(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094130
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】貯湯給湯システム
(51)【国際特許分類】
F24H 15/212 20220101AFI20230628BHJP
【FI】
F24H1/18 302K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209421
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】大西 兼造
【テーマコード(参考)】
3L122
【Fターム(参考)】
3L122AA04
3L122AA14
3L122AA23
3L122AA54
3L122AA63
3L122AA65
3L122AB22
3L122AB34
3L122AB42
3L122BA14
3L122BA32
3L122BA36
3L122BA37
3L122BA43
3L122BA44
3L122BB03
3L122DA02
3L122DA21
3L122EA07
3L122EA42
3L122EA50
(57)【要約】
【課題】学習制御による熱負荷予測機能を有する貯湯給湯システムであって、風呂運転の開始時刻が前倒しされた場合における補助熱源機の使用を極力抑制するようにした貯湯給湯システムを提供する。
【解決手段】水を加熱する主熱源機と、補助熱源機と、湯水を貯湯する貯湯タンクと、制御手段を備え、過去の給湯実績情報に基づいて学習制御により将来の単位時間毎の熱負荷とその予測時刻を予測する熱負荷予測機能を備え、この熱負荷予測機能により予測された単位時間毎の熱負荷に基づいて主熱源機の貯湯運転が制御されるようにした貯湯給湯システムである。
前記熱負荷予測機能は、風呂負荷、シャワー負荷、その他給湯負荷の3種類の熱負荷に分類して予測するように構成されており、風呂運転の開始時刻が風呂負荷の予測時刻よりも前倒しされたと制御手段が判断したときに、風呂負荷とシャワー負荷のそれぞれの予測時刻を前記前倒しの時間だけ前倒しする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を加熱する主熱源機と、補助熱源機と、湯水を貯湯する貯湯タンクと、制御手段を備え、過去の給湯実績情報に基づいて学習制御により将来の単位時間毎の熱負荷とその予測時刻を予測する熱負荷予測機能を備え、この熱負荷予測機能により予測された単位時間毎の熱負荷に基づいて主熱源機の貯湯運転が制御されるようにした貯湯給湯システムにおいて、
前記熱負荷予測機能は、風呂負荷、シャワー負荷、その他給湯負荷の3種類の熱負荷に分類して予測するように構成されており、風呂運転の開始時刻が風呂負荷の予測時刻よりも前倒しされたと制御手段が判断したときに、風呂負荷とシャワー負荷のそれぞれの予測時刻を前記前倒しの時間だけ前倒しすることを特徴とする貯湯給湯システム。
【請求項2】
前記前倒しされた風呂負荷の当初の予測時刻から所定時間以上将来の風呂負荷とシャワー負荷については前倒しの対象外とすることを特徴とする請求項1に記載の貯湯給湯システム。
【請求項3】
予測時刻が前倒しされた風呂負荷とシャワー負荷のうち、主熱源機による貯湯で対処できない第1部分については補助熱源機の運転により給湯し、主熱源機による貯湯で対処できる第2部分については主熱源機の出力を最大出力にして貯湯することを特徴とする請求項1又は2に記載の貯湯給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習制御により給湯実績情報に基づいて将来の単位時間毎の熱負荷を予測する熱負荷予測機能を備えた貯湯給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のハイブリッド給湯機(貯湯給湯システム)は、ヒートポンプ熱源機等の主熱源機と、燃焼式の補助熱源機と、貯湯タンク等を有し、過去の給湯実績に基づく学習制御により、一日の起点時刻(例えば午前3時)毎に、給湯使用の予測熱負荷と予測時刻を計算し、それらと貯湯タンクに保有する熱量(貯湯量)に基づいて貯湯計画(熱負荷予測)を立てている。このとき、給湯使用の予測時刻の所定時間(例えば1時間)前から貯湯を開始し予測時刻までに貯湯を完了するように主熱源機の運転により貯湯タンクに貯湯する。この学習制御では、従来は風呂とシャワーと台所での給湯実績を一括りにして給湯実績情報を蓄積し、その給湯実績情報に基づいて貯湯計画を立てていた。
