特開 2023-93964 空気入りタイヤ

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2023093964

(43)【公開日】2023-07-05

(54)【発明の名称】空気入りタイヤ

(51)【国際特許分類】

   B60C 9/02 20060101AFI20230628BHJP

   B60C 9/08 20060101ALI20230628BHJP

   B60C 9/18 20060101ALI20230628BHJP

【ＦＩ】

B60C9/02 B

B60C9/08 J

B60C9/18 K

【審査請求】未請求

【請求項の数】5

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2021209123

(22)【出願日】2021-12-23

(71)【出願人】

【識別番号】000003148

【氏名又は名称】ＴＯＹＯ ＴＩＲＥ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100165157

【弁理士】

【氏名又は名称】芝 哲央

(74)【代理人】

【識別番号】100160794

【弁理士】

【氏名又は名称】星野 寛明

(72)【発明者】

【氏名】塩島 涼

【テーマコード（参考）】

3D131

【Ｆターム（参考）】

3D131AA33

3D131AA34

3D131AA39

3D131BA01

3D131BB01

3D131BB03

3D131BC02

3D131BC05

3D131BC11

3D131BC13

3D131BC22

3D131BC31

3D131BC44

3D131DA09

3D131DA16

3D131DA33

3D131DA34

3D131DA54

3D131DA56

3D131HA33

3D131HA38

3D131HA54

3D131HA57

(57)【要約】

【課題】サイドウォールの耐外傷性を向上させつつ、タイヤの軽量化による転がり抵抗の低減を図ることができる空気入りタイヤを提供すること。
【解決手段】ビード１０、サイドウォール２０、トレッド３０、カーカスプライ５０を備えた空気入りタイヤ１であって、カーカスプライ５０は、第１カーカスプライ５１、第２カーカスプライ５２、第３カーカスプライ５３を有し、第１カーカスプライ５１は、ビード１０に亘ってタイヤ幅方向Ｘに連続し、第２カーカスプライ５２及び第３カーカスプライ５３は、タイヤ幅方向Ｘに分割された第２プライ片５２Ａ及び第３プライ片５３Ａを有し、第２プライ片５２Ａ及び第３プライ片５３Ａは、トレッド３０においてタイヤ幅方向Ｘに離間して配置されるタイヤ幅方向内端５２ａ，５３ａを有し、第２プライ片５２Ａのタイヤ幅方向内端５２ａと第３プライ片５３Ａのタイヤ幅方向内端５３ａとは、タイヤ幅方向Ｘに離れて配置される。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

一対のビードと、
前記一対のビードのそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォールと、
前記一対のサイドウォールの間に配置されたトレッドと、
前記トレッドから前記ビードにわたるカーカスプライと、を備えた空気入りタイヤであって、
前記カーカスプライは、第１カーカスプライと、前記第１カーカスプライのタイヤ幅方向外側に配置される第２カーカスプライと、前記第２カーカスプライのタイヤ幅方向外側に配置される第３カーカスプライと、を有し、
前記第１カーカスプライは、前記一対のビードに亘ってタイヤ幅方向に連続して配置され、
前記第２カーカスプライ及び前記第３カーカスプライは、それぞれタイヤ幅方向に分割された一対の第２プライ片及び一対の第３プライ片を有し、
前記一対の第２プライ片及び前記一対の第３プライ片のそれぞれは、前記トレッドにおいてタイヤ幅方向に互いに離間して配置されるタイヤ幅方向内端を有し、
前記一対の第２プライ片の前記タイヤ幅方向内端と、前記一対の第３プライ片の前記タイヤ幅方向内端とは、タイヤ幅方向に離れて配置されている、空気入りタイヤ。

【請求項2】

前記一対の第２プライ片の前記タイヤ幅方向内端と、前記一対の第３プライ片の前記タイヤ幅方向内端とは、タイヤ幅方向に少なくとも１０ｍｍ離れて配置されている、請求項１に記載の空気入りタイヤ。

【請求項3】

前記トレッドにおける前記カーカスプライのタイヤ径方向外側に、ベルトを有し、
前記ベルトのタイヤ幅方向外側端部は、前記一対の第２プライ片のタイヤ幅方向内側端部及び前記一対の第３プライ片のタイヤ幅方向内側端部に重なるように配置されている、請求項１又は２に記載の空気入りタイヤ。

