(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094169
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】燃料電池システム、制御装置、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04858 20160101AFI20230628BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20230628BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20230628BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20230628BHJP
H01M 8/043 20160101ALI20230628BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20230628BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20230628BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M8/249
H01M8/04537
H01M8/0438
H01M8/043
H01M8/04746
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209482
(22)【出願日】2021-12-23
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度~2022年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業/共通課題解決型基盤技術開発/大型モビリティに適応する多用途型燃料電池モジュールの研究開発委託業務 産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【弁理士】
【氏名又は名称】新畠 弘之
(72)【発明者】
【氏名】小川 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊介
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB13
5H127AB17
5H127AC05
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127CC07
5H127DB22
5H127DB63
5H127DC02
5H127DC22
5H127DC44
5H127DC45
5H127DC89
(57)【要約】
【課題】燃料電池スタックを数台直列に接続した複数の燃料電池それぞれの出力電流の調整が可能な燃料電池システム、制御装置、及び制御方法を提供する。
【解決手段】本実施形態によれば、燃料電池システムは、第1燃料電池群と、第1電力変換器と、第2燃料電池群と、第2電力変換器と、第1配管と、を備える。第1燃料電池群は、複数の燃料電池スタックを直列に接続して構成される。第1電力変換器は、第1燃料電池群の第1発電電力を第1出力電流に応じて制御可能である。第2燃料電池群は、複数の燃料電池スタックにそれぞれ対応する複数の燃料電池スタックを直列に接続して構成される。第2電力変換器は、第2燃料電池群の第2発電電力を第2出力電流に応じて制御可能である。第1配管は、第1燃料電池群の複数の燃料電池スタックと、第2燃料電池群の複数の燃料電池スタックと、のそれぞれに酸素含有ガスを供給する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料電池スタックを直列に接続した第1燃料電池群と、
前記第1燃料電池群の第1発電電力を第1出力電流に応じて制御可能である第1電力変換器と、
前記複数の燃料電池スタックにそれぞれ対応する複数の燃料電池スタックを直列に接続した第2燃料電池群と、
前記第2燃料電池群の第2発電電力を第2出力電流に応じて制御可能である第2電力変換器と、
前記第1燃料電池群の複数の燃料電池スタックと、前記第2燃料電池群の複数の燃料電池スタックと、のそれぞれの対応する燃料電池スタック間に酸素含有ガスを供給する第1配管と、
を備える、燃料電池システム。
【請求項2】
前記第1出力電流と前記第2出力電流とのそれぞれが所定値となるように、前記第1電力変換器、及び前記第2電力変換器を制御する制御装置を、更に備える請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1出力電流と前記第2出力電流とを供給される前記酸素含有ガスに対応するように制御しつつ、所定の電力値に合致させる制御を前記第1電力変換器、及び前記第2電力変換器に対して行う、請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記制御装置は、初期駆動では、前記第1出力電流及び前記第2出力電流を増加させ、所定の電力値になるように前記第1電力変換器、及び前記第2電力変換器を制御する、請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記第1配管は、前記第1燃料電池群の複数の燃料電池スタックと、前記第2燃料電池群の複数の燃料電池スタックと、のそれぞれの対応する燃料電池スタック間に同等量の酸素含有ガスを供給する、請求項2又は3に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記第1燃料電池群の複数の燃料電池スタックと、前記第2燃料電池群の複数の燃料電池スタックと、のそれぞれの対応する燃料電池スタック間に所定量の水素含有ガスを供給する第2配管と、を更に備える、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記第1燃料電池群の複数の燃料電池スタックと、前記第2燃料電池群の複数の燃料電池スタックと、のそれぞれの対応する燃料電池スタック間に所定量の冷却水を供給する第3配管と、を更に備える、請求項6に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記第1配管、前記第2配管、及び前記第3配管の少なくともいずれかは、前記第1燃料電池群の複数の燃料電池スタックと、前記第2燃料電池群の複数の燃料電池スタックと、の対応する燃料電池スタック間の配管径が同等である、請求項7に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記第1配管に供給される前記水素含有ガスを供給する第1供給装置を更に備え、
