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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009405
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】板状体
(51)【国際特許分類】
   A47B 96/20 20060101AFI20230113BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
A47B96/20 E
A47B96/20 B
B29C45/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112647
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】391001457
【氏名又は名称】アイリスオーヤマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123021
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 元幸
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 美樹
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AD06
4F206AD08
4F206AD24
4F206AG02
4F206AG03
4F206AG23
4F206AH56
4F206AR13
4F206JA07
4F206JB12
4F206JF05
4F206JL02
(57)【要約】
【課題】 アウトサート成形した樹脂部分が本体部分である木板から容易に外れることのない構造の板状体を提供する。
【解決手段】 本体部分の板状部材である木板部2と、木板部2の側面外周に樹脂モールをアウトサート成形してなる蓋体端部3とを備える蓋体1であって、木板部2の側端面近傍の平面が穿孔されてなる開口部である端部貫通孔4を備え、側面外周に蓋体端部3がアウトサート成形されたときに、端部貫通孔4に蓋体端部3を構成する樹脂が入り込んでいる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部分の板状部材の側面外周に樹脂モールをアウトサート成形して構成される板状体であって、
表面と裏面とが化粧紙加工された板状部材の側端面近傍の平面が穿孔されてなる開口部を備え、
前記側面外周に樹脂モールがアウトサート成形されたときに、前記開口部に前記樹脂モールを構成する樹脂が入り込んでいる
ことを特徴とする板状体。
【請求項2】
前記開口部は、前記板状部材の表面から裏面まで貫通する貫通孔である
ことを特徴とする請求項1に記載の板状体。
【請求項3】
前記開口部は、前記板状部材の側端面を切り欠いた鍵孔状に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の板状体。
【請求項4】
前記開口部は、前記板状部材の表面および裏面にそれぞれ対向して形成された凹部である
ことを特徴とする請求項1に記載の板状体。
【請求項5】
前記板状部材の角部分の側面外周にアウトサート成形される樹脂モールは、前記板状部材の他の部分の側面外周に形成される樹脂モールよりも幅広になっている
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の板状体。
【請求項6】
前記板状部材の角部分の側面外周にアウトサート成形される樹脂モールの裏面に、前記角部分の樹脂モールの形状に沿う凸状片を備え、
前記凸状片の両端は、前記凸状片の中央部分よりも低くなるように形成されている
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の板状体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状体に関するものであり、特に周囲に樹脂製の枠体が形成された板状体に関する。
【背景技術】
【0002】
周囲に樹脂製の枠体が形成された板状体としては、木板等の板状体を金型にセットし、木板側面の外周に樹脂モールをアウトサート成形したものが知られている。例えば、特許文献1では、合板の周辺端面にアウトサート成形によって樹脂モールを構成する方法として、板の端面を凹凸形状等の突起物を設け、樹脂と板材との接着面を増すことで密着性を向上させることが開示されている。また、特許文献2では、第一外面材と第二外面材との間に硬質発泡樹脂からなる芯材を設けた板状体本体を形成するとともに、硬質発泡樹脂に溝状切欠部を形成して硬質樹脂からなる木口材を板状体本体の側縁及び溝状切欠部に密着させて一体形成することにより、軽量でかつ剛性の高い板状体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭48-35913号公報
