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特開2023-94034更生管の被覆構造に用いるカバー部材並びにそのカバー部材を用いる更生管の構築方法及び更生管
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094034
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】更生管の被覆構造に用いるカバー部材並びにそのカバー部材を用いる更生管の構築方法及び更生管
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/26 20060101AFI20230628BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20230628BHJP
   F16L 55/162 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
B29C63/26
F16L1/00 P
F16L55/162
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209240
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000207562
【氏名又は名称】タキロンシーアイシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】石橋 直也
(72)【発明者】
【氏名】竹下 賢
【テーマコード(参考)】
3H025
4F211
【Fターム(参考)】
3H025EA01
3H025EB04
3H025EB13
3H025EC05
3H025EC15
3H025ED02
4F211AD12
4F211AG08
4F211AH43
4F211SA04
4F211SA13
4F211SC03
4F211SD01
4F211SD04
4F211SJ21
4F211SN01
(57)【要約】
【課題】既設管の補修において、補修対象の既設管が大型管の場合や非常に速い流速状態での工事の場合でも、既設管と内面材との間隙を被覆する作業を円滑かつ短時間で行うことができるようにするための更生管の被覆構造に用いるカバー部材並びにそのカバー部材を用いる更生管の構築方法及び更生管を提供すること。
【解決手段】更生管1の被覆構造に用いるカバー部材4は、既設管Pの内周面に接する第一のパネル部41と、第一のパネル部41から更生管1の管心側に立設する第二のパネル部42とを備え、第一のパネル部41が、既設管Pに固定するようにされ、第二のパネル部42が、内面材2の端部において既設管Pと内面材2との間隙を被覆するようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管の内側に配置される内面材と、前記内面材と前記既設管の間隙に充填する充填材と、前記内面材の端部において前記既設管と前記内面材との前記間隙を被覆する被覆構造とを備えてなる更生管の前記被覆構造に用いるカバー部材であって、
前記カバー部材は、
前記既設管の内周面に接する第一のパネル部と、
前記第一のパネル部から前記更生管の管心側に立設する第二のパネル部と
を備え、
前記第一のパネル部が、前記既設管に固定するようにされ、
前記第二のパネル部が、前記間隙を被覆するようにしている
ことを特徴とする更生管の被覆構造に用いるカバー部材。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記第二のパネル部から前記更生管の管奥側に延び、前記内面材に接する第三のパネル部を備えることを特徴とする請求項1に記載の更生管の被覆構造に用いるカバー部材。
【請求項3】
前記カバー部材が、前記更生管の管周方向に分割された複数のパーツで構成されてなることを特徴とする請求項1~2のいずれか一項に記載の更生管の被覆構造に用いるカバー部材。
【請求項4】
前記パーツ同士が、連接用部材により接続されていることを特徴とする請求項3に記載の更生管の被覆構造に用いるカバー部材。
【請求項5】
前記第二のパネル部に、前記間隙内に通じる孔が設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の更生管の被覆構造に用いるカバー部材。
【請求項6】
前記第二のパネル部に、前記間隙の前記更生管の管奥側に向けて突起部が設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の更生管の被覆構造に用いるカバー部材。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のカバー部材を用いた更生管の構築方法であって、
前記既設管の内周面に前記内面材を配置する工程と、
