(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094143
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】非常電話機
(51)【国際特許分類】
H04M 1/24 20060101AFI20230628BHJP
H04R 29/00 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
H04M1/24 B
H04R29/00 310
H04R29/00 320
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209437
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】597165618
【氏名又は名称】株式会社ネクスコ東日本エンジニアリング
(71)【出願人】
【識別番号】594073174
【氏名又は名称】旭光通信システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】菅原 剛
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】川中 義秀
【テーマコード(参考)】
5K127
【Fターム(参考)】
5K127AA07
5K127AA36
5K127BA01
5K127BA12
5K127BA18
5K127BB01
5K127BB19
5K127DA01
5K127GA29
5K127GD17
5K127NA02
5K127NA13
(57)【要約】
【課題】非常電話機を使用する際の動作を再現した点検を遠隔から容易に行えるようにする。
【解決手段】非常電話機は、点検を開始すると、フック部材を、スイッチをオフにする位置からオンにする位置に機械的に移動させ、非常電話回線を介して非常電話機を受付台に接続し、非常電話機の受話器から音声を出力した状態で送話器が収音して得られる音声信号から環境音の成分を抑圧又は除去した音声信号を録音し、かつ録音した音声信号を非常電話機で再生した後、フック部材を、スイッチをオンにする位置からオフにする位置に機械的に移動させ、非常電話機と非常電話回線との接続を解除するように構成されており、点検中に受話器から出力された音声を送話器に導く導音管と、導音管に接続され、かつ導音管と送話器との間に配置された、点検中に導音管からの音声と外部から導入された環境音とを送話器に収音させる導音箱とを備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非常電話回線を介して受付台と接続される非常電話機であって、
前記非常電話回線とは別の電話回線を介して伝送された点検の開始を指示する開始信号を受信する受信部と、
該非常電話機を前記非常電話回線と接続するスイッチのオン・オフを切り替えるフック部材を、前記スイッチをオフにする位置とオンにする位置との間で機械的に移動させるソレノイドと、
前記開始信号を受信した場合に前記ソレノイドを起動させ、前記フック部材を、前記スイッチをオフにする前記位置からオンにする前記位置に機械的に移動させ、前記非常電話回線を介して前記非常電話機を前記受付台に接続する第1の制御部と、
前記非常電話回線に接続された前記非常電話機の受話器から音声を出力した状態で送話器が収音して得られる音声信号から環境音の成分を抑圧又は除去した音声信号を録音し、かつ録音した前記音声信号を前記非常電話機で再生する録音部と、
前記ソレノイドを停止させ、前記フック部材を、前記スイッチをオンにする前記位置からオフにする前記位置に機械的に移動させ、前記非常電話機と前記非常電話回線との接続を解除する第2の制御部と
を含み、
点検中に前記受話器から出力された前記音声を前記送話器に導く導音管と、
前記導音管に接続され、かつ前記導音管と前記送話器との間に配置された、前記点検中に前記導音管からの前記音声と外部から導入された環境音とを前記送話器に収音させる導音箱と
を更に含むことを特徴とする非常電話機。
【請求項2】
前記フック部材は、前記受話器の部分と前記送話器の部分とを含むハンドセットを掛け置くアーム部を有し、
前記導音箱は、前記フック部材を、前記スイッチをオフにする前記位置からオンにする前記位置に機械的に移動させたときに、前記導音箱の第1の面が前記アーム部に掛け置かれた状態の前記ハンドセットにおける前記送話器の部分と向かい合い、前記送話器の部分と接するように配置され、
前記導音箱の前記第1の面とは異なる第2の面には、外部から前記環境音を導入する開口部が形成されており、
前記導音箱の前記第1の面には、前記音声と前記環境音とを前記送話器に導く開口部が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の非常電話機。
【請求項3】
前記導音管に接続され、かつ前記導音管と前記受話器との間に配置された、前記点検中に前記受話器から出力された前記音声の拡散を防ぎ、前記音声を前記導音管に導くための導音部材
を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の非常電話機。
【請求項4】
前記受話器から出力させる音声信号を増幅するアンプを更に備える
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の非常電話機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常電話機に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路等の道路には、事故等の非常事態が発生した場合に道路の管理者等に連絡するための非常電話機が設置されている。非常電話機を設置した道路の管理者等は、非常電話機による非常事態の連絡を常に受け付けることができるよう、該非常電話機の点検を定期的に行っている。
【0003】
非常電話機の点検に関連する技術の1つとして、送受話器がオンフック状態、すなわち利用者が被試験機を使用していないときに試験機から着呼があると、送受話器を疑似的にオフフック状態とし、試験機との回線を接続する被試験電話機が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この種の被試験電話機は、送受話器を疑似的にオフフック状態とすることで、点検を行う作業員等が送受話器をオフフックにすることなく、電話機の試験を遠隔から行うことを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した被試験電話機では、試験中の送受話器の実際の状態はオンフック状態である。このため、利用者が送受話器を取り上げたときにオンフック状態からオフフック状態になるか否かの点検は、作業員が電話機毎に送受話器を取り上げて行う必要がある。更に、オフフック状態であるときに送受話器の受話器から放音(出力)される音声が正常であるか否かの点検等も、例えば、作業員が電話機毎に送受話器から放音される音声を聞き取って行う必要がある。
