、上述したように、後続の手動運転車両MCの運転者は、車間距離が短くなったための制動操作を行う可能性は少ないと考えられる。
【0038】
このように、手動運転車両MCのみの車列の場合に比べて、車列に自動運転車両ACが混在し、かつ自動運転車両ACの混在率が小さい場合には、自動運転車両ACの自動運転(高性能の制御による速度制御等)に起因する制動の連鎖が発生し易くなると考えられる。つまり、手動運転車両MCのみでは発生する可能性の低い制動連鎖が発生する可能性が増加する。
【0039】
上述したような現象が、車両の密度が高く、かつ渋滞発生直前のぎりぎりの状況で走行している車列において発生すると、僅かな制動操作が引き金になり、渋滞の発生の原因となる可能性が高まる。
【0040】
なお、同様な現象は、自動運転車両ACが急な車線変更を行った場合も発生する場合がある。つまり、自動運転車両ACの自動運転性能がよいために、例えば高速道路R上に落下物がある場合や事故車両等が存在する場合、自動運転車両ACは素早く反応し、安全を考慮した上で最適な直前位置で車線変更することになる。
【0041】
この場合、手動運転車両MCの運転者は、前走車である自動運転車両ACが急に車線変更を行ったと感じるととともに、障害物等が急に視界に入り、動揺し制動操作を行ってしまう場合がある。この制動操作によるブレーキランプの点灯により、後続する手動運転車両MCは、敏感に反応し、後続する手動運転車両MCも制動操作を行ってしまう場合がある。この制動操作は、上述したサグRCが存在する領域と同様に、順次後続車に伝搬し、結果的に車列の速度が遅くなり渋滞の原因の一つとなる。
【0042】
上述のように、手動運転車両MCに対して自動運転車両ACの割合が極僅かであるような交通状況の場合、渋滞の原因が自動運転車両ACになり得るとき、本実施形態の道路渋滞低減支援装置10は、自動運転車両ACが原因となる渋滞をなるべく避けるため、または渋滞を低減させるために、自動運転車両ACに対して自動運転の内容を変更するような道路渋滞低減支援情報を提供する。
【0043】
道路渋滞低減支援情報は、例えば、自動運転車両ACの自動運転制御内容を、周囲の手動運転車両MCの運転者の運転レベルに合わせることを促すような情報である。例えば手動運転車両MCの運転者の反応遅れを考慮する自動運転内容に変更したり、自動運転制御を一時的に解除し手動運転としたりすることを推奨する道路渋滞低減支援情報を提供する。
【0044】
自動運転車両ACが道路渋滞低減支援情報に従って、自動運転制御を変更することによって、手動運転車両MCの意図しない運転挙動(運転者の過剰な制動操作等)を抑制することが可能になり、渋滞の低減に寄与することができる。
【0045】
なお、周囲の手動運転車両MCの運転者の運転レベルは、例えば、過去の同じ管制対象領域における、手動運転車両MCの走行特性を予め解析しておくことにより、事前に道路渋滞低減支援装置10に記憶させておくことができる。
【0046】
道路渋滞低減支援装置10において、生成した道路渋滞低減支援情報は、例えば、交通管制部106に提供され、必要に応じて他システム情報提供部112を介して出力する。なお、交通管制部106に提供された道路渋滞低減支援情報は、データベース108に蓄積され、過去のデータとして再利用可能にするようにしてもよい。
【0047】
図3は、実施形態にかかる道路渋滞低減支援装置10の詳細を示す例示的かつ模式的なブロック図である。
【0048】
道路渋滞低減支援装置10は、道路情報取得部12、渋滞可能性判定部14、渋滞低減支援情報生成部16、出力部18等を含む。さらに、道路渋滞低減支援装置10は、道路状況分析部20、交通流シミュレーション部22、データベース24等を備える。
【0049】
なお、
図3の構成は、一例であり、例えば、渋滞可能性判定部14は道路状況分析部20、交通流シミュレーション部22やデータベース24等を含んでもよい。なお、
図3では、道路状況の分析に交通流シミュレーション部22を用いる例を説明する。
【0050】
道路渋滞低減支援装置10は、高速道路Rの管制対象領域の交通状況情報と、管制対象領域を走行する自動運転車両AC及び手動運転車両MC(車両)の走行機能情報を含む車両情報と、を取得する。道路渋滞低減支援装置10は、例えば、道路交通管制システム100の交通管制部106から車両感知器情報や自動運転車情報等の道路交通管制システム100が取得、管理する情報を取得する。
【0051】