前記内面材の端部において、前記カバー部材を用いて前記既設管と前記内面材との前記間隙を被覆する工程と、
前記既設管と前記内面材との前記間隙に充填材を充填する工程と
を有することを特徴とする更生管の構築方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載のカバー部材を用いた更生管であって、
前記既設管の内側に配置される前記内面材と、
前記内面材と前記既設管の前記間隙に充填する充填材と、
前記内面材の端部において前記既設管と前記内面材との前記間隙を被覆する前記カバー部材と
を備えてなることを特徴とする更生管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設管を補修するための更生管の被覆構造に用いるカバー部材並びにそのカバー部材を用いる更生管の構築方法及び更生管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、老朽化した下水道管等の既設管を補修するために、既設管の内面を内面材で全面的に覆う既設管の補修構造(更生管)が数多く提案されている(例えば、特許文献1~7参照。)。
【0003】
ところで、上記既設管の補修において、内面材と既設管の間隙に充填材を充填する際に、内面材の端部から未硬化の充填材が漏出しないように、既設管と内面材との間隙を被覆する必要がある(例えば、特許文献5~7参照。)。
そして、既設管と内面材との間隙(管口)を被覆するために、レジンパテ、モルタル等のシール剤を用いて手塗りで管口を塞ぐようにする方法(例えば、特許文献6参照。)や、板材、土嚢、ブロック、発泡樹脂材料等からなる汎用部材やモルタルバッグ等の膨張資材を用いて管口を塞ぐようにする方法(例えば、特許文献7参照。)が採用されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-310378号公報
【特許文献2】特開2006-316539号公報
【特許文献3】特許第5746443号公報
【特許文献4】特開2017-198305号公報
【特許文献5】特開2017-178669号公報
【特許文献6】特開2014-77261号公報
【特許文献7】特開2011-106537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、補修対象の既設管が大型管の場合、内面材と既設管の間隙が広くなるため、既設管と内面材との間隙(管口)を被覆するために用いられている上記の従来方法では、作業が困難となったり、作業時間が大幅に増加するという問題があり、手作業で管口を塞ぐ方法の場合、間隙を埋めるために用いるモルタル等が、管奥側及び左右に流れやすく、特に管口上部の作業に困難を伴うという問題があった。
このほか、特に、水量が多い状態や非常に速い流速状態での工事の場合、レジンパテ、モルタル等のシール剤を用いて手塗りで管口を塞ぐようにする方法は採用できず、汎用部材や膨張資材を用いる場合でも、流水下における各資材の確実な固定が難しかった。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、既設管の補修において、補修対象の既設管が大型管の場合や水量が多い状態や非常に速い流速状態での工事の場合でも、既設管と内面材との間隙を被覆する作業を円滑かつ短時間で行うことができるようにするための更生管の被覆構造に用いるカバー部材並びにそのカバー部材を用いる更生管の構築方法及び更生管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の更生管の被覆構造に用いるカバー部材は、
既設管の内側に配置される内面材と、前記内面材と前記既設管の間隙に充填する充填材と、前記内面材の端部において前記既設管と前記内面材との前記間隙を被覆する被覆構造とを備えてなる更生管の前記被覆構造に用いるカバー部材であって、
前記カバー部材は、
前記既設管の内周面に接する第一のパネル部と、
前記第一のパネル部から前記更生管の管心側に立設する第二のパネル部と
を備え、
前記第一のパネル部が、前記既設管に固定するようにされ、
前記第二のパネル部が、前記間隙を被覆するようにしている
ことを特徴とする。
【0008】
この場合において、前記カバー部材は、前記第二のパネル部から前記更生管の管奥側に延び、前記内面材に接する第三のパネル部を備えることができる。
【0009】
また、前記カバー部材が、前記更生管の管周方向に分割された複数のパーツで構成されてなるようにすることができる。
【0010】
また、前記パーツ同士が、連接用部材により接続されるようにすることができる。
【0011】
また、前記第二のパネル部に、前記間隙内に通じる孔が設けられるようにすることができる。
【0012】
また、前記第二のパネル部に、前記間隙の前記更生管の管奥側に向けて突起部が設けられるようにすることができる。
【0013】
また、本発明の更生管の構築方法は、上記カバー部材を用いた更生管の構築方法であって、
