(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094085
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】ブレーカ
(51)【国際特許分類】
H01H 37/28 20060101AFI20230628BHJP
H01H 37/54 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
H01H37/28
H01H37/54 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209335
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】591016334
【氏名又は名称】大塚テクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 昌平
(72)【発明者】
【氏名】久龍 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】中谷 健人
(72)【発明者】
【氏名】中妻 大
【テーマコード(参考)】
5G041
【Fターム(参考)】
5G041AA02
5G041CC01
5G041CC02
5G041CE01
5G041DA02
5G041DB01
5G041DC02
(57)【要約】
【課題】PTCと固定接点金属板との接触状態を安定化させて、復帰温度を正確にする。
【解決手段】ブレーカは、固定接点5を有する固定接点金属板4と、固定接点5と対向する位置に可動接点7を配置してなる可動接点金属板6と、可動接点金属板6を変形して可動接点7をオンオフに切り換えるバイメタル8と、バイメタル8と固定接点金属板4との間に配設されてなるPTC9と、これらを内蔵するケース1とを備えている。PTC9は、バイメタル8に接続される上面電極9Bと、固定接点金属板4に接続される底面電極9Aを有している。固定接点金属板4は、底面電極9Aに向かって突出してなる複数のダボ41を有している。ダボ41は、固定接点金属板4のPTC対向領域40において、PTC9の底面電極9Aの複数の領域であって、底面電極9Aの中心で交差する2本の区画ライン9m、9nで区画される4つの区画領域9aに対向して配設している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点を有する固定接点金属板と、
前記固定接点と対向する位置に可動接点を配置してなる可動接点金属板と、
前記可動接点金属板を変形して前記可動接点をオンオフに切り換えるバイメタルと、
前記バイメタルと前記固定接点金属板との間に配設されてなるPTCと、
前記固定接点金属板と前記可動接点金属板と前記バイメタルと前記PTCを内蔵するケースとを備えており、
前記PTCは、
前記バイメタルに接続される上面電極と、
前記固定接点金属板に接続される底面電極を有し、
前記固定接点金属板は、前記底面電極に向かって突出してなる複数のダボを有し、
前記ダボが、前記固定接点金属板のPTC対向領域において、前記PTCの前記底面電極の複数の領域であって、前記底面電極の中心で交差する2本の区画ラインで区画される4つの区画領域に対向して配設されてなるブレーカ。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーカであって、
前記PTC対向領域に配設される複数の前記ダボが、前記可動接点金属板の長手方向の両端部と、前記可動接点金属板の幅方向の両側部とに配設されてなるブレーカ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のブレーカであって、
複数の前記ダボが、前記固定接点金属板の長手方向の中心ラインに対して線対称に配置されてなるブレーカ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載のブレーカであって、
複数の前記ダボが、四角形の頂点に配置されてなるブレーカ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のブレーカであって、
前記PTC対向領域に、4つ以上の前記ダボが配置されてなるブレーカ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載のブレーカであって、
前記ダボが突起又は凸条であるブレーカ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載のブレーカであって、
前記PTCが円形ないし楕円形であるブレーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パック電池やモータ等の電気機器に内蔵されて、設定温度を超えると電流を遮断するブレーカに関する。
【背景技術】
【0002】
パック電池やモータなどの機器は、温度が異常に高くなる状態で電流を遮断して安全性を向上できる。このことを目的として、周囲温度をバイメタルで検出して接点をオフに切り換えるブレーカが使用される。たとえば、リチウムイオン電池を内蔵するパック電池は、異常な使用状態で充放電されると温度が高くなるので、温度を検出して電流を遮断するブレーカを内蔵して、これで異常な高温では電流を遮断して安全に使用できる。また、モータ等は過負荷な状態や異常な電流が流れる状態で温度が異常に高くなることがあるので、設定温度を超えると電流を遮断するブレーカで安全に使用できる。
【0003】
このような用途に使用されるブレーカとして、周囲温度が設定温度よりも高くなるとバイメタルが反転し、反転するバイメタルが可動接点を固定接点から引き離して電流を遮断するブレーカが開発されている。(特許文献1参照)
【0004】
このブレーカを、
図14と
図15の断面図に示している。これらの図に示すブレーカ90は、固定接点95を有する固定接点金属板94と、固定接点95と対向する位置に可動接点97を配置している可動接点金属板96と、可動接点金属板96を弾性変形して可動接点97をオンオフに切り換えるバイメタル98と、バイメタル98と固定接点金属板94との間に配設されて、バイメタル98を加熱するPTC99と、ケース91とを備えている。周囲温度が設定温度を超えない状態において、バイメタル98は、
図14に示すように反転しない状態であって、可動接点97が固定接点95に接触するオン状態となる。設定温度を超えてバイメタル98が反転すると、
