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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093862
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】巻線装置、巻線方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/10 20060101AFI20230628BHJP
   H02K 15/04 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
H01F41/10 C
H02K15/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208978
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】折本 真毅
(72)【発明者】
【氏名】中福 雷音
【テーマコード(参考)】
5E062
5H615
【Fターム(参考)】
5E062FG15
5H615AA01
5H615PP12
5H615QQ19
5H615SS08
5H615SS11
5H615SS57
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ワークに巻き回す導線における被膜の剥離位置を精度良く調節する巻線装置及び巻線方法を提供する。
【解決手段】巻線装置100は、複数の板材が積層された積層体を含むワークに導線を巻き回し、一部の導線の被膜を剥離する。この際、巻線装置100は、センサ及び基準ワーク間の基準距離又はセンサ及び回転軸間の基準間隔と、センサ及び基準ワーク間の最短距離とに基づいて、ワークの積層方向におけるサイズを基準ワークの基準サイズから減算した差分値を算出する。巻線装置100は、差分値に基づいて、導線における被膜の剥離位置を調節する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導線の被膜を剥離可能な剥離ユニットと、
複数の板材が積層された積層体を含むワークに、前記剥離ユニットを経由して供給される前記導線を巻き回す巻回ユニットと、
前記巻回ユニットに取り付け可能な基準ワークの基準サイズと、基準距離及び基準間隔のうちの一方の長さと、を記憶する記憶部と、
前記剥離ユニット及び前記巻回ユニットを制御する制御部と、
を備え、
前記巻回ユニットは、
前記積層体の積層方向と垂直な第1方向に延びる回転軸を中心にして、前記ワーク及び前記基準ワークのうちの一方の部材を回転させる回転部と、
前記第1方向と直交する第2方向において前記一方の部材と対向する単数のセンサを有して、前記センサ及び前記一方の部材間の最短距離を検出する検出ユニットと、
を有し、
前記基準サイズは、前記ワークの前記積層方向において基準となる前記基準ワークのサイズであって、
前記基準距離は、前記第2方向における前記センサ及び前記基準ワーク間の最短距離であり、
前記基準間隔は、前記第2方向における前記センサ及び前記回転軸間の間隔であり、
第1距離は、前記ワークの前記積層方向の一方が前記第2方向の一方と同じ向きとなる際に前記検出ユニットで検出される前記センサ及び前記ワーク間の最短距離であり、
第2距離は、前記ワークの前記積層方向の他方が前記第2方向の一方と同じ向きとなる際に前記検出ユニットで検出される前記センサ及び前記ワーク間の最短距離であり、
前記制御部は、
前記一方の長さ、前記第1距離、及び前記第2距離、に基づいて、前記ワークの前記積層方向におけるサイズを前記基準サイズから減算した差分値を算出する演算部と、
前記差分値に基づいて、前記導線における前記被膜の剥離位置を調節する調節部と、
を有する、巻線装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記基準間隔Lcを記憶し、
前記演算部は、前記基準間隔Lc、前記第1距離L1、及び、前記第2距離L2を用いて、下記数式(3)から前記ワークの前記積層方向における前記サイズLを算出する、請求項1に記載の巻線装置。
[数3]
L=2Lc-L1-L2 ・・・(3)
【請求項3】
前記記憶部は、前記基準距離Lsを記憶し、
前記演算部は、前記基準サイズLm、前記基準距離Ls、前記第1距離L1、及び、前記第2距離L2を用いて、下記数式(4)から前記ワークの前記積層方向における前記サイズLを算出する、請求項1に記載の巻線装置。
[数4]
L=2Ls+Lm-L1-L2 ・・・(4)
【請求項4】
前記剥離ユニットは、
前記導線から前記被膜を剥離させる剥離部と、
前記差分値に基づいて前記剥離部を前記ワークに対して進退させる位置駆動部と、
を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の巻線装置。
【請求項5】
前記調節部は、
前記差分値が負の数であれば、前記差分値に応じて、前記剥離部を前記ワークから離し、
前記差分値が正の数であれば、前記差分値に応じて、前記剥離部を前記ワークに近付ける、請求項4に記載の巻線装置。
【請求項6】
前記調節部は、
前記差分値が負の数であれば、前記差分値に応じて、前記ワークに前記導線を巻き回す回転角度を大きくし、
前記差分値が正の数であれば、前記差分値に応じて、前記回転角度を小さくする、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の巻線装置。
【請求項7】
インシュレータを介した前記導線の巻き回しによって、前記積層体を有するステータ片にコイル部を配置する巻線装置であって、
前記巻回ユニットは、前記積層体の円弧状のコアバック部から前記第1方向に延びるティース部の側面に前記インシュレータを介して前記導線を巻き回す、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の巻線装置。
【請求項8】
導線の被膜を剥離ユニットが剥離する剥離ステップと、
複数の板材が積層された積層体を含むワークに、前記剥離ユニットを経由して供給される前記導線を巻回ユニットが巻き回す巻回ステップと、
