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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094170
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】ベルト
(51)【国際特許分類】
   B65G 15/30 20060101AFI20230628BHJP
   B65G 15/34 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
B65G15/30 A
B65G15/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209485
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000211156
【氏名又は名称】中興化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】川本 啓司
(72)【発明者】
【氏名】深草 孝郎
【テーマコード(参考)】
3F024
【Fターム(参考)】
3F024AA04
3F024AA19
3F024BA05
3F024CA01
3F024CA04
3F024CB02
3F024CB09
(57)【要約】
【課題】テーパー接合部での折れ曲がりなどの変形を抑制することにより、製品への変形の転写を防止することが可能なベルトを提供する。
【解決手段】耐熱性繊維の織布4と、前記織布4の表面の少なくとも一部を被覆するフッ素樹脂5とを含むベルト基材同士が接合された環状構造を有するベルト1であって、前記ベルト1の接合部は、前記ベルト基材の進行方向21と交差する一方の第1端部1aの傾斜面に、前記ベルト基材の進行方向21と交差する他方の第2端部1bの傾斜面が重ね合わされて接合されたものであり、前記接合部における前記第1端部1aと前記第2端部1bの継ぎ目2は、前記ベルト基材の進行方向21に対して45度以上80度以下の角度6を有する方向に沿っている、ベルト。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性繊維の織布と、前記織布の表面の少なくとも一部を被覆するフッ素樹脂とを含むベルト基材同士が接合された環状構造を有するベルトであって、
前記ベルトの接合部は、前記ベルト基材の進行方向と交差する一方の第1端部の傾斜面に、前記ベルト基材の進行方向と交差する他方の第2端部の傾斜面が重ね合わされて接合されたものであり、
前記接合部における前記第1端部と前記第2端部の継ぎ目は、前記ベルト基材の進行方向に対して45度以上80度以下の角度を有する方向に沿っている、ベルト。
【請求項2】
前記ベルト基材は、厚さが1mm以下で、かつ表面に凹凸を有する、請求項1に記載のベルト。
【請求項3】
前記ベルト基材の少なくとも一方の表面に前記継ぎ目を覆うように形成された基材層をさらに備える、請求項1または2に記載のベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ベルト、特にカーペットなどの床材等の製造に使用されるベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
床材(タイルカーペット等)を製造する装置に取り付けられるベルトは、例えば、ベルト基材の長さ方向の端部どうしが接合された、無端状あるいは環状をしている。ベルト基材の接合方法には、例えば、オーバーラップ接合、バット接合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-8361号公報
【特許文献2】特開平10-291617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オーバーラップ接合は、例えば図10に示す通り、ベルト基材の端部32a、32bを重ね合わせて溶融樹脂などで接合する方法である。オーバーラップ法では、ベルト基材同士を接合した部分に段差が生じる。その結果、ベルト32の接合部付近と接した床材33は段差に沿って変形する。変形した部分は、商品価値が損なわれるため、廃棄処分にせざるを得ない。そのため、オーバーラップ法により接合されたベルトからは、長尺の床材を製造する事ができない。