【特許文献2】特許第6106626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献によれば、板材と樹脂との接着面積は増えているものの、面接触による固定方法であるため、成形時の熱や圧力によって木板が圧縮された後、冷却に伴い復元時に膨張して樹脂モールの破損や反りを発生させるおそれがある。樹脂モールの破損や反りは、木板と樹脂モールとのガタつきを生じさせ、ひいては、樹脂モールが木板から外れてしまうという問題を招くことになる。上記特許文献では、このようなリスクに関して有効な対策が講じられていない。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、アウトサート成形した樹脂部分が本体部分である木板から容易に外れることのない構造の板状体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明に係る板状体は、本体部分の板状部材の側面外周に樹脂モールをアウトサート成形して構成される板状体であって、表面と裏面とが化粧紙加工された板状部材の側端面近傍の平面が穿孔されてなる開口部を備え、前記側面外周に樹脂モールがアウトサート成形されたときに、前記開口部に前記樹脂モールを構成する樹脂が入り込んでいることを特徴とする。
【0007】
ここで、前記開口部は、前記板状部材の表面から裏面まで貫通する貫通孔であるのが好ましい。
【0008】
また、前記開口部は、前記板状部材の側端面を切り欠いた鍵孔状に形成されているとしてもよい。
【0009】
また、前記開口部は、前記板状部材の表面および裏面にそれぞれ対向して形成された凹部であるとしてもよい。
【0010】
さらに、前記板状部材の角部分の側面外周にアウトサート成形される樹脂モールは、前記板状部材の他の部分の側面外周に形成される樹脂モールよりも幅広になっているのが好ましい。
【0011】
またさらに、前記板状部材の角部分の側面外周にアウトサート成形される樹脂モールの裏面に、前記角部分の樹脂モールの形状に沿う凸状片を備え、前記凸状片の両端は、前記凸状片の中央部分よりも低くなるように形成されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る板状体によれば、表面と裏面とが化粧紙加工された板状部材の本体部分の側端面近傍に形成された開口部に樹脂モールを構成する樹脂が入り込んで、その部分が抜け止めとなるので、アウトサート成形した樹脂部分が本体部分である木板から容易に外れることのない構造の板状体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る蓋体を備えた収納用ボックスを示す図である。
図2】蓋体を示す斜視図である。
図3】蓋体端部の断面を示す図である。
図4】蓋体端部の別の構成例を示す図である。
図5】蓋体端部の別構成における断面を示す図である。
図6】蓋体コーナー部の斜視図である
図7】蓋体コーナー部を裏側から見た斜視図である。
図8】蓋体を重ねた状態の端部の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る板状体について、実施の形態に基づいて説明する。
【0015】
ここでは、板状体として、収納用ボックス等の天面が開口されている箱に用いられる蓋体を例に挙げて説明することとする。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係る蓋体を備えた収納用ボックスを示す図である。
【0017】
収納用ボックス20は、天面が開口されており、内部に物品等を収納可能な箱体21と、箱体21の天面に載置され蓋となる蓋体1とで構成されている。
【0018】
図2は、蓋体を示す斜視図である。
【0019】
蓋体1は、平板状の木材で構成され、蓋体1の本体部分となる木板部2と、木板部2の側面外周に樹脂モールをアウトサート成形して構成され、蓋体1の端部となる蓋体端部3とを備えた板状体である。蓋体端部3のうち、蓋体1の四隅の角に位置するのが蓋体コーナー部7であり、蓋体コーナー部7は、周方向に丸みをつけた形状で構成されている。
【0020】
蓋体端部3は、蓋体1の裏面側に、箱体21に載置されたときの蓋体1の位置ずれを防ぐための凸状部として端部裏面リブ5を備えており、蓋体コーナー部7では同様の凸状部としてコーナーのRに沿って形成される円弧状のコーナー裏面リブ6を備えている。
【0021】
