(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094017
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】フィルタ、マルチプレクサおよび通信用モジュール
(51)【国際特許分類】
H03H 7/09 20060101AFI20230628BHJP
H03H 7/46 20060101ALI20230628BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
H03H7/09 Z
H03H7/46 A
H01F27/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209211
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 利之
【テーマコード(参考)】
5E070
5J024
【Fターム(参考)】
5E070AA05
5E070AB07
5E070CB03
5E070CB17
5J024AA01
5J024CA02
5J024CA04
5J024CA06
5J024CA10
5J024DA05
5J024DA29
5J024DA32
5J024DA35
5J024EA03
5J024KA03
(57)【要約】
【課題】減衰特性が変化すことを抑制できるフィルタを提供する。
【解決手段】フィルタは、第1信号端子にキャパシタを介さずに接続された第1ノードN1とグランド端子Tgとの間に並列接続された第1キャパシタC1および第1インダクタL1を備え、第1ノードとグランド端子との間において第1キャパシタにインダクタが直列接続されていない第1共振回路と、第2信号端子にキャパシタを介さずに接続された第2ノードN4とグランド端子との間に並列接続された第2キャパシタC4および第2インダクタL4を備える第2共振回路と、第1ノードと第2ノードとの間において高周波信号が伝送可能な経路SL内に位置する第3ノードN3とグランド端子との間に並列接続された第3キャパシタC3および第3インダクタL3と、第3ノードとグランド端子との間において第3キャパシタに直列接続された第1直列インダクタL7と、を備える第3共振回路とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1信号端子と、
第2信号端子と、
グランド端子と、
前記第1信号端子にキャパシタを介さずに電気的に接続された第1ノードとグランド端子との間に並列接続された第1キャパシタおよび第1インダクタを備え、前記第1ノードと前記グランド端子との間において前記第1キャパシタにインダクタが直列接続されていない第1共振回路と、
前記第2信号端子にキャパシタを介さずに電気的に接続された第2ノードと前記グランド端子との間に並列接続された第2キャパシタおよび第2インダクタを備える第2共振回路と、
前記第1ノードと前記第2ノードとの間において高周波信号が伝送可能な経路内に位置する第3ノードと前記グランド端子との間に並列接続された第3キャパシタおよび第3インダクタと、前記第3ノードと前記グランド端子との間において前記第3キャパシタに直列接続された第1直列インダクタと、を備える第3共振回路と、
を備えるフィルタ。
【請求項2】
前記第2共振回路は、前記第2ノードと前記グランド端子との間において前記第2キャパシタにインダクタが直列接続されていない請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
複数の誘電体層が積層され、
前記第1直列インダクタは、前記複数の誘電体層のうち隣接する誘電体層の間の第1面に設けられた第1線路パターンを含み、
前記第1共振回路は、前記第1ノードと前記グランド端子との間において前記第1キャパシタに直列接続され、前記複数の誘電体層の間の面に設けられた線路パターンを備えない請求項1または2に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記第3インダクタは、前記複数の誘電体層のうち隣接する誘電体層の間に設けられ前記第1面と異なる第2面に設けられ、前記複数の誘電体層のうち少なくとも1つの誘電体層を貫通するビア配線を介し前記第1線路パターンと電気的に接続され、前記第1線路パターンの延伸する方向と交差する方向に延伸する第2線路パターンを含む請求項3に記載のフィルタ。
【請求項5】
前記第1インダクタ、前記第2インダクタおよび前記第3インダクタの少なくとも1つのインダクタは前記第1面に設けられた第3線路パターンを備える請求項3または4に記載のフィルタ。
【請求項6】
前記経路における前記第3ノードと前記第2ノードとの間に位置する第4ノードと前記グランド端子との間に並列接続された第4キャパシタおよび第4インダクタと、前記第4ノードと前記グランド端子との間において前記第4キャパシタに直列接続された第2直列インダクタと、を備える第4共振回路を備える請求項1から4のいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項7】
前記第1ノードと前記第3ノードとは第5キャパシタを介し電気的に接続され、前記第2ノードと前記第3ノードとは第6キャパシタを介し電気的に接続されている請求項1から6のいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項8】
前記フィルタはバンドパスフィルタである請求項1から7のいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項9】
