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▶ 株式会社竹中工務店の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094089
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】建築方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/05 20060101AFI20230628BHJP
【FI】
E02D29/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209349
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】中曽根 義之
(72)【発明者】
【氏名】福本 晃治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 淳一
(72)【発明者】
【氏名】片桐 卓也
(72)【発明者】
【氏名】馬場 俊樹
【テーマコード(参考)】
2D147
【Fターム(参考)】
2D147AA05
(57)【要約】
【課題】地下躯体の壁厚を薄くして地下躯体の施工性を改善できる建築方法を提供する。
【解決手段】地盤1を掘削する掘削工程と、掘削工程において掘削した掘削領域A1に地下躯体2を構築する地下躯体構築工程と、地下躯体2の周囲に存在する埋め戻し領域A3を埋め戻し材3で埋め戻す埋め戻し工程とを含み、埋め戻し工程では、埋め戻し材3としてコンクリート5を用い、埋め戻し領域A3を複数に分割した層のうちの最下層LBから順にコンクリート5を打設し、下層のコンクリート5が硬化してから次の上層にコンクリート5を打設する工程を繰り返す。
【選択図】図6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を掘削する掘削工程と、
前記掘削工程において掘削した掘削領域に地下躯体を構築する地下躯体構築工程と、
前記地下躯体の周囲に存在する埋め戻し領域を埋め戻し材で埋め戻す埋め戻し工程とを含む建築方法であって、
前記埋め戻し工程では、前記埋め戻し材としてコンクリートを用い、前記埋め戻し領域を複数に分割した層のうちの最下層から順にコンクリートを打設し、下層のコンクリートが硬化してから次の上層にコンクリートを打設する工程を繰り返す建築方法。
【請求項2】
前記埋め戻し工程では、前記埋め戻し領域の最上層の前記埋め戻し材として、前記掘削工程において生じた掘削土を使用する請求項1に記載の建築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下躯体を構築する建築方法で、特に、地盤を掘削する掘削工程と、前記掘削工程において掘削した掘削領域に地下躯体を構築する地下躯体構築工程と、前記地下躯体の周囲に存在する埋め戻し領域を埋め戻し材で埋め戻す埋め戻し工程とを含む建築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、地盤Gを掘削する掘削工程と、掘削工程で掘削した掘削領域に地下躯体5を構築する地下躯体構築工程と、地下躯体5の周囲に存在する埋め戻し領域を埋め戻し土砂6で埋め戻す埋め戻し工程とを含む建築方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-030133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の建築方法では、埋め戻し工程において埋め戻し領域を土砂で埋め戻すことで掘削領域の下部では地下躯体に作用する側圧が高くなるため、その側圧に耐えられるように地下躯体の外壁の壁厚を厚くしている。そして、地下躯体の外壁の壁厚が厚くなることで、地下躯体構築工程において使用する型枠支保工等の仮設部材量が多くなるため、地下躯体の施工性が悪くなっていた。
【0005】
また、埋め戻し領域を埋め戻す埋め戻し材として比重の小さいエアモルタルや発泡スチロールブロックを用い、地下躯体に作用する側圧を低減することが考えられるが、エアモルタルや発泡スチロールブロックが高価であると共に、エアモルタルや発泡スチロールブロックで埋め戻す際に数メートル毎に土間コンクリートを打設する必要があるために施工性が悪くなる。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、地下躯体の壁厚を薄くして地下躯体の施工性を改善できる建築方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、地盤を掘削する掘削工程と、