前記既設管の内周面に前記内面材を配置する工程と、
前記内面材の端部において、前記カバー部材を用いて前記既設管と前記内面材との前記間隙を被覆する工程と、
前記既設管と前記内面材との前記間隙に充填材を充填する工程と
を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の更生管は、上記カバー部材を用いた更生管であって、
前記既設管の内側に配置される前記内面材と、
前記内面材と前記既設管の前記間隙に充填する充填材と、
前記内面材の端部において前記既設管と前記内面材との前記間隙を被覆する前記カバー部材と
を備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の更生管の被覆構造に用いるカバー部材並びにそのカバー部材を用いる更生管の構築方法及び更生管によれば、既設管の補修において、補修対象の既設管が大型管の場合や水量が多い状態や非常に速い流速状態での工事の場合でも、既設管と内面材との前記間隙を被覆する作業を円滑かつ短時間で行うことができるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の更生管の被覆構造に用いるカバー部材を適用した更生管の一実施例を示し、(a)は更生管の管端の正面図、(b)は同横断面図、(c)は同縦断面図である。
図2】同カバー部材のパーツ及び連接用部材を示し、(a1)はパーツ4Aの正面図(図1(a)に対して、180°回転させて表示。)、(a2)は同平面図、(a3)は(a1)のA-A線端面図、(a4)は同側面図、(b1)はパーツ4Bの正面図、(b2)は同平面図、(b3)は(b1)のB-B線端面図、(b4)は同側面図、(c)はパーツ4A(パーツ4B)のソケット部材を設けた位置の縦断面図、(d1)は連接用部材の正面図、(d2)は同側面図である。
図3】同カバー部材のパーツ及び連接用部材を示し、(a1)はパーツ4Cの正面図(図1(a)に対して、90°右回転させて表示。)、(a2)は(a1)のC-C線端面図、(a3)は同側面図、(a4)は同平面図、(b1)はパーツ4Dの正面図、(b2)は(b1)のD-D線端面図、(b3)は同側面図、(b4)は同平面図、(c1)は連接用部材の正面図、(c2)は同側面図である。
図4】同カバー部材のパーツ及び連接用部材を示し、(a1)はパーツ4Eの正面図、(a2)は(a1)のE-E線端面図、(a3)は同側面図、(a4)は同平面図、(b1)はパーツ4Fの正面図(図1(a)に対して、90°左回転させて表示。)、(b2)は(b1)のF-F線端面図、(b3)は同側面図、(b4)は同平面図、(c1)は連接用部材の正面図、(c2)は同側面図である。
図5】既設管の更生管の例を示し、(a)は円形断面の既設管の更生管構造を示す説明図、(b)は矩形断面の既設管の更生管構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の更生管の被覆構造に用いるカバー部材並びにそのカバー部材を用いる更生管の構築方法及び更生管の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0018】
図1図4に、本発明の更生管の被覆構造に用いるカバー部材を適用した更生管の一実施例を示す。
既設管Pを補修するための更生管1は、図1に示すように、既設管Pの内側に配置される内面材2と、内面材2と既設管Pの間隙に充填する充填材3と、内面材2の端部において既設管Pと内面材2との間隙を被覆する被覆構造とを備えるようにしている。
【0019】
ここで、本発明において、補修対象としている既設管Pは、本実施例の矩形断面の既設管Pのほか、円形断面の既設管等、任意の断面形状の既設管を広く対象にしている。
【0020】
また、更生管1には、老朽化した下水道管等の既設管を更生するために用いられている公知の更生管(例えば、特許文献1~7参照。)を広く用いることができるが、本実施例においては、図5に記載した、既設管Pの管軸方向に設けられる長尺のパネル部材(LFパネル)からなる内面材2を使用する更生管(FFT工法協会「ストリング工法」(登録商標))(特許文献3及び4参照。)を用いるようにしている。
【0021】
そして、本実施例における更生管1の被覆構造に用いるカバー部材4は、既設管Pの内周面に接する第一のパネル部41と、第一のパネル部41から更生管1の管心側に立設する第二のパネル部42と、さらに、必要に応じて設けられる、第二のパネル部42から更生管1の管奥側に延び、内面材2に接する第三のパネル部43とを備え、第一のパネル部41が、既設管Pに固定するようにされ、第二のパネル部42が、内面材2の端部において既設管Pと内面材2との間隙を被覆するようにし、さらに、第三のパネル部43が、内面材2の内周面(既設管の管心側の面)に接するようにしている。