【0006】
上記の実情を鑑み、本発明は、非常電話機を使用する際の動作を再現した点検を遠隔から容易に行うことが可能な技術を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様に係る非常電話機は、非常電話回線を介して受付台と接続される非常電話機であって、前記非常電話回線とは別の電話回線を介して伝送された点検の開始を指示する開始信号を受信する受信部と、該非常電話機を前記非常電話回線と接続するスイッチのオン・オフを切り替えるフック部材を、前記スイッチをオフにする位置とオンにする位置との間で機械的に移動させるソレノイドと、前記開始信号を受信した場合に前記ソレノイドを起動させ、前記フック部材を、前記スイッチをオフにする前記位置からオンにする前記位置に機械的に移動させ、前記非常電話回線を介して前記非常電話機を前記受付台に接続する第1の制御部と、前記非常電話回線に接続された前記非常電話機の受話器から音声を出力した状態で送話器が収音して得られる音声信号から環境音の成分を抑圧又は除去した音声信号を録音し、かつ録音した前記音声信号を前記非常電話機で再生する録音部と、前記ソレノイドを停止させ、前記フック部材を、前記スイッチをオンにする前記位置からオフにする前記位置に機械的に移動させ、前記非常電話機と前記非常電話回線との接続を解除する第2の制御部とを含み、点検中に前記受話器から出力された前記音声を前記送話器に導く導音管と、前記導音管に接続され、かつ前記導音管と前記送話器との間に配置された、前記点検中に前記導音管からの前記音声と外部から導入された環境音とを前記送話器に収音させる導音箱とを更に含む非常電話機である。
【発明の効果】
【0008】
上述の態様によれば、非常電話機を使用する際の動作を再現した点検を遠隔から容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】非常電話システムの一例を説明する概略図である。
【
図2】一実施形態に係る非常電話システムの構成例を説明する概略図である。
【
図3】一実施形態に係る非常電話機の回路構成例を説明する概略図である。
【
図4】一実施形態に係る非常電話機のフックスイッチのオン・オフの切り替え方法を説明する概略図である。
【
図5】一実施形態に係る非常電話システムにおける非常電話機の点検方法を説明するシーケンス図である。
【
図6】一実施形態に係る非常電話機の外観構成の一例を説明する概略図である。
【
図7】非常電話機の送受話器における送話部の構成例を説明する概略図である。
【
図8】一実施形態に係る非常電話機における放音箱の構成例を説明する斜視図である。
【
図9】一実施形態に係る非常電話機の動作の一例を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る非常電話システム及び非常電話機の点検方法についての実施形態を詳細に説明する。なお、以下の説明では、従来の非常電話システム及び非常電話機における周知の構成及び動作についての詳細な説明を省略する。
【0011】
図1は、非常電話システムの一例を説明する概略図である。
図1には、高速道路網に設置される複数台の非常電話機2を含む非常電話システム1を例示している。
【0012】
非常電話システム1における複数台の非常電話機2は、例えば、高速道路網における、管制センタ3が管轄するエリア内に設置されている。複数台の非常電話機2は、1つのブロック4に含まれる非常電話機2の台数が予め定められた最大台数(例えば、9台)以下となるように、複数のブロック4にグループ分けされている。1つのブロック4に含まれる複数台の非常電話機2は、単一の非常電話回線5により、線路監視装置(L-SV:Line-Super Visor)6に接続されている。線路監視装置6は、非常電話回線5の監視等を行う装置であり、例えば、道路沿い、サービスエリア、パーキングエリア、料金所等の近傍にある通信機械室7等に設置されている。非常電話回線5は、線路監視装置6、及び
図1には示していない自動交換設備(PBX:Private (automatic) Branch eXchange)等を介して、管制センタ3の受付台301に接続されている。1つのブロック4に含まれる複数台の非常電話機2は、2台以上の非常電話機2を同時に受付台301に接続することができない態様で、非常電話回線5に接続されている。
【0013】
図1に例示した非常電話システム1に含まれる非常電話機2は、例えば、電話機本体と、受話器及び送話器を含むハンドセットとを含む。電話機本体には、フックスイッチのオン・オフを切り替えるフック部材が、該電話機本体の筐体に対して移動可能に取り付けられている。フック部材は、例えば、電話機本体の外部に延伸するハンドセット受け部にハンドセットが掛け置かれた場合にフックスイッチをオフにし、ハンドセット受け部からハンドセットが取り上げられた場合にフックスイッチをオンにするように構成される。フックスイッチをオフにすると、非常電話回線5を介した受付台301との接続が解除された状態(以下「オンフック状態」という)になる。フックスイッチをオンにすると、非常電話回線5を介して受付台301と接続された状態(以下「オフフック状態」という)になり、管制センタ3内の係員が受付台301に接続されたハンドセット302を取り上げると、非常電話機2の利用者と、管制センタ3内の係員との通話が可能になる。
【0014】
この種の非常電話システム1では、複数台の非常電話機2が数kmの範囲にわたって分散しているため、点検時に係員が各非常電話機2の設置場所に赴くことは点検効率が非常に悪い。このため、本実施形態に係る非常電話システム1では、以下に述べるように、各非常電話機2を遠隔(具体的には、管制センタ3)から操作して点検する。
【0015】
図2は、一実施形態に係る非常電話システムの構成例を説明する概略図である。なお、
図2の非常電話システム1には、非常電話機2の1つのブロック4のみを示しているが、非常電話機2のブロック4は2つ以上であってもよい。
【0016】
本実施形態に係る非常電話システム1は、交通管制室等の管制センタ3に設置された受付台301、ハンドセット302、業務電話機303、試験制御装置304、及び第1の自動交換設備(PBX)305を含む。また、非常電話システム1は、通信機械室7等に設置された第2の自動交換設備(PBX)8、線路監視装置(L-SV)6、及び回線制御装置9を含む。更に、非常電話システム1は、複数台の非常電話機2を含むブロック4を含む。なお、非常電話システム1は、
図2には示していない他の装置、例えば、幹線伝送装置やローカル伝送装置等の、情報伝達やデータ送受信を行う伝送装置(光伝送設備)を含んでもよい。
【0017】
