(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093966
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】送風装置およびこれを備えた燃焼装置
(51)【国際特許分類】
F04D 29/66 20060101AFI20230628BHJP
F04D 29/30 20060101ALI20230628BHJP
F04D 25/08 20060101ALI20230628BHJP
F23L 5/00 20060101ALI20230628BHJP
F23L 17/16 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
F04D29/66 M
F04D29/30 C
F04D25/08 302E
F04D29/30 E
F23L5/00
F23L17/16 609A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209126
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】岩本 幹大
(72)【発明者】
【氏名】馬越 亮輔
【テーマコード(参考)】
3H130
3K023
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB46
3H130AC01
3H130BA13C
3H130CB01
3H130CB14
3H130EB01C
3H130EB05C
3H130EC12C
3K023HA17
(57)【要約】
【課題】騒音低減を適切に図ることが可能な送風装置、およびこれを備えた燃焼装置を提供する。
【解決手段】ケーシング2内に収容されて回転される羽根車Iを備えており、この羽根車Iは、複数の羽根間流路61を形成する複数の羽根5および中央空間部60を有し、羽根車Iの回転時においては、ケーシング2の吸気口24を介して中央空間部60に流入した空気が、複数の羽根間流路61を外方側に通過する、送風装置Aであって、各羽根5には、複数の羽根間流路61を空気が通過するときに発生する騒音低減手段として、各羽根5の表裏両面に相当する第1および第2の面5a,5bのうち、第1の面5a側は凹状、かつ他方の第2の面5b側は凸状である複数の第1の凹凸状部51と、これとは反対に、第2の面5b側は凹状、かつ第1の面5a側は凸状である複数の第2の凹凸状部52と、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口および送風口を有するケーシングと、
このケーシング内に収容されて回転される羽根車と、を備えており、
この羽根車は、複数の羽根間流路を形成するように周方向に間隔を隔てて並んだ複数の羽根を有し、かつこれら複数の羽根よりも中心寄り領域が前記複数の羽根間流路に連通する中央空間部とされており、
前記羽根車の回転時においては、前記吸気口を介して前記中央空間部に流入した空気が、前記複数の羽根間流路を前記羽根車の半径方向外方側に通過するように構成されている、送風装置であって、
前記各羽根には、前記複数の羽根間流路を空気が通過するときに発生する騒音低減手段として、前記各羽根の表裏両面に相当する第1および第2の面のうち、第1の面側は凹状、かつ他方の第2の面側は凸状である複数の第1の凹凸状部と、これとは反対に、前記第2の面側は凹状、かつ前記第1の面側は凸状である複数の第2の凹凸状部と、を備えていることを特徴とする、送風装置。
【請求項2】
請求項1に記載の送風装置であって、
前記各羽根は、金属板を用いて構成されており、前記各第1および第2の凹凸状部は、プレス加工部である、送風装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の送風装置であって、
前記各第1および第2の凹凸状部は、片側が凹状球面であり、かつその反対の片側が凸状球面であり、
前記凹状球面の領域は、直径が1.0~3.0mmの正面視円形状であり、かつ最深部の深さは0.4mm以上である、送風装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の送風装置であって、
前記複数の第1および第2の凹凸状部は、前記羽根車の互いに交差する半径方向および幅方向に複数の列状に並び、かつ前記複数の第1の凹凸状部の列および前記複数の第2の凹凸状部の列が、前記半径方向および前記幅方向に位置ずれして交互に並ぶ千鳥配列である、送風装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の送風装置であって、
前記各羽根における前記複数の第1および第2の凹凸状部のトータルの正面視投影面積は、これら複数の第1および第2の凹凸状部の相互間に挟まれている非凹凸状部のトータルの面積よりも大きい、送風装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の送風装置であって、
