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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093857
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】試験機器
(51)【国際特許分類】
   H04L 43/00 20220101AFI20230628BHJP
【FI】
H04L43/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208964
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】田代 英樹
(57)【要約】
【課題】ネットワーク機器の通信異常試験を簡単に実施する。
【解決手段】試験機器1は、送信側機器(評価対象機器または接続機器)からデータフレームを受信する受信部10,13と、データフレームを受信側機器(接続機器または評価対象機器)に送信する送信部11,12と、異常発生のための設定項目を予め保持する設定保持部18と、受信部10,13から送信部11,12に転送されるデータフレームのうち、設定項目に従って異常を発生させるべきと判定した特定のデータフレームにロストまたは遅延を擬似的に発生させる受信フレーム制御部16,17とを備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信側機器と受信側機器との間に接続される試験機器において、
前記送信側機器からデータフレームを受信するように構成された受信部と、
前記データフレームを前記受信側機器に送信するように構成された送信部と、
異常発生のための設定項目を予め保持するように構成された設定保持部と、
前記受信部から前記送信部に転送されるデータフレームのうち、前記設定項目に従って異常を発生させるべきと判定した特定のデータフレームにロストまたは遅延を擬似的に発生させるように構成された受信フレーム制御部とを備えることを特徴とする試験機器。
【請求項2】
請求項1記載の試験機器において、
前記設定項目は、データロスト周期とデータロスト数であり、
前記受信フレーム制御部は、前記受信部から前記送信部に転送されるデータフレームに対して、前記データロスト周期と前記データロスト数に従うデータロストを発生させることを特徴とする試験機器。
【請求項3】
請求項1記載の試験機器において、
前記設定項目は、通信プロトコルとデータロスト周期とデータロスト数であり、
前記受信フレーム制御部は、前記受信部から前記送信部に転送されるデータフレームのうち、前記通信プロトコルに該当するデータフレームに、前記データロスト周期と前記データロスト数に従うデータロストを発生させることを特徴とする試験機器。
【請求項4】
請求項1記載の試験機器において、
前記設定項目は、遅延時間であり、
前記受信フレーム制御部は、前記受信部から前記送信部に転送されるデータフレームに対して、前記遅延時間分の遅延を発生させることを特徴とする試験機器。
【請求項5】
請求項1記載の試験機器において、
前記設定項目は、通信プロトコルと遅延時間であり、
前記受信フレーム制御部は、前記受信部から前記送信部に転送されるデータフレームのうち、前記通信プロトコルに該当するデータフレームに、前記遅延時間分の遅延を発生させることを特徴とする試験機器。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の試験機器において、
前記設定保持部によって保持される設定項目は、外部の設定用機器から設定可能であることを特徴とする試験機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク機器の通信異常試験を行う試験機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在多くの製品がEthernet(登録商標)等のネットワークに接続されている。製品設計において通常動作時には問題が顕在化せず、データ遅延時、データロスト時などの異常動作状態において不具合が顕在化するケースが多いが、このような異常状態試験は実機での検証が難しい場合がある。
【0003】
データの遅延やロストを疑似的に発生させるためには、評価対象機器に対して大量の機器を接続するか、あるいは市販のネットワーク負荷装置を接続して高負荷試験を行い、偶発的に発生する遅延やロストを待つ必要があり、データの遅延やロストなどの試験が簡単にできないという課題があり、試験の再現性が低いという課題もあった。データロストに関しては、ケーブルを物理的に断線させてデータロストさせることも可能であるが、この場合には断線時間が長くなり、実用的な試験を行うことは難しい。データ遅延に関しては、市販のスイッチングハブを多段にして、データを疑似的に遅延させることも可能であるが、長時間の遅延のためには多くの機器が必要となる。
【0004】
従来、ネットワーク機器の異常を試験する技術として、特許文献1、特許文献2、特許文献3に開示された技術がある。