また、バット接合は、例えば図11に示す通り、ベルト基材の端部34a、34bを突合せ、突き合せた端部34a、34bの上側または下側を別の基材35で補強する方法である。補強する基材35にはベルト基材と同じ基材や薄手の基材が使用される。バット接合により形成されたベルト34では、突き合せた部分が開き、この部分に床材33の材料(ポリ塩化ビニル(PVC)等)が入り込み、切断などの寿命低下に繋がる事がある。その為、不良品として廃棄せざる負えない。又、不良品の混入を防ぐ為、長尺の床材を製造する事が出来ない。例えば図12に示す通り、突き合せた端部34a、34bの上側を基材36で補強し、下側を基材35で補強することにより、突き合せた端部34a、34b間の隙間を覆うことで、ベルト34に極端な段差が無くなり、接合部の寿命及び、製品歩留まりを向上させることが可能である。しかしながら、基材36の端部にPVCが浸透することで、その部分で離形不良が起こり、生産性、歩留まりに影響が出る事がある。例えば、ベルト34の接合部を切除し、再度、接合作業を実施するため、ライン停止による生産量の低下が生じる。
【0005】
特許文献1に記載されているラップレスジョイント接合方法により形成されたベルトでは、接合部が平坦になるため、オーバーラップ法、バット法に存在する接合部に段差が生じる問題が発生しない。しかしながら、ラップレスジョイント接合は、表面に凹凸を有するベルト基材に適用できないなど、適用可能なベルト基材の種類に制約がある。
【0006】
表面に凹凸を有するベルト基材にも適用可能で、かつ接合部に段差が生じない接合方法として、ベルト基材の端部を斜めに削り、バット接合の要領で削った端部どうしを重ね合わせる、テーパー(スカイバー)接合法が挙げられる。テーパー接合法は、例えば特許文献2に記載されている。
【0007】
テーパー接合を用いて製造されたベルトの一例を図13に示す。図13は、環状もしくは無端状のベルト30が、ロール3に取り付けられた状態を示す斜視図である。ベルト30は、ベルト基材の長さ方向の両端部が斜めに削られた傾斜面同士が重ね合わされ、接合されたものである。そのため、ベルト30の表面と裏面(ロール3と接する面)に、ベルト基材の端部同士を突き合せた継ぎ目31が存在する。継ぎ目31は、ベルトの進行方向21に対して垂直(90°)な方向に沿って形成されている。これにより、次のような問題が生じる事がある。ベルト30がロール3上を走行してベルト30の継ぎ目31がロール3上を通過する際、直線的に負荷が加わるため、直線的に折れる事がある。ロール3の径が小さくなると、ベルト30がロール3上を走行する際の曲がり具合(曲率)が大きくなるため、折れる頻度が高くなる。ベルトが変形すると、ベルトを用いて製造される製品(床材など)に変形が転写されるため、製品の歩留まりが低くなる。また、継ぎ目31の接合強度を高めるため、ベルト30の表面又は裏面の継ぎ目を基材で覆うと、基材で覆われていないベルト本体よりも、基材で覆った部分の厚さが増すと共に、剛性(コシ)がベルト本体よりも強くなる。その結果、継ぎ目31よりも基材の端部(凹凸がある部分)にて折れる可能性がある。この問題に加え、ベルト30がロール3と接触した際に基材の凸がロール3に引っ掛かり易く、走行時のノッキングに繋がる。また、引っ掛かった接合部が進行方向に引っ張られ、急に走行した際にもノッキングが起こる。
またさらに基材の種類によっては、基材表面が平滑なものがあり、ベルト本体部よりも滑り易い傾向がある。上述の通り、基材で覆った部分の剛性(コシ)がベルト本体よりもある為、ロール3と接触した際に、ベルト本体よりも滑り易く、スリップが起こる事が有る。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、テーパー接合部での折れ曲がりなどのベルトの変形を抑制する事である。これにより、床材などのワークに、ベルトの変形が転写される等の欠点の発生を抑制する事ができる。また、ベルトの走行不良を低減することも可能である。さらに、接合のために突き合せた端部同士の隙間にワークが侵入するのを抑制することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態によれば、耐熱性繊維の織布と、前記織布の表面の少なくとも一部を被覆するフッ素樹脂とを含むベルト基材同士が接合された環状構造を有するベルトであって、
前記ベルトの接合部は、前記ベルト基材の進行方向と交差する一方の第1端部の傾斜面に、前記ベルト基材の進行方向と交差する他方の第2端部の傾斜面が重ね合わされて接合されたものであり、
前記接合部における前記第1端部と前記第2端部の継ぎ目は、前記ベルト基材の進行方向に対して45度以上80度以下の角度を有する方向に沿っている、ベルトが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、テーパー接合部での折れ曲がりなどのベルトの変形を抑制することができる。これにより、床材などのワークに、ベルトの変形が転写される等の欠点の発生を抑制する事ができる。また、ベルトの走行不良を低減することも可能である。さらに、接合のために突き合せた端部同士の隙間にワークが侵入するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態のベルトの一例の要部を概略的に示す拡大断面図。
