(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094064
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】リン酸カルシウム硬化性組成物、硬化体の製造方法、及び硬化体
(51)【国際特許分類】
A61L 27/12 20060101AFI20230628BHJP
A61L 27/42 20060101ALI20230628BHJP
A61L 33/02 20060101ALI20230628BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20230628BHJP
A61L 31/02 20060101ALI20230628BHJP
A61L 31/14 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
A61L27/12
A61L27/42
A61L33/02
A61L27/58
A61L31/02
A61L31/14 500
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209297
(22)【出願日】2021-12-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】501046420
【氏名又は名称】HOYA Technosurgical株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080012
【弁理士】
【氏名又は名称】高石 橘馬
(74)【代理人】
【識別番号】100168206
【弁理士】
【氏名又は名称】高石 健二
(72)【発明者】
【氏名】中須 正議
(72)【発明者】
【氏名】川島 良太
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB04
4C081BA16
4C081BB07
4C081BB08
4C081CF011
4C081CF021
4C081CF031
4C081DA11
4C081DA14
4C081DC12
4C081EA02
(57)【要約】
【課題】
骨内への吸収性と高い強度とを併せ持ったリン酸カルシウム硬化体を与えることができ、生体骨補強治療用として好適に用いられるリン酸カルシウム硬化性組成物を提供する。
【解決手段】
リン酸カルシウム系化合物の粉体を主材料とするリン酸カルシウム硬化性組成物であって、前記粉体は、α型第三リン酸カルシウムと、β型第三リン酸カルシウムと、第二リン酸カルシウムと、第四リン酸カルシウムとを含むことを特徴とするリン酸カルシウム硬化性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸カルシウム系化合物の粉体を主材料とするリン酸カルシウム硬化性組成物であって、
前記粉体は、α型第三リン酸カルシウムと、β型第三リン酸カルシウムと、第二リン酸カルシウムと、第四リン酸カルシウムとを含むことを特徴とするリン酸カルシウム硬化性組成物。
【請求項2】
前記リン酸カルシウム硬化性組成物の全質量を100質量%としたときに、
前記β型第三リン酸カルシウムの含有量が、50質量%以上、85質量%以下であり、
前記α型第三リン酸カルシウムの含有量が、0.1質量%以上、6質量%以下である請求項1に記載のリン酸カルシウム硬化性組成物。
【請求項3】
前記β型第三リン酸カルシウムの含有量Cβに対する前記α型第三リン酸カルシウムの含有量Cαの質量比(Cα/Cβ)が、0.1%~20%である請求項1又は2に記載のリン酸カルシウム硬化性組成物。
【請求項4】
ハイドロキシアパタイトを更に含有する請求項1~3のいずれかに記載のリン酸カルシウム硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のリン酸カルシウム硬化性組成物に水を加えて硬化させる工程を含むことを特徴とする硬化体の製造方法。
【請求項6】
β型第三リン酸カルシウムと、ハイドロキシアパタイトとを主材料として含む硬化体であって、
前記β型第三リン酸カルシウムは、前記硬化体の骨格構造を形成し、
前記ハイドロキシアパタイトは、前記骨格構造を足場としてその周囲に付着していることを特徴とする硬化体。
【請求項7】
前記硬化体の全質量を100質量%としたときに、
前記β型第三リン酸カルシウムの含有量が、40質量%以上、80質量%以下であり、
