IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ダイヘンの特許一覧

<>
  • 特開-ワイヤ送給装置 図1
  • 特開-ワイヤ送給装置 図2
  • 特開-ワイヤ送給装置 図3
  • 特開-ワイヤ送給装置 図4
  • 特開-ワイヤ送給装置 図5
  • 特開-ワイヤ送給装置 図6
  • 特開-ワイヤ送給装置 図7
  • 特開-ワイヤ送給装置 図8
  • 特開-ワイヤ送給装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093903
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】ワイヤ送給装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/133 20060101AFI20230628BHJP
【FI】
B23K9/133 502Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209028
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋介
(72)【発明者】
【氏名】宮原 寿郎
(57)【要約】
【課題】組立て性やメンテナンス性に優れたワイヤ送給装置を提供する。
【解決手段】溶接電源を流すための金属構造体2と、溶接ワイヤを送給するためのワイヤ送給機構3と、を備え、金属構造体2は、第1壁部21、第2壁部22第および第3壁部23を含み、ワイヤ送給機構3は、駆動部31およびモータ32を含む。第1壁部21および第2壁部22は、溶接ワイヤの送給方向前方X1および送給方向後方X2に離間して配置され、且つ送給方向Xに見て互いに重なり、第3壁部23は、第1壁部21および第2壁部22の各々に対して、第1方向一方側Y1に偏倚する位置につながる。第2方向Zに見て第1壁部21、第2壁部22第および第3壁部23に囲まれ、且つ前記第1方向Yに見て第3壁部23と重なる空間領域S1には、モータ32の少なくとも一部が配置される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接電源を流すための金属構造体と、溶接ワイヤを送給するためのワイヤ送給機構と、を備え、
前記金属構造体は、第1壁部、第2壁部および第3壁部を含み、
前記ワイヤ送給機構は、駆動部および前記駆動部を駆動させるモータを含み、
前記第1壁部および前記第2壁部は、前記溶接ワイヤの送給方向の一方側および前記送給方向の他方側に離間して配置され、且つ前記送給方向に見て互いに重なり、
前記第3壁部は、前記第1壁部および前記第2壁部の各々に対して、前記送給方向に直交する第1方向の一方側に偏倚する位置につながり、
前記送給方向および前記第1方向の双方に直交する第2方向に見て前記第1壁部、前記第2壁部および前記第3壁部に囲まれ、且つ前記第1方向に見て前記第3壁部と重なる空間領域には、前記モータの少なくとも一部が配置される、ワイヤ送給装置。
【請求項2】
前記モータは、前記第3壁部に固定されている、請求項1に記載のワイヤ送給装置。
【請求項3】
前記金属構造体は、前記第3壁部に対して前記第1方向の他方側に開口する開口部を有する、請求項2に記載のワイヤ送給装置。
【請求項4】
前記第1壁部および前記第2壁部には、各々が前記送給方向に沿って貫通し、溶接ワイヤを通すための第1ワイヤ挿通孔および第2ワイヤ挿通孔が設けられている、請求項1ないし3のいずれかに記載のワイヤ送給装置。
【請求項5】
前記金属構造体は、前記第1壁部、前記第2壁部および前記第3壁部に跨って形成されており、且つ流体を流すための中空状の流体通路を備える、請求項1ないし4のいずれかに記載のワイヤ送給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤ送給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
