IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アズビル株式会社の特許一覧

特開2023-9402調熱監視装置、調熱監視プログラム、及び、調熱監視方法
<>
  • 特開-調熱監視装置、調熱監視プログラム、及び、調熱監視方法 図1
  • 特開-調熱監視装置、調熱監視プログラム、及び、調熱監視方法 図2
  • 特開-調熱監視装置、調熱監視プログラム、及び、調熱監視方法 図3
  • 特開-調熱監視装置、調熱監視プログラム、及び、調熱監視方法 図4
  • 特開-調熱監視装置、調熱監視プログラム、及び、調熱監視方法 図5
  • 特開-調熱監視装置、調熱監視プログラム、及び、調熱監視方法 図6
  • 特開-調熱監視装置、調熱監視プログラム、及び、調熱監視方法 図7
  • 特開-調熱監視装置、調熱監視プログラム、及び、調熱監視方法 図8
  • 特開-調熱監視装置、調熱監視プログラム、及び、調熱監視方法 図9
  • 特開-調熱監視装置、調熱監視プログラム、及び、調熱監視方法 図10
  • 特開-調熱監視装置、調熱監視プログラム、及び、調熱監視方法 図11
  • 特開-調熱監視装置、調熱監視プログラム、及び、調熱監視方法 図12
  • 特開-調熱監視装置、調熱監視プログラム、及び、調熱監視方法 図13
  • 特開-調熱監視装置、調熱監視プログラム、及び、調熱監視方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009402
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】調熱監視装置、調熱監視プログラム、及び、調熱監視方法
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/24 20060101AFI20230113BHJP
   F23N 5/26 20060101ALI20230113BHJP
   F23N 5/20 20060101ALI20230113BHJP
   G06F 17/18 20060101ALI20230113BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
F23N5/24 106
F23N5/26 101E
F23N5/20
G06F17/18 D
G05B23/02 301X
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112636
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】石山 浩
(72)【発明者】
【氏名】茂中 義典
(72)【発明者】
【氏名】石井 重樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 加代
【テーマコード(参考)】
3C223
3K003
3K005
3K068
5B056
【Fターム(参考)】
3C223AA17
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223FF04
3C223FF13
3C223FF17
3C223FF24
3C223FF35
3C223GG01
3C223HH03
3K003SA01
3K003SC01
3K003SC04
3K005GA05
3K068NA01
5B056BB64
(57)【要約】
【課題】調熱室に不調が生じている可能性があることをユーザに把握させる。
【解決手段】調熱監視装置20は、調熱プロセスにおいて調熱室の温度が第1温度から第2温度に変化するのに要した変化時間Tを取得する取得部21Aと、複数回分の調熱プロセスのそれぞれについて取得部21Aにより取得された変化時間Tの集合を統計的に解析し、当該集合の統計データを第1統計データとして得る解析部21Bと、を備える。調熱監視装置20は、前記第1統計データと、調熱プロセスが複数回行われたときの前記変化時間Tの集合の統計データとして用意された基準となる第2統計データとを比較し、比較結果を出力するように構成された比較部21Cをさらに備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調熱プロセスに従って行われる調熱室内の調熱を監視する調熱監視装置であって、
前記調熱プロセスにおいて前記調熱室の温度が第1温度から第2温度に変化するのに要した変化時間を取得するように構成された取得部と、
複数回分の前記調熱プロセスのそれぞれについて前記取得部により取得された前記変化時間の集合を統計的に解析し、当該集合の統計データを第1統計データとして得るように構成された解析部と、
前記第1統計データと、前記調熱プロセスが複数回行われたときの前記変化時間の集合の統計データとして用意された基準となる第2統計データとを比較し、比較結果を出力するように構成された比較部と、
を備える調熱監視装置。
【請求項2】
前記解析部は、前記調熱室に不調が発生する前に実行された前記複数回分と同回数分の前記調熱プロセスそれぞれについて前記取得部により取得された前記変化時間の集合を、前記第1統計データを得るときと同じ手法で統計的に解析し、当該集合の統計データを前記第2統計データとして得る、ように構成されている、
請求項1に記載の調熱監視装置。
【請求項3】
前記第1統計データは、変化時間の範囲を複数の区分された階級に分割し、前記階級ごとにその階級に属する変化時間の個数の分布を示す第1分布データを含み、
