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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093940
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】導電性組成物
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20230628BHJP
   H01B 1/16 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
H01B1/22 A
H01B1/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209089
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】久保田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】田上 安宣
【テーマコード(参考)】
5G301
【Fターム(参考)】
5G301DA06
5G301DA12
5G301DA23
5G301DA24
5G301DA34
5G301DA35
5G301DA36
5G301DA37
5G301DA38
5G301DA39
5G301DA40
5G301DA42
5G301DD01
5G301DE01
(57)【要約】
【課題】保管時に粘度特性の変化が生じにくく、無機基材との密着性および、はんだ濡れ性が良好な金属膜を形成することが可能な導電性組成物を提供すること。
【解決手段】(a)ガラスフリット、(b)炭素数が7~18である脂環式アルコール、(c)導電性粒子を含有し、成分(a)~(c)の合計100質量%に対して、成分(a)を0.5~20質量%、成分(b)を0.5~15質量%、成分(c)を65~99質量%含有する導電性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ガラスフリット、
(b)炭素数が7~18である脂環式アルコール、
(c)導電性粒子を含有し、
成分(a)~(c)の合計100質量%に対して、成分(a)を0.5~20質量%、成分(b)を0.5~15質量%、成分(c)を65~99質量%含有する導電性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化学物質の使用量、排出量削減の観点から、電子部品における電極形成方法において、多量の薬液を使用し多くの工程が必要な従来のめっき法から、スクリーン印刷機などを用いた印刷法への置き換えが進められている。
【0003】
その中で、汎用的な印刷法であるスクリーン印刷を用いた電極形成技術の開発が盛んに行なわれており、その材料としてスクリーン印刷に適した導電性ペーストの開発が進められている。
【0004】
電極形成用導電性ペーストは、導電性ペーストを加熱することで得られる焼結膜の特性が、従来のめっきによって形成される金属膜と同等であることが要求される。特に各部材の接合に関する特性は重要視されており、電極形成の土台となるセラミックスやフェライトなどの各種無機基材と導電性ペーストからなる焼結膜の密着性や、電極形成後に他の部材と接合するために用いるはんだの濡れ性は、各部材間の密着性に影響を与えるため厳しく管理される。
【0005】
例えば、特許文献1には、セラミックスやフェライトなどの無機基板との密着性に優れた焼結膜を得ることが可能な導電性ペーストが開示されており、特許文献2には、焼結膜のはんだ濡れ性が良好な導電性ペーストが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-86090号公報
【特許文献2】特開2006-128005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1、2に開示されている導電性ペーストは、無機基材との密着性やはんだ濡れ性に優れるものの、導電性ペーストの経時的な増粘によるチクソ比の増加や、加熱炉内に温度ムラが生じた場合に樹脂成分が焼結膜中に残存することによるはんだ濡れ性の低下が生じやすい。そのため、印刷膜厚のバラつきによる歩留まりの低下や、はんだの濡れ性不良による接合強度の低下が生じる恐れがある。
【0008】
本発明の目的は、保管時に粘度特性の変化が生じにくく、無機基材との密着性および、はんだ濡れ性が良好な焼結膜を形成することが可能な導電性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、導電性粒子とガラスフリットに加えて、炭素数が7~18である脂環式アルコールを所定の比率で配合することにより、上記課題を解決できる導電性組成物を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、(a)ガラスフリット、(b)炭素数が7~18である脂環式アルコール、(c)導電性粒子を含有し、成分(a)~(c)の合計100質量%に対して、成分(a)を0.5~20質量%、成分(b)を0.5~15質量%、成分(c)を65~99質量%含有する導電性組成物に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の導電性組成物は、保管時に粘度特性の変化が生じにくく、また、その導電性組成物の焼結膜はセラミックスやフェライトなどの無機基材との密着性が良好であり、優れたはんだ濡れ性を示すため、電極形成用途に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0013】