図2図1に示すベルトの概略を示す斜視図。
図3図1に示すベルトの概略的な平面図。
図4図1に示すベルトのベルト基材の概略を示す図。
図5】実施形態のベルトの他の例の概略を示す断面図。
図6図5に示すベルトの概略を示す斜視図。
図7図5に示すベルトの概略的な平面図。
図8】実施形態のベルトの他の別の例の概略を示す断面図。
図9】実施形態のベルトの他の別の例の概略を示す断面図。
図10】オーバーラップ接合を用いて製造されたベルトの一例の概略を示す図。
図11】バット接合を用いて製造されたベルトの一例の概略を示す断面図。
図12】バット接合を用いて製造されたベルトの他の例の概略を示す断面図。
図13】テーパー接合を用いて製造されたベルトの一例の概略を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に実施形態が図面を参照して記述される。以下の記述において、略同一の機能および構成を有する構成要素は同一符号を付され、繰り返しの説明は省略される場合がある。図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なり得る。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。また、ある実施形態についての記述は全て、明示的にまたは自明的に排除されない限り、別の実施形態の記述としても当てはまる。各実施形態は、この実施形態の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、実施形態の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定しない。
【0013】
第1実施形態のベルト
図1は、第1実施形態のベルト1の概略的な断面図である。図2は、ベルト1がロール3に装着された状態を示している。図3は、ベルト1の概略的な平面図である。図4は、ベルト1を構成するベルト基材の概略的な断面図である。図1図4において、x軸は、ベルト基材の進行方向(走行方向ともいう)21と平行な方向で、y軸はベルト基材の幅方向22と平行な方向で、z軸はベルト基材の厚さ方向と平行な方向である。
【0014】
ベルト1は、ベルト基材を環状もしくは無端状に接合したものである。ベルト基材は、例えば、耐熱性繊維の織布4と、織布4の表面を被覆するフッ素樹脂5とを含む。フッ素樹脂5は、織布4の表面を部分的に被覆していても、または表面全体を被覆していても良い。ベルト基材の幅方向22に沿った一方の第1端部1aの端面と、他方の第2端部1bの端面は、それぞれ、傾斜面で構成されている。二つの傾斜面は、互いに平行である。また、二つの傾斜面は、例えば、テーパー加工で形成される。ベルト基材同士の接合は、例えば、第1端部1aの傾斜面に、第2端部1bの傾斜面を重ね、これら二つの傾斜面を接合することによりなされる。
【0015】
接合部の継ぎ目2は、ベルト基材の進行方向21に対して45度以上80度以下の角度6を有する方向に沿っている。ベルト基材の進行方向21に対して平行な方向は、ベルト基材の進行方向21に対する角度が0度である。角度は、鋭角6と鈍角7の二つ存在するが、そのうちの小さい方の鋭角6の角度が45度以上80度以下であれば良い。
【0016】
角度6を45度以上80度以下の範囲にする理由を説明する。角度6が80度よりも大きいと、接合部の継ぎ目2が進行方向21に対してほぼ垂直な方向に沿っているため、ベルト1が折れ曲がる事象が起きやすくなる。一方、角度6が45度未満であると、接合部の継ぎ目2の長さが長くなる。ベルトの幅にもよるが、接合すべき部分がプレス機(もしくは融着機)の有効盤面に収まらない不具合を生じることがある。そのため、角度6を45度以上80度以下の範囲にすることが望ましい。
第1実施形態のベルト1によれば、ベルト1が折れ曲がる事象を抑制することができる。そのため、ベルトの変形を抑制することができる。これにより、床材などのワークに、ベルトの変形が転写される等の欠点の発生を抑制する事ができる。また、第1実施形態のベルト1は、ロール3と接触する面の段差が無く、また、接合部の剛性と他の箇所の剛性との差が小さいため、ノッキング及びスリップが生じ難い。さらに、接合部における突き合せた端部同士の隙間にワークが侵入するのを抑制することができる。
【0017】
第1実施形態のベルト1のベルト基材について、説明する。織布を構成する耐熱性繊維の例として、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維あるいはこれらから選択される2種以上を混合したものなどが挙げられる。ガラス繊維は、不燃性であり、かつ電気絶縁性を有する。一方、アラミド繊維は、強度に優れ、かつ耐薬品性を有する。炭素繊維は、ガラス繊維よりも強度に優れ、軽く、かつ導電性を有する。