管制センタ3に設置された受付台301は、非常電話システム1に含まれる全ての非常電話機2からの通話を受け付ける。非常電話機2は、非常電話回線5、線路監視装置6、第2の自動交換設備8、第1の自動交換設備305、及び試験制御装置304を介して、受付台301と接続される。試験制御装置304は、非常電話システム1に含まれる非常電話機2に対する遠隔からの動作試験(点検)を制御する装置であり、例えば、コンピュータと、以下に説明する制御処理をコンピュータに実行させるプログラムとにより実現することができる。
【0018】
受付台301は、非常電話機2からの音声信号(受話信号)をハンドセット302の受話器に出力し、ハンドセット302の送話器で収音した音声信号(送話信号)を非常電話機2に出力する。
【0019】
業務電話機303は、非常電話回線5とは別の業務電話回線を介して他の電話機との通話を行う。また、業務電話機303は、試験制御装置304、第1の自動交換設備305、第2の自動交換設備8、及び回線制御装置9を介して、業務電話回線10により回線制御装置9に接続された1台以上の非常電話機2に対し、点検の開始を指示する信号を送信することができる。回線制御装置9は、業務電話機303又は試験制御装置304からの制御信号に基づいて、業務電話回線10により接続された非常電話機2の呼び出し、及び業務電話機303との接続を制御する装置である。回線制御装置9と非常電話機2とを接続する業務電話回線10には、例えば、予備の非常電話回線を利用可能である。1つのブロック4に含まれる複数台の非常電話機2は、単一の業務電話回線10により回線制御装置9に接続されている。
【0020】
本実施形態の非常電話システム1において非常電話機2の点検(動作試験)をする際には、まず、点検の対象に選択した非常電話機2をオンフック状態からオフフック状態に切り替える処理を行う。この処理は、例えば、管制センタ3の係員が業務電話機303を操作して行う。管制センタ3の係員は、業務電話機303を操作して回線制御装置9を呼び出し、業務電話回線10を通じて点検の対象に選択した非常電話機2を識別する信号を送信する。点検の対象に選択された非常電話機2は、業務電話機303からの信号を受信すると、ハンドセットを掛け置くフック部材をオンフック状態の位置からオフフック状態の位置に機械的に移動させる。すなわち、非常電話機2は、該非常電話機2の利用者がハンドセットを取り上げたときと実質的に同一のオフフック状態を、遠隔からの操作に基づいて自動的に再現し、非常電話回線5を介した受付台301との接続を行う。非常電話機2と受付台301とが非常電話回線5を介して接続されると、業務電話回線10を介した業務電話機303と非常電話機2との接続は解除される。
【0021】
また、本実施形態の非常電話システム1では、上記の遠隔操作により、非常電話機2と受付台301とが非常電話回線5を介して接続されると、非常電話機2のハンドセットに設けられた受話器から試験音声が出力される。試験音声は、例えば、管制センタ3のハンドセット302で収音した音声信号、或いは受付台301又は試験制御装置304が出力した音声信号等を含む。また、試験音声は、例えば、非常電話機2に設けられた発振器が出力した所定周波数の音響信号を含む。非常電話機2は、ハンドセットの受話器から試験音声を非常電話機2の外部空間に出力している期間、該ハンドセットの送話器により収音した音声信号を非常電話機2に設けた録音部(レコーダ)により録音する。試験音声の出力及び録音部による録音が終了すると、非常電話機2は、録音した音響データを再生し、再生音声として非常電話回線5に出力する。非常電話回線5に出力された再生音声は、線路監視装置6、第2の自動交換設備8、第1の自動交換設備305、及び試験制御装置304を介して受付台301及びハンドセット302に伝送される。
【0022】
受付台301、又は管制センタ3の係員は、非常電話機2からの再生音声に基づいて、点検の対象に選択された非常電話機2の動作の異常の有無、及び非常電話回線5を含む非常電話機2と受付台301との通話経路の異常の有無を判定する。該判定の後、管制センタ3のハンドセット302をオンフック状態にして非常電話機2と受付台301との接続を解除すると、非常電話機2は、フック部材をオフフック状態の位置からオンフック状態の位置に機械的に移動させてフックスイッチをオフにする。
【0023】
図3は、一実施形態に係る非常電話機2の回路構成例を説明する概略図である。
図3には、単一の非常電話回線5により線路監視装置6に接続される1つのブロックに含まれる複数台の非常電話機2のうちの1段目の非常電話機2の回路構成例を示している。
【0024】
非常電話機2は、業務電話回線10により回線制御装置9と接続された第1のPB受信部(PB_REC1)201と、第1のマイコン(マイコン1)202と、ソレノイド203と、フックスイッチ204と、スピーチネットワーク205とを含む。第1のPB受信部201は、回線制御装置9を介して業務電話回線10により伝送される非常電話機2のID番号を受信し、第1のマイコン202に転送する。業務電話回線10により伝送されるID番号は、点検の対象に選択した非常電話機2を識別する番号であり、
図3に例示した非常電話機2の後段の他の非常電話機2にも伝送される。第1のマイコン202は、第1のPB受信部201から転送されたID番号と、該第1のマイコン202を含む非常電話機2に付与されたID番号(自機番号206)とを比較し、両者が一致する場合には、ソレノイド203を起動する第1の制御部の一例である。ソレノイド203は、フックスイッチ204のオンとオフとを切り替えるフック部材に対して、該ソレノイド203を起動した場合にフック部材がフックスイッチ204をオンにする方向に移動するように取り付けられている。フック部材は、例えば、非常電話機2のハンドセット207を掛け置く部位を有し、ハンドセット207を掛け置いた場合にフックスイッチ204がオフになる位置に移動し、ハンドセット207を取り上げた場合にフックスイッチ204がオンになる位置に移動するように、非常電話機2の本体部分に取り付けられている。フックスイッチ204がオンになると、スピーチネットワーク205と線路監視装置6とが非常電話回線5を介して接続される。スピーチネットワーク205は、線路監視装置6等を介して管制センタ3のハンドセット302等から送信された音声信号(受話信号)をハンドセット207の受話器208に出力し、ハンドセット207の送話器209で収音した音声信号(送話信号)を線路監視装置6等を介して管制センタ3のハンドセット302等に出力する。ハンドセット207の送話器209は、
図7等を参照して後述するように、マイクで収音して得られる音声信号から環境音の成分を抑圧又は除去した音声信号を、送話信号として出力する。以下の説明では、送話器209が出力する、環境音の成分を抑圧又は除去した音声信号を「送話信号」ともいう。
【0025】
また、非常電話機2は、第2のPB受信部(PB_REC2)210と、第2のマイコン(マイコン2)211と、第1のセレクタ(SE1)212及び第2のセレクタ(SE2)213と、第1のアンプ(PGAMP1)214及び第2のアンプ(PGAMP2)215と、レコーダ216と、第1~第4のスイッチ217~220と、発振器(OSC)221と、第2のPB発信部(PB_OSC2)222とを含む。
