(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093877
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】繊維系断熱材、および繊維系断熱材の使用方法
(51)【国際特許分類】
F16L 59/02 20060101AFI20230628BHJP
D04H 1/4374 20120101ALI20230628BHJP
【FI】
F16L59/02
D04H1/4374
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208994
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】390032090
【氏名又は名称】マグ・イゾベール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 匠
【テーマコード(参考)】
3H036
4L047
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB13
3H036AB18
3H036AB24
3H036AC01
3H036AE13
4L047CA02
4L047CA05
4L047CB06
(57)【要約】
【課題】容易に寸法調節可能な繊維系断熱材を提供する。
【解決手段】繊維系断熱材であって、主面と、長側面と、短側面と、を有する形状と、繊維の積層構造と、を有し、前記短側面が、前記積層構造における積層方向と交差する、ことを特徴とする繊維系断熱材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維系断熱材であって、
主面と、長側面と、短側面と、を有する形状と、繊維の積層構造と、を有し、
前記短側面が、前記積層構造における積層方向と交差する、
ことを特徴とする繊維系断熱材。
【請求項2】
溝部をさらに備え、
前記溝部は、前記積層構造における積層方向と交差する方向に設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の繊維系断熱材。
【請求項3】
目盛をさらに備え、
前記目盛は、前記積層構造における積層方向と交差する方向に設けられる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の繊維系断熱材。
【請求項4】
前記繊維系断熱材は複数の繊維系断熱材片で構成される、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の繊維系断熱材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の繊維系断熱材の使用方法であって、
前記繊維系断熱材の設置個所の寸法に対応するように、前記短側面に略平行に前記繊維系断熱材を切断することと、
前記切断された繊維系断熱材を前記設置個所に設置することと、
を含む、ことを特徴とする繊維系断熱材の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維系断熱材、および繊維系断熱材の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維を含む成形品は、断熱性や吸音性等に優れており、建築物等の様々な分野で利用されている。このような繊維を含む成形品(繊維系断熱材)は、予め所定寸法の板状等に加工され、建築物の柱等の構造体の間に充填される。しかしながら、繊維系断熱材の長さが、構造体の充填される部位より長い場合、繊維系断熱材を構造体の間に充填する前に、充填部位の寸法に合わせて、繊維系断熱材をカッター等の切断器具で切断している。
【0003】
しかし、施工現場において、繊維系断熱材を充填部位の寸法または形状等に合わせて正確に切断することは、困難であり、また、施工効率を低下させていた。そこで、特許文献1は、断熱材に複数の溝部を形成することで、断熱材の寸法を調整することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6は従来の繊維系断熱材を示している。従来の繊維系断熱材6000は、繊維の積層構造6200を有している。このような繊維系断熱材6000が、寸法調節のために切断面Cで切断される場合、切断面Cが繊維の積層構造6200における積層方向と交差しているため、容易に切断できないことがあった。そこで、本発明は、容易に寸法調節可能な繊維系断熱材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
繊維系断熱材であって、
主面と、長側面と、短側面と、を有する形状と、繊維の積層構造と、を有し、