前記掘削工程において掘削した掘削領域に地下躯体を構築する地下躯体構築工程と、
前記地下躯体の周囲に存在する埋め戻し領域を埋め戻し材で埋め戻す埋め戻し工程とを含む建築方法であって、
前記埋め戻し工程では、前記埋め戻し材としてコンクリートを用い、前記埋め戻し領域を複数に分割した層のうちの最下層から順にコンクリートを打設し、下層のコンクリートが硬化してから次の上層にコンクリートを打設する工程を繰り返す点にある。
【0008】
本構成によれば、埋め戻し工程において、下層のコンクリートが硬化した状態で次の上層にコンクリートを打設することで、上層のコンクリートの側圧が下層のコンクリートから地下躯体に伝わらなくなる。そのため、埋め戻し領域を埋め戻し材で一気に埋め戻す場合に比較して、埋め戻し材による地下躯体に作用する側圧を小さくすることができ、地下躯体における外壁の壁厚を薄くすることができるので、地下躯体の躯体数量を低減させてコストを抑えることができる。
また、地下躯体における外壁の壁厚を薄くすることができるので、外壁の躯体コンクリート打設時の型枠側圧を低減でき、地下躯体構築工程において使用する型枠支保工等の仮設部材量を低減できるため、地下躯体の施工性を改善することができる。
また、埋め戻し領域に打設したコンクリートが硬化する際にコンクリートが収縮するため、コンクリートが硬化する前に作用していた地下躯体に対する側圧が抑制されるため、構造安全性を確保し易くなる。
【0009】
本発明の第2特徴構成は、前記埋め戻し工程では、前記埋め戻し領域の最上層の前記埋め戻し材として、前記掘削工程において生じた掘削土を使用する点にある。
【0010】
本構成によれば、下層の埋め戻し材としてコンクリートを使用しつつ最上層の埋め戻し材として掘削土を使用することで、最上層の掘削土の側圧がそれより下層のコンクリートから地下躯体に伝わらないようにしながら、埋め戻しの全てにコンクリートを使用する場合に比較して埋め戻し工程での施工性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】掘削工程を実行した後の状態を示す図
図2】地下躯体構築工程を実行した後の状態を示す図
図3】埋め戻し工程において第1層にコンクリートを打設した状態を示す図
図4】埋め戻し工程において第2層にコンクリートを打設した状態を示す図
図5】埋め戻し工程において第3層にコンクリートを打設した状態を示す図
図6】埋め戻し工程において第4層に掘削土を埋め戻した状態を示す図
図7】建築方法の作業の流れを示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る建築方法の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1から6に示すように、建築方法は、地盤1を掘削する掘削工程S1(図1参照)と、掘削工程S1において掘削した掘削領域A1に地下躯体2を構築する地下躯体構築工程S2(図2参照)と、地下躯体2の周囲に存在する埋め戻し領域A3を埋め戻し材3で埋め戻す埋め戻し工程S3(図3から図6参照)とを含んでいる。
図1は、掘削工程S1を実行した後で且つ地下躯体構築工程S2を実行する前の状態を示している。図2は、地下躯体構築工程S2を実行した後で且つ埋め戻し工程S3を実行する前の状態を示している。図3から図5は、埋め戻し工程S3の実行中の状態を示しており、図6は、埋め戻し工程S3を実行した後の状態を示している。また、図7は構築方法の作業の流れ図を示しており、この作業の流れ図に示すように、掘削工程S1の次に地下躯体構築工程S2を実行し、地下躯体構築工程S2の次に埋め戻し工程S3を実行する。
【0013】
図1に示すように、掘削工程S1では、地下躯体2を構築するために地盤1を掘削する。この掘削工程S1において地盤1を掘削することで掘削領域A1が形成される。掘削領域A1には、地下躯体2を構築するための地下躯体構築領域A2と、地下躯体2を構築した後に埋め戻される埋め戻し領域A3とが含まれている。また、本実施形態では、掘削領域A1の底に捨てコンクリート4を打設している。
【0014】
図2に示すように、地下躯体構築工程S2では、地下躯体構築領域A2に床、床梁、柱、内外壁などの地下躯体2の構築を行う。地下躯体構築工程S2を実行した後は、地下躯体2の周囲に埋め戻し領域A3が存在している。