前記第1供給装置は、前記第1出力電流及び前記第2出力電流の少なくとも一方に応じて、前記酸素含有ガスの供給量が制御される、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記第2配管に供給される前記酸素含有ガスを供給する第2供給装置を更に備え、
前記第2供給装置は、前記第1出力電流及び前記第2出力電流の少なくとも一方に応じて、前記水素含有ガスの供給量が制御される、請求項6に記載の燃料電池システム。
【請求項11】
前記第3配管に供給される前記冷却水を供給する第3供給装置を更に備え、
前記第3供給装置は、前記第1出力電流及び前記第2出力電流の少なくとも一方に応じて、前記冷却水の供給量が制御される、請求項7に記載の燃料電池システム。
【請求項12】
前記制御装置は、前記第1供給装置、前記第2供給装置、及び前記第3供給装置の少なくともいずれかを更に制御する、請求項11に記載の燃料電池システム。
【請求項13】
前記制御装置は、
前記第1電力変換器、及び前記第2電力変換器を制御する第1制御装置と、
前記第1供給装置、前記第2供給装置、及び前記第3供給装置の少なくともいずれかを制御する第2制御装置と、を有し、
前記制御装置を制御する第3制御装置を更に備える、請求項12に記載の燃料電池システム。
【請求項14】
複数の燃料電池スタックを直列に接続した第1燃料電池群と、
前記複数の燃料電池スタックにそれぞれ対応する複数の燃料電池スタックを直列に接続した第2燃料電池群と、
前記第1燃料電池群の第1発電電力を第1出力電流に応じて制御可能である第1電力変換器と、
前記第2燃料電池群の第2発電電力を第2出力電流に応じて制御可能である第2電力変換器と、
前記第1燃料電池群の複数の燃料電池スタックと、前記第2燃料電池群の複数の燃料電池スタックと、のそれぞれに酸素含有ガスを供給する第1配管と、
を備える、燃料電池システムの制御装置であって、前記第1出力電流と前記第2出力電流とを供給される前記酸素含有ガスに対応するように制御しつつ、所定の電力値に合致させる制御を前記第1電力変換器、及び前記第2電力変換器に対して行う、制御装置。
【請求項15】
複数の燃料電池スタックを直列に接続した第1燃料電池群と、
前記複数の燃料電池スタックにそれぞれ対応する複数の燃料電池スタックを直列に接続した第2燃料電池群と、
前記第1燃料電池群の第1発電電力を第1出力電流に応じて制御可能である第1電力変換器と、
前記第2燃料電池群の第2発電電力を第2出力電流に応じて制御可能である第2電力変換器と、
前記第1燃料電池群の複数の燃料電池スタックと、前記第2燃料電池群の複数の燃料電池スタックと、のそれぞれに酸素含有ガスを供給する第1配管と、
を備える、燃料電池システムの制御方法であって、
前記第1出力電流と前記第2出力電流とを供給される前記酸素含有ガスに対応するように制御しつつ、所定の電力値に合致させる制御を前記第1電力変換器、及び前記第2電力変換器に対して行う、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、燃料電池システム、制御装置、及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、燃料の有している化学エネルギーを直接電気に変換するシステムとして燃料電池システムが知られている。この燃料電池システムは、水素含有ガスと、酸素含有ガスとを電気化学的に反応させて直接電気を取り出すものである。このため、高い効率で電気エネルギーを取り出すことができると同時に、静かで有害な排ガスを出さないという、環境性に優れた特徴を有するシステムである。過去には大型のPAFC(りん酸形)が主に開発されてきたが、近年ではPEFC(固体高分子形燃料電池)の開発が活発化している。中でも、’09年度にPEFCの家庭用の燃料電池システムの商品化が実現され広く普及してきており、’21年度には40万台を超える台数が設置されている状況となっている。
【0003】
家庭用の燃料電池システムは、都市ガスやLPガスを改質して水素に変換して発電するシステムであるが、これはCO2排出量を50%に削減することはできるが、ゼロを目指すことはできない。このため、将来の水素社会に適用するべく、純水素を直接導入する純水素燃料電池システムも開発されている。日本のみならず世界規模で2050年のカーボンニュートラルを目指し、様々な取り組みがなされていく中で、水素価格も下がり、大規模燃料電池による発電が一般的になる世の中も近いと考えられる。また、自動車、重機、船、電車などの移動体のエンジンの代わりに燃料電池が用いられることも一般的になることが確実視されている。その状況に備えるために、様々な団体で水素燃料電池が開発されている状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、家庭用などでは一般に燃料電池スタックは1台で用いられる。しかしながら、業務用や将来の大規模発電用では、複数の燃料電池スタックを組み合わせて使うことが想定される。燃料電池スタックの装置制約やシール性の問題などから、セル面積を大きくすることや、セル枚数を無限に増やすことは難しいためである。さらにまた、ユーザーの出力ニーズは様々なことから、燃料電池スタックの台数を調整することで、燃料電池スタックを標準化しつつコストダウンをすることも求められる。
【0006】
燃料電池スタックを複数用いてシステム化する場合に、燃料電池スタックを電気的に直列に接続することが行われる。これにより、システム構成を単純化できると共に電圧が高くなり、インバーター効率の上昇など有利な効果がある。しかしながら、直列接続では電圧レベルが上がるため様々なリスクが上昇する。例えば、直流電圧が750Vを超えると、電気設備基準で高圧に分類され、厳しいルールに準拠する必要が出てくる。
【0007】
