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特開2023-94134管内走行ロボット、管内走行ロボットの制御方法、及び管内走行ロボットの制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094134
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】管内走行ロボット、管内走行ロボットの制御方法、及び管内走行ロボットの制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B62D 53/00 20060101AFI20230628BHJP
   G05D 1/00 20060101ALI20230628BHJP
   B61B 13/10 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
B62D53/00 A
G05D1/00 Z
B61B13/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209425
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000182937
【氏名又は名称】日鉄パイプライン&エンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】生野 康之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 千晃
(72)【発明者】
【氏名】原田 肇
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 和寿
(72)【発明者】
【氏名】加古川 篤
(72)【発明者】
【氏名】馬 書根
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301BB10
5H301BB14
5H301CC04
5H301CC07
5H301CC10
5H301DD01
5H301DD06
5H301DD07
5H301DD15
5H301GG17
(57)【要約】
【課題】複数の能動関節の制御を同時に行うことを必要とせず、かつ事前に配管の経路情報を把握することを必要としない管内走行ロボット等を提供する。
【解決手段】配管の内部を走行する管内走行ロボット1000であって、配管の管軸O方向に直列に配置される複数のユニット100と、複数のユニット100のうち、互いに隣り合うユニット100同士を、管軸O方向に交差する方向に延びるヨー軸回りに回転可能に接続する複数の関節部200と、複数のユニット100および複数の関節部200を制御する制御手段と、を備え、制御手段は、配管の屈曲部に到達した時に複数の関節部200を受動的に変位可能とすることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の内部を走行する管内走行ロボットであって、
前記配管の管軸方向に直列に配置される複数のユニットと、
前記複数のユニットのうち、互いに隣り合うユニット同士を、前記管軸方向に交差する方向に延びるヨー軸回りに回転可能に接続する複数の関節部と、
前記複数のユニットおよび前記複数の関節部を制御する制御手段と、を備え、
前記複数のユニットの少なくとも一部は、前記配管の管軸方向の一方の端部及び他方の端部に一対に配置される能動車輪ユニットであり、
前記制御手段は、前記配管の屈曲部に到達した時に前記複数の関節部を受動的に変位可能とすることを特徴とする、
管内走行ロボット。
【請求項2】
前記制御手段は、前記関節部の制御を停止することで受動的な変形を可能とすることを特徴とする、
請求項1に記載の管内走行ロボット。
【請求項3】
前記制御手段は、前記関節部を受動的に変位するように制御することを特徴とする、
請求項1に記載の管内走行ロボット。
【請求項4】
前記能動車輪ユニットは撮像手段を備えることを特徴とする、
請求項1から3のいずれか1項に記載の管内走行ロボット。
【請求項5】
前記一対の能動車輪ユニットの間に1つ又は複数配置される受動車輪ユニットを更に備え、
前記能動車輪ユニットは能動的に回転可能な能動車輪を備え、
前記受動車輪ユニットは受動的に回転可能な受動車輪を備え、
前記能動車輪及び前記受動車輪は、前記配管の内壁に対し接触及び離隔が可能であることを特徴とする、
請求項1から4のいずれか1項に記載の管内走行ロボット。
【請求項6】
前記能動車輪ユニットと前記受動車輪ユニットとの間に一対に配置されるロール軸ユニットを更に備え、
前記ロール軸ユニットは、前記管軸方向を中心として前記能動車輪ユニットと前記受動車輪ユニットとの相対角度を変更可能であることを特徴とする、
請求項5に記載の管内走行ロボット。
【請求項7】
前記制御手段は、
前記配管の内部を直進する際には前記能動車輪及び前記受動車輪を前記配管の内部に接触させ、
前記屈曲部を走行する際は前記能動車輪のみを前記配管の内部に接触させることを特徴とする、
請求項5に記載の管内走行ロボット。
【請求項8】
前記能動車輪ユニットと前記受動車輪ユニットとの間に一対に配置されるロール軸ユニットを更に備え、
前記制御手段は、前記能動車輪又は前記受動車輪のいずれかのみを前記配管の内部に接触させた状態で、前記ロール軸ユニットにより前記能動車輪ユニットと前記受動車輪ユニットとの相対角度を変更することを特徴とする、
請求項7に記載の管内走行ロボット。
【請求項9】
配管の管軸方向に直列に配置される複数のユニットと、
前記複数のユニットのうち、互いに隣り合うユニット同士を、前記管軸方向に交差する方向に延びるヨー軸回りに回転可能に接続する複数の関節部と、を備え、
前記複数のユニットは、
能動車輪を備え、前記配管の管軸方向の一方の端部及び他方の端部に一対に配置される能動車輪ユニットと、
受動車輪を備え、前記一対の能動車輪ユニットの間に1つ又は複数配置される受動車輪ユニットと、
前記能動車輪ユニットと前記受動車輪ユニットとの間に一対に配置されるロール軸ユニットと、
を備え、
前記配管の内部を走行する管内走行ロボットの制御方法であって、
前記配管の屈曲部に到達した時に前記複数の関節部を受動的に変位可能とすることを特徴とする、
管内走行ロボットの制御方法。
【請求項10】
前記配管の内部を直進する際には前記能動車輪及び前記受動車輪を前記配管の内部に接触させ、
前記屈曲部を走行する際は前記能動車輪のみを前記配管の内部に接触させることを特徴とする、
請求項9に記載の管内走行ロボットの制御方法。
【請求項11】
前記能動車輪又は前記受動車輪のいずれかのみを前記配管の内部に接触させた状態で、前記ロール軸ユニットにより前記能動車輪ユニットと前記受動車輪ユニットとの相対角度を変更することを特徴とする、
請求項9又は10に記載の管内走行ロボットの制御方法。
【請求項12】