前記短側面が、前記積層構造における積層方向と交差する、
ことを特徴とする繊維系断熱材が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、容易に寸法調節可能な繊維系断熱材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】一実施形態に係る繊維系断熱材の使用方法の概略図。
【
図3】一実施形態に係る繊維系断熱材の製造方法の概略図。
【
図5】さらに別の実施形態に係る繊維系断熱材の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、重複した説明は省略する。なお、同一若しくは同様の構成であっても図面によって参照番号の先頭の数字が変更されている。
【0010】
<一実施形態に係る繊維系断熱材>
一実施形態に係る繊維系断熱材は、主面と、長側面と、短側面と、を有する形状と、繊維の積層構造を有するものであって、積層構造における積層方向が短側面と交差することによって、繊維系断熱材を容易に寸法調節することができるものである。
【0011】
図1は、一実施形態に係る繊維系断熱材の概略図である。繊維系断熱材1000は、X方向およびY方向に延びる矩形形状の第1主面1110(表面)および第2主面1120(裏面)を有し、かつZ方向の厚みを有する。なお、主面とは、繊維系断熱材のうちで表面積が最も大きい表面を示す。また、繊維系断熱材1000は、第1主面1110と第2主面1120の間に位置する、矩形形状の第1長側面1130および第2長側面1140と、矩形形状の第1短側面1150および第2短側面1160と、を備える。なお、短側面は、長側面に対して矩形形状の長手方向が短いことを意味する。
【0012】
繊維系断熱材1000は、繊維の積層構造1200を有している。また、繊維の積層構造1200における繊維は、略層状に積層している。繊維の積層構造1200の積層方向Aは、第1短側面1150、および第2短側面1160の少なくとも一方に対して交差(略直交)している。後述するように、これにより、施工現場において、カッター等の切断器具を使用することなく、繊維系断熱材1000を所定の寸法および形状に容易に調節することができる。
【0013】
また、積層方向Aが第1短側面1150および第2短側面1160の少なくとも一方と交差している繊維の積層構造1200は、繊維系断熱材1000のX方向の特定範囲に設けられても、全範囲に設けられていてもよい。繊維系断熱材1000のX方向の特定範囲に繊維の積層構造1200が設けられる場合、繊維系断熱材1000のX方向における一部分であっても、複数部分であってもよく、例えば、一端部、両端部、中央部等が例示される。
図1に示すように、繊維の積層構造1200が、繊維系断熱材1000のX方向の全範囲に設けられていると、任意の長さに繊維系断熱材1000の寸法を調節することが容易にできる。
【0014】
一実施形態に係る繊維系断熱材1000に含まれる繊維は、金属酸化物、または複合金属酸化物等を含む無機繊維とすることができる。一例として、無機繊維は、ケイ素、アルミニウム、ホウ素、アルカリ金属、アルカリ土類、およびその他の金属等の少なくとも1種を含む酸化物が含まれる。例えば、無機繊維としては、グラスウール、およびロックウール等が例示される。
【0015】
無機繊維の平均繊維径としては、一実施形態において1μm以上、別の実施形態において2μm以上、さらに別の実施形態において3μm以上とすることができ、一実施形態において30μm以下、別の実施形態において20μm以下、さらに別の実施形態において10μm以下、さらに別の実施形態において5μm以下とすることができる。
【0016】
また、繊維系断熱材1000は、バインダ樹脂により繊維同士が結合されており、バインダ樹脂は、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等を含むものである。また、バインダ樹脂として、ホルムアルデヒドを実質的に放出しない、天然由来の材料を主成分とするバインダが使用されてもよい。
【0017】
繊維系断熱材1000の総重量に対するバインダ樹脂の含有率は、一実施形態において1重量%以上、別の実施形態において3重量%以上、さらなる実施形態において5重量%以上、らなる実施形態において7重量%以上とすることができ、また、一実施形態において20重量%以下、別の実施形態において15重量%以下、さらなる実施形態において12重量%以とすることができる。
【0018】
繊維系断熱材1000の密度は、一実施形態において8kg/m3以上、別の実施形態において10kg/m3以上、さらなる実施形態において16kg/m3以上とすることができ、一実施形態において100kg/m3以下、別の実施形態において80kg/m3以下、さらなる実施形態において60kg/m3以下、さらなる実施形態において32kg/m3以下とすることができる。
