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特開2023-93861ゴム組成物の製造方法およびタイヤの製造方法
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  • 特開-ゴム組成物の製造方法およびタイヤの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093861
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】ゴム組成物の製造方法およびタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/21 20060101AFI20230628BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20230628BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230628BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20230628BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20230628BHJP
   C08K 5/18 20060101ALI20230628BHJP
   B29D 30/00 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
C08J3/21 CEQ
C08L15/00
C08K3/36
C08K5/548
C08K3/22
C08K5/18
B29D30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208975
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 晋作
【テーマコード(参考)】
4F070
4F215
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA05
4F070AA08
4F070AB11
4F070AC04
4F070AC05
4F070AC23
4F070AC40
4F070AC52
4F070AE01
4F070AE02
4F070AE03
4F070AE08
4F070AE09
4F070FA03
4F070FA17
4F070FB06
4F070FB07
4F070FC03
4F215AA45
4F215AB06
4F215AB16
4F215AB17
4F215AH20
4F215VA11
4F215VD03
4F215VD09
4F215VD11
4F215VD12
4F215VD20
4J002AC013
4J002AC11W
4J002AC11X
4J002AE01
4J002AE03
4J002DA030
4J002DA040
4J002DE108
4J002DJ016
4J002EF050
4J002EN079
4J002EX087
4J002FD016
4J002FD079
4J002FD090
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD158
4J002FD207
4J002FD317
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】加硫速度や、低燃費性、湿潤路面制動を改善することが可能なゴム組成物の製造方法や、タイヤの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ゴム組成物の製造方法は、少なくとも、変性ポリマーを含むゴム、シリカ、シランカップリング剤、酸化亜鉛およびアミン系老化防止剤を密閉式混練機1に投入する工程と、シリカおよびシランカップリング剤のカップリング反応と、シリカおよび変性ポリマーの結合反応とが抑制されるように混練り温度を制御しながら、密閉式混練機1で混練りする工程とを含む。これによれば、これらの反応がすすむ前におけるシリカや酸化亜鉛、アミン系老化防止剤の分散の程度を高めることができる。よって、その後の混練りの際に、酸化亜鉛や老化防止剤による阻害作用を低減でき、低燃費性や湿潤路面制動性を改善できる。しかも、酸化亜鉛の分散の程度を高めることができるため加硫速度を改善できる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、変性ポリマーを含むゴム、シリカ、シランカップリング剤、酸化亜鉛およびアミン系老化防止剤を密閉式混練機に投入する工程と、
前記シリカおよび前記シランカップリング剤のカップリング反応と、前記シリカおよび前記変性ポリマーの結合反応とが抑制されるように混練り温度を制御しながら、前記密閉式混練機で混練りする工程とを含む、
ゴム組成物の製造方法。
【請求項2】
前記アミン系老化防止剤がN-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミンである、請求項1に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項3】
前記密閉式混練機に投入される前記シリカの量が、前記密閉式混練機に投入される前記ゴム100質量部に対して100質量部以上である、請求項1または2に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項4】
前記カップリング反応と前記結合反応とがすすむように混練り温度を制御しながら前記密閉式混練機で混練りする工程をさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のゴム組成物の製造方法でゴム組成物を作製する工程と、
