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  • 特開-インソール 図1
  • 特開-インソール 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093888
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】インソール
(51)【国際特許分類】
   A43B 17/14 20060101AFI20230628BHJP
   A43B 17/00 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
A43B17/14
A43B17/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209008
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小原 玲
(72)【発明者】
【氏名】大村 京平
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050EA13
4F050HA56
4F050HA73
(57)【要約】
【課題】肉薄であっても足当たりが柔らかでフィット感を奏するとともに、衝撃吸収性を有するインソールを提供することを課題とし、特にパンプス用として好適なインソールを提供することを課題とする。
【解決手段】アスカーC硬度が40以下であって、反発弾性率が45%以上であるポリウレタンフォームを有してなることを特徴とするインソールである。加えて、ポリウレタンフォームの最大変位が10~45%であることが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスカーC硬度が40以下であって、反発弾性率が45%以上であるポリウレタンフォームを有してなることを特徴とするインソール。
【請求項2】
前記ポリウレタンフォームの最大変位が10~45%であることを特徴とする請求項1に記載のインソール。
【請求項3】
中足部における前記ポリウレタンフォームの厚みが2.0~5.0mmであることを特徴とする請求項1または2に記載のインソール。
【請求項4】
パンプスに使用されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のインソール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インソールに関するものであり、特にパンプス用として好適なインソールに関するものである。
【0002】
従来からインソールは、通気性、抗菌防臭性、衝撃吸収性、フィット性等、靴の履き心地を向上させるために利用されている。インソールを構成する素材としては、種々のものが知られているが、靴の着用時に足に加わる衝撃を緩和させるものとして、合成樹脂発泡体からなるものが知られている(特許文献1)。
合成樹脂発泡体からなるインソールは、硬度が低いとフィット感があるため足当たりがよく感じられるが、衝撃吸収性に劣るため長時間の歩行において足に疲れや痛みが発生しやすくなる。合成樹脂発泡体の厚みを大きくすることで、上記不具合は軽減されうるが、靴の内部空間が狭くなるため靴が窮屈に感じられる。一方で、硬度を高めに設定すると衝撃吸収性は担保できるものの、足当たりが悪く感じられる。
【0003】
また、爪先部よりも踵部が高いパンプスにおいては、局所的に荷重がかかるため、運動靴や紳士靴等と比較して、足に疲れや痛みが生じやすくなる傾向にある。それゆえ、衝撃吸収性に優れるインソールが求められるが、パンプスは足にフィットする作りになっているためインソールの厚みを大きくすることが難しい。
パンプス用のインソールとして、特許文献2が開示されている。特許文献2には、ヒールの高さに応じてアーチ部の頂点の位置を変更してアーチをサポートするインソールについて記載されている。
しかしながら、特許文献2にて開示されたインソールは、パンプスのヒールの高さに合わせてインソールの仕様を変更する必要があり、汎用性にかける問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-283017号公報
【特許文献2】特開2016-96830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、肉薄であっても足当たりが柔らかでフィット感を奏するとともに、衝撃吸収性を有するインソールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討し、本インソールを発明した。
【0007】
本発明は以下を要旨とする。
(1)アスカーC硬度が40以下であって、反発弾性率が45%以上であるポリウレタンフォームを有してなることを特徴とするインソール。
