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特開2023-94009発光装置、プロジェクター、およびディスプレイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094009
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】発光装置、プロジェクター、およびディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/30 20060101AFI20230628BHJP
   H01S 5/343 20060101ALI20230628BHJP
   H01L 33/08 20100101ALI20230628BHJP
   H01L 33/16 20100101ALI20230628BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20230628BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20230628BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20230628BHJP
   G09F 9/33 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
H01S5/30
H01S5/343 610
H01L33/08
H01L33/16
G03B21/14 A
G03B21/00 D
G09F9/30 360
G09F9/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209201
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502350504
【氏名又は名称】学校法人上智学院
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】両角 浩一
(72)【発明者】
【氏名】石沢 峻介
(72)【発明者】
【氏名】岸野 克巳
【テーマコード(参考)】
2K203
5C094
5F173
5F241
【Fターム(参考)】
2K203FA23
2K203FA34
2K203FA44
2K203FA54
2K203GA02
2K203MA04
5C094AA07
5C094BA03
5C094BA23
5C094ED01
5F173AA23
5F173AB52
5F173AB90
5F173AF12
5F173AF25
5F173AF32
5F173AG03
5F173AH22
5F173AK21
5F173AP05
5F173AP09
5F173AP13
5F173AR23
5F173AR26
5F173AR82
5F241AA03
5F241CA05
5F241CA10
5F241CA12
5F241CA23
5F241CA40
5F241CA65
5F241CA66
5F241CA88
5F241CB02
5F241CB15
(57)【要約】
【課題】第1ウェル層の径を大きくすることができる発光装置を提供する。
【解決手段】基板と、少なくとも1つの柱状部と、を有し、前記柱状部は、第1導電型の第1半導体層と、前記第1導電型と異なる第2導電型の第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、を有し、前記第1半導体層は、前記基板と前記発光層との間に設けられ、前記発光層は、第1ウェル層と、バリア層と、を有し、前記バリア層は、前記第1半導体層と前記第1ウェル層との間に設けられた第1層を有し、前記第1層の結晶構造は、立方晶である、発光装置。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
少なくとも1つの柱状部と、
を有し、
前記柱状部は、
第1導電型の第1半導体層と、
前記第1導電型と異なる第2導電型の第2半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、
を有し、
前記第1半導体層は、前記基板と前記発光層との間に設けられ、
前記発光層は、第1ウェル層と、バリア層と、を有し、
前記バリア層は、前記第1半導体層と前記第1ウェル層との間に設けられた第1層を有し、
前記第1層の結晶構造は、立方晶である、発光装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1層の径は、前記第1ウェル層の径よりも大きい、発光装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記バリア層は、前記第1層と前記第1ウェル層との間に設けられた第2層を有し、
前記第2層の結晶構造は、六方晶である、発光装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記発光層は、第2ウェル層を有し、
前記第1ウェル層は、前記第1層と前記第2ウェル層との間に設けられ、
前記第1層の径は、前記第2ウェル層の径よりも大きい、発光装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記第2ウェル層の径は、前記第1ウェル層の径よりも大きい、発光装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、
複数の前記柱状部を有し、
複数の前記柱状部は、フォトニック結晶を構成する、発光装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、
前記第1ウェル層は、InGaN層であり、
前記バリア層は、GaN層である、発光装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の発光装置を有する、プロジェクター。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の発光装置を有する、ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、プロジェクター、およびディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザーは、高輝度の次世代光源として期待されている。特に、ナノコラムを適用した半導体レーザーは、ナノコラムによるフォトニック結晶の効果によって、狭放射角で高出力の発光が実現できると期待されている。