【0026】
スピーチネットワーク205は、ソレノイド203が起動してフックスイッチ204がオンになると、第2のPB受信部210を介して第2のマイコン211に対し、非常電話機2が非常電話回線5により受付台301に接続されたことを通知する。第2のマイコン211は、第1のマイコン202からソレノイド203への起動信号の出力を停止させ、第2のマイコン211からソレノイド203へ起動信号を出力する。また、第2のマイコン211は、非常電話機2に対する点検が終了すると、ソレノイド203への起動信号の出力を停止し、非常電話機2と非常電話回線5との接続を解除する。第2のマイコン211は、ソレノイド203を停止させて非常電話機2と非常電話回線5との接続を解除する第2の制御部の一例である。
【0027】
第1のスイッチ217及び第2のスイッチ218は、非常電話機2のハンドセット207の受話器(レシーバ)208に出力する音声信号の伝送経路を切り替える。利用者がハンドセット207を取り上げたことにより非常電話機2と受付台301とが接続された場合、第1のスイッチ217及び第2のスイッチ218は、スピーチネットワーク205で受信した音声信号(受話信号)がそのまま受話器208に出力されるように、スピーチネットワーク205と受話器208とを接続する。一方、点検時(すなわちソレノイド203を起動したことにより非常電話機2と受付台301とが接続された場合)には、第1のスイッチ217及び第2のスイッチ218は、スピーチネットワーク205で受信した音声信号が第1のセレクタ212及び第1のアンプ214を介して受話器208に出力されるように、スピーチネットワーク205と受話器208とを接続する。第1のセレクタ212は、第1のスイッチ217を介して入力されるスピーチネットワーク205からの音声信号と、発振器221が出力した音響信号とを切り替える。発振器221は、所定の周波数(例えば、400Hz)の音響信号を出力する。第1のアンプ214は、第1のセレクタ212から出力された音声信号又は音響信号を増幅する。
【0028】
第3のスイッチ219及び第4のスイッチ220は、非常電話機2のハンドセット207の送話器(マイクロフォン)209が出力した送話信号の伝送経路を切り替える。利用者がハンドセット207を取り上げたことにより非常電話機2と受付台301とが接続された場合、第3のスイッチ219及び第4のスイッチ220は、送話器209が出力した送話信号がそのままスピーチネットワーク205に入力されるように、送話器209とスピーチネットワーク205とを接続する。一方、点検時には、第3のスイッチ219及び第4のスイッチ220は、送話器209が出力した送話信号がレコーダ216、第2のアンプ215、及び第2のセレクタ213を介してスピーチネットワーク205に入力されるように、送話器209とスピーチネットワーク205とを接続する。レコーダ216は、送話器209が出力した送話信号を録音し、録音した送話信号を再生する。第2のアンプ215は、回線ロス設定223に基づいて、レコーダ216が再生した送話信号の回線ロス分を増幅する。第2のセレクタ213は、第2のアンプ215を介して入力される送話信号と、第2のPB発信部222が出力したPB信号とを切り替える。第2のPB発信部222が出力するPB信号は、例えば、レコーダ216で録音した送話信号の再生が終了したときに、受付台301に対して再生終了(試験終了)を通知する信号である。
【0029】
また、非常電話機2は、人感センサ224と、第1のPB発信部(PB_OSC1)225とを含む。人感センサ224は、非常電話機2の前方の人の有無を検知するセンサであり、第1のマイコン202に接続されている。点検時に、人感センサ224により非常電話機2の前方に人がいることを検知すると、第1のマイコン202は、該検知結果を第2のマイコン211に通知し、第2のマイコン211によるソレノイド203の起動を停止させてフックスイッチ204をオフにする。また、フックスイッチ204がオフであるときに人感センサ224により非常電話機2の前方に人がいることを検知すると、第1のマイコン202は、第1のPB発信部225にPB信号を出力させる。第1のPB発信部225が出力するPB信号は、業務電話回線10を介して、同一の非常電話回線5に接続された他の非常電話機2に伝送される。第1のPB発信部225が出力するPB信号は、同一の非常電話回線5に接続された同一ブロック4内に点検中の非常電話機2がある場合に、該非常電話機2の点検を強制的に終了させる信号である。すわなち、点検中の非常電話機2は、第1のPB受信部201により他の非常電話機2からのPB信号を受信した場合には、第1のマイコン202又は第2のマイコン211によるソレノイド203の起動を停止させてフックスイッチ204をオフにする。
【0030】
本実施形態の非常電話システム1における非常電話機2は、上記のように、フックスイッチ204をオンにすると非常電話回線5を介して管制センタ3の受付台301と接続された状態になる。非常電話機2のフックスイッチ204のオン・オフは、上記のように、電話機本体の筐体に対して移動可能に取り付けられたフック部材の位置を変えることにより切り替わる。
【0031】
図4は、一実施形態に係る非常電話機のフックスイッチのオン・オフの切り替え方法を説明する概略図である。
図4には、非常電話機2におけるフックスイッチ204、フック部材250、ハンドセット207、及びフック部材250を移動させる機構のみを模式的に示している。
図4に示した手前方向及び奥方向は、それぞれ、非常電話機2に正対した利用者から見た電話機本体(図示せず)における利用者に近づく方向及び利用者から遠ざかる方向である。また、
図4に示した上方向及び下方向は、それぞれ、非常電話機2が設置された空間における鉛直上方及び鉛直下方である。
【0032】
フック部材250は、電話機本体の筐体(図示せず)に対して水平方向(より具体的には、非常電話機2に正対した利用者から見た左右方向)に延びる回転軸周りで回転可能に、電話機本体に取り付けられている。すなわち、
図4に例示したフック部材250は、軸251を支点として時計回り及び半時計回りに回転させることができる。
【0033】
フック部材250は、軸251から奥方向に延伸する第1のアーム部252、軸251から下方向に延伸する第2のアーム部253、及び軸251から手前方向に延伸する第3のアーム部254を有する。第1のアーム部252及び第2のアーム部253は電話機本体の筐体内部に位置する。第3のアーム部254は、筐体外部に延出したハンドセット受け部255を有する。
【0034】
第1のアーム部252には、フック部材250を
図4における時計回り方向に付勢するばね256の一端が取り付けられている。ばね256は、第3のアーム部254にハンドセット207が掛け置かれた場合に第3のアーム部254がハンドセット207から受ける荷重により第2のアーム部253がフックスイッチ204から離間して該フックスイッチ204がオフになり、ハンドセット207を取り上げると第2のアーム部253がフックスイッチ204に当接して該フックスイッチ204がオンになるようなものが用いられる。