前記第1キャパシタ、前記第2キャパシタおよび前記第3キャパシタと、前記第1キャパシタ、前記第2キャパシタおよび前記第3キャパシタと前記グランド端子との間のインダクタンス成分と、は、前記フィルタの通過帯域より高い周波数に減衰極を形成する請求項8に記載のフィルタ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のフィルタを含むマルチプレクサ。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載のフィルタを含む通信用モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ、マルチプレクサおよび通信用モジュールに関し、例えば並列共振回路を有するフィルタ、マルチプレクサおよび通信用モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
LTE(Long Term Evolution)や5G(5th GEeneration)移動通信システム等の無線通信端末には、不要な妨害波を除去するフィルタが用いられている。フィルタとして、高周波信号を伝送する経路と接地端子との間に複数のLC並列共振回路を有するフィルタが知られている。複数のLC並列共振回路とグランド端子との間にLC副並列共振回路を設けることが知られている(特許文献1)。複数のLD並列共振回路のキャパシタにインダクタを直列接続することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-109487号公報
【特許文献2】特開2008-278360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および2では、通過帯域より高い周波数に位置する減衰極の周波数を調整することができる。しかし、特許文献1では、減衰極の周波数を調整しようとすると、通過帯域より低い周波数における減衰特性が変化してしまう。特許文献2では、減衰極の周波数を調整しようとすると、減衰極より高い周波数域における減衰特性が劣化してしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、減衰極の周波数を調整するときに他の減衰特性が変化することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1信号端子と、第2信号端子と、グランド端子と、前記第1信号端子にキャパシタを介さずに電気的に接続された第1ノードとグランド端子との間に並列接続された第1キャパシタおよび第1インダクタを備え、前記第1ノードと前記グランド端子との間において前記第1キャパシタにインダクタが直列接続されていない第1共振回路と、前記第2信号端子にキャパシタを介さずに電気的に接続された第2ノードと前記グランド端子との間に並列接続された第2キャパシタおよび第2インダクタを備える第2共振回路と、前記第1ノードと前記第2ノードとの間において高周波信号が伝送可能な経路内に位置する第3ノードと前記グランド端子との間に並列接続された第3キャパシタおよび第3インダクタと、前記第3ノードと前記グランド端子との間において前記第3キャパシタに直列接続された第1直列インダクタと、を備える第3共振回路と、を備えるフィルタである。
【0007】
上記構成において、前記第2共振回路は、前記第2ノードと前記グランド端子との間において前記第2キャパシタにインダクタが直列接続されていない構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、複数の誘電体層が積層され、前記第1直列インダクタは、前記複数の誘電体層のうち隣接する誘電体層の間の第1面に設けられた第1線路パターンを含み、前記第1共振回路は、前記第1ノードと前記グランド端子との間において前記第1キャパシタに直列接続され、前記複数の誘電体層の間の面に設けられた線路パターンを備えない構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記第3インダクタは、前記複数の誘電体層のうち隣接する誘電体層の間に設けられ前記第1面と異なる第2面に設けられ、前記複数の誘電体層のうち少なくとも1つの誘電体層を貫通するビア配線を介し前記第1線路パターンと電気的に接続され、前記第1線路パターンの延伸する方向と交差する方向に延伸する第2線路パターンを含む構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記第1インダクタ、前記第2インダクタおよび前記第3インダクタの少なくとも1つのインダクタは前記第1面に設けられた第3線路パターンを備える構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記経路における前記第3ノードと前記第2ノードとの間に位置する第4ノードと前記グランド端子との間に並列接続された第4キャパシタおよび第4インダクタと、前記第4ノードと前記グランド端子との間において前記第4キャパシタに直列接続された第2直列インダクタと、を備える第4共振回路を備える構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記第1ノードと前記第3ノードとは第5キャパシタを介し電気的に接続され、前記第2ノードと前記第3ノードとは第6キャパシタを介し電気的に接続されている構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記フィルタはバンドパスフィルタである構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記第1キャパシタ、前記第2キャパシタおよび前記第3キャパシタと、前記第1キャパシタ、前記第2キャパシタおよび前記第3キャパシタと前記グランド端子との間のインダクタンス成分と、は、前記フィルタの通過帯域より高い周波数に減衰極を形成する構成とすることができる。