請求項1から8のいずれか1項に記載の管内走行ロボットを作動させるための制御手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする、
管内走行ロボットの制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管内走行ロボット、管内走行ロボットの制御方法、及び管内走行ロボットの制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス管をはじめとする管路を点検する点検装置として、管内を走行するロボットを用いることがある。特許文献1には、パンタグラフ上に配置された複数の車輪を管壁に押し付けつつ回転させることで管内を移動する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6917176号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のロボットでは、点検装置の軌道を配管形状に合わせて適切に制御する必要があった。具体的には、複数の能動関節の角度を、時間に対して制御していた。
しかしながら、上述の関節角に基づく軌道計算は煩雑であった。更に、前述の軌道計算を適切に行うためには、事前に管内の経路情報を正確に把握する必要があった。このため、事前に経路情報がわかっていない管内を走行することができない課題があった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、複数の能動関節の制御を同時に行うことを必要とせず、かつ事前に配管の経路情報を把握することを必要としない管内走行ロボット、管内走行ロボットの制御方法、及び管内走行ロボットの制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る管内走行ロボットは、配管の内部を走行する管内走行ロボットであって、前記配管の管軸方向に直列に配置される複数のユニットと、前記複数のユニットのうち、互いに隣り合うユニット同士を、前記管軸方向に交差する方向に延びるヨー軸回りに回転可能に接続する複数の関節部と、前記複数のユニットおよび前記複数の関節部を制御する制御手段と、を備え、前記複数のユニットの少なくとも一部は、前記配管の管軸方向の一方の端部及び他方の端部に一対に配置される能動車輪ユニットであり、前記制御手段は、前記配管の屈曲部に到達した時に前記複数の関節部を受動的に変位可能とすることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、制御手段は、配管の屈曲部を走行する際に関節部を受動的に変位可能とする。これにより、管内走行ロボットが配管の屈曲部を走行する際、例えば、進行方向の側に位置する能動車輪ユニットが屈曲部に位置して、その直後に位置するユニットが直線部に位置する時、それらの間に位置する関節部が受動的に変位する。同様に、進行方向の側に位置するユニットが屈曲部に位置して、その直後に位置するユニットが直線部に位置する時、それらの間に位置する関節部が受動的に変位する。したがって、制御手段によって関節部を能動的に制御することなく、配管の形状に合わせて管内走行ロボットを適宜変形することができる。このため、配管の経路情報を事前に把握していなくても、配管の内部を走行することができる。
【0008】
また、前記制御手段は、前記関節部の制御を停止することで受動的な変形を可能とすることを特徴としてもよい。
【0009】
この発明によれば、制御手段は、関節部の制御を停止することで受動的な変形を可能とする。これにより、管内走行ロボットが配管の屈曲部を走行する際の制御手段の処理負担を最小限とすることができる。
【0010】
また、前記制御手段は、前記関節部を受動的に変位するように制御することを特徴としてもよい。
【0011】
この発明によれば、制御手段は、関節部を受動的に変位するように制御する。これにより、関節部の制御を停止することで受動的な変形を可能とする場合と比較して、配管の屈曲部を走行する際における管内走行ロボットの姿勢を最適に維持することができる。
【0012】
また、前記能動車輪ユニットは撮像手段を備え、前記撮像手段が撮影した画像を処理することで前記配管の内部を把握することを特徴としてもよい。
【0013】
この発明によれば、能動車輪ユニットは撮像手段を備える。これにより、例えば、管内走行ロボットが屈曲部に到達したことや、屈曲部の向きを確認することができる。また、配管の内壁の損傷状態等を把握することができる。また、撮影した画像を作業者が確認することで、管内走行ロボットを用いた作業を効率的に行うことができる。
【0014】
また、前記一対の能動車輪ユニットの間に1つ又は複数配置される受動車輪ユニットを更に備え、前記能動車輪ユニットは能動的に回転可能な能動車輪を備え、前記受動車輪ユニットは受動的に回転可能な受動車輪を備え、前記能動車輪及び前記受動車輪は、前記配管の内壁に対し接触及び離隔が可能であることを特徴としてもよい。
【0015】
この発明によれば、能動車輪及び受動車輪は、配管の内壁に対し接触及び離隔が可能である。能動車輪が配管の内壁に対して接触した状態で能動的に回転することで、管内走行ロボットを配管の内部を走行させることができる。受動車輪が配管の内壁に対して接触することで、静止中の管内走行ロボットの配管の内部における姿勢を維持することができる。また、受動車輪が配管の内壁に対して接触した状態で受動的に回転することで、走行中においても管内走行ロボットの姿勢を維持することができる。
【0016】
また、前記能動車輪ユニットと前記受動車輪ユニットとの間に一対に配置されるロール軸ユニットを更に備え、前記ロール軸ユニットは、前記管軸方向を中心として前記能動車輪ユニットと前記受動車輪ユニットとの相対角度を変更可能であることを特徴としてもよい。
【0017】
この発明によれば、ロール軸ユニットは、管軸方向を中心として能動車輪ユニットと受動車輪ユニットとの相対角度を変更可能である。これにより、配管の内部において能動車輪ユニット及び受動車輪ユニットの姿勢を変更することができる。
【0018】
また、前記制御手段は、前記配管の内部を直進する際には前記能動車輪及び前記受動車輪を前記配管の内部に接触させ、前記屈曲部を走行する際は前記能動車輪のみを前記配管の内部に接触させることを特徴としてもよい。
【0019】
この発明によれば、制御手段は、配管の内部を直進する際には能動車輪及び受動車輪を配管の内部に接触させる。これにより、直進時の管内走行ロボットの姿勢を維持することができる。また、屈曲部を走行する際は能動車輪のみを配管の内部に接触させる。これにより、屈曲部を走行する際に受動車輪が走行の妨げとなることを防ぐことができる。
【0020】