消耗電極式ガスシールドアーク溶接において、溶接ロボットや走行台車を用いた自動溶接や、作業者が操作する半自動溶接の手法が採用されている。これら自動溶接等の溶接作業時においては、ワイヤ送給装置により溶接トーチに向けて溶接ワイヤが送り出され、また、溶接トーチには電力およびシールドガスが供給される。溶接電力は、たとえば溶接電源からパワーケーブルやコンジットケーブルを介して溶接トーチに供給される。ワイヤ送給装置の内部には、溶接電流を流す経路として給電用ケーブルや給電用導体が配置されており、溶接電力は当該給電用導体等を介して溶接トーチに供給される(たとえば特許文献1を参照)。特許文献1に記載された溶接装置において、溶接トーチは、いわゆる水冷トーチであり、当該溶接トーチに冷却水(冷却液)が供給される。特許文献1の図5図7等に示されるように、ワイヤ送給装置の内部にはまた、ガス配管および水冷ホースが配置されている。
【0003】
この特許文献1(同文献の図5図6を参照)に記載されるように、ワイヤ送給装置(4)の内部には、溶接電流を流すための給電用導体(48)と、シールドガスを送るためのガス配管(65)と、冷却水を流すための2本の水冷用ホース(66)と、が各別に配置されている。このような構成においては、給電用導体、ガス配管および水冷用ホースそれぞれをワイヤ送給装置の内部に配置するための構造が複雑になり、ワイヤ送給装置の大型化を招く要因となる。また、組立て性やメンテナンス性が悪く、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-188428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、組立て性やメンテナンス性に優れたワイヤ送給装置を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0007】
本発明によって提供されるワイヤ送給装置は、溶接電源を流すための金属構造体と、溶接ワイヤを送給するためのワイヤ送給機構と、を備え、前記金属構造体は、第1壁部、第2壁部および第3壁部を含み、前記ワイヤ送給機構は、駆動部および前記駆動部を駆動させるモータを含み、前記第1壁部および前記第2壁部は、前記溶接ワイヤの送給方向の一方側および前記送給方向の他方側に離間して配置され、且つ前記送給方向に見て互いに重なり、前記第3壁部は、前記第1壁部および前記第2壁部の各々に対して、前記送給方向に直交する第1方向の一方側に偏倚する位置につながり、前記送給方向および前記第1方向の双方に直交する第2方向に見て前記第1壁部、前記第2壁部および前記第3壁部に囲まれ、且つ前記第1方向に見て前記第3壁部と重なる空間領域には、前記モータの少なくとも一部が配置される。
【0008】
好ましい実施の形態においては、前記モータは、前記第3壁部に固定されている。
【0009】
好ましい実施の形態においては、前記金属構造体は、前記第3壁部に対して前記第1方向の他方側に開口する開口部を有する。
【0010】
好ましい実施の形態においては、前記第1壁部および前記第2壁部には、各々が前記送給方向に沿って貫通し、溶接ワイヤを通すための第1ワイヤ挿通孔および第2ワイヤ挿通孔が設けられている。
【0011】
好ましい実施の形態においては、前記金属構造体は、前記第1壁部、前記第2壁部および前記第3壁部に跨って形成されており、且つ流体を流すための中空状の流体通路を備える。
【0012】
好ましい実施の形態においては、前記溶接用中継体の構成材料は、アルミニウムを含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るワイヤ送給装置において、溶接電流を流すための金属構造体は、第1壁部、第2壁部および第3壁部を有し、これら第1壁部、第2壁部および第3壁部によって囲まれた内側の空間領域を形成している。上記空間領域は、モータの収容空間となっている。第1壁部、第2壁部および第3壁部は、第2方向に見て、矩形の3辺に対応する位置に配置されている。また、第1壁部、第2壁部および第3壁部は、第2方向に見て、溶接ワイヤの送給方向に沿う中心線に対して第1方向において非対称な配置である。このため、金属構造体によって形成された上記の空間領域に、モータを省スペースで効率よく配置することができる。これにより、第1壁部、第2壁部および第3壁部を含んで構成された金属構造体の強度が向上する。加えて、ワイヤ送給装置において、金属構造体およびワイヤ送給機構の組み立てや交換が容易であり、組み立て性およびメンテナンス性に優れる。
