(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093901
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】ワイヤ送給装置
(51)【国際特許分類】
B23K 9/133 20060101AFI20230628BHJP
【FI】
B23K9/133 502Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209026
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋介
(72)【発明者】
【氏名】宮原 寿郎
(57)【要約】
【課題】 小型化および利便性の向上を図ることが可能なワイヤ送給装置を提供すること。
【解決手段】 駆動部31および駆動部31を駆動させるモータ32を含み、溶接ワイヤを送給するためのワイヤ送給機構3と、ワイヤ送給機構3を収容するケース1と、溶接ワイヤの通過口511を含むコネクタ51と、を備え、溶接ワイヤの送給方向Xに直交する第1方向一方Z1側に位置するコネクタ51に対して、第1方向他方Z2側に位置し且つケース1から送給方向前方X1側に突出する突出部としてのジョイント部53と、ケース1の第1方向他方Z2側に取り付けられたカバー6と、をさらに備え、カバー6は、第1方向他方Z2側からジョイント部53を覆い、且つ送給方向前方X1側から視て、コネクタ51およびジョイント部53を露出させている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部および前記駆動部を駆動させるモータを含み、溶接ワイヤを送給するためのワイヤ送給機構と、
前記ワイヤ送給機構を収容するケースと、
溶接ワイヤの通過口を含むコネクタと、を備え、
溶接ワイヤの送給方向に直交する第1方向の一方側に位置する前記コネクタに対して、前記第1方向の他方側に位置し且つ前記ケースから前記送給方向の一方側に突出する突出部と、
前記ケースの前記第1方向の他方側に取り付けられたカバーと、をさらに備え、
前記カバーは、前記第1方向の他方側から前記突出部を覆い、且つ前記送給方向の一方側から視て、前記コネクタおよび前記突出部を露出させている、ワイヤ送給装置。
【請求項2】
前記カバーは、前記送給方向の一方側に位置する第1カバーと、前記送給方向の他方側に位置する第2カバーと、を含む、請求項1に記載のワイヤ送給装置。
【請求項3】
前記カバーは、前記送給方向および前記第1方向の双方に直交する第2方向において前記突出部を覆う、請求項1または2に記載のワイヤ送給装置。
【請求項4】
前記カバーは、前記突出部に対して前記第1方向の他方側に位置し且つ前記送給方向の一方側に向かうほど前記第1方向の一方側に位置するように傾斜した傾斜面を有する、請求項1ないし3のいずれかに記載のワイヤ送給装置。
【請求項5】
前記突出部は、流体の通過口を含む、請求項1ないし4のいずれかに記載のワイヤ送給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤ送給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
消耗電極式ガスシールドアーク溶接において、溶接ロボットや走行台車を用いた自動溶接や、作業者が操作する半自動溶接の手法が採用されている。これら自動溶接等の溶接作業時においては、ワイヤ送給装置により溶接トーチに向けて溶接ワイヤが送り出され、また、溶接トーチには電力およびシールドガスが供給される。特許文献1には、従来のワイヤ送給装置の一例が開示されている。同文献に開示されたワイヤ送給装置は、ワイヤ送給機構を内蔵するケースとカバーとを備える。ケースには、送給方向からトーチケーブルが接続される。また、ケースは、冷却水等を供給するためのパイプが接続される。同文献の
図3に示すように、トーチケーブルやパイプの接続部分は、カバーによってほぼ完全に覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トーチケーブルやパイプの接続部分をほぼ完全に覆うカバーは、ワイヤ送給装置の大型化を招来する。また、トーチケーブルやパイプを取り外す際に、カバーをケースから取り外すことが強いられる。