前記第2統計データは、変化時間の範囲を複数の区分された階級に分割し、前記階級ごとにその階級に属する変化時間の個数の分布を示す第2分布データを含む、
請求項1又は2に記載の調熱監視装置。
【請求項4】
前記比較部は、
第1軸を変化時間の階級とし、第2軸を変化時間の個数として、前記第1分布データと前記第2分布データとを互いに関連付けてグラフ化することで、前記第1統計データと前記第2統計データとを比較し、
互いに関連付けられてグラフ化された前記第1分布データ及び前記第2分布データの各グラフを前記比較結果として出力する、ように構成されている、
請求項3に記載の調熱監視装置。
【請求項5】
前記比較部は、前記第1統計データと前記第2統計データとの差に基づいて、前記調熱室の不調の有無を推定し、推定の結果を前記比較結果として出力する、ように構成されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の調熱監視装置。
【請求項6】
前記第1統計データ及び前記第2統計データは、変化時間の平均値と、変化時間の階級それぞれに属する変化時間の個数の分布の最頻値と、前記分布の中央値と、前記分布の標準偏差と、前記分布の分散と、のいずれかの統計量を含み、
前記比較部は、前記第1統計データの前記統計量が前記第2統計データの前記統計量よりも大きい場合に、前記調熱室に不調が生じている可能性があると推定し、その旨を前記推定の結果として出力する、ように構成されている、
請求項5に記載の調熱監視装置。
【請求項7】
調熱プロセスに従って行われる調熱室内の調熱を監視するコンピュータに、
前記調熱プロセスにおいて前記調熱室の温度が第1温度から第2温度に変化するのに要した変化時間を取得する取得ステップと、
複数回分の前記調熱プロセスのそれぞれについて前記取得ステップで取得した前記変化時間の集合を統計的に解析し、当該集合の統計データを第1統計データとして得る解析ステップと、
前記第1統計データと、前記調熱プロセスが複数回行われたときの前記変化時間の集合の統計データとして用意された基準となる第2統計データとを比較し、比較結果を出力する比較ステップと、
を実行させる調熱監視プログラム。
【請求項8】
調熱プロセスに従って行われる調熱室内の調熱を監視する調熱監視方法であって、
前記調熱プロセスにおいて前記調熱室の温度が第1温度から第2温度に変化するのに要した変化時間を取得する取得ステップと、
複数回分の前記調熱プロセスのそれぞれについて前記取得ステップにより取得された前記変化時間の集合を統計的に解析し、当該集合の統計データを第1統計データとして得るように構成された解析ステップと、
前記第1統計データと、前記調熱プロセスが複数回行われたときの前記変化時間の集合の統計データとして用意された基準となる第2統計データとを比較する比較ステップと、
を有する調熱監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱又は冷却といった調熱を監視する、調熱監視装置、調熱監視プログラム、及び、調熱監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃焼シーケンスを構成する複数のサブシーケンス(特許文献1では、「パイロット点火(トライアル)」、「パイロットオンリー」、「メイン着火」、及び、「メイン安定」)それぞれ毎にバーナの火炎の活発度(特許文献1では紫外線強度)を監視する技術が開示されている。この技術では、監視対象であるバーナの火炎の活発度がサブシーケンスごとに定められている通常の状態からずれていた場合、燃焼装置に不調が生じていると判別する。ユーザは、この判別結果を確認することで、燃焼装置に不調が生じていることを把握できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-60573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された燃焼装置では、バーナによる燃料ガスの燃焼が燃焼室内で行われ、当該燃焼室内が加熱される。この燃焼室の壁の損傷が進むなどしてこの燃焼室に重度の異常が発生すると、この燃焼室での燃焼ができなくなる。従って、重度の異常に進む前の燃焼室の不調についても、ユーザに把握させることが望ましい。しかし、特許文献1ではこのような不調の検出について考慮されておらず、特許文献1の技術では、燃焼室に不調が生じている可能性があることをユーザに把握させることができない。なお、このような課題は、燃焼室に限らず、調熱の対象となる調熱室一般にも当てはまる。
【0005】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、調熱室に不調が生じている可能性があることをユーザに把握させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点に係る調熱監視装置は、調熱プロセスに従って行われる調熱室内の調熱を監視する調熱監視装置であって、前記調熱プロセスにおいて前記調熱室の温度が第1温度から第2温度に変化するのに要した変化時間を取得するように構成された取得部と、複数回分の前記調熱プロセスのそれぞれについて前記取得部により取得された前記変化時間の集合を統計的に解析し、当該集合の統計データを第1統計データとして得るように構成された解析部と、前記第1統計データと、前記調熱プロセスが複数回行われたときの前記変化時間の集合の統計データとして用意された基準となる第2統計データとを比較し、比較結果を出力するように構成された比較部と、を備える。
【0007】