前記ハイドロキシアパタイトの含有量が、20質量%以上、60質量%以下である請求項6に記載の硬化体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔外科を含む医科の分野で生体骨補強治療に用いられるリン酸カルシウム硬化性組成物、前記リン酸カルシウム硬化性組成物を用いた硬化体の製造方法、及び硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔外科を含む医科の分野で生体骨補強治療に用いられる生体骨補強治療用の骨充填材として、リン酸カルシウム化合物の粉剤とこの粉剤と反応を起こす硬化液とを混練して得られる自己硬化型のリン酸カルシウム硬化性組成物が挙げられる(特許文献1~3を参照)。このリン酸カルシウム硬化性組成物は、流動性のあるペースト状又は粘土状であり、複雑形状の骨欠損部や骨折部等の患部にも柔軟に対応できるというメリットを有している。
【0003】
リン酸カルシウム硬化性組成物は、例えば、術場でリン酸カルシウム化合物の粉剤と硬化液とを所定の比率で混合及び混練し、混練物が硬化する前に、シリンジ等で注入又は手で練って患部に補填して使用する。
【0004】
特許文献1~3に記載されたリン酸カルシウム化合物の粉剤はα型第三リン酸カルシウムを主材料として含んでおり、得られるリン酸カルシウム硬化性組成物は、硬化時間が短く、骨充填材(硬化体)として実用上十分な強度を発揮する。このためα型第三リン酸カルシウムを含んでなるリン酸カルシウム硬化性組成物は臨床の場において広く利用されている。
【0005】
しかしながら、α型第三リン酸カルシウムを含んでなるリン酸カルシウム硬化性組成物から得られる骨充填材(硬化体)は、骨内に吸収される速度が遅く、骨充填材から骨に置換されることがない。
【0006】
骨内に吸収される速度が速いリン酸カルシウムとしては、β型第三リン酸カルシウムが知られている。特許文献4は、β型第三リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム及び第四リン酸カルシウムを含む粉剤と、硬化液とを混練してなるリン酸カルシウム硬化性組成物を開示しており、このリン酸カルシウム硬化性組成物は硬化時間が短く、かつ得られるリン酸カルシウム硬化体は骨内への吸収性に優れると記載している。
【0007】
しかしながら、特許文献4に記載のリン酸カルシウム硬化性組成物から得られる硬化体は吸収性に優れるものの、前述したα型第三リン酸カルシウムを含んでなるリン酸カルシウム硬化性組成物から得られる硬化体に比べて強度的には低いため、補填部位によってはさらに高強度でかつ吸収性に優れるリン酸カルシウム硬化体が得られるリン酸カルシウム硬化性組成物の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4111418号公報
【特許文献2】特許第4111419号公報
【特許文献3】特許第4134299号公報
【特許文献4】特開2015-53981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、骨内への吸収性と高い強度とを併せ持ったリン酸カルシウム硬化体を与えることができ、生体骨補強治療用として好適に用いられるリン酸カルシウム硬化性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、β型第三リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム及び第四リン酸カルシウムを含む粉剤に、さらに適量のα型第三リン酸カルシウムを加えることにより、骨内への吸収性はほとんど低下せずに、強度が向上したリン酸カルシウム硬化体を与えるリン酸カルシウム硬化性組成物が得られることを見出し、本発明に想到した。なお本願において、「リン酸カルシウム硬化性組成物」及び「リン酸カルシウム硬化体」をそれぞれ単に「硬化性組成物」及び「硬化体」と言う場合もある。
【0011】
すなわち、本発明のリン酸カルシウム硬化性組成物は、
リン酸カルシウム系化合物の粉体を主材料とし、
前記粉体は、α型第三リン酸カルシウムと、β型第三リン酸カルシウムと、第二リン酸カルシウムと、第四リン酸カルシウムとを含むことを特徴とする。
【0012】
前記リン酸カルシウム硬化性組成物の全質量を100質量%としたときに、
前記β型第三リン酸カルシウムの含有量が50質量%以上85質量%以下であり、
前記α型第三リン酸カルシウムの含有量が0.1質量%以上6質量%以下であるのが好ましい。
【0013】
前記β型第三リン酸カルシウムの含有量Cβに対する前記α型第三リン酸カルシウムの含有量Cαの質量比(Cα/Cβ)は0.1%~20%であるのが好ましい。
【0014】
前記リン酸カルシウム硬化性組成物は、ハイドロキシアパタイトを更に含有するのが好ましい。
【0015】
硬化体を製造する本発明の方法は、前記リン酸カルシウム硬化性組成物に水を加えて硬化させる工程を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の硬化体は、β型第三リン酸カルシウムと、ハイドロキシアパタイトとを主材料として含み、