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、小型化および利便性の向上を図ることが可能なワイヤ送給装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって提供されるワイヤ送給装置は、駆動部および前記駆動部を駆動させるモータを含み、溶接ワイヤを送給するためのワイヤ送給機構と、前記ワイヤ送給機構を収容するケースと、溶接ワイヤの通過口を含むコネクタと、を備え、溶接ワイヤの送給方向に直交する第1方向の一方側に位置する前記コネクタに対して、前記第1方向の他方側に位置し且つ前記ケースから前記送給方向の一方側に突出する突出部と、前記ケースの前記第1方向の他方側に取り付けられたカバーと、をさらに備え、前記カバーは、前記第1方向の他方側から前記突出部を覆い、且つ前記送給方向の一方側から視て、前記コネクタおよび前記突出部を露出させている。
【0007】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記カバーは、前記送給方向の一方側に位置する第1カバーと、前記送給方向の他方側に位置する第2カバーと、を含む。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記カバーは、前記送給方向および前記第1方向の双方に直交する第2方向において前記突出部を覆う。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記カバーは、前記突出部に対して前記第1方向の他方側に位置し且つ前記送給方向の一方側に向かうほど前記第1方向の一方側に位置するように傾斜した傾斜面を有する。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記突出部は、流体の通過口を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ワイヤ送給装置の小型化および利便性の向上を図ることができる。
【0012】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るワイヤ送給装置の一例を示す斜視図である。
【
図2】本発明に係るワイヤ送給装置の一例を示す斜視図である。
【
図3】本発明に係るワイヤ送給装置の一例を示す側面図である。
【
図4】本発明に係るワイヤ送給装置の一例を示す正面図である。
【
図5】本発明に係るワイヤ送給装置の一例を示す底面図である。
【
図6】本発明に係るワイヤ送給装置の一例を示す分解斜視図である。
【
図7】本発明に係るワイヤ送給装置の一例のカバー6を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のB-B線に沿う断面図であり、(c)は底面図であり、(d)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0015】
本開示における「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、単に識別のために用いたものであり、それらの対象物に順列を付することを意図していない。
【0016】
本開示において、「ある物Aがある物Bにある方向に視て重なる」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bのすべてに重なること」、および、「ある物Aがある物Bの一部に重なること」を含む。また、本開示において「ある面Aが方向B(の一方側または他方側)を向く」とは、面Aの方向Bに対する角度が90°である場合に限定されず、面Aが方向Bに対して傾いている場合を含む。
【0017】
図1および
図2は、本発明に係るワイヤ送給装置の一例を示す斜視図である。ワイヤ送給装置A1は、溶接ワイヤを溶接トーチ(図示略)に送り出すものであり、いわゆるプル側送給装置である。溶接ワイヤは、ワイヤ送給装置A1に接続される中間ケーブル8、トーチケーブル7および溶接トーチ(図示略)の内部に設けられているライナの内部を通って、溶接トーチの先端に導かれる。
図1および
図2において、左方が溶接ワイヤの送給方向Xの前方(以下、適宜「送給方向前方X1」という)であり、右方が溶接ワイヤの送給方向Xの後方(以下、適宜「送給方向後方X2」という)である。ワイヤ送給装置A1の送給方向後方X2には、たとえば中間ケーブル8の他、ワイヤ送給装置(プッシュ側送給装置、図示略)、および溶接電源装置(図示略)が接続される。
図1は、ワイヤ送給装置A1の使用態様の一例としてトーチケーブル7、ホース71および中間ケーブル8が接続された状態を示しており、