【0003】
尚、給湯がシャワー用の給湯か、その他シャワー以外の給湯かを判断可能な給湯装置は、特許文献1に記載されている。
また、目標貯湯量として、湯張り目標貯湯量と、非湯張り目標貯湯量を区別して求める貯湯タンク式の給湯熱源装置は、特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-87657号公報
【特許文献2】特許第4208389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
帰宅時刻の前倒し等によって風呂運転の開始時刻が予測時刻よりも前倒しされた場合に、風呂予測負荷とシャワー予測負荷の予測時刻が変更されないため、従来の貯湯給湯システムでは、風呂運転の開始時刻が前倒しされると共に前倒しされると予測される風呂予測負荷やシャワー予測負荷を前倒しすることができず、対応した貯湯運転ができていなかった。この場合、風呂とシャワーに対しては補助熱源機の運転を開始して補助熱源機から給湯するようにしていた。
【0006】
上記のように、風呂運転の開始時刻が予測時刻よりも前倒しされた場合には、燃焼式の補助熱源機の使用率が大きくなり、省エネルギー性が損なわれてしまう。
本発明の目的は、学習制御による熱負荷予測機能を有する貯湯給湯システムであって、風呂運転の開始時刻が前倒しされた場合における補助熱源機の使用を極力抑制するようにした貯湯給湯システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の貯湯給湯システムは、水を加熱する主熱源機と、補助熱源機と、湯水を貯湯する貯湯タンクと、制御手段を備え、過去の給湯実績情報に基づいて学習制御により将来の単位時間毎の熱負荷とその予測時刻を予測する熱負荷予測機能を備え、この熱負荷予測機能により予測された単位時間毎の熱負荷に基づいて主熱源機の貯湯運転が制御されるようにした貯湯給湯システムにおいて、前記熱負荷予測機能は、風呂負荷、シャワー負荷、その他給湯負荷の3種類の熱負荷に分類して予測するように構成されており、風呂運転の開始時刻が風呂負荷の予測時刻よりも前倒しされたと制御手段が判断したときに、風呂負荷とシャワー負荷のそれぞれの予測時刻を前記前倒しの時間だけ前倒しすることを特徴としている。
【0008】
上記の構成によれば、風呂運転の開始時刻が風呂負荷の予測時刻よりも前倒しされたとき、風呂負荷とシャワー負荷のそれぞれの予測時刻を前記前倒しの時間だけ前倒しするため、前倒しされた風呂負荷とシャワー負荷のために主熱源機の貯湯運転の計画を変更し、必要に応じて補助熱源機による給湯も行いつつ、前倒しされた風呂負荷とシャワー負荷に対処することができる。しかも、主熱源機も活用することで補助熱源機の使用を極力抑制することができる。
【0009】
請求項2の貯湯給湯システムは、請求項1の発明において、前記前倒しされた風呂負荷の当初の予測時刻から所定時間以上将来の風呂負荷とシャワー負荷については前倒しの対象外とすることを特徴としている。
上記の構成によれば、前倒しされた風呂運転の開始時刻から所定時間(例えば、3時間)以上将来の風呂予測負荷とシャワー予測負荷については、前倒しされた風呂負荷とは関連のない別件の風呂負荷とシャワー負荷であるとして、学習制御による予測時刻を変更しないため、熱負荷予測機能の性能低下を防止することができる。
【0010】
請求項3の貯湯給湯システムは、請求項1の発明において、予測時刻が前倒しされた風呂負荷とシャワー負荷のうち、主熱源機による貯湯で対処できない第1部分については補助熱源機の運転により給湯し、主熱源機による貯湯で対処できる第2部分については主熱源機の出力を最大出力にして貯湯することを特徴としている。尚、「対処」とは供給の意味である。