前記β型第三リン酸カルシウムは、前記硬化体の骨格構造を形成し、
前記ハイドロキシアパタイトは、前記骨格構造を足場としてその周囲に付着していることを特徴とする。
【0017】
前記硬化体の全質量を100質量%としたときに、
前記β型第三リン酸カルシウムの含有量が40質量%以上80質量%以下であり、
前記ハイドロキシアパタイトの含有量が20質量%以上60質量%以下であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のリン酸カルシウム硬化性組成物は、β型第三リン酸カルシウムとα型第三リン酸カルシウムとを含有することにより、骨内への吸収性と高い強度とを併せ持ったリン酸カルシウム硬化体を与えることができるため、生体骨補強治療用の材料として好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[1] リン酸カルシウム硬化性組成物
本発明のリン酸カルシウム硬化性組成物は、リン酸カルシウム系化合物の粉体を主材料とし、前記粉体は、α型第三リン酸カルシウムと、β型第三リン酸カルシウムと、第二リン酸カルシウムと、第四リン酸カルシウムとを含むことを特徴とする。
【0020】
このように、リン酸カルシウム硬化性組成物に含まれる粉体を、α型第三リン酸カルシウムと、β型第三リン酸カルシウムと、第二リン酸カルシウムと、第四リン酸カルシウムとを含むリン酸カルシウム系化合物で構成することで、骨内における優れた吸収性と、高い強度とを併せ持ったリン酸カルシウム硬化体(骨充填材)を与えることのできるリン酸カルシウム硬化性組成物を提供できる。
【0021】
(1)リン酸カルシウム系化合物
(a)α型第三リン酸カルシウム及びβ型第三リン酸カルシウム
α型第三リン酸カルシウム(α-Ca3(PO4)2;α-TCPと略す場合がある。)を含んでなるリン酸カルシウム硬化性組成物は、硬化時間が短く、骨充填材(硬化体)として高い強度を発揮する。しかしながら、α型第三リン酸カルシウムを所定量よりも多く含む場合、得られる骨充填材(硬化体)は、骨内に吸収される速度が遅くなる。従って、α型第三リン酸カルシウムの含有量は、リン酸カルシウム硬化性組成物の全質量を100質量%としたときに、0.1質量%以上6質量%以下であるのが好ましく、0.2質量%以上5質量%以下であるのがより好ましく、0.3質量%以上4質量%以下であるのがさらに好ましく、0.35質量%以上3質量%以下であるのがさらにより好ましく、0.4質量%以上2質量%以下であるのが最も好ましい。
【0022】
リン酸カルシウム硬化性組成物にβ型第三リン酸カルシウム(β-Ca3(PO4)2;β-TCPと略す場合がある。)を含むことにより、骨内に吸収される速度が速い硬化体を与える。本発明では、リン酸カルシウム硬化性組成物を、α型第三リン酸カルシウムと、β型第三リン酸カルシウムとを含んでなる構成とすることで、骨内における優れた吸収性と、高い強度とを両立する骨充填材(硬化体)を提供することができる。
【0023】
β型第三リン酸カルシウムの含有量は、リン酸カルシウム硬化性組成物の全質量を100質量%としたときに、50質量%以上85質量%以下であるのが好ましく、60質量%以上80質量%以下であるのがより好ましく、70質量%以上75質量%未満であるのがさらに好ましい。またβ型第三リン酸カルシウムの含有量Cβに対するα型第三リン酸カルシウムの含有量Cαの質量比(Cα/Cβ)は、0.1~20%であるのが好ましく、0.2~15%であるのがより好ましく、0.3~10%であるのがさらに好ましく、0.4~5%であるのが最も好ましい。β型第三リン酸カルシウムの含有量を前記の範囲内に設定することにより、形成されるリン酸カルシウム硬化体の骨内における吸収性をより優れたものとすることができるとともに、α型第三リン酸カルシウムの含有量を前記の範囲内に設定することによってリン酸カルシウム硬化体の強度を向上させることができる。
【0024】
β型第三リン酸カルシウムの粉体の平均粒子径は、1~100μmであるのが好ましい。β型第三リン酸カルシウム粉体の平均粒子径をこのような範囲内に設定することにより、リン酸カルシウム硬化性組成物の硬化時間を確実に短くすることができる。β型第三リン酸カルシウム粉体の平均粒子径は2~30μmであるのがより好ましい。なお、ここでいうβ型第三リン酸カルシウムの粉体の平均粒子径は、β型第三リン酸カルシウムの粉体を水に懸濁し、得られた懸濁液を超音波で分散処理した後に、その懸濁液中に存在する粉体を測定することによって得られる懸濁液中での平均粒子径である。
【0025】
β型第三リン酸カルシウムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、公知の湿式合成法、乾式合成法、水熱合成法等の何れかを用いて、第三リン酸カルシウムを生成した後、750~1150℃で焼成することでβ型第三リン酸カルシウムを得る方法等が挙げられる。