前記解析部は、前記調熱室に不調が発生する前に実行された前記複数回分と同回数分の前記調熱プロセスそれぞれについて前記取得部により取得された前記変化時間の集合を、前記第1統計データを得るときと同じ手法で統計的に解析し、当該集合の統計データを前記第2統計データとして得る、ように構成されている、ようにしてもよい。
【0008】
前記第1統計データは、変化時間の範囲を複数の区分された階級に分割し、前記階級ごとにその階級に属する変化時間の個数の分布を示す第1分布データを含み、前記第2統計データは、変化時間の範囲を複数の区分された階級に分割し、前記階級ごとにその階級に属する変化時間の個数の分布を示す第2分布データを含む、ようにしてもよい。
【0009】
前記比較部は、第1軸を変化時間の階級とし、第2軸を変化時間の個数として、前記第1分布データと前記第2分布データとを互いに関連付けてグラフ化することで、前記第1統計データと前記第2統計データとを比較し、互いに関連付けられてグラフ化された前記第1分布データ及び前記第2分布データの各グラフを前記比較結果として出力する、ように構成されている、ようにしてもよい。
【0010】
前記比較部は、前記第1統計データと前記第2統計データとの差に基づいて、前記調熱室の不調の有無を推定し、推定の結果を前記比較結果として出力する、ように構成されている、ようにしてもよい。
【0011】
前記第1統計データ及び前記第2統計データは、変化時間の平均値と、変化時間の階級それぞれに属する変化時間の個数の分布の最頻値と、前記分布の中央値と、前記分布の標準偏差と、前記分布の分散と、のいずれかの統計量を含み、前記比較部は、前記第1統計データの前記統計量が前記第2統計データの前記統計量よりも大きい場合に、前記調熱室に不調が生じている可能性があると推定し、その旨を前記推定の結果として出力する、ように構成されている、ようにしてもよい。
【0012】
本発明の第2の観点に係る調熱監視プログラムは、調熱プロセスに従って行われる調熱室内の調熱を監視するコンピュータに、前記調熱プロセスにおいて前記調熱室の温度が第1温度から第2温度に変化するのに要した変化時間を取得する取得ステップと、複数回分の前記調熱プロセスのそれぞれについて前記取得ステップで取得した前記変化時間の集合を統計的に解析し、当該集合の統計データを第1統計データとして得る解析ステップと、前記第1統計データと、前記調熱プロセスが複数回行われたときの前記変化時間の集合の統計データとして用意された基準となる第2統計データとを比較し、比較結果を出力する比較ステップと、を実行させる。
【0013】
本発明の第3の観点に係る調熱監視方法は、調熱プロセスに従って行われる調熱室内の調熱を監視する調熱監視方法であって、前記調熱プロセスにおいて前記調熱室の温度が第1温度から第2温度に変化するのに要した変化時間を取得する取得ステップと、複数回分の前記調熱プロセスのそれぞれについて前記取得ステップにより取得された前記変化時間の集合を統計的に解析し、当該集合の統計データを第1統計データとして得るように構成された解析ステップと、前記第1統計データと、前記調熱プロセスが複数回行われたときの前記変化時間の集合の統計データとして用意された基準となる第2統計データとを比較する比較ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、調熱室に不調が生じている可能性があることをユーザに把握させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態に係る調熱監視装置を有する加熱システムの構成図である。
図2図2は、燃焼制御装置で実行される燃焼シーケンスのフローチャートである。
図3図3は、燃焼制御装置で実行される温度プログラムでの目標温度の時間変化を示す図である。
図4図4は、調熱監視装置のハードウェア構成図である。
図5図5は、調熱監視装置の一部構成図である。
図6図6は、取得部により実行される変化時間格納処理のフローチャートである。
図7図7は、変化時間群のデータ内容例を示す図である。
図8図8は、解析部により実行される基準統計データ生成処理のフローチャートである。
図9図9は、基準統計データが含む基準分布データのデータ内容例を示す図である。
図10図10は、図9の基準分布データのグラフ(度数折れ線)である。
図11図11は、直近分布データと基準分布データとを同じ座標平面にグラフ(度数折れ線)化したグラフである。
図12図12は、直近分布データと基準分布データとを同じ座標平面にグラフ(度数折れ線)化したグラフである。
図13図13は、直近分布データと基準分布データとを同じ座標平面にグラフ(度数折れ線)化したグラフである。
図14図14は、変形例に係る比較部が実行する推定結果出力処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態及びその変形例について、図面を参照して説明する。
【0017】
(実施形態)
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る調熱監視装置20は、加熱システム10に使用される。加熱システム10は、燃料ガスの燃焼により燃焼室R内を加熱することで、当該燃焼室R内の鋼材などの加熱対象を加熱し、これにより加熱対象を改質する。調熱監視装置20は、燃焼室R内の温度が第1温度から第2温度に変化する期間である変化時間Tを監視することで、燃焼室R内の加熱(調熱)の状態を監視する。ユーザは、監視結果(後述の変化時間の統計データ)を確認することで、燃焼室R、より具体的には燃焼室Rを形成している燃焼炉などの部材に不調が発生している可能性があることを把握する。「不調」とは、ここでは、燃焼を行えない状態となる前の、燃焼を行うことが可能な軽度の異常をいう。