【請求項4】

前記ベルトは、内側ベルトと、前記内側ベルトのタイヤ径方向外側に配置される外側ベルトと、を有し、
前記内側ベルトのタイヤ幅方向外端は、前記外側ベルトのタイヤ幅方向外端よりもタイヤ幅方向外側に配置され、
前記一対の第３プライ片の前記タイヤ幅方向内端と、前記外側ベルトの前記タイヤ幅方向外端とは、タイヤ幅方向に離れて配置されている、請求項３に記載の空気入りタイヤ。

【請求項5】

前記一対の第３プライ片の前記タイヤ幅方向内端は、前記外側ベルトの前記タイヤ幅方向外端に対して、タイヤ幅方向内側に少なくとも１０ｍｍ離れて配置されている、請求項４に記載の空気入りタイヤ。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、空気入りタイヤに関する。

【背景技術】

【0002】

乗用車用タイヤにおいては、悪路走行時におけるサイドウォールの耐外傷性が問題となっている。特に、ライトトラック等に装着される高荷重タイヤでは、サイドウォールの耐外傷性を確保することが重要である。

【0003】

従来、サイドウォールの耐外傷性を確保のために、サイドウォール内に配置されるカーカスプライの枚数を増加させることが行われている（例えば、特許文献１参照）。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開２０２０－１５２３８０号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

カーカスプライの枚数を増加させることによって、サイドウォールの強度を向上させ、耐外傷性を確保することができる一方で、タイヤ重量が増加する。タイヤ重量が増加すると、転がり抵抗が増大するため、サイドウォールの強度を向上させつつ、タイヤの軽量化を図ることが望まれる。

【0006】

本発明は、サイドウォールの耐外傷性を向上させつつ、タイヤの軽量化による転がり抵抗の低減を図ることができる空気入りタイヤを提供することを目的としている。

【課題を解決するための手段】

【0007】

本発明の空気入りタイヤは、一対のビードと、前記一対のビードのそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォールと、前記一対のサイドウォールの間に配置されたトレッドと、前記トレッドから前記ビードにわたるカーカスプライと、を備えた空気入りタイヤであって、前記カーカスプライは、第１カーカスプライと、前記第１カーカスプライのタイヤ幅方向外側に配置される第２カーカスプライと、前記第２カーカスプライのタイヤ幅方向外側に配置される第３カーカスプライと、を有し、前記第１カーカスプライは、前記一対のビードに亘ってタイヤ幅方向に連続して配置され、前記第２カーカスプライ及び前記第３カーカスプライは、それぞれタイヤ幅方向に分割された一対の第２プライ片及び一対の第３プライ片を有し、前記一対の第２プライ片及び前記一対の第３プライ片のそれぞれは、前記トレッドにおいてタイヤ幅方向に互いに離間して配置されるタイヤ幅方向内端を有し、前記一対の第２プライ片の前記タイヤ幅方向内端と、前記一対の第３プライ片の前記タイヤ幅方向内端とは、タイヤ幅方向に離れて配置されている。

【発明の効果】

【0008】

本発明によれば、サイドウォールの耐外傷性を向上させつつ、タイヤの軽量化による転がり抵抗の低減を図ることができる空気入りタイヤを提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【0009】

【図1】実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ幅方向断面図である。

【図2】図１の一部拡大図である。

【発明を実施するための形態】

【0010】

以下、実施形態について、図面を参照しながら説明する。図１は、実施形態に係る空気入りタイヤであるタイヤ１のタイヤ幅方向の断面を示している。図２は、図１の一部を拡大した図であって、後述するトレッド３０から車両外側Ｄ１のビード１０に亘る部分を示す断面図である。

【0011】

実施形態に係るタイヤ１は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤである。なお、実施形態に係るタイヤ１は、乗用車の他に、ライトトラック、トラック、バス等の各種車両用として採用することができる。

【0012】

タイヤ１の構造は、タイヤ幅方向の断面において左右対称となっている。図１において、符号Ｓ１はタイヤ赤道面である。タイヤ赤道面Ｓ１は、タイヤ回転軸（タイヤ子午線）に直交する面で、かつ、タイヤ幅方向中心に位置する面である。

【0013】

なお、図１の断面図は、タイヤ１を規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態を示している。規定リムとは、タイヤサイズに対応してＪＡＴＭＡに定められた標準となるリムを指す。また、規定内圧とは、例えばタイヤ１が乗用車用である場合には１８０ｋＰａである。

【0014】

ここで、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、図１における紙面左右方向である。図１においては、タイヤ幅方向Ｘとして図示している。Ｘ１はタイヤ幅方向外側であり、Ｘ２はタイヤ幅方向内側である。タイヤ幅方向外側Ｘ１とは、タイヤ赤道面Ｓ１から離れる方向であり、図１においては紙面左側及び右側である。タイヤ幅方向内側Ｘ２とは、タイヤ赤道面Ｓ１に近づく方向であり、図１においては紙面中央側である。