図2は、トーチケーブル7、ホース71および中間ケーブル8が取り外された状態を示している。第1方向Zは、送給方向Xと直交する方向であり、第1方向一方Z1および第1方向他方Z2を適宜区別する。また、第2方向Yは、送給方向Xおよび第1方向Zの双方に直交する方向であり、第2方向一方Y1および第2方向他方Y2を適宜区別する。本実施形態のワイヤ送給装置A1は、たとえば作業者が溶接トーチを操作する、いわゆる半自動溶接に用いられるものである。
【0018】
図2~
図6に示すように、ワイヤ送給装置A1は、ケース1、構造体2、ワイヤ送給機構3、ハンドル4、コネクタ51、コネクタ52、ジョイント部53およびカバー6を備えている。ケース1は、全体として送給方向Xに延びる筒状とされており、構造体2およびワイヤ送給機構3を収容している。ケース1は、たとえば分割可能な一対の分割片(下部ケース1Aおよび上部ケース1B)により構成される。
図6に示すように、ケース1を構成する下部ケース1Aおよび上部ケース1Bは、第1方向Zに分割可能である。ケース1(下部ケース1Aおよび上部ケース1B)は、電気絶縁性を有する材料により構成される。ケース1を構成する材料としては、たとえばポリアミド樹脂(ガラス繊維入り)などの合成樹脂材料を挙げることができる。ただし、ケース1(下部ケース1Aおよび上部ケース1B)を構成する材料は合成樹脂に限定されない。
【0019】
ケース1は、底壁11、第1側壁12、第2側壁13および天井壁14を有し、各々が概ね送給方向Xに延びている。底壁11は、ケース1において第1方向他方Z2側に位置する部分である。本実施形態において、底壁11のうち送給方向後方X2寄りの部分は、送給方向後方X2に向かうにつれて上方に変位するように傾斜している。第1側壁12は、底壁11に対して第2方向一方Y1側に位置する。第2側壁13は、底壁11に対して第2方向他方Y2側に位置する。天井壁14は、第1側壁12および第2側壁13に対して第1方向一方Z1側に位置する。下部ケース1Aは、底壁11と、第1側壁12および第2側壁13の一部ずつとを含む。上部ケース1Bは、天井壁14と、第1側壁12および第2側壁13の一部ずつとを含む。
【0020】
図3および
図4に示すように、天井壁14は、第1面14aを有する。第1面14aは、第1方向一方Z1側を向く面であり、図示された例においては、平坦な面である。また、天井壁14は、凹部14bを有する。凹部14bは、第1面14aから第1方向他方Z2側に凹んでいる。本実施形態の第1面14aは、第2方向Yに延びる溝である。
【0021】
本実施形態において、ケース1は、開閉扉15をさらに有する。開閉扉15は、第1側壁12、天井壁14および第2側壁13に跨がって設けられており、たとえばケース1の内部に配置されたワイヤ送給機構3をメンテナンスする際に開かれる。
図2~
図4に示すように、開閉扉15は、第2突起部151を有する。第2突起部151は、第1方向Zにおいて第1面14aよりも第1方向一方Z1側に突出する。第2突起部151の具体的な形状は何ら限定されず、図示された例においては、x方向に長く延びる形状である。また、第2突起部151の個数は、何ら限定されず、図示された2個以外に1個であってもよいし、3個以上であってもよい。
【0022】
また、
図1および
図2に示すように、ケース1(上部ケース1B)の送給方向後方X2寄りには、操作部141が設けられている。操作部141は、たとえば溶接電流、溶接電圧や溶接ワイヤの送給速度などの溶接条件を設定するためのものである。操作部141は、たとえば複数の操作ボタンを含んで構成される。上記操作部141の操作に基づき、各種溶接条件が制御される。操作部141の近傍には、表示部142が設けられている。表示部142は、溶接条件等を表示するものであり、たとえば有機ELや液晶などのディスプレイを含んで構成される。
【0023】
構造体2は、
図6に示すように、たとえば第1壁部21、第2壁部22、第3壁部23、開口部24、第1延出部25および第2延出部26を含む。第1壁部21および第2壁部22は、送給方向前方X1および送給方向後方X2に離間して配置されている。第3壁部23は、第1壁部21および第2壁部22の双方につながり、送給方向Xに延びている。第3壁部23は、第1壁部21および第2壁部22の各々に対して、第2方向一方Y1側に偏倚する位置につながっている。開口部24は、第3壁部23に対して第2方向他方Y2側に開口する部位であり、第2方向Yに見て第3壁部23に重なっている。第1延出部25は、第2壁部22の上部寄りにつながり、送給方向後方X2に延びている。第2延出部26は、第1壁部21の下部につながり、送給方向Xに延びている。
