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特開2023-94097繊維強化樹脂積層体、シャッタ装置および光学機器
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  • 特開-繊維強化樹脂積層体、シャッタ装置および光学機器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094097
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂積層体、シャッタ装置および光学機器
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/10 20060101AFI20230628BHJP
   G03B 9/36 20210101ALI20230628BHJP
【FI】
B32B5/10
G03B9/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209364
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】若林 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】丸山 直昭
(72)【発明者】
【氏名】小野坂 純一
(72)【発明者】
【氏名】新井 克美
【テーマコード(参考)】
2H081
4F100
【Fターム(参考)】
2H081AA19
4F100AD11B
4F100AD11C
4F100AK01A
4F100AK41A
4F100AK42A
4F100AK53B
4F100AK53C
4F100BA03
4F100BA06
4F100DH00B
4F100DH00C
4F100DH02B
4F100DH02C
4F100EJ17
4F100EJ38A
4F100EJ42
4F100EJ64A
4F100GB41
4F100JK01
4F100JL10A
4F100JN30
4F100YY00
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】
遮光性を満たし、高剛性な繊維強化積層体を提供する。
【解決手段】
本発明の繊維強化樹脂積層体は、樹脂基板42と、樹脂基板42の両面にそれぞれ設けられた繊維強化層41と、を備えた繊維強化樹脂積層体であって、樹脂基板42は、繊維強化樹脂積層体を構成する各層のうち、最も光学濃度が高い層であることを特徴とする。樹脂基板は、ポリエステル樹脂であり、光学濃度が3以上であってもよい。繊維強化積層体をシャッタ羽根として備え、シャッタ羽根を駆動する駆動部とを備えたシャッタ装置であってもよい。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基板と、
前記樹脂基板の両面にそれぞれ設けられた繊維強化層と、を備えた繊維強化樹脂積層体であって、
前記樹脂基板は、前記繊維強化樹脂積層体を構成する各層のうち、最も光学濃度が高い層であることを特徴とする繊維強化樹脂積層体。
【請求項2】
前記樹脂基板は、ポリエステル樹脂であり、光学濃度が3以上であることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化樹脂積層体。
【請求項3】
前記樹脂基板の表層は、表面改質層が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維強化樹脂積層体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂積層体をシャッタ羽根として備え、前記シャッタ羽根を駆動する駆動部とを備えたシャッタ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のシャッタ装置と、前記シャッタ装置を通過した光を撮像する撮像素子とを備えた光学機器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化積層体、シャッタ羽根およびシャッタ装置並びにカメラなどの光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化積層体として、炭素繊維強化樹脂(以下、CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)の繊維方向を隣接する層で90°変え、交互に積層して強度を向上させることが知られている。このような繊維強化積層体は、軽量かつ高剛性であるので、一眼レフカメラに使用されるフォーカルプレーンシャッタなどの極めて短い時間で光路を横切るように移動と停止を行なうシャッタ羽根に好んで利用される。