前記ゴム組成物を用いて未加硫タイヤを作製する工程とを含む、
タイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ゴム組成物の製造方法およびタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムの補強用充填剤として使用されるシリカは、シラノール基を有するため、水素結合によって凝集する傾向がある。よって、シリカをうまく分散させることは容易ではない。とりわけ、シリカを高充てんする場合や、小粒径のシリカを使用する場合など、シリカをうまく分散させることは容易ではない。
【0003】
シリカの凝集力を低下させるために、シランカップリング剤を添加することが知られている(特許文献1参照)。シランカップリング剤は、混練りの際にシリカと反応することが可能であるため、シリカの凝集を防ぐことができる。なお、シランカップリング剤は、たとえば加硫時に、ゴムの二重結合と反応することが可能であるため、シリカとゴムとを結合することもできる。
【0004】
ところで、ゴム組成物には、加硫促進助剤として酸化亜鉛を添加することが一般におこなわれている。酸化亜鉛により、ゴム組成物の加硫速度を早めることができる。
【0005】
ゴム組成物を密閉式混練機で作製する際、ゴムやシリカ、シランカップリング剤とともに酸化亜鉛を密閉式混練機に投入すると、加硫速度が遅くなることが知られている(特許文献2参照)。すなわち、一つの混練ステージで、シリカなどとともに酸化亜鉛を投入すると、加硫速度が遅くなることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-102718号公報
【特許文献2】特開2002-220492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、変性ポリマーとともにアミン系老化防止剤を密閉式混練機に投入すると、加硫ゴムの物性、たとえばタイヤの低燃費性(すなわち低発熱性)が悪化する傾向がある。
【0008】
仮に、加硫速度や低燃費性を改善するために、変性ポリマーやシリカが投入される混練ステージとは別の混練ステージでアミン系老化防止剤や酸化亜鉛を投入したとすると、作業が煩雑となる。なぜなら、別の混練ステージでのこれらの投入は、工数の増加に他ならないためである。
【0009】
本発明は、加硫速度や、低燃費性、湿潤路面制動を改善することが可能なゴム組成物の製造方法や、タイヤの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するために、本発明のゴム組成物の製造方法は、
少なくとも、変性ポリマーを含むゴム、シリカ、シランカップリング剤、酸化亜鉛およびアミン系老化防止剤を密閉式混練機に投入する工程と、
前記シリカおよび前記シランカップリング剤のカップリング反応と、前記シリカおよび前記変性ポリマーの結合反応とが抑制されるように混練り温度を制御しながら、前記密閉式混練機で混練りする工程とを含む。
ここで、「結合反応」とは、変性ポリマーの官能基とシリカのシラノール基とが化学反応し、変性ポリマーとシリカとの間に結合が生じる反応を意味する。
【0011】
本発明のゴム組成物の製造方法によれば、少なくとも、ゴム、シリカ、シランカップリング剤、酸化亜鉛およびアミン系老化防止剤を密閉式混練機に投入するため、作業が煩わしくない。詳しく言うと、本発明のゴム組成物の製造方法では、一つの混練ステージでこれらを投入するため、変性ポリマーやシリカ、シランカップリング剤が投入される混練ステージとは別の混練ステージで酸化亜鉛やアミン系老化防止剤を投入する場合に比べて、作業が煩わしくない。
【0012】
しかも、カップリング反応(具体的には、シリカおよびシランカップリング剤のカップリング反応)と、結合反応(具体的には、シリカおよび変性ポリマーの結合反応)とが抑制されるように混練り温度を制御しながら混練りすることによって、これらの反応がすすむ前におけるシリカや酸化亜鉛、アミン系老化防止剤の分散の程度を高めることができる。その結果、その後におこなわれ得る混練りの際に、シリカや酸化亜鉛、アミン系老化防止剤が高度に分散した状態でこれらの反応が進行することができる。それ故、酸化亜鉛によるカップリング反応の阻害作用や、老化防止剤による結合反応の阻害作用を低減することが可能であり、ゴム組成物におけるシリカ分散の程度を高めることができる。したがって、低燃費性や湿潤路面制動性を改善することができる。
【0013】
しかも、本発明のゴム組成物の製造方法によれば、酸化亜鉛の分散の程度を高めることができるため、酸化亜鉛に、加硫促進助剤としての機能を効果的に発揮させることができる。その結果、加硫速度を改善することができる。
【0014】
前記アミン系老化防止剤がN-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミンである、という構成が好ましい。なぜなら、N-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミンが結合反応(具体的には、シリカおよび変性ポリマーの結合反応)の阻害作用を有するものの、その阻害作用を低減できるためである。
【0015】
前記密閉式混練機に投入される前記シリカの量が、前記密閉式混練機に投入される前記ゴム100質量部に対して100質量部以上である、という構成が好ましい。なぜなら、シリカ高配合である場合(たとえば、シリカが100質量部以上である場合)に、加硫速度の改善効果が高いためである。すなわち、一括投入すること(すなわち、少なくともゴム、シリカ、シランカップリング剤、酸化亜鉛およびアミン系老化防止剤を、一つの混練ステージで密閉式混練機に投入すること)によって生じ得た加硫速度の悪化をいっそう抑制することができるためである。
【0016】