【0014】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るワイヤ送給装置の一例を示す斜視図である。
図2図1に示すワイヤ送給装置の右側面図である。
図3図1に示すワイヤ送給装置の分解斜視図である。
図4図1のIV-IV線に沿う断面図である。
図5図2のV-V線に沿う部分断面図である。
図6図4のVI-VI線に沿う部分断面図である。
図7】金属構造体およびワイヤ送給機構を示す平面図である。
図8】金属構造体およびワイヤ送給機構の分解斜視図である。
図9】金属構造体を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態につき、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0017】
本発明における「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、単にラベルとして用いたものであり、必ずしもそれらの対象物に順列を付することを意図していない。また、「ある物Aがある物Bにある方向に見て重なる」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bのすべてに重なること」、および、「ある物Aがある物Bの一部に重なること」を含む。
【0018】
図1は、本発明に係るワイヤ送給装置の一例を示す斜視図である。詳細な図示説明は省略するが、ワイヤ送給装置A1は、溶接ワイヤを溶接トーチ(図示略)に送り出すものであり、いわゆるプル側送給装置である。溶接ワイヤは、ワイヤ送給装置A1に接続されるトーチケーブルおよび溶接トーチ(いずれも図示略)の内部に設けられているライナの内部を通って、溶接トーチの先端に導かれる。図1において、左方が溶接ワイヤの送給方向Xの前方(以下、適宜「送給方向前方X1」という)であり、右方が溶接ワイヤの送給方向Xの後方(以下、適宜「送給方向後方X2」という)である。ワイヤ送給装置A1の送給方向後方X2には、たとえば中間ケーブル、ワイヤ送給装置(プッシュ側送給装置)、および溶接電源装置(いずれも図示略)が接続される。本実施形態のワイヤ送給装置A1は、たとえば作業者が溶接トーチを操作する、いわゆる半自動溶接に用いられるものである。なお、図1図4に示したワイヤ送給装置A1の説明において、通常使用する姿勢を基準として上下方向を規定する。上記の送給方向Xは、水平面に略沿う方向である。
【0019】
図1図5に示したワイヤ送給装置A1は、ケース1、金属構造体2、ワイヤ送給機構3、ハンドル4およびカバー6を備えている。ケース1は、全体として送給方向Xに延びる筒状とされており、金属構造体2およびワイヤ送給機構3を収容している。ケース1は、分割可能な一対の分割片(下部ケース1Aおよび上部ケース1B)により構成される。図3に示すように、ケース1を構成する下部ケース1Aおよび上部ケース1Bは、送給方向Xと直角である上下方向(第2方向Z)に分割可能である。これら下部ケース1Aおよび上部ケース1Bは、組み合わせた状態でビス止め等の適宜手段により連結される。図5に示すように、ケース1は、主要部分が概略矩形断面とされている。ケース1(下部ケース1Aおよび上部ケース1B)は、電気絶縁性を有する材料により構成される。ケース1を構成する材料としては、たとえばポリアミド樹脂(ガラス繊維入り)などの合成樹脂材料を挙げることができる。ただし、ケース1(下部ケース1Aおよび上部ケース1B)を構成する材料は合成樹脂に限定されない。
【0020】