図15に示すようにバイメタル98が反転して可動接点97を固定接点95から離すオフ状態となる。このブレーカ90は、接点のオフ状態において、PTC99に通電してバイメタル98を反転状態に保持できる。反転状態のバイメタル98は、接点をオフ状態に保持して、ブレーカ90をオフ状態に保持する。周囲温度が設定温度を超えてオフ状態を保持できるブレーカは、保護素子として高い安全性を実現できる。周囲温度が設定温度よりも高くなって電流を遮断する状態に保持できるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パック電池に内蔵される以上のブレーカ90は、接点のオフ状態では、固定接点金属板94とPTC99とバイメタル98と可動接点金属板96を介して電池(図示せず)に接続される。電池は完全に放電されるまでPTC99に通電してバイメタル98を加熱して反転状態に保持するので、PTC99の上面はバイメタル98に、底面は固定接点金属板94に電気接続される。PTC99の電流は、固定接点金属板94との接触抵抗が大きくなって低下する。この接触抵抗が増加すると、PTC99の通電電流が減少してバイメタル98を安定して加熱できず、反転状態に保持するのが難しくなる。したがって、PTC99と固定接点金属板94の接触抵抗を安定して小さく維持することは極めて大切である。この形式のブレーカは全体が極めて小さく、PTCと固定接点金属板との接触抵抗を、常に安定して小さく保持するのが難しく、このことが、ブレーカを安定してオフ状態に保持する特性を阻害する要因となる。本発明の第1の目的は、PTCと固定接点金属板との接触状態が安定化されたブレーカを提供するにある。
【0007】
図14と
図15に示すブレーカ90は、設定温度よりも高くなるとバイメタル98が反転して接点をオンからオフに切り換える。この状態で、バイメタル98は反転して可動接点金属板96を押し上げて、可動接点97を固定接点95から分離する。PTC99を内蔵するブレーカ90は、オフ状態に切り換えられた状態で、PTC99に通電してバイメタル98を発熱できる。PTC99を内蔵するブレーカ90は、電池パックの保護素子に使用して電池を安全に放電できる。電池パックのブレーカは、異常な温度上昇で電流を遮断した後は、安全性を確保するために、電池が完全に放電されるまで、接点をオフ状態に保持して電池の放電を禁止する。
【0008】
接点のオフ状態を保持するブレーカは、
図15に示すように、接点のオフ状態で、固定接点金属板94とPTC99とバイメタル98と可動接点金属板96の直列回路が電池に接続されて、電池がPTC99に通電してPTC99を発熱させる。PTC99は、電池が完全に放電されるまでバイメタル98を加熱して反転状態に保持する。電池が放電されるに従ってPTC99の電流は低下して温度が低下する。PTC99の温度が低下して設定値よりも低くなると、バイメタル98は反転状態から非反転状態に復帰する。バイメタル98が反転姿勢からもとの形状に復帰すると、可動接点金属板96の弾性で可動接点97を固定接点95に接触させてオン状態に切り換える。可動接点97は、バイメタル98で可動接点金属板96が押し上げられない状態、すなわちバイメタル98が反転していない非反転形状では、可動接点97を固定接点95に弾性的に押している。この状態では、可動接点97が固定接点95に接触してブレーカ90はオン状態に保持される。
【0009】
以上のブレーカ90は、使用状態において、周囲温度が閾値を超えると、バイメタル98が反転して可動接点97を固定接点95から離してオフ状態に切り換える。この構造のブレーカ90は、電流を遮断する状態で温度が低下して、復帰温度まで低下すると、接点をオフからオン状態に復帰させる。ブレーカは、電流を遮断する温度よりも復帰温度を低く設定しているが、オンオフの切り換え温度のばらつきを少なくして、また正確な温度でオンオフに切り換える特性が要求される。
【0010】
以上のブレーカは、周囲温度が復帰温度まで低下すると、バイメタル98は非反転形状に復帰するが、復帰する直前まで、バイメタル98は可動接点金属板96の弾性で復帰方向に押されている。すなわち、反転姿勢のバイメタル98は、可動接点金属板96に弾性的に押圧される状態で復帰する。バイメタル98が、反転状態から非反転形状に復帰する温度は、可動接点金属板96で弾性的に押される力に影響を受ける。可動接点金属板96がバイメタル98を押す力が強くなると、反転姿勢のバイメタル98は非反転形状に復帰しやすくなって復帰温度は高くなる。反対に可動接点金属板96が反転姿勢のバイメタル98を押す力が小さくなると、反転姿勢のバイメタル98は復帰し難くなるので、復帰温度は低下する。可動接点金属板96が弾性復元力でバイメタル98を押す力は、PTC99の上下位置で変化する。PTC99の上下の位置ずれが、オフ状態における可動接点金属板96の弾性変形を変化させるからである。PTC99が上にずれると可動接点金属板96の弾性変形は大きくなって、バイメタル98を押す力は強くなり、PTC99が下に位置ずれすると可動接点金属板96がバイメタル98を押す力は弱くなる。PTC99の上下方向の位置ずれは、固定接点金属板94にPTC99の底面に向かって突出するダボを設けて調整できる。
【0011】
この構造のブレーカは、PTCの上下位置をダボの高さで変更して、復帰温度を調整できる。しかしながら、この構造のブレーカにおいても、ダボがPTCを配置する位置によって復帰温度に影響を与える。ダボとPTCとの接触位置やPTCの歪みなどでPTCの上下位置が変化するからである。本発明の第2の目的は、復帰温度を正確にできるブレーカを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0012】
本発明のある態様にかかるブレーカは、固定接点を有する固定接点金属板と、固定接点と対向する位置に可動接点を配置してなる可動接点金属板と、可動接点金属板を変形して可動接点をオンオフに切り換えるバイメタルと、バイメタルと固定接点金属板との間に配設されてなるPTCと、固定接点金属板と可動接点金属板とバイメタルとPTCを内蔵するケースとを備えている。PTCは、バイメタルに接続される上面電極と、固定接点金属板に接続される底面電極を有している。固定接点金属板は、底面電極に向かって突出してなる複数のダボを有している。ダボは、固定接点金属板のPTC対向領域において、PTCの底面電極の複数の領域であって、底面電極の中心で交差する2本の区画ラインで区画される4つの区画領域に対向して配設している。
【0013】
以上のブレーカは、PTCと固定接点金属板との接触状態を安定化させながら、復帰温度の誤差を少なくできる特長がある。それは、以上のブレーカが、固定接点金属板に設けているダボを、固定接点金属板のPTC対向領域において、PTCの底面電極の複数の領域であって、底面電極の中心で交差する2本の区画ラインで区画される4つの区画領域に対向して配設して、PTC対向領域には少なくとも4点のダボを配置しているからである。PTC対向領域において、PTCの底面電極の4つの区画領域に対向して配置されるダボは、PTCの底面電極を4つの区画領域を接触状態で保持するので、理想的な状態においては、全てのダボがPTCの底面電極に接触してPTCを正確な位置に配置する。しかしながら、パーツの加工工程や組み立て工程の誤差が原因で、ひとつのダボがPTCの底面電極に接触しない状態となっても、残りのダボが少なくとも3点でPTCの底面電極に接触してPTCを定位置に配置する。ダボの高さは、バイメタルの復帰温度に大きく影響するので、製造工程においてダボの高さはミクロン単位で調整されるが、ケース成形時の樹脂収縮や反りにより、ダボの高さが変化して、全てのダボを正常にPTCの底面電極に接触できないことがある。以上のブレーカは、仮にひとつのダボが正常にPTCの底面電極に接触しない状態となっても、残りのダボでPTCを正確な位置に配置できる。