前記積層体の積層方向における前記ワークのサイズを基準サイズから減算した差分値を演算部が算出する演算ステップと、
前記導線における前記被膜の剥離位置を調節部が調節する調節ステップと、
を備え、
前記巻回ステップは、
前記積層方向と垂直な第1方向に延びる回転軸を中心にして、前記ワークと、前記巻回ユニットに取り付け可能な基準ワークと、のうちの一方の部材を回転部が回転させる回転ステップと、
前記第1方向と直交する第2方向において前記一方の部材と対向する単数のセンサと前記一方の部材との間の最短距離を検出ユニットが検出する検出ステップと、
を有し、
前記検出ステップは、
前記ワークの前記積層方向の一方が前記第2方向の一方と同じ向きとなる際に前記検出ユニットが前記センサ及び前記ワーク間の最短距離である第1距離を検出する第1検出ステップと、
前記ワークの前記積層方向の他方が前記第2方向の一方と同じ向きとなる際に前記検出ユニットが前記センサ及び前記ワーク間の最短距離である第2距離を検出する第2検出ステップと、
を有し、
前記基準サイズは、前記ワークの前記積層方向において基準となる前記基準ワークのサイズであって、
基準距離は、第2方向における前記センサ及び前記基準ワーク間の最短距離であり、
基準間隔は、前記第2方向における前記センサ及び前記回転軸間の間隔であり、
前記演算ステップにおいて、前記演算部は、前記基準距離及び前記基準間隔のうちの一方の長さ、前記第1距離、及び、前記第2距離に基づいて、前記ワークの前記積層方向におけるサイズを前記基準サイズから減算した差分値を算出し、
前記調節ステップにおいて、前記調節部は、前記差分値に基づいて、前記導線における前記被膜の前記剥離位置を調節する、巻線方法。
【請求項9】
前記調節ステップは、前記差分値に基づいて、前記導線から前記被膜を剥離する剥離部を前記ワークに対して進退させる駆動ステップを有する、請求項8に記載の巻線方法。
【請求項10】
前記調節ステップは、
前記差分値が負の数であれば、前記差分値に応じて、前記ワークに前記導線を巻き回す回転角度を大きくする第1調節ステップと、
前記差分値が正の数であれば、前記差分値に応じて、前記回転角度を小さくする第2調節ステップと、
を有する、請求項8又は請求項9に記載の巻線方法。
【請求項11】
前記第1検出ステップ及び前記第2検出ステップは、前記ワークに対する前記導線の巻き回しと同時に実施される、請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の巻線方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻線装置、巻線方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークに巻き回した導線のような線材を被覆する被膜を剥離する巻線装置が知られている。たとえば、超音波振動装置を用いて、コイルボビンの外周に巻回した線材の絶縁被覆に超音波領域の周波数の振動を付与することにより、線材から絶縁被覆を剥離させる。(たとえば特開2000-036428号公報参照)
【0003】
また、導線のような線材の被膜を剥離する位置を精度良く制御するためには、ワークの線材を巻き回す部分のサイズのばらつきを考慮する必要がある。たとえば、モータ装置のステータ片に導線を巻き回すことでコイル部を形成する場合、ステータコア片を形成する複数の鋼板の積層公差により、その積層方向のサイズにばらつきが生じる。ワークのサイズのばらつきが無視できない場合、絶縁被膜の剥離位置がずれて、巻き回した導線から成るコイル部の端部を他の部材と電気的に接続する際に両者の接続不良が生じる虞がある。従って、サイズのばらつきに応じて、被膜の剥離位置を調節する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-036428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2000-036428号公報では、ワークのサイズのばらつきに応じて絶縁被膜の剥離位置を調整することには言及していない。
【0006】
本発明は、ワークに巻き回す導線における被膜の剥離位置を精度良く調節することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の例示的な巻線装置は、剥離ユニットと、巻回ユニットと、記憶部と、制御部と、を備える。前記剥離ユニットは、導線の被膜を剥離可能である。前記巻回ユニットは、複数の板材が積層された積層体を含むワークに、前記剥離ユニットを経由して供給される前記導線を巻き回す。前記記憶部は、前記巻回ユニットに取り付け可能な基準ワークの基準サイズと、基準距離及び基準間隔のうちの一方の長さと、を記憶する。前記制御部は、前記剥離ユニット及び前記巻回ユニットを制御する。前記巻回ユニットは、回転部と、検出ユニットと、を有する。前記回転部は、前記積層体の積層方向と垂直な第1方向に延びる回転軸を中心にして、前記ワーク及び前記基準ワークのうちの一方の部材を回転させる。前記検出ユニットは、前記第1方向と直交する第2方向において前記一方の部材と対向する単数のセンサを有して、前記センサ及び前記一方の部材間の最短距離を検出する。前記基準サイズは、前記ワークの前記積層方向において基準となる前記基準ワークのサイズである。前記基準距離は、前記第2方向における前記センサ及び前記基準ワーク間の最短距離である。前記基準間隔は、前記第2方向における前記センサ及び前記回転軸間の間隔である。第1距離は、前記ワークの前記積層方向の一方が前記第2方向の一方と同じ向きとなる際に前記検出ユニットで検出される前記センサ及び前記ワーク間の最短距離である。第2距離は、前記ワークの前記積層方向の他方が前記第2方向の一方と同じ向きとなる際に前記検出ユニットで検出される前記センサ及び前記ワーク間の最短距離である。前記制御部は、演算部と、調節部と、を有する。前記演算部は、前記一方の長さ、前記第1距離、及び前記第2距離、に基づいて、前記ワークの前記積層方向におけるサイズを前記基準サイズから減算した差分値を算出する。前記調節部は、前記差分値に基づいて、前記導線における前記被膜の剥離位置を調節する。
【0008】
