(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094161
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】マイクロニードル用振動式アプリケータ
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20230628BHJP
【FI】
A61M37/00 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209468
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000176626
【氏名又は名称】三島光産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】東島 敦弘
(72)【発明者】
【氏名】松尾 正昭
(72)【発明者】
【氏名】田代 康典
(72)【発明者】
【氏名】中野 姫香
(72)【発明者】
【氏名】鬼木 喬玄
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA71
4C267CC01
4C267CC05
4C267GG16
4C267HH08
(57)【要約】
【課題】簡素な構成で、マイクロニードルによる穿刺を簡単かつ適正に行うことができる操作性及び動作の安定性に優れたマイクロニードル用振動式アプリケータを提供する。
【解決手段】対象となる皮膚11の表面にマイクロニードルアレイ12を押付ける際に用いられるマイクロニードル用振動式アプリケータ10であって、電源16及び電源16のオンオフを切替えるスイッチ17を有するアプリケータ本体13と、アプリケータ本体13の先側に配置され振動子18が内蔵されたヘッド14とを備え、使用時に、ヘッド14の先端面14aがマイクロニードルアレイ12を介して皮膚11の表面に押し当てられ、スイッチ17で電源16がオンに切替えられることにより振動子18が駆動されて、ヘッド14でマイクロニードルアレイ12が加振される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象となる皮膚の表面にマイクロニードルアレイを押付ける際に用いられるマイクロニードル用振動式アプリケータであって、
電源及び該電源のオンオフを切替えるスイッチを有するアプリケータ本体と、該アプリケータ本体の先側に配置され振動子が内蔵されたヘッドとを備え、使用時に、前記ヘッドの先端面が前記マイクロニードルアレイを介して前記皮膚の表面に押し当てられ、前記スイッチで前記電源がオンに切替えられることにより前記振動子が駆動されて、前記ヘッドで前記マイクロニードルアレイが加振されることを特徴とするマイクロニードル用振動式アプリケータ。
【請求項2】
請求項1記載のマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、前記アプリケータ本体は、前記電源が収容される円筒状のケースを有し、該ケースの基側端部に押しボタン式の前記スイッチが取付けられていることを特徴とするマイクロニードル用振動式アプリケータ。
【請求項3】
請求項1記載のマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、前記アプリケータ本体に外挿され、該アプリケータ本体に摺動可能に保持されたスライドカバーを有し、使用時に、前記ヘッドの先端面が前記マイクロニードルアレイを介して前記皮膚の表面に押し当てられ、前記アプリケータ本体に対して前記スライドカバーが摺動し、前記スライドカバーから前記スイッチに規定値以上の力が加わることにより前記電源がオンに切替えられることを特徴とするマイクロニードル用振動式アプリケータ。
【請求項4】
請求項3記載のマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、使用時に、前記スライドカバーの先側の端面が前記皮膚の表面に当接することにより、前記マイクロニードルアレイが前記皮膚の表面に一定の押圧力で押し当てられることを特徴とするマイクロニードル用振動式アプリケータ。
【請求項5】