【0003】
CFRPを交互に積層した繊維強化積層体は、軽量で強度も高く優れた特性を有するものであるが、CFRPプリプレグを積層する段階で炭素繊維が曲がり、いわゆる目開きという現象が発生することがある。そして、この目開きした場所の遮光性は低下することもある。
【0004】
特許文献1では、遮光性を向上させるために、プラスチックフィルムを基材とし、その両面に遮光性を有する遮光塗膜を形成すると共に、遮光塗膜の上に炭素繊維が引き揃えられた補強部材を積層し、各補強部材の上に潤滑黒色塗膜を形成したラミネート構造を有する光学機器用遮光羽根材が開示されている。
【0005】
特許文献1の構成では、羽根材を構成する積層体中の炭素繊維強化樹脂層との間に遮光塗膜を介在させることにより、シャッタ羽根として必要な遮光性が得られるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3215815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
軽量、高強度のシャッタ羽根は、シャッタの高耐久化に貢献し、シャッタスピードを高速化させることもあり、近年、シャッタ羽根に用いられる繊維強化積層体に対して、構造体としてさらなる高強度化が求められている。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、耐久特性をさらに向上することを可能とする遮光性の繊維強化積層体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の繊維強化積層体は、樹脂基板と、樹脂基板の両面にそれぞれ設けられた繊維強化層と、を備えた繊維強化樹脂積層体であって、樹脂基板は、繊維強化樹脂積層体を構成する各層のうち、最も光学濃度が高い層であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の繊維強化積層体によれば、高い曲げ強度を有する繊維強化積層体を実現できる。本発明の繊維強化積層体を有するシャッタ羽根は、耐久特性が向上し、このシャッタ羽根を用いたカメラにおいては、高耐久化やシャッタスピードの向上などが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る繊維強化樹脂積層体を表す図。
図2】一実施形態に係るシャッタ装置を表す図。
図3図2のII-II’における矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、後述する実施形態において説明されるが、図1(A)に示すように樹脂基板42と、樹脂基板42の両面にそれぞれ設けられた繊維強化層41と、を備えた繊維強化樹脂積層体であって、樹脂基板42は、繊維強化樹脂積層体を構成する各層のうち、最も光学濃度が高い層である繊維強化積層体である。このような繊維強化積層体は、高い曲げ強度を有しながら、十分な遮光性を有しており、シャッタ羽根などの材料として好適に使用できる。また、上述した繊維強化積層体の構成は、シャッタ羽根の軽量化にもつながる。
【0013】
特に、樹脂基板は、ポリエステル樹脂であることが好ましく、光学濃度が3以上であるとシャッタ羽根の他の層で光学濃度を高くしなければならない層を減らすことができるため、繊維強化積層体としてより高剛性な構成をとり易い。樹脂基板は、さらに、好ましくは、光学濃度が4以上であり、より好ましくは、光学濃度が6以上であり、厚さ等を考慮すると光学濃度が10以下であることが好ましい。光学濃度ODはOD=-logT(Tは透過率)で計算される。光学濃度が大きいほど、光を透過させにくい。本実施例の光学濃度は、EXACT BASIC(X-rite社)で測定することができる。