【0003】
例えば特許文献1には、i型のInGaN層である発光層と、i型のGaN層であるバリア層と、を有する柱状部を複数備えた発光装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-57640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなInGaN層を有する発光装置では、InGaN層を成長させる際に、Inが柱状部の中央に選択的に取り込まれる。そのため、柱状部に電流を注入した場合に、InGaN層と、柱状部の側面と、の間を電流が流れ、発光効率が低下する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発光装置の一態様は、
基板と、
少なくとも1つの柱状部と、
を有し、
前記柱状部は、
第1導電型の第1半導体層と、
前記第1導電型と異なる第2導電型の第2半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、
を有し、
前記第1半導体層は、前記基板と前記発光層との間に設けられ、
前記発光層は、第1ウェル層と、バリア層と、を有し、
前記バリア層は、前記第1半導体層と前記第1ウェル層との間に設けられた第1層を有し、
前記第1層の結晶構造は、立方晶である。
【0007】
本発明に係るプロジェクターの一態様は、
前記発光装置の一態様を有する。
【0008】
本発明に係るディスプレイの一態様は、
前記発光装置の一態様を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図2】本実施形態に係る発光装置を模式的に示す平面図。
図3】本実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図4】本実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図5】本実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図6】本実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図7】本実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図8】本実施形態に係るプロジェクターを模式的に示す図。
図9】本実施形態に係るディスプレイを模式的に示す平面図。
図10】本実施形態に係るディスプレイを模式的に示す断面図。
図11】柱状部のTEM像。
図12】立方晶層の層数と、ウェル層の径の変動幅と、の関係を示すグラフ。
図13】立方晶層の層数と、ウェル層の占有率と、の関係を示すグラフ。
図14】柱状部のウェル層の径と、ウェル層の光閉じ込め係数と、の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0011】
1. 発光装置
1.1. 全体の構成
まず、本実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る発光装置100を模式的に示す断面図である。図2は、本実施形態に係る発光装置100を模式的に示す平面図である。なお、図1は、図2のI-I線断面図である。
【0012】
発光装置100は、図1に示すように、例えば、基板10と、積層体20と、第1電極40と、第2電極42と、を有している。発光装置100は、例えば、半導体レーザーである。
【0013】
基板10は、例えば、Si基板、GaN基板、サファイア基板、SiC基板などである。
【0014】
積層体20は、基板10に設けられている。図示の例では、積層体20は、基板10上に設けられている。積層体20は、例えば、第1バッファー層22と、DBR(Distributed Bragg Reflector)層24と、第2バッファー層26と、マスク層28と、少なくとも1つの柱状部30と、を有している。なお、便宜上、図2では、柱状部30以外の部材の図示を省略している。
【0015】
本明細書では、積層体20の積層方向(以下、単に「積層方向」ともいう)において、柱状部30の発光層130を基準とした場合、発光層130から柱状部30の第2半導体層150に向かう方向を「上」とし、発光層130から柱状部30の第1半導体層110に向かう方向を「下」として説明する。また、積層方向と直交する方向を「面内方向」ともいう。また、「積層体20の積層方向」とは、第1半導体層110と発光層130との積層方向のことである。
【0016】
第1バッファー層22は、基板10上に設けられている。第1バッファー層22は、例えば、Siがドープされたn型のGaN層、AlN層である。第1バッファー層22とDBR層24との格子定数の差は、基板10とDBR層24との差よりも小さい。
【0017】
DBR層24は、第1バッファー層22上に設けられている。DBR層24は、例えば、AlInN層とGaN層との多層膜、AlGaN層とGaN層との多層膜、AlN層とGaN層との多層膜によって構成されている。DBR層24は、発光層130で発生し基板10側へ向かう光を、第2電極42側に向けて反射させることができる。
【0018】
第2バッファー層26は、DBR層24上に設けられている。第2バッファー層26は、例えば、Siがドープされたn型のGaN層である。第2バッファー層26の厚さは、例えば、50nm以上1000nm以下である。
【0019】
マスク層28は、第2バッファー層26上に設けられている。マスク層28は、例えば、チタン層、酸化チタン層、シリコン層、酸化シリコン層などである。マスク層28は、柱状部30を成長させるためのマスクとして機能する。
【0020】
柱状部30は、第2バッファー層26上に設けられている。柱状部30は、第2バッファー層26から上方に突出した柱状の形状を有している。言い換えれば、柱状部30は、第2バッファー層26、DBR層24、および第1バッファー層22を介して、基板10から上方に突出している。柱状部30は、例えば、ナノコラム、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノピラーとも呼ばれる。柱状部30の平面形状は、例えば、六角形などの多角形、円である。図2に示す例では、柱状部30の平面形状は、正六角形である。
【0021】
柱状部30の径は、例えば、50nm以上500nm以下である。柱状部30の径を500nm以下とすることによって、高品質な結晶の発光層130を得ることができ、かつ、発光層130に内在する歪を低減することができる。これにより、発光層130で発生する光を高い効率で増幅することができる。