【0018】
フッ素樹脂の例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂(FEP)などが挙げられる。フッ素樹脂の種類は1種類または2種類以上にすることができる。
【0019】
ベルト基材は、例えば以下の方法で作製され得る。ガラス繊維が平織された織布をPTFEディスパージョンに浸漬した後、これを焼成する操作を複数回繰り返すことにより、ガラス繊維製織布の表面がPTFEで被覆されたベルト基材を作製することが可能である。
【0020】
ベルト基材は、充填材を含有していても良い。充填材は、フッ素樹脂に混合または分散されていることが望ましい。充填材の例として、炭素材料、無機物(酸化チタン、窒化ホウ素、酸化ケイ素、酸化亜鉛など)、各種顔料を挙げることができる。使用する充填材の種類は、1種類または2種類以上にすることができる。充填材の形態は、特に限定されず、粒状、繊維状などにすることができる。
【0021】
ベルト基材の厚さは、例えば、1mm以下にすることができる。より好ましい範囲は0.1mm以上1mm以下であり、さらに好ましい範囲は0.9mm以上1mm以下である。
【0022】
ベルト基材の表面が、凹凸形状を有していても良い。タイルカーペット、足ふきマットなどの床材の表面には、他の床材(例えばポリ塩化ビニル(PVC)製シート、ゴム製シート)との張り付き防止のため、凹凸形状を付与する場合がある。よって、表面に凹凸形状を有するベルト基材は、床材の製造に適している。
【0023】
接合部は、例えば、以下の方法で形成され得る。ベルト基材の幅方向22に沿った一方の第1端部1aの端面と、他方の第2端部1bの端面との間に、溶融性フッ素樹脂のフィルムを挟み、加熱によりフィルムを溶融させて第1端部1aの端面と第2端部1bの端面を接合する。溶融性フッ素樹脂の例として、PFA、FEPなどを挙げることができる。これらの樹脂を混合したものを含むフィルムを使用しても良い。また、第1端部1aの端面か、第2端部1bの端面、あるいは両方に、フッ素樹脂のディスパージョンを塗布して得られた塗膜を加熱により溶融または焼成することで、第1端部1aの端面と第2端部1bの端面を接合する。フッ素樹脂の例には、ベルト基材で挙げたものと同様な種類を挙げることができる。
【0024】
第2実施形態のベルト
図5は、第2実施形態のベルト1の概略的な断面図である。図6は、ベルト1がロール3に装着された状態を示している。図7は、ベルト1の概略的な平面図である。図5図7において、x軸は、ベルト基材の進行方向(走行方向ともいう)21と平行な方向で、y軸はベルト基材の幅方向22と平行な方向で、z軸はベルト基材の厚さ方向と平行な方向である。
第2実施形態のベルト1は、表基材8と、裏基材9とを備えること以外は、第1実施形態のベルト1と同様な構造を有する。表基材8は、ベルト基材の表面に固定され、継ぎ目2を覆っている。裏基材9は、ベルト基材の裏面に固定され、継ぎ目2を覆っている。表基材8のx軸方向の長さは、裏基材9のx軸方向の長さよりも短い。
【0025】
表基材8は、ベルト基材の端面同士を突き合せた部分の隙間へのワークの侵入防止、突き合せた部分の保護、第2端部1bの端面の保護、第1端部1a又は第2端部1bの捲れ(立ち上がり)防止、あるいは接合部の強度向上のために使用され得る。表基材8の例として、耐熱性繊維製織布、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂膜、シリコーンシーラント、接着剤層、粘着テープなどが挙げられる。耐熱性繊維の例として、ガラス繊維、アラミド繊維などが挙げられる。ポリイミドフィルムは、ベルト基材との密着性を高めるために表面処理を施すことが望ましい。フッ素樹脂膜は、例えば、PTFE、PFA、FEPなどのフッ素樹脂のディスパージョンを接合部の表面に塗布し、アイロンなどで焼き付けて塗膜を形成することにより得られる。シリコーンシーラントは、シリコーンシーラントを接合部の表に塗布することで得られるものである。接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂、変性シリコン樹脂などが挙げられる。粘着テープは、熱を使用しないで接合部を保護できる利点がある。
【0026】
ベルトの折れ曲がり防止と、走行不良防止のため、表基材8の厚さは薄い方が望ましい。表基材8の厚さは、50μm以上125μm以下にすることができる。
【0027】
裏基材9は、ベルト基材の端面同士を突き合せて接合した部分の強度を向上させるために使用され得る。裏基材9の例として、耐熱性繊維製織布が挙げられる。耐熱性繊維の例として、ガラス繊維、アラミド繊維などが挙げられる。接合部の強度を向上させるため、裏基材9として、ベルト基材と同じ種類の基材を使用することができる。
