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  • 特開-歯磨剤組成物及び歯磨剤製品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093868
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】歯磨剤組成物及び歯磨剤製品
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20230628BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20230628BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230628BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/73
A61K8/34
A61Q11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208985
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 匡太
(72)【発明者】
【氏名】小熊 友一
(72)【発明者】
【氏名】仲田 燎平
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB281
4C083AB282
4C083AB341
4C083AB342
4C083AB471
4C083AB472
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC302
4C083AC422
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD351
4C083AD352
4C083CC41
4C083DD22
4C083DD41
4C083DD47
4C083EE31
(57)【要約】
【課題】縦置きのチューブ容器に充填しても、容器口元から垂れ難く、蓋のキャップに溜まりにくく、使用性に優れ、かつ保存後も変色が防止され、香味も安定に保持されて発現し、曳糸性もよい研磨剤無含有の歯磨剤組成物及びこれを用いた歯磨剤製品を提供する。
【解決手段】(A)ポリアクリル酸又はその塩、(B)キサンタンガム、(C)グリセリン及び(D)水を含有し、(D)水の含有量が20~45質量%である研磨剤無含有の歯磨剤組成物、並びに上記歯磨剤組成物が、縦置きのチューブ容器に充填された歯磨剤製品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアクリル酸又はその塩、
(B)キサンタンガム、
(C)グリセリン
及び
(D)水
を含有し、(D)水の含有量が20~45質量%である研磨剤無含有の歯磨剤組成物。
【請求項2】
(A)成分の含有量と組成物中に含まれる粘結剤の総含有量との割合を示す(A)/(総粘結剤量)が質量比として0.75~0.95である請求項1記載の歯磨剤組成物。
【請求項3】
(A)/(C)が質量比として0.01~0.2である請求項1又は2記載の歯磨剤組成物。
【請求項4】
(A)成分を0.7~2質量%、(B)成分を0.1~0.4質量%、(C)成分を10~40質量%含有する請求項1~3のいずれか1項記載の歯磨剤組成物。
【請求項5】
更に、(E)水溶性ポリリン酸塩、(F)水溶性カルシウム塩及び(G)水溶性フッ素含有化合物を含有し、(E)/(G)がモル比として0.05~1、かつ(F)/(G)がモル比として0.1~2である請求項1~4のいずれか1項記載の歯磨剤組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項記載の歯磨剤組成物が、口元を下にして倒立させる縦置きのチューブ容器に充填された歯磨剤製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦置きのチューブ容器に充填しても、容器口元から垂れにくく、使用性に優れ、かつ保存安定性を有する、研磨剤無含有の歯磨剤組成物及びこれを用いた歯磨剤製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、歯磨剤組成物を充填する容器としては、従来の横置きのチューブ容器に代わり、陳列に場所を取らない縦置きのチューブ容器が主流になっている。縦置きのチューブ容器は、通常、チューブ容器本体の内容物が排出される口元をキャップで蓋をして閉め、口元を下にして倒立させるように設計されており、このように倒立させると、内容物の歯磨剤組成物に、チューブ容器本体の口元方向に垂直の重力がかかる。
