(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094105
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】ロータ、および回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20230628BHJP
【FI】
H02K1/276
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209375
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 篤司
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA10
5H622CA14
5H622CB03
5H622CB05
5H622DD01
5H622DD02
5H622PP12
5H622PP19
5H622PP20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マグネットを安定して保持できるロータ、および回転電機を提供する。
【解決手段】本発明のロータの一つの態様は、中心軸線を中心として軸方向に沿って延び、軸方向に延びる複数のマグネット孔38が設けられるロータコア32と、マグネット孔に配置される複数のマグネット36を有する複数の磁極と、を備える。複数のマグネット孔は、径方向に延びて磁極の中央を通る磁極中心線Lに対し周方向に対称に配置される一対の第1マグネット孔38Aを含む。マグネット孔の内周面は、収容するマグネットに対し磁極中心線側に位置する第1内側面51を有する。第1内側面は、凹状に湾曲する第1湾曲部51aと、第1湾曲部の径方向内側の端部に繋がり凹状に湾曲する第2湾曲部51bと、を有する。第1湾曲部の曲率半径は、第2湾曲部の曲率半径より大きい。第1内側面は、第1湾曲部において磁極中心線に最も近接する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線を中心として軸方向に沿って延び、軸方向に延びる複数のマグネット孔が設けられるロータコアと、
前記マグネット孔に配置される複数のマグネットを有する複数の磁極と、を備え、
複数の前記マグネット孔は、径方向に延びて前記磁極の中央を通る磁極中心線に対し周方向に対称に配置される一対の第1マグネット孔を含み、
前記マグネット孔の内周面は、収容する前記マグネットに対し前記磁極中心線側に位置する第1内側面を有し、
前記第1内側面は、
凹状に湾曲する第1湾曲部と、
前記第1湾曲部の径方向内側の端部に繋がり凹状に湾曲する第2湾曲部と、を有し、
前記第1湾曲部の曲率半径は、前記第2湾曲部の曲率半径より大きく、
前記第1内側面は、前記第1湾曲部において前記磁極中心線に最も近接する、
ロータ。
【請求項2】
前記第1湾曲部の曲率半径は、前記第2湾曲部の曲率半径の1.5倍以上である、
請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記第1マグネット孔の内周面は、
周方向に沿って直線状に延び、収容される前記マグネットに対し径方向内側に位置する第2内側面と、
前記第1内側面と前記第2内側面との間に位置し径方向外側に突出する突起部と、を有し、
前記第1内側面は、前記第2湾曲部と前記突起部との間を繋ぎ凹状に湾曲する第3湾曲部を有し、
前記第2湾曲部の曲率半径は、前記第3湾曲部の曲率半径より大きく、
前記第1内側面は、前記第2湾曲部において、前記中心軸線に最も近接する、
請求項1又は2に記載のロータ。
【請求項4】
前記第2湾曲部の曲率半径は、前記第3湾曲部の曲率半径の1.5倍以上である、
請求項3に記載のロータ。
【請求項5】
複数の前記マグネット孔は、
前記磁極中心線に対し周方向に対称に配置される一対の内側マグネット孔と、
前記内側マグネット孔の径方向外側に配置され前記磁極中心線に対し周方向に対称に配置される一対の外側マグネット孔と、を含み、
前記内側マグネット孔、又は前記外側マグネット孔の少なくとも一方が、前記第1マグネット孔である、
請求項1~4の何れか一項に記載のロータ。
【請求項6】
前記内側マグネット孔のみが前記第1マグネット孔であり、