【0026】
β型第三リン酸カルシウムを製造する際に、β型第三リン酸カルシウムの不純物としてα型第三リン酸カルシウムがわずかに含まれる場合がある。従って、この不純物として含まれるα型第三リン酸カルシウムの含有量を考慮して、リン酸カルシウム硬化性組成物を調整する必要がある。工業的には、各リン酸カルシウム系化合物の含有量が安定して含まれるリン酸カルシウム硬化性組成物を調整する必要があるため、原材料としてのβ型第三リン酸カルシウムに不純物として含まれるα型第三リン酸カルシウムの含有量は、できるだけ少なくする、又はいつも一定量含有するようにβ型第三リン酸カルシウムを製造するのが好ましい。
【0027】
例えば、焼成温度を後述するように調整すること、又は不純物として含まれるα型第三リン酸カルシウムを精製により除去することにより、α型第三リン酸カルシウムの含有量を所定値以下にするのが好ましい。β型第三リン酸カルシウムに対するα型第三リン酸カルシウムの含有量は5質量%以下であるのが好ましく、3質量%以下であるのがより好ましい。
【0028】
β型第三リン酸カルシウムの製造方法は、特に限定されないが、例えば、公知の湿式合成法、乾式合成法、水熱合成法等の何れかを用いて、β型第三リン酸カルシウムを生成した後、750~1150℃で焼成する方法等を用いることができる。β型第三リン酸カルシウムの製造方法については、特開2015-53981号公報を参照することができる
【0029】
上記β型第三リン酸カルシウムの焼成温度は、940~1150℃であるのが好ましく、970~1125℃であるのがより好ましく、1000~1100℃であるのがさらに好ましく、1025~1075℃であるのがさらにより好ましい。このような温度範囲とすることにより、β型第三リン酸カルシウムに不純物として含まれるα型第三リン酸カルシウムの量をより低減することができる。
【0030】
上記β型第三リン酸カルシウムの焼成において、昇温を開始してから上記焼成温度に到達するまでの時間(昇温時間)は、例えば、2~12時間であってもよい。上記昇温時間は、5時間以上であるのが好ましく、6時間以上であるのがさらに好ましく、7時間以上であるのが最も好ましい。このような好ましい昇温時間とすることにより、β型第三リン酸カルシウムに不純物として含まれるα型第三リン酸カルシウムの量をより低減することができる。
【0031】
(b)第二リン酸カルシウム
第二リン酸カルシウムは第四リン酸カルシウムと反応することにより、ハイドロキシアパタイトを生成し、リン酸カルシウム硬化性組成物の硬化に寄与する。なお、リン酸カルシウム硬化性組成物の硬化のメカニズムについては後に詳述する。
【0032】
第二リン酸カルシウムの粉体は、平均粒子径が1~50μmであるのが好ましい。第二リン酸カルシウム粉体の平均粒子径をこの範囲内に設定することにより、リン酸カルシウム硬化性組成物の硬化時間を確実に短くすることができる。第二リン酸カルシウム粉体の平均粒子径は2~40μmであるのがより好ましく、15~30μmであるのがさらに好ましい。平均粒子径は、第二リン酸カルシウムの粉体を水に懸濁し、得られた懸濁液を超音波で分散処理した後に、その懸濁液中に存在する粉体を測定することによって得られる懸濁液中での平均粒子径である。
【0033】
第二リン酸カルシウムとしては、第二リン酸カルシウム二水和物(CaHPO4・2H2O;DCPDと略す場合がある。)、及び無水第二リン酸カルシウム(CaHPO4;DCPAと略す場合がある。)が挙げられるが、これらのうちの何れであってもよい。これら第二リン酸カルシウム二水和物及び無水第二リン酸カルシウムとしては、市販のものを用いることができる。
【0034】
本発明の一実施形態において好ましく用いられる第二リン酸カルシウムの粉体を得るために、自動乳鉢等の器具を用いて市販の第二リン酸カルシウムを粉砕してもよい。例えば、第二リン酸カルシウムとβ型第三リン酸カルシウムとを混合したものを粉砕してもよいし、第二リン酸カルシウムとβ型第三リン酸カルシウムとを混合する前に、第二リン酸カルシウムのみを先に粉砕してもよい。リン酸カルシウム硬化性組成物の硬化時間をより短くしたい場合には、第二リン酸カルシウムのみを先に粉砕するのが好ましい。
【0035】
(c)第四リン酸カルシウム
第四リン酸カルシウム(Ca4(PO4)2O;TeCPと略す場合がある。)は、第二リン酸カルシウムと反応することにより、ハイドロキシアパタイトを生成し、リン酸カルシウム硬化性組成物の硬化に寄与するリン酸カルシウムである。なお、リン酸カルシウム硬化性組成物の硬化のメカニズムについては後に詳述する。
【0036】