【0014】
また、図1(A)に示す以外にも、図1(B)に示すように、樹脂基板42の表層に、表面改質層43が形成されていると、繊維強化樹脂層との密着性を向上し、より剥がれにくい繊維強化積層体とすることができる。また、図1(C)に示すように、樹脂基板42の表層に、凹凸構造46を形成しても、密着性を向上することができる。樹脂基板42の表層に、凹凸構造46を形成すると、樹脂基板42と反対方向に位置する炭素繊維強化樹脂層41の表層付近における炭素繊維の体積分率が、樹脂基板42に近い炭素繊維強化樹脂層41との界面付近における炭素繊維の体積分率よりも相対的に高くなる。炭素繊維強化樹脂層41の表層付近における炭素繊維の存在割合の相対的な増加は、繊維強化積層体としての曲げ抵抗強度を高くすること、および、剛性を向上することを可能とする。
【0015】
以下に、図を参照して、本発明の繊維強化積層体の一例が説明される。
【0016】
なお、本発明の理解を助けるために、本発明の繊維強化積層体がシャッタ装置のシャッタ羽根として用いられる一実施形態が説明されるが、本発明の繊維強化積層体は、遮光性と耐久性が要求されるブラインドや各種構造材にも適用されることはいうまでもない。
【0017】
図2は、一実施形態に係るシャッタ装置の正面形状を表す。図2に表すシャッタ装置10は、フォーカルプレーンシャッタユニットである。また、図3は、図2のII-II’における矢視断面図である。本実施形態に係るに係るフォーカルプレーンシャッタユニット10は、いわゆる縦走りタイプと呼称されているものである。すなわち、フォーカルプレーンシャッタユニット10は上下方向に走行する先幕11および後幕12を有し、これら先幕11および後幕12を用いてシャッタ地板24の開口部が開閉される。先幕11および後幕12は1枚以上のシャッタ羽根で構成される。具体的には、先幕11は相互に重なり合う5枚のシャッタ羽根13、14、15、16、17で構成され、後幕12は相互に重なり合う4枚のシャッタ羽根18、19、20、21で構成される。それぞれのシャッタ羽根13~21の長手方向は、移動方向に対して略直交している。
【0018】
枠状のシャッタ地板24には、複数のスペーサー22を介して、枠状のカバー板23が平行に取り付けられており、先幕11のシャッタ羽根13~17が羽根走行方向と直交する方向に広がるのを防止する。また、カバー板23とシャッタ地板24との間には、先幕11の走行スペースと後幕12の走行スペースとを仕切る枠状の仕切り板25が、シャッタ地板24に対して傾斜して取り付けられている。先幕11はカバー板23と仕切り板25との間に配置され、後幕12は仕切り板25とシャッタ地板24との間に配置されている。
【0019】
先幕11を構成するシャッタ羽根13~17の長手方向における一端(図2中、左側)が、先幕支持アーム26と先幕駆動アーム27にカシメダボを介してそれぞれ取り付けられており、シャッタ羽根13~17は上下方向に連なって走行するように構成されている。先幕支持アーム26と先幕駆動アーム27は、それぞれの基端部において、シャッタ地板24に回転可能に取り付けられている。
【0020】
同様に、後幕12を構成するシャッタ羽根18~21の長手方向における一端が、後幕支持アーム28と後幕駆動アーム29にカシメダボを介してそれぞれ取り付けられており、シャッタ羽根18~21は上下方向に連なって走行するように構成されている。後幕支持アーム28と後幕駆動アーム29は、それぞれの基端部において、シャッタ地板24に回転可能に取り付けられている。
【0021】
これらの先幕駆動アーム27および後幕駆動アーム29は、カバー板23およびシャッタ地板24に形成された円弧状の案内溝30、31に対して、それぞれ摺動可能に係合している。また、先幕駆動アーム27および後幕駆動アーム29が駆動部(不図示)からの駆動力を受けて回転すると、連動して先幕支持アーム26および後幕支持アーム28も動き、シャッタ羽根13~17および18~21が重畳したり展開したりする。
【0022】