【0035】
また、第1のアーム部252には、第3のアーム部254にハンドセット207が掛け置かれた状態のフック部材250を
図4における時計回り方向に回転させるソレノイド203が取り付けられている。ソレノイド203は、例えば、コイル261と、磁性部材262と、磁性部材262を第1のアーム部252に取り付ける取付部材263とを含む。ソレノイド203は、例えば、第1のアーム部252の下方に、コイル261に対して所定の方向の電流を印加した場合に磁性部材262を下方に移動させる磁場が生じるような向きで取り付ける。
【0036】
本実施形態に係る非常電話機2では、非点検時には、ソレノイド203のコイル261に対して電流を印加しない。このため、非常電話機2の非点検時であって、第3のアーム部254にハンドセット207が掛け置かれている場合には、フック部材250は、第2のアーム部253がフックスイッチ204から離間して該フックスイッチ204がオフになる位置(
図4に実線で示した回転位置)に保持される。
【0037】
一方、本実施形態に係る非常電話機2では、点検時には、ソレノイド203のコイル261に対して電流を印加することによりソレノイド203を起動する。このとき、コイル261には、第3のアーム部254にハンドセット207が掛け置かれた状態のまま、第2のアーム部253がフックスイッチ204に当接して該フックスイッチ204をオンにする回転位置までフック部材250を回転移動させることが可能な大きさの電流を印加する。これにより、作業員がハンドセット207を取り上げることなく、フック部材250を回転移動させてフックスイッチ204をオンにすることができる。したがって、本実施形態に係る非常電話機2は、ハンドセット207を取り上げたときに受付台301に接続されるか否かの点検を、遠隔からソレノイド203を起動させる信号を入力することにより行うことができる。
【0038】
また、本実施形態に係る非常電話機2は、上記のようにレコーダ216を有し、点検時にハンドセット207の受話器208から出力された音声を送話器209で収音し、送話器209が出力した音声信号(送話信号)を録音及び再生することができる。このため、本実施形態に係る非常電話システム1では、遠隔からの操作により、非常電話機2のハンドセット207や、非常電話機2と受付台301とを接続する非常電話回線5の点検も行うことができる。以下、
図5を参照して、本実施形態に係る非常電話システム1における非常電話機2の点検方法の一例を説明する。
【0039】
図5は、一実施形態に係る非常電話システムにおける非常電話機の点検方法を説明するシーケンス図である。
図5に例示した非常電話機2の点検作業は、例えば、点検の対象となる複数台の非常電話機2を含む1つのブロック内の全ての非常電話機2が受付台301と接続されていない状態(待機状態)である場合に実施される。
【0040】
本実施形態の非常電話システム1において非常電話機2の点検をする場合には、まず、管制センタ3の業務電話機303から回線制御装置9に対する内線呼出を行う(ステップS1)。管制センタ3の係員等の点検者は、業務電話機303のハンドセットを上げて発信音(DT)が聞こえることを確認した後、例えば、該ハンドセットのプッシュボタンを操作して回線制御装置9の内線番号(呼び出し番号)をダイヤルする。内線番号をダイヤルすると、第1の自動交換設備305及び第2の自動交換設備8等を介して、業務電話機303から回線制御装置9に内線呼出の信号(例えば、16Hzの呼出信号)が伝送され、ハンドセットの受話器から呼び出し音(RBT)が出力される。
【0041】
回線制御装置9は、業務電話機303からの呼び出し信号を数回検出すると、業務電話機303に応答を返信し(ステップS2)、業務電話機303を回線制御装置9に接続する。このとき、回線制御装置9は、非常電話機2に接続された業務電話回線10との絶縁を解除し、非常電話機2側に業務電話回線を伸ばす。
【0042】
業務電話機303と回線制御装置9とが接続された後、第1の自動交換設備305及び第2の自動交換設備8等を介して業務電話機303から回線制御装置9にID番号が伝送され、該回線制御装置9から業務電話回線10を通じて複数台の非常電話機2にID番号が転送される(ステップS3)。ID番号は、点検の対象に選択した非常電話機2を識別する番号であり、例えば、係員が、ハンドセットの呼び出し音が停止したことを確認した後、ハンドセットのプッシュボタンを操作して入力(ダイヤル)する。回線制御装置9は、ID番号を非常電話機2に転送した後、所定の期間(例えば、3秒)が経過すると、業務電話回線10の接続を解除する(ステップS4)。
【0043】
複数台の非常電話機2は、それぞれ、業務電話回線10により伝送されたID番号が、自機のID番号(自機番号)と一致するか否かを判定する(ステップS5)。非常電話機2は、第1のPB受信部201でID番号を受信すると、該ID番号を第1のマイコン202に転送し、受信したID番号が自機番号206と一致するか否かを判定する。一致しない場合(ステップS5;NO)、該非常電話機2は、点検に係る処理を実行せずに待機状態を継続する。
【0044】
ID番号が一致した場合(ステップS5;YES)、該非常電話機2は、第1のマイコン202によりソレノイド203を起動する(ステップS6)。ソレノイド203を起動すると、フック部材250が機械的に回転し、該フック部材250の第2のアーム部253がフックスイッチ204をオンにする。フックスイッチ204がオンになった非常電話機2は、線路監視装置6、第2の自動交換設備8、第1の自動交換設備305、及び試験制御装置304等を介して受付台301を呼び出す(ステップS7)。その後、フックスイッチ204がオンになった非常電話機2(点検対象の非常電話機)は、第2のマイコン211に電源が供給され、該第2のマイコン211が起動する。第2のマイコン211は、起動後、第1のマイコン202にソレノイド203のコイル261への電流の印加を停止させるとともに、自身によるソレノイド203のコイル261への電流の印加を開始し、フック部材250によりフックスイッチ204がオンにされた状態を維持する。
【0045】
受付台301は、非常電話機2からの呼び出しに応答し、試験開始操作を受け付けると(ステップS8)、試験制御装置304に対して試験開始を指示する信号を送信する(ステップS9)。試験開始を指示する信号は、例えば、点検の対象に選択されている非常電話機2を識別する情報を含む。試験開始操作は、例えば、受付台301、又は受付台301に接続されたハンドセット302に設けられたボタンスイッチに対する操作である。試験制御装置304は、受付台301からの試験開始を指示する信号を受け付けると、点検の対象である非常電話機2に対し、第1の自動交換設備305、第2の自動交換設備8、線路監視装置6、及び非常電話回線5等を介して試験開始の合図となるPB信号を送信する(ステップS10)。
【0046】