ケース1は、底壁11、第1側壁12、第2側壁13および天井壁14を有し、各々が概ね送給方向Xに延びている。底壁11は、ケース1において最も下位に位置する部分である。本実施形態において、底壁11のうち送給方向後方X2寄りの部分は、送給方向後方X2に向かうにつれて上方に変位するように傾斜している。第1側壁12は、送給方向Xに直交する第1方向Y(送給方向Xに対して直角である水平方向)の一方側(以下、適宜「第1方向一方側Y1」という)端から起立して上方に延びている。第2側壁13は、第1方向Yの他方側(以下、適宜「第1方向他方側Y2」という)の端から起立して上方に延びている。天井壁14は、第1側壁12および第2側壁13の上端を覆う部分である。下部ケース1Aは、底壁11と、第1側壁12および第2側壁13の一部ずつとを含む。上部ケース1Bは、天井壁14と、第1側壁12および第2側壁13の一部ずつとを含む。
【0021】
本実施形態において、ケース1(上部ケース1B)には、開閉扉15が設けられている。開閉扉15は、第1側壁12、天井壁14および第2側壁13に跨がって設けられており、たとえばケース1の内部に配置されたワイヤ送給機構3をメンテナンスする際に開かれる。また、図1図3等に示すように、ケース1(上部ケース1B)の送給方向後方X2寄りの頂部には、操作部141が設けられている。操作部141は、たとえば溶接電流、溶接電圧や溶接ワイヤの送給速度などの溶接条件を設定するためのものである。操作部141は、たとえば複数の操作ボタンを含んで構成される。上記操作部141の操作に基づき、各種溶接条件が制御される。操作部141の近傍には、表示部142が設けられている。表示部142は、溶接条件等を表示するものであり、たとえば有機ELや液晶などのディスプレイを含んで構成される。
【0022】
金属構造体2は、金属導体により構成されており、溶接電流を流すための部材である。図6図9に示すように、金属構造体2は、ブロック状部材である。本実施形態において、金属構造体2は、たとえば第1壁部21、第2壁部22、第3壁部23、開口部24、第1延出部25および第2延出部26を含む。第1壁部21および第2壁部22は、送給方向前方X1および送給方向後方X2に離間して配置されている。第1壁部21および第2壁部22は、送給方向Xに見て互いに重なる。第3壁部23は、第1壁部21および第2壁部22の双方につながり、送給方向Xに延びている。第3壁部23は、第1壁部21および第2壁部22の各々に対して、第1方向一方側Y1に偏倚する位置につながっている。図5に示すように、第3壁部23は、断面矩形状である。第3壁部23は、凹部231および貫通孔232を有する。凹部231は、第1壁部21および第2壁部22に対して、第2方向Z(上下方向)において下方に凹んだ部位である。貫通孔232は、第3壁部23の上部に形成されており、第1方向Yに貫通している。貫通孔232は、後述のモータ32を第3壁部23に固定するのに用いられる。開口部24は、第3壁部23に対して第1方向他方側Y2に開口する部位であり、第1方向Yに見て第3壁部23に重なっている。第1延出部25は、第2壁部22の上部寄りにつながり、送給方向後方X2に延びている。第2延出部26は、第1壁部21の下部につながり、送給方向Xに延びている。
【0023】
図9に示すように、本実施形態において、金属構造体2は、ガス通路27および冷却液通路28を備える。ガス通路27は、ガスを流すための中空状の通路であり、本実施形態ではシールドガスを流す通路である。ガス通路27は、第1壁部21、第2壁部22、第3壁部23および第1延出部25に跨って形成される。ガス通路27は、第1開口27aおよび第2開口27bを有する。第1開口27aは、ガス通路27の一端に設けられており、送給方向前方X1(送給方向の一方側)端に位置する。第2開口27bは、ガス通路27の他端に設けられており、送給方向後方X2(送給方向の他方側)端に位置する。
【0024】
冷却液通路28は、冷却液を流すための中空状の通路であり、本実施形態では冷却液としての水(冷却水)を流す通路である。冷却液通路28は、第1壁部21、第2壁部22、第3壁部23、第1延出部25および第2延出部26に跨って形成される。また、金属構造体2には、2本の冷却液通路28が形成されている。1本の冷却液通路28は、溶接トーチへ冷却水を送る送水用通路であり、他の1本は溶接トーチから戻る水を通す復水用通路である。
【0025】