また、前記能動車輪ユニットと前記受動車輪ユニットとの間に一対に配置されるロール軸ユニットを更に備え、前記制御手段は、前記能動車輪又は前記受動車輪のいずれかのみを前記配管の内部に接触させた状態で、前記ロール軸ユニットにより前記能動車輪ユニットと前記受動車輪ユニットとの相対角度を変更することを特徴としてもよい。
【0021】
ここで、本発明に係る管内走行ロボットは、能動車輪ユニットと受動車輪ユニットとの相対角度を変更しない場合は、関節部の回転軸を中心とした方向にのみ進行方向を変更可能である。
この発明によれば、制御手段は、能動車輪又は受動車輪のいずれかのみを配管の内部に接触させた状態で、ロール軸ユニットにより能動車輪ユニットと受動車輪ユニットとの相対角度を変更する。
【0022】
受動車輪のみを配管の内部に接触させた状態で、ロール軸ユニットにより能動車輪ユニットと受動車輪ユニットとの相対角度を変更することにより、配管の内部において、管軸を中心として能動車輪ユニットを回転させることができる。つまり、配管の内部において関節部の軸方向を変更することができる。したがって、屈曲部の屈曲方向に対して自在に対応することができる。
【0023】
能動車輪のみを配管の内部に接触させた状態で、ロール軸ユニットにより能動車輪ユニットと受動車輪ユニットとの相対角度を変更することにより、配管の内部において、能動車輪ユニットに対して受動車輪ユニットの姿勢を追従することができる。これにより、屈曲部の屈曲方向に制限されることなく、管内走行ロボットを走行させることができる。
【0024】
また、本発明に係る管内走行ロボットの制御方法は、配管の管軸方向に直列に配置される複数のユニットと、前記複数のユニットのうち、互いに隣り合うユニット同士を、前記管軸方向に交差する方向に延びるヨー軸回りに回転可能に接続する複数の関節部と、を備え、前記複数のユニットは、前記配管の管軸方向の一方の端部及び他方の端部に一対に配置される能動車輪ユニットと、前記一対の能動車輪ユニットの間に1つ又は複数配置される受動車輪ユニットと、前記能動車輪ユニットと前記受動車輪ユニットとの間に一対に配置されるロール軸ユニットと、を備え、前記配管の内部を走行する管内走行ロボットの制御方法であって、前記配管の屈曲部に到達した時に前記複数の関節部を受動的に変位可能とすることを特徴とする。
【0025】
また、前記配管の内部を直進する際には前記能動車輪及び前記受動車輪を前記配管の内部に接触させ、前記屈曲部を走行する際は前記能動車輪のみを前記配管の内部に接触させることを特徴としてもよい。
【0026】
また、前記能動車輪又は前記受動車輪のいずれかのみを前記配管の内部に接触させた状態で、前記ロール軸ユニットにより前記能動車輪ユニットと前記受動車輪ユニットとの相対角度を変更することを特徴としてもよい。
【0027】
また、本発明に係る管内走行ロボットの制御プログラムは、本発明に係る管内走行ロボットを作動させるための制御手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、複数の能動関節の制御を同時に行うことを必要とせず、かつ事前に配管の経路情報を把握することを必要としない管内走行ロボット、管内走行ロボットの制御方法、及び管内走行ロボットの制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係る管内走行ロボットの斜視図である。
図2図1に示す管内走行ロボットが直線状となった状態である。
図3】能動車輪ユニット又は受動車輪ユニットの内部構造の概要図である。
図4】開閉機構の構造を示す概要図である。
図5】能動車輪ユニット、関節部、及びロール軸ユニットの拡大断面図である。
図6】開閉機構の動きを示す第1図である。
図7】開閉機構の動きを示す第3図である。
図8】能動車輪アームの内部構造である。
図9】ロール軸ユニットの内部構造の概要図である。
図10】関節部の内部構造の概要図である。
図11】直管走行フローのフローチャートである。
図12】ヨー軸回転フローのフローチャートである。
図13】ロール軸回転フローのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る管内走行ロボット1000を説明する。
管内走行ロボット1000は、配管の内部を走行するために用いられる。管内走行ロボット1000は、例えば、表面に各種センサを取り付けることで配管の内壁の状態を確認する検査装置あるいは探査装置として用いられる。
【0031】
図1に示すように、管内走行ロボット1000は、ユニット100と、関節部200と、制御手段300と、を備える。また、管内走行ロボット1000は、一方の端部に取付けられたケーブルCによって給電されて走行する。あるいは、ケーブルCによって作業者と情報を交換する。
【0032】
ユニット100は複数備えられ、図2に示すように、配管の管軸O方向に直列に配置される。なお、複数のユニット100の少なくとも一部は、後述する能動車輪ユニット110である。本実施形態においては、ユニット100は、能動車輪ユニット110と、受動車輪ユニット120と、ロール軸ユニット130と、中間ユニット140と、を備える。これらを区別しない場合に、ユニット100と呼称する。
【0033】
図2に示すように、能動車輪ユニット110は、配管の管軸O方向の一方の端部及び他方の端部に一対に配置される。
図3に示すように、能動車輪ユニット110は、能動車輪110Tを備える。能動車輪110Tは、能動的に回転可能な車輪である。能動車輪110Tは、能動車輪アーム110Aを介して能動車輪ユニット110に配置されている。具体的には、図4に示すように、能動車輪110Tは能動車輪アーム110Aの一方の端部に配置され、能動車輪アーム110Aの他方の端部が後述する開閉機構Pの第1支持部PB1に配置される。これにより、能動車輪110Tは能動車輪アーム110Aに配置される。
【0034】
能動車輪アーム110Aは、能動車輪ユニット110の備える開閉機構Pによって能動車輪110Tを配管の径方向に移動させる。これにより、能動車輪110Tは、配管の内壁に対し接触及び離隔が可能である。
開閉機構Pは、能動車輪ユニット110の内部に構成される。図4及び図5に示すように、開閉機構Pは、第1支持部PB1と、第2支持部PB2と、開閉モータP1と、開閉インプットギアP2と、開閉アウトプットギアP3と、回転シャフトP4と、開閉台形ネジP5と、スライダP6と、スライドシャフトP7と、バネP8と、開閉アームP9と、を備える。
【0035】
第1支持部PB1は、能動車輪アーム110Aの他方の端部を回動可能に固定する。また、回転シャフトP4の一方の端部を回転可能に支持する。第2支持部PB2は、回転シャフトP4の他方の端部を回転可能に支持する。
開閉モータP1は、開閉機構Pの動力源である。開閉モータP1には、例えば、サーボモータが好適に用いられる。
【0036】
開閉インプットギアP2は、開閉モータP1に接続される、開閉インプットギアP2は、例えば、公知の平歯車である。開閉インプットギアP2は、開閉アウトプットギアP3に動力を伝達する。