【0018】
加熱システム10は、調熱監視装置20の他、燃焼ガスの燃焼を行う燃焼装置30と、燃焼装置30による燃焼を制御する燃焼制御装置70と、を備える。以下、燃焼装置30、及び、燃焼制御装置70を先に説明してから調熱監視装置20について説明する。
【0019】
燃焼装置30は、燃焼機器40と、空気供給系統50と、燃料供給系統60と、を備えている。
【0020】
燃焼機器40は、燃焼室R内で燃料ガスを燃焼させる。燃焼機器40は、燃焼室Rを形成する燃焼炉41と、燃料ガスを燃焼させて燃焼室R内を加熱するメインバーナ42と、を備える。燃焼機器40は、さらに、燃料ガスを燃焼させてメインバーナ42を着火するパイロットバーナ43と、パイロットバーナ43を点火するための点火スパークを発生させる点火装置(イグナイター)44と、を備える。燃焼機器40は、さらに、各バーナ42及び43の火炎の活発度を検出する火炎検出器45と、燃焼室R内の温度を検出する温度センサ46と、を備える。火炎の活発度は、火炎がどの程度活発に発生しているかを示す度合いであり、ここでは、火炎の強度である。火炎検出器45は、例えば、メインバーナ42又はパイロットバーナ43の火炎から放射される電磁波(ここでは、紫外線とする)を検出することで火炎の活発度を検出する。
【0021】
空気供給系統50は、燃焼機器40の各バーナ42及び43に空気を供給する。燃料供給系統60は、外部からの燃料ガスを燃焼機器40のメインバーナ42及びパイロットバーナ43に供給する。各系統50及び60の構成は任意である。各系統50及び60は、空気と燃料ガスとの比である空燃比が、燃焼にとって好ましい所定範囲の比率となるように空気と燃料ガスを供給するように構成されている。
【0022】
燃焼制御装置70は、PLC(Programmable Logic Controller)、パーソナルコンピュータ等の各種のコンピュータを含んで構成される。燃焼制御装置70は、メインバーナ42及びパイロットバーナ43を制御するバーナコントローラを含んでもよい。燃焼制御装置70は、バーナコントローラと、温度センサ46により検出される温度が後述の目標温度となるようにバーナコントローラを起動する温調計と、を含んで構成されてもよい。
【0023】
燃焼制御装置70は、燃焼室R内を加熱するため、予め定められた燃焼シーケンスに従って燃焼装置30を制御する。以下、燃焼シーケンスについて図3を参照して説明するが、燃焼シーケンス開始時、空気供給系統50及び燃料供給系統60は、メインバーナ42及びパイロットバーナ43に空気及び燃料を供給しない閉状態に制御されているものとする。燃焼シーケンスは、図2に示すように、「プレパージ」(ステップS1)、「パイロット点火」(ステップS2)、「パイロットオンリー」(ステップS3)、「メイン着火」(ステップS4)、「メイン安定」(ステップS5)、「定常燃焼」(ステップS6)といったサブシーケンスを含む。
【0024】
燃焼制御装置70は、プレバージにおいて、空気供給系統50を開状態に制御し、メインバーナ42及びパイロットバーナ43を介して燃焼室R内に新鮮な空気を送り込む。これにより、燃焼室R内に残留した燃料ガスが外部に排出される。プレバージは、一定時間行われる。
【0025】
燃焼制御装置70は、プレバージのあと、燃料供給系統60を制御してパイロットバーナ43への燃料供給を開始するとともに点火装置44を動作させて点火スパークを発生させるパイロット点火を実行する。これにより、パイロットバーナ43が点火する。燃焼制御装置70は、火炎検出器45により検出された火炎の活発度が第1所定値を超えたときに、パイロットバーナ43の点火を検出する。この検出後、燃焼制御装置70は、パイロットバーナ43の火炎を安定させるパイロットオンリーを実行する。
【0026】
パイロットオンリーのあと、燃焼制御装置70は、燃料供給系統60を制御してメインバーナ42への燃料供給を開始するメイン着火を実行する。これにより、パイロットバーナ43の火炎を種火としてメインバーナ42が着火する。燃焼制御装置70は、火炎検出器45により検出された火炎の活発度が、第2所定値を超えたとき又はパイロットバーナ43の点火検出時から所定量増えたときに、メインバーナ42の着火を検出する。着火検出後、燃焼制御装置70は、メインバーナ42の火炎を安定させるメイン安定を実行する。燃焼制御装置70は、メインバーナ42着火後、空気供給系統50及び燃料供給系統60を制御し、パイロットバーナ43への空気及び燃料の供給を停止し、パイロットバーナ43の火炎を消す。
【0027】
燃焼制御装置70は、メインオンリーのあと、定常燃焼に移行する。燃焼室R内は、メインバーナ42の定常燃焼により加熱される。燃焼制御装置70は、定常燃焼終了のタイミングにおいて、空気供給系統50及び燃料供給系統60を閉状態に制御し、メインバーナ42への空気及び燃料の供給を停止する。
【0028】
燃焼制御装置70は、温度センサ46が検出した温度をフィードバック値として、燃焼室R内の温度が、例えば図3に示す温度プログラムで指定されている目標温度の時間変化と同様に時間変化するよう、上記燃焼シーケンスを実行する。燃焼シーケンスは、一回の温度プログラムで複数回実行されてもよい。燃焼シーケンスの開始、定常燃焼の期間(燃焼シーケンスの終了タイミング)、定常燃焼での燃料及び空気の流量などは、フィードバック値と目標温度との関係で制御される。なお、変形例として、燃焼装置30は、複数のメインバーナ42及びパイロットバーナ43の組を備えてもよい。この場合、着火するメインバーナ42の数なども燃焼制御装置70により制御される。
