(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093952
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】水性組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/167 20060101AFI20230628BHJP
A61K 31/4402 20060101ALI20230628BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20230628BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230628BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230628BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230628BHJP
【FI】
A61K31/167
A61K31/4402
A61P25/02 101
A61K9/08
A61K47/22
A61K47/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209106
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】大森 公貴
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076CC01
4C076DD45R
4C076DD60E
4C076FF15
4C076FF39
4C076GG46
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086NA02
4C086ZA21
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA18
4C206GA31
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA14
4C206MA37
4C206NA02
4C206ZA21
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】本発明は、リドカイン及びパラオキシ安息香酸エステル類を含む水性液剤の溶解性を向上させる製剤処方を提供することを目的とする。
【解決手段】リドカイン及びパラオキシ安息香酸エステル類を含む水性液剤に、クロルフェニラミンマレイン酸塩を0.5重量%となるように配合することで、溶解性が顕著に向上する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)リドカインと、(B)パラオキシ安息香酸エステル類と、(C)クロルフェニラミンマレイン酸塩0.5重量%とを含む、水性液剤。
【請求項2】
前記(B)成分が、パラオキシ安息香酸メチル及び/又はパラオキシ安息香酸プロピルである、請求項1に記載の水性液剤。
【請求項3】
前記(A)成分の含有量が0.5重量%である、請求項1又は2に記載の水性液剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リドカイン及びパラオキシ安息香酸エステル類(パラベン類)を含み、優れた溶解性を有する水性液剤に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬組成物等の水性液剤には、使用時の微生物汚染の防止等の観点で、防腐剤が配合されて処方されることが一般的である。水性液剤に用いられる防腐剤の典型例として、パラオキシ安息香酸エステル類(パラベン類)が用いられている(例えば、特許文献1等)。
【0003】
リドカイン及びその塩は、世界で最も使用されている局所麻酔薬であり、作用発現が速いことから様々な部位に使用される公知の薬剤であり、外用剤に配合されて使用されている。水性液剤に配合される場合は、通常、水溶性リドカイン塩が選択される(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リドカイン塩酸塩とは異なり、リドカインは水難溶性であり、有効量を水性液剤に溶解させることは困難である。更に、防腐剤として配合されるパラオキシ安息香酸エステル類も脂溶性であるため、有効成分であるリドカインと防腐剤であるパラオキシ安息香酸エステル類を含む水性液剤は溶解性が悪い。
【0006】
そこで、本発明の目的は、リドカイン及びパラオキシ安息香酸エステル類を含む水性液剤の溶解性を向上させる製剤処方を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、リドカイン及びパラオキシ安息香酸エステル類を含む水性液剤に、クロルフェニラミンマレイン酸塩を0.5重量%となるように配合することで、溶解性が顕著に向上することを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)リドカインと、(B)パラオキシ安息香酸エステル類と、(C)クロルフェニラミンマレイン酸塩0.5重量%とを含む、水性液剤。
項2. 前記(B)成分が、パラオキシ安息香酸メチル及び/又はパラオキシ安息香酸プロピルである、項1に記載の水性液剤。
項3. 前記(A)成分の含有量が0.5重量%である、項1又は2に記載の水性液剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、リドカイン及びパラオキシ安息香酸エステル類を含む水性液剤の溶解性を向上させる製剤処方が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の水性液剤は、(A)リドカイン(以下において、「(A)成分」とも表記する。)と、(B)パラオキシ安息香酸エステル類(以下において、「(B)成分」とも表記する。)と、(C)クロルフェニラミンマレイン酸塩(以下において、「(C)成分」とも表記する。)0.5重量%とを含むことを特徴とする。以下、本発明の水性液剤について詳述する。
【0011】
(A)リドカイン
本発明の水性液剤は、(A)成分としてリドカインを含有する。リドカインは、局所麻酔効果を有することが知られており、キシロカインとも称される公知の脂溶性薬剤である。リドカインは水難溶性であるが、本発明の水性液剤は優れた溶解性を奏する。
【0012】