開閉アウトプットギアP3は、開閉インプットギアP2から伝達された動力を回転シャフトP4に伝達する。開閉アウトプットギアP3は、例えば、公知の平歯車である。
【0037】
回転シャフトP4は、開閉アウトプットギアP3から伝達された動力によって回転する。本実施形態において、回転シャフトP4は、いわゆる台形滑りネジである。あるいはこれに限らず、ボールネジであってもよい。台形滑りネジは外部からの力によっては逆回転しにくい構造である。これに対して、ボールネジは滑り性がよいことから、外部からの力に対して逆回転しやすい構造である。上記特徴を考慮の上、回転シャフトP4に用いるネジを適宜決定する。回転シャフトP4には、開閉台形ネジP5が接続されている。これにより、回転シャフトP4は、前記回転を、往復運動に変換して開閉台形ネジP5に伝達する。
開閉台形ネジP5は、回転シャフトP4の軸方向に沿って往復移動する。開閉台形ネジP5には、スライダP6が配置されている。
【0038】
スライダP6は、開閉台形ネジP5に設けられたスライドシャフトP7に配置されている。スライダP6には、開閉アームP9の一方の端部が回動可能に配置されている。
スライドシャフトP7は、スライダP6を摺動可能に支持する。また、スライドシャフトP7には、バネP8が配置されている。これにより、図4に示すように、スライダP6は開閉台形ネジP5における第2支持部PB2の側の端部に押し付けられるように支持される。
バネP8は、公知のスプリングである。
【0039】
開閉アームP9は、一方の端部がスライダP6に回動可能に配置され、他方の端部が能動車輪アーム110Aに回動可能に配置されている。開閉アームP9は、開閉台形ネジP5が回転シャフトP4の上を往復することに連動して、開閉アームP9の角度を変動させる。具体的には、下記の通りである。
【0040】
まず、図4に示すように、開閉台形ネジP5が第1支持部PB1の側に位置しているとき、開閉アームP9の一方の端部が配置されたスライダP6も第1支持部PB1の側に位置している。このため、開閉アームP9の他方の端部は、能動車輪アーム110Aを回転シャフトP4の側に引き寄せるように作用する。
この状態から、図6に示すように、開閉台形ネジP5が第2支持部PB2の側に移動すると、開閉アームP9の一方の端部が連動して第2支持部PB2の側に移動する。すると、開閉アームP9の他方の端部は、能動車輪アーム110Aを回転シャフトP4から離れる方向に押し出すように作用する。このような機構により、開閉機構Pによって能動車輪アーム110Aを配管の径方向に移動させる。
【0041】
ここで、能動車輪110Tが配管の径方向に移動して配管の内壁に接触しようとした時、配管の内壁から押し戻されるような反力を受けることがある。この時、図7に示すように、スライダP6がスライドシャフトP7の上を摺動することで、開閉アームP9の一方の端部を第1支持部PB1の側に移動させる。この時、スライダP6は、バネP8による反力を受ける。これにより、開閉アームP9の一方の端部が必要以上に第1支持部PB1の側に移動することを防ぐ。なお、このとき、バネP8の変位を距離センサで計測し、計測された変位の量に既知のバネ定数を掛けることで、能動車輪110Tが受けた反力を推定してもよい。また、推定した反力に基づき、能動車輪110Tの径方向の移動量を調整してもよい。
【0042】
ここで、回転シャフトP4が台形滑りネジである場合、台形滑りネジは外部からの力に対して逆回転しにくい構造であることから、配管の内壁から能動車輪110Tを介して力を受けた時は、バネP8の変形のみによって外力を吸収する。これに対し、回転シャフトP4がボールネジである場合は、外力によって回転シャフトP4が逆回転することによっても外力を吸収可能である。
【0043】
加えて、バネP8の反力は、開閉アームP9を介して能動車輪110Tを配管の内壁に押し付けるように作用する。これにより、配管の内壁に隆起や瘤等があった場合に柔軟に対応できるようにするとともに、開閉インプットギアP2及び開閉アウトプットギアP3のバックラッシによるガタ等によって能動車輪110Tの位置が変動することを防ぐ。
【0044】
図8に示すように、能動車輪アーム110Aは、内部に車輪モータ110Amを備える。車輪モータ110Amは、第1車輪モータギア110g1及び第2車輪モータギア110g2を介して、能動車輪110Tに動力を付与する。これにより能動車輪110Tを回転させる。能動車輪110Tが配管の内壁に対して接触した状態で能動的に回転することで、管内走行ロボット1000は配管の内部を走行する。
【0045】
図2に示すように、能動車輪ユニット110は撮像手段400を備える。上述のように、能動車輪ユニット110は、配管の管軸O方向の一方の端部及び他方の端部に一対に配置される。このため、管内走行ロボット1000が配管の内部を走行する時は、いずれかの能動車輪ユニット110が進行方向の先頭に位置する。このため、能動車輪ユニット110に撮像手段400を設けることで、配管の内部を撮影しながら進むことができるようにする。撮像手段400が撮影した画像は、例えば、次のように用いられる。
【0046】
すなわち、撮像手段400が撮影した画像を処理することで配管の内部を把握する。具体的には、走行中において、管内走行ロボット1000が屈曲部に到達したことや、屈曲部の向きを確認する。また、配管の内壁の損傷状態等を把握する。また、撮影した画像を作業者が確認することで、管内走行ロボット1000を用いた作業を効率的に行う。
【0047】
受動車輪ユニット120は、一対の能動車輪ユニット110の間に1つ又は複数配置される。本実施形態において、受動車輪ユニット120は2つ設けられる。図2に示すように、前記2つの受動車輪ユニット120は、中間ユニット140を介して接続される。
図3に示すように、受動車輪ユニット120は、受動車輪120Tを備える。受動車輪120Tは、受動的に回転可能な車輪である。受動車輪120Tは、受動車輪アーム120Aを介して受動車輪ユニット120に配置されている。具体的には、受動車輪120Tは受動車輪アーム120Aの一方の端部に配置され、受動車輪アーム120Aの他方の端部は開閉機構Pの第1支持部PB1に配置される。これにより、受動車輪120Tは受動車輪アーム120Aに配置される。
【0048】
受動車輪アーム120Aは、受動車輪ユニット120の備える開閉機構Pによって受動車輪120Tを配管の径方向に移動させる。これにより、受動車輪120Tは、配管の内壁に対し接触及び離隔が可能である。
受動車輪ユニット120の備える開閉機構Pは、能動車輪ユニット110の備える開閉機構Pと同一の構造である。
【0049】
受動車輪アーム120Aは、能動車輪アーム110Aと比較して車輪モータ110Amを備えない点で相違する。受動車輪アーム120Aは、受動車輪120Tを受動的に回転可能に支持する。受動車輪120Tが配管の内壁に対して接触することで、管内走行ロボット1000の配管の内部における姿勢を維持する。また、受動車輪120Tが配管の内壁に対して接触した状態で受動的に回転することで、走行中においても管内走行ロボット1000の姿勢を維持する。