第四リン酸カルシウムの粉体は、平均粒子径が1~100μmであるのが好ましい。第四リン酸カルシウム粉体の平均粒子径をこの範囲内に設定することにより、リン酸カルシウム硬化性組成物の硬化時間を確実に短くすることができる。第四リン酸カルシウム粉体の平均粒子径は、5~90μmであるのがより好ましく、10~80μmであるのがより好ましく、30~70μmであるのがさらに好ましく、40~60μmであるのが最も好ましい。平均粒子径は、第四リン酸カルシウムの粉体を水に懸濁し、得られた懸濁液を超音波で分散処理した後に、その懸濁液中に存在する粉体を測定することによって得られる懸濁液中での平均粒子径である。
【0037】
第四リン酸カルシウムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、特開平6-329405号及び特開平7-315814号に記載されている方法等を適用することができる。
【0038】
(2)その他のリン酸カルシウム系化合物
リン酸カルシウム硬化性組成物には、前述のリン酸カルシウム化合物(α型第三リン酸カルシウム、β型第三リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム及び第四リン酸カルシウム)以外に、例えば、第一リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、リン酸八カルシウム、ピロリン酸カルシウム等のリン酸カルシウム系化合物を含んでいてもよい。中でも、ハイドロキシアパタイトを含有するのが好ましい。
【0039】
ハイドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2;HAPと略す場合もある。)は、第二リン酸カルシウムと第四リン酸カルシウムとによりハイドロキシアパタイトが生成する際の足場となり、後述の式(I)によりハイドロキシアパタイトが生成する反応を促進する機能を発揮する。このためハイドロキシアパタイトをあらかじめ含有することにより、リン酸カルシウム硬化性組成物の硬化時間を短縮することができる。ハイドロキシアパタイトは結晶質であっても良いし、非晶質であってもよい。
【0040】
ハイドロキシアパタイトの含有量は、リン酸カルシウム硬化性組成物中のα型第三リン酸カルシウム、β型第三リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム及び第四リン酸カルシウムの合計100質量%に対して、1~45質量%であるのが好ましく、5~25質量%であるのがより好ましい。ハイドロキシアパタイトの含有量を1~45質量%の範囲内に設定することにより、ハイドロキシアパタイトをより効率よく生成させることができる(後述の式(I)を参照)。
【0041】
ハイドロキシアパタイトの平均粒子径は、0.01~50μmであるのが好ましく、0.03~20μmであるのがより好ましい。ハイドロキシアパタイトの平均粒子径を0.01~50μmの範囲内に設定することにより、ハイドロキシアパタイトで構成される粉体に足場としての機能をより確実に発揮させることができる。
【0042】
ハイドロキシアパタイトの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、公知の湿式合成法、乾式合成法、水熱合成法等の何れかを用いてハイドロキシアパタイトを得る方法等が挙げられる。
【0043】
[2] 硬化体の製造方法
(1)リン酸カルシウム硬化性組成物の反応
リン酸カルシウム系化合物の粉体を主材料とするリン酸カルシウム硬化性組成物に水を含む液体(「硬化液」とも言う)を混合することにより、リン酸カルシウム硬化性組成物が硬化して、リン酸カルシウム硬化体が形成される。このとき、第二リン酸カルシウム(下記式(I)では、DCPDを用いた場合を示す)と第四リン酸カルシウムとで、下記式(I):
2Ca4(PO4)2O+2CaHPO4・2H2O → Ca10(PO4)6(OH)2+4H2O ・・・(I)
に示すような反応(水和硬化反応)が進行し、ハイドロキシアパタイトが生成(析出)する。
【0044】
リン酸カルシウム硬化性組成物がβ型第三リン酸カルシウムを含む場合、生成したハイドロキシアパタイトの粉体は、β型第三リン酸カルシウム粉体の粒子と粒子との間に介在する。このように、β型第三リン酸カルシウム粉体の粒子と粒子との間に介在する、換言すれば隣接する粉体粒子の表面に分散することで、ハイドロキシアパタイトはβ型第三リン酸カルシウム粉体の粒子同士を連結する結合材としての機能を発揮し、その結果、リン酸カルシウム硬化性組成物を短時間で硬化させる。
【0045】
すなわち、β型第三リン酸カルシウムの粉体単独では、β型第三リン酸カルシウムの硬化時間が著しく長いため硬化には至らないが、β型第三リン酸カルシウム粉体の粒子と粒子の間にハイドロキシアパタイトを介在させることで、リン酸カルシウム硬化性組成物は、短時間で硬化するものとなる。