なお、本明細書において記号「~」を用いて規定された数値範囲は「~」の両端(上限および下限)の数値を含むものとする。例えば「2~5」は2以上かつ5以下を表す。
【0014】
更に、濃度または量を特定した場合、任意のより高い方の濃度または量と、任意のより低い方の濃度または量とを関連づけることができる。例えば「2~10質量%」および「好ましくは4~8質量%」の記載がある場合、「2~4質量%」、「2~8質量%」、「4~10質量%」および「8~10質量%」の記載も包含される。
【0015】
本発明の実施形態に係る導電性組成物は、(a)ガラスフリット、(b)炭素数が7~18である脂環式アルコール、(c)導電性粒子を含有し、成分(a)~(c)の合計100質量%に対して、成分(a)を0.5~20質量%、成分(b)を0.5~15質量%、成分(c)を65~99質量%含有する。以下、各成分について説明する。
【0016】
〔成分(a):ガラスフリット〕
成分(a)はガラスフリットである。ガラスフリットの成分としては、例えば、P(酸化リン)、Al(酸化アルミニウム)、Bi(酸化ビスマス)、B(酸化ホウ素)、ZnO(酸化亜鉛)、SiO(酸化ケイ素)、ZrO(酸化ジルコニウム)、SnO(酸化スズ)、PbO(酸化鉛)、アルカリ土類金属の酸化物(例えば、BaO(酸化バリウム)、CaO(酸化カルシウム)、SrO(酸化ストロンチウム)など)、アルカリ金属の酸化物(例えば、LiO(酸化リチウム)、KO(酸化カリウム)、NaO(酸化ナトリウム)など)などが挙げられる。
【0017】
成分(a)はこれらの成分から選ばれる一種を単独で使用し、または二種以上を併用することもできる。ガラスフリット中に含まれる各成分の含有比率は特に限定されず、任意の比率で構成されたものを使用することができる。
【0018】
ガラスフリットの平均粒径(D50)については、特に限定されないが、成分(a)を含有する導電性組成物をスクリーン印刷などの各種印刷方法において良好に印刷可能とするためには、ガラスフリットの平均粒径(D50)を制御することが好ましい。具体的には、ガラスフリットの平均粒径(D50)は、100nm~50μmであることが好ましく、1μm~30μmであることがより好ましい。
【0019】
なお、ガラスフリットの平均粒径(D50)は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、マイクロトラックMT3000II)により測定することができる。
【0020】
成分(a)は、低温焼結性向上の観点から、P(酸化リン)、Al(酸化アルミニウム)、Bi(酸化ビスマス)、B(酸化ホウ素)、ZnO(酸化亜鉛)、SnO(酸化スズ)、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ金属の酸化物のいずれか1種以上を含むことが好ましく、P(酸化リン)を含むことがより好ましい。
【0021】
成分(a)の含有量は、成分(a)~(c)の合計100質量%に対して、0.5~20質量%であり、好ましくは1~14質量%である。成分(a)の含有量が少なすぎると、導電性組成物から得られる焼結膜と無機基板の密着性が低下することがある。また成分(a)の含有量が多すぎると、導電性組成物から得られる焼結膜の導電性が低下することがある。
【0022】
〔成分(b):脂環式アルコール〕
成分(b)は、炭素数が7~18である脂環式アルコールである。このような脂環式アルコールとしては、例えば、1-アダマンタノール(炭素数:10、環の数:3)、2-アダマンタノール(炭素数:10、環の数:3)、1,3-アダマンタンジオール(炭素数:10、環の数:3)、イソボルニルシクロヘキサノール(炭素数:16、環の数:3)、4-イソボルニル-2-メチルシクロヘキサン-1-オール(炭素数:17、環の数:3)ボルネオール(炭素数:10、環の数:2)、イソボルネオール(炭素数:10、環の数:2)、ノルボルネオール(炭素数:7、環の数:2)、1,3,3-トリメチル-2-ノルボルネオール(炭素数:10、環の数:2)、トリシクロデカンジメタノール(炭素数:12、環の数:3)、トリシクロデカンジエタノール(炭素数:14、環の数:3)、トリシクロデカンジプロパノール(炭素数:16、環の数:3)、トリシクロデカンジブタノール(炭素数:18、環の数:3)、テトラシクロデカン-2-オール(炭素数:12、環の数:4)などが挙げられる。
【0023】
成分(b)はこれらの成分から選ばれる一種を単独で使用し、または二種以上を併用することもできる。二種以上を併用する場合の各成分の含有比率は特に限定されず、任意の比率で構成されたものを使用することができる。
【0024】
成分(b)は、炭素数8~18であることが好ましく、炭素数12~16のものがより好ましい。また、成分(b)に含まれる脂環式アルコールの環の数は、2~4であることが好ましく、2~3であることがより好ましい。
【0025】
炭素数および脂環式アルコールの環の数の観点から、イソボルニルシクロヘキサノール、トリシクロデカンジメタノールから選択される化合物を用いることが好ましく、イソボルニルシクロヘキサノールがより好ましい。