なお、本実施例においては、カバー部材4を用いて既設管Pと内面材2との間隙を全周に亘って被覆しているが、例えば、流水下とならない当該間隙の一部の被覆(管口の側部等)は、レジンパテ、モルタル等のシール剤のみを用いる態様(例えば、特許文献6参照。)としたり、板材、土嚢、ブロック、発泡樹脂材料等からなる汎用部材やモルタルバッグ等の膨張資材を用いる態様(例えば、特許文献7参照。)としてもよい。
【0022】
ここで、カバー部材4の第一のパネル部41には、小孔44を形成し、既設管Pに設けた打ち込み式アンカー等のアンカー部材44aを介して、既設管Pに固定するようにしている。
これにより、カバー部材4を既設管Pに確実に固定することができる。
【0023】
この際、既設管Pの表面に凹凸があり、既設管Pとカバー部材4の第一のパネル部41との隙間から未硬化の充填材3が漏出する場合には、あらかじめ凹部を速乾モルタルで穴埋めしたり、凸部を切削し平坦にした上で、カバー部材4の第一のパネル部41を固定すればよい。
あるいは、既設管Pにカバー部材4の第一のパネル部41を固定した後、第一のパネルの端部(第二のパネルの反対側)から既設管Pの表面にかけて、速乾モルタルでシーリング(目止め)を施したり、既設管Pの表面とカバー部材4の第一のパネル部41との間に、クロロプレンゴム製シート等のパッキン48を介在させるようにしたり、両者を併用したりすることもできる。
ちなみに、水量が多い状態や非常に速い流速状態での工事の場合においても、このようなシーリング(目止め)用途であれば速乾モルタル等を好適に用いることができる。
【0024】
一方、本実施例においては、カバー部材4の第二のパネル部42と更生管1との隙間から未硬化の充填材3が漏出しにくくなるように、第三のパネル部43を設けているが、軽量化や製造コスト削減のため、第三のパネル部43を設けない態様とした際に、カバー部材4の第二のパネル部42と更生管1との隙間から未硬化の充填材3が漏出する場合には、適宜、速乾モルタルでシーリング(目止め)を施すようにしたり、当該隙間を事前にクロロプレンゴム製シート等のパッキン(図示せず)によって塞ぐようにしたり、両者を併用したりすることができる。
【0025】
本実施例における第三のパネル部43は、前述のとおり内面材2の内周面に接するように設けられている。
これにより、カバー部材4と更生管1との隙間から、未硬化の充填材3が漏出しにくくすることができる。それでもなお、第三のパネル部43と内面材2との隙間から、未硬化の充填材3が漏出する場合には、適宜、速乾モルタルでシーリング(目止め)を施すようにしたり、当該隙間を事前にクロロプレンゴム製シート等のパッキン49によって塞ぐようにしたり、両者を併用したりすることができる。
【0026】
本実施例における第二のパネル部42には、既設管Pと内面材2との間隙内に通じる孔45を形成し、この孔45に、内面材2と既設管Pの間隙に充填する充填材3を供給するためのバルブソケット等のソケット部材45aを取り付けるようにしている。
ソケット部材45aを取り付ける孔45の形成数及び形成位置は、充填材3の流動、充填性を考慮して決定することができ、本実施例においては、更生管1の上部及び側部位置においては、既設管Pの内周面の近い位置に、下部位置においては、既設管Pの内周面から遠い位置に形成するようにしている。
これにより、充填材3を効率的に内面材2と既設管Pの間隙に充填することができる。
なお、第二のパネル部42には孔45を形成しなくてもよい。この場合はホールソーなどを用いて、内面材2に既設管Pと内面材2との間隙内に通じる孔(充填材3を充填するための孔)を設けるなどして、充填材3を供給する。
【0027】
また、本実施例における第二のパネル部42には、既設管Pと内面材2との間隙の更生管1の管奥側に向けて、寸切りボルトやスタッドボルト等からなる突起部46を設けるようにしている。
この突起部46は、カバー部材4の第二のパネル部42に、内面材2と既設管Pの間隙
に充填、固化した充填材3による固着力を作用させるためのもので、これにより、更生管1とカバー部材4の一体性をさらに向上することができる。
【0028】
本実施例におけるカバー部材4は、内面材2の端部における既設管Pと内面材2との間隙の形状に適合した形状からなる、更生管1の管周方向に分割された複数のパーツ4A~4Fで構成されている。
パーツ4A~4Fは、本実施例の矩形断面の既設管Pの場合は、既設管Pの平面部に配置されるパーツ4A~4Bと、角部に配置されるパーツ4C~4Fとで構成するようにしているが、パーツの構成は、既設管Pの断面形状や内面材2の端部における既設管Pと内面材2との間隙の形状、カバー部材の搬入手段などに応じて、第一のパネル部円形の既設管にあわせ略円弧状としたり、分割せずに1つのパーツで管口の下部すべてを覆うようにしたり、軽量化のため1つのパーツを本実施例より短尺としたりすることができる。
これにより、既設管Pの断面形状や内面材2の端部における既設管Pと内面材2との間隙の形状、搬入手段に適合したカバー部材4を製作し、簡易に設置することができる。