従って、燃料電池スタックは、無制限に電気的に直列接続することは困難である。このため、燃料電池スタックを数台直列に接続した燃料電池を、さらに並列に接続することが考えられる。この場合に1台の電力変換器で制御する場合、並列に接続した燃料電池の電圧が完全に一致するように、燃料電池毎に流れる電流(ストリング電流)は変化することとなる。接続されている全ての燃料電池スタックの特性が同じであれば、電圧も電流も一致することになるが、実際には燃料電池スタックの個別の特性のばらつきや劣化状況などにより電圧、電流特性が変化するため、燃料電池毎に流れるストリング電流には必ずバラツキが生じてしまう。
【0008】
水素、酸素などのプロセスガスや電池冷却水は、個別に電池スタックに等量ずつ分配すると、個別の制御が不要となり効率的であると考えられる。一方で、プロセスガス消費量は、発電電流に完全比例するため、ストリング電流の電流偏差はガス消費のバラツキを生じさせることとなる。ところが、これらの電流偏差のバラツキが生じても、電流偏差に水素、酸素などのプロセスガスや電池冷却水を追随させることは困難である。このため、ガス利用率などに影響を与え、燃料電池の寿命を低下させてしまう恐れがある。
【0009】
そこで、発明が解決しようとする課題は、燃料電池スタックを数台直列に接続した複数の燃料電池群それぞれの出力電流の調整が可能な燃料電池システム、制御装置、及び制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態によれば、燃料電池システムは、第1燃料電池群と、第1電力変換器と、第2燃料電池群と、第2電力変換器と、第1配管と、を備える。第1燃料電池群は、複数の燃料電池スタックを直列に接続して構成される。第1電力変換器は、第1燃料電池群の第1発電電力を第1出力電流に応じて制御可能である。第2燃料電池群は、複数の燃料電池スタックにそれぞれ対応する複数の燃料電池スタックを直列に接続して構成される。第2電力変換器は、第2燃料電池群の第2発電電力を第2出力電流に応じて制御可能である。第1配管は、第1燃料電池群の複数の燃料電池スタックと、第2燃料電池群の複数の燃料電池スタックと、のそれぞれに酸素含有ガスを供給する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電流偏差の抑制ができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】燃料電池システムの構成例を示したブロック図。
【
図2】第1燃料電池群と、第2燃料電池群との構成及び第1配管の接続例を示す図。
【
図3】第1燃料電池群と、第2燃料電池群との構成及び第2配管の接続例を示す図。
【
図4】第1燃料電池群と、第2燃料電池群との構成及び第3配管の接続例を示す図。
【
図6】燃料電池スタックを構成する燃料電池セルの発電状態を模式的に示す図。
【
図12】第1燃料電池群と、第2燃料電池群とを並列接続した場合の構成例を示す図。
【
図14】制御装置の制御処理例を示すフローチャート。
【
図15】第1電力変換器1と、第2電力変換器とを一体構成した例を示す図。
【
図16】制御装置を制御する上位制御装置を更に備えた例を示す図。
【
図18】制御装置を第1制御装置と第2制御装置とで構成した例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る燃料電池システム、制御装置、及び制御方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0014】
(一実施形態)
【0015】
図1乃至
図4を用いて燃料電池システム1の全体構成例を説明する。
図1は、燃料電池システム1の構成例を示したブロック図である。
図2は、第1燃料電池群10aと、第2燃料電池群10bと、の構成及び第1配管L14の接続例を示す図である。
図3は、第1燃料電池群10aと、第2燃料電池群10bと、の構成及び第2配管L16の接続例を示す図である。
図4は、第1燃料電池群10aと、第2燃料電池群10bと、の構成及び第3配管L18の接続例を示す図である。
【0016】
図1に示すように、燃料電池システム1は、第1燃料電池群10aと、第2燃料電池群10bと、第1電力変換器12aと、第2電力変換器12bと、第1供給装置14と、第2供給装置16と、第3供給装置18と、貯水タンク22と、制御装置24と、第1配線E12aと、第2配線E12bと、第1配管L14と、第2配管L16と、第3配管L18と、第4配管L20とを備える。
【0017】
図2に示すように、第1燃料電池群10aは、複数の燃料電池スタック100aを直列に接続して構成される。燃料電池スタック100aは、水素を含む水素含有ガスと、酸素を含む酸素含有ガスとを用いて発電する。
【0018】
第2燃料電池群10bは、第1燃料電池群10aと同等の構成である。すなわち、この第2燃料電池群10bは、第1燃料電池群10aにおける複数の燃料電池スタック100aにそれぞれ対応する複数の燃料電池スタック100bを直列に接続して構成される。なお、本実施形態では、複数の燃料電池スタック100aを直列に接続することをストリングと称し、直列に接続される複数の燃料電池スタック100aに流れる電流をストリング電流と称する場合がある。また、直列に接続される複数の燃料電池スタック100aの数は、任意の数であればよく、4つに限定されない。さらにまた、本実施形態に係る燃料電池システム1では、第1燃料電池群10aと第2燃料電池群10bと、2つの燃料電池群について説明するが、これに限定されない。燃料電池システム1は、2以上の燃料電池群で構成されればよく、例えば、5つの燃料電池群により燃料電池システム1を構成してもよい。
【0019】
第1配管L14は、第1供給装置14と、複数の燃料電池スタック100a、及び複数の燃料電池スタック100bとを接続する空気配管である。例えば、第1燃料電池群10aの複数の燃料電池スタック100aと、第2燃料電池群10bの複数の燃料電池スタック100bと、のそれぞれの対応する燃料電池スタック間に酸素含有ガスを供給する。この第1配管L14には、酸素含有ガスとして例えば空気が供給される。これにより、第1配管L14は、複数の燃料電池スタック100a、及び複数の燃料電池スタック100bの空気極(カソード電極)に酸素含有ガスを供給することが可能である。