【0022】
なお、「柱状部30の径」とは、柱状部30の平面形状が円の場合は、直径であり、柱状部30の平面形状が円ではない形状の場合は、最小包含円の直径である。例えば、柱状部30の径は、柱状部30の平面形状が多角形の場合、該多角形を内部に含む最小の円の直径であり、柱状部30の平面形状が楕円の場合、該楕円を内部に含む最小の円の直径である。このことは、後述する「ウェル層の径」および「立方晶層の径」において、同様である。
【0023】
柱状部30は、複数設けられている。隣り合う柱状部30の間隔は、例えば、1nm以上500nm以下である。複数の柱状部30は、積層方向からみて、所定の方向に所定のピッチで配列されている。複数の柱状部30は、例えば、三角格子状、正方格子状に配列されている。図2に示す例では、複数の柱状部30は、正三角格子状に配列されている。複数の柱状部30は、フォトニック結晶を構成し、フォトニック結晶の効果を発現することができる。図示はしないが、柱状部30は、1つだけ設けられていてもよい。
【0024】
なお、「柱状部30のピッチ」とは、所定の方向に隣り合う柱状部30の中心間の距離である。「柱状部30の中心」とは、柱状部30の平面形状が円の場合は、該円の中心であり、柱状部30の平面形状が円ではない形状の場合は、最小包含円の中心である。例えば、柱状部30の中心は、柱状部30の平面形状が多角形の場合、該多角形を内部に含む最小の円の中心であり、柱状部30の平面形状が楕円の場合、該楕円を内部に含む最小の円の中心である。
【0025】
柱状部30は、図1に示すように、第1半導体層110と、発光層130と、第2半導体層150と、を有している。なお、便宜上、図1では、柱状部30を簡略化して図示している。柱状部30の詳細な構成は、後述する。
【0026】
第1半導体層110は、DBR層24上に設けられている。第1半導体層110は、基板10と発光層130との間に設けられている。第1半導体層110は、第1導電型の半導体層である。第1半導体層110は、例えば、Siがドープされたn型のGaN層である。
【0027】
発光層130は、第1半導体層110と第2半導体層150との間に設けられている。発光層130は、電流が注入されることで光を発生させる。発光層130は、図1では図示しないウェル層およびバリア層を有している。ウェル層およびバリア層は、不純物が意図的にドープされていないi型の半導体層である。ウェル層は、例えば、InGaN層である。バリア層は、例えば、GaN層である。発光層130は、ウェル層とバリア層とから構成されたMQW(Multiple Quantum Well)構造を有している。
【0028】
なお、発光層130を構成するウェル層の数は、特に限定されない。例えば、ウェル層は、1層だけ設けられていてもよく、この場合、発光層130は、SQW(Single Quantum Well)構造を有している。
【0029】
第2半導体層150は、発光層130と第2電極42との間に設けられている。第2半導体層150は、第1導電型と異なる第2導電型の半導体層である。第2半導体層150は、例えば、Mgがドープされたp型のGaN層である。第1半導体層110および第2半導体層150は、発光層130に光を閉じ込める機能を有するクラッド層である。
【0030】
発光装置100では、p型の第2半導体層150、i型の発光層130、およびn型の第1半導体層110により、pinダイオードが構成される。発光装置100では、第1電極40と第2電極42との間に、pinダイオードの順バイアス電圧を印加すると、発光層130に電流が注入されて発光層130において電子と正孔との再結合が起こる。この再結合により発光が生じる。発光層130で発生した光は、面内方向に伝搬し、複数の柱状部30によるフォトニック結晶の効果により定在波を形成して、発光層130で利得を受けてレーザー発振する。そして、発光装置100は、+1次回折光および-1次回折光をレーザー光として、積層方向に出射する。
【0031】
第1電極40は、第2バッファー層26上に設けられている。第2バッファー層26は、第1電極40とオーミックコンタクトしていてもよい。第1電極40は、第1半導体層110と電気的に接続されている。図示の例では、第1電極40は、第2バッファー層26を介して、第1半導体層110と電気的に接続されている。第1電極40としては、例えば、第2バッファー層26側から、Cr層、Ni層、Au層の順序で積層された金属電極などを用いる。第1電極40は、発光層130に電流を注入するための一方の電極である。
【0032】
第2電極42は、第2半導体層150上に設けられている。第2半導体層150は、第2電極42とオーミックコンタクトしていてもよい。第2電極42としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)やZnO等の透明電極、第2半導体層150側から、Ni層、Au層の順序で積層された金属電極、金属電極に透明電極が積層されたものなどを用いる。例えば、第2半導体層150と透明電極との間に金属電極を設けることで、第2電極42のコンタクト抵抗を低くすることができる。この場合、金属電極の厚さは、透明電極の厚さよりも小さい。第2電極42は、発光層130に電流を注入するための他方の電極である。
【0033】
なお、発光装置100は、レーザーに限らず、LED(Light Emitting Diode)であってもよい。
【0034】
1.2. 柱状部の構成
図3は、柱状部30を模式的に示す断面図である。柱状部30は、図3に示すように、例えば、第1半導体層110と、OCL(Optical Confinement Layer)120と、発光層130と、EBL(Electron Blocking Layer)140と、第2半導体層150と、を有している。第1半導体層110、OCL120、発光層130、EBL140、および第2半導体層150は、例えば、III族窒化物半導体であり、ウルツ鉱型結晶構造を有している。
【0035】
第1半導体層110は、DBR層24とOCL120との間に設けられている。第1半導体層110の結晶構造は、例えば、六方晶である。第1半導体層110の積層方向の大きさは、例えば、100nm以上である。第1半導体層110の積層方向の大きさが100nm以上であれば、基板10からの貫通欠陥を低減することができる。なお、図示はしないが、第1半導体層110は、OCL120と接するAlGaN層を有していてもよい。
【0036】