【0015】
本発明は、上記フィルタを含むマルチプレクサである。
【0016】
本発明は、上記フィルタを含む通信用モジュールである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、所望の周波数特性を有するフィルタ、マルチプレクサおよび通信用モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施例1に係るフィルタの回路図である。
【
図2】
図2(a)および
図2(b)は、実施例1に係るフィルタの斜視図および断面図である。
【
図3】
図3は、実施例1における誘電体層の解体斜視図である。
【
図4】
図4は、実施例1における誘電体層の解体斜視図である。
【
図5】
図5は、比較例1に係るフィルタの回路図である。
【
図6】
図6は、比較例1における誘電体層の解体斜視図である。
【
図7】
図7は、比較例1における誘電体層の解体斜視図である。
【
図8】
図8は、シミュレーション1における実施例1および比較例1の通過特性を示す図である。
【
図9】
図9は、シミュレーション2における比較例2および比較例1の通過特性を示す図である。
【
図11】
図11は、比較例3における誘電体層の解体斜視図である。
【
図12】
図12は、比較例3における誘電体層の解体斜視図である。
【
図13】
図13は、シミュレーション3における比較例3および比較例1の通過特性を示す図である。
【
図15】
図15は、比較例4における誘電体層の解体斜視図である。
【
図16】
図16は、比較例4における誘電体層の解体斜視図である。
【
図17】
図17は、シミュレーション4における比較例4および比較例1の通過特性を示す図である。
【
図18】
図18は、実施例1の変形例1に係るフィルタの回路図である。
【
図19】
図19は、実施例1の変形例1における誘電体層の解体斜視図である。
【
図20】
図20は、実施例1の変形例1における誘電体層の解体斜視図である。
【
図21】
図21は、シミュレーション5における実施例1の変形例1および比較例1の通過特性を示す図である。
【
図22】
図22は、実施例1の変形例2に係るフィルタの回路図である。
【
図23】
図23は、実施例2に係るトリプレクサの回路図である。
【
図24】
図24は、実施例2の変形例1に係る通信用モジュールの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し本発明の実施例について説明する。
【実施例0020】
実施例1として、バンドパスフィルタ(BPF)を例に説明する。
図1は、実施例1に係るフィルタの回路図である。
図1に示すように、実施例1のフィルタ100は、入力端子Tin、出力端子Tout、グランド端子Tg、キャパシタC1~C7、およびインダクタL1~L7を有する。入力端子Tinから入力された高周波信号は経路SLを介し出力端子Toutから出力される。経路SLはキャパシタC5、インダクタL1の一部、インダクタL5、インダクタL3の一部およびキャパシタC6を含む。経路SL内にノードN1~N4が設けられている。
【0021】
ノードN1とグランド端子Tgとの間に並列共振回路R1が設けられている。並列共振回路R1は、ノードN1とグランド端子Tgとの間に並列接続されたインダクタL1とキャパシタC1とを有している。ノードN2とグランド端子Tgとの間に並列共振回路R2が設けられている。並列共振回路R2は、ノードN2とグランド端子Tgとの間に並列接続されたインダクタL2とキャパシタC2とを有している。ノードN3とグランド端子Tgとの間に並列共振回路R3が設けられている。並列共振回路R3は、ノードN3とグランド端子Tgとの間に並列接続されたインダクタL3とキャパシタC3とを有している。ノードN4とグランド端子Tgとの間に並列共振回路R4が設けられている。並列共振回路R4は、ノードN1とグランド端子Tgとの間に並列接続されたインダクタL4とキャパシタC4とを有している。
【0022】
並列共振回路R2は、ノードN2とグランド端子Tgとの間においてキャパシタC2に直列接続されたインダクタL6を備えている。並列共振回路R3は、ノードN3とグランド端子Tgとの間においてキャパシタC3に直列接続されたインダクタL7を備えている。
【0023】
ノードN1は入力端子Tinに直接接続されている。すなわち、ノードN1と入力端子Tinとの間にはキャパシタは設けられていない。ノードN4は出力端子Toutに直接接続されている。すなわち、ノードN4と出力端子Toutとの間にはキャパシタは設けられていない。ノードN1とN2との間にはキャパシタC5が設けられ、キャパシタC5の一端はノードN1に電気的に接続され、他端はノードN2に電気的に接続されている。ノードN3とN4との間にはキャパシタC6が設けられ、キャパシタC6の一端はノードN4に電気的に接続され、他端はノードN3に電気的に接続されている。ノードN2とN3との間にはキャパシタは設けられていない。キャパシタC7はノードN1とN4との間において経路SLに並列接続されている。インダクタL1とL2とは磁界結合M1し、インダクタL3とL4とは磁界結合M2している。
【0024】
図2(a)および
図2(b)は、実施例1に係るフィルタの斜視図および断面図である。誘電体層11a~11iの積層方向をZ方向、誘電体層11a~11iの平面方向のうち端子14の配列方向をX方向、X方向に直交する方向をY方向とする。
