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特開2023-93909ブルーライト即時黒化抑制剤、およびそのスクリーニング方法
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  • 特開-ブルーライト即時黒化抑制剤、およびそのスクリーニング方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093909
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】ブルーライト即時黒化抑制剤、およびそのスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/375 20060101AFI20230628BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230628BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230628BHJP
   A61K 38/06 20060101ALI20230628BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20230628BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20230628BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20230628BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20230628BHJP
   A23L 33/10 20160101ALN20230628BHJP
【FI】
A61K31/375
A61P43/00 111
A61P17/00
A61K38/06
A61Q17/04
A61K8/67
A61K8/64
G01N33/15 Z
A23L33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209037
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100197169
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 潤二
(72)【発明者】
【氏名】先山 奈津紀
(72)【発明者】
【氏名】土田 克彦
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B018MD18
4B018MD19
4B018MD20
4B018MD25
4B018ME14
4C083AD411
4C083AD412
4C083AD641
4C083AD642
4C083CC19
4C083EE17
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084CA18
4C084DC31
4C084MA63
4C084NA14
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZC411
4C084ZC412
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA18
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZC41
(57)【要約】
【課題】ブルーライト照射により誘発される即時黒化を抑制する薬剤およびそのスクリーニング方法の提供。
【解決手段】本発明は、アスコルビン酸、グルタチオン及び薬学的に許容されるその塩からなる群から1又は複数選択される物質を含む、ブルーライト照射により特異的に誘発されるメラニンモノマーの即時黒化を抑制する、ブルーライト即時黒化抑制剤を提供する。また、本発明は、ブルーライト照射により誘発されるメラニンモノマーの黒化を抑制する物質のスクリーニング方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスコルビン酸、グルタチオン及び薬学的に許容されるその塩からなる群から1又は複数選択される物質を含む、ブルーライト照射により特異的に誘発されるメラニンモノマーの即時黒化を抑制する、ブルーライト即時黒化抑制剤。
【請求項2】
前記ブルーライトが、波長400 nm~500 nmの光である、請求項1に記載のブルーライト即時黒化抑制剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のブルーライト即時黒化抑制剤を含有する、皮膚外用剤。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のブルーライト即時黒化抑制剤を含有する、化粧品。
【請求項5】
ブルーライト即時黒化抑制剤のスクリーニング方法であって、
メラニンモノマーを含む溶液にブルーライトを照射し、候補物質の存在下及び非存在下における前記メラニンモノマーの黒化の程度を測定し、前記黒化の程度を指標としてブルーライトによる即時黒化抑制効果を有する候補物質をスクリーニングすること、
を含む方法。
【請求項6】
前記ブルーライトの照射の前に、前記メラニンモノマーを含む溶液に前記候補物質を添加する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ブルーライトの照射の後に、前記メラニンモノマーを含む溶液に前記候補物質を添加する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記ブルーライトの照射の前に、前記メラニンモノマーを含む溶液に長波長紫外線をさらに照射し、前記黒化の程度を測定する、請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記長波長紫外線が、波長320 nm以上400 nm未満の光である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記長波長紫外線の照射の前に、前記メラニンモノマーを含む溶液に前記候補物質を添加する、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記長波長紫外線の照射の後に、前記メラニンモノマーを含む溶液に前記候補物質を添加する、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項12】
前記ブルーライトが、波長400 nm~500 nmの光である、請求項5~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記メラニンモノマーが、DHICA(5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸)である、請求項5~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ブルーライト即時黒化の抑制効果の評価方法であって、
メラニンモノマーを含む溶液にブルーライトを照射し、候補物質の存在下及び非存在下における前記メラニンモノマーの黒化の程度を比較することで前記候補物質の黒化抑制効果を評価すること、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブルーライト照射により誘発される即時黒化を効率的に抑制する薬剤およびそのスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚における「黒化」は、紫外線であるUVAにより生じる即時黒化(一次黒化:IPD)、持続型即時黒化(PPD)、およびUVBあるいはUVAの大量照射による遅延型黒化(二次黒化:DT)に分類される。紫外線(UVA)により生じる即時黒化に対し、それを抑制する物質のスクリーニング方法が開発されており、そのような方法により上記の黒化抑制効果を有する化合物として、アスコルビン酸、2-O-アルキルアスコルビン酸およびその誘導体が知られている(特許文献1~3)。
【0003】
近年、ブルーライトの生体に対する影響についてのさまざまな報告があり、注目が集まっている。ブルーライトは太陽光にも含まれており、皮膚に対し様々な悪影響及ぼすことも報告されており(特許文献4、5、非特許文献1、2)、UV光よりも波長が長いため皮膚の奥深くまで到達する。そのため、ブルーライトに特化した方法で皮膚等を保護する方策が求められている。
【0004】
そのような要請の下、ブルーライト(465 nm)により生じる持続型即時黒化(PPD)に対して酸化チタンを含むブルーライト製剤が効果を発揮することが報告されている(非特許文献3)。当該効果は、ブルーライトを物理的に遮蔽することで生じるものであり、ブルーライト照射によるメラニンモノマーの黒化反応を抑制するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-055260号公報
【特許文献2】特開2004-182624号公報
【特許文献3】特開2005-274308号公報
【特許文献4】特表2020-512307号公報
【特許文献5】特開2015-44773号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】K. Dong et.al, Blue light disrupts the circadian rhythm and create damage in skin cells., Int J Cosmet Sci. 2019 Dec;41(6):558-562. doi: 10.1111/ics.12572.