冷却液通路28は、第3開口28aおよび第4開口28bを有する。第3開口28aは、冷却液通路28の一端に設けられており、送給方向前方X1(送給方向の一方側)端に位置する。第4開口28bは、冷却液通路28の他端に設けられており、送給方向後方X2(送給方向の他方側)端に位置する。ガス通路27および冷却液通路28は、それぞれ、金属構造体2の適所に形成された横断面円形の穴がつながって形成されている。ガス通路27および冷却液通路28は、「流体通路」の一例に相当する。
【0026】
本実施形態において、図4等に示すように、金属構造体2(第1壁部21、第2壁部22および第1延出部25)には、第1ワイヤ挿通口211および第2ワイヤ挿通口221が設けられている。第1ワイヤ挿通口211は、溶接ワイヤWを通すために第1壁部21において送給方向Xに沿って形成された貫通孔であり、当該第1ワイヤ挿通口211を溶接ワイヤWが通過可能である。図4に示した例では、第1ワイヤ挿通口211にはライナ81が配置されており、このライナ81の内部に溶接ワイヤWが挿通される。第2ワイヤ挿通口221は、溶接ワイヤWを通すために第2壁部22および第1延出部25において送給方向Xに沿って形成された貫通孔であり、当該第2ワイヤ挿通口221を溶接ワイヤWが通過可能である。図4に示した例では、第2ワイヤ挿通口221にはライナ82が配置されており、このライナ82の内部に溶接ワイヤWが挿通される。
【0027】
金属構造体2の構成材料は、たとえばアルミニウムを含む。金属構造体2は、たとえばアルミニウムまたはアルミニウム合金によって構成される。金属構造体2は、たとえば鋳造によって形成される。ただし、金属構造体2の構成材料は特に限定されず、たとえば銅や銅合金、あるいは他の金属導体であってもよい。
【0028】
図3図4に示すように、金属構造体2には、コネクタ51,52およびジョイント部53が設けられている。コネクタ51は、第1壁部21に設けられている。コネクタ51は、第1開口27a(ガス通路27)に通じている。このコネクタ51には、たとえばトーチケーブル(図示略)が接続される。コネクタ52は、第1延出部25に設けられている。コネクタ52は、第2開口27b(ガス通路27)および第4開口28b(冷却液通路28)に通じている。このコネクタ52には、たとえば中間ケーブル(図示略)が接続される。ジョイント部53は、第1壁部21の下部寄りに設けられている。ジョイント部53は、第3開口28a(冷却液通路28)に通じている。ジョイント部53には、たとえば水冷用ホース(図示略)が接続される。
【0029】
図3図5等に示したワイヤ送給機構3は、駆動部31と、駆動部31を駆動させるモータ32とを含んで構成される。詳細な図示説明は省略するが、駆動部31は、溶接ワイヤを挟んで送り出す送給ローラおよび加圧ローラを有する。モータ32は、モータカバー33によってその大半が覆われている。モータカバー33は、分割可能な一対の分割片により構成される。モータカバー33は、電気絶縁性を有する材料により構成されており、たとえば合成樹脂材料により構成される。ただし、モータカバー33を構成する材料は合成樹脂に限定されない。
【0030】
図4図7図8等から理解されるように、モータ32の少なくとも一部は、第2方向Z(上下方向)に見て第1壁部21、第2壁部22および第3壁部23に囲まれ、且つ第1方向Yに見て第3壁部23と重なる空間領域S1に配置される。即ち、モータ32の少なくとも一部は、第1壁部21、第2壁部22および第3壁部23により囲まれた内側の空間領域S1に配置されている。図7において、理解の便宜のため、ワイヤ送給機構3を二点鎖線で表している。また、図7図8において、空間領域S1には、一点鎖線のハッチングを施している。
【0031】
本実施形態において、駆動部31は、モータ32上に配置されている。図4図7図8等から理解されるように、駆動部31は、上記の空間領域S1に配置されていない。図6に示すように、モータ32は、第3壁部23に固定されている。たとえば同図に示すように、第3壁部23の貫通孔232に筒状の固定部材291が嵌め込まれるとともに、ねじ部材292がモータ32の側部に螺合されている。第3壁部23に対してモータ32(ワイヤ送給機構3)を取り付ける際、図8に示すように、モータ32を第1方向他方側Y2から金属構造体2の開口部24を通じて第1方向一方側Y1に移動させることで、モータ32は、上記の空間領域S1に配置することができる。なお、モータ32の第3壁部23への固定方法は、上記のねじ締結に限定されない。