【0015】

また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、図１における紙面上下方向である。図１においては、タイヤ径方向Ｙとして図示している。Ｙ１はタイヤ径方向外側であり、Ｙ２はタイヤ径方向内側である。タイヤ径方向外側Ｙ１とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、図１においては紙面上側である。タイヤ径方向内側Ｙ２とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、図１においては紙面下側である。

【0016】

図１に示すように、タイヤ１は、タイヤ幅方向両側に設けられた一対のビード１０と、一対のビード１０のそれぞれからタイヤ径方向外側Ｙ１に延びる一対のサイドウォール２０と、一対のサイドウォール２０の間に配置されたトレッド３０と、トレッド３０に配置されたベルト４０と、トレッド３０から一対のビード１０にわたるカーカスプライ５０と、カーカスプライ５０のタイヤ内腔側に配置されたインナーライナー６０と、を備えている。タイヤ１は、タイヤ赤道面Ｓ１に対してタイヤ幅方向Ｘに対称構造を有する。

【0017】

ビード１０は、ビードコア１１と、ビードコア１１からタイヤ径方向外側Ｙ１に延びるビードフィラー１２と、リムストリップゴム１３と、を備える。

【0018】

ビードコア１１は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤがタイヤ周方向に複数回巻かれた環状の部材である。ビードコア１１は、空気が充填されたタイヤ１を、リムに固定する役目を果たす部材である。

【0019】

図２に示すように、ビードフィラー１２は、タイヤ径方向外側Ｙ１の先端であるタイヤ径方向外端１２ａを有する。ビードフィラー１２は、タイヤ径方向内側Ｙ２からタイヤ径方向外端１２ａに延びるにつれて先細り形状となっている。

【0020】

ビードフィラー１２は、ビード１０の周辺部分の剛性を高め、高い操縦性及び安定性を確保するために設けられる。ビードフィラー１２は、例えば、周囲のゴム部材よりも硬度の高いゴムにより構成される。

【0021】

図１に示すように、リムストリップゴム１３は、ビードコア１１及びビードフィラー１２を囲んで設けられるカーカスプライ５０の外側をさらに囲んでいる。リムストリップゴム１３は、タイヤ１が装着されるリムの内側部分と接触する。リムストリップゴム１３のタイヤ幅方向外側Ｘ１の外表面には、タイヤ周方向に沿った頂部１３ａが形成されている。リムストリップゴム１３の頂部１３ａは、外傷からリムを保護するリムプロテクタ１４を構成する。リムプロテクタ１４は、タイヤ周方向に環状に連続している。

【0022】

サイドウォール２０は、カーカスプライ５０のタイヤ幅方向外側Ｘ１に配置されたサイドウォールゴム２１を含む。サイドウォールゴム２１は、タイヤ１の外壁面を構成する。サイドウォールゴム２１は、タイヤ１がクッション作用をする際に最もたわむ部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。サイドウォールゴム２１のタイヤ径方向内側Ｙ２の端部は、リムストリップゴム１３のタイヤ径方向外側Ｙ１の端部を覆っている。

【0023】

トレッド３０は、トレッドゴム３１を備える。トレッド３０には、無端状のベルト４０及びキャッププライ４５が配置されている。ベルト４０は、インナーライナー６０のタイヤ径方向外側Ｙ１に配置されている。キャッププライ４５は、ベルト４０のタイヤ径方向外側Ｙ１に配置されている。トレッドゴム３１は、キャッププライ４５のタイヤ径方向外側Ｙ１に配置されている。

【0024】

ベルト４０は、トレッド３０を補強する部材である。実施形態のベルト４０は、インナーライナー６０のタイヤ径方向外側Ｙ１に配置された内側ベルト４１と、内側ベルト４１のタイヤ径方向外側Ｙ１に配置された外側ベルト４２と、を備えた２層構造である。内側ベルト４１及び外側ベルト４２は、いずれも複数のスチールコード等の金属製コードがゴムで覆われた構造を有する。ベルト４０は、タイヤ幅方向外側Ｘ１に、内側ベルト４１と外側ベルト４２とが重なった外側端部４０Ｂをそれぞれ有する。