【0014】
さらに、ブレーカの製造工程において、パーツの成形工程やプレス工程においては、成形金型の調整状況や、成形時の熱によるプレス品の熱膨張により、部品に差異が発生して、寸法や形状に誤差が発生する。誤差のあるケースや固定接点金属板にPTCがセットされると、PTCと固定接点金属板との相対位置に誤差が発生して、PTCの姿勢や位置に誤差が発生して、全てのダボをPTCの底面電極に正常に接触できないことがある。以上のブレーカは、ひとつのダボがPTCの底面電極に接触しない状態においても、残りのダボがPTCの底面電極を支持して正常な位置に配置できる。
【0015】
さらに、以上のブレーカは、接点がオフ状態となる状態で、PTCと固定接点金属板とを安定して電気接続して、PTCと固定接点金属板の接触抵抗を安定化し、また低減できる特長がある。それは、前述したように、以上のブレーカが、固定接点金属板に設けているダボを、固定接点金属板のPTC対向領域であって、PTCの底面電極を2本の区画ラインで区画してなる4つの区画領域に対向して配置して、正常な状態では少なくとも4つのダボをPTCの底面電極に接触し、さらにいずれかひとつのダボが底面電極に接触しない状態においても、少なくとも残り3点以上のダボをPTCの底面電極に接触するからである。ブレーカは、PTCと固定接点金属板との接触抵抗を接点のオフ状態で測定して良否の判定をしているが、以上のブレーカは、特定位置に少なくとも4点にダボを配置して、PTCとダボとの接触点数を多くすることで、PTCとダボとの接触抵抗を低減して、安定してPTCに通電して、接点をオフ状態に保持できる。このため、電池パックの保護素子として使用して、電池を完全に放電するまで電流を遮断して、電池パックの安全性を向上できる。
【0016】
さらに以上のブレーカは、接点が繰り返しオンオフに切り換えられた後も、ダボの損傷を抑制してPTCとダボの接点状態を安定化できる特長も実現する。それは、以上のブレーカが、特定位置の少なくとも4点にダボを配置して、各々のダボに作用する力を分散して、ひとつのダボに作用する力を抑制しているからである。このため、仮にブレーカが繰り返し数千回(例えば、UL規格:6000回)オンオフに切り換えられても、ダボが削れて高さが変動するのを抑制して、PTCを定位置に配置して、復帰温度の誤差を少なくできる。
【0017】
さらに、本発明の他の態様にかかるブレーカは、PTC対向領域に配設される複数のダボを、可動接点金属板の長手方向の両端部と、可動接点金属板の幅方向の両側部とに配設することができる。
【0018】
以上のブレーカは、固定接点金属板のPTC対向領域に設けているダボを、可動接点金属板の長手方向の両端部と、可動接点金属板の幅方向の両側部に配設して、PTC対向領域には少なくとも4点のダボを配置する。PTC対向領域に配置されるダボは、可動接点金属板の長手方向の両端部と可動接点金属板の幅方向の両側部に配置されることで、正常な状態では少なくとも4つのダボをPTCの底面電極に接触し、さらにいずれかひとつのダボが底面電極に接触しない状態においても、長手方向の両端部を含む少なくとも残り3点以上のダボ、もしくは、幅方向の両側部を含む少なくとも残り3点以上のダボをPTCの底面電極に接触する。したがって、このブレーカは、可動接点金属板の長手方向に配置されるダボの誤差を幅方向の両側部に配置されるダボでカバーし、可動接点金属板の幅方向に配置されるダボの誤差を長手方向の両端部に配置されるダボでカバーすることで、PTCと固定接点金属板との接触状態を安定化させることができる。
【0019】
さらに、本発明の他の態様にかかるブレーカは、複数のダボを、固定接点金属板の長手方向における中心ラインに対して線対称に配置することができる。
【0020】
以上のブレーカは、固定接点金属板のPTC対向領域に設けている複数のダボを、固定接点金属板の長手方向における中心ラインに対して線対称に配置するので、固定接点金属板の幅方向におけるPTCの相対的な位置ずれに対して、複数のダボを安定して底面電極に接触させることができる。
【0021】
さらに、本発明の他の態様にかかるブレーカは、複数のダボを、四角形の頂点に配置することができる。
【0022】
以上のブレーカは、4個のダボをバランスよくPTC対向領域に配置して、PTCを安定して定位置に配置できる特長がある。
【0023】
さらに、本発明の他の態様にかかるブレーカは、PTC対向領域に、4つ以上のダボを配置することができる。
【0024】
さらに、本発明の他の態様にかかるブレーカは、ダボを突起又は凸条とすることができる。
【0025】
以上のブレーカは、ダボを突起としてPTCの底面電極に確実に安定して電気接続でき、また、ダボを凸条として接点を繰り返しオンオフに切り換えて、ダボの損傷を少なくしてPTCを定位置に配置できる特長がある。
【0026】
さらに、本発明の他の態様にかかるブレーカは、PTCを円形ないし楕円形とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるブレーカの斜視図である。
【
図2】
図1に示すブレーカの接点オン状態を示す垂直縦断面図であって、
図1のA-A線断面に相当する図である。
【
図3】
図1に示すブレーカの接点オフ状態を示す垂直縦断面図であって、
図1のA-A線断面に相当する図である。
【
図6】
図2に示すブレーカの可動接点と固定接点の拡大断面図である。
【
図7】本体ケースにPTCを配置する状態を示す分解斜視図である。
【
図9】固定接点金属板に設けるダボの他の一例を示す本体ケースの平面図である。
【
図10】
図9に示す本体ケースにPTCを配置する状態を示す分解斜視図である。
【
図11】固定接点金属板に設けるダボの他の一例を示す本体ケースの平面図である。
【
図12】固定接点金属板に設けるダボの他の一例を示す本体ケースの平面図である。
【
図13】固定接点金属板に設けるダボの他の一例を示す本体ケースの平面図である。
【
図14】従来のブレーカのオン状態の一例を示す断面図である。
【
図15】従来のブレーカのオフ状態の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0029】
(実施形態1)
図1~