【非特許文献2】Y Nakashima et al, Blue light-induced oxidative stress in live skin, Free Radic Biol Med. 2017 Jul;108:300-310. doi: 10.1016
【非特許文献3】H. L. Jo, et al., Clinical evaluation method for blue light (456 nm) protection of skin, J Cosmet Dermatol. 2020 Sep;19(9):2438-2443. doi: 10.1111/jocd.13508.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、ブルーライト照射により誘発される即時黒化を抑制する薬剤およびそのスクリーニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、メラニンモノマーにブルーライトを照射することにより誘発される即時黒化を特異的に抑制する薬剤およびそのスクリーニング方法を発見した。かかる発見に基づき、多種多様な素材について鋭意検討を重ねた結果、アスコルビン酸、グルタチオン及び薬学的に許容されるその塩からなる群から1又は複数選択される物質をはじめとする特定の成分が、ブルーライトによる即時黒化を抑制する作用を示すことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本願は下記の発明を包含する:
[1] アスコルビン酸、グルタチオン及び薬学的に許容されるその塩からなる群から1又は複数選択される物質を含む、ブルーライト照射により特異的に誘発されるメラニンモノマーの即時黒化を抑制する、ブルーライト即時黒化抑制剤。
[2] 前記ブルーライトが、波長400 nm~500 nmの光である、項目1に記載のブルーライト即時黒化抑制剤。
【0010】
[3] 項目1又は2に記載のブルーライト即時黒化抑制剤を含有する、皮膚外用剤。
【0011】
[4] 項目1又は2に記載のブルーライト即時黒化抑制剤を含有する、化粧品。
【0012】
[5] ブルーライト即時黒化抑制剤のスクリーニング方法であって、
メラニンモノマーを含む溶液にブルーライトを照射し、候補物質の存在下及び非存在下における前記メラニンモノマーの黒化の程度を測定し、前記黒化の程度を指標としてブルーライトによる即時黒化抑制効果を有する候補物質をスクリーニングすること、
を含む方法。
[6] 前記ブルーライトの照射の前に、前記メラニンモノマーを含む溶液に前記候補物質を添加する、項目5に記載の方法。
[7] 前記ブルーライトの照射の後に、前記メラニンモノマーを含む溶液に前記候補物質を添加する、項目5に記載の方法。
[8] 前記ブルーライトの照射の前に、前記メラニンモノマーを含む溶液に長波長紫外線をさらに照射し、前記黒化の程度を測定する、項目5~7のいずれか1項に記載の方法。
[9] 前記長波長紫外線が、波長320 nm以上400 nm未満の光である、項目8に記載の方法。
[10] 前記長波長紫外線の照射の前に、前記メラニンモノマーを含む溶液に前記候補物質を添加する、項目8又は9に記載の方法。
[11] 前記長波長紫外線の照射の後に、前記メラニンモノマーを含む溶液に前記候補物質を添加する、項目8又は9に記載の方法。
[12] 前記ブルーライトが、波長400 nm~500 nmの光である、項目5~11のいずれか1項に記載の方法。
[13] 前記メラニンモノマーが、DHICA(5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸)である、項目5~12のいずれか1項に記載の方法。
【0013】
[14] ブルーライト即時黒化の抑制効果の評価方法であって、
メラニンモノマーを含む溶液にブルーライトを照射し、候補物質の存在下及び非存在下における前記メラニンモノマーの黒化の程度を比較することで前記候補物質の黒化抑制効果を評価すること、
を含む方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ブルーライトにより誘発される即時黒化抑制に特異的に作用する剤およびそのスクリーニング方法が提供される。本発明により、ブルーライトにより誘発される即時黒化に特化した対策を講じることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、DHICAと各候補物質の混合液にブルーライト照射(約36.8 J/cm)を行った場合のDHICA吸光度の変化を示す。