【0011】
上記の構成によれば、補助熱源機と主熱源機をフル活用して前倒しされた風呂負荷とシャワー負荷に対処することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明は種々の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る貯湯給湯システムの構成図である。
【
図3】(A)は学習(I)による予測負荷と貯湯計画の説明図、(B)は学習(I)よりも風呂運転が1時間前倒しされたときの予測負荷と貯湯計画の説明図、(C)は学習(I)よりも風呂運転が2時間前倒しされたときの予測負荷と貯湯計画の説明図、(D)は学習(I)よりも風呂運転が3時間前倒しされたときの予測負荷と貯湯計画の説明図である。
【
図4】(A)は学習(II)による予測負荷と貯湯計画の説明図、(B)は学習(II)よりも風呂運転が1時間前倒しされたときの予測負荷と貯湯計画の説明図、(C)は学習(II)よりも風呂運転が2時間前倒しされたときの予測負荷と貯湯計画の説明図、(D)は学習(II)よりも風呂運転が3時間前倒しされたときの予測負荷と貯湯計画の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態について図面に基づいて説明する。
先ず、本発明の貯湯給湯システム1の全体構成について説明する。
図1に示すように、貯湯給湯システム1は、湯水を貯湯する貯湯給湯装置2と、主熱源機であるヒートポンプ熱源機3と、貯湯給湯装置2とヒートポンプ熱源機3との間に湯水を循環させる加熱循環通路15等から構成されている。
【0015】
次に、貯湯給湯装置2について簡単に説明する。
図1に示すように、貯湯給湯装置2は、貯湯、給湯、浴槽への給湯及び浴槽の追焚き、床暖房パネル等の温水暖房端末への温水の供給等の機能を有するものであり、ヒートポンプ熱源機3、貯湯タンク4、燃焼式の補助熱源機5、風呂用熱交換器6、暖房用熱交換器7、給水系通路8、給湯系通路9、出湯通路11、風呂追焚通路12、温水暖房通路13、熱利用循環通路14、加熱循環通路15、制御ユニット10、貯湯給湯装置2の各種設定を行う操作リモコン20等を備え、これら大部分は外装ケース16内に一体的に収納されている。外装ケース16には、外気温度を検出可能な外気温度検出センサ16aが設置されている。尚、浴室には人を検知する人感センサ(図示略)が設けられ、その検出信号は制御ユニット10へ供給されている。
【0016】
次に、貯湯タンク4について説明する。
貯湯タンク4は、ヒートポンプ熱源機3で加熱された高温の湯水(例えば、60~70℃)を貯留可能な密閉タンクで構成され、貯留された湯水の放熱を防ぐ為にタンク周囲は断熱材で覆われている。貯湯タンク4の外周部には、下側から上側に向かって等間隔に複数の湯水温度検出センサ4a~4dが順に設けられ、これら複数の湯水温度検出センサ4a~4dにより貯湯タンク4内の複数の温度成層の湯水温度が検出される。
【0017】
次に、補助熱源機5について説明する。
補助熱源機5は、バーナや熱交換器等を内蔵した公知のガス給湯器で構成されている。補助熱源機5は、貯湯タンク4内の湯水温度が低下した場合、貯湯タンク4から湯水を出湯できない場合等の特別な場合に限り、制御ユニット10からの指令に基づき燃焼作動され、湯水を加熱するものである。
【0018】
次に、給水系通路8について説明する。
給水系通路8は、上水源から低温の上水を貯湯タンク4等に供給するものであり、上流給水通路8a、中間給水通路8b、下流給水通路8cを有し、上流給水通路8aの上流端が上水源に接続され、下流給水通路8cの下流端が貯湯タンク4の下部に接続されている。上流給水通路8aには減圧弁8dが設置され、中間給水通路8bには逆止弁8eが設置されている。
【0019】
上流給水通路8aと中間給水通路8bとの間から給湯系通路9に接続するバイパス通路17が分岐されている。バイパス通路17には、逆止弁17aが設置されている。中間給水通路8bと下流給水通路8cとの間から熱利用循環通路14に接続するバイパス通路18が分岐されている。この分岐部には蓄熱切換弁19が設置されている。このバイパス通路18により、低温の上水を熱利用循環通路14に供給することができ、また逆に、熱利用循環通路14から湯水を貯湯タンク4に戻すことができる。