【0025】

ベルト４０は、内側ベルト４１が外側ベルト４２よりも幅広である。したがって、図２に示すように、内側ベルト４１のタイヤ幅方向外側Ｘ１の先端であるタイヤ幅方向外端４１Ａは、外側ベルト４２のタイヤ幅方向外側Ｘ１の先端であるタイヤ幅方向外端４２Ａよりもタイヤ幅方向外側Ｘ１に離れて配置されている。ベルト４０を設けることにより、タイヤ１の剛性が確保され、路面に対するトレッド３０の接地性が向上する。

【0026】

キャッププライ４５は、ベルト４０とともにトレッド３０を補強する部材である。キャッププライ４５は、例えば、ポリアミド繊維等の絶縁性を有する複数の有機繊維コードがゴムで覆われた構造を有する。

【0027】

図２に示すように、キャッププライ４５のタイヤ幅方向外側端部４５Ｂは、タイヤ径方向外側Ｙ１から内側に折り畳まれることによって２重に形成されている。キャッププライ４５のタイヤ幅方向外側Ｘ１の先端であるタイヤ幅方向外端４５Ａは、内側ベルト４１のタイヤ幅方向外端４１Ａよりもタイヤ幅方向外側Ｘ１に位置している。キャッププライ４５のタイヤ幅方向外側端部４５Ｂは、外側ベルト４２のタイヤ幅方向外側端部４２Ｂ及び内側ベルト４１のタイヤ幅方向外側端部４１Ｂを覆って密着している。

【0028】

実施形態のキャッププライ４５は１層であるが、２層以上の構造であってもよい。キャッププライ４５を設けることにより、耐久性の向上、走行時のロードノイズの低減を図ることができる。

【0029】

図１に示すように、トレッドゴム３１は、キャッププライ４５のタイヤ径方向外側Ｙ１に配置されている。トレッドゴム３１は、走行時に路面と接地する踏面３１ａを構成する部材である。トレッドゴム３１の踏面３１ａには、例えば複数の溝で構成されるトレッドパターン３２が設けられる。図２に示すように、トレッドゴム３１のタイヤ幅方向外側端部３１Ｂは、キャッププライ４５のタイヤ幅方向外端４５Ａを越えてタイヤ径方向内側Ｙ２に屈曲し、カーカスプライ５０に接触している。図１に示すように、トレッドゴム３１のタイヤ幅方向外側端部３１Ｂは、サイドウォールゴム２１のタイヤ径方向外側端部２１Ｂで覆われている。

【0030】

カーカスプライ５０は、タイヤ１の骨格となるプライを構成している。図１に示すように、実施形態のカーカスプライ５０は、タイヤ内腔側から順に、第１カーカスプライ５１、第２カーカスプライ５２、第３カーカスプライ５３の３層構造を有する。第１カーカスプライ５１、第２カーカスプライ５２、第３カーカスプライ５３は、いずれもタイヤ１の骨格となる複数の図示しないカーカスコードを含んでいる。複数のカーカスコードは、例えばタイヤ幅方向Ｘに沿った面内に沿って延びており、タイヤ周方向に並んで配列されている。このカーカスコードは、ポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されている。第１カーカスプライ５１、第２カーカスプライ５２、第３カーカスプライ５３は、それぞれ複数のカーカスコードがゴムにより被覆されて構成される。タイヤ１は、３層構造のカーカスプライ５０を有するため、サイドウォール２０の強度が向上し、タイヤ１の耐外傷性が向上する。

【0031】

第１カーカスプライ５１は、カーカスプライ５０において最もタイヤ内面側に配置され、インナーライナー６０のタイヤ外面側に接して配置される。第１カーカスプライ５１は、一対のビード１０に亘って途切れることなくタイヤ幅方向Ｘに連続して形成されている。すなわち、図２に示すように、第１カーカスプライ５１は、タイヤ幅方向中央部のトレッド３０から一対のサイドウォール２０にそれぞれ延在し、さらにビードコア１１のタイヤ幅方向内側Ｘ２まで延びる第１カーカスプライ本体部５１ａと、第１カーカスプライ本体部５１ａからビードコア１１に巻き付いて屈曲する屈曲部５１ｂと、屈曲部５１ｂからタイヤ径方向外側Ｙ１に折り返される折り返し部５１ｃと、折り返し部５１ｃのタイヤ径方向外側Ｙ１の先端である折り返し端５１ｄと、を有する。