すなわち、撮影待機状態において、先幕11のシャッタ羽根13~17は展開状態にあり、後幕12のシャッタ羽根18~21は重畳状態にある。そして、撮影を行なう際には、先幕11のシャッタ羽根13~17の重畳動作が開始されるとともに、この動作が開始されてから所定時間経過後に、後幕12のシャッタ羽根18~21の展開動作が開始される。撮影が終了すると、先幕11のシャッタ羽根13~17および後幕12のシャッタ羽根18~21は、撮影待機状態となる。
【0023】
そして、先幕11のシャッタ羽根13~17および後幕12のシャッタ羽根18~21が走行することにより、仕切り板25、シャッタ地板24およびカバー板23の中央に、撮影光束を通過させる枠状の光通過口が形成され、レンズ(不図示)から入射した撮影光束が上述した光通過口を通過して、CCDなどの撮像素子あるいはフィルムが露光される。
【0024】
以上のようなフォーカルプレーンシャッタユニット10の構成は一例にすぎず、特開平10-186448号公報、特開2002-229097号公報、特開2003-280065号公報などに記載されている周知の構成を用いることができる。
【0025】
また、本実施形態のシャッタ装置は、例えば光学機器の一例であるカメラに設置して用いることができる。すなわち、筐体と、レンズのような光学系と、撮像素子のような撮像部とを備えるカメラにおいて、光学系を通って撮像素子に入射する光路をふさぐように、シャッタ装置を配置することができる。
【0026】
次に、シャッタ羽根13~21の構成について説明する。シャッタ羽根13~21のうちの少なくとも1つは、本発明の繊維強化積層体からなるシャッタ羽根とすることができる。
【0027】
この繊維強化積層体からなるシャッタ羽根を、以下、本実施形態に係るシャッタ羽根と呼ぶ。シャッタ羽根13~21の全てが本実施形態に係るシャッタ羽根であることは、耐久性および遮光性の点で好ましい。しかしながら、コストを減らすために、本実施形態に係るシャッタ羽根と、他のシャッタ羽根とを併用してもよい。本実施形態に係るシャッタ羽根は強度が高いため、より衝撃を受けやすいシャッタ羽根として用いることが好適である。具体的には、本実施形態に係るシャッタ羽根を、シャッタ開閉時の移動量がより大きいシャッタ羽根として用いることができる。図1の例においては、より移動量が大きく衝撃を受けやすいシャッタ羽根13、14、20、21として本実施形態に係るシャッタ羽根を用いることができる。併用しうるシャッタ羽根としては特に限定されないが、例えばアルミニウム合金の板材からなるシャッタ羽根等が挙げられる。
【0028】
図1は、一実施形態に係る繊維強化積層体の一例の断面図を表す。繊維強化積層体は、炭素繊維強化樹脂層41と、黒色の樹脂基板42と、を有する。樹脂基板42の光学濃度は、6以上であり、炭素繊維強化樹脂層41の光学濃度は、繊維方向に揃って硬化するかによってバラツキがあり、0.2~2.0程度となる。好ましくは、炭素繊維強化樹脂層41の光学濃度は、3未満であるとよい。また、樹脂基板42は、ポリエステルフィルムとして、軽量高剛性であるPETが好ましく用いられ、黒色粒子を含んでいる。炭素繊維強化樹脂層41は、炭素繊維44を保持する樹脂組成物であるマトリックス樹脂45を含んでいる。
【0029】
一実施形態では、黒色粒子としては、カーボンブラックが挙げられる。カーボンブラックの平均粒径は、充分な遮光性を得るため1μm未満とすることが好ましく、0.5μm以下とすることがより好ましい。黒色粒子の平均粒径は、体積基準の粒子径分布の50%累積値として、動的光散乱方式の粒度分布測定装置などにより測定されるものである。
【0030】
黒色粒子の含有率は、基板および炭素繊維強化樹脂層との接着性および被膜強度を向上させるために、一実施形態では30質量%以下、別の実施形態では20質量%以下、さらに別の実施形態では18質量%以下とすることができる。
【0031】
高い曲げ弾性を有する構成とするためには、剛性樹脂基板として、10μm以上、35μm以下のプラスチック材を用いる場合に、プラスチック材の厚さが炭素繊維強化樹脂層の膜厚を超えないようにするすることが好ましい。
【0032】