上述のゴム組成物の製造方法は、前記カップリング反応と前記結合反応とがすすむように混練り温度を制御しながら前記密閉式混練機で混練りする工程をさらに含む、という構成が好ましい。この構成によって、シランカップリング剤をシリカに固定することができるので、シリカの凝集力を低下させることができる。すなわち、シリカの分散の程度を高めることができる。また、変性ポリマーをシリカに拘束できるので、加硫ゴムの低発熱性を改善することができる。これに加えて、混練り温度を安定させることが可能であるため、ゲル化を抑制しつつ、カップリング反応や結合反応をすすめることができる。
【0017】
本発明のタイヤの製造方法は、
上述のゴム組成物の製造方法でゴム組成物を作製する工程と、
前記ゴム組成物を用いて未加硫タイヤを作製する工程とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態で使用することが可能な密閉式混練機の構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0020】
<1.密閉式混練機>
まず、本実施形態で使用することが可能な密閉式混練機について説明する。
【0021】
図1に示すように、密閉式混練機1は、ケーシング2およびローター3を有する混練室4と、混練室4の上方に位置する筒状のネック5と、ネック5に設けられた投入口6と、投入口6を開閉することが可能なホッパドア6aと、ネック5内の空間を上下に移動可能なラム7と、混練室4の下面に位置するドロップドア9とを備える。密閉式混練機1として、たとえば、かみ合式密閉型混練機、接線式密閉型混練機を挙げることができる。
【0022】
ケーシング2の上面中央部には、開口2aが設けられている。開口2aの上方には、筒状のネック5が設けられている。ネック5の側面には、ゴムや配合剤を投入可能な投入口6が設けられている。投入口6は2つ以上設けられていてもよい。投入口6から投入されたゴムおよび配合剤は、ネック5の空間内を通って、ケーシング2の開口2aからケーシング2内に至る。
【0023】
ラム7は、ケーシング2の開口2aを閉塞可能な形状をなす。ラム7は、その上端に連結されたシャフト8によって、ネック5の空間を上下方向に移動することができる。ラム7は、その自重またはシャフト8からの押圧力によって、ケーシング2内に存在するゴムを押付・加圧することができる。
【0024】
ドロップドア9は、混練中は閉じている。混練終了後にはドロップドア9は開かれる。
【0025】
ローター3を回転させるモーター(不図示)の回転速度は、制御部11からの制御信号に基づいて調整される。制御部11は、温度センサー13から送られる混練室4内の温度情報(具体的には実測温度Tp)に基づき、モーターの回転速度の制御をおこなう。モーターは、制御部11によって回転速度を自在に変化させることができる。モーターは、たとえばインバータモーターであることができる。
【0026】
モーターの回転速度を決定するために、制御部11の内部に設けられたPID演算処理部は、温度センサー13が検出する混練室4内の実測温度Tpと目標温度Tsとの偏差から、比例(P)、積分(I)および微分(D)の演算をおこなう。具体的には、PID演算処理部は、実測温度Tpおよび目標温度Tsの差(偏差e)に比例して制御量を算出する比例(P)動作と、偏差eを時間軸方向に積分した積分値により制御量を算出する積分(I)動作と、偏差eの変化の傾きすなわち微分値より制御量を算出する微分(D)動作とによって得られる各制御量の合算値により、モーターの回転速度を決定する。なお、PIDは、Proportional Integral Differentialの略である。
【0027】
<2.ゴム組成物の製造方法>
次に、本実施形態におけるゴム組成物の製造方法について説明する。
【0028】
本実施形態におけるゴム組成物の製造方法は、ゴム混合物を作製する工程(以下、「工程S1」という。)と、少なくともゴム混合物および加硫系配合剤を混練りしてゴム組成物を得る工程(以下、「工程S2」という。)とを含む。
【0029】
<2.1.工程S1(ゴム混合物を作製する工程)>
工程S1は、少なくともゴム、シリカ、シランカップリング剤、酸化亜鉛およびアミン系老化防止剤を密閉式混練機1に投入する工程(以下、「工程K0」という。)と、シリカおよびシランカップリング剤のカップリング反応がすすむ下限温度未満、かつ、シリカおよび変性ポリマーの結合反応がすすむ下限温度未満に混練り温度を制御した状態で混練りする工程(以下、「工程K1」という。)と、混練り温度を上昇させながら混練りする工程(以下、「工程K2」という。)と、カップリング反応がすすむ下限温度以上、かつ、結合反応(具体的には、シリカおよび変性ポリマーの結合反応)がすすむ下限温度以上に混練り温度を制御した状態で混練りする工程(以下、「工程K3」という。)とを含む。
【0030】
言い換えると、工程S1は、少なくともゴム、シリカ、シランカップリング剤、酸化亜鉛およびアミン系老化防止剤を密閉式混練機1に投入する工程(すなわち工程K0)と、カップリング反応と結合反応(具体的には、シリカおよび変性ポリマーの結合反応)とが抑制されるように混練り温度を制御しながら混練りする工程(すなわち工程K1)と、混練り温度を上昇させながら混練りする工程(すなわち工程K2)と、カップリング反応と結合反応とがすすむように混練り温度を制御しながら混練りする工程(すなわち工程K3)とを含む。
【0031】
工程K0~K3は、一つの混練ステージを構成する。混練ステージは、密閉式混練機1への材料の投入から排出までのサイクルである。よって、工程K1から工程K2への移行の際に、ゴムやシリカ、シランカップリング剤などは密閉式混練機1から排出されず、工程K2から工程K3への移行の際にも、これらは密閉式混練機1から排出されない。
【0032】
<2.1.1.工程K0(ゴムやシリカなどを密閉式混練機1に投入する工程)>