【0024】
構造体2の具体的構成は何ら限定されない。本実施形態の構造体2は、溶接ワイヤを送給方向Xに通過させるための貫通孔(図示略)が設けられている、構造体2が金属導体により構成される場合、構造体2は、溶接電流を流してもよい。また、構造体2は、ガスや冷却水等の流体を流すための通路を有していてもよい。
【0025】
コネクタ51、コネクタ52およびジョイント部53は、
図2および
図6に示すように、本実施形態においては、構造体2に固定されている。コネクタ51は、送給方向前方X1側に配置されており、コネクタ52は、送給方向後方X2側に配置されている。コネクタ51は、通過口511を含み、本発明におけるコネクタの一例である。通過口511は、溶接ワイヤを通過させる開口である。
図1に示すように、コネクタ51には、たとえば溶接トーチ(図示略)に繋がるトーチケーブル7が接続される。コネクタ52は、たとえば、中間ケーブル8が接続される。ジョイント部53は、
図2に示すように、ケース1から送給方向前方X1に突出しており、ガスや冷却水等の流体を通過させる通過口531を含む。ジョイント部53は、本発明における突出部の一例である。
図1に示すように、ジョイント部53には、たとえばホース(図示略)が接続される。本実施形態においては、2つのジョイント部53が設けられている。また、コネクタ51は、第1方向一方Z1側に位置しており、ジョイント部53は、コネクタ51に対して第1方向他方Z2側に位置している。
【0026】
ワイヤ送給機構3は、
図6に示すように、駆動部31、モータ32およびモータカバー33を含んで構成される。駆動部31は、溶接ワイヤを挟んで送り出す送給ローラおよび加圧ローラを有する。モータ32は、駆動部31を駆動する駆動源であり、モータカバー33によってその大半が覆われている。モータカバー33は、たとえば分割可能な一対の分割片により構成される。モータカバー33は、電気絶縁性を有する材料により構成されており、たとえば合成樹脂材料により構成される。ただし、モータカバー33を構成する材料は合成樹脂に限定されない。本実施形態においては、ワイヤ送給機構3の少なくとも一部が、第1壁部21、第2壁部22および第3壁部23に囲まれた領域に配置されている。ワイヤ送給装置A1の分解時等には、ワイヤ送給機構3は、開口部24から第2方向他方Y2に取り外し可能である。
【0027】
ハンドル4は、作業者がワイヤ送給装置A1を持ち運ぶために用いるものである。ハンドル4は、
図1~
図3および
図6に示すように、ケース1(上部ケース1B)の第1方向一方Z1側の部位に取り付けられている。ハンドル4は、第2方向Yに延びる回動中心O周りに回動可能に取り付けられている。
【0028】
本実施形態のハンドル4は、把手部41および一対の棒状部42を有する。図示されたハンドル4は、たとえば金属板材に切断加工および折り曲げ加工等を施すことにより形成されているが、ハンドル4の材質等は何ら限定されない。把手部41は、作業者が把持する部位である。把手部41は、回動中心Oから離隔した位置に設けられている。一対の棒状部42は、把手部41の第2方向Y両端に繋がっている。棒状部42は、貫通孔421を有する。一対の棒状部42は、貫通孔421に挿通されたボルト49によってケース1(上部ケース1B)に回動可能に取り付けられている。本実施形態においては、2つのボルト49が回動中心Oを規定しているが、回動中心Oの具体的な規定構造は何ら限定されない。ハンドル4は、把手部41がケース1に近接した状態である第1状態(
図3)と、第1状態から回動させられることにより把手部41がケース1から離隔した状態である第2状態(図示略)と、をとる。また、
図4に示すように、2つのボルト49は、ケース1から第2方向Yの両側に突出している。
【0029】
把手部41は、基部411および第1突起部412を有する。基部411は、第2方向Yに延びる部位である。基部411は、
図3に示す第1状態において凹部14bに少なくとも一部が収容されている。第1状態において、基部411は、そのすべてが凹部14bに収容されてもよいし、一部が凹部14bに収容されてもよい。
【0030】
第1突起部412は、