請求項1記載のマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、前記ヘッドに、前記アプリケータ本体が摺動可能に連結されて、使用時に、前記ヘッドの先端面が前記マイクロニードルアレイを介して前記皮膚の表面に押し当てられ、前記ヘッドに対して前記アプリケータ本体が摺動し、前記アプリケータ本体から前記スイッチに規定値以上の力が加わることにより前記電源がオンに切替えられることを特徴とするマイクロニードル振動式アプリケータ。
【請求項6】
請求項5記載のマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、前記アプリケータ本体の先側外周に取付けられた押圧ガイドを有し、使用時に、前記ヘッドに対して前記アプリケータ本体が摺動した時に、前記押圧ガイドの先側の端面が前記皮膚の表面に当接することにより、前記マイクロニードルアレイが前記皮膚の表面に一定の押圧力で押し当てられることを特徴とするマイクロニードル用振動式アプリケータ。
【請求項7】
請求項1記載のマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、前記アプリケータ本体と前記ヘッドは、防振手段を介して連結されていることを特徴とするマイクロニードル用振動式アプリケータ。
【請求項8】
請求項7記載のマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、前記アプリケータ本体の先側外周に取付けられた押圧ガイドを有し、使用時に、前記ヘッドの先端面が前記マイクロニードルアレイを介して前記皮膚の表面に押し当てられた時に、前記押圧ガイドの先側の端面が前記皮膚の表面に当接することにより、前記マイクロニードルアレイが前記皮膚の表面に一定の押圧力で押し当てられることを特徴とするマイクロニードル用振動式アプリケータ。
【請求項9】
請求項6又は8記載のマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、前記押圧ガイドが交換可能、前記押圧ガイドの取付け位置が変更可能又は前記押圧ガイドの全長が可変であることにより、初期状態での前記押圧ガイドの先側の端面から前記皮膚の表面までの距離に応じて、前記押圧力が調節可能であることを特徴とするマイクロニードル用振動式アプリケータ。
【請求項10】
請求項1~9記載のマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、前記皮膚の表面形状に対応して湾曲した当接面を有し、前記ヘッドの先端部に着脱可能に装着される押当部材を備えることを特徴とするマイクロニードル用振動式アプリケータ。
【請求項11】
請求項1~10記載のマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、前記電源がオンに切替えられてから所定時間経過後に前記振動子の駆動を停止させるタイマーを備えたことを特徴とするマイクロニードル用振動式アプリケータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療目的又は美容目的で、従来使用されている注射器の代わりに、マイクロニードルアレイを使用して体内への投薬を行う際に用いられるマイクロニードル用振動式アプリケータに関する。
【背景技術】
【0002】
今後、少子高齢化が進むにつれ、医療の果たす役割は増大し、病院及び医師等の不足を招くものと考えられる。
医療行為には、外科的治療の他に投薬治療があり、投薬治療の中では、注射器による体内投薬が大きな比率を占める。この注射器による投薬は、通常、医師や看護師のような有資格者が病院で施行するが、糖尿病に対するインシュリン投与のように、中には患者自身が在宅で施行することを認められているものもある。
そこで、医師の処方に基づいて在宅で投薬を行う在宅投薬を普及させることができれば、患者の通院頻度が低くなり、医師及び患者(特に老齢者や勤労者)の負担を軽減することができるため、このような在宅投薬への関心が高まっている。特に、病院不足や医師不足の問題を抱える過疎地では、在宅投薬に対するニーズは大きい。
【0003】
しかし、注射器による投薬には、皮下や血管に直接投薬できるという長所がある一方で、痛みを伴い、投薬回数の増加と共に皮膚が傷付いたり、腫れたりするという欠点がある。
そこで、注射器の代わりに、先端が尖ったマイクロニードル(微小針)を平板上に複数有する樹脂製のマイクロニードルアレイを使用することが考えられている。このマイクロニードルアレイの特徴は、マイクロニードルが、皮下の無痛点の深さに到達可能な長さを有することにより、無痛で投薬を行うことができ、また、パッチ式に表皮に貼り当てるだけで患者自身が手軽に投薬できる点にあり、患者の負担を大幅に軽減することができる。そして、このようなマイクロニードルアレイは、医療目的だけでなく、美容目的でも使用が期待される。