前記外側マグネット孔の内周面は、収容する前記マグネットに対し前記磁極中心線側に位置し径方向に沿って直線状に延びる直線部を有する、
請求項5に記載のロータ。
【請求項7】
複数の前記マグネット孔は、一対の前記第1マグネット孔に対し径方向外側に配置され前記磁極中心線と直交して延びる第2マグネット孔を含む、
請求項1~5の何れか一項に記載のロータ。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載のロータと、
前記ロータの径方向外側に配置されるステータと、を備える、
回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ、および回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、又はハイブリッド自動車などの車両に搭載される駆動用の回転電機の開発が各所で進められている。これらの回転電機は、要求される回転速度が速いため、マグネットを保持するロータコアに大きな力が付与される。このため、高速回転時にも安定したマグネット保持を実現できるロータコアが求められる。特許文献1には、マグネットがV字に配置される場合において、ブリッジ部における応力を緩和する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のロータコアには、ブリッジ部の縁に角部が設けられていた。このため、ロータが高速回転してブリッジ部に大きな引張応力が付与される場合に、当該角部への応力集中が発生してブリッジ部に損傷が生じる虞があった。
【0005】
本発明は、マグネットを安定して保持できるロータ、および回転電機を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のロータの一つの態様は、中心軸線を中心として軸方向に沿って延び、軸方向に延びる複数のマグネット孔が設けられるロータコアと、前記マグネット孔に配置される複数のマグネットを有する複数の磁極と、を備える。複数の前記マグネット孔は、径方向に延びて前記磁極の中央を通る磁極中心線に対し周方向に対称に配置される一対の第1マグネット孔を含む。前記マグネット孔の内周面は、収容する前記マグネットに対し前記磁極中心線側に位置する第1内側面を有する。前記第1内側面は、凹状に湾曲する第1湾曲部と、前記第1湾曲部の径方向内側の端部に繋がり凹状に湾曲する第2湾曲部と、を有する。前記第1湾曲部の曲率半径は、前記第2湾曲部の曲率半径より大きい。前記第1内側面は、前記第1湾曲部において前記磁極中心線に最も近接する。
【0007】
本発明の回転電機の一つの態様は、前記ロータと、前記ロータの径方向外側に配置されるステータと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、マグネットを安定して保持できるロータ、および回転電機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態の回転電機の断面模式図である。
【
図2】
図2は、一実施形態のロータ30の断面図である。
【
図3】
図3は、
図2の部分拡大図であって、1つの磁極を示す図である。
【
図4】
図4は、
図3の部分拡大図であって、内側マグネット孔(第1マグネット孔)の第1内側面の近傍を示す図である。
【
図5】
図5は、変形例のロータの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
各図には適宜、中心軸線Jを示している。中心軸線Jは、以下の実施形態における回転電機の中心を通る仮想線である。各図に適宜示すZ軸は、中心軸線Jが延びる方向を示している。以下の説明においては、中心軸線Jの軸方向、すなわちZ軸と平行な方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸線Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸線Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0011】