【0019】
(繊維系断熱材の使用方法)
図2は、一実施形態に係る繊維系断熱材の使用方法の概略図である。一実施形態に係る繊維系断熱材使用方法2000は、施工現場において、設置個所の寸法に対応するように、繊維系断熱材2000を引き裂くこと(切断すること)、および引き裂かれた繊維系断熱材2000を設置個所に設置することを含んでいる。一実施形態に係る繊維系断熱材2000は、断熱性に加え、遮音性、吸音性等の機能を有するものであり、これらの機能が必要とされる分野で利用することができる。一実施形態において、繊維系断熱材2000は、建築用部材、自動車用部材、保温用部材、保冷用部材(冷蔵庫、冷凍庫等)等で利用することできる。
【0020】
繊維系断熱材2000は、利用用途に応じて予め所定寸法の板状に加工されたものであり、例えば、寸法としては、主面の長さが1370mm以上、2740mm以下の範囲、主面の長さ(幅)が265mm以上、910mm以下の範囲、厚さが42mm以上、140mm以下から選択することができる。
【0021】
このような繊維系断熱材2000が、例えば、建築用部材として利用される場合、建築物の住宅の屋根、天井、壁、および床等の構造体の間の寸法および形状に合わせて、施工の際に長さが調節される。繊維系断熱材2000は、積層構造2200の積層方向Aが第1短側面2150および第2短側面2160の少なくとも一方と交差しており、繊維の積層構造2200の積層面または短側面が切断面Cと略平行であるため、矢印B方向に引っ張ることで、
図2の下図のように、繊維系断熱材2000は引き裂かれる。これにより、繊維系断熱材2000が切断されて、長さが調節された繊維系断熱材2000aと繊維系断熱材2000bに分けられる。その後、長さが調節された繊維系断熱材2000aは設置個所に設置される。一実施形態に係る繊維系断熱材2000によれば、施工現場において、カッター等の切断器具を使用することなく、所定の寸法および形状に容易に調節することができる。
【0022】
(繊維系断熱材の製造方法)
一実施形態に係る繊維系断熱材の製造方法は、積層構造の積層方向が短側面と交差されるよう形成されるなら、特に限定されるものではない。一実施形態において、繊維系断熱材は、繊維化工程、繊維集合体形成工程、繊維集合体の硬化・成形工程、および切断・整列工程により製造することができ、製造方法によっては整列工程を行わない場合もある。
【0023】
繊維化工程において、所望の繊維の化学組成と実質的に同一の化学組成を有する原料(ガラス等)が、長側面に小孔を多数有するスピナーに投入されて熱溶融され、スピナーを高速回転させることで、単繊維状態で吹き出され、空冷され、1から7μm程度の直径の繊維が製造される。
【0024】
繊維は、上述のように無機材料で構成される無機繊維であり、その原料は、金属酸化物、複合金属酸化物、金属炭酸塩、複合炭酸塩、金属水酸化物等またはこれらの混合物を含むものである。一実施形態において、繊維の原料は、ケイ素、アルミニウム、ホウ素、アルカリ金属、アルカリ土類、およびその他の金属等の少なくとも1種を含む酸化物、炭酸塩、水酸化物またはこれらの混合物を含むものである。繊維の原料は、ガラス質、結晶質、または両性質を有していてもよい。一例として、繊維の原料は、ソーダ・ライムガラス、または、これに数パーセントのホウ酸を添加したアルカリ・ボロ・シリケートガラスとすることができる。
【0025】
次に、繊維集合体形成工程において、得られた繊維に、繊維集合体の総重量に対して1から20重量%程度の含有率となるようにバインダ樹脂(例えば、フェノール系樹脂)を付与し、搬送機上に例えば吸引装置で吸引しながら、繊維を堆積(積層)させる。これにより、繊維は、その長さ方向が搬送機の搬送面に略平行になるように概ね堆積し、繊維の積層構造が形成される。つまり、繊維の積層構造の積層方向は、搬送面または繊維集合体の搬送面に接する面に対して交差する方向(略直交する方向)となる。なお、この積層方法を、次の積層方法と区別するため、低く積層させた場合と称することもある。
【0026】
また、繊維は、繊維集合体の厚さ方向の長さ(搬送面に略直交する方向の長さ)が高くなるように積層し、言い換えれば、その厚さ方向の長さが、最終的に得られる繊維系断熱材の主面の長手方向の長さとなるように積層し、繊維集合体の搬送方向が、繊維系断熱材の厚さ方向となるよう切断して、直方体形状の繊維系断熱材を形成してもよい。なお、この積層方法を、前の積層方法と区別するため、高く積層させた場合と称することもある。得られた繊維集合体は搬送機によって熱風通過式オーブンコンベアに搬送される。
【0027】
繊維集合体の硬化・成形工程において、繊維集合体はオーブンコンベアで所定の厚さとなるように圧縮された状態で、所定の温度および時間(例えば、約240℃、約90秒)でバインダ樹脂を加熱硬化させ、繊維系断熱材を製造する。