【0050】
ロール軸ユニット130は、図2に示すように、それぞれ一対に設けられた能動車輪ユニット110と受動車輪ユニット120との間に一対に配置される。ロール軸ユニット130は、管軸O方向を中心として能動車輪ユニット110と受動車輪ユニット120との相対角度を変更可能とする。
図9及び図10に示すように、ロール軸ユニット130は、ロールベース131と、ロールモータ132と、ロールインプットギア133と、ロールアウトプットギア134と、ロールカバー135と、ロールベアリング136と、を備える。
【0051】
ロールベース131は、ロール軸ユニット130の内部においてロールモータ132の位置を固定する。
ロールモータ132は、ロール軸ユニット130の動力源である。ロールモータ132には、例えば、サーボモータが好適に用いられる。
ロールインプットギア133は、ロールモータ132に接続される、ロールインプットギア133は、例えば、公知の平歯車である。ロールインプットギア133は、ロールアウトプットギア134に動力を伝達する。
【0052】
ロールアウトプットギア134は、ロールインプットギア133から伝達された動力を受けて、ロールモータ132に対して相対回転する。言い換えれば、ロールアウトプットギア134は、ロールモータ132が固定されたロールベース131に対して相対回転する。ロールアウトプットギア134は、例えば、公知の内歯車である。ロールアウトプットギア134は、ロールカバー135に連結されている。
【0053】
ロールカバー135は、ロール軸ユニット130の外周に位置している。ロールカバー135の内周には、ロールアウトプットギア134が連結されている。このため、ロールカバー135は、ロールモータ132の回転によってロールモータ132及びロールベース131に対して相対回転する。また、図5に示すように、ロールカバー135には、後述する関節部200の第2ブラケット220が接続される。
ロールベアリング136は、図5に示すようにロールベース131とロールカバー135とを回転可能に連結する。
【0054】
上記構成により、ロール軸ユニット130において、ロールベース131とロールカバー135とが相対回転する。これにより、ロール軸ユニット130の両端に接続された能動車輪ユニット110と受動車輪ユニット120との相対角度を変更可能とする。
また、図9に示すように、ロール軸ユニットの各構成を支持するために、ロール軸ユニットの内部には支持棒130Pが設けられる。
【0055】
中間ユニット140は、管内走行ロボット1000の中央に位置する。中間ユニット140は、上述のように2つ設けられた受動車輪ユニット120を接続する。中間ユニット140は、前記2つの受動車輪ユニット120の相対角度を変更させずに保持する点で、ロール軸ユニット130と相違する。
【0056】
中間ユニット140を用いて2つの受動車輪ユニット120を接続することによって、次の効果が見込まれる。すなわち、管軸O方向において、受動車輪120Tを、間隔をあけて2箇所に配置できるようにする。これにより、配管の内部において管内走行ロボット1000の姿勢を維持する効果をより顕著なものとする。
【0057】
関節部200は複数備えられ、複数のユニット100のうち、互いに隣り合うユニット100同士を、管軸O方向に交差する方向に延びるヨー軸回りに回転可能に接続する。ヨー軸とは、管軸O方向に交差する方向であって、特に配管の上下方向と平行な方向に位置する軸をいう。関節部200は、第1ブラケット210と、第2ブラケット220と、第1関節ギア230と、第2関節ギア240と、を備える。
【0058】
第1ブラケット210は、ユニット100の端部に配置され、第1関節ギア230が挿通される。また、第2関節ギア240を回転可能に支持する。図2に示すように、第1ブラケット210は、ユニット100同士の間において、管軸O方向の外側に位置するユニット100の端部に設けられる。
【0059】
第2ブラケット220は、第1ブラケット210と同様にユニット100の端部に配置される。第2ブラケット220は、第2関節ギア240を回転不可に支持する点で第1ブラケット210と相違する。また、第2ブラケット220は、第1関節ギア230が挿通されない点で第1ブラケット210と相違する。第2ブラケット220は、ユニット100同士の間において、管軸O方向の内側に位置するユニット100の端部に設けられる。
【0060】
第1関節ギア230は、関節部200におけるいわゆるインプットギアである。第1関節ギア230は、関節モータ231と、関節インプットギア232と、関節アウトプットギア233と、関節カバー234と、能動ギア235と、を備える。
関節モータ231は、第1関節ギア230の動力源である。関節モータ231には、例えば、サーボモータが好適に用いられる。
【0061】
関節インプットギア232は、関節モータ231に接続される、関節インプットギア232は、例えば、公知の平歯車である。関節インプットギア232は、関節アウトプットギア233に動力を伝達する。
関節アウトプットギア233は、能動ギア235に接続される。これにより、関節アウトプットギア233は、関節インプットギア232から伝達された動力を能動ギア235に伝達する。
能動ギア235は、第1関節ギア230における第2関節ギア240と係合する歯車である。上記構成により、第1関節ギア230は第2関節ギア240と相対的に回転移動し、関節部200を動作する。
【0062】
関節カバー234には、能動ギア235が挿通される。また、関節カバー234には、第1ブラケット210が取付けられる。図5に示すように、関節モータ231と、関節インプットギア232と、関節アウトプットギア233とは、ユニット100の内部に配置される。関節カバー234は、ユニット100の端部に配置される。具体的には、図3に示す能動車輪ユニット110及び受動車輪ユニット120、図9に示すロール軸ユニット130の端部に配置される。このような構成とすることで、第1関節ギア230は、ユニット100の端部から能動ギア235のみ露出させる。
【0063】
第2関節ギア240は、第1関節ギア230の能動ギア235に係合する。上述のように、第2関節ギア240は第2ブラケット220に対し回転不可に支持されている。つまり、第1関節ギア230の回転によって第2関節ギア240が相対回転すると、第1ブラケット210と第2ブラケット220とが相対回転する。ここで、上述のように第1ブラケット210と第2ブラケット220とはそれぞれユニット100の端部に接続されている。よって、関節部200によって、隣り合うユニット同士は相対的に回転移動する。この回転移動は、管内走行ロボット1000が配管の屈曲部を走行する際に行われる。上述の構成を備える関節部200は、管内走行ロボット1000が屈曲部に沿って左右方向に移動する場合に用いられる。