図2(a)および
図2(b)に示すように、フィルタ100は、積層体10を有している。積層体10は、複数の積層された誘電体層11a~11iを備えている。積層体10の下面(積層方向における積層体10の表面)に端子14が設けられている。端子14は、例えば入力端子Tin、出力端子Toutおよびグランド端子Tgである。積層体10の上面には、導電体パターン12aにより方向識別マークが設けられている。
【0025】
図3および
図4は、実施例1における誘電体層の解体斜視図である。
図3および
図4において、各誘電体層11b~11iを貫通するビア配線13b~13iを各誘電体層11b~11iの上面に黒丸で示した。直上の誘電体層11b~11gを貫通するビア配線13b~13gが対応する誘電体層11c~11iを貫通しない場合、白丸で示した。
図3および
図4に示すように、誘電体層11a~11iの上面にそれぞれ導電体パターン12a~12iが設けられている。誘電体層11b~11iをそれぞれ貫通するビア配線13b~13iが設けられている。誘電体層11iの下面に端子14が設けられている。
【0026】
誘電体層11aの上面には方向識別マークを形成する導電体パターン12aが設けられている。誘電体層11bの上面には、線路パターンL1a~L4aを形成する導電体パターン12bが設けられている。誘電体層11cの上面には、線路パターンL2b、L5aおよびL3bを形成する導電体パターン12cが設けられている。誘電体層11dの上面には、線路パターンL1b、L4b、L6aおよびL7aを形成する導電体パターン12cが設けられている。
【0027】
インダクタL1は、線路パターンL1a、L1bおよびビア配線13b~13iにより形成される。インダクタL2は、線路パターンL2a、L2bおよびビア配線13b~13iにより形成される。インダクタL3は、線路パターンL3a、L3bおよびビア配線13b~13iにより形成される。インダクタL4は、線路パターンL4a、L4bおよびビア配線13b~13iにより形成される。インダクタL5は線路パターンL5aにより形成される。インダクタL6は、線路パターンL6aおよびビア配線13d~13gにより形成される。インダクタL7は、線路パターンL7aおよびビア配線13d~13gにより形成される。
【0028】
誘電体層11eの上面には、電極C7aを形成する導電体パターン12eが設けられている。誘電体層11fの上面には、電極C5a、C6aおよびC7bを形成する導電体パターン12fが設けられている。誘電体層11gの上面には、電極C5bおよびC6bを形成する導電体パターン12gが設けられている。誘電体層11hの上面には、電極C1a、C2a、C3a、C4a、C5cおよびC6cを形成する導電体パターン12hが設けられている。誘電体層11iの上面には、電極C1b、C2b、C3bおよびC4bでありかつグランドパターンGを形成する導電体パターン12iが設けられている。
【0029】
キャパシタC1は、誘電体層11hを挟む電極C1aおよびC1bにより形成される。キャパシタC2は、誘電体層11hを挟む電極C2aおよびC2bにより形成される。キャパシタC3は、誘電体層11hを挟む電極C3aおよびC3bにより形成される。キャパシタC4は、誘電体層11hを挟む電極C4aおよびC4bにより形成される。キャパシタC5は、誘電体層11fを挟む電極C5aおよびC5bと誘電体層11gを挟む電極C5bおよびC5cにより形成される。キャパシタC6は、誘電体層11fを挟む電極C6aおよびC6bと誘電体層11gを挟む電極C6bおよびC6cにより形成される。キャパシタC7は、誘電体層11eを挟む電極C7aおよびC7bにより形成される。誘電体層11iの下面には端子14が形成されている。端子14は、入力端子Tin、出力端子Toutおよびグランド端子Tgを含む。
【0030】
線路パターンL1aの一端はビア配線13b~13iを介し電極C1a(ノードN1に対応)および入力端子Tinに電気的に接続されている。このように、キャパシタC1の電極C1aと入力端子Tinとの間は線路パターンを介さず電気的に接続されている。線路パターンL2aの一端はビア配線13b~13fを介し電極C5b(ノードN2に対応)に電気的に接続され、かつ線路パターンL6aおよびビア配線13d~13gを介し電極C2aに電気的に接続されている。このように、キャパシタC2の電極C2aは線路パターンL6aを介しノードN2に相当する電極C5bに電気的に接続されている。キャパシタC2と同様にキャパシタC3の電極C3aは線路パターンL7aを介しノードN3に相当する電極C6bに電気的に接続されている。キャパシタC1と同様に、キャパシタC4の電極C4aと出力端子Toutは線路パターンを介さず電気的に接続されている。
【0031】
誘電体層11a~11iは、セラミック材料からなり、主成分として例えばSi、CaおよびMgの酸化物(例えばディオプサイド結晶であるCaMgSi2O6)を含む。誘電体層11aから11iの主成分は、Si、Caおよび/またはMg以外の酸化物でもよい。さらに、誘電体層11a~11hは、絶縁体材料としてTi、ZrおよびAlの少なくとも1つの酸化物を含んでもよい。
【0032】
導電体パターン12a~12i、ビア配線13b~13iおよび端子14の上部は、例えばAg、Pd、Pt、Cu、Ni、Au、Au-Pd合金またはAg-Pt合金を主成分とする金属層である。端子14の上部は、上記金属材料に加えTiO2、ZrO2またはAl2O3等の不伝導性材料を含んでもよい。端子14の下部は、Ni膜およびSn膜である。
【0033】
[比較例1]
図5は、比較例1に係るフィルタの回路図である。