点検の対象に選択されている非常電話機2は、試験制御装置304からのPB信号を受信すると、レコーダ216による録音処理を実施する(ステップS11)。非常電話機2は、スピーチネットワーク205で受信したPB信号を、第2のPB受信部210を介して第2のマイコン211に転送し、第2のマイコン211においてPB番号を確認する。その後、非常電話機2は、第3のスイッチ219をレコーダ216側に切り替えるとともに、第4のスイッチ220を第2のセレクタ213側に切り替え、ハンドセット207の送話器209が出力した音声信号(送話信号)をレコーダ216により録音する処理を開始する。
【0047】
このとき、非常電話機2は、例えば、まず所定の第1の期間(例えば、5秒間)に受付台301からの音声信号を録音し、その後、所定の第2の期間(例えば、3秒間)に発振器221が出力した音声信号(例えば、400Hzの音響信号)を録音する。非常電話機2は、録音処理を開始すると、まず、第1のスイッチ217を第1のセレクタ212側に切り替えるとともに第2のスイッチ218を第1のアンプ214側に切り替え、非常電話回線5を通じて受付台301から伝送される試験用の音声信号(受話信号)を第1のアンプ214により増幅してハンドセット207の受話器208から音声(受話音)として出力(放音)する。受付台301から伝送される試験用の音声信号は、例えば、管制センタ3の係員が受付台301に接続されたハンドセット302に向かって発した所定の単語や文章等の音声信号である。すなわち、受付台301は、試験制御装置304に対して試験開始を指示する信号を送信した後、試験用の音声信号(試験音声)を非常電話機2に向けて出力する(ステップS12)。第1の期間中、非常電話機2は、受付台301から伝送された試験用の音声信号をスピーチネットワーク205において2線から4線に変換し、変換した音声信号を第1のアンプ214により増幅して受話器208から出力する。そして、第1の期間が経過すると、非常電話機2は、第1のセレクタ212を切り替え、発振器221が発した音声信号を第1のアンプ214で増幅して受話器208から出力する。そして、第2の期間が経過すると、非常電話機2は、発振器221による音声信号の発信を終了し、レコーダ216による録音を終了する。
【0048】
録音処理が終了すると、非常電話機2は、レコーダ216により録音した音声信号(送話信号)を再生して受付台301に伝送する再生処理を実施する(ステップS13)。再生処理において、非常電話機2は、例えば、レコーダ216により再生された音声信号(送話信号)を第2のアンプ215で増幅した後、スピーチネットワーク205において4線から2線に変換して非常電話回線5に出力する。第2のアンプ215では、回線ロス設定223に基づく回線ロス分を増幅する。非常電話回線5に出力された音声信号(再生音声)は、線路監視装置6、第2の自動交換設備8、第1の自動交換設備305、及び試験制御装置304等を介して受付台301に伝送される(ステップS14)。受付台301に伝送される音声信号は、例えば、試験制御装置304に蓄積してもよい。
【0049】
再生処理が終了すると、非常電話機2は、第2のセレクタ213を切り替え、第2のPB発信部222が出力するPB信号を非常電話回線5に出力する(ステップS15)。その後、非常電話機2は、第3のスイッチ219及び第4のスイッチ220を、レコーダ216及び第2のセレクタ213を介さない経路側に切り替える。
【0050】
再生音声に続くPB信号を受信した受付台301は、現在点検の対象となっている非常電話機2との非常電話回線5を介した接続を解除する(ステップS16)。このとき、現在点検の対象となっている非常電話機2には、非常電話回線5等を介してロックアウト信号が伝送される(ステップS17)。ロックアウト信号を受信した非常電話機2は、例えば、第2のマイコン211の電源がオフになり、ソレノイド203が停止する(ステップS18)。ソレノイド203が停止すると、フックスイッチ204をオンにしていたフック部材250は、第3のアーム部254に掛け置かれたハンドセット207からの荷重により第2のアーム部253がフックスイッチ204から離間する方向(
図4の反時計回り方向)に回転する。これにより、非常電話機2は、フックスイッチ204がオフになり(すなわち、非常電話回線5との接続が解除され)、待機状態となる。
【0051】
上記の手順により複数台の非常電話機2のうちの1台の非常電話機2に対する点検が終了した後、点検の対象とする非常電話機2のID番号を変更しながら上述した処理を繰り返すことにより、管轄するエリア内の複数台の非常電話機2に対する点検を、順次、遠隔からの操作により行うことができる。
【0052】
また、
図5には示していないが、点検中の非常電話機2における人感センサ224が人を検知した場合、該非常電話機2は、点検を中止してもよい。例えば、第1のマイコン202が人感センサ224の出力に基づいて人が検知されたと判定した場合、第1のマイコン202は、第2のマイコン211に対してソレノイド203の停止を指示する信号を出力する。第2のマイコン211がソレノイド203を停止させると、フックスイッチ204がオフになり、非常電話機2と非常電話回線5との接続が解除される。点検中に接続が解除された場合、その後、検知した人(利用者)が非常電話機2のハンドセット207を取り上げて非常電話機2と受付台301とが再度接続されると、管制センタ3の係員は、接続が解除された原因が当該非常電話機2の異常によるものではないと確認することができる。また、点検中に接続が解除された後、所定の期間を経過しても当該非常電話機2と受付台301とが接続されない場合には、例えば、当該非常電話機2に対する点検を再度実施することにより、当該非常電話機2の異常の有無を確認することができる。
【0053】
また、
図5には示していないが、1つのブロック4に含まれる、点検中の非常電話機2とは別の非常電話機2におけるフックスイッチ204がオンになった場合、点検中の非常電話機2は、ソレノイド203を停止させて点検を中止してもよい。ここで、点検中の非常電話機2とは別の非常電話機2は、例えば、点検中ではない非常電話機2のハンドセット207が取り上げられてフックスイッチ204がオンになった非常電話機2を含む。このようにすることで、非常事態が発生したことを管制センタ3に通知することを優先させることができ、非常事態に対して早期に対処することができる。
【0054】