工程K0では、少なくともゴム、シリカ、シランカップリング剤、酸化亜鉛およびアミン系老化防止剤を密閉式混練機1に投入する。これらはまとめて投入してもよく、任意の順で投入してもよい。なお、密閉式混練機1に投入口6が2つ以上設けられている場合には、2つ以上の投入口6からこれらを投入してもよい。
【0033】
ゴムとして、たとえば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム、クロロプレンゴムなどを挙げることができる。これらから、一つまたは任意の組み合わせを選択して、使用することができる。ゴムは、ジエン系ゴムであることが好ましい。
【0034】
ゴムは変性ポリマーを含む。変性ポリマーは官能基を有する。変性ポリマーは、官能基を有する変性剤によって変性されたポリマーであることができる。官能基としてはアルコキシ基が好ましい。なぜなら、アルコキシ基は、シリカのシラノール基と化学反応し、Si-O-Si結合を形成できるためである。すなわち、変性ポリマーがアルコキシ基を有することによって、変性ポリマーとシリカとの間に化学結合を生成することができるためである。アルコキシ基として、たとえば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基を挙げることができる。なお、官能基は、ポリマー鎖の末端に導入されてもよく、ポリマー鎖中に導入されてもよいが、好ましくは末端に導入されることである。変性ポリマーは、一種または二種以上を使用することができる。変性ポリマーとして、たとえば、変性SBR、変性BRを挙げることができる。なかでも変性SBRが好ましい。
【0035】
ゴムは、変性ポリマー以外のゴムを含んでいてもよい。そのようなゴムとして、たとえば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム、クロロプレンゴムなどを挙げることができる。これらから、一つまたは任意の組み合わせを選択して、使用することができる。
【0036】
工程K0で投入されるゴム100質量%中の変性ポリマーの量は、20質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよく、60質量%以上であってもよい。ゴム100質量%中の変性ポリマーの量は、100質量%であってもよく、90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよい。
【0037】
シリカとして、たとえば、湿式シリカ、乾式シリカを挙げることができる。なかでも、湿式シリカが好ましい。湿式シリカとして、沈降法シリカを挙げることができる。シリカの窒素吸着法による比表面積は、たとえば、80m/g以上であってもよく、120m/g以上であってもよく、140m/g以上であってもよく、160m/g以上であってもよい。シリカの比表面積は、たとえば、300m/g以下であってもよく、280m/g以下であってもよく、260m/g以下であってもよく、250m/g以下であってもよい。ここで、シリカの比表面積は、JIS K-6430に記載の多点窒素吸着法(BET法)に準じて測定される。
【0038】
工程K0で投入されるシリカの量は、工程K0で投入されるゴム100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上、さらに好ましくは70質量部以上、さらに好ましくは100質量部以上である。シリカの量は、ゴム100質量部に対して、好ましくは150質量部以下、より好ましくは140質量部以下、さらに好ましくは130質量部以下、さらに好ましくは120質量部以下である。
【0039】
シランカップリング剤として、たとえば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエキトシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィドシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプトシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-プロピオニルチオプロピルトリメトキシシランなどの保護化メルカプトシランを挙げることができる。これらから、一つまたは任意の組み合わせを選択して、使用することができる。
【0040】
工程K0で投入されるシランカップリング剤の量は、工程K0で投入されるシリカ100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上である。シランカップリング剤量の上限は、シリカ100質量部に対して、たとえば20質量部、15質量部である。
【0041】
工程K0で投入される酸化亜鉛の量は、工程K0で投入されるゴム100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上である。酸化亜鉛の量は、ゴム100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
【0042】
アミン系老化防止剤として、たとえば、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、アルキル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、p-(p-トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N-フェニル-N’-(3-メタクロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体を挙げることができる。これらから、一つまたは任意の組み合わせを選択して、使用することができる。なかでも、N-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミンが好ましい。なぜなら、N-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミンが結合反応(具体的には、シリカおよび変性ポリマーの結合反応)の阻害作用を有するものの、その阻害作用を、本実施形態におけるゴム組成物の製造方法によって低減できるためである。