【0032】
ハンドル4は、作業者がワイヤ送給装置A1を持ち運ぶ際に手で把持する部分である。ハンドル4は、ケース1(上部ケース1B)の送給方向後方X2寄りの上部に配置されている。ハンドル4は略U字状とされており、上部ケース1Bに対してハンドル4の両端部が第1方向Yに沿った軸線の回りに回動可能に取り付けられている。図1図4においては、ハンドル4は収納された状態を示している。ハンドル4を把持する際には、ハンドル4を上記軸線回りに回動させて起立状態とすることができる。
【0033】
カバー6は、ケース1(下部ケース1A)に設けられており、少なくとも底壁11の一部を覆っている。本実施形態では、カバー6は、第1カバー61および第2カバー62を含む。第1カバー61は、ケース1の送給方向前方X1の端部に配置されている。第1カバー61は、底壁11の送給方向前方X1の端部を覆う。また、第1カバー61は、第1方向Yに見てジョイント部53の全体と重なっており、第1方向Yにおいてジョイント部53を覆っている。第2カバー62は、ケース1の送給方向後方X2の端部寄りに配置されている。第2カバー62は、底壁11の送給方向前方X1の端部寄りを覆う。カバー6(第1カバー61および第2カバー62)がケース1(下部ケース1A)に設けられることで、下部ケース1A(底壁11)の外面が作業場床面等に直接接触することは防止され、ケース1の保護が図られている。
【0034】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0035】
本実施形態のワイヤ送給装置A1は、金属構造体2およびワイヤ送給機構3を備える。金属構造体2は、金属導体により構成されており、溶接電流が流れる部材である。金属構造体2は、第1壁部21、第2壁部22および第3壁部23を含む。第1壁部21および第2壁部22は、送給方向前方X1および送給方向後方X2に離間して配置されている。第1壁部21および第2壁部22は、送給方向Xに見て互いに重なる。第3壁部23は、第1壁部21および第2壁部22の各々に対して、第1方向一方側Y1に偏倚する位置につながっている。ワイヤ送給機構3は、駆動部31およびモータ32を含む。モータ32の少なくとも一部は、第2方向Z(上下方向)に見て第1壁部21、第2壁部22および第3壁部23に囲まれ、且つ第1方向Yに見て第3壁部23と重なる空間領域S1に配置される。
【0036】
このような構成によれば、溶接電流を流すための金属構造体2において、第1壁部21、第2壁部22および第3壁部23によって囲まれた内側の空間領域S1は、モータ32の収容空間となっている。第1壁部21、第2壁部22および第3壁部23は、第2方向Zに見て、矩形の3辺に対応する位置に配置されている。また、第1壁部21、第2壁部22および第3壁部23は、第2方向Zに見て、送給方向Xに沿う中心線に対して左右方向(第1方向Y)において非対称な配置である。これにより、金属構造体2によって形成された上記の空間領域S1に、モータ32を省スペースで効率よく配置することができる。したがって、第1壁部21、第2壁部22および第3壁部23を含んで構成された金属構造体2の強度が向上するとともに、ワイヤ送給装置A1において、金属構造体2およびワイヤ送給機構3の組み立てや交換が容易であり、組み立て性およびメンテナンス性に優れる。
【0037】
モータ32は、第3壁部23に固定されている。このような構成によれば、金属構造体2(第3壁部23)およびこれに固定されるワイヤ送給機構3(モータ32)の全体の剛性および強度が適切に向上する。
【0038】
金属構造体2は、開口部24を有する。開口部24は、第3壁部23に対して第1方向他方側Y2に開口している。このように第1方向Yにおいて第3壁部23とは反対側に開口部24を有する構成によれば、第3壁部23に対してモータ32(ワイヤ送給機構3)を取り付ける際、モータ32を第1方向他方側Y2から金属構造体2の開口部24を通じて第1方向一方側Y1に移動させる。これにより、モータ32は、上記の空間領域S1に配置することができる。したがって、メンテナンス時におけるモータ32の着脱を容易かつスムーズに行うことができる。