以上のことから、マイクロニードルアレイの普及を目的として、マイクロニードルアレイを皮膚に押し付ける際に用いられるアプリケータについても様々な検討が行われている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、それぞれ筒状部材及び作動ボタンを指で押し、バネの力に抗してプランジャー及びピストンを軸方向に移動させることにより、マイクロニードルアレイ(マイクロニードルデバイス)を押圧して、皮膚に押付けるアプリケータが開示されている。
しかし、このようなアプリケータは、操作時に、指に強い力が必要であり、女性や高齢者等には使い難いという問題がある。また、これらのアプリケータは、マイクロニードルアレイを押圧する際に衝撃が加わるため、特に、目の下等のデリケートな部位に使用される美容用マイクロニードルには不向きで、用途が限定されるという問題もある。
一方、特許文献3には、電磁オシレータで生成される電磁振動をオシレータエネルギー変換器によりアプリケータヘッドの機械的運動に変換し、アプリケータヘッドに係合するマイクロニードルアレイに力を印加する装置(アプリケータ)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-191702号公報
【特許文献2】特開2018-102680号公報
【特許文献3】特開2017-136437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3のアプリケータは、スイッチを入れるだけでアプリケータヘッドが振動してマイクロニードルアレイに力が印加されるため、力の弱い女性や高齢者等でも簡単に使用することができ、省力化が図られている。
しかしながら、特許文献3では、電磁オシレータで生成される電磁振動をオシレータエネルギー変換器によりアプリケータヘッドの機械的運動に変換しており、構造が複雑で、部品点数も多く、故障が発生し易くなるという課題がある。
また、マイクロニードルを深く刺し過ぎると、皮膚に紅斑が残る原因となることもあるため、美容用マイクロニードルは、医療用マイクロニードルに比べて、穿刺量が少なく抑えられる必要があり、アプリケータの押圧力は、使用の目的又は場所等に応じて、適正に調整され、管理されることが望ましい。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、簡素な構成で、マイクロニードルによる穿刺を簡単かつ適正に行うことができる操作性及び動作の安定性に優れたマイクロニードル用振動式アプリケータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係るマイクロニードル用振動式アプリケータは、対象となる皮膚の表面にマイクロニードルアレイを押付ける際に用いられるマイクロニードル用振動式アプリケータであって、
電源及び該電源のオンオフを切替えるスイッチを有するアプリケータ本体と、該アプリケータ本体の先側に配置され振動子が内蔵されたヘッドとを備え、使用時に、前記ヘッドの先端面が前記マイクロニードルアレイを介して前記皮膚の表面に押し当てられ、前記スイッチで前記電源がオンに切替えられることにより前記振動子が駆動されて、前記ヘッドで前記マイクロニードルアレイが加振される。
ここで、マイクロニードルアレイは、対象となる皮膚の表面に予め載置されてもよいし、ヘッドの先側に装着(設置)されてもよい。マイクロニードルアレイがヘッドの先側に装着される場合は、ヘッドの先端面に直接、マイクロニードルアレイが装着されてもよいし、ヘッドの先側に取付けられるホルダー(押当部材)にマイクロニードルアレイが保持されてもよい。マイクロニードルアレイの基板部の大きさ又は形状等に応じて、ホルダーを交換することにより、1台のマイクロニードル用振動式アプリケータで各種のマイクロニードルアレイに対応することができる。
【0007】
本発明に係るマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、前記アプリケータ本体は、前記電源が収容される円筒状のケースを有し、該ケースの基側端部に押しボタン式の前記スイッチが取付けられていることが好ましい。
【0008】