【0043】
工程K0で投入されるアミン系老化防止剤の量は、工程K0で投入されるゴム100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上である。アミン系老化防止剤の量は、ゴム100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは4質量部以下である。
【0044】
工程K0では、ゴム、シリカ、シランカップリング剤、酸化亜鉛およびアミン系老化防止剤とともに、他の老化防止剤、カーボンブラック、ステアリン酸、ワックス、オイルなどを密閉式混練機1に投入することができる。これらから、一つまたは任意の組み合わせを選択して、投入することができる。
【0045】
カーボンブラックとしては、たとえばSAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなどのファーネスブラックのほか、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックは、そのハンドリング性を考慮して造粒された、造粒カーボンブラックであってもよく、未造粒カーボンブラックであってもよい。これらのうち一種または二種以上を使用することができる。
【0046】
工程K0では、フィルファクターが60%~80%となるように、ゴムなど(すなわち、少なくともゴム、シリカ、シランカップリング剤、酸化亜鉛およびアミン系老化防止剤)を密閉式混練機1に投入することが好ましい。60%以上であると、混練り温度を所定の温度まで上昇させたいときに、差支えなく上昇させることができる。いっぽう、80%以下であると、ゴムなどの混練対象物に、せん断を効果的にかけることができる。よって、シリカを、効果的に分散させることができる。なお、フィルファクターは、密閉式混練機1の容量に対する、仕込み全材料(すなわち、工程K0で投入される全材料)の容量比である。
【0047】
<2.1.2.工程K1(カップリング反応と結合反応とが抑制されるように混練り温度を制御しながら混練りする工程)>
工程K1では、シリカおよびシランカップリング剤のカップリング反応がすすむ下限温度未満、かつ、シリカおよび変性ポリマーの結合反応がすすむ下限温度未満に混練り温度を制御した状態で、少なくともゴム、シリカ、シランカップリング剤、酸化亜鉛およびアミン系老化防止剤を混練りする。すなわち、工程K1では、カップリング反応と結合反応とが抑制されるように、混練り温度を制御しながらこれらを混練りする。工程K1によって、これらの反応がすすむ前におけるシリカや酸化亜鉛、アミン系老化防止剤の分散の程度を高めることができる。その結果、工程K3において、シリカや酸化亜鉛、アミン系老化防止剤が高度に分散した状態で、カップリング反応や結合反応が進行することができる。それ故、酸化亜鉛によるカップリング反応の阻害作用や、老化防止剤による結合反応の阻害作用を低減することが可能であり、ゴム組成物におけるシリカ分散の程度を高めることができる。したがって、低燃費性や湿潤路面制動性を改善することができる。しかも、酸化亜鉛の分散の程度を高めることができるため、酸化亜鉛に、加硫促進助剤としての機能を効果的に発揮させることができる。その結果、加硫速度を改善することができる。
【0048】
工程K1では、混練り温度が、一定に保持されるように混練りする。工程K1では、具体的には、実測温度Tpが、目標温度Tsに保持されるように混練りする。このとき、実測温度Tpが、目標温度Tsのプラスマイナス5℃内に保持され得る。目標温度Tsは、140℃未満であってもよく、138℃以下であってもよく、135℃以下であってもよく、132℃以下であってもよく、130℃以下であってもよい。目標温度Tsは、100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、115℃以上がさらに好ましく、120℃以上がさらに好ましい。これが低すぎると、シリカを分散させるために時間がかかる傾向がある。なお、目標温度Tsは、配合を考慮して、特にシランカップ剤の種類を考慮して適宜設定することができる。
【0049】
工程K1では、たとえば30秒以上、混練り温度が一定の範囲内に保持されるように混練りする。すなわち、30秒以上、混練り温度を制御する。これは、40秒以上が好ましく、50秒以上がより好ましく、60秒以上がさらに好ましい。これは、1000秒以下であってもよく、800秒以下であってもよく、600秒以下であってもよく、400秒以下であってもよく、200秒以下であってもよく、120秒以下であってもよい。
【0050】
混練り温度の保持は、ローター3の回転速度の調整によっておこなわれる。具体的には、ローター3の回転速度が、PID制御で調整されることによって、混練り温度の保持がおこなわれる。ここでは、ローター3の回転速度が、実測温度Tpを目標温度TsとするためのPID制御で調整される。PID制御は、混練りの当初から開始してもよく、実測温度Tpが、所定の温度(たとえば目標温度Tsや、目標温度Tsよりもいくらか低い温度)に到達することをもって、開始してもよい。
【0051】
<2.1.3.工程K2(混練り温度を上昇させながら混練りする工程)>
工程K2では、混練り温度を上昇させながら混練りする。工程K2では、混練り温度を、カップリング反応が活発にすすむ温度(たとえば140℃以上)程度まで上昇させることができる。たとえば、混練り温度を、工程K3の目標温度Tsや、目標温度Tsよりもいくらか低い温度まで上昇させることができる。