適宜図に示す矢印θは、周方向を示している。以下の説明においては、軸方向から見て中心軸線Jを中心として反時計回りに進む側、すなわち矢印θが向く側(+θ側)を「周方向一方側」と呼び、時計回りに進む側、すなわち矢印θが向く側と逆側(-θ側)を「周方向他方側」と呼ぶ。
【0012】
(回転電機)
図1は、回転電機10の断面模式図である。
本実施形態の回転電機10は、インナーロータ型の回転電機である。本実施形態において回転電機10は、モータである。回転電機10は、発電機であってもよい。
【0013】
回転電機10は、ロータ30と、ステータ40と、ロータ30、およびステータ40を内部に収容するハウジング9と、を備える。
【0014】
(ステータ)
ステータ40は、ロータ30と隙間を介して対向している。ステータ40は、ロータ30の径方向外側に位置する。ステータ40は、ステータコア41と、インシュレータ42aと、複数のコイル42と、を有する。ステータコア41は、環状のコアバック41aと、コアバック41aから径方向内側に突出する複数のティース41bと、を有する。複数のコイル42は、インシュレータ42aを介して複数のティース41bにそれぞれ取り付けられている。
【0015】
(ロータ)
ロータ30は、軸方向に延びる中心軸線Jを中心として回転可能である。ロータ30は、シャフト31と、ロータコア32と、複数のマグネット36と、を備える。シャフト31は、中心軸線Jを中心として軸方向に延びる円柱状である。
【0016】
ロータ30は、中心軸線Jを中心とする環状のロータコア32と、複数のマグネット36と、シャフト31(
図2において省略)と、を有する。
【0017】
図2は、ロータ30の断面図である。
ロータ30は、周方向に沿って並ぶ複数の磁極3を備える。本実施形態のロータ30は、8個の磁極3を備える。1つの磁極3には、4つのマグネット36が含まれる。1つの磁極3の4つのマグネット36は、磁極中心線Lを中心としてミラー対称に配置される。ここで、磁極中心線Lは、磁極3の周方向中心と中心軸線Jとを通り、径方向に延びる仮想線である。なお、本実施形態において、磁極中心線Lは、主磁束の方向であるd軸と略平行である。
【0018】
(ロータコア)
ロータコア32は、中心軸線Jを中心として軸方向に沿って延びる。ロータコア32は、ロータコア32を軸方向に貫通する中央孔32aを有する。中央孔32aは、中心軸線Jを中心とする略円形である。中央孔32aには、シャフト31(
図1参照)が軸方向に通される。
【0019】
ロータコア32は、磁性体製である。特に図示しないが、ロータコア32は、軸方向に積層される複数のラミネーションを有する。ラミネーションは、板状の部材である。ラミネーションの板面は、軸方向を向く。ラミネーションは、中心軸線Jを中心とする略円環板状である。ラミネーションは、例えば電磁鋼板である。
【0020】
ロータコア32には、複数のマグネット孔38が設けられる。各マグネット孔38は、ロータコア32のうち中央孔32a以外の部分に配置される。より詳細には、軸方向から見たときに、各マグネット孔38は、中央孔32aの径方向外側かつ周方向に間隔をあけて配置される。各マグネット孔38は、ロータコア32を軸方向に貫通する。マグネット孔38は、一様な形状で軸方向に延びる。1つのマグネット孔38には、それぞれ、1つのマグネット36が配置される。マグネット36は、樹脂モールド、かしめ、接着等の公知の手段によってマグネット孔38の内側面に固定される。
【0021】
図3は、
図2の1つの磁極3の周囲を示す部分拡大図である。
複数のマグネット孔38は、内側マグネット孔(第1マグネット孔)38Aと、外側マグネット孔38Bと、を含む。外側マグネット孔38Bは、内側マグネット孔38Aの径方向外側に配置される。内側マグネット孔38Aの数と外側マグネット孔38Bの数とは、同数である。
【0022】
一対の内側マグネット孔38Aは、磁極中心線Lに対して周方向に対称に配置される。同様に一対の外側マグネット孔38Bは、磁極中心線Lに対して周方向に対称に配置される。外側マグネット孔38Bは、内側マグネット孔38Aの径方向外側に配置される。
【0023】
磁極中心線Lに対して配置される一対の内側マグネット孔38Aおよび一対の外側マグネット孔38Bに配置される合計4つのマグネット36は、1つの磁極3を構成する。以下の説明において、1つの磁極3を構成するマグネット36が配置される4つのマグネット孔38を、マグネット孔38の組Sと呼ぶ。