【0029】
図3に示すように、温度プログラムは、複数のセグメントSG1~SG7に分割されている。セグメントSG1及びSG3では、目標温度が時間の経過とともに徐々に上昇する。つまり、セグメントSG1及びSG3では、目標温度の時間変化が上昇勾配を有する。セグメントSG2、SG4、及びSG6において、目標温度は一定である。セグメントSG5及びSG7では、目標温度が時間の経過とともに徐々に低下する。つまり、セグメントSG5及びSG7では、目標温度の時間変化は下降勾配を有する。セグメント目標温度の時間変化に勾配が設けられているのは、燃焼室R内の温度が急激に変化することによる燃焼室Rの壁面などの損傷つまり異常の発生を防止するためである。目標温度が一定に設定されているセグメントSG2などは、燃焼室R内の加熱対象の組成変化をその温度により生じさせるために設けられている。
【0030】
燃焼制御装置70は、温度センサ46が検出した燃焼室R内の温度が第1温度(例えば、30℃)から第2温度(例えば、200℃)に変化するのに要した変化時間Tを計時する。この変化時間Tが長くなると、燃焼炉41の保温機能が低下したことによる燃焼室Rの不調が生じたことになる。
【0031】
次に調熱監視装置20について説明する。パーソナルコンピュータ等の各種のコンピュータを含んで構成されている。調熱監視装置20は、図4に示すように、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ21と、プロセッサ21のメインメモリとして機能するRAM(Random Access Memory)22と、プロセッサ21により実行される調熱監視プログラムを記憶する不揮発性の記憶装置23と、を備える。記憶装置23は、後述の変化時間群、直近統計データ、基準統計データも記憶する。調熱監視装置20は、さらに、後述の各種画面を表示するディスプレイ24と、ユーザにより操作される操作装置25と、プロセッサ21が燃焼制御装置70と通信を行うための通信モジュール26と、を備える。
【0032】
この実施の形態では、プロセッサ21は、記憶装置23に記憶された調熱監視プログラムを実行することにより、図5に示す、取得部21A、解析部21B、及び、比較部21Cとして動作する。
【0033】
取得部21Aは、燃焼制御装置70と通信モジュール26を介して通信し、燃焼シーケンスが実行されるたびに燃焼制御装置70から出力される変化時間Tを取得し、記憶装置23に格納する。取得部21Aは、変化時間Tを取得するたびに、図6に示す変化時間格納処理を実行する。
【0034】
取得部21Aは、図6の変化時間格納処理において、燃焼制御装置70から取得した変化時間Tを、記憶装置23に設けられた0~49番目の記憶領域(図7参照)のうちのN番目(初期値は0)の記憶領域に格納する(ステップS11)。その後、取得部21Aは、N=49であるか判別し(ステップS12)、N=49でない場合(No)、Nに1を加算する(ステップS13)。取得部21Aは、Nが49である場合(ステップS12;Yes)、Nを0に初期化する(ステップS14)。このような一連の処理により、図7に示すように、N=0~49の50個の変化時間T(a1~a50)が記憶装置23に格納されると、その後に得られる変化時間Tは、N=0から上書きされていく。これにより、記憶装置23には、最新50回の燃焼シーケンスそれぞれで計測された最新50個の変化時間Tが格納される。この50個の変化時間Tのデータ群が変化時間群である。
【0035】
図5に戻り、解析部21Bは、燃焼装置30の製造後の初期の時期において、記憶装置23に記憶されている変化時間群を構成するN=0~49の変化時間Tの集合を統計的に解析し、この解析で得られる当該集合の統計データを基準統計データとして得る。
【0036】
解析部21Bは、燃焼装置30の製造後、最初の稼働開始から図7に示す基準統計データ生成処理を開始することで、基準統計データを得る。図8に示す基準統計データ生成処理において、解析部21Bは、まず、記憶装置23のN=0~49の各記憶領域を監視し、これら全てに変化時間Tが格納されるまで待機する(ステップS21)。N=0~49の各記憶領域に変化時間Tが格納されたとき(ステップS21;Yes)、解析部21Bは、これら記憶領域それぞれから50個の変化時間Tの集合を読み出す(ステップS22)。その後、解析部21Bは、読み出した50個の変化時間Tの集合を統計的に解析し(ステップS23)、この解析により得られる変化時間Tの集合の統計データを基準統計データとして記憶装置23に格納する(ステップS24)。
【0037】
ステップS24の統計的な解析では、図9にその結果を示すように、予め変化時間の範囲を複数の区分された階級に分割しておき、同じ階級に属する変化時間Tの個数を度数としてカウントする。基準統計データは、図9に示すような、変化時間Tの階級それぞれに属する変化時間Tの個数の分布を示す分布データを含む。当該分布データを、以下では基準分布データともいう。基準分布データは、後述の直近分布データとの比較の基準となる。前記の階級は、変化時間Tの値そのものであってもよい。例えば、変化時間Tが、1秒単位で特定され、小数点以下は四捨五入される場合、変化時間Tがとることができる、1秒,2秒,3秒・・・の各数値を、変化時間Tの上記階級として扱ってもよい。
【0038】