図5は、主として電池パックに内蔵されるブレーカ100を示している。電池パックに内蔵されるブレーカ100は、電池などの温度上昇をバイメタル8で検出してオフ状態に切り換えて電流を遮断した後、電池をPTC9で放電して電池が完全に放電されるまで、オフ状態に自己保持する。電池パックは、異常な状態で使用され、あるいは電池の内部ショートなどが原因で発生する熱暴走で温度が上昇する。ブレーカ100は保護素子として内蔵されて、電池の温度が設定温度を超えたことを検出して負荷電流を遮断する。負荷電流を遮断したブレーカは、電池をPTCに接続し、電池を完全に放電した後、接点をオフからオンに切り換える。このブレーカは、電流を遮断して電池が完全に放電されるまでオフ状態に自己保持して電池を完全に放電してより高い安全性を確保する。それは、例えば、ショート電流などの温度上昇を検出して電流を遮断して、その後に温度が低下してオン状態に切り換えると、再びショート電流が流れて危険な状態となるのを防止できるからである。ただし、本発明はブレーカの用途を電池パックの保護素子に限定するものでなく、たとえばモータ等のように温度上昇を検出して電流を遮断する全ての用途に使用するブレーカに利用できる。
【0030】
(ブレーカ100)
図1~
図5に示すブレーカ100は、ケース1と、ケース1に固定している固定接点5を有する固定接点金属板4と、固定接点金属板4の固定接点5と対向する位置に可動接点7を有し、かつ可動接点7を可動できるようにケース1に一部を固定している可動接点金属板6と、可動接点金属板6と固定接点金属板4との間に配設され、設定温度よりも高くなると非反転形状から反転形状に反転して、可動接点金属板6をオンからオフに切り換えるバイメタル8と、バイメタル8を加熱するPTC9を備えている。
【0031】
ブレーカ100は、周囲温度が設定温度よりも低い状態では、
図2に示すように、バイメタル8が変形しない状態、すなわち非反転形状にあって可動接点7を固定接点5に接触させてオン状態となり、周囲温度が設定温度を超えると、
図3に示すように、バイメタル8が可動接点7を固定接点5から離してオフ状態に切り換え、周囲温度が復帰温度まで低下するとオフからオンに切り換える。ブレーカ100は、周囲温度でバイメタル8を非反転形状から反転形状に変形させて、反転するバイメタル8が可動接点金属板6を変形して、可動接点金属板6の可動接点7を固定接点5から離してオフ状態に切り換える。反転したバイメタル8は、周囲温度が所定の温度まで低下すると、非反転形状に変形して、可動接点金属板6を押圧しない状態となって、可動接点7を固定接点5に接触してオン状態に復帰する。
【0032】
(ケース1)
ケース1は、プラスチック製の本体ケース1Aと蓋ケース1Bとからなり、本体ケース1Aに蓋ケース1Bを超音波溶着して連結し、あるいは接着して連結している。ケース1は、固定接点金属板4と可動接点金属板6を定位置に固定している。図のケース1は、本体ケース1Aの底部に固定接点金属板4をインサート成形して固定すると共に、本体ケース1Aと蓋ケース1Bとの間に可動接点金属板6を挟着状態で固定して、本体ケース1Aの開口部を蓋ケース1Bで閉塞している。本体ケース1Aは、両端部分に、第1の外壁11Aと第2の外壁11Bとを突出するように設けて、第1の外壁11Aと第2の外壁11Bとの間に、バイメタル8とPTC9を定位置に配置する収納部20を設けている。図のケース1は、本体ケース1Aに設けている収納部20の底面を固定接点金属板4で閉塞して、連結する蓋ケース1Bで収納部20の上面を閉塞している。
【0033】
(本体ケース1A)
本体ケース1Aは、外周壁10の内側にバイメタル8とPTC9を定位置に配置する収納部20を設けている。外周壁10は、第1の外壁11A及び第2の外壁11Bからなる一対の外壁11と、一対の外壁11の両端を連結している一対の対向壁12とからなり、対向壁12と外壁11の内側に収納部20を設けている。本体ケース1Aは、収納部20の周囲を外周壁10で囲み、外周壁10の底面と上面を閉塞している。収納部20の底面は、本体ケース1Aと一体的に成形している底部13や固定接点金属板4で閉塞し、上面は本体ケース1Aに連結している蓋ケース1Bで閉塞して、収納部20を閉塞された中空状としている。
【0034】
本体ケース1Aは、固定接点金属板4をインサート成形して固定している。
図2~
図5において、固定接点金属板4は中間部4Bを第1の外壁11Aに埋設するようにインサート成形して本体ケース1Aに固定している。この固定接点金属板4は、第1の外壁11Aを貫通する状態で本体ケース1Aに固定されて、ケース1の内部に露出する部分に固定接点5を設けて、外部に引き出される部分を接続端子4Xとしている。
【0035】
(蓋ケース1B)
蓋ケース1Bは、
図2~
図5に示すように、可動接点金属板6の上方をカバーする状態で、本体ケース1Aの開口部を閉塞する閉塞プレート27aを備える。図に示す閉塞プレート27aは、積層金属板24を連結プラスチック23にインサート成形して固定している。閉塞プレート27aは、積層金属板24を下面に露出させている。以上の蓋ケース1Bは、連結プラスチック23の外周縁部を本体ケース1Aの外周壁10の上面に固定して、本体ケース1Aの開口部を閉塞する。蓋ケース1Bの連結プラスチック23は、
図2~
図5に示すように、本体ケース1Aの外周壁10と対向する外周縁部に、本体ケース1A側に突出する外周壁27bを備えている。連結プラスチック23の外周壁27bは、本体ケース1Aの両端部に設けている第1の外壁11Aと第2の外壁11Bに固定され、さらに対向壁12に固定される。
【0036】
図4と
図5に示すケース1は、蓋ケース1Bと本体ケース1Aとを正確に位置決めしながら連結するために、互いに嵌合する連結凸部15、17と連結凹部16、18とを備えている。本体ケース1Aは、前述のように、第2の外壁11Bの上面において、可動接点金属板6の固定部6Bを貫通して位置決めする連結凸部15を突出して設けている。蓋ケース1Bは、本体ケース1Aの第2の外壁11B側の端部において、この連結凸部15と対向する位置に、連結凸部15を案内する連結凹部16を設けている。さらに、
図4と
図5に示す蓋ケース1Bは、本体ケース1Aの第1の外壁11A側の端部の両側において、外周壁27bの下面から本体ケース1Aに向かって突出する連結凸部17を設けている。本体ケース1Aは、
図4と
図5に示すように、これらの連結凸部17と対向する外周壁10の上面に、連結凸部17を案内する連結凹部18を設けている。
【0037】
以上のケース1は、本体ケース1Aの第1の外壁11A側の端部において、蓋ケース1Bの両側の連結凸部17が本体ケース1Aの連結凹部18に案内されると共に、本体ケース1Aの第2の外壁11B側の端部において、可動接点金属板6の固定部6Bを貫通する連結凸部15が蓋ケース1Bの連結凹部16に案内されて、蓋ケース1Bが本体ケース1Aの正確な位置に連結される。
【0038】
連結凸部15、17と連結凹部16、18を介して定位置に連結される蓋ケース1Bと本体ケース1Aは、超音波溶着して連結プラスチック23が本体ケース1Aに固定される。
図4と