ここで、車両感知器情報は、路側に設置されている道路側センサ102の計測結果である交通量や速度、時間占有率等が取得可能である。また、自動運転車情報は、路車間通信システム104から自動運転車両AC自体の情報が取得可能で、自動運転車両ACが自動運転しているか否か、自動運転車両ACの通過位置と通過時刻(GPSデータ等から作成された情報等)の取得が可能であると想定する。
【0052】
なお、道路渋滞低減支援装置10は、これらの情報を、道路交通管制システム100にネットワーク接続し、交通管制部106にて管理されている情報として取得するようにしてもよい。
【0053】
渋滞可能性判定部14は、車両情報に基づいて管制対象領域に自動運転車両ACが含まれると判定される場合、交通状況情報と車両情報とに基づいて管制対象領域で自動運転車両ACの走行が原因で所定レベル以上の渋滞(予め過去の交通状況とを解析して定められたレベルの渋滞)が発生するか否かを判定する。渋滞可能性判定部14では、まず取得した情報を道路状況分析部20に提供し、道路状況分析部20にて道路の状況を分析する。
【0054】
道路状況分析部20では、交通状況情報に基づいて管制対象領域を複数の分割領域(例えば、数百m)に分割して分割領域ごとに走行する車両ごとの車速分析を行う。そして、道路状況分析部20は、取得した車速分析結果に基づいて渋滞が発生するか否かを判定する。
【0055】
車両感知器情報と自動運転車情報から高速道路Rの管理対象領域における自動運転車両ACの混在率を推定する。自動運転車両ACの混在率の推定方法としては、車両感知器情報の交通量と速度を用いて、交通量=密度×速度の関係式から該当する分割領域(該当区間)の密度を算出し、自動運転車情報から分割領域の自動運転車両ACの台数を取得して、これらより分割領域の自動運転車両ACの混在率を作成することが可能である。
【0056】
また、道路状況分析部20は、これらの情報をもとに、現状の自動運転車両ACの台数、手動運転車両MCの台数が演算可能である。
【0057】
また、道路状況分析部20は、自動運転車両ACの台数と自動運転車情報として得られた自動運転車両ACの位置と、車両感知器の通過カウントおよび平均速度で手動運転車両MCの位置が推定可能である。これらの情報を交通流シミュレーション部22に提供して、シミュレーションすることで、将来の交通状況に関する情報(例えば将来的に渋滞状況となりそうである等の渋滞予測情報等も含む)が作成可能である。
【0058】
なお、交通流シミュレーション部22は、パラメータを調整・設定し、道路状況分析部20にて作成された自動運転車両ACの位置(その位置の通過時の時刻情報つき)と、手動運転車両MCの位置(その位置の通過時の時刻情報つき)等の初期状態を設定し、シミュレーションする。交通流シミュレーション部22は、このシミュレーションの結果から、初期設定状況からその後にどのような状況に移行するかをシミュレーション演算して交通状況の把握に利用する。
【0059】
特に、自動運転車両ACと手動運転車両MCの差異を明確に設定して、混在する場合の影響を明確にシミュレーションすることで、自動運転車両ACと手動運転車両MCが混在する場合の将来の交通状況把握のための情報が作成できる。
【0060】
例えば、交通流シミュレーション部22は、自動運転車両ACの混在率が低い場合のシミュレーションを実施し、自動運転車両ACの自動運転挙動が周囲の手動運転車両MCの運転に影響を与え、その際に、手動運転車両MCが予期しない制動操作を行う(ブレーキを踏む)可能性があることが分かった場合には、渋滞の要因となる可能性がある、と分析することなどができる。
【0061】
このように交通流シミュレーション部22は、将来の交通状況に関する情報(交通シミュレーション結果)を生成する。道路状況分析部20は、この情報を用いて、道路状況分析を行う。なお、道路状況分析部20では、管制対象領域(高速道路R)を数百mごと等の分割領域に分割して自動運転車両ACの混在率等を演算したが、その状況における将来の交通状況情報として、交通シミュレーション結果を確認することで、道路状況分析部20は、交通状況が将来どのように変化するかが確認できる。
【0062】
分割区間の交通シミュレーション結果の速度が低減する場合は、渋滞傾向の方向にあると考えられるため、渋滞になる傾向があることがわかる(考え方によっては将来の渋滞の一可能性を予測している形(渋滞予測)とも考えられる)。
【0063】