OCL120は、第1半導体層110上に設けられている。OCL120は、第1半導体層110と発光層130との間に設けられている。OCL120は、発光層130で発生した光を発光層130に閉じ込めることができる。
【0037】
OCL120は、高屈折率層122と低屈折率層124とが交互に積層された超格子(SL)構造を有している。高屈折率層122は、例えば、i型のInGaN層である。高屈折率層122および発光層130のウェル層132a,132b,132cがInGaN層である場合、高屈折率層122のIn組成は、ウェル層132a,132b,132cのIn組成よりも小さい。高屈折率層122の屈折率は、低屈折率層124の屈折率よりも高く、ウェル層132a,132b,132cの屈折率よりも低い。高屈折率層122は、柱状部30の側面32と離間している。側面32は、例えば、m面である。低屈折率層124は、例えば、i型のGaN層である。低屈折率層124の結晶構造は、例えば、六方晶である。低屈折率層124は、柱状部30の側面32を構成している。なお、高屈折率層122は、n型であってもよい。低屈折率層124は、n型であってもよい。
【0038】
OCL120は、c面126と、ファセット面128と、を有している。c面126は、例えば、基板10の上面と平行である。ファセット面128は、c面126に対して傾斜している。ファセット面128は、積層方向からみて、c面126を囲んでいる。高屈折率層122は、c面126を構成している。低屈折率層124は、ファセット面128を構成している。OCL120の積層方向の大きさは、例えば、10nm以上300nm以下である。
【0039】
発光層130は、OCL120上に設けられている。発光層130は、OCL120とEBL140との間に設けられている。発光層130は、例えば、第1ウェル層132aと、第2ウェル層132bと、第3ウェル層132cと、バリア層134と、を有している。なお、発光層130が有するウェル層の数は、特に限定されない。
【0040】
第1ウェル層132a、第2ウェル層132b、および第3ウェル層132cは、例えば、i型のInGaN層である。第1ウェル層132aは、第1半導体層110と第2ウェル層132bとの間に設けられている。第2ウェル層132bは、第1ウェル層132aと第3ウェル層132cとの間に設けられている。第3ウェル層132cは、第2ウェル層132bとEBL140との間に設けられている。
【0041】
第1ウェル層132aの径D1は、OCL120の高屈折率層122よりも大きい。第2ウェル層132bの径D2は、第1ウェル層132aの径D1よりも大きい。第3ウェ
ル層132cの径D3は、第2ウェル層132bの径D2よりも大きい。ウェル層132a,132b,132cは、柱状部30の側面32と離間している。ウェル層132a,132b,132cの厚さは、例えば、OCL120の高屈折率層122の厚さよりも大きい。
【0042】
バリア層134は、ウェル層132a,132b,132cを囲んでいる。ウェル層132a,132b,132cは、バリア層134に挟まれている。バリア層134は、例えば、i型のGaN層である。バリア層134は、柱状部30の側面32を構成している。
【0043】
バリア層134は、例えば、第1低屈折率層135a、第2低屈折率層135b、第3低屈折率層135c、および第4低屈折率層135dから構成されている。第1低屈折率層135aは、OCL120と第2低屈折率層135bとの間に設けられている。第2低屈折率層135bは、第1低屈折率層135aと第3低屈折率層135cとの間に設けられている。第3低屈折率層135cは、第2低屈折率層135bと第4低屈折率層135dとの間に設けられている。第4低屈折率層135dは、第3低屈折率層135cとEBL140との間に設けられている。低屈折率層135a,135b,135c,135dの屈折率は、ウェル層132a,132b,132cの屈折率よりも低い。
【0044】
バリア層134は、例えば、第1立方晶層136aと、第2立方晶層136bと、第3立方晶層136cと、六方晶層137と、を有している。立方晶層136a,136b,136cの結晶構造は、立方晶である。六方晶層137の結晶構造は、六方晶である。バリア層134が有する立方晶層の数は、例えば、ウェル層の数と同じである。
【0045】
第1立方晶層136aは、第1半導体層110と第1ウェル層132aとの間に設けられている。第1ウェル層132aは、第1立方晶層136aと第2ウェル層132bとの間に設けられている。第2立方晶層136bは、第1ウェル層132aと第2ウェル層132bとの間に設けられている。第3立方晶層136cは、第2ウェル層132bと第3ウェル層132cとの間に設けられている。
【0046】
第1立方晶層136aの径Wは、ウェル層132a,132b,132cの径D1,D2,D3よりも大きい。図示の例では、第1立方晶層136aの径Wは、柱状部30の径と同じである。立方晶層136a,136b,136cの径は、例えば、互いに等しい。立方晶層136a,136b,136cは、柱状部30の側面32を構成している。
【0047】
六方晶層137は、バリア層134の立方晶層136a,136b,136c以外の部分を構成している。ウェル層132a,132b,132cは、六方晶層137と接し、立方晶層136a,136b,136cは接していない。
【0048】
六方晶層137は、例えば、第1スペーサー層137aと、第2スペーサー層137bと、第3スペーサー層137cと、を有している。第1スペーサー層137aは、第1立方晶層136aと第1ウェル層132aとの間に設けられている。第2スペーサー層137bは、第2立方晶層136bと第2ウェル層132bとの間に設けられている。第3スペーサー層137cは、第3立方晶層136cと第3ウェル層132cとの間に設けられている。
【0049】
発光層130は、c面138と、ファセット面139と、を有している。c面138は、例えば、基板10の上面と平行である。ファセット面139は、c面138に対して傾斜している。ファセット面139は、積層方向からみて、c面138を囲んでいる。ウェル層132a,132b,132cは、c面138を構成している。六方晶層137は、
ファセット面128を構成している。
【0050】
EBL140は、発光層130上に設けられている。EBL140は、発光層130と第2半導体層150との間に設けられている。EBL140の積層方向の大きさは、例えば、20nm以下である。EBL140の材質は、例えば、Siがドープされたn型のAlGaN層である。EBL140がAlGaN層である場合、EBL140のAl組成は、例えば、5%以上25%以下である。なお、EBL140は、AlGaN層とGaN層とからなる積層体であってもよい。EBL140は、発光層130から溢れる電子をブロックすることができる。