【0020】
第1供給装置14は、例えば空気ブロワであり、第1配管L14の第1燃料電池群10a及び第2燃料電池群10bよりも上流側に設けられる。この第1供給装置14は、第1配管L14を介して、酸素含有ガスを複数の燃料電池スタック100a、及び複数の燃料電池スタック100bの空気極の上流側から供給する。
【0021】
例えば、第1配管L14の対応する燃料電池スタック100aと燃料電池スタック100bとを結ぶ配管の径は同等である。本実施形態における径の同等とは、同じ圧の酸素含有ガスを供給する場合に、同量の酸素含有ガスが供給されることを意味する。このため、配管の径が異なっても、例えば配管内の弁などにより、ほぼ同量の酸素含有ガスが供給される場合には、配管径は同等であると称する。また、ほぼ同量とは、燃料電池スタック100aと燃料電池スタック100bとを結ぶ配管における双方の供給量の差の絶対値が、供給量の少ない方に対して数パーセント以内であることを意味する。例えば、好ましくは1パーセント以内を意味する。このように、第1配管L14は、第1燃料電池群10aの複数の燃料電池スタック100aと、第2燃料電池群10bの複数の燃料電池スタック100bと、のそれぞれの対応する燃料電池スタック間に同等量の酸素含有ガスを供給することが可能である。なお、本実施形態では、第1配管L14の対応する燃料電池スタック100aと燃料電池スタック100bとを結ぶ配管の径は同等として説明するがこれに限定されない。例えば、燃料電池スタック100aと燃料電池スタック100bとを結ぶ配管から供給される酸素含有ガスの量が、例えば6対4などの所定の比であってもよい。この場合、例えば電池スタック100a、bの本数を6対4に構成しても良い。すなわち、電池セルの枚数の総和が6対4になるように構成することが可能である。
【0022】
図3に示すように、第2配管L16は、第2供給装置16と、複数の燃料電池スタック100a、及び複数の燃料電池スタック100bとを接続する燃料ガス供給配管である。第2配管L16には燃料ガスとして水素含有ガスが供給される。これにより、第2配管L16は、複数の燃料電池スタック100a、及び複数の燃料電池スタック100bの燃料極(アノード電極)に水素含有ガスを第2供給装置16から供給する。
【0023】
第2供給装置16は、例えばブロワであり、第2配管L16の第1燃料電池群10a及び第2燃料電池群10bよりも上流側に設けられている。この第2配管L16は水素含有ガスを複数の燃料電池スタック100a、及び複数の燃料電池スタック100bの燃料極の上流側から供給する。
【0024】
例えば、第2配管L16の対応する燃料電池スタック100aと燃料電池スタック100bとを結ぶ配管の径は同等である。このように、第2配管L16は、第1燃料電池群10aの複数の燃料電池スタック100aと、第2燃料電池群10bの複数の燃料電池スタック100bと、のそれぞれの対応する燃料電池スタック間に同等量の水素含有ガスを供給する。なお、本実施形態では、第2配管L16の対応する燃料電池スタック100aと燃料電池スタック100bとを結ぶ配管の径は同等として説明するがこれに限定されない。例えば、燃料電池スタック100aと燃料電池スタック100bとを結ぶ配管から供給される水素含有ガスの量が、例えば6対4などの所定の比であってもよい。この場合、水素含有ガスの供給比率は、酸素ガスの供給比率に対応させるようにする。
【0025】
図4に示すように、第3配管L18は、第3供給装置18と、複数の燃料電池スタック100a、及び複数の燃料電池スタック100bとを接続する冷却水供給配管である。第3配管L18には冷却用の液体として冷却水が供給される。これにより、第3配管L18は、複数の燃料電池スタック100a、及び複数の燃料電池スタック100bに冷却水を第3供給装置18から供給する。
【0026】
例えば、第3配管L18の対応する燃料電池スタック100aと燃料電池スタック100bとを結ぶ配管の径は同等である。このように、第3配管L18は、第1燃料電池群10aの複数の燃料電池スタック100aと、第2燃料電池群10bの複数の燃料電池スタック100bと、のそれぞれの対応する燃料電池スタック間に同等量の冷却水を供給する。なお、本実施形態では、第3配管L18の対応する燃料電池スタック100aと燃料電池スタック100bとを結ぶ配管の径は同等として説明するがこれに限定されない。例えば、燃料電池スタック100aと燃料電池スタック100bとを結ぶ配管から供給される冷却水の量が、例えば6対4などの所定の比であってもよい。この場合、冷却水の供給比率は、酸素ガスの供給比率に対応させるようにする。
【0027】
再び
図1に示すように、第4配管L20は、貯水タンク22と、複数の燃料電池スタック100a、及び複数の燃料電池スタック100bとを接続する冷却水排出配管である。貯水タンク22は、複数の燃料電池スタック100a、及び複数の燃料電池スタック100bから排出された冷却水を回収し、冷却装置により冷却する。このように、複数の燃料電池スタック100a、及び複数の燃料電池スタック100bから排出された冷却水は第4配管L20を介して貯水タンク22に回収される。
【0028】
図5は、電力変換器12a、bの構成及び接続例を模式的に示す図である。
図5に示すように、電力変換器12a、bは、例えばコンバーターであり、燃料電池10a、bの発電電力を出力電流に応じて制御可能である。すなわち、第1電力変換器12aと第2電力変換器12bとは、同等の構成である。以下では、第1電力変換器12a、及び第2電力変換器12bなどを単に電力変換器12a、bなどと記して説明する場合がある。
【0029】
この電力変換器12a、bは、例えば可変抵抗120と、電流計122と、電圧計124とを有する。配線E12a、bは、燃料電池10a、bの両端と、可変抵抗120の両端とを接続する。電流計122は、配線E12a、bを流れる出力電流を測定する。電圧計124は、可変抵抗120の両端の電圧を測定する。
【0030】
電力変換器12a、bは、制御装置24からの出力指令に応じて、電流計122の値が目的の値となるように、可変抵抗120の抵抗を変更する。また、電力変換器12a、bは、電流計122の値と、電圧計124の値を制御装置24に供給する。燃料電池10の出力電流は、可変抵抗120の抵抗が低下するに従い増加する。このとき、燃料電池10a、bの電圧値は、燃料電池10a、bを流れる出力電流に応じて変動する。例えば、燃料電池10a、bの電圧値は、燃料電池10a、bを流れる出力電流が増加するに従い増加する。換言すると、燃料電池10a、bの出力電力は、可変抵抗120の抵抗値により制御される。なお、電力変換器12a、bは、