【0046】
ハイドロキシアパタイトは、β型第三リン酸カルシウムと同様に、骨内に吸収されるリン酸カルシウム系化合物である。一方、α型第三リン酸カルシウムは骨内に吸収される速度が遅いが高い強度を発揮するリン酸カルシウム系化合物である。そのため、ハイドロキシアパタイトとβ型第三リン酸カルシウムと、α型第三リン酸カルシウムとを含む、リン酸カルシウム硬化性組成物の硬化体(リン酸カルシウム硬化体)は、骨内における吸収性に優れるとともに、高い強度を有するものとなる。よって、高い強度の骨補填材が必要な部位であっても、リン酸カルシウム硬化体の吸収にともない骨が再生されることから、リン酸カルシウム硬化体を埋植した埋植部位を再生骨で置換させることができる。
【0047】
さらに、第二リン酸カルシウムは水分散物中において酸性を示し、第四リン酸カルシウムは水分散物中においてアルカリ性を示すことから、前記式(I)に示す反応は中和反応となる。このように、中和反応によりハイドロキシアパタイトが得られる反応系とすることにより、形成されたリン酸カルシウム硬化体中において、酸又はアルカリが残存するのを的確に抑制又は防止することができる。従って、骨の埋植部位に埋植したリン酸カルシウム硬化体からの酸又はアルカリの漏出に起因する血球成分等の細胞の破壊を的確に抑制又は防止することができる。そのため、リン酸カルシウム硬化性組成物は、より安全性に優れたものとなる。
【0048】
上記の通り、本発明のリン酸カルシウム硬化性組成物は、第二リン酸カルシウムと第四リン酸カルシウムとが反応することによって硬化するものであるから、意図しない効果を防止するため、第二リン酸カルシウムと第四リン酸カルシウムとをあらかじめ混合しておかないで、別のパーツに分けておき、使用直前に混合して用いても良い。
【0049】
(2) 水を含む液体
水を含む液体には、前記式(I)の反応を促進するための硬化促進剤、リン酸カルシウム硬化性組成物の粘度を調整するための増粘剤、増粘剤を安定化させる安定化剤等の添加剤が含まれていても良い。以下に、硬化促進剤、増粘剤及び安定化剤について詳しく説明する。なお水を含む液体を「硬化液」と言うこともある。
【0050】
(a)硬化促進剤
硬化促進剤としては、例えば、有機酸及びその塩が挙げられる。有機酸としては、特に限定されないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等のモノカルボン酸類、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸類、ヒドロキシ酪酸、乳酸、サリチル酸等のオキシモノカルボン酸類、リンゴ酸、酒石酸等のオキシジカルボン酸類、クエン酸等のオキシトリカルボン酸類が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合せて用いることができる。これらのうち、ジカルボン酸類であるのが好ましく、コハク酸であるのがより好ましい。
【0051】
ジカルボン酸は分子中にカルボキシル基を2つ有しているので、第二リン酸カルシウム及び第四リン酸カルシウムを捕捉する機能が高く、リン酸カルシウム硬化性組成物中に第二リン酸カルシウム及び第四リン酸カルシウムを均一に分散させることができる。
【0052】
コハク酸は安定で毒性がないので、リン酸カルシウム硬化体を骨セメントとして安全に使用することができる。
【0053】
有機酸の塩としては、例えば、酢酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、コハク酸2ナトリウム、乳酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、マロン酸カルシウム、リンゴ酸カルシウム及びアルパラギン酸カリウムが挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合せて用いることができる。
【0054】
これらの有機酸塩のうち、コハク酸ナトリウムであるのがより好ましい。コハク酸ナトリウムは水に対する溶解性が高いので、硬化液を容易に調製することができる。また、コハク酸ナトリウムは安定で毒性がないので、リン酸カルシウム硬化体を骨セメントとして安全に使用することができる。
【0055】
硬化促進剤の含有量は、水に対して、5~50質量%であるのが好ましく、10~20質量%以下であるのがより好ましい。硬化促進剤の含有量を5~50質量%の範囲内に設定することにより、前記式(I)の反応をより確実に促進させることができる。
【0056】
(b)増粘剤