図5に示すように、比較例1のフィルタ110では、並列共振回路R2において、キャパシタC2に直列接続されたインダクタL6が設けられていない。並列共振回路R3において、キャパシタC3に直列接続されたインダクタL7が設けられていない。並列共振回路R1~R4とグランド端子Tgとの間にインダクタL10が設けられている。その他の回路構成は実施例1の
図1と同じである。
【0034】
図6および
図7は、比較例1における誘電体層の解体斜視図である。
図6および
図7に示すように、誘電体層11dの上面に線路パターンL6aおよびL7aが設けられていない。線路パターンL2aの一端はビア配線13b~13gを介し電極C5bに電気的に接続しかつ電極C2a電気的に接続されている。このように、キャパシタC2の電極C2aは線路パターンを介さずノードN2に相当する電極C5bに電気的に接続されている。同様に、キャパシタC3の電極C3aは線路パターンを介さずノードN3に相当する電極C6bに電気的に接続されている。導電体パターン12iにより形成されるグランドパターンGとグランド端子Tgとを電気的に接続するビア配線13iがインダクタL10に相当する。その他の構成は実施例1の
図3および
図4と同じである。
【0035】
[シミュレーション1]
実施例1および比較例1について、有限要素法を用い3次元電磁界シミュレーションを行い通過特性を算出した。
【0036】
各誘電体層11a~11iは、CaMgSi
2O
6を主成分とする。フィルタ100の扱う周波数が1GHz~20GHzと高いため、フィルタ100は、分布定数回路的に機能する。このため、キャパシタC1~C7のキャパシタンスおよびインダクタL1~L7のインダクタンスは定まらないが、実施例1のキャパシタC1~C7のキャパシタンスおよびインダクタL1~L7のインダクタンスの概略値を表1に示す。
【表1】
【0037】
図8は、シミュレーション1における実施例1および比較例1の通過特性を示す図である。上述のように、比較例1のビア配線13iの個数は実施例1と同じ2個である。
図8に示すように、4.2~5GHz付近が通過帯域Passである。通過帯域Passは主に並列共振回路R1~R4の並列共振により形成される。4個の減衰極A1~A4が形成されている。最も低い減衰極A1と通過帯域Passの低周波数端に位置する減衰極A2とは、主にキャパシタC5と磁界結合M1との並列共振と、キャパシタC6と磁界結合M2との並列共振と、により形成される。キャパシタC7を設けることで、減衰極A1とA2の周波数が分離される。通過帯域Passの高周波数端に位置する減衰極A3は主にキャパシタC7とインダクタL5との並列共振により形成される。最も周波数の高い減衰極A4は、主にキャパシタC1~C4と、キャパシタC1~C4とグランド端子Tgとの間のインダクタンスと、の直列共振により形成される。
【0038】
通過帯域Pass、減衰極A1~A3は、実施例1と比較例1とでほとんど変わらない。矢印50のように、減衰極A4の周波数は実施例1では比較例1より低くなる。このように、インダクタL6およびL7を設けることで、減衰極A4の周波数が変化する。設計段階において、インダクタL6およびL7のインダクタンスを調整すれば、通過帯域Pass、減衰極A1~A3の特性を変えることなく、減衰極A4を調整できる。
【0039】
[比較例2]
図6において、グランドパターンGとグランド端子Tgとを電気的に接続するビア配線13iを1個としたフィルタを比較例2とした。比較例2では、比較例1に比べインダクタL10のインダクタンスが大きくなる。
【0040】
[シミュレーション2]
比較例2について通過特性を算出した。シミュレーションの方法はシミュレーション1と同じである。表2は比較例2におけるキャパシタンスおよびインダクタンスの概略値を示す表である。
【表2】
【0041】
表2に示すように、キャパシタC1~C7のキャパシタンスおよびインダクタL1~L5のインダクタンスは実施例1と同じである。インダクタL10のインダクタンスは0.1nHである。
【0042】
図9は、シミュレーション2における比較例2および比較例1の通過特性を示す図である。比較例2では比較例1に対し、矢印50のように、減衰極A4の周波数が低周波側にシフトする。減衰極A1より低周波側の領域52における減衰量が悪化する。シミュレーション2のように、インダクタL10のインダクタンスを調整することで、減衰極A4の周波数を調整すると、領域52における減衰特性が悪化してしまう。
【0043】
[比較例3]
図10は、比較例3に係るフィルタの回路図である。
図10に示すように、比較例3のフィルタ112では、並列共振回路R1~R4において、それぞれキャパシタC1~C4に直列接続されたインダクタL8、L6、L7、L9が設けられている。
【0044】
図11および
図12は、比較例3における誘電体層の解体斜視図である。
図11および
図12に示すように、誘電体層11dの上面に線路パターンL6a、L7a、L8aおよびL9aが設けられている。線路パターンL1aの一端はビア配線13b~13iを介し電極C5aおよび入力端子Tinに電気的に接続され、かつ線路パターンL8aを介し電極C1aに電気的に接続されている。このように、キャパシタC1の電極C1aは線路パターンL8aを介しノードN1に相当する電極C5aに電気的に接続されている。同様に、キャパシタC4の電極C4aは線路パターンL9aを介しノードN4に相当する電極C6aに電気的に接続されている。実施例1の
図3および
図4と同様に、キャパシタC2の電極C2aは線路パターンL6aを介しノードN2に相当する電極C5bに電気的に接続され、キャパシタC3の電極C3aは線路パターンL7aを介しノードN3に相当する電極C6bに電気的に接続されている。その他の構成は実施例1と同じである。
【0045】