(2)前記ポリウレタンフォームの最大変位が10~45%であることを特徴とする(1)に記載のインソール。
(3)中足部における前記ポリウレタンフォームの厚みが2.0~5.0mmであることを特徴とする(1)または(2)に記載のインソール。
(4)パンプスに使用されることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載のインソール。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、肉薄であっても足当たりが柔らかでフィット感を奏するとともに、着地時などにおいて足裏が受ける衝撃を吸収可能なインソールを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明のインソールの平面図である。
図2図2は、図1のA-A’線断面図の状態を模式的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において中足部とは、インソールの踵と爪先を結ぶインソール中心線において踵側から80%の位置であって中足骨頭付近を指すものである。また、踵部とは、上記インソール中心線において踵側から10%の位置を幅方向にスライドさせ、踵の幅方向中央部を通る踵中心線と交差する位置、すなわち踵の中心部分を指すものである。
【0011】
本発明のインソールは、アスカーC硬度が40以下であって、反発弾性率が45%以上であるポリウレタンフォームを有してなるものである。
【0012】
ポリウレタンフォームのアスカーC硬度はJIS K 7312:1996に準拠して求められるものである。ポリウレタンフォームのアスカーC硬度が40以下であることにより、足当たりが柔らかに感じられる。アスカーC硬度は、35以下であるとクッション性が良好であるため、好ましい。
【0013】
ポリウレタンフォームの反発弾性率はJIS K 6255:2013に準拠して求められるものである。ポリウレタンフォームの反発弾性率が45%以上であることにより、衝撃吸収性に優れる。また、反発弾性率が高いと、歩行時においてインソールが足裏全体に追従し、蹴り出しや足運びがスムーズになる効果が期待できることから、反発弾性率は60%以上であることが好ましい。
【0014】
本発明のインソールは、アスカーC硬度が40以下であって、反発弾性率が45%以上であるポリウレタンフォームを有してなることで、肉薄であっても足当たりが柔らかでフィット感を奏しかつ衝撃吸収性に優れる。
【0015】
上記ポリウレタンフォームの最大変位は、10~45%であることが好ましい。最大変位が10~45%であることで、底付きすることなくフィット感に優れる。
最大変位が10%未満であると、着地時にインソールの沈みこみが小さいため、脚部の安定感が損なわれる可能性がある。一方、最大変位が45%を越えると、底付き感が生じる傾向にある。
最大変位はJIS-K6400-2:2012に基づいて、測定されるものであり、荷重430Nのときの厚みの変位量を表わすものである。
なお、荷重430Nは、日本女性の平均体重である体重52.7kgの人が歩行した際に、着地時に足裏にかかる力の大きさである。
【0016】
ポリウレタンフォームは、ポリオール、イソシアネート化合物を必須成分とし、適宜触媒、発泡剤、整泡剤等を含むポリウレタン原料を反応させて得られるものである。
【0017】
〔ポリオール〕
ポリオールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等が使用される。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、アルキレンオキシドの開環重合により得られるポリエーテルポリオールが好適である。該アルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシド(PO)、エチレンオキシド(EO)、ブチレンオキシド等が挙げられ、これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。より具体的な好ましい例としては、ポリテトラメチレングリコール、またはポリプロピレングリコールが挙げられる。
ポリテトラメチレンエーテルグリコールとしては、数平均分子量が1000~3000、平均水酸基価が50~200mgKOH/gであると、目的とする反発弾性が得られやすい。
ポリプロピレングリコールとしては、数平均分子量が4000~10000であると、目的とする反発弾性が得られやすく、好適である。
【0018】
〔イソシアネート化合物〕
イソシアネート化合物は、イソシアネート基末端プレポリマーや変性MDIが好ましく使用される。
イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリオールと、ポリイソシアネートとをイソシアネート基(NCO基)が過剰となるように反応させて得られるものであり、数平均分子量が500~2000、イソシアネート基含有率3~15質量%、平均官能基数2~3のイソシアネート基末端プレポリマーが好ましい。