また、自動運転車両ACの手動運転車両MCに対する混在率が低い場合、自動運転車両ACが周囲の手動運転車両MCに与える影響で、事故リスクが高くなる可能性や、手動運転車両MCに影響を与える可能性がある。この結果、手動運転車両MCが通常実施しないはずの減速行動をとる可能性がある場合は、これらの要因により渋滞傾向に向かう可能性があると考えられる。
【0064】
なお、分割領域の速度が低速にならない場合は、渋滞傾向ではないと分析できる。例えば、都市間高速道路では40km/h以下、都市内高速では20km/h以下等が渋滞の指標(渋滞の所定レベル)とすることができる。
【0065】
渋滞可能性判定部14は、道路状況分析部20で分析された結果に基づき、渋滞となり得るかの可能性の判定を行う。具体的には、道路状況分析部20にて得られた各区間の渋滞傾向を確認し、渋滞が増加傾向であれば渋滞可能性があると判定する。
【0066】
渋滞低減支援情報生成部16は、渋滞可能性判定部14の判定の結果、分割領域で渋滞傾向の可能性があると判定された場合、その結果と道路状況分析部20における分析結果をもとに、自動運転車両ACに対して、渋滞傾向にならないための(渋滞を低減するための)走行支援情報を生成する。
【0067】
ここで、生成する走行支援情報は、前述したように、例えば、自動運転車両ACの自動運転状況が周囲の手動運転車両MCに影響を与えて、その影響が渋滞の要因となる可能性があると判定された場合に、該当の自動運転車両ACに対して、自動運転の解除、または手動運転車両MCと同等の制御性能での自動運転を推奨する情報である。
【0068】
渋滞低減支援情報生成部16は、手動運転車両MCと同等の制御性能にすることを推奨する場合には、渋滞低減支援情報生成部16から得られる現在の交通状況(周囲の手動運転車両MCの走行状況等)を参考に走行支援情報を作成するようにしてもよい。
【0069】
なお、渋滞可能性判定部14にて、渋滞の可能性がないと判定された場合は、渋滞低減支援情報生成部16では、渋滞低減可能性なしの旨の情報を生成するようにしてもよい。また、渋滞可能性がないと判定された場合は、走行支援情報を作成しないようにしてもよい。
【0070】
出力部18は、渋滞低減支援情報生成部16で作成された走行支援情報を、道路交通管制システム100における交通管制部106に対して出力する。出力に関しては、道路交通管制システム100と道路渋滞低減支援装置10をネットワーク接続し、ネットワーク通信にて情報を出力することができる。また、出力部18は、道路交通管制システム100からWebアプリケーションを通すなどの方法で直接、個別のスマートフォンや個別のカーナビゲーションシステムに情報提供することも可能である。
【0071】
なお、
図3では、道路状況分析部20は、交通流シミュレーション部22を用いて、道路状況分析を行う例を示したが、データベース24に保持した各種データに基づいて、道路状況分析を行うようにしてもよい。データベース24に利用については後述する。
【0072】
図4は、上述のように構成される道路渋滞低減支援装置10の処理の流れを示す例示的なフローチャートである。
【0073】
まず、ステップS100において、道路情報取得部12は、道路交通管制システム100における交通管制部106より、道路交通管制システム100が取得、管理する、車両感知器情報、自動運転車両ACの車両情報等の情報を取得する(情報取得ステップ、情報取得処理)。前述したように、交通管制部106は、車両感知器情報に関して、路側に設置されている道路側センサ102の計測結果である交通量や速度、時間占有率を取得する。
【0074】
また、車両情報に関しては、自動運転車両ACと路車間通信システム104との通信により、自動運転車両AC自体の情報(自動運転車が自動運転しているか否か、自動運転車両ACの通過位置と通過時刻等の取得が可能であると想定する。更に、道路情報取得部12は、交通管制部106にて管理されている管制対象道路に関する情報(管理区間や区間の長さ、車線数等の道路形状に関する情報)も取得する。
【0075】
続いて、ステップS102において、道路状況分析部20は、道路情報取得部12が取得した情報に基づき、管制対象領域(高速道路R)の状況分析を行う(渋滞可能性判定ステップ、渋滞可能性判定処理)。道路状況の分析は、管制対象領域の高速道路Rを数百mごと等の分割領域に分割し、分割した分割領域の車両感知器情報の速度等から、渋滞であるか否かの分析を行う。この分析は、交通流シミュレーション部22によって実行することができる。