図2図2は、DHICAと各候補物質の混合液にUVA照射(約0.4 J/cm)を行った場合のDHICA吸光度の変化を示す。
図3図3は、各濃度の試料について行った抗酸化測定キットによる抗酸化評価の結果であり、DPPHラジカル消去率(%)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を以下に詳細に説明する。特段の定義がない限り、本明細書で使用する用語(技術的用語および科学的用語)は、当業者が一般に理解している用語と同一の意味を有する。また、本明細書において引用されている文献は、本明細書においても援用され、その全体が本明細書において取り込まれる。
【0017】
[ブルーライト即時黒化抑制剤]
一態様において、本発明は、アスコルビン酸、グルタチオン及び薬学的に許容されるその塩からなる群から1又は複数選択される物質を含む、ブルーライト照射により特異的に誘発されるメラニンモノマーの即時黒化を抑制するブルーライト即時黒化抑制剤を提供する。本明細書において、「ブルーライト照射により特異的に誘発されるメラニンモノマーの即時黒化を抑制する」とは、後述する波長を有するブルーライトにより特異的に誘発されるメラニンモノマーの即時黒化を抑制することをいう。
【0018】
一般に、「黒化」とは、太陽光を浴びた後に起きる皮膚の黒化現象全般をいい、UVAによる即時黒化(一次黒化:IPD)及び持続型即時黒化(PPD)と、UVBあるいはUVAの大量照射による遅延型黒化(二次黒化:DT)に分類される。一般に、即時黒化は、UVA照射中あるいは照射直後に見られるくすんだ灰褐色の色素増強を指す。IPDは照射中止の5~10分後には消退しはじめ、数時間で消失するが、IPDを生じる閾値(いきち)量の数倍のUVAが照射されると24時間後でも消えることはない持続型即時黒化(PPD)が観察される。本発明において、「即時黒化」(「即時型黒化」ともいう。)とは、特定の波長により特異的に誘発されるメラニン前駆体(メラニンモノマー)の黒化により生じる黒色化反応をいい、本発明により抑制されるのは、特にブルーライトが有する波長の範囲の光によって誘発されるメラニンモノマーの黒色化反応と定義されてもよい。
【0019】
メラニンモノマーの1種であるDHICA(5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸)は、長波長紫外線であるUVAによって即時黒化することは知れているが(例えば、特許文献1~3)、ブルーライトによって即時黒化が生じることについて、詳細は不明なままであった。これまで、即時黒化は、メラニンモノマーがUVAによる光酸化反応により、濃い色を呈する黒化反応によって起こるものと考えられていた。そのため、抗酸化物質は、ブルーライトによって生じるメラニンモノマーによる即時黒化に対しても、UVAによって生じるメラニンモノマーによる即時黒化と同様に抑制効果があるものと予測していた。しかしながら、抗酸化作用が知られている候補薬剤についてブルーライト又はUVAによるDHICAの黒化の抑制能の比較、およびDPPHラジカル補足能の比較を行った結果、ブルーライトとUVAに対する抑制効果に違いが認められた(本願実施例1~3を参照)。このことから、本明細書における試験系によって、ブルーライトによる即時黒化に対して特異的に効果を示す薬剤を見出し得ることを発見し、本願発明を完成させるに至った。
【0020】
本発明で用いられるメラニンモノマーとしては、DHICA(5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸)やその塩、DHI(5,6-ジヒドロキシインドール)、6H5MICA(6-ヒドロキシ-5-メトキシインドール-2-カルボン酸)、5H6MICA(5-ヒドロキシ-6-メトキシインドール-2-カルボン酸)、6H5MI(6-ヒドロキシ-5-メトキシインドール)、5H6MI(5-ヒドロキシ-6-メトキシインドール)等が挙げられる。
【0021】
本明細書において「ブルーライト」とは、波長400 nm~500 nmの光、特に可視光域にある光を指すが、例えば、その下限は400 nm、405 nm、410 nm、415 nm、420 nm、425 nm、430 nm又はそれ以上であってもよく、その上限は500 nm、495 nm、490 nm、485 nm、480 nm、475 nm、470 nm、465 nm、460 nm、455 nm、450 nm又はそれ以下であってもよく、前記上限及び下限を任意に組み合わせた範囲の波長の光であってもよい。