本発明に係るマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、前記アプリケータ本体に外挿され、該アプリケータ本体に摺動可能に保持されたスライドカバーを有し、使用時に、前記ヘッドの先端面が前記マイクロニードルアレイを介して前記皮膚の表面に押し当てられ、前記アプリケータ本体に対して前記スライドカバーが摺動し、前記スライドカバーから前記スイッチに規定値以上の力が加わることにより前記電源がオンに切替えられてもよい。
【0009】
本発明に係るマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、使用時に、前記スライドカバーの先側の端面が前記皮膚の表面に当接することにより、前記マイクロニードルアレイが前記皮膚の表面に一定の押圧力で押し当てられることが好ましい。
【0010】
本発明に係るマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、前記ヘッドに、前記アプリケータ本体が摺動可能に連結されて、使用時に、前記ヘッドの先端面が前記マイクロニードルアレイを介して前記皮膚の表面に押し当てられ、前記ヘッドに対して前記アプリケータ本体が摺動し、前記アプリケータ本体から前記スイッチに規定値以上の力が加わることにより前記電源がオンに切替えられてもよい。
【0011】
本発明に係るマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、前記アプリケータ本体の先側外周に取付けられた押圧ガイドを有し、使用時に、前記ヘッドに対して前記アプリケータ本体が摺動した時に、前記押圧ガイドの先側の端面が前記皮膚の表面に当接することにより、前記マイクロニードルアレイが前記皮膚の表面に一定の押圧力で押し当てられることが好ましい。
【0012】
本発明に係るマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、前記アプリケータ本体と前記ヘッドは、防振手段を介して連結されてもよい。
【0013】
本発明に係るマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、前記アプリケータ本体の先側外周に取付けられた押圧ガイドを有し、使用時に、前記ヘッドの先端面が前記マイクロニードルアレイを介して前記皮膚の表面に押し当てられた時に、前記押圧ガイドの先側の端面が前記皮膚の表面に当接することにより、前記マイクロニードルアレイが前記皮膚の表面に一定の押圧力で押し当てられることが好ましい。
【0014】
本発明に係るマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、前記押圧ガイドが交換可能、前記押圧ガイドの取付け位置が変更可能又は前記押圧ガイドの全長が可変であることにより、初期状態での前記押圧ガイドの先側の端面から前記皮膚の表面までの距離に応じて、前記押圧力が調節可能であることがさらに好ましい。
【0015】
本発明に係るマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、前記皮膚の表面形状に対応して湾曲した当接面を有し、前記ヘッドの先端部に着脱可能に装着される押当部材を備えることができる。
【0016】
本発明に係るマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、前記電源がオンに切替えられてから所定時間経過後に前記振動子の駆動を停止させるタイマーを備えることもできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るマイクロニードル用振動式アプリケータは、振動子が駆動されて、ヘッドでマイクロニードルアレイが加振されることにより、確実に穿刺が行われるため、操作が簡単で、省力性及び動作の安定性に優れる。
【0018】
本発明に係るマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、アプリケータ本体が、電源が収容される円筒状のケースを有し、ケースの基側端部に押しボタン式のスイッチが取付けられている場合、使用者はケースを手で握って親指でスイッチを押すだけで電源をオンにして振動子を駆動させることができ、極めて簡単に操作を行うことができる。
【0019】