【0024】
1つの組Sの一対の内側マグネット孔38Aのうち、磁極中心線Lの周方向一方側(+θ側)の一方は、軸方向から見て、径方向外側へ向かうに従い周方向一方側(+θ側)に向けて延びる。1つの組Sの一対の内側マグネット孔38Aのうち、磁極中心線Lの周方向他方側(-θ側)の他方は、軸方向から見て、径方向外側へ向かうに従い周方向他方側(-θ側)に向けて延びる。すなわち、1つの組Sに含まれる一対の内側マグネット孔38Aの周方向の間の距離は、径方向外側に向かうにつれて、徐々に大きくなる。
【0025】
1つの組Sの一対の外側マグネット孔38Bのうち、磁極中心線Lの周方向一方側(+θ側)の一方は、軸方向から見て、径方向外側へ向かうに従い周方向一方側(+θ側)に向けて延びる。1つの組Sの一対の外側マグネット孔38Bのうち、磁極中心線Lの周方向他方側(-θ側)の他方は、軸方向から見て、径方向外側へ向かうに従い周方向他方側(-θ側)に向けて延びる。すなわち、1つの組Sに含まれる一対の外側マグネット孔38Bの周方向の間の距離は、径方向外側に向かうにつれて、徐々に大きくなる。
【0026】
磁極中心線Lに対して対称に配置される一対の内側マグネット孔38Aの間には、ロータコア32の第1ブリッジ部33が設けられる。同様に、磁極中心線Lに対して対称に配置される一対の外側マグネット孔38Bの間には、ロータコア32の第2ブリッジ部34が設けられる。すなわち、ロータコア32は、第1ブリッジ部33および第2ブリッジ部34を有する。第1ブリッジ部33および第2ブリッジ部34は、それぞれ磁極中心線Lに沿って径方向に延びる。第1ブリッジ部33および第2ブリッジ部34の周方向の中心は、軸方向から見て、磁極中心線Lと重なっている。
【0027】
内側マグネット孔38A、および外側マグネット孔38Bには、フラックスバリア部38eが設けられる。フラックスバリア部38eは、軸方向から見て、収容するマグネット36の両側部に配置される。本明細書において「フラックスバリア部」とは、磁束の流れを抑制できる部分である。つまり、フラックスバリア部38eには、磁束が通りにくい。フラックスバリア部38eは、磁束の流れを抑制できるならば、特に限定されず、空隙部を含んでもよいし、樹脂部等の非磁性部を含んでもよい。本実施形態においてフラックスバリア部38eは、ロータコア32を軸方向に貫通する孔によって構成された空隙部である。
【0028】
マグネット36は、各マグネット孔38に1つずつ配置される。マグネット36の種類は、特に限定されない。マグネット36は、例えば、ネオジム磁石であってもよいし、フェライト磁石であってもよい。本実施形態では、マグネット36は、軸方向に長い直方体状である。したがって、マグネット36は、軸方向から見て矩形状である。マグネット36は、例えば、ロータコア32の軸方向一端部から軸方向他端部まで延びる。なお、マグネット36の軸方向の寸法は、ロータコア32の軸方向の寸法(マグネット孔38の軸方向の寸法)よりも短くてもよい。また、マグネット36の形状は、上述のものに限られない。
【0029】
1つの磁極3には4つのマグネット36が配置される。以下の説明において、内側マグネット孔38Aに配置されるマグネット36を内側マグネット36Aと呼ぶ。同様に、外側マグネット孔38Bに配置されるマグネット36を外側マグネット36Bと呼ぶ。磁極3には、2つの内側マグネット36Aと2つの外側マグネット36Bとが含まれる。
【0030】
1つの磁極3において、2つの内側マグネット36Aは、磁極中心線Lに対し周方向に対称に配置される。1つの磁極3において、2つの内側マグネット36Aは、径方向外側に向かうに従い互いに離間する。1つの磁極3において、2つの外側マグネット36Bは、内側マグネット36Aの径方向内側において磁極中心線Lに対し周方向に対称に配置される。1つの磁極3において、2つの外側マグネット36Bは、径方向外側に向かうに従い互いに離間する。
【0031】
内側マグネット36A、および外側マグネット36Bは、それぞれ厚さ方向を磁化方向とする。1つの磁極3を構成する一対の内側マグネット36A、および一対の外側マグネット孔38Bは、それぞれ径方向外側に同極を向ける。例えば、内側マグネット36Aの径方向外側を向く面がN極(又はS極)である場合、外側マグネット孔38Bの径方向外側を向く面もN極(又はS極)である。