一方、縦置きのチューブ容器においては、キャップとして、ワンタッチで開閉できるヒンジキャップが採用されることが多い。ヒンジキャップは、容器本体の口元と接する内側に設けた凸部を、容器本体の口元の開口部に嵌めこみ密閉することが一般的である。
しかし、このような縦置きのチューブ容器に歯磨剤組成物を充填し、特にヒンジキャップの凸部を完全に嵌めこまずに密閉が不十分な状態で倒立させておくと、容器本体の口元から歯磨剤組成物が垂れて漏れ出し、キャップ内側に溜まる課題が生じ、密閉にも支障をきたし、使いにくくなる。充填する歯磨剤組成物が、研磨剤を含まない歯磨剤組成物の場合、粘度を上げにくく、また、流動性が高くなることもあり、前記課題が一層生じやすい。
このような課題に対して、特許文献1(特開2018-104417号公報)に提案されているように、3つの特定粘結剤を特定比率で配合することで、剤を垂れにくくする手段があるが、高温度帯で保存すると歯磨剤組成物の変色や香味の発現が芳しくないという課題が生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-104417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、縦置きのチューブ容器に充填しても、容器の口元から垂れにくく、使用性に優れ、かつ保存後も変色が防止され、香味も安定に保持される研磨剤無含有の歯磨剤組成物及びこれを用いた歯磨剤製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、研磨剤無含有の歯磨剤組成物に、2種の特定粘結剤((A)ポリアクリル酸又はその塩と(B)キサンタンガム)と、特定粘稠剤((C)グリセリン)とを組み合わせ、かつ(D)水を特定量配合することによって、縦置きのチューブ容器に充填しても、容器の口元から垂れにくく、蓋のキャップの内側への溜まり量も抑えられ、使用性に優れ、かつ比較的高温で保存後も変色が防止されて外観安定性を有し、香味も安定に保持されて発現し、また、曳糸性もよい歯磨剤組成物及びこれを用いた歯磨剤製品が得られることを知見し、本発明をなすに至った。
本発明の作用効果は、(A)、(B)、(C)及び(D)成分を組み合わせ、かつ(D)成分量が特定範囲であることで得られる。後述の比較例に示すように、(A)成分又は(B)成分が配合されていないと、保存後の香味発現が劣り、保存後の変色のなさ又は曳糸性が悪く(比較例1、2)、(A)成分が配合されておらず粘結剤のカルボキシメチルセルロースナトリウムが配合された比較例4は、歯磨剤組成物の垂れにくさを評価するために実施したキャップへの溜まり量が多くて悪く、曳糸性も悪く、(B)成分が配合されておらず粘結剤のカラギーナンが配合された比較例5は、溜まり量が悪く、保存後の香味発現が劣った。(C)成分が配合されていないと、溜まり量が悪く、保存後の変色のなさ及び香味発現が劣り、曳糸性が悪くなることもあった(比較例3、6)。また、(A)、(B)、(C)及び(D)成分が配合されていても、(D)成分量が多すぎる又は少なすぎると、溜まり量が悪く、保存後の香味発現が劣り、曳糸性が悪くなることもあった(比較例7、8、9)。これに対して、実施例に示すように、本発明の(A)、(B)、(C)及び(D)成分が配合され、かつ(D)成分量が特定範囲である歯磨剤組成物は、口元を下にして倒立させる縦置きのチューブ容器に充填されても、前記容器口元からの垂れが顕著に抑制され、キャップへの溜まり量が少なく、かつ保存後の変色及び香味発現が優れ、また、曳糸性も良好であった。
【0006】
従って、本発明は、下記の歯磨剤組成物及び歯磨剤製品を提供する。
[1]
(A)ポリアクリル酸又はその塩、
(B)キサンタンガム、
(C)グリセリン
及び
(D)水
を含有し、(D)水の含有量が20~45質量%である研磨剤無含有の歯磨剤組成物。
[2]
(A)成分の含有量と組成物中に含まれる粘結剤の総含有量との割合を示す(A)/(総粘結剤量)が質量比として0.75~0.95である[1]記載の歯磨剤組成物。
[3]