【0051】
第2半導体層150は、EBL140上に設けられている。第2半導体層150は、EBL140と第2電極42との間に設けられている。第2半導体層150の結晶構造は、例えば、六方晶である。
【0052】
1.3. 作用効果
発光装置100では、柱状部30は、第1導電型の第1半導体層110と、第1導電型と異なる第2導電型の第2半導体層150と、第1半導体層110と第2半導体層150との間に設けられた発光層130と、を有する。第1半導体層110は、基板10と発光層130との間に設けられている。発光層130は、第1ウェル層132aと、バリア層134と、を有する。バリア層134は、第1半導体層110と第1ウェル層132aとの間に設けられた第1層としての第1立方晶層136aを有し、第1立方晶層136aの結晶構造は、立方晶である。
【0053】
そのため、発光装置100では、第1立方晶層が設けられていない場合に比べて、Inが柱状部30の中央に選択的に取り込まれ難く、後述する実験例に示すように、第1ウェル層132aの径D1を大きくすることができる。これにより、第1ウェル層132aと柱状部30の側面32との間を流れる電流を減少させることができる。したがって、高い発光効率を有することができる。
【0054】
発光装置100では、第1立方晶層136aの径Wは、第1ウェル層132aの径D1よりも大きい。そのため、発光装置100では、第1ウェル層132aの径D1を、より確実に大きくすることができる。
【0055】
発光装置100では、バリア層134は、第1立方晶層136aと第1ウェル層132aとの間に設けられた第2層としての第1スペーサー層137aを有し、第1スペーサー層137aの結晶構造は、六方晶である。そのため、発光装置100では、第1スペーサー層が設けられておらず第1立方晶層と第1ウェル層とが接触している場合に比べて、第1ウェル層132aに発生する歪を小さくすることができる。
【0056】
発光装置100では、発光層130は、第2ウェル層132bを有し、第1ウェル層132aは、第1立方晶層136aと第2ウェル層132bとの間に設けられ、第1立方晶層136aの径Wは、第2ウェル層132bの径D2よりも大きい。そのため、発光装置100では、第2ウェル層132bの径D2を、より確実に大きくすることができる。
【0057】
発光装置100では、第2ウェル層132bの径D2は、第1ウェル層132aの径D2よりも大きい。そのため、発光装置100では、径D2が径D1以下である場合に比べて、第2ウェル層132bと、柱状部30の側面32と、の間を流れる電流を減少させることができる。
【0058】
発光装置100では、複数の柱状部30を有し、複数の柱状部30は、フォトニック結
晶を構成する。そのため、発光装置100では、発光層130で発生した光を、レーザー光として積層方向に出射することができる。
【0059】
さらに、発光装置100では、発光層130で発生した光と、第1ウェル層132aと、が重なる部分を大きくすることができる。発光層130で発生する光は、周期的に配列された複数の柱状部30によるフォトニック結晶効果によって、図2に示すように、積層方向からみて、ドーナッツ状の領域Aにおいて強度が高く、柱状部30の中心では強度が低い、という分布を有する。したがって、第1ウェル層132aの径D1を大きくすることにより、発光層130で発生した光と、第1ウェル層132aと、が重なる部分を大きくすることができる。これにより、第1ウェル層132aの光閉じ込め係数を向上させることができる。
【0060】
発光装置100では、第1ウェル層132aは、InGaN層であり、バリア層134は、GaN層である。そのため、発光装置100では、第1ウェル層132aが柱状部30の中央に選択的に成長され易いInGaN層であっても、第1ウェル層132aの径D1を大きくすることができる。
【0061】
2. 発光装置の製造方法
次に、本実施形態に係る発光装置100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図4図7は、本実施形態に係る発光装置100の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0062】
図4に示すように、基板10上に、第1バッファー層22、DBR層24、および第2バッファー層26を、この順でエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法などが挙げられる。第1バッファー層22、DBR層24、および第2バッファー層26の成長は、ドーパントを照射しながら行われる。
【0063】
次に、DBR層24上に、マスク層28を形成する。マスク層28は、例えば、電子ビーム蒸着法やスパッタ法などによって形成される。次に、マスク層28をパターニングして、開口部を形成する。パターニングは、例えば、電子線リソグラフィーおよびドライエッチングによって行われる。
【0064】
図5に示すように、DBR層24上に、第1半導体層110をエピタキシャル成長させる。第1半導体層110の成長は、マスク層28をマスクとして行われる。第1半導体層110の成長では、例えば、700℃以上1000℃以下の成膜温度で、MBE法の場合は、Ga原子、およびRF(Radio Frequency)プラズマを用いたN原子やガスソースとしてのNHを用いて供給し、MOCVD法の場合は、TMG(トリメチルガリウム)をNやHのキャリアガスを介して、N源はNHガスを用いて供給する。Ga原子およびN原子の供給方向は、特に限定されず、同時供給であってもよいし、交互供給であってもよいし、交互供給の後に同時供給を行ってもよいし、同時供給の後に交互供給を行ってもよい。第1半導体層110の成長は、ドーパントを照射しながら行われる。
【0065】
次に、第1半導体層110上に、OCL120をエピタキシャル成長させる。InGaN層である高屈折率層122と、GaN層である低屈折率層124と、で構成されるOCL120を成長させる場合、高屈折率層122の成長時には、Gaに対するInの流量比を、例えば、40%以上60%以下、好ましくは50%にする。低屈折率層124の成長時には、Gaに対するInの流量比を、例えば、5%以上20%以下、好ましくは10%にする。なお、GaとInとの流量比は、発光層130で発生される光の波長に合わせて、適宜調整される。
【0066】