本発明に係るマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、アプリケータ本体に外挿され、アプリケータ本体に摺動可能に保持されたスライドカバーを有し、使用時に、ヘッドの先端面がマイクロニードルアレイを介して皮膚の表面に押し当てられ、アプリケータ本体に対してスライドカバーが摺動し、スライドカバーからスイッチに規定値以上の力が加わることにより電源がオンに切替えられる場合、使用者は、スライドカバーを手で握ってヘッドの先端面をマイクロニードルアレイの基板部に当接させた状態で、スライドカバーを皮膚に向かって摺動させるだけでヘッドを振動させることができ、マイクロニードルアレイが皮膚に押し付けられる力が不足することがなく、穿刺が確実かつ効率的に行われる。
【0020】
本発明に係るマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、使用時に、スライドカバーの先側の端面が皮膚の表面に当接することにより、マイクロニードルアレイが皮膚の表面に一定の押圧力で押し当てられる場合、過不足のない適正な押圧力によって、安定した効果が得られると共に、使用の目的又は場所等に応じてスライドカバーの移動量を調整することにより、押圧力を適正に調節することができる。
【0021】
本発明に係るマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、ヘッドに、アプリケータ本体が摺動可能に連結されて、使用時に、ヘッドの先端面がマイクロニードルアレイを介して皮膚の表面に押し当てられ、ヘッドに対してアプリケータ本体が摺動し、アプリケータ本体からスイッチに規定値以上の力が加わることにより電源がオンに切替えられる場合、使用者は、アプリケータ本体を手で握ってヘッドの先端面をマイクロニードルアレイの基板部に当接させた状態で、アプリケータ本体を皮膚に向かって摺動させるだけでヘッドを振動させることができ、マイクロニードルアレイが皮膚に押し付けられる力が不足することがなく、穿刺が確実かつ効率的に行われる。
【0022】
本発明に係るマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、アプリケータ本体の先側外周に取付けられた押圧ガイドを有し、使用時に、ヘッドに対してアプリケータ本体が摺動した時に、押圧ガイドの先側の端面が皮膚の表面に当接することにより、マイクロニードルアレイが皮膚の表面に一定の押圧力で押し当てられる場合、過不足のない適正な押圧力によって、安定した効果が得られる。
【0023】
本発明に係るマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、アプリケータ本体とヘッドが、防振手段を介して連結されている場合、使用中に、ヘッドの振動がアプリケータ本体に伝わり難く、小さな力でマイクロニードルアレイを効率的に振動させて、穿刺を促進することができる。
【0024】
本発明に係るマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、アプリケータ本体の先側外周に取付けられた押圧ガイドを有し、使用時に、ヘッドの先端面がマイクロニードルアレイを介して皮膚の表面に押し当てられた時に、押圧ガイドの先側の端面が皮膚の表面に当接することにより、マイクロニードルアレイが皮膚の表面に一定の押圧力で押し当てられる場合、過不足のない適正な押圧力によって、安定した効果が得られる。
【0025】
本発明に係るマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、押圧ガイドが交換可能、押圧ガイドの取付け位置が変更可能又は押圧ガイドの全長が可変であることにより、初期状態での押圧ガイドの先側の端面から皮膚の表面までの距離に応じて、押圧力が調節可能である場合、使用の目的又は場所等に応じて、押圧力を適正に調節できる。
【0026】
本発明に係るマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、皮膚の表面形状に対応して湾曲した当接面を有し、ヘッドの先端部に着脱可能に装着される押当部材を備える場合、対象となる皮膚の表面形状(場所)に応じて押当部材を交換することにより、当接面をマイクロニードルアレイの基板部に均一に押し当てて、マイクロニードルアレイを皮膚の表面に密着させることができる。
【0027】