さらに、樹脂基板と炭素繊維強化樹脂層との界面に凹凸構造を有していてもよい。面積が増加した黒色樹脂基板の凹凸面に好適に接触することで接着性の向上が得られる。また、表面反射が散乱して炭素繊維強化樹脂に吸収されやすくなるため、繊維強化積層体として遮光性を向上させることができる。
【0033】
凹凸の平均高低差は、繊維強化積層体の厚さ方向の界面を含む10μm×10μmの視野の断面において、凹凸を横切る基板表面に平行な基準線を設け、各凹凸に対して、基準線から凸側の距離の平均と基準線から凹側の距離の平均とを求め、これの和から求められる。なお、繊維強化積層体の断面は、電子顕微鏡により観察される。
【0034】
(炭素繊維強化樹脂層)
炭素繊維強化樹脂層41は、炭素強化繊維に熱可塑性樹脂などを含浸させて形成された炭素繊維強化樹脂プリプレグシート(以下、CFRPプリプレグシートとする)とすることができる。CFRPプリプレグシートの厚さは、マトリックス樹脂に均一に分布させ、強度を向上させるために、一実施形態では10μm以上、別の実施形態では15μm以上、さらに別の実施形態では20μm以上とすることができる。CFRPプリプレグシートの厚さは、シャッタ羽根としたときに、シャッタ駆動を高速にするためや、シャッタユニットの薄型化を達成するために、一実施形態では80μm以下、別の実施形態では60μm以下、さらに別の実施形態では40μm以下とすることができる。
【0035】
また、各層で曲げ強度の異なる材質によって繊維強化積層体を形成する場合は、外側の層の曲げ強度が繊維強化積層体の曲げ強度に占める貢献が大きいため、外側の層が強度の高い炭素繊維であるとよい。そのため、基板の厚さ以上の厚さのCFRPプリプレグシートを用いると曲げ強度の大きな繊維強化積層体が得られる。
【0036】
(樹脂基板)
樹脂基板42は、炭素繊維強化樹脂層を設けることができる有機化合物であって、無機化合物粒子または金属粒子を含有した板状部材である。一実施形態では、基板は、プラスチック材からなるものにより構成することができる。使用可能なプラスチック材としては、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等の合成樹脂フィルムが挙げられる。一実施形態では、ポリエステルフィルムが用いられ、機械的強度、寸法安定性の向上のために、延伸加工、特に二軸延伸加工された二軸延伸ポリエステルフィルム(二軸延伸PETフィルムなど)が用いられる。基板にプラスチック材を用いることで金属材料に比べて軽量な繊維強化樹脂積層体を形成することができる。
【0037】
プラスチック材の厚さは、プラスチック材自体の強度を向上させ、繊維強化積層体をシャッタ羽根としたとき、シャッタ駆動を高速にするために、一実施形態では5μm以上、別の実施形態では10μm以上、さらに別の実施形態では20μm以上とすることができる。プラスチック材の厚さは、繊維強化積層体をシャッタ羽根としたとき、シャッタユニットの薄型化を達成するために、一実施形態では30μm以下、さらに好ましくは、40μm以下、とすることができる。
【0038】
なお、プラスチック材の表面に繊維強化樹脂層が形成される際、プラスチック材と繊維強化樹脂層との接着性を向上させる観点から、プラスチック材に対して、必要に応じてUVオゾン処理、またはコロナ処理を行なうこともできる。なお、カーボン黒色顔料や他の顔料を含有させた合成樹脂フィルムは、内部に微細な有色粒子を含むため、基板の厚さが薄くなっていくと微細な有色粒子の大きさが基板の平面性に与える影響が相対的に大きくなる。そのため、黒色樹脂基板には、20μm以上、30μm以下のプラスチック材を用いることが好ましい。
【0039】
シャッタ羽根全体の厚さは、強度を向上させ、シャッタ駆動を高速にするために、一実施形態では60μm以上、別の実施形態では80μm以上、さらに別の実施形態では90μm以上とすることができる。シャッタ羽根全体の厚さは、シャッタユニットの薄型化を達成するために、一実施形態では140μm以下、別の実施形態では120μm以下、さらに別の実施形態では100μm以下とすることができる。
【0040】
(繊維強化積層体の硬化成形方法)