例えば、400 nm~500 nm、405 nm~500 nm、410 nm~500 nm、415 nm~500 nm、420 nm~500 nm、425 nm~500 nm、430 nm~500 nm、400 nm~495 nm、400 nm~490 nm、400 nm~485 nm、400 nm~480 nm、400 nm~475 nm、400 nm~470 nm、400 nm~465 nm、400 nm~460 nm、400 nm~455 nm、400 nm~450 nm、405 nm~495 nm、410 nm~490 nm、415 nm~485 nm、420 nm~480 nm、425 nm~475 nm、425 nm~470 nm、425 nm~465 nm、425 nm~460 nm、425 nm~455 nm、425 nm~450 nm、430 nm~470 nm、430 nm~465 nm、430 nm~460 nm、430 nm~455 nm又は430 nm~450 nmであってもよく、これに限定されない。
【0022】
ブルーライトは長波長紫外線(UVA(320以上400 nm未満))や、中波長紫外線(UVB(280以上320 nm未満)といったUV光よりも波長が長いため皮膚の奥深くまで到達する。また、ブルーライトは皮膚細胞の生育阻害といった皮膚に対する様々な悪影響を及ぼすことが知られている(特許文献4、5、非特許文献1、2)。よって、ブルーライトから皮膚を守ることは重要である。また、ブルーライトが皮膚や食品における脂質を酸化することも懸念される。
【0023】
本発明において、「ブルーライト照射により特異的に誘発されるメラニンモノマーの即時黒化を抑制する物質(「ブルーライト即時黒化抑制剤」と称することがある)」とは、例えば、メラニンモノマーを含む溶液にブルーライトを照射した場合に、候補物質が存在しない場合と比べて、候補物質の存在により、メラニンモノマーの黒化を抑制する物質をいう。メラニンモノマーの黒化の程度は、例えば、吸光度によって生成されるメラニンの量を測定する方法(例えば、特許文献1及び2など)や、メラニンモノマーの残存量を測定する方法(例えば、特許文献3など)などによって定量することができる。
【0024】
「メラニンモノマーの黒化を抑制する」とは、例えば、候補物質が非存在の状態(コントロール)に比べて、候補物質が存在する場合に、メラニンモノマーから生成されるメラニンの量が、例えば有意水準を5 %とした統計学的有意差(例えば、Wilcoxonの順位和検定、t検定等)をもって減少していること、又は例えば5 %以上、10 %以上、20 %以上、30 %以上、40 %以上、50 %以上、60 %以上、70 %以上、80 %以上、90 %以上、もしくは100 %減少していること、あるいは、メラニンモノマーの残存量が、有意水準を5 %とした統計学的有意差(例えば、Wilcoxonの順位和検定、t検定等)をもって増加していること、又は例えば5 %以上、10 %以上、20 %以上、30 %以上、40 %以上、50 %以上、60 %以上、70 %以上、80 %以上、90 %以上、もしくは100 %増加していることを意味し得る。
【0025】
[組成物]
本発明の剤は、1種又は2種以上の他の成分、例えば賦形剤、担体及び/又は希釈剤等と組み合わせた組成物とすることもできる。組成物の組成や形態は任意であり、有効成分や用途等の条件に応じて適切に選択すればよい。当該組成物は、その剤形に応じ、賦形剤、担体及び/又は希釈剤等及び他の成分と適宜組み合わせた処方で、常法を用いて製造することができる。
【0026】
例えば、本発明の剤は、ブルーライトの光による即時黒化に起因する皮膚のしみ、くすみ、色素沈着等の予防・改善、皮膚色の改善等を目的として、化粧料、医薬部外品、医薬品、機能性食品その他の飲食品等の組成物に配合しうる。化粧料に配合する態様では、日焼け止め、化粧水、美容液、美容クリーム、アフターケアローション等、皮膚に適用される任意の化粧料に配合することができ、皮膚に直接適用することができる皮膚外用剤に配合してもよい。あるいは、皮膚外用剤、経口剤等の医薬品や医薬部外品に配合することもできる。本発明の剤は、その効果を損なわない範囲で、化粧品、医薬品、医薬部外品、飲食品等の組成物に用いられる任意配合成分を、必要に応じて適宜配合することができる。前記任意配合成分としては、例えば、油分、界面活性剤、粉末、色材、水、アルコール類、増粘剤、キレート剤、シリコーン類、保湿剤、香料、各種薬効成分、防腐剤、pH調整剤、中和剤、賦形剤、着色剤、結合剤、崩壊剤、分散剤、安定化剤、ゲル化剤などが挙げられる。例えば、他の波長の光による即時黒化抑制作用を促進する他の薬効成分、酸化防止剤、保存剤、紫外線散乱剤、紫外線吸収剤等が含まれていてもよい。
【0027】