(A)/(C)が質量比として0.01~0.2である[1]又は[2]記載の歯磨剤組成物。
[4]
(A)成分を0.7~2質量%、(B)成分を0.1~0.4質量%、(C)成分を10~40質量%含有する[1]~[3]のいずれかに記載の歯磨剤組成物。
[5]
更に、(E)水溶性ポリリン酸塩、(F)水溶性カルシウム塩及び(G)水溶性フッ素含有化合物を含有し、(E)/(G)がモル比として0.05~1、かつ(F)/(G)がモル比として0.1~2である[1]~[4]のいずれかに記載の歯磨剤組成物。
[6]
[1]~[5]のいずれかに記載の歯磨剤組成物が、口元を下にして倒立させる縦置きのチューブ容器に充填された歯磨剤製品。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、縦置きのチューブ容器に充填しても、容器口元から垂れにくく、蓋のキャップに溜まりにくく、使用性に優れ、かつ保存後も変色が防止され、香味も安定に保持されて発現し、曳糸性もよい研磨剤無含有の歯磨剤組成物及びこれを用いた歯磨剤製品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明にかかわる縦置きのチューブ容器のヒンジキャップの密閉状態と半開状態とを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明につき更に詳述する。
本発明の歯磨剤組成物(以下、組成物と略記する場合もある)は、(A)ポリアクリル酸又はその塩、(B)キサンタンガム、(C)グリセリン及び(D)水を含有する。
【0010】
(A)ポリアクリル酸又はその塩は、組成物の垂れを抑制し、容器のキャップにおける溜まり量を改善する作用を有する。
ポリアクリル酸又はその塩としては、架橋型であるポリクリル酸又はその塩が好ましく、塩としてはナトリウム塩等のアルカリ金属塩を使用できる。
ポリアクリル酸又はその塩の25℃における粘度は、7,000~10,000mPa・sが好ましい。粘度が7,000mPa・s以上であると、十分に垂れが抑制されて溜まり量が改善し、10,000mPa・s以下であると、十分な分散性となる。
上記粘度は、B型粘度計(東機産業(株)製、VISCOMETER TVB-10)によって下記方法で測定した。
プロピレングリコール10gを500mLポリビーカーにはかりとり、本品2.50gを加えてよく分散する。得られた分散液に精製水487.5gを一度に加え、均一となるまで手でよく撹拌する。乾燥防止の蓋をし、一昼夜放置する。次に25℃恒温水槽にいれて1時間放置した後、B型粘度計(No.6ローター、測定時間3分間、20rpm)で測定した。
このようなポリアクリル酸又はその塩としては、市販品、例えば東亞合成(株)製のレオジック260H等を使用できる。
【0011】
(A)ポリアクリル酸又はその塩の配合量は、組成物全体の0.7~2%(質量%、以下同様)が好ましく、より好ましくは0.8~1.2%である。配合量が0.7%以上であると、十分に垂れが抑制されて溜まり量が改善し、2%以下であると、保存後も十分に変色が防止され、香味が安定に保持される。
【0012】
(B)キサンタンガムは、組成物の垂れを抑制し、容器のキャップにおける溜まり量を改善する作用を有する。
キサンタンガムは、医薬品添加物規格2013「キサンタンガム」の項に定める方法で粘度を測定したときに、25℃における粘度が1,000~2,000mPa・sとなるものが好ましい。粘度が1,000mPa・s以上であると、十分に垂れが抑制されて溜まり量が改善し、2,000mPa・s以下であると、曳糸性の悪化を防止できる。
このようなキサンタンガムとしては、市販品、例えばCPケルコ社製のモナートガムDA等を使用できる。
【0013】
(B)キサンタンガムの配合量は、組成物全体の0.1~0.4%が好ましく、より好ましくは0.1~0.2%である。配合量が0.1%以上であると、十分に垂れが抑制されて溜まり量が改善し、0.4%以下であると、保存後も十分に変色が防止され、香味が安定に保持され、また、曳糸性の悪化を防止できる。
【0014】
本発明では、粘結剤として(A)及び(B)成分が配合され、更に、これら以外の公知の粘結剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース系粘結剤、グアガム、モンモリロナイト、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、ローカストビーンガム、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、カーボポール等を配合することもできる。なお、これら任意の粘結剤は、配合する場合、その配合量は、組成物全体の0.05~1%とすることができ、また、配合しなくてもよい。