【0032】
(内側マグネット孔)
次に内側マグネット孔38Aおよびその周囲の具体的な形状について説明する。
内側マグネット孔38Aの内周面は、第1内側面51と、第2内側面52と、第3内側面53と、第4内側面54と、一対の突起部58、59と、を有する。
【0033】
第1内側面51は、磁極中心線L側に配置される一方のフラックスバリア部38eの内側面である。第1内側面51は、内側マグネット孔38Aが収容する内側マグネット36Aに対し磁極中心線L側に位置する。
【0034】
第2内側面52は、周方向に沿って直線状に延びる。第2内側面52は、径方向外側を向く。すなわち、第2内側面52は、内側マグネット孔38Aに収容される内側マグネット36Aに対し径方向内側に位置する。
【0035】
第3内側面53は、周方向に沿って直線状に延びる。第3内側面53は、径方向内側を向く。すなわち、第3内側面53は、内側マグネット孔38Aに収容される内側マグネット36Aに対し径方向外側に位置する。第3内側面53は、第2内側面52と対向する。内側マグネット36Aは、第2内側面52と第3内側面53との間に配置される。
【0036】
第4内側面54は、磁極中心線L側と反対側に位置するフラックスバリア部38eの内側面である。第4内側面54は、内側マグネット孔38Aが収容する内側マグネット36Aに対し磁極中心線Lの反対側に位置する。
【0037】
突起部58、59は、内側マグネット孔38Aの内周面に一対設けられる。一対の突起部58、59は、軸方向から見て、第2内側面52の両端部に配置される。したがって、一対の突起部58、59のうち、一方の突起部59は第1内側面51と第2内側面52との間に位置し、他方の突起部58は第4内側面54と第2内側面52との間に位置する。一対の突起部58、59は、第2内側面52側から第3内側面53側に向かって突出する。すなわち、一対の突起部58、59は、径方向外側に突出する。一対の突起部58、59は、軸方向に沿って筋状に延びる。内側マグネット36Aは、一対の突起部58、59の間に配置される。
【0038】
図4は、
図3の部分拡大図であって、内側マグネット孔38Aの第1内側面51の近傍を示す図である。
内側マグネット孔38Aの第1内側面51は、磁極中心線L側に向かって凹状に湾曲する。したがって、一対の内側マグネット孔38Aの間に配置される第1ブリッジ部33は、磁極中心線Lを中心として左右対称にくびれた形状を有する。
【0039】
内側マグネット孔38Aの第1内側面51は、第1湾曲部51aと第2湾曲部51bと第3湾曲部51cとを有する。第1湾曲部51a、第2湾曲部51b、および第3湾曲部51cは、凹状に湾曲する。第1湾曲部51a、第2湾曲部51b、および第3湾曲部51cの曲率半径は、互いに異なる。第1湾曲部51a、第2湾曲部51b、および第3湾曲部51cは、径方向内側に向かってこの順で連なる。第2湾曲部51bは、第1湾曲部51aの径方向内側に繋がる。第3湾曲部51cは、第2湾曲部51bと突起部59との間を繋ぐ。
【0040】
以下の説明において、第1湾曲部51aと第2湾曲部51bとの境界部を第1境界部55aと呼ぶ。第2湾曲部51bと第3湾曲部51cとの境界部を第2境界部55bと呼ぶ。第3湾曲部51cと突起部59との境界部を第3境界部55cと呼ぶ。また、第1湾曲部51aと第3内側面53との境界部を第4境界部55dと呼ぶ。
【0041】
本実施形態において、第1湾曲部51aの曲率半径R1は、第2湾曲部51bの曲率半径R2より大きい。また、第2湾曲部51bの曲率半径R2は、第3湾曲部51cの曲率半径R3より大きい。したがって、第1内側面51は、第1湾曲部51aにおいて最も曲率半径が大きくなる。一例として、本実施形態の第1湾曲部51aの曲率半径R1は3.5mmであり、第2湾曲部51bの曲率半径R2は2.0mmであり、第3湾曲部51cの曲率半径R3は0.8mmである。
【0042】
第1内側面51は、第1湾曲部51aにおいて磁極中心線Lに最も近接する。したがって、第1ブリッジ部33が最も細くなる最細部33aは、一対の内側マグネット孔38Aの第1湾曲部51a同士の間に位置する。また、第1湾曲部51aと第2湾曲部51bとの境界部(第1境界部55a)は、第1ブリッジ部33の最細部33aより径方向内側に位置する。