図5に示す蓋ケース1Bは、連結プラスチック23の外周壁27bの下面であって、本体ケース1Aの外周壁10との対向面に位置して、超音波振動で溶融される溶融凸条28を設けている。図の蓋ケース1Bは、外周壁27bの下面に沿って溶融凸条28を突出して設けている。この蓋ケース1Bは、可動接点金属板6の固定部6Bと対向する部分を除く外周縁部に、底面視略コ字状の溶融凸条28を設けている。この蓋ケース1Bは、前述の連結凸部15、17と連結凹部16、18とを介して本体ケース1Aの定位置に連結する状態で、外周部を超音波振動させて、溶融凸条28を摩擦熱で溶融させて本体ケース1Aの外周壁10に溶着させる。さらに、超音波振動される蓋ケース1Bと本体ケース13は、互いに連結された連結凸部15、17と連結凹部16、18の接触部分も摩擦熱で溶融されて互いに溶着される。ただ、ケース1は、蓋ケース1の連結プラスチックと本体ケース1とを接着して、あるいは嵌着構造や係止構造で連結して固定することもできる。
【0039】
さらに、
図2~
図5のブレーカ100は、蓋ケース1Bに変形制限凸部26を設けている。変形制限凸部26は、バイメタル8が熱変形して可動接点7が固定接点5から離れるオフ状態において、アーム部6Aがバイメタル8に押されて変形する変形量を制限するために、アーム部6Aの先端部、すなわち可動接点7側を下方に押圧する位置にあって、アーム部6A側に突出している。このブレーカ100は、アーム部6Aの先端部を変形制限凸部26で下向きに、すなわち固定接点5側に押圧して、アーム部6Aが反転したバイメタル8に押し上げられて変形する量を制限できる。このため、この構造のブレーカ100は、反転したバイメタル8がアーム部6Aを弾性限界を超えるように押し上げてバネ性を低下させるのを防止して、復帰後において可動接点7を固定接点5に所定の接触圧で押圧して接触抵抗を小さく保持できる特長がある。
【0040】
(可動接点金属板6)
可動接点金属板6は弾性変形する金属板で、ケース1に固定される固定部6Bと、先端に可動接点7を設けているアーム部6Aとを有する。可動接点金属板6は、
図2~
図5に示すように、固定部6Bをケース1に固定して、アーム部6Aをケース1に設けている収納部20に配設している。可動接点金属板6は、ケース1に設けている第2の外壁11Bの上部に固定部6Bを固定している。可動接点金属板6は、固定部6Bの外側端部をケース1から突出させて接続端子6Xとしている。
【0041】
アーム部6Aは、固定接点5との対向面に可動接点7を設けている。この可動接点金属板6は、バイメタル8の非反転形状では、先端部の可動接点7を固定接点5に接触させてブレーカ100をオン状態とし、バイメタル8の反転形状では、バイメタル8に押されて、可動接点7を固定接点5から離してブレーカ100をオフ状態とする。
【0042】
可動接点金属板6は、
図2~
図5に示すように、アーム部6Aを収納部20に配置されたバイメタル8の上方に配置している。図に示す可動接点金属板6は、弾性変形できる1枚の弾性金属板からなる。可動接点金属板6は、電流容量を考慮して厚さ(d)を特定するが、電池パックに内蔵されるマイクロブレーカ100にあっては、たとえば、0.08mm以上であって0.5mm以下とする。さらに、可動接点金属板6の厚さ(d)は、ブレーカ100の最大電流容量を考慮して最適値に設定するので、好ましくは0.1mm以上であって、0.5mm以下に設定する。
【0043】
可動接点金属板6は、弾性と導電性を考慮して材質を特定するが、たとえば、Cu-Zr系合金やCu-Cr-Ag-Si系合金が使用できる。Cu-Zr系合金は、母体となるCuに、好ましくは0.05~0.15wt%のZrを含有している。Cu-Cr-Ag-Si系合金は、母体となるCuに、0.01~5wt%、好ましくは0.01~2.5wt%のCrと、0.01~5wt%、好ましくは0.01~2.5wt%のAgと、0.01~5wt%、好ましくは0.01~2.5wt%のSiを含有している。さらに、可動接点金属板6は、CrとAgとSiの合計含有率を0.5~3重量%、IACSを78%~84%とする銅合金とする弾性金属板(マテリオン パーフォーマンス アロイズ アンド コンポジット社(MATERION PERFORMANCE ALLOYS AND COMPOSITES USA)のQMET 300 登録商標)とすることができる。さらにまた、弾性金属板6は、NiとPとZnとFeとを含有する銅合金、FeとPとZnとを含有する銅合金、CrとMgとを含有するIACSを75%以上とする銅合金、Zrを含有するIACSを80%以上とする銅合金、Snを含有するIACSを80%以上とする銅合金等の弾性金属板等も使用できる。
ただし、本明細書においてIACS[international annealed copper standerd]は、電気抵抗又は電気伝導度の基準として、国際的に採択された焼鈍標準軟銅(体積抵抗率を1.7241×10-2μΩm)の導電率を100%として規定する表記である。
【0044】
可動接点金属板6は、アーム部6Aの先端部であって固定接点5との対向面に可動接点7を設けている。
図6に示すアーム部6Aの可動接点7は、固定接点5と対向する領域に銀、又は銀合金からなる金属板を固定して設けており、固定接点5との接触抵抗を低減させている。可動接点7は、例えば、厚さを100μm~150μmとするAg-Ni合金をシーム溶接して接合している。このアーム部6Aは、バイメタル8が熱変形しない状態では、可動接点7が固定接点5に接触してオン状態となり、バイメタル8が熱変形する状態では、バイメタル8に押圧されて弾性変形して、可動接点7が固定接点5から離れてオフ状態となる。
【0045】
さらに、
図2と
図3のアーム部6Aは、下面に突出部6Cを設けており、この突出部6Cにバイメタル8の両端部を接触させて互いに押圧するようにしている。図に示す突出部6Cは、外形を円弧状としており、バイメタル8の両端部を横方向に摺動させることなく確実に接触させて互いに押圧できるようにしている。図に示すアーム部6Aは、バイメタル8の両端部と対向する下面に複数の突出部6Cを設けている。この構造は、幅のあるバイメタル8であっても確実に接触させて互いに押圧できる。
【0046】
可動接点金属板6は、固定部6Bを本体ケース1Aの第2の外壁11Bに固定して、アーム部6Aを収納部20に配置している。
図2~
図5のブレーカ100は、第2の外壁11Bの上端面に可動接点金属板6の固定部6Bを固定している。本体ケース1Aは、
図5に示すように、第2の外壁11B上端面に、外周壁10の上面よりも一段低い段差凹部21を設けており、この段差凹部21に可動接点金属板6の固定部6Bを嵌合させて定位置に配置している。
図5に示す本体ケース1Aは、この段差凹部21の中央部から突出して、可動接点金属板6の固定部6Bを貫通する連結凸部15を設けている。可動接点金属板6の固定部6Bには、連結凸部15を貫通させる貫通孔6Fを設けている。図に示す連結凸部15は、水平断面形状を長円形として、可動接点金属板6の固定部6Bを正確な姿勢で段差凹部21に配置できるようにしている。さらに、