【0026】
成分(b)の含有量は、成分(a)~(c)の合計100質量%に対して、0.5~15質量%であり、好ましくは2~10質量%である。成分(b)の含有量が少なすぎると、保管中にチクソ比の増加が生じやすくなることがある。また成分(b)の含有量が多すぎると、導電性組成物の導電性が低下することがある。
【0027】
〔成分(c):導電性粒子〕
成分(c)は導電性粒子であり、例えば、銅粒子などの無機導電性粒子を用いることができる。銅粒子は、銅のみからなっていてもよいが、銀や白金などの銅以外の金属、金属酸化物、金属硫化物を更に含有していてもよい。銅粒子が銅以外の金属、金属酸化物、金属硫化物を更に含有する場合、銅粒子中の銅の質量比率は50質量%以上とすることが好ましい。また、銅粒子は表面層や突起物が形成された形状であってもよい。
【0028】
導電性粒子は市販のものをそのまま用いても良いが、耐酸化性の向上などを目的に、表面を被覆した表面被覆導電性粒子を用いることが好ましい。中でも、アミン化合物により表面を被覆した表面被覆導電性粒子を用いることが好ましく、下記式(1)で表されるアミン化合物により表面が被覆された表面被覆導電性粒子を用いることがより好ましい。
【0029】
なお、表面被覆導電性粒子は一種を単独で使用してもよく、表面被覆導電性粒子と市販の導電性粒子を併用することもできる。
【化1】
【0030】
(式(1)中、mは0~3の整数、nは0~2の整数であり、n=0のとき、mは0~3の何れかであり、n=1又はn=2のとき、mは1~3の何れかである。)
【0031】
上記式(1)で表されるアミン化合物などのアミン化合物で表面を被覆した表面被覆導電性粒子は、より良好な耐酸化性を得る観点から、脂肪族モノカルボン酸でさらに被覆された表面被覆導電性粒子とすることが好ましい。
【0032】
これにより導電性粒子表面は、アミン化合物により形成された第1被覆層と、脂肪族モノカルボン酸により形成された第2被覆層とで被覆される。好ましくは、第1被覆層は導電性粒子表面に形成され、第2被覆層は第1被覆層上に形成される。
【0033】
第2被覆層を形成する脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数8~24の脂肪族モノカルボン酸が好ましい。該脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、直鎖飽和脂肪族モノカルボン酸、直鎖不飽和脂肪族モノカルボン酸、分岐飽和脂肪族モノカルボン酸、分岐不飽和脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。
【0034】
炭素数8~24の直鎖飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸などが挙げられる。炭素数8~24の直鎖不飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸などが挙げられる。炭素数8~24の分岐飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、2-エチルヘキサン酸などが挙げられる。
【0035】
上記脂肪族モノカルボン酸として、上記化合物から選ばれる一種を単独で使用し、または二種以上を併用することもできる。
【0036】
表面被覆導電性粒子を製造する方法は特に限定されない。アミン化合物で表面を被覆した表面被覆導電性粒子を得る方法としては、例えば、導電性粒子を例えば塩化アンモニウム水溶液などにより洗浄した後、該洗浄後の導電性粒子をアミン化合物の溶液中に添加し、必要に応じて加熱する方法、導電性粒子を例えば塩化アンモニウムとアミン化合物を含む溶液に添加し、必要に応じて加熱する方法などが挙げられる。
【0037】
アミン化合物により形成された第1被覆層と、脂肪族モノカルボン酸により形成された第2被覆層とで被覆された表面被覆導電性粒子の製造方法としては、例えば、アミン化合物で表面を被覆した表面被覆導電性粒子を、必要に応じてアルコール類などの洗浄溶剤で洗浄後、脂肪族モノカルボン酸の溶液に添加する方法が挙げられる。なお、脂肪族モノカルボン酸の溶液に添加した後に、必要に応じて、加熱してもよい。
【0038】
導電性粒子の平均粒径(D50)については、特に限定されないが、成分(c)としての導電性粒子を含有する導電性組成物をスクリーン印刷などの各種印刷方法において良好に印刷可能とするためには、導電性粒子の平均粒径(D50)を制御することが好ましい。具体的には、導電性粒子の平均粒径(D50)は、5nm~20μmであることが好ましく、10nm~10μmであることがより好ましい。
【0039】
なお、導電性粒子の平均粒径(D50)は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、マイクロトラックMT3000II)により測定することができる。
【0040】
また、導電性粒子のBET比表面積は0.05~400m/gであることが好ましく、0.1~200m/gであることがより好ましい。
【0041】
なお、導電性粒子のBET比表面積は、比表面積測定装置(ユアサアイオニクス株式会社製、モノソーブ)を用いてBET1点法により測定することができる。