変性MDIとしては、ポリメリックMDI(クルードMDI)、ウレタン変性MDI、ウレア変性MDI、アロファネート変性MDI、ビウレット変性MDI、カルボジイミド変性MDI、ウレトンイミン変性MDI、ウレトジオン変性MDI、イソシアヌレート変性MDI等が挙げられる。
【0019】
〔触媒〕
触媒は、従来からポリウレタンフォームの製造に使用されているものであればよく、例えば、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミンなどのアミン系触媒、ビスマス触媒などの金属触媒が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0020】
〔発泡剤〕
発泡剤としては、水を用いることができる。添加量は、ポリオール100質量部に対し、0.5質量部以上3質量部以下であることが好ましい。上記水としては、イオン交換水、蒸留水などが挙げられるが、イオン交換水が好ましい。
【0021】
〔整泡剤〕
整泡剤は、ポリオールとイソシアネート化合物とを反応させウレタン反応を生じせしめ、発泡硬化させる際、ポリウレタンフォームのセルを均一にするために用いられる。整泡剤は、ウレタンフォームの製造に使用できるものであれば特に限定されないが、シリコーン系整泡剤が好ましい。
【0022】
上記のような成分からなるポリウレタンフォームとして、アスカーC硬度が40以下であって、反発弾性率が45%以上の特性を有するものであれば、インソールを構成する材として好適に作用する。
【0023】
本発明のインソールは上記ポリウレタンフォームが荷重負荷の大きい中足部および踵部において用いられていれば効果を有するが、インソールの全領域に上記ポリウレタンフォームが用いられていることが好ましい。
また、本発明のインソールは上記ポリウレタンフォームのみから形成されてもよいし、上記ポリウレタンフォームの表面(足裏側)や裏面(靴底側)に別の材を用いて形成されてもよい。
【0024】
ポリウレタンフォームの表面(足裏側)に設ける材としては、例えば、羊毛、絹、木綿、麻等の天然繊維、ポリアミド、レーヨン等の半合成繊維、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンもしくはポリアミド等の合成繊維、ポリアセテート等のその他の繊維もしくはこれらの混紡材よりなる織物、編物又は不織布等の生地、合成皮革や人工皮革等が挙げられる。
【0025】
インソールの中足部におけるポリウレタンフォームの厚みは2.0~5.0mmであることが好ましい。厚みが2.0mm未満であると、着用者の体重が重い場合や、トレイルランニング用の靴に使用する場合など、足裏への負荷が大きい使用環境によっては、足当たりが柔らかでフィット感を奏しかつ衝撃吸収性に優れる効果が発現しにくくなる場合がある。一方で、厚みが5.0mmを超えると、靴が窮屈に感じられる傾向にある。
【0026】
本発明のインソールが適用される靴としては特段限定されないが、パンプスに適用した場合、その効果は絶大である。
パンプスは、靴内の容積が小さく厚みに制限があることや、局所的に荷重がかかりやすい構造であることから、肉薄であってもフィット感および衝撃吸収性に優れる本発明のインソールが好適に使用される。
なお、本明細書において、パンプスとは、爪先よりも踵よりも高い靴であって、ヒールの高さが3cm以上の靴のことを指す。
【0027】
本発明のインソールをパンプスに使用する場合は、インソールの全領域において上記ポリウレタンフォームが用いられていることが好ましく、土踏まず部の最大厚みが、中足部の厚みの2~3倍、踵部の厚みの1.5~2倍に設定することが好ましい。
上記高さ設定により、中足部および踵部のフィット感や衝撃吸収性だけでなく、土踏まず部のフィット感および衝撃吸収性に優れるとともに、足の前すべりを抑制する効果も奏する。
【0028】
本発明のインソールは、靴に着脱自在に設けられていてもよいし、靴に固着されていてもよい。
【実施例0029】
以下に本発明を実施例に基づいて、詳細に説明する。本発明は、これら実施例に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。
【0030】
実施例1~8、比較例1~4
0.4mmの合成皮革からなる生地を設置した金型内に、表1に示す組成のポリウレタンフォーム原料を注入し、金型温度40℃の条件下で反応させた後、脱型し、中足部の厚み3.4mm、踵部の厚み5.0mm、土踏まず部の最大厚みが9.8mmのインソールを作成した。
【0031】
ポリウレタンフォーム原料は以下のとおりである。なお、表1中の各成分の数値の単位は「質量部」である。
・ポリオール1:ポリプロピレングリコール、数平均分子量:7000