【0020】
次に、給湯系通路9について説明する。
給湯系通路9は、貯湯タンク4に貯湯された湯水を風呂等の所望の給湯先に供給するものであり、給湯栓に接続される給湯通路21、貯湯タンク4の上部から給湯通路21に接続されるタンク出湯通路22、このタンク出湯通路22から分岐され補助熱源機5に接続される補助加熱通路23、補助熱源機5から給湯通路21に接続される補助熱源機出湯通路24等を有している。
【0021】
給湯通路21は、高温の湯水が流れる上流給湯通路21a、混合湯水が流れる中間給湯通路21b及び下流給湯通路21cを有し、上流給湯通路21aの上流端がタンク出湯通路22に接続され、下流給湯通路21cの下流端が給湯栓に接続されている。
【0022】
上流給湯通路21aと中間給湯通路21bとの間に混合弁25が設置されている。この混合弁25に給水系通路8から分岐したバイパス通路17が接続されている。混合弁25は、出湯温度が指令温度になるように低温の上水と高温の湯水の混合比を制御するものである。中間給湯通路21bには、流量センサ21dと出湯水比例弁26が設置されている。バイパス通路17から分岐した分岐通路27が中間給湯通路21bに接続され、分岐通路27には、高温出湯回避電磁弁28が設置されている。
【0023】
タンク出湯通路22は、上流出湯通路22a、下流出湯通路22bを有し、上流出湯通路22aの上流端が貯湯タンク4の上部に接続され、下流出湯通路22bの下流端が給湯通路21に接続されている。上流出湯通路22aと下流出湯通路22bとの間から補助加熱通路23が分岐されている。
【0024】
補助加熱通路23は、上流加熱通路23a、下流加熱通路23bを有し、上流加熱通路23aの上流端がタンク出湯通路22に接続され、下流加熱通路23bの下流端が補助熱源機5の導入口に接続されている。上流加熱通路23aには、逆止弁23cが設置され、下流加熱通路23bには、圧送ポンプ29と流量センサ23dが設置されている。
【0025】
上流加熱通路23aと下流加熱通路23bとの間にタンク出湯通路22と補助加熱通路23とを切換え可能な三方弁31が設置されている。三方弁31には、熱利用循環回路14の湯水戻り側通路14dも接続されている。この三方弁31は、上流加熱通路23aと下流加熱通路23bとの間の接続・遮断及び下流加熱通路23bと湯水戻り側通路14dとの間の接続・遮断を切換え可能なものであり、上流加熱通路23aと下流加熱通路23bと湯水戻り側通路14dの全ての通路を接続可能である。
【0026】
補助熱源機出湯通路24は、上流補助出湯通路24a、下流補助出湯通路24bを有し、上流補助出湯通路24aの上流端が補助熱源機5の導出口に接続され、下流補助出湯通路24bの下流端が給湯通路21の上流端に接続されている。上流補助出湯通路24aと下流補助出湯通路24bとの間から熱利用循環回路14の湯水往き側通路14aが分岐されている。下流補助出湯通路24bには、タンク水比例弁32が設置されている。
【0027】
次に、ヒートポンプ熱源機3について簡単に説明する。
図2に示すように、ヒートポンプ式熱源機3は、圧縮機41、凝縮熱交換器42、膨張弁43、蒸発熱交換器44を冷媒回路45により接続して構成されている。このヒートポンプ式熱源機3は、冷媒回路45に封入された冷媒を圧縮機41で圧縮して高温にする。そして、貯湯ポンプ40の駆動により循環往き通路15aから供給される貯湯タンク4の湯水を、凝縮熱交換器42において高温の冷媒との熱交換により加熱する。熱交換後の温度が下がった冷媒は、膨張弁43において膨張して外気より低温になり、蒸発熱交換器44で外気から吸熱した後、再び圧縮機41に導入される。蒸発熱交換器44は、送風機46と外気温度を検知する外気温度センサ47を備えている。
【0028】
次に、貯湯タンク4とその周辺機器について説明する。