【0064】
制御手段300は、複数のユニット100および複数の関節部200を制御する。具体的には、制御手段300はユニット100に内蔵された電子基板である。あるいは、ケーブルCに接続された不図示の外部装置である。制御手段300は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサとメモリとを備えるシステム制御装置を備え、制御プログラムを実行する。制御手段300は、制御プログラムの実行によって管内走行ロボット1000を作動させる。
【0065】
制御手段300の各機能の全て又は一部は、例えば、制御プログラムとして構成され、ASIC(Aplication Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されることが好ましい。制御プログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。制御プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0066】
(管内走行ロボット1000の制御方法)
次に、管内走行ロボット1000が配管の内部を走行する際の具体的な動きを説明する。管内走行ロボット1000は、上述の各構成を制御手段300により制御することで作動する。
本実施形態に係る制御方法は、図11に示す直管走行フローと、図12に示すヨー軸回転フローと、図13に示すロール軸回転フローと、を備える。
【0067】
なお、以下の説明においては、図2に示すように、能動車輪ユニット110及び受動車輪ユニット120について、管内走行ロボット1000の進行方向における先頭の側から順に第1ユニットU1、第2ユニットU2、第3ユニットU3、第4ユニットU4、と呼称する。つまり、先頭の側に位置する能動車輪ユニット110が第1ユニットU1、末尾の側に位置する能動車輪ユニット110が第4ユニットU4、先頭の側に位置する受動車輪ユニット120が第2ユニットU2、末尾の側に位置する受動車輪ユニット120が第3ユニットU3である。
【0068】
第1ユニットU1が備える開閉機構Pを第1開閉機構、第2ユニットU2が備える開閉機構Pを第2開閉機構、第3ユニットU3が備える開閉機構Pを第3開閉機構、第4ユニットU4が備える開閉機構Pを第4開閉機構と呼称する。
図2に示すように、関節部200は、複数のユニット100のうち、互いに隣り合うユニット100同士を接続している。以下において、管内走行ロボット1000の進行方向の先頭の側に位置する関節部200から順に、第1関節、第2関節、第3関節、第4関節、第5関節、第6関節と呼称する。
一対に設けられたロール軸ユニット130について、進行方向の先頭の側に位置するロール軸ユニット130を第1ロール軸、もう1つのロール軸ユニット130を第2ロール軸と呼称する。
【0069】
(直管走行フロー)
図11に示す直管走行フローは、配管が直線状である場合(直管)である場合の走行フローである。管内走行ロボット1000が走行を開始する際は、直管走行フローから開始する。
直管走行フローの開始は、例えば、作業者が管内走行ロボット1000を起動して走行開始の指示をすることで開始する。このとき、制御手段300は、全てのヨー軸が真っすぐになるように制御する(ステップSA1)。具体的には、関節モータ231を制御手段300が操作することにより、全てのユニット100が直線状に並んだ状態とする。
【0070】
次に、第1、第2、第3、第4開閉機構を全て展開状態、すなわち能動車輪110T又は受動車輪120Tが配管の径方向の外側に受けて移動した状態とする(ステップSA2)。より具体的には、能動車輪110T又は受動車輪120Tが配管の内壁に接した状態とする。
その状態で、全ての能動車輪110Tを前進方向に回転させる(ステップSA3)。具体的には、制御手段300によって車輪モータ110Amを動作させることで、能動車輪110Tを回転させる。つまり、制御手段300は、配管の内部を直進する際には能動車輪110T及び受動車輪120Tを配管の内部に接触させる。これにより、管内走行ロボット1000が配管の内部を走行する。
【0071】
配管の内部を走行中は、第1ユニットU1が屈曲部に到達したか否かを確認する。つまり、第1ユニットU1が走行する配管が、曲管あるいはT字管であるか否かを判断する(ステップSA4)。前記判断には、第1ユニットU1が備える撮像手段400が撮影した画像に基づき制御手段300が判断してもよいし、撮像手段400が撮影した画像をモニタ等によって作業者が目視して判断してもよい。作業者による目視は、屈曲部がT字管(分岐)であって、いずれの分岐の方向に進むかを作業者によって決定する場合等に好適である。
【0072】
走行中の第1ユニットU1が屈曲部にない場合(ステップSA4:NO)は、全ての能動車輪110Tを前進方向に回転させる(ステップSA3)ことで直進を継続する。走行中の第1ユニットU1が屈曲部に到達した場合(ステップSA4:YES)は、ヨー軸の角度調整のみで前進可能かを判定する(ステップSA5)。つまり、ヨー軸を回転軸として関節部200を回転させ、左右方向に第1ユニットU1の方向を変えることのみで屈曲部を通過できるかを判定する。
【0073】
ヨー軸の角度調整のみで前進可能の場合(ステップSA5:YES)、すなわち屈曲部によって管内走行ロボット1000が左右方向に曲がる場合は、ヨー軸回転フローへ移行(ステップSA6)して、直管走行フローを終了する。ヨー軸の角度調整のみで前進不可の場合(ステップSA5:NO)、すなわち屈曲部によって管内走行ロボット1000が上下方向や斜め上、斜め下の方向に移動する場合は、ロール軸回転フローへ移行(ステップSA7)して、直管走行フローを終了する。
【0074】
(ヨー軸回転フロー)
図12に示すヨー軸回転フローは、配管の屈曲部を通過する際に、関節部200によって管内走行ロボット1000の形状を屈曲部に追従するように変形させるためのフローである。
上述のように、走行中の第1ユニットU1が屈曲部に到達し(ステップSA4:YES)、屈曲部がヨー軸の角度調整のみで前進可能と判断されたとき(ステップSA5:YES)、ヨー軸回転フローが開始される。
【0075】
まず、全ての能動車輪110Tを停止する(ステップSB1)。次に、第1開閉機構を閉じる(ステップSB2)。つまり、第1ユニットU1の第1開閉機構により、能動車輪110Tを配管の内壁から離れた状態とする。次に、第1関節を経路方向に角度制御する(ステップSB3)。つまり、第1ユニットU1が屈曲部の内部を通過できるように、第1関節を能動的に回転させることによって第1ユニットU1の向きを変更する。
【0076】
その後、全ての能動車輪を前進方向に回転させる(ステップSB4)。ここで、ステップSB2によって、第1ユニットU1の能動車輪110Tは配管の内壁から離れた状態である。よって、ステップSB4によっては、第4ユニットU4の能動車輪110Tによって、第1ユニットU1、第2ユニットU2、第3ユニットU3が進行方向に押し出されるように動く。第1ユニットU1が屈曲部を通過した(ステップSB5)ら、全ての能動車輪110Tを停止する(ステップSB6)。