【0015】
図3から図6に示すように、埋め戻し工程S3では、埋め戻し材3としてコンクリート5を用い、埋め戻し領域A3を複数に分割した層のうちの最下層LBから順にコンクリート5を打設し、下層のコンクリート5が硬化してから次の上層にコンクリート5を打設する工程を繰り返す。本実施形態では、埋め戻し領域A3に打設するコンクリート5として生コンクリートを用いている。また、埋め戻し領域A3には配筋しておらず埋め戻し領域A3に打設したコンクリート5を無筋コンクリートとしている。
【0016】
また、埋め戻し工程S3では、埋め戻し領域A3の最上層LTの埋め戻し材3として、掘削工程S1において生じた掘削土6を使用している。つまり、埋め戻し工程S3では、最上層LT以外の埋め戻し材3としてコンクリート5を使用するが、最上層LTの埋め戻し材3として掘削土6を使用する。
【0017】
本実施形態では、上下方向の幅が均等になるように埋め戻し領域A3を4つの層に分割している。これら4つの層を、下側の層から順に第1層L1、第2層L2、第3層L3、第4層L4と称する。また、第1層L1に打設するコンクリート5を第1コンクリート51と称し、第2層L2に打設するコンクリート5を第2コンクリート52と称し、第3層L3に打設するコンクリート5を第3コンクリート53と称する。尚、第1層L1は最下層LBに相当し、第4層L4は最上層LTに相当する。
【0018】
次に、図3から図7に基づいて埋め戻し工程S3について説明する。
埋め戻し工程S3では、まず、図3に示すように、第1層L1に第1コンクリート51を打設する(第1コンクリート打設工程、図7参照)。次に、第1コンクリート51が硬化した後、図4に示すように、第2層L2に第2コンクリート52を打設する(第2コンクリート打設工程、図7参照)。そして、第2コンクリート52が硬化した後、図5に示すように、第3層L3に第3コンクリート53を打設する(第3コンクリート打設工程、図7参照)。このように、下層のコンクリート5が硬化した後に次の上層にコンクリート5を打設する工程を繰り返し実行する。最後に、第3コンクリート53が硬化した後、図6に示すように、第4層L4に掘削土6を埋め戻す(掘削土埋め戻し工程、図7参照)。
【0019】
このように、埋め戻し工程S3において、下層のコンクリート5が硬化した状態で次の上層にコンクリート5を打設することを繰り返すことで、上層のコンクリート5の側圧が下層のコンクリート5から地下躯体2に伝わらなくなるため、埋め戻し材3による地下躯体2に作用する側圧を小さくすることができ、地下躯体2における外壁の壁厚を薄くすることができるので、地下躯体2の躯体数量を低減させてコストを抑えることができる。また、コンクリートポンプによってコンクリート5を圧送して打設することで、埋め戻し用の土砂を運搬するためのダンプトラック等の重機を埋め戻し領域A3に近接させる回数を少なくすることができるため、施工性が良くなる。
【0020】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0021】
(1)上記実施形態では、埋め戻し領域A3を上下方向の幅が等しい4つの層に分割する構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、埋め戻し領域A3を3つの層に分割したり、5つ以上の層に分割してもよい。また、掘削土6を埋め戻す層を他の層に比べて上下方向の幅を小さくする又は大きくする等、埋め戻し領域A3の一部の層の上下方向の幅が他の層の上下方向の幅と異なるように埋め戻し領域A3を分割してもよい。
【0022】
(2)上記実施形態では、最上層LTの埋め戻し材3として、掘削工程S1において生じた掘削土6を使用する例を説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、最上層LTの埋め戻し材3として、掘削土6とは別の土砂を使用したり、他の層と同様にコンクリート5を使用してもよく、最上層LTの埋め戻し材3は、掘削工程S1において生じた掘削土6以外のものを使用してもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 地盤
2 地下躯体
3 埋め戻し材
5 コンクリート
6 掘削土
A1 掘削領域
A3 埋め戻し領域
LB 最下層
LT 最上層
S1 掘削工程
S2 地下躯体構築工程
S3 埋戻し工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7