(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093900
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】ワイヤ送給装置
(51)【国際特許分類】
B23K 9/133 20060101AFI20230628BHJP
【FI】
B23K9/133 502Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209025
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋介
(72)【発明者】
【氏名】宮原 寿郎
(57)【要約】
【課題】小型化を図りつつ、オプション部品等の取付けを容易に行うことが可能なワイヤ送給装置を提供する。
【解決手段】駆動部およびモータを含むワイヤ送給機構と、前記モータを支持する金属構造体2と、金属構造体2および前記ワイヤ送給機構を収容するケース1と、を備え、ケース1は、送給方向Xに直交する第1方向の一方側および他方側に離間して配置された第1側壁および第2側壁13を含む。金属構造体2は、送給方向前方X1および送給方向後方X2に離間配置された壁部21,22と、これら双方につながる壁部23と、を含む。前記モータの少なくとも一部は、壁部21~23により囲まれた内側の空間領域に配置され、前記第1側壁および第2側壁13の少なくとも一方には、部品取付け用の複数のねじ孔部7が設けられ、複数のねじ孔部7の少なくとも1つは、前記第1方向に見て壁部21~23および前記モータのいずれにも重ならない。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部および前記駆動部を駆動させるモータを含み、溶接ワイヤを送給するためのワイヤ送給機構と、前記モータを支持する金属構造体と、前記金属構造体および前記ワイヤ送給機構を収容するケースと、を備え、
前記ケースは、前記溶接ワイヤの送給方向に直交する第1方向の一方側および他方側に離間して配置された第1側壁および第2側壁を含み、
前記金属構造体は、前記送給方向の一方側および他方側に離間して配置された第1壁部および第2壁部と、前記第1壁部および前記第2壁部の双方につながる第3壁部と、を含み、
前記モータの少なくとも一部は、前記第1壁部、前記第2壁部および前記第3壁部により囲まれた内側の空間領域に配置されており、
前記第1側壁および前記第2側壁の少なくとも一方には、部品取付け用の複数のねじ孔部が設けられており、
前記複数のねじ孔部のうち少なくとも1つは、前記第1方向に見て前記第1壁部、前記第2壁部、前記第3壁部、および前記モータのいずれにも重ならない、ワイヤ送給装置。
【請求項2】
前記複数のねじ孔部は、前記モータに対して前記送給方向の一方側に位置する第1ねじ孔部と、前記モータに対して前記送給方向の他方側に位置する第2ねじ孔部と、を含む、請求項1に記載のワイヤ送給装置。
【請求項3】
前記第1ねじ孔部および前記第2ねじ孔部は、前記第1側壁および前記第2側壁の各々に設けられている、請求項2に記載のワイヤ送給装置。
【請求項4】
前記複数のねじ孔部の各々は、前記ケースに埋設されたインサートナットにより構成される、請求項1ないし3のいずれかに記載のワイヤ送給装置。
【請求項5】
前記第1壁部および前記第2壁部は、前記送給方向に見て互いに重なり、
前記第3壁部は、前記第1壁部および前記第2壁部の各々に対して、前記第1方向の一方側に偏倚する位置につながる、請求項1ないし4のいずれかに記載のワイヤ送給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤ送給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
消耗電極式ガスシールドアーク溶接において、溶接ロボットや走行台車を用いた自動溶接や、作業者が操作する半自動溶接の手法が採用されている。これら自動溶接等の溶接作業時においては、ワイヤ送給装置により溶接トーチに向けて溶接ワイヤが送り出され、また、溶接トーチには電力およびシールドガスが供給される。溶接電力は、たとえば溶接電源からパワーケーブルやコンジットケーブルを介して溶接トーチに供給される。ワイヤ送給装置の内部には、溶接電流を流す経路として給電用ケーブルや給電用導体が配置されており、溶接電力は当該給電用導体等を介して溶接トーチに供給される(たとえば特許文献1を参照)。特許文献1に記載された溶接装置において、溶接トーチは、いわゆる水冷トーチであり、当該溶接トーチに冷却水(冷却液)が供給される。特許文献1の