【0052】
<2.1.4.工程K3(カップリング反応と結合反応とがすすむように混練り温度を制御しながら混練りする工程)>
工程K3では、カップリング反応がすすむ下限温度以上、かつ、結合反応(具体的には、シリカおよび変性ポリマーの結合反応)がすすむ下限温度以上に混練り温度を制御した状態で混練りする。すなわち、工程K3では、カップリング反応と結合反応とがすすむように混練り温度を制御しながら混練りする。工程K3によって、シランカップリング剤をシリカに固定することができるので、シリカの凝集力を低下させることができる。すなわち、シリカの分散の程度を高めることができる。また、変性ポリマーをシリカに拘束できるので、加硫ゴムの低発熱性を改善することができる。これに加えて、混練り温度を安定させることが可能であるため、ゲル化を抑制しつつ、カップリング反応や結合反応をすすめることができる。
【0053】
工程K3では、混練り温度が、一定に保持されるように混練りする。工程K3では、具体的には、実測温度Tpが、目標温度Tsに保持されるように混練りする。このとき、実測温度Tpが、目標温度Tsのプラスマイナス5℃内に保持され得る。目標温度Tsは、140℃以上であってもよく、142℃以上であってもよく、145℃以上であってもよく、148℃以上であってもよく、150℃以上であってもよい。これが低すぎると、カップリング反応をすすめるために時間がかかり過ぎる傾向がある。目標温度Tsは、170℃以下が好ましく、165℃以下がより好ましく、160℃以下がさらに好ましく、155℃以下がさらに好ましく、153℃以下がさらに好ましい。これが高すぎると、ゲルが発生することがある。
【0054】
工程K3では、たとえば10秒以上、混練り温度が一定の範囲内に保持されるように混練りする。すなわち、10秒以上、混練り温度を制御する。これは、30秒以上が好ましく、50秒以上がより好ましく、80秒以上がさらに好ましく、100秒以上がさらに好ましい。これは、1000秒以下であってもよく、800秒以下であってもよく、600秒以下であってもよく、400秒以下であってもよく、200秒以下であってもよく、150秒以下であってもよい。
【0055】
なお、混練り温度の保持は、工程K1と同じように、ローター3の回転速度の調整によっておこなわれる。具体的には、ローター3の回転速度が、PID制御で調整されることによって、混練り温度の保持がおこなわれる。ここでは、ローター3の回転速度が、実測温度Tpを目標温度TsとするためのPID制御で調整される。これ(具体的には、PID制御でローター3の回転速度を制御すること)によって、せん断発熱による混練り温度上昇を抑制することが可能であるため、混練り温度を安定させることができる。したがって、ゲル化を抑制しつつ、カップリング反応や結合反応(具体的には、シリカおよび変性ポリマーの結合反応)をすすめることができる。
【0056】
その後、必要に応じて、所定の排出温度まで混練りを続け、ドロップドア9を開け、ゴム混合物を排出する。
【0057】
<2.1.4.そのほか>
必要に応じて、シリカの分散性向上や、ムーニー粘度の低減のために、ゴム混合物をさらに混練りすることができる。つまり、再練りすることができる。再練りは、複数回おこなわれてもよい。再練りの際に、ゴムやシリカ、シランカップリング剤、酸化亜鉛、老化防止剤、カーボンブラック、ステアリン酸、ワックス、オイルなどをゴム混合物に追加してもよい。ただし、これらをゴム混合物に追加する分、作業が煩雑になるため、これらをゴム混合物に追加しないことが好ましい。とりわけ、酸化亜鉛やアミン系老化防止剤は、ゴム混合物に追加しないことが好ましい。
【0058】
以上のような手順で、ゴム混合物を得ることができる。
【0059】
<2.2.工程S2(ゴム混合物および加硫系配合剤を混練りしてゴム組成物を得る工程)>
工程S2では、少なくともゴム混合物および加硫系配合剤を混練りしてゴム組成物を得る。加硫系配合剤として硫黄、有機過酸化物などの加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤などを挙げることができる。加硫系配合剤は、これらから、一つまたは任意の組み合わせを選択して、使用することができる。硫黄として粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを挙げることができる。硫黄は、これらから、一つまたは任意の組み合わせを選択して、使用することができる。加硫促進剤としてスルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などを挙げることができる。加硫促進剤は、これらから、一つまたは任意の組み合わせを選択して、使用することができる。混練りは、混練機でおこなうことができる。混練機として密閉式混練機、オープンロールなどを挙げることができる。密閉式混練機としてバンバリーミキサー、ニーダーなどを挙げることができる。
【0060】
ゴム組成物において、シリカの量は、ゴム100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上、さらに好ましくは70質量部以上、さらに好ましくは100質量部以上である。シリカの量は、ゴム100質量部に対して、好ましくは150質量部以下、より好ましくは140質量部以下、さらに好ましくは130質量部以下、さらに好ましくは120質量部以下である。
【0061】
ゴム組成物は、カーボンブラック、ステアリン酸、ワックス、オイル、硫黄、加硫促進剤などをさらに含むことができる。これらのうち、一つまたは任意の組み合わせをゴム組成物は含むことができる。硫黄の量は、ゴム100質量部に対して、硫黄分換算で好ましくは0.5質量部~5質量部である。加硫促進剤の量は、ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1質量部~5質量部である。