前記各羽根における前記複数の第1および第2の凹凸状部およびこれらの相互間に挟まれている非凹凸状部のトータルの正面視投影面積は、前記各羽根の前記第1および第2の面のそれぞれの面積の半分を超えている、送風装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の送風装置であって、
前記羽根車には、前記複数の羽根の相互間のうち、前記羽根車の半径方向外側寄りに位置して、前記羽根間流路を前記周方向において複数の領域に区分する複数の補助羽根が、さらに具備されており、
前記複数の第1および第2の凹凸状部は、前記各補助羽根にも設けられている、送風装置。
【請求項8】
バーナと、このバーナに燃焼用の気体を供給するための送風装置と、を備えている、燃
焼装置であって、
前記送風装置として、請求項1ないし7のいずれかに記載の送風装置が用いられていることを特徴とする、燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心型送風装置などの送風装置、およびこれを備えた燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、送風装置の具体例として、特許文献1~3に記載のものを先に提案している。
これらの文献に記載の送風装置は、羽根車がケーシング内に収容され、かつモータによって駆動回転自在とされている。ケーシングは、吸気口および送風口を有している。羽根車は、周方向に間隔を隔てて並んだ複数の羽根を備え、これら複数の羽根よりも中心寄り領域は、複数の羽根の相互間に形成された羽根間流路に連通する中央空間部とされている。前記羽根車の回転時においては、ケーシングの外部から吸気口を介して羽根車の中央空間部に流入した空気が、羽根間流路を通過して羽根車の外周囲に流れ出してから送風口に到達し、この送風口からケーシングの外部に吐出される。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次のように、改善すべき余地があった。
【0004】
送風装置の性能として、静寂性(低騒音性)が求められる場合が多い。これに対し、前記した構成の送風装置は、羽根車の複数の羽根が回転する際の遠心力などを利用し、羽根車の羽根間流路中に空気を羽根車の外周囲側に強制的に流れさせているため、この空気流に起因する騒音は比較的大きいものとなっている。したがって、このことを改善することが望まれる。
【0005】
なお、特許文献4には、前記したような騒音を低減するための手段として、羽根車の各羽根の片面に、ディンプルを設ける手段が記載されている。このような手段によれば、空気が各羽根の前記片面に沿って流れる際に、ディンプルの形成箇所に小規模な乱流を発生させ、空気流が前記片面から剥離する現象を抑制し、空気流の剥離に起因する送風騒音を低減することが可能である。ただし、このような効果のみでは十分な静寂性を得ることは難しく、騒音低減効果をさらに高めることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-110526公報
【特許文献2】特開2017-150472号公報
【特許文献3】特開2020-133495号公報
【特許文献4】特開2010-133254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、騒音低減を適切に図ることが可能な送風装置、およびこれを備えた燃焼装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の側面により提供される送風装置は、吸気口および送風口を有するケーシングと、このケーシング内に収容されて回転される羽根車と、を備えており、この羽根車
は、複数の羽根間流路を形成するように周方向に間隔を隔てて並んだ複数の羽根を有し、かつこれら複数の羽根よりも中心寄り領域が前記複数の羽根間流路に連通する中央空間部とされており、前記羽根車の回転時においては、前記吸気口を介して前記中央空間部に流入した空気が、前記複数の羽根間流路を前記羽根車の半径方向外方側に通過するように構成されている、送風装置であって、前記各羽根には、前記複数の羽根間流路を空気が通過するときに発生する騒音低減手段として、前記各羽根の表裏両面に相当する第1および第2の面のうち、第1の面側は凹状、かつ他方の第2の面側は凸状である複数の第1の凹凸状部と、これとは反対に、前記第2の面側は凹状、かつ前記第1の面側は凸状である複数の第2の凹凸状部と、を備えていることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、羽根車の各羽根には、複数の第1および第2の凹凸状部が設けられており、これらは各羽根の表裏両面(第1および第2の面)のうち、一方側は凹状とされ、他方側は凸状とされているが、一方の凹状の領域には、いわゆるディンプル効果を生じさせ、空気流の剥離抑制作用、およびカルマン渦の抑制作用を得ることが可能である。