【0043】
モータ1に通電してロータ30を回転させると、マグネット36にはステータ40のコイル42から引き寄せられる磁力と、回転に伴う遠心力が付与される。したがって、モータ1の駆動時にロータ30のマグネット36には、径方向外側に向かう力が付与される。マグネット36に付与される径方向外側の力は、ロータコア32の第1ブリッジ部33によって支持される。したがって、モータ1の起動時に第1ブリッジ部33には、引張応力が付与される。
【0044】
本実施形態によれば、第1内側面51の全体が凹状に湾曲することで、第1内側面が直線的に延びる場合と比較して角部分が設けられることがない。このため、第1内側面51の全体に応力を分散させることができ、応力集中が生じることを抑制できる。これにより、第1ブリッジ部33の強度を高めることができ、ロータ30を高回転として、内側マグネット36Aに大きな力が付与されても、ロータコア32によって安定的に内側マグネット36Aを支持できる。
【0045】
本実施形態によれば、第1ブリッジ部33は、最も曲率半径が大きい第1湾曲部51a同士の間に位置する。このため、最も近接する部分で、大きな曲率半径を確保して応力集中を抑制でき、第1ブリッジ部33の強度を高め、ロータコア32によって安定的にマグネット36を支持できる。
【0046】
また、本実施形態の第1内側面51によれば、第1湾曲部51aの径方向内側に第1湾曲部51aより曲率半径の小さな第2湾曲部51bが設けられる。このため、第1湾曲部51aを十分に大きくしつつ第1内側面51の全体を滑らかに湾曲させて第2内側面52と突起部59との間を繋ぐことができる。これにより、第1内側面51に角部を設けることがなく、第1ブリッジ部33に応力集中が生じることを抑制できる。
【0047】
本実施形態において、第1湾曲部51aの曲率半径R1は、第2湾曲部51bの曲率半径R2の1.5倍以上であることが好ましく、2.0倍以上であることがより好ましい。第1湾曲部51aの曲率半径R1と第2湾曲部51bの曲率半径R2との比率を上述の範囲とすることで、第1ブリッジ部33の応力集中をより効果的に抑制できる。
【0048】
本実施形態において、第1内側面51は、第2湾曲部において、中心軸線Jに最も近接する。したがって、第2湾曲部51bと第3湾曲部51cとの境界部(第2境界部55b)は、第1内側面51が径方向内側に最も近づく内端部55pより内側マグネット36A側に位置する。
【0049】
内側マグネット36Aが径方向外側に向かう力は、一対の内側マグネット孔38Aの間に挟まれる領域(第1ブリッジ部33)によって支持される。したがって、内側マグネット36Aの支持に伴う引張応力は、一対の内側マグネット孔38Aの間に挟まれる領域に付与される。すなわち、引張応力が付与される領域は、第1内側面51が径方向内側に最も近づく内端部55pより磁極中心線L側の領域である。本実施形態によれば、第2湾曲部51bより曲率半径が大きい第3湾曲部51cを、引張応力が付与されない内端部55pより内側マグネット36A側に配置できる。これにより、第3湾曲部51cに応力が集中することを抑制することができる。
【0050】
本実施形態において、第2湾曲部51bの曲率半径R2は、第3湾曲部51cの曲率半径R3の1.5倍以上であることが好ましく、2.0倍以上であることがより好ましい。第2湾曲部51bの曲率半径R2と第3湾曲部51cの曲率半径R3との比率を上述の範囲とすることで、第1ブリッジ部33の応力集中をより効果的に抑制できる。
【0051】
突起部59は、磁極中心線L側を向く第1側面59aと、内側マグネット36A側を向く第2側面59bと、を有する。第1側面59aは、軸方向から見て直線状に延びる。第1側面59aは、第3境界部55cにおいて第3湾曲部51cに滑らかに接続される。これにより、突起部59と第1内側面51との境界部分に角部が設けられることがなく、ロータコア32に応力集中が生じることを抑制できる。
【0052】
突起部59の第2側面59bは、軸方向から見て直線状に延びる。第2側面59bは、内側マグネット36Aの側面と対向する。第2側面59bは、内側マグネット36Aの側面と接触してもよい。第2側面59bの延長線上には、第3内側面53と第1湾曲部51aとの境界部(第4境界部55d)が配置される。