・ポリオール2:ポリテトラメチレングリコール、数平均分子量:1000
・ポリオール3:ポリプロピレングリコール、数平均分子量:700
・触媒1:ジブチル錫ジオクテート
・触媒2:テトラエチレンジアミン
・発泡剤:水
・整泡剤:シリコーン系化合物
・イソシアネート1:カルボジイミド変性MDI
・イソシアネート2:ポリテトラメチレングリコールとMDIとからなるイソシアネート基末端プレポリマー、イソシアネート基含有率:8%
・イソシアネート3:ポリテトラメチレングリコールとMDIとからなるイソシアネート基末端プレポリマー、イソシアネート基含有率:15%
【0032】
ポリウレタンフォームのアスカーC硬度、反発弾性率、最大変位は以下の方法で測定した。
各実施例、比較例と同じ組成、同じ温度条件で高さ12.5mmの金型を用いて物性試験用ポリウレタンフォームを作製し、アスカーC硬度、反発弾性率、最大変位の測定を行った。
<アスカーC硬度>
JIS K 7312:1996に準拠し、アスカーゴム硬度計C型を用いて物性試験用ポリウレタンフォームの硬度(アスカーC硬度)を測定した。
<反発弾性率>
JIS K 6255:2013に準拠して物性試験用ポリウレタンフォームの反発弾性率を測定した。
<最大変位>
JIS K 6400-2:2012に準拠して最大変位を測定した。具体的には、物性試験用のポリウレタンフォームを縦50mm、横50mmにカットした試験片を引張圧縮試験機(イマダ製作所社製、SL-6002)に設置し、試験片に430Nの荷重をかけたときの厚さ(歪み)を測定し、以下の式で算出した。
【0033】
各実施例、比較例で得られたインソールをヒール高さ4cmのパンプスに挿入し、履き心地を以下の方法で評価した。
20~50代の女性6名(20代:3名、30代:1名、50代:2名)を被験者として選出し、パンプスを着用させ、10分間の歩行試験を行い、「フィット感」、「衝撃吸収性」、「硬さ」について、以下の基準で評価させた。
【0034】
・フィット感
歩行試験中において、土踏まずの全体にインソールのサポートを感じられる:優
歩行試験中において、土踏まずの一部にインソールのサポートが感じられる:良
歩行試験中において、土踏まずにインソールのサポートが感じられない:不可
6名全員が「優」または「良」の評価であって「優」の評価が4名以上の場合を「◎」、6名全員が「優」または「良」の評価であって「優」の評価が3名以下の場合を「○」、6名のうち「不可」の評価が1名以上であった場合を「×」と判定した。判定結果は表1に示すとおりである。
【0035】
・衝撃吸収性
歩行試験後において、足に疲労感がなかった:良
歩行試験後において、足に疲労感があった:不可
6名全員が「良」の評価であった場合を「◎」、「不可」の評価が1名であった場合を「○」、「不可」の評価が2名以上であった場合を「×」と判定した。判定結果は表1に示すとおりである。
なお、実施例1~8、比較例1~4において、「○」と判定されたものはなかった。
【0036】
・硬さ
歩行試験中において、足当たりが柔らかく感じられた:良
歩行試験中において、足当たりが硬く感じられた:不可
6名全員が「良」の評価であった場合を「◎」、「不可」の評価が1名であった場合を「○」、「不可」の評価が2名以上であった場合を「×」と判定した。判定結果は表1に示すとおりである。
【0037】
【表1】
【0038】
各実施例、比較例の結果から、実施例1~8のインソールについては、フィット感、衝撃吸収性が良好であるとともに、足当たりが柔らかく感じられるものであり、履き心地に優れることがわかった。特に、反発弾性率の高いポリウレタンフォームを用いた実施例2、3、7は、歩行時に土踏まず全体にサポートが感じられるため、効果的であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のインソールは、さまざまなシューズで使用できるものであるが、肉薄であっても足当たりが柔らかでフィット感を奏するとともに、衝撃吸収性を有するため、パンプス用として特に効果的である。
【符号の説明】
【0040】
10 インソール
11 中足部
12 踵部
13 土踏まず部
110 インソール中心線
120 踵中心線
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-12-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
本発明のインソールが適用される靴としては特段限定されないが、パンプスに適用した場合、その効果は絶大である。
パンプスは、靴内の容積が小さく厚みに制限があることや、局所的に荷重がかかりやすい構造であることから、肉薄であってもフィット感および衝撃吸収性に優れる本発明のインソールが好適に使用される。
なお、本明細書において、パンプスとは、爪先よりも踵部が高い靴であって、ヒールの高さが3cm以上の靴のことを指す。