【0015】
また、(A)成分の配合量と、組成物中に配合された(A)及び(B)成分を含めた粘結剤の総配合量との量比を示す(A)/(総粘結剤量)は、質量比として0.75~0.95であることが好ましく、より好ましくは0.80~0.92である。上記範囲内であると、十分に垂れが抑制されて溜まり量が改善し、また、保存後も一層変色が防止され、香味も安定に保持され、曳糸性もよい。
(A)/(総粘結剤量)の質量比が0.75未満であると、保存後に香味が劣ったり、曳糸性が悪くなる場合があり、0.95を超えると、保存後に変色が防止されず、香味が劣る場合がある。
【0016】
(C)グリセリンは、組成物の垂れを抑制し、容器のキャップにおける溜まり量を改善すると共に、高温で保存後も変色を防止し、香味を安定に保持する作用を有する。
グリセリンは、通常、歯磨剤組成物に使用されるものであれば特に制限はなく、例えばライオンケミカル(株)製のグリセリン(85%グリセリン)等の市販品を使用できる。
(C)グリセリンの配合量は、組成物全体の10~40%が好ましく、より好ましくは15~30%である。配合量が10%以上であると、垂れが抑制され、溜まり量が改善すると共に、保存後も十分に変色が防止され、曳糸性が良く、40%以下であると、保存後も十分に香味が安定に保持される。
【0017】
本発明では、(A)成分と(C)成分との量比を示す(A)/(C)が、質量比として0.01~0.2が好ましく、より好ましくは0.03~0.1である。上記範囲内であると、一層垂れが抑制され、溜まり量が改善し、また、保存後もより変色が防止され、香味が安定に保持される。(A)/(C)の質量比が0.01未満であると、垂れが抑制されず、溜まり量が改善しない場合があり、0.2を超えると、保存後に香味が劣ったり、変色が防止されない場合がある。
【0018】
(D)水は、溶媒であると共に、組成物の垂れを抑制し、容器のキャップでの溜まり量を改善し、また、高温で保存後も香味を安定に保持する作用を有する。
(D)水の配合量は、組成物全体の20~45%であり、好ましくは30~43%である。配合量が20%未満、又は45%を超えると、垂れが抑制されず、溜まり量が改善せず、また、保存後に香味が劣る。
【0019】
本発明の歯磨剤組成物には、更に、(E)水溶性ポリリン酸塩、(F)水溶性カルシウム塩、(G)水溶性フッ素含有化合物を配合することができ、(E)及び(F)成分を(G)成分と組み合わせて配合すると、(G)成分由来のフッ素イオンの口腔内、特に歯面への滞留性を向上し、フッ素イオンの滞留性に優れたものとすることができる。
【0020】
(E)水溶性ポリリン酸塩は、フッ素イオン滞留性向上の作用を奏する。
水溶性ポリリン酸塩は、例えばトリポリリン酸、ピロリン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩を使用でき、中でもピロリン酸四カリウムが好ましい。これらは1種単独でも2種以上を併用してもよい。
(E)水溶性ポリリン酸塩の配合量は、組成物全体の0.1~1.5%が好ましく、より好ましくは0.2~1.0%である。配合量が上記範囲内であると、フッ素イオンの滞留性及びその放出性が十分に優れる。
【0021】
(F)水溶性カルシウム塩は、フッ素イオン滞留性向上の作用を奏する。
水溶性カルシウム塩は、例えば塩化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、ギ酸カルシウム、フマル酸カルシウム、乳酸カルシウム、酪酸カルシウム及びイソ酪酸カルシウム、リンゴ酸カルシウム、マレイン酸カルシウム、プロピロン酸カルシウム、吉草酸カルシウム等が挙げられ、特に塩化カルシウムが好ましい。
(F)水溶性カルシウム塩の配合量は、組成物全体の0.1~1.5%が好ましく、より好ましくは0.1~0.7%である。配合量が上記範囲内であると、フッ素イオンの滞留性及びその放出性が十分に優れる。
【0022】
(G)水溶性フッ素含有化合物は、例えばフッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ等が挙げられる。