図5~
図7等に示されるように、ワイヤ送給装置の内部にはまた、ガス配管および水冷ホースが配置されている。
【0003】
このようにワイヤ送給装置の内部に給電用導体、ガス配管および水冷用ホースをそれぞれ配置する構成では、これらを内部に配置するための構造が複雑になり、ワイヤ送給装置の大型化を招く要因となる。また、特許文献1(同文献の
図5、
図6を参照)に記載されたワイヤ送給装置(4)は、いわゆるプル側送給装置である。溶接作業を行う現場によっては、作業領域が比較的広い場合がある。このような場合、溶接作業の際、溶接箇所に対応させて、上記プル側送給装置ととともに当該プル側送給装置に接続されたトーチケーブル、溶接トーチや中間ケーブルを取り回す必要がある。このような溶接作業の現場では、プル側送給装置(ワイヤ送給装置)の運搬等を容易とするために、別部品(オプション部品)等を取付けて使用するニーズがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、小型化を図りつつ、オプション部品等の取付けを容易に行うことが可能なワイヤ送給装置を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0007】
本発明によって提供されるワイヤ送給装置は、駆動部および前記駆動部を駆動させるモータを含み、溶接ワイヤを送給するためのワイヤ送給機構と、前記モータを支持する金属構造体と、前記金属構造体および前記ワイヤ送給機構を収容するケースと、を備え、前記ケースは、前記溶接ワイヤの送給方向に直交する第1方向の一方側および他方側に離間して配置された第1側壁および第2側壁を含み、前記金属構造体は、前記送給方向の一方側および他方側に離間して配置された第1壁部および第2壁部と、前記第1壁部および前記第2壁部の双方につながる第3壁部と、を含み、前記モータの少なくとも一部は、前記第1壁部、前記第2壁部および前記第3壁部により囲まれた内側の空間領域に配置されており、前記第1側壁および前記第2側壁の少なくとも一方には、部品取付け用の複数のねじ孔部が設けられており、前記複数のねじ孔部のうち少なくとも1つは、前記第1方向に見て前記第1壁部、前記第2壁部、前記第3壁部、および前記モータのいずれにも重ならない。
【0008】
好ましい実施の形態においては、前記複数のねじ孔部は、前記モータに対して前記送給方向の一方側に位置する第1ねじ孔部と、前記モータに対して前記送給方向の他方側に位置する第2ねじ孔部と、を含む。
【0009】
好ましい実施の形態においては、前記第1ねじ孔部および前記第2ねじ孔部は、前記第1側壁および前記第2側壁の各々に設けられている。
【0010】
好ましい実施の形態においては、前記複数のねじ孔部の各々は、前記ケースに埋設されたインサートナットにより構成される。
【0011】
好ましい実施の形態においては、前記第1壁部および前記第2壁部は、前記送給方向に見て互いに重なり、前記第3壁部は、前記第1壁部および前記第2壁部の各々に対して、前記第1方向の一方側に偏倚する位置につながる。
【0012】
好ましい実施の形態においては、前記溶接用中継体の構成材料は、アルミニウムを含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るワイヤ送給装置において、第1方向の一方側および他方側に離間して配置された第1側壁および第2側壁の少なくとも一方には、部品取り付け用の複数のねじ孔部が設けられている。複数のねじ孔部のうち少なくとも1つは、第1方向に見て第1壁部、第2壁部、第3壁部およびモータのいずれにも重ならない。このような構成によれば、必要に応じて、別部品であるオプション部品等をワイヤ送給装置に容易に取付けて使用することができる。また、複数のねじ孔部のうち少なくとも1つは、第1方向に見て第1壁部、第2壁部、第3壁部およびモータのいずれにも重ならず、これらを避けた位置に配置されている。これにより、第1ねじ孔部を設けることでケースのサイズが大きくなることを回避しつつ、別部品を適切にワイヤ送給装置に取付けることが可能である。