増粘剤としては、例えば、コンドロイチン硫酸ナトリウム、カードラン、グアーガム、キサンタンガム、グルコマンナン、カラギーナン、アラビアガム、トラガントガムが挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、コンドロイチン硫酸ナトリウムが好ましい。コンドロイチン硫酸ナトリウムは、保水性に特に優れるため、リン酸カルシウム硬化性組成物中において前記式(I)の反応をより確実に促進させることができる。
【0057】
増粘剤の含有量は、水に対して、1~10質量%であるのが好ましく、4~7質量%であるのがより好ましい。増粘剤の含有量を1~10質量%の範囲内に設定することにより、調製されたリン酸カルシウム硬化性組成物の稠度をより確実に後述する範囲内に設定することができる。
【0058】
(c)安定化剤
安定化剤としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ヒドロキノン及び没食子酸プロピルが挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、亜硫酸水素ナトリウムが好ましい。これらの安定化剤を用いることにより、増粘剤としてコンドロイチン硫酸ナトリウムを用いた際に、リン酸カルシウム硬化性組成物の室温保存を実現することができる。
【0059】
安定化剤の含有量は、水に対して、0.1~2質量%であるのが好ましく、0.2~1質量%であるのがより好ましい。安定化剤の含有量を0.1~2質量%の範囲内に設定することにより、増粘剤の変質・劣化を的確に抑制又は防止することができる。
【0060】
硬化時間は、α型第三リン酸カルシウム、β型第三リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム及び第四リン酸カルシウムの説明で記載した、それぞれの含有量及び平均粒子径を前述した範囲で適宜設定すること、さらには前述した硬化促進剤の種類及び含有量を適宜設定することにより調節することができる。
【0061】
このようなリン酸カルシウム硬化性組成物は、歯や骨等の骨セメント等としての生体埋植用医療材料として用いることができる。
【0062】
以上、リン酸カルシウム硬化性組成物について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0063】
例えば、リン酸カルシウム硬化性組成物に含まれる各構成材料は、必須の材料であるα型第三リン酸カルシウム、β型第三リン酸カルシウムと、第二リン酸カルシウム及び四リン酸カルシウムを除いて、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成材料を添加することができる。
【0064】
[3] 硬化体
前述したようにして製造した硬化体は、β型第三リン酸カルシウムと、ハイドロキシアパタイトとを主材料として含む。ここで、β型第三リン酸カルシウムは硬化体の骨格構造を形成し、ハイドロキシアパタイトは、β型第三リン酸カルシウムの骨格構造を足場としてその周囲に付着している。
【0065】
硬化体の全質量を100質量%としたときに、β型第三リン酸カルシウムの含有量は40質量%以上80質量%以下であり、ハイドロキシアパタイトの含有量が20質量%以上60質量%以下であるのが好ましい。
【実施例0066】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0067】
実施例1
(1)リン酸カルシウム系化合物の作製
(a) β型第三リン酸カルシウム(β-TCP)の作製
水酸化カルシウム懸濁液にリン酸を滴下する湿式合成によりβ型第三リン酸カルシウムを合成した。この合成されたβ型第三リン酸カルシウムを、8時間をかけて1050℃まで昇温し、4時間に亘って1050℃(焼成温度)で維持し、8時間をかけて常温に戻した。この加熱により第三リン酸カルシウムを焼成し、β型第三リン酸カルシウムの粉体を得た。得られた粉体の組成をXRD(RINT-UltimaIII, Rigaku)で分析したところ、β型第三リン酸カルシウムに不純物として含まれているα型第三リン酸カルシウムの質量比(Cα/Cβ)は、0.0158であった。
【0068】
(b) α型第三リン酸カルシウム(α-TCP)の作製
3 molの水酸化カルシウムを10 Lの水に懸濁させ、これに2 molのリン酸を水で希釈してなる40質量%リン酸水溶液を攪拌しながらゆっくり滴下し、滴下終了後、室温に1日間放置し、ついで乾燥機を用い、110℃で24時間保持することにより乾燥して凝集体とし、引き続いて前記凝集体を1400℃に3時間保持して焼成し、焼成生成物を粉砕し、篩分にて篩目で88μm以下(平均粒径:6.5μm)とすることにより純度:99.9%のα型第三リン酸カルシウムを作製した。
【0069】
(c) 第二リン酸カルシウム(DCPD)の準備
第二リン酸カルシウムとして、純正化学社製「リン酸水素カルシウム二水和物」)を準備した。この第二リン酸カルシウムを自動乳鉢で処理し、第二リン酸カルシウムの粉体を得た。