【0028】
上記繊維集合体形成工程において、繊維を低く積層させた場合、繊維系断熱材の製造方法は、切断・整列工程を備える。
図3は、一実施形態に係る繊維系断熱材の切断・整列工程の概略図である。
図3の上図に示されるように、硬化・成形工程の繊維系断熱材3010の繊維の積層構造3200の積層方向Aは、X方向と交差する方向である(Z方向と略同一方向である)。繊維系断熱材3010は、切断面Cに沿って、角柱状に切断される。切断面の間隔は、目的の繊維系断熱材3000において所望の厚さが得られるように設定され得る。また、角柱状の繊維系断熱材片3000cの数は、特に限定されるものでなく、目的の繊維系断熱材3000において所望の長さが得られるように設定され得る。
【0029】
次に、角柱状の繊維系断熱材片3000cは、Y方向を軸として、回転矢印のように約90°回転させて、
図3の下図に示されるように、繊維の積層構造3200の積層方向Aが第1短側面3150、および第2短側面3160の少なくとも一方に対して交差するように整列させられる。整列後、角柱状の繊維系断熱材片3000c同士は接合される。角柱状の繊維系断熱材片3000cの接合方法は、特に限定されるものでないが、接着材を使用して行うことができ、例えば、繊維集合体形成工程において使用されたバインダ樹脂が使用され得る。これにより、積層構造3200の積層方向Aが矩形形状の表面の短手方向と交差する方向である繊維系断熱材3000が製造される。
【0030】
また、積層方向Aが第1短側面3150、および第2短側面3160の少なくとも一方に対して交差する繊維の積層構造3200が、繊維系断熱材3000のX方向の特定範囲に形成される場合、角柱状の繊維系断熱材片3000cの一部、例えば、一端部、両端部、または中央部を、Y方向を軸として、回転矢印のように約90°回転させて、繊維の積層構造3200の積層方向AがY方向およびZ方向と交差するように整列させ、その後接合することで得られる。
【0031】
一方、上記繊維集合体形成工程において、繊維を、所定のX方向の長さとなるように高く積層させた場合、繊維系断熱材に製造方法は、切断工程を備えるが、整列工程を備えない。つまり、硬化・成形工程後の繊維系断熱材の繊維の積層方向Aが、最終的に得られる繊維系断熱材の主面の長手方向となるように積層し、繊維集合体の搬送方向が、繊維系断熱材の厚さ方向になるよう切断することで、積層構造の積層方向Aが第1短側面3150、および第2短側面3160の少なくとも一方に対して交差する繊維系断熱材が製造される。
【0032】
<別の実施形態に係る繊維系断熱材>
別の実施形態に係る繊維系断熱材は、主面と、長側面と、短長側面と、を有する形状と、繊維の積層構造を有するものであって、積層構造における積層方向が短側面と交差し、積層構造の積層方向と交差する方向に溝部を設けることによって、繊維系断熱材を容易に寸法調節することができるものである。以下、一実施形態に係る繊維系断熱材1000と異なる部分を中心に説明する。
【0033】
図4は、別の実施形態に係る繊維系断熱材の概略図である。繊維系断熱材4000は、第1主面4110および第2主面4120と、第1長側面4130および第2長側面4140と、第1短側面4150および第2短側面4160と、を有する形状と、繊維の積層構造4200と、を有するものである。また、繊維の積層構造4200の積層方向Aは、第1短側面4150、および第2短側面4160の少なくとも一方に対して交差する方向(X方向と略同一方向)である。繊維系断熱材4000は、少なくとも1つの溝部4300をさらに備える。溝部4300は、繊維の積層構造4200の積層面(または短側面)と略平行に延びるよう形成されている。
【0034】
溝部4300の形は、繊維系断熱材4000を引き裂くこと(切断すること)を容易にできるものであれば、特に限定されるものでなく、V字状等が例示され、その深さも、繊維系断熱材4000の形状保持性を損なわない範囲とすればよく、特に限定されるものでない。また、溝部4300の数は、特に限定されるものでなく、繊維系断熱材4000の利用用途の充填箇所の寸法に応じて設定されることができ、1つであっても、複数であってもよい。
図4に示す繊維系断熱材4000では、6つの溝部4300が設けられている。
【0035】
また、積層方向Aが第1短側面4150、および第2短側面4160の少なくとも一方に対して交差する繊維の積層構造4200が、繊維系断熱材4000のX方向の特定範囲に設けられる場合、溝部4300は、繊維の積層構造4200の位置に応じて、繊維系断熱材4000の一部、例えば、一端部、両端部、または中央部に形成することができる。
【0036】
(繊維系断熱材の使用方法)