本発明の例示的な巻線方法は、剥離ステップと、巻回ステップと、演算ステップと、調節ステップと、を備える。前記剥離ステップにおいて、導線の被膜を剥離ユニットが剥離する。前記巻回ステップにおいて、複数の板材が積層された積層体を含むワークに、前記剥離ユニットを経由して供給される前記導線を巻回ユニットが巻き回す。前記演算ステップにおいて、前記積層体の積層方向における前記ワークのサイズを基準サイズから減算した差分値を演算部が算出する。前記調節ステップにおいて、前記導線における前記被膜の剥離位置を調節部が調節する。前記巻回ステップは、回転ステップと、検出ステップと、を有する。前記回転ステップにおいて、前記積層方向と垂直な第1方向に延びる回転軸を中心にして、前記ワークと、前記巻回ユニットに取り付け可能な基準ワークと、のうちの一方の部材を回転部が回転させる。前記検出ステップにおいて、前記第1方向と直交する第2方向において前記一方の部材と対向する単数のセンサと前記一方の部材との間の最短距離を検出ユニットが検出する。前記検出ステップは、第1検出ステップと、第2検出ステップと、を有する。前記第1検出ステップにおいて、前記ワークの前記積層方向の一方が前記第2方向の一方と同じ向きとなる際に前記検出ユニットが前記センサ及び前記ワーク間の最短距離である第1距離を検出する。前記第2検出ステップにおいて、前記ワークの前記積層方向の他方が前記第2方向の一方と同じ向きとなる際に前記検出ユニットが前記センサ及び前記ワーク間の最短距離である第2距離を検出する。前記基準サイズは、前記ワークの前記積層方向において基準となる前記基準ワークのサイズである。基準距離は、第2方向における前記センサ及び前記基準ワーク間の最短距離である。基準間隔は、前記第2方向における前記センサ及び前記回転軸間の間隔である。前記演算ステップにおいて、前記演算部は、前記基準距離及び前記基準間隔のうちの一方の長さ、前記第1距離、及び、前記第2距離に基づいて、前記ワークの前記積層方向におけるサイズを前記基準サイズから減算した差分値を算出する。前記調節ステップにおいて、前記調節部は、前記差分値に基づいて、前記導線における前記被膜の前記剥離位置を調節する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の例示的な巻線装置、巻線方法によれば、ワークに巻き回す導線における被膜の剥離位置を精度良く調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、巻線装置の構成例を示す概略図である。
図2図2は、巻線装置の制御系の構成例を示すブロック図である。
図3図3は、ワークの構成例を示す平面図である。
図4図4は、第1距離の検出例を説明するための概略図である。
図5図5は、第2距離の検出例を説明するための概略図である。
図6図6は、導線の巻線方法を説明するためのフローチャートである。
図7図7は、基準距離の検出例を説明するためのフローチャートである。
図8図8は、基準距離の検出例を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して例示的な実施形態を説明する。
【0012】
なお、本明細書では、方位、線、及び面のうちのいずれかと他のいずれかとの位置関係において、「平行」は、両者がどこまで延長しても全く交わらない状態のみならず、実質的に平行である状態を含む。また、「垂直」及び「直交」はそれぞれ、両者が互いに90度で交わる状態のみならず、実質的に垂直である状態及び実質的に直交する状態を含む。つまり、「平行」、「垂直」及び「直交」はそれぞれ、両者の位置関係に本発明の主旨を逸脱しない程度の角度ずれがある状態を含む。
【0013】
<1.実施形態>
巻線装置100は、ワーク200に導線Wを巻き回してコイル部Cを形成し、コイル部Cの端部の被膜を剥離する。図1は、巻線装置100の構成例を示す概略図である。図2は、巻線装置100の制御系の構成例を示すブロック図である。図3は、ワーク200の構成例を示す平面図である。
【0014】
<1-1.ワーク200>
本実施形態では、ワーク200は、モータ装置のステータを構成する複数のステータ片のうちの1つである。図3に示すように、ワーク200は、積層体210と、インシュレータ220と、を有する。
【0015】
積層体210は、複数の板材が積層されたステータコア片である。本実施形態では、板材は、電磁鋼板である。以下では、積層体210において、板材が積層される方向を「積層方向Ds」と呼ぶ。また、積層方向Dsの一方の向きを「積層方向一方Dsa」と呼び、積層方向Dsの他方の向きを「積層方向他方Dsb」と呼ぶ。
【0016】
積層体210は、コアバック部211と、ティース部212と、を有する。ティース部212は、コアバック部211から積層方向Dsと垂直な方向に延びる。なお、以下では、ティース部212が延びる方向を「延伸方向De」と呼ぶ。インシュレータ220は、ティース部212の側面と、コアバック部211のティース部212側の側面と、に配置される。詳細には、インシュレータ220は、積層方向Dsの両側の側面に配置されるとともに、積層方向Ds及び延伸方向Deの両方と垂直な方向の両側の側面に配置される。導線Wは、インシュレータ220を介して、ティース部212の側面に巻き回される。これにより、ティース部212の側面にコイル部Cが形成される。つまり、本実施形態の巻線装置100は、インシュレータ220を介した導線Wの巻き回しによって、積層体210を有するステータ片(つまりワーク200)にコイル部Cを配置する。
【0017】
<1-2.巻線装置100>
また、巻線装置100は、導線Wを巻き終わる際に、コイル部Cの端部に該当する導線Wの所定範囲の部分の被膜を剥離する。これにより、巻線装置100は、コイル部Cが他の部材と電気的に接続できるようにする。
【0018】
図1及び図2に示すように、巻線装置100は、ボビン1と、張力調節ユニット2と、剥離ユニット3と、ノズルユニット4と、巻回ユニット5と、切断ユニット6と、記憶部7と、制御部8と、を備える。
【0019】
<1-2-1.ボビン1>
ボビン1は、導線Wの供給源である。ボビン1には、被膜付きの導線Wが巻回される。ボビン1は、所定の軸を中心に回転可能である。ボビン1の回転により、導線Wは、ボビン1から引き出されて、張力調節ユニット2に送出される。
【0020】
<1-2-2.張力調節ユニット2>