【0028】
裏基材9の厚さは、50μm以上1000μm以下にすることができる。
【0029】
表基材8、裏基材9をベルト基材に固定する方法は、特に限定されないが、以下の方法が挙げられる。表基材8又は裏基材9と、ベルト基材との間に、溶融性フッ素樹脂のフィルムを挟み、加熱によりフィルムを溶融させて表基材8又は裏基材9とベルト基材を接合する。溶融性フッ素樹脂の例として、PFA、FEPなどを挙げることができる。これらの樹脂を混合したものを含むフィルムを使用しても良い。図8に、表基材8とベルト基材とをフィルム10で接合した例を示す。また、表基材8の表面か、裏基材9の表面、あるいは両方の表面に、フッ素樹脂のディスパージョンを塗布して得られた塗膜を加熱により溶融または焼成することで、表基材8又は裏基材9とベルト基材を接合する。フッ素樹脂の例には、ベルト基材で挙げたものと同様な種類を挙げることができる。
表基材8の代わりに保護フィルムを用いても良い。保護フィルムは、ベルト基材の端面同士を突き合せた部分の隙間へのワークの侵入防止、突き合せた部分の保護、第2端部1bの端面の保護、第1端部1a又は第2端部1bの捲れ(立ち上がり)防止のために使用され得る。保護フィルムの例として、PTFE、PFA、及びFEPからなる群より選択される少なくとも1種を含むフィルムを挙げることができる。PTFEフィルムは、溶融し難い為、ベルト基材とPTFEフィルムの間に、PFA、FEPといった加熱すると溶融する樹脂で出来たフィルムを挟み込むことが望ましい。保護フィルムの厚さは、12μm以上100μm以下にすることができる。
【0030】
表基材8と裏基材9を使用することにより、接合部の強度を大きくすることができる。一方で、ベルト基材上に、表基材8による凸部と、裏基材9による凸部が存在することとなる。表基材8による凸部と、裏基材9による凸部は、基材で覆われていない部分(ベルト本体)に比して剛性が強くなるため、表基材8または裏基材9による段差にて折れる可能性がある。表基材8と裏基材9それぞれの進行方向21(x方向)の両端部を、進行方向21に対して45度以上80度以下の角度6を有する方向に沿わせることが望ましい。これにより、第2実施形態のベルト1がロール3と接する際、裏基材9の両端部の全体が一度にロール3と接することなく、両端部のうちロール3と接する箇所がベルト1の走行に伴って変化する。その結果、ベルト1が裏基材9を起点にして折れ曲がるのを抑制することができる。
【0031】
また、ベルト1の表面がロール3と接触した際、裏基材9がロール3に引っ掛かるのを抑えることができるため、ノッキングを防止することができる。
【0032】
スリップについては、裏基材9の表面を平滑なものにした場合にも、裏基材9の両端部の全体が一度にロール3と接することがないため、裏基材9がロール3上でスリップする事象を防止することができる。よって、裏基材9として様々な材料を使用することができる。
従って、第2実施形態のベルト1によれば、ノッキングやスリップといった一定速度での走行に影響を及ぼす事象を防止することができる。第2実施形態のベルト1によれば、継ぎ目2、表基材8又は裏基材9での折れ曲がりなどのベルト1の変形を抑制することができる。これにより、床材などのワークに、ベルト1の変形が転写される等の欠点の発生を抑制する事ができる。また、ベルト1の走行不良を低減することも可能である。さらに、接合のために突き合せた端部同士の隙間にワークが侵入するのを抑制することができる。なお、ベルト1の表面を裏面として使用しても、裏面を表面として使用しても良い。ベルト1の表面を裏面として使用する場合、表基材8がロール3と接することとなる。また、裏基材9で十分な接合強度が確保できる場合には、表基材8を使用しなくても良い。その一例を図9に示す。
【0033】
第1及び第2の実施形態のベルトは、例えば、ヒートシール機用ベルト、食品製造ライン、冷凍食品製造ライン、プラスチックフィルムや床材(例えば、カーペット、タイルカーペット、足ふきマット)などの製造ライン等、製品の製造に使用され得る。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0034】
1…ベルト、1a…第1端部、1b…第2端部、2…継ぎ目、3…ロール、4…織布、5…フッ素樹脂、6…角度、8…表基材、9…裏基材、10…フィルム、21…進行方向、22…幅方向、30…ベルト、31…継ぎ目、32…ベルト、32a,32b…端部、33…床材、34…ベルト、34a,34b…端部、35,36…基材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13