【0076】
また、道路状況分析部20は、渋滞であるか否かの判断を行う場合、取得した情報に基づき、事前に作成してデータベース24に記憶させておいた分析用マップやルールベースの分析、統計モデルや機械学習モデル、過去の実績データを用いた類似パターン検索等を用いて、交通状況の分析を行っても、同様の効果を得ることができる。
【0077】
分析用マップを使う場合は、あらかじめ交通工学的な理論的な見解から交通量と速度の情報を用いて計算し、
図5に示すような分析マップCMを作成して利用することが考えられる。
【0078】
図5は、例えば交通量と速度から、交通量=密度×速度の関係式を利用して密度の状態を演算して、平均的な車両長(車両の前後の車間距離を含めた例えば7m等)を想定して、車間距離を演算し、この車間距離をベースに、「要渋滞低減」か「注意喚起」、「支援情報不要」を設定して分析用マップを作製したイメージである。
【0079】
この様な理論的な特性等から分析用マップを事前に作成し、利用することにより、効率的かつ容易に交通状況の分析を行うことができる。このように、過去の実績データや、交通流シミュレーションの結果をもとに作成した道路交通状況分析用のマップを用いて分析することで、比較的少ない処理で分析結果を得ることができるという効果を有する。
【0080】
なお、
図5は、渋滞低減支援情報の必要度合いをマップから得るものとしての例であり、車間距離をベースに考える場合、例えば車間時間として2秒以上あれば支援情報不要、1.5秒~2秒の場合は注意喚起、1.5秒以下であれば要渋滞低減とする。
【0081】
なお、ルールベースの場合は、分析マップを周知のIF-THENルール等でルール化して実装すればよい。また、統計モデルを用いる場合、過去の交通量、速度データ(実績データ)を用いて、その状況における渋滞レベルを演算するように統計モデルを作成し、利用することができる。この場合、過去のデータの統計的な分析に基づく分析結果も得ることができる。
【0082】
更には、利用できるデータが多くある場合は、統計モデルの代わりに、周知の機械学習モデルを利用し、機械学習にて学習したモデルを用いて交通状況を分析することが考えられる。機械学習モデルの場合、新しく得られた情報がある場合に、追加で学習することも比較的容易であり、最新のデータで学習されたモデルの作成が比較的容易に実現可能である。
【0083】
渋滞可能性の判定において、管制対象領域の過去の交通状況情報と類似する類似交通状況情報を取得して、類似交通状況情報を用いて、現在の交通状況における車速分析等を行ってもよい。このように、過去の実績データを用いた類似パターン検索による分析することで、過去の類似した日時と同等の状況として分析結果を得ることができる効果を有する。
【0084】
なお、上述したように、交通流シミュレーション部22にて交通シミュレーションが利用できる場合は、演算時点の状態(交通量等)を初期状態として交通シミュレーションを行い、その結果を将来の交通状況の参考情報として交通状況を分析することができる。
【0085】
図4に戻って、続いて、ステップS104において、渋滞可能性判定部14は、道路状況分析部20で高速道路Rの交通状況を分析した後に、交通状況分析結果をもとに、所定レベル以上の渋滞となるか否かの可能性の判定を行う。例えば、得られた道路交通状況の分析結果から、
図5の分析マップCMにて、各分割領域の渋滞傾向や渋滞低減支援情報の必要度合いを確認する。渋滞可能性判定部14は、渋滞低減支援情報の必要度合いが注意喚起や要渋滞低減になった場合に、渋滞可能性があると判定する。
【0086】
ステップS104の処理において、渋滞の可能性がありと判定された場合(S104のYes)、ステップS106において、渋滞低減支援情報生成部16は、渋滞低減のための渋滞低減支援情報を生成する(渋滞低減支援情報生成ステップ、渋滞低減支援情報生成処理)。渋滞低減支援情報は、渋滞可能性がありの場合に、道路交通状況の分析結果に基づき、渋滞傾向にならないため(渋滞を低減するため)の支援情報を生成する。ここで、渋滞低減支援情報としては、例えば道路交通状況の交通シミュレーションによる分析結果から自動運転車両ACの自動運転が周囲の手動運転車両MCの運転者に影響を与えている可能性がある状況であると確認され、その影響が渋滞の要因となる可能性があると判定された場合、渋滞低減支援情報生成部16は、該当の自動運転車両ACに対して、「自動運転の解除を促す情報」、または「手動運転車両と同等の制御性能での自動運転を推奨する情報」を渋滞低減の支援情報として生成する。