図5の構成に限定されず、他の構成を用いることも可能である。
【0031】
図6は、燃料電池スタックを構成する燃料電池セルの発電状態を模式的に示す図である。燃料電池スタックは、例えば複数の単位電池102を積層して構成されている。なお、本実施形態に係る燃料電池スタックは、例えばPEFC(固体高分子形燃料電池)であるが、これに限定されない。
【0032】
この単位電池102は、膜電極複合体を有している。膜電極複合体は、電解質膜104と、電解質膜104の一方の面に配置された燃料極(アノード電極)106と、電解質膜104の燃料極106とは反対側の面に配置された空気極(カソード電極)108とを有する。更に、燃料極106は、アノード触媒層を有し、空気極108は、カソード触媒層を有する。
【0033】
この単位電池102は、化学式1で示す反応により発電する。水素含有ガスは、燃料極106側の燃料極流通路を流れ、燃料極反応をおこす。酸素含有ガスは、空気極108側の酸化剤極流通路を流れ、酸化剤極反応をおこす。燃料電池スタック100a,bは、これらの電気化学反応を利用して、電極から電気エネルギーを取り出す。これらから分かるように、単位電池102の発電により生じた出力電流と、発電に用いられた酸素含有ガスの量とは正比例の関係がある。同様に、単位電池102の発電により生じた電流と、発電に用いられた水素含有ガスの量とは正比例の関係がある。
【0034】
(化学式1)
燃料極反応:2H2→4H++4e-
空気極反応:4H++4e-+O2→2H2O
【0035】
図7は、制御装置24の構成を示すブロック図である。
図7に示すように、制御装置24は、燃料電池システム1全体の制御を行う。制御装置24は、例えばCPU(Central Processing Unit)、記憶装置240、取得装置(入出力インターフェース)242などを備えたマイクロコンピュータである。制御装置24は、記憶装置240に記憶されるプログラムにしたがい、制御を行う。すなわち、制御装置24は、記憶装置240に記憶されるプログラムにしたがい、電力演算部244と、電流制御部246と、第1流量制御部248と、第2流量制御部250と、第3流量制御部252と、を構成する。なお、電力演算部244と、電流制御部246と、第1流量制御部248と、第2流量制御部250と、第3流量制御部252と、を電子回路として構成してもよい。
【0036】
取得装置242は、燃料電池システム1の各種の情報を取得する。例えば、取得装置242は、第1電力変換器12aと、第2電力変換器12bとから、電流値、電圧値、及び電力に関する情報を取得する。
【0037】
電力演算部244は、第1電力変換器12aと、第2電力変換器12bとから取得した、電流値、電圧値を用いて、第1燃料電池群10aと、第2燃料電池群10bと、の出力電力を演算する。なお、第1電力変換器12a、及び第2電力変換器12bそれぞれが電力を演算している場合には、第1電力変換器12a、及び第2電力変換器12bそれぞれが演算した電力を用いて、電力演算部244での電力演算は省略することが可能である。
【0038】
図8は、電流制御部246の制御例を示す図である。横軸は、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bそれぞれの電流値を示し、縦軸は、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bそれぞれの電圧値を示す。ラインS12aは、第1燃料電池群10aの電圧、電流特性を示し、ラインS12bは、第2燃料電池群10bの電圧、電流特性を示す。また、四角形Sqaは、第1燃料電池群10aの生成電力を示し、四角形Sqbは、第2燃料電池群10bの生成電力を示す。また、第1出力電圧、及び第1出力電流は第1燃料電池群10aの出力電圧と出力電流とをそれぞれ示し、第2出力電圧、及び第2出力電流は第2燃料電池群10bの出力電圧と出力電流とをそれぞれ示す。
【0039】
図8に示すように、電流制御部246は、取得装置242が取得した情報を用いて、第1燃料電池群10aの生成する第1出力電流と、第2燃料電池群10bの生成する第2出力電流とが所定値となるように制御する。例えば、本実施形態に係る電流制御部246は、第1燃料電池群10aの生成する第1出力電流と、第2燃料電池群10bの生成する第2出力電流とが等しくなるように第1電力変換器12a、及び第2電力変換器12bを制御する。これにより、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bが電力生成に用いる酸素含有ガスの量が均等となる。
【0040】
なお、料電池スタック100aと燃料電池スタック100bとを結ぶ第1配管L14から供給される酸素含有ガスの量が、例えば6対4などの所定の比である場合、電流制御部246は、第1出力電流と、第2出力電流との比率を供給比率に対応させるように制御してもよい。これにより、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bに過不足なく酸素含有ガスを供給させることができる。
【0041】
これから分かるように、第1配管L14の対応する燃料電池スタック100aと燃料電池スタック100bとを結ぶ配管の径を同等に構成した場合にも、第1流量制御部248は、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bで生成する電流値の生成時に必要となる酸素含有ガスの量を過不足無く第1供給装置14に供給させることが可能となる。
【0042】
このように、本実施形態に係る電流制御部246は、第1出力電流と第2出力電流とが等しくなるように制御しつつ、第1出力電流及び第2出力電流を増加させ、目標とする電力値になるように、第1電力変換器12a、及び第2電力変換器12bを制御する。また、電流制御部246は、燃料電池システム1の駆動開始時には、第1出力電流及び第2出力電流を0から上昇させ、目標とする電力値になるように、第1電力変換器12a、及び第2電力変換器12bを制御する。これにより、調整制御時における第1供給装置14、第2供給装置16、及び第3供給装置18の消費電力を抑制できる。