次に、OCL120上に、第1低屈折率層135aおよび第1ウェル層132aを、この順でエピタキシャル成長させる。第1低屈折率層135aは、第1立方晶層136aおよび六方晶層137で構成される。GaN層である第1立方晶層136aおよび六方晶層137を成長させる場合、第1立方晶層136aの成長時には、六方晶層137の成長時に比べて、Gaの供給量を大きくする。これにより、第1立方晶層136aの結晶構造を立方晶にすることができる。MBE法で第1低屈折率層135aおよび第1ウェル層132aを成長させる場合、シャッターやセル流量を調整することにより、Gaの供給量を制御する。MOCVD法で第1低屈折率層135aおよび第1ウェル層132aを成長させる場合、Gaラインの切り替え供給量を調整することにより、Gaの供給量を制御する。
【0067】
図6に示すように、第1ウェル層132a上および第1低屈折率層135a上に、第2低屈折率層135bおよび第2ウェル層132bを、この順でエピタキシャル成長させる。第2低屈折率層135bの成長時において、第1立方晶層136aは、横方向に成長する。「横方向」とは、面内方向のことである。第2低屈折率層135bは、立方晶層136a,136bおよび六方晶層137で構成される。
【0068】
図7に示すように、第2ウェル層132b上および第2低屈折率層135b上に、第3低屈折率層135cおよび第3ウェル層132cを、この順でエピタキシャル成長させる。第3低屈折率層135cの成長時において、第2立方晶層136bは、横方向に成長する。第3低屈折率層135cは、立方晶層136b,136cおよび六方晶層137で構成される。
【0069】
図3に示すように、第3ウェル層132c上および第3低屈折率層135c上に、第4低屈折率層135dをエピタキシャル成長させる。第4低屈折率層135dの成長において、第3立方晶層136cは、横方向に成長する。第4低屈折率層135dは、第3立方晶層136cおよび六方晶層137で構成される。以上の工程により、発光層130を形成することができる。
【0070】
次に、発光層130上に、EBL140および第2半導体層150をこの順でエピタキシャル成長させる。EBL140および第2半導体層150の成長では、例えば、700℃以上1000℃以下の成膜温度で、MBE法の場合は、AlやGa原子、およびRFプラズマを用いたN原子やガスソースとしてのNHを用いて供給し、MOCVD法の場合は、TMA(トリメチルアミン)、TMGをNやHのキャリアガスを介して、N源はNHガスを用いて供給する。Ga原子およびN原子の供給方向は、特に限定されず、同時供給であってもよいし、交互供給であってもよいし、交互供給の後に同時供給を行ってもよいし、同時供給の後に交互供給を行ってもよい。EBL140および第2半導体層150の成長は、ドーパントを照射しながら行われる。以上の工程により、複数の柱状部30を形成することができる。
【0071】
図1に示すように、第2半導体層150上に、第2電極42を形成する。次に、DBR層24上に、第1電極40を形成する。第1電極40および第2電極42は、例えば、スパッタ法、真空蒸着法などによって形成される。なお、第1電極40を形成する工程と、第2電極42を形成する工程と、の順序は、特に限定されない。
【0072】
以上の工程により、発光装置100を製造することができる。
【0073】
3. プロジェクター
次に、本実施形態に係るプロジェクターについて、図面を参照しながら説明する。図8は、本実施形態に係るプロジェクター800を模式的に示す図である。
【0074】
プロジェクター800は、例えば、光源として、発光装置100を有している。
【0075】
プロジェクター800は、図示しない筐体と、筐体内に備えられている赤色光、緑色光、青色光をそれぞれ出射する赤色光源100R、緑色光源100G、青色光源100Bと、を有している。なお、便宜上、図8では、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bを簡略化している。
【0076】
プロジェクター800は、さらに、筐体内に備えられている、第1光学素子802Rと、第2光学素子802Gと、第3光学素子802Bと、第1光変調装置804Rと、第2光変調装置804Gと、第3光変調装置804Bと、投射装置808と、を有している。第1光変調装置804R、第2光変調装置804G、および第3光変調装置804Bは、例えば、透過型の液晶ライトバルブである。投射装置808は、例えば、投射レンズである。
【0077】
赤色光源100Rから出射された光は、第1光学素子802Rに入射する。赤色光源100Rから出射された光は、第1光学素子802Rによって集光される。なお、第1光学素子802Rは、集光以外の機能を有していてもよい。後述する第2光学素子802Gおよび第3光学素子802Bについても同様である。
【0078】
第1光学素子802Rによって集光された光は、第1光変調装置804Rに入射する。第1光変調装置804Rは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置808は、第1光変調装置804Rによって形成された像を拡大してスクリーン810に投射する。
【0079】
緑色光源100Gから出射された光は、第2光学素子802Gに入射する。緑色光源100Gから出射された光は、第2光学素子802Gによって集光される。
【0080】
第2光学素子802Gによって集光された光は、第2光変調装置804Gに入射する。第2光変調装置804Gは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置808は、第2光変調装置804Gによって形成された像を拡大してスクリーン810に投射する。
【0081】
青色光源100Bから出射された光は、第3光学素子802Bに入射する。青色光源100Bから出射された光は、第3光学素子802Bによって集光される。
【0082】
第3光学素子802Bによって集光された光は、第3光変調装置804Bに入射する。第3光変調装置804Bは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置808は、第3光変調装置804Bによって形成された像を拡大してスクリーン810に投射する。
【0083】
また、プロジェクター800は、第1光変調装置804R、第2光変調装置804G、および第3光変調装置804Bから出射された光を合成して投射装置808に導くクロスダイクロイックプリズム806を有することができる。
【0084】