本発明に係るマイクロニードル用振動式アプリケータにおいて、電源がオンに切替えられてから所定時間経過後に振動子の駆動を停止させるタイマーを備える場合、マイクロニードルアレイを過不足なく振動させて短時間で効率的に穿刺を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係るマイクロニードル用振動式アプリケータの要部断面正面図である。
【
図2】本発明の第2の実施の形態に係るマイクロニードル用振動式アプリケータの要部断面正面図である。
【
図3】本発明の第3の実施の形態に係るマイクロニードル用振動式アプリケータの要部断面正面図である。
【
図4】本発明の第4の実施の形態に係るマイクロニードル用振動式アプリケータの要部断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
続いて、添付した図面を参照して本発明を具体化した実施の形態について説明する。
図1に示す本発明の第1の実施の形態に係るマイクロニードル用振動式アプリケータ10(以下、単にアプリケータ10という)は、対象となる患者等の皮膚11の表面に予め載置されるマイクロニードルアレイ12を皮膚11に押付けて穿刺を行う際に用いられるものである。
図1に示すように、アプリケータ10は、アプリケータ本体13と、アプリケータ本体13の先側に配置されたヘッド14とを備えている。アプリケータ本体13は、円筒状のケース15を有し、その中に電源16が収容されている。また、ケース15の基側端部に電源16のオンオフを切替える押しボタン式のスイッチ17が取付けられている。そして、ヘッド14には振動子18が内蔵されており、電源16、スイッチ17及び振動子18は電線19a、19b、20で電気接続されている。
従って、使用時に、ヘッド14の先端面14aが、マイクロニードルアレイ12の基板部12aに当接し、マイクロニードルアレイ12を介して皮膚11の表面に押し当てられ、スイッチ17で電源16がオンに切替えられることにより振動子18が駆動されて、ヘッド14でマイクロニードルアレイ12が加振される。その結果、皮膚11への穿刺が効果的に行われる。
ここで、振動子18は、皮膚11の表面と垂直方向にマイクロニードルアレイ12を加振することができるものであればよい。例えば、振動の周波数としては、20Hz~40kHzが好ましいが、この範囲に限定されるものではなく、使用の目的等に応じて、適宜、選択される。なお、マイクロニードルアレイは、対象となる皮膚の表面に予め載置されていてもよいし、ヘッドの先側に装着(設置)された状態で皮膚の表面に押し当てられてもよい。
【0030】
アプリケータ本体13(ケース15)の外径は、使用者が片手で握れる程の大きさであり、例えば親指でスイッチ17を押すことにより、簡単に電源16をオンにして振動子18を駆動させることができ、省力性及び操作性に優れる。
ここで、電源16は、スイッチ17が押されている間だけオンになる(通電される)ものが好適に用いられるが、スイッチ17が押される度にオンオフが切替わるものでもよい。
また、例えば、アプリケータ本体13にタイマー(図示せず)を設け、電源16がオンに切替えられてから所定時間経過後に振動子18の駆動を停止させるようにしてもよい。
また、本実施の形態では、ヘッド14の先端面14aを平坦状に形成したが、対象となる皮膚の表面形状(凹凸及び湾曲)に合わせてヘッドの先端面の形状は適宜、選択される。
アプリケータ本体及びヘッドの材質は金属でも合成樹脂でもよい。なお、ヘッドの少なくとも先端部を軟質性の合成ゴム等で形成し、皮膚の表面形状に応じて(追従させて)変形させてもよいし、皮膚の表面形状に対応して湾曲した当接面を有する押当部材(図示せず)を、必要に応じてヘッドの先端部に着脱可能に装着してもよい。また、アプリケータ本体を手で握り易くするために、ケースの外周面に、指の形に合わせて凹凸を形成してもよいし、合成ゴム等で形成された滑り止めを巻き付けてもよい。
【0031】
続いて、
図2に示す本発明の第2の実施の形態に係るマイクロニードル用振動式アプリケータ23(以下、単にアプリケータ23という)について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
図2に示すアプリケータ23がアプリケータ10と異なる点は、アプリケータ本体13(ケース15)に外挿され、アプリケータ本体13に摺動可能に保持されたスライドカバー24を有している点である。そして、このアプリケータ23は、使用時に、ヘッド14の先端面14aがマイクロニードルアレイ12の基板部12aに押し当てられた状態から、アプリケータ本体13に対してスライドカバー24が摺動し、スライドカバー24からスイッチ17に規定値以上の力が加わることにより電源16がオンに切替えられる構造となっている。