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、評価対象機器に接続する接続機器に通信異常発生装置を組み込む必要があり、多数の機器を接続する試験では使用しにくいという課題があった。また、特許文献2、特許文献3に開示された技術では、評価対象機器に通信異常発生装置を組み込む必要があり、容易に試験ができないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-093431号公報
【特許文献2】特開2011-138211号公報
【特許文献3】特開平6-131209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、ネットワーク機器の通信異常試験を簡単に実施することが可能な試験機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、送信側機器と受信側機器との間に接続される試験機器において、前記送信側機器からデータフレームを受信するように構成された受信部と、前記データフレームを前記受信側機器に送信するように構成された送信部と、異常発生のための設定項目を予め保持するように構成された設定保持部と、前記受信部から前記送信部に転送されるデータフレームのうち、前記設定項目に従って異常を発生させるべきと判定した特定のデータフレームにロストまたは遅延を擬似的に発生させるように構成された受信フレーム制御部とを備えることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の試験機器の1構成例において、前記設定項目は、データロスト周期とデータロスト数であり、前記受信フレーム制御部は、前記受信部から前記送信部に転送されるデータフレームに対して、前記データロスト周期と前記データロスト数に従うデータロストを発生させることを特徴とするものである。
また、本発明の試験機器の1構成例において、前記設定項目は、通信プロトコルとデータロスト周期とデータロスト数であり、前記受信フレーム制御部は、前記受信部から前記送信部に転送されるデータフレームのうち、前記通信プロトコルに該当するデータフレームに、前記データロスト周期と前記データロスト数に従うデータロストを発生させることを特徴とするものである。
また、本発明の試験機器の1構成例において、前記設定項目は、遅延時間であり、前記受信フレーム制御部は、前記受信部から前記送信部に転送されるデータフレームに対して、前記遅延時間分の遅延を発生させることを特徴とするものである。
また、本発明の試験機器の1構成例において、前記設定項目は、通信プロトコルと遅延時間であり、前記受信フレーム制御部は、前記受信部から前記送信部に転送されるデータフレームのうち、前記通信プロトコルに該当するデータフレームに、前記遅延時間分の遅延を発生させることを特徴とするものである。
また、本発明の試験機器の1構成例において、前記設定保持部によって保持される設定項目は、外部の設定用機器から設定可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、送信側機器と受信側機器の構成を変更することなく、送信側機器と受信側機器との間に試験機器を挿入するだけで簡単に試験が可能である。本発明では、データロストあるいはデータ遅延を簡単に発生させることができ、試験の再現性を高くすることが可能なので、ネットワーク機器の設計・評価が簡単にできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施例に係るネットワーク機器の通信異常試験時の接続形態を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施例に係る試験機器の構成を示すブロック図である。
図3図3は、データロストを擬似的に発生させる試験時の試験機器の動作を説明するフローチャートである。
図4図4は、データ遅延を擬似的に発生させる試験時の試験機器の動作を説明するフローチャートである。
図5図5は、本発明の実施例に係るネットワーク機器の通信異常試験時の別の接続形態を示すブロック図である。
図6図6は、本発明の実施例に係る試験機器を実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[発明の原理]
本発明は、評価対象機器と接続機器との間に試験機器を挿入し、試験機器がデータフレーム(例えばEthernetフレーム)の種別に応じてデータロスト、データ遅延を発生させる。また、本発明は、試験機器に接続する設定用機器により、遅延時間や、消失させるフレーム数、フレーム種別などの設定を可能とする。
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施例に係るネットワーク機器の通信異常試験時の接続形態を示すブロック図である。図1の例では、ネットワーク機器である評価対象機器2(例えばサーバ装置)と、同じくネットワーク機器である接続機器3(例えばPC等の端末)との間に、試験機器1を挿入している。また、試験機器1には、例えばPC等の設定用機器4が接続されている。評価対象機器2と試験機器1との間、試験機器1と接続機器3との間、および試験機器1と設定用機器4との間は、Ethernet等のネットワーク5によって接続されている。