他方の凸状の領域によっても、凹状の領域によるディンプル効果と同様な効果またはこれに近い効果を生じさせることが可能である。このようなことから、羽根車が回転し、空気が羽根間流路を流れるときの騒音を、複数の第1および第2の凹凸状部の存在により低減することが可能であるが、これら複数の第1および第2の凹凸状部は、羽根車の各羽根の両面(第1および第2の面)に設けられている。このため、たとえば片面のみに設けられている特許文献4と比較して、騒音低減効果に優れたものとし、静寂性を高めることが可能である。
また、本発明によれば、各羽根に設けられている第1および第2の凹凸状部は、これらの断面形状を互いに対称とし、または対称に近いものとすることが可能である。このため、各羽根に、反り変形などを生じないようにし、各羽根の形状保持などを的確に図ることもできる。本発明とは異なり、たとえば各羽根に第1の凹凸状部のみを設けた場合には、各羽根は、第1の面に凹状の領域のみが存在し、かつ第2の面には凸状の領域のみが存在する構成となり、反り変形などを生じ易いものとなるが、本発明によれば、そのような不具合を適切に回避することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記各羽根は、金属板を用いて構成されており、前記各第1および第2の凹凸状部は、プレス加工部である。
【0012】
このような構成によれば、前記各羽根の第1および第2の凹凸状部は、プレス加工により比較的容易に形成することが可能である。プレス加工は、各羽根の両面(第1および第2の面)に対して行なうこととなるため、各羽根に反り変形を生じないようにすることができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記各第1および第2の凹凸状部は、片側が凹状球面であり、かつその反対の片側が凸状球面であり、前記凹状球面の領域は、直径が1.0~3.0mmの正面視円形状であり、かつ最深部の深さは0.4mm以上である。
【0014】
本件発明者らは、第1および第2の凹凸状部の形状、サイズと、騒音低減効果との関係について試験を重ねたところ、前記構成によれば、騒音低減効果がより優れたものとなることを見出した。このことは、表1を参照して後述する内容からも理解することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記複数の第1および第2の凹凸状部は、前記羽根車の互いに交差する半径方向および幅方向に複数の列状に並び、かつ前記複数の第1の凹凸状部の列および前記複数の第2の凹凸状部の列が、前記半径方向および前記幅方向に位置ずれして交互に並ぶ千鳥配列である。
【0016】
このような構成によれば、羽根車の各羽根に設けられている複数の第1および第2の凹凸状部が、羽根間流路における空気流に対して効果的に作用する配置に設けられており、騒音低減効果を高める上で一層好ましい。
【0017】
本発明において、好ましくは、前記各羽根における前記複数の第1および第2の凹凸状部のトータルの正面視投影面積は、これら複数の第1および第2の凹凸状部の相互間に挟まれている非凹凸状部のトータルの面積よりも大きい。
【0018】
このような構成によれば、複数の第1および第2の凹凸状部に挟まれている非凹凸状部の面積が小さくなるように、複数の第1および第2の凹凸状部は、密度が高い状態に設けられている。このため、それら第1および第2の凹凸状部を利用した騒音低減効果をより高めることが可能となる。
【0019】
本発明において、好ましくは、前記各羽根における前記複数の第1および第2の凹凸状部およびこれらの相互間に挟まれている非凹凸状部のトータルの正面視投影面積は、前記各羽根の前記第1および第2の面のそれぞれの面積の半分を超えている。
【0020】
このような構成によれば、複数の第1および第2の凹凸状部が、各羽根の広範囲にわたって設けられているため、騒音低減効果を十分に見込むことができる。
【0021】
本発明において、好ましくは、前記羽根車には、前記複数の羽根の相互間のうち、前記羽根車の半径方向外側寄りに位置して、前記羽根間流路を前記周方向において複数の領域に区分する複数の補助羽根が、さらに具備されており、前記複数の第1および第2の凹凸状部は、前記各補助羽根にも設けられている。
【0022】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、羽根車の複数の羽根が、たとえば放射状に設けられた場合、羽根間流路は、羽根車の半径方向外側寄りの位置ほど、幅広となる。このため、羽根間流路の幅広部分を空気が流れる場合に、各羽根の両面(第1および第2の面)の近傍を流れず、第1および第2の凹凸状部の形成箇所付近を流れない空気流が多くなる場合があり、このような空気流は騒音の発生原因となり得る。これに対し、前記構成によれば、そのような空気流の位置に補助羽根が配されており、この補助羽根に設けられている第1および第2の凹凸状部を利用した騒音低減効果をさらに得ることが可能となる。