図9に示す基準分布データを、横軸を変化時間Tの階級、縦軸を変化時間Tの個数(度数)としてグラフ化すると、図10に示すようなグラフ(度数折れ線)となる。図10のグラフの黒丸は階級の階級値に付されている。図10のように、基準分布データのグラフは、横軸方向の幅の狭いつまり標準偏差の小さいガウシアン分布を有する。
【0039】
図8に示す基準統計データ生成処理は、燃焼装置30の製造後の動作テスト前から開始されてもよいし、動作テストの終了後の燃焼装置30の本稼働に入ってから開始されてもよい。前記の製造には、燃焼装置30、特に、燃焼炉41を補修、修理、改造、交換することで、当該燃焼装置30又は燃焼炉41が新しくなることも含む。また、基準統計データ生成処理は、ユーザが基準統計データを登録したいと考えた任意のタイミングで開始されてもよい。この場合、ユーザは、操作装置25を介してその旨を指示する。基準統計データ生成処理は、燃焼装置30全体又は少なくとも燃焼室Rに不調が発生していない時期に実行されればよい。
【0040】
図5に戻り、解析部21Bは、基準統計データが得られた後の任意のタイミングで、そのときに記憶装置23に記憶されている変化時間群を構成する変化時間Tの集合を取得する。この集合は、直近に実行された50回分であり、基準統計データを生成する際と同じ回数分の燃焼シーケンスでの空気の供給開始の指令それぞれに対する変化時間Tの集合である。解析部21Bは、変化時間Tの集合を統計的に解析し、この解析で得られる当該集合の統計データを直近統計データとして得て記憶装置23に格納する。直近統計データは、基準統計データとの比較に使用される。なお、直近統計データと基準統計データの生成に使用される変化時間Tの数は、50個に限らず任意である。ユーザは、この比較の結果に基づいて、燃焼室Rに不調が発生しているかを検討する。そこで、ユーザは、燃焼室Rに不調が発生しているかの検討をしたいときに、前記の比較の指示を操作装置25に入力する。この入力を受けて解析部21Bは、前記統計的な解析を行い、直近統計データを得る。
【0041】
解析部21Bは、例えば、図8に示す基準統計データ生成処理のステップS22~S24と同様の処理を行うことで、基準統計データを得るときと同じ手法の解析により、直近統計データを得て記憶装置23に格納する。直近統計データは、基準統計データと同様、変化時間Tの階級それぞれに属する変化時間Tの個数の分布を示す分布データ(図9も参照)を含む。この分布データを以下では直近分布データともいう。
【0042】
図5に戻り、比較部21Cは、記憶装置23に直近統計データが記録されたことを契機として、直近統計データ及び基準統計データを記憶装置23から読み出し、これらを比較し、比較結果を出力する処理を行う。
【0043】
比較部21Cは、ここでは、図11図13に模式的に示すように、横軸を振幅の階級(階級値)とし、縦軸を度数として、直近統計データの直近分布データと、基準統計データの基準分布データと、を互いに関連付けてグラフ化する。この関連付け及びグラフ化により、直近統計データと基準統計データとが比較される。ここでは、共通の座標平面に、直近分布データと基準分布データとが重畳してグラフ化されることで、両者が互いに関連付けてグラフ化されている。比較部21Cは、グラフ化した直近分布データ及び基準分布データの各グラフの画像(図11図13の画像)を、直近統計データと基準統計データとの比較結果としてディスプレイ24に出力する。
【0044】
燃焼室Rに不調が生じていないとき(不調が生じる前)、直近分布データのグラフと基準分布データのグラフとは、図11に示すように、ほぼ重なる。他方、燃焼室Rに不調が生じると、その保温性能が低下し、燃焼室R内の温度を第1温度から第2温度に上昇させるのに必要な時間が長くなる。このため、図12及び図13に示すように、直近分布データのグラフは、基準分布データのグラフよりも、変化時間Tが長い傾向を示す。図12では、直近分布データのグラフが、基準分布データのグラフに比べて、全体的に変化時間Tが長い方向にシフトしている。図13では、直近分布データのグラフの方が基準分布データのグラフよりも、最頻値は変わらないが、中央値及び平均値は長くなっている。両グラフのずれは、不調が進行するほど、つまり、保温機能が低下するほど大きくなっていく。
【0045】
ユーザは、互いに関連付けられた直近分布データ及び基準分布データの各グラフを見比べ、前者が後者よりも変化時間Tの長い傾向を有する場合、その要因の一つとして、燃焼室Rの不調を考慮することができる。このように、本実施の形態では、燃焼室R内の温度が第1温度から第2温度に上昇するのに要した変化時間Tについての統計データである直近分布データ及び基準分布データの各グラフ(両データの比較結果)を関連付けてユーザに提示することで、燃焼室Rに不調が生じている可能性をユーザに把握させることができる。また、ユーザは、両グラフのずれが大きい場合、その要因の一つとして可能性のある燃焼室Rの不調が重度になっている可能性があることを把握できる。ユーザはこれら把握に基づいて、燃焼室R及び燃焼炉41の点検及び修理を行うことができる。
【0046】
本実施形態では、直近分布データと基準分布データとが、変化時間Tの集合の統計的な解析により得られており、変化時間Tの変化の傾向つまり、燃焼室Rの不調の傾向は、直近分布データと基準分布データとの比較結果(両グラフのずれ)に反映されやすい。従って、ユーザは、比較結果を確認することで、燃焼室Rに不調が発生している可能性を早期に把握できる。また、不調に由来しない突発的な事象により変化時間Tが大きく変化したとしても、この影響が統計的解析により軽減されるので、ユーザは、燃焼室Rに不調が生じている可能性を高い確度で把握できる。従って、ユーザは、燃焼室Rに不調が生じている可能性を適切に(ここでは早期に又は高い確度で)把握することができる。