図5に示す段差凹部21は、可動接点金属板6の両側部を位置決めする位置決リブ22を第2の外壁11Bの上端部に形成している。
図5に示す第2の外壁11Bは、その上端面において、位置決リブ22以外の部分を、外周壁10の上面よりも低くして段差凹部21を設けることにより、段差形状の位置決リブ22を形成している。可動接点金属板6は、固定部6Bの両側に位置決リブ22を案内する位置決凹部6Gを設けている。可動接点金属板6は、固定部6Bに開口された貫通孔6Fに連結凸部15が挿入されると共に、固定部6Bの両側に設けた位置決凹部6Gに位置決リブ22が案内されて、第2の外壁11Bの段差凹部21の定位置に配置される。固定部6Bが段差凹部21に配置された可動接点金属板6は、接着して第2の外壁11Bに固定され、あるいは本体ケース1Aに固定される蓋ケース1Bに挟まれて、すなわち、第2の外壁11Bの段差凹部21の底面と蓋ケース1Bの対向面とで上下両面から挟着されてケース1の定位置に固定される。
【0047】
可動接点金属板6は、ケース1から外部に引き出される延伸部分を接続端子6Xとしている。図に示す接続端子6Xは、ケース1の反対側の端面から引き出される固定接点金属板4の接続端子4Xとほぼ同一平面に位置するように後端部を段差形状に折り曲げている。
【0048】
(固定接点金属板4)
固定接点金属板4は、インサート成形されて本体ケース1Aに固定されている。固定接点金属板4は、ダボ41を介してPTC9の下面に設けている底面電極9Aに電気的に接続される。
図2、
図3、及び
図5の固定接点金属板4は、PTC9の底面電極9Aに向かって突出する複数のダボ41を設けている。固定接点金属板4は、複数のダボ41をPTC9との対向領域に設けて、ダボ41の上にPTC9を載せている。このブレーカ100は、ダボ41の高さを変更して、PTC9の上下位置を最適位置に調整できる。ダボ41は、PTC9を好ましい上下位置に配置する高さ、例えば固定接点金属板4の厚さの1/10以上であって5倍以下に調整される。PTC9の上下位置は、バイメタル8が復帰する復帰温度に影響を与える。ブレーカ100は、ダボ41を高くして復帰温度を低く、ダボ41を低くして復帰温度を高くできる。高いダボ41は、PTC9を高い位置に配置し、高い位置のPTC9は反転するバイメタル8が可動接点金属板6のアーム部6Aを押し上げる力を強くして、反転するバイメタル8を元の形状に復帰し難くして、復帰温度を低くする。反対に低いダボ41は、PTC9を低い位置に配置し、低い位置のPTC9は反転するバイメタル8が可動接点金属板6のアーム部6Aを押し上げる力を弱くして、反転するバイメタル8が元の形状に復帰し易く、復帰温度を高くする。
【0049】
図7の分解斜視図と
図8の平面図に示す固定接点金属板4は、PTC対向領域40において、PTC9の底面電極9Aの複数の領域であって、底面電極9Aの中心で交差する2本の区画ライン9m、9nで区画される4つの区画領域9aに対向して複数のダボ41を設けている。
図7と
図8に示す固定接点金属板4は、PTC対向領域40の外周部であって、底面電極9Aの外周部と対向する領域に4つのダボ41の中心が位置するように設けている。ここで、底面電極9Aの外周部とは、底面電極9Aの中心を0として底面電極9Aの外周縁を100とする半径(R)を考える場合に、R=30以上となる回転軌跡であるリング状領域、好ましくはR=40以上の回転軌跡であるリング状領域を意味するものとする。
図7と
図8に示す固定接点金属板4は、長手方向の中心ライン4mに対して交差する2本の区画ライン9m、9nで区画される底面電極9Aの4つの区画領域9aと対向する領域にそれぞれダボ41を設けている。図に示す固定接点金属板4は、PTC対向領域40に形成される複数のダボ41を、可動接点金属板6の長手方向の両端部と、可動接点金属板6の幅方向の両側部とに位置して配設している。この図の固定接点金属板4は、四角形の頂点に4個のダボ41を配置して、可動接点金属板6の長手方向の両端部と、可動接点金属板6の幅方向の両側部とに配設している。この固定接点金属板は、4個のダボ41にPTC9を載せて定位置に配置できる。
【0050】
以上の固定接点金属板4は、PTC対向領域40に4個のダボ41を配置して、可動接点金属板6の長手方向の両端部と、可動接点金属板6の幅方向の両側部とに配設しているが、固定接点金属板4は
図9ないし
図13に示すように、PTC対向領域40に、4つ以上のダボ41を配置し、またダボ41を凸条とすることもできる。以上の固定接点金属板は、ダボ41とPTC9の底面電極9Aとを複数の接触領域で電気接続して、接点のオフ状態において、PTC9に安定して通電できる特長がある。また、接点を繰り返しオンオフに切り換えて、ダボ41の損傷を少なくしてPTCを定位置に配置できる特長も実現できる。
【0051】
さらに、
図7~
図13に示す以上の固定接点金属板4は、PTC対向領域40に配置される複数のダボ41を、固定接点金属板4の長手方向における中心ライン4mに対して線対称に配置している。このように、複数のダボ41を左右対称に配置する構造は、固定接点金属板4の幅方向におけるPTC9の相対的な位置ずれに対して、複数のダボ41をバランスよく安定して底面電極9Aに接触できる特長がある。
【0052】
図9と
図10に示す固定接点金属板4は、PTC対向領域40において、PTC9の底面電極9Aの中心で交差する2本の区画ライン9m、9nを、固定接点金属板4の長手方向と幅方向として区画される4つの区画領域9aに対向して複数のダボ41を設けている。4つの領域に配置されるダボ41は、
図10の平面図に示すように、長方形の頂点に配置される状態で設けられる。長方形の頂点に配置される4点のダボ41は、可動接点金属板6の長手方向の両端部に2点ずつを配置し、可動接点金属板6の幅方向の両側部に2点ずつを配置する配列で設けられる。この固定接点金属板4は、可動接点金属板6の長手方向と幅方向におけるPTC9の相対的な位置ずれに対して、長手方向及び幅方向に配置された2点ずつのダボ41により、底面電極9Aにバランスよく安定して接触できる特長がある。
【0053】
図11の固定接点金属板4は、可動接点金属板6の長手方向の両端部と、可動接点金属板6の幅方向の両側部に加えて、PTC対向領域40の中央部にもダボ41を配置している。この固定接点金属板は、5点のダボ41でPTC9をより安定して所定の位置に配置でき、またPTC9の底面電極9Aに確実に電気的に接続できる。
図12の固定接点金属板4は、可動接点金属板6の長手方向の両端部に1点ずつダボ41を設けると共に、可動接点金属板6の幅方向の両側部に2点ずつダボ41を設けて、全体では6点のダボ41を設けている。この固定接点金属板も、6点のダボ41でPTC9をより安定して所定の位置に配置でき、またPTC9の底面電極9Aに確実に電気的に接続できる。
【0054】
また、