本発明を化粧品、医薬品、医薬部外品、飲食品等に適用する場合、本発明の剤又は組成物における本発明の剤は、本発明の効果を損なわない限り限定されず、種類、目的、形態、利用方法などに応じて、適宜決めることができる。例えば、化粧料全量中に、アスコルビン酸、グルタチオン及び薬学的に許容されるその塩からなる群から1又は複数選択される物質といった本発明の剤の有効成分を、例えば、0.0001~0.001 重量%、0.001~0.005 重量%、0.005~0.01 重量%、0.01~0.02 重量%、0.02~0.05 重量%、0.05~0.1 重量%、0.1~1.0 重量%、1.0~10 重量%、10~50 重量%、50~100 重量%等任意の割合で配合できる。
【0028】
本発明に用いられるアスコルビン酸、グルタチオン又は薬学的に許容され得る塩は、天然物からの抽出物であっても良いし,公知の方法によって合成した物であっても良い。例えば,具体的には,第17改正日本薬局方に収載されているものを用いることができる。本発明にグルタチオンを適用する場合、還元型グルタチオンを用いることが好ましい。本発明に適用可能な薬学的に許容され得る塩は、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、例えば酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩等の金属塩、例えばトリエチルアミン塩、グアニジン塩、アンモニウム塩、ヒドラジン塩、キニーネ塩、シンコニン塩等が挙げられる。
【0029】
しかしながら、本発明の剤や組成物の採り得る形態は、上述の剤型や形態に限定されるものではない。
【0030】
[ブルーライト即時黒化抑制剤のスクリーニング方法]
更に本発明のスクリーニング方法について説明する。
【0031】
一実施態様において、本発明は、
ブルーライト即時黒化抑制剤のスクリーニング方法であって、
メラニンモノマーを含む溶液にブルーライトを照射し、候補物質の存在下及び非存在下における前記メラニンモノマーの黒化の程度を測定し、前記黒化の程度を指標としてブルーライトによる即時黒化抑制効果を有する候補物質をスクリーニングすること、を含む方法を提供する。
【0032】
一実施態様において、本発明のスクリーニング方法は、ブルーライトの照射の前に、メラニンモノマーを含む溶液に候補物質を添加するものであってもよく、ブルーライトの照射の後に、メラニンモノマーを含む溶液に候補物質を添加するものであってもよい。
【0033】
具体的には、例えば、特許文献1~3に記載の方法を参考に、用いる光源をブルーライト(例えば、波長400 nm~500 nmの光)を照射可能な光源に変更したり、その他適宜変更を加えることによって実施してもよい。限定されるわけではないが、例えば、以下の方法によって本発明を実施し得る。
【0034】
<方法1>
DHICAまたはそのナトリウム塩を0.1~100 mM(例えば、1~50 mM、好ましくは10 mM)となるように水またはリン酸緩衝液等の緩衝液に溶解し、それをマイクロプレートウェル(例えば、96ウェルプレートのウェル)に100~300 μl分注する。各濃度に調製した候補物質を1~100 μl添加して、あるいは添加する前に、蛍光ランプ、ソーラーシミュレーター、またはモノクロメーターを用いてブルーライトを10分から3時間照射し、マイクロプレートリーダーを用いてメラニンを定量し得る波長(例えば、405 nmや500 nmなど)の吸光度を測定して、黒化の程度を評価し、候補物質の効果を評価する。
【0035】
黒化の抑制効果は、例えば、以下の式で表される。
【0036】
黒化抑制効果(%)=100 - (候補物質が存在する場合の吸光度/候補物質が存在しない場合の吸光度) × 100
【0037】
<方法2>
方法2は、ブルーライト照射後のメラニンモノマー残存率(すなわち、メラニンモノマーの重合率)を算出し、これを候補物質の黒化抑制効果の指標として用いる方法である(例えば、特許文献3を参照のこと)。具体的には以下に例示される。
【0038】
メラニンモノマー0.00001~0.001 質量%を水またはリン酸緩衝液などの緩衝液に溶解し、マイクロプレートウェルに100~200 μl分注する。このウェルにモノクロメーターを用いて特定波長の励起光を照射し、それによって発生する蛍光強度(N0)をマイクロプレートリーダーにより測定する。
【0039】
次いでこのウェルにブルーライトの波長を有する蛍光ランプを10分から3時間照射し、メラニンモノマーの重合を行った後、前述した方法で再度励起光を照射し、重合後の蛍光強度(N1)をマイクロプレートリーダーにより測定する。ちなみに6H5MICAの場合は、320 nmの励起光で390 nmの蛍光強度を測定する。