【0042】
導電性粒子の形状やアスペクト比(粒子の長径と短径との比)に特に制限はなく、球状、多面体状、扁平状、板状、フレーク状、薄片状、棒状、樹枝状、ファイバー状等の各種形状のものを用いることができる。導電性粒子は、構成成分、平均粒径、BET比表面積、形状、アスペクト比等の異なるもの中から選ばれる一種を単独で使用し、または二種以上を併用することもできる。二種以上併用する場合の各成分の含有比率は特に限定されず、各成分の特性などを考慮して適宜決定することができる。
【0043】
成分(c)の含有量は、成分(a)~(c)の合計100質量%に対して、65~99質量%である。成分(c)の含有量の下限は、好ましくは70質量%であり、より好ましくは75質量%である。
【0044】
〔その他の成分〕
導電性組成物は、上記の成分(a)~(c)以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、溶剤、導電性向上剤、酸化防止剤、滑剤、レベリング剤、分散剤、硬化剤、硬化促進剤、粘度調整剤、発泡剤、消泡剤等の各種添加剤を含有していてもよい。これらの各種添加剤を導電性組成物に添加する方法やタイミングは特に限定されず、各成分の特性などを考慮して、適宜決定することができる。また、導電性組成物は、原料成分および製造過程の装置等から不可避的に混入し得る不純物を含んでいてもよい。尚、これらの成分の何れかを含む場合は、合計で、(a)~(c)の合計含有量100質量部に対して、0質量部より多く60質量部以下とすることができ、30質量部以下が好ましい。
【0045】
(溶剤)
導電性組成物は、製造時における混練作業性の改善、塗工性の改善、粘度の調節を目的に、溶剤を含有していてもよい。
【0046】
溶剤の種類としては、特に制限はなく、用途等に応じて、様々な溶剤を用いることができる。例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのエーテル系アルコール類;プロピレングリコール、1,4-ブタンジオールなどの非エーテル系アルコール類;シクロヘキサノールアセテート、メチルメトキシプロピオネート、エチルエトキシプロピオネート、1,6-ヘキサンジオールアセテート、炭酸プロピレンなどのエステル類;イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン類;テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピニルアセテートなどのテルペン類;オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカンなどのその他の炭化水素類等が挙げられるが、これらに限定されない。溶剤は、一種を単独で使用し、または二種以上を混合して使用することもできる。二種以上を混合する場合の混合比率は特に制限されない。
【0047】
溶剤の種類としては、上記エーテル系アルコール類、上記エステル類および上記テルペン類から選ばれる一種または二種以上を用いることが好ましく、エーテル系アルコール類、テルペン類から選ばれる一種または二種以上を用いることがより好ましく、テルペン類から選ばれる一種または二種以上を用いることが特に好ましい。これらの溶剤を二種以上混合する場合の混合比率は特に制限されない。
【0048】
導電性組成物が溶剤を含有する場合、溶剤の含有量は、成分(a)~(c)の合計含有量100質量部に対して、好ましくは1~20質量部であり、より好ましくは2~15質量部である。
【0049】
(導電性向上剤)
導電性組成物は、加熱して得られる焼結膜の導電性向上を目的に、導電性向上剤を含有してもよい。導電性向上剤の種類としては、特に制限はなく、用途等に応じて、様々な導電性向上剤を用いることができる。例えば、ビニルトリメトキシシラン(品名:KBM-1003、信越化学工業株式会社製)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(品名:KBM-303、信越化学工業株式会社製)、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(品名:KBM-403、信越化学工業株式会社製)、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(品名:KBM-603、信越化学工業株式会社製)、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(品名:KBM-903、信越化学工業株式会社製)、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(品名:KBM-573、信越化学工業株式会社製)、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(品名:KBM-803、信越化学工業株式会社製)などのシランアルコキシド化合物、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート(品名:プレンアクトTTS、味の素ファインテクノ株式会社製)、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート(品名:プレンアクト9S、味の素ファインテクノ株式会社製)、