【0014】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るワイヤ送給装置の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すワイヤ送給装置の右側面図である。
【
図3】
図1に示すワイヤ送給装置の分解斜視図である。
【
図6】
図2のVI-VI線に沿う部分断面図である。
【
図7】金属構造体およびワイヤ送給機構を示す平面図である。
【
図8】金属構造体およびワイヤ送給機構の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態につき、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0017】
本発明における「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、単にラベルとして用いたものであり、必ずしもそれらの対象物に順列を付することを意図していない。また、「ある物Aがある物Bにある方向に見て重なる」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bのすべてに重なること」、および、「ある物Aがある物Bの一部に重なること」を含む。
【0018】
図1は、本発明に係るワイヤ送給装置の一例を示す斜視図である。詳細な図示説明は省略するが、ワイヤ送給装置A1は、溶接ワイヤを溶接トーチ(図示略)に送り出すものであり、いわゆるプル側送給装置である。溶接ワイヤは、ワイヤ送給装置A1に接続されるトーチケーブルおよび溶接トーチ(いずれも図示略)の内部に設けられているライナの内部を通って、溶接トーチの先端に導かれる。
図1において、左方が溶接ワイヤの送給方向Xの前方(以下、適宜「送給方向前方X1」という)であり、右方が溶接ワイヤの送給方向Xの後方(以下、適宜「送給方向後方X2」という)である。ワイヤ送給装置A1の送給方向後方X2には、たとえば中間ケーブル、ワイヤ送給装置(プッシュ側送給装置)、および溶接電源装置(いずれも図示略)が接続される。本実施形態のワイヤ送給装置A1は、たとえば作業者が溶接トーチを操作する、いわゆる半自動溶接に用いられるものである。なお、
図1~
図4に示したワイヤ送給装置A1の説明において、通常使用する姿勢を基準として上下方向を規定する。上記の送給方向Xは、水平面に略沿う方向である。
【0019】
図1~
図5に示したワイヤ送給装置A1は、ケース1、金属構造体2、ワイヤ送給機構3、ハンドル4、カバー6および複数のねじ孔部7を備えている。ケース1は、全体として送給方向Xに延びる筒状とされており、金属構造体2およびワイヤ送給機構3を収容している。ケース1は、分割可能な一対の分割片(下部ケース1Aおよび上部ケース1B)により構成される。
図3に示すように、ケース1を構成する下部ケース1Aおよび上部ケース1Bは、送給方向Xと直角である上下方向(第2方向Z)に分割可能である。これら下部ケース1Aおよび上部ケース1Bは、組み合わせた状態でビス止め等の適宜手段により連結される。
図5に示すように、ケース1は、主要部分が概略矩形断面とされている。ケース1(下部ケース1Aおよび上部ケース1B)は、電気絶縁性を有する材料により構成される。ケース1を構成する材料としては、たとえばポリアミド樹脂(ガラス繊維入り)などの合成樹脂材料を挙げることができる。ただし、ケース1(下部ケース1Aおよび上部ケース1B)を構成する材料は合成樹脂に限定されない。
【0020】
ケース1は、底壁11、第1側壁12、第2側壁13および天井壁14を有し、各々が概ね送給方向Xに延びている。底壁11は、ケース1において最も下位に位置する部分である。本実施形態において、底壁11のうち送給方向後方X2寄りの部分は、送給方向後方X2に向かうにつれて上方に変位するように傾斜している。第1側壁12は、送給方向Xに直交する第1方向Y(送給方向Xに対して直角である水平方向)の一方側(以下、適宜「第1方向一方側Y1」という)端から起立して上方に延びている。第2側壁13は、第1方向Yの他方側(以下、適宜「第1方向他方側Y2」という)の端から起立して上方に延びている。天井壁14は、第1側壁12および第2側壁13の上端を覆う部分である。下部ケース1Aは、底壁11と、第1側壁12および第2側壁13の一部ずつとを含む。上部ケース1Bは、天井壁14と、第1側壁12および第2側壁13の一部ずつとを含む。