【0062】
ゴム組成物は、タイヤの作製に使用できる。具体的には、タイヤを構成するタイヤ部材の作製に使用可能である。たとえば、トレッドゴム、サイドウォールゴム、チェーファーゴム、ビードフィラーゴムなどの作製にゴム組成物を使用できる。これらのタイヤ部材のうち、一つまたは任意の組み合わせを作製するためにゴム組成物を使用できる。
【0063】
<3.タイヤの製造方法>
次に、本実施形態におけるタイヤの製造方法について説明する。なお、本実施形態におけるタイヤの製造方法が含む工程のうち、ゴム組成物の作製工程はすでに説明した。
【0064】
本実施形態におけるタイヤの製造方法は、ゴム組成物を用いて未加硫タイヤを作製する工程を含む。この工程は、ゴム組成物を含むタイヤ部材を作製すること、およびタイヤ部材を備える未加硫タイヤを作製することを含む。タイヤ部材として、たとえば、トレッドゴム、サイドウォールゴム、チェーファーゴム、ビードフィラーゴムを挙げることができる。なかでも、トレッドゴムが好ましい。
【0065】
本実施形態におけるタイヤの製造方法は、未加硫タイヤを加硫成型する工程をさらに含むことができる。本実施形態の方法で得られたタイヤは、空気入りタイヤであることができる。
【0066】
<4.上述の実施形態には種々の変更を加えることができる>
上述の実施形態には、種々の変更を加えることができる。たとえば、以下の変形例から、一つまたは複数を選択して、上述の実施形態に変更を加えることができる。
【0067】
上述の実施形態では、工程K1にて、ローター3の回転速度で混練り温度を制御する、という構成を説明した。しかしながら、上述の実施形態は、この構成に限定されない。たとえば、密閉式混練機1のジャケット(不図示)を流れる加熱冷却媒体の温度で混練り温度を制御してもよい。
【0068】
上述の実施形態では、工程K1にて、混練り温度をPID制御に基づいて制御する、という構成を説明した。しかしながら、上述の実施形態は、この構成に限定されない。PID制御以外の制御方法に基づいて混練り温度を制御してもよい。
【0069】
上述の実施形態では、ゴム組成物の製造方法が、工程K3(すなわち、カップリング反応と結合反応とがすすむように混練り温度を制御しながら混練りする工程)を含む、という構成を説明した。しかしながら、上述の実施形態は、この構成に限定されない。すなわち、ゴム組成物の製造方法が、工程K3を含まなくてもよい。この場合、たとえば、工程K2(すなわち、混練り温度を上昇させながら混練りする工程)で、混練り温度が、所定の排出温度となるまで混練りを続け、ドロップドア9を開け、ゴム混合物を排出することができる。ここで、「所定の排出温度」は、カップリング反応がすすむ下限温度以上、かつ、結合反応(具体的には、シリカおよび変性ポリマーの結合反応)がすすむ下限温度以上であることができる。
【0070】
上述の実施形態では、工程K3にて、ローター3の回転速度で混練り温度を制御する、という構成を説明した。しかしながら、上述の実施形態は、この構成に限定されない。たとえば、密閉式混練機1のジャケット(不図示)を流れる加熱冷却媒体の温度で混練り温度を制御してもよい。
【0071】
上述の実施形態では、工程K3にて、混練り温度をPID制御に基づいて制御する、という構成を説明した。しかしながら、上述の実施形態は、この構成に限定されない。PID制御以外の制御方法に基づいて混練り温度を制御してもよい。
【0072】
上述の実施形態では、ゴム混合物および加硫系配合剤を混練りしてゴム組成物を得る、という構成を説明した。しかしながら、上述の実施形態は、この構成に限定されない。たとえば、ゴム混合物をゴム組成物とみなしてもよい。
【実施例0073】
以下に、本開示の実施例を説明する。
【0074】
実施例で使用した原料および薬品を次に示す。
変性溶液重合SBR1 「HPR350」JSR社製
変性溶液重合SBR2 「HPR355」JSR社製
NR RSS#3
カーボンブラック 「シーストKH」東海カーボン社製
シリカ 「VN3」(BET=180m/g)エボニック社製
シランカップリング剤 「Si75」デグッサ社製
オイル 「プロセスNC140」JX日鉱日石社製
酸化亜鉛 「1号亜鉛華」三井金属鉱業社製
老化防止剤 「アンチゲン6C」住友化学社製
ワックス 「OZOACE0355」日本精蝋社製
ステアリン酸 「工業用ステアリン酸」花王社製
硫黄 「5%油処理粉末硫黄」鶴見化学工業社製
加硫促進剤 「ノクセラーNS-P」大内新興化学工業社製
【0075】
比較例1における未加硫ゴムの作製
表1にしたがってゴムと配合剤とをバンバリーミキサーに投入し、PID制御なしで混練りし、160℃で混合物を排出した(第一混練ステージ)。第一混練ステージで得られた混合物に、表1にしたがって酸化亜鉛および老化防止剤を添加し、PID制御なしで混練りし、160℃で排出した(第二混練ステージ)。第二混練ステージで得られた混合物に、表1にしたがって硫黄および加硫促進剤を添加したうえで混練りし、未加硫ゴムを得た(ファイナルステージ)。
【0076】
比較例2における未加硫ゴムの作製
表1にしたがってゴムと配合剤とをバンバリーミキサーに投入し、PID制御なしで混練りし、160℃で混合物を排出した(第一混練ステージ)。第一混練ステージで得られた混合物に、表1にしたがって硫黄および加硫促進剤を添加したうえで混練りし、未加硫ゴムを得た(ファイナルステージ)。
【0077】
比較例3および5における未加硫ゴムの作製
表1にしたがってゴムと配合剤とをバンバリーミキサーに投入し、PID制御(具体的には、制御開始温度150℃、目標温度150℃、制御時間120秒のPID制御)有りで混練りし、160℃で混合物を排出した(第一混練ステージ)。第一混練ステージで得られた混合物に、表1にしたがって硫黄および加硫促進剤を添加したうえで混練りし、未加硫ゴムを得た(ファイナルステージ)。
【0078】
比較例4における未加硫ゴムの作製