【0029】
そして、本実施例においては、パーツ4A~4Fを組み合わせてカバー部材4を構成する際、隣接するパーツ同士は、連接用部材47により接続されるようにしている。
連接用部材47は、カバー部材4のパーツ4A~4Fに沿う断面形状を有し、その略半分47aを隣接するパーツの一方のパーツの表面に溶接することによって一体化し、他の略半分47bを隣接するパーツの他方のパーツの表面にクロロプレンゴム製シート等のパッキンを介して接着するようにしている。
これにより、カバー部材4を構成するパーツ4A~4Fの隙間から未硬化の充填材3が漏出することを防止するようにしている。それでもなお、パーツ4A~4Fの隙間から未硬化の充填材3が漏出する場合には、適宜、速乾モルタルでシーリング(目止め)を施すようにすることができる。
【0030】
なお、連接用部材47を設けず、パーツ4A~4Fを突合しカバー部材4とする態様とした際に、パーツ4A~4Fの隙間から未硬化の充填材3が漏出する場合は、適宜、当該突合部に速乾モルタルでシーリング(目止め)を施すようにすればよい。
この場合、連接用部材47を設けるよりもシーリング(目止め)を必要とする箇所が増えるが、カバー部材4を構成する部品点数を少なくし、製造コストを削減することができる。
【0031】
カバー部材4を構成するパーツ4A~4F及び連接用部材47は、本実施例においては、数mm厚のステンレス鋼板(パーツ4A~4Fは、厚さ3mm、連接用部材47は、厚さ2mmのSUS304。)を、溶接又は折り曲げ成形して所定形状に形成するようにしている。
これにより、内面材2と既設管Pの間隙に充填した充填材3の圧力を確実に支持する剛性を確保することができる。また、従来のモルタルのみの態様と比較し、耐腐食性、耐摩耗性に優れた品質の高い更生管の被覆構造を構築することができる。
なお、カバー部材4を構成するパーツ4A~4F及び連接用部材47は、内面材2と既設管Pの間隙に充填した充填材3の圧力を確実に支持する剛性と、耐腐食性、耐摩耗性とを確保できる材料であれば、ステンレス鋼板に限らない。例えば、アルミニウム製板材や、適切なメッキを施した鉄製板材、繊維強化プラスチック(炭素繊維強化プラスチックを含む)製板材、ポリ塩化ビニル樹脂製板材、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂製板材等を用いることもできる。また、同一のカバー部材4の中で、パーツ毎にこれらの材料を使い分けることもできる。
【0032】
このカバー部材4を用いて更生管1を構築するに当たっては、
(1)既設管Pの内周面に内面材2を配置する工程
(2)内面材2の端部において、カバー部材4を用いて既設管Pと内面材2との間隙を被覆する工程
(3)既設管Pと内面材2との間隙に充填材3を充填する工程
を順に実施することにより更生管1を構築することができる。
なお、カバー部材4を用いて既設管Pと内面材2との間隙を被覆する場合、当該間隙の一部の被覆に、レジンパテ、モルタル等のシール剤を用いて手塗りで管口を塞ぐようにする方法(例えば、特許文献6参照。)や、板材、土嚢、ブロック、発泡樹脂材料等からなる汎用部材やモルタルバッグ等の膨張資材を用いて管口を塞ぐようにする方法(例えば、特許文献7参照。)を併用することもできる。
【0033】
これにより、既設管Pの内側に配置される内面材2と、内面材2と既設管Pの間隙に充填する充填材3と、内面材2の端部において既設管Pと内面材2との間隙を被覆するカバー部材4とを備えた更生管を構築することができる。
【0034】
また、これにより、既設管Pの補修において、補修対象の既設管Pが大型管の場合や水量が多い状態や非常に速い流速状態での工事の場合でも、既設管Pと内面材2との間隙を被覆する作業を円滑かつ短時間で行うことができ、充填材3の充填作業を含む更生管1の構築作業を円滑かつ短時間で行うことができる。
【0035】
以上、本発明の更生管の被覆構造に用いるカバー部材並びにそのカバー部材を用いる更生管の構築方法及び更生管について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の更生管の被覆構造に用いるカバー部材並びにそのカバー部材を用いる更生管の構築方法及び更生管は、既設管の補修において、補修対象の既設管が大型管の場合や非常に速い流速状態での工事の場合でも、既設管と内面材との間隙を被覆する作業を円滑かつ短時間で行うことができることから、老朽化した下水道管等の既設管の補修の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0037】
P 既設管
1 更生管
2 内面材
3 充填材
4 カバー部材(被覆構造)
4A~4F パーツ
41 第一のパネル部
42 第二のパネル部
43 第三のパネル部
44 小孔
44a アンカー部材
45 孔
45a ソケット部材
46 突起部
47 連接用部材
48 パッキン
49 パッキン
図1
図2
図3
図4
図5