木板部2の表面および裏面には、化粧紙加工が施されている。化粧紙加工されているため、水分の侵入による木板部2の反りや、カビの発生が抑制できる。そして、木板部2の端には、木板部2の平面が穿孔されてなる開口部として端部貫通孔4が設けられている。端部貫通孔4は、木板部2を厚み方向、つまり、木板部2の表面から裏面までを貫通する貫通孔である。この端部貫通孔4は、木板部2の周方向に一定の間隔をあけて複数設けられている。端部貫通孔4が設けられている木板部2の端とは木板部2の側面外周であるから、端部貫通孔4が設けられている位置上に端部貫通孔4を覆うように蓋体端部3が形成されることとなる。
【0022】
図3は、蓋体端部の断面を示す図である。
【0023】
端部貫通孔4が設けられている位置に蓋体端部3をアウトサート成形すると、蓋体端部3を構成する樹脂は開口部である端部貫通孔4の中に入り込むことになる。このとき、端部貫通孔4の中に入り込んだ樹脂が、木板部2から蓋体端部3が抜け外れることを防ぐ抜け止めとして機能する。これによって、木板から容易に外れることのない構造が実現される。また、化粧紙13を覆うように蓋体端部3がアウトサート成型され、さらに、端部貫通孔4を設けているため、化粧紙13と蓋体端部3との接触部分の密着性が高まり、接触部分の隙間からの水分の侵入を効果的に抑制できる。
【0024】
ここで、端部貫通孔4は、木板部2の側端面から一定の距離(オフセット)を持たせた位置を穿孔して形成されるのが、樹脂の流動を確保する観点から好ましいといえる。また、木板部2の側端面にあまりに近い位置で穿孔すると木板の割れなどが発生するおそれもあるからである。
【0025】
なお、蓋体端部3を構成する樹脂は、成形時の熱による反りの発生等を防止する観点から、EVA(エチレンビニルアセテート)樹脂やエラストマー樹脂などの柔らかい物性のものを用いるのが好ましい。
【0026】
図4は、蓋体端部の別の構成例を示す図である。
【0027】
木板部2の端近傍の平面を穿孔して形成する開口部として、上述のような木板部2の端に貫通する孔を設けるのではなく、木板部2の端を鍵孔状に切り欠いて形成される端部鍵孔8を設けるとしてもよい。端部鍵孔8を木板部2の端に設ける場合、木板部2と蓋体端部3との結合がより強固となり、抜け止めとしての効果が向上する。
【0028】
木板部2の側端面は、化粧紙加工が施されている表面および裏面と異なり、木材を切り出したまま縁始末をしていない(切りっぱなし)状態で使用され、多孔質状になっていることが一般的である。そのため、蓋体端部3のアウトサート成形時に樹脂が側端面から幾分入り込むので、木板部2の端を貫通する孔ではなく、木板部2の端に溝を形成することによっても、蓋体端部3の抜け止め効果を得ることができる。
【0029】
図5は、蓋体端部の別構成における断面を示す図である。
【0030】
ここでは、木板部2の端近傍の平面を穿孔して形成する開口部として、木板部2の端に、木板部2の表面側と裏面側にそれぞれ対向するように形成した凹溝である端部凹部9を設けた例を示している。木板部2の端に端部凹部9を設ける場合、貫通孔を穿孔することによる木材端部の破損を防ぐことができる。
【0031】
このように、本実施形態の蓋体1は、表面と裏面とが化粧紙加工された木板部2の側端面から一定の距離を離した位置で木板部2の平面を穿孔し、木板部2の側面外周に樹脂モールをアウトサート成形するときに、穿孔により形成された開口部に樹脂を入り込ませる構造としている。開口部に樹脂が入り込むことにより、その入り込んだ部分が木板部2からの抜け止めとして機能するので、木板部2から蓋体端部3が容易に外れることを防ぐことができる。
【0032】
図6は、蓋体コーナー部の斜視図である。図7は、蓋体コーナー部を裏側から見た斜視図である。
【0033】
図6および図7に示すように、蓋体コーナー部7aに端部貫通孔4が設けられている。蓋体コーナー部7aは、角にあるのでアウトサート成形時に樹脂の流れが悪くなる傾向にある。そのような蓋体コーナー部7aに端部貫通孔4を設け、端部貫通孔4を樹脂注入起点とすることにより、樹脂が確実に充填されることを可能にしている。
【0034】
なお、樹脂注入起点は、蓋体の四辺のそれぞれ中間地点において端近傍の平面を穿孔して設けるとしてもよい。注入される樹脂の種類や成形条件を調整することにより、この中間地点の四か所を樹脂注入起点としても樹脂は確実に充填され、蓋体コーナー部7aにおける樹脂溜まりや成形不良の発生を防止することができる。
【0035】
蓋体コーナー部7aは、角部分が他の蓋体端部3よりも幅広に形成されたコーナー幅広部12を備えている。このコーナー幅広部12を備えることにより、蓋体の剛性を高めることができる。また、コーナー幅広部12は、角部分が他の蓋体端部3よりも幅広に形成されているので、蓋体の裏面側に設けられるコーナー裏面リブを配置するスペースを十分に確保することもできる。