【0013】
図2は試験機器1の構成を示すブロック図である。試験機器1は、評価対象機器2から送信されたデータフレームを受信する受信部10と、評価対象機器2にデータフレームを送信する送信部11と、接続機器3にデータフレームを送信する送信部12と、接続機器3から送信されたデータフレームを受信する受信部13と、設定用機器4から送信されたデータフレームを受信する受信部14と、設定用機器4にデータフレームを送信する送信部15と、受信部10から送信部12に転送されるデータフレームのうち、異常発生のための設定項目に従って異常を発生させるべきと判定した特定のデータフレームにロストまたは遅延を擬似的に発生させる受信フレーム制御部16と、受信部13から送信部11に転送されるデータフレームのうち、異常発生のための設定項目に従って異常を発生させるべきと判定した特定のデータフレームにロストまたは遅延を擬似的に発生させる受信フレーム制御部17と、設定項目を保持する設定保持部18とを備えている。
【0014】
図3はデータロストを擬似的に発生させる試験時の試験機器1の動作を説明するフローチャートである。ここでは、評価対象機器2から送信されたデータフレームにロストを発生させる場合の動作について説明する。
【0015】
最初に、試験を実施するユーザは、設定用機器4を使用して、データロストを発生させたい通信プロトコル、データロスト周期、データロスト数(例えば60フレーム毎に1回ロストなど)を試験機器1に対して設定する。具体的には、設定用機器4は、ユーザからの指定に応じて設定用のデータフレームを試験機器1に送信する(図3ステップS100)。
【0016】
試験機器1の設定保持部18は、受信部14がネットワーク5を介して設定用機器4から設定用のデータフレームを受信すると、設定用のデータフレームで指定された設定項目(通信プロトコル、データロスト周期、データロスト数)を保持する(図3ステップS101)。
【0017】
次に、試験機器1の受信部10は、ネットワーク5を介して評価対象機器2からデータフレームを受信すると(図3ステップS102においてYES)、受信したデータフレームを受信フレーム制御部16に転送する(図3ステップS103)。
【0018】
受信フレーム制御部16は、受信したデータフレームを解析して、設定保持部18で保持された設定項目で指定されたデータロストを発生させるべきかどうかを判定する(図3ステップS104)。
【0019】
例えば通信プロトコルが指定されておらず、データロスト周期が60フレーム、データロスト数が1と設定されている場合、受信フレーム制御部16は、60フレーム目のデータフレームを受信したときに、データロストが発生すべきフレームと判定し(ステップS104においてYES)、データフレームを送信部12に転送せず、データロストを発生させる(図3ステップS105)。こうして、60フレーム毎にデータロストが発生する。
【0020】
また、通信プロトコルがUDP(User Datagram Protocol) で、データロスト周期が60フレーム、データロスト数が1と設定されている場合、受信フレーム制御部16は、通信プロトコルがUDPのデータフレーム(UDPパケット)の60フレーム目を受信したときに、データロストが発生すべきフレームと判定し(ステップS104においてYES)、データフレームを送信部12に転送せず、データロストを発生させる(ステップS105)。こうして、UDPパケットに60フレーム毎にデータロストが発生する。
【0021】
また、受信フレーム制御部16は、設定項目に該当せず、データロストが発生すべきでないフレームと判定した場合(ステップS104においてNO)、受信したデータフレームを送信部12に転送する(図3ステップS106)。
送信部12は、データフレームをネットワーク5を介して接続機器3に送信する(図3ステップS107)。
【0022】
試験機器1は、例えばユーザから試験終了の指示があるまで(図3ステップS108においてYES)、ステップS102~S107の処理をフレーム毎に実行する。
【0023】
なお、本実施例では、評価対象機器2(送信側機器)から送信され接続機器3(受信側機器)が受信するデータフレームにロストを発生させる場合の動作について説明したが、接続機器3(送信側機器)から送信され評価対象機器2(受信側機器)が受信するデータフレームについても同様にロストを発生させることができる。すなわち、上記の説明において評価対象機器2と接続機器3を入れ替え、受信部10の動作を受信部13の動作とし、受信フレーム制御部16の動作を受信フレーム制御部17の動作とし、送信部12の動作を送信部11の動作とすればよい。
【0024】
図4はデータ遅延を擬似的に発生させる試験時の試験機器1の動作を説明するフローチャートである。ここでは、評価対象機器2から送信されたデータフレームに遅延を発生させる場合の動作について説明する。