具体的には、スライドカバー24を円筒状に形成し、天板部25とスイッチ17との間にコイルバネ26を設置して、スライドカバー24の摺動時にコイルバネ26が圧縮され、規定値以上の力が加わった時にスイッチ17が押されて電源16がオンに切替えられる。
本実施の形態では、スライドカバー24の先側の端面24aが皮膚11に当接することにより、コイルバネ26が常に一定量圧縮されるので、ヘッド14の先端面14aを一定の力(例えば0.1~3kg)でマイクロニードルアレイ12の基板部12aに押し当てた状態でマイクロニードルアレイ12を加振することができる。従って、マイクロニードルアレイ12が皮膚11の表面に過不足なく一定の押圧力で押し当てられる。このときの押圧力は、スライドカバー24の長さ(端面24aから皮膚11までの距離)、コイルバネ26の長さ(天板部25からスイッチ17までの距離)又はコイルバネ26のばね定数が、適宜、選択されることにより、調整可能である。
【0032】
なお、摺動するスライドカバーからスイッチに規定値以上の力が加わった時に電源がオンに切替わる構造は、本実施の形態に限定されるものではない。例えば、コイルバネの代わりに他の弾性部材が用いられてもよいし、スイッチの配置及びスライドカバーの形状等は、適宜、選択される。
また、本実施の形態では、アプリケータ本体13(ケース15)に対してスライドカバー24がスムーズに摺動するように、ケース15の外周面の要所に配置した転動体(玉)27をスライドカバー24の円筒部28の内周面に接触させたが、転動体の数及び配置は適宜、選択される。例えば、転動体をスライドカバーの円筒部の内周面の要所に配置してケースの外周面に接触させてもよいし、転動体以外のガイド手段でアプリケータ本体(ケース)とスライドカバーが同軸上に配置されるようにしてもよい。
スライドカバーの材質は、金属でも合成樹脂でもよく、アプリケータ本体と同一でも異なっていてもよい。
【0033】
続いて、
図3に示す本発明の第3の実施の形態に係るマイクロニードル用振動式アプリケータ30(以下、単にアプリケータ30という)について説明する。なお、第1、第2の実施の形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
図3に示すアプリケータ30がアプリケータ10と異なる点は、ヘッド31に、アプリケータ本体32が摺動可能に連結されている点と、アプリケータ本体32の先側外周に取付けられた筒型の押圧ガイド33を有する点である。そして、このアプリケータ30は、使用時に、ヘッド31の先端面31aが、マイクロニードルアレイ12の基板部12aに当接し、マイクロニードルアレイ12を介して皮膚11の表面に押し当てられ、ヘッド31に対してアプリケータ本体32が摺動し、アプリケータ本体32からスイッチ34に規定値以上の力が加わった時に電源16がオンに切替えられる構造となっている。
【0034】
ここで、ヘッド31は、振動子18が内蔵されたヘッド本体35と、ヘッド本体35の基側に形成された筒状の摺動部36と、摺動部36の基側外周に形成されたフランジ部37と、摺動部36の基側端部に形成された突起部38とを有している。振動子18のリード線39a、39bは摺動部36の内部を通り、リード線39a、39bの先端に設けられた接点部40a、40bが、フランジ部37の基側表面に固定されている。
また、電源16が収容されるアプリケータ本体32のケース42の底板部43には、摺動部36が挿通される挿通孔44が形成され、ケース42の内部にはフランジ部37及び突起部38と対向して仕切り部材45が取付けられている。電源16に接続された電線46a、46bは仕切り部材45を貫通し、電線46a、46bの先端に設けられたバネ端子47a、47bが、接点部40a、40bと離間して対抗配置されるように、仕切り部材45の先側表面に固定されている。そして、仕切り部材45の先側表面の中央部には突起部38と対向して凹部48が形成され、凹部48の内部には突起部38に当接する付勢バネ49が収容されている。
【0035】
以上説明した、接点部40a、40b、仕切り部材45、バネ端子47a、47b及び付勢バネ49によってスイッチ34が構成されている。