張力調節ユニット2は、ボビン1から剥離ユニット3に送出される導線Wの張力を調節する。張力調節ユニット2は、移動可能な複数のプーリ(符号省略)を有する。導線Wは、これらのプーリに掛け渡される。これらのプーリは、導線Wの張力が所定値未満であれば移動しない。一方、プーリは、導線Wの張力が所定値以上であれば移動する。これにより、導線Wの張力が緩められる。
【0021】
<1-2-3.剥離ユニット3>
剥離ユニット3は、導線Wの被膜を剥離可能である。前述の如く、巻線装置100は、剥離ユニット3を備える。剥離ユニット3は、剥離部31と、位置駆動部32と、を有する。
【0022】
剥離部31は、導線Wから被膜を剥離させる。剥離部31は、導線Wを基準とする径方向に進退可能な刃311と、刃311を駆動する駆動部(図示省略)と、を有する。導線Wから被膜を剥離しないとき、剥離部31は、導線Wから径方向外方に離される。一方、導線Wから被膜を剥離するとき、剥離部31は、刃311を径方向内方に移動させ、ワーク200に向けて送出される導線Wの被膜に刃311の先端を当接させる。この際、剥離部31は、導線W周りに刃311を回転させるとともに、刃311を径方向内方に所定幅(たとえば被膜の厚さ)で移動させる。
【0023】
位置駆動部32は、ワーク200に対して剥離部31を進退させることができる。図1では、位置駆動部32は、第2方向D2に剥離部31を移動可能である。
【0024】
<1-2-4.ノズルユニット4>
ノズルユニット4は、巻回ユニット5に送出する導線Wの第1方向D1における位置を調節する。なお、第1方向D1は、導線Wを巻き回す際に回転するワーク200の回転軸Rxと平行な方向であり、積層方向Dsと垂直な方向である。また、後述の如く本実施形態では、第1方向D1は、積層体210のコアバック部211からティース部212が延びる延伸方向Deと平行である。また、図1では、第1方向D1は、鉛直方向と平行である。第1方向一方D1aは鉛直下方と同じ向きであり、第1方向他方D1bは鉛直上方と同じ向きである。但し、この例示は、第1方向D1が鉛直方向と平行でない構成を排除しない。
【0025】
ノズルユニット4は、ノズル41と、ノズル駆動部42と、を有する。ノズル41は、筒状であり、巻回ユニット5に送出される導線Wをガイドする。ノズル41には、剥離ユニット3から送出される導線Wが挿通される。ノズル駆動部42は、ノズル41を移動させる。たとえば、ワーク200に対する導線Wの巻き回し状況に応じて、ノズル41が第1方向D1に移動することで、延伸方向Deに渡ってティース部212の側面に隙間なく且つ重ねて導線Wを巻き回すことができる。なお、ノズル41は、剥離部31とは独立して移動可能であってもよいし、剥離部31とともに移動可能であってもよい。
【0026】
<1-2-5.巻回ユニット5>
巻回ユニット5は、複数の板材が積層された積層体210を含むワーク200に、剥離ユニット3を経由して供給される導線Wを巻き回す。前述の如く、巻線装置100は、巻回ユニット5を備える。本実施形態では、巻回ユニット5は、積層体210の円弧状のコアバック部211から延伸方向De(第1方向D1)に延びるティース部212の側面にインシュレータ220を介して導線Wを巻き回す。これにより、巻線装置100は、たとえば、モータ装置のステータ片にコイル部Cを配置できる。従って、巻線装置100は、モータ装置のコイル部Cの製造装置として利用できる。
【0027】
<1-2-5-1.回転部51>
巻回ユニット5は、回転部51を有する。回転部51は、第1方向D1に延びる回転軸Rxを中心にして、回転部51に固定される部材を回転させる。なお、第1方向D1は、積層体210の積層方向Dsと垂直な方向である。また、固定される部材は、たとえば、ワーク200及び基準ワーク300のうちの一方の部材である。回転部51には、ワーク200及び基準ワーク300などの部材が固定できる。
【0028】
なお、基準ワーク300は、ワーク200の基準部材であり、本実施形態ではワーク200と同形状である。基準ワーク300は、特に、サイズLにおいて公差を無視できる程度に理想的な既知の厚さ(つまり後述する基準サイズLm)を有する。以下では、基準ワーク300のサイズLを「基準サイズLm」と呼ぶ。
【0029】
また、サイズLは、ワーク200の導線Wが巻き回される部分の積層方向Dsにおける厚さである。本実施形態では、サイズLは、ティース部212の側面に配置されたインシュレータ220の積層方向一方Dsa側の端面と、積層方向他方Dsb側の端面と、の間の間隔である。
【0030】
回転部51は、第1シャフト511と、第2シャフト512と、第1クランプ513と、第2クランプ514と、第3クランプ515と、を有する。
【0031】
第1シャフト511及び第2シャフト512は、回転軸Rxに沿って第1方向D1に延びる。第1シャフト511及び第2シャフト512は、図示しない駆動部の駆動によって、第1方向D1に延びる回転軸Rxを中心に回転可能である。また、第1シャフト511は、第1方向D1に移動可能である。
【0032】
第1シャフト511の第1方向一方D1a側の端部には、第1クランプ513が配置される。第1クランプ513は、第1方向一方D1a側の端部に所定の部材(ワーク200、基準ワーク300など)を把持可能である。ワーク200に導線Wが巻き回される際、第1クランプ513には、ワーク200のコアバック部211が固定される。
【0033】
第2シャフト512及び第2クランプ514は、第1クランプ513よりも第1方向一方D1aに配置される。第2シャフト512の第1方向他方D1b側の端部には、第2クランプ514が配置される。第2クランプ514は、第1方向他方D1b側の端部に所定の部材(ワーク200、基準ワーク300など)を把持可能である。ワーク200に導線Wが巻き回される際、第2クランプ514には、ワーク200のティース部212の先端部が固定される。
【0034】
つまり、本実施形態では、ワーク200は、積層方向Dsが第1方向D1と垂直であり且つ延伸方向Deが第1方向D1と平行になるように、回転部51に取り付けられる。
【0035】
第3クランプ515は、導線Wの前端部を把持する。なお、前端部は、導線Wの巻き始めにおける導線Wの先端部である。第3クランプ515は、本実施形態では第2クランプ514に取り付けられ、ワーク200とともに回転可能である。