【0023】
本発明の第2の側面により提供される燃焼装置は、バーナと、このバーナに燃焼用の気体を供給するための送風装置と、を備えている、燃焼装置であって、前記送風装置として、本発明の第1の側面により提供される送風装置が用いられていることを特徴としている。
【0024】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供される送風装置について述べたのと同様な効果が得られる。
【0025】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係る送風装置の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す送風装置の羽根車の斜視図である。
【
図6】(a)は、
図5のVIa-VIa断面図であり、(b)は、
図5のVIb-VIb断面図であり、(c)は、
図5のVIc-VIc断面図であり、(d)は、(a)の一部拡大断面図である。
【
図7】
図1および
図2に示す送風装置を備えて構成された燃焼装置およびこの燃焼装置を利用して構成された給湯装置の一例を示す要部断面図である。
【
図8】本発明における羽根車の他の例を示す一部破断平面図である。
【
図9】(a)は、
図8に示す羽根車の補助羽根の正面図であり、(b)は、(a)のIXb-IXb断面図であり、(c)は、(a)のIXc-IXc断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0028】
図1および
図2に示す送風装置Aは、遠心型であり、羽根車I、この羽根車Iを内部に収容するケーシング2、および羽根車Iの駆動回転用のモータMを備えている。羽根車Iの各羽根5には、後述する複数の第1および第2の凹凸状部(段押し状部)51,52が設けられている。
【0029】
ケーシング2は、吸気口24が形成された前側壁部21、この前側壁部21に間隔を隔てて対向する後側壁部22、および周壁部20を備えている。後側壁部22には、モータMがビス止めされたモータ取付け板23が、ビス90を用いて取付けられている。モータ取付け板23は、後側壁部22に設けられている羽根車Iの出し入れ用の開口部22aを塞いでいる。周壁部20は、羽根車Iの外周囲を囲み、かつその上部には送風口4aを形成している。羽根車Iの外周部分と周壁部20との相互間には、羽根車Iの後述する羽根間流路61から流出する空気を送風口4aに導く空気流路4が形成されている。
【0030】
図2~
図4によく表れているように、羽根車Iは、前側シュラウド12、後側シュラウド13、および複数の羽根5を備えている。
複数の羽根5は、この羽根車Iの周方向に間隔を隔てて並んだ放射状配列であって、この羽根車Iの半径方向に略直線状に延びており、本実施形態の送風装置Aは、ラジアルファンとして構成されている。複数の羽根5の相互間には、羽根間流路61が形成され、また複数の羽根5よりも羽根車Iの中心寄り領域は、複数の羽根間流路61に連通する中央空間部60となっている。
【0031】
前側シュラウド12は、中央部に吸気用の開口部が形成された中空円板状である。後側シュラウド13は、前側シュラウド12と外径が略同一の円板状である。複数の羽根5は、これら前側シュラウド12と後側シュラウド13との相互間に挟まれて固定されている。この固定手段としては、たとえば
図5によく表れているように、各羽根5の前部および後部(
図5では、上部および下部)に設けられているカシメ用の複数の凸部59を、前側シュラウド12および後側シュラウド13に設けられている複数の孔部12a,13aに差し込んでかしめる手段が採用されている。
【0032】
モータMの駆動軸30には、後側シュラウド13の中央部がナット部材31などを用いて取付けられており、このことにより羽根車IはモータMを利用して回転自在である。羽根車Iの回転時には、ケーシング2の外部空気が吸気口24から中央空間部60に流入してから複数の羽根間流路61を、羽根車Iの半径方向外方側に流れて空気流路4に流出し、その後は送風口4aからケーシング2の外部に流出する。
【0033】
図5および
図6によく表れているように、各羽根5には、空気が複数の羽根間流路61
を通過するときに発生する騒音低減手段として、複数の第1および第2の凹凸状部51,52が設けられている(
図5において、第1の凹凸状部51には、網点模様を付しており、第2の凹凸状部52には、網点模様を付していない)。
ここで、羽根5の表裏両面を第1および第2の面5a,5bとした場合、第1の凹凸状部51は、第1の面5a側が適当な曲率半径Ra(