【0043】
図9は、第1流量制御部248の制御例を示す図である。横軸は、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bそれぞれの電流値を示し、縦軸は、第1供給装置14の酸素含有ガスの供給量を示す。
図9に示すように、第1流量制御部248は、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bそれぞれの電流値に比例する酸素含有ガスの量を第1供給装置14に供給させる。すなわち、第1流量制御部248は、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bの出力電流の生成時に必要となる酸素含有ガスの量を過不足無く第1供給装置14に供給させる。
【0044】
上述のように、第1配管L14は、第1燃料電池群10aの複数の燃料電池スタック100aと、第2燃料電池群10bの複数の燃料電池スタック100bと、のそれぞれの対応する燃料電池スタック間に同等量の酸素含有ガスを供給するように構成される。このため、第1供給装置14は、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bの生成電流に応じた酸素含有ガスを供給することにより、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bに過不足無く酸素含有ガスを供給することが可能となる。換言すると、第1出力電流と、第2出力電流とを等しくさせる制御を行う場合に、第1配管L14を介して酸素含有ガスを供給することにより、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bに過不足なく酸素含有ガスを均等に供給させることができ、第1供給装置14の消費電力を抑制可能となる。このように、第1出力電流と、第2出力電流とが等しくなるように制御することにより、第1供給装置14の制御が単純化されるとともに、第1供給装置14の消費電力を第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bで生成する出力電流の一方の値に応じて制御可能となり、燃料電池システム1の消費電力をより高精度に制御できる。
【0045】
なお、料電池スタック100aと燃料電池スタック100bとを結ぶ第1配管L14から供給される酸素含有ガスの量が、例えば6対4などの所定の比である場合、第1流量制御部248は、第1出力電流と、第2出力電流との比率を供給比率に対応させるように制御してもよい。これにより、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bに過不足なく酸素含有ガスを供給させることができ、第1供給装置14の消費電力を抑制可能となる。
【0046】
図10は、第2流量制御部250の制御例を示す図である。横軸は、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bそれぞれの電流値を示し、縦軸は、第2供給装置16の水素含有ガスの供給量を示す。
図10に示すように、第2流量制御部250は、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bそれぞれの電流値に比例する水素含有ガスの量を第2供給装置16に供給させる。すなわち、第2流量制御部250は、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bの出力電流の生成時に必要となる水素含有ガスの量を過不足無く第2供給装置16に供給させる。
【0047】
上述のように、第2配管L16は、第1燃料電池群10aの複数の燃料電池スタック100aと、第2燃料電池群10bの複数の燃料電池スタック100bと、のそれぞれの対応する燃料電池スタック間に同等量の水素含有ガスを供給するように構成される。このため、第2供給装置16は、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bの生成電流に応じた水素含有ガスを供給することにより、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bに過不足無く水素含有ガスを供給することが可能となる。換言すると、第1出力電流と、第2出力電流とを等しくさせる制御を行う場合に、第2配管L16を介して水素含有ガスを供給することにより、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bに過不足なく水素含有ガスを均等に供給させることができ、第2供給装置16の消費電力を抑制可能となる。このように、第1出力電流と、第2出力電流とが等しくなるように制御することにより、第2供給装置16の制御が単純化されるとともに、第2供給装置16の消費電力を第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bの出力電流の一方の値に応じて制御可能となり、燃料電池システム1の消費電力をより高精度に制御できる。
【0048】
なお、料電池スタック100aと燃料電池スタック100bとを結ぶ第2配管L16から供給される水素含有ガスの量が、例えば6対4などの所定の比である場合、第2流量制御部250は、第1出力電流と、第2出力電流との比率を供給比率に対応させるように制御してもよい。これにより、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bに過不足なく水素含有ガスを供給させることができ、第2供給装置16の消費電力を抑制可能となる。
【0049】
図11は、第3流量制御部252の制御例を示す図である。横軸は、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bそれぞれの電流値を示し、縦軸は、第3供給装置18の冷却水の供給量を示す。