【0036】
<1-2-5-2.検出ユニット52>
巻回ユニット5は、検出ユニット52をさらに有する。検出ユニット52は、単数のセンサ521を有する。センサ521は、第1方向D1と直交する第2方向D2において、回転部51に設置された部材(たとえばワーク200及び基準ワーク300のうちの一方の部材)と対向する。検出ユニット52は、センサ521及び上述の部材間の最短距離を検出する。たとえば、センサ521は、ワーク200の導線Wが巻き回される部分と第2方向D2において対向する。本実施形態では、この部分は、ティース部212の側面に配置されたインシュレータ220の表面である。
【0037】
なお、図1では、第2方向D2は、水平面と平行である。第2方向一方D2aは、第2方向D2において回転部51に固定されるワーク200などの部材からセンサ521への向きである。第2方向他方D2bは、第2方向D2においてセンサ521から回転部51に固定されるワーク200などの部材への向きである。
【0038】
センサ521は、所定の部材との間の距離(間隔)測定する測距センサであり、本実施形態では光学式のレーザ変位センサである。但し、この例示に限定されず、センサ521は、ミリ波などを用いた電波式センサであってもよいし、超音波センサであってもよい。
センサ521の検出結果は、制御部8に送信される。
【0039】
<1-2-6.切断ユニット6>
切断ユニット6は、ノズル41及び回転部51間において、導線Wを切断可能である。
【0040】
<1-2-7.記憶部7>
記憶部7は、電力供給が停止しても記憶を保持する非一過性の記憶媒体である。記憶部7は、巻線装置100の各々の構成部で用いられる情報を記憶する。たとえば、記憶部7は、制御部8で用いられるプログラム及びデータを記憶する。記憶部7は、巻回ユニット5に取り付け可能な基準ワーク300の基準サイズLm、基準距離Ls、及び基準間隔Lcを記憶する。上述の如く、巻線装置100は、記憶部7を備える。なお、基準間隔Lcは、巻線装置100に固有であるため、既知のデータとして記憶部7に記憶される。基準距離Lsは、既知のデータとして記憶部7に記憶されてもよいし、ワーク200への導線Wの巻線処理(後述する図7参照)の前に基準ワーク300を用いて実測されてもよい。
【0041】
また、基準サイズLmは、前述の如く、ワーク200の積層方向Dsにおいて基準となる基準ワーク300のサイズLである。基準サイズLmは、既知のデータとして記憶部7に記憶される。基準距離Lsは、第2方向D2におけるセンサ521及び基準ワーク300間の最短距離である。基準間隔Lcは、第2方向D2におけるセンサ521及び回転軸Rx間の間隔である。(後述する図8参照)
【0042】
<1-2-8.制御部8>
制御部8は、記憶部7に記憶されたプログラム及びデータなどを用いて、巻線装置100の各々の構成部を制御する。上述の如く、巻線装置100は、制御部8を備える。たとえば、制御部8は、剥離ユニット3を制御する。詳細には、制御部8は、剥離部31の刃311の位置を制御するとともに、位置駆動部32の駆動により剥離部31の位置を制御する。また、制御部8は、ノズルユニット4を制御する。詳細には、制御部8は、ノズル駆動部42の駆動によるノズル41の位置を制御する。また、制御部8は、巻回ユニット5を制御する。詳細には、制御部8は、回転部51の制御によりワーク200などの部材を回転させ、その回転角度θ、回転速度などを制御する。また、制御部8は、センサ521を制御する。また、制御部8は、切断ユニット6を制御し、導線Wを切断するタイミング及び位置などを制御する。
【0043】
<1-2-8-1.演算部81>
制御部8は、演算部81を有する。演算部81は、様々な演算を行う。たとえば、演算部81は、基準距離Ls及び基準間隔Lcのうちの一方の長さ、第1距離L1、及び第2距離L2、に基づいて、ワーク200の積層方向DsにおけるサイズLを基準サイズLmから減算した差分値ΔL=(Lm-L)を算出する。なお、第1距離L1は、ワーク200の積層方向一方Dsaが第2方向一方D2aと同じ向きとなる際に検出ユニット53で検出されるセンサ521及びワーク200間の最短距離である(後述する図4参照)。第2距離L2は、ワーク200の積層方向他方Dsbが第2方向一方D2aと同じ向きとなる際に検出ユニット53で検出されるセンサ521及びワーク200間の最短距離である(後述する図5参照)。差分値ΔLを上述のように算出することにより、巻線装置100は、ワーク200のサイズLの寸法誤差を検知できる。
【0044】
たとえば、演算部81は、基準間隔Lc、第1距離L1、及び、第2距離L2を用いて、下記数式(1)からワーク200の積層方向DsにおけるサイズLを算出する。
[数1]
L=2Lc-L1-L2 ・・・(1)
【0045】
数式(1)の算出方法によれば、記憶部7に記憶された基準間隔Lcを用いて、ワーク200のサイズLを算出できる。ワーク200に対して、第1距離L1及び第2距離L2を検出すればサイズLが算出できるので、巻線装置100は、ワーク200のサイズLの寸法誤差を容易に検知できる。
【0046】
或いは、演算部81は、基準サイズLm、基準距離Ls、第1距離L1、及び、第2距離L2を用いて、下記数式(2)からワーク200の積層方向DsにおけるサイズLを算出してもよい。
[数2]
L=2Ls+Lm-L1-L2 ・・・(2)
【0047】
数式(2)の算出方法によれば、記憶部7に記憶された基準サイズLm及び基準距離Lsを用いて、ワーク200のサイズLを算出できる。ワーク200に対して、第1距離L1及び第2距離L2を検出すればサイズLが算出できるので、巻線装置100は、ワーク200のサイズLの寸法誤差を容易に検知できる。
【0048】
<1-2-8-2.調節部82>
制御部8は、調節部82をさらに有する。調節部82は、差分値ΔLに基づいて、導線Wにおける被膜の剥離位置を調節する。これにより、巻線装置100は、ワーク200に巻き回す導線Wにおける被膜の剥離位置を調節する。従って、巻線装置100は、ワーク200のサイズLにばらつきがあっても、そのワーク200に巻き回す導線Wにおける被膜の剥離位置を精度良く調節することができる。よって、巻線装置100は、たとえば、導線Wの端部における被膜の剥離位置のばらつきを抑制できる。従って、導線Wの端部を他の部材(モータ装置のバスバーなど)と電気的に接続する際などにおいて、両者の接続不良を抑制できる。