(G)水溶性フッ素含有化合物の配合量は、組成物全体に対して、フッ素イオンとして500~5,000ppmが好ましく、より好ましくは500~3,000ppmである。配合量が上記範囲内であると、フッ素イオンの滞留性及びその放出性が十分に優れる。
【0023】
また、(E)成分と(G)成分との量比を示す(E)/(G)は、モル比として0.05~1が好ましく、より好ましくは0.1~0.5である。上記範囲内であると、フッ素イオンの滞留性及びその放出性が一層優れ、また、液分離や固化を防止することができる。
(F)成分と(G)成分との量比を示す(F)/(G)は、モル比として0.1~2が好ましく、より好ましくは0.3~1である。上記範囲内であると、フッ素イオンの滞留性及びその放出性が一層優れ、また、液分離を防止することができる。
【0024】
本発明の歯磨剤組成物は、研磨剤無含有であり、また、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分に加えて、下記のような成分を任意に配合できる。例えば、(C)グリセリン以外の粘稠剤、界面活性剤、甘味剤、色素、防腐剤、香料、pH調整剤、各種有効成分等が挙げられる。なお、以下の配合量は組成物全体に対する量である。
【0025】
(C)グリセリン以外の粘稠剤は、ソルビット、キシリトール、マルチトール、ラクチトール等の糖アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール、糖アルコール、還元でんぷん糖化物等が挙げられる。粘稠剤の配合量は5~60%がよい。
【0026】
界面活性剤は、通常、歯磨剤組成物に使用されるアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を配合できる。界面活性剤の配合量は0.1~4%がよい。
【0027】
甘味剤は、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペルラルチン、ソーマチン、アスパラチルフェニルアラニンメチルエステル等が挙げられる。
色素は、赤色2号、赤色3号、赤色225号、赤色226号、黄色4号、黄色5号、黄色205号、青色1号、青色2号、青色201号、青色204号、緑色3号、酸化チタン等が挙げられる。
防腐剤は、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン等のパラベン類(パラオキシ安息香酸エステル)、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
【0028】
香料は、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及び、これらの天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N-置換-パラメンタン-3-カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビートアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、メチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、歯磨剤組成物に用いられる公知の香料素材を使用することができる。
【0029】
pH調整剤は、クエン酸、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0030】
なお、甘味剤、色素、防腐剤、香料、pH調整剤は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量で配合することができる。
【0031】