第1光変調装置804R、第2光変調装置804G、および第3光変調装置804Bによって変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム806に入射する。クロスダイクロイックプリズム806は、4つの直角プリズムを貼り合わせて形成され、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが配置されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成され、カラー画像を表す光が形成さ
れる。そして、合成された光は、投射装置808によりスクリーン810上に投射され、拡大された画像が表示される。
【0085】
なお、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bは、発光装置100を映像の画素として画像情報に応じて制御することで、第1光変調装置804R、第2光変調装置804G、および第3光変調装置804Bを用いずに、直接的に映像を形成してもよい。そして、投射装置808は、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bによって形成された映像を、拡大してスクリーン810に投射してもよい。
【0086】
また、上記の例では、光変調装置として透過型の液晶ライトバルブを用いたが、液晶以外のライトバルブを用いてもよいし、反射型のライトバルブを用いてもよい。このようなライトバルブとしては、例えば、反射型の液晶ライトバルブや、デジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micro Mirror Device)が挙げられる。また、投射装置の構成は、使用されるライトバルブの種類によって適宜変更される。
【0087】
また、光源を、光源からの光をスクリーン上で走査させることにより、表示面に所望の大きさの画像を表示させる画像形成装置である走査手段を有するような走査型の画像表示装置の光源装置にも適用することが可能である。
【0088】
4. ディスプレイ
次に、本実施形態に係るディスプレイについて、図面を参照しながら説明する。図9は、本実施形態に係るディスプレイ900を模式的に示す平面図である。図10は、本実施形態に係るディスプレイ900を模式的に示す断面図である。なお、図9では、便宜上、互いに直交する2つの軸として、X軸およびY軸を図示している。
【0089】
ディスプレイ900は、例えば、光源として、発光装置100を有している。
【0090】
ディスプレイ900は、画像を表示する表示装置である。画像には、文字情報のみを表示するものが含まれる。ディスプレイ900は、自発光型のディスプレイである。ディスプレイ900は、図9および図10に示すように、回路基板910と、レンズアレイ920と、ヒートシンク930と、を有している。
【0091】
回路基板910には、発光装置100を駆動させるための駆動回路が搭載されている。駆動回路は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などを含む回路である。駆動回路は、例えば、入力された画像情報に基づいて、発光装置100を駆動させる。図示はしないが、回路基板910上には、回路基板910を保護するための透光性の基板が配置されている。
【0092】
回路基板910は、表示領域912と、データ線駆動回路914と、走査線駆動回路916と、制御回路918と、を有している。
【0093】
表示領域912は、複数の画素Pで構成されている。画素Pは、図示の例では、X軸およびY軸に沿って配列されている。
【0094】
図示はしないが、回路基板910には、複数の走査線と複数のデータ線が設けられている。例えば、走査線はX軸に沿って延び、データ線はY軸に沿って延びている。走査線は、走査線駆動回路916に接続されている。データ線は、データ線駆動回路914に接続されている。走査線とデータ線の交点に対応して画素Pが設けられている。
【0095】
1つの画素Pは、例えば、1つの発光装置100と、1つのレンズ922と、図示しない画素回路と、を有している。画素回路は、画素Pのスイッチとして機能するスイッチング用トランジスターを含み、スイッチング用トランジスターのゲートが走査線に接続され、ソースまたはドレインの一方がデータ線に接続されている。
【0096】
データ線駆動回路914および走査線駆動回路916は、画素Pを構成する発光装置100の駆動を制御する回路である。制御回路918は、画像の表示を制御する。
【0097】
制御回路918には、上位回路から画像データが供給される。制御回路918は、当該画像データに基づく各種信号をデータ線駆動回路914および走査線駆動回路916に供給する。
【0098】
走査線駆動回路916が走査信号をアクティブにすることで走査線が選択されると、選択された画素Pのスイッチング用トランジスターがオンになる。このとき、データ線駆動回路914が、選択された画素Pにデータ線からデータ信号を供給することで、選択された画素Pの発光装置100がデータ信号に応じて発光する。
【0099】
レンズアレイ920は、複数のレンズ922を有している。レンズ922は、例えば、1つの発光装置100に対して、1つ設けられている。発光装置100から出射された光は、1つのレンズ922に入射する。
【0100】
ヒートシンク930は、回路基板910に接触している。ヒートシンク930の材質は、例えば、銅、アルミニウムなどの金属である。ヒートシンク930は、発光装置100で発生した熱を、放熱する。
【0101】
上述した実施形態に係る発光装置は、プロジェクターやディスプレイ以外にも用いることが可能である。プロジェクターやディスプレイ以外の用途には、例えば、屋内外の照明、レーザープリンター、スキャナー、車載用ライト、光を用いるセンシング機器、通信機器等の光源がある。また、上述した実施形態に係る発光装置は、ヘッドマウントディスプレイの表示装置として用いることができる。
【0102】
5. 実験例
5.1. TEM観察
図2に示す発光装置100の柱状部30に対応する柱状部を作製した。柱状部は、第1半導体層と、OCLと、発光層と、EBLと、第2半導体層と、を有している。第1半導体層、OCL、発光層、EBL、および第2半導体層は、MBE法でエピタキシャル成長させた。第1半導体層をn型のGaN層とした。OCLの高屈折率層をi型のInGaN層とし、低屈折率層をi型のGaN層とした。発光層のウェル層をi型のInGaN層とし、バリア層をi型のGaN層とした。ウェル層は、3層形成した。バリア層の成長時に、Gaの供給量を調整し、3層の立方晶層を有するバリア層を形成した。作製した柱状部をTEM(Transmission Electron Microscope)で観察した。