[シミュレーション3]
比較例3について通過特性を算出した。シミュレーションの方法はシミュレーション1と同じである。表3は比較例3におけるキャパシタンスおよびインダクタンスの概略値を示す表である。
【表3】
【0046】
表3に示すように、キャパシタC1~C7のキャパシタンスおよびインダクタL1~L7のインダクタンスは実施例1と同じである。インダクタL8およびL9のインダクタンスはインダクタL6およびL7のインダクタンスと同じである。
【0047】
図13は、シミュレーション3における比較例3および比較例1の通過特性を示す図である。比較例3では比較例1に対し、矢印50のように、減衰極A4の周波数が低周波側にシフトする。比較例3の減衰極A4のシフト量は
図8の実施例1より大きい。比較例3では、減衰極A1より低い領域の減衰特性は比較例1と同程度である。しかし、比較例3では、比べ16GHzより高い領域54における減衰量が比較例1より悪化する。シミュレーション3のように、インダクタL8およびL9を設けることで、減衰極A4の周波数を調整でき、かつ領域52における減衰特性の悪化を抑制できるが、領域54における減衰特性が悪化してしまう。
【0048】
[比較例4]
図14は、比較例4に係るフィルタの回路図である。
図14に示すように、比較例4のフィルタ114では、並列共振回路R1およびR4において、それぞれキャパシタC1およびC4に直列接続されたインダクタL8およびL9が設けられている。並列共振回路R2およびR3において、それぞれキャパシタC2およびC3に直列接続されたインダクタは設けられていない。
【0049】
図15および
図16は、比較例4における誘電体層の解体斜視図である。
図15および
図16に示すように、誘電体層11dの上面に線路パターンL8aおよびL9aが設けられ、線路パターンL6aおよびL7aは設けられていない。比較例3と同様に、キャパシタC1の電極C1aは線路パターンL8aを介しノードN1に相当する電極C5aに電気的に接続されている。キャパシタC4の電極C4aは線路パターンL9aを介しノードN4に相当する電極C6aに電気的に接続されている。比較例1と同様に、キャパシタC2の電極C2aは線路パターンを介さずにノードN2に相当する電極C5bに電気的に接続され、キャパシタC3の電極C3aは線路パターンを介さずにノードN3に相当する電極C6bに電気的に接続されている。その他の構成は実施例1と同じである。
【0050】
[シミュレーション4]
比較例4について通過特性を算出した。シミュレーションの方法はシミュレーション1と同じである。表4は比較例4におけるキャパシタンスおよびインダクタンスの概略値を示す表である。
【表4】
【0051】
表4に示すように、キャパシタC1~C7のキャパシタンスおよびインダクタL1~L5のインダクタンスは実施例1と同じである。インダクタL8およびL9のインダクタンスは比較例3と同じである。
【0052】
図17は、シミュレーション4における比較例4および比較例1の通過特性を示す図である。比較例4では比較例1に対し、矢印50のように、減衰極A4の周波数が低周波側にシフトする。比較例4における減衰極A4のシフト量は
図8の実施例1と同程度である。比較例4では、減衰極A1より低い領域の減衰特性は比較例1と同程度である。比較例4では、16GHzより高い領域54における減衰量が比較例1より悪化する。シミュレーション4のように、インダクタL8およびL9を設けることで、減衰極A4の周波数を調整でき、かつ領域52における減衰特性の悪化を抑制できるが、領域54における減衰特性が悪化してしまう。領域54における減衰特性の悪化は
図13の比較例3と同程度である。
【0053】
[実施例1の変形例1]
図18は、実施例1の変形例1に係るフィルタの回路図である。
図18に示すように、実施例1の変形例1のフィルタ102では、並列共振回路R1およびR3において、それぞれキャパシタC1およびC3に直列接続されたインダクタL8およびL7が設けられている。並列共振回路R2およびR4において、それぞれキャパシタC2およびC4に直列接続されたインダクタは設けられていない。
【0054】
図19および
図20は、実施例1の変形例1における誘電体層の解体斜視図である。
図19および
図20に示すように、誘電体層11dの上面に線路パターンL7aおよびL8aが設けられ、線路パターンL6aおよびL9aは設けられていない。比較例3と同様に、キャパシタC1の電極C1aは線路パターンL8aを介しノードN1に相当する電極C5aに電気的に接続されている。キャパシタC3の電極C3aは線路パターンL7aを介しノードN3に相当する電極C6bに電気的に接続されている。比較例1と同様に、キャパシタC2の電極C2aは線路パターンを介さずノードN2に相当する電極C5bに電気的に接続されている。キャパシタC4の電極C4aは線路パターンを介さずにノードN4に相当する電極C6aに電気的に接続され、その他の構成は実施例1と同じである。
【0055】
[シミュレーション5]
実施例1の変形例1について通過特性を算出した。シミュレーションの方法はシミュレーション1と同じである。表5は実施例1の変形例1におけるキャパシタンスおよびインダクタンスの概略値を示す表である。
【表5】
【0056】
表5に示すように、キャパシタC1~C7のキャパシタンスおよびインダクタL1~L5のインダクタンスは実施例1と同じである。インダクタL7およびL8のインダクタンスは比較例3と同じである。
【0057】
図21は、シミュレーション5における実施例1の変形例1および比較例1の通過特性を示す図である。実施例1の変形例1では比較例1に対し、矢印50のように、減衰極A4の周波数が低周波側にシフトする。実施例1の変形例1における減衰極A4のシフト量は