本発明の水性液剤における(A)成分の含有量としては、水性液剤の用途及び/又は発揮させるべき薬効等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.1重量%以上が挙げられる。本発明の水性液剤は溶解性に優れているため、より高含量のリドカインが含まれていても、効果的に優れた溶解性を奏することができる。このような観点から、本発明の水性液剤における(A)成分の含有量の好適な例として、好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.25重量%以上、さらに好ましく0.4重量%以上、さらに好ましくは0.45重量%以上が挙げられる。本発明の水性液剤における(A)成分の含有量は、その上限において特に限定されるものではないが、例えば1重量%以下、好ましくは0.7重量%以下、より好ましくは0.55重量%以下が挙げられる。本発明の水性液剤において、(A)成分の含有量の特に好ましい例としては、0.5重量%が挙げられる。
【0013】
(B)パラオキシ安息香酸エステル類
本発明の水性液剤は、(B)成分としてパラオキシ安息香酸エステル類を含む。パラオキシ安息香酸エステル類は、防腐剤として公知の添加剤である。
【0014】
パラオキシ安息香酸エステル類としては、薬学的に許容できる化合物であれば特に限定されず、好ましくはパラオキシ安息香酸と炭素数1~4のアルコールとのエステルが挙げられる。パラオキシ安息香酸エステル類の具体例としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸イソブチル等が挙げられる。
【0015】
本発明の水性液剤において、(B)成分として、上記の化合物から1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
上記の化合物の中でも、(B)成分としては、好ましくはパラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピルが挙げられる。
【0017】
本発明の水性液剤における(B)成分の含有量としては、水性液剤の用途及び/又は発揮させるべき防腐効果等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.003~0.2重量%、好ましくは0.04~0.15重量%、より好ましくは0.08~0.13重量%が挙げられる。
【0018】
(C)クロルフェニラミンマレイン酸塩
本発明の水性液剤は、(C)成分としてクロルフェニラミンマレイン酸塩を含む。クロルフェニラミンマレイン酸塩は、3-(4-クロロフェニル)-N,N-ジメチル-3-ピリジン-2-イル-プロパン-1-アミンのマレイン酸塩であり、抗ヒスタミン等の目的でも使用されている公知の化合物である。
【0019】
本発明で用いられるクロルフェニラミンマレイン酸は、d-体、l-体、及びdl-体のいずれであってもよい。
【0020】
本発明の水性液剤における(C)成分の含有量は、0.5重量%である。リドカイン及びパラオキシ安息香酸エステル類を含む水性液剤は溶解性が悪いが、本発明の水性溶剤は、さらに(C)成分を0.5重量%配合することで優れた溶解性を奏する。
【0021】
また、(A)成分と(C)成分との比率については、上記各成分の比率に応じて定まるが、(A)成分1重量部に対する(C)成分の含有量としては、例えば0.5重量部以上が挙げられ、溶解性をより一層向上させる観点から、0.9重量部以上が挙げられる。本発明の水性液剤は溶解性に優れるため、(A)成分に対して(C)成分の比率が比較的小さくもても、効果的に優れた溶解性を奏することができる。このような観点から、(A)成分1重量部に対する(B)成分の含有量の好適な例としては、好ましくは2.5重量部以下、より好ましくは2.1重量部以下、さらに好ましくは1.5重量部以下、一層好ましくは1.1重量部以下が挙げられる。
【0022】
水
本発明の水性液剤は、溶媒として水を含む。本発明の水性液剤における水の含有量についても特に限定されないが、例えば90~99.8重量%、好ましくは93~99.8重量%、より好ましくは95~99.8重量%、さらに好ましくは96~99.8重量%が挙げられる。
【0023】
他の成分
本発明の水性液剤は、前述する成分の他に、必要に応じて、通常使用される他の添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、多価アルコール、増粘剤、等張化剤、pH調節剤、緩衝剤、可溶化剤、キレート剤、防腐剤(上記(B)成分以外)、酸化防止剤、安定化剤、香料、着色料等が挙げられる。
【0024】
本発明の水性液剤は、前述する成分の他に、薬学的又は香粧学的な生理機能を発揮できる薬効成分が、必要に応じて含まれていてもよい。このような薬効成分としては、例えば、ステロイド剤、抗ヒスタミン剤(上記(C)成分以外)、局所麻酔剤(上記(A)成分以外)、抗炎症剤、殺菌剤、鎮痒剤、保湿剤、血行促進成分、ビタミン類、ムコ多糖類等が挙げられる。これらの薬効成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよいまた、本発明の水性液剤においてこれらの薬効成分を含有させる場合、その含有量については、使用する薬効成分の種類、期待する効果等に応じて適宜設定すればよい。
【0025】
製剤形態
本発明の水性液剤の形態は、非乳化形態の液状であればよく、例えば、水溶液及びゲルが挙げられ、より好ましくは水溶液が挙げられる。
【0026】
本発明の水性液剤は、具体的には粘膜適用剤として、より具体的には点鼻薬として製剤することができる。
【0027】
本発明の水性液剤は、医薬品又は医薬部外品として製剤することができ、好ましくは医薬品として製剤することができる。
【実施例0028】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
試験例
表1及び表2に示す組成の水性液剤(点鼻薬)を製造した。なお、(C)成分として用いたクロルフェニラミンマレイン酸塩としては、dl-体を用いた。得られた水性液剤200mlを、200ml容量のガラスビーカーに入れ、背景に黒色の用紙を当て、外観を目視いて観察し、以下の基準に基づいて溶解性の程度を評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0030】
○:澄明である。
×:不溶性成分が少し分散しているが、背景の黒色の用紙ははっきり視認できる。
××:不溶性成分が多く分散しているが、背景の黒色の用紙ははっきり視認できる。
×××:半透明であり、背景の黒色の用紙の視認がやや困難である。
××××:完全に不透明であり、背景の黒色の用紙が全く視認できない。
【0031】
【0032】
【0033】
比較例1~4に示すように、(A)成分及び(B)成分を含む水性液剤は溶解性が悪く、とりわけ、(A)成分の量が0.5重量%になると、溶解性の悪さは各段に悪化した。また、比較例5~7に示すように、(C)成分を0.3重量%配合しても溶解性はほぼ改善されなかった。これに対し、実施例1~4に示すように、(C)成分を0.5重量%配合すると、水性液剤は澄明となり、優れた溶解性が認められた。特に、実施例4に示すように、(A)成分が、水性液剤の溶解性を各段に悪化させる0.5重量%(比較例4)で配合されていても、(C)成分を0.5重量%配合することで水性液剤は澄明となり、とりわけ優れた溶解性が認められた。