【0021】
本実施形態において、ケース1(上部ケース1B)には、開閉扉15が設けられている。開閉扉15は、第1側壁12、天井壁14および第2側壁13に跨がって設けられており、たとえばケース1の内部に配置されたワイヤ送給機構3をメンテナンスする際に開かれる。また、
図1、
図3等に示すように、ケース1(上部ケース1B)の送給方向後方X2寄りの頂部には、操作部141が設けられている。操作部141は、たとえば溶接電流、溶接電圧や溶接ワイヤの送給速度などの溶接条件を設定するためのものである。操作部141は、たとえば複数の操作ボタンを含んで構成される。上記操作部141の操作に基づき、各種溶接条件が制御される。操作部141の近傍には、表示部142が設けられている。表示部142は、溶接条件等を表示するものであり、たとえば有機ELや液晶などのディスプレイを含んで構成される。
【0022】
金属構造体2は、金属導体により構成されており、溶接電流を流すための部材である。
図6~
図9に示すように、金属構造体2は、ブロック状部材である。本実施形態において、金属構造体2は、たとえば第1壁部21、第2壁部22、第3壁部23、開口部24、第1延出部25および第2延出部26を含む。第1壁部21および第2壁部22は、送給方向前方X1および送給方向後方X2に離間して配置されている。第1壁部21および第2壁部22は、送給方向Xに見て互いに重なる。第3壁部23は、第1壁部21および第2壁部22の双方につながり、送給方向Xに延びている。第3壁部23は、第1壁部21および第2壁部22の各々に対して、第1方向一方側Y1に偏倚する位置につながっている。
図5に示すように、第3壁部23は、断面矩形状である。第3壁部23は、凹部231および貫通孔232を有する。凹部231は、第1壁部21および第2壁部22に対して、第2方向Z(上下方向)において下方に凹んだ部位である。貫通孔232は、第3壁部23の上部に形成されており、第1方向Yに貫通している。開口部24は、第3壁部23に対して第1方向他方側Y2に開口する部位であり、第1方向Yに見て第3壁部23に重なっている。第1延出部25は、第2壁部22の上部寄りにつながり、送給方向後方X2に延びている。第2延出部26は、第1壁部21の下部につながり、送給方向Xに延びている。
【0023】
図9に示すように、本実施形態において、金属構造体2は、ガス通路27および冷却液通路28を備える。ガス通路27は、ガスを流すための中空状の通路であり、本実施形態ではシールドガスを流す通路である。ガス通路27は、第1壁部21、第2壁部22、第3壁部23および第1延出部25に跨って形成される。ガス通路27は、第1開口27aおよび第2開口27bを有する。第1開口27aは、ガス通路27の一端に設けられており、送給方向前方X1(送給方向の一方側)端に位置する。第2開口27bは、ガス通路27の他端に設けられており、送給方向後方X2(送給方向の他方側)端に位置する。
【0024】
冷却液通路28は、冷却液を流すための中空状の通路であり、本実施形態では冷却液としての水(冷却水)を流す通路である。冷却液通路28は、第1壁部21、第2壁部22、第3壁部23、第1延出部25および第2延出部26に跨って形成される。また、金属構造体2には、2本の冷却液通路28が形成されている。1本の冷却液通路28は、溶接トーチへ冷却水を送る送水用通路であり、他の1本は溶接トーチから戻る水を通す復水用通路である。
【0025】
冷却液通路28は、第3開口28aおよび第4開口28bを有する。第3開口28aは、冷却液通路28の一端に設けられており、送給方向前方X1(送給方向の一方側)端に位置する。第4開口28bは、冷却液通路28の他端に設けられており、送給方向後方X2(送給方向の他方側)端に位置する。ガス通路27および冷却液通路28は、それぞれ、金属構造体2の適所に形成された横断面円形の穴がつながって形成されている。
【0026】
本実施形態において、
図4等に示すように、金属構造体2(第1壁部21、第2壁部22および第1延出部25)には、第1ワイヤ挿通口211および第2ワイヤ挿通口221が設けられている。第1ワイヤ挿通口211は、溶接ワイヤWを通すために第1壁部21において送給方向Xに沿って形成された貫通孔であり、当該第1ワイヤ挿通口211を溶接ワイヤWが通過可能である。