図1に示すように、貯湯タンク4の底部からヒートポンプ熱源機3へ延びる循環往き通路15aとヒートポンプ熱源機3から貯湯タンク4の頂部へ戻る循環戻り通路15bを接続するバイパス通路15cが設けられ、このバイパス通路15cと循環戻り通路15bの接続部には三方弁33が介装され、ヒートポンプ熱源機3から循環戻り通路15bへ戻った冷却水の温度が低いときには、循環往き通路15a、ヒートポンプ熱源機3、循環戻り通路15b、バイパス通路15cの順に湯水を循環させるようになっている。
【0029】
貯湯タンク4の底部には下流給水通路8cを介して排水パイプ54が接続され、この排水パイプ54の先端部位には排水栓55が設けられている。排水パイプ54と排水栓55により貯湯タンク4から水抜きすることができる。貯湯タンク4の頂部と外界を連通するエアチャージ部58は、エアチャージパイプ58aとエアチャージ栓58bで構成されている。
【0030】
次に、制御ユニット10について説明する。
貯湯給湯装置2は、制御ユニット10によって制御される。各種のセンサの検出信号が制御ユニット10に送信され、この制御ユニット10により、貯湯給湯装置2の動作、各種のポンプの作動・停止、各種の弁の開閉状態の切り換え及び開度調整等を制御し、各種運転(給湯運転、貯湯運転、湯張り運転、追焚き運転、高温差し湯運転、暖房運転、通常発電運転時の凍結防止運転、等)を実行する。
【0031】
制御ユニット10は、ユーザーが操作可能な操作リモコン20との間でデータ通信可能であり、操作リモコン20のスイッチ操作により各種の運転が設定されると、その指令信号が操作リモコン20から制御ユニット10に送信される。尚、以下、「熱負荷」を単に「負荷」と記載する。
【0032】
更に、制御ユニット10は、
図3と
図4に基づいて後述するように、過去の給湯実績情報に基づいて将来の単位時間毎の熱負荷とその予測時刻を予測する熱負荷予測機能を達成する学習制御プログラムを備え、この熱負荷予測機能により予測された単位時間毎の熱負荷とその予測時刻に基づいてヒートポンプ熱源機3の貯湯運転が制御される。
【0033】
この熱負荷予測機能(学習制御の制御プログラム)は、風呂負荷、シャワー負荷、その他給湯負荷の3種類の負荷に分類して予測し、風呂運転の開始時刻が風呂負荷の予測時刻よりも前倒しされたと制御ユニット10が判断したときに、風呂負荷とシャワー負荷のそれぞれの予測時刻を前記前倒しの時間だけ前倒しするように構成されている。
風呂負荷の給湯実績情報は、操作リモコン20からの風呂お湯張りの指令を受けたときからの一連の給湯量に基づいて取得され、また、シャワー負荷の給湯実績情報は、浴室の人感センサがONのときの浴室への給湯量に基づいて取得される。
【0034】
次に、学習制御による予測負荷と貯湯計画について、
図3、
図4に基づいて説明する。
図3(A)は、学習(I)による予測負荷と貯湯計画の一例を示し、
図3(B)は風呂運転の開始時刻が1時間前倒しされた場合の予測負荷と貯湯計画を示し、
図3(C)は風呂運転の開始時刻が2時間前倒しされた場合の予測負荷と貯湯計画を示し、
図3(D)は風呂運転の開始時刻が3時間前倒しされた場合の予測負荷と貯湯計画を示す。
【0035】
給湯の負荷は、風呂負荷、シャワー負荷、その他の給湯負荷の3種類の熱負荷に分類して予測し、貯湯計画は、予測負荷の1時間以上前から貯湯が開始され、予測時刻までに貯湯が完了する。
【0036】
但し、図示省略したが、前記前倒しされた風呂負荷の当初の予測時刻から所定時間(例えば、3時間)以上将来の風呂負荷とシャワー負荷については前倒しの対象外とする。
また、予測時刻が前倒しされた風呂負荷とシャワー負荷のうち、ヒートポンプ熱源機3による貯湯で対処できない第1部分については補助熱源機5の運転により給湯し、ヒートポンプ熱源機3による貯湯で対処できる第2部分についてはヒートポンプ熱源機3の出力を最大出力にして貯湯する。尚、
図3(A)に示す「Q」はヒートポンプ熱源機3の貯湯運転で1時間に貯湯できる上限の貯湯量を示す。
【0037】
学習(I)による予測負荷と貯湯計画が
図3(A)のように設定された状態において、風呂運転の開始時刻が19時から18時まで1時間前倒しされた場合には、