【0087】
ステップS104の処理において、渋滞の可能性がないと判定された場合(S104のNo)、「渋滞可能性なしの旨の情報」を生成する。
【0088】
最後に、ステップS108において、作成された渋滞低減支援情報を、情報提供部110を介して交通管制機能を有する中央処理装置P1等で利用できるように道路交通管制システム100に出力する(出力ステップ、出力処理)。なお、渋滞低減支援情報が不要な場合は、その旨を出力する。
【0089】
このように、本実施形態の道路渋滞低減支援装置10によれば、自動運転車両ACの混在率が低い場合等で、自動運転車両ACの自動運転の挙動が周囲の手動運転車両MCの運転挙動に影響を与え、その結果、渋滞になる可能性がある場合に、生成された渋滞低減支援情報を自動運転車両ACに提供する。渋滞低減支援情報によって自動運転車両ACの自動運転の解除を促したり、自動運転の制御事態(自動運転車両ACの自動制御下での挙動)を周囲の手動運転車両MCと同等の性能(挙動)で自動運転できるようにしたりする。その結果、渋滞の可能性を低減することに寄与することができる。
【0090】
なお、上述した実施形態は、自動運転車両ACと手動運転車両MCとが混在する状況として、手動運転車両MCの存在台数に対して自動運転車両ACの存在台数が非常に少ない場合を示した。
【0091】
他の実施形態では、自動運転車両ACに少なくとも1台の手動運転車両MCが追従する状況においても上述の技術が可能である。すなわち、自動運転車両ACの高性能の制御が後続する手動運転車両MCに影響しないようにすることで、後続の手動運転車両MCの必要以上の制動操作や車線変更を抑制可能であり、後続車の運転者の負担を軽減することに寄与することが可能になる。
【0092】
また、上述した実施形態では、管制対象領域として、高速道路Rを示した。他の実施形態では、他の形態の道路、例えば一般道等にも適用可能である。なお、一般道の場合、信号機等があるため、高速道路Rよりは、渋滞緩和程度が低下する可能性があるが、周囲の手動運転車両MCに対する、自動運転車両ACの高性能化された制御により影響(車速の加減速の頻度増加等)が出にくいようにするという効果を得ることができる。手動運転車両MCの加減速の頻度増加の軽減により、渋滞の発生の抑制に寄与することができる。
【0093】
なお、上述した実施形態においては、道路渋滞低減支援装置10を道路交通管制システム100と別のパーソナルコンピュータP2にて構成する例を説明したが、道路渋滞低減支援装置10の機能を、道路交通管制システム100内にプログラム実装する場合も、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0094】
本実施形態の道路渋滞低減支援装置10のCPUで実行される道路渋滞低減支援プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0095】
さらに、道路渋滞低減支援プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、本実施形態で実行される道路渋滞低減支援プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0096】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、上記実施形態および変形例はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態およびその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0097】
10 道路渋滞低減支援装置
12 道路情報取得部
14 渋滞可能性判定部
16 渋滞低減支援情報生成部
18 出力部
20 道路状況分析部
22 交通流シミュレーション部
24 データベース
100 道路交通管制システム
102 道路側センサ
104 路車間通信システム
106 交通管制部
108 データベース
110 情報提供部
112 他システム情報提供部
AC 自動運転車両
MC,MC1,MC2,MC3,MC4 手動運転車両
P1 中央処理装置
RC サグ