【0032】

第１カーカスプライ本体部５１ａ、屈曲部５１ｂ及び折り返し部５１ｃは連続している。第１カーカスプライ本体部５１ａのタイヤ径方向内側Ｙ２の端部は、ビードコア１１及びビードフィラー１２のタイヤ幅方向内側Ｘ２に配置されている。折り返し部５１ｃは、ビードコア１１及びビードフィラー１２のタイヤ幅方向外側Ｘ１に配置されている。屈曲部５１ｂは、ビードコア１１のタイヤ径方向内側Ｙ２に配置され、第１カーカスプライ５１においてタイヤ径方向Ｙの最も内側の部分を構成する。折り返し部５１ｃは、タイヤ最大幅位置２０Ｗ付近まで延出している。折り返し端５１ｄは、タイヤ最大幅位置２０Ｗ付近に配置されている。

【0033】

第２カーカスプライ５２は、第１カーカスプライ５１のタイヤ外面側に配置され、第３カーカスプライ５３は、第２カーカスプライ５２のタイヤ外面側に配置されている。第２カーカスプライ５２及び第３カーカスプライ５３は、いずれもタイヤ幅方向中央部において不連続となる中抜き部を有し、この中抜き部を間に挟んでタイヤ幅方向Ｘの両側に分割された構成を有する。タイヤ１は、３層構造のカーカスプライ５０を有していても、第２カーカスプライ５２及び第３カーカスプライ５３が中抜き部を有することにより、軽量化され、転がり抵抗は低減する。

【0034】

第２カーカスプライ５２は、タイヤ幅方向Ｘに分割された一対の第２プライ片５２Ａを含んでいる。第２カーカスプライ５２は、トレッド３０のタイヤ幅方向中央部において不連続となる第１の中抜き部５２Ｈを有する。一対の第２プライ片５２Ａは、第１の中抜き部５２Ｈを間に挟んでタイヤ幅方向Ｘの両側に配置される態様で、タイヤ１内に埋設されている。

【0035】

図２に示すように、第２プライ片５２Ａは、第１の中抜き部５２Ｈ側の先端であって、タイヤ幅方向Ｘで互いに離隔して対向するタイヤ幅方向内端５２ａを有する。第２プライ片５２Ａのタイヤ幅方向内端５２ａは、トレッド３０のタイヤ幅方向外側Ｘ１の端部に配置されている。第２プライ片５２Ａは、タイヤ幅方向内側Ｘ２に、タイヤ幅方向内端５２ａを含むタイヤ幅方向内側端部５２ｂを有する。

【0036】

図２に示すように、第２プライ片５２Ａは、タイヤ幅方向内端５２ａから、サイドウォール２０に延在し、さらにビード１０におけるビードフィラー１２のタイヤ幅方向内側Ｘ２まで延びる第２プライ片本体部５２ｃを有する。第２プライ片５２Ａはダウンプライであり、ビードフィラー１２の途中まで延びている。第２プライ片本体部５２ｃの最もタイヤ径方向内側Ｙ２の先端であるタイヤ径方向内端５２ｄは、ビードコア１１まで達していない。第２プライ片本体部５２ｃのタイヤ径方向内端５２ｄは、ビードフィラー１２のタイヤ幅方向内側Ｘ２に配置されている。

【0037】

第１カーカスプライ５１には中抜き部が形成されていないため、第２カーカスプライ５２のタイヤ幅方向内端５２ａは、トレッド３０において、第１カーカスプライ５１のタイヤ外面側に配置され、インナーライナー６０とは直接接触していない。そのため、第２カーカスプライ５２のタイヤ幅方向内端５２ａと、ベルト４０に比較して強度が低いインナーライナー６０との干渉を回避することができる。

【0038】

第３カーカスプライ５３は、タイヤ幅方向Ｘに分割された一対の第３プライ片５３Ａを含んでいる。第３カーカスプライ５３は、トレッド３０のタイヤ幅方向中央部において不連続となる第２の中抜き部５３Ｈを有する。一対の第３プライ片５３Ａは、第２の中抜き部５３Ｈを間に挟んでタイヤ幅方向Ｘの両側に配置される態様で、タイヤ１内に埋設されている。

【0039】

図２に示すように、第３プライ片５３Ａは、第２の中抜き部５３Ｈ側の先端であって、タイヤ幅方向Ｘで互いに離隔して対向するタイヤ幅方向内端５３ａを有する。第３プライ片５３Ａのタイヤ幅方向内端５３ａは、トレッド３０のタイヤ幅方向外側Ｘ１の端部に配置されている。第３プライ片５３Ａは、タイヤ幅方向内側Ｘ２に、タイヤ幅方向内端５３ａを含むタイヤ幅方向内側端部５３ｂを有する。