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート(品名:プレンアクト38S、味の素ファインテクノ株式会社製)、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート(品名:プレンアクト41B、味の素ファインテクノ株式会社製)、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート(品名:プレンアクト46B、味の素ファインテクノ株式会社製)、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート(品名:プレンアクト55、味の素ファインテクノ株式会社製)、イソプロピルトリ(N-アミドエチル・アミノエチル)チタネート(品名:プレンアクト44、味の素ファインテクノ株式会社製)などのチタンアルコキシド化合物が挙げられるが、これらに限定されない。導電性向上剤は、一種を単独で使用し、または二種以上を混合して使用することもできる。二種以上を混合する場合の混合比率は特に制限されない。
【0050】
導電性向上剤の種類としては、上記チタンアルコキシド化合物から選ばれる一種または二種以上を用いることが好ましく、更に炭素数2~8のアルコキシ基を有するチタンアルコキシド化合物から選ばれる一種または二種以上を用いることがより好ましい。これらの導電性向上剤を二種以上混合する場合の混合比率は特に制限されない。
【0051】
導電性組成物が導電性向上剤を含有する場合、導電性向上剤の含有量は、成分(a)~(c)の合計含有量100質量部に対して、好ましくは0.5~15質量部であり、より好ましくは1~10質量部である。
【0052】
(酸化防止剤)
導電性組成物は、保管中に生じる各成分の性能維持を目的に、酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤の種類としては、特に制限はなく、用途等に応じて、様々な酸化防止剤を用いることができる。例えば、2,2-ビピリジル、1,10-フェナントロリン等の含窒素複素環化合物類、N,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミン、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-フェニレンジアミン等のシッフ塩基類、1,2-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、1,4-フェニレンジアミン、2,5-ジメチル-1,4-フェニレンジアミン、2,3,5,6-テトラメチル1,4-フェニレンジアミン、N,N-ジメチル-1,4-フェニレンジアミン、N,N,N’N’-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-1,4-フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン類、p-メトキシフェノール、ハイドロキノン、tert-ブチルハイドロキノン、ジブチルヒドロキシトルエン、カテコール、4-tert-ブチルカテコール、ピロガロール、オイゲノール、没食子酸プロピル等のフェノール類等、L-アスコルビン酸、6-O-パルミトイル-L-アスコルビン酸、6-O-ステアロイル-L-アスコルビン酸、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル等のアスコルビン酸類等が挙げられるが、これらに限定されない。酸化防止剤は、一種を単独で使用し、または二種以上を混合して使用することもできる。二種以上を混合する場合の混合比率は特に制限されない。
【0053】
酸化防止剤の種類としては、上記含窒素複素環化合物類の2,2-ビピリジル、上記シッフ塩基類のN,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミン、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン、上記芳香族ジアミン類の1,2-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、1,4-フェニレンジアミン、上記フェノール類のp-メトキシフェノール、ハイドロキノン、tert-ブチルハイドロキノン、及び、上記アスコルビン酸類の6-O-パルミトイル-L-アスコルビン酸、6-O-ステアロイル-L-アスコルビン酸から選ばれる一種または二種以上を用いることが好ましい。これらの酸化防止剤を二種以上混合する場合の混合比率も特に制限されない。
【0054】
導電性組成物が酸化防止剤を含有する場合、酸化防止剤の含有量は、成分(a)~(c)の合計含有量100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部であり、より好ましくは0.1~5質量部である。
【0055】
(滑剤)
導電性組成物は、該導電性組成物中での成分(c)の導電性粒子の分散性調節を目的に、滑剤を適宜添加することができる。滑剤の種類およびその混合比率は特に制限されず、用途に応じて一種を単独で、または二種以上を混合して用いることができる。
【0056】