【0040】
これらの測定値を基に下記の計算式(I)により、候補物質が入っていない場合のメラニンモノマーの重合率(Nj)を求める。
【0041】
Nj={(N0-N1)/N0}×100‥(I)
【0042】
次いで、スクリーニング対象となる候補物質を別のウェルに添加し、候補物質が入った場合のメラニンモノマーの重合率を測定する。より詳しくは、所定の濃度に調製した候補物質1~100 μlをメラニンモノマーが終濃度で0.00001~0.001 質量%となるように調製したマイクロプレートウェルに添加し、このウェルにモノクロメーターを用いて特定波長の励起光を照射し、それによって発生する蛍光強度(Y0)をマイクロプレートリーダーにより測定する。
【0043】
更に、320~400 nm波長を有する蛍光ランプを用いて、候補物質が入っていなかったウェルに照射した時間と同じ時間照射して、メラニンモノマーの重合を行った後、再度励起光を照射し、それによって発生する蛍光強度(Y1)をマイクロプレートリーダーにより測定する。
【0044】
これらの測定値を基に下記計算式(II)により、メラニンモノマーの重合率(Yj)を求める。
Yj={(Y0-Y1)/Y0}×100‥(II)
【0045】
前記式(I)から求めたメラニンモノマーの重合率(Nj)と式(II)から求めたメラニンモノマーの重合率(Yj)から、次式(III)によって候補物質のメラニンモノマーの黒化抑制率(%)を求め、この結果から候補物質のスクリーニングを行う。
【0046】
黒化抑制率(%)={(Nj-Yj)/Nj}×100‥(III)
【0047】
なお、上記スクリーニング方法においてはブルーライトを照射しない時の励起光照射後の蛍光強度(N0)と、ブルーライトを照射した時の励起光照射後の蛍光強度(N1)を同一のマイクロプレートウェルを用いてUVAの照射前後で測定するものであるが、2つのマイクロプレートウェルを並置し、一方はアルミホイルなどで遮光し、他方は遮光せずにブルーライトを照射した後、それぞれを励起光照射して測定することもできる。この方法は、蛍光強度(Y0)および蛍光強度(Y1)の測定においても同様である。
【0048】
メラニンモノマーの重合に用いられる蛍光ランプは、ブルーライト領域の波長を有するものであれば良く、市販の蛍光ランプ、LEDランプ、ソーラーシミュレーター、モノクロメーターなどを用いることができる。
【0049】
本明細書において、「ブルーライトによる即時黒化抑制効果を有する候補物質」とは、例えば、メラニンモノマーを含む溶液にブルーライトを照射した場合に、当該候補物質が存在しない場合と比べて、候補物質の存在により、メラニンモノマーの黒化を抑制する物質をいい、例えば、候補物質が存在しない場合(コントロール)に比べて、候補物質が存在する場合に、メラニンモノマーから生成されるメラニンの量が、例えば有意水準を5%とした統計学的有意差(例えば、Wilcoxonの順位和検定、t検定等)をもって減少していること、又は例えば5 %以上、10 %以上、20 %以上、30 %以上、40 %以上、50 %以上、60 %以上、70 %以上、80 %以上、90 %以上、もしくは100 %減少していること、あるいは、メラニンモノマーの残存量が、有意水準を5 %とした統計学的有意差(例えば、Wilcoxonの順位和検定、t検定等)をもって増加していること、又は例えば5 %以上、10 %以上、20 %以上、30 %以上、40 %以上、50 %以上、60 %以上、70 %以上、80 %以上、90 %以上、もしくは100 %増加していることを意味し得る。
【0050】
一実施態様において、本発明のスクリーニング方法は、ブルーライトの照射の前に、メラニンモノマーを含む溶液に長波長紫外線(例えば、波長320 nm以上400 nm未満の光(UVA))をさらに照射し、黒化の程度を測定するステップを追加するものであってもよい。本願発明者らは、抗酸化作用を有する候補物質について、長波長紫外線の照射により誘導されるメラニンモノマーの黒化と、ブルーライトの照射により誘導されるメラニンモノマーの黒化に対する反応性を調べたところ、抑制効果に違いが見られたことから、長波長紫外線とブルーライトの照射によるメラニンモノマー即時黒化は、それぞれ異なるメカニズムにより引き起こされている可能性を見出した。従って、本発明のスクリーニング方法において、ブルーライトの照射の前に、メラニンモノマーを含む溶液に長波長紫外線をさらに照射し、黒化の程度を測定するステップを追加することにより、長波長紫外線が誘導する即時黒化とは異なる、ブルーライト照射により特異的に誘発されるメラニンモノマーの即時黒化を抑制する候補物質を選択することも可能となる。