図13の固定接点金属板4は、可動接点金属板6の長手方向の両端部と、可動接点金属板6の幅方向の両側部に配置するダボ41を凸条としている。この固定接点金属板4は、PTC9の底面電極9Aとの接触面積を広くして、底面電極9Aとの接触抵抗より低減できる。また、図示しないが、固定接点金属板は、ダボを円形又は楕円形として、可動接点金属板の長手方向の両端部及び中間部と、可動接点金属板の幅方向の両側部及び中間部に配置することもできる。この固定接点金属板は、円形ないし楕円形のダボがPTCの底面電極に接触して、PTCを安定して定位置に配置できる。
【0055】
固定接点金属板4は、先端部4Aで収納部20の底部13の開口部を閉塞し、中間部4Bと先端部4Aの一部を収納部20の底部13から本体ケース1Aの第1の外壁11Aに埋設するようにインサート成形して、本体ケース1Aに固定している。
図3の固定接点金属板4は、収納部20の底部を閉塞する部分よりも、第1の外壁11Aに埋設される部分を高くするように段差部4Dを設けて、段差部4Dを本体ケース1Aの底部13に埋設して、段差部4Dの後端側を底部13の上面に露出させて、この露出部を固定接点5としている。
【0056】
固定接点金属板4は、
図6に示すように、可動接点7と対向する領域に銀メッキ層を設けて固定接点5として接触抵抗を小さくできる。固定接点5の銀メッキ層は、たとえば5μmである。ただ、固定接点5の銀メッキ層の膜厚は、3μm~20μm、好ましくは4μm~10μmとすることができる。固定接点5の銀メッキ層を薄くすることで、製造コストを低減できる。
【0057】
固定接点金属板4は、ケース1から外部に引き出される延伸部分を接続端子4Xとしている。図に示す固定接点金属板4は、ケース1から外部に延長される部分を、ケース1に埋設される中間部4Bから直線状に引き出して接続端子4Xとしている。
【0058】
(バイメタル8)
バイメタル8は、加熱されると変形して反転するように、熱膨張率が異なる金属を積層したものである。バイメタル8は、PTC9と可動接点金属板6のアーム部6Aとの間に配設され、設定温度で反転して、可動接点7を固定接点5から離してブレーカ100をオフ状態に切り換える。バイメタル8は、薄くしてブレーカ100全体を薄くできるので、好ましくは厚さ(t)を0.05mm以上であって0.1mm以下とする。さらにバイメタル8は、中央凸に湾曲する形状であって、反転しない状態、すなわち、非反転形状においては、
図2に示すように、中央突出部をアーム部6A側に突出させる姿勢に保持される。バイメタル8は、設定温度になると反転して反転形状に変形するが、反転形状では、
図5、
図3に示すように、中央突出部をPTC9側に突出させる姿勢となって、両端部でアーム部6Aを押圧する形状となる。バイメタル8は、反転形状では、中央突出部をPTC9に接触させると共に、両端部分でアーム部6Aを押圧して、アーム部6Aを押し上げて可動接点7を固定接点5から離してオフに切り換える。
【0059】
(PTC9)
PTC9は、通電されることによって発熱して、バイメタル8を加熱する。PTC9は、対向面を円形ないし楕円形とする厚みのある円盤状で、バイメタル8に接続される上面電極9Bと、固定接点金属板4に接続される底面電極9Aを有している。PTC9には、例えば、通電されてバイメタル8を加熱できる全てのPTCを使用することができる。円盤状のPTC9は、バイメタル8と固定接点金属板4との間に配設されて、バイメタル8を裏面から加温する。上下面に電極を設けているPTC9は、底面電極9Aを固定接点金属板4に接触して、上面電極9Bをバイメタル8を介してアーム部6Aに接触できるようにしている。このPTC9は、アーム部6Aの可動接点7が固定接点5に接触するオン状態では、アーム部6Aとバイメタル8とが非接触状態となって通電されず、アーム部6Aの可動接点7が固定接点5から離れてオフ状態となる状態では、アーム部6Aに接触するバイメタル8と固定接点金属板4とを介して通電されて発熱し、バイメタル8を加熱する。加熱されるバイメタル8は、可動接点7を固定接点5から離すオフ状態に保持する。
【0060】
このブレーカ100は、オフ状態に切り換えられた状態で、可動接点7をオフ状態に保持するので、電池パックに安全に使用できる。それは、電池パックが異常な状態で使用されて設定温度よりも高くなり、ブレーカ100がオフに切り換えられた後は、電池パックの電池からPTC9に通電され続けてバイメタル8が加熱されるので、ブレーカ100がオン状態に復帰することなく、電池が放電されるまで電流を遮断する状態に保持できるからである。電池が完全に放電されると、PTC9に通電できなくなってPTC9がバイメタル8を加温できなくなってオン状態に復帰しても、この状態では電池は放電できなくなっているので、安全性は確保される。さらに、PTC9を内蔵するブレーカ100は、電池の異常を検出してPTC9に通電して、PTC9でバイメタル8を加熱して電池の電流を遮断することもできる。ブレーカ100を内蔵する電池パックは、素電池と直列にブレーカ100を接続して、ブレーカ100で電池の電流を遮断する。PTC9でバイメタル8を加熱してオン状態に保持するブレーカ100は、電池が完全に放電されて、電池がPTC9に電力供給されなくなって、復帰温度以下になるとバイメタル8が非反転形状に復帰して接点をオン状態に切り換える。
【0061】
(接点の活性化処理)
マイクロブレーカ100は、接点の接触抵抗を小さくすることを目的として、活性化処理が採用されている。弱い接触圧のマイクロブレーカ100は、組み立てた状態で、接点を活性化処理して接触抵抗を小さくできる。接点の活性化処理は、組み立てられたブレーカ100の接点に通電する状態で超音波振動させて処理される。ブレーカ100は、可動接点7と固定接点5とを互いに衝突させて離反方向に超音波振動させる。すなわち、ブレーカ100は、固定接点5と可動接点7とが互いに接近し衝突し、また互いに離れる方向に相対的に移動するように超音波振動させる。超音波振動させる状態で接点の電流は、抵抗負荷の状態で、好ましくは0.1A~100Aとする。超音波振動時における接点電流を大きくして、接点はより効果的に活性化される。抵抗と直列にコイルを接続しているインダクタンスのある負荷は、電流を遮断するときにコイルに蓄えられる電流エネルギーが大きくなるので接点電流を小さくして接点を活性化できる。コイルに蓄えられる電流のエネルギーを消費するために、接点の放電電流が大きくなるからである。したがって、接点電流は、抵抗負荷とインダクタンス負荷とを考慮して最適な値に設定する。さらに、ブレーカ100は、接点の電流を大きくするとジュール熱で発熱してそれ自体でオフ状態に切り換えられる特性がある。超音波振動で接点を活性化するには、可動接点7を固定接点5に接触するオン状態に保持する必要がある。したがって、接点に大電流を流して超音波振動させる方法は、超音波振動させる時間を短くして、接点がオン状態にある状態で超音波振動させる。したがって、接点に大電流を流して超音波振動させる方法は、超音波振動させる時間を短くする。