滑剤の種類としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸などの脂肪酸類;ナトリウム、カリウム、バリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、スズなどの金属と前記脂肪酸類とから塩を形成した脂肪酸金属塩類;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;ステアリン酸ブチルなどの脂肪酸エステル類;パラフィンワックス、流動パラフィン等のワックス類;エチレングリコール、ステアリルアルコール等のアルコール類;シリコーンオイル等のポリシロキサン類;フッ素系オイルなどのフッ素化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
滑剤の種類としては、脂肪酸類および脂肪酸金属塩類から選ばれる一種または二種以上を用いることが好ましく、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸及びステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムから選ばれる一種または二種以上を用いることがより好ましい。
【0058】
導電性組成物が滑剤を含有する場合、滑剤の含有量は、成分(a)~(c)の合計含有量100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部であり、より好ましくは0.1~5質量部である。
【0059】
(分散剤)
導電性組成物は、該導電性組成物中での成分(c)の導電性粒子の分散性調節を目的に、分散剤を適宜添加することができる。分散剤の種類およびその混合比率は特に制限されず、用途に応じて一種を単独で、または二種以上を混合して用いることができる。
【0060】
分散剤の種類としては、例えば、ラウロイルザルコシン、ミリストイルザルコシン、パルミトイルザルコシン、ステアロイルザルコシン、オレオイルザルコシンなどのザルコシン化合物類;フィラノールPA-075F、フィラノールPA-085C、フィラノールPA-107P、エスリームAD-3172M、エスリームAD-374M、エスリームAD-508E、(以上、日油株式会社製)などの高分子アミン系化合物類;マリアリムAKM-0531、マリアリムAFB-1521、マリアリムAAB-0851、マリアリムAWS-0851、マリアリムSC-0505K、マリアリムSC-1015F、マリアリムSC-0708A(以上、日油株式会社製)などの高分子ポリカルボン酸系化合物類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
分散剤の種類としては、ザルコシン類から選ばれる一種または二類以上を用いることが好ましく、ラウロイルザルコシン及びオレオイルザルコシンから選ばれる一種または二種以上を用いることがより好ましい。
【0062】
導電性組成物が分散剤を含有する場合、分散剤の含有量は、成分(a)~(c)の合計含有量100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部であり、より好ましくは0.2~5質量部である。
【0063】
以上のような導電性組成物は、前述の各成分を定法に従って混合、混練することで得ることができる。また、導電性組成物を用いて定法に従って形成した塗膜を加熱することで焼結膜(金属膜)が得られる。導電性組成物は保管時に粘度特性の変化が生じにくく、その焼結膜は、例えばスクリーン印刷などの印刷にて形成された塗膜(例えば、電極や配線パターンなどの形成用)であっても焼結後の膜厚のバラつきが生じにくく、例えば無機基材との密着性が良好で、はんだ濡れ性に優れる。そのため、導電性組成物は、例えば電極性形成材料として好適である。
【実施例0064】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明の実施形態をさらに具体的に説明する。
【0065】
実施例および比較例で用いた各成分を下記に示す。なお、各成分の物性は、本明細書に記載の方法により測定された値である。
【0066】
〔成分(a):ガラスフリット〕
・P-Al-RO(品名:VY0144、Rはアルカリ金属原子、タカラスタンダード株式会社製)
・P-ZnO-RO(品名:CY0046、Rはアルカリ土類金属原子、タカラスタンダード株式会社製)
・B-Al-ZnO(品名:CY0113、タカラスタンダード株式会社製)
・B-Bi(品名:ASF-1096、AGC株式会社製)
・SnO-P(品名:KP312、AGC株式会社製)
・B-ZnO-RO(品名:EY0072、Rはアルカリ土類金属原子、タカラスタンダード株式会社製)
【0067】
〔成分(b):脂環式アルコール〕
(b1):イソボルニルシクロヘキサノール(品名:テルソルブMTPH、日本テルペン株式会社製、炭素数:16、環の数:3)
(b2):トリシクロデカンジメタノール(品名:TCDDM、オクセア社製、炭素数:12、環の数:3)
【0068】
〔成分(b’):セルロース誘導体〕
・エチルセルロース
【0069】
〔成分(c):導電性粒子〕
・銅粒子(1):球状銅粒子[表面被覆銅粒子(1)、下記合成例1に製造方法を示す。]
・銅粒子(2):板状銅粒子[表面被覆銅粒子(2)、下記合成例2に製造方法を示す。]