図4に示した例では、第1ワイヤ挿通口211にはライナ81が配置されており、このライナ81の内部に溶接ワイヤWが挿通される。第2ワイヤ挿通口221は、溶接ワイヤWを通すために第2壁部22および第1延出部25において送給方向Xに沿って形成された貫通孔であり、当該第2ワイヤ挿通口221を溶接ワイヤWが通過可能である。
図4に示した例では、第2ワイヤ挿通口221にはライナ82が配置されており、このライナ82の内部に溶接ワイヤWが挿通される。
【0027】
金属構造体2の構成材料は、たとえばアルミニウムを含む。金属構造体2は、たとえばアルミニウムまたはアルミニウム合金によって構成される。金属構造体2は、たとえば鋳造によって形成される。ただし、金属構造体2の構成材料は特に限定されず、たとえば銅や銅合金、あるいは他の金属導体であってもよい。
【0028】
図3、
図4に示すように、金属構造体2には、コネクタ51,52およびジョイント部53が設けられている。コネクタ51は、第1壁部21に設けられている。コネクタ51は、第1開口27a(ガス通路27)に通じている。このコネクタ51には、たとえばトーチケーブル(図示略)が接続される。コネクタ52は、第1延出部25に設けられている。コネクタ52は、第2開口27b(ガス通路27)および第4開口28b(冷却液通路28)に通じている。このコネクタ52には、たとえば中間ケーブル(図示略)が接続される。ジョイント部53は、第1壁部21の下部寄りに設けられている。ジョイント部53は、第3開口28a(冷却液通路28)に通じている。ジョイント部53には、たとえば水冷用ホース(図示略)が接続される。
【0029】
図3~
図5等に示したワイヤ送給機構3は、駆動部31と、駆動部31を駆動させるモータ32とを含んで構成される。詳細な図示説明は省略するが、駆動部31は、溶接ワイヤを挟んで送り出す送給ローラおよび加圧ローラを有する。モータ32は、モータカバー33によってその大半が覆われている。モータカバー33は、分割可能な一対の分割片により構成される。モータカバー33は、電気絶縁性を有する材料により構成されており、たとえば合成樹脂材料により構成される。ただし、モータカバー33を構成する材料は合成樹脂に限定されない。
【0030】
図4、
図7、
図8等から理解されるように、モータ32の少なくとも一部は、第2方向Z(上下方向)に見て第1壁部21、第2壁部22および第3壁部23に囲まれ、且つ第1方向Yに見て第3壁部23と重なる空間領域S1に配置される。即ち、モータ32の少なくとも一部は、第1壁部21、第2壁部22および第3壁部23により囲まれた内側の空間領域S1に配置されている。
図7において、理解の便宜のため、ワイヤ送給機構3を二点鎖線で表している。また、
図7、
図8において、空間領域S1には、一点鎖線のハッチングを施している。
【0031】
本実施形態において、駆動部31は、モータ32上に配置されている。
図4、
図7、
図8等から理解されるように、駆動部31は、上記の空間領域S1に配置されていない。詳細な図示説明は省略するが、モータ32は、たとえばねじ締結などの適宜手段によって第3壁部23に固定されている。これにより、第3壁部23(金属構造体2)は、モータ32を支持している。
【0032】
ハンドル4は、作業者がワイヤ送給装置A1を持ち運ぶ際に手で把持する部分である。ハンドル4は、ケース1(上部ケース1B)の送給方向後方X2寄りの上部に配置されている。ハンドル4は略U字状とされており、上部ケース1Bに対してハンドル4の両端部が第1方向Yに沿った軸線の回りに回動可能に取り付けられている。
図1~
図4においては、ハンドル4は収納された状態を示している。ハンドル4を把持する際には、ハンドル4を上記軸線回りに回動させて起立状態とすることができる。
【0033】
カバー6は、ケース1(下部ケース1A)に設けられており、少なくとも底壁11の一部を覆っている。本実施形態では、カバー6は、第1カバー61および第2カバー62を含む。第1カバー61は、ケース1の送給方向前方X1の端部に配置されている。第1カバー61は、底壁11の送給方向前方X1の端部を覆う。また、第1カバー61は、第1方向Yに見てジョイント部53の全体と重なっており、第1方向Yにおいてジョイント部53を覆っている。第2カバー62は、ケース1の送給方向後方X2の端部寄りに配置されている。第2カバー62は、底壁11の送給方向前方X1の端部寄りを覆う。カバー6(第1カバー61および第2カバー62)がケース1(下部ケース1A)に設けられることで、下部ケース1A(底壁11)の外面が作業場床面等に直接接触することは防止され、ケース1の保護が図られている。