【0077】
その後、第1開閉機構を開き、第2、第3、第4開閉機構を閉じる。つまり、第1ユニットU1の第1開閉機構により、能動車輪110Tを配管の内壁に接した状態とする。これと同時に、第2開閉機構及び第3開閉機構により、受動車輪120Tを配管の内壁から離れた状態とする。更に、第4開閉機構により、第4ユニットU4の能動車輪110Tを配管の内壁から離れた状態とする。(ステップSB7)。このとき、管内走行ロボット1000は、第1ユニットU1及び第4ユニットU4の能動車輪110Tのみが配管の内壁に接した状態となる。
【0078】
上記の状態で、全ての関節部200を、受動的に変位可能とする(ステップSB8)。この制御は、制御手段300により自動で行われてもよいし、作業者がインターフェイスを介して制御手段300に指示を与えることで行われてもよい。関節部200を受動的に変位可能とすることは、例えば、制御手段300が関節部200の制御を停止することで行ってもよい。具体器には、関節部200の関節モータ231への電力供給を停止して、関節モータ231が脱力した状態とすることで受動的に変位可能としてもよい。あるいは、センサ等からの変位入力に係る情報などに基づき、制御手段300が、関節部200を受動的に変位するように制御することで行ってもよい。
【0079】
その後、全ての能動車輪110Tを前進方向に回転させる(ステップSB9)。これにより、第1ユニットU1は屈曲部の内部を進み始める。ここで、ステップSB9の時点では、ステップSB7により全ての受動車輪120Tと、第4ユニットU4の能動車輪110Tは配管から離れた状態である。つまり、制御手段300は、屈曲部を走行する際は第1ユニットU1の能動車輪110Tのみを配管の内部に接触させる。これにより、屈曲部を走行する際に受動車輪120Tが配管との摩擦力等によって走行の妨げとなることを防ぐ。
【0080】
第1ユニットU1が屈曲部の内部を進むことに伴い、第2ユニットU2、第3ユニットU3も屈曲部の内部を進む。このとき、上述のように全ての関節部200が受動的に変位可能の状態であるから、屈曲部の形状に合わせて関節部200が変形して、第2ユニットU2及び第3ユニットU3が屈曲部を通過できるようにする。
【0081】
第2ユニットU2、第3ユニットU3が屈曲部を進行すると、やがて第4ユニットU4が屈曲部に到達する(ステップSB10)。このとき、第4ユニットU4の能動車輪110Tは配管の内壁に接した状態である。このため、このまま第4ユニットU4が屈曲部の内部を進行すると、能動車輪110Tが配管との摩擦によって走行の妨げとなることがある。
【0082】
このため、第4ユニットU4が屈曲部に到達したら、まず、全ての能動車輪110Tを停止する(ステップSB11)。次に、第2、第3開閉機構を開く(ステップSB12)。これにより、第1ユニットU1の能動車輪110T、第2ユニットU2、第3ユニットU3の受動車輪120Tが配管の内壁に接し、第4ユニットU4の能動車輪110Tが配管の内壁から離れた状態とする。その後、全ての能動車輪110Tを前進方向に回転させる(ステップSB13)。これにより、第4ユニットU4が屈曲部を通過する。このとき、制御を簡易なものとするために上述のように全ての能動車輪110Tを回転させてもよいが、配管の内壁に接していない第4ユニットU4の能動車輪110Tは回転させなくてもよい。
【0083】
第4ユニットU4が屈曲部を通過(ステップSB14)、すなわち、管内走行ロボット1000が屈曲部を通過し、管内走行ロボット1000全体が再び直管部に位置する状態となった後、全ての能動車輪110Tを停止する(ステップSB15)。その後、全ての関節部200を真っすぐに制御する(ステップSB16)。つまり、関節部200を制御することで、管内走行ロボット1000の全てのユニット100が一直線上に並んだ状態とする。その後、第4開閉機構を開く(ステップSB17)。これにより、再び直管部において全ての能動車輪110Tと受動車輪120Tとが配管の内壁に接した状態となる。その後、直管走行フローへ移行(ステップSB18)して、ヨー軸回転フローを終了する。
【0084】
(ロール軸回転フロー)
図13に示すロール軸回転フローは、配管の屈曲部を通過する前に、管内走行ロボット1000の管軸Oまわりの角度を変更するためのフローである。これにより、ヨー軸を回転軸として第1ユニットU1の方向を変えることのみで屈曲部を通過できない場合、すなわち屈曲部によって管内走行ロボット1000が上下方向や斜め上、斜め下の方向に移動する場合に対応できるようにする。
【0085】
上述のように、走行中の第1ユニットU1が屈曲部に到達し(ステップSA4:YES)、屈曲部がヨー軸の角度調整のみで前進不可と判断されたとき(ステップSA5:NO)、ヨー軸回転フローが開始される。
まず、全ての能動車輪110Tを停止する(ステップSC1)。次に、第1、第4開閉機構を閉じる(ステップSC2)。これにより、第2ユニットU2及び第3ユニットU3の受動車輪120Tのみが配管の内部に接し、配管の内部において第2ユニットU2及び第3ユニットU3が周方向に固定された状態とする。
【0086】
この状態で、第1、第2ロール軸を用いて、経路方向に角度制御する(ステップSC3)。具体的には、第1ロール軸及び第2ロール軸を用いて第1ユニットU1と第2ユニットU2との間、及び第3ユニットU3と第4ユニットU4との間において管軸O方向まわりの相対角度を変化させる。これにより第1ユニットU1及び第4ユニットU4が、管軸O方向周りに回転する。前記回転は、第1ユニットU1及び第4ユニットU4が、屈曲部の内部を関節部200の変形によって進行可能となる角度になるまで行う。この制御は、制御手段300が自動で行ってもよいし、作業者が制御手段300に対して指示を入力することで行ってもよい。これにより、第1ユニットU1及び第4ユニットU4の角度を屈曲部の方向に合わせることで、第1ユニットU1が第1関節による角度制御によって屈曲部の内部を進むことができるようにする。
【0087】
上述のように第1ユニットU1と第4ユニットU4とを屈曲部の方向に合わせた後、第1、第4開閉機構を開き、第2、第3開閉機構を閉じる(ステップSC4)。これにより、第1ユニットU1及び第4ユニットU4の能動車輪110Tのみが配管の内部に接し、配管の内部において第1ユニットU1及び第4ユニットU4が周方向に固定された状態とする。
【0088】