【0051】
一実施態様の本発明のスクリーニング方法において、上述のように長波長紫外線を照射するステップを追加する場合、メラニンモノマーを含む溶液に候補物質を添加するステップは、長波長紫外線の照射の前であってもよく、長波長紫外線の照射の後であってもよい。
【0052】
他の態様において、本発明は、ブルーライト即時黒化の抑制効果の評価方法であって、
メラニンモノマーを含む溶液にブルーライトを照射し、候補物質の存在下及び非存在下における前記メラニンモノマーの黒化の程度を比較することで前記候補物質の黒化抑制効果を評価すること、を含む方法も提供し得る。
【0053】
本発明のスクリーニング方法または検査方法により、候補物質がブルーライト即時黒化抑制効果を有するか否かについて評価可能となり、新たな製品の開発やスキンケア、サンケアの提案が可能になる。
【0054】
[ブルーライト即時黒化抑制方法]
また、本発明は、ブルーライトによる即時黒化を本発明の剤又は組成物を投与することにより抑制する方法も提供する。一態様では、皮膚の黒化は、ブルーライトによる即時黒化によるものであり、本発明の方法を実施することによりこれを抑制し得る。なお、本発明の方法は、美容を目的とする方法であり、医師や医療従事者による治療ではないことがある。
【0055】
本発明の剤又は組成物を投与する対象は、ブルーライトによる皮膚の即時黒化が客観的又は主観的に認められる対象であっても、皮膚の即時黒化を予防したいと希望する対象であってもよい。例えば、ブルーライトなどの光により誘発される即時黒化が多い、皮膚の即時黒化度が高い、等と判断された対象であってもよく、あるいは、日光、又はPC、タブレット、スマートフォンといった機器を使用することによりブルーライトを浴びることが避けられない対象であってもよい。
【実施例0056】
次に実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0057】
<実施例1>
ブルーライト照射(約36.8 J/cm)によるDHICA吸光度の変化
【0058】
以下の組成の溶液を96 ウェルプレートに準備した。
【0059】
・297 μl 10 mM DHICA溶液(溶媒:0.1 Mリン酸バッファー pH 7.4)(DHICA:東京化成工業社)
・3μl 各候補薬剤の10 %(w/w)水溶液(溶媒:MQ水)
【0060】
評価には、抗酸化能を有することが知られる以下の化合物を用いた。
【0061】
【表1】
【0062】
ソーラーシミュレーター(ORIEL社、Cat#.MODEL91192-1000)に3種のフィルター(朝日分光社、Cat#.SC0451;朝日分光社、Cat#.LU0400;及びシグマ光機社、Cat#.HAF-50S-15H)を組合せた照射系を構築し、青色波長域(約400~450 nm)の光を約36.8 J/cm照射した。
【0063】
上記照射系で照射した各溶液を、プレートリーダー(TECAN社、Cat#.サンライズサーモRC-R)で吸光度(500 nm)を測定した。
【0064】
[結果]
結果を図1に示す。ブルーライト照射により、control(薬剤不添加)のDHICA吸光度はsham(遮光サンプル)と比較して増加した。このことより、ブルーライトが抑時黒化を引き起こすことが示唆された。
【0065】
候補薬剤を添加したサンプルの多くはcontrolと同程度に吸光度が増加したが、L-アスコルビン酸とグルタチオン添加サンプルでは増加が抑制されていた。このことより、L-アスコルビン酸とグルタチオンには、ブルーライトによる即時黒化を抑制する効果があることが示された。
【0066】
一方で、一般的に抗酸化能があることが知られる候補薬剤の中でも、ブルーライトによるDHICA酸化に対する効果に違いがある可能性が示された。
【0067】
<実施例2>
UV照射(約0.4 J/cm)によるDHICA吸光度の変化
【0068】
ブルーライトの代わりにUVAランプ(TOSHIBA MEDICAL SUPPLY社、Cat#.TOREX FL20SBL/DMR)を用いてUVAを照射(約0.4 J/cm)したこと以外は、実施例1と同様の方法で実験を行った。
【0069】
[結果]
結果を図2に示す。ブルーライトに効果を示した2薬剤(L-アスコルビン酸、グルタチオン)は、UV照射によるDHICA吸光度の増加に対しても抑制効果を示した。
【0070】
一方、ブルーライトに効果を示さなかったニコチン酸アミドは、UVよるDHICA吸光度の増加に対しては、2薬剤と同程度の効果を示した。このことより、光源の違いにより、薬剤が異なる抗酸化効果を示す可能性が示された。また、本試験系を用いることで、ブルーライトによる即時黒化に特異的な抑制原料をスクリーニングすることが可能であることが示された。