表1にしたがってゴムと配合剤とをバンバリーミキサーに投入し、PID制御(具体的には、制御開始温度130℃、目標温度130℃、制御時間60秒の第一PID制御と、制御開始温度150℃、目標温度150℃、制御時間120秒の第二PID制御とで構成されるPID制御)有りで混練りし、160℃で混合物を排出した(第一混練ステージ)。第一混練ステージで得られた混合物に、表1にしたがって酸化亜鉛および老化防止剤を添加し、PID制御なしで混練りし、160℃で排出した(第二混練ステージ)。第二混練ステージで得られた混合物に、表1にしたがって硫黄および加硫促進剤を添加したうえで混練りし、未加硫ゴムを得た(ファイナルステージ)。
【0079】
実施例1~3における未加硫ゴムの作製
表1にしたがってゴムと配合剤とをバンバリーミキサーに投入し、PID制御(具体的には、制御開始温度130℃、目標温度130℃、制御時間60秒の第一PID制御と、制御開始温度150℃、目標温度150℃、制御時間120秒の第二PID制御とで構成されるPID制御)有りで混練りし、160℃で混合物を排出した(第一混練ステージ)。第一混練ステージで得られた混合物に、表1にしたがって硫黄および加硫促進剤を添加したうえで混練りし、未加硫ゴムを得た(ファイナルステージ)。
【0080】
実施例4における未加硫ゴムの作製
表1にしたがってゴムと配合剤とをバンバリーミキサーに投入し、PID制御(具体的には、制御開始温度120℃、目標温度120℃、制御時間80秒の第一PID制御と、制御開始温度150℃、目標温度150℃、制御時間120秒の第二PID制御とで構成されるPID制御)有りで混練りし、160℃で混合物を排出した(第一混練ステージ)。第一混練ステージで得られた混合物に、表1にしたがって硫黄および加硫促進剤を添加したうえで混練りし、未加硫ゴムを得た(ファイナルステージ)。
【0081】
加硫ゴムの作製
未加硫ゴムを160℃、30分間で加硫し、加硫ゴムを得た。
【0082】
生産性
生産性は、排出量についての評価である。比較例1の排出量を100とした指数で、各例の排出量を、表1の生産性の欄に示す。指数が大きいほど排出量が多い。つまり、指数が大きいほど生産性に優れる。
【0083】
低燃費性
加硫ゴムのtanδを、上島製作所製の動的粘弾性測定装置を使用し、JIS K-6394に準じて測定した。測定条件は、周波数10Hz、動歪み1.0%、温度60℃、静歪み(初期歪み)10%の条件であった。比較例1のtanδを100とした指数で、各例のtanδを表1に示す。指数が小さいほどtanδが低く、低燃費性に優れる。
【0084】
湿潤路面制動性
リュプケ式反発弾性試験機を使用し、23℃の条件でJIS K6255に準じて、反発弾性(%)を測定した。比較例1における反発弾性の逆数を100とした指数で、各例の逆数(すなわち反発弾性の逆数)を表1に示す。指数が大きいほど湿潤路面制動性に優れる。
【0085】
加硫速度
未加硫ゴムについて、JIS K6300-2に準じて加硫試験をおこない、加硫曲線(具体的には、縦軸にトルク、横軸に加硫時間が記録された加硫曲線)を求めたうえで、50%加硫時間(t50)を算出した。加硫試験は160℃でおこなった。50%加硫時間(t50)は、加硫曲線におけるトルクの最大値(Fmax)と最小値(Fmin)とから、次式で算出した。
t50={(Fmax-Fmin)×0.5+Fmin}
比較例1の50%加硫時間(t50)を100とした指数で、各例の50%加硫時間(t50)を表1に示す。指数が小さいほど50%加硫時間(t50)が短く、加硫速度が速い。
【0086】
【表1】
【0087】
第一混練ステージでPID制御なしで混練りする手法において、老化防止剤や酸化亜鉛を第一混練ステージで添加した場合、第二混練ステージでこれらを添加した場合に比べて、加硫速度が遅かった(比較例1および比較例2参照)。これに加えて、老化防止剤や酸化亜鉛を第一混練ステージで添加した場合、低燃費性が悪かった(比較例1および比較例2参照)。
【0088】
第一混練ステージでPID制御(具体的には、目標温度130℃の第一PID制御と、目標温度150℃の第二PID制御とで構成されるPID制御)有りで混練りする手法において、第一混練ステージにて老化防止剤や酸化亜鉛を添加した場合の加硫速度は、第二混練ステージでこれらを添加した場合の加硫速度と同程度であった(比較例4および実施例1参照)。これに加えて、第一混練ステージにて老化防止剤や酸化亜鉛を添加した場合、低燃費性や湿潤路面制動性が優れていた(比較例4および実施例1参照)。
【0089】
第一混練ステージで老化防止剤や酸化亜鉛を投入する手法において、PID制御が、目標温度130℃の第一PID制御と、目標温度150℃の第二PID制御とで構成される場合、PID制御が、目標温度150℃の第二PID制御だけで構成される場合に比べて、加硫速度が早かった(比較例3および実施例1参照。比較例5および実施例2参照。)。これに加えて、PID制御が、目標温度130℃の第一PID制御と、目標温度150℃の第二PID制御とで構成される場合、低燃費性や湿潤路面制動性が優れていた(比較例3および実施例1参照。比較例5および実施例2参照。)。
【0090】
なお、シリカ100質量部の配合において、加硫速度が、比較例5では168ポイントであり、実施例2では95ポイントであったことから、その差は73ポイントであった。いっぽう、シリカ70質量部の配合において、加硫速度が、比較例3では149ポイントであり、実施例1では95ポイントであったことから、その差は54ポイントであった。これらによれば、シリカ100質量部における加硫速度の改善効果が、シリカ70質量部のそれよりも優れていた。
【符号の説明】
【0091】
1…密閉式混練機、2…ケーシング、2a…開口、3…ローター、4…混練室、5…ネック、6…投入口、6a…ホッパドア、7…ラム、8…シャフト、9…ドロップドア、11…制御部、13…温度センサー
図1