【0047】
燃焼室Rの不調は、徐々に深刻となっていく。変化時間Tは、不調の深刻度が増すにつれて徐々に長くなる傾向にある。変化時間Tを統計的に解析せずに、1つの変化時間Tを閾値と比較して不調を検出することを考えた場合、閾値によっては、不調がある程度深刻にならないと不調が検出されない場合がある。この実施の形態では、統計的な解析を用いて不調をユーザに把握させるので、このような不都合は生じない。
【0048】
上記実施の形態では、比較結果として、直近分布データ及び基準分布データの各グラフを関連付けて表示することにより、ユーザは、直近分布データと基準分布データとの差を直観的に把握しやすい。
【0049】
この実施の形態で直近統計データと比較される基準統計データは、燃焼シーケンスが複数回実行されたときの変化時間Tの集合の統計データとして用意された、前記比較の基準となるデータ、特に、燃焼室Rより好ましくは燃焼装置30全体に不調が生じていないときの変化時間Tの集合の統計データとして用意されたデータであればよい。このため、基準統計データは、燃焼装置30と同型の燃焼装置を用いた実験の結果などから求められ予め用意されたデータであってもよいが、この実施の形態では、燃焼装置30で実際に実行された燃焼シーケンスで測定された変化時間Tの集合に基づいて基準統計データが用意される。これにより、複数生産される燃焼装置30の個々の癖を反映した基準統計データが得られるので、ユーザは、燃焼装置30の不調をより適切に把握できる。
【0050】
(変形例)
上記実施の形態の構成は、任意に変更可能である。以下変形例を例示する。各変形例は、少なくとも一部同士組み合わせることもできる。
【0051】
(変形例1)
燃焼装置30の構成は、任意である。例えば、燃焼装置30は、パイロットバーナ43がないメインバーナ42のみを有するタイプであってもよい。また、燃焼装置30は、パイロットバーナ43を常時点火させた状態としてもよい。この場合、メインバーナ42用の火炎検出器と、パイロットバーナ43用の火炎検出器と、を用意するとよい。
【0052】
(変形例2)
比較部21Cは、縦軸を変化時間Tの階級とし、横軸を変化時間Tの個数として、直近統計データの直近分布データと、基準統計データの基準分布データと、を互いに関連付けてグラフ化してもよい。関連付けてグラフ化する手法は、上記のように、縦軸及び横軸を共通にした座標平面で各グラフを重畳する方法に限定されない。例えば、座標軸のスケールを共通とした異なる座標平面それぞれに各グラフがあらわされてもよい。このように、関連付けてグラフ化する手法は、例えば、ユーザが各分布データを比較可能な手法でグラフ化する手法であればよい。両データを関連付けたグラフ化により、ユーザは燃焼室Rに不調が生じている可能性を容易に把握することができる。
【0053】
(変形例3)
上記統計的な解析の対象の変化時間Tの集合のうち、突発的に異常な数値の変化時間Tについては、解析対象から除外してもよい。
【0054】
(変形例4)
比較部21Cは、直近分布データと基準分布データの各値を併記した画像を出力してもよい。このような数値でも、ユーザは燃焼室Rに不調が生じている可能性を容易に把握することができる。直近統計データ及び基準統計データは、平均値、最頻値、中央値、標準偏差、又は、分散等の各種統計量を含んでもよく、比較部21Cは、直近分布データと基準分布データとのそれぞれの各統計量を併記した画像を出力してもよい。このような各値の併記も直近分布データと基準分布データとの比較の一種である。
【0055】
(変形例5)
解析部21Bは、例えば、記憶装置23に新たな変化時間Tが格納されるたびに、最新の直近統計データを生成してもよい。このような場合、比較部21Cは、最新の直近統計データを生成するたびに上記グラフを表示するほか、図14に示すように、基準統計データと直近統計データとの差に基づいて、燃焼室Rの不調の有無を推定し(ステップS31)、不調ありの場合(ステップS32;Yes)、その旨の推定結果を比較結果として出力してもよい(ステップS33)。比較部21Cは、不調なしの場合(ステップS32;No)、その旨の比較結果を出力しなくてもよいし、出力してもよい。
【0056】
解析部21Bは、直近統計データ及び基準統計データの少なくとも一部として、変化時間Tの平均値と、変化時間Tの階級それぞれに属する変化時間Tの個数の分布(上記分布データ)の最頻値と、前記分布つまり分布データの中央値と、前記分布つまり分布データの標準偏差と、前記分布つまり分布データの分散と、のいずれかの統計量を得てもよい。
【0057】
図12及び図13のように、前記3つの統計量のうちのいずれかにおいて、直近統計データの方が基準統計データよりも高ければ(その差が所定の閾値以上である場合を含む)、燃焼室Rに不調が生じている可能性があることがわかる。また、標準偏差又は分散の値が大きい場合も、燃焼室Rの保温機能などが安定していないことになるので、燃焼室Rに不調が生じている可能性があることがわかる。そこで、比較部21Cは、直近統計データの前記平均値が、基準統計データの前記平均値よりも高い場合に、燃焼室Rに不調が生じていると推定し、その旨を推定の結果として出力してもよい。比較部21Cは、直近統計データの前記最頻値が、基準統計データの前記最頻値よりも高い場合に、燃焼室Rに不調が生じていると推定し、その旨を推定の結果として出力してもよい。比較部21Cは、直近統計データの前記中央値が、基準統計データの前記中央値よりも高い場合に、燃焼室Rに不調が生じていると推定し、その旨を推定の結果として出力してもよい。比較部21Cは、直近統計データの前記標準偏差(又は前記分散)が、基準統計データの前記標準偏差(又は前記分散)よりも高い場合に、燃焼室Rに不調が生じていると推定し、その旨を推定の結果として出力してもよい。比較部21Cは、例えば、その旨の情報をディスプレイ24に表示する。このような情報としては、例えば、「燃焼室に不調が生じている可能性があります」などのメッセージが挙げられる。なお、比較部21Cは、他の測定値などに異常がないときに燃焼室に不調が生じている旨を報知してもよい。