この状態で、第1、第2ロール軸を用いて、経路方向に角度制御する(ステップSC5)。具体的には、第1ロール軸及び第2ロール軸を用いて、上述のステップで変化させた第1ユニットU1と第2ユニットU2との間、及び第3ユニットU3と第4ユニットU4との間における管軸O方向まわりの相対角度を最初の状態に戻す。つまり、制御手段300は、ロール軸回転フローにおいて、能動車輪110T又は受動車輪120Tのいずれかのみを配管の内部に接触させた状態で、ロール軸ユニット130により能動車輪ユニット110と受動車輪ユニット120との相対角度を変更し、管内走行ロボット1000の管軸Oまわりの向きを変える。これにより、関節部200の制御のみによって屈曲部を管内走行ロボット1000が進むことができるようにする。
【0089】
上述の状態となった後、第2、第3開閉機構を開く(ステップSC6)ことで、屈曲部の内部を走行できるようにする。その後にヨー軸回転フローへ移行(ステップSC7)し、ロール軸回転フローを終了する。
上記各フローを適宜実行することにより、管内走行ロボット1000は屈曲部を有する配管の内部を走行する。
【0090】
以上説明したように、本実施形態に係る管内走行ロボット1000によれば、制御手段300は、配管の屈曲部を走行する際に関節部200を受動的に変位可能とする。これにより、管内走行ロボット1000が配管の屈曲部を走行する際、例えば、進行方向の側に位置する能動車輪ユニット110が屈曲部に位置して、その直後に位置するユニット100が直線部に位置する時、それらの間に位置する関節部200が受動的に変位する。同様に、進行方向の側に位置するユニット100が屈曲部に位置して、その直後に位置するユニット100が直線部に位置する時、それらの間に位置する関節部200が受動的に変位する。したがって、制御手段300によって関節部200を能動的に制御することなく、配管の形状に合わせて管内走行ロボット1000を適宜変形することができる。このため、配管の経路情報を事前に把握していなくても、配管の内部を走行することができる。
【0091】
また、制御手段300は、関節部200の制御を停止することで受動的な変形を可能とする。これにより、管内走行ロボット1000が配管の屈曲部を走行する際の制御手段300の処理負担を最小限とすることができる。
【0092】
また、制御手段300は、関節部200を受動的に変位するように制御する。これにより、関節部200の制御を停止することで受動的な変形を可能とする場合と比較して、配管の屈曲部を走行する際における管内走行ロボット1000の姿勢を最適に維持することができる。
【0093】
また、能動車輪ユニット110は撮像手段400を備える。これにより、例えば、管内走行ロボット1000が屈曲部に到達したことや、屈曲部の向きを確認することができる。また、配管の内壁の損傷状態等を把握することができる。また、撮影した画像を作業者が確認することで、管内走行ロボット1000を用いた作業を効率的に行うことができる。
【0094】
また、能動車輪110T及び受動車輪120Tは、配管の内壁に対し接触及び離隔が可能である。能動車輪110Tが配管の内壁に対して接触した状態で能動的に回転することで、管内走行ロボット1000を配管の内部を走行させることができる。受動車輪120Tが配管の内壁に対して接触することで、静止中の管内走行ロボット1000の配管の内部における姿勢を維持することができる。また、受動車輪120Tが配管の内壁に対して接触した状態で受動的に回転することで、走行中においても管内走行ロボット1000の姿勢を維持することができる。
【0095】
また、ロール軸ユニット130は、管軸O方向を中心として能動車輪ユニット110と受動車輪ユニット120との相対角度を変更可能である。これにより、配管の内部において能動車輪ユニット110及び受動車輪ユニット120の姿勢を変更することができる。
【0096】
また、制御手段300は、配管の内部を直進する際には能動車輪110T及び受動車輪120Tを配管の内部に接触させる。これにより、直進時の管内走行ロボット1000の姿勢を維持することができる。また、屈曲部を走行する際は能動車輪110Tのみを配管の内部に接触させる。これにより、屈曲部を走行する際に受動車輪120Tが走行の妨げとなることを防ぐことができる。
【0097】
ここで、本発明に係る管内走行ロボット1000は、能動車輪ユニット110と受動車輪ユニット120との相対角度を変更しない場合は、関節部200の回転軸を中心とした方向にのみ進行方向を変更可能である。
これに対し、制御手段300は、能動車輪110T又は受動車輪120Tのいずれかのみを配管の内部に接触させた状態で、ロール軸ユニット130により能動車輪ユニット110と受動車輪ユニット120との相対角度を変更する。
【0098】
受動車輪120Tのみを配管の内部に接触させた状態で、ロール軸ユニット130により能動車輪ユニット110と受動車輪ユニット120との相対角度を変更することにより、配管の内部において、管軸Oを中心として能動車輪ユニット110を回転させることができる。つまり、配管の内部において関節部200の軸方向を変更することができる。したがって、屈曲部の屈曲方向に対して自在に対応することができる。
【0099】
能動車輪110Tのみを配管の内部に接触させた状態で、ロール軸ユニット130により能動車輪ユニット110と受動車輪ユニット120との相対角度を変更することにより、配管の内部において、能動車輪ユニット110に対して受動車輪ユニット120の姿勢を追従することができる。これにより、屈曲部の屈曲方向に制限されることなく、管内走行ロボット1000を走行させることができる。
【0100】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、1つの受動車輪ユニット120のみによって管内走行ロボット1000の姿勢を維持することが担保できれば、2つ目の受動車輪ユニット120及び中間ユニット140は設けられなくてもよい。
また、開閉機構Pの構造は上記のものに限らず、例えば、開閉アームP9を空気シリンダや油圧シリンダ等によって移動させる構造であってもよい。
また、関節部200の動力は関節モータに限らず、開閉アームP9を空気シリンダや油圧シリンダ等によって移動させる構造であってもよい。この場合、ヨー軸回転フローのステップSB5に係る「受動的に変位可能とする」ことは、空気シリンダの空気を抜くことで脱力してもよいし、空気シリンダを受動的に変形可能に制御することで行ってもよい。
【0101】
また、能動車輪110Tを駆動させる車輪モータ110Amは、公知のモータに限らず、エンジン等を用いてもよい。
また、屈曲部の曲がり量が少ない場合は、直管走行フローから他のモードに移行せずにっ走行してもよい。
【0102】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0103】
100 ユニット
110 能動車輪ユニット
110T 能動車輪
120 受動車輪ユニット
120T 受動車輪
130 ロール軸ユニット
200 関節部
300 制御手段300
400 撮像手段
1000 管内走行ロボット
O 管軸
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