【0053】
(外側マグネット孔)
次に外側マグネット孔38Bおよびその周囲の具体的な形状について
図3を基に説明する。
外側マグネット孔38Bの内周面は、第5内側面61と、第6内側面62と、第7内側面63と、第8内側面64と、一対の突起部68、69と、を有する。
【0054】
第5内側面61は、磁極中心線L側に配置される一方のフラックスバリア部38eの内側面である。第5内側面61は、外側マグネット孔38Bが収容する外側マグネット36Bに対し磁極中心線L側に位置する。
【0055】
第6内側面62は、周方向に沿って直線状に延びる。第6内側面62は、径方向外側を向く。すなわち、第6内側面62は、外側マグネット孔38Bに収容される外側マグネット36Bに対し径方向内側に位置する。
【0056】
第7内側面63は、周方向に沿って直線状に延びる。第7内側面63は、径方向内側を向く。すなわち、第7内側面63は、外側マグネット孔38Bに収容される外側マグネット36Bに対し径方向外側に位置する。第7内側面63は、第6内側面62と対向する。外側マグネット36Bは、第6内側面62と第7内側面63との間に配置される。
【0057】
第8内側面64は、磁極中心線L側と反対側に位置するフラックスバリア部38eの内側面である。第8内側面64は、外側マグネット孔38Bが収容する外側マグネット36Bに対し磁極中心線Lの反対側に位置する。
【0058】
突起部68、69は、外側マグネット孔38Bの内周面に一対設けられる。一対の突起部68、69は、軸方向から見て、第6内側面62の両端部に配置される。したがって、一対の突起部68、69のうち、一方の突起部69は第5内側面61と第6内側面62との間に位置し、他方の突起部68は第8内側面64と第6内側面62との間に位置する。一対の突起部68、69は、第6内側面62側から第7内側面63側に向かって突出する。すなわち、一対の突起部68、69は、径方向外側に突出する。一対の突起部68、69は、軸方向に沿って筋状に延びる。外側マグネット36Bは、一対の突起部68、69の間に配置される。
【0059】
外側マグネット孔38Bの第5内側面61は、磁極中心線L側の端部において磁極中心線Lと平行に延びる直線部61aを有する。したがって、一対の外側マグネット孔38Bの間に配置される第2ブリッジ部34は、磁極中心線Lを中心として略一様な幅寸法で径方向に延びる。すなわち、本実施形態によれば、外側マグネット孔38B内周面は、収容する外側マグネット36Bに対し磁極中心線L側に位置し径方向に沿って直線状に延びる直線部61aを有する。
【0060】
一対の外側マグネット孔38Bの間に配置される第2ブリッジ部34は、外側マグネット36Bに付与される径方向外側に向かう力を支持する。一方で、第1ブリッジ部33は、外側マグネット36Bのみならず内側マグネット36Aに付与される径方向外側に向かう力を支持する。すなわち、第2ブリッジ部34に付与される引張応力は、第1ブリッジ部33に付与される引張応力より小さい。
【0061】
本実施形態によれば、第2ブリッジ部34の縁部に直線部61aを設けて、角部に応力が集中しても外側マグネット36Bを十分に保持できる程度の第2ブリッジ部34の強度を確保できる。また、本実施形態によれば、第5内側面61に直線部61aを設けることで、第5内側面61全体を湾曲形状にする場合と比較して、外側マグネット孔38Bの成形に関わる金型形状を簡素化できる。これにより、ロータコア32を低コストで製造できる。
【0062】
本明細書において、磁極中心線Lに対し周方向に対称に配置される一対のマグネット孔であって、内側マグネット孔38Aと同様に湾曲する第1内側面51を有するマグネット孔を第1マグネット孔と呼ぶ。すなわち、本実施形態のロータコア32では、内側マグネット孔38A、および外側マグネット孔38Bのうち、内側マグネット孔38Aのみが第1マグネット孔である。なお、内側マグネット孔38Aのみならず外側マグネット孔38Bについても、磁極中心線L側を第1内側面51と同様に湾曲させた第1マグネット孔としてもよい。この場合は、外側マグネット孔38Bの間の第2ブリッジ部34について強度を高めることができる。すなわち、内側マグネット孔38A、又は外側マグネット孔38Bの少なくとも一方が、第1マグネット孔であれば、上述したような一定の効果を得ることができる。