各種有効成分としては、例えばトラネキサム酸、イプシロン-アミノカプロン酸、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ヒノキチオール、アスコルビン酸、塩化ナトリウム、酢酸dl-トコフェロール、ジヒドロコレステロール、α-ビサボロール、クロルヘキシジン塩類、アズレン、グリチルレチン、グリチルレチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、クロロフィル、グリセロホスフェートや、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、ヒドロキサム酸及びその誘導体、ゼオライト、メトキシエチレン、エピジヒドロコレステリン、塩化ベンゼトニウム、ジヒドロコレステロール、トリクロロカルバニリド、クエン酸亜鉛、トウキ軟エキス、オウバクエキス、カミツレ、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の抽出物が挙げられる。なお、これら有効成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量とすることができる。
【0032】
本発明の歯磨剤組成物は、B型粘度計を用いて下記方法で測定した25℃における粘度が、好ましくは8~25Pa・s、より好ましくは10~20Pa・sである。
粘度の測定方法
歯磨剤組成物を温浴槽で25℃に揃えたのち、7日間経過後の粘度をB型粘度計(東機産業(株)製、VISCOMETER TVB-10)を用いてH6ローター、回転数20rpm、測定時間3分間の条件で測定した。
なお、本発明では、上述したように特定成分の組み合わせで、組成物の垂れが抑制され、溜まり量が改善するものであり、粘度と溜まり量は必ずしも相関するものではない。
【0033】
また、本発明では、上記歯磨剤組成物が、口元を下にして倒立させる縦置きのチューブ容器に充填された歯磨剤製品を提供することもできる。
本発明の歯磨剤製品は、上記歯磨剤組成物を応用することによって、歯磨剤組成物が上記容器の口元から垂れにくく、蓋のキャップに溜まりにくく、使用性に優れ、かつ保存後も変色が防止され、香味が安定に保持されて発現し、また、曳糸性も良好である。なお、充填方法は特に限定されず、通常の方法を選択することができる。
【0034】
縦置きのチューブ容器は、チューブ容器本体の内容物が排出される口元をキャップで蓋をして閉め、口元を下にして倒立させるように設計されたものであれば特に制限されず、公知の縦型チューブ容器を使用することができ、キャップとしては、ワンタッチで開閉できるヒンジキャップ等を採用できる。具体的には、大日本印刷(株)製等の市販品を使用できる。
容器の材質は特に制限されず、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、アルミニウム等の単層又は多層の容器等が使用できる。
チューブ径は25~40mm好ましく、また、内容物が押し出されて排出される口元の内径は、1~3mmが好ましく、より好ましくは1.5~3.0mmである。内径が上記範囲であると、垂れの抑制、溜まり量の改善の点で、好ましい。
【実施例0035】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
【0036】
[実施例、比較例]
表1~3に示す組成の歯磨剤組成物を常法によって調製し、下記(1)~(4)に示す評価を行った。表3の各例については、下記(5)に示す評価も行った。結果を表に併記した。
【0037】
なお、実施例で使用したポリアクリル酸ナトリウムは、25℃における粘度8,110mPa・s(B型粘度計:No.6ローター、測定時間3分間、20rpmで測定)であり、詳細な測定方法は上記(A)成分の測定方法に記載した通りである。キサンタンガムは、25℃における粘度が1,467mPa・s(医薬品添加物規格2013「キサンタンガム」の項に定める方法で測定)である。
歯磨剤組成物の粘度(組成物の粘度)は、25℃における粘度であり、B型粘度計(東機産業(株)製、VISCOMETER TVB-10)を用いてH6ローター、回転数20rpm、測定時間3分間の条件で測定した。
【0038】
(1)歯磨剤組成物のキャップへの溜まり量の評価
研磨剤を含まない歯磨剤組成物は、縦置きのチューブ容器に充填され、口元を蓋して閉じるキャップを下にして倒立させて置くと、キャップによる密閉が不十分な場合、容器の口元から垂れて漏れ、キャップの内側部分(容器の口元と接する内側部分)に歯磨剤組成物が溜まる課題があり、使用時に使いにくくなる場合がある。そこで、歯磨剤組成物の垂れにくさを評価するため、キャップの内側部分への歯磨剤組成物の溜まり量の評価を実施した。