図11に示すように、第3流量制御部252は、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bそれぞれの電流値に応じた量の冷却水を第3供給装置18に供給させる。すなわち、第2流量制御部250は、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bで生成する出力電流の生成時に必要となる冷却水の量を過不足無く第2流量制御部250に供給させる。これにより、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bを所定の温度に維持可能となる。
【0050】
上述のように、第3配管L18は、第1燃料電池群10aの複数の燃料電池スタック100aと、第2燃料電池群10bの複数の燃料電池スタック100bと、のそれぞれの対応する燃料電池スタック間に同等量の冷却水を供給するように構成される。このため、第3供給装置18は、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bの生成電流に応じた冷却水を供給することにより、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bに、所定の温度にする冷却水を過不足無く供給することが可能となる。換言すると、第1出力電流と、第2出力電流とを等しくさせる制御を行う場合に、第3配管L18を介して冷却水を供給することにより、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bに過不足なく冷却水を均等に供給させることができ、第3供給装置18の消費電力を抑制可能となる。
【0051】
なお、料電池スタック100aと燃料電池スタック100bとを結ぶ第3配管L18から供給される冷却水の量が、例えば6対4などの所定の比である場合、第3流量制御部252は、第1出力電流と、第2出力電流との比率を供給比率に対応させるように制御してもよい。これにより、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bに過不足なく冷却水を供給させることができ、第3供給装置18の消費電力を抑制可能となる。
【0052】
ここで、
図12及び
図13を用いて、比較例として、並列接続の制御例を説明する。
図12は、第1燃料電池群10aと、第2燃料電池群10bとを並列接続した場合の構成例を示す図である。
図13は、並列接続の制御例を示す図である。横軸は、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bそれぞれの電流値を示し、縦軸は、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bそれぞれの電圧値を示す。ラインS12aは、第1燃料電池群10aの電圧、電流特性を示し、ラインS12bは、第2燃料電池群10bの電圧、電流特性を示す。また、四角形Sqaは、第1燃料電池群10aの生成電力を示し、四角形Sqbは、第2燃料電池群10bの生成電力を示す。また、第1出力電流は第1燃料電池群10aの出力電流を示し、第2出力電流は第2燃料電池群10bの出力電流を示す。
【0053】
図12に示すように、第1燃料電池群10aと、第2燃料電池群10bとを並列接続すると、第1燃料電池群10aの電圧(電圧1+2+3+4)と、第2燃料電池群10bの電圧(電圧5+6+7+8)は、同一となる。このため、発電電力は、第1燃料電池群10aと、第2燃料電池群10bとの発電電圧により制御される点で、
図8に示す制御例と相違する。
【0054】
これにより、
図13に示すように、比較例では、第1電力変換器12aの第1出力電流と第2電力変換器12bの第2出力電流は相違してしまう。このため、第1燃料電池群10aと、第2燃料電池群10bとの酸素含有ガスの消費量と、水素含有ガスの消費量とに相違が生じてしまう。
【0055】
上述のように、第1配管L14は、第1燃料電池群10aの複数の燃料電池スタック100aと、第2燃料電池群10bの複数の燃料電池スタック100bと、のそれぞれの対応する燃料電池スタック間に同等量の酸素含有ガスを供給するように構成される。このため、電流1及び電流2のうちの電流値の大きなほうに合わせて、第1供給装置14からの酸素含有ガスの供給量を制御しないと、酸素含有量の不足により、電流値の大きなほうの燃料電池が劣化してしまう。一方で、第1出力電流及び第2出力電流のうちの電流値の大きなほうに合わせて、第1供給装置14からの酸素含有ガスの供給量を制御すると、電流1及び電流2のうちの電流値の小さい方の燃料電池には、過剰に酸素含有ガスが供給されてしまう。すなわち、第1供給装置14の消費電力が冗長に使用されてしまうことになる。
【0056】
同様に、第2供給装置16、及び第3供給装置18からの水素含有ガス、及び冷却水の供給量を制御しないと、水素含有ガス、及び冷却水の不足により、電流値の大きなほうの燃料電池が劣化したり、温度が高温化したりしてしまう。一方で、第1出力電流及び第2出力電流のうちの電流値の大きなほうに合わせて、第1供給装置14からの酸素含有ガスの供給量を制御すると、第1出力電流及び第2出力電流のうちの電流値の小さい方の燃料電池には、過剰に水素含有ガス、及び冷却水が供給されてしまう。すなわち、第2供給装置16、及び第3供給装置18の消費電力が冗長に使用されてしまうことになる。
【0057】
これに対して、上述のように、本実施形態に係る電流制御部246は第1出力電流と第2出力電流とを制御して、発電電力を制御する(
図8参照)。特に、第1出力電流と第2出力電流とが等しくなるように制御しつつ、出力指令としての電力値に合致させる制御を第1電力変換器12a、及び第2電力変換器12bに対して行うことが可能である。この場合、第1燃料電池群10a、及び第2燃料電池群10bに過不足なく酸素含有ガス、水素含有ガス、及び冷却水を均等に供給させつつ、生成電力を電力指令としての電力値に合致させることが可能となる。これらから分かるように、本実施形態に係る電流制御部246の制御では、第1供給装置14、第2供給装置16、及び第3供給装置18の消費電力が冗長に使用されることが抑制される。
【0058】
図14は、制御装置24の制御処理例を示すフローチャートである。ここでは、電力指令としての指令電力値が設定された後の制御例を説明する。
【0059】