このように、本実施形態に係る非常電話システム1では、非常電話回線5とは別の電話回線(業務電話回線10)を介して点検の対象に選択されたことを示す情報が入力された非常電話機2は、フックスイッチ204のオン・オフを切り替えるフック部材250を機械的に移動させて、フックスイッチ204をオフからオンに切り替える。このため、非常電話機2におけるフック部材250の動作が正常であるか否かの点検を、作業員が非常電話機2のハンドセット207を取り上げて点検する作業をすることなく、遠隔からの操作により実施することができる。また、本実施形態に係る非常電話システム1では、受付台301から非常電話機2に伝送された試験用の音声信号を該非常電話機2の受話器208から出力しながら送話器209で収音し、送話器209から出力された音声信号(送話信号)を録音し、該録音した音声信号を再生して受付台301に伝送する。このため、非常電話回線5を含む、受付台301から非常電話機2までの伝送経路が正常であるか否かの点検を、遠隔からの操作により実施することができる。更に、非常電話機2は、自身が備える発振器221により出力した音声信号を別の試験用の音声信号として非常電話機2の受話器208から出力しながら送話器209で収音し、送話器209から出力された音声信号(送話信号)を録音し、該録音した音声信号を再生して受付台301に伝送する。このため、非常電話機2から受付台301に伝送された音声信号(再生音声)に基づいて伝送経路に異常があると判定した場合に、例えば、受付台301から非常電話機2に至る経路、非常電話機2のハンドセット207、及び非常電話機2から受付台301に至る経路のどこに異常があるのかを推定することができる。したがって、本実施形態に係る非常電話システム1では、非常電話回線5を含む非常電話機2と受付台301との伝送経路、及び非常電話機2の動作に関する点検業務を、遠隔からの操作で行うことができ、広範囲に点在する複数台の非常電話機2の点検業務を効率よく行うことができる。
【0055】
また、本実施形態に係る非常電話機2は、上記のように、点検時の録音処理(ステップS11)では第1のアンプ214で増幅した音声信号をハンドセット207の受話器208から出力(放音)し、点検時の再生処理(ステップS13)では第2のアンプ215で増幅した音声信号を非常電話回線5に出力する。更に、点検時の録音処理では、非常電話回線5を介して受付台301から伝送された音声信号とは別の、非常電話機2が有する発振器221が出力した所定の周波数の音声信号を録音する。このため、例えば、高速道路網に設置された非常電話機2のような、周囲の雑音レベルが不定である非常電話機2に対する音声品質の点検を、適切に行うことができる。特に、本実施形態に係る非常電話機2では、
図6~
図9を参照して以下に説明するような、送話器209が出力する音声信号(送話信号)を、受話器208が出力(放音)した試験用の受話音をより適切に反映した音声信号にするための導音部材を設けることにより、周囲の雑音レベルが不定である非常電話機2に対する音声品質の点検を、より適切に行うことができる。
【0056】
図6は、一実施形態に係る非常電話機の外観構成の一例を説明する概略図である。
図7は、非常電話機の送受話器における送話部の構成例を説明する概略図である。
図8は、一実施形態に係る非常電話機における放音箱の構成例を説明する斜視図である。
図9は、一実施形態に係る非常電話機の動作の一例を説明する概略図である。
【0057】
図6には、本実施形態に係る非常電話機2の筐体2100に取り付けられた導音部材の構成例を説明するための正面図及び左側面図が模式的に示されている。なお、
図6では、ハンドセット207、及び筐体2100内の回路とハンドセット207とを接続するカールコード等の導電線の図示を省略している。また、
図6における筐体2100の正面図では、ハンドセット207を掛け置くフック部材250を省略している。
【0058】
筐体2100の内部には、例えば、
図3を参照して上述した回路を含む1つ以上の電子部品が収容されている。筐体2100の正面には、非常電話機2のID番号や利用方法を示すプレートとともに、例えば、非常電話機2の利用目的を選択するボタンスイッチ2101~2104、受話音量の調整ボタン2105、人感センサ224等が設けられている。また、
図4を参照して上述したフック部材250は、例えば、筐体2100の左側面に設けられた開口部に挿通された軸251を境として、第1のアーム部252及び第2のアーム部253が筐体2100の内部に延伸し、第3のアーム部254が筐体2100の外部に延伸している。例えば、非常電話機2の利用者が
図6には示していないハンドセット207をフック部材250から取り上げ、ボタンスイッチ2101~2104のいずれかを押すと、その非常電話機2は管制センタ3の受付台301に表示される。
【0059】
図6に例示した非常電話機2における筐体2100の左側面には、導音管2400と、導音管2400の一端に接続された第1の導音箱2200と、導音管2400の他端に接続された第2の導音箱2300とが取り付けられている。導音管2400は、ハンドセット207の受話器208が出力(放音)した受話音を送話器209に導く管状部材である。導音管2400には、例えば、耐候性の高い樹脂材料で形成されたドレンホースを用いることができる。導音管2400は、金具2500により筐体2100に取り付けられる。
【0060】
第1の導音箱2200は、受話器208が出力した受話音の拡散を防ぎ、受話音を導音管2400に導く箱状の部材であり、点検時に受話器208と向かい合うように(
図9を参照)、筐体2100に取り付けられている。第1の導音箱2200は、箱部2210と、金具2250とを含む。箱部2210は、点検時に受話器208が出力した受話音を取り込む開口部2220を底面に有し、受話器208と点検時に受話器208が出力した受話音は、開口部2220を通じて第1の導音箱2200(箱部2210内)に取り込まれる。開口部2220には、例えば、異物の進入等を防ぐためのネット2230が張られている。金具2250は、導音管2400の一端を取り付けるための第1の取付部と、箱部2210を取り付けるための第2の取付部と、金具2250自身を筐体2100に取り付けるための第3の取り付け部とを有する。
【0061】
第2の導音箱2300は、導音管2400により導かれる受話音を更に送話器209に導く箱状の部材であり、点検時に送話器209と向かい合うように(
図9を参照)、筐体2100に取り付けられている。第2の導音箱2300は、箱部2310と、金具2350とを含む。本実施形態の非常電話機2における第2の導音箱2300は、
図8に例示したように、箱部2310の側面2312に形成された開口部2321を通じて環境音を取り込み、導音管2400からの受話音と取り込んだ環境音とを、箱部2310の底面2311に形成された開口部2320から送話器209に向けて放出する。箱部2310の側面2312に形成する開口部2321の数や各開口部2321の寸法等は、特に限定されない。金具2350は、導音管2400の他端を取り付けるための第1の取付部と、箱部2310を取り付けるための第2の取付部と、金具2350自身を筐体2100に取り付けるための第3の取り付け部とを有する。
図8には、金具2350における第1の取付部の構成例として、導音管2400と通じる、導音管2400の外形よりも小さい開口部2351が金具2350に形成されている例を示しているが、金具2350における第1の取付部は、このようなものに限定されない。
【0062】
本実施形態の非常電話機2の点検時には、