・銅粒子(3):球状銅粒子[1200Y、三井金属鉱業株式会社、粒径(D50):2μm、BET比表面積:0.40m/g、形状:球状]
【0070】
〔その他の成分〕
【0071】
(導電性向上剤)
・テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート(品名:プレンアクト46B、味の素ファインテクノ株式会社製)
・テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート(品名:プレンアクト41B、味の素ファインテクノ株式会社製)
【0072】
(溶剤)
・テルピネオール
【0073】
〔合成例1〕
(銅粒子(1):表面被覆銅粒子(1)の製造)
水100gに対し塩化アンモニウム5gを溶解した塩化アンモニウム水溶液を調製した。銅粒子a[三井金属鉱業(株)製「1200Y」;粒径(D50)2μm、BET比表面積0.40m/g、形状:球状]50gを、塩化アンモニウム水溶液に添加し、窒素バブリング下、30℃で60分間攪拌した。撹拌は、メカニカルスターラーを使用し、回転数150rpmで実施した。以下、撹拌は同様の撹拌装置を使用して同じ回転数で行った。撹拌終了後、5C濾紙の桐山ロートを用いて減圧濾過にて銅粒子を濾別し、つづいて、桐山ロート上で150gの水により銅粒子の洗浄を2回行った。
【0074】
洗浄した銅粒子を、40質量%のジエチレントリアミン水溶液250gに添加し、窒素バブリンクをしながら60℃下で1時間加熱撹拌を行った。
【0075】
撹拌を止めて5分間静置した後、上澄み液約200gを抜き取って除去した。つづいて、沈殿物に洗浄用溶剤としてイソプロパノール200gを添加し、30℃で3分間撹拌を行った。撹拌を止めて5分間静置した後、上澄み液約200gを抜き取って除去し、その後、2質量%のラウリン酸イソプロパノール溶液250gを添加した後、30℃で30分間攪拌した。
【0076】
撹拌終了後、5C濾紙の桐山ロートを用いて減圧濾過にて銅粒子を濾別した。得られた銅粒子を25℃で3時間減圧乾燥することにより、表面被覆銅粒子(1)(銅粒子(1))を得た。
【0077】
〔合成例2〕
(銅粒子(2):表面被覆銅粒子(2)の製造)
銅粒子aを銅粒子b[三井金属鉱業(株)製「1400YP」;粒径(D50)6μm、BET比表面積0.60m/g、形状:板状]に変更した以外は合成例1と同様にして、表面被覆銅粒子(2)(銅粒子(2))を得た。
【0078】
〔実施例1〕
(導電性組成物の製造)
成分(a)としてP-Al-ROを10.0g、成分(b)としてイソボルニルシクロヘキサノールを5.0g、成分(c)として表面被覆銅粒子(銅粒子(1))85gを混合した。次に、プラネタリーミキサー[ARV-310、株式会社シンキー製]を用いて、室温下、回転数2000rpmで60秒間撹拌し、1次混練を行った。
【0079】
次に、3本ロールミル[EXAKT-M80S、(株)永瀬スクリーン印刷研究所製]を用いて、室温、ロール間距離5μmの条件下で5回通すことで、2次混練を行った。2次混練で得られた混練物に、テルピネオール(Ter)を5.0g加え、プラネタリーミキサーを用いて、室温、真空条件下、回転数2000rpmで60秒間撹拌し脱泡混練することにより、導電性組成物を製造した。得られた導電性組成物を用いて、後述する各種の評価を行った。導電性組成物の各成分の配合割合を表1に示す。
【0080】
〔実施例2~14、比較例1~3〕
各成分の配合割合を表1に示すとおりとした以外は、実施例1と同様にして導電性組成物を製造し、後述する各種の評価を行った。
【0081】
〔評価〕
〈導電性の評価〉
(焼結膜の形成)
幅×長さ×厚み=1mm×30mm×50μmのメタルマスクを用いて、50mm×50mmのガラス基板上に、各実施例及び比較例で得られた導電性組成物を塗布した。イナートガスオーブンを用いて、導電性組成物を塗布したガラス基板を窒素雰囲気下500℃、60分間加熱することにより焼結膜を作製した。
【0082】
(抵抗値の評価方法)
上記の方法で得られた焼結膜の導電性を下記の抵抗値測定により評価した。形成したパターンの両端に測定プローブを押し当て、デジタルマルチメータ[PC7000、三和電気計器株式会社製]を用いて焼結膜の抵抗値を測定し、下記の評価基準により判定した。本試験では、焼結膜の抵抗値が低いほど電流が流れやすく、導電性が優れていることを示す。
◎: 抵抗値が1.0Ω未満である。
○: 抵抗値が1.0Ω以上、10.0Ω未満である。
△: 抵抗値が10.0Ω以上、50.0Ω未満である。
×: 抵抗値が50.0Ω以上である。
【0083】
〈粘度特性の評価〉
(チクソ比の評価方法)
E型粘度計[TVE-25H、設定温度:25℃、コーンローター:3°×R7.7、東機産業株式会社製]を用いて、各実施例及び比較例で得られた導電性組成物の初期(製造直後)と5℃で30日間保管後の粘度を所定条件で測定し、以下の数式(1)を用いてチクソ比を算出した。
【0084】
【数1】
【0085】
次に、以下の数式(2)を用いてチクソ比の変化率(チクソ比変化率)を算出した。
【0086】
【数2】
【0087】
本試験では、チクソ比変化率の値が100%に近いほど、連続印刷時に導電性組成物の粘度変化が生じにくく、配線パターンが安定して印刷可能であることを示す。評価基準は下記のとおりである。
◎: チクソ比変化率が120%未満である。
○: チクソ比変化率が120%以上、150%未満である。