【0036】
蓋体コーナー部7aにおいて、蓋体の裏面側に設けられるコーナー裏面リブは、中央凸片10と、両端凸片11とで構成されており、両端凸片11は両端部の高さが中央凸片10よりも低くなっている。
【0037】
中央凸片10は、蓋体を重ね置く際に位置ずれを防止するため、すなわち、スタッキング用の部材として機能する。両端凸片11は、すなわち、箱体21に載置されたときの蓋体の位置ずれを防ぐための凸状部として、すなわち、上述のコーナー裏面リブとして機能する。
【0038】
図8は、蓋体を重ねた状態の端部の断面を示す図である。
【0039】
蓋体を重ね置いたときに、上側の蓋体の中央凸片10は、下側の蓋体の木板部2の表面(化粧紙加工が施されている面)に接するとともに、蓋体端部3と係合するように配置されるので、重ねた蓋体が位置ずれすることを防止できる。図3図8に示すように、化粧紙13が貼付され化粧紙加工が施されている木板部2の表面および裏面と、アウトサート成形された蓋体端部3とは面一になっていない。そのため、中央凸片10と蓋体端部3とによって重ねた蓋体同士の位置ずれが防止可能になっている。また、中央凸片10と、両端凸片11とで構成されるコーナー裏面リブは、蓋体コーナー部7aの裏面側でコーナー幅広部12に設けられるので、十分に確保されたスペースで、中央凸片10が蓋体端部3と係合するように配置することが可能となっている。
【0040】
このように、蓋体を重ね置くためのスタッキング用のリブや位置ずれ防止用のリブを蓋体コーナー部7aに設けるために、蓋体コーナー部7aを幅広に形成したり肉厚に形成したりする場合、成形時の樹脂の流れが悪くなるおそれがある。この点、上述のように、樹脂注入起点となる蓋体コーナー部7aに樹脂注入起点となる端部貫通孔4や蓋体の四辺のそれぞれ中間地点に樹脂注入起点が設けられているので、樹脂の確実な充填が担保されているといえる。
【0041】
このように、本実施の形態の蓋体によれば、本体である木板の側端面近傍の平面を穿孔し、木板側面外周に樹脂モールをアウトサート成形する際に、穿孔により形成された開口部に樹脂を入り込ませているので、樹脂モールを構成する樹脂の入り込んだ部分が抜け止めとなって木板から樹脂モールが容易に抜け外れることを防ぐことができる。
【0042】
また、蓋体の角部分の樹脂モールを他の部分の樹脂モールよりも幅広に形成しているので、蓋体の剛性を高めることができる。
【0043】
さらに、幅広に形成された角のコーナー部分の裏面側に、コーナー部分に沿う円弧上の凸状片が、その両端が中央よりも低くなるようにして設けられているので、両端の凸状部で箱体に載置されたときの蓋体の位置ずれを防ぎ、中央の凸状部で蓋体1を重ね置く際の位置ずれを防止することが可能となっている。
【0044】
以上、本発明に係る板状体について実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の目的を達成でき、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々設計変更が可能であり、それらも全て本発明の範囲内に包含されるものである。
【0045】
例えば、上記実施形態では、端部貫通孔を複数設ける例を説明したが、少なくとも1か所でも端部貫通孔を形成すれば木板から抜け外れる効果を奏することができるといえる。
【0046】
また、木板の側端面から一定の距離を離した位置で木板の平面を穿孔して、開口部に樹脂を入り込ませるものであれば、開口部の形成の仕方は、上記実施形態で示した貫通孔や鍵孔、対向する凹部でなくてもよく、木板の一方の平面から他方の平面に向かって深く掘り込ませた孔であってもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、蓋体の本体部を平板状の木材とする例を示したが、板状体の本体部分をプラスチック等で構成するとしてもよい。
【0048】
さらに、上記実施形態では、蓋体のコーナー部を丸みのある形状で構成した例を示したが、コーナー部を角張った形状で構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る板状体は、収納用ボックス等の蓋として用いる板状体等に適している。
【符号の説明】
【0050】
1 蓋体
2 木板部
3 蓋体端部
4 端部貫通孔
5 端部裏面リブ
6 コーナー裏面リブ
7,7a 蓋体コーナー部
8 端部鍵孔
9 端部凹部
10 中央凸片
11 両端凸片
12 コーナー幅広部
13 化粧紙
20 収納用ボックス
21 箱体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8