【0025】
最初に、試験を実施するユーザは、設定用機器4を使用して、遅延を発生させたい通信プロトコル、遅延時間を試験機器1に対して設定する。具体的には、設定用機器4は、ユーザからの指定に応じて設定用のデータフレームを試験機器1に送信する(図4ステップS200)。
【0026】
試験機器1の設定保持部18は、受信部14がネットワーク5を介して設定用機器4から設定用のデータフレームを受信すると、設定用のデータフレームで指定された設定項目(通信プロトコル、遅延時間)を保持する(図4ステップS201)。
【0027】
次に、試験機器1の受信部10は、ネットワーク5を介して評価対象機器2からデータフレームを受信すると(図4ステップS202においてYES)、受信したデータフレームを受信フレーム制御部16に転送する(図4ステップS203)。
【0028】
受信フレーム制御部16は、受信したデータフレームを解析して、設定保持部18で保持された設定項目で指定されたデータ遅延を発生させるべきかどうかを判定する(図4ステップS204)。
【0029】
例えば通信プロトコルが指定されておらず、遅延時間が4000秒と設定されている場合、受信フレーム制御部16は、データ遅延が発生すべきフレームと判定し(ステップS204においてYES)、データフレームを即座に送信部12に転送せずに、設定項目で指定された遅延時間が経過した後に(図4ステップS205においてYES)、データフレームを送信部12に転送する(図4ステップS206)。
送信部12は、データフレームをネットワーク5を介して接続機器3に送信する(図4ステップS207)。
【0030】
また、通信プロトコルがUDPで、遅延時間が4000秒と設定されている場合、受信フレーム制御部16は、通信プロトコルがUDPのデータフレーム(UDPパケット)を受信したときに、データ遅延が発生すべきフレームと判定し(ステップS204においてYES)、設定項目で指定された遅延時間が経過した後に(ステップS205においてYES)、データフレームを送信部12に転送する(図4ステップS206)。
【0031】
また、受信フレーム制御部16は、設定項目に該当せず、データ遅延が発生すべきでないフレームと判定した場合(ステップS204においてNO)、受信したデータフレームを送信部12に転送する(ステップS206)。
試験機器1は、例えばユーザから試験終了の指示があるまで(図4ステップS208においてYES)、ステップS202~S207の処理をフレーム毎に実行する。
【0032】
なお、本実施例では、評価対象機器2(送信側機器)から送信され接続機器3(受信側機器)が受信するデータフレームに遅延を発生させる場合の動作について説明したが、接続機器3(送信側機器)から送信され評価対象機器2(受信側機器)が受信するデータフレームについても同様に遅延を発生させることができる。すなわち、上記の説明において評価対象機器2と接続機器3を入れ替え、受信部10の動作を受信部13の動作とし、受信フレーム制御部16の動作を受信フレーム制御部17の動作とし、送信部12の動作を送信部11の動作とすればよい。
【0033】
以上のように、本実施例では、評価対象機器2と接続機器3の構成を変更することなく、評価対象機器2と接続機器3との間に試験機器1を挿入するだけで簡単に試験が可能である。本実施例では、データロストあるいはデータ遅延を簡単に発生させることができ、試験の再現性を高くすることが可能なので、評価対象機器2の設計・評価が簡単にできるようになる。
【0034】
図1の例では、接続機器3を1台としているが、例えば図5の例に示すようにスイッチングハブ6を介して複数台の接続機器3を接続することも可能である。
【0035】
本実施例で説明した受信フレーム制御部16,17と設定保持部18は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインターフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を図6に示す。
【0036】
コンピュータは、CPU200と、記憶装置201と、インタフェース装置(I/F)202とを備えている。I/F202には、受信部10,13,14のハードウェアと送信部11,12,15のハードウェア等が接続される。本発明の方法を実現させるためのプログラムは記憶装置201に格納される。CPU200は、記憶装置201に格納されたプログラムに従って本実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、ネットワーク機器の試験を行う技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1…試験機器、2…評価対象機器、3…接続機器、4…設定用機器、5…ネットワーク、6…スイッチングハブ、10,13,14…受信部、11,12,15…送信部、16,17…受信フレーム制御部、18…設定保持部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6