次に、本実施形態の繊維強化積層体を好適に形成するための硬化成形方法が説明される。本実施形態の硬化成形方法は、特に、図1に示すような、基板を中間層として2枚の炭素繊維強化樹脂で両側から挟み積層された構成の繊維強化積層体の硬化成型方法である。硬化成形方法としては、例えばホットプレス法やオートクレーブ法が適用可能である。本実施形態では、特にホットプレス法を適用した場合が説明される。
【0041】
まず、炭素繊維強化樹脂層の前駆体として、CFRPプリプレグシートが2枚用いられる。次に、基板となる中間層であるプラスチック材(プラスチックシート)に、黒色粒子としてカーボンブラックが含有されている。
【0042】
プラスチックシートは、準備したCFRPプリプレグシートで挟んだ状態で重ね合わされて積層シートにされる。その後、この積層シートを繊維強化積層体とするために、CFRPプリプレグシートの表面に対してポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートなどからなる離型性フィルムが重ね合わされる。
【0043】
離型性フィルムが重ね合わされた積層シートは、ホットプレス機の加圧板の間に配置され、120℃以上、140℃以下の温度で、1時間以上、2時間以下、0.1MPa以上、0.5MPa以下の圧力となるように条件を設定して加熱硬化成形される。この加熱硬化成形によってCFRPプリプレグシート中における未硬化マトリックス樹脂の粘度が低下して、黒色樹脂基板表面に形成された凹部にマトリックス樹脂が流入し、その後マトリックス樹脂が重合して三次元状に架橋することにより、マトリックス樹脂の硬化反応が進行し、積層して各層が密着した積層体からなる繊維強化積層体が形成されてもよい。
【0044】
その後、ホットプレス機の加熱が停止され、徐冷される。ホットプレス機の加圧板から積層シートを取り出す温度としては、一実施形態では50℃以下とすることができる。取り出した繊維強化積層体の両面に配置した離型シートが取り除かれ、シャッタ羽根を形成するための繊維強化積層体が得られる。
【0045】
硬化成形後の繊維強化積層体は、所望の輪郭形状となるように打ち抜き加工され、シャッタ羽根に仕上げられる。打ち抜き方法としては、ワイヤーカット、プレス抜きなどの方法があるが、一実施形態では、打ち抜き方法は、低コスト性を考慮し、プレス抜きである。
【0046】
以上のように、本実施形態となる黒色樹脂基板は、繊維強化樹脂積層体を構成する各層のうち、最も光学濃度が高い層である。この繊維強化積層体がシャッタ羽根として使用された場合、シャッタ羽根として必要な剛性、遮光性を実現することが可能となる。また、黒色樹脂基板と炭素繊維樹脂層との間に、剛性の少ない黒色塗装を含まないため、繊維強化積層体の厚みが一定である場合には、従来のシャッタ羽根よりも高剛性、かつ、軽量なシャッタ羽根を提供できる。結果として、超高速シャッタとして使用された場合の駆動耐久特性が向上するシャッタ羽根用繊維強化積層体を提供することが可能となる。
【0047】
以下に、実施例により本発明の実施形態をさらに説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)
図1(A)に、本実施形態に係る繊維強化積層体の基本構成の断面図を表す。
【0049】
まず、シャッタ羽根材を構成する炭素繊維強化樹脂層として、炭素繊維が連続で一方向に揃えられており、エポキシ樹脂を主成分とするCFRPプリプレグシート(三菱レイヨン製、商品名パイロフィルプリプレグCFRP、厚さが32μm、硬化推奨温度130℃)が用いられる。このCFRPプリプレグシートに使用されている炭素繊維の単繊維の直径(短手方向の直径)は7μmである。
【0050】
次に、基板を構成するプラスチック材として、二軸延伸加工された黒色PETシート(厚さ25μm、光学濃度6以上、ポリエステルフィルム#25 - X36東レ株式会社製)が用いられる。
【0051】
次に、上記のPETシートとCFRPプリプレグシート(CFRP)とが、CFRP/PET/CFRPの層構成となるように重ね合わされて積層シートが形成された。また、CFRPプリプレグシートは互いの繊維方向が平行になるように、面対称に配置される。さらに、離型シートとして厚さ50μmのPTFEシートが上記積層シートの両面に重ね合わされる。
【0052】