図3に示すように、第1状態においてケース1から第1方向一方Z1側に突出する。本実施形態においては、第1突起部412は、ケース1の第1面14aから第1方向一方Z1側に突出している。第1突起部412の具体的な形状は何ら限定されず、図示された例においては、第2方向Yに長く延びる形状である。
【0031】
カバー6は、
図2~
図6に示すように、ケース1(下部ケース1A)の第1方向他方Z2側に設けられており、少なくとも底壁11の一部を覆っている。カバー6の具体的構成は何ら限定されず、一体的に形成された1つの部品からなるものであってもよいし、複数の部品からなるものであってもよい。本実施形態においては、カバー6は、第1カバー61および第2カバー62を含む。カバー6は、たとえばゴムや樹脂等からなる。
【0032】
第1カバー61は、ケース1の送給方向前方X1の端部寄りに配置されている。第1カバー61の具体的形状は何ら限定されず、本実施形態においては、
図7に示すように、底板部611、一対の側板部612、端板部613および傾斜面61aを有する。底板部611は、第1方向他方Z2側に位置しており、送給方向Xおよび第2方向Yに沿った板状の部位である。一対の側板部612は、底板部611の第2方向Y両端に繋がっており、底板部611から第1方向一方Z1側に起立している。図示された例においては、側板部612は、延出部6121を有する。延出部6121は、側板部612のうち送給方向前方X1側に位置し、第1方向一方Z1側に延出した部分である。端板部613は、底板部611および一対の側板部612の送給方向前方X1側に繋がっている。図示された例においては、端板部613は、第1方向Zに沿った部分と、第1方向Zに対して傾斜した部分を含む。端板部613には、凹部6131が形成されている。凹部6131は、端板部613の第1方向一方Z1の端部から第1方向他方Z2側に凹んでいる。傾斜面61aは、送給方向前方X1に向かうほど第1方向一方Z1側に位置するように傾斜している。
【0033】
図1~
図6に示すように、第1カバー61は、底壁11の送給方向前方X1の端部を覆う。底板部611は、底壁11の第1方向他方Z2に位置する。第1カバー61の底板部611および端板部613は、第1方向他方Z2側からジョイント部53を覆っており、第1方向Zに視てジョイント部53のすべてと重なっている。また、第1カバー61の一対の側板部612の延出部6121は、第2方向Yの両側からジョイント部53を覆っており、第2方向Yに視てジョイント部53のすべてと重なっている。一方、第1カバー61は、送給方向前方X1側から視て、コネクタ51およびジョイント部53を露出させている。ジョイント部53は、送給方向前方X1側から視て、第1カバー61の凹部6131から露出している。傾斜面61aは、ジョイント部53に対して第1方向他方Z2に位置する。本実施形態の第1カバー61は、
図3に示すように、ケース1の送給方向前方X1端部から突出していない。第1カバー61の送給方向前方X1端部とケース1の送給方向前方X1端部とは、ほぼ同じ位置にある。
図5および
図6に示すように、第1カバー61および第2カバー62の第2方向Yの大きさは、ケース1の第2方向Yの大きさよりも大きい。第1カバー61および第2カバー62は、ケース1から第2方向Yの両側に突出している。第1カバー61の第2方向Yの大きさは、2つのボルト49の第2方向Y端部同士の距離とほぼ同じである。
【0034】
第2カバー62は、ケース1の送給方向後方X2の端部寄りに配置されている。第2カバー62は、底壁11の送給方向前方X1の端部寄りを覆う。第2カバー62は、傾斜面62aを有する。傾斜面62aは、コネクタ52に対して第1方向他方Z2に位置し且つ送給方向後方X2に向かうほど第1方向一方Z1側に位置するように傾斜している。
【0035】
次に、ワイヤ送給装置A1の作用について説明する。
【0036】
図3に示すように、第1方向一方Z1が鉛直方向の上方となり、第1方向他方Z2が下方となる姿勢で、床面FL1に載置された場合に、カバー6によってケース1を保護することができる。また、
図1~
図3に示すように、ジョイント部53をカバー6の第1カバー61によって第1方向他方Z2側から保護することができる。一方、
図4に示すように、カバー6の第1カバー61は、送給方向前方X1から視て、コネクタ51およびジョイント部53を露出させている。このため、
図1に示すトーチケーブル7およびホース71をワイヤ送給装置A1から取り外す際には、カバー6の第1カバー61をケース1から取り外すことなく、取り外し作業を行うことができる。また、送給方向前方X1から視て、コネクタ51およびジョイント部53を露出させているカバー6は、大きく嵩張ることを回避可能である。したがって、本実施形態によれば、ワイヤ送給装置A1の小型化および利便性の向上を図ることができる。