【0103】
図11は、TEM像です。具体的には、図11は、柱状部のHAADF-STEM(High-Angle Annular Dark Field Scanning TEM)像である。図11に示すように、ウェル層の径は、OCLの高屈折率層の径より大きいことがわかった。3層のウェル層において、上方に形成されたウェル層ほど、径が大きいことがわかった。
【0104】
5.2. 立方晶層の層数とウェル層の径との関係についてのシミュレーション
柱状部の発光層のモデルを作製し、該モデルにおいて、立方晶層の層数と、ウェル層の径と、の関係についてのシミュレーションを行った。シミュレーションは、平面波展開法
を用いた。ウェル層をi型のInGaN層とし、i型のバリア層をGaN層とした。バリア層の立方晶層の層数を振った。
【0105】
図12は、立方晶層の層数と、ウェル層の径の変動幅と、の関係を示すグラフである。「ウェル層の径の変動幅」とは、立方晶層が設けられていない場合、すなわち立方晶層の層数がゼロである場合のウェル層の径からの変動幅である。図13は、立方晶層の層数と、ウェル層の占有率と、の関係を示すグラフである。「ウェル層の占有率」とは、柱状部の径に対するウェル層の径の比である。
【0106】
図12および図13に示すように、立方晶層を設けることによって、ウェル層の径を大きくできることがわかった。さらに、立方晶層の層数を増やすと、ウェル層の径が大きくなることがわかった。
【0107】
図14は、柱状部のウェル層の径と、ウェル層の光閉じ込め係数と、の関係を示すグラフである。バリア層の立方晶層の層数を1層とした。柱状部の周期を210nmとした。発光波長を450nmとした。ウェル層で発生する光の発振モードをTEとした。光閉じ込め係数は、面内方向における光閉じ込め係数である。図14に示すように、ウェル層の径が110nmで50%以上の光閉じ込めが可能であり、ウェル層の径が150nmで80%以上の光閉じ込めが可能であることがわかった。
【0108】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0109】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0110】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0111】
発光装置の一態様は、
基板と、
少なくとも1つの柱状部と、
を有し、
前記柱状部は、
第1導電型の第1半導体層と、
前記第1導電型と異なる第2導電型の第2半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、
を有し、
前記第1半導体層は、前記基板と前記発光層との間に設けられ、
前記発光層は、第1ウェル層と、バリア層と、を有し、
前記バリア層は、前記第1半導体層と前記第1ウェル層との間に設けられた第1層を有し、
前記第1層の結晶構造は、立方晶である。
【0112】
この発光装置によれば、第1ウェル層の径を、より確実に大きくすることができる。
【0113】
発光装置の一態様において、
前記第1層の径は、前記第1ウェル層の径よりも大きくてもよい。
【0114】
この発光装置によれば、第1ウェル層の径を大きくすることができる。
【0115】
発光装置の一態様において、
前記バリア層は、前記第1層と前記第1ウェル層との間に設けられた第2層を有し、
前記第2層の結晶構造は、六方晶であってもよい。
【0116】
この発光装置によれば、第1ウェル層に発生する歪を小さくすることができる。
【0117】
発光装置の一態様において、
前記発光層は、第2ウェル層を有し、
前記第1ウェル層は、前記第1層と前記第2ウェル層との間に設けられ、
前記第1層の径は、前記第2ウェル層の径よりも大きくてもよい。
【0118】
この発光装置によれば、第2ウェル層の径を、より確実に大きくすることができる。
【0119】
発光装置の一態様において、
前記第2ウェル層の径は、前記第1ウェル層の径よりも大きくてもよい。
【0120】
この発光装置によれば、第2ウェル層と、柱状部の側面と、の間を流れる電流を減少させることができる。
【0121】
発光装置の一態様において、
複数の前記柱状部を有し、
複数の前記柱状部は、フォトニック結晶を構成してもよい。
【0122】
この発光装置によれば、発光層で発生した光を、レーザー光として積層方向に出射することができる。
【0123】
発光装置の一態様において、
前記第1ウェル層は、InGaN層であり、
前記バリア層は、GaN層であってもよい。
【0124】
この発光装置によれば、第1ウェル層が柱状部の中央に選択的に成長され易いInGaN層であっても、第1ウェル層の径を大きくすることができる。
【0125】
プロジェクターの一態様は、
前記発光装置の一態様を有する。
【0126】
ディスプレイの一態様は、
前記発光装置の一態様を有する。
【符号の説明】
【0127】
10…基板、20…積層体、22…第1バッファー層、24…DBR層、26…第2バッファー層、28…マスク層、30…柱状部、32…側面、40…第1電極、42…第2電極、100…発光装置、110…第1半導体層、120…OCL、122…高屈折率層、124…低屈折率層、126…c面、128…ファセット面、130…発光層、132a…第1ウェル層、132b…第2ウェル層、132c…第3ウェル層、134…バリア層、135a…第1低屈折率層、135b…第2低屈折率層、135c…第3低屈折率層、
135d…第4低屈折率層、136a…第1立方晶層、136b…第2立方晶層、136c…第3立方晶層、137…六方晶層、137a…第1スペーサー層、137b…第2スペーサー層、137c…第3スペーサー層、138…c面、139…ファセット面、140…EBL、150…第2半導体層、800…プロジェクター、802R…第1光学素子、802G…第2光学素子、802B…第3光学素子、804R…第1光変調装置、804G…第2光変調装置、804B…第3光変調装置、806…クロスダイクロイックプリズム、808…投射装置、810…スクリーン、900…ディスプレイ、910…回路基板、912…表示領域、914…データ線駆動回路、916…走査線駆動回路、918…制御回路、920…レンズアレイ、922…レンズ、930…ヒートシンク
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