【0049】
また、巻線装置100は、ワーク200の積層方向一方Dsaが第2方向一方D2a(たとえばワーク200からセンサ521に向かう向き)と同じ向きにとなる際に、検出ユニット52で第1距離L1を測定する(図4参照)。その後、巻線装置100は、回転部51によりたとえばワーク200を回転軸Rx周りに180°回転させて、ワーク200の積層方向他方Dsbを第2方向一方D2aと同じ向きにし、検出ユニット52で第2距離L2を測定する(図5参照)。これにより、巻線装置100は、ワーク200の積層方向一方Dsa側の端部とセンサ521との間の第1距離L1と、ワーク200の積層方向他方Dsb側の端部とセンサ521との間の第2距離L2とを単数のセンサ521を用いて検出できる。単数のセンサ521を用いることで、巻線装置100の構成要素の数を削減できるので、巻線装置100の導入に必要なコストを低減できる。従って、装置の導入に必要なコストを抑えつつ、ワーク200に巻き回す導線Wにおける被膜の剥離位置を精度良く調節することができる。また、巻線装置100の構成をより簡易化できるので、たとえば巻線装置100の内部を省スペース化できる。よって、巻線装置100内での構成要素の配置に関する自由度を向上できる。
【0050】
調節部82は、たとえば、剥離部31の位置調整と、回転部51における回転角度θの調整と、のうちの少なくともどちらかによって、導線Wにおける被膜の剥離位置を調節する。
【0051】
たとえば、調節部82の制御に応じて、剥離ユニット3の位置駆動部32は、差分値ΔLに基づいて剥離部31をワーク200に対して進退させる。こうすれば、巻線装置100は、ワーク200に対する剥離部31の進退により、導線Wにおける被膜の剥離位置を調節できる。
【0052】
この際、調節部82は、差分値ΔLが負の数であれば、差分値ΔLに応じて、剥離部31をワーク200から離し、たとえば剥離部31を第2方向他方D2bに移動させる。ΔL<0であれば、ワーク200のサイズLは基準ワーク300の基準サイズLmよりも大きい。そのため、たとえば導線Wの端部における被膜を剥離する際、その剥離位置は、ワーク200に巻き回された導線Wから成るコイル部Cに近付く。従って、巻線装置100は、その差分値ΔLに応じて剥離部31をワーク200から離すことにより、被膜の剥離位置をコイル部Cから遠ざけることができる。
【0053】
一方、調節部82は、差分値ΔLが正の数であれば、差分値ΔLに応じて、剥離部31をワーク200に近付け、たとえば剥離部31を第2方向一方D2aに移動させる。ΔL>0であれば、ワーク200のサイズLは基準ワーク300の基準サイズLmよりも小さい。そのため、たとえば導線Wの端部における被膜を剥離する際、その剥離位置は、ワーク200に巻き回された導線Wから成るコイル部Cから遠ざかる。従って、巻線装置100は、その差分値ΔLに応じて剥離部31をワークに近付けることにより、被膜の剥離位置をコイル部Cに近付けることができる。
【0054】
よって、巻線装置100は、導線Wの巻き回し速度、剥離部31による被膜の剥離範囲などを変化させることなく、ワーク200のサイズLのばらつきに起因する被膜の剥離位置のばらつきを抑制できる。
【0055】
また、調節部82は、差分値ΔLに基づいて、巻回ユニット5の回転部51におけるワーク200の回転角度θの総量を調節する。これにより、巻線装置100は、導線Wにおける被膜の剥離位置を調節できる。
【0056】
たとえば、調節部82は、差分値ΔLが負の数であれば、差分値ΔLに応じて、ワーク200に導線Wを巻き回す回転角度θの総量をより大きくする。ΔL<0であれば、L>Lmとなり、被膜の剥離位置がコイル部Cに近付く。従って、巻線装置100は、差分値ΔLに応じてワーク200の回転角度θをより大きくすることにより、被膜の剥離位置をコイル部Cから遠ざけることができる。
【0057】
一方、調節部82は、差分値ΔLが正の数であれば、差分値ΔLに応じて、回転角度θを小さくする。ΔL>0であれば、L<Lmとなり、被膜の剥離位置がコイル部Cから遠ざかる。従って、巻線装置100は、差分値ΔLに応じてワーク200の回転角度θの総量をより小さくすることにより、被膜の剥離位置をコイル部Cに近付けることができる。
【0058】
よって、巻線装置100は、導線Wの巻き回し速度、剥離部31による被膜の剥離範囲などを変化させることなく、ワーク200のサイズLのばらつきに起因する被膜の剥離位置のばらつきを抑制できる。
【0059】
<1-3.導線Wの巻線方法>
次に、図1及び図4図6を参照して、導線Wの巻線方法を説明する。図4は、第1距離L1の検出例を説明するための概略図である。図5は、第2距離L2の検出例を説明するための概略図である。図6は、導線Wの巻線方法を説明するためのフローチャートである。
【0060】
まず、ステータ片がワーク200として巻線装置100の回転部51に取り付けられ(ステップS100)、導線Wの前端部が第3クランプ515に把持される(ステップS200)。なお、回転部51へのワーク200の取り付け及び前端部の把持はそれぞれ、巻線装置100にて自動的に行われてもよいし、手動であってもよい。
【0061】
複数の板材が積層された積層体210を含むワーク200に、剥離ユニット3を経由して供給される導線Wを巻回ユニット5が巻き回す(ステップS300)。なお、ステップS300は、本発明の「巻回ステップ」の一例である。
【0062】
巻回ステップS300では、まず、積層体210の積層方向Dsと垂直な第1方向D1に延びる回転軸Rxを中心にして、ワーク200を回転部51が回転させる(S310)。なお、ステップS310は、本発明の「回転ステップ」の一例である。巻回ステップS300は、ステップS310を有する。
【0063】
さらに、第1方向D1と直交する第2方向D2においてワーク200と対向する単数のセンサ521とワーク200との間の最短距離L1,L2を検出ユニットが検出する(S320)。なお、ステップS320は、本発明の「検出ステップ」の一例である。巻回ステップS300は、ステップS320を有する。
【0064】