【0040】

第３プライ片５３Ａは、タイヤ幅方向内端５３ａから、サイドウォール２０に延在し、さらにビード１０におけるビードフィラー１２のタイヤ幅方向内側Ｘ２まで延びる第３プライ片本体部５３ｃと、第３プライ片本体部５３ｃからビードコア１１に巻き付いて屈曲する屈曲部５３ｄと、屈曲部５３ｄからタイヤ径方向外側Ｙ１に折り返される折り返し部５３ｅと、折り返し部５３ｅのタイヤ径方向外側Ｙ１の先端である折り返し端５３ｆと、を有する。

【0041】

第３プライ片本体部５３ｃ、屈曲部５３ｄ及び折り返し部５３ｅは連続している。第３プライ片本体部５３ｃは、第２カーカスプライ５２の第２プライ片本体部５２ｃのタイヤ外面側の面に密着している。第２プライ片本体部５２ｃのタイヤ径方向内側Ｙ２の端部であるタイヤ径方向内端５２ｄは、ビードフィラー１２のタイヤ幅方向内側Ｘ２において、第１カーカスプライ本体部５１ａと第３プライ片本体部５３ｃとの間に挟まれている。第３カーカスプライ５３の屈曲部５３ｄは、ビードコア１１と第１カーカスプライ５１の屈曲部５１ｂとの間に挟まれている。第３カーカスプライ５３の屈曲部５３ｄは、第３カーカスプライ５３においてタイヤ径方向Ｙの最も内側の部分を構成する。第３カーカスプライ５３の折り返し部５３ｅは、ビードコア１１及びビードフィラー１２と、第１カーカスプライ５１の折り返し部５１ｃとの間に挟まれている。第３カーカスプライ５３の折り返し部５３ｅは、タイヤ最大幅位置２０Ｗよりもタイヤ径方向外側Ｙ１まで延出している。第３カーカスプライ５３の折り返し端５３ｆは、第１カーカスプライ５１の折り返し端５１ｄの位置よりもタイヤ径方向外側Ｙ１であり、タイヤ最大幅位置２０Ｗよりもタイヤ径方向外側Ｙ１に配置されている。

【0042】

インナーライナー６０は、一対のビード１０の間のタイヤ内面側に配置されている。インナーライナー６０は、トレッド３０の領域では、ベルト４０及び第１カーカスプライ５１の内面を覆っている。また、インナーライナー６０は、サイドウォール２０の領域では、第１カーカスプライ５１の内面を覆っている。さらに、インナーライナー６０は、ビード１０のタイヤ径方向外側Ｙ１の領域では、第１カーカスプライ５１の内面を覆い、ビード１０のタイヤ径方向内側Ｙ２の領域では、リムストリップゴム１３を覆っている。

【0043】

インナーライナー６０は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。

【0044】

ここで、ビードフィラー１２に採用するゴムとしては、少なくともサイドウォールゴム２１及びインナーライナー６０よりも硬度が高いゴムが用いられる。ゴムの硬度は、ＪＩＳ Ｋ６２５３に準拠して、２３℃雰囲気において、タイプＡデュロメータで測定される値（デュロメータ硬さ）である。

【0045】

例えば、サイドウォールゴム２１の硬度を基準としたとき、ビードフィラー１２の硬度は、サイドウォールゴム２１の硬度の１．２倍～２．３倍程度の硬度のゴムを用いることが好ましい。リムストリップゴム１３の硬度は、サイドウォールゴム２１の硬度の１倍～１．６倍程度の硬度のゴムを用いることがより好ましい。このような硬度とすることで、タイヤとしての柔軟性とビード１０付近の剛性のバランスを確保することができる。

【0046】

図２に示すように、第２カーカスプライ５２のタイヤ幅方向内端５２ａと、第３カーカスプライ５３のタイヤ幅方向内端５３ａとは、タイヤ幅方向Ｘに離れて配置されている。第２カーカスプライ５２のタイヤ幅方向内端５２ａと、第３カーカスプライ５３のタイヤ幅方向内端５３ａとは、いずれがタイヤ幅方向外側Ｘ１に配置されてもよいが、実施形態に示す第３カーカスプライ５３のタイヤ幅方向内端５３ａは、第２カーカスプライ５２のタイヤ幅方向内端５２ａに対して、距離Ｌ１だけタイヤ幅方向外側Ｘ１に離れて配置されている。第３カーカスプライ５３のタイヤ幅方向内端５３ａは、内側ベルト４１と第２カーカスプライ５２との間に挟まれた状態で配置され、インナーライナー６０には直接接していない。