調製した歯磨剤組成物60gを、縦置きのラミネートチューブ容器(素材:最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる、押し出し口径2mm、チューブ径33mm、高さ117mmの縦型ラミネートチューブ容器(大日本印刷(株)製))に充填し、1週間経過後、25℃の恒温槽内で蓋(キャップ)をパチンと嵌め切らない半開状態(図1参照。図1の左側のチューブ容器は、蓋と容器本体間に隙間がある半開状態であり、これに対して、右側のチューブ容器は、蓋が隙間なく完全に嵌められて閉め切られた密閉状態である。)にしたまま、蓋の外側部分を下にした状態で立たせて置き、24時間静置後、蓋の内側部分に溜まった歯磨剤組成物の量(mg)を測定し、下記評価基準で溜まり量を評価した。
評価基準
◎:80mg未満
〇:80mg以上100mg未満
×:100mg以上
【0039】
(2)変色の評価
被験者の専門パネラー5人を対象に実施した。調製した歯磨剤組成物を上記縦型ラミネートチューブ容器に充填し、40℃で1ヶ月間保存した後、前記チューブ容器から歯磨剤組成物1gを押し出し、市販品歯ブラシ上に載せ、歯磨剤組成物の変色のなさについて、-5℃で1ヶ月間保存したものをコントロールとして使用して比較し、下記評点基準で変色(変色のなさ)について判定した。
評点基準
5:変色が全くない
4:変色がほとんどない
3:わずかな変色であり、使用上問題がない
2:変色がある
1:変色がとてもある
5人の点数の平均点を算出し、下記評価基準で変色(変色のなさ)について評価した。
評価基準
◎:平均点が4.0点以上
○:平均点が3.0点以上4.0点未満
△:平均点が2.0点以上3.0点未満
×:平均点が2.0点未満
【0040】
(3)香味の評価
被験者の専門パネラー5人を用いた官能試験により評価した。調製した歯磨剤組成物を上記縦型ラミネートチューブ容器に充填し、40℃で1ヶ月間保存した後、前記チューブ容器から歯磨剤組成物1gを押し出し、市販品歯ブラシに載せて3分間ブラッシングを行い、使用中に感じた香味について、-5℃で1ヶ月間保存したものをコントロールとして使用して比較し、下記評点基準で香味について判定した。
評点基準
5:劣化していない
4:ほとんど劣化していない
3:やや劣化はしているが、問題なく、使用できる
2:明らかに劣化しており、違和感を感じるが、使用できる
1:著しく劣化し、基剤臭があり、使用できない
5人の点数の平均点を算出し、下記評価基準で香味について評価した。
評価基準
◎:平均点が4.0点以上
○:平均点が3.0点以上4.0点未満
△:平均点が2.0点以上3.0点未満
×:平均点が2.0点未満
【0041】
(4)曳糸性の評価
調製した歯磨剤組成物を上記縦型ラミネートチューブ容器に充填し、前記チューブ容器から歯磨剤組成物1gを押し出し、市販品歯ブラシ上に載せ、上方向にチューブ容器と歯ブラシを引き離した際の練り切れの度合いを下記評価基準で評価し、曳糸性について評価した。なお、曳糸性とは、チューブ容器から押し出すなどして取り出した時、歯磨剤組成物が糸を引くように伸びる性状をいい、その長さ(mm)を測定することで評価でき、短いほど練り切れがよく、曳糸性がよい。
評価基準
◎:糸曳きが5mm未満であり、練り切れが良い
○:5mm以上10mm未満の糸曳きが認められるが、使用上問題ない
×:10mm以上の糸曳きが認められ、使用上問題がある
【0042】
(5)フッ素(フッ素イオン)滞留性の評価
口腔粘膜成分であるムチンへのフッ素(フッ素イオン)吸着性試験により、フッ素イオンの滞留性を評価した。
10mL遠心チューブにムチン(Sigma-Aldrich社製)を0.2g添加し、更に歯磨剤組成物(精製水による40倍希釈)を5mL加え、3分間作用させた。その後、3,000rpmで10分間遠心分離し、上清を除去した。得られたムチンに、クエン酸カリウム緩衝液を5mL加えて1分間撹拌し、ムチンに吸着・滞留したフッ素イオンを強制的に溶出させた。3,000rpmで10分間遠心分離して上清回収し、溶液に含まれるフッ素(フッ素イオン)濃度をフッ素イオンメーター(Orion 1115000 4-Star:サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製)で測定し、滞留フッ素イオン濃度(ppm)を得た。
フッ素イオン滞留率を以下の式により算出し、フッ素(フッ素イオン)滞留性を評価した。
フッ素イオン滞留率(%)=
{(滞留フッ素イオン濃度(ppm))/(製剤に配合したフッ素イオン濃度(ppm)/40)}×100
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
図1