別の実施形態に係る繊維系断熱材の使用方法は、一実施形態に係る繊維系断熱材1000と同様に、施工現場において、設置個所の寸法に対応するように、繊維系断熱材4000を引き裂くこと(切断すること)、および引き裂かれた繊維系断熱材4000を設置個所に設置することを含んでいる。別の実施形態に係る繊維系断熱材4000は、溝部4300を有しているため、切断面Cで短側面に略平行に切断するにあたり、矢印B方向に引っ張ることで繊維系断熱材4000は容易に引き裂かれ、施工現場において、カッター等の切断器具を使用することなく、所定の寸法および形状に、より容易に調節することができる。
【0037】
(繊維系断熱材の製造方法)
別の実施形態に係る繊維系断熱材の製造方法は、切断・整列工程または切断工程の後に、溝部形成工程を有する点を除き、一実施形態に係る繊維系断熱材1000と同様である。溝部形成工程においては、繊維系断熱材4000に所定の間隔で溝部4300をカッター等の切断器具を使用して形成することができる。
【0038】
<さらに別の実施形態に係る繊維系断熱材>
さらに別の実施形態に係る繊維系断熱材は、主面と、長側面と、短長側面と、を有する形状と、繊維の積層構造を有するものであって、積層構造における積層方向が短側面と交差し、積層構造の積層方向と交差する方向に目盛を設けることによって、繊維系断熱材を正確または容易に寸法調節することができるものである。以下、一実施形態に係る繊維系断熱材1000と異なる部分を中心に説明する。
【0039】
図5は、さらに別の実施形態に係る繊維系断熱材の概略図である。繊維系断熱材5000は、第1主面5110および第2主面5120と、第1長側面5130および第2長側面5140と、第1短側面5150および第2短側面5160と、を有する形状と、繊維の積層構造5200と、を有するものである。繊維の積層構造5200の積層方向Aは、第1短側面5150、および第2短側面5160の少なくとも一方に対して交差する方向(X方向と略同一方向)である。繊維系断熱材5000は、少なくとも一部に、目盛5400をさらに備える。目盛5400は、繊維の積層構造5200の積層方向Aに交差する方向、言い換えれば、繊維の積層構造5200の積層面(または短側面)と略平行に延びるよう形成されている。
【0040】
目盛5400の形は、施工者が視認できれば、特に限定されるものでなく、線状、点状、記号等が例示される。また、目盛5400の数または間隔は、特に限定されるものでなく、繊維系断熱材5000の利用用途の充填箇所の寸法に応じて設定されることができる。
【0041】
また、積層方向AがX方向と略同一方向である繊維の積層構造5200が、繊維系断熱材5000のX方向の特定範囲に設けられる場合、目盛5400は、繊維の積層構造5200の位置に応じて、繊維系断熱材5000の一部、例えば、一端部、両端部、または中央部に形成することができる。また、繊維系断熱材5000は、目盛5400に加えて、上記の溝部4300を目盛5400と同じ位置または異なる位置に設けてもよい。
【0042】
(繊維系断熱材の使用方法)
さらに別の実施形態に係る繊維系断熱材の使用方法は、一実施形態に係る繊維系断熱材1000と同様に、施工現場において、設置個所の寸法に対応するように、繊維系断熱材5000を引き裂くこと(切断すること)、および引き裂かれた繊維系断熱材5000を設置個所に設置することを含んでいる。さらに別の実施形態に係る繊維系断熱材5000は、目盛5400を有しているため、繊維系断熱材2000のX方向の長さを決めるにあたり、スケール等使用せずに、容易に寸法を決定し調節することができる。
【0043】
(繊維系断熱材の製造方法)
さらに別の実施形態に係る繊維系断熱材の製造方法は、切断・整列工程または切断工程の後に、目盛形成工程を有する点を除き、一実施形態に係る繊維系断熱材1000と同様である。目盛形成工程は、特に限定されるものでなく、繊維系断熱材5000にレーザ光を照射して酸化等させて所定の間隔の目盛5400を形成することや、繊維系断熱材5000に塗料組成物を所定の間隔の目盛5400となるように塗布して形成すること等が含まれる。
【0044】
以上、発明の実施形態について説明したが、発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1000、2000、2000a、2000b、3000、3010、4000、5000、6000 繊維系断熱材、1110、4110、5110 第1主面、1120、4120、5120 第2主面、1130、4130、5130 第1長側面、1140、4130、5130 第2長側面、1150、2150、3150、4150、5150 第1短側面、1160、2160、3160、4160、5160 第2短側面、1200、2200、3200、4200、5200、6200 繊維の積層構造、3000c 角柱状の繊維系断熱材片、3010 硬化・成形工程の繊維系断熱材、4300 溝部、5400 目盛