【0047】

これにより、第２カーカスプライ５２と第３カーカスプライ５３のタイヤ幅方向内端５２ａ，５３ａ同士が揃って配置されることによる歪みの集中によって発生する故障が回避される。歪みの集中によって発生する故障をより効果的に回避する観点では、距離Ｌ１は、少なくとも１０ｍｍであることが好ましい。

【0048】

図２に示すように、ベルト４０タイヤ幅方向外側端部４０Ｂと、第２プライ片５２Ａのタイヤ幅方向内側端部５２ｂ及び第３プライ片５３Ａのタイヤ幅方向内側端部５３ｂとは、タイヤ径方向Ｙに重なって配置されている。すなわち、第２プライ片５２Ａのタイヤ幅方向内側端部５２ｂ及び第３プライ片５３Ａのタイヤ幅方向内側端部５３ｂは、内側ベルト４１のタイヤ幅方向外側端部４１Ｂ及び外側ベルト４２のタイヤ幅方向外側端部４２Ｂによって覆われている。そのため、第２プライ片５２Ａ及び第３プライ片５３Ａが、タイヤ幅方向内側端部５２ｂ，５３ｂ側で剥離することが抑制される。

【0049】

図２に示すように、第３プライ片５３Ａのタイヤ幅方向内端５３ａと、ベルト４０における外側ベルト４２のタイヤ幅方向外端４２Ａとは、タイヤ幅方向Ｘに離れて配置されている。実施形態に示す第３プライ片５３Ａのタイヤ幅方向内端５３ａは、内側ベルト４１よりも幅狭である外側ベルト４２におけるタイヤ幅方向外端４２Ａに対して、距離Ｌ２だけタイヤ幅方向内側Ｘ２に配置されている。

【0050】

これにより、第３プライ片５３Ａのタイヤ幅方向内端５３ａと、外側ベルト４２のタイヤ幅方向外端４２Ａとがタイヤ径方向Ｙに揃って配置されることによる歪みの集中によって発生する故障が回避される。歪みの集中によって発生する故障をより効果的に回避する観点では、距離Ｌ２は、少なくとも１０ｍｍであることが好ましく、軽量化の観点から、１０ｍｍ以上５０ｍｍ以下であることがより好ましい。

【0051】

以上説明した実施形態のタイヤ１によれば、以下の効果を奏する。

【0052】

（１）実施形態に係るタイヤ１は、一対のビード１０と、一対のビード１０のそれぞれからタイヤ径方向外側Ｙ１に延びる一対のサイドウォール２０と、一対のサイドウォール２０の間に配置されたトレッド３０と、トレッド３０からビード１０にわたるカーカスプライ５０と、を備えた空気入りタイヤ１であって、カーカスプライ５０は、第１カーカスプライ５１と、第１カーカスプライ５１のタイヤ幅方向外側Ｘ１に配置される第２カーカスプライ５２と、第２カーカスプライ５２のタイヤ幅方向外側Ｘ１に配置される第３カーカスプライ５３と、を有し、第１カーカスプライ５１は、一対のビード１０に亘ってタイヤ幅方向Ｘに連続して配置され、第２カーカスプライ５２及び第３カーカスプライ５３は、それぞれタイヤ幅方向Ｘに分割された一対の第２プライ片５２Ａ及び一対の第３プライ片５３Ａを有し、一対の第２プライ片５２Ａ及び一対の第３プライ片５３Ａのそれぞれは、トレッド３０においてタイヤ幅方向Ｘに互いに離間して配置されるタイヤ幅方向内端５２ａ，５３ａを有し、一対の第２プライ片５２Ａのタイヤ幅方向内端５２ａと、一対の第３プライ片５３Ａのタイヤ幅方向内端５３ａとは、タイヤ幅方向Ｘに離れて配置されている。

【0053】

これにより、サイドウォール２０の耐外傷性を向上させつつ、タイヤ１の軽量化による転がり抵抗の低減を図ることができる。第２プライ片５２Ａと第３プライ片５３Ａのタイヤ幅方向内端５２ａ，５３ａ同士がタイヤ幅方向Ｘに離れて配置されるため、タイヤ幅方向内端５２ａ，５３ａ同士がタイヤ径方向Ｙの同じ位置に重なって配置されることによる歪みの集中が避けられ、歪みの集中によって発生する故障が回避される。

【0054】

（２）実施形態に係るタイヤ１において、一対の第２プライ片５２Ａのタイヤ幅方向内端５２ａと、一対の第３プライ片５３Ａのタイヤ幅方向内端５３ａとは、タイヤ幅方向Ｘに少なくとも１０ｍｍ離れて配置されていることが好ましい。