図3(B)の予測負荷と貯湯計画のように変更される。即ち、予測負荷のうち風呂負荷とシャワー負荷とが1時間前倒しされ、その他の給湯負荷は変更することなく、初期の予測を維持する。その他の給湯は、主に台所等における給湯であって風呂と関係のないからである。
【0038】
1時間前倒しの場合には、17時台に貯湯した風呂用貯湯は風呂のお湯張りに活用される。しかし、17時台に貯湯すべきであった残りの風呂用貯湯(これが第1部分に相当する)は間に合わないと判断して貯湯計画から削除し、その分のお湯は補助熱源機5を作動させて補助熱源機5から給湯(お湯張り)する。また、シャワー用貯湯(これが第2部分に相当する)については、1時間前倒しして18時台にヒートポンプ熱源機3により貯湯タンク4に貯湯する。この場合、ヒートポンプ熱源機3の出力を最大出力にして貯湯する。これは貯湯時間を短縮するためである。
【0039】
学習(I)による予測負荷と貯湯計画が
図3(A)のように設定された状態において、風呂運転の開始時刻が19時から17時まで2時間前倒しされた場合には、
図3(C)のように予測負荷と貯湯計画のように変更される。即ち、予測負荷のうち風呂負荷とシャワー負荷とが2時間前倒しされ、その他の給湯負荷は変更することなく、初期の予測を維持する。
【0040】
2時間前倒しの場合には、16時台に貯湯すべきであっいた風呂用貯湯(これが第1部分に相当する)は間に合わないと判断して貯湯計画から削除し、その分のお湯(全量)は補助熱源機5を作動させて補助熱源機5から給湯(お湯張り)する。
また、シャワー用貯湯(これが第2部分に相当する)については、2時間前倒しして17時台にヒートポンプ熱源機3により貯湯タンク4に貯湯する。この場合、ヒートポンプ熱源機3の出力を最大出力にして貯湯する。
【0041】
学習(II)による予測負荷と貯湯計画が
図3(A)のように設定された状態において、風呂運転の開始時刻が19時から16時まで3時間前倒しされた場合には、
図3(D)の予測負荷と貯湯計画のように変更される。即ち、予測負荷のうち風呂負荷とシャワー負荷とが3時間前倒しされ、その他の給湯負荷は変更することなく、初期の予測を維持する。
【0042】
3時間前倒しの場合には、15時台に貯湯すべきであった風呂用貯湯(これが第1部分に相当する)は間に合わないと判断して貯湯計画から削除し、その分のお湯(全量)は補助熱源機5を作動させて補助熱源機5から給湯(お湯張り)する。
また、シャワー用貯湯(これが第2部分に相当する)については、3時間前倒しして16時台にヒートポンプ熱源機3により貯湯タンク4に貯湯する。この場合、ヒートポンプ熱源機3の出力を最大出力にして貯湯する。
【0043】
次に、2人分の風呂負荷とシャワー負荷がある場合の例について、
図4に基づいて説明する。
図4(A)は、学習(II)による予測負荷と貯湯計画の一例を示し、
図4(B)は風呂運転の開始時刻が1時間前倒しされた場合の予測負荷と貯湯計画を示し、
図4(C)は風呂運転の開始時刻が2時間前倒しされた場合の予測負荷と貯湯計画を示し、
図4(D)は風呂運転の開始時刻が3時間前倒しされた場合の予測負荷と貯湯計画を示す。尚、
図4(A)に示す「Q」は通常の貯湯運転で1時間に貯湯できる上限の貯湯量を示す。
【0044】
学習(II)による予測負荷と貯湯計画が
図4(A)のように設定された状態において、風呂運転の開始時刻が19時から18時まで1時間前倒しされた場合には、
図4(B)の予測負荷と貯湯計画のように変更される。即ち、予測負荷のうち風呂負荷とシャワー負荷とが1時間前倒しされ、その他の給湯負荷は変更することなく、初期の予測を維持する。その他の給湯は、主に台所等における給湯であって風呂と関係がないからである。
【0045】
1時間前倒しの場合には、17時台と18時台に貯湯した風呂用貯湯は風呂のお湯張りに活用される。また、シャワー用貯湯(これが第2部分に相当する)については、1時間前倒しして18時台と19時台にヒートポンプ熱源機3により貯湯タンク4に貯湯する。この場合、ヒートポンプ熱源機3の出力を最大出力にして貯湯する。しかし、18時台に貯湯すべきであったその他の給湯はヒートポンプ熱源機3の能力オーバーのため貯湯できないと判断して貯湯計画から削除し、その分のお湯は補助熱源機5を作動させて補助熱源機5から給湯(お湯張り)する。