たとえば、検出ステップS320では、図4に示すように、ワーク200の積層方向一方Dsaが第2方向一方D2aと同じ向きとなる際に、検出ユニット52が、センサ521及びワーク200間の最短距離である第1距離L1を検出する(S321)。なお、ステップS321は、本発明の「第1検出ステップ」の一例である。検出ステップS320は、第1検出ステップS321を有する。なお、第1検出ステップS321の実施回数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。実施回数が単数であれば、第1検出ステップS321での検出結果が、第1距離L1とされる。また、実施回数が複数であれば、各々の第1検出ステップS321での検出された最短距離の平均値が第1距離L1とされる。
【0065】
回転部51は、ワーク200を180°以上回転させる(ステップS322)。そして、図5に示すように、ワーク200の積層方向他方Dsbが第2方向一方D2aと同じ向きとなる際に、検出ユニット52が、センサ521及びワーク200間の最短距離である第2距離L2を検出する(S323)。なお、ステップS323は、本発明の「第2検出ステップ」の一例である。検出ステップS320は、第2検出ステップS323を有する。なお、第2検出ステップS322の実施回数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。実施回数が単数であれば、第2検出ステップS322での検出結果が、第2距離L2とされる。また、実施回数が複数であれば、各々の第2検出ステップS322で検出された最短距離の平均値が第2距離L2とされる。
【0066】
なお、第1検出ステップS321及び第2検出ステップS323において、センサ521は、ティース部212の側面のうちの導線Wが巻き回されていない領域との最短距離を検出する。たとえば、ステップS321からS323は、巻回ステップS300において巻き回される導線Wがティース部212の側面を全て覆う前に実施される。
【0067】
好ましくは、第1検出ステップS321及び第2検出ステップS323は、ワーク200に対する導線Wの巻き回しと同時に実施される。こうすれば、たとえば、ワーク200に対する導線Wの巻き回しをしながら、センサ521は、ワーク200の導線Wを巻き回すべき部分のうち、まだ導線Wが巻き回されていない部分との間の最短距離を測定できる。これにより、第1検出ステップS321及び第2検出ステップS323をワーク200に対する導線Wの巻き回しと同時に実施できる。従って、巻回ステップS300の工程数を削減できる。
【0068】
上述の検出ステップS320では、第1距離L1及び第2距離L2を単数のセンサ521を用いて検出できる。単数のセンサ521を用いることで、巻線装置100の構成要素の数を削減できるので、上述の巻線方法を行う巻線装置100の導入に必要なコストを低減できる。また、巻線装置100の構成をより簡易化できるので、たとえば巻線装置100の内部を省スペース化できる。よって、巻線装置100内での構成要素の配置に関する自由度を向上できる。
【0069】
次に、演算部81は、積層体210の積層方向Dsにおけるワーク200のサイズLを基準サイズLmから減算した差分値ΔLを算出する(ステップS400)。なお、ステップS400は、本発明の「演算ステップ」の一例である。詳細には、演算ステップS400において、演算部81は、基準距離Ls及び基準間隔Lcのうちの一方の長さ、第1距離L1、及び、第2距離L2に基づいて、ワーク200の積層方向DsにおけるサイズLを基準サイズLmから減算した差分値ΔL=(Lm-L)を算出する。演算ステップS400により、ワーク200のサイズLの寸法誤差を検知できる。
【0070】
調節部82は、導線Wにおける被膜の剥離位置を調節する(ステップS500)。なお、ステップS500は、本発明の「調節ステップ」の一例である。詳細には、調節ステップS500において、調節部82は、差分値ΔLに基づいて、導線Wにおける被膜の剥離位置を調節する。調節ステップS500により、ワーク200のサイズLにばらつきがあっても、そのワーク200に巻き回す導線Wにおける被膜の剥離位置を精度良く調節することができる。被膜の剥離位置を精度良く調節することにより、たとえば、導線Wの端部における被膜の剥離位置のばらつきを抑制できる。従って、導線Wの端部を他の部材(モータ装置のバスバーなど)と電気的に接続する際などにおいて、両者の接続不良を抑制できる。
【0071】
調節ステップS500において、調節部82は、たとえば、剥離部31の位置調整、及び、回転部51における回転角度θの調整のうちの少なくともどちらかにより、導線Wにおける被膜の剥離位置を調節する。
【0072】
たとえば、調節部82は、差分値ΔLに基づいて、導線Wから被膜を剥離する剥離部31をワーク200に対して進退させる(S510)。ステップS510は、本発明の「駆動ステップ」の一例である。調節ステップS500は、駆動ステップS510を有する。たとえば、ΔL<0であれば、剥離部31は、図1において第2方向他方D2bに移動し、ノズル41及びワーク200から離れる。一方、ΔL>0であれば、剥離部31は、図1において第2方向一方D2aに移動し、ノズル41及びワーク200に近付く。なお、駆動ステップS510が後述する第1調節ステップS520及び第2調節ステップS530とともに実施される場合、調節部82は、第1調節ステップS520及び第2調節ステップS530における回転角度θの増減量Δθをさらに考慮して、剥離部31を進退させる。また、ΔL=0であれば、剥離部31は、ノズル41及びワーク200に対して移動しない。駆動ステップS510によれば、ワーク200に対する剥離部31の進退により、導線Wにおける被膜の剥離位置を調節できる。
【0073】
また、調節部82は、差分値ΔLが負の数であれば、差分値ΔLに応じて、ワーク200に導線Wを巻き回す回転角度θ(の総量θs)を大きくする(ステップS520)。なお、ステップS520は、本発明の「第1調節ステップ」の一例である。なお、第1調節ステップS520が上述の駆動ステップS510とともに実施される場合、調節部82は、駆動ステップS510における被膜の剥離位置の調節量(言い換えると剥離部31の進退量)をさらに考慮して、回転角度θ(の総量θs)を大きくする。ΔL<0であれば、被膜の剥離位置がコイル部Cに近付く。従って、その差分値ΔLに応じてワーク200の回転角度θ(の総量θs)を大きくすることにより、被膜の剥離位置をコイル部Cから遠ざけることができる。