図6(d)参照)の凹状球面とされ、かつ第2の面5b側が、前記凹状球面に対応する凸状球面である。好ましくは、前記凹状球面の周縁部には、適当な曲率半径Rbの丸み付けが図られている。なお、曲率半径Rbは、より好ましくは、板厚tよりも小さくされる。曲率半径Rbを適度に小さくすれば、凹状球面の形状をシャープとし、後述するディンプル効果をより優れたものとすることが可能である。
一方、第2の凹凸状部52は、第1の凹凸状部51とは反対に、第2の面5b側が凹状球面とされ、かつ第1の面5a側が凸状球面であり、第1の凹凸状部51と対称である。
【0034】
第1および第2の凹凸状部51,52のサイズの具体例は後述するが、これらは空気流に対してディンプル効果またはこれに近い効果を生じさせ得るサイズである。また、これらは、金属製の各羽根5に対して、その厚み方向両側からプレス加工(段押し加工)を施すことにより形成されたプレス加工部である。
【0035】
図5によく表れているように、複数の第1および第2の凹凸状部51,52は、千鳥配列に設けられている。より具体的には、複数の第1および第2の凹凸状部51,52のそれぞれは、羽根車Iの半径方向および幅方向に複数の列状に並んでおり、第1の凹凸状部51の複数の列と、第2の凹凸状部52の複数の列とは、前記半径方向および前記幅方向の双方に位置ずれして交互に並んだ配列とされている。
【0036】
また、複数の第1および第2の凹凸状部51,52は、これらトータルの正面視投影面積a1(凹状球面、凸状球面の立体分の面積ではない)が、複数の第1および第2の凹凸状部51,52の相互間の非凹凸状部(平面状の領域)のトータルの面積a2よりも大きくなるように、密集した配置に設けられている。好ましくは、前記した複数の第1および第2の凹凸状部51,52の正面視投影面積およびそれら複数の第1および第2の凹凸状部51,52の相互間に挟まれたいる非凹凸状部のトータルの面積(a1+a2)は、羽根5の第1および第2の面5a,5bのそれぞれの面積の半分を超える面積とされている。
【0037】
前記した送風装置Aは、たとえば
図7に示すような燃焼装置C、およびこの燃焼装置Cを備えた給湯装置WHの構成要素として用いられる。
同図に示す燃焼装置Cは、ケース80内に収容されたバーナ8と、バーナ8に対して燃焼用空気を供給可能にケース80に取付けられた送風装置Aとを備えている。給湯装置WHは、バーナ8によって発生された燃焼ガスを利用して湯水加熱を行なう熱交換器9を備えている。
【0038】
次に、前記した送風装置Aの作用について説明する。
【0039】
まず、羽根車IがモータMにより回転されるときには、既述したように、外部の空気が吸気口24から羽根車Iの中央空間部60に流入し、かつその後は各羽根間流路61を半径方向外方側に通過して空気流路4に流出し、送風口4aからケーシング2の外部に流出する。
これに対し、羽根車Iの各羽根5には、複数の第1および第2の凹凸状部51,52が設けられており、これらの一方側の面は、凹状球面とされ、かつ他方側の面は、凸状球面とされている。凹状球面は、次に述べるようなディンプル効果を生じさせ、騒音低減効果が得られる。
【0040】
すなわち、空気流が各羽根5に沿って流れるときに、第1および第2の凹凸状部51,52の凹状球面の形成箇所において、小規模の乱流を生じ、各羽根5の表裏面である第1および第2の面5a,5bに沿って流れる層流境界層となっていた境界層が、乱流境界層になり易くなる。このことにより、各羽根5の第1および第2の面5a,5bに沿う空気流は、それら第1および第2の面5a,5bから剥離し難くなり、カルマン渦の規則的な発生も生じ難くなる。その結果、空気流の騒音を低減し、送風装置Aの静寂性を高めることが可能である。
一方、第1および第2の凹凸状部51,52の凸状球面の形成箇所においても、前記したのと同様な作用が得られ、空気流の騒音を低減することが可能となる。
【0041】
本実施形態においては、前記した騒音低減効果を生じさせる第1および第2の凹凸状部51,52が、各羽根5の表裏両面(第1および第2の面5a,5b)に設けられているため、騒音低減効果をかなり優れたものとすることが可能である。
【0042】
なお、本発明者らは、前記した送風装置Aと同様な装置を試作し、第1および第2の凹凸状部51,52の形状・サイズと、騒音低減効果との関係を求めるための実験を行なった。その結果、次の表1に例示するような実験結果のデータが得られた。
【表1】
【0043】
表1のデータは、複数の第1および第2の凹凸状部51,52として、片側が凹状球面、かつその反対の片側が凸状球面の構成とし、凹状球面の最深部の深さdを、0.1~0.5まで段階的に相違させた際の音圧レベル(A特性(聴感補正))を示している。複数の第1および第2の凹凸状部51,52の配列は、
図5に示した配列と同様であり、これ以外の各部の構成や送風装置Aの運転条件などは同一条件に揃えている。羽根5の板厚tは、0.4mmである。
【0044】