【0063】
<変形例>
次に上述の実施形態に採用可能な変形例について説明する。なお、以下に説明する各変形例の説明において、既に説明した実施形態又は変形例と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0064】
図5は、本変形例のロータ130の部分断面図である。
本変形例のロータ130は、上述の実施形態と比較して、1つの磁極103をなす複数(3個)のマグネット136の構成、およびこれらマグネット136を収容するマグネット孔138の構成が主に異なる。
【0065】
本変形例のロータ130は、上述の実施形態と同様に、ロータコア132と、複数のマグネット136と、を有する。本変形例において、複数のマグネット136は、3個で1個の磁極103を構成する。ロータ130は、複数の磁極103を備える。
【0066】
複数のマグネット136は、内側マグネット36Aと外側マグネット136Bとを含む。本変形例において、1つの磁極103には、2つの内側マグネット36Aと1つの外側マグネット136Bとが含まれる。内側マグネット36Aは、上述の実施形態と同様の構成を有する。
【0067】
ロータコア132には、複数のマグネット孔138が設けられる。各マグネット孔138は、ロータコア132を軸方向に貫通する。1つのマグネット孔138には、それぞれ、1つのマグネット136が配置される。
【0068】
複数のマグネット孔138は、内側マグネット孔(第1マグネット孔)38Aと外側マグネット孔(第2マグネット孔)138Bとを含む。実施形態の内側マグネット孔38Aの数は、外側マグネット孔138Bの数の2倍である。これら3つのマグネット孔138に配置される3つのマグネット136は、1つの磁極103を構成する。1つの磁極103を構成する3つのマグネット136が配置される3つのマグネット孔138を、マグネット孔138の組Sと呼ぶ。
【0069】
1つの組Sの一対の内側マグネット孔38Aのうち、磁極中心線Lの周方向一方側(+θ側)の一方は、軸方向から見て、径方向外側へ向かうに従い周方向一方側(+θ側)に向けて延びる。1つの組Sの一対の内側マグネット孔38Aのうち、磁極中心線Lの周方向他方側(-θ側)の他方は、軸方向から見て、径方向外側へ向かうに従い周方向他方側(-θ側)に向けて延びる。すなわち、1つの組Sに含まれる一対の内側マグネット孔38Aの周方向の間の距離は、径方向外側に向かうにつれて、徐々に大きくなる。一方で、外側マグネット孔138Bは、周方向において、一対の内側マグネット孔38Aの各径方向外側の端部間に配置される。外側マグネット孔138Bは、一対の内側マグネット孔38Aに対し径方向外側に配置される。外側マグネット孔138Bは、磁極中心線Lと直交して延びる。
【0070】
本変形例の内側マグネット孔38Aは、上述の実施形態と同様の構成を有する。すなわち、本変形例のロータコア132において、内側マグネット孔38Aは、上述の実施形態と同様の第1内側面51を有する。このため、本変形例によれば、内側マグネット孔38A同士の間に配置される第1ブリッジ部33の強度を高め、マグネット136を安定的に保持できる。
【0071】
本発明が適用される回転電機は、モータに限られず、発電機であってもよい。回転電機の用途は、特に限定されない。回転電機は、例えば、車両を駆動させる用途以外の用途で車両に搭載されてもよいし、車両以外の機器に搭載されてもよい。また、回転電機が用いられる際の姿勢は、特に限定されない。
【0072】
以上に、本発明の実施形態およびその変形例を説明したが、実施形態および変形例における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0073】
3…磁極、10…回転電機、30…ロータ、32…ロータコア、36…マグネット、38、138…マグネット孔、38A…内側マグネット孔(第1マグネット孔)、38B…外側マグネット孔、138B…外側マグネット孔(第2マグネット孔)、40…ステータ、51…第1内側面、51a…第1湾曲部、51b…第2湾曲部、51c…第3湾曲部、52…第2内側面、58、59…突起部、61…直線部61a、L…磁極中心線、J…中心軸線