【0074】
一方、調節部82は、差分値ΔLが正の数であれば、差分値ΔLに応じて、回転角度θ(の総量θs)を小さくする(ステップS530)。なお、ステップS530は、本発明の「第2調節ステップ」の一例である。なお、第2調節ステップS530が上述の駆動ステップS510とともに実施される場合、調節部82は、駆動ステップS510における被膜の剥離位置の調節量(言い換えると剥離部31の進退量)をさらに考慮して、回転角度θ(の総量θs)を大きくする。ΔL>0であれば、被膜の剥離位置がコイル部Cから遠ざかる。従って、その差分値ΔLに応じてワーク200の回転角度θの総量θsを小さくすることにより、被膜の剥離位置をコイル部Cに近付けることができる。
【0075】
なお、第1調節ステップS520及び第2調節ステップS530において、ΔL=0であれば、調節部82は、回転角度θ(の総量θs)を変化させない。
【0076】
第1調節ステップS520及び第2調節ステップS530によれば、導線Wの巻き回し速度、剥離部31による被膜の剥離範囲などを変化させることなく、ワーク200のサイズLのばらつきに起因する被膜の剥離位置のばらつきを抑制できる。
【0077】
ここで、図6では、駆動ステップS510と、第1調節ステップS520及び第2調節ステップS530とは、両方ともに実施される。但し、図6の例示に限定されず、調節ステップS500では、両者のうちのどちらかのみが実施されてもよい。つまり、調節ステップS500において、駆動ステップ510が省略されてもよい。或いは、第1調節ステップS520及び第2調節ステップS530が省略されてもよい。
【0078】
次に、ワーク200の回転角度θが総量θsに達すると、所定の剥離位置において導線Wの被膜を剥離ユニット3が剥離する(ステップS600)。なお、ステップS600は、本発明の「剥離ステップ」の一例である。
【0079】
被膜の剥離後、回転部51は、ワーク200を所定の回転角度で回転させる(ステップS700)。これにより、導線Wの被膜を剥離した部分が、ノズル41よりもワーク200側に送出される。
【0080】
切断ユニット6は、導線Wの被膜を剥離した部分を切断する(ステップS800)。好ましくは、切断ユニット6は、上述の剥離部分の前端部及び後端部間の中央部を切断する。これにより、ティース部212に配置されるコイル部Cの両端部の被膜を剥離できるとともに、両端部における剥離部分を同じ長さにできる。
【0081】
第3クランプ515が導線Wの前端部を解放して、導線Wを巻き回し済みのワーク200が回転部51から取り外される(ステップS900)。なお、前端部の開放及びワーク200の取り外しはそれぞれ、巻線装置100にて自動的に行われてもよいし、手動であってもよい。
【0082】
次に、導線Wを巻き回すワーク200があれば(S1000でYes)、図6の処理はステップS100に戻る。一方、導線Wを巻き回すワーク200が無ければ(S1000でNo)、図6の処理は終了する。
【0083】
<1-4.基準距離Lsの検出方法>
次に、図1図7及び図8を参照して、基準距離Lsの検出方法を説明する。図7は、基準距離Lsの検出例を説明するためのフローチャートである。図8は、基準距離Lsの検出例を説明するための概略図である。
【0084】
まず、基準ワーク300が回転部51に取り付けられる(ステップS1)。回転軸Rxを中心にして、回転部51が基準ワーク300を回転させる(ステップS2)。基準ワーク300の積層方向Dsが第2方向D2と平行になる際に、検出ユニット52が、第2方向D2において基準ワーク300と対向する単数のセンサ521と、基準ワーク300との間の最短距離を検出する(ステップS3)。なお、ステップS3の実施回数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。実施回数が単数であれば、ステップS3での検出結果が、基準距離Lsとして記憶部7に記憶される。また、実施回数が複数であれば、各々のステップS3で検出された最短距離の平均値が、基準距離Lsとして記憶部7に記憶される。
【0085】
基準ワーク300が回転部51から取り外されて(ステップS4)、図7の処理が終了する。
【0086】
なお、図7における基準距離Lsの検出処理は、図6の処理を実施する前に実施されてもよいし、図6の処理とは独立して実施されてもよい。
【0087】
<2.その他>
以上、本発明の実施形態を説明した。なお、本発明の範囲は上述の実施形態に限定されない。本発明は、発明の主旨を逸脱しない範囲で上述の実施形態に種々の変更を加えて実施することができる。また、上述の実施形態で説明した事項は、矛盾が生じない範囲で適宜任意に組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、導線の巻き回しによりワークにコイルを配置する装置に有用である。
【符号の説明】
【0089】
100・・・巻線装置、1・・・ボビン、2・・・張力調整ユニット、3・・・剥離ユニット、31・・・剥離部、311・・・刃、32・・・位置駆動部、4・・・ノズルユニット、41・・・ノズル、42・・・ノズル駆動部、5・・・巻回ユニット、51・・・回転部、511・・・第1シャフト、512・・・第2シャフト、513・・・第1クランプ、514・・・第2クランプ、515・・・第3クランプ、52・・・検出ユニット、521・・・センサ、6・・・切断ユニット、7・・・記憶部、8・・・制御部、81・・・演算部、82・・・調節部、200・・・ワーク、210・・・積層体、211・・・コアバック部、212・・・ティース部、220・・・インシュレータ、300・・・基準ワーク、W・・・導線、C・・・コイル部、L・・・ワークのサイズ、Lm・・・基準サイズ、Ls・・・基準距離、Lc・・・基準間隔、L1・・・第1距離、L2・・・第2距離、Rx・・・回転軸、D1・・・第1方向、D2・・・第2方向、Ds・・・積層方向、De・・・延伸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8