【0034】
図1~
図6に示された複数のねじ孔部7は、ワイヤ送給装置A1に別部品を取り付けるためのものである。複数のねじ孔部7は、ケース1の第1側壁12および第2側壁13のうち少なくとも一方に設けられている。複数のねじ孔部7の少なくとも1つは、第1方向Yに見て第1壁部21、第2壁部22、第3壁部23およびモータ32のいずれにも重ならない。
【0035】
本実施形態では、複数のねじ孔部7は、第1ねじ孔部71および第2ねじ孔部72を含む。
図4に表れているように、第1ねじ孔部71は、モータ32に対して送給方向前方X1に位置する。第2ねじ孔部72は、モータ32に対して送給方向後方X2に位置する。
図5、
図6に示すように、本実施形態では、ワイヤ送給装置A1においては、第1ねじ孔部71および第2ねじ孔部72は、第1側壁12および第2側壁13の各々に設けられている。ワイヤ送給装置A1においては、2つずつの第1ねじ孔部71および第2ねじ孔部72が設けられている。第1ねじ孔部71および第2ねじ孔部72は、第1側壁12および第2側壁13の下部寄りに配置されている。図示した例では、少なくとも第2ねじ孔部72は、第1方向Yに見て第1壁部21、第2壁部22、第3壁部23およびモータ32のいずれにも重ならない。
図5、
図6に示すように、複数のねじ孔部7の各々は、たとえばケース1に埋設されたインサートナットにより構成される。このように複数のねじ孔部7を具備する構成によれば、
図5、
図6に示すように、たとえば別部品であるガード部材などのオプション部品Opを複数のねじ孔部7を利用して容易に取り付けることができる。
図5、
図6において、オプション部品Opを二点鎖線で表している。
【0036】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0037】
本実施形態のワイヤ送給装置A1は、ケース1、金属構造体2およびワイヤ送給機構3を備える。ワイヤ送給機構3は、駆動部31およびモータ32を含む。金属構造体2は、第1壁部21、第2壁部22および第3壁部23を含む。第1壁部21および第2壁部22は、送給方向前方X1および送給方向後方X2に離間して配置されている。第3壁部23は、第1壁部21および第2壁部22双方につながる。金属構造体2は、モータ32を支持している。モータ32の少なくとも一部は、第1壁部21、第2壁部22および第3壁部23により囲まれた内側の空間領域S1に配置されている。ケース1は、金属構造体2およびワイヤ送給機構3を収容している。ケース1は、第1側壁12および第2側壁13を含む。第1側壁12および第2側壁13は、第1方向一方側Y1および第1方向他方側Y2に離間して配置されている。第1側壁12および第2側壁13の少なくとも一方には、部品取り付け用の複数のねじ孔部7が設けられている。複数のねじ孔部7のうち少なくとも1つは、第1方向Yに見て第1壁部21、第2壁部22、第3壁部23およびモータ32のいずれにも重ならない。
【0038】
このような構成によれば、必要に応じて、別部品であるオプション部品Opをワイヤ送給装置A1に容易に取付けて使用することができる。また、複数のねじ孔部7のうち少なくとも1つは、第1方向Yに見て第1壁部21、第2壁部22、第3壁部23およびモータ32のいずれにも重ならず、これらを避けた位置に配置されている。これにより、第1ねじ孔部71を設けることでケース1のサイズが大きくなることを回避しつつ、別部品を適切にワイヤ送給装置A1に取付けることが可能である。
【0039】
ワイヤ送給装置A1において、複数のねじ孔部7は、モータ32に対して送給方向前方X1に位置する第1ねじ孔部71と、モータ32に対して送給方向後方X2に位置する第2ねじ孔部72と、を含む。このような構成によれば、オプション部品Op(別部品)をワイヤ送給装置A1に安定して取付けることができる。
【0040】