つまり、ヘッド31に対してアプリケータ本体32が摺動し、凹部48に収容された付勢バネ49が突起部38で圧縮されて規定値以上の力が加わった時に、接点部40a、40bとバネ端子47a、47bが接触して電源16がオンに切替えられる構造となっている。このとき、押圧ガイド33の先側の端面33aが皮膚11の表面に当接することにより、付勢バネ49は常に一定量圧縮されるので、マイクロニードルアレイ12が皮膚11の表面に一定の押圧力で押し当てられる。
これにより、アプリケータ23と同様の作用、効果が得られる。
本実施の形態では、押圧ガイド33がヘッド31の外周を囲繞するように円筒型に形成されているが、押圧ガイドは、円周方向に断続的に形成されてもよいし、省略されてもよい。
【0036】
なお、摺動するアプリケータ本体からスイッチに規定値以上の力が加わった時に電源がオンに切替わる構造は、本実施の形態に限定されるものではない。例えば、接点部とバネ端子が入れ替えられてもよいし、バネ端子としてコイルバネの代わりに板バネが用いられてもよい。
また、初期状態での(使用開始時の)押圧ガイド33の先側の端面33aから皮膚11の表面までの距離を選択(変更)可能として、その距離に応じて、押圧力を調節することもできる。例えば、全長(軸方向寸法)の異なる複数の押圧ガイドを準備しておき、押圧ガイドを交換してもよいし、アプリケータ本体の軸方向(
図3の上下方向)の異なる位置に押圧ガイドを取付け可能とし、押圧ガイドの取付け位置を変更してもよいし、全長が可変な押圧ガイドを取付けてもよい。押圧ガイドは嵌合又は螺子止め(螺合)等でアプリケータ本体に取付けられる。押圧ガイドの全長を可変とする構造としては、押圧ガイドが、アプリケータ本体に固定される固定部と、固定部に螺合されて固定部(アプリケータ本体)の軸方向に進退可能に保持された可動部とを有するものが好適に用いられるが、これに限定されない。
【0037】
続いて、
図4に示す本発明の第4の実施の形態に係るマイクロニードル用振動式アプリケータ51(以下、単にアプリケータ51という)について説明する。なお、第1~第3の実施の形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
図4に示すアプリケータ51は、アプリケータ本体52とヘッド53が、防振手段54を介して連結されたものである。
本実施の形態では、摺動部36に、防振手段54として圧縮コイルバネが外挿されており、振動子18の駆動によりヘッド本体35が振動した際に、ヘッド本体35とケース42の底板部43との間に挟まれた防振手段54が伸縮される。
従って、使用時に、ヘッド53の先端面53aが、マイクロニードルアレイ12の基板部12aに当接し、マイクロニードルアレイ12を介して皮膚11の表面に押し当てられ、スイッチ17で電源16がオンに切替えられることにより振動子18が駆動されて、ヘッド53でマイクロニードルアレイ12が加振される際に、ヘッド53の振動がアプリケータ本体52に伝達することを防止できる。その結果、振動子18は小さな力でマイクロニードルアレイ12を効率的に振動させることができ、穿刺が促進される。
このとき、アプリケータ30と同様に、押圧ガイド33の作用により、マイクロニードルアレイ12が皮膚11の表面に押し当てられる押圧力を一定に保つことができるが、押圧ガイド33は省略されてもよい。
なお、防振手段は、ヘッドの振動がアプリケータ本体に伝達することを防止できるものであればよく、その構造は、本実施の形態に限定されることなく、適宜、選択される。
【0038】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
【符号の説明】
【0039】
10:マイクロニードル用振動式アプリケータ、11:皮膚、12:マイクロニードルアレイ、12a:基板部、13:アプリケータ本体、14:ヘッド、14a:先端面、15:ケース、16:電源、17:スイッチ、18:振動子、19a、19b、20:電線、23:マイクロニードル用振動式アプリケータ、24:スライドカバー、24a:端面、25:天板部、26:コイルバネ、27:転動体、28:円筒部、30:マイクロニードル用振動式アプリケータ、31:ヘッド、31a:先端面、32:アプリケータ本体、33:押圧ガイド、33a:端面、34:スイッチ、35:ヘッド本体、36:摺動部、37:フランジ部、38:突起部、39a、39b:リード線、40a、40b:接点部、42:ケース、43:底板部、44:挿通孔、45:仕切り部材、46a、46b:電線、47a、47b:バネ端子、48:凹部、49:付勢バネ、51:マイクロニードル用振動式アプリケータ、52:アプリケータ本体、53:ヘッド、53a:先端面、54:防振手段