【0071】
<実施例3>
UV照射(約0.4 J/cm)後にブルーライト照射(約36.8 J/cm)した場合のDHICA吸光度の変化
【0072】
UVAランプ(TOSHIBA MEDICAL SUPPLY社、Cat#.TOREX FL20SBL/DMR)を用いてUVAを照射(約0.4 J/cm)し、次いでブルーライト照射(約36.8 J/cm)を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で実験を行った。なお、UVA照射の直後にもDHICA吸光度を測定した。
【0073】
[結果]
UVA照射による即時黒化が抑制されていたものであっても、2薬剤(L-アスコルビン酸、グルタチオン)以外は、さらにブルーライト照射を行った場合のDHICA吸光度の増加の抑制効果を示さなかった。
【0074】
一方、L-アスコルビン酸、グルタチオンは、UVA照射のみならず、続いて照射したブルーライトによる即時黒化も抑制し得ることが示された。
【0075】
<実施例4>
ラジカル消去率の評価
ラジカル消去率を評価することによって酸化抑制効果を測定する方法が知られている。よって、本発明者らは上記候補物質についてDPPH Antioxidant Assay Kit(DOJINDO LABORATORIES)を用いて以下の手順により、各候補成分の濃度ごとの酸化抑制効果を調べた。
【0076】
[DPPH working solutionの調製]
(1)DPPH Reagent 1本に1mlのエタノール(99.5 %)を加え、超音波で60秒処理した。
(2)調整した溶液全量を10 mlメスフラスコに移し、チューブに再度1 mlのエタノールを加え、超音波で60 秒処理した。
(3)溶液を移した10 mlメスフラスコにエタノールを加え、10 mlに定容した。
【0077】
[ラジカル消去率の測定]
実施例1で使用した候補物質について、1 %(w/w)、0.2 %(w/w)、または0.04 %(w/w)のサンプル溶液を準備し、以下の手順で評価した。
【0078】
以下に概説する製造元のプロトコルに従い、表2のようなBlank1、Blank2、Sample、Sample Blank溶液を作成し、ラジカル消去率を算出した。なお、Blank1はサンプルの全発色、Blank2はサンプル溶媒ブランクを示す。サンプルの着色の影響を除くため、サンプルブランクを使用してサンプルの値から差し引いた。
【表2】
【0079】
(1)96 wellプレートに各希釈サンプル20 μlを入れた。
(2)Blank1、Blank2に水を20 μlずつ入れた。
(3)各wellにAssay Buffer 80 μlを加えた。
(4)Blank2およびSample blankにエタノール100 μlを加え、ピペッティングでよく混ぜた。
(5)sampleおよびBlank1にDPPH working solution 100 μlを加え、ピペッティングでよく混ぜた。
(6)プレートを25 ℃、暗所で30 分間インキュベートした。
(7)プレートリーダーで517 nmの吸光度を測定(Spectramax 250、Molecular Devices社製)した。
【0080】
(8)以下の式により、Sampleのラジカル消去率(%)を算出した。
【0081】
ラジカル消去率(%)=(ACS-AS)ACS × 100
[式中、ACS=Blank1-Blank2、AS=sample-sample blank]
【0082】
結果を図3に示す。ブルーライトに効果を示した2薬剤(L-アスコルビン酸、グルタチオン)は、高いDPPHラジカル補足能を示した。一方、ブルーライトに効果を示さなかったエチルビタミンCは、2薬剤と同程度の高いDPPHラジカル補足能を示した。
【0083】
DHICA試験系の結果は、DPPHラジカル補足試験からも推察できない結果であり、DHICA試験系を用いることでブルーライトによる即時黒化に特異的な抑制原料をスクリーニングすることが可能と考えられる。
【0084】
以上の結果により、メラニンモノマーの吸光度を指標とすることにより、ブルーライト照射により誘発される即時黒化を効率的に抑制する物質を含むブルーライト即時黒化抑制剤の探索が可能であることがわかった。また、アスコルビン酸、グルタチオン及び薬学的に許容されるその塩からなる群から1又は複数選択される物質には、ブルーライト照射により特異的に誘発されるメラニンモノマーの即時黒化を抑制する能力があることもわかった。これらの物質は、ブルーライトにより誘発される皮膚における即時黒化を予防・改善すること等が期待される。
図1
図2
図3