【0062】
通電状態で接点を超音波振動させる時間は0.1ミリ秒~1秒とする。超音波振動させる時間は、長くして接点をより効果的に活性化できるが、長すぎると接点の銀メッキ層が損傷を受けるので、銀メッキ層を損傷することなく接点を活性化できる時間に設定される。また、超音波振動による接点の活性化は、接点電流、負荷の種類、超音波振動の振幅にも影響を受け、接点電流と振幅が大きいと短時間で接点がより効果的に活性化される。したがって、超音波振動させる時間は、接点電流と超音波振動の振幅を考慮して前述の範囲で最適値に設定される。
【0063】
また、接点を超音波振動させる周波数は20KHz~6GHz、好ましくは20KHz~1GHzとする。超音波振動の周波数を高くして、単位時間に可動接点7と固定接点5との衝突回数と離反回数とを多くできる。ただ、超音波振動の周波数が高すぎると可動接点7が固定接点5から離れる間隔が狭くなって放電による活性化が低下し、反対に周波数が低すぎると衝突回数が少なくなって活性化が低下するので、超音波振動の周波数は、アーム部6Aの厚さや長さを考慮し、さらにアーム部6Aの共振周波数を考慮して、最適値に設定される。
【0064】
さらに、ブレーカ100を超音波振動させる振幅は0.01μm~100μmとする。超音波振動の振幅を大きくして、可動接点7が固定接点5に衝突する運動のエネルギーを大きくでき、また可動接点7が固定接点5から離れる間隔を大きくできる。ブレーカ100を超音波振動させる振幅は、可動接点7を固定接点5から離す隙間に影響を与える。ただ、可動接点7が固定接点5から離れる間隔は、アーム部6Aを共振させることで、ブレーカ100を超音波振動させる振幅よりも大きくできる。したがって、ブレーカ100を超音波振動させる周波数を、アーム部6Aの共振周波数やその近傍、あるいはその共振周波数の整数倍、あるいは又、共振周波数の整数分の1に設定することで可動接点7を固定接点5から充分な間隔に離して、効果的に活性化できる。
【0065】
ブレーカ100を超音波振動させる振幅を大きくするには、ブレーカ100に接触してこれを超音波振動させる超音波振動子や超音波ホーンの出力を大きくする必要がある。大出力の超音波振動子や超音波ホーンをブレーカ100のケース1に押圧して超音波振動させると、超音波振動子との接触箇所が超音波振動による発熱で変形する等の弊害があるので、ブレーカ100を超音波振動させる振幅は、接点を活性化できる範囲で小さく設定される。
【0066】
(ブレーカ100の電池パックへの内蔵)
以上のブレーカ100は、例えば、電池パックに内蔵されて、電池や周囲温度が高温になり、あるいは電池パックが異常な状態で使用されるときに電流を遮断する。電池パックに内蔵されるブレーカ100は、ケース1の両端から引き出された一対の接続端子6X、4Xが、直接に、あるいは接続リードを介して電池端子や回路基板に接続される。接続端子6X、4Xは、例えば、レーザー溶接により接続リードや電池端子に接続される。また、ブレーカ100は、ケース1が電池表面や回路基板に接近する状態で、好ましくは熱結合状態で配置されて、電池や周囲温度が高温になると内蔵するバイメタル8を反転させて電流を遮断する。
【0067】
(ブレーカの回路基板への固定)
以上のブレーカは、回路基板やリード板にハンダ付けして固定することもできる。回路基板に直接半田付けするブレーカは、ケースから外部に引き出される可動接点金属板の接続端子と固定接点金属板の接続端子を、ケースの底面、すなわち本体ケースの底面とほぼ同一平面に位置するように折り曲げる。このブレーカは、ケースの両端から外部に引き出された接続端子を回路基板にハンダ付けして固定できる。このブレーカは、ケースの底面、すなわち、本体ケースの底面を回路基板の上に載せて、回路基板にハンダ付けできる。
【0068】
[実施例1]
バイメタル8を2.2mm×2.4mmの長方形、厚さを0.05mm、反転温度を85℃、復帰温度を30℃とし、
可動接点金属板6にはCu-Zr系合金を使用して、可動接点金属板6の厚さを0.15mm、アーム部6Aの長さを3.3mm、横幅を2.1mmとし、
さらに、アーム部6Aの先端部に可動接点7を設けて、この可動接点7を厚さ120μmとするシーム材(Ag-Ni)とし、
固定接点金属板4にはCu-Zr系合金を使用して、固定接点金属板4の厚さを0.1mm、横幅を2.1mmとし、PTC対向領域40には、PTC9の底面電極9Aに向かって突出する突出高さを50μmとする4点のダボ41を、可動接点金属板の長手方向の両端部と、可動接点金属板の幅方向の両側部とに位置して、P.C.D.(Pitch Circle Diameter)1.2の位置に設け、
さらに、固定接点金属板4に設ける固定接点5を、4.5μmのAgメッキ層とし、
ケース1の外形を、縦5.8mm、横2.8mm、高さ1.15mmとする。
【0069】
この実施例1で使用したCu-Zr系合金は、以下の組成とした。
Cu………99.9wt%
Zr………0.1wt%
【0070】
[比較例1]
PTC対向領域に設けるダボを3点とし、これら3点のダボの位置を、P.C.D.(Pitch Circle Diameter)1.2とする固定接点金属板を使用する以外は実施例1と同様にして比較例1のブレーカを製造した。
【0071】
実施例1で製造されたブレーカは、比較例で製造されたブレーカに比較して、復帰温度の誤差が5.6℃から1.3℃に小さくなった。このことからも、実施例1のブレーカは比較例のブレーカに比べての復帰温度の誤差が極めて小さく、復帰温度のばらつきを著しく小さくして、接点をオン状態に復帰できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、周囲温度が上昇して電流を遮断した後、周囲温度が低下して遮断状態を復帰して通電する復帰温度を高い精度でコントロールできるブレーカとして好適に採用できる。
【符号の説明】
【0073】
100…ブレーカ
1…ケース
1A…本体ケース
1B…蓋ケース
4…固定接点金属板
4A…先端部
4B…中間部
4D…段差部
4X…接続端子
4m…中心ライン
5…固定接点
6…可動接点金属板
6A…アーム部
6B…固定部
6C…突出部
6F…貫通孔
6X…接続端子
7…可動接点
8…バイメタル
9…PTC
9A…底面電極
9B…上面電極
9a…区画領域
9m…区画ライン
9n…区画ライン
10…外周壁
11…外壁
11A…第1の外壁
11B…第2の外壁
12…対向壁
13…底部
15…連結凸部
16…連結凹部
17…連結凸部
18…連結凹部
20…収納部
21…段差凹部
22…位置決リブ
23…連結プラスチック
24…積層金属板
26…変形制限凸部
27a…閉塞プレート
27b…外周壁
28…溶融凸条
40…PTC対向領域
41…ダボ
90…ブレーカ
91…ケース
94…固定接点金属板
95…固定接点
96…可動接点金属板
97…可動接点
98…バイメタル
99…PTC