図8の実施例1と同程度である。実施例1の変形例1では、減衰極A1より低い領域の減衰特性は比較例1と同程度である。実施例1の変形例1では、16GHzより高い領域54における減衰量が比較例1より悪化する。シミュレーション5のように、インダクタL7およびL8を設けることで、減衰極A4の周波数を調整でき、かつ領域52における減衰特性の悪化を抑制できるが、領域54における減衰特性が悪化してしまう。領域54における減衰特性の悪化は
図13の比較例3および
図17の比較例4より若干小さい。このように、実施例1の変形例1では、領域54における減衰特性の悪化を比較例3および4より抑制できる。
【0058】
シミュレーション1~5をまとめると、並列共振回路R1~R4の少なくとも1つにおいて、キャパシタC1~C4に直列接続されたインダクタL6~L9を設け、設計段階において、インダクタL6~L9のインダクタンスを調整することで、領域52における減衰特性が変化することなく、減衰極A4の周波数を調整することができる。減衰極A4のシフト量はインダクタL6~L9の個数が多くなると大きくなる。入力端子Tinに直接接続された並列共振回路R1および出力端子Toutに直接接続された並列共振回路R4の少なくとも一方にインダクタL8およびL9を設けないことで、領域54における減衰特性の変化を抑制できる。並列共振回路R1およびR4の両方にインダクタL8およびL9を設けないことで、領域54における減衰特性の変化をより抑制できる。
【0059】
実施例1およびその変形例1によれば、並列共振回路R4(第1共振回路)は、出力端子Tout(第1信号端子)にキャパシタを介さずに電気的に接続されたノードN4(第1ノード)とグランド端子との間に並列接続されたキャパシタC4(第1キャパシタ)およびインダクタL4(第1インダクタ)を備えている。ノードN4とグランド端子Tgとの間においてキャパシタC4にインダクタL9が直列接続されていない。並列共振回路R1(第2共振回路)は、入力端子Tin(第2信号端子)にキャパシタを介さずに電気的に接続されたノードN1(第2ノード)とグランド端子Tgとの間に並列接続されたキャパシタC1(第2キャパシタ)およびインダクタL1(第2インダクタ)を備える。並列共振回路R3(第3共振回路)は、ノードN4とN1との間において、高周波信号が伝送可能な経路SL内に位置するノードN3(第3ノード)とグランド端子Tgとの間に並列接続されたキャパシタC3(第3キャパシタ)およびインダクタL3(第3インダクタ)と、ノードN3とグランド端子Tgとの間においてキャパシタC3に直列接続されたインダクタL7(第1直列インダクタ)と、を備える。
【0060】
インダクタL7を設けることで、領域52における減衰特性の変化を抑制しかつ減衰極A4の周波数の調整が容易となる。並列共振回路R4にインダクタL9を設けないことで、
図8および
図21のように、領域54における減衰特性の変化を抑制できる。
【0061】
実施例1のように、並列共振回路R1は、ノードN1とグランド端子Tgとの間においてキャパシタC1にインダクタL8が直列接続されていない。これにより、
図8のように、領域54における減衰特性の変化をより抑制できる。
【0062】
実施例1では、並列共振回路R1にインダクタL8が設けられ、並列共振回路R4にインダクタL9が設けられていない例を説明したが、並列共振回路R1にインダクタL8が設けられておらず、並列共振回路R4にインダクタL9が設けられていてもよい。
【0063】
図3、
図4、
図19および
図20のように、複数の誘電体層11a~11iが積層されている。インダクタL7は、隣接する誘電体層11cと11dの間の第1面に設けられた線路パターンL7a(第1線路パターン)を含む。並列共振回路R4は、ノードN4とグランド端子Tgとの間においてキャパシタC4に直列接続され、複数の誘電体層11a~11iの間の面に設けられた線路パターンを備えない。これにより、インダクタL7を設け、インダクタL9を設けないことができる。
【0064】
インダクタL3は、隣接する誘電体層11aと11bの間に設けられ第1面と異なる第2面に設けられた線路パターンL3a(第2線路パターン)を含む。線路パターンL3aは、誘電体層11b~11cを貫通するビア配線13b~13cを介し線路パターンL7aと電気的に接続されている。このとき、線路パターンL3aとL7aとが磁界結合すると並列共振回路R3の共振特性が変化してしまう。そこで、積層体10の厚さ方向から見て、線路パターンL3aの延伸する方向と線路パターンL7aの延伸する方向とは交差させることが好ましい。線路パターンL3aの延伸する方向と線路パターンL7aの延伸する方向とのなす角度は45°以上かつ135°以下が好ましく、80°以上かつ100°以下がより好ましく、略90°(すなわち略直交すること)がさらに好ましい。線路パターンL2aとL6aについても同様である。
【0065】
インダクタL1~L9の線路パターンとフィルタを実装する実装基板上のグランドパターンとが近いと、渦電流損などにより、インダクタL1~L9のQ値が小さくなる。このため、インダクタL1~L9を形成する線路パターンと端子14との間にキャパシタC1~C7を形成する電極を設けている。これにより、インダクタL1~L9のQ値が向上する。特に、並列共振回路R1~R4を形成するインダクタL1~L4のQ値は高いことが好ましい、よって、線路パターンL6a(およびL7a)は、インダクタL2(およびL3)を形成する線路パターンのうち最も長い線路パターンL2a(およびL3a)とキャパシタC1~C7を形成する電極との間の導電体パターンにより形成されることが好ましい。
【0066】