【0070】
粒径測定のために、得られた粉体の一部を水に懸濁し、超音波で分散処理し、その懸濁液中に存在する粉体の粒径を測定した。懸濁液中での平均粒子径は、25.17μmであった。なお、この懸濁液は粒径を測定するためだけに用い、後述するペーストの作製は、第二リン酸カルシウムの粉体を用いて行った。
【0071】
(d)第四リン酸カルシウム(TeCP)の作製
66.66モルの水酸化カルシウムを6 Lの水に懸濁させ、この懸濁液に33.68モルのリン酸を水で希釈してなるリン酸水溶液を攪拌しながらゆっくり滴下し、滴下終了後、室温(25℃)に1日間放置し、ついで乾燥機を用いて110℃で24時間乾燥した。引き続いてこの乾燥物を900℃で2時間保持して仮焼結し、得られた仮焼結体を均一に粉砕し、さらに1400℃で4時間保持して焼成した。得られた焼成生成物を粉砕し、第四リン酸カルシウムの粉体を得た。
【0072】
粒径測定のために、得られた第四リン酸カルシウムの粉体の一部を水に懸濁し、得られた懸濁液を超音波で分散処理した。懸濁液中での平均粒子径は、51.66μmであった。なお、この懸濁液は粒径を測定するためだけに用い、後述するペーストの作製は、第四リン酸カルシウムの粉体を用いて行った。
【0073】
(e)ハイドロキシアパタイト(HA)の作製
α型第三リン酸カルシウムに蒸留水を加え37℃恒温器内で24時間インキュベートすることによってハイドロキシアパタイト粉体を得た。この粉体の平均粒子径は、10μmであった。
【0074】
(2)水を含む液体(硬化液)の調整
適量の水を攪拌しながら、コハク酸二ナトリウム六水和物、コンドロイチン硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムを、コハク酸二ナトリウム無水物12.972 g/mL、コンドロイチン硫酸ナトリウム5.405 g/mL、及び亜硫酸水素ナトリウム0.3 g/mLになるように添加して硬化液を調整した。
【0075】
(3) リン酸カルシウム硬化性組成物の作製
市販のリン酸マグネシウム(富士フィルム和光純薬株式会社製)と自動乳鉢で処理した第二リン酸カルシウム(純正化学株式会社製)とを0.029:0.971の割合(質量比)で混合し、混練機で30分間混練することによって混合粉末を得た。
【0076】
β型第3リン酸カルシウム(β-TCP)、α型第三リン酸カルシウム(α-TCP)、上記混合粉末、第4リン酸カルシウム(TeCP)及びハイドロキシアパタイト(HA)の含有量が、それぞれ、74.75質量%、0.25質量%、5質量%、18質量%、及び2質量%となるように各材料を混合することによりリン酸カルシウム硬化性組成物の粉体を得た。なお、リン酸マグネシウムの量が微量であったため、下記表1では便宜的に、リン酸マグネシウムと第二リン酸カルシウムとの混合粉末の質量を、第二リン酸カルシウム(DCPD)の質量として表示した。
【0077】
(4) リン酸カルシウム硬化体の製造
上記(3)で調整したリン酸カルシウム硬化性組成物の粉体12 gに対して、上記(2)で調整した促進剤水溶液5.0 mlを加えて混合し、リン酸カルシウム硬化性組成物のペーストを得た。
【0078】
実施例2~4及び比較例1
粉体中における各成分の含有量を、表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、リン酸カルシウム硬化性組成物のペーストを得た。
【0079】
(5) 評価
圧縮強度
実施例1~4および比較例1で得られたリン酸カルシウム硬化性組成物のペーストをそれぞれ、直径7 mm、長さ14 mmの円柱状をなす型枠内に流し込んだ。20~30分後に型枠からはみ出したペーストの上下面をスパチュラで平行に削り取り、型枠から取り出すことによって試験体(硬化体)を得た。得られた各試験体について、強度試験測定装置(インストロンジャパン社製「型番33R4466」)を用いて、0.5 mm/分の加重速度で加圧することにより圧縮強度を測定した。結果を表1に示す。
【0080】
吸収性(溶解率)
実施例1~4及び比較例1で得られたリン酸カルシウム硬化性組成物のペーストからそれぞれ同様に試験体を作製し、それぞれ0.5 mol/lの硝酸中で3日間養生した際の溶解率(%)を測定した。この溶解率(%)は、式:[(養生前のリン酸カルシウム硬化物の質量)-(養生後のリン酸カルシウム硬化物の質量)]/(養生前のリン酸カルシウム硬化物の質量)×100 で表される値である。結果を表1に示す。
【0081】
【表1】
(1)リン酸カルシウム硬化性組成物の粉体組成
【0082】
表1の結果から明らかなように、本願発明のリン酸カルシウム硬化性組成物から得られた硬化体は、α-TCPを含まない従来のリン酸カルシウム硬化性組成物から得られた硬化体に比べて、高い強度と同等の吸収性を有していることがわかる。