【0058】
上述のように、変化時間Tの変化の傾向は、直近分布データと基準分布データとの比較結果に反映されやすい。従って、比較部21Cによる上記推定により、比較部21Cは、燃焼室Rに不調が生じている可能性を早期に検出できる。また、燃焼室Rの不調に由来しない突発的な事象により変化時間Tが大きく変化したとしても、この影響が統計的解析により軽減されるので、比較部21Cは、燃焼室Rに不調が生じている可能性の有無を高い確度で推定できる。そして、ユーザは比較部21Cによる推定の結果により、燃焼室Rに不調が生じている可能性があることを適切に把握することができる。
【0059】
(変形例6)
解析部21Bによる統計的な解析の具体的方法、及び、比較部21Cによる直近統計データと基準統計データとの比較の具体的方法は、任意である。上記のように、変化時間Tの変化の傾向は、変化時間Tの統計データに反映される。従って、ユーザは、比較結果を確認することで、燃焼室Rに不調が生じている可能性があることを把握できる。
【0060】
(変形例7)
調熱監視装置20のハードウェア構成は任意である。調熱監視装置20は、燃焼制御装置70と他の機器とが接続されるゲートウェイとして構成されてもよい。取得部21A、解析部21B、及び、比較部21Cの少なくとも一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及び、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの各種の論理回路から構成されてもよい。前記各部21A~21Cのうちの少なくとも一部は、燃焼制御装置70が備えてもよい。取得部21Aは、温度センサ46が検出する温度を直接又は燃焼制御装置70を介して取得し、当該温度を監視して上記変化時間を計測して取得してもよい。調熱監視装置20は、サーバコンピュータ、クラウドコンピュータ等であってもよい。比較結果の出力先は、ユーザ端末などのディスプレイであってもよい。比較結果の出力先は、プリンタ、記憶媒体、ネットワーク、他のコンピュータ等であってもよい。調熱監視装置20などの各装置は、装置の構成要素が一つの筐体にまとめられた装置の他、装置の構成要素が複数の筐体に分散して収容されたシステムを含む。燃焼監視プログラムは、上記記憶装置23など、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記憶媒体に格納されればよい。
【0061】
(変形例8)
本発明は、上記燃焼シーケンス、上記温度プログラムなどの予め定められた調熱プロセスに従って行われる調熱室内の調熱を監視する調熱技術一般に適用可能である。調熱プロセスは、上記サブシーケンスのような複数のサブプロセスから構成されてもよい。調熱監視装置20は、例えば、電気ヒータなどによる、加熱炉の加熱室の加熱を監視するものであってもよい。調熱監視装置20は、例えば、冷凍庫などの冷却を監視するものであってもよい。なお、冷却の場合、変化時間Tは、第1温度から第2温度に下降するのに要した時間が使用されるとよい。なお、調熱室内が高温(例えば、100℃又は200℃以上)に加熱される場合、当該調熱室を形成している部材(特に調熱室の壁)の劣化は早く、当該調熱室に不調(調熱室での調熱が不可能となる前の、調熱が可能である軽度の異常)が生じやすい。このため、本発明は、高温に加熱される調熱室に対して特に有効である。このような加熱としては、鋼材などの加熱対象を加工するための加熱がある。加工は、鋼材などの組織変化を含む。
【0062】
(調熱監視方法)
上記調熱監視装置20が実行する処理により、統計的な解析、及び、直近統計データと基準統計データとの比較を行う調熱監視方法が行われているが、当該方法の少なくとも一部は、調熱監視装置20以外の物又は人により行われてもよい。ユーザは、直近統計データと基準統計データとの比較で得られる比較結果を確認することで、上記のように、調熱室に不調が発生することをユーザに把握させることができる。
【0063】
(本発明の範囲)
以上、実施形態及び変形例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態及び変形例に限定されるものではない。例えば、本発明には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る、上記実施形態及び変形例に対する様々な変更が含まれる。上記実施形態及び変形例に挙げた各構成は、矛盾の無い範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0064】
10…加熱システム、20…調熱監視装置、21…プロセッサ、21A…取得部、21B……解析部、21C…比較部、23…記憶装置、25…操作装置、40…燃焼機器、42…メインバーナ、43…パイロットバーナ、44…点火装置、45…火炎検出器、50…空気供給系統、60…燃料供給系統、70…燃焼制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14