【0046】
学習(II)による予測負荷と貯湯計画が
図4(A)のように設定された状態において、風呂運転の開始時刻が19時から17時まで2時間前倒しされた場合には、
図4(C)のように予測負荷と貯湯計画のように変更される。即ち、予測負荷のうち風呂負荷とシャワー負荷とが2時間前倒しされ、その他の給湯負荷は変更することなく、初期の予測を維持する。
【0047】
2時間前倒しの場合には、16時台に貯湯すべきであった風呂用貯湯(これが第1部分に相当する)は間に合わないと判断して貯湯計画から削除し、その分のお湯(全量)は補助熱源機5を作動させて補助熱源機5から給湯(お湯張り)する。
【0048】
また、17時台の風呂用貯湯(これは第2部分に相当する)は、1時間前倒ししてヒートポンプ熱交換器3により貯湯し、17時台と18時台のシャワー用貯湯(これが第2部分に相当する)については、2時間前倒ししてヒートポンプ熱源機3により貯湯タンク4に貯湯する。この場合、ヒートポンプ熱源機3の出力を最大出力にして貯湯する。
【0049】
学習(II)による予測負荷と貯湯計画が
図4(A)のように設定された状態において、風呂運転の開始時刻が19時から16時まで3時間前倒しされた場合には、
図4(D)の予測負荷と貯湯計画のように変更される。即ち、予測負荷のうち風呂負荷とシャワー負荷とが3時間前倒しされ、その他の給湯負荷は変更することなく、初期の予測を維持する。
【0050】
3時間前倒しの場合には、15時台に貯湯すべきであった風呂用貯湯(これが第1部分に相当する)は間に合わないと判断して貯湯計画から削除し、その分のお湯(全量)は補助熱源機5を作動させて補助熱源機5から給湯(お湯張り)する。
また、16時台の風呂用貯湯(これが第2部分に相当する)については、2時間前倒ししてヒートポンプ熱源機3により貯湯し、シャワー用貯湯(これが第2部分に相当する)については、3時間前倒しして16時台と17時台にヒートポンプ熱源機3により貯湯タンク4に貯湯する。この場合、ヒートポンプ熱源機3の出力を最大出力にして貯湯する。
【0051】
次に、上記の貯湯給湯システム1の作用、効果について説明する。
風呂運転の開始時刻が風呂負荷の予測時刻よりも前倒しされたとき、風呂負荷とシャワー負荷のそれぞれの予測時刻を前記前倒しの時間だけ前倒しするため、前倒しされた風呂負荷とシャワー負荷のためにヒートポンプ熱源機3の貯湯運転の計画を変更し、必要に応じて補助熱源機5による給湯も行いつつ、前倒しされた風呂負荷とシャワー負荷に対処することができる。しかも、ヒートポンプ熱源機3も活用することで補助熱源機5の使用を極力抑制することができる。
【0052】
前倒しされた風呂運転の開始時刻から所定時間(例えば、3時間)以上将来の風呂予測負荷とシャワー予測負荷については、前倒しされた風呂負荷とは関連のない別件の風呂負荷とシャワー負荷であるとして、学習制御による予測時刻を変更しないため、熱負荷予測機能の性能低下を防止することができる。
【0053】
予測時刻が前倒しされた風呂負荷とシャワー負荷のうち、ヒートポンプ熱源機3による貯湯で対処できない第1部分については補助熱源機の運転により給湯し、ヒートポンプ熱源機3による貯湯で対処できる第2部分についてはヒートポンプ熱源機3の出力を最大出力にして貯湯する。それ故、補助熱源機5とヒートポンプ熱源機3をフル活用して前倒しされた風呂負荷とシャワー負荷に対処することができる。
【0054】
1)前記実施形態では、前倒しの時間が1時間、2時間等の1時間単位で前倒しする場合の例であるが、前倒しの時間は、例えば、0.5時間や1.5時間などの1時間単位でない場合についても、風呂負荷とシャワー負荷について前記の実施形態と同様に前倒しすることができる。
2)その他、当業者ならば本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はその種の変更形態をも包含するものである。
【符号の説明】
【0055】
1 :貯湯給湯システム
2 :貯湯給湯装置
3 :ヒートポンプ熱源機
4 :貯湯タンク
5 :補助熱源機
10:制御ユニット
20:操作リモコン