第1ねじ孔部71および第2ねじ孔部72は、ケース1における第1側壁12および第2側壁13の各々に設けられている。このような構成によれば、オプション部品Op(別部品)をワイヤ送給装置A1にバランス良くより安定して取付けることができる。
【0041】
複数のねじ孔部7(第1ねじ孔部71および第2ねじ孔部72)の各々は、ケース1に埋設されたインサートナットにより構成される。このような構成によれば、ワイヤ送給装置A1の小型化を図りつつ、ケース1に複数のねじ孔部7を適切に配置することができる。
【0042】
金属構造体2において、第1壁部21および第2壁部22は、送給方向Xに見て互いに重なる。第3壁部23は、第1壁部21および第2壁部22の各々に対して、第1方向一方側Y1に偏倚する位置につながっている。このような構成によれば、第1壁部21、第2壁部22および第3壁部23は、第2方向Zに見て、矩形の3辺に対応する位置に配置されている。また、第1壁部21、第2壁部22および第3壁部23は、第2方向Zに見て、送給方向Xに沿う中心線に対して左右方向(第1方向Y)において非対称な配置である。これにより、第1壁部21、第2壁部22および第3壁部23により囲まれた内側の空間領域S1に、モータ32を省スペースで効率よく配置することができる。したがって、第1壁部21、第2壁部22および第3壁部23を含んで構成された金属構造体2の強度が向上するとともに、ワイヤ送給装置A1において、金属構造体2およびワイヤ送給機構3の組み立てや交換が容易であり、組み立て性およびメンテナンス性に優れる。
【0043】
金属構造体2は、金属導体により構成されており、溶接電流が流れる部材である。金属構造体2は、ガス通路27および冷却液通路28を備える。ガス通路27および冷却液通路28は、第1壁部21、第2壁部22および第3壁部23に跨って形成されている。これにより、溶接電流の経路である金属構造体2自体が中空状のガス通路27および冷却液通路28を具備する。本実施形態によれば、ワイヤ送給装置の内部に給電用導体、ガス配管および水冷用ホースそれぞれが配置された構成(たとえば特許文献1に記載された構成)と異なり、溶接電流、シールドガスおよび冷却水それぞれを流すための経路を、金属構造体2によって賄うことができる。これにより、金属構造体2を含むワイヤ送給装置A1において、金属構造体2の組立てや交換が容易であり、組立て性およびメンテナンス性に優れる。
【0044】
本実施形態において、金属構造体2の構成材料は、アルミニウムを含む。アルミニウムは、たとえば銅や鉄などの他の金属導体と比べて密度が小さい。このような構成によれば、ワイヤ送給装置A1全体の強度を高めるとともに、ワイヤ送給装置A1の軽量化を図ることができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲は上記した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した事項の範囲内でのあらゆる変更は、すべて本発明の範囲に包摂される。
【0046】
上記実施形態では、金属構造体2がガス通路27および冷却液通路28の両方を備える場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、ガス通路27および冷却液通路28のうち一方を備える構成であってもよい。また、金属構造体2がガス通路27および冷却液通路28(流体流路)を一切備えない構成でもよい。
【0047】
上記実施形態では、金属構造体2は、第2方向Zに見て、矩形の3辺に対応する位置に配置された第1壁部21、第2壁部22および第3壁部23を含み、第3壁部23に対して第1方向他方側Y2に開口する開口部24が設けられた構成とされていたが、本発明はこれに限定されない。金属構造体2は、たとえば開口部24を設けずに、第2方向Zに見て閉じた矩形状(環状)に構成し、当該環状の内側にモータ32を配置してもよい。
【符号の説明】
【0048】
A1:ワイヤ送給装置、1:ケース1、12:第1側壁、13:第2側壁、2:金属構造体、21:第1壁部、22:第2壁部、23:第3壁部、3:ワイヤ送給機構、31:駆動部、32:モータ、7:ねじ孔部、71:第1ねじ孔部、72:第2ねじ孔部、S1:空間領域、W:溶接ワイヤ、X:送給方向、X1:送給方向前方(送給方向の一方側)、X2:送給方向後方(送給方向の他方側)、Y:第1方向、Y1:第1方向一方側、Y2:第1方向他方側、Z:第2方向