【0055】

これにより、タイヤ幅方向内端５２ａ，５３ａ同士がタイヤ径方向Ｙの同じ位置に重なって配置されることによる歪みの集中によって発生する故障をより効果的に回避することができる。

【0056】

（３）実施形態に係るタイヤ１において、トレッド３０におけるカーカスプライ５０のタイヤ径方向外側Ｙ１に、ベルト４０を有し、ベルト４０のタイヤ幅方向外側端部４０Ｂは、一対の第２プライ片５２Ａのタイヤ幅方向内側端部５２ｂ及び一対の第３プライ片５３Ａのタイヤ幅方向内側端部５３ｂに重なるように配置されていることが好ましい。

【0057】

これにより、第２プライ片５２Ａのタイヤ幅方向内側端部５２ｂ及び第３プライ片５３Ａのタイヤ幅方向内側端部５３ｂは、ベルト４０のタイヤ幅方向外側端部４０Ｂによって覆われた状態で配置されるため、第２プライ片５２Ａ及び第３プライ片５３Ａが、タイヤ幅方向内側端部５２ｂ，５３ｂ側で剥離することが抑制される。

【0058】

（４）実施形態に係るタイヤ１において、ベルト４０は、内側ベルト４１と、内側ベルト４１のタイヤ径方向外側Ｙ１に配置される外側ベルト４２と、を有し、内側ベルト４１のタイヤ幅方向外端４１Ａは、外側ベルト４２のタイヤ幅方向外端４２Ａよりもタイヤ幅方向外側Ｘ１に配置され、一対の第３プライ片５３Ａのタイヤ幅方向内端５３ａと、外側ベルト４２のタイヤ幅方向外端４２Ａとは、タイヤ幅方向Ｘに離れて配置されていることが好ましい。

【0059】

これにより、第３プライ片５３Ａのタイヤ幅方向内端５３ａと、外側ベルト４２のタイヤ幅方向外端４２Ａとがタイヤ径方向Ｙに揃って配置されることによる歪みの集中によって発生する故障が回避される。

【0060】

（５）実施形態に係るタイヤ１において、一対の第３プライ片５３Ａのタイヤ幅方向内端５３ａは、外側ベルト４２のタイヤ幅方向外端４２Ａに対して、タイヤ幅方向内側Ｘ２に少なくとも１０ｍｍ離れて配置されていることが好ましい。

【0061】

これにより、第３プライ片５３Ａのタイヤ幅方向内端５３ａと、外側ベルト４２のタイヤ幅方向外端４２Ａとがタイヤ径方向Ｙの同じ位置に重なって配置されることによる歪みの集中によって発生する故障をより効果的に回避することができる。

【0062】

以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。

【0063】

例えば、上記実施形態では、第２カーカスプライ５２を、ビードコア１１に巻き付けないダウンプライとした。これはタイヤ１の軽量化を向上させる観点で好ましい。しかし、第２カーカスプライ５２も、第１カーカスプライ５１及び第３カーカスプライ５３と同様に、ビードコア１１に巻き付けるように配置されてもよい。第２カーカスプライ５２の折り返し部を、第１カーカスプライ５１及び第３カーカスプライ５３の折り返し部５１ｃ，５３ｅと同様に、サイドウォール２０まで延出させることによって、サイドウォール２０の耐外傷性をさらに向上させることができる。

【符号の説明】

【0064】

１ タイヤ（空気入りタイヤ）
１０ ビード
２０ サイドウォール
３０ トレッド
４０ ベルト
４０Ｂ ベルトのタイヤ幅方向外側端部
４１ 内側ベルト
４１Ａ 内側ベルトのタイヤ幅方向外端
４２ 外側ベルト
４２Ａ 外側ベルトのタイヤ幅方向外端
５０ カーカスプライ
５１ 第１カーカスプライ
５２ 第２カーカスプライ
５２Ａ 第２プライ片
５２ａ 第２プライ片のタイヤ幅方向内端
５２ｂ 第２プライ片のタイヤ幅方向内側端部
５３ 第３カーカスプライ
５３Ａ 第３プライ片
５３ａ 第３プライ片のタイヤ幅方向内端
５３ｂ 第３プライ片のタイヤ幅方向内側端部
Ｘ タイヤ幅方向
Ｘ１ タイヤ幅方向外側
Ｘ２ タイヤ幅方向内側
Ｙ１ タイヤ径方向外側

【図1】

【図2】