離型シートを重ね合わされた積層シートがホットプレス機にセットされ、圧力0.3MPaとなるように圧力が調整された。その後、上記の加圧成形条件下において、室温から毎分1.5℃の昇温速度で130℃になるまで昇温され、130℃において2時間保持された。その後、ホットプレス機の加熱が停止され、徐冷されて、積層体である積層シートの温度が50℃以下であることを確認して積層シートは取り出される。
【0053】
その後、積層シート表層に配置した離型シートが取り除かれると、カメラ用シャッタ羽根を得るための繊維強化積層体が得られる。所定の枚数のカメラ用シャッタ羽根を得るために、同様の方法で繊維強化積層体が作製される。この繊維強化積層体は、所定の形状のシャッタ羽根となるようにプレスによる打ち抜き加工を所定の取り個数相当分行なわれ、カメラ用シャッタ羽根が得られる。
【0054】
さらに、本実施例で作製したシャッタ羽根は、先幕シャッタ羽根、後幕シャッタ羽根として、それぞれに複数枚用意され、図2に示されるようなシャッタ装置(フォーカルプレーンシャッタ)に組み込まれる。このシャッタ装置がカメラに搭載され、1/6500秒や1/8000秒のシャッタ速度で駆動耐久試験が行われると駆動時において撮像素子と接触することが無く、たわみが少なく充分な曲げ剛性を有していることが確認される。
【0055】
(実施例2)
図1(B)に、本実施形態に係る繊維強化積層体の樹脂基材と炭素繊維強化樹脂層に含まれるマトリックス樹脂との接着強度を向上した構成の断面図を表す。
【0056】
基板を構成するプラスチック材として、二軸延伸加工された黒色PETシート(厚さ25μm、光学濃度6以上、ポリエステルフィルム#25 - X36東レ株式会社製)が用いられる。PETシートに対して、基材と炭素繊維強化樹脂層に含まれるマトリックス樹脂との接着強度を向上することを目的として、PETシート表面のUVオゾン処理、を実施し、表面洗浄・表面改質をして
表面改質層43を形成した。その後、実施例1と同様に、繊維強化積層体を硬化形成することができる。
【0057】
(実施例3)
図1(C)に、本実施形態に係る繊維強化積層体の樹脂基材と炭素繊維強化樹脂層に含まれるマトリックス樹脂との接着強度を更に向上した構成の断面図を表す。
【0058】
基板を構成するプラスチック材として、二軸延伸加工された黒色PETシート(厚さ25μm、光学濃度6以上、ポリエステルフィルム#25 - X36東レ株式会社製)が用いられる。PETシートに対して、基材と炭素繊維強化樹脂層に含まれるマトリックス樹脂との接着強度を向上することを目的として、形成すべき微細凹凸構造と逆の形状を有する型を用い、熱や圧力を加えてPETシート表面に微細凹凸構造46を転写した。本実施例では、安価で大面積加工の安定製造の観点から、微細凹凸構造を有するスタンパを圧接してPETシートに微細凹凸を転写する方法を用いた。微細凹凸形状としては、特に制限はないが、目的に応じて適宜に選択することができる。例えば、本実施例においては円柱形状で、外径10μm、凸間隔は10μm、凸の高さは5μmとした。なお微細凹凸形状の寸法範囲としては、外径5~20μmが好ましく、外径10~15μmが特に好ましい。また、隣り合う凸同士の間隔は、5~20μmが好ましく、10~15μmが特に好ましい。また、凸の高さは、5μm~15μmが好ましく、5μm~10μmが特に好ましい。なお、更に簡易的に基板表面を粗すのであれば、サンドブラストにてランダム形状にしても良い。
【0059】
その後、実施例1と同様に、繊維強化積層体を硬化形成することができる。このとき、凹凸構造が入射光を散乱させることによって、遮光性も向上することができる。
【0060】
以上、本発明の一例として各実施例を挙げて具体的に説明したが、本発明は上述した形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0061】
10:シャッタ装置(フォーカルプレーンシャッタユニット)
11:先幕
12:後幕
13~21:シャッタ羽根
22:スペーサー
23:カバー板
24:シャッタ地板
25:仕切り板
26:先幕支持アーム
27:先幕駆動アーム
28:後幕支持アーム
29:後幕駆動アーム
30、31:案内溝
41:炭素繊維強化樹脂層
42:基板(プラスチック層)

図1
図2
図3