【0037】
カバー6は、互いに別体とされた第1カバー61および第2カバー62を含む。第1カバー61および第2カバー62は、それぞれケース1の底壁11の送給方向前方X1端部と送給方向後方X2端部を保護している。一方、カバー6は、ケース1の底壁11の送給方向Xの中央部分を覆っていない。これにより、ケース1の底壁11を効率よく保護しつつ、カバー6の軽量化、ひいてはワイヤ送給装置A1の軽量化を図ることができる。
【0038】
第1カバー61の側板部612は、第2方向Yの両側からジョイント部53を覆っている。これにより、ジョイント部53に対して第2方向Yから向かってきた物体によってジョイント部53が損傷することを抑制することができる。
【0039】
第1カバー61が傾斜面61aを有し、第2カバー62が傾斜面62aを有することにより、ワイヤ送給装置A1が他の物体に意図せず引っかかること等を回避可能である。
【0040】
本実施形態においては、ジョイント部53が本発明の突出部に相当する。ジョイント部53は、ホース71が接続される部位であり、ガスや冷却水等の流体が通過する通過口511を含む。このため、外部からの物体がジョイント部53に当接すると、ホース71との接続が困難となったり、流体の供給が果たせなくなったりすることが懸念される。本実施形態によれば、このようなジョイント部53を適切に保護することができる。第1カバー61の端板部613に凹部6131が設けられていることにより、送給方向前方X1から視て第1カバー61からジョイント部53を露出させつつ、より広範囲の方向において第1カバー61によってジョイント部53を保護することができる。
【0041】
ワイヤ送給装置A1は、通常の使用状態においては、第1方向一方Z1が鉛直方向の上方となり、第1方向他方Z2が下方となる姿勢で、床面FL1に載置されることが一般的である。一方、ワイヤ送給装置A1の使用状態によっては、第1方向他方Z2が鉛直方向の上方となり、第1方向一方Z1が下方となる姿勢で、床面FL2に載置されることが想定される。本実施形態によれば、
図3に示すように、ハンドル4が第1状態である場合に、把手部41の第1突起部412は、ケース1から第1方向一方Z1側に突出している。これにより、床面FL2にケース1が衝突することを抑制することが可能である。したがって、より多彩な使用状態においてワイヤ送給装置A1を適切に保護することができる。
【0042】
図4に示すように、ワイヤ送給装置A1は、Y1が鉛直方向の上方となり、第2方向他方Y2が下方となる姿勢で、床面FL3に載置されることや、第2方向他方Y2が鉛直方向の上方となり、第2方向一方Y1が下方となる姿勢で、床面FL4に載置されることが想定される。この場合、ボルト49および第1カバー61により、床面FL3,FL4にケース1が衝突することを抑制可能であり、さらに多彩な使用状態においてワイヤ送給装置A1を適切に保護することができる。
【0043】
図3に示すように、ワイヤ送給装置A1は、第1突起部412と第2突起部151を有する。第1突起部412および第2突起部151は、送給方向Xにおいて互いに離隔しており、第1面14aから第1方向一方Z1に突出している。これにより、ワイヤ送給装置A1が床面FL2に載置された場合に、第2突起部151と第1突起部412とによって、ケース1の損傷等を抑制することが可能である。特に、天井壁14の操作部141および表示部142等が設けられている場合、操作部141および表示部142の保護に好ましい。
【0044】
本発明に係るワイヤ送給装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るワイヤ送給装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0045】
A1:ワイヤ送給装置,1:ケース,2:構造体,3:ワイヤ送給機構,4:ハンドル,6:カバー,51:コネクタ,53:ジョイント部(突出部),61:第1カバー,61a:傾斜面,62:第2カバー,62a:傾斜面,511,531:通過口,O:回動中心,X:送給方向,X1:送給方向前方(送給方向の一方),X2:送給方向後方(送給方向の他方),Y:第2方向,Y1:第2方向一方,Y2:第2方向他方,Z:第1方向,Z1:第1方向一方,Z2:第1方向他方