表1に示すように、凹状球面の最深部の深さdを、0.4mm以上にすると、それ未満の場合よりも騒音低減効果が明らかに優れたものとなった。また、このような実験は、凹状球面の正面視の直径Dを種々変化させて行なったところ、直径Dが1.0~3.0mmの正面視円形状である範囲においては、表1と同様な傾向の実験結果のデータが得られた。なお、表1には記載していないが、板厚tの大小は、騒音低減効果を余り大きく左右しない旨が判明した。
したがって、第1および第2の凹凸状部51,52を、片側が凹状球面、かつその反対の片側が凸状球面であって、前記凹状球面の領域を、直径Dが1.0~3.0mmの正面視円形状の範囲内とした場合において、その最深部の深さdを0.4mm以上とすることが好ましい。
【0045】
本実施形態の送風装置Aによれば、各羽根5に設けられている第1および第2の凹凸状部51,52が、互いに対称状であるため、各羽根5に反り変形などを生じないようにし、各羽根5の形状保持などを的確に図ることができる。各羽根5に、たとえば第1の凹凸状部51のみを設けた場合には、各羽根5に反り変形を生じる虞があるが、本実施形態によれば、そのような虞を無くすことが可能である。
【0046】
図8および
図9は、本発明の他の実施形態を示している。同図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付すこととし、重複説明は省
略する。
【0047】
図8に示す羽根車Iaは、複数の補助羽根5Aを備えている。各補助羽根5Aは、羽根車Iaの半径方向の長さが各羽根5よりも短く、かつ複数の羽根5の相互間(羽根間流路61)のうち、羽根車Iaの半径方向外側寄りに位置している。このことにより、各羽根間流路61の半径方向外側寄り領域は、各補助羽根5Aによって二分されている(なお、本実施形態とは異なり、各羽根間流路61に、複数の補助羽根5Aを設けることにより、各羽根間流路61を3以上の領域に区分した構成とすることも可能である)。
図8では省略されているが、
図9に示すように、各補助羽根5Aにも、複数の第1および第2の凹凸状部51,52が設けられている。各補助羽根5Aに設けられた複数の第1および第2の凹凸状部51,52は、その総数などは相違するが、基本的には、
図5に示したのと同様な千鳥配列とされている。
【0048】
羽根車Iaの複数の羽根5は、放射状に設けられており、羽根間流路61は、羽根車Iaの半径方向外側寄りの部分ほど、幅広となっている。これでは、羽根間流路61の幅広部分を空気が流れる場合に、各羽根5に設けられている第1および第2の凹凸状部51,52に近くを流れない空気が多くなり、騒音が増大する場合がある。これに対し、本実施形態によれば、前記幅広部分において、補助羽根5Aに設けられている第1および第2の凹凸状部51,52の近くに空気が流れるようにし、第1および第2の凹凸状部51,52を利用した騒音低減効果を得ることが可能となる。
【0049】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る送風装置、および燃焼装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0050】
第1および第2の凹凸状部の形状やサイズの好ましい具体例については、表1を参照して説明したとおりであるが、そのような具体例には限定されず、具体的な形状、サイズ、総数、配列などは、種々に変更することが可能である。要は、本発明における第1および第2の凹凸状部は、複数の羽根間流路を空気が通過するときに発生する騒音低減手段として機能する部位であって、第1の凹凸状部は、羽根車の各羽根の第1の面側が凹状、かつ第2の面側が凸状であればよい。第2の凹凸状部は、第1の凹凸状部とは反対に、第2の面側が凹状、かつ第1の面側が凸状であればよい。
第1および第2の凹凸状部は、金属製の羽根に対してプレス加工を施して形成することが可能であるが、羽根が樹脂製である場合には羽根と一体成形することも可能である。第1および第2の凹凸状部の具体的な形成方法も問わない。
【0051】
上述の実施形態の送風装置は、複数の羽根のそれぞれが半径方向に直線状に延びたラジアルファンとして構成されているが、これに代えて、たとえば複数の羽根のそれぞれが湾曲した構成のターボファンなどとして構成することもできる。
【0052】
本発明に係る送風装置は、燃焼装置の構成要素として用いることに代えて、それ以外の用途に用いることも可能である。また、本発明に係る燃焼装置は、給湯装置用に限らず、たとえば暖房用などの燃焼装置として構成することも可能であり、燃焼の目的・用途は限定されない。
【符号の説明】
【0053】
A 送風装置
C 燃焼装置
I 羽根車
M モータ
2 ケーシング
24 吸気口
4 空気流路
4a 送風口
5 羽根
5A 補助羽根
5a,5b 第1および第2の面(羽根の)
51,52 第1および第2の凹凸状部
60 中央空間部
61 羽根間流路