まず、取得装置242は、取得装置242は、第1電力変換器12aと、第2電力変換器12bとから、電流値、電圧値、及び電力に関する情報を取得する(ステップS100)。続けて、電力演算部244は、第1電力変換器12aと、第2電力変換器12bとから取得した、電流値、電圧値を用いて、第1燃料電池群10aと、第2燃料電池群10bと、の出力電力を演算する(ステップS101)。
【0060】
次に、電流制御部246は、取得装置242が取得した情報を用いて、第1燃料電池群10aの生成する第1出力電流と、第2燃料電池群10bの生成する第2出力電流とが等しいか、否かを判定する(ステップS102)。電流が一致していないと判定する場合(ステップS102のNO)、電流制御部246は、電流が一致するように第1電力変換器12a、及び第2電力変換器12bを制御し(ステップS104)、ステップS100からの処理をくり返す。ここで、一致の範囲は、数パーセントのずれの範囲とする。例えば、好ましくは1パーセントのずれの範囲とする。
【0061】
一方で、電流が一致していると判定する場合(ステップS102のYES)、電流制御部246は、電力演算部244が演算した電力が指令電力値以下か否かを判定する(ステップS106)。
【0062】
この場合、電力演算部244が演算した電力が指令電力値より低いと判定する場合(ステップS106のYES)には、電流制御部246は、第1電力変換器12aと、第2電力変換器12bとに対して、電流値を一致させつつ増加させる制御を行う(ステップS108)。一方で、電力演算部244が演算した電力が指令電力値よりも高いと判定する場合(ステップS106のNO)には、電流制御部246は、第1電力変換器12aと、第2電力変換器12bとに対して、電流値を一致させつつ減少させる制御を行う(ステップS108)。そして、電流制御部246は、全体処理を終了するか、否かを判定する(ステップS112)。終了しない場合(ステップS112のNO)、ステップS100からの処理をくり返し、終了する場合(ステップS112のYES)、全体処理を終了する。
【0063】
このように、電流制御部246は、第1燃料電池群10aと、第2燃料電池群10bとの合計電力が指令電力値よりも低い場合には、指令電力値に到達するまで、2つの電流を一致させながら、2つの電流を徐々に増加させる。一方で、電流制御部246は、合計電力が指令電力値よりも高い場合には、指令電力値に到達するまで、2つの電流を一致させながら、2つの電流を徐々に減少させる。そして、合計電力が一定の値を示す場合にも、電流値を一致させる制御を継続する。これにより、外乱や燃料電池個別の特性変化時などにより、合計電力が指令電力値からずれても、指令電力値に一致するように、2つの電流を一致させながら、2つの電流を増減させる制御を行うことが可能となる。
【0064】
図15は、第1電力変換器12aと、第2電力変換器12bとを電力変換器125として一体構成した例を示す図である。例えば、電力変換器125では、第1電力変換器12aと、第2電力変換器12bとの演算回路122などを共有している。これにより、第2電力変換器12bと電力変換器120とをより小型化可能となる。
【0065】
図16は、制御装置24を制御する上位制御装置26を更に備えた例を示す図である。これにより、例えば、上位制御装置26は、燃料電池システム1の他の制御に合わせて制御装置24を制御することが可能となる。
【0066】
図17は、第1電力変換器12aと、第2電力変換器12bとが共有する電力変換上位制御部28を備えた例を示す図である。力変換上位制御部28は、第1電力変換器12aと、第2電力変換器12bとの制御回路を共有化している。これにより、第1電力変換器12aと、第2電力変換器12bとをより小型化可能となる。
【0067】
図18は、制御装置24を第1制御装置24aと第2制御装置24bとで構成した例を示す図である。第1制御装置24aは、上位制御装置26の制御にしたがい、第1電力変換器12aと、第2電力変換器12bとを制御する。一方で、第2制御装置24bは、上位制御装置26の制御にしたがい第1供給装置14、第2供給装置16、及び第3供給装置18を制御する。これにより、電力変換器12a,12bと第1供給装置14、第2供給装置16、及び第3供給装置18と独立して制御可能となる、また、第1電力変換器12aを介して第2電力変換器12bを制御することにより、配線などをより簡易化できる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1電力変換器12aが、第1燃料電池群10aの第1発電電力を第1出力電流に応じて制御し、第2電力変換器12bが、第2燃料電池群10bの第2発電電力を第2出力電流に応じて制御することとした。これにより、第1燃料電池群10aに供給される酸素含有ガス、水素含有ガス、及び冷却水の供給量と、第2燃料電池群10bに供給される酸素含有ガス、水素含有ガス、及び冷却水の供給量と、を第1配管L14、第2配管L16、及び第3配管L18それぞれの供給量に適合させることが可能となる。このため、例えば第1配管L14、第2配管L16、第3配管L18、の配管径が固定されている場合にも、第1燃料電池群10a及び第2燃料電池群10bそれぞれに過不足無く、酸素含有ガス、水素含有ガス、及び冷却水を供給可能となり、第1供給装置14、第2供給装置16、及び第3供給装置18の消費電力を抑制できる。
【0069】
特に、第1配管L14、第2配管L16、及び第3配管L18において、第1燃料電池群10aの複数の燃料電池スタック100aと、第2燃料電池群10bの複数の燃料電池スタック100bと、の対応する燃料電池スタック間の配管径が同等である場合にも、第1出力電流と第2出力電流とが等しくなるように制御を行うことにより、第1燃料電池群10a及び第2燃料電池群10bそれぞれに過不足無く、酸素含有ガス、水素含有ガス、及び冷却水を供給可能となる。
【0070】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1:燃料電池システム、10a:第1燃料電池群、10b:第2燃料電池群、12a:第1電力変換器、12b:第2電力変換器、14:第1供給装置、16:第2供給装置、18:第3供給装置、24:制御装置、24a:第1制御装置、24b:第2制御装置、26:上位制御装置(第3制御装置)、100a:燃料電池スタック、100b:燃料電池スタック、L14:第1配管、L16:第2配管、L18:第3配管。