図9に例示したように、遠隔操作によりフック部材250を機械的に移動(回転)させて筐体2100内のフックスイッチ204をオンにする。このとき、ハンドセット207は、フック部材250の第3のアーム部254に掛け置かれた状態のまま、受話器208から出力(放音)された試験用の受話音を送話器209で収音する。しかしながら、ハンドセット207は、受話器208の部分が利用者の耳の近傍に位置し、送話器209の部分が利用者の口の近傍に位置する状態で使用することを想定した形状になっている。すなわち、ハンドセット207は、受話器208が出力した受話音の大部分を送話器209で収音することが可能な形状になっていない。このため、本実施形態の非常電話機2に対する音声品質の点検をより適切に行うには、上述した第1の導音箱2200、導音管2400、及び第2の導音箱2300により受話器208から出力された試験用の受話音を送話器209に導くことが好ましい。
【0063】
特に、本実施形態の非常電話機2は屋外の車両が走行している道路の近くに設置されることが多く、非常電話機2を利用して通話するときに送話器209で収音される音声には車両の走行音等の環境音が含まれることが多い。このため、非常電話機2のハンドセット207における送話器209は、通常、マイクで収音して得られる音声信号から環境音の成分を抑圧又は除去した音声信号を、送話信号として出力するように構成されている。このようなハンドセット207における送話器209の部分には、例えば、
図7に示すように、環境音が含まれる場合がある利用者の発話音の収音に利用する第1の開口部207Aと、環境音の収音に利用する第2の開口部207Bとが形成されている。第1の開口部207Aは、利用者がハンドセット207を利用して通話を行うときに利用者の口がある方向を向く面に形成されており、第2の開口部207Bは、第1の開口部207Aが形成された面とは異なる面から環境音を収音可能なように形成されている。送話器209は、例えば、第1の開口部207Aを通じて送話器209に到達する音(受話音と環境音とを含む)を収音して得られる音声信号から、第2の開口部207Bを通じて送話器209に到達する音(主に環境音)を収音して得られる音声信号と対応する成分を抑圧又は除去する。
【0064】
このように、非常電話機2のハンドセット207における送話器209は、環境音が含まれる利用者の発話音から環境音を抑圧又は除去し、利用者の発話音を聞き取りやすい送話信号を出力することができるように構成されている。このため、例えば、導音管2400により導かれた受話音のみが送話器209で収音されるように第2の導音箱2300が構成されている(より具体的には、箱部2310の側面2312に開口部2321が形成されていない)場合、ハンドセット207の第1の開口部207A(
図7参照)を通じて送話器209に到達する音は、環境音を含まない、又は環境音の成分が非常に小さい受話音となる。この場合、送話器209は、第1の開口部207Aを通じて送話器209に到達する音(環境音を含まない、又は環境音の成分が非常に小さい試験用の受話音)を収音して得られる音声信号に対して、第2の開口部207Bを通じて送話器209に到達する音(主に環境音)を収音して得られる音声信号と対応する成分を抑圧又は除去する処理を行ってしまい、受話音と対応する適切な送話信号が出力されないことがある。
【0065】
これに対し、本実施形態の非常電話機2における第2の導音箱2300は、
図6~
図9を参照して上述したように、ハンドセット207の送話器209の部分に向かい合って接触する第2の導音箱2300内に環境音を取り込み、導音管2400からの受話音と取り込まれた環境音とを含む音を送話器209で収音する。より具体的には、送話器209は、
図7に例示した第1の開口部207Aを通じて送話器209に到達する試験用の受話音及び環境音と、第2の開口部207Bを通じて送話器209に到達する環境音とを収音する。このため、送話器209は、収音して得られる受話音と環境音とを含む音声信号から環境音の成分を抑圧又は除去し、受話音と対応した音声信号(送話信号)を出力することができる。すなわち、第2の導音箱2300の箱部2310の側面2312に、環境音を取り込むための開口部2321を設けたことにより、遠隔から非常電話機2の点検を行うときに、非常電話機2の利用者や作業員がハンドセット207を実際に利用して通話を行うときと近い状態で、受話器208が出力した受話音を送話器209で収音することができる。このため、本実施形態の非常電話機2によれば、送話器209における、受話器208が出力した試験用の受話音に対する過剰な(不必要な)雑音成分の抑圧又は除去を防ぐことができ、非常電話機2に対する音声品質の点検をより適切に行うことができる。
【0066】
なお、上述した実施形態で説明した非常電話機2の機能、構成、及び動作は、例示に過ぎない。本発明に係る非常電話機2の機能、構成、及び動作は、上述した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば、点検時に受話器208が出力した音を送話器209に導く導音部材の構成(形状や材料等の組み合わせ)は、
図6~
図9を参照して上述した構成に限らず、適宜変更可能である。また、例えば、非常電話機2の回路構成は、
図3に例示した回路構成に限らず、適宜変更可能である。更に、非常電話機2は、フック部材250が並進移動することによりフックスイッチ204のオン・オフが切り替わるものであってもよいし、ソレノイド203とは別の動力を利用してフック部材250を移動させてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 非常電話システム
2 非常電話機
3 管制センタ
4 ブロック
5 非常電話回線
6 線路監視装置
7 通信機械室
8 第2の自動交換装置
9 回線制御装置
10 業務電話回線
201 第1のPB受信部
202 第1のマイコン
203 ソレノイド
204 フックスイッチ
205 スピーチネットワーク
206 自機番号
207 ハンドセット
207A、207B 開口部
208 受話器
209 送話器
210 第2のPB受信部
211 第2のマイコン
212 第1のセレクタ
213 第2のセレクタ
214 第1のアンプ
215 第2のアンプ
216 レコーダ
217 第1のスイッチ
218 第2のスイッチ
219 第3のスイッチ
220 第4のスイッチ
221 発振器
222 第2のPB発信部
223 回線ロス設定
224 人感センサ
225 第1のPB発信部
250 フック部材
251 軸
252 第1のアーム部
253 第2のアーム部
254 第3のアーム部
255 受け部
256 ばね
261 コイル
262 磁性部材
263 取付部材
2100 筐体
2101~2104 ボタンスイッチ
2105 調整ボタン
2200 第1の導音箱
2210 箱部
2220 開口部
2250 金具
2300 第2の導音箱
2310 箱部
2311 底面
2312 側面
2320、2321 開口部
2350 金具
2400 導音管
2500 金具