△: チクソ比変化率が150%以上、200%未満である。
×: チクソ比変化率が200%以上である。
【0088】
〈はんだ濡れ性の評価方法〉
幅×長さ×厚み=5mm×5mm×50μmのメタルマスクを用いて、10mm×10mmのアルミナ基板上に、各実施例及び比較例で得られた導電性組成物を塗布した。イナートガスオーブンを用いて、導電性組成物を塗布したアルミナ基板を窒素雰囲気下500℃、60分間加熱することにより焼結膜を作製した。
【0089】
次に、アルミナ基板上に形成した焼結膜の表面中央部に、幅×長さ×厚み=2mm×2mm×200μmのメタルマスクを用いて、はんだペースト(品名:TLF-204-171A、はんだ組成:Sn-3.0Ag-0.5Cu、株式会社タムラ製作所製)を塗布した。はんだペーストを塗布した焼結膜付きアルミナ基板を窒素雰囲気下280℃、3分間加熱処理することにより焼結膜表面で、はんだペーストを溶融させ、その後常温になるまで放冷した。
【0090】
次に、接触角計(品名:DMs-401、協和界面科学株式会社)を用いて、加熱処理を経た後のはんだペースト(はんだ合金)の表面の接触角を測定した。
【0091】
本試験では、接触角の測定値が小さいほど、導電性組成物を用いて得られる焼結膜のはんだ濡れ性が優れていることを示す。評価基準は下記のとおりである。
◎: 接触角が20°未満である。
○: 接触角が20°以上、40°未満である。
△: 接触角が40°以上、60°未満である。
×: 接触角が60°以上である。
【0092】
〈密着強度の評価方法〉
幅×長さ×厚み=2mm×2mm×50μmのメタルマスクを用いて、5mm×5mmの基材(アルミナ基板)表面の中央部に、各実施例及び比較例で得られた導電性組成物を塗布した。イナートガスオーブンを用いて、導電性組成物を塗布したアルミナ基板を窒素雰囲気下500℃、60分間加熱することにより焼結膜を作製した。
【0093】
次に、アルミナ基板上に形成した焼結膜表面に、幅×長さ×厚み=2mm×2mm×200μmのメタルマスクを用いて、はんだペースト(品名:TLF-204-171A、はんだ組成:Sn-3.0Ag-0.5Cu、株式会社タムラ製作所製)を塗布した。はんだペーストを塗布した焼結膜付きアルミナ基板を窒素雰囲気下280℃、3分間加熱処理することにより焼結膜表面で、はんだペーストを溶融させ、はんだ合金とし、その後常温になるまで放冷した。
【0094】
次に、幅×長さ×厚み=10mm×10mm×3mmの両面銅張積層板の片面にフラックス(品名:FS-200、白光株式会社製)を塗布し、アルミナ基板/焼結膜/はんだ合金からなる積層部品のはんだ合金の表面を、両面銅張積層板のフラックスを塗布した面に固定した。
【0095】
両面銅張積層板のフラックス塗布面に、アルミナ基板/焼結膜/はんだ合金からなる積層部品を固定した状態で窒素雰囲気下280℃、3分間加熱し、はんだ合金を再溶融させることで、両面銅張積層板とアルミナ基板/焼結膜/はんだ合金からなる積層部品が接合された密着強度測定用試験片を得た。
【0096】
次に、密着強度測定用試験片のアルミナ基板面の中央にエポキシ接着剤付きスタッドピン(アルミ製、直径2.7mm、長さ12.7mm、Quad Group社製)を固定し、窒素雰囲気下150℃、60分間加熱することによりアルミナ基板面にスタッドピンを取り付けた。
【0097】
次に、オートグラフ(品名:AG-X、株式会社島津製作所製)を用いて、垂直引張試験(試験温度:23℃、試験速度:1mm/分)を行ない、アルミナ基板と焼結膜の密着強度を測定した。
【0098】
本試験では、密着強度の測定値が大きいほど、導電性組成物を用いて得られる焼結膜とアルミナ基板の密着性が優れていることを示す。評価基準は下記のとおりである。
◎: 密着強度が30N以上である。
○: 密着強度が15N以上、30N未満である。
△: 密着強度が5N以上、15N未満である。
×: 密着強度が5N未満である。
【0099】
以上の評価結果を表2に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
表2より以下のことが分かる。
【0103】
実施例1~14では、焼結膜の抵抗値がいずれも10.0Ω未満であり、5℃、30日間保管した場合の導電性組成物のチクソ比変化率が150%未満であり、はんだ濡れ性試験後のはんだの接触角が40°未満であり、導電性組成物を用いて得られる焼結膜とアルミナ基板の密着強度が15N以上である。
【0104】
これに対して、成分(a)を配合せずに導電性組成物を調製した比較例1では、密着強度が5N未満と低かった。また、成分(b)を配合せずに導電性組成物を調製した比較例2では、チクソ比変化率が150%以上と高かった。また成分(b)に代えてエチルセルロースを用いて導電性組成物を調製した比較例3では、チクソ比変化率が200%以上と高く、接触角が40°以上と高かった。
【0105】
以上のように、所定の成分(a)~(c)を所定の比率で含有する導電性組成物は、保管時のチクソ比の変化が小さく、安定して印刷可能であることで、印刷で形成された焼結膜の膜厚バラつきが生じにくいことが期待できる。また、優れた導電性とはんだ濡れ性を示す焼結膜を得ることができ、かつ、得られた焼結膜はアルミナなどの無機基板との密着強度に優れる。以上のことから、上記所定の導電性組成物は、電極形成材料として好適であることが分かる。