インダクタL1~L4の少なくとも1つのインダクタは第1面に設けられた線路パターンL1bおよびL4b(第3線路パターン)を備える。これにより、フィルタの大型化を抑制できる。
【0067】
並列共振回路R2(第4共振回路)は、経路SLにおけるノードN3とノードN1との間に位置するノードN2(第4ノード)とグランド端子Tgとの間に並列接続されたキャパシタC2(第4キャパシタ)およびインダクタL2(第4インダクタ)と、ノードN2とグランド端子Tgとの間においてキャパシタC2に直列接続されたインダクタL6(第2直列インダクタ)と、を備える。これにより、インダクタL6とL7のインダクタンスを調整することで、減衰極A4の周波数を調整することができる。また、インダクタの個数が増えるため、減衰極A4のシフト量を大きくできる。よって、減衰極A1の周波数の調整範囲を大きくできる。
【0068】
ノードN4とN3とはキャパシタC6(第5キャパシタ)を介し電気的に接続され、ノードN1とノードN3とはキャパシタC5(第6キャパシタ)を介し電気的に接続されている。入力端子Tinおよび出力端子ToutのいずれともキャパシタC5およびC6を介し電気的に接続されたノードN3とグランド端子Tgとの間に設けられた並列共振回路R3には、インダクタL7を設ける。これにより、領域52および54における減衰特性の変化を抑制しかつ減衰極A4の周波数の調整が容易となる。
【0069】
実施例1およびその変形例では、インダクタL6は、ノードN2とキャパシタC2との間に電気的に接続され、インダクタL7は、ノードN3とキャパシタC3との間に電気的に接続される例を説明した。インダクタL6は、グランド端子TgとキャパシタC2との間に電気的に接続され、インダクタL7は、グランド端子TgとキャパシタC3との間に電気的に接続されていてもよい。
【0070】
フィルタ100および102は、バンドパスフィルタである。キャパシタC1~C4と、キャパシタC1~C4とグランド端子Tgとの間のインダクタンス成分は、フィルタの通過帯域Passより高い周波数に減衰極A4を形成する。これにより、インダクタL6およびL7のインダクタンスを調整することで、減衰極A4の周波数を調整できる。
【0071】
[実施例1の変形例2]
図22は、実施例1の変形例2に係るフィルタの回路図である。
図22に示すように、実施例1の変形例2のフィルタ104では、並列共振回路R2が設けられていない。ノードN1とN3とはキャパシタC5を介し電気的に接続されている。高周波信号が伝送される経路SLは、ノードN1からキャパシタC5およびC6を介しノードN4に至る。並列共振回路R3はインダクタL6を備え、並列共振回路R1およびR4はインダクタL8およびL9を備えていない。その他の回路構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0072】
表6は、実施例1の変形例2におけるキャパシタC1、C3~C7のキャパシタンスおよびインダクタL1、L3、L4およびL7のインダクタンスの例を示す表である。
【表6】
【0073】
表6のような素子の値とすることで、バンドパスフィルタを形成できる。並列共振回路R1~R4として3個と4個の例を説明したが経路SL内の異なる位置に並列共振器が複数接続されていればよい。ノードN1~N4のうち隣接する2つのノードの間は、実施例1およびその変形例1のノードN1とN2との間、ノードN3とN4との間、および実施例1の変形例2のノードN1とN3との間、およびノードN3とN4との間のように、キャパシタを介し接続されていてもよい。隣接するノードの間は実施例1およびその変形例1のノードN2とN3との間のようにインダクタを介し接続されていてもよい。隣接するノードの間は磁界結合により接続されていてもよい。
フィルタ22、24および26の少なくとも1つのフィルタを実施例1およびその変形例のフィルタとすることができる。マルチプレクサの例としてトリプレクサの例を説明したが、マルチプレクサはダイプレクサ、デュプレクサまたはクワッドプレクサでもよい。
アンテナ端子TAにアンテナ28が接続される。アンテナ端子TAには、フィルタ31の一端が接続されている。フィルタ31の他端にはスイッチ32が接続されている。スイッチ32にはLNA33の入力端子およびPA34の出力端子が接続されている。LNA33の出力端子は受信端子TRに接続されている。PA34の入力端子は送信端子TTに接続されている。受信端子TRおよび送信端子TTにはRFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)が接続されている。
モジュール30は、例えばTDD(Time Division Duplex)通信方式の通信用モジュールである。TDD通信方式では送信帯域と受信帯域とは同じ帯域である。フィルタ31は例えばバンドパスフィルタであり、送信帯域と受信帯域を含む通過帯域の高周波信号を通過させ他の周波数の信号を抑圧する。
受信信号を受信するとき、スイッチ32はフィルタ31とLNA33とを接続する。これにより、アンテナ28に受信された高周波信号はフィルタ31により受信帯域の信号に濾波され、LNA33により増幅されRFIC35に出力される。送信信号を送信するとき、スイッチ32はフィルタ31とPA34とを接続する。これにより、RFIC35から出力された高周波信号は、PAにより増幅され、フィルタ31により送信帯域の信号に濾波され、アンテナ28から出力される。
実施例2の変形例1の通信用モジュール内のフィルタ31を実施例1およびその変形例のフィルタとすることができる。モジュールとしては、他の回路形式の通信用モジュールでもよい。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。