【0039】
第1壁部21および第2壁部22には、溶接ワイヤWを通すための第1ワイヤ挿通口211および第2ワイヤ挿通口221が送給方向Xに沿って貫通状に形成されている。このような構成によれば、金属構造体2の配置を省スペース化でき、ワイヤ送給装置A1の小型化および軽量化を図ることができる。
【0040】
金属構造体2は、ガス通路27および冷却液通路28(流体通路)を備える。ガス通路27は、シールドガス(ガス)を流すための中空状の通路である。冷却液通路28は、冷却水(冷却液)を流すための中空状の通路である。ガス通路27および冷却液通路28は、第1壁部21、第2壁部22および第3壁部23に跨って形成されている。これにより、溶接電流の経路である金属構造体2自体が中空状のガス通路27および冷却液通路28を具備する。本実施形態によれば、ワイヤ送給装置の内部に給電用導体、ガス配管および水冷用ホースそれぞれが配置された構成(たとえば特許文献1に記載された構成)と異なり、溶接電流、シールドガスおよび冷却水それぞれを流すための経路を、金属構造体2によって賄うことができる。これにより、金属構造体2を含むワイヤ送給装置A1において、金属構造体2の組立てや交換が容易であり、組立て性およびメンテナンス性に優れる。
【0041】
本実施形態と異なり、たとえばワイヤ送給装置の内部に水冷用ホースを配置する場合においては、高電流や高使用率での溶接条件では当該水冷用ホースの耐熱温度を超えるおそれがあり、溶接条件に制約が生じ得た。これに対し、本実施形態においては、金属導体からなる金属構造体2の中空状通路(冷却液通路28)に冷却水が流れる。したがって、溶接条件の制約等を受けることが無く、高電流や高使用率での溶接が可能である。
【0042】
本実施形態において、金属構造体2の構成材料は、アルミニウムを含む。アルミニウムは、たとえば銅や鉄などの他の金属導体と比べて密度が小さい。このような構成によれば、ワイヤ送給装置A1全体の強度を高めるとともに、ワイヤ送給装置A1の軽量化を図ることができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲は上記した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した事項の範囲内でのあらゆる変更は、すべて本発明の範囲に包摂される。
【0044】
上記実施形態では、金属構造体2がガス通路27および冷却液通路28の両方を備える場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、ガス通路27および冷却液通路28のうち一方を備える構成であってもよい。また、金属構造体2がガス通路27および冷却液通路28(流体流路)を一切備えない構成でもよい。
【0045】
上記実施形態では、金属構造体2の第3壁部23が第1壁部21および第2壁部22に対して水平方向(第1方向Yの一方側)に偏倚する位置につながる場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、第3壁部23は第1壁部21および第2壁部22に対して上下方向に偏倚する位置につながる構成でもよく、この場合、第3壁部23は、第1壁部21および第2壁部22の各々の下端部につながる。
【符号の説明】
【0046】
A1:ワイヤ送給装置、2:金属構造体、21:第1壁部、211:第1ワイヤ挿通口、22:第2壁部、221:第2ワイヤ挿通口、23:第3壁部、24:開口部、27:ガス通路(流体通路)、28:冷却液通路(流体通路)、3:ワイヤ送給機構、31:駆動部、32:モータ、S1:空間領域、W:溶接ワイヤ、X:送給方向、X1:送給方向前方(送給方向の一方側)、X2:送給方向後方(送給方向の他方側)、Y:第1方向、